(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】新規ポリシロキサン組成物およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20240723BHJP
C08K 5/541 20060101ALI20240723BHJP
C08L 83/06 20060101ALI20240723BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20240723BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08L83/04
C08K5/541
C08L83/06
G02B1/111
C09D183/04
(21)【出願番号】P 2021502854
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 FI2019050552
(87)【国際公開番号】W WO2020016485
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-06-08
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516381895
【氏名又は名称】インクロン オサケユキチュア
【氏名又は名称原語表記】INKRON OY
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ユリ ポーラサリ
(72)【発明者】
【氏名】ユハ ランタラ
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-284997(JP,A)
【文献】国際公開第2011/049246(WO,A1)
【文献】特開2007-008915(JP,A)
【文献】特開2005-216895(JP,A)
【文献】特表2009-540084(JP,A)
【文献】特表2018-501339(JP,A)
【文献】特表2016-531905(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013611(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0075428(KR,A)
【文献】特開2011-231073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08J
C08G
C09D
G02B
A61K
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサンと、1mbar以下の圧力での沸点が少なくとも80℃であるヒドロキシアルキルシランとを含む、フィルムを製造するためのポリシロキサン組成物であって、
前記ポリシロキサンが、500~1,500,000g/molの平均分子量(M
W)を有するポリマーであり、
前記ヒドロキシアルキルシランが式II:
【化1】
(式中、
A
1およびA
2は、独立して、C
6-C
30の直鎖状または分岐状アルキル基から選択される第三級ヒドロキシアルキル鎖であり、
n1は1~10までの整数であり、
R
1
、R
2
、R
3
およびR
4
は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基から選択される)
を有し、
前記ヒドロキシアルキルシランが、0.001~0.5mbarの圧力で、80~250℃の沸点を有する、
組成物。
【請求項2】
A
1およびA
2は、独立して、C
6-C
30の直鎖状または分岐状アルキル基から選択される第三級ヒドロキシアルキル鎖であって、1~3個の二重結合または三重結合を含有し、少なくとも1個の第三級ヒドロキシル基を有する第三級ヒドロキシアルキル鎖である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R
1
、R
2
、R
3
およびR
4
は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基であって、C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10脂環式基から選択される基で一置換、二置換または三置換されているアリール基から選択される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルキルシランが、前記シランのケイ素原子に結合した非加水分解性ヒドロカルビル基を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキルシランが式IIIを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物:
【化2】
(式中、
Aは、6~30個の炭素原子を有
し、さらに少なくとも1個の第三級ヒドロキシル基を含む直鎖状または分岐状アルキル鎖を表し、
n2は
1~10までの整数であり;
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基から選択される)。
【請求項6】
Aは、6~30個の炭素原子を有し、1~3個の二重結合または三重結合を有し、さらに少なくとも1個の第三級ヒドロキシル基を含む直鎖状または分岐状アルキル鎖を表す、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基であって、C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10脂環式基から選択される基で一置換、二置換または三置換されているアリール基から選択される、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
さらにα,ω-ビスヒドロキシアルキル-オリゴ(アルキルシロキサン)を含み、前記アルキル基が直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、および3~11個の炭素原子を有する環式アルキル基から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記α,ω-ビス(ヒドロキシアルキル)-オリゴ(アルキルシロキサン)が、式Vを有する直鎖状シロキサンである、請求項8に記載の組成物:
【化3】
(式中、
nは1~20までの、特に3~20までの整数であり
R
11およびR
12は、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基である)。
【請求項10】
R
11およびR
12は、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基であり、前記アルキル鎖は、二重結合または三重結合の形で不飽和を含有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記α,ω-ビス(ヒドロキシアルキル)-オリゴ(アルキルシロキサン)が、前記式Vを有する直鎖状α,ω-ビス(ヒドロキシ)-ジアルキルシロキサンであり、nが3~15までの整数であり、R
11およびR
12が請求項9または10と同じ意味を有する請求項8~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記ポリシロキサン10重量部に基づいて、
前記ヒドロキシアルキルシランを3~150部含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
ポリシロキサン10重量部に基づいて、前記α,ω-ビスヒドロキシアルキル-オリゴ(アルキルシロキサン)を1~150部含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ポリシロキサンが、式IVを有するシランモノマーの加水分解および縮合または共縮合によって得られる、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物:
【化4】
(式中、
Z
1、Z
2
およびZ
3
は、独立して、
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、塩素原子およびアセトキシ基であって、さらに、塩素原子以外は、C
1
-C
10
アルキル基、分岐状C
3
-C
10
アルキル基、C
3
-C
10
脂環式基、および5~20個の炭素原子を有するアリール基から選択される非加水分解性基で置換されている、これらの基からなる群の加水分解性基より選択され
、
Z
4
は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、塩素原子およびアセトキシ基からなる群の加水分解性基より選択される)。)。
【請求項15】
式IVの少なくとも2つのモノマーが、二価C
1-C
10脂肪族基または芳香族基から選択される非加水分解性基で結合されている、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリシロキサンポリマーの屈折率が、632.9nmでの測定で、1.45以下である、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物全体の1~99.9重量%の溶媒をさらに含み、前記溶媒が、アルキル、エステル、ケトン、エーテルまたはアルコール溶媒タイプの極性溶媒、非極性溶媒、プロトン性溶媒または非プロトン性溶媒から選択される、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記溶媒が、t-アミルアルコール、メチルイソブチルカルビトール、メチルイソブチルケトンおよびオクタメチルトリシロキサンの混合物である、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
フッ素系界面活性剤、シロキサン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、アニオン系もしくはカチオン系界面活性剤、または双性イオン系界面活性剤から選択される0.001~10重量%の界面活性剤をさらに含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記ヒドロキシアルキルシランが、硬化条件下で加水分解または縮合を受けることができるケイ素原子(単数または複数)に結合した側基を含まない、請求項1~19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
熱および光誘起ラジカル触媒、スズおよび白金含有触媒、アルカリおよびアルカリ放出触媒、酸触媒および熱または光放出酸触媒、およびフッ素イオン放出触媒の群から選択される0.001~10重量%の1種または複数種の硬化触媒をさらに含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
以下の工程を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリシロキサン組成物を製造する方法:
非架橋ポリシロキサンポリマーを提供する工程;ならびに
前記ポリシロキサンポリマーと、前記非架橋ポリシロキサンを少なくとも部分的に溶解することができるヒドロキシアルキルシランとを混合する工程であって、前記ヒドロキシアルキルシランの1mbar以下の圧力での沸点が80℃以上である、工程。
【請求項23】
以下の工程を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のポリシロキサン組成物を製造する方法:
非架橋ポリシロキサンポリマーを提供する工程;ならびに
前記ポリシロキサンポリマーと、前記非架橋ポリシロキサンを少なくとも部分的に溶解することができるヒドロキシアルキルシランとを、前記非架橋ポリシロキサン用の非極性溶媒と共に混合する工程であって、前記ヒドロキシアルキルシランの1mbar以下の圧力での沸点が80℃以上である、工程。
【請求項24】
以下の工程を含む、屈折率が1.4以下の多孔質ポリシロキサンフィルムを製造する方法:
請求項1~21のいずれか一項に記載のポリシロキサン組成物を提供する工程;
前記組成物を基板上に堆積させ、堆積ポリシロキサン層を提供する工程;
前記ポリシロキサン層を加熱し、前記ポリシロキサン成分を硬化させる工程;および
加熱中に前記ヒドロキシアルキルシランを蒸発除去させ、前記基板上に多孔質ポリシロキサンフィルムを形成する工程。
【請求項25】
導光光学系、誘電体スタック、共振器構造、OLEDおよびLED素子、ならびにその他光学機器における反射防止コーティングフィルムを製造するための、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項26】
ナノ粒子および蛍光体粒子用の反射防止コーティングフィルムを製造するための、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項27】
半導体デバイスにおける低誘電体フィルムとしての、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項28】
キャッピング層と組み合わせた低誘電体フィルムまたは低RIフィルムとしての、請求項1~21のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低屈折率フィルムを形成することが可能なポリシロキサン組成物に関する。特に、本発明は、多孔質シロキサン樹脂を含むポリシロキサン組成物およびそのような材料から製造されるフィルムに関する。本発明は、例えば、導光光学系、誘電体スタック、共振器構造、およびその他光学機器における反射防止コーティングフィルムを製造するための組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
低屈折率(RI)は、反射防止(AR)フィルム、導光光学系、誘電体スタック、共振器構造、およびその他関連用途にとって重要な特性である。今日使用されている低RI材料には各種ある。最も単純なのは、従来の材料の中でRIが最も低いと知られている空気であり、そのRIは1.0に近い。空気は半導体デバイスのエアギャップとして使用されることがあるが、機械的完全性に欠けるため、追加の層または構造を支持することはできない。
【0003】
固体の低RI材料に関しては、フッ素系物質が低RIコーティングとして歴史的に使用されてきた。これらには、フッ化マグネシウム鉱物およびフルオロアルキル化ポリマーが含まれ、それらの屈折率は通常は1.3~1.4の間である。フルオロアルキル(PTFE、「テフロン」)タイプの材料も低屈折率であるが、一般的に接着性が悪いという問題がある。
【0004】
その他一般的なARコーティングは、例えば、いわゆるストーバー法によって、アンモニアなどの弱塩基の存在下で、エタノール水溶液中でオルトケイ酸テトラエチルから調製された多孔質SiO2ナノ粒子で構成される。これら溶液は1.25未満の非常に低いRIフィルムを与えるが、それらはフィルム形成ポリマー溶液ではなく顕微鏡的な多孔質球状ナノ粒子粉末で本質的に作られているため、それらは構造的完全性に欠け、素手でもフィルムが簡単に拭き取られる。さらに、これらフィルムは、亀裂閾値が低いために最大フィルム厚が1μm未満になる傾向があり、その用途が非常に制限されている。
【0005】
別のRI技術は、中空シリカナノ粒子を適切なバインダーとブレンドすることを伴う。これら混合物中のバインダーの量を最小限に抑えることで低屈折率を達成することはできるが、その材料では、中空粒子からの光散乱によって引き起こされる許容できないほど高いヘイズが問題となることが多い。
【0006】
理論およびフレネル式によれば、1/4波長の反射防止コーティングの厚さはλ/4に等しくなり、ここで、λは、AR媒質中の光の波長であり、AR媒質の最適なRIは、基板のRIの平方根(√)である。例えば、ソーダ石灰ガラスのRIは1.52であるため、最適なARコーティングのRIは√1.52=1.23、緑色光(550nm)用の厚さは550/1.23/4=112nmとなる。石英に関しては、RI=1.45であり、フッ化マグネシウムMgF2に関してはRI=1.37である。最高の性能を発揮するARコーティングは、それぞれ1.20のRIおよび1.17のRIとさらに低くなければならない。反射防止コーティングの目的のためには、RIが1.3未満、好ましくは1.2未満であり、薄いフィルムとして堆積され得る材料が必要となるであろう。
【0007】
低RIフィルムは、広色域RGB表示の赤および緑の色が青色バックライトに重ねた色固有量子ドット(QD)を使用して作られるLCD画面にも使用される。一般に量子ドットは高価であるため、QD層は2層の低RI(RI<1.25)共振層の間に優先的に挟まれる。この配置により、QDウェル構造層の光学密度を効果的に増加させ、こうすることで薄くすることができる(
図1)。
【0008】
反射防止フィルムとして有用な種々のポリシロキサンコーティングが当該技術分野で知られている。
【0009】
KR20130075428Aは、ナノ層構造の多孔質シリカナノ層を備えることにより、低反射で高硬度、高透過率で高基準屈折率のコーティングフィルムを開示している。このコーティングは、高硬度を図ったポリシロキサンとシリカとのハイブリッドのネットワークの形の多孔質シリカナノ層構造を有する。この材料は微細孔を有し、シリカと空気との体積比で調整可能な1.3未満の低屈折率を持つ。
【0010】
WO2011013611A1は、活性エネルギー線により硬化可能な感光性樹脂組成物を開示している。この感光性組成物は、硬度が高く、耐引っかき性、密着性、耐薬品性、耐汚染性および透明性に優れ、かつ屈折率が低い硬化生成物を提供することができる。さらに、このフィルムは、感光性樹脂組成物から、樹脂組成物の硬化により調製することができるハードコートフィルムの形で作られており、この樹脂組成物は、分子内に少なくとも3個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性(メタ)アクリレートと、平均粒径1~200nmのナノ多孔質構造を有するコロイド状シリカと、(メタ)アクリロイル含有ポリシロキサンと、光ラジカル重合開始剤とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
EP1559761A1は、半導体プロセスにおいて通常採用されている方法で、機械的強度および誘電特性が良好な多孔質フィルムを形成するための、ならびにフィルム厚が自由に制御されるフィルムを容易に形成するためのコーティング溶液を開示している。多孔質フィルム組成物は、ポリシロキサン、シリカまたはゼオライト粒子を含む。
【0012】
記載されるように、既知材料の屈折率はまだかなり高い。さらに、既知材料で使用される小サイズの無機粒子は、サイズが様々な粒子の混合物として常に存在する。そのような粒子をポリマーとブレンドすると、不均一な微細構造および多孔性を有するフィルムを生じさせる組成物が得られる。これは、特に厚さがミクロン範囲のフィルムを製造する際に、フィルムの品質にばらつきを生じさせる原因となる。さらに、ガラス基板およびポリマー基板の両方を含む多種多様な基板に対する屈折防止フィルムを獲得するために使用され得る材料をどのように調整するかについては、当該技術分野では教示されていない。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、低屈折コーティングフィルムを調製するための新規組成物を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、超ミクロン範囲の厚さの層として調製され得る新規低屈折率フィルムを提供することである。
【0015】
本発明の第3の目的は、低屈折フィルムを製造する方法を提供することである。
【0016】
驚くべきことに、低屈折率および任意選択で低誘電率の点でも良好な特性を有するフィルムは、ポリシロキサン成分に加えて、組成物の加熱により蒸発除去可能なヒドロキシアルキルシランを混合したシロキサン組成物を提供することにより獲得され得ることが判明した。したがって、ポリシロキサン樹脂フィルムを形成するためにポリシロキサン成分を硬化させる工程中にそのような組成物を加熱することにより、多孔質ポリシロキサンのフィルムまたは層を得ることができる。通常、材料は、シロキサン10重量部に基づいて、ヒドロキシアルキルシランを3~150重量部を含む。
【0017】
一実施形態では、シロキサン組成物は、例えば、シランモノマーの従来の加水分解および縮合重合によって非架橋ポリシロキサンポリマーを得ることでシロキサンポリマーを提供すること、ならびにポリシロキサンと、非架橋ポリシロキサンを少なくとも部分的に溶解することができるヒドロキシアルキルシランとを、任意選択で非架橋ポリシロキサン用の非極性溶媒と共に混合することによって製造される。
【0018】
ヒドロキシアルキルシランは、それらが組成物の加熱中に蒸発除去され、基板上に多孔質ポリシロキサンフィルムが形成され得るように選択される。
【0019】
選択されたヒドロキシアルキルシランの沸点は主に70℃以上であるが、通常は、1mbar以下の圧力で250℃以下、特に少なくとも80℃である。好ましくは、それらは、硬化条件下で加水分解または縮合を受けることができるケイ素原子(単数または複数)に結合した側基を持たない。そのような材料は、本文脈では「揮発性」化合物と呼ばれる。
【0020】
揮発性成分の蒸発により、低屈折率および低誘電率の特性を有する多孔質ポリシロキサン構造体が得られる。通常、多孔質ポリシロキサン樹脂は、屈折率が1.4以下、例えば1.3以下であり、誘電率が1.5以下、例えば1.4以下である材料を与えることができる。
【0021】
本発明の組成物は、反射防止フィルム、導光光学系、誘電体スタック、共振器構造、およびその他光学機器におけるコーティングの形態で使用され得る。
【0022】
より具体的には、本発明は、独立請求項の特徴部分に記載されていることを特徴とする。
【0023】
本発明により、かなりの利点が得られる。フィルムを製造するためのスピンオン技法を使用することにより、1.06という低い屈折率を本発明の組成物で達成することができ、前記スピンオンは、スピンナーおよびホットプレートまたはオーブンでも実施される。ヒドロキシアルキルシランが蒸発する前にポリシロキサンポリマーは硬化して固まり、ナノ多孔質構造を残すことができる。
【0024】
可撓性付与剤として機能する直鎖短鎖ポリシロキサンなどの成分をさらに組み込むことにより、1.4未満の屈折率および任意選択で1.5未満の誘電率と併せて少なくとも3.5μmの厚さを有する亀裂のないフィルムを提供することができる。
【0025】
さらに、本発明の組成物は、上記の用途に必要な機械的完全性を有するフィルムを製造することができる。
【0026】
予想外に、ヒドロキシアルキルシランは、ポリシロキサンとの良好な相溶性を有することが判明した。ヒドロキシアルキルシランは、表面張力が低く、収縮率が低いため、良好な濡れ特性を与える。さらに、ヒドロキシアルキルシランのヒドロキシ基が三級であるとき、それはポリマーのシラノール基とは全くカップリングせず、きれいに蒸発する。細孔の分布が細かいため、フィルムのヘイズが少ない。フィルムは、多孔性が崩壊したり、RIが変化することなく800℃までの熱に耐えることができるため、熱安定性に優れている。
【0027】
ヒドロキシアルキル基のアルキル部分の長さを選択することで、基板の熱特性に合わせてヒドロキシアルキルシランの蒸発速度を調整することができる。例えば、多くのプラスチックは130℃未満でしか変形させずに硬化させることができないため、アルキル鎖は短くなり得るが、ガラスなどの無機基板はより高い温度で硬化させることができるため、アルキル部分の長さを長くすることができる。
【0028】
本発明の技術のさらなる特徴および利点は、いくつかの実施形態を参照して、以下でより詳細に論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】広色域RGB表示の赤および緑の色が青色バックライトに重ねた色固有量子ドット(QD)を使用して作られるLCD画面の構造を概略的に示す図である。
【
図2】実施例7の材料の屈折率に対する硬化温度の影響を示す図である。
【
図3】実施例1のシロキサンポリマー1部と(1-(3´-ヒドロキシ-3´,7´,11´,15´-テトラメチルヘキサデシル)-1,1,3,3,3-ペンタメチルジシロキサン(iPhPMDS、実施例2)10部との組成物から調製され、230℃/30分で硬化された、RIが1.08のフィルムのSEM画像である;
【
図4】2枚のプレート(A)と(B)とを平行に並べた写真の側面図であって、プレートは実施例11で説明するようにコーティングされている。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上述したように、本発明の技術は、全体として、ポリシロキサン10重量部に基づいて、ポリシロキサンフィルムを形成するための組成物の加工中に蒸発除去することができるヒドロキシアルキルシランを3~150重量部、例えば5~100重量部含むポリシロキサン組成物に関する。したがって、本発明の技術の実施形態では、ヒドロキシアルキルシランの沸点は、ポリシロキサンフィルムの硬化に使用される温度範囲内にある。一般に、ヒドロキシアルキルシランの沸点は、少なくとも80℃である。実施形態では、ヒドロキシアルキルシランは、1mbar以下の圧力で、80~250℃、特に80~180℃、または100~150℃の範囲内にある沸点を有する。通常、圧力は0.001~0.5mbar、特に0.01~0.1mbarの範囲である。
【0031】
製造された材料は、低屈折率および低誘電率を有し、それらは多孔質、特にナノ多孔質である。
【0032】
一実施形態では、ポリシロキサン組成物は、ポリシロキサン10重量部に基づいて、α,ω-ビス(ヒドロキシ)-オリゴ(アルキルシロキサン)を1~150重量部、特に2~100重量部、例えば5~50重量部含む。
【0033】
一実施形態では、ポリシロキサン組成物は、ポリシロキサン10重量部に基づいて、1mbar以下の圧力での沸点が少なくとも80℃であるヒドロキシアルキルシランを3~150部、例えば5~100部、特に10~80重量部、およびα,ω-ビス(ヒドロキシ)-オリゴ(アルキルシロキサン)を1~150部、特に2~100部、例えば5~50重量部含む。
【0034】
上記の実施形態において、用語「アルキル」は、一般に、30個以下、通常は25個以下、例えば20個以下の炭素原子を有する直鎖状または分岐状の、環式または脂環式の脂肪族アルキル基を表す。例としては、任意選択で置換された直鎖状C1-C10アルキル基、分岐状C3-C10アルキル基、環式または脂環式C3-C10アルキル基が挙げられる。アルキル鎖は、例えば二重結合または三重結合の形で不飽和を含有し得る。
【0035】
「ヒドロキシアルキルシラン」および「オリゴ(アルキルシロキサン)基」において、各ケイ素原子は、2個以上のアルキル基を含有することができる。
【0036】
「オリゴ」は、3~20個、特に3~15個、例えば4~10個の基を表す。
【0037】
低屈折率さらには「超低」屈折率、および低誘電率さらには「超低」誘電率の本発明の実施形態によるコーティングフィルムを得るために、ポリシロキサン-シリカハイブリッドのネットワークと平均細孔サイズがナノメートル範囲の複数の細孔とを示す多孔質の層状多孔質構造が提供される。すなわち、材料の細孔は、主に、1000nm未満、通常は約50~950nm、例えば100~900nm、または150~750nmの最大内径である。そのような多孔質フィルムまたは層は、細孔の内部に空気を含み、それらは屈折率を示し、通常、空気そのものの誘電率にさえ近い低誘電率も示す。屈折率は一般的に1.5未満であり、誘電率は1.5未満である。
【0038】
フィルムの屈折率は従来の方法で、例えばWoollamエリプソメーター(例えばWoollam分光エリプソメーター)を用いて、約600nm以上の波長、例えば632.9nm(すなわち約633nm)の波長で測定することができる。
【0039】
平均分子量は、重量平均分子量、または略して「MW」として与えられる。
【0040】
一実施形態では、多孔質ポリシロキサン層の空気含有量は、30体積%超、特に40体積%超、例えば少なくとも60体積%以上である。さらに、ポリシロキサン層は、ポリシロキサン対空気体積比に応じて、1.4以下の屈折率を有する。
【0041】
一実施形態では、ヒドロキシアルキルシランは、シランのケイ素原子に結合した非加水分解性ヒドロカルビル基を含む。
【0042】
以下の構造は、式Iで表されるシロキサンポリマーを例示している。
【化1】
(式中、
Rの各々は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、および5~20個の炭素原子を有するアリール基であるヒドロカルビルラジカルを示し、前記アリール基は、任意選択で1~10個の炭素原子を有するアルキル基で一、二、三または多置換されており、波線は、任意選択で置換されているシロキサン鎖の残基を表す)。
【0043】
本発明の技術の実施形態では、直鎖状または分岐状アルキル鎖の長さを指定するためにそれぞれ使用される用語「短」および「長」は、通常は1~6個の炭素原子(「短鎖」の場合)および7~30個の炭素原子(「長鎖」の場合)を表す。
【0044】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシアルキルシランは、式IIの構造を有する:
【化2】
(式中、
A
1およびA
2は、独立して、C
6-C
30の直鎖状または分岐状アルキル基から選択される第三級ヒドロキシアルキル鎖であって、任意選択で1~3個の二重結合または三重結合を含有し、少なくとも1個の第三級ヒドロキシル基を有する第三級ヒドロキシアルキル鎖であり;
n1は0~10までの整数であり;
R
1、R
2、R
3、R
4は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基であって、任意選択で、C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10脂環式基から選択される基で一置換、二置換または三置換されているアリール基から選択され;
他の実施形態では、ヒドロキシアルキルシランは、式IIIを有する
【化3】
(式中、
Aは、6~30個の炭素原子を有し、任意選択で1~3個の二重結合または三重結合を有し、さらに少なくとも1個の第三級ヒドロキシル基を含む直鎖状または分岐状アルキル鎖を表し、
n2は0~10までの整数であり;
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基であって、任意選択で、C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10脂環式基から選択される基で一置換、二置換または三置換されているアリール基から選択される)。
【0045】
一実施形態では、式IIおよびIIIのヒドロキシアルキルシランは、それぞれ、1mbar以下の圧力での沸点が少なくとも80℃、特に100℃以上(例えば105℃以上180℃以下)である。
【0046】
一実施形態では、本発明の組成物は、式IIおよび式IIIの両方のヒドロキシアルキルシランを含む。
【0047】
式IIおよびIIIの分子は、簡潔にするために、「ヒドロアルキルシラン」という呼称を与えられているが、記号n1およびn2の値によっては「シロキサン」残基を含む場合もあることに留意されたい。
【0048】
通常、硬化条件下で加水分解または縮合を受けることができるケイ素原子(単数または複数)に結合した側基は存在しない。
【0049】
予想外に、式IIおよび/またはIIIの化合物などのヒドロキシアルキルシランは、ポリシロキサンとの良好な相溶性を有することが判明した。ヒドロキシアルキルシランは、一般にシランの低い表面張力に起因するとみられる良好な濡れ性を与える。ヒドロキシアルキルシラン(単数または複数)は、シランモノマー(単数または複数)の加水分解および縮合後に得られるポリシロキサンプレポリマーの溶媒または分散剤として機能することになる。
【0050】
さらに、ヒドロキシアルキルシランのヒドロキシ基が三級であるとき、それはポリマーのシラノール基とはカップリングせず、きれいに蒸発する。細孔の分布が細かいため、フィルムのヘイズが少ないか、検出できない。形成されたフィルムは、多孔性が崩壊することなく800℃までの熱に耐えることができるため、熱安定性に優れている。
【0051】
一実施形態では、上記式IIおよびIIIのアルキル残基AおよびA1およびA2は、8~25個、例えば10~20個の炭素原子を含有する。
【0052】
一実施形態では、ヒドロキシアルキルシランのヒドロキシアルキル基は、少なくとも10個の炭素原子、例えば少なくとも15個の炭素原子を含み、1mbar以下、例えば0.01~0.1mbarの圧力で少なくとも100℃の沸点に達する。
【0053】
好ましい実施形態では、ヒドロキシアルキルシランは、シランのシリコーン原子に結合した非加水分解性ヒドロカルビルラジカル、好ましくはアルキル基またはアリール基(R1~R5)を含む。
【0054】
一実施形態では、ポリシロキサン樹脂は、500~10,000,000g/mol、特に1,000~1,000,000g/mol、例えば5,000~100,000g/mol、または20,000~50,000g/molの平均分子量(MW)(GPCにより標準ポリスチレンに対して測定)を有するプレポリマーである。プレポリマーは、シランモノマーまたはシランモノマーの混合物の加水分解および縮合もしくは共縮合によって得られるポリシロキサンを含む。
【0055】
本文脈では、用語「プレポリマー」は、まだ硬化または架橋することができるポリシロキサンを指すために使用される。したがって、用語「プレポリマー」は、ポリシロキサンが「非架橋」であること、言い換えれば、固まった、すなわち硬化した構造を得るために架橋反応を受けることができることも意味する。
【0056】
一実施形態では、シランモノマーの少なくとも1つは式IVを有する
【化4】
(式中、
Z
1、Z
2、Z
3およびZ
4は、独立して、加水分解性基、特に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、塩素またはアセトキシ基からなる群の加水分解性基より選択され、前記Z
1、Z
2、およびZ
3基は、任意選択で1個、2個もしくは3個全ての基が、C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10脂環式基、および1~3個の二重結合もしくは三重結合などの不飽和を含有する対応する基、例えばC
2-C
10アルケニル基、または5~20個の炭素原子を有するアリール基から選択される非加水分解性基で置換されている)。非加水分解性基の例の例示列挙には、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ナフチル基およびジエチルフェニル基が含まれる。
【0057】
適切なシランモノマーの例としては、とりわけ、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0058】
本発明の実施形態では、ポリシロキサン組成物は、ポリシロキサンポリマーおよびヒドロキシアルキルシランに加えて、可撓性付与剤として機能する化合物(単数または複数)も含有する。本文脈において、「可撓性付与剤」とは、ポリマーフィルムの亀裂閾値を高めるポリマー添加剤である。
【0059】
一実施形態によれば、可撓性付与剤は、1...20個のケイ素原子を有するα,ω-ビス(ヒドロキシ)-オリゴ(ジメチルシロキサン)などの1つまたは複数のヒドロキシ-オリゴ(ジアルキルシロキサン)を含む。
【0060】
一実施形態では、厚さが少なくとも10nm、例えば少なくとも50nm、特に100nm~25μm、例えば500nm~5μmのポリシロキサンフィルムが提供され、前記フィルムは、多孔質シロキサンフィルムを形成するためにヒドロキシアルキルシランを蒸発除去させることによって得られる。通常、多孔質とは「ナノ多孔質」であり、これは、平均細孔サイズ(最大直径)が約1000nm未満、特に800nm未満、例えば500nm未満、または200nm未満または100nm未満であることを意味する。
【0061】
一実施形態では、可撓性付与剤は、厚さが3.5μm以上、通常は約15μm以下であるが、それでも亀裂に悩まされない多孔質ポリシロキサンを含有するポリマーフィルムの調製を可能にする。そのようなフィルムは、1.4以下の低屈折率、例えば1.03~1.25の屈折率であり、誘電率が1.5以下、特に1.2~1.25である。
【0062】
一実施形態では、α,ω-ビス(ヒドロキシ)-オリゴ(アルキルシロキサン)は、式Vを有する
【化5】
(式中、
nは1~20までの、例えば3~20までの整数であり、
R
11およびR
12は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基から選択され、前記アリール基は、任意選択で1~10個の炭素原子を有するアルキル基で一、二、三または多置換されている。アルキル鎖は、例えば二重結合または三重結合の形で不飽和を含有し得る。
【0063】
式Vのアルキル基は、特に3~10個の炭素原子の直鎖において、1~3個の二重結合または三重結合の形で不飽和を含有し得る。
【0064】
スピンコーティングは、ポリシロキサン樹脂とヒドロキシル-アルキル-シランを含む均一な薄フィルムを平坦な基板に堆積させるために使用するのに適したコーティングを形成するために使用される1つの方法である。基板の中心部に少量のコーティング材料を塗布し、これを低速でスピンさせるか、全くスピンさせないかのいずれかの方法で行う。基板を高速で回転させると、スピンナーが遠心力でコーティング材料を広げる。スピンされた材料は加熱され、スピンキャスティング溶媒を蒸発させる。他の適切な塗布方法としては、とりわけ、ディップコーティング、スプレーコーティング、スリットおよびスロットコーティングが挙げられる。
【0065】
一実施形態によれば、スピンキャスティング溶媒を蒸発除去させた後、基板上に堆積された材料は、硬化した固体ポリシロキサン層を提供するように、ポリシロキサン材料の架橋を達成するために必要な温度を上昇させることで硬化にかけられる。硬化工程の温度は、通常は70~280℃の範囲である。圧力は、減圧または周囲圧力とすることができる。ポリマー基板の場合、通常約70~150℃の範囲の温度が採用されるが、ガラス基板の場合、通常150~280℃の範囲の温度が採用される。
【0066】
一実施形態では、ヒドロキシアルキルシランは、1mbar以下の圧力での沸点が80℃以上である材料から、特に式IIまたはIIIの材料から選択される。スピンされた材料を加熱してフィルムを硬化させると、厚さが3.5μm以下の多孔質ポリシロキサンフィルムが形成される。このように、フィルムを70~280℃で加熱することにより、ポリシロキサンプレポリマーの硬化が達成されるだけでなく、ヒドロキシアルキルシランの蒸発除去も達成される。ヒドロキシアルキシシランは、シロキサンポリマーの少なくとも部分的な硬化が達成された後にのみ除去されるため、非崩壊性の多孔質構造が達成されるであろう。柔軟な直鎖短鎖ヒドロキシル末端ポリシロキサンは亀裂の形成を防ぐため、ヒドロキシアルキルシランと同時に、亀裂のない厚さ1μm以上のフィルムに超低RIおよび超低誘電率の両方を提供する。必要に応じて、二重コーティングも可能である。
【0067】
一実施形態では、0.01~0.1mbarの絶対圧力で70~250℃で蒸発除去する(または蒸留除去する)ヒドロキシアルキルシランが採用される。そのようなヒドロキシアルキルシランでは、スピン基板の表面のパージに使用される気体、通常は空気が、基板上に形成されているフィルムから蒸発しているヒドロキシアルキルシランを拾い上げて逃がす。通常、ヒドロキシアルキルシランの除去は、2~90秒、特に3~60秒以内に完了する。
【0068】
別の実施形態では、組成物は、組成物全体の10~99.9重量%、好ましくは20~99重量%の濃度のスピンキャスティング溶媒をさらに含む。
【0069】
一実施形態では、溶媒は、極性溶媒または非極性溶媒、プロトン性溶媒または非プロトン性溶媒の群より選択される。溶媒の例の例示列挙には、揮発性アルカン、アルケン、芳香族、アルコール、エステル、エーテル、ケトン溶媒、および周囲圧力での沸点が30~300℃の間にある短鎖直鎖、分岐状または環式のジメチルシリコーンが含まれる。好ましくは、溶媒は、t-アミルアルコール、メチルイソブチルカルビトール、メチルイソブチルケトンおよびオクタメチルトリシロキサンの混合物である。
【0070】
別の実施形態では、組成物は、熱もしくは光誘起ラジカル触媒、スズもしくは白金含有触媒、アルカリもしくはアルカリ放出触媒、酸触媒または熱もしくは光放出酸触媒、またはフッ素イオン放出触媒から選択される0.001~10重量%の硬化触媒をさらに含む。
【0071】
別の実施形態では、フッ素系界面活性剤、シロキサン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、アニオン系もしくはカチオン系界面活性剤、または双性イオン系界面活性剤から選択される0.001~10重量%の界面活性剤をさらに含む組成物が提供される。
【0072】
本発明の組成物は、応用分野が広い。誘電体スタックまたは導光光学系用途における低RI層として、ならびに、光学デバイスにおける反射防止コーティング、ナノ粒子および蛍光体粒子のコーティングとしても使用することができる。これらの組成物は、半導体デバイスにおける低誘電体フィルムとしても使用することができる。キャッピング層と組み合わせた低誘電体フィルムまたは低RIフィルムとしての組成物の使用も想定される。
【0073】
以下の非限定的な例は、本発明の実施形態を例示する。
【0074】
フィルムの屈折率は、Woollam分光エリプソメーターで、632.9nmで測定されたものである。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
メタノール(800g)、D-I水(300g)および水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH、25%水溶液、22g)を加熱して沸騰させた。オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、130g)およびメチルトリエトキシシラン(MTEOS、110g)を、撹拌しながらゆっくりと流し込んだ。反応を20分間進行させた後、+4℃まで冷却し、飽和マレイン酸水溶液(40g)で中和した。メタノールの大部分を減圧下で蒸発させた後、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE,1000mL)およびDI-水(500mL)を加え、二相系を得た。上部の有機層をさらにDI-水で3回洗浄しながら、水相を廃棄した。次いで、約12%の溶液が得られるまで揮発性物質を蒸発させた。さらにメチルイソブチルケトンを添加して8wt-%に希釈し、0.45μのPTFEフィルタで濾過した後、冷凍庫に保管した。
【0076】
加水分解および縮合反応の反応スキームは、以下の通りである:
【化6】
波線は、任意選択で置換されているシロキサン鎖の残基を表す。
【0077】
実施例1の手順により、通常は分子量が約20,000~50,000g/molのシロキサンポリマーを製造することができる。
【0078】
(実施例2)
3,7,11,15-テトラメチル-1-ヘキサデセン-3-オール(100g)およびペンタメチルジシロキサン(100g)を、マグネチックスターラー付き500mL丸底フラスコに入れる。白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(2%キシレン溶液)を加え、室温で24時間ヒドロシリル化を触媒する。次いで、生成物を、180℃/0.1mbarの高真空下で蒸留し、きれいで透明な粘性液体(1-(3´-ヒドロキシ-3´,7´,11´,15´-テトラメチルヘキサデシル)-1,1,3,3,3-ペンタメチルジシロキサン、iPhPMDS、189g)を得る。
【化7】
【0079】
(実施例3)
3,7,11,15-テトラメチル-1-ヘキサデセン-3-オール(2g)およびトリエトキシシラン(1.2g)を、20mLのガラスバイアルに入れる。白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(2%キシレン溶液、1滴)を添加し、ヒドロシリル化を触媒する。発熱反応の終了後、GC/MSを実行し、環状型5-メチル-5-(4´,8´,12´-トリメチルトリデシル)-1-オキサ-2,2-ジエトキシ-2-シラシクロペンタン(iPh-c-DEOS)に対応する1つのピークを観測する。LC/GPCは、GC/MSでは検出できないその他2つの小さなピークを示した。分子量に基づいて、それらは二量体種および三量体種であると推定される。
【化8】
【0080】
(実施例4)
リナロール(31g)、ペンタメチルジシロキサン(30g)および2%Karsted-Pt溶液(0.2g)を室温で20時間撹拌する。この溶液を100℃/0.1mbarで真空蒸留し、生成物である1-(3´-ヒドロキシ-3´,7´-ジメチルオクタ-6´-エニル)-1,1,3,3,3-ペンタメチルジシロキサン(LinaPMDS)、58gを得る。
【化9】
【0081】
(実施例5)
リナロール(31g)、テトラメチルジシロキサン(13.4g)および2%Karsted-Pt溶液(0.2g)を室温で20時間撹拌する。この溶液を185℃/0.1mbarで真空蒸留し、生成物である1,3-ビス(3´-ヒドロキシ-3´,7´-ジメチルオクタ-6´-エニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(Lina2TMDS)、41.1gを得る。
【化10】
【0082】
(実施例6)
5xiPhPMDS+3x可撓性付与剤:実施例1の8%ポリマー溶液10g(=0.8gの乾燥ポリマー)を取り、2.4gのDMS-S12(登録商標)(Gelest社からの短鎖シラノール末端pdms)および実施例2のiPhPMDS(4g)と混合した。この溶液を0.45μmのPTFEフィルタで濾過し、600rpm/30秒でスピンキャストした。フィルムを230℃/5分+250℃/15分で硬化させた。別の層を、第1層の上に同様にスピンキャストし硬化させ、合計3.5μmで屈折率1.23の超低屈折フィルムを得る。このフィルムは透明で亀裂のないものであった。
【0083】
(実施例7.LinaPMDSを含有する超低屈折率フィルムの形成)
10xLinaPMDS:実施例1の8%ポリマー溶液10gを取り、実施例4のLinaPMDS(8g)と混合した。この溶液を0.45μmのPTFEフィルタでろ過し、1000rpm/30秒でスピンキャストした。フィルムを150℃~800℃までの様々な温度で硬化させ、硬化温度がフィルムRIに及ぼす影響を確認した。
図1からわかるように、全ての温度で屈折率(RI)>1.2が得られ、230℃でRI=1.115の最小値に達した。フィルムのヘイズ値は0.15未満であり、透明度が高く、ヘイズが低いことを示していた。
【0084】
図1は、硬化温度が屈折率に及ぼす影響を示している。
【0085】
(実施例8.LinaPMDSおよびiPhPMDSを含む超低屈折率フィルムの形成ならびに様々な硬化温度)
10xLina2PMDSまたは10xiPhPMDS:実施例1の8%ポリマー溶液2x10gを取り、Lina2PMDS(8g)およびiPhPMDS(8g)の両方と別々に混合する。この溶液を0.45μmのPTFEフィルタで濾過し、1000rpm/30秒でスピンキャスティングする。フィルムを230℃~800℃までの様々な温度で硬化させ、硬化温度がRIフィルムに及ぼす影響を確認した。下の表からわかるように、全ての温度で屈折率が1.11を超え、最も低いRIは230℃/30分+800℃/5分で硬化したiPhPMDSで1.05857であった。フィルムの多孔性は高温でも崩壊しなかった。SEM画像からは、良好で均質な細孔のナノ構造が明らかになった。フィルムの誘電率は1.41であることがわかった。
【表1】
【0086】
図2は、実施例1のシロキサンポリマー1部と、(1-(3´-ヒドロキシ-3´,7´,11´,15´-テトラメチルヘキサデシル)-1,1,3,3,3-ペンタメチルジシロキサン(iPhPMDS,実施例2)10部との組成物から上述のように調製して230℃/30分で硬化した、RIが1.08の超低RIフィルムのSEM像である。
【0087】
(比較例9.iPh-c-DEOSの加水分解性基が屈折率に及ぼす影響)
5xiPh-c-DEOS:実施例1の8%ポリマー溶液10gを取り、実施例3のiPh-c-DEOS(4g)と混合した。この溶液を0.45μmのPTFEフィルタで濾過し、1000rpm/30秒でスピンキャストした。フィルムを230℃/30分で硬化させた。RI=1.38が測定され、iPh-c-DEOSのケイ素原子にある加水分解性基は低RIフィルムをもたらさず、その代わりにiPh-c-DEOSはフィルム内に永久的に組み込まれてほとんどのナノ細孔を埋めるため、低RI特性を完全に破壊する可能性が高いことを示した。
【0088】
(実施例10-キャッピング層材料:)
TEOS(100g)、MTEOS(200g)、アセトン(300g)、DI-水(100g)および60%HNO3(30mg)を5時間還流した後、トリエチルアミン(75mg)を添加し、GPC(THF中)による測定で分子量が24,000g/molに増加するまで48時間還流を続けた。ギ酸(150mg)を用いてアミンを中和した。
【0089】
この溶液(209g)をメチルイソブチルカルビトール(890g)でさらに希釈し、0.2μのPTFEフィルタで濾過して、スピンキャスティングに適した約3%w/wのキャッピング溶液を得た。150μmのフィルムをスピンコートし、230℃で硬化させた。キャッピング材料のフィルムは、RI=1.39であった。キャッピング材料を使用して、低RIナノ多孔質フィルムの表面を封止し、後続の層のオリゴマー成分が細孔に浸透するのを防いだ。
【0090】
(実施例11-ポリマー、ヒドロキシアルキルシランおよび可撓性付与剤の低RI組成物)
実施例1と同様の低RIポリマー溶液(固形分8.62%、1200g)を、ヒドロキシアルキルシラン(iPhPMDS、52g、低RIポリマーの半分の量)および短鎖ジヒドロキシジメチルシロキサン(Gelest社製DMS-12、103g(低RIポリマーと同じ量)および溶媒(MIBC、120g)と配合した。1.8μmのフィルムのフィルムRIは、230℃/10分での硬化後、1.23であった。
【0091】
ソーダ石灰ガラスプレート(A)(10×10cm、Tx=3mm)を、低RIフィルム(実施例11、1.8μm、230℃/15分で硬化)でコーティングした。表面を実施例10のポリマー(150μm、230℃/1時間で硬化)で覆い、続いて、UV硬化性の市販のアクリレートベースの透明光学接着剤(30μm)を塗布した。最終的に、スタック全体をアクリレートベースの黒色コーティングでコーティングした。参照スタック(B)も同様に作成したが、低RIフィルムもキャッピング層もなかった。
【0092】
図4は、2枚のプレートを平行に並べた写真の側面図である。2枚のガラスプレートの側面からはっきりとわかるように、低RIフィルムはガラス(A)に導光効果を作り出すのに効果的であるが、参照スタック(B)は反対側から照らされた光を全て吸収した。
【0093】
(実施例12)
メタノール(800g)、DI-水(300g)および水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH、25%水溶液、23g)を加熱して沸騰させた。オルトケイ酸テトラエチル(TEOS、130g)、メチルトリエトキシシラン(MTEOS、110g)および4-ヒドロキシ-4,4-ビス(トリフルオロメチル)-ブチルトリエトキシシラン(30g)を、撹拌しながらゆっくりと流し込んだ。反応を20分間進行させた後、反応混合液を氷バッチで冷却し、飽和マレイン酸水溶液(40g)で中和した。メタノールの大部分を減圧下で蒸発させた後、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE、1100mL)およびDI-水(600mL)を加え、二相系を得た。上部の有機層をさらにDI-水で3回洗浄しながら、水相を廃棄した。次いで、約12%の溶液が得られるまで揮発性物質を蒸発させた。さらにメチルイソブチルケトンを添加して8重量%に希釈し、0.45μのPTFEフィルタで濾過した後、冷凍庫に保管した。
【0094】
(実施例13)
実施例12のポリマー溶液(20g)を、実施例2のiPhPMDS(1g)およびトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(UVI-6974、30mg)と混合した。スピンキャスティング後、フィルムをフォトマスクを通して広帯域水銀ランプ(主に365nm)で照射し、50℃/1分でソフトベークした。2.38%TMAH溶液を用いてパターンを現像した。230℃/1時間での硬化後、アセトンリンスが続いた後、フィルムRIは1.22であることがわかった。
【0095】
開示された本発明の実施形態は、本明細書に開示された特定の構造、プロセス工程、または材料に限定されず、当業者によって認識されるであろうそれらの均等物に拡張されることが理解されるべきである。本明細書で採用される用語は、特定の実施形態を記述する目的でのみ使用され、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0096】
本明細書全体を通した「1つの実施形態」または「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通した様々な箇所での「1つの実施形態では」または「一実施形態では」という表現の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0097】
本明細書で使用される場合、複数の項目、構造要素、構成要素、および/または材料は、便宜上、共通のリストで提示され得る。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが別個の一意的なメンバーとして個別に識別されているかのように解釈される必要がある。したがって、反対の指示がない場合、そのようなリストのいかなる個々のメンバーも、共通のグループ内でのそれらの提示にのみ基づいて、同じリストの他のメンバーの事実上の均等物として解釈されるべきではない。さらに、本発明の様々な実施形態および実施例は、その様々な構成要素の代替物と共に本明細書で参照され得る。そのような実施形態、実施例、および代替物は、互いに事実上の均等物として解釈されるべきではなく、本発明の別個の自律的な表現と見なされるべきであることが理解されよう。
【0098】
さらに、記載された特徴、構造、または特性は、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、長さ、幅、形状などの例など、多数の具体的な詳細が提供される。しかしながら、当業者は、本発明が、1つまたは複数の特定の詳細なしに、または他の方法、構成要素、材料などを用いて実施され得ることを認識するであろう。他の実施例では、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるために、よく知られている構造、材料、または操作は示されておらず、詳細に記載されてもいない。
【0099】
前述の実施例は、1つまたは複数の特定の用途における本発明の原理を例示したものであるが、発明能力を行使することなく、また本発明の原理および概念から逸脱することなく、形態、使用方法、および実施の詳細において多数の変更が行われ得ることは、当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、以下に記載される特許請求の範囲による場合を除き、限定されることを意図するものではない。
【0100】
本文書では、「含む」および「包含する」という動詞は、未記載の特徴の存在を除外も要求もしない非限定として使用される。従属請求項に記載されている特徴は、別段の明示がない限り、相互に自由に組み合わせることが可能である。さらに、本明細書全体を通した「a」または「an」、すなわち単数形の使用は、複数形を除外するものではないことが理解されたい。
【0101】
組成物の文脈で使用される場合の「含む」という用語は、「からなる」および「本質的にからなる」という限定も含む。
【0102】
本発明のさらなる態様および実施形態は、以下の番号が付けられた項に記載されている。
1.ポリシロキサンと、以下から選択されるヒドロキシアルキルシランとを含む、ポリシロキサン組成物:
式IIを有するヒドロキシアルキルシラン
【化11】
(式中、
A
1およびA
2は、独立して、C
6-C
30の直鎖状または分岐状アルキル基から選択される第三級ヒドロキシアルキル鎖であって、任意選択で1~3個の二重結合または三重結合を含有し、少なくとも1個の第三級ヒドロキシル基を有する第三級ヒドロキシアルキル鎖であり、
n1は1~10までの整数であり、
R
1およびR
2は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基であって、任意選択で、C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10脂環式基から選択される基で一置換、二置換または三置換されているアリール基から選択される)と、
式IIIを有するヒドロキシアルキルシラン
【化12】
(式中、
Aは、6~30個の炭素原子を有し、任意選択で1~3個の二重結合または三重結合を有し、さらに少なくとも1個の第三級ヒドロキシル基を含む直鎖状または分岐状アルキル鎖を表し、
n2は0~10までの整数であり;
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、独立して、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基であって、任意選択で、C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10脂環式基から選択される基で一置換、二置換または三置換されているアリール基から選択される)と、
それらの混合物。
2.さらにα,ω-ビスヒドロキシアルキル-オリゴ(アルキルシロキサン)を含み、アルキル基が直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、および3~11個の炭素原子を有する環式アルキル基から選択される、項1に記載の組成物。
3.α,ω-ビス(ヒドロキシアルキル)-オリゴ(アルキルシロキサン)が、式Vを有する直鎖状シロキサンである、項2に記載の組成物:
【化13】
(式中、
nは1~20までの、特に3~20までの整数であり
R
11およびR
12は、直鎖状C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、ならびに5~20個の炭素原子を有するアリール基であり、アルキル鎖は、任意選択で、例えば二重結合または三重結合の形で不飽和を含有する)。
4.α,ω-ビス(ヒドロキシアルキル)-オリゴ(アルキルシロキサン)が、式Vを有する直鎖状α,ω-ビス(ヒドロキシ)-ジアルキルシロキサンであり、nが3~15までの整数であり、R
11およびR
12が請求項6と同じ意味を有する項2または3に記載の組成物であって、特に、α,ω-ビス(ヒドロキシアルキル)-オリゴ(アルキルシロキサン)が直鎖状α,ω-ビス(ヒドロキシ)-ジメチルシロキサンである、組成物。
5.ポリシロキサン10重量部に基づいて、1mbar以下の圧力での沸点が少なくとも80℃であるヒドロキシアルキルシランを3~150部、特に5~100部、例えば10~80部含む、項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
6.ポリシロキサン10重量部に基づいて、α,ω-ビスヒドロキシアルキル-オリゴ(アルキルシロキサン)を1~150部、特に2~100部、例えば5~50部含む、項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
7.ポリシロキサンが、500~1,500,000、特に5,000~100,000g/molの平均分子量(M
W)を有するポリマーである、項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
8.ポリシロキサンが、式IVを有するシランモノマーの加水分解および縮合または共縮合によって得られる、項1~7のいずれか一項に記載の組成物:
【化14】
(式中、
Z
1、Z
2、Z
3およびZ
4は、独立して、加水分解性基、特に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、塩素またはアセトキシ基からなる群の加水分解性基より選択され、前記Z
1、Z
2、およびZ
3基は、任意選択で1個、2個もしくは3個全ての基が、C
1-C
10アルキル基、分岐状C
3-C
10アルキル基、C
3-C
10脂環式基、または5~20個の炭素原子を有するアリール基から選択される非加水分解性基で置換されている)。
9.式IVの少なくとも2つのモノマーが、二価C
1-C
10脂肪族基または芳香族基から選択される非加水分解性基で結合されている、項8に記載の組成物。
10.ポリシロキサンポリマーの屈折率が、632.9nmでの測定で、1.45以下、好ましくは1.4以下、特に1.3以下、例えば1.25以下である、項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
11.組成物全体の1~99.9重量%、好ましくは5~99重量%の溶媒をさらに含み、溶媒が、アルキル、エステル、ケトン、エーテルまたはアルコール溶媒タイプの極性溶媒、非極性溶媒、プロトン性溶媒または非プロトン性溶媒から選択される、項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
12.ヒドロキシアルキルシランが、硬化条件下で加水分解または縮合を受けることができるケイ素原子(単数または複数)に結合した側基を含まない、項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
13.熱および光誘起ラジカル触媒、スズおよび白金含有触媒、アルカリおよびアルカリ放出触媒、酸触媒および熱または光放出酸触媒、およびフッ素イオン放出触媒の群から選択される0.001~10重量%の1種または複数種の硬化触媒をさらに含む、項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
14.ヒドロキシアルキルシランが、ポリシロキサンの硬化範囲内にある沸点、特に1mbar以下の圧力で80℃以上の沸点を有する、項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
15.以下の工程を含む、項1~14のいずれか一項に記載のポリシロキサン組成物を製造する方法:
非架橋ポリシロキサンポリマーを提供する工程;ならびに
ポリシロキサンポリマーと、非架橋ポリシロキサンを少なくとも部分的に溶解することができるヒドロキシアルキルシランとを、任意選択で非架橋ポリシロキサン用の非極性溶媒と共に混合する工程。
16.前記ヒドロキシアルキルシランが式IIまたはIIIを有し、置換基が項1と同じ意味を有する、項15に記載の方法。
17.以下の工程を含む、屈折率が1.4以下の多孔質ポリシロキサンフィルムを製造する方法:
項1~14のいずれか一項に記載のポリシロキサン組成物を提供する工程;
前記組成物を基板上に堆積させ、堆積ポリシロキサン層を提供する工程;
ポリシロキサン層を加熱し、ポリシロキサン成分を硬化させる工程;および
加熱中にヒドロキシアルキルシランを蒸発除去させ、基板上に多孔質ポリシロキサンフィルムを形成する工程。
18.厚さが少なくとも10nmのポリシロキサンフィルムであって、多孔質シロキサンフィルムを形成するためにヒドロキシアルキルシランを蒸発除去させることによって得られる、フィルム。
19.可撓性付与剤としてα,ω-ビス-ヒドロキシアルキル-オリゴ(アルキルシロキサン)を含む、項21に記載のフィルム。
20.導光光学系、誘電体スタック、共振器構造、OLEDおよびLED素子、ならびにその他光学機器における反射防止コーティングフィルムを製造するための、項1~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
21.ナノ粒子および蛍光体粒子用の反射防止コーティングフィルムを製造するための、項1~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
22.半導体デバイスにおける低誘電体フィルムとしての、項1~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
23.キャッピング層と組み合わせた低誘電体フィルムまたは低RIフィルムとしての、項1~14のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明は、ポリシロキサンの多孔質ネットワークを、可撓性付与剤としてのヒドロキシアルキルシラン、特に揮発性ヒドロキシアルキルシランと共に含む組成物であって、超低屈折率および超低誘電率特性を有するコーティングを形成することができる組成物に関する。本組成物は、反射防止フィルム、導光光学系、誘電体スタック、共振器構造、およびその他光学機器のコーティングとして使用され得る。特に、本組成物は、ナノ粒子および蛍光体粒子の反射防止コーティングフィルムの製造に、半導体デバイスにおける低誘電体フィルムとして、ならびにキャッピング層と組み合わせた低誘電体フィルムまたは低RIフィルムとして使用することができる。
【0104】
(頭字語リスト)
PTFE ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メンブレンフィルタ
AR 反射防止
RI 屈折率
DI 誘電率
LC/GPC 液体クロマトグラフィ/ゲル浸透クロマトグラフィ
GC/MS ガスクロマトグラフィ/質量分析
DI-水 脱イオン水
【0105】
(引用リスト)
特許文献
KR20130075428A
WO2011033611A1
EP1559761A1