(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】射出成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/78 20060101AFI20240723BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20240723BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20240723BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20240723BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B29C45/78
B29C45/26
C08L67/04
C08L101/16
C08K3/34
(21)【出願番号】P 2021532724
(86)(22)【出願日】2020-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2020022526
(87)【国際公開番号】W WO2021010054
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019131277
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝田 佑太
(72)【発明者】
【氏名】中村 信雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊輔
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/146195(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/052876(WO,A1)
【文献】特開2012-211243(JP,A)
【文献】特開2010-082838(JP,A)
【文献】特開2011-132281(JP,A)
【文献】特開2005-255721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/78
B29C 45/26
C08L 67/04
C08L 101/16
C08K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料から射出成形体を製造する方法であって、
前記成形材料は、示差走査熱量分析における融点ピーク温度と融点ピークの終了温度の差が10℃以上70℃以下であり、
前記成形材料は、ペンタエリスリトールからなる結晶核剤を含まず、
溶融中の前記成形材料
が実際に示す温度が
、前記融点ピーク温度と前記融点ピークの終了温度の間になるように加熱溶融させて、
温度が30℃~80℃の範囲である金型に射出する工程、及び、
当該金型内で前記成形材料を冷却し、結晶固化させる工程を含む、射出成形体の製造方法。
【請求項2】
前記成形材料の射出成形時の射出率が1cc/sec以上30cc/sec以下である、請求項1に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項3】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む、請求項1又は2に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項4】
前記成形材料が、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対して無機フィラーを0量部以上40重量部以下含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項5】
前記成形材料が前記無機フィラーを含有し、前記無機フィラーがケイ酸塩である、請求項4に記載の射出成形体の製造方法。
【請求項6】
前記ケイ酸塩は、タルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト、及び、スメクタイトからなる群より選択される1種以上である、請求項5に記載の射出成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含有する射出成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、欧州を中心に生ゴミの分別回収やコンポスト処理が進められており、生ゴミと共にコンポスト処理できるプラスチック製品が望まれている。
【0003】
一方で、廃棄プラスチックが引き起こす環境問題がクローズアップされ、特に海洋投棄や河川などを経由して海に流入したプラスチックが、地球規模で多量に海洋を漂流していることが判ってきた。この様なプラスチックは長期間にわたって形状を保つため、海洋生物を拘束、捕獲する、いわゆるゴーストフィッシングや、海洋生物が摂取した場合は消化器内に留まり摂食障害を引き起こすなど、生態系への影響が指摘されている。
【0004】
更には、プラスチックが紫外線などで崩壊・微粒化したマイクロプラスチックが、海水中の有害な化合物を吸着し、これを海生生物が摂取することで有害物が食物連鎖に取り込まれる問題も指摘されている。
【0005】
この様なプラスチックによる海洋汚染に対し、生分解性プラスチックの使用が期待されるが、国連環境計画が2015年に取り纏めた報告書(非特許文献1)では、ポリ乳酸などのコンポストで生分解可能なプラスチックは、温度が低い実海洋中では短期間での分解が期待できないために、海洋汚染の対策にはなりえないと指摘されている。
【0006】
この様な中、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は海水中でも生分解が進行しうる材料であるため、上記課題を解決する素材として注目されている。
【0007】
しかし、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、結晶化速度が遅いことから、成形加工に際して樹脂を加熱溶融させた後、固化のために冷却時間を長くとる必要があり、生産性が悪いという問題があった。
これに対し、特許文献1では、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂に対し、結晶核剤としてペンタエリスリトールを混合して成形加工することにより、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の固化性を改善して、射出成形等の成形加工時の速度を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】国連環境計画2015,BIODEGRADABLE PLASTICS & MARINE LITTER
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載の発明によると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の成形加工速度を向上させることができるものの、結晶核剤であるペンタエリスリトールが、射出成形時に金型表面に付着して金型を汚染する問題が発生する場合があった。特に、金型表面にシボ加工がされている場合、その汚染の程度が大きくなることが判明した。
【0011】
本発明は、上記現状に鑑み、金型汚染の要因となり得る結晶核剤を使用しなくとも、優れた生産性で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含有する成形材料の射出成形を実施できる、射出成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の溶融特性を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂含有成形材料を、特定の温度条件下で射出成形することにより、金型汚染の要因となり得る結晶核剤を使用しなくとも、優れた生産性で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を主体とする射出成形体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料から射出成形体を製造する方法であって、前記成形材料は、示差走査熱量分析における融点ピーク温度と融点ピークの終了温度の差が10℃以上70℃以下であり、前記成形材料の温度が前記融点ピーク温度と前記融点ピークの終了温度の間になるように加熱溶融させて、温度が30℃~80℃の範囲である金型に射出する工程、及び、当該金型内で前記成形材料を冷却し、結晶固化させる工程を含む、射出成形体の製造方法に関する。好ましくは、前記成形材料の射出成形時の射出率が1cc/sec以上30cc/sec以下である。好ましくは、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を含む。好ましくは、前記成形材料が、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対して無機フィラーを0量部以上40重量部以下含有する。好ましくは、前記無機フィラーがケイ酸塩であり、より好ましくは、前記ケイ酸塩は、タルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト、及び、スメクタイトからなる群より選択される1種以上である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金型汚染の要因となり得る結晶核剤を使用しなくとも、優れた生産性で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含有する成形材料の射出成形を実施できる、射出成形体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明におけるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂とは、微生物から生産され得る脂肪族ポリエステル樹脂であって、少なくとも3-ヒドロキシブチレートを繰り返し単位として含むポリエステル樹脂である。当該ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、3-ヒドロキシブチレートのみを繰り返し単位とするポリ(3-ヒドロキシブチレート)であってもよいし、3-ヒドロキシブチレートと他のヒドロキシアルカノエートとの共重合体であってもよい。また、前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は、単独重合体と1種または2種以上の共重合体の混合物、又は、2種以上の共重合体の混合物であってもよい。
【0017】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の具体例としては、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタデカノエート)等が挙げられる。中でも、工業的に生産が容易であることから、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)が好ましい。
【0018】
更には、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点、結晶化度を変化させ、ヤング率、耐熱性などの物性を変化させることができ、ポリプロピレンとポリエチレンとの間の物性を付与することが可能であること、また上記したように工業的に生産が容易であり、物性的に有用なプラスチックであるという観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が好ましい。特に、180℃以上の加熱下で熱分解しやすい特性を有するポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)は融点が低く低温での成形加工が可能となるため好ましい。
【0019】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)の繰り返し単位の組成比は、柔軟性と強度のバランスの観点から、3-ヒドロキシブチレート単位/3-ヒドロキシヘキサノエート単位の組成比が80/20~99/1(mol/mol)であることが好ましく、75/15~97/3(mo1/mo1)であることがより好ましい。その理由は、柔軟性の点から99/1以下が好ましく、また樹脂が適度な硬度を有する点で80/20以上が好ましいからである。
【0020】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)の市販品としては、株式会社カネカ「カネカ生分解性ポリマーPHBH」(登録商標)などが挙げられる。
【0021】
前記ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバリレート)は、3-ヒドロキシブチレート成分と3-ヒドロキシバリレート成分の比率によって融点、ヤング率などが変化するが、両成分が共結晶化するため結晶化度は50%以上と高く、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)に比べれば柔軟ではあるが、脆性の改良は不充分である。
【0022】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、射出成形時のせん断発熱を抑えるために、低いことが好ましく、具体的には、45万以下であることが好ましく、30万以下であることがより好ましい。下限値は特に限定されないが、成形体の機械的強度の観点から10万以上であることが好ましく、15万以上であることがより好ましい。
【0023】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用い、ポリスチレン換算により測定することができる。該ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるカラムとしては、重量平均分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0024】
本発明では、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂として、示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの終了温度の差が10℃以上70℃以下であるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を用いることが好ましい。当該温度差が10℃以上70℃以下であるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を用いることで、示差走査熱量分析における融点ピーク温度と融点ピークの終了温度の差が10℃以上70℃以下である成形材料を得ることができる。前記温度差が10℃以上70℃以下である成形材料は、これを溶融させる際に、樹脂の溶融と同時に、一部の樹脂結晶を溶融させずに残存させることが容易になる。このように一部の樹脂結晶を残存させることで、後述するように、良好な固化性にて、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料の射出成形を実施することが可能になる。
【0025】
前記成形材料又はポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂における前記温度差は、12℃以上であることがより好ましく、15℃以上であることがさらに好ましく、18℃以上であることがよりさらに好ましく、20℃以上であることが特に好ましく、25℃以上であることが最も好ましい。前記温度差の上限は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の製造の容易さの観点から、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、38℃以下であることがさらに好ましく、35℃以下であることがより更に好ましく、33℃以下であることが特に好ましい。
【0026】
本発明において、示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの終了温度は、以下の様に定義される。試料4~10mgをアルミパンに充填し、示差走査熱量分析器を用いて、窒素気流下、30℃から180℃まで10℃/分の速度で昇温して前記試料が融解した時に得られる吸熱曲線において、吸熱量が最大となった温度を融点ピーク温度とし、融点ピークが終了し吸熱が認められなくなった温度を融点ピークの終了温度とした。なお、前記融点ピーク温度及び融点ピークの終了温度は、成形材料全体について測定される。
【0027】
前記融点ピーク温度と融点ピークの終了の温度差が10℃以上70℃以下であるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂としては、融点ピークがブロードで高融点成分を含むポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を使用することができる。また、当該融点ピークがブロードで高融点成分を含むポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と、融点特性が異なる他のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂とを組み合わせて使用することもできる。
【0028】
前記融点ピークがブロードで高融点成分を含むポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、国際公開第2015/146194号に記載されているとおり、融点挙動が異なる少なくとも2種のポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を、単一の微生物中で同時に生産させ、混合樹脂として得る方法がある。
【0029】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料には、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂以外の他の樹脂が含まれていてもよい。そのような他の樹脂としては、例えば、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル系樹脂や、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンセバテートテレフタレート、ポリブチレンアゼレートテレフタレートなどの脂肪族芳香族ポリエステル系樹脂等が挙げられる。他の樹脂としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。
【0030】
前記他の樹脂の含有量は、特に限定されないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対して、40重量部以下が好ましく、より好ましくは30重量部以下である。他の樹脂の含有量の下限は特に限定されず、0重量部であってもよい。
【0031】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料は、無機フィラーを含有しなくともよいが、射出成形体の強度向上の観点から、無機フィラーを含有してもよい。
【0032】
前記無機フィラーとしては、射出成形用の樹脂材料に添加できる無機フィラーであれば特に限定されず、例えば、石英、ヒュームドシリカ、無水ケイ酸、溶融シリカ、結晶性シリカ、アモルファスシリカ、アルコキシシランを縮合してなるフィラー、超微粉無定型シリカ等のシリカ系無機フィラー、アルミナ、ジルコン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、ガラス、シリコーンゴム、シリコーンレジン、酸化チタン、炭素繊維、マイカ、黒鉛、カーボンブラック、フェライト、グラファイト、ケイソウ土、白土、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マンガン、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、銀粉等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上併用してもよい。
【0033】
前記無機フィラーは、成形材料中での分散性を上げるために表面処理されたものであってもよい。表面処理に使用する処理剤としては、高級脂肪酸、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、ゾル-ゲルコーティング剤、樹脂コーティング剤等が挙げられる。
【0034】
前記無機フィラーの水分量は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の加水分解を抑制しやすいため、0.01~10%であることが好ましく、0.01~5%がより好ましく、0.01~1%が更に好ましい。当該水分量は、JIS-K5101に準拠して求めることができる。
【0035】
前記無機フィラーの平均粒子径は、成形材料の特性や加工性に優れるため、0.1~100μmであることが好ましく、0.1~50μmがより好ましい。当該平均粒子径は、日機装社製「マイクロトラックMT3100II」などのレーザー回折・散乱式の装置を用いて測定することができる。
【0036】
耐熱性の向上や加工性の改善効果等を得ることができるため、無機フィラーの中でも、ケイ酸塩に属する無機フィラーが好ましい。更に、射出成形体の機械的強度向上効果が大きく、粒径分布が小さく表面平滑性や金型転写性を阻害しにくいため、ケイ酸塩の中でも、タルク、マイカ、カオリナイト、モンモリロナイト、及び、スメクタイトからなる群より選択される1種以上が好ましい。ケイ酸塩は2種以上を併用してもよく、その場合、ケイ酸塩の種類及び使用比率は適宜調節することができる。
【0037】
前記タルクとしては、汎用のタルク、表面処理タルク等が挙げられ、具体的には、日本タルク社の「ミクロエース」(登録商標)、林化成社の「タルカンパウダー」(登録商標)、竹原化学工業社や丸尾カルシウム社製のタルクが例示される。
【0038】
前記マイカとしては、湿式粉砕マイカ、乾式粉砕マイカ等が挙げられ、具体的には、ヤマグチマイカ社や啓和炉材社製のマイカが例示される。
【0039】
前記カオリナイトとしては、乾式カオリン、焼成カオリン、湿式カオリン等が挙げられ、具体的には、林化成社「TRANSLINK」(登録商標)、「ASP」(登録商標)、「SANTINTONE」(登録商標)、「ULTREX」(登録商標)や、啓和炉材社製のカオリナイトが例示される。
【0040】
前記無機フィラーの配合量は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂100重量部に対して0重量部以上40重量部以下であることが好ましい。無機フィラーは配合しなくてもよいが、無機フィラーを配合することで射出成形体の強度が向上する利点が得られる。無機フィラーを配合する場合、その配合量は5重量部以上35重量部以下が好ましく、10重量部以上30重量部以下がより好ましい。無機フィラーの配合量が40重量部を超えると溶融樹脂の流動性が低下する場合がある。
【0041】
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料は、ペンタエリスリトールからなる結晶核剤を含有しなくともよい。本発明の製造方法によると、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料が結晶核剤を含有しなくとも、金型内での結晶固化が促進され、生産性良く、射出成形体を製造することができる。前記成形材料が結晶核剤を含有しない場合、金型表面に結晶核剤が付着して金型が汚染されることを回避できる。
【0042】
また、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料には、本発明の効果を阻害しない範囲で、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂と共に使用可能な添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、顔料、染料などの着色剤、活性炭、ゼオライト等の臭気吸収剤、バニリン、デキストリン等の香料、可塑剤、酸化防止剤、抗酸化剤、耐候性改良剤、紫外線吸収剤、滑剤、離型剤、撥水剤、抗菌剤、摺動性改良剤等が挙げられる。添加剤としては1種のみが含まれていてもよいし、2種以上が含まれていてもよい。これら添加剤の含有量は、その使用目的に応じて当業者が適宜設定可能である。
【0043】
本発明の射出成形体の製造方法は、具体的には、上述したポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料を、射出成形機のバレル内で加熱し溶融させた後、射出成形機の先端に接続したノズルから、溶融樹脂を金型に射出する工程、及び、溶融樹脂を金型内で冷却し、固化させる工程、を含む。
【0044】
本発明では、射出成形を生産性よく実施するため、前記溶融時の成形材料の温度を、該成形材料の示差走査熱量分析における融点ピーク温度と、融点ピークの終了温度の間の温度に設定する。なお、ここで述べる成形材料の温度は、射出成形機における設定温度を指すものではなく、溶融中の成形材料が実際に示す温度を指す。実際に示す温度とは、成形時と同条件でパージ(金型からノズルを離し、溶融した樹脂を射出する工程)後の樹脂を球状にし、その内部の温度を接触温度計で測定したものである。溶融時の成形材料の温度は、射出成形機における設定温度や、後述する射出率によって変動し得るので、これらを適宜調節することにより溶融時の成形材料の温度を制御することができる。
【0045】
以上のような温度条件を採用することで、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を射出成形加工可能なレベルまで溶融させると同時に、溶融樹脂中に樹脂結晶の一部を残存させることができる。このように残存した樹脂結晶が、溶融樹脂に対し結晶核剤として作用することで、溶融樹脂が結晶固化しやすくなり、良好な生産性にて、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を含む成形材料の射出成形を実施することが可能になる。
【0046】
溶融時の前記成形材料の温度が融点ピーク温度未満で射出成形を実施しようとすると、溶融する樹脂量が少なく、流動不足のため射出成形を実施できなかったり、たとえ実施できても、得られる射出成形体にフローマーク等の外観不良が発生しやすくなる。一方、溶融時の前記成形材料の温度が融点ピークの終了温度を超えると、溶融樹脂中に樹脂結晶が残存せず、結果、溶融樹脂の結晶固化が遅くなり、金型からの離型不良及びそれに伴う成形体の変形が生じたり、成形サイクルが長くなり、生産性が低下する。
【0047】
本発明の製造方法においては、前記溶融時の成形材料の温度を制御する観点から、射出率を調節することが望ましい。一般的な射出成形では高速の射出率を採用するのに対し、本発明では、成形材料の温度が融点ピークの終了温度を超える程の高温に達しないように、射出率をある程度抑制することが望ましい。具体的には、射出率を30cc/sec以下に制御することが好ましい。これにより、溶融時の成形材料の温度を、融点ピークの終了温度未満の温度に制御することが容易となり、溶融樹脂の結晶固化を速めることができる。射出率は、25cc/sec以下がより好ましく、20cc/sec以下がさらに好ましい。
【0048】
一般的な樹脂を用いた射出成形では射出率を低下させると、得られる射出成形体にフローマークが生じやすくなり望ましくないが、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂は一般的な樹脂と比較して結晶固化速度が遅いため、射出率を低下させてもフローマークは生じにくい。射出率の下限値は特に限定されないが、1cc/sec以上が好ましい。なお、射出率は、下記式により決定することができる。
射出率[cc/sec]=(射出成形時の計量位置から保圧切替位置までの射出容量[cc])/(保圧時間を除く射出時間[sec])
【0049】
本発明の製造方法では、所定の形状を有する金型の設定温度を30~80℃の範囲に設定し、当該金型に溶融材料を射出する。所定量の溶融樹脂を射出した後、金型内で一定時間保持することで、溶融樹脂を冷却し、結晶固化させて成形体を形成する。金型の設定温度が30℃未満または80℃を超えた場合、結晶固化速度が遅くなり、エジェクターピンで成形体を突き出す時に、成形体が変形する。前記金型の設定温度は35~70℃の範囲が好ましく、38~60℃の範囲がさらに好ましく、40~50℃が特に好ましい。金型内で冷却するために保持する時間は特に限定されず、成形体の形状等を考慮して当業者が適宜決定することができる。
【0050】
このようにして溶融樹脂を金型内で冷却し、固化させた後、金型を開き、エジェクターピン等を用いて成形体を突き出して離型することで、射出成形体を得ることができる。
【0051】
本発明で適用可能な射出成形法としては、熱可塑性樹脂を成形する場合に一般的に採用される射出成形法の他、ガスアシスト成形法、射出圧縮成形法等の射出成形法を採用することができる。また、インモールド成形法、ガスプレス成形法、2色成形法、サンドイッチ成形法、PUSH-PULL、SCORIM等を採用することもできる。ただし、本発明で使用可能な射出成形法は、以上の方法に限定されるものではない。
【0052】
本発明により得られる射出成形体の用途は特に限定されないが、例えば、食器類、農業用資材、OA用部品、家電部品、自動車用部材、日用雑貨類、文房具類、ボトル成形品、押出シート、異型押出製品等が挙げられる。また、本発明により得られる射出成形体は、樹脂成分が主にポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂から構成されるため、海水分解性を有しており、そのため、プラスチックの海洋投棄による環境問題を解決し得るものである。
【実施例】
【0053】
以下に実施例と比較例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
【0054】
〈PHBH(A)の製造例〉
特許文献1に記載の培養生産方法でKNK-005株(米国特許7384766号参照)を用いて生産した。また培養後、培養液から国際公開第2010/067543号に記載の方法にてポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)を得た。GPCで測定した重量平均分子量Mwは43万であった。
【0055】
〈PHBH(B)の製造例〉
炭素源にPKO(パームカーネルオイル)を使用した以外は国際公開第2015/146195号の実施例1に記載の培養生産方法、及び、実施例11に記載のKNK-005 ΔphaZ1::Plac-phaCRe ΔphaZ2,6株を用いて生産した。GPCで測定した重量平均分子量Mwは45万であった。
【0056】
(重量平均分子量の測定方法)
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂の重量平均分子量は、まず、該ポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂をクロロホルムに溶解させて60℃の温水槽中で0.5時間加温し、可溶分をPTFE製0.45μm孔径ディスポーザーブルフィルターにてろ過した後、そのろ液を用いて、以下の条件でGPC測定を行うことにより測定した。
GPC測定装置:日立株式会社製RIモニター(L-3000)
カラム:昭和電工社製K-G(1本)、K-806L(2本)
試料濃度:3mg/ml
遊離液:クロロホルム溶液
遊離液流量:1.0ml/分
試料注入量:100μL
分析時間:30分
標準試料:標準ポリスチレン
【0057】
(使用した樹脂原料)
PHBH(A):示差走査熱量分析における融点ピーク温度と融点ピークの終了温度の差が10℃未満(7℃)であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(3-ヒドロキシヘキサノエート比率5.8mol/%)
PHBH(B):示差走査熱量分析における融点ピーク温度と融点ピークの終了温度の差が10℃以上70℃以下(33℃)であるポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(3-ヒドロキシヘキサノエート比率6.8mol/%)
結晶核剤:ペンタエリスリトール(日本合成化学社製 ノイライザーP)
無機フィラー:タルク(日本タルク社製 ミクロエースK1)
【0058】
(示差走査熱量分析評価)
試料4~10mgをアルミパンに充填し、示差走査熱量分析器を用いて、窒素気流下、30℃から180℃まで10℃/分の速度で昇温して前記試料が融解した時に得られる吸熱曲線において、吸熱量が最大となった温度を融点ピーク温度とし、融点ピークが終了し吸熱が認められなくなった温度を融点ピークの終了温度とした。
【0059】
(射出成形評価法)
A法:射出成形機としてTOYO Si-30V/型締め力30トンを使用した。金型として、全長100mmの小型スプーン(サイドゲート幅1mm×厚み1mm)、1個取りのものを使用した。
B法:射出成形機としてTOYO Si-180V/型締め力180トンを使用した。金型として、全長160mmのスプーン(サイドゲート幅2mm×厚み1mm)、8個取りのものを使用した。
【0060】
(射出率算出方法)
射出成形時の計量位置から保圧切り替え位置までの射出容量(cc)を、保圧時間を除く射出時間(sec)で割り、射出率を算出した。
【0061】
(成形時材料温度の測定方法)
各評価成形条件で30ショット連続成形後に、パージ(金型からノズルを離し、溶融した樹脂を射出する工程)後の樹脂を球状にし、その内部の温度を接触温度計で測定した。
【0062】
(固化性評価)
金型内での冷却時間を20秒として射出成形を行い、離型して得られた射出成形体の変形の有無を評価した。離型時に成形体が変形することは、成形材料の固化性が十分でないことを示す。
判定〇:成形体の変形なし
判定×:成形体の変形あり
【0063】
(金型汚染評価)
30ショット連続成形後に製品部分の金型表面を目視評価した。
判定〇:金型表面に付着物なし
判定×:金型表面に付着物あり
【0064】
(実施例1)
PHBH(B)をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表1に示した。
【0065】
(実施例2)
PHBH(B)をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はB法とした。結果を表1に示した。
【0066】
(実施例3)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー20重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表1に示した。
【0067】
(実施例4)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー20重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はB法とした。結果を表1に示した。
【0068】
(実施例5)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー30重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表1に示した。
【0069】
(実施例6)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー30重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はB法とした。結果を表1に示した。
【0070】
(実施例7)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー20重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を35℃に設定し、溶融させた樹脂を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表1に示した。
【0071】
(実施例8)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー20重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を60℃に設定し、溶融させた樹脂を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表1に示した。
【0072】
(実施例9)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー20重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を80℃に設定し、溶融させた樹脂を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表1に示した。
【0073】
(比較例1)
PHBH(A)をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表2に示した。
【0074】
(比較例2)
PHBH(A)100重量部と結晶核剤であるペンタエリスリトール1重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表2に示した。
【0075】
(比較例3)
PHBH(A)100重量部と結晶核剤であるペンタエリスリトール1重量部と無機フィラー30重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表2に示した。
【0076】
(比較例4)
PHBH(A)100重量部と結晶核剤であるペンタエリスリトール1重量部と無機フィラー30重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度140℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表2に示した。
【0077】
(比較例5)
PHBH(A)100重量部と結晶核剤であるペンタエリスリトール1重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を25℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表2に示した。
【0078】
(比較例6)
PHBH(A)100重量部と結晶核剤であるペンタエリスリトール1重量部と無機フィラー30重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を25℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表2に示した。
【0079】
(比較例7)
PHBH(B)をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を25℃に設定し、溶融させた樹脂を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表2に示した。
【0080】
(比較例8)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー30重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を25℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はA法とした。結果を表2に示した。
【0081】
(比較例9)
PHBH(B)100重量部と無機フィラー30重量部をコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度160℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を25℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はB法とした。結果を表2に示した。
【0082】
(比較例10)
PHBH(B)をバレル温度170℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はB法とした。B法にて、射出率を更に上げた状態で成形を行った。結果を表2に示した。
【0083】
(比較例11)
PHBH(B)と無機フィラーをコンパウンドした樹脂含有材料をバレル温度170℃で溶融させて射出成形した。その際、金型温度を45℃に設定し、溶融させた樹脂含有材料を冷却時間20秒で固化させた。冷却終了後に金型を開き離型し、得られた射出成形体について固化性を評価した。同条件で30ショット分の成形体を取得した後、金型内の鏡面部の付着物を確認した。使用する成形機と金型はB法とした。B法にて、射出率を更に上げた状態で成形を行った。結果を表2に示した。
【0084】
【0085】
【0086】
表1より、実施例1~9では、結晶固化速度が速く固化性が良好で、金型汚染が生じることなく、射出成形体を製造することができた。表2より、比較例1は、融点ピーク温度と融点ピークの終了温度の差が10℃未満であるポリ(3-ヒドロキシブチレート)系樹脂を使用し、射出成形時の材料温度が融点ピークの終了温度を超えたものであり、固化性が十分でなかった。比較例2~4は、比較例1に対し結晶核剤であるペンタエリスリトールを配合したものであり、固化性は改善したが、金型汚染が生じた。比較例5及び6は、比較例2及び3において金型温度として低温の25℃を採用したが、金型汚染は改善されず、固化性も十分でなかった。比較例7~9は、各実施例と同じ樹脂を使用し、射出成形時の材料温度も各実施例と同程度としたが、金型温度として低温の25℃を採用した結果、固化性が十分でなかった。比較例10及び11は、各実施例と同じ樹脂を使用し、金型温度も各実施例と同じとしたが、射出成形時の材料温度が融点ピークの終了温度を超えた結果、固化性が十分でなかった。