(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ヘリコプター用のアンチトルクローター
(51)【国際特許分類】
B64C 27/82 20060101AFI20240723BHJP
B64C 27/605 20060101ALI20240723BHJP
F16D 7/02 20060101ALI20240723BHJP
F16D 9/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B64C27/82
B64C27/605
F16D7/02 B
F16D9/00 300
(21)【出願番号】P 2021544621
(86)(22)【出願日】2020-05-26
(86)【国際出願番号】 IB2020054976
(87)【国際公開番号】W WO2020260979
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-05-10
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518160436
【氏名又は名称】レオナルド・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミケーレ・デッリ・パオリ
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ・ナンノーニ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト・ヴァンニ
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0253328(US,A1)
【文献】実開昭48-097084(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 27/00
F16D 7/00
F16D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリコプター(1)のアンチトルクローター(4)であって、前記アンチトルクローター(4)は、
第1の軸(A)回りに回転可能なマスト(6)と、
前記マスト(6)にヒンジで連結された複数のブレード(8)であって、前記第1の軸(A)を横断するそれぞれの第2の軸(B)に沿って延在し、かつそれぞれの迎え角を変えるためにそれぞれの前記第2の軸(B)回りに回転可能な複数のブレード(8)と、
前記マスト(6)に対して前記第1の軸(A)に沿ってスライドする制御要素(16)であって、前記制御要素(16)は、前記マスト(6)と一体に回転可能であり、かつ前記ブレード(8)に動作可能に接続されて、前記第1の軸(A)に沿った前記要素(16)の移動に続いてそれぞれの前記第2の軸(B)回りの前記ブレード(8)の回転を生じさせる、制御要素(16)と、
前記マスト(6)に対して前記第1の軸(A)に沿って軸方向にスライドし、前記第1の軸(A)に対して角度が固定されている制御機構(10)と、
前記制御機構(10)および前記制御要素(16)の間に挿入された接続要素(17)であって、前記マスト(6)に対して前記制御機構(10)と一体に前記第1の軸(A)に沿ってスライドし、正常な運用状態においては、前記第1の軸(A)回りの前記制御機構(10)に対する前記制御要素(16)の相対的な回転を可能にするよう構成された接続要素(17)と、
を備え、
前記制御機構(10)は、
第1のロッド(60)と、
前記接続要素(17)に接続された第2のロッド(61)と、
を備え、
前記ローター(4)は、前記第1および第2のロッド(60,61)が互いに一体に前記第1の軸(A)に沿ってスライドすることを可能にするカップリング(70)をさらに備え、
前記カップリング(70)は、使用中に前
記接続要素(17)によって前記第2のロッド(61)に加えられた前記第1の軸(A)回りのトルクが前記接続要素(17)の故障時の閾値より大きい場合に、前記第1のロッド(60)に対する前記第2のロッド(61)の回転を可能にするように構成され、
前記カップリング(70)は、使用中に前記接続要素(17)によって前記第2のロッド(61)に加えられたトルクが前記閾値未満の場合に、前記第1のロッド(60)に対する前記第2のロッド(61)の回転を防ぐよう構成されていることを特徴とする、アンチトルクローター(4)。
【請求項2】
前記カップリング(70)が前記第1のロッド(60)および前記第2のロッド(61)の半径方向の間に挿入された摩擦要素(72)を備え、前記摩擦要素(72)は、前記トルクが前記閾値未満の場合に前記第1のおよび第2のロッド(60,61)を互いに角度的に一体に維持するよう構成されることを特徴とする、請求項1に記載のローター。
【請求項3】
前記摩擦要素(72)が弾性的に変形可能な材料で作られていることを特徴とする、請求項2に記載のローター。
【請求項4】
前記第
1のロッド(60)に対する前記第2のロッド(61)の前記第1の軸(A)回りの回転に関連する信号を生成するよう構成されたセンサ(50)を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のローター。
【請求項5】
前記センサ(50)は、前記第1のロッド(60)および前記第2のロッド(61)の間に挿入された要素(65)を備え、前記要素(65)は、前記第1のロッド(60)に対する前記第2のロッド(61)の回転に続いて破壊可能であることを特徴とする、請求項4に記載のローター。
【請求項6】
前記カップリング(70)が前記第1のおよび第2のロッド(60,61)の間に挿入された第1の転がり軸受(71)をさらに備えることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のローター。
【請求項7】
前記第1の軸受(71)は、前記第1のロッド(60)から前記第2のロッド(61)に前記第1の軸(A)に沿った荷重を両方向に伝達することができることを特徴とし、
かつ前記第1の軸受(71)が、
前記第1のロッド(60)に固定された第1のリング(75)と、
前記第2のロッド(61)に固定された第2のリング(76)と、
使用時に、前記第1および第2のリング(75,76)によってそれぞれ画定された第1および第2の軌道(78,79)内で転動する複数の転動体(77)と、
を備えることを特徴とする、請求項6に記載のローター。
【請求項8】
前記第1のロッド(60)が
前記第2のロッド(61)の第1のセグメント(103)が通過する開いた軸方向端部(45)を有する管状本体(24)と、
前記管状本体(24)の前記軸方向端部(45)を閉じるよう配置されたリング形状カバー(26)であって、前記第2のロッド(61)の第2のセグメント(102)が通過するリング形状カバー(26)と、
を備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のローター。
【請求項9】
前記摩擦要素(72)が前記リング形状カバー(26)および前記第2のロッド(61)の前記第2のセグメント(102)の間に挿入されていることを特徴とする、請求項2に従属する請求項8に記載のローター。
【請求項10】
前記破壊可能要素(65)が前記リング形状カバー(26)および前記第2のロッド(61)の間に挿入されていることを特徴とする、請求項5に従属する請求項8または9に記載のローター。
【請求項11】
前記管状本体(24)、前記リング形状カバー(26)および前記第2のロッド(61)が前記第1の軸受(71)のための第2のシート(120)を画定することを特徴とする、請求項6に従属する請求項8~10のいずれか一項に記載のローター。
【請求項12】
前記第1のロッド(60)の前記管状本体(24)が前記第1の軸受(71)の前記第1のリング(75)に対して当接するよう構成された第1の肩部(90)を画定し、
前記第1のリング(75)は、前記第1の軸(A)の半径方向において前記管状本体(24)に固定され、
前記リング形状カバー(26)は、前記第2のロッド(61)を通過させ、前記第1の肩部(90)と軸方向に反対側の前記第1のリング(75)に接触する半径方向に延びる当接面(85)を画定することを特徴とする、請求項7に従属する請求項8~11のいずれか一項に記載のローター。
【請求項13】
前記第2のリング(76)は、前記第2のロッド(61)の前記第1のセグメント(103)に固定され、
前記第2のロッド(61)は、前記第2のセグメント(102)から半径方向に突出し、前記第1の軸受(71)の前記第2のリング(76)と軸方向で協同する第2の肩部(104)を備え、
前記カップリング(70)は、前記第2の肩部(104)と軸方向に反対側の位置で前記第2のロッド(61)に固定されたロック要素(106)をさらに備え、前記ロック要素(106)は、前記第
1の軸受(71)の前記第2のリング(76)と軸方向に協同することを特徴とする、請求項7に従属する請求項8~12のいずれか一項に記載のローター。
【請求項14】
前記接続要素(17)は、第2の転がり軸受(17)であり、
前記第2の軸受(17)は、
前記第1の軸(A)回りに前記制御要素(16)と一体に回転可能な第3のリング(30)と、
前記第1の軸(A)に対して前記第3のリング(30)の半径方向の内部にあり、前記第1の軸(A)に沿って前記制御機構(10)の前記第2のロッド(61)に一体である第4のリング(31)と、
前記第3および第4のリング(30,31)の間に挿入され、前記第3および第4のリング(30,31)のそれぞれのさらなる軌道(33,34)上を回転するよう構成された複数のさらなる転動体(32)と、
前記第2のロッド(61)のそれぞれの軸方向端部(95,96)に配置された前記第1のおよび第2の転がり軸受(17,71)と、
を備えることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載のローター。
【請求項15】
胴体(2)と、
メインローター(3)と、
請求項1~14のいずれか一項に記載のアンチトルクローター(4)と、
を備えるヘリコプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
【0002】
この特許出願は、2019年6月25日出願の欧州特許出願第19182436.6号からの優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれるものである。
【0003】
技術分野
本発明は、ヘリコプター用のアンチトルクローターに関する。
【背景技術】
【0004】
ヘリコプターは、基本的に胴体、胴体の上部に配置され、その軸を中心に回転可能なメインローター、および胴体の尾端に配置されたアンチトルクローターを含むことが知られている。
【0005】
ヘリコプターはまた、既知の方法で、例えばタービンなどの1つまたは複数の動力ユニットと、タービンとメインローターとの間に挿入され、タービンからメインローター自体に動力を伝達するように適合されたトランスミッションユニットとを備える。
【0006】
より詳細には、アンチトルクローターは、基本的に
-第1の軸を中心に回転可能なマスト
-第1の軸を中心に回転可能なハブ
-ハブから片持ち式で突出し、それぞれが第1の軸を横切るそれぞれの第2の軸に沿って延びる、ハブにヒンジで取り付けられた複数のブレード
を備える。
【0007】
アンチトルクローターのマストは、メイントランスミッションユニットによって駆動されるギアのセットによって回転駆動される。
【0008】
アンチトルクローターのブレードは、第1の軸の周りでマストと一体に回転し、第2の軸の周りで選択的に傾けることができるので、それぞれの迎え角を変え、その結果、アンチトルクローターによって及ぼされる推力を調整することができる。
【0009】
それぞれのブレードの迎え角を調整するために、アンチトルクローターは、
-ロッドであって、機械的接続またはフライバイワイヤリンクを介してパイロットが操作可能なペダルに動作可能に接続され、第1の軸に沿ってマスト内をスライドするが、第1の軸に対して角度が固定されているロッド
-「スパイダー」としても知られる制御要素であって、第1の軸の周りでマストと一体に回転可能であり、関連する第2の軸に対して偏心位置でそれぞれのブレードに接続された複数のアームを備える制御要素
-転がり軸受であって、第1の軸に対してスライド式に取り付けられ、ロッドと制御要素の間に挿入され、ロッドから回転可能な要素に軸方向荷重を伝達するように構成された転がり軸受
を備える。
【0010】
より具体的には、転がり軸受は、
-制御要素に固定された半径方向外側リング
-制御ロッドに固定された半径方向内側リング
-半径方向の内側リングと外側リングによって定義されるそれぞれの軌道を転がる複数の転がり体。
【0011】
軸受の通常の動作状態では、転動体は、内側リングに対して外側リングを回転させ、その結果、ロッドに対して制御要素を回転させることができる。
【0012】
ペダルを操作すると、制御ロッドが第1の軸と平行にスライドする。このスライドにより、転がり軸受を介して、制御要素が所与の移動経路に沿って第1の軸に平行にスライドする。
【0013】
このスライドにより、関連する第2の軸を中心にブレードが回転し、所与の移動経路に関連する等しい量だけそれぞれの迎え角が変化する。
【0014】
上記のことから、転がり軸受の故障の可能性は、アンチトルクローターを実質的に制御不能にする危険性があり、ヘリコプターに危険な状況を引き起こすことになる。
【0015】
特に、軸受内部への異物の偶発的な侵入、潤滑グリースの喪失、軌道または転動体の表面の損傷などにより、転動体および/または内側リングまたは外側リングの軌道が損傷した場合に、第1の故障状況が発生する可能性がある。
【0016】
この状態では、制御要素の制御ロッドへの相対回転を可能にする代わりに、転がり軸受は徐々に「焼き付き」を起こし、時間の経過とともに増大するねじりモーメントを外側リングから内側リングに不適切に伝達することになる。
【0017】
このねじりモーメントは、制御ロッドに伝わり、制御ロッドを損傷する危険性がある。
【0018】
この第1の故障状況に関して、これらのねじりモーメントが制御ロッドに不可逆的に損傷を与える可能性があるリスクを低減する必要性が業界で認識されている。
【0019】
転動体が破損し、その結果、内側リングが転動体から外れる場合、第2の故障状況が発生する可能性がある。この場合、軸受は第1の軸に平行にスライドできなくなり、ロッドによって制御要素が移動することはなくなる。
【0020】
ヘリコプターが完全に制御不能になる前にパイロットが迅速に着陸できるように、転がり軸受の故障状態を迅速に検出する必要があるという業界の認識がある。
【0021】
転がり軸受が故障した場合でも、アンチトルクローターの正確な制御性を確保する必要があるという業界の認識もある。
【0022】
特許文献1は、請求項1の前文によるヘリコプター用のアンチトルクローターを記載している。
【0023】
より詳細には、特許文献1は、マスト、ロッド、および直列に配置された第1および第2の軸受を含むアンチトルクローターを記載している。
【0024】
第1の軸受は、マストと共に回転可能な第1のリングおよび第2のリングを備える。
【0025】
第2の軸受は、第3のリングおよび第4のリングを備える。
【0026】
第2の軸受の第3のリングと第1の軸受の第1のリングは、回転不可能な方法で互いに接続されている。
【0027】
アンチトルクローターはまた、第3のリングと第4のリングとの間に挿入され、第4のリングに対する第3のリングの回転を防止するように適合されたロック装置を備える。このロック装置は、第1の軸受が故障した場合は壊れやすく、第1の軸受が正しく動作している場合は壊れない要素で構成されている。
【0028】
特許文献1に示されている解決策は、ロック装置を使用し、第2の軸受の第3のリングと第1の軸受の第1のリングを一緒に接続する必要があるため、特に複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
本発明の目的は、前述のニーズの少なくとも1つを簡単かつ安価な方法で満たすことを可能にするアンチトルクローターを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前述の目的は、請求項1に定義されたアンチトルクローターに関する本発明によって達成される。
【0032】
本発明をよりよく理解するために、好ましい実施形態を、純粋に非限定的な例として、添付の図面を参照して、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明によるアンチトルクローターを備えたヘリコプターの斜視図である。
【
図2】
図1のアンチトルクローターの上面図である。
【
図3】
図1のアンチトルクローターの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1を参照すると、参照番号1は、特に、ヘリコプターを示し、
- 胴体2
- 1つまたは複数のタービン5
- 胴体2の上部に配置され、軸A回りに回転可能なメインローター3
- 胴体2の尾端に配置され、軸Aに対して横方向の軸回りに回転可能なアンチトルクローター4
を備える。
【0035】
ヘリコプター1はまた、タービン5からメインローター3に動力を伝達するトランスミッションユニット11を備える。
【0036】
次に、トランスミッションユニット11は、
- タービン5からメインローター3に動力を伝達するギアトレイン12
-ギアトレイン12からアンチトルクローター4に動力を伝達するシャフト13
を備える。
【0037】
既知の方法で、メインローター3は、ヘリコプター1の離昇および前進飛行を可能にする配向可能な推力を提供するように適合されている。
【0038】
アンチトルクローター4は推力を発生させ、胴体2に逆トルクを引き起こす。
【0039】
この逆トルクは、メインローター3によって加えられるトルクとは反対の方向に向けられる。
【0040】
したがって、アンチトルクローター4によって生成される推力の量に応じて、ヘリコプター1を所望のヨー角に従って方向付けるか、または実行したい操縦に応じてヨー角を変えることが可能である。
【0041】
図2から
図5を参照すると、アンチトルクローター4は基本的に、
- 軸A回りに回転可能で、既知の方法でシャフト13に動作可能に接続されたマスト6
- 軸Aを横切るそれぞれの軸Bに沿って片持ち式に延びる、複数(図示の場合は3つ)のブレード8
- マスト6の一部に外部から固定されたハブ9であって、軸Aを中心にマスト6と一体的に回転可能であり、その上にブレード8がヒンジで固定されている、ハブ9
を備える。
【0042】
より具体的には、ブレード8は、以下のようにハブ9にヒンジで固定されている。
- 軸Aを中心にハブ9およびマスト6と一体的に回転可能である。
- それぞれの迎え角を変えるために、それぞれの軸Bを中心に同じ角度で同時に時間とともに傾けることができる。
【0043】
特に、ハブ9は、それぞれのブレード8に接続するために軸Aに対して半径方向に突出する複数の接続要素27を備える。各ブレード8はまた、軸Aに対して半径方向内側に配置され、ハブ9の関連する接続要素27にヒンジで固定されたルート部分14を備える。
【0044】
前述の迎え角を変えるために、アンチトルクローター4はまた、
- パイロット、例えばペダルによって操作可能な飛行制御装置15(
図1に概略的にのみ示されている)
- 機械的接続またはフライ・バイ・ワイヤ方式により、飛行制御15によって操作可能であり軸Aに平行にスライドする制御機構10
- 軸A回りにマスト6と一体的に回転可能であり、関連する軸Bに対して偏心してブレード8に接続された要素16
- 制御機構10と共同で、軸Aに平行にスライド可能で、制御機構10と要素16の間に半径方向に挿入されてスライドする軸受17
を備える。
【0045】
より具体的には、マスト6は中空である。
【0046】
マスト6は、
- 軸方向端部20
- 端部20の反対側で開いた軸方向端部21
- 軸方向端部20と21の間にはさまれ、ハブ9が取り付けられている主要部分22
を備える(
図4および5)。
【0047】
主要部分22はまた、シャフト13から動力を受け取るように適合されたフランジ19を画定する。
【0048】
より具体的には、マスト6は、フランジ19で最大直径を有し、フランジ19から端部20および21に向かって徐々に減少する直径を有する。
【0049】
制御機構10は、部分的にマスト6の内部に収容されている。
【0050】
次に、要素16は
- 部分的にマスト6に収容され、軸Aに対してスライド方式でマスト6に接続された管状本体40
- 軸Aに直交して延在し、マスト6の反対側の端部で管状本体40に固定されたフランジ42
- 軸Aを横切るそれぞれの軸Cの周りでフランジ42にヒンジで取り付けられ、関連する軸Bに対して偏心位置でそれぞれのブレード8にヒンジで取り付けられた複数のレバー43
を備える(
図4)。
【0051】
フランジ42および軸受17は、マスト6の外側に収容されている。
【0052】
より具体的には、フランジ42および軸受17は、端部21に対して端部20とは反対側の端部に配置されている。
【0053】
フランジ42は、軸Aに沿ってスライドし、管状本体40の一部を保護する単一のベローズ継手44によってマスト6に接続されている。
【0054】
レバー43は、概して、軸Aに対して傾斜しており、フランジ42から端部20に向かって延在する。
【0055】
軸Aに沿った制御機構10の並進は、軸受17を介して、要素16の並進を引き起こす。
【0056】
軸Aに沿った要素16のスライドに続いて、レバー43は、軸Aに対するそれらの傾斜を相互に同一の角度だけ変化させ、相互に等しい角度でそれぞれの軸B回りのブレード8の同時回転を引き起こす。
【0057】
特に、レバー43は、それぞれのブレード8のルート部分14にヒンジで取り付けられている。
【0058】
軸受17は、軸Aに平行な軸方向荷重を両方向に伝達することができる。
【0059】
換言すれば、軸受17は、機構10が軸Aに沿って両方向に並進することにより、要素16が同じ方向に並進するように構成されている。
【0060】
したがって、軸受17は、軸Aに対して軸方向に一体で角度的に移動可能な方法で制御機構10と要素16を接続するトランスミッションユニットを画定する。
【0061】
次に、軸受17は、
- 要素16と一体的に回転可能な外側リング30
- 機構10と一体的にスライドする内側リング31
- 示されている場合のボールの二重リングでは、それぞれのリング30および31によって規定されるそれぞれの軌道33および34上を転がる複数の転動体32
を備える。
【0062】
示されている場合、リング31は、相互に反対側に一対の肩部35および36を有し、リング30に向かって半径方向に突出し、転動体32用のそれぞれの軸方向当接面を画定する。転動体32は、特に、肩部35と36との間に軸方向に挿入されている。
【0063】
さらに、リング31は、2つのハーフリングで作られ、示されている場合では、互いに軸方向に接触して配置されている。
【0064】
リング30は、肩部35と36との間に軸方向にはさまれ、リング31に向かって半径方向に突出し、転動体32のそれぞれの当接面を画定する肩部37を備える。肩部37は、軸Aに対して半径方向の軸受17の対称面上で、転動体32の間に軸方向に挿入されている。
【0065】
さらに、外側リング30は、軸Aに対して半径方向におけるフランジ42の反対側の要素16の管状本体40に固定されている。
【0066】
次に、制御機構10は、有利には、
- 飛行制御装置15によって操作されるロッド60
- 軸受17に接続されたロッド61
を備える。
【0067】
アンチトルクローター4はまた、ロッド60および61が互いに一体的に軸Aに沿ってスライドすることを可能にするカップリング70を備える。
【0068】
カップリング70はまた、
- 軸受17によって軸A回りのロッド61に加えられるトルクが、軸受17の故障条件における閾値よりも大きい場合に、ロッド60に対するロッド61の回転を可能にする
- 軸受17によってロッド61に加えられるトルクが閾値よりも小さい場合に、ロッド60に対するロッド61の回転を防止する
ように構成されている。
【0069】
より詳細には、ロッド61は、軸受17のリング31に固定されている。
【0070】
通常の動作条件において、軸受17は、リング31に対してリング30、すなわちロッド61に対する要素16の軸A回りの自由な回転を可能にすることを強調することが重要である。言い換えると、軸受17は、ねじりモーメントをロッド61に伝達しない。
【0071】
軸受17の故障の原因の一つは、軸受17の「焼き付き」が進行することによって起こる。この状態で、軸受のリング31は、転動体32によって軸Aを中心に回転方向に徐々に引きずられる。
【0072】
その結果、故障状態により、軸受17は、ねじりモーメントをロッド61に不適切に伝達することになる。
【0073】
より詳細には、カップリング70は
- 高摩擦材料で作られたリング72
- ロッド60と61の間に挿入された転がり軸受71
を備える(
図4および
図5)。
【0074】
リング72は、ロッド60と61との間に半径方向に挿入されている。
【0075】
リング72の材料の摩擦係数は、このトルクが閾値より小さく、ロッド60および61の正しい動作にとって実質的にまだ危険ではない場合、軸受17によってロッド61に加えられるトルクに対抗するようなものである。
【0076】
この状態では、カップリング70は、ロッド60および61の両方を軸A回りに角度的に固定した状態に保つ。その結果、ロッド60と61の両方が軸受17によって伝達されるねじりモーメントを受ける。
【0077】
軸受17によってロッド61に伝達されるトルクが閾値よりも大きく、したがって、ロッド60および61の正しい動作にとって実質的に危険である場合、リング72によって対抗することができなくなる。その結果、カップリング70は、ロッド61を軸A回りにロッド60に対して、故障した軸受17と一体的に回転可能させる。この状態では、ロッド61は回転自由である。したがって、ロッド60および61は、閾値を超える、故障した軸受17によって不適切に伝達されるトルクを受けない。
【0078】
さらに、軸受17、したがって要素16もまた、軸Aに沿った並進に関してロッド60および61に一体的に接続されたままであり、それにより、軸受17の故障の状態においてさえ、ブレード8の迎え角を調整する可能性を維持する。
【0079】
示されている場合、リング72はエラストマー材料でできている。
【0080】
軸受71は、軸受17と同様に、軸Aに平行な軸方向荷重を両方向に伝達することができる。
【0081】
換言すれば、軸受71は、飛行制御装置15の動作を介した両方向へのロッド60の並進が、同じ方向へのロッド61の対応する並進を引き起こすように構成される。
【0082】
したがって、軸受71は、軸Aに関して角度的に移動可能な方法で、および軸Aに関して軸方向に固定された方法で、ロッド60および61を接続する。
【0083】
次に、軸受71は
- ロッド60に接続された半径方向外側リング75
- ロッド61に接続された半径方向内側リング76
- 複数の転動体77、示されている場合、それぞれのリング75および76によって画定されるそれぞれの軌道78および79上を転がるボールの二重リング
を備える。
【0084】
示されている場合、リング76は、相互に軸方向反対側に一対の肩部80および81を有し、リング75に向かって半径方向に突出し、転動体77用のそれぞれの軸方向当接面を画定する。転動体77は、特に、肩部80と81との間に軸方向に挿入されている。
【0085】
さらに、リング76は、2つのハーフリングで作られ、示されている場合、互いに軸方向に接触して配置されている。
【0086】
軸受71のリング75は、肩部80と81との間に軸方向にはさまれ、リング76に向かって半径方向に突出し、転動体77のそれぞれの当接面を画定する肩部82を備える。肩部82は、軸Aに対して半径方向の軸受71の対称面上で、転動体77の間に軸方向に挿入されている。
【0087】
次に、ロッド60は、
- 飛行制御装置15によって操作可能な主要部分25
- 軸受17の側面に配置された環状端部リング26。
を備える。
【0088】
次に、主要部分25は、
- 飛行制御装置15の操作に続いて、軸方向変位を受けるように適合され、主要部分25を区切る(
図4)、軸受17と反対の軸方向端部23
- 端部23の反対側の軸方向端部の隆起部24であり、軸受71を受け入れるためのキャビティ45を画定する、隆起部24
を備える。
【0089】
隆起部24は、
- 軸方向に延びる表面91
- 表面91よりも直径が小さい、半径方向に延びる肩部90
を備える。
【0090】
次に、リング26は
- 半径方向に延びるヘッド部分85であって、軸受71の側部に配置され、ロッド61が半径方向の遊びを有して通過する、ヘッド部分85
- 軸方向に延びる部分86であって、軸受71に面する側の部分85から片持ち式に突出し、隆起部24を取り囲む、部分86
を備える。
【0091】
特に、部分85は、互いの間に環状シート89を画定する軸方向に分離された一対のアーム88を備える。
【0092】
隆起部24およびロッド60の部分86は、好ましくは一緒にねじ止めされる。
【0093】
次に、ロッド61は、
- マスト6の外部に配置され、軸受17の側部においてロッド61を軸方向に区切る端部95
- 隆起部24とリング26の内側に収容された、端部95の反対側の端部96
- 端部95と96の間に延びる主要部分97
を備える。
【0094】
特に、主要部分97は、部分的にマスト6の内部に収容されている。
【0095】
特に、端部96は、
- 端部95に向かって先細になり、部分85が遊びを有して通過する円錐台形セグメント101
- セグメント101の直径よりも大きい直径の円筒形セグメント102
- セグメント102の直径よりも小さい直径の円筒形セグメント103
- セグメント103の直径よりも小さい直径の円筒形セグメント108
を備える。
【0096】
端部96は、
- セグメント102と103の間にはさまれた半径方向肩部104
- セグメント103と108の間にはさまれた半径方向肩部105
を備える。
【0097】
軸受71は、隆起部24およびロッド60のリング26によって軸方向に区切られ、ロッド61の端部96およびロッド60の隆起部24によって半径方向に区切られたシート120に収容されている。
【0098】
軸受71のリング75は、隆起部24によって画定されリング26と軸方向に反対側にある肩部90と、リング26の部分85との間で軸方向にブロックされている。
【0099】
さらに、リング75は、軸方向に延び、肩部90よりも大きい直径の隆起部24の表面91に固定されている。
【0100】
より詳細には、リング76は、肩部104と、肩部104と軸方向に反対側の肩部105に固定されたロック要素106との間で軸方向にブロックされる。
【0101】
さらに、リング76は、ロッド61のセグメント103の半径方向内側の位置に固定されている。
【0102】
それぞれのロッド60および61の主要部分25および97は、マスト6の内部に少なくとも部分的に収容されている。
【0103】
示されている場合、セグメント102は、シート89を部分的に区切っている。
【0104】
リング72は、シート89の内側に収容されている。
【0105】
フランジ42および軸受17は、マスト6の外部に収容され、ロッド61の一部を取り囲んでいる。
【0106】
アンチトルクローター4は、軸受17の故障、特に軸受17が閾値よりも高いトルクをロッド61に伝達するという事実に関連する信号を生成するように適合されたセンサ50をさらに備える。
【0107】
特に、センサ50は、ロッド60と61の間に挿入され、軸受17によってロッド61に伝達されるトルクが閾値を超えると、ロッド60に対するロッド61の回転に続いて破壊可能である要素65を備える。
【0108】
示されている場合、要素65は、ロッド60のリング26とロッド61のセグメント101との間に挿入されている。
【0109】
使用中、メインローター3の動作は、ヘリコプター1を空中に維持し、ヘリコプター1の前進飛行を可能にする推力を生成する。
【0110】
メインローター3の動作はまた、アンチトルクローター4の推力によって生成される逆トルクによってバランスがとられる胴体2にトルクを生成する。
【0111】
ヘリコプター1のヨー角を制御するために、パイロットは、飛行制御15を操作して、アンチトルクローター4のブレード8のピッチを調整し、その結果、アンチトルクローター4によって生成される推力を調整する。
【0112】
アンチトルクローター4の動作中、マスト6は、シャフト13によって軸Aを中心に回転して駆動され、ハブ9、要素16およびブレード8を軸Aを中心に回転させながら引っ張る。
【0113】
飛行制御装置15の動作は、軸Aに沿って、ロッド61および62によって形成された制御機構10の並進を引き起こす。
【0114】
この並進により、軸Aに沿って軸受17と要素16が一体的に並進する。
【0115】
その結果、要素16は、ブレード8から離れる(または近づく)ように動き、軸Bに対するレバー43の傾斜を変化させ、ブレード8の迎え角を増加(または減少)させる。
【0116】
レバー43のこの動きは、関連する軸Bの周りのブレード8の等しい角度による同時回転と、その結果としてのブレード8の迎え角の調整を引き起こす。
【0117】
軸受17が正しく機能し、軸Aの周りでロッド61にトルクを伝達しない状態から開始するアンチトルクローター4の動作が以下に説明される。
【0118】
この状態では、リング30は要素16と一体的に軸A回りに回転し、リング31およびロッド60および61は、軸A回りに回転しない。
【0119】
その結果、軸受71のリング75および76は、軸A回りに回転せず、軸受71は、実質的に非アクティブのままである。
【0120】
軸受17が故障した場合、転動体32はリング31を回転方向に徐々に引きずり、その結果、軸A回りのねじりモーメントをロッド61に及ぼす。
【0121】
このねじりモーメントの値が閾値を下回っている間、カップリング70は、ロッド60に対するロッド61の回転を防ぎ、軸受71を非アクティブに保つ。
【0122】
特に、リング72は、軸受17によってロッド61に加えられるトルクと等しく、反対方向の摩擦トルクをロッド61に加える。
【0123】
したがって、ロッド61は回転が固定され、軸受17によってロッド61に伝達されるトルクの値に等しいねじりモーメントを受ける。
【0124】
しかしながら、このねじりモーメントは、ロッド60および61を損傷するのに十分ではない。
【0125】
制御機構10は、軸受17が部分的に故障した場合でも、ブレード8の迎え角を首尾よく調整し続ける。
【0126】
軸受17の故障の漸進的な悪化は、閾値を超えるまで、軸受17からロッド61に伝達されるねじりモーメントの漸進的な増加を引き起こす。
【0127】
全体が焼き付いた状態では、軸受17はねじりモーメントの最大値をロッド61に不適切に伝達する。
【0128】
軸受17によってロッド61に伝達されるねじりモーメントの値が閾値を超えると、カップリング70は、ロッド60に対してロッド61の回転を可能するが、ロッド60は、軸Aに対して角度的に固定されたままである。
【0129】
これは、リング72が、閾値よりも大きい、すなわち、加えられたトルクに等しいトルクをロッド61に加えることができないために起こる。
【0130】
軸Aを中心としたロッド60に対するロッド61の回転は、軸受71によって可能になる。 より具体的には、回転は、ロッド60と一体のリング75に対する、ロッド61と一体のリング76の回転によって可能になる。
【0131】
ロッド61は回転的に自由であり、ロッド60から角度的に切り離されている。
【0132】
この状態で、飛行制御装置15の動作は、依然として、ロッド60および61、軸受17、したがって要素16の一体移動を引き起こし、したがって、軸受17の故障の状態においてさえ、ブレード8の迎え角を調整する可能性を維持する。
【0133】
センサ50は、要素65の破壊を介してロッド60に対するロッド61の回転を検出し、その結果、軸受17の故障および迅速に着陸する必要性を乗組員に通知する。
【0134】
本発明によるアンチトルクローター4の特性の検討から、それによって達成することができる利点は明らかである。
【0135】
特に、カップリング70は、ロッド60および61が互いに一体的に軸Aに沿ってスライドすることを可能にし、軸受17によってロッド61に加えられるトルクが閾値を超える場合に、ロッド60に対するロッド61の回転を可能にする。
【0136】
このようにして、ロッド61に伝達される高いトルク値をもたらす軸受17の故障の場合に、ロッド60および61を損傷するリスクが大幅に低減される。
【0137】
同時に、軸受17が故障した場合、機構10は、軸Aに沿って効果的に動き続け、それにより、ブレード8の迎え角の所望の調整を確実にし続ける。
【0138】
摩擦リング72は、簡単かつ効率的な方法で、軸受17からロッド61に伝達可能なトルクの最大値を閾値に制限する。
【0139】
同時に、軸受71は、ロッド60および61を軸方向に拘束し、軸受17からロッド61に伝達されるトルクが閾値を超える場合に、ロッド60に対するロッド61の相対回転を可能にする。
【0140】
このため、アンチトルクローター4は、この説明の導入部分に記載されている既知の解決策に対して、製造および保守が特に容易である。
【0141】
センサ50は、軸受17によってロッド61に伝達されたトルクが、ロッド60に対するロッド61の相対回転に続く要素65の破壊によって閾値を超えたことを検出する。
【0142】
このようにして、センサ50は、軸受17の故障および着陸の緊急の必要性を乗組員に迅速に通知する。
【0143】
最後に、特許請求の範囲によって定義された範囲から逸脱することなく、本明細書に記載および図示されたアンチトルクローター4に修正および変形を行うことができることは明らかである。
【0144】
1 ヘリコプター
2 胴体
3 メインローター
4 アンチトルクローター
5 タービン
6 マスト
8 ブレード
9 ハブ
10 制御機構
11 トランスミッションユニット
12 ギアトレイン
13 シャフト
14 ルート部分
15 飛行制御装置
16 制御要素
17 接続要素、軸受
19 フランジ
22 主要部分
24 管状本体、隆起部
26 環状端部リング、リング形状カバー
27 接続要素
30 外側リング
31 内側リング
32 転動体
40 管状本体
42 フランジ
43 レバー
50 センサ
60 第1のロッド
61 第2のロッド
65 破壊可能要素
70 カップリング
71 軸受
72 摩擦要素、リング
75 第1のリング
76 第2のリング
101 円錐台形セグメント
102 円筒形セグメント、第2のセグメント
103 円筒形セグメント、第1のセグメント
106 ロック要素