(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】セルフクリンチングリベットを製造する押し出し成形法および成形装置
(51)【国際特許分類】
B21J 5/08 20060101AFI20240723BHJP
B21J 5/02 20060101ALI20240723BHJP
B21K 1/58 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B21J5/08 Z
B21J5/02 A
B21K1/58
(21)【出願番号】P 2021570965
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 US2020035195
(87)【国際公開番号】W WO2020243476
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】201910468707.8
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518030139
【氏名又は名称】ペン エンジニアリング アンド マニュファクチュアリング コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PENN ENGINEERING & MANUFACTURING CORP.
【住所又は居所原語表記】5190 Old Easton Road,Danboro,PA 18916 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【氏名又は名称】飯田 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100167139
【氏名又は名称】飯田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ルー ハイフェン
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0018709(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0190861(US,A1)
【文献】実開昭59-107318(JP,U)
【文献】特開2016-13560(JP,A)
【文献】実開昭58-76353(JP,U)
【文献】特開2008-12589(JP,A)
【文献】特表2005-515380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21J 1/00 - 13/14
B21J 17/00 - 19/04
B21K 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤブランクの第1端部に対して反対側の端部を第2端部とした前記ワイヤブランクを押し出し成形
してセルフクリンチングリベットを製造する方法
において、
ワイヤブランクの
前記第1端部を据え込み押し出し成形して、この第1端部
に材料押し込み部および環状のシャンク部ビレットに造形する工程であって、このシャンク部ビレットが前記ワイヤブランクに軸方向に沿って延在し、
前記第1端部に在る前記シャンク部ビレットが前記材料押し込み部
に隣接しており、前記シャンク部ビレット
の側面
がテーパー
状に拡がり、その横断面面積が
前記第1端部の方から前記材料押し込み部の方に向かって漸減するか、あるいは
前記シャンク部ビレットが
前記第1端部に在る前記材料押し込み部
に隣接しており、前記シャンク部ビレット
の側面
がテーパー
状に拡がり、その横断面面積が
前記材料押し込み部の方から前記第2端部の方に向かって漸増する工程と、
前記シャンク部ビレットを据え込み押し出し成形して、前記テーパー
状の部分が前記ワイヤブランクから離間する方向に流れることによって、前記ワイヤブランクのラジアル方向に延在するシャンク部、および前記シャンク部と前記材料押し込み部との間の溝部を形成する工程であって、前記シャンク部が、前記材料押し込み部に
近接する第
一端部から前記材料押し込み部から離間する第
二端部に向かって漸増する横断面面積を有する工程と、
を有し、
前記ワイヤブランクの
前記第2端部を据え込み押し出し成形して、
前記第2端部をスロットシャフト部に造形す
ることを特徴とするセルフクリンチングリベットの製造方法。
【請求項2】
前記ワイヤブランクの前記第1端部を据え込み押し出し成形する工程の前に、さらに前記ワイヤブランクを準備し、このワイヤブランクの体積が、製造するセルフクリンチングリベットの体積に等しい請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記ワイヤブランクを準備する工程とこのワイヤブランクの前記第1端部を据え込み押し出し成形する工程との間に、さらに、前記ワイヤブランクを据え込み押し出し成形して、前記第1端部をヘッドビレットに造形し、第1押し出し成形機構によって前記材料押し込み部および前記シャンク部ビレットの形成を促進する工程を有する請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ワイヤブランクを準備する工程で、ワイヤをクリップ留め機構によってクリップ留めし、前記ワイヤブランクを得る請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記シャンク部ビレットを据え込み押し出し成形する工程で、前記シャンク部と前記材料押し込み部との間に円形の遷移部を形成する請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ワイヤブランクの前記第2端部を据え込み押し出し成形する工程で、開閉式のセグメントダイ形成によって前記スロットシャフト部を形成する請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
ワイヤブランクの第1端部に対して反対側の端部を第2端部とした前記ワイヤブランクの
前記第1端部を据え込み押し出し成形して、この第1端部を材料押し込み部および環状のシャンク部ビレットに造形し、このシャンク部ビレットが前記ワイヤブランクに軸方向に沿って延在する第1押し出し成形機構であって、
前記第1端部に在る前記シャンク部ビレットが前記材料押し込み部
に隣接しており、前記シャンク部ビレット
の側面
がテーパー
状に拡がり、その横断面面積が
前記第1端部の方から前記前記材料押し込み部の方に向かって漸減する第1押し出し成形機構か、あるいは
前記シャンク部ビレットが
前記第1端部に在る前記材料押し込み部
に隣接しており、前記シャンク部ビレット
の側面
がテーパー
状に拡がり、その横断面面積が
前記材料押し込み部の方から前記第2端部の方に向かって漸増する第1押し出し成形機構と、
前記シャンク部ビレットを据え込み押し出し成形して、前記テーパー
状の部分が前記ワイヤブランクから離間する方向に流れることによって、前記ワイヤブランクのラジアル方向に延在するシャンク部、および前記シャンク部と前記材料押し込み部との間に溝部を形成する第2押し出し成形機構であって、前記シャンク部が、前記材料押し込み部に
近接する第
一端部から、前記材料押し込み部から離間する第
二端部に向かって漸増する横断面面積を有する第2押し出し成形機構と、
前記ワイヤブランクの第2端部を据え込み押し出し成形して、このワイヤブランクの
前記第2端部をスロットシャフト部に造形し、このスロットシャフト部によってスロット部を形成し、前記第1端部と前記第2端部との間の前記ワイヤブランクおよび前記材料押し込み部または前記シャンク部を形成する第3押し出し成形機構であって、前記ワイヤブランクの前記第2端部がこのワイヤブランクの
前記第1端部に対向位置する第3押し出し成形機構と、
を有するセルフクリンチングリベットを製造することを特徴とする押し出し成形装置。
【請求項8】
さらに、ワイヤをクリップ留めして前記ワイヤブランクを得るクリップ留め機構を有する請求項7に記載の押し出し成形装置。
【請求項9】
さらに、前記クリップ留め機構によるクリップ留めによって得られた前記ワイヤブランクを据え込み押し出し成形して、前記ワイヤブランクの第1端部をヘッドビレットに造形し、前記第1押し出し成形機構による前記材料押し込み部および前記シャンク部ビレットの形成を促進する第4押し出し成形機構を有する請求項8に記載の押し出し成形装置。
【請求項10】
前記押し出し成形装置の前記第4押し出し成形機構、前記第1押し出し成形機構、前記第2押し出し成形機構、および前記第3押し出し成形機構によって前記ワイヤブランクを順次処理する請求項9に記載の押し出し成形装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年3月31を出願日とし、“セルフクリンチングリベットを製造する押し出し成形法および成形装置”を発明の名称とする中国特許出願第201910468707.8号に関係する非仮特許出願であり、上記中国特許出願の優先権を主張する特許出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は全体として押し出し成形技術に関し、具体的にはセルフクリンチングI-リベットを製造する押し出し成形方法および成形装置に関する。
【背景技術】
【0003】
セルフクリンチングI-リベットは、パネルを素早く組み立てかつ解体するために使用するプレートジョイントファスナーである。
図1に例示するリベット構造体は材料押し込み部1、シャンク部2、スロット部3およびスロットシャフト部4を有し、材料押し出し込み部1およびシャンク部2は、これらの間に凹状溝部5を有し、材料押し込み部1、スロットシャフト部4、およびこれらを接続するシャフト部6によってスロット部3を取り囲む。
【0004】
図2および
図3に示すように、パネルの組み立て時、最初に第1パネル7に形成した孔のセルフクリンチングI-リベットを挿入し、力を印加してパネル材料に材料押し込み部1をプレスする。このため、第1パネル7のパネル材が押し出され、溝部5に流れ込むため、セルフクリンチングI-リベットが第1パネル7にリベット留めされる。次に、リベットを摺動させて、大きな開口を有する部分から小さな開口を有するもう一つの部分へ第2パネル8の締め付け孔9内にこれを移すことによって第2パネル8にスロット部3を係合すると、2枚のパネルを素早く組み立てることができる。解体が必要な場合には、第2パネル8横に摺動させるだけでよく、第2パネル8が第1パネル7から外れる。
【0005】
このタイプのI-リベットはサイズが小さく、そのシャンク部2がテーパー形態を取り、またそのスロット部3および溝部5が内向き凹状の構造を持つため、押し出し成形プロセスを使用してこのようなI-リベットを製造することが難しく、通常このI-リベットは機械加工プロセスを利用して製造しているが、この機械加工プロセスは効率が悪く、原料の浪費が生じる。さらに、機械加工プロセスを使用して製造したリベットの繊維は切断することもあり、強度に問題が生じる。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の課題を解決するために、本発明の実施態様はセルフクリンチングI-リベットを製造する押し出し成形方法および成形装置を提供するもので、セルフクリンチングI-リベットを高速処理でき、かつ高速製造できる作用効果をもつものである。
【0007】
本願発明の一実施態様は、以下の工程を有するセルフクリンチングリベットの製造方法を提供するものである。
【0008】
ワイヤブランクの第1端部を据え込み押し出し成形して、この第1端部を材料押し込み部および環状のシャンク部ビレットに造形する工程であって、このシャンク部ビレットが前記ワイヤブランクに軸方向に沿って延在し、前記シャンク部が前記材料押し込み部の下側に位置し、そして前記シャンク部の下側面が下向きに凸状のテーパー部を有し、その横断面面積が上から下に向かって漸減するか、あるいは前記シャンク部ビレットが前記材料押し込み部の上側に位置し、そして前記シャンク部ビレットの上側面が上向きに凸状のテーパー部を有し、その横断面面積が上から下に向かって漸増する工程。
【0009】
前記シャンク部ビレットを据え込み押し出し成形して、前記テーパー部が前記ワイヤブランクから離間する方向に流れることによって、前記ワイヤブランクのラジアル方向に延在するシャンク部、および前記シャンク部と前記材料押し込み部との間の溝部を形成する工程であって、前記シャンク部が、前記押し込み部に隣接する第1端部から前記材料押し込み部から離間する第2端部に向かって漸増する横断面面積を有する工程。
【0010】
前記ワイヤブランクの第2端部を据え込み押し出し成形して、この第2端部をスロットシャフト部に造形することによって前記スロットシャフト部によってスロット部を形成する工程であって、前記ワイヤブランクの前記第2端部がこのワイヤブランクの前記第1端部に対向する位置にある工程。
【0011】
前記ワイヤブランクの前記第1端部を据え込み押し出し成形する工程の前に、本発明方法はさらに前記ワイヤブランクを準備する工程を有し、このワイヤブランクの体積が製造するセルフクリンチングリベットの体積に等しい。
【0012】
前記ワイヤブランクを準備する工程とこのワイヤブランクの前記第1端部を据え込み押し出し成形する工程との間に、本発明方法はさらに前記ワイヤブランクを据え込み押し出し成形して、第1押し出し成形機構によって前記材料押し込み部および前記シャンク部ビレットの形成を促進する前記第1端部をヘッドビレットに造形する工程を有する。
【0013】
さらに、前記ワイヤブランクを準備する工程で、ワイヤをクリップ留め機構によってクリップ留めし、前記ワイヤブランクを得る。
【0014】
前記シャンク部ビレットを据え込み押し出し成形する工程で、さらに前記シャンク部と前記材料押し込み部との間に円形の遷移部を形成する。
【0015】
“前記ワイヤブランクの前記第2端部を据え込み押し出し成形する”工程で、さらに開閉式のセグメントダイ形成によって前記スロットシャフト部を形成する。
【0016】
本願明細書には、
図10および
図11に示すセルフクリンチングリベットを製造する押し出し成形装置も開示する。この成形装置は、以下の成形機構を有する。
【0017】
前記ワイヤブランクの第1端部を据え込み押し出し成形して、この第1端部を材料押し込み部および環状のシャンク部ビレットに形成し、このシャンク部ビレットが前記ワイヤブランクに軸方向にそって延在する第1押し出し成形機構であって、前記シャンク部が前記材料押し込み部の下側に位置し、そして前記シャンク部ビレットの下側面が下向き凸状のテーパー部を有し、その横断面面積が上から下に向かって漸減する第1押し出し成形機構か、あるいは前記シャンク部ビレットが前記材料押し込み部の上側に位置し、そして前記シャンク部ビレットの上側面が上向き凸状のテーパー部を有し、その横断面面積が上から下に向かって漸増する第1押し出し成形機構。
【0018】
前記シャンク部ビレットを据え込み押し出し成形して、前記テーパー部が前記ワイヤブランクから離間する方向に流れることによって、前記ワイヤブランクのラジアル方向に延在するシャンク部、および前記シャンク部と前記材料押し込み部との間に溝部を形成する第2押し出し成形機構であって、前記シャンク部が、前記材料押し込み部に隣接する第1端部から前記材料押し込み部から離間する第2端部に向かって漸増する横断面面積を有する第2押し出し成形機構。
【0019】
前記ワイヤブランクの第2端部を据え込み押し出し成形して、前記第1端部と前記第2端部との間に形成しかつワイヤブランクの第2端部をスロットシャフト部に形成し、このスロットシャフト部によってスロット部を形成する第3押し出し成形機構であって、前記ワイヤブランクの前記第2端部がこのワイヤブランクの第1端部に対向位置する第3押し出し成形機構。
【0020】
さらに、この押し出し成形装置はワイヤをクリップ留めして前記ワイヤブランクを得るクリップ留め機構を有する。
【0021】
さらに、押し出し成形装置は、前記クリップ留め機構によるクリップ留めによって得られた前記ワイヤブランクを据え込み押し出し成形して、前記ワイヤブランクの第1端部をヘッドビレットに造形し、このヘッドビレットが前記第1押し出し成形機構による前記材料押し込み部および前記シャンク部ビレットの形成を促進する第4押し出し成形機構を有する。
【0022】
さらに、第4押し出し成形機構、前記第1押し出し成形機構、前記第2押し出し成形機構、および前記第3押し出し成形機構によって前記ワイヤブランクを順次処理する。
【0023】
本発明の作用効果について以下に記載する。
【0024】
1.本発明が提供するセルフクリンチングリベットを製造する押し出し成形方法および成形装置の場合、一度の押し出し成形加工でセルフクリンチングリベットを製造でき、加工時に廃棄物が発生しない。従来の機械加工方法と比べた場合、本発明では原料利用率が大幅に向上し、廃棄物が減少し、エネルギー消費量が減少し、従って加工コストを削減できる。
【0025】
2.本発明が提供するセルフクリンチングリベットを製造する押し出し成形方法および成形装置の場合、成形したセルフクリンチングリベットのサイズがダイ構造によって定まりかつ保証されるため、成形したセルフクリンチングリベットの寸法がより一定したものになる。
【0026】
3.本発明によって製造したセルフクリンチングリベットは、完全かつ連続する金属流線形を維持するため、強度が機械加工プロセスによって製造したセルフクリンチングリベットよりも大幅に向上し、以降の表面処理では水素脆化が生じる恐れはない。
【0027】
前記の本発明の目的、特徴、作用効果などを理解し易くするために、多くの好適な実施態様を添付図面を参照して以下に記載し、詳細な説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の実施態様、あるいは従来技術における技術的解決策をより明瞭に説明するために、実施態様または従来技術の説明を行う際に使用する図面について簡単に説明しておく。なお、以下の説明における添付図面は本発明の一部の実施態様を説明するもので、当業者ならば、別に創作力に頼らなくとも、添付図面に基づき他の図面を作図できるはずである。
【0029】
【
図1】
図1は、セルフクリンチングリベットの構造を示す図である。
【
図2】
図2は、セルフクリンチングリベットを使用してパネルを組み付ける際の使用状態を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2の第2パネル構造を部分的に示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施態様に係る実施例1におけるセルフクリンチングリベットの押し出し成形時に生じる変形を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施態様に係る実施例1におけるセルフクリンチングリベットの押し出し成形時に生じる変形を示す正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施態様に係る実施例2におけるセルフクリンチングリベットの押し出し成形時に生じる変形を示す正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施態様に係る実施例2におけるセルフクリンチングリベットの押し出し成形時に生じる変形を示す正面図である。
【
図8】
図8は、
図1における部分Aの構造を拡大して示す図である。
【
図9】
図9は、
図5における部分Bの構造を拡大して示す図である。
【
図10-11】
図10および
図11は、本発明の実施態様に係るセルフクリンチングリベットを製造する押し出し成形装置を示す概略図である。
【0030】
添付図面における参照符号は以下の通りである。1は材料押し込み部、2はシャンク部、3はスロット部、4はスロットシャフト部、5は溝部、6はシャフト部、7は第1パネル、8は第2パネル、9は締め付け孔、10はワイヤブランク、20はヘッドビレット(head billet)、30はシャンク部、40はテーパー部である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施態様に関する添付図面を参照して、本発明の実施態様に係る技術的解決策を明確かつ完全に説明する。なお、以下に説明する実施態様は本発明の実施態様のごく一部にしか過ぎず、本発明の全実施態様を表すものではない。当業者ならば、本発明の実施態様に基づけば別に創作力を発揮しなくとも、本発明が保護する範囲内において別な実施態様を実現できるはずである。
【0032】
本発明の第1目的は、機械加工技術を使用する従来の製造方法の代わりに、押し出し成形を使用して、セルフクリンチングリベットの製造効率を改善したセルフクリンチングリベットの製造方法を提供することにある。
【0033】
具体的には、本製造方法は以下の工程を利用することができる。
【0034】
最初に、ワイヤブランク10の第1端部を据え込み押し出し成形し(upset-extrusion)、ヘッドビレット20を得る。この工程では、
図4または
図6の第2状態(左から右、即ち第1変形状態)に示す形状にヘッドビレット20を据え込み押し出し成形することができる。あるいは、次の据え込み押し出し成形を促進し、材料押し込み部1およびシャンク部2を形成する形状にしてもよい。
【0035】
この工程を行う前に、クリッピ留め機構を使用してワイヤをクリッピ留めすることによってワイヤブランク10を準備することも可能である。他の代替的な実施態様では、ワイヤを押し出し成形に好適な複数のワイヤブランク10に均等に分断できる他の機構によってもワイヤブランク10を準備することができることは言うまでもない。ワイヤブランク10の体積については、製造すべきセルフクリンチングリベットの体積に等しいことが好ましい。
【0036】
次に、ヘッドビレット20を据え込み押し出し成形して、これを材料押し込み部1および環状のシャンク部ビレット30に造形する。
図6および
図7に示す第3状態(左から右、即ち第2変形状態)において、ワイヤブランク10に軸方向にそってシャンク部ビレット30を伸長し、材料押し込み部1の下側に位置させる。シャンク部ビレット30の下側面は下向きに凸状のテーパー部40であり、その断面積は上から下に向かって漸減する。別な代替的な実施態様では、
図4および
図5に第3状態(左から右、即ち第2変形状態)に示すように、シャンク部ビレット30は材料押し込み部1の上側に位置させてもよく、この場合、シャンク部ビレット30の上側面は上向き凸状のテーパー部40であり、その横断面面積は上から下に向かって漸増する。
【0037】
ヘッドビレット20の据え込み押し出し成形によって、材料押し込み部1の一方の側部が平坦なヘッド平面になり、シャンク部ビレット30が材料押し込み部1の他方の側部に形成する。次の工程で、所望サイズ(例えば、リベットの軸方向に切り込む、形成されたシャンク部2の部分が等脚台形になる)を持つシャンク部2を得るためには、ダイキャビティに据え込み押し出し成形時にヘッドビレット20の一部を充填することによって得られたテーパー部40の端部がフルシャープコーナー(full sharp corner)に必ずなるようにするのが好ましい。
【0038】
引き続き、テーパー部40がワイヤブランク10から離間する方向に流れることによって、ワイヤブランク10のラジアル方向に伸長するシャンク部2を形成するとともに、シャンク部2と材料押し込み部1との間に溝部5を形成するように、シャンク部ビレット30を据え込み押し出し成形する。シャンク部2の横断面面積は、材料押し込み部1に隣接する第1端部から材料押し込み部1から離間する第2端部まで漸増する。
【0039】
またこの工程では、
図4または
図6の第4状態(左から右へ、即ち第3変形状態)について説明すると、シャンク部ビレット30の高さおよび直径は、シャンク部2の高さおよび直径に一致するようにダイキャビティによって制御するため、上記工程で形成したテーパー部40の材料が変形しかつワイヤブランク10から離間する方向に流れ、シャンク部ビレット30がシャンク部2に変形する。具体的には、テーパー部40の横断面面積がワイヤブランク10の軸方向に変化するため、横断面面積が小さい第1端部から横断面面積が大きい第2端部の方向に(即ち材料押し込み部1から離間するテーパー部40の一端から材料押し込み部1に隣接するテーパー部40の他端の方向に)据え込み押し出し成形を行うと、ダイキャビティによる形成を実施している状態でテーパー部40における材料高さおよび材料流量が相違するため溝部5およびシャンク部2が形成する。
【0040】
最後に、ワイヤブランクの第2端部を据え込み押し出し成形して、これを造形してスロットシャフト部4にする。正確には、スロット部3はスロットシャフト部4、第1端部と第2端部との間に形成したワイヤブランク10、および材料押し込み部1またはシャンク部2によって形成できる。ワイヤブランク10の第2端部は、ワイヤブランク10の第1端部に対向する。
【0041】
この工程では、
図4または
図6における第5状態(左から右へ、即ち第4変形状態)を参照して説明すると、材料押し込み部1およびシャンク部2が形成されるワイヤブランク10の第1端部に対向する第2端部をスロットシャフト部4に造形する。従って、スロット部3は、直径がワイヤブランク10よりも大きいスロットシャフト部4と材料押し込み部1またはシャンク部2との間に形成する。具体的には、スロットシャフト部4は開閉式のセグメントダイ(ハーフダイとも呼ばれている:open-close segment die)によって形成するため、形成後のスロット部3の取り出しが容易になる。
【0042】
本発明の第2目的は、セルフクリンチングリベットを製造する押し出し成形装置を提供することにある。
【0043】
本発明押し出し成形装置は、ヘッドビレット20を押し出し成形してこれを材料押し込み部1および環状のシャンク部ビレット30に造形する第1押し出し機構を有する。ワイヤブランク10に沿って軸方向に延在するシャンク部ビレット30は、材料押し込み部1の下側に位置する。シャンク部ビレット30の下側面は下向きに凸状のテーパー部40を有し、その横断面面積は上から下に向かって漸減する。また、シャンク部ビレット30は材料押し込み部1の上側に位置してもよく、シャンク部ビレットの上側面は上向きに凸状のテーパー部40を有し、その横断面面積は上から下に向かって漸増する。
【0044】
さらに、本発明装置は、シャンク部ビレット30の据え込み押し出し成形して、テーパー部40がワイヤブランク10から離間する方向に流れることによって、ワイヤブランク10のラジアル方向に延在するシャンク部2およびシャンク部2と材料押し込み部1との間に溝部5を形成する第2押し出し成形機構を有する。シャンク部2の横断面面積は、材料押し込み部1に隣接する第1端部から材料押し込み部1から離間する第2端部に向かって漸増する。
【0045】
さらに、本発明装置は、ワイヤブランク10の第2端部を据え込み押し出し成形して、ワイヤブランク10の第2端部をスロットシャフト部4に形成することによって、スロットシャフト部4、第1端部と第2端部との間に形成したワイヤブランク10、および材料押し込み部1か、あるいはシャンク部2によってスロット部3を形成する第3押し出し成形機構を有する。ワイヤブランク10の第2端部は、ワイヤブランク10の第1端部に対向している。
【0046】
本発明の押し出し成形装置については、さらにワイヤをクリップ留めしてワイヤブランクを得るクリップ留め機構を有するのが好ましく、また第3押し出し成形機構については、スロットシャフト部4を形成する開閉式のセグメントダイを有するのが好ましい。
【0047】
また押し出し成形装置については、クリップ留め機構によってクリップ留めしたワイヤブランク10を据え込み押し出し成形して、ワイヤブランク10の第1端部をヘッドビレット20に造形し、材料押し込み部1およびシャンク部ビレット30の第1押し出し成形機構による押し出し成形を容易にする第4押し出し成形機構を有するのが好ましい。具体的には、押し出し成形装置の第4押し出し成形機構、第1押し出し成形機構、第2押し出し成形機構および第3押し出し成形機構がワイヤブランクを順次処理する。
【0048】
なお、本発明の押し出し成形処理の場合、冷間据え込み方式、熱入れ据え込み方式あるいは熱間据え込み方式で実施することができ、従って、本発明の押し出し成形装置は冷間据え込み式装置、熱入れ据え込み式装置(warm upset apparatus)、あるいは熱間据え込み式装置といえる。
【0049】
図10および
図11は、本発明の実施態様に係るセルフクリンチングリベットを製造する押し出し成形装置を示す概略図である。
図10および
図11に示すように、押し出し成形装置は第1押し出し成形機構、第2押し出し成形機構、第3押し出し成形機構および第4押し出し成形機構に連絡する制御器を有していてもよい。この制御器は、押し出し成形機構を制御して、本発明の他の実施態様を参照して説明するそれぞれの押し出し成形工程を実施する構成である。以下に、2つの具体的な実施例を詳細に説明する。
【0050】
実施例1
【0051】
図4および
図5を参照して説明すると、これら図面には左から右にかけて、ワイヤブランク10の第1状態、第4押し出し成形機構による処理後のワイヤブランク10の第2状態、第1押し出し成形機構による処理後のワイヤブランク10の第3状態、第2押し出し成形機構による処理後のワイヤブランク10の第4状態、および第3押し出し成形機構による処理後のワイヤブランク(成形品)10の第5状態を始めとするワイヤブランク10の異なる状態を示す。
【0052】
クリップ留め機構を使用して、ワイヤをクリップ留めし、体積が、製造すべきセルフクリンチングリベットの体積に等しいワイヤブランク10を得ることができる。
【0053】
ワイヤブランク0をクランプによって第4押し出し成形機構に移送し、ここでワイヤブランク10の第1端部をヘッドビレット20に据え込み押し出し成形する。
【0054】
第4押し出し成形機構によって処理したワイヤブランク10については、クランプによって第1押し出し成形機構に移送し、ヘッドビレット20を材料押し込み部1および環状シャンク部ビレット30に据え込み押し出し成形する。ワイヤブランク10の軸方向に延在するシャンク部ビレット30については、材料押し込み部1の下側に設ける。シャンク部ビレット30の下側面は下向き凸状テーパー部40を有し、この横断面面積は上から下に向かって漸減する。
【0055】
次に、第1押し出し成形機構が処理したワイヤブランク10をクランプによって第2押し出し成形機構に移送し、ここでシャンク部ビレット30を据え込み押し出し成形し、テーパー部40がワイヤブランク10から離間する方向に流れることによって、ワイヤブランク10のラジアル方向に延在するシャンク部2およびシャンク部2と材料押し込み部1との間に溝部5を形成する。シャンク部2の横断面面積は、材料押し込み部1に隣接する第1端部から材料押し込み部1から離間する第2端部に向かって漸増する。
【0056】
第2押し出し成形機構が処理したワイヤブランク10をクランプによって第3押し出し成形機構に移し、ここでワイヤブランク10の第2端部を据え込み押し出し成形し、ワイヤブランク10の第2端部をスロットシャフト部4に造形する。正確には、スロット部3はスロットシャフト部4、第1端部と第2端部との間に形成したワイヤブランク10、および材料押し込み部1またはシャンク部2によって形成する。次に、第3押し出し成形機構が、形成されたセルフクリンチングリベットを射出する。ワイヤブランク10の第2端部は、ワイヤブランク10の第1端部に対向する。
【0057】
実施例2
【0058】
図6および
図7を参照して説明すると、これら図面には左から右にかけて、ワイヤブランク10の第1状態、第4押し出し成形機構による処理後のワイヤブランク10の第2状態、第1押し出し成形機構による処理後のワイヤブランク10の第3状態、第2押し出し成形機構による処理後のワイヤブランク10の第4状態、および第3押し出し成形機構による処理後のワイヤブランク10の第5状態を始めとするワイヤブランク10の異なる状態を示す。
【0059】
クリップ留め機構を使用してワイヤをクリップ留めし、体積が、製造すべきセルフクリンチングリベットの体積に等しいワイヤブランク10を得ることができる。
【0060】
ワイヤブランク10をクランプによって第4押し出し成形機構に移送し、ここでワイヤブランク10の第1端部をヘッドビレット20に据え込み押し出し成形する。
【0061】
第4押し出し成形機構によって処理したワイヤブランク10については、クランプによって第1押し出し成形機構に移送し、ヘッドビレット20を材料押し込み部1および環状シャンク部ビレット30に据え込み押し出し成形する。ワイヤブランク10の軸方向に延在するシャンク部ビレット30については、材料押し込み部1の上側に設ける。シャンク部ビレット30の下側面は上向き凸状テーパー部40を有し、この横断面面積は上から下に向かって漸増する。
【0062】
第1押し出し成形機構が処理したワイヤブランク10をクランプによって第2押し出し成形機構に移送し、ここでシャンク部ビレット30を据え込み押し出し成形し、テーパー部40がワイヤブランク10から離間する方向に流れることによって、ワイヤブランク10のラジアル方向に延在するシャンク部2、およびシャンク部2と材料押し込み部1との間に溝部5を形成する。シャンク部2の横断面面積は、材料押し込み部1に隣接する第1端部から材料押し込み部1から離間する第2端部に向かって漸増する。
【0063】
第2押し出し成形機構が処理したワイヤブランク10をクランプによって第3押し出し成形機構に移す。第3押し出し成形機構がワイヤブランク10の第2端部を据え込み押し出し成形する開閉式のセグメントダイであるため、ワイヤブランク10の第2端部を造形してスロットシャフト部4にする。正確には、スロット部3はスロットシャフト部4、第1端部と第2端部との間に形成したワイヤブランク10、および材料押し込み部1またはシャンク部2によって形成する。次に、第3押し出し成形機構が形成したセルフクリンチングリベットを射出する。ワイヤブランク10の第2端部は、ワイヤブランク10の第1端部に対向する。
【0064】
本発明は上記の押し出し成形方法および成形装置によって少なくとも以下の作用効果を発揮する。
【0065】
1.複数の押し出し成形機構を利用して、経済的で機能的なプロセスによってセルフクリンチングリベットを製造できる。従来の機械加工的な方法と比較した場合、本発明方法は原料の利用率を著しく改善できる。即ち、原料の無駄が減り、エネルギー消費量も小さく、また処理コストも低い。
【0066】
2.本発明が提供する押し出し成形方法およびセルフクリンチングリベットを製造できる成形装置によって製造されたセルフクリンチングリベットのサイズはダイ構造によって決定されるとともに保証されるため、セルフクリンチングリベットの寸法がより一貫して一定になる。
【0067】
3.本発明方法によって製造されたリベットの成形品は直接的な押し出し成形によって製造できるため、完全かつ連続的な流線形を有し、これによってリベットの強度を改善できる。
【0068】
4.機械加工方法によって製造したセルフクリンチングリベットと比較した場合、本発明の押し出し成形方法によって得られた成形品の残留応力を大幅に小さくできる上に、以降の表面処理において水素脆化の恐れがなくなる。
【0069】
5.上記押し出し成形方法のシャンク部ビレット30を据え込み押し出し成形工程において、シャンク部2および材料押し込み部1を形成する際に、底部にすみ肉半径(fillet radius)をもつ溝部5をシャンク部2と材料押し込み部1との間に形成できる。即ち、連続的な円形遷移部(
図9を参照)をシャンク部2と材料押し込み部1との間に形成できる。ただし、機械加工方法を使用して、溝部5を形成した場合には、シャンク部2と材料押し込み部1との間において溝部5の最も深い部分に真っ直ぐな遷移部分が形成することになる(
図8を参照)。従って、同じ仕様のセルフクリンチングリベットを製造する機械加工方法と比較した場合、本発明が提供する押し出し成形製造方法の場合には流線状の連続溝部5を形成できる。従って、本発明のリベットを使用してパネルを組み立てる場合には、受け取りスペースに流れ込むことができるパネルのパネル材料を受け取るスペースより強くでき、より安定な装着構造を生み出すことができる。
【0070】
本発明の原理および実施態様を本発明の具体的な実施態様について説明してきたが、これら実施態様に関する記載は、本発明方法およびその核心的な技術思想の理解の一助となることのみを目的としている。一方、当業者ならば、本発明の技術思想に従って、具体的な実施態様および用途に変更を加えることができるはずである。総合的に見て、本明細書の記載内容については、本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。
【符号の説明】
【0071】
1 材料押し込み部
2 シャンク部
3 スロット部
4 スロットシャフト部
5 溝部
6 シャフト部
7 第1パネル
8 第2パネル
9 締め付け孔
10 ワイヤブランク
20 ヘッドビレット(head billet)
30 シャンク部
40 テーパー部