(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】アナログ-デジタル変換装置、アナログ-デジタル変換装置の制御方法、及び、オーディオ装置
(51)【国際特許分類】
H03M 3/02 20060101AFI20240723BHJP
H03M 1/18 20060101ALI20240723BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20240723BHJP
H03G 3/30 20060101ALI20240723BHJP
H03G 3/20 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H03M3/02
H03M1/18
H04R3/00 320
H03G3/30 C
H03G3/20 A
(21)【出願番号】P 2021522694
(86)(22)【出願日】2020-04-15
(86)【国際出願番号】 JP2020016629
(87)【国際公開番号】W WO2020241102
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019099965
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-146314(JP,A)
【文献】米国特許第06288664(US,B1)
【文献】特開2006-165912(JP,A)
【文献】特開2011-155386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 3/02
H03M 1/18
H04R 3/00
H03G 3/30
H03G 3/20
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力
された第1のアナログ信号を増幅する可変利得アンプ、
前記可変利得アンプ
から出力された第2のアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器、
前記アナログ-デジタル変換器から出力される前記デジタル信号を減衰させる減衰器、
前記
第1のアナログ信号のレベルを検出するレベル検出部、及び、
前記レベル検出部の検出レベルに基づいて、前記可変利得アンプの利得、及び、前記減衰器の減衰量を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記減衰器の減衰量を、前記可変利得アンプの利得を相殺する値にするように、前記可変利得アンプの制御タイミングに対して、前記アナログ-デジタル変換器のトポロジーによる遅延時間と、前記レベル検出部と前記可変利得アンプとの入出力間遅延差に基づく時間とを追加したタイミングで、制御する、
アナログ-デジタル変換装置。
【請求項2】
第3のアナログ信号を取り込んで、
前記第1のアナログ信号を前記可変利得アンプに供給するプリアンプをさらに備え、
前記レベル検出部は、前記プリアンプを経た後の前記
第1のアナログ信号のレベルを検出する、
請求項1に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項3】
前記レベル検出部は、互いに異なる閾値を有する複数の比較器を有する、
請求項2に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項4】
前記レベル検出部は、前記プリアンプの出力信号のバイアスよりも高い第1の閾値を有する第1の比較器、及び、前記プリアンプの出力信号のバイアスよりも低い第2の閾値を有する第2の比較器を有する、
請求項3に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項5】
前記第1の比較器は、前記
第1のアナログ信号のレベルが前記第1の閾値よりも高いときに真の論理を出力し、
前記第2の比較器は、前記
第1のアナログ信号のレベルが前記第2の閾値よりも低いときに真の論理を出力する、
請求項4に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項6】
前記レベル検出部は、前記第1の比較器の出力、及び、前記第2の比較器の出力の論理和を、前記
第1のアナログ信号の検出レベルとして出力する、
請求項5に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項7】
前記アナログ-デジタル変換器は、前記可変利得アンプを経た前記
第2のアナログ信号をオーバーサンプリングし、前記
第2のアナログ信号の振幅に応じたパルス列の信号に変換するデルタ-シグマ変調器から成る、
請求項1~6のいずれか1項に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項8】
前記デルタ-シグマ変調器から出力され、前記減衰器を経たパルス列の信号を、折り返し雑音の影響を受けずに必要な信号情報を取得できるサンプリング周波数のデジタル信号に変換するデシメーションフィルタをさらに備える、
請求項7に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【請求項9】
入力信号である
第1のアナログ信号を増幅する可変利得アンプ、
前記可変利得アンプ
から出力された第2のアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器、及び、
前記アナログ-デジタル変換器から出力される前記デジタル信号を減衰させる減衰器を備えるアナログ-デジタル変換装置の制御に当たって、
レベル検出部を用いて、前記
第1のアナログ信号のレベルを検出し、
制御部は、
当該検出レベルに基づいて、前記可変利得アンプの利得、及び、前記減衰器の減衰量の制御を行い、
前記減衰器の減衰量を、前記可変利得アンプの利得を相殺する値にするように、前記可変利得アンプの制御タイミングに対して、前記アナログ-デジタル変換器のトポロジーによる遅延時間と、前記レベル検出部と前記可変利得アンプとの入出力間遅延差に基づく時間とを追加したタイミングで、制御する、
アナログ-デジタル変換装置の制御方法。
【請求項10】
入力信号である
第1のアナログ信号を増幅する可変利得アンプ、
前記可変利得アンプ
から出力された第2のアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器、
前記アナログ-デジタル変換器から出力される前記デジタル信号を減衰させる減衰器、
前記
第1のアナログ信号のレベルを検出するレベル検出部、及び、
前記レベル検出部の検出レベルに基づいて、前記可変利得アンプの利得、及び、前記減衰器の減衰量を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記減衰器の減衰量を、前記可変利得アンプの利得を相殺する値にするように、前記可変利得アンプの制御タイミングに対して、前記アナログ-デジタル変換器のトポロジーによる遅延時間と、前記レベル検出部と前記可変利得アンプとの入出力間遅延差に基づく時間とを追加したタイミングで、制御する、
アナログ-デジタル変換装置を有するオーディオ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アナログ-デジタル変換装置、アナログ-デジタル変換装置の制御方法、及び、オーディオ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々のオーディオ装置において、マイクロホン等から入力されるアナログのオーディオ信号をデジタル信号に変換するために、アナログ-デジタル変換装置が用いられている。S/Nやダイナミックレンジを最大限に確保するために、オーディオ装置に用いられる、従来のアナログ-デジタル変換装置は、マイク出力特性に応じて静的利得でアナログ-デジタル変換器の入力前段にてレベル調整し、アナログ-デジタル変換器の後段に配されたデシメーションフィルタの出力レベルを調整するようにしていた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、アナログ-デジタル変換装置のデルタ-シグマ変調器のフィードバックを改良することで、純粋に特性を改善する技術も開示されている。
また、オーディオ装置に用いられる、従来のアナログ-デジタル変換装置では、アナログ-デジタル変換器の後段に配されたデシメーションフィルタの出力レベルを検出し、その検出レベルを、アナログ-デジタル変換器の前段に配された可変利得アンプにフィードバックし、当該可変利得アンプの利得を制御するようにしていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-303157号公報
【文献】特開平8-18457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の従来技術に係るアナログ-デジタル変換装置は、デルタ-シグマ変調器のフィードバック部を改良することで歪み特性を改善して許容入力レベルを引き上げているが、デルタ-シグマ変調器の特性変更が困難である、という問題がある。
特許文献2に記載の従来技術に係るアナログ-デジタル変換装置は、フィードバック制御であるために、信号レベルに応じて可変利得アンプの利得を制御する制御ループの応答性が遅い。具体的には、アナログ-デジタル変換器の処理遅延、デシメーションフィルタの処理遅延、及び、レベル検出回路の処理遅延が存在する分だけ制御ループの応答性が遅い。このように、特許文献2に記載の従来技術では、制御ループの応答性が遅く、ノイズキャンセルに必要な応答性を保証できない、という問題がある。
【0005】
本開示は、信号レベルに応じて可変利得アンプの利得を制御する制御ループの応答性に優れたアナログ-デジタル変換装置、アナログ-デジタル変換装置の制御方法、及び、オーディオ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示のアナログ-デジタル変換装置は、
入力されるアナログ信号を増幅する可変利得アンプ、
可変利得アンプを経たアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器、
アナログ-デジタル変換器から出力されるデジタル信号を減衰させる減衰器、
入力されるアナログ信号のレベルを検出するレベル検出部、及び、
レベル検出部の検出レベルに基づいて、可変利得アンプの利得、及び、減衰器の減衰量を制御する制御部を備える。
【0007】
上記の目的を達成するための本開示のアナログ-デジタル変換装置の制御方法は、
入力されるアナログ信号を増幅する可変利得アンプ、
可変利得アンプを経たアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器、及び、
アナログ-デジタル変換器から出力されるデジタル信号を減衰させる減衰器を備えるアナログ-デジタル変換装置において、
入力されるアナログ信号のレベルを検出し、
その検出レベルに基づいて、可変利得アンプの利得、及び、減衰器の減衰量の制御を行う。
【0008】
また、上記の目的を達成するための本開示のオーディオ装置は、上記の構成のアナログ-デジタル変換装置を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置のシステム構成の概略を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置の具体的な回路例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置のシステム内の各ポイントにおける入出力信号や制御信号の変化を示す概略模式図である。
【
図4】
図4は、可変利得アンプの利得0dBが、アナログ-デジタル変換器の許容最大入力に適切な場合のレベル・ダイアグラムである。
【
図5】
図5は、可変利得アンプの利得>0dBが、アナログ-デジタル変換器の許容最大入力に適切な場合のレベル・ダイアグラムである。
【
図6】
図6は、ARC回路のタイミング生成部、及び、制御値生成部のクロック周波数を選択している理由についての説明に供するタイミング・ダイアグラムである。
【
図7】
図7は、プリアンプの出力信号に対するエネルギー比較器の出力信号を示すタイミング・ダイアグラムである。
【
図8】
図8は、可変利得アンプからデジタル減衰器までの経路を示すブロック図である。
【
図9】
図9A及び
図9Bは、可変利得アンプの利得設定の動作例を示すタイミング・ダイグラムである。
【
図10】
図10A及び
図10Bは、可変利得アンプの利得設定及びデジタル減衰器の減衰量設定の処理間隔を管理する3つのタイマーカウンタの動作例を示すタイミング・ダイグラムである。
【
図11】
図11は、プリアンプからのオーディオ信号の出力から、可変利得アンプの利得設定までの遅延時間についての説明図である。
【
図12】
図12は、512f
s動作ブロックの実装例についての説明図である。
【
図13】
図13A及び
図13Bは、128f
s動作ブロックの実装例1についての説明に供するタイミング・ダイグラムである。
【
図14】
図14は、128f
s動作ブロックの実装例2についての説明図である。
【
図15】
図15Aは、128f
s動作ブロックの実装例3についての説明図であり、
図15Bは、実装例3についての説明に供するタイミング・ダイグラムである。
【
図16】
図16は、128f
s動作ブロックの実装例4における遅延タイマーの動作の一例を示すタイミング・ダイアグラムである。
【
図17】
図17は、本開示の実施形態に係るオーディオ装置のシステム構成の概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の技術を実施するための形態(以下、「実施形態」と記述する)について図面を用いて詳細に説明する。本開示の技術は実施形態に限定されるものではなく、実施形態における種々の数値などは例示である。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。尚、説明は以下の順序で行う。
1.本開示のアナログ-デジタル変換装置、アナログ-デジタル変換装置の制御方法、及び、オーディオ装置、全般に関する説明
2.本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置
2-1.システム構成の概略
2-2.具体的な回路例
2-2-1.デジタル減衰器について
2-2-2.エネルギー比較器について
2-2-3.制御部について
2-2-4.システム内の各ポイントにおける入出力信号や制御信号について
2-2-5.動作クロックについて
2-2-6.アナログ-デジタル変換器による遅延時間について
2-2-7.可変利得アンプの利得設定動作の遅延について
2-2-8.利得と減衰量の制御タイミング差の設定について
2-2-9.設定反映の遅延の実装について
2-2-10.レベル割り込みと可変利得アンプの利得設定について
2-2-11.減衰量の設定について
2-3.実施形態に係る制御方法、及び、作用、効果
2-4.実装例
2-4-1.512fs動作ブロックの実装例
2-4-2.128fs動作ブロックの実装例1
2-4-3.128fs動作ブロックの実装例2
2-4-4.128fs動作ブロックの実装例3
2-4-5.128fs動作ブロックの実装例4
3.本開示の実施形態に係るオーディオ装置
4.変形例
5.本開示がとることができる構成
【0011】
<本開示のアナログ-デジタル変換装置、アナログ-デジタル変換装置の制御方法、及び、オーディオ装置、全般に関する説明>
本開示のアナログ-デジタル変換装置、その制御方法、及び、オーディオ装置にあっては、入力されるアナログ信号を取り込んで可変利得アンプに供給するプリアンプを有する構成とすることができる。そして、レベル検出部について、プリアンプを経た後のアナログ信号のレベルを検出する構成とすることができる。また、レベル検出部について、互いに異なる閾値を有する複数の比較器を有する構成とすることができる。
【0012】
上述した好ましい構成を含む本開示のアナログ-デジタル変換装置、その制御方法、及び、オーディオ装置にあっては、レベル検出部について、プリアンプの出力信号のバイアスよりも高い第1の閾値を有する第1の比較器、及び、プリアンプの出力信号のバイアスよりも低い第2の閾値を有する第2の比較器を有する構成とすることができる。そして、第1の比較器については、アナログ信号のレベルが第1の閾値よりも高いときに真の論理を出力し、第2の比較器については、アナログ信号のレベルが第2の閾値よりも低いときに真の論理を出力する構成とすることができる。また、レベル検出部について、第1の比較器の出力、及び、第2の比較器の出力の論理和を、アナログ信号の検出レベルとして出力する構成とすることができる。
【0013】
また、上述した好ましい構成を含む本開示のアナログ-デジタル変換装置、その制御方法、及び、オーディオ装置にあっては、プリアンプについて、可変利得アンプ及びレベル検出器の動作変化に対して、出力インピーダンスを一定にする役割を持つ構成とすることができる。
【0014】
また、上述した好ましい構成を含む本開示のアナログ-デジタル変換装置、その制御方法、及び、オーディオ装置にあっては、制御部について、減衰器の減衰量を、可変利得アンプの利得を相殺する値に制御する構成とすることができる。また、制御部について、減衰器の減衰量を、可変利得アンプの制御タイミングに対して一定のタイミング差を維持しながら制御する構成とすることができる。
【0015】
また、上述した好ましい構成を含む本開示のアナログ-デジタル変換装置、その制御方法、及び、オーディオ装置にあっては、アナログ-デジタル変換器について、可変利得アンプを経たアナログ信号をオーバーサンプリングし、アナログ信号の振幅に応じたパルス列の信号に変換するデルタ-シグマ変調器から成る構成とすることができる。
【0016】
また、上述した好ましい構成を含む本開示のアナログ-デジタル変換装置、その制御方法、及び、オーディオ装置にあっては、デルタ-シグマ変調器から出力され、減衰器を経たパルス列の信号を、折り返し雑音の影響を受けずに必要な信号情報を取得できるサンプリング周波数のデジタル信号に変換するデシメーションフィルタを有する構成とすることができる。
【0017】
<本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置>
図1は、本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置のシステム構成の概略を示すブロック図である。本実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10には、外部の図示せぬマイクロホン(以下、単に「マイク」と記述する場合がある)から、n系統(
図1では、n=1)のアナログのオーディオ信号が入力される(マイク入力)。
【0018】
[システム構成の概略]
本実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10は、プリアンプ11、可変利得アンプ12、アナログ-デジタル変換器(ADC)13、デジタル減衰器14、デジタルフィルタの一例であるデシメーションフィルタ15、レベル検出部16、及び、制御部17を有する構成となっている。
【0019】
アナログ-デジタル変換装置10は、制御部17による制御の下に、プリアンプ11を通して入力されるアナログのオーディオ信号を、可変利得アンプ12、アナログ-デジタル変換器13、デジタル減衰器14、及び、デシメーションフィルタ15を経由して、オーディオPCM(Pulse Code Modulation)信号として出力する。
【0020】
上記の構成のアナログ-デジタル変換装置10において、プリアンプ11は、利得が可変であり、前段のマイクロホンや、後段の可変利得アンプ12及びレベル検出部16の動作変化に対して、出力インピーダンスを一定にする役割を持っている。プリアンプ11は更に、入力側に接続されるマイクロホン(図示せず)に応じて適切な利得を設定する。
【0021】
可変利得アンプ12は、例えば、プログラマブル利得アンプ(Programmable Gain Amp:PGA)から成り、プリアンプ11を通して入力されるアナログのオーディオ信号を、制御部17による制御の下に、レベル検出部16の検出レベルに応じて決定される利得(増幅量)で増幅する。そして、可変利得アンプ12は、増幅したアナログのオーディオ信号を、オーバーサンプリングで動作している次段のアナログ-デジタル変換器13に供給する。
【0022】
可変利得アンプ12は、制御部17による制御の下に、マイク入力レベルが小さいときに利得がとなり大、マイク入力レベルが大きいときに利得が小となるような動作になる。マイク入力レベルが大→小の変化時には、緩やかなスロープでゆっくり(例えば、0.2dBステップ)利得がアップする。そして、可聴帯域外の低い周波数になる周期でステップが変化する。マイク入力レベルが小→大 の変化時には、急峻なスロープで瞬時に利得がダウンする。これにより、アナログ-デジタル変換器13の許容入力や、可変利得アンプ12の許容出力を瞬間的に超えるだけでも発生する全周波数帯域の付帯音を防ぐことができる。
【0023】
アナログ-デジタル変換器13は、例えば、可変利得アンプ12で増幅されて入力されるアナログ信号(オーディオ信号)をオーバーサンプリングし、アナログ信号の振幅に応じたパルス列の信号(即ち、デジタル信号)に変換する1bitのデルタ-シグマ変調器(以下、「ΔΣ変調器」と記述する)から成る。
【0024】
デジタル減衰器14は、オーバーサンプリングで動作しているアナログ-デジタル変換器13の出力を、次段のデジタルフィルタでデシメーションする前に、減衰させる処理を行う。具体的には、デジタル減衰器14は、制御部17による制御の下に、アナログ-デジタル変換器13から出力されるデジタルのオーディオ信号を、可変利得アンプ12での増幅量を相殺する減衰量を加味した値に変換する。アナログ-デジタル変換器13の出力のビット数が1bitの場合は、単純な値のマッピングとなる。
【0025】
デジタルフィルタの一例であるデシメーションフィルタ15は、例えば、CIC(Cascaded Integrator Comb:カスケード積分櫛形)フィルタから成る。このデシメーションフィルタ15は、アナログ-デジタル変換器13から出力され、デジタル減衰器14を経たパルス列の信号を、折り返し雑音の影響を受けずに必要な信号情報を取得できるサンプリング周波数のデジタル信号に変換し、オーディオPCM信号として出力する。
【0026】
デシメーションフィルタ15は、後段の回路が要求するサンプリング周波数に合わせてデシメーションを行ってオーディオPCM信号として出力する。代表的なサンプリング周波数は、4fs(fs:fundamental sampling frequency),8fs,16fsである。
【0027】
レベル検出部16は、インピーダンスやプリアンプ11に設定される利得による影響を受けないように、その入力端がプリアンプ11の出力端に接続される。レベル検出部16は、n系統のアナログ入力に対して、x系統(本例では、2系統)のエネルギー比較器16_1、16_2を有している。2系統のエネルギー比較器16_1、16_2は、互いに異なる閾値を有しており、プリアンプ11を経た後のアナログのオーディオ信号のレベルを検出する。以下、便宜上、エネルギー比較器16_1をCMP_1と記述し、エネルギー比較器16_2をCMP_2と記述する場合がある。
【0028】
制御部17は、例えば、ARC(Adaptive Range Control)回路から成り、レベル検出部16の検出レベルに基づいて、可変利得アンプ12の利得、及び、デジタル減衰器14の減衰量を制御する。そして、制御部17は、可変利得アンプ12の制御タイミングとデジタル減衰器14の制御タイミングとを正確に設定する。この正確な制御タイミングについては、アナログ-デジタル変換器13のトポロジーで決定できる固定遅延量、及び、バラツキを加味しても変動幅が小さい可変利得アンプ12の入出力遅延の特性から設定することができる。
【0029】
上述したように、本実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10は、入力されるアナログ信号のレベルをレベル検出部16で検出し、その検出レベルに基づいて、可変利得アンプ12の利得、及び、デジタル減衰器14の減衰量を制御するフィードフォワード制御の構成となっている。
【0030】
[具体的な回路例]
図2は、本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置の具体的な回路例を示すブロック図である。ここでは、例えば2チャンネルのアナログオーディオ信号が、MIC1及びMIC2としてアナログ-デジタル変換装置10に入力される場合の回路構成を例示している。
【0031】
従って、本回路例に係るアナログ-デジタル変換装置10は、プリアンプ11_1、11_2、可変利得アンプ12_1、12_2、アナログ-デジタル変換器13_1、13_2、デジタル減衰器14_1、14_2、デシメーションフィルタ15、エネルギー比較器16_11、16_12、エネルギー比較器16_21、16_22、及び、制御部17を有する構成となっている。
【0032】
上記の回路例に係るアナログ-デジタル変換装置10において、PGAから成る可変利得アンプ12は、制御部17による制御の下に、デジタル値に応じて利得が設定される。本回路例では、0dBから6dBまで、例えば0.2dBステップで利得の制御が行われる。設定できる利得の可変幅が大きければ、その分だけ、ダイナミックレンジの拡大が期待できるが、ポップノイズの発生が顕著になるため、実用可変幅は3dB~6dB程度が好ましい。
【0033】
接続されるマイクロホン、プリアンプ11_1,11_2の利得、及び、アナログ-デジタル変換器13_1、13_2の許容最大入力に応じて、可変利得アンプ12_1、12_2の最適利得が求められる。これは、プリアンプ11_1,11_2の出力を、アナログ-デジタル変換器13_1、13_2の許容最大入力に近づける目的である。制御部17は、マイク入力レベルが小さいときに、可変利得アンプ12_1、12_2の利得が大きくなり、マイク入力レベルが大きいときに、可変利得アンプ12_1、12_2の利得が小さくなるように制御される。
【0034】
本実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10では、プリアンプ11_1,11_2の利得を、ダイナミックレンジの可変幅よりも広い範囲が設定できるように構成する。ステップ幅については、実現可能な範囲内で小さい値がよい。その代表例は0.2dBである。
【0035】
制御部17には、2チャンネルに対応して2つのARC回路171_1、171_2が設けられている。2つのARC回路171_1、171_2はそれぞれ、タイミング生成部171_11、171_21及び制御値生成部171_12、171_22を有している。ARC回路171_1のタイミング生成部171_11は、可変利得アンプ12_1の利得を制御するタイミングを決めるタイミング信号T_1を生成する。ARC回路171_2のタイミング生成部171_21は、可変利得アンプ12_2の利得を制御するタイミングを決めるタイミング信号T_2を生成する。
【0036】
ARC回路171_1の制御値生成部171_12は、可変利得アンプ12_1の利得を制御する制御値N_p1、及び、デジタル減衰器14_1の減衰量を制御する制御値N_a1を生成する。ARC回路171_2の制御値生成部171_22は、可変利得アンプ12_2の利得を制御する制御値N_p2、及び、デジタル減衰器14_2の減衰量を制御する制御値N_a2を生成する。
【0037】
可変利得アンプ12_1、12_2の各利得の設定は、上記の構成の制御部17による制御の下に、2つのARC回路171_1、171_2の各制御値生成部171_12、171_22で生成される制御値(設定値)N_p1,N_p2によって行われる。更に、遷移期間中の利得については、設定前後の中間利得になるように設定される。また、デジタル減衰器14_1,14_2の各減衰量の設定は、上記の構成の制御部17による制御の下に、2つのARC回路171_1、171_2の各制御値生成部171_12、171_22で生成された制御値N_a1,N_a2によって行われる。
【0038】
ここで、アナログ-デジタル変換器13_1、13_2の代表的な動作速度及びビット幅について説明する。アナログ-デジタル変換器13_1、13_2は、128fs(fs:fundamental sampling frequency.44.1kHz/48kHz)で1bitである。制御部17に設けられるディザ回路172_1、172_2についても1bitである。
【0039】
上記の構成のアナログ-デジタル変換装置10において、プリアンプ11_1、11_2、可変利得アンプ12_1、12_2、エネルギー比較器16_11、16_12、及び、エネルギー比較器16_21、16_22は、アナログ・ブロックを構成し、アナログ-デジタル変換器13_1、13_2、デジタル減衰器14_1、14_2、デシメーションフィルタ15、及び、制御部17は、デジタル・ブロックを構成している。
【0040】
尚、半導体プロセスとして、アナログ・ブロック側とデジタル・ブロック側とで異なるプロセスを利用する際には、デジタル構成のアナログ-デジタル変換器13_1、13_2及びディザ回路172_1、172_2についてはアナログ・ブロック側のプロセスとする。
【0041】
尚、ここでは、アナログ-デジタル変換器13_1、13_2の動作速度及びビット幅について、128fsで1bitを例示したが、これに限られるものではない。例えば、64fsや128fsで3bit、ディザ回路172_1、172_2について2bitなどであってもよく、アナログ-デジタル変換器13_1、13_2について、特に制約はない。
【0042】
(デジタル減衰器について)
次に、デジタル減衰器14(14_1、14_2)の回路構成について説明する。1bitのアナログ-デジタル変換器の場合は、減衰量に応じた固定値へのマッピングで実現できる。本回路例では、16bitにマッピングしている。3bitのアナログ-デジタル変換器など多ビットのアナログ-デジタル変換器の場合は、減衰処理を乗算器による乗算や、マッピングした値のビット数分の加算のような筆算式の乗算などの方法で実現できる。
【0043】
減衰ステップについては、可変利得アンプ12の利得ステップと同じステップ量を実現する。可変利得アンプ12の利得ステップが0.2dBの場合は、減衰ステップの許容される最大値は0.2dBである。実装を簡易にするため、デジタル減衰器14のステップ量は可変利得アンプ12のステップ量と同じ、もしくは、2の階乗分の1、0.1dB,0.05dB,0.025dB,・・・で定義する。
【0044】
より細かいステップ設定については、デシメーションフィルタ15の出力の0dBFSを正確に定義できるメリットがある。大抵、デシメーションフィルタ15の出力を24bitや32bitなど、より広いダイナミックレンジの広いPCM信号のビット幅で運用するが、複数チャンネルのマイク入力の基準と、アナログ-デジタル変換器13の出力の0dBFS(FS:Full Scale)とを合わせる際に有効である。複数チャンネル間のレベル合わせの乗算処理を、複数箇所で実施する必要がなくなる。但し、回路規模との兼ね合いで決定する。
【0045】
(エネルギー比較器について)
次に、レベル比較部16を構成するエネルギー比較器16_1(16_11、16_12)及びエネルギー比較器16_2(16_21、16_22)について説明する。
【0046】
エネルギー比較器16_1,16_2は、エネルギーによって比較値との比較結果の真偽を出力する。1つのエネルギーに対して、プリアンプ11(11_1,11_2)の出力信号のバイアスと比較して、高い閾値(第1の閾値)を有するエネルギー比較器16_1、及び、低い閾値(第2の閾値)を有するエネルギー比較器16_2で入力信号を検出する。
【0047】
閾値がバイアスよりも高い側のエネルギー比較器16_1は、閾値よりも高い入力のときに真の論理を出力する。閾値がバイアスよりも低い側のエネルギー比較器16_2は、閾値よりも低い入力のときに真の論理を出力する。そして、それら2つのエネルギー比較器16_1,16_2の出力の論理和がエネルギーの比較結果となる。エネルギーの閾値が、最低でも2つ設定できるように構成する。
【0048】
エネルギーの閾値の設定例については、次の通りである。すなわち、アナログ-デジタル変換器13が無歪みで出力できるアナログ-デジタル変換器13への入力レベルを0dBとして、可変利得アンプ12の利得を制御可変幅の下限値を設定したときに、アナログ-デジタル変換器13の入力レベルが-6dBと-9dBとなるプリアンプ11の出力レベルに設定する。閾値の大きい方については、可変利得アンプ12に設定する最大利得の逆数に等しく、次の閾値についてはその3dB小さい値に設定する。
【0049】
(制御部について)
次に、ARC回路から成る制御部17について説明する。制御部17は、2レベルのエネルギー比較器16_1,16_2の出力信号を優先付非同期のレベル割り込み信号として扱い、当該レベル割り込み信号に応じて、可変利得アンプ12の利得を制御する。制御部17は更に、レベル割り込み信号に応じて、デジタル減衰器14の減衰量を設定する。
【0050】
制御部17は、デジタル減衰器14の減衰量について、可変利得アンプ12の制御タイミングに対して常に一定のタイミング差を維持しながら、可変利得アンプ12の利得を相殺する値に制御する。デジタル減衰器14の制御タイミングについては、可変利得アンプ12の制御タイミングに、アナログ-デジタル変換器13の構成による理論遅延クロック・サイクル、及び、エネルギー比較器16_1,16_2と可変利得アンプ12の入出力間遅延の差を考慮した時間分のクロック・サイクルを追加して生成する。
【0051】
制御部17は、上記のレベル割り込み信号に応じて決定される目標の可変利得アンプ12の利得設定値よりも、現在の可変利得アンプ12の利得設定値が高い場合には、即座に、可変利得アンプ12を低い目標利得に制御する。制御部17は、目標の可変利得アンプ12の利得設定値よりも、現在の可変利得アンプ12の利得設定値が低い場合には、割り込みタイミングによって一時的にスロープが変化しないように制御する。
【0052】
制御部17は、一定の利得変化のスロープを維持しながら、ステップ的に可変利得アンプ12の利得を制御する。ステップ的に制御するタイミングについては、可聴帯域よりも低い周波数の周期よりも長くする。但し、ステップ周期を1秒間隔など長く設定すると、アナログ-デジタル変換器13のビット数やディザ回路の構成によっては回避不可能な、アナログ-デジタル変換器13の量子化によるスプリアス成分で発生する雑音に音色が付く現象に気づくことがある。その場合、ステップ周期について、300msなど可聴帯域外の高めの周波数の周期に設定する。
【0053】
(システム内の各ポイントにおける入出力信号や制御信号について)
続いて、
図1に示すアナログ-デジタル変換装置10のシステム内の各ポイント(A)~(E)における入出力信号や制御信号について説明する。
【0054】
図3は、システム内の各ポイントにおける入出力信号や制御信号の変化を示す概略模式図である。
図3の横軸は時間である。マイク入力はアナログ信号であるが、
図3では、理解を容易にするために、ステップ信号を与えて図示している。尚、
図3の(A)~(E)は、
図1の各ポイント(A)~(E)の各波形を表している。
【0055】
図3において、1段目は、プリアンプ11の出力信号であり、可変利得アンプ12の入力信号PGA
inの波形を表している。2段目は、エネルギー比較器16
_1及びエネルギー比較器16
_2によって設定される可変利得アンプ12の目標利得である。3段目は、ARC回路から成る制御部17が可変利得アンプ12に設定する利得である。4段目は、制御部17がデジタル減衰器14に設定する減衰量である。
【0056】
5段目は、1段目の可変利得アンプ12の入力信号PGAinに3段目の可変利得アンプ12の利得が反映された可変利得アンプ12の出力信号PGAoutであり、アナログ-デジタル変換器13の入力信号ADCinの波形を表している。6段目は、1bitのアナログ-デジタル変換器13によってPDM(Pulse Density Modulation)信号に変換された後の信号ADCoutの波形を表している。
【0057】
7段目は、アナログ-デジタル変換器13の出力信号ADCoutが4段目の減衰量で減衰処理された後の信号であり、デシメーションフィルタ15の入力信号CICinの波形を表している。8段目は、最後に、デシメーションフィルタ15でPCM化された後の信号MIC(CIC)outの波形を表している。
【0058】
定常状態における各ステージのレベル・ダイアグラムを
図4及び
図5に示す。
図4は、可変利得アンプ12の利得0dBが、アナログ-デジタル変換器13の許容最大入力に適切な場合のレベル・ダイアグラムである。尚、
図4及び
図5において、ポイント(A)~(D)は、
図1のポイント(A)~(D)に対応している。通常、
図4及び
図5におけるエネルギー比較器16
_1(CMP
_1)の閾値は、最大許容入力レベルの-6dB、エネルギー比較器16
_2(CMP
_2)の閾値は、最大許容入力レベルの-9dBのレベルに設定する。
【0059】
図5は、可変利得アンプ12の利得>0dBが、アナログ-デジタル変換器13の許容最大入力に適切な場合、換言すれば、可変利得アンプ12の利得が0dBでは、外部入力が最大でもアナログ-デジタル変換器13の入力レンジを有効に使えない場合のレベル・ダイアグラムである。可変利得アンプ12の利得を0dBではなく、最小利得p
minに設定している。0dBFSは、外部入力の最大値に設定される。デシメーションフィルタ15でPCM化された後のオーディオPCM信号のビット幅を24bit程度確保できずに切り詰めないときの対応である。
【0060】
(動作クロックについて)
図2のブロック図において、プリアンプ11
_1,11
_2、可変利得アンプ12
_1、12
_2、エネルギー比較器16
_11、16
_12、及び、エネルギー比較器16
_21、16
_22は、アナログ回路で構成されている。その他の構成要素は、動作時にクロック供給を必要とするデジタル回路で構成されており、遅延のないリアルタイム性が要求される。従って、動作クロックの源振は全ての構成要素で共通である。割り込み検出以外、制御に非同期乗り換えが不要なインターフェースで構成される。
【0061】
基本的なサンプリング周波数fsを定義する。オーディオのため、サンプリング周波数fsは、44.1kHzもしくは48kHzで代表する。この場合、源振のクリスタル発振器の発信周波数は、512fs、即ち、22.5792MHzもしくは24.576MHzである。デジタル-アナログ変換器やデジタル・アンプが接続される出力側は、クロックのジッタが影響を与えるため、クリスタル発振器を必要とする。
【0062】
本システムがクリスタル発振器を直接要求する訳ではないが、アナログ-デジタル変換器とデジタル-アナログ変換器とを同時に扱う際には、デジタル-アナログ変換器側で利用するクリスタル発振器に周波数は依存する。そのため、無線システムなど位相雑音が気になるシステム内に組み込まれる場合は、デジタル-アナログ変換器と無線部とでXクリスタル発振器を共有することがBOM(Bill Of Materials)の観点では望ましく、サンプリング周波数fsは若干高い周波数となる。無線システムなどでは26MHzや32MHzがよく利用される。これらを512fsとして、サンプリング周波数fsは、50.78125kHzや62.5kHzとして扱う。
【0063】
アナログ-デジタル変換器13を128f
sで動作させる場合、
図2のデジタル・ブロックの動作周波数は以下になる。
1.制御部17のブロック
ARC回路171
_1、171
_2のタイミング生成部171
_11、171
_21:128f
s×4=512f
s
2.制御部17のブロック
ARC回路171
_1、171
_2の制御値生成部171
_12、171
_22:128f
s
3.制御部17のブロック
ディザ回路:256f
s RZ 信号生成、128f
s NRZ 信号生成
4.デジタル減衰器14及びデシメーションフィルタ15:128f
s×N(N:演算器共有時2以上)
【0064】
ここで、ARC回路171
_1、171
_2のタイミング生成部171
_11、171
_21、及び、制御値生成部171
_12、171
_22のクロック周波数を選択している理由について、
図6のタイミング・ダイアグラムを用いて説明する。
【0065】
・アナログ-デジタル変換器13
_1、13
_2の動作クロックと同じ周波数で可変利得アンプ12
_1、12
_2の制御値の設定を実現する際に、制御値が変化したときにのみ、可変利得アンプ12に制御値を設定するためのタイミング信号CHGを発行する。タイミング信号CHGは、
図2のタイミング信号T
_1,T
_2に相当し、タイミング生成部171
_11、171
_21で生成される。
・タイミング信号CHGは、制御値の変化を検出したら高レベルに遷移し、次のサイクルでは必ず低レベルとなる。
・可変利得アンプ12に制御値の最小変化幅の半分のパルス幅で、かつ、タイミング信号CHGの変化点が、可変利得アンプ12に制御値の変化点と重ならないように生成する。アナログ-デジタル変換器13
_1、13
_2のサンプリング周波数の4倍が適切である。
・エネルギー比較器16
_1、16
_2はレベル信号として取り込む。非同期入力信号であるため、同期化クロックの最長で2サイクル遅延が発生する。同期化クロックについては、アナログ-デジタル変換器13
_1、13
_2のサンプリング周波数の4倍が適切である。
【0066】
図7に、可変利得アンプ12
_1、12
_2の入力信号PGA
inであるプリアンプ11
_1,11
_2の出力信号に対する、エネルギー比較器16
_1、16
_2の出力信号AIN
x_CMP
_1,AIN
x_CMP
_2のタイミング・ダイアグラムを示す。
【0067】
プリアンプ11_1,11_2の出力信号の電力が、指定した値CMPxH_1_VTH,CMPxL_1_VTH/CMPxH_2_VTH,CMPxL_2_VTHを越えたときにハイ(Hi)アクティブでアサートする、割り込みソースとする。1系統の割り込みは、バイアス(bias)の+側と-側2つ1組の比較出力AINx_CMP_1,AINx_CMP_2で生成する。割り込みについては、2系統もしくは2系統以上準備し、同時に割り込みがアサートするときには、電力閾値がより大きい方を優先的に扱う。エネルギー比較器16_1をCMP_1の方に大きい値を設定する前提で動作させる場合、エネルギー比較器16_1の方が優先割り込みとなる。
【0068】
ここで、制御部17のARC回路171_1、171_2によるデジタル減衰器14_1、14_2の減衰量の制御について説明する。
【0069】
可変利得アンプ12
_1,12
_2の利得設定後、可変利得アンプ12
_1,12
_2及びアナログ-デジタル変換器13
_1、13
_2の固有遅延にタイミングを合わせて、ARC回路171
_1、171
_2内の制御値生成部171
_12,171
_22が補正用の減衰量を制御値MIC
x_VOLとして出力する。制御値MICx_VOLは、
図2の制御値N
_a1,N
_a2に相当する。
【0070】
デジタル減衰器14_1,14_2は、CMP_1_VOLの設定値を最小利得pminと解釈して、可変利得アンプ12_1,12_2の利得を最小利得pminに設定した際に制御値MICx_VOLが0dBになるように制御する。ARC回路171_1、171_2とデジタル減衰器14_1、14_2との間のインターフェースは、減衰量ではなく、負の利得を0.05dBステップでマッピングしたボリューム値である。
MICx_VOL+PGA_VOL=CMP_1_VOL
の関係である。
【0071】
(アナログ-デジタル変換器による遅延時間について)
制御部17は、可変利得アンプ12
_1,12
_2の利得の制御と、デジタル減衰器14
_1,14
_2の減衰量の制御とを、適切な時間間隔で実施する。
図8に、可変利得アンプ12(12
_1,12
_2)からデジタル減衰器14(14
_1,14
_2)までの経路を示す。
【0072】
アナログ-デジタル変換器13(13_1,13_2)による遅延時間は、トポロジーで一意に決まる。回路からSTF(f)(STF:Signal Transfer Function)を求め、arg(STF(f))/2πfで遅延時間Δtを求めることができる。fは20kHzとして計算する。fs=48kHz,44.1kHzと、利用するクリスタル発振器や基準クロックによって様々であるが、サイクル数は、サンプリングfsや動作クロックに依らずトポロジーによって一定である。
【0073】
小数点以下の端数は可変利得アンプ12_1,12_2の遅延と合わせて判断する。制御部17の動作クロックは、512fsであるため、512fsクロックによるサイクル数で換算しても良いが、アナログ部でバラつくため精度は512fsまでは追い込まず、タイミング調整を含めた制御部17本体はアナログ-デジタル変換器13と同じ周波数である128fsで動作させる。
一例として、ある3次のΔΣ変調器の場合、128fsで8.4サイクルである。
【0074】
(可変利得アンプの利得設定動作の遅延について)
可変利得アンプ12(12_1,12_2)は、アナログ・ブロックのため、遅延バラツキがあるが、実設計では、128fsクロックの1サイクル程度に遅延を収めることが可能である。また、可変利得アンプ12の利得によっても異なるが、可変利得アンプ12の利得範囲が0~6dB程度では、128fsクロックの2サイクルから4サイクルの範囲内に遅延を収めることが可能なため、遅延バラツキに対しては固定サイクル数で補正する。
【0075】
設定利得に応じても遅延時間が変化するため、遅延設定サイクルは可変とする。利得が大→小への変化はステップが大きく即座に行うため、利得が小の方の遅延値で補正する。利得が小→大への変化は0.2dBのように小さなステップで非常にゆっくり行うため、現在の可変利得アンプ12の制御値に対して適切な遅延値で補正する。
【0076】
実例では、0dB時と6dB時の補正ステップ数の差が1.5程度のため、利得が小→大の変化時の補正ステップ値と、利得が大→小の変化時の補正ステップ値との2つだけでの運用も可能である。
【0077】
アナログ遅延のため、基準クロックによるfsの周波数に応じてサイクル数は変化する。可変利得アンプ12の利得(PGA gain)に対する最小遅延時間(Min.ns)、通常遅延時間(Typ.ns)、最大遅延時間(Max.ns)の関係(ΔΣ変調器同等の入力容量(5pF)による可変利得アンプ12の遅延)を表1に示す。また、可変利得アンプ12の利得(PGA gain)に対するfs周波数、最小サイクル(Min.cycle)、通常サイクル(Typ.cycle)、最大サイクル(Typ.cycle)の関係(可変利得アンプ12の遅延用の128fsサイクル)を表2に示す。動作クロック周波数による変化があるので、システム全体でfsを定義しているレジスタ値を参照して補正値サイクル数が変化できるようにする。
【0078】
【0079】
【0080】
(利得と減衰量の制御タイミング差の設定について)
次に、可変利得アンプ12の利得制御のタイミングと、デジタル減衰器14の減衰量制御のタイミングとのタイミング差の設定について説明する。
【0081】
一例では、アナログ-デジタル変換器13を構成するΔΣ変調器の遅延、及び、可変利得アンプ12の遅延を合算すると、アナログ-デジタル変換器13の動作クロック周波数が128sの場合、約11サイクル又は12サイクルになる。 以下のように、ΔΣ変調器の遅延共通サイクル8を引き、別々に設定可能にしておく。
減衰量の設定が小→大のときに、ΔΣ変調器の遅延以外で3サイクル
減衰量の設定が大→小のときに、ΔΣ変調器の遅延以外で4サイクル
【0082】
可変利得アンプ12の利得を設定してから、ΔΣ変調器の遅延8サイクルと、上記の可変利得アンプ12の遅延を合算したサイクルだけ遅延させた後、デジタル減衰器14の減衰量を設定する。実装の都合で、パイプラインを挿入する場合、パイプラインのサイクル数だけレジスタの設定推奨値を減らす。
【0083】
(設定反映の遅延の実装について)
シフト・レジスタで遅延させる構成をとるものとすると、フリップフロップの数が100個と1kゲート規模になってしまう。ローパスフィルタの時定数で実現するものとすると、ゲートクロックが推論されず、HALT機能とHALT clock構成にしないと乗算・加算回路が常時動作し消費電力が無駄である。
【0084】
図8の外部入力が小→大の変化時には、即時に、可変利得アンプ12の利得及びデジタル減衰器14の減衰量を設定する必要があるため、仮に、エネルギー比較器16
_1,16
_2からの割り込みが2つ連続して入力される場合、利得設定及び減衰量設定の処理間隔を、それぞれの割り込みに対して別々に計測して各設定を実施する必要がある。
【0085】
一方、外部入力が大→小の変化時には、0.025秒程度の差で可変利得アンプ12の利得及びデジタル減衰器14の減衰量を設定するため、動作クロック周波数が128fsであってもサイクル数に余裕がある。FSM(Finite State Machine:有限状態機械)の遷移間隔を、可変利得アンプ12の利得設定及びデジタル減衰器14の減衰量設定の処理間隔よりも遅くできる。
【0086】
よって、実装・検証のしやすさと、消費電力の観点から、可変利得アンプ12の利得設定及びデジタル減衰器14の減衰量設定の処理間隔を管理するタイマーカウンタを3つ準備し、FSMで実装する。
【0087】
可変利得アンプ12の利得設定の動作例のタイミング・ダイグラムを
図9A及び
図9Bに示す。
図9A及び
図9Bには、エネルギー比較器16
_1(CMP
_1)の出力信号、エネルギー比較器16
_2(CMP
_2)の出力信号、可変利得アンプ12の目標利得、及び、可変利得アンプ12の利得PVOLを示している。
【0088】
可変利得アンプ12の利得設定及びデジタル減衰器14の減衰量設定の処理間隔を管理する3つのタイマーカウンタの動作例のタイミング・ダイグラムを
図10A及び
図10Bに示す。
図10A及び
図10Bには、CMP
_1の出力信号、CMP
_2の出力信号、可変利得アンプ12の目標利得、可変利得アンプ12の利得PVOL、及び、デジタル減衰器14の減衰量MVOLを示している。
【0089】
可変利得アンプ12の利得PVOLを下げるタイミングは即時である。可変利得アンプ12の利得PVOLを上げていくタイミング間隔は常に一定になるように制御する。可変利得アンプ12の利得PVOLの設定、及び、デジタル減衰器14の減衰量MVOLの設定の遅延も、設定以外のタイミングにならないように、換言すれば、時間差が一定になるように制御する。
【0090】
(レベル割り込みと可変利得アンプの利得設定について)
エネルギー比較器16_1(CMP_1)の出力信号、及び、エネルギー比較器16_2(CMP_2)の出力信号については、レベル割り込みとして扱う。2系統の割り込みは、512fsのクロックで非同期乗り換えした後、それぞれイネーブルレジスタによって割り込みを利用するか否かを決定する。両方有効の際には、優先付き割り込みとして、CMP_1を優先的に処理する。
【0091】
よって、CMP_1の閾値設定レジスタCMPnHx_VTHに電力を大きく設定し、割り込み要求を処理する際に設定する可変利得アンプ12の利得設定レジスタCMPx_VOLについては、CMP_1の方に小さな利得を設定する。アナログ入力系統nとエネルギー比較器の系統x毎に設定値のレジスタを準備する。
【0092】
より優先度の高い割り込みが存在しない場合、割り込みの系統に対応した目標利得設定値に、可変利得アンプ12の利得PVOLを設定するように動作する。現在設定している可変利得アンプ12の利得PVOLと、割り込みに対応した目標利得設定値との大小関係で動作が異なる。
【0093】
1.割り込みに対応した目標利得設定値よりも、現在の利得設定値が高い場合
即座に設定レジスタの値に可変利得アンプ12の利得を設定する。
2.割り込みに対応した目標利得設定値よりも、現在の利得設定値が低い場合
所定のレジスタに設定したインターバルで可変利得アンプ12の利得を目標値に漸近させていく。一度に遷移する可変利得アンプ12の利得ステップは通常0.2dBである。設定値は可変とする。
【0094】
可変利得アンプ12の利得は、レジスタ値を整数表現して0.2倍にした値を実際の値とする。可変利得アンプ12の利得設定の上限、下限を設定できるようにする。
【0095】
利得設定の下限値は、外部マイクの最大入力がプリアンプ11を経由しても、アナログ-デジタル変換器13の入力レンジを使い切れない場合を想定して設定する。最大入力でも、+6dB利得ではなく、+3dB利得で使うことを可能とする。この値を最小利得pminとする。
【0096】
利得設定の上限値は、利得が高いときの可変利得アンプ12の雑音指数が悪く、システム全体で、通常動作時のS/Nをかえって悪化させてしまう場合があることを想定している。+6dBで使うよりも+4dBで使う方がよいときに対応する。この値を最大利得pmaxとする。
【0097】
プリアンプ11からのオーディオ信号の出力から、可変利得アンプ12の利得設定までの遅延時間の説明図を
図11に示す。
【0098】
エネルギー比較器16_1,16_2の遅延量の一例は0.4μsである。レベル割り込みは、システムで最速、かつ、制御部17の動作クロックと同期関係にある最速のクロックで非同期乗り換えする。最速が512fsの周波数で、fs=44.1kHzの場合0.089μsである。この割り込み信号を利用してFSMを動作し、制御レジスタ値を操作するので、最速でも制御部17の動作クロックの1サイクルの遅延が発生する。
【0099】
非同期乗り換えと制御部17の動作による遅延により、制御部17のARC回路171_1、171_2の入力レベルの比較判定から、可変利得アンプ12の利得設定までの遅延は、これらの合算になる。制御部17の動作クロック128fsと源振の1/4の速度とすると、16_1,16_2の出力から512fsクロックの6サイクルから10サイクルの遅延が発生する。時間にすると、0.666μsから0.834μsのため、この部分の遅延は無視するシステムとする。
【0100】
(減衰量の設定について)
デジタル減衰器14
_1,14
_2の減衰量の設定については、最小利得p
min、及び、可変利得アンプ12
_1,12
_2の利得設定値p
volの2つで決定する。利得設定値p
volは、
図2の制御値N
_p1,N
_p2に相当する。ここで、減衰量をm
attとし、負数のボリューム表現をm
volとすると、負数のボリューム表現m
volは、
m
vol=p
min-p
vol
となり、減衰量m
attは、
m
att=p
vol-p
min
となる。最小利得p
min、利得設定値p
vol、及び、最大利得p
maxの大小関係は、
p
min≦p
vol≦p
max
である。
【0101】
表3は、デジタル減衰器14
_1,14
_2を制御するレジスタMIC_VOLの設定仕様の一例である。レジスタMIC_VOLは、
図2の制御値生成部171
_12,171
_22内に設けられている。ミュート(Mute)及び0dB設定が変則である。可変利得アンプ12
_1,12
_2の利得設定値p
volを使った規則的な演算で、負数のボリューム表現m
volをデジタル減衰器14
_1,14
_2に出力する。8ビット目に見えない符号ビットを考え、それを削除してインターフェースしている、と考えると、2の補数で表現できる。ミュートを指定すると問題になるため、負数側は、0×82でオーバーフロー処理をする。正数側は、0×00で処理をする。
【0102】
【0103】
0.2や0.05をそのまま2進数の固定小数で表現すると無理数になるため、整数に変換して扱う。利得設定値pvolのステップの最小単位は0.2dBであり、負数のボリューム表現mvolのステップの4倍である。よって、pvol,pmin,pmaxをそれぞれ5倍した整数値PVOL,PMIN,PMAXを使って演算した結果を、更に4倍した値MVOLがデジタル減衰器14_1,14_2に供給される信号レベルになる。MVOLの最上位ビットである符号ビットを除いてインターフェースする。整数値PVOL,PMIN,PMAXは出力信号及びレジスタ設定値と同じある。
【0104】
デジタル減衰器14_1,14_2は、チャンネル単位で 調整を取るために、減衰量を0.2dBよりも細かく設定可能である。デジタル減衰器14_1,14_2の減衰量は、固定量のため、独立してオフセットを与えることができる。
【0105】
[実施形態に係る制御方法、及び、作用、効果]
上記の構成の本実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10は、入力されるアナログ信号のレベルを検出し、その検出レベルに基づいて、可変利得アンプ12の利得、及び、デジタル減衰器14の減衰量を制御するフィードフォワード制御の構成となっている。そして、フィードフォワード制御であることで、フィードバック制御に比べて、制御ループの応答性に優れたアナログ-デジタル変換装置を提供できる。
【0106】
更に、本実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10によれば、次のような作用、効果を得ることができる。
・オーディオ用途において、アナログ-デジタル変換器13(13_1,13_2)の入力ダイナミックレンジよりも広い動作時のダイナミックレンジを得ることができる。
・突発的な強入力変化に対して、オーディオで問題になるポップノイズの発生を十分に抑制することができる。
・信号強度が一定の可聴帯域信号の入力時は、入力信号にシステムからの影響を与えず一定の静特性を得ることができる。
・強入力から弱入力に変化したときに違和感なく、ダイナミックレンジの拡大を行うことができる。
・アナログ・ブロックは、比較器と論理和で構成するエネルギー比較器を追加し、細かい利得設定を可能にする必要があるが、回路規模が小規模な構成で実現できる。
・デジタル・ブロックは、DSP(Digital Signal Processor)等による演算が不要で、FSMを主体とした小規模な構成で実現することができる。
【0107】
[実装例]
続いて、
図2に示す本実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10の実装例について説明する。
【0108】
(512f
s動作ブロックの実装例)
図12は、512f
s動作ブロックの実装例について説明する図である。エネルギー比較器16
_1,16
_2の入力A_W_AIN
n_CMP
xを単純な同期回路で同期してレベル割り込み信号AIN
n_CMP
xとして出力する。割リ込みのアサートとネゲートに対応した応答処理に要求する時間に大きな差がある。アサート時は即座ですが、ネゲート時は最低でも、128f
sのクロックで動作するFSMで32サイクル以上のインターバルでデータ遷移を促す。よって、レベル割り込み信号のチャタリング除去はFSMで制御すればよく、入力段は対応不要なため実施しない。これにより、割り込みアサート時も同期化した信号が最速でアサートする。
【0109】
可変利得アンプ12_1,12_2の利得設定については、利得設定値A_W_PGAx_VOLを与えた後に設定信号A_W_PGAx_CHGをアサートして実現する。512fs動作ブロックでは、設定信号A_W_PGAx_CHGの生成に専用のFSMを構成する。128fsのクロックで動作しているFSMから生成される可変利得アンプ12_1,12_2の利得設定値を観測する。変化の検出を待機しているIDLE(1)ステート、変化を検出したら遷移するCHG(2)ステート、CHGステートから無条件に512fs1サイクルで遷移するHOLD(3)ステート、非同期リセット時に遷移するRESET(0)ステートで構成する。RESETステートからは非同期リセットが解除された後、無条件にIDLEステートに遷移する。このように構成し、ステート値を保持した2bitレジスタの最上位ビット側を、可変利得アンプ12_1,12_2の利得値を設定する信号として出力する。
【0110】
(128f
s動作ブロックの実装例1)
図13A及び
図13Bは、128f
s動作ブロックの実装例1について説明するタイミング・ダイグラムである。実装例1では、128f
sクロックで動作するFSM、FSMで生成される制御信号で動作するブロックから利得設定値PVOL(A_W_PGA
x_VOL)と減衰量設定信号MVOL(A_M_MIC
x_VOL)を生成する概要について説明する。
【0111】
目標利得設定値がFSMの入力で利用する優先割り込み信号と割り込みに応じて設定されることも示している。目標利得設定値は、可変利得アンプ12_1,12_2の利得PVOLの生成に利用される。利得PVOLは、FSM内部で管理されて設定すべき値を出力する。
【0112】
回路規模を小さく実現するために、利得設定タイミングと減衰量設定タイミングの遅延制御は3つの遅延タイマーによって構成する。いずれの遅延タイマーも、スタート信号で動作を開始し、あらかじめ決められた設定閾値に到達したら、減衰量設定信号を利得設定値から生成する。3つの遅延タイマーは、エネルギー比較器CMP1がアサートしたら動作を開始する遅延タイマー1、エネルギー比較器CMP2のみがアサートしたら動作を開始する遅延タイマー2、エネルギー比較器CMP1,CMP2のアサート状態で決定される目標利得設定値が現在の利得設定値よりも低く設定されるタイミングで動作を開始する遅延タイマー3で構成される。
【0113】
エネルギー比較器CMP1,CMP2がアサートしたときに設定される利得設定値は一定である。レジスタによって可変とする。図中では、遅延タイマー1で参照されるエネルギー比較器CMP1がアサートしたときに設定される目標利得設定値PVOL1は、最小利得pminである。AINx_CMP1_VOLレジスタに設定値を格納し、信号名CSYN_AINxCMP1_VOLとして供給される。
【0114】
遅延タイマー2で参照されるエネルギー比較器CMP2がアサートしたときに設定される目標利得設定値PVOL2は、中間利得であり、AINx_CMP2_VOLレジスタに設定値を格納し、CSYN_AINxCMP2_VOLとして供給される。遅延タイマー3で参照される目標利得設定値は現在設定している利得値PVOLとなる。
【0115】
3つの遅延タイマーの終了タイミング、及び、供給される利得設定値から、減衰量設定値MVOLが、信号名A_M_MICx_VOLとして生成される。減衰量設定値MVOLが、デジタルメーションフィルタ15の入力信号の振幅を決定する。
【0116】
(128f
s動作ブロックの実装例2)
図14は、128f
s動作ブロックの実装例2について説明する図である。実装例2は、利得設定値PVOL(A_W_PGA
x_VOL)を固定値に強制設定する実装例である。通常は、FSMにより設定値が制御されるが、固定設定レジスタPGA
x_VOL、信号名CSYN_PGA
x_VOLの値をイネーブルがアサートしたときに反映される。
【0117】
(128f
s動作ブロックの実装例3)
図15Aは、128f
s動作ブロックの実装例3についての説明図であり、
図15Bは、実装例3についての説明に供するタイミング・ダイグラムである。実装例3は、FSMの実装例である。
【0118】
FSMを制御するカウンタが1つある。0以外の値のときにインクリメントする実装である。このカウンタは、目標利得設定値が現在の利得設定値PVOLよりも大きいときに一定間隔で可変利得アンプ12_1,12_2の利得を変化させるFSM動作を制御するものである。
【0119】
FSMは、CSYN_ARCx_EN信号がアサートしているときに動作する。ネゲートしているときはRESET(0)ステートにいる。CSYN_ARCx_EN信号がアサートすると、RESET(0)ステートからEQUAL(1)ステートに遷移する。
【0120】
EQUAL(1)ステートでは、利得設定値PVOLが目標利得設定値と等しいときにEQUAL(1)ステートに留まる。割り込みにより 目標利得設定値が更新され、その値が現在の利得設定値より高いとき、一定タイミング毎に可変利得アンプ12_1,12_2の利得を設定値レジスタARCxPGA_STEP、信号名CSYN_ARCxPGA_STEP、通常時、0.2dBステップ相当上昇するためのステートに遷移する。
【0121】
LESS_THAN(2)ステートに遷移し、同時に、FSM制御カウンタを1にセットしてインクリメントを開始する。FSM制御カウンタが32に到達したらINTERVAL(3)ステートに遷移する。INTERVAL(3)ステートでは、利得設定値をARCxPGA_STEPレジスタに設定された単位、通常0.2dB相当でステップアップしていく時間間隔を、FSM制御カウンタを観測して作り出す。
【0122】
可聴帯域外の低い周波数の1周期に相当するため、FSMの動作クロック128fsで動作するカウンタの下位ビットは無視して上位ビットだけの比較でタイミングを作り出せる。カウンタの上位ビットと比較するための閾値はARCnTIMER_THレジスタ、信号名CSYN_ARCnTIMER_THで行う。カウンタが閾値に逹したら、LESS_THAN(2)ステートに遷移し、FSM制御カウンタを1に設定し直して次のインターバルを作り出す。
【0123】
INTERVAL(3)ステートからLESS_THAN(2)ステートへの遷移時に利得設定値PVOLをステップアップした値に更新する。同時に、減衰量設定値MVOLを、遅延差を持って動作させるための遅延タイマー3のインクリメント動作を開始し、更新値を、減衰量設定値MVOLを生成する回路に通達するためのPVOL3レジスタを利得設定値PVOLと同じ値に設定する。遷移時に遅延タイマー3を動作開始させるため、遷移判定したサイクルでのみアサートするスタート3信号を生成する。
【0124】
割り込みによって更新される目標利得設定値が、現在の利得設定値よりも低いとき、どのステートであっても、次のサイクルで可変利得アンプ12_1,12_2の利得を目標値に設定してEQUAL(1)ステートに遷移する。同時に発生した割り込みに応じてデジタル減衰器14_1,14_2の制御用の遅延タイマー1もしくは遅延タイマー2のインクリメント動作を開始する。遅延タイマー1/遅延タイマー2のインクリメント動作開始にはスタート信号を生成する。
【0125】
この論理は、現在の利得設定値が目標利得設定値よりも大きい、で実現できる。次のサイクルでは必ず現在の利得設定値は目標利得設定値と等しくなるためである。FSM制御用のカウンタも0に設定して動作を停止させる。
【0126】
いずれの遅延タイマーも、0以外の値でインクリメント、スタート信号がアサートしたら次のサイクルに1に設定、閾値に到達したら0に設定される論理で構成する。
【0127】
(128f
s動作ブロックの実装例4)
実装例4は、遅延タイマーの動作例である。遅延タイマーの動作のタイミング・ダイアグラムの一例を
図16に示す。ここでは、遅延タイマーの閾値が、31を越えることはない前提で規定している。
【0128】
図16のタイミング・ダイアグラムは、遅延タイマーの閾値が最大設定値31のときを表している。遅延タイマーの閾値は、先述した(利得と減衰量の制御タイミング差の設定について)の項で規定した通りに準備する128f
sΔΣ変調器で最大12サイクル、同じトポロジーのΔΣ変調器を64f
sで動作させた場合でもΔΣ変調器による遅延サイクルが16のため、最大でも20サイクルである。従って、遅延タイマーの閾値については、31の設定で十分である。
【0129】
遅延タイマーは、2つの利得設定値を低い方へ遷移させるために発生するFSMとは異なるタイミングのイベントと利得設定値を高い方へ遷移させる1つのFSMによるイベントによる、異なる3つの利得設定の変化点から、小規模な回路動作でデジタル減衰器14_1,14_2の変化点を作るための回路である。
【0130】
それぞれ独立してタイミングが発生するため、いずれかの遅延タイマーが閾値に到達したときのタイミングで、それぞれのイベントに適した減衰量設定値を生成する。減衰量設定値は、利得設定値から計算されるもののため、現在の利得設定値とは別に、タイミング毎に適切な利得設定値PVOL1,PVOL2,PVOL3を参照する。それぞれ独立したタイミングで発生し、先述した(可変利得アンプの利得設定動作の遅延について)の項にて、遅延時間の定義を利得別ではなく、利得設定の変化方向で遅延サイクルを定義することを規定している。これは遅延タイマー1と 遅延タイマー2との遅延サイクル数を同じにして、閾値到達までの時間が絶対に前後しないことを保証する。
【0131】
設定遅延が128fs単位のため誤差の知覚は無視でき、実装を軽くする前提のためにかけた制限である。遅延タイマー3が動作中に、エネルギー比較器16_1,16_2からの割り込みで発生する利得設定値変更は発生し得るため、遅延タイマー3の停止のための条件は、遅延タイマー1もしくは遅延タイマー2が閾値に到達したタイミングを含む。よって、遅延タイマー3の閾値到達が遅延タイマー1もしくは遅延タイマー2の閾値到達と同時の場合は、遅延タイマー1もしくは遅延タイマー2の閾値到達が優先されるため、可変利得アンプ12_1,12_2の利得変更の即時有効の動作を、デジタル減衰器14_1,14_2の制御でも優先的に実行できる。
【0132】
このように、遅延タイマーの動作によって、デジタル減衰器14_1,14_2に設定する減衰量設定値の設定タイミングの優先順位も確定するので、減衰量設定値を保持するレジスタは、それぞれの遅延タイマーの到達タイミング時に遅延タイマーに応じた利得設定値PVOL1,PVOL2,PVOL3の値を参照して値を確定する回路を、優先順位を考慮せずに構成できる。
【0133】
減衰量設定値MVOLの生成については、先述した(減衰量の設定について)の項で定義した算出式で決定し、オーバーフロー処理も施す。遅延タイマーの閾値到達タイミングを1サイクル早く通達して減衰量設定値MVOLの生成のための利得設定値PVOL1,PVOL2,PVOL3の値の選択を1サイクル早く確定し、パイプラインで保持す。そのため、先述した(利得と減衰量の制御タイミング差の設定について)の項で定義したように、遅延タイマーの閾値を制御する設定レジスタには1サイクル小さい値を与える。
【0134】
<本開示の実施形態に係るオーディオ装置>
以上説明した本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10は、アナログ-デジタル変換装置を備える各種のオーディオ装置において、当該アナログ-デジタル変換装置として用いることができる。
【0135】
図17は、本開示の実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10を用いる、本開示の実施形態に係るオーディオ装置のシステム構成の概略を示すブロック図である。本実施形態に係るオーディオ装置100は、例えば、マイクロホン110、アナログ-デジタル変換装置120、信号処理部130、デジタル-アナログ変換装置140、及び、スピーカ150を備える構成となっている。
【0136】
上記の構成のオーディオ装置100において、マイクロホン110から入力されるアナログのオーディオ信号をオーディオPCM信号に変換するアナログ-デジタル変換装置120として、先述した実施形態に係るアナログ-デジタル変換装置10を用いることができる。このアナログ-デジタル変換装置10は、入力されるアナログのオーディオ信号のレベルを検出し、その検出レベルに基づいて利得制御を行うフィードフォワード制御であることから、アナログ-デジタル変換装置120として、制御ループの応答性に優れたアナログ-デジタル変換装置を実現できる。
【0137】
<変形例>
以上、本開示の技術について、好ましい実施形態に基づき説明したが、本開示の技術は当該実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態において説明したアナログ-デジタル変換装置及びオーディオ装置の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができる。
【0138】
例えば、上記の実施形態では、アナログ-デジタル変換装置10をオーディオ装置100に適用する場合を例に挙げて説明したが、オーディオ装置への適用に限られるものではない。また、上記の実施形態では、アナログ-デジタル変換装置10におけるアナログ-デジタル変換器13として、ΔΣ変調器から成るアナログ-デジタル変換器(デルタ-シグマ変調型アナログ-デジタル変換器)を用いるものとしたが、これに限られるものではなく、逐次比較型アナログ-デジタル変換器など、他の形態のアナログ-デジタル変換器を用いることができる。
【0139】
<本開示がとることができる構成>
尚、本開示は、以下のような構成をとることもできる。
【0140】
≪A.アナログ-デジタル変換装置≫
[A-1]入力されるアナログ信号を増幅する可変利得アンプ、
可変利得アンプを経たアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器、
アナログ-デジタル変換器から出力されるデジタル信号を減衰させる減衰器、
アナログ信号のレベルを検出するレベル検出部、及び、
レベル検出部の検出レベルに基づいて、可変利得アンプの利得、及び、減衰器の減衰量を制御する制御部を備える、
アナログ-デジタル変換装置。
[A-2]入力されるアナログ信号を取り込んで可変利得アンプに供給するプリアンプを有し、
レベル検出部は、プリアンプを経た後のアナログ信号のレベルを検出する、
上記[A-1]に記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-3]レベル検出部は、互いに異なる閾値を有する複数の比較器を有する、
上記[A-2]に記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-4]レベル検出部は、プリアンプの出力信号のバイアスよりも高い第1の閾値を有する第1の比較器、及び、プリアンプの出力信号のバイアスよりも低い第2の閾値を有する第2の比較器を有する、
上記[A-3]に記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-5]第1の比較器は、アナログ信号のレベルが第1の閾値よりも高いときに真の論理を出力し、
第2の比較器は、アナログ信号のレベルが第2の閾値よりも低いときに真の論理を出力する、
上記[A-4]に記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-6]レベル検出部は、第1の比較器の出力、及び、第2の比較器の出力の論理和を、アナログ信号の検出レベルとして出力する、
上記[A-5]に記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-7]プリアンプは、可変利得アンプ及びレベル検出器の動作変化に対して、出力インピーダンスを一定にする役割を持っている、
上記[A-1]乃至上記[A-6]のいずれかに記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-8]制御部は、減衰器の減衰量を、可変利得アンプの利得を相殺する値に制御する、
上記[A-1]乃至上記[A-7]のいずれかに記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-9]制御部は、減衰器の減衰量を、可変利得アンプの制御タイミングに対して一定のタイミング差を維持しながら制御する、
[A-8]に記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-10]アナログ-デジタル変換器は、可変利得アンプを経たアナログ信号をオーバーサンプリングし、アナログ信号の振幅に応じたパルス列の信号に変換するデルタ-シグマ変調器から成る、
上記[A-1]乃至上記[A-9]のいずれかに記載のアナログ-デジタル変換装置。
[A-11]デルタ-シグマ変調器から出力され、減衰器を経たパルス列の信号を、折り返し雑音の影響を受けずに必要な信号情報を取得できるサンプリング周波数のデジタル信号に変換するデシメーションフィルタを有する、
上記[A-10]に記載のアナログ-デジタル変換装置。
【0141】
≪B.アナログ-デジタル変換装置の制御方法≫
[B-1]入力されるアナログ信号を増幅する可変利得アンプ、
可変利得アンプを経たアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器、及び、
アナログ-デジタル変換器から出力されるデジタル信号を減衰させる減衰器を備えるアナログ-デジタル変換装置の制御に当たって、
アナログ信号のレベルを検出し、
その検出レベルに基づいて、可変利得アンプの利得、及び、減衰器の減衰量の制御を行う、
アナログ-デジタル変換装置の制御方法。
[B-2]デルタ-シグマ変調器から出力され、減衰器を経たパルス列の信号を、折り返し雑音の影響を受けずに必要な信号情報を取得できるサンプリング周波数のデジタル信号に変換する、
上記[B-1]に記載のアナログ-デジタル変換装置の制御方法。
【0142】
≪C.オーディオ装置≫
[C-1]入力されるアナログ信号を増幅する可変利得アンプ、
可変利得アンプを経たアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ-デジタル変換器、
アナログ-デジタル変換器から出力されるデジタル信号を減衰させる減衰器、
アナログ信号のレベルを検出するレベル検出部、及び、
レベル検出部の検出レベルに基づいて、可変利得アンプの利得、及び、減衰器の減衰量を制御する制御部を備える、
アナログ-デジタル変換装置を有するオーディオ装置。
[C-2]入力されるアナログ信号を取り込んで可変利得アンプに供給するプリアンプを有し、
レベル検出部は、プリアンプを経た後のアナログ信号のレベルを検出する、
上記[C-1]に記載のオーディオ装置。
[C-3]レベル検出部は、互いに異なる閾値を有する複数の比較器を有する、
上記[C-2]に記載のオーディオ装置。
[C-4]レベル検出部は、プリアンプの出力信号のバイアスよりも高い第1の閾値を有する第1の比較器、及び、プリアンプの出力信号のバイアスよりも低い第2の閾値を有する第2の比較器を有する、
上記[C-3]に記載のオーディオ装置。
[C-5]第1の比較器は、アナログ信号のレベルが第1の閾値よりも高いときに真の論理を出力し、
第2の比較器は、アナログ信号のレベルが第2の閾値よりも低いときに真の論理を出力する、
上記[C-4]に記載のオーディオ装置。
[C-6]レベル検出部は、第1の比較器の出力、及び、第2の比較器の出力の論理和を、アナログ信号の検出レベルとして出力する、
上記[C-5]に記載のオーディオ装置。
[C-7]プリアンプは、可変利得アンプ及びレベル検出器の動作変化に対して、出力インピーダンスを一定にする役割を持っている、
上記[C-1]乃至上記[C-6]のいずれかに記載のオーディオ装置。
[C-8]制御部は、減衰器の減衰量を、可変利得アンプの利得を相殺する値に制御する、
上記[C-1]乃至上記[C-7]のいずれかに記載のオーディオ装置。
[C-9]制御部は、減衰器の減衰量を、可変利得アンプの制御タイミングに対して一定のタイミング差を維持しながら制御する、
[C-8]に記載のオーディオ装置。
[C-10]アナログ-デジタル変換器は、可変利得アンプを経たアナログ信号をオーバーサンプリングし、アナログ信号の振幅に応じたパルス列の信号に変換するデルタ-シグマ変調器から成る、
上記[C-1]乃至上記[C-9]のいずれかに記載のオーディオ装置。
[C-11]デルタ-シグマ変調器から出力され、減衰器を経たパルス列の信号を、折り返し雑音の影響を受けずに必要な信号情報を取得できるサンプリング周波数のデジタル信号に変換するデシメーションフィルタを有する、
上記[C-10]に記載のオーディオ装置。
【符号の説明】
【0143】
10・・・アナログ-デジタル変換装置、11(11_1、11_2)・・・プリアンプ、12(12_1、12_2)・・・可変利得アンプ、13(13_1、13_2)・・・アナログ-デジタル変換器(ADC)、14(14_1、14_2)・・・デジタル減衰器、15・・・デシメーションフィルタ、16・・・レベル検出部、16_1(16_11、16_12)、16_2(16_21、16_22)・・・エネルギー比較器、17・・・制御部