(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】創外固定システムのための即時取り付けクランプ
(51)【国際特許分類】
A61B 17/64 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
A61B17/64
(21)【出願番号】P 2021570475
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 EP2020064658
(87)【国際公開番号】W WO2020239815
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】102019000007314
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】510090807
【氏名又は名称】オーソフィックス ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェントゥリーニ、ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ザンドナ、エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】オットボニ、アンドレア
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098201(JP,A)
【文献】特表2010-540112(JP,A)
【文献】特表2014-503265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)であって、
前記クランプ(1;1’)は、
前記創外固定器(100)の棒部材(101)のための少なくとも1つの棒部材収容座部(26)および/または骨用スクリュー(102)のための少なくとも1つのスクリュー収容座部(23a、23b)を有する、少なくとも1つの第1のアタッチメント(2)と、
少なくとも1つの棒部材収容座部(36)を有する、少なくとも1つの第2のアタッチメント(3;3’)と、
締付け時の構成において、前記第1のアタッチメント(2)と前記第2のアタッチメント(3;3’)とに通されてこれらアタッチメントを互いに一体化して、前記棒部材収容座部(26、36)および/または前記スクリュー収容座部(23a、23b)内で前記棒部材(101)および/または前記骨用スクリュー(102)を固定するコネクタ(5;5’)と、
を備え、
前記クランプ(1;1’)は、前記コネクタ(5;5’)が、前記第2のアタッチメント(3;3’)から、少なくとも部分的に引き抜かれて、それによって、前記棒部材収容座部(36)への横挿入を許容する、開放時の構成に、さらに構成可能であり、
前記クランプ(1;1’)は、前記第1のアタッチメント(2)と前記第2のアタッチメント(3;3’)とを前記開放時の構成において
一緒に保持する補助接続手段(4)を備
え、前記第1のアタッチメント(2)と前記第2のアタッチメント(3;3’)とが互いに引き離されたときに、前記第1のアタッチメント(2)と前記第2のアタッチメント(3;3’)とが完全に分離するのを防止することを特徴とする、クランプ(1;1’)。
【請求項2】
前記コネクタ(5;5’)は、
前記クランプ(1)の第1の端部でユーザがアクセス可能なヘッド部(51;51’)と、
少なくとも1つのねじ部(58)を有するステム(50)と、
を備え、
前記クランプ(1)は、その第2の端部にねじ座部(59)を備え、
前記締付け時の構成において、ステム(50)が、前記第1のアタッチメント(2)と前記第2のアタッチメント(3)とに通されて、前記ねじ部(58)が前記ねじ座部(59)に係合して、前記棒部材(101)および/または前記骨用スクリュー(102)を前記棒部材収容座部(26、36)および/または前記スクリュー収容座部(23a、23b)内で固定し、
前記開放時の構成において、前記ねじ部(58)は、前記ねじ座部(59)から完全に係合解除されている、請求項1に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【請求項3】
前記クランプ(1;1’)の前記第1の端部は、前記第1のアタッチメント(2)の側に位置し、前記クランプ(1;1’)の前記第2の端部は、前記第2のアタッチメント(3;3’)の側に位置し、
前記第2のアタッチメント(3;3’)は、棒部材収容座部(36)を画定するC字状の可撓性のブリッジ(32)によって接続された2つのアーム(30;31)を備え、
前記締付け時の構成において、前記ステム(50)は、前記2つのアーム(30;31)の間に延びて棒部材収容座部(36)への横挿入に干渉し、
前記開放時の構成において、前記ステム(50)は、前記第1のアタッチメント(2)の方向に上昇して、それによって、前記棒部材収容座部(36)への横挿入を許容する、請求項2に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【請求項4】
前記コネクタ(5;5’)は、前記ステム(50)に沿って配置されて前記クランプ(1)の最大の締付けを限定する停止カラー部(57)を備えている、請求項3に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【請求項5】
前記停止カラー部(57)は、前記開放時の構成において前記コネクタ(5)が前記クランプ(1)の残りの部分から完全に引き抜かれるのを防ぐ、請求項4に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【請求項6】
前記補助接続手段(4)は、前記開放時の構成において、
前記第1のアタッチメント(2)と前記第2のアタッチメント(3;3’)にそれぞれ設けられている2つの連結面(29a、39a)が、接触して互いに係合して、前記第2のアタッチメント(3;3’)に対する前記第1のアタッチメント(2)の相対回転を防ぐ第1の位置と、
前記連結面(29a、39a)が互いから分離されて、前記第2のアタッチメント(3;3’)に対する前記第1のアタッチメント(2)の相対回転が可能となる第2の位置と、
の間で、前記第1のアタッチメント(2)に対する前記第2のアタッチメント(3;3’)の軸方向の相対移動を可能にする、請求項1~5のいずれか1項に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【請求項7】
前記補助接続手段(4)は、
前記第1のアタッチメント(2)および前記第2のアタッチメント(3;3’)のうちの一方と一体化された少なくとも1つの舌状部(40)と、
前記第1のアタッチメント(2)および前記第2のアタッチメント(3;3’)のうちの他方と一体化された少なくとも1つの連結座部(41)と、
を備え、
前記少なくとも1つの舌状部(40)は、最大の延び
を画定するストップ部に達するまで前記連結座部(41)内を軸方向に摺動し、前記少なくとも1つの舌状部(40)はさらに、回転軸(X)に対して前記連結座部(41)内で回転可能である、請求項6に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【請求項8】
前記最大の延び
を画定するストップ部は、前記少なくとも1つの舌状部(40)の外側に突出する歯部(43)が当接する前記連結座部(41)の幅狭部(42)よって画定される、請求項7に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【請求項9】
前記舌状部(40)は、回転軸(X)を中心とした円周に沿って配置される複数の舌状部であり、前記連結座部(41)内でのスナップ結合を可能にするために、内側に向かって変形可能である、
請求項8に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの舌状部(40)は、前記第2のアタッチメント(3;3’)と一体化され、前記開放時の構成において、前記コネクタ(5、5’)の引き抜きに対するロック部を画定する、請求項7~9のいずれか1項に記載の、創外固定器(100)のためのクランプ(1;1’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科への適用のためのクランプ、特に、創外固定システムを構成する要素の連結のためのクランプに関する。
【0002】
したがって、本発明は、整形外科手術、特に、外傷手術の分野において有用に適用される。
【背景技術】
【0003】
整形外科では、骨片の安定化、整復、および整骨のための創外固定技術が、通常使用されている。これらの技術は、硬質のエクソスケルトンを外科的に適用するものであり、最も簡単な形態では、適切なクランプによって互いに関節接合された複数の棒部材からなり、患者の骨構造にスクリューによって結合される。採用されているこの機械システムは、創外固定器と世界的に呼ばれている。
【0004】
治療に対する要求の多様性が、各々がその用途に合った技術的および形態学的特徴を有する様々なタイプの固定器へと発展することに貢献してきた。したがって、ある種の適用、ほとんどの場合、緊要性を有する外傷への適用に対して、まさに固定の簡単さと速さによって特徴付けられるゆえに、いわゆる即時固定器が発展してきた。
【0005】
即時固定器は、種々のクランプに接続された構造棒部材を備えており、これら種々のクランプは、構造継手において棒部材を互いに接続するように意図されたものである(棒-棒接続のクランプ)か、または患者の骨には固定されない通しスクリューに棒部材を結合する役割を担うものである(棒-スクリュー接続のクランプ)。これらのクランプはすべて、特定の設計上重要な事項を有する要素であり、締付けのしやすさと固定の安定性という相反する要求を両立させなければならない。
【0006】
これに関連して、外科に関する特定の要求を満たすようにさまざまに組み立てられ得る複数の要素を備えた即時固定システムが、市場で提案されてきた。
【0007】
特に、これらシステムは、たとえば、接合スクリューによって互いに接合され得る棒部材アタッチメントおよびスクリューアタッチメントなど、様々な種類のアタッチメントを有している。したがって、外科医は、少なくとも2つのアタッチメントと、接合スクリューと、を組み立ててクランプを形成しなければならない。これらのシステムでは、棒部材アタッチメントは、一般的にC字形状を有している。このC字形状の要素の2つのアームの間に棒部材が導入されて、接合スクリューを締付けることによって固定される。
【0008】
上記したタイプのシステムは、満足できる方法でそれらシステムが担う機能を実行するけれども、それにもかかわらず、現在まで未解決のままであるいくつかの欠点を有している。
【0009】
第1の欠点は、手術中の棒部材の挿入に関する。棒部材の横挿入、すなわち、棒部材が延在する方向に対する横方向からの挿入は、一般的に、縦方向からの挿入、特に、2つの骨用スクリューが同じ基部に既に固定されているインプラントにおいて中間スクリューがさらに追加される場合の縦方向からの挿入よりも容易である。棒部材がかなりの程度で軸方向に延びていて、かつ棒部材を支持する複数の異なるクランプが整列して並んでいるかどうかを手術中にチェックする場合に、横挿入も好ましい。しかし、既知のタイプのC字形状のシステムでは、横挿入には、クランプのアタッチメントを保持する接合スクリューを引き抜くことが必要になり、したがって、クランプを完全に分解して棒部材を挿入後に、アッセンブリを再度締付ける必要がある。いくつかの場合では、棒部材アタッチメントのアームは、スペーサーによって分離された状態に保たれて、このスペーサーは、棒部材の挿入を可能にするために取り外されたり再度挿入されたりしなければならない。したがって、横挿入は、複雑な作業であることが理解され、外科医が手術中に横挿入を行うのに、かなりの時間を必要とする。
【0010】
第2の欠点は、いくつかの用途において装置を分解する必要性から生じる。実際にこの作業には、複数の単一部品の落下および/または紛失というリスク、特に、手術中に分解をおこなわなければならないという重大なリスクがある。
【0011】
第3の欠点は、大抵は、用いられる材料の種類のために、複数の棒部材および複数のクランプの全部で構成される固定器の重量である。
【0012】
さらなる欠点は、クランプを構成する部品の数がかなりの数になることに起因し、このために、アッセンブリの製造コストが高くなる。
【0013】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、先行技術において報告されている欠点のうちの少なくともいくつかを解決することと、特に、創外固定器の患者への移植をより簡単にし、かつその危険性をより低くするクランプを提供することにある。
【発明の概要】
【0014】
本発明の根底にある解決のためのアイデアは、棒部材の横挿入を可能にするために、開放時の構成(open configuration)においてクランプを結合させたままにする補助接続手段を設けることであり、これによって外科医は、締め付けを行う前にクランプの複数の構成部品を操作することができる。
【0015】
したがって、上記の技術的課題は、以下の特徴を有する創外固定器用のクランプ、特に、即時取り付けタイプのクランプによって解決される。すなわち、本発明のクランプは、創外固定器の棒部材のための少なくとも1つの棒部材収容座部および/または骨用スクリューのための少なくとも1つのスクリュー収容座部を有する、少なくとも1つの第1のアタッチメントと、少なくとも1つの棒部材収容座部を有する、少なくとも1つの第2のアタッチメントと、締付け時の構成(tightened configuration)において、第1のアタッチメントと第2のアタッチメントとに通されて第1のアタッチメントと第2のアタッチメントを互いに一体化させて、棒部材および/または骨用スクリューを棒部材収容座部および/またはスクリュー収容座部内で固定するコネクタと、を備え、クランプは、コネクタが、第2のアタッチメントから少なくとも部分的に引き抜かれ、それによって棒部材収容座部への横挿入を許容する、開放時の構成に、さらに構成可能であり、また、クランプは開放時の構成において第1のアタッチメントと第2のアタッチメントを相互に接続させたままにする補助接続手段を備えている。
【0016】
したがって、採用された上記の装置により、クランプは、安定して結合した開放時の構成をとることができる。特に、この開放時の構成は、コネクタによって通常は閉鎖されている複数の棒部材収容座部のうちの少なくとも1つへの横挿入を可能にする。
【0017】
横挿入は、棒部材を保持しなければならない複数のクランプを連続的に整列させる際に、特に、棒部材が、整列された2つを超えるクランプによって保持される場合に、整形外科医の助けとなるので、特に有利である。
【0018】
さらに、開放時の構成でのクランプの結合によって、複数の単一部品の紛失や落下が防止されて、それによって、主に手術中に、クランプの操作がより簡単にかつより安全になる。
【0019】
好ましくは、コネクタは、クランプの第1の端部でユーザにとってアクセス可能なヘッド部と、少なくとも1つのねじ部を有しているステムと、を備えている。クランプは、その第2の端部に位置するねじ座部を備えている。締付け時の構成において、ステムは第1のアタッチメントおよび第2のアタッチメントに通されて、ねじ部はねじ座部内で係合し、棒部材収容座部および/またはスクリュー収容座部内で棒部材および/または骨用スクリューを固定する。開放時の構成において、ねじ部は、ねじ座部から完全に係合解除される。
【0020】
さらに好ましくは、クランプの第1の端部は、第1のアタッチメント側にあり、クランプの第2の端部は、第2のアタッチメント側にあり、第2のアタッチメントは2つのアームを備え、当該2つのアームは、棒部材収容座部を画定するC字状の可撓性のブリッジによって接続されている。締付け時の構成において、ステムは、2つのアームの間に延びて、棒部材収容座部への横挿入に干渉する。開放時の構成において、ステムは、第1のアタッチメントに向かって上昇し、それによって、棒部材収容座部への横挿入を許容する。
【0021】
コネクタは、クランプの最大の締付けを制限する停止カラー部を、ステムに沿って、好ましくは、ねじ部の端部に備え得る。このようにして、潜在的に失くしやすくまた配置するのが複雑である分離用のスペーサーに頼ることなく、アタッチメント自体の過剰な変形が回避される。
【0022】
停止カラー部は、好ましくは、2つの平面を有し、これら2つの平面は、円錐台部によって連結されて第2のアタッチメントの対応する円錐台座部の中へ導入されるように配置される。
【0023】
さらに、開放時の構成において、停止カラー部は、クランプの残りの部分からコネクタが完全に引き抜かれるのを防止することが可能であり、クランプ自体のアタッチメントの1つと一体化されている保持部材と干渉する。
【0024】
補助接続手段は、開放時の構成において、第1のアタッチメントと第2のアタッチメントにそれぞれ設けられた2つの連結面が互いに接触して係合して、第2のアタッチメントに対する第1のアタッチメントの相対的な回転を防ぐ第1の位置と、上記の連結面が分離されて第2のアタッチメントに対する第1のアタッチメントの相対的な回転が可能となる第2の位置との間で、第1のアタッチメントに対する第2のアタッチメントの相対的な軸方向の移動を可能にするので、好適である。したがって、整形外科医が、開放時の構成において、2つのアタッチメントの相対的な向きを調整することを可能にする。
【0025】
上記の連結面は、放射状の歯、鋸歯、または並んで位置して互いに係合するように配置されたその他の要素を、備え得る。
【0026】
補助接続手段は、第1のアタッチメントおよび第2のアタッチメントのうちの一方と一体化された少なくとも1つの舌状部と、第1のアタッチメントおよび第2のアタッチメントの他方と一体化された少なくとも1つの連結座部と、を備え、少なくとも1つの舌状部は、最大の延び固定(maximum extension lock)に達するまで連結座部内を軸方向に摺動し、少なくとも1つの舌状部はさらに、回転軸に対して連結座部内で回転可能である。
【0027】
好ましくは、連結座部が第1のアタッチメントに設けられる一方で、舌状部は、第2のアタッチメントと一体化される。
【0028】
最大の延び固定は、好ましくは、少なくとも1つの舌状部の外側に向かって突出する歯が当接する連結座部の幅狭部によって画定される。
【0029】
好ましくは、複数の舌状部が、回転軸を中心とした円周に沿って配置され、連結座部内でのスナップ結合(snap coupling)を可能にするために、内側に向かって変形可能である。
【0030】
さらに好ましくは、舌状部の数は2つであり、2つの舌状部は、互いに対向している。
【0031】
補助接続手段によって可能となる上記のアタッチメント間の軸方向のずれは、好ましくは、舌状部が操作者によってアクセスできるようになっている。2つの舌状部を反対側から押すことによって、操作者は、舌状部を内側に曲げることができ、それによって、補助接続手段を解除することが可能である。
【0032】
好ましくは、1つまたは複数の舌状部は、第2のアタッチメントと一体化され、開放時の構成において、コネクタの引き抜きに対するロック部を画定する。
【0033】
好ましくは、ロック動作は、舌状部の端部に位置してかつ舌状部自体の歯とは反対側に位置するリミットストップ部によって行われ、コネクタの停止カラー部を保持する。舌状部が可撓性を有していれば、舌状部が外側に自由に曲げられることで、コネクタは、リミットストップ部を越えることが可能である。しかし、補助接続手段が連結されているときには、舌状部を外側に曲げることはできない。この条件の下で、舌状部の歯の外側が、連結座部の内側の面に当接する。
【0034】
上記の装置のおかげで、固定器の引き抜きが可能であることが理解されるが、クランプを構成する2つのアタッチメントの分離の後に行われる。
【0035】
リミットストップ部は、1つまたは複数の舌状部の内側の面上に形成された円筒状のトラック部の端部に位置しているのが好ましい。
【0036】
1つまたは複数の舌状部は、コネクタの2つのアタッチメントのうちの1つ、好ましくは第2のアタッチメントと一体的に形成され得る。あるいは、舌状部は、アタッチメントの中心孔に導入される分離インサート上に形成されてもよい。
【0037】
好ましくは、第1のアタッチメントは、少なくとも2つのスクリュー収容座部を備えており、当該少なくとも2つのスクリュー収容座部は、骨の種々の解剖学的位置または種々の大きさに合うように、種々の寸法の骨用スクリューを締め付けることができるように構成されている(たとえば、手首、足に対しては4mm、上腕、足首に対しては5mm、骨盤、大腿骨、脛骨に対しては6mm)。
【0038】
さらに好ましくは、第1の座部は、異なる2つの直径(たとえば、5mmおよび6mm)を選択的に収容するように構成され得る。第2の座部は、第3の直径(たとえば、4mm)を収容するように構成され得る。
【0039】
好ましくは、第1のアタッチメントは、スクリュー収容座部および棒部材収容座部の両方を備えている。単一の構成要素が様々な用途のために選択できれば、棒部材/スクリューアタッチメントの可能な組み合わせは、組み立てをかなり容易にするだけでなく、クランプを使う際に柔軟性を持たせる。
【0040】
コネクタは、ステムの端部には締付け用工具のための連結プロファイル、好ましくは、レンチヘッドのための多角形の凹部、たとえば、止めねじレンチ(setscrew wrench)用の六角形状の凹部と、コネクタを手動で締めるための締付けノブと、を有している。
【0041】
したがって、締付けノブは、予備的な締付けステップにおいて好適に使用可能であり、システムの人間工学的な組み立てを可能にする。
【0042】
異なるアタッチメントの材料は、排他を意図したものではないがその例としては、低コストで機械的耐性と殺菌とを組み合わせるようにされた、グラスファイバーまたはカーボンファイバーで強化されたプラスチック材料(ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリアリルアミドなど)があり得る。
【0043】
コネクタについては、AISI規格の300類の単純なステンレス鋼、アルミニウム合金、またはチタニウム合金が使用され得る。
【0044】
さらに、上記のアタッチメントのデザインの特殊性、および公差の制限がないことは、3Dプリント技術を使用できることを示唆していることが留意される。
【0045】
上記のクランプの利点は、構成要素の数がかなり減らされていること、つまり、コネクタと、2つのアタッチメントと、好ましくは第2のアタッチメントと一体化されているナットとに起因する。製造時の組み立ての複雑さはもちろん、製造費用および保管費用も低減される。
【0046】
さらなる特徴および利点が、非限定的な例として与えられた添付図面を参照して、本発明の排他的ではない好適な実施形態の以下の詳細な記載から、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は、本発明にかかる、整形外科用固定器のためのクランプの一部である第1のアタッチメントを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のアタッチメントを異なる角度から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、中央平面に沿ってカットされた状態の、
図1のアタッチメントを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明にかかる整形外科用固定器のためのクランプの一部である第2のアタッチメントの第1の形態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、中央平面に沿ってカットされた状態の、
図4のアタッチメントを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、本発明にかかる整形外科用固定器のためのクランプの一部である第2のアタッチメントの第2の形態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6のアタッチメントを示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、中央平面に沿ってカットされた状態の、
図6のアタッチメントを示す分解斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明にかかる整形外科用固定器のためのクランプの一部であるコネクタの第2の形態を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、
図10のA-A面に沿ってカットされた状態のコネクタを示す正面図である。
【
図12】
図12は、
図1の第1のアタッチメントと、
図4の第1の形態にかかる第2のアタッチメントと、第1の形態にかかる、
図1~
図11には示されていない固定器と、を備える、本発明にかかる、創外固定器のためのクランプを示す斜視図である。
【
図13】
図13は、締付け時の構成において中央平面に沿ってカットされた状態の、
図12のクランプを示す斜視図である。
【
図14】
図14は、開放時の構成において中央平面に沿ってカットされた状態の、
図12のクランプを示す斜視図である。
【
図16】
図16は、中央平面に沿ってカットされた状態の、
図12のクランプを示す分解斜視図である。
【
図17】
図17は、
図1の第1のアタッチメントと、
図6の第2の形態にかかる第2のアタッチメントと、
図9の第2の形態にかかる固定器と、を備えている、本発明にかかる、創外固定器のためのクランプを、締付け時の構成と開放時の構成との間の中間の構成の状態で示す斜視図である。
【
図20】
図20は、
図12に示されているタイプの4つのクランプと、棒部材と、4つの骨用スクリューと、を備え、患者の長骨に連結されている創外固定器を、4つのクランプが開放時の構成にある状態で示す図である。
【
図21】
図21は、
図17に示されているタイプの6つのクランプと、3つの棒部材と、を備える創外固定器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
添付の
図12~19を参照して、整形外科用創外固定器の接続要素として機能するように構成されたクランプの2つの実施形態、特に、
図20および21に示されたタイプの即時固定器の実施形態は、引用符号1および1’で特定される。クランプ1;1’は、4mm、5mm、または6mmの直径を有する2つの接続棒部材101の間で、または4mm、5mm、または6mmの直径を有する棒部材101と骨用スクリュー102との間で、迅速にかつ効果的なやり方で、一時的な固定接続が行われるように配置される。
【0049】
クランプ1;1’の実施形態は両方とも、コネクタ5;5’によって共に保持される第1のアタッチメント2および第2のアタッチメント3;3’を備えている。これら実施形態は、類似しているが同一ではない第2のアタッチメント3;3’のいずれか、および同一ではないコネクタ5;5’のいずれかを使用するという点で、互いに相違する。クランプの他の実施形態は、第1のアタッチメント2、第2のアタッチメント3;3’、コネクタ5;5’の様々な組み合わせによって得られる。
【0050】
第1の形態のコネクタ5は、
図12~16の全てにおいて見られるが、その端部にねじ部58を有するステム50を備えている。ステム50の反対側の端部には、凹面52によってステムに結合される、丸い形状を有するヘッド部51が設けられている。
【0051】
ステム50のねじ部58は、ねじが形成されていない連続した部分から、停止カラー部57によって、すなわち、第2のアタッチメント3;3’の対応する座部に挿入されるフランジであって、円錐台状の側面を有する円形のフランジによって、分離される。停止カラー部57は、コネクタ5の最大の締付け状態を制限するリミットストップ部を画定する。そのうえ、以下の記載からより明らかなように、同じ停止カラー部57は、クランプ1;1’上のその摺動座部においてコネクタ5の保持を行う。
【0052】
ヘッド部51は、外側にローレットが設けられた環状ナットを有し、この環状ナットは、手動でコネクタ5を予備的に締付けるための握り部54を画定する。連結プロファイル部53、すなわち、止めねじレンチ用の六角形状の凹部が、ステム50とは反対方向に開口するキャビティ56によって握りノブ54から分離されて、配置されている。
【0053】
図9~11にそれぞれ示されており、
図17~19に示されている組み立て部品の一部である第2の形態のコネクタ5’は、ヘッド部51’の形状を除いては上記したものと実質的に類似している。
【0054】
この場合、ヘッド部51’は、実際は一対の凹状の握り部54’を有し、一対の凹状の握り部54’は、直径方向に延びる握り要素を画定する円盤状の部分上に突出している。この握り部54’は、止めねじレンチのための六角形状の凹部を有する連結プロファイル部53’を、中央部に有し、連結プロファイル部53’は、第1の形態について上述したものと類似している。
【0055】
上記のコネクタ5;5’において分離される握り部54;54’および連結プロファイル部53;53’が存在することにより、最初に手動で締付け作業行うことが可能であり、さらに後で適切な締付け工具で締付けがより改善される。
【0056】
上述のコネクタ5;5’は、内部でねじ座部59を画定する締付けナット55にねじ込まれる。ナット55は、クランプ1;1’においてコネクタ5;5’のヘッド部51;51’とは反対側の端部に位置している。ナット55にねじ込まれると、コネクタ5;5’は、介在するアタッチメント2、3;3’を押し込むことで、締められる。
【0057】
以下で記載されるように、ナット55は、好ましくは、第2のアタッチメント3;3’と一体的に形成される。
【0058】
図1~3にそれぞれ示されているように、第1のアタッチメント2には、組み立てられたクランプ1の全体構造に対してそれぞれ内側アーム20および外側アーム21として認識される2つのアームが設けられている。アーム20、21は、C字形状の可撓性のブリッジ22によって、すなわち、相互に平行な部分である残りの構造以外での曲げを可能にする弾性のヒンジによって、接続されている。
【0059】
可撓性のブリッジ22は、内側に円筒状の表面を有しており、当該表面は、180°よりも少し大きい弧状に展開していて2つのアーム20、21の平面に繋がっている。この面は棒部材収容座部26を画定し、その内側で、創外固定器100の接続棒部材101が締め付けられ得る。
【0060】
可撓性のブリッジ22とは反対側の端部では、アーム20、21は、それぞれ顎部27a、27bを画定している。これら顎部27a、27bは、アームの残りの部分に対して厚くなっており、対向する表面を有している。これら表面の各々には、2つのV字状の溝がアタッチメントを横切るように延びて設けられている。これらの溝は、対向する顎部の溝に面しており、2つのスクリュー収容座部23a、23bを画定する。第1のスクリュー収容座部23aは、コネクタ5;5’を締め付けることによるアームの曲げに応じて、アタッチメント2に対してより外側の位置で、5mmまたは6mmのスクリューを収容するように配置される。
【0061】
第2のスクリュー収容座部23bは、その代わりとして、より内側の位置で、4mmのスクリューを収容するように配置される。したがって、外科医は、スクリューの直径に応じて、使用すべき収容座部23a、23bを選択する。
【0062】
さらに、内側アーム20および外側アーム21は、それぞれ、コネクタ5のステム50を通すために設けられた内側孔24および外側孔25を備えている。これらの孔24、25は、ステム50の直径に対して大きくなっており、アタッチメント2の曲げを許容するのに十分なクリアランスが確保されている。
【0063】
上記の外側通し孔25の外側において、球形状のフレア部、すなわち、コネクタ5;5’の凹状面52のための凸状の座部28が形成され、面52は、ステム50に対して外側アーム21が垂直になっていない状態でも、実質的に接触して座部28上に載置される。
【0064】
最後に、内側アーム20は、その中間の部分において、円筒状のブッシュ29によって、画定されていることが留意される。このブッシュは、並置されたアタッチメントの対応する歯に係合するように配置された放射状の歯を有しており、これにより、クランプ1の曲げ安定性が保証される。さらに、複数の突部29bが、外面に設けられていて、等角度の間隔、すなわち、90°の間隔で配置されていて、接続棒部材101と骨用スクリュー102との間の垂直性を保証するための角度に関する基準として利用することができる。
【0065】
円筒状の連結座部41が、円筒状のブッシュの内側で画定されていて、内側通し孔24と交差するアーム20の部分の下方へ延びている。連結座部41は、第2のアタッチメント3;3’に向かって開放されていて段差状の幅狭部42によって縁取られた開口部を有している。
【0066】
第1の形態の第2のアタッチメント3が、
図4~5のそれぞれに示されている。
【0067】
第2のアタッチメント3は、以下に記載される相違点を除いては、第1のアタッチメント2のものと類似の構造を有している。
【0068】
まず第一に、第2のアタッチメント3は、骨用スクリュー用の座部を画定する顎部を有していない。第2のアタッチメント3にも、組み立てられたクランプ1の全体構造に対して、内側アーム30と外側アーム31という、2つのアームが設けられていて、これらのアームは、C字状の可撓性のブリッジ32によって接続されている。
【0069】
可撓性のブリッジ32は、この場合にも、棒部材収容座部36を画定し、棒部材収容座部36の内側で、創外固定器の連結棒部材101が締め付けられ得る。
【0070】
2つのアーム30、31は、コネクタ5のステム50を通すために設けられた孔34、35を、それぞれ備えている。この場合でも、これらの孔は、ステム50の直径に対して大きい直径を有している。
【0071】
通し孔35の外側には、六角形状凹部38が、締付けナット55を収容するために形成されており、上述のように、締付けナット55は、たとえば、共成形するかまたは後で連結することによって、アタッチメント3に埋め込まれ得る。
【0072】
この場合においても、内側アーム30は、中間の部分ではない端部で、円筒形状のブッシュ39によって画定される。このブッシュは、並置されたアタッチメントの歯に係合するように配置された放射状の歯39aと、互いに対して90°だけ間隔を空けて配置されている基準突部39bと、を有している。
【0073】
しかし、第1のアタッチメントとは異なり、円筒状のブッシュ39は、その中で連結座部を画定していない。
【0074】
その代わりに、円筒状のブッシュ39の上方には、互いに対向する2つの舌状部40が、内側孔35に対して斜めになって延びている。これら舌状部40は、上記の連結座部41と共同して、その機能が本願明細書において以下に説明される補助接続手段4を画定する。
【0075】
各舌状部40の断面は、円形の部分を画定する。したがって、舌状部40は、略平坦な内側面と対向する外側円筒面とを有している。その外側面の端部は、外側に突出するフランジと重なっており、このフランジが、舌状部の側面の歯部43を画定している。
【0076】
舌状部40および歯部43は、それぞれの幅狭部42に対して、舌状部40が連結座部41の中へスナップ導入されることが可能となるような寸法に作製される。一旦導入されると、舌状部40は、連結座部41によって画定された円筒状の容積内を摺動することができる。歯部43は、幅狭部42に当接すると、この場合には舌状部40が引き抜かれるのを防ぎ、その結果、アタッチメント3をアタッチメント2に拘束する。しかしながら、この拘束位置においては、連結座部40内の歯部43の移動により、2つのアタッチメント2、3;3’間の軸方向の相対的な移動が可能である。舌状部40および連結座部41が円筒形状を有するために、2つのアタッチメント2、3;3’間のその回転中心軸Xに対する相対的な回転運動も可能であり、この場合、2つのアタッチメント2、3;3’は、放射状の歯39aおよび39bが相互に係合するのを避けるように、互いに十分に離間される。
【0077】
舌状部40は、適度に可撓性を有するものである。互いに係合している2つのアタッチメント2、3;3’を互いに最大限までずらすことによって、操作者は舌状部40を操作することが可能となり、これら舌状部を内側に向かって変形させて歯部43を幅狭部42から分離する。したがって、2つのアタッチメント2、3;3’の分離が行われる。
【0078】
舌状部40の内側の面は、アタッチメント3の内側に開放されている円筒状のトラック部44を画定している。このトラック部は、リミットストップ部45までであり、それより上方ではとぎれている。クランプが一旦組み立てられれば、停止カラー部57の外側の周縁部は、リミットストップ部45に当接するまで、円筒状トラック部44内を摺動することができ、これによって、コネクタ5;5’が完全に引き抜かれるのを防ぐ。クランプ1;1’を完全に分解するために、まず初めに、舌状部40を連結座部41から分離することが必要である。そうすると、舌状部40は、連結座部41内ではもはや拘束されず、したがって、コネクタ5;5’の停止カラー部57を解放する外側に変形可能となる。
【0079】
第2の形態の第2のアタッチメント3’は、
図6~8のそれぞれ示されているが、舌状部40が挿入部46上に形成されている点を除けば、第1の形態のものと略同一である。この挿入部46は、フランジ付きの共通の基部を備えており、この基部は、円筒状のブッシュ39の内側孔34内に干渉しながら導入される。上記のフランジは、正しい固定位置を規定する内側孔34の下側の面に当接する。
【0080】
上記のクランプ1;1’は、締め付けられた固定器5;5’が、所望の位置で棒部材101および/または骨用スクリュー102を固定する締付け時の従来の構成以外にも、手術の間に、第2のクランプ3;3’の収容座部36内へ棒部材を横方向から導入するのに使用される、たとえば、添付の
図20に示されているように、棒部材101と接続されるように複数のクランプが整列して並んでいるかどうかをチェックするのに使用される開放時の構成も取ることが可能である。
【0081】
この開放時の構成は、コネクタ5;5’のねじ部58が、ナット55と係合していない状態にあり、停止カラー部57が舌状部40の内側で画定されているリミットストップ部55に達するまで引き抜かれることをもたらす。したがって、この構成では、コネクタ5;5’は、第2のクランプ3;3’の収容座部36への横方向の挿入を完全に自由行わせる。第1のクランプ2および第2のクランプ3;3’は、ネジによる接続によってはもはや保持されないが、クランプ1;1’の2つの構成要素の間の、回転軸Xに関する相対的な回転を可能にする上述の補助接続手段4によって結合したままである。
【0082】
明らかに、条件の付いた特定の要求を満たすために、当業者は、上記の発明に対するいくつかの修正または変形を行うことが可能であるが、これら修正例または変形例すべては、下記の特許請求の範囲で規定された発明の保護範囲に含まれる。