(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240723BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240723BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20240723BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240723BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20240723BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240723BHJP
H01G 11/52 20130101ALI20240723BHJP
H01M 10/0587 20100101ALN20240723BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/04 W
H01M50/417
H01M50/426
H01M50/457
H01M50/46
H01M50/103
H01M4/133
H01M4/13
H01M10/0525
H01G11/84
H01G11/52
H01M10/0587
(21)【出願番号】P 2021194884
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】福永 政雄
【審査官】佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-144888(JP,A)
【文献】特開2014-212060(JP,A)
【文献】特開2001-319641(JP,A)
【文献】特開2017-098114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 - 10/39
H01M 4/00 - 4/62
H01M 50/40 - 50/497
H01G 11/00 - 11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータを備えた電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備え、
前記セパレータの両表面には接着層が形成された二次電池の製造方法であって、
前記正極と前記セパレータとが前記接着層により接着され、前記負極と前記セパレータとが前記接着層により接着された前記電極体を、前記電池ケース内に配置する配置工程と、
前記電極体において、前記正極および前記負極の少なくとも一方と、前記セパレータとを剥離させる剥離工程と、
前記剥離工程の後に前記電池ケース内に電解液を注液する注液工程と、
を含
み、
前記剥離工程は、前記電極体を加熱する加熱処理と、前記電池ケース内を減圧する減圧処理と、をこの順に含む、二次電池の製造方法。
【請求項2】
前記剥離工程は、
前記電極体の温度を80℃以上に加熱する加熱処理と、
前記電極体の温度が80℃以上となった状態で、前記電池ケース内を減圧する第1減圧処理と、
を含み、
前記第1減圧処理は、前記電池ケース内の圧力を30kPa/min以上の速度で、絶対圧力で1kPa以下まで減圧する、請求項1に記載の二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記電極体は、帯状の前記正極と、帯状の前記負極とが、帯状の前記セパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体であり、
前記負極の幅が20cm以上である、請求項1または2に記載の二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記電池ケースは、
底壁と、前記底壁から延び相互に対向する一対の第1側壁と、前記底壁から延び相互に対向する一対の第2側壁と、前記底壁に対向する開口とを有する角型外装体と、
前記開口を封口する封口板と、を備え、
前記配置工程において、前記巻回電極体は、前記巻回電極体の巻回軸が前記底壁に沿った向きに配置される、請求項3に記載の二次電池の製造方法。
【請求項5】
前記配置工程において、前記電池ケース内に、前記電極体を複数配置する、請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項6】
前記剥離工程の後で、前記注液工程の前に、前記電池ケース内の圧力を増加させる加圧工程をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項7】
前記注液工程は、前記加圧工程の後に前記電池ケース内の圧力を減圧する第2減圧処理を含む、請求項6に記載の二次電池の製造方法。
【請求項8】
前記注液工程の後に、前記二次電池の初期充電を行う初期充電工程を含み、
前記初期充電工程は、前記二次電池を拘束した状態で行う、請求項1~7のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項9】
前記セパレータは、
ポリオレフィン樹脂製の多孔性の基材層と、
前記基材層の両表面に形成され、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む前記接着層と、
を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の二次電池の製造方法。
【請求項10】
正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置されるセパレータを備えた電極体と、前記電極体を収容する電池ケースとを備え、
前記セパレータの両表面には接着層が形成された二次電池の製造方法であって、
前記正極と前記セパレータとが前記接着層により接着され、前記負極と前記セパレータとが前記接着層により接着された前記電極体を、前記電池ケース内に配置する配置工程と、
前記電極体において、前記正極および前記負極の少なくとも一方と、前記セパレータとを剥離させる剥離工程と、
前記剥離工程の後に前記電池ケース内の圧力を増加させる加圧工程と、
前記加圧工程の後に前記電池ケース内に電解液を注液する注液工程と、
を含み、
前記剥離工程は、前記電池ケース内を減圧する減圧処理を含む、二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の二次電池は、一般に、正極および負極を有する電極体と、開口を有し電極体および電解液を収容する外装体と、外装体の開口を封口する封口板と、を備え、当該外装体と封口板とが密閉されて構成されている。特許文献1においては、電極体入りのケースに電解液を注液する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年では、電池の高容量化の観点から電極体を大型化させる傾向にある。本発明者らが検討した結果によれば、従来よりも大型化された電極体は、電解液の注液に時間がかかり、電極体全体に電解液を均一に含浸させることが困難であることを見出した。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、信頼性の高い二次電池をより効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示される二次電池の製造方法は、正極、負極、および上記正極と上記負極との間に配置されるセパレータを備えた電極体と、上記電極体を収容する電池ケースとを備え、上記セパレータの両表面には接着層が形成された二次電池の製造方法であって、上記正極と上記セパレータとが上記接着層により接着され、上記負極と上記セパレータとが上記接着層により接着された上記電極体を、上記電池ケース内に配置する配置工程と、上記電極体において、上記正極および上記負極の少なくとも一方と、上記セパレータとを剥離させる剥離工程と、上記剥離工程の後に上記電池ケース内に電解液を注液する注液工程と、を含む。
【0007】
上記のとおり剥離工程によって、正極および負極の少なくともいずれか一方と、セパレータとが剥離される。これにより、注液工程においてより短時間で電解液を注液することができ、かつ、電極体への電解液の含浸が不均一となることを抑制できる。電極体への電解液の含浸が不均一となることを抑制することにより、被膜形成不良やリチウム析出等による電池特性の低下が抑制される。したがって、かかる構成によれば、信頼性が高い二次電池を、より効率よく製造する方法を実現することができる。
【0008】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記剥離工程は、上記電極体の温度を80℃以上に加熱する加熱処理と、上記電極体の温度が80℃以上となった状態で、上記電池ケース内を減圧する第1減圧処理と、を含む。上記第1減圧処理は、上記電池ケース内の圧力を30kPa/min以上の割合で、絶対圧力で1kPa以下まで減圧する。
かかる構成によれば、好適に正極および負極の少なくともいずれか一方と、セパレータとを剥離させることができる。
【0009】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記電極体は、帯状の上記正極と、帯状の上記負極とが、帯状の上記セパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体であり、上記負極の幅が20cm以上である。
このような比較的大型な負極を有する電極体においては、電解液の注液が特に時間がかかり、電解液の含浸が不均一になる傾向にあるため、ここに開示される技術を適用することが殊に効果的である。
【0010】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記電池ケースは、底壁と、上記底壁から延び相互に対向する一対の第1側壁と、上記底壁から延び相互に対向する一対の第2側壁と、上記底壁に対向する開口とを有する角型外装体と、上記開口を封口する封口板と、を備えてもよい。そして、上記配置工程において、巻回電極体は、巻回電極体の巻回軸が上記底壁に沿った向きに配置されてもよい。また、上記配置工程において、電池ケース内に、電極体を複数配置してもよい。
【0011】
ここに開示される製造方法の好適な一態様において、上記剥離工程の後で、上記注液工程の前に、上記電池ケース内の圧力を増加させる加圧工程をさらに含んでいてもよい。上記注液工程は、上記加圧工程の後に上記電池ケース内の圧力を減圧する第2減圧処理を含んでいてもよい。また、上記注液工程の後に、上記二次電池を拘束した状態で初期充電を行う初期充電工程を含んでいてもよい。
【0012】
上記セパレータは、ポリオレフィン樹脂製の多孔性の基材層と、該基材層の両表面に形成され、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む上記接着層と、を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る二次電池の製造方法を示すフローチャート図である。
【
図2】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図4】
図2のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図5】
図2のV-V線に沿う模式的な横断面図である。
【
図6】封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図7】正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図8】一実施形態に係る電極体の構成を示す模式図である。
【
図9】一実施形態に係る二次電池の電極体の正極と負極とセパレータとの界面を模式的に示す図である。
【
図11】他の実施形態に係る配置工程を説明する模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術のいくつかの好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、A以上B以下の意と共に、「好ましくはAより大きい」および「好ましくはBより小さい」の意を包含するものとする。
【0015】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)と、を包含する概念である。
【0016】
以下、ここに開示される二次電池の製造方法の一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る二次電池の製造方法を示すフローチャート図である。
図1に示すように、ここに開示される二次電池の製造方法は、(1)電極体を電池ケース内に配置する配置工程S10と、(2)電極体の正極および負極の少なくとも一方と、セパレータとを剥離させる剥離工程S20と、(3)電池ケース内に電解液を注液する注液工程S30と、を包含する。ここに開示される二次電池の製造方法は、剥離工程S20の後で注液工程S30の前に電池ケース内の圧力を増加させる加圧工程、および、注液工程S30の後に二次電池を初期充電する初期充電工程をさらに包含していてもよい。ここに開示される二次電池の製造方法は、上記剥離工程S20を有することによって特徴づけられており、それ以外の製造プロセスは従来と同様であってもよい。また、任意の段階でさらに他の工程を含んでいてもよい。
【0017】
1.二次電池の構成
ここではまず、作成対象である二次電池100の構成を説明した後に、各工程について説明する。
図2は、二次電池100の斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う模式的な縦断面図である。
図4は、
図2のIV-IV線に沿う模式的な縦断面図である。
図5は、
図2のV-V線に沿う模式的な横断面図である。
図6は、封口板に取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図7は、正極第2集電部と負極第2集電部とが取り付けられた電極体を模式的に示す斜視図である。
図8は、電極体20の構成を示す模式図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、二次電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、二次電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0018】
図2および
図3に示すように、ここに開示される製造方法において製造される二次電池100は、電池ケース10と、電極体20と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50と、負極集電部60と、を備えている。図示は省略するが、二次電池100は、ここでは、さらに電解液を備えている。二次電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0019】
(1)電池ケース
電池ケース10は、電極体20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、金属製であることが好ましく、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等からなることがより好ましい。
図3に示すように、電池ケース10は、開口12hを有する外装体12と、開口12hを塞ぐ封口板(蓋体)14と、を備えている。
【0020】
外装体12は、
図2に示すように、底壁12aと、底壁12aから延び相互に対向する一対の長側壁12bと、底壁12aから延び相互に対向する一対の短側壁12cと、を備えている。底壁12aは、略矩形状である。底壁12aは、開口12hと対向している。短側壁12cの面積は、長側壁12bの面積よりも小さい。
【0021】
封口板14は、外装体12の開口12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。封口板14は、平面視において略矩形状である。
図3に示すように、封口板14には、注液孔15と、ガス排出弁17と、2つの端子引出孔18、19と、が設けられている。端子引出孔18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子引出孔18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。端子引出孔18、19は、それぞれ、封口板14に取り付けられる前の正極端子30および負極端子40を挿通可能な大きさの内径を有する。注液孔15は、後述する注液工程において電解液を注液するためのものである。注液孔15は、封止部材16により封止されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になったときに破断して、電池ケース10内のガスを外部に排出するように構成されている。
【0022】
(2)電解液
上述したように、二次電池100は、電解液を備えている。電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。非水系溶媒は、鎖状カーボネート及び環状カーボネートを含むことが好ましい。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。電解液は、必要に応じて添加剤を含有してもよい。
【0023】
(3)電極端子
正極端子30および負極端子40は、それぞれ封口板14に固定されている。正極端子30は、封口板14の長辺方向Yの一方側(
図2、
図3の左側)に配置されている。かかる正極端子30は、電池ケース10の外側において、板状の正極外部導電部材32と電気的に接続されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。一方、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方側(
図2、
図3の右側)に配置されている。かかる負極端子40は、電池ケース10の外側において、板状の負極外部導電部材42と電気的に接続されている。負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。負極端子40は、2つの導電部材が接合され一体化されて構成されていてもよい。例えば、後述する負極集電部60と接続される部分が銅または銅合金からなり、封口板14の外側の表面に露出する部分がアルミニウムまたはアルミニウム合金からなっていてもよい。また、電極集電部(正極集電部50および負極集電部60)にも、導電性に優れた金属(アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金等)が好適に使用できる。
【0024】
正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、複数の二次電池100を相互に電気的に接続する際に、バスバーが付設される部材である。正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。ただし、正極外部導電部材32および負極外部導電部材42は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。
【0025】
(4)電極集電部
図3~
図6に示すように、本実施形態に係る二次電池100では、電池ケース10内には、電極体20が収容されている。詳しい構造は後述するが、電極体20には、正極タブ群23と負極タブ群25とが設けられている。上述した正極端子30は、正極集電部50を介して、電極体20の正極タブ群23と接続されている。具体的には、正極集電部50は、電池ケース10の内部に収容されている。この正極集電部50は、
図3および
図6に示すように、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の導電部材である正極第1集電部51と、上下方向Zに沿って延びる板状の導電部材である正極第2集電部52とを備えている。そして、正極端子30の下端部30cは、封口板14の端子引出孔18を通って電池ケース10の内部に挿入され、正極第1集電部51と接続されている(
図3参照)。また、
図5~
図7に示すように、正極第2集電部52は、電極体20の正極タブ群23に接続される。そして、電極体20の正極タブ群23は、正極第2集電部52と電極体20の一方の側面20eとが対向するように折り曲げられる。これによって、正極第2集電部52の上端部と正極第1集電部51とが電気的に接続される。
【0026】
一方、負極端子40は、負極集電部60を介して、電極体20の負極タブ群25と接続される。かかる負極側の接続構造は、上述した正極側の接続構造と略同一である。具体的には、負極集電部60は、封口板14の内側面に沿って長辺方向Yに延びる板状の導電部材である負極第1集電部61と、上下方向Zに沿って延びる板状の導電部材である負極第2集電部62とを備えている(
図3および
図6参照)。そして、負極端子40の下端部40cは、端子引出孔19を通って電池ケース10の内部に挿入され、負極第1集電部61と接続される(
図3参照)。また、
図5~
図7に示すように、負極第2集電部62は、電極体20の負極タブ群25と接続される。そして、負極タブ群25は、負極第2集電部62と電極体20の他方の側面20gとが対向するように折り曲げられる。これによって、負極第2集電部62の上端部と負極第1集電部61とが電気的に接続される。
【0027】
(5)絶縁部材
また、この二次電池100では、電極体20と電池ケース10との導通を防止する種々の絶縁部材が取り付けられている。具体的には、正極外部導電部材32(負極外部導電部材42)と封口板14の外側面との間には、外部絶縁部材92が介在している(
図2および
図3参照)。これによって、正極外部導電部材32や負極外部導電部材42が封口板14と導通することを防止できる。また、封口板14の端子引出孔18、19の各々にはガスケット90が装着されている(
図3参照)。これによって、端子引出孔18、19に挿通された正極端子30(または負極端子40)が封口板14と導通することを防止できる。また、正極第1集電部51(または負極第1集電部61)と封口板14の内側面との間には、内部絶縁部材94が配置されている。この内部絶縁部材94は、正極第1集電部51(または負極第1集電部61)と封口板14の内側面との間に介在する板状のベース部94aを備えている。これによって、正極第1集電部51や負極第1集電部61が封口板14と導通することを防止できる。さらに、内部絶縁部材94は、封口板14の内側面から電極体20に向かって突出する突出部94bを備えている(
図3および
図4参照)。これによって、上下方向Zにおける電極体20の移動を規制し、電極体20と封口板14が直接接触することを防止できる。加えて、電極体20は、絶縁性の樹脂シートからなる電極体ホルダ29(
図4参照)に覆われた状態で電池ケース10の内部に収容される。これによって、電極体20と外装体12が直接接触することを防止できる。なお、上述した各々の絶縁部材の材料は、所定の絶縁性を有していれば特に限定されない。一例として、ポリオレフィン系樹脂(例、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE))、フッ素系樹脂(例、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE))等の合成樹脂材料を使用できる。
【0028】
(6)電極体
図8は、電極体20の構成を示す模式図である。
図8に示すように、電極体20は、正極板22および負極板24を有する。電極体20は、ここでは、帯状の正極板22と帯状の負極板24とが帯状のセパレータ26を介して積層され、巻回軸WLを中心として巻回されてなる扁平形状の巻回電極体である。
【0029】
電極体20は、巻回軸WLが底壁12aに沿った向き(すなわち、巻回軸WLが長辺方向Yと平行になる向き)で外装体12の内部に配置されている。言い換えれば、電極体20は、巻回軸WLが底壁12aと平行になり、短側壁12cと直交する向きで、外装体12の内部に配置されている。電極体20の端面(言い換えれば、正極板22と負極板24とが積層された積層面、
図8の長辺方向Yの端面)は、短側壁12cと対向している。
【0030】
図4に示すように、電極体20は、外表面が湾曲した一対の湾曲部20rと、当該一対の湾曲部20rを連結する該表面が平坦な平坦部20fとを有している。ただし、電極体20は、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の正極と、複数枚の方形状(典型的には矩形状)の負極とが、絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。電極体20の高さ(上下方向Zの長さ)H1は、12cm以下であることが好ましく、10cm以下であることがより好ましい。なお、電極体20の高さとは、電極体20の厚み方向(短辺方向X)に対して垂直方向の長さのことをいう。
【0031】
正極板22は、
図8に示すように、長尺な帯状の部材である。正極板22は、正極芯体22cと、正極芯体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極芯体22cは、帯状である。正極芯体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極芯体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。また、正極芯体22cの平均厚みは特に限定されない。例えば、2μm~30μmが好ましく、2μm~20μmがより好ましく、5μm~15μmがさらに好ましい。
【0032】
正極芯体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図8の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、長辺方向Yの一方側(
図8の左側)に突出している。複数の正極タブ22tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の正極タブ22tは、正極板22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。ただし、正極タブ22tは、長辺方向Yの他方の端部(
図8の右端部)に設けられていてもよいし、長辺方向Yの両端部にそれぞれ設けられていてもよい。正極タブ22tは、正極芯体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。正極タブ22tの少なくとも一部は、正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されずに、正極芯体22cが露出している。
【0033】
正極活物質層22aは、
図8に示すように、帯状の正極芯体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0034】
正極保護層22pは、
図8に示すように、長辺方向Yにおいて正極芯体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極芯体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図8の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、長辺方向Yの両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダ、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0035】
負極板24は、
図8に示すように、長尺な帯状の部材である。負極板24は、負極芯体24cと、負極芯体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極芯体24cは、帯状である。負極芯体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極芯体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0036】
負極芯体24cの長辺方向Yの一方の端部(
図8の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、セパレータ26よりも長辺方向Yに突出している。複数の負極タブ24tは、負極板24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。負極タブ24tは、長辺方向Yの一方側(
図8の右側)に突出している。ただし、負極タブ24tは、長辺方向Yの他方の端部(
図8の左端部)に設けられていてもよいし、長辺方向Yの両端部にそれぞれ設けられていてもよい。負極タブ24tは、負極芯体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。負極タブ24tの一部には、負極活物質層24aが形成されている。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極芯体24cが露出している。
【0037】
負極活物質層24aは、
図8に示すように、帯状の負極芯体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダ、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0038】
好適な一態様では、負極板24の負極タブ24tを除く本体部の幅W1(
図8参照)は、20cm以上である。負極板24の本体部の幅W1は、例えば、20cm以上45cm以下であることが好ましく、25cm以上35cm以下であることがより好ましい。このような比較的大型な本体部を有する電池においては、高容量化が実現される一方で、電解液が電極体20の内部まで浸透し難い。このため、ここに開示される技術の効果がより一層発揮される。なお、負極板の本体部の幅とは、帯状の負極板の短手方向の長さのことをいう。
【0039】
図8に示すように、電極体20は、2枚のセパレータ26を備えている。各々のセパレータ26は、正極板22の正極活物質層22aと、負極板24の負極活物質層24aと、を絶縁する部材である。セパレータ26は、電極体20の外表面を構成している。
図9は、電極体20の正極板22と負極板24とセパレータ26との界面を模式的に示す図である。本実施形態におけるセパレータ26は、帯状の基材層26aと、当該基材層26aの表面(両面)に形成された接着層26bと、を有している。本実施形態では、上記構成のセパレータ26の一方の接着層26bと正極板22とが接着し、他方の接着層26bと負極板24とが接着している。これにより、電極体20の平坦部20f(
図4参照)が厚み方向(短辺方向X)に膨張することが抑制され、後述する配置工程S10において、電極体20の挿入が容易になる。
【0040】
セパレータ26の厚みt1(
図9参照)は、例えば、5μm以上40μm以下であることが好ましく、8μm以上30μm以下であることがより好ましく、12μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。なお、本明細書における「セパレータ26の厚みt1」は、
図9に示すように、基材層26aと接着層26bとの合計の厚みであり、特に言及しない限りにおいて、プレス成形処理前の厚みを示すものとする。
【0041】
基材層26aは、従来公知の二次電池のセパレータにおいて用いられるものを特に制限なく使用することができる。例えば、基材層26aは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂からなる樹脂製の多孔性シートであることが好ましい。基材層26aの厚みt2(
図9参照)は、特に限定されないが、例えば、4μm以上35μm以下であることが好ましく、8μm以上25μm以下であることがより好ましく、10μm以上20μm以下であることがさらに好ましい。また、基材層26aの空隙率は、例えば、20%~70%が好ましく、30%~60%がより好ましい。これにより、正極板22と負極板24との間で、適切に電荷担体を移動させることができる。なお、本明細書における「基材層26aの厚み」および「基材層26aの空隙率」は、特に言及しない限りにおいて、プレス成形処理前の厚みおよび空隙率を示すものとする。
【0042】
図9に示すように、本実施形態における接着層26bは、基材層26aの両面に形成された層である。接着層26bは、バインダと無機粒子とが含まれている。なお、接着層26bは、正極板22と対向する側と負極板24と対向する側とで同じ構成であってもよいし、異なる構成であってもよい。
なお、セパレータ26は、ポリオレフィン樹脂製の多孔性の基材層26aを含み、両表面が接着層26bであることが好ましい。接着層26bはポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含むことが好ましい。接着層26bと基材層26aの間に、他の層が形成されていてもよい。
【0043】
接着層26bに含まれるバインダとしては、一定の接着性を有する従来公知の樹脂材料を特に制限なく使用できる。接着層26bのバインダとしては、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;アクリル樹脂;等が挙げられる。また、接着層26bは、これらのバインダ樹脂を二種以上含んでいてもよい。なお、上述したバインダ樹脂の中でも、PVdFは、電極板に対する接着性をより好適に発揮できるため、好ましく用いられる。接着層26bに含まれるバインダの含有量は、接着層26bを100質量%としたときに、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましく、20質量%以上であることがさらに好ましい。接着層26bに含まれるバインダの含有量の上限は、特に限定するものではないが、例えば50質量%以下であってもよく、45質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよい。接着層26bに含まれるバインダが、上記範囲内であることにより、好適な接着性が発揮され得る。
なお、正極板22及び負極板24と、接着層26bとは、例えば押圧により接着することが好ましい。押圧は、例えば、常温、あるいは加熱状態で行うことができる。
【0044】
無機粒子としては、例えば、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、チタニア、炭酸マグネシウム、マグネシア、ジルコニア、酸化亜鉛、酸化鉄、セリア、イットリア等のセラミックを主成分として含むセラミック粒子が挙げられる。接着層26bにおける無機粒子の含有量は、正極板22(または負極板24)に対して所定の接着性が発揮されるように調整されていることが好ましい。
【0045】
また、接着層26bは、複数の空隙を含む三次元網目状構造を有していることが好ましい。かかる三次元網目状構造において、無機粒子が分散していることが好ましい。例えば、接着層26bは、複数の繊維状のPVdFが多数の空隙を有するようにランダムに積層して三次元網目状構造が形成され、当該三次元網目状構造の内部にアルミナ、ベーマイト等の無機粒子が分散するように構成されているとよい。
【0046】
接着層26bの厚みt3は、例えば0.5μm以上であることが好ましく、1.0μm以上であることがより好ましく、1.5μm以上であることがさらに好ましい。接着層26bの厚みt3は、特に限定されないが、例えば10μm以下であることが好ましく、8μm以下であることがより好ましく、6μm以下であることがさらに好ましい。これにより、好適な接着性を発揮し得る。また、接着層26bの目付量は、1g/m2以上であることが好ましく、2g/m2以上であることがより好ましく、2.5g/m2以上であることがさらに好ましい。また、接着層26bの目付量は、例えば、8g/m2以下であることが好ましく、6g/m2以下であることがより好ましく、5.5g/m2以下であることがさらに好ましい。また、接着層26bの空隙率は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。また、接着層26bの空隙率は、90%以下であることが好ましく、80%以下であることがより好ましい。なお、本明細書における「接着層26bの厚み」および「接着層26bの空隙率」は、特に言及しない限りにおいて、プレス成形処理前の厚みおよび空隙率を示すものとする。
【0047】
2.二次電池の製造方法
以上、作成対象である二次電池100の構成を説明した。次に、
図1を参照しながら、かかる二次電池100の製造方法について説明する。上記したように、ここに開示される二次電池の製造方法は、剥離工程S20を有することによって特徴づけられており、それ以外の製造プロセスは特に限定されない。
【0048】
(1)配置工程S10
配置工程S10は、上記したような電極体20を電池ケース10の内部に配置する工程である。具体的には、まず、上記したような電極体20と、電池ケース10(外装体12および封口板14)と、正極端子30と、負極端子40と、正極集電部50(正極第1集電部51および正極第2集電部52)と、負極集電部60(負極第1集電部61および負極第2集電部62)と、を用意する。そして電極体20を電池ケース10に挿入する。ここでは、電極体20が巻回電極体である場合について説明するが、電極体20は、上記したように積層電極体であってもよい。
【0049】
(a)巻回処理
電極体作製処理では、2枚のセパレータ26を介して正極板22と負極板24とを積層して、巻回することによって電極体20を用意する。より詳細には、帯状のセパレータ26、帯状の負極板24、帯状のセパレータ26、帯状の正極板22を、この順序で積層した積層体を作製する(
図8参照)。このとき、長辺方向Yの一方(
図8の左側)の側縁から正極板22の正極タブ22tのみが突出し、かつ、他方(
図8の右側)の側縁から負極板24の負極タブ24tのみが突出するように、各々のシート部材の長辺方向Yにおける積層位置を調節する。そして、作製した積層体を巻回して筒状体を作製する。このときの巻回数は、目的とする電極体20の性能や製造効率などを考慮して適宜調節することが好ましい。一例として、電極体20における正極板22の巻回数は、10回~60回が好ましく、30回~40回がより好ましい。
【0050】
(b)プレス成形処理
プレス成形処理では、上記作製した筒状体に対してプレス成形をすることによって、扁平形状の電極体20を用意する。プレス成形処理は、常温で実施してもよく、加熱した状態(例えば、40℃~80℃程度)で実施してもよい。巻回された筒状体をプレス成形した場合には、成形された電極体20の湾曲部20rに残留した弾性作用によって、平坦部20fの厚みが膨張するスプリングバックが生じ得る。スプリングバックが生じた場合には、後述する配置処理において、電池ケース10への収容が難しくなる虞がある。しかしながら、ここに開示される技術によれば、セパレータ26が所定の接着性を有する接着層26bを有しているため、当該接着層26bを有する電極体20に対してプレス成形処理を実施した結果、セパレータ26の接着層26bと正極板22、および、接着層26bと負極板24とがより好適に接着され、スプリングバックが抑制される。これにより、配置処理において電極体20を所望する位置にスムーズに配置することができる。
【0051】
(c)配置処理
配置処理では、上記用意した電極体20を電池ケース10内に収容する。まず、
図6に示すように、電極体20に正極集電部50、負極集電部60および封口板14が取り付けられた合体部材を用意する。まず、電極体20の正極タブ群23に正極第2集電部52を接合し、負極タブ群25に負極第2集電部62を接合する。次いで、電極体20の上方に封口板14を配置し、
図5に示すように、正極第2集電部52と電極体20の一方の側面20eとが対向するように、電極体20の正極タブ群23を折り曲げる。これによって、正極第1集電部51と正極第2集電部52とが接続される。同様に、各負極第2集電部62と電極体20の他方の側面20gとが対向するように、電極体20の負極タブ群25を折り曲げる。これによって、負極第1集電部61と負極第2集電部62とが接続される。この結果、正極集電部50と、負極集電部60とを介して、封口板14に電極体20が取り付けられる。
【0052】
封口板14に取り付けられた電極体20を、電極体ホルダ29(
図4参照)に収容する。次いで、電極体ホルダ29で覆われた電極体20を、外装体12に挿入する。このとき、巻回軸WLが底壁12aに沿った向き(すなわち、巻回軸WLが長辺方向Yと平行になる向き)で外装体12の内部に配置されるように、挿入することが好ましい。これにより、後述する加熱処理において効率よく電極体20を加熱することができる。そして、外装体12の開口12hの縁部に封口板14を接合して、開口12hを封止する。これにより、電極体20が電池ケース10内に配置された電池組立体を用意することができる。
なお、電極体ホルダ29は、例えば、ポリエチレン(PE)等の樹脂材料からなる絶縁性の樹脂シートを、袋状または箱状に折り曲げることにより用意することができる。また、外装体12と封口板14とは、例えば、溶接接合されることによって封止されることが好ましい。外装体12と封口板14との溶接接合は、例えば、レーザ溶接等で行うことができる。
【0053】
(2)剥離工程S20
剥離工程S20は、上記配置工程S10において用意した電池組立体に収容される電極体20の正極板22および負極板24の数なくとも一方と、セパレータ26とを剥離させる工程である。具体的には、正極板22とセパレータ26とが接着層26bにより接着され、負極板24とセパレータ26とが接着層26bにより接着された状態の電極体20に対して、後述する加熱処理および第1減圧処理を実施することにより、正極板22および負極板24とセパレータ26とを剥離させて電極体20に剥離領域が生じた状態とする。
ここで、剥離領域では、正極板22又は負極板24と、セパレータ26との間に隙間が生じた状態であることが好ましい。剥離領域の有無は、電極体の巻回軸方向の中央部において巻回軸に対して垂直な断面のX線CT画像から判断できる。
【0054】
(a)加熱処理
加熱処理は、上記したようなセパレータ26の接着層26bを軟化させ、正極板22および負極板24からセパレータ26を剥離させやすくするための処理である。かかる加熱処理の温度は、接着層26bに用いられるバインダの種類によって異なるため、一概には言えないが、例えば、電極体20の温度が80℃以上となるように保持することが好ましい。加熱処理は、電極体20の温度が90℃以上となるように保持することがより好ましく、電極体20の温度が100℃以上となるように保持することがさらに好ましい。温度が高すぎる場合には、二次電池100の内部で意図しない副反応が発生して電池特性が悪化することが懸念されるため、好ましくない。このため、加熱処理の温度は、電極体20の温度が例えば130℃以下となるように保持することが好ましく、120℃以下となるように保持することがより好ましい。昇温速度は、特に限定されないが、例えば4~8℃/min程度に設定するとよい。
【0055】
また、加熱処理の時間は、二次電池100の大きさ等によって異なるため、一概には言えないが、例えば、約1時間~6時間程度であってもよく、約1.5時間~4時間程度を目安に設定することができる。一例として、電極体20の温度が80℃以上に保持された状態で1時間以上保持することが好ましく、電極体20の温度が90℃以上に保持された状態で1時間以上保持することがさらに好ましい。
【0056】
加熱処理は、上記した条件を満たすように実施されればよく、加熱の手段は特に限定されない。加熱の手段は、例えば、内部に電気ヒーターが収納された台座状の加熱プレートの上に電池組立体を設置することによって実施してもよい。あるいは、所定の温度を保持するように設定された恒温槽等に電池組立体を静置することによって実施してもよい。
【0057】
(b)第1減圧処理
第1減圧処理は、上記加熱処理後の電池組立体の内部を大気圧(すなわち、電池組立体の外側の空気の圧力)よりも低くなるように減圧し、正極板22および負極板24とセパレータ26とを剥離させるための処理である。本発明者らが鋭意検討した結果によれば、かかる減圧処理の減圧速度を従来よりも速く設定することにより、正極板22および負極板24とセパレータ26とを好適に剥離させることができることを見出した。ここに開示される技術を限定する意図はないが、かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。電池組立体の内部(すなわち、電池ケースの内部)が減圧されると、電池ケースに収容される電極体の内部も減圧される。ここで、電池ケースの内部が急激な速度で減圧されると、電極体の内部の圧力は電池ケースの減圧速度に追従することができず、電池ケースの内部と電極体の内部との間で差圧が生じ、電極体は膨張する。かかる膨張作用により、電極体の正極板および負極板とセパレータとが剥離すると推測される。すなわち、従来よりも減圧速度を速く設定し、急激に電池組立体の内部を減圧することで、正極板22および負極板24とセパレータ26とを好適に剥離させ、電極体20に剥離領域を形成することができる。これにより、後述する注液工程S30での注液時間が短縮され、かつ、電極体20の中央部にも電解液が十分に含浸する。したがって、電極体内部での電解液の不足や、負極上での被膜形成が不十分となること等による電池特性の低下が改善され、信頼性の高い電池をより効率よく製造することができる。
【0058】
第1減圧処理における減圧速度は、上記したように電極体20の正極板22および負極板24の数なくとも一方と、セパレータ26とを剥離させるように比較的速い速度に設定される。減圧速度は、少なくとも30kPa/min以上であることが好ましい。減圧速度は、例えば、40kPa/min以上であることがより好ましく、50kPa/min以上であることがさらに好ましい。減圧速度の上限は特に限定されないが、500kPa/min以下であることが好ましく、250kPa/min以下であることがより好ましく、100kPa/min以下であることがさらに好ましい。また、電池組立体の内部の圧力は、絶対圧力で1kPa以下まで減圧することが好ましく、100Pa以下まで減圧することがより好ましく、50Pa以下まで減圧することがさらに好ましい。かかる条件で第1減圧処理を実施することにより、正極板22および負極板24とセパレータ26とを剥離させ、電極体20において好適に剥離領域が形成された状態とすることができる。
【0059】
上記した減圧状態を保持する時間は特に限定されないが、例えば、約1時間~8時間程度であってもよく、約1時間~5時間程度を目安に設定することができる。また、第1減圧処理の開始のタイミングは特に限定されないが、電極体20を好適に剥離させる観点からは、加熱処理によって十分に電池組立体が加熱された後に、第1減圧処理を開始することが好ましい。第1減圧処理は、典型的には加熱処理の開始から約2時間後以降に減圧を開始するとよく、例えば加熱処理の開始から約4時間後に減圧を開始するとよい。
【0060】
第1減圧処理は、上記した条件を満たすように実施されればよく、減圧の手段は特に限定されない。減圧は、例えば、電池ケース10内から気体を排出させて減圧するとよい。例えば、封口板14の注液孔15にノズルの一方を取り付けて、他方を真空ポンプと接続する。この状態で真空ポンプを稼働させることにより、電池組立体の内部の気体を注液孔15から排出し、電池組立体内を減圧することができる。
【0061】
(3)加圧工程
加圧工程は、上記第1減圧処理によって減圧された電池組立体の内部を大気圧程度まで加圧(復圧)する工程である。当該加圧工程はここに開示される技術において必須の工程ではなく、適宜省略することも可能である。例えば、上記第1減圧処理の実施後に後述する注液工程S30(より詳細には注液処理)を実施してもよい。当該加圧工程を以下の条件で剥離工程の後に実施することにより、電極体20に剥離領域が形成された状態をより好適に維持することができる。
【0062】
加圧工程では、典型的には、電池組立体の内部の圧力が大気圧程度まで加圧(復圧)されればよく、例えば、絶対圧力で5kPa以上となるまで加圧することが好ましく、10kPa以上となるまで加圧することがより好ましい。また、上限は特に限定されないが、電池組立体の内部の圧力は、絶対圧力で200kPa以下となるまで加圧することが好ましく、100kPa以下となるまで加圧することがより好ましい。このときの加圧(復圧)速度は、上記剥離工程において剥離させた電極体20が再び接着されないよう、比較的ゆっくり加圧することが好ましい。電池組立体の大きさ等により異なるため、一概には言えないが、加圧速度は、例えば5000Pa/min以上80000Pa/min以下に設定するとよい。
【0063】
加圧工程を実施する場合には、上記したように比較的ゆっくり加圧するように制御できる方法によって実施されればよく、加圧の手段は特に限定されない。例えば、封口板14の注液孔15にノズルの一方を取り付けて、他方を気体が貯留されたタンクに接続する。この状態で、タンクに貯留されている気体を、制御しながら電池組立体の内部に導入することにより、大気圧程度まで加圧(復圧)することができる。ここで導入される気体は、従来と同様であってよく、例えば、窒素(N2)等の不活性ガス、乾燥空気等が挙げられる。
【0064】
(4)注液工程S30
注液工程S30は、電池組立体の内部に電解液を注液する工程である。ここに開示される技術においては、上記した剥離工程S20によって正極板22および負極板24と、セパレータ26とが剥離された状態であり、かかる状態の電極体20に電解液を注液することにより、電解液の注液時間の短縮と、電極体20への電解液の含浸が不均一となることを抑制することができる。
【0065】
(a)第2減圧処理
第2減圧処理は、上記した加圧工程を実施した場合において、後述する注液処理を好適に実施するために、電池組立体の内部を減圧する処理である。当該第2減圧処理は、ここに開示される技術において必須の処理ではなく、適宜省略することも可能である。例えば、上記第1減圧処理の実施後(すなわち、減圧状態を維持した状態で)後述する注液処理を実施してもよい。また、加圧工程後、第2減圧処理を実施せずに後述する注液処理を実施してもよい。加圧工程を実施した場合において、第2減圧処理を実施することにより、電池組立体を減圧した状態で注液処理を実施できる。これにより、注液処理の時間が短縮され、かつ、電極体20の内部まで均一に電解液が浸透しやすくなるため好ましい。
【0066】
第2減圧処理は、注液処理が好適に実施されるように電池組立体の内部が減圧される限り、特に限定されない。例えば、電池組立体の内部の圧力は、絶対圧力で5~50kPa程度となるように減圧するとよい。上記減圧状態を保持する時間は、例えば、約100秒~400秒で程度を目安に設定することができる。また、減圧速度は、例えば、1kPa/min以上800kPa/min以下に設定するとよい。なお、第2減圧処理の減圧の手段は特に限定されず、上記した第1減圧処理と同様の手段を用いて減圧するとよい。
【0067】
(b)注液処理
注液処理は、電池組立体の内部に電解液を注液する処理である。当該注液処理は、大気圧雰囲気で実施されてもよいし、減圧雰囲気で実施されてもよい。好ましくは、減圧雰囲気で実施されるとよい。これにより、電解液をより早く注液することができる。注液処理では、電解液が電極体20の全体にいきわたる分量となるよう電解液を注液する。当該注液処理は、従来公知の電解液注液装置を適宜利用することができる。なお、このとき、電解液を圧送するために用いられ得る圧送ガスとしては、従来と同様、窒素(N2)等の不活性ガス、乾燥空気等が挙げられる。
電解液の注液後、電池組立体の封口板14の注液孔15を封止する。注液孔15の封止は、当該注液孔15に適合した形状の封止部材16を組み付けることによって実施することができる。これにより、密閉された二次電池100を構築することができる。
【0068】
(5)初期充電工程
ここに開示される製造方法においては、上記注液工程S30の後に、初期充電工程を好ましく行うことができる。より好ましい一態様では、上記構築した二次電池100を拘束した状態で初期充電工程を実施するとよい。二次電池100の拘束は、外装体12の長側壁12b(
図2参照)を短辺方向Xに沿って所定の大きさの荷重を付与することによって実施することができる。初期充電の条件は、従来と同様であってよい。例えば、二次電池100は、拘束された状態において、電池駆動電圧範囲を0.1~2Cの充電レートで充電及び放電するサイクルを、1~5回程度実施するとよい。以上のようにして、二次電池100を製造することができる。
【0069】
ここに開示される製造方法は、例えば、電解液の含浸に時間のかかる面積の大きな電極を備える高容量タイプの密閉型電池において好ましく用いることができる。また、かかる製造方法によって製造される二次電池100は、各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(BEV)等が挙げられる。また、二次電池100は、組電池の構築に好適に用いることができる。
【0070】
3.他の実施形態
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。以下、ここに開示される技術の他の実施形態について説明する。
【0071】
上述の実施形態に係る二次電池100は、電池ケース10の内部に1個の電極体20が収容されている。しかしながら、ここに開示される技術は、上述の実施形態に限定されない。例えば、二次電池は、電池ケースの内部に複数の電極体を有していてもよい。
【0072】
図10は、他の実施形態に係る二次電池200の
図4の対応図である。二次電池200は、電極体20を複数有していること以外、上記した二次電池100と同様の構成であってよい。1つの電池ケース10に収容される電極体の数は、2つ以上の複数であれば特に限定されず、図示されるように3つであってもよいし、4つ以上であってもよい。複数個(ここでは3つ)の電極体20を有する場合には、
図10に示すように、各電極体の平坦部20fが対向するように並列に配置するとよい。
【0073】
1つの電池ケース10内に複数の電極体20を有している場合には、1つの電極体よりも重量が重くなりがちである。概ね1kg以上、例えば1.5kg以上、さらには2~3kgである場合には、上記配置工程S10において
図11に示すように、外装体12の長側壁12bが重力方向と交差するように(外装体12を横向きに)配置して、電極体20を外装体12に挿入するとよい。また、1つの電池ケース10内に複数の電極体20を有している場合には、少なくとも1つの電極体20に剥離領域が形成されるように、上記剥離工程S20を実施するとよい。
【0074】
<試験例>
以下、本発明に関する試験例を説明する。なお、以下に記載する試験例の内容は、本発明を限定することを意図したものではない。
【0075】
1.配置工程
正極活物質粉末としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2と、導電材としてのアセチレンブラック(AB)と、バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)との質量比が、97.5:1.5:1.0となるように秤量し、これらの材料を溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)に分散させてペースト状の正極活物質層形成用組成物を調製した。該組成物を帯状の正極芯体(アルミニウム箔)の両面に塗布し、乾燥させることで正極芯体上に正極活物質層を備える、帯状の正極板を作製した。
負極活物質としての天然黒鉛(C)と、バインダとしてのスチレンブタジエンゴム(SBR)と、増粘剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)との質量比が、98.3:0.7:1.0となるように秤量し、これらの材料を溶媒としてのイオン交換水に分散させてペースト状の負極活物質層形成用組成物を調製した。該組成物を帯状の負極芯体(銅箔)の両面に塗布し、乾燥させることで負極芯体上に負極活物質層を備える、帯状の負極板を作製した。
また、セパレータとしては、ポリエチレン(PE)製の多孔質基材層の表面(両面)にアルミナ粉末とポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを含む接着層が形成されたものを使用した。なお、セパレータは接着層の厚みが異なるものを2種類用意した。
【0076】
上記用意したセパレータを介して、上記作製した帯状の正極板および帯状の負極板を積層させた積層体を作製し、当該積層体を巻回することによって筒状体を作製した。そして巻回後の積層体をプレス成形処理を実施して押しつぶすことにより、扁平形状の巻回電極体を作製した。作製した巻回電極体に正極端子および負極端子を接続し、注液口を有する電池ケースに配置した。これにより、評価用電池組立体を作製した。
【0077】
2.剥離工程および加圧工程
本試験では、上記用意した評価用電池組立体に対して、加熱処理と第1減圧処理の条件を変更して剥離工程を実施し、その後加圧工程を実施した。
【0078】
(1)実施例1
まず、上記作製した評価用電池組立体に対して、加熱処理を実施した。加熱処理は、昇温速度5℃/min、最高温度105℃、最高温度維持時間3.5時間の条件で実施した。次いで、加熱開始4時間後に、第1減圧処理を実施した。第1減圧処理は、減圧速度90kPa/min、評価用電池組立体の内部の圧力を絶対圧力で10Paまで減圧し、減圧維持時間を4時間の条件で実施した。第1減圧処理後、大気圧まで加圧(復圧)する加圧工程を実施した。なお、加圧速度は5000Pa/minに設定した。
【0079】
(2)実施例2
まず、上記作製した評評価用電池組立体に対して、加熱処理を実施した。加熱処理は、実施例1と同様の条件で実施した。次いで、加熱開始4時間後に、第1減圧処理を実施した。第1減圧処理は、実施例1と同様の条件で実施した。第1減圧処理後、大気圧まで加圧(復圧)する加圧工程を実施した。なお、加圧速度は80000Pa/minに設定した。
【0080】
(3)実施例3
まず、上記作製した評評価用電池組立体に対して、加熱処理を実施した。加熱処理は、実施例1と同様の条件で実施した。次いで、加熱開始4時間後に、第1減圧処理を実施した。第1減圧処理後、大気圧まで加圧(復圧)する加圧工程を実施した。第1減圧処理および加圧工程は、実施例1と同様の条件で実施した。なお、実施例3は、セパレータの接着層の厚みを実施例1よりも厚くした。
【0081】
(4)実施例4
まず、上記作製した評価用電池組立体に対して、加熱処理を実施した。加熱処理は、最高温度を90℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で実施した。次いで、加熱開始4時間後に、第1減圧処理を実施した。第1減圧処理後、大気圧まで加圧(復圧)する加圧工程を実施した。第1減圧処理および加圧工程は、実施例1と同様の条件で実施した。
【0082】
(5)比較例1
まず、上記作製した評価用電池組立体に対して、加熱処理を実施した。加熱処理は、実施例1と同様の条件で実施した。次いで、加熱開始4時間後に、第1減圧処理を実施した。第1減圧処理は、減圧速度を10kPa/minに変更したこと以外は実施例1と同様の条件で実施した。第1減圧処理後、大気圧まで加圧(復圧)する加圧工程を実施例1と同様の条件で実施した。
【0083】
(6)比較例2
まず、上記作製した評価用電池組立体に対して、加熱処理を実施した。加熱処理は、実施例1と同様の条件で実施した。次いで、加熱開始4時間後に、第1減圧処理を実施した。第1減圧処理は、減圧速度を20kPa/minに変更したこと以外は実施例1と同様の条件で実施した。第1減圧処理後、大気圧まで加圧(復圧)する加圧工程を実施例1と同様の条件で実施した。
【0084】
(7)比較例3
まず、上記作製した評価用電池組立体に対して、加熱処理を実施した。加熱処理は、最高温度を60℃に変更したこと以外は、実施例1と同様の条件で実施した。次いで、加熱開始4時間後に、第1減圧処理を実施した。第1減圧処理後、大気圧まで加圧(復圧)する加圧工程を実施した。第1減圧処理および加圧工程は、実施例1と同様の条件で実施した。
【0085】
(8)X線CT画像の取得
上記用意した各実施例および各比較例の巻回電極体の中央部(巻回軸方向の中央部)において、X線CT装置(東芝ITコントロールシステム社製)を用いて巻回軸に対して垂直な断面を撮影し、各実施例および各比較例のX線CT画像を取得した。そして、当該X線CT画像において、電極体20の平坦部20fにおいて、剥離領域の有無を確認した。
電極体20の平坦部20fにおいて、正極板22の積層方向において隣接する2層の正極板22の一方の正極板22の厚み方向の中心と他方の正極板22の厚み方向の中心との距離を距離D(μm)する。前述の2つの中心の間に存在する各部材の合計の厚み(一方の正極板22の厚みの半分、一方のセパレータ26の厚み、負極板24の厚み、他方のセパレータ26の厚み、及び他方の正極板22の厚みの半分の合計の厚み)を、厚みT(μm)とする。そして、距離D(μm)が、厚みT(μm)よりも30μm以上大きい部分には剥離領域が存在すると判断した。結果を表1に示す。
【0086】
3.注液工程
剥離工程の条件を上記したように変更した各実施例および各比較例に対して、注液工程を実施した。注液工程で用いる電解液は、エチレンカーボネート(EC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)と、ジメチルカーボネート(DMC)とをEC:EMC:DMC=3:4:3の体積比で含む混合溶媒に、支持塩としてのLiPF6を、1.1mol/Lの濃度で溶解したものを用意した。注液工程は、評価用電池組立体の内部の圧力を絶対圧力で5kPaまで減圧する第2減圧処理を実施し、その後、上記した電解液を注液する注液処理を実施した。
注液工程において、注液が完了するまでの時間を計測した。比較例1の注液時間を1としたときの各実施例および各比較例の注液時間の比を表1に示す。
【0087】
【0088】
4.試験結果
剥離工程において、加熱処理の最高温度が80℃以上であり、第1減圧処理の減圧速度が30~100kPa/minである実施例1~4は、注液時間が比較例と比べて非常に短くなっていることがわかる。これは、上記した条件で加熱処理および第1減圧処理を実施することにより、正極板とセパレータ、および、負極板とセパレータとが剥離し、電極体に剥離領域が形成された状態となったことで、電解液が含浸しやすくなったためと推測される。したがって、適切な剥離工程を有することにより、信頼性の高い二次電池をより効率よく製造することができる。
【0089】
なお、電極体20の平坦部20fにおいて、積層方向において隣接する2層の正極板22のそれぞれの正極芯体22cの間に存在する、一方の正極活物質層22a、一方のセパレータ26、負極板24、他方のセパレータ26、及び他方の正極活物質層22aを一つのユニットとする。当該ユニット内に存在する正極板22とセパレータ26の境界面及び負極板24とセパレータ26の境界面の少なくとも一方に剥離領域が形成されたユニットが、電極体20の平坦部20fにおいて、3ユニット以上形成されていることが好ましく、5ユニット以上形成されていることが好ましい。
一つの電極体20の平坦部20fにおいて、正極板22の総積層数がN層である場合、剥離領域が形成されたユニットが0.1N以上形成されていることが好ましく、0.2N以上形成されていることがより好ましい。
電極体20の巻回軸方向の中央部において巻回軸に対して垂直な断面において、剥離領域の幅は、10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましく、30mm以上であることがさらに好ましい。
電極体20の巻回軸方向の中央部において巻回軸に対して垂直な断面において、電極体20の平坦部20fにおける正極板22の幅を幅W2(mm)とし、一つの層における剥離領域の幅を幅W3(mm)とした場合、W3/W2が0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましく、0.3以上であることがさらに好ましい。
【0090】
以上、本発明を詳細に説明したが、上述の説明は例示にすぎない。すなわち、ここで開示される技術には、上述した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0091】
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板(蓋体)
15 注液孔
16 封止部材
17 ガス排出弁
20 電極体
22 正極板
24 負極板
26 セパレータ
26a 基材層
26b 接着層
30 正極端子
40 負極端子
50 正極集電部
60 負極集電部
100 二次電池
200 二次電池