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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】顕微鏡および顕微鏡を動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20240723BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20240723BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B7/02 C
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021573556
(86)(22)【出願日】2020-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-18
(86)【国際出願番号】 EP2020064797
(87)【国際公開番号】W WO2020249400
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】102019116114.2
(32)【優先日】2019-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511079735
【氏名又は名称】ライカ マイクロシステムズ シーエムエス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leica Microsystems CMS GmbH
【住所又は居所原語表記】Ernst-Leitz-Strasse 17-37, D-35578 Wetzlar, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン シューマン
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-206534(JP,A)
【文献】特開2017-044871(JP,A)
【文献】特開2006-023494(JP,A)
【文献】特開2016-017880(JP,A)
【文献】特開2018-063291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00
G02B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(100)であって、前記顕微鏡(100)は、
結像誤差を補正するためにレンズシステム(102)の光軸(O)に沿って調節可能な1つの対物レンズユニット(102a)を備えたレンズシステム(102)と、
前記対物レンズユニット(102a)を前記光軸(O)に沿って調節するように構成された、モータにより操作可能な調節装置(104)と、
画像撮影に利用される光ビーム(103)を偏向するように構成された走査ユニット(106)と、
プロセッサ(110)と、
を含み、
前記プロセッサ(110)は、
前記対物レンズユニット(102a)の補正調節後に撮影された画像の位置を基準データと比較し、
前記比較に基づき、前記対物レンズユニット(102a)の前記補正調節に基づく前記画像の位置の変化を検出し、
前記画像の位置の前記変化が少なくとも部分的に補償されるように前記走査ユニット(106)を駆動制御する、
ように構成されている顕微鏡(100)。
【請求項2】
前記プロセッサ(110)は、前記比較用の基準データとして、前記対物レンズユニット(102a)の前記補正調節前に撮影された画像の位置を使用する、
請求項1記載の顕微鏡(100)。
【請求項3】
前記顕微鏡(100)は、前記プロセッサ(110)が前記比較用の基準データとして使用する基準値を格納するための基準値メモリ(112)をさらに含む、
請求項1または2記載の顕微鏡(100)。
【請求項4】
前記顕微鏡(100)は、前記プロセッサ(110)が前記比較用の基準データとして使用する画像データを格納するための画像メモリ(114)をさらに含む、
請求項1から3までのいずれか1項記載の顕微鏡(100)。
【請求項5】
前記調節装置(104)は、前記調節装置(104)の操作後にフィードバック信号を前記プロセッサ(110)に送信するように構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載の顕微鏡(100)。
【請求項6】
前記プロセッサ(110)は、前記走査ユニット(106)を駆動制御するための補償調整値を前記画像の位置の前記変化に基づき算出するように構成されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の顕微鏡(100)。
【請求項7】
前記プロセッサ(110)は、前記走査ユニット(106)を駆動制御するための補償調整値を、各補償調整値に前記画像の位置を変化させるための値が対応付けられた割当表に基づき求めるように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載の顕微鏡(100)。
【請求項8】
前記補償調整値は、オフセット値であり、前記オフセット値に基づき、前記プロセッサ(110)は、画像撮影に利用される前記光ビーム(103)を偏向するために前記走査ユニット(106)を駆動制御する、
請求項6または7記載の顕微鏡(100)。
【請求項9】
前記プロセッサ(110)は、シーケンスの最初の画像の撮影前および/または前記シーケンスの第1の画像の撮影と後続の第2の画像の撮影との間に前記調節装置(104)の操作を行い、その後前記最初の画像または前記第2の画像の位置の変化の検出を行い、続いて検出された変化を補償するために前記走査ユニット(106)の駆動制御を行うように、自動化された画像撮影シーケンスを実施するように構成されている、
請求項1から8までのいずれか1項記載の顕微鏡(100)。
【請求項10】
前記プロセッサ(110)は、自動化された前記画像撮影シーケンスを、リアルタイム撮影、低速度撮影または画像積層撮影の枠組みにおいて実施する、
請求項9記載の顕微鏡(100)。
【請求項11】
前記顕微鏡は、共焦点顕微鏡として形成されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の顕微鏡(100)。
【請求項12】
前記顕微鏡は、多光子励起顕微鏡として形成されている、
請求項1から10までのいずれか1項記載の顕微鏡(100)。
【請求項13】
顕微鏡(100)を動作させる方法であって、前記顕微鏡(100)は、
結像誤差を補正するためにレンズシステム(102)の光軸(O)に沿って調節可能な1つの対物レンズユニット(102a)を備えたレンズシステム(102)と、
前記対物レンズユニット(102a)を前記光軸(O)に沿って調節するように構成された、モータにより操作可能な調節装置(104)と、
画像撮影に利用される光ビーム(103)を偏向するように構成された走査ユニット(106)と、
を含み、
前記方法は、以下のステップ、すなわち、
前記対物レンズユニット(102a)の補正調節後に撮影された画像の位置を基準データと比較するステップと、
前記比較に基づき、前記対物レンズユニット(102a)の前記補正調節に基づく前記画像の位置の変化を検出するステップと、
前記画像の位置の前記変化を少なくとも部分的に補償するように前記走査ユニットを駆動制御するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
前記画像の位置の前記基準データとの前記比較は、画像評価アルゴリズムに基づき、特に相互相関アルゴリズムおよび/または位相相関アルゴリズムに基づき実施される、
請求項13記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結像誤差を補正するためにレンズシステムの光軸に沿って調節可能なレンズユニットを備えたレンズシステムと、レンズユニットを光軸に沿って調節するように構成された、モータにより操作可能な調節装置と、画像撮影に利用される光ビームを偏向するように構成された走査ユニットと、を含む顕微鏡に関する。さらに、本発明は、この種の顕微鏡を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、移動可能なレンズ群として形成されたレンズユニットを、結像誤差を補正するために光軸に沿って運動させることができる調節装置が設けられた、顕微鏡対物レンズが公知である。特に、このような手動によりまたはモータにより実行可能な補正調節は、屈折率誤差調整によって生ぜしめられた球面収差を除去するのに役立つ。
【0003】
独国特許発明第102011051677号明細書から、モータにより操作可能な調節装置を介して調節可能であるレンズユニットを備えたレンズシステムを含む、顕微鏡対物レンズが公知である。補正調節のために、レンズユニットのマウントは、ガイドスリーブの内側に光軸に沿って移動可能に支持されている。この顕微鏡対物レンズでは、取付精度は任意の高さにできない、すなわち、レンズユニットのマウントとガイドスリーブとの間の間隙は任意の小ささにはできない。というのも、それ以外の場合の移動可能性がそれ以上得られないからである。
【0004】
レンズユニットのマウントとガイドスリーブとの間のクリアランスに基づき、光軸に沿ってレンズユニットをモータにより移動させる場合であっても、ガイドスリーブ内でのレンズユニットの横方向のずれおよび/または傾きが生じる可能性もある。またこの結果、不都合なことに、補正調節後に撮影された画像の位置変化、つまり横方向のずれが生じてしまう。このことにより、画像撮影の品質が悪化する。さらに、このことは、例えば断層撮影において生成される他の画像との比較、または一般的に基準データとの比較を困難にしてしまうか、不正確にしてしまうか、またはさらには不可能にしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、上記の補正調節の欠点を解消する顕微鏡および顕微鏡を動作させる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、結像誤差を補正するためにレンズシステムの光軸に沿って調節可能なレンズユニットを備えたレンズシステムと、レンズユニットを光軸に沿って調節するように構成された、モータにより操作可能な調節装置と、画像撮影に利用される光ビームを偏向するように構成された走査ユニットと、を含む顕微鏡によって解決される。本発明によれば、顕微鏡は、レンズユニットの補正調節後に撮影された画像の位置を基準データと比較し、この比較に基づき、補正調節に基づく画像の位置の変化を検出し、画像の位置の変化が少なくとも部分的に補償されるように走査ユニットを駆動制御するように構成されたプロセッサをさらに含む。
【0007】
このようにして、補正調節によって生ぜしめられた画像位置の変化が解消され、これにより、補正調節後に撮影された画像を、後続の評価および分析の際により簡単にかつより正確に、事前に撮影された画像と比較することができる。このことは、特に自動化された画像撮影シーケンス、例えばリアルタイム撮影、低速度撮影または画像積層撮影の枠組みにおいて実施される画像撮影シーケンスの場合に、多大な利点となる。視覚上のまたは自動化された画像評価に基づき補正調節を調整する場合にも、このことは利点となり得る。
【0008】
好適な一態様では、プロセッサは、比較用の基準データとして、レンズユニットの補正調節前に撮影された画像の位置を使用する。このために、顕微鏡は、例えば、プロセッサが比較用の基準データとして使用する画像データを格納するための画像メモリを含む。
【0009】
しかしながら、画像位置を比較するために考慮される基準データは、前述の画像データに限定されない。したがって、基準データによって、プロセッサが補正調節によって生ぜしめられた画像位置の変化を検出することが可能になる場合には、基準データを他の方法で提供することもできる。
【0010】
別の一態様では、顕微鏡は、プロセッサが比較用の基準データとして使用する基準値を格納するための基準値メモリをさらに含む。このことは、画像撮影シーケンスの最初の画像の撮影前に補正調節を行い、したがって事前に補正調節なしで撮影された画像の画像データがまだ存在しない場合に、特に有利である。
【0011】
有利な一態様では、調節装置は、この調節装置の操作後にフィードバック信号を自動的にプロセッサに送信するように構成されている。これに続いて、このフィードバック信号によって、補正調節後に撮影された画像の位置を基準データと比較し、この比較に基づき、補正調節に基づく画像の位置の変化を検出し、画像位置変化を補償するための走査ユニットを後続の画像撮影のために対応して駆動制御するように、プロセッサを自動的にトリガすることができる。
【0012】
好適な一態様では、プロセッサは、走査ユニットを駆動制御するための補償調整値を画像の位置の変化に基づき算出するように構成されている。前述の補償調整値は、例えば、いわゆるパニング関数の実現に利用されるパラメータの形態で提供することができる。この関数は、走査顕微鏡において適用され、これにより、走査ユニットの対応する駆動制御によって、画像領域を所望の方法で移動させることができる。
【0013】
別の一態様では、プロセッサは、走査ユニットを駆動制御するための補償調整値を、各補償調整値に画像の位置を変化させるための値が対応付けられた割当表に基づき求めるように構成されている。この割当表は、プロセッサに組み込まれたメモリに、またはプロセッサの外側のメモリに格納されていてよく、この場合、プロセッサは、このメモリへのアクセスを有する。
【0014】
上記の補償調整値は、有利には、プロセッサが画像撮影に利用される光ビームを偏向するために走査ユニットを駆動制御する基となる駆動制御値に加算されるオフセット値である。割当表は、補償調節の反転遊びおよびヒステリシスに関する情報を含んでもよい。これらのデータは、本顕微鏡システムによって求めるか、または別個のステップ、例えば対物レンズの干渉法による測定においても求めることができる。
【0015】
顕微鏡は、例えば、共焦点顕微鏡として、または多光子励起顕微鏡として形成されている。この場合、このような種類の顕微鏡ではいずれにせよすでに存在している走査ユニットの本発明に係る駆動制御を有利に使用することができ、これにより、補正調節によって生ぜしめられた画像位置変化の所望の補償を達成することができる。しかし、画像位置の変化を補償するために駆動制御することができる走査ユニットが存在していれば、本明細書で提案している解決手段を他の種類の顕微鏡においても使用可能であることは自明である。
【0016】
好ましくは、プロセッサは、シーケンスの最初の画像の撮影前および/またはシーケンスの第1の画像と後続の第2の画像との間に調節装置の操作を行い、その後最初の画像または第2の画像の位置の変化の検出を行い、続いて検出された変化を補償するために走査ユニットの駆動制御を行うように、自動化された画像撮影シーケンスを実施するように構成されている。この実施形態により、いわゆるローリングシャッタにおける、つまり最初の画像で開始される画像シーケンス中の、画像位置変化の自動化された補償が可能になる。この画像シーケンス中に、好ましくは、結像誤差を補正するためにレンズユニットを調節する度に走査ユニットが駆動制御され、これにより、この調整に伴って現れる画像位置の変化を補償することができる。この場合、それぞれの補正調節後に撮影された画像の位置変化は、場合により補正調節前に生成された画像の位置に比べて求められる。前述のシーケンスの最初の画像の場合のように、補正調節前に生成された画像が提供されない場合には、他の方法で、例えば、画像撮影シーケンスの開始前に提供された、予め調節された基準画像の形態で基準データを参照することができる。さらに、基準を他の方法で、例えば、実際の画像撮影に利用される方法以外で求められる静的基準の形態で提供することができる。画像シーケンス中にその位置変化を求めることができる、画像が予め適合調整された相関関係を維持すべきこのような外部基準を、例えば特別なコントラスト法により決定することができる。
【0017】
自動化された画像撮影シーケンスは、好ましくは、リアルタイム撮影、低速度撮影または画像積層撮影の枠組みにおいて行われる。リアルタイム撮影では、ローリングシャッタを、特に、試料検索のために、および補正調節を調整するために利用することができる。これに対して、低速度撮影または画像積層撮影の場合には、補正調節を、実際の画像撮影プロセスにおいて自動化して実施することができる。要するに、ローリングシャッタ自体を、補正調節の自動化のために実施することができ、これにより、ローリングシャッタによって達成された自動化を、その後に画像撮影プロセスにおいて使用することができる。
【0018】
さらに、本発明の根底をなす課題は、以下のコンポーネント、すなわち、結像誤差を補正するためにレンズシステムの光軸に沿って調節可能なレンズユニットを備えたレンズシステムと、レンズユニットを光軸に沿って調節するように構成された、モータにより操作可能な調節装置と、画像撮影に利用される光ビームを偏向するように構成された走査ユニットと、を含む顕微鏡を動作させる方法によって解決される。この場合、本発明に係る方法は、以下のステップ、すなわち、レンズユニットの補正調節後に撮影された画像の位置を基準データと比較するステップと、この比較に基づき、レンズユニットの補正調節に基づく画像の位置の変化を検出するステップと、画像の位置の変化を少なくとも部分的に補償するように走査ユニットを駆動制御するステップと、を含む。
【0019】
画像の位置の基準データとの比較は、好ましくは、画像評価アルゴリズムに基づき、特に相互相関アルゴリズムおよび/または位相相関アルゴリズムに基づき実施される。この場合、画像評価アルゴリズムは、有利には、完全な画像の画像データを使用し、これにより、基準データに基づく画像の位置の比較は、生きている試料における運動に対して特によりエラー耐性を有する。
【0020】
以下に、実施形態を図面に基づき詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】顕微鏡の一実施形態を示す概略図である。
図2】一方は補正調節前に撮影された、他方は補正調節後に撮影された2つの画像の位置を示す図であり、2つの画像は互いに横方向のずれを有する。
図3】顕微鏡を動作させる例示的な方法のためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1には、顕微鏡100の一実施形態の概略図が示されている。図示した顕微鏡100は、レンズユニット102aを備えたレンズシステム102を含み、レンズユニット102aは、結像誤差を補正するために、例えば球面収差を補正するために、レンズシステム102の光軸Oに沿って調節可能である。本実施形態では、レンズシステム102は、調節可能なレンズユニット102aに加えて、図示した態様では、例えば2つ以上の別のレンズ102b,102cを含む。
【0023】
顕微鏡100は、モータにより操作可能な調節装置104をさらに含み、調節装置104は、レンズユニット102aを光軸Oに沿って調節するように構成されている。さらに、顕微鏡100は、走査ユニット106を有し、走査ユニット106は、画像撮影に利用される光ビーム103を偏向するように構成されている。本実施形態では、走査ユニット106は、例えば電気式に調節可能な1つまたは複数の偏向ミラーの形態で構成されている。
【0024】
図1に示した実施形態に関して、顕微鏡100が共焦点走査顕微鏡として形成されていることが想定されるべきである。この場合、顕微鏡100のレンズシステム102は、照明光学系としても検出光学系としても用いられる。したがって、図1において全体に符号108が付された照明/検出ユニットは、試料に照明光を出力するための光源も、例えば点検出器を備えた共焦点ピンホールまたは照明された試料から発する検出光を捕捉するための空間分解検出器の形態の検出器も含むものとする。したがって、走査ユニット106は、本実施形態で例示として想定しているのみであるこの配置構成では、試料に放射された照明光にも、試料から発する検出光にも作用する。検出光に関して、走査ユニット106によって、いわゆるデスキャン構成が実現されており、デスキャン構成によって、走査中の試料照明から生じる検出光を、反作用の意味においてデスキャンすることができる。したがって、図1に示した画像撮影に利用される光ビーム103を、検出光および/または照明光に分類することができる。
【0025】
さらに、顕微鏡100は、プロセッサ110を含み、プロセッサ110は、レンズユニット102aの補正調節後に撮影された画像の位置を基準データと比較し、続いてこの比較に基づき、レンズユニット102aの補正調節に基づく画像の位置の変化を検出するように構成されている。画像の位置変化は、例えば、レンズユニット102aを光軸Oに沿って補正調整するために移動可能な顕微鏡コンポーネントの間に存在している、無視できないクリアランスによって生ぜしめられる。例えば調節装置104は、ガイドスリーブ(図1に図示せず)を有し、ガイドスリーブ内では、レンズユニット102aのマウント(同じく図示せず)が軸線方向に移動可能にガイドされている。このクリアランスの結果、レンズユニット102aが、その軸線方向の移動運動において、レンズユニット102aの目標位置に関して光軸Oに対して相対的にある程度の横方向のずれまたは傾きを受けることは完全には回避できず、これにより結果として検出された画像位置が目標位置に比べて変化する。検出された画像位置と比較される前述の基準データは、この目標位置を反映している。
【0026】
プロセッサ110は、画像の位置の変化が少なくとも部分的に補償されるように、走査ユニット106を制御する。このために、プロセッサ110は例えば、いわゆるパニングパラメータを補償調整値として、検出された画像位置の変化に基づき算出するように構成されている。顕微鏡100が共焦点走査顕微鏡として形成されている本実施形態では、プロセッサ110は、このような走査顕微鏡にはいずれにせよ画像領域を選択的に調整するためのパニング関数が設けられるという状況を利用している。この場合、算出により補償調整値を求めることは、例示としてのみ理解すべきである。したがって、択一的な態様においても同様に、各補償調整値に画像の位置を変化させるための値が対応付けられた割当表に基づき、走査ユニット106を駆動制御するための補償調整値を求めることができる。この割当表は、プロセッサ110に組み込まれたメモリに、またはプロセッサ110の外側のメモリに格納されていてよく、この場合、プロセッサ110は、このメモリへのアクセスを有する。
【0027】
特別な態様において、プロセッサ110は、比較用の基準データとして、レンズユニット102aの補正調節前に撮影された画像の位置を使用する。このために、顕微鏡100は、プロセッサ110が比較用の基準データとして使用する画像データを格納するための画像メモリ114を含む。したがってプロセッサ110は、画像データを画像メモリ114に記憶させ、画像データを画像メモリ114から読み取ることができる。
【0028】
これとは択一的にまたはこれに加えて、顕微鏡100は、プロセッサ110が画像比較用の基準データとして使用する基準値を格納するための基準値メモリ112をさらに含むことができる。基準値メモリ112を、特に、実際の画像撮影以外のときに他の方法に従って、例えば特別なコントラスト法に従って求められた外部基準の形態で基準値を提供するように利用することができる。したがって、プロセッサ110は、補正調節後に撮影された画像の位置を、補正調節前に撮影された画像の基準値および/または画像データと比較することができる。
【0029】
上記の補償調整値は、有利には、プロセッサ110が画像撮影に利用される光ビーム103を偏向するために走査ユニット106を駆動制御する基となる駆動制御値に加算されるオフセット値である。この場合、補償調整値は、走査ユニット106を駆動制御するための移動ベクトルの値であってもよい。
【0030】
調節装置104は、好ましくは、調節装置104の操作後、レンズユニット102aを軸線方向に移動させるためにプロセッサ110にフィードバック信号を送信し、フィードバック信号に基づき、補正調節が実施されたことをプロセッサ110が確認できるように構成されている。このフィードバック信号のプロセッサ110への出力は、例えば調節装置104に組み込まれたモータ制御装置を介して行うことができる。
【0031】
図2の概略図において、補正調節によって生ぜしめられた画像のずれが具体的に示されている。本実施形態では、2つの画像200,210が観察され、そのうち画像200はレンズユニット102aの補正調節前に、画像210はレンズユニット102aの補正調節後に撮影されたものである。補正調節によって生ぜしめられた画像位置変化を具体的に示すために、図2ではデカルトxy座標系に関連付けられている。
【0032】
図2に示されているように、画像200,210の各々は、複数の画像セグメント205,215からなる。本実施形態では、複数の画像セグメント205,215が、2次元の走査プロセスにおいてx方向およびy方向で走査ユニット106によって実行される、対応する複数の走査ステップにおいて撮影されたことが想定される。図2に示した実施形態では、補正調節後に撮影された画像210の位置は、補正調節前に撮影された画像200に比べて、x方向では量Δxだけ、y方向では量Δyだけずらされている。
【0033】
図2に示した画像200,210を比較することにより、プロセッサ110は、横方向のずれΔxまたはΔyの量を求め、その結果、補償調整値を決定することにより、走査ユニット106を画像位置変化の補償のために駆動制御することができる。
【0034】
図3には、顕微鏡100を動作させる方法のためのフローチャートが、自動化された画像撮影シーケンスの実施の枠組みにおいて示されている。
【0035】
ステップ300では、自動化された画像撮影シーケンスが開始される。これに続いて、ステップ310では、最初の画像の撮影が行われる。続いてステップ310Aで、この最初の画像の画像データが基準データとして画像メモリ114に記憶される。ステップ320では、画像撮影シーケンスが終了したか否か、または別の画像撮影が行われるか否かについて問い合わせが行われる。別の画像撮影が行われない場合には、画像撮影シーケンスはステップ370で終了される。別の画像撮影が行われる場合には、ステップ330で、補正調節が実施されたか否かについて検査される。補正調節が実施された場合には、ステップ340で別の画像撮影が行われ、この画像の画像データが、ステップ340Aで後続の比較のために画像メモリ114に格納される。続いてステップ350で、プロセッサ110は、撮影された画像の位置を基準データと比較し、この比較に基づき画像の位置変化を検出し、検出した位置変化に基づき走査ユニット106を駆動制御するための補償調整値を求める。図3において破線で示したように、位置比較のために、プロセッサ110にステップ310A,340Aで記憶させた画像データが伝送される。その後、ステップ360では、後続の画像撮影のために求められた補償調整値に基づき、走査ユニット106の対応する駆動制御が行われ、走査ユニット106を駆動制御するための補償調整値がオフセット値として提供される。ここで、補償調整値を使用して、ステップ310で別の画像撮影が行われる。
【0036】
ステップ330で、補正調節が実施されなかったことが確認された場合には、直接に、つまりステップ340~360を実施せずに、別の画像撮影がステップ310で行われる。
【0037】
いくつかの態様を装置の文脈において説明してきたが、これらの態様が、対応する方法の説明も表していることが明らかであり、ここではブロックまたは装置がステップまたはステップの特徴に対応している。同様に、ステップの文脈において説明された態様は、対応する装置の対応するブロックまたは項目または特徴の説明も表している。ステップの一部または全部は、例えば、プロセッサ、マイクロプロセッサ、プログラマブルコンピュータまたは電子回路等のハードウェア装置(またはハードウェア装置を使用すること)によって実行されてもよい。いくつかの実施形態では、極めて重要なステップのいずれか1つまたは複数が、そのような装置によって実行されてもよい。
【0038】
一定の実装要件に応じて、本発明の実施形態は、ハードウェアまたはソフトウェアで実装され得る。この実装は、非一過性の記録媒体によって実行可能であり、非一過性の記録媒体は、各方法を実施するために、プログラマブルコンピュータシステムと協働する(または協働することが可能である)、電子的に読取可能な制御信号が格納されている、デジタル記録媒体等であり、これは例えば、フロッピーディスク、DVD、ブルーレイ、CD、ROM、PROMおよびEPROM、EEPROMまたはFLASHメモリである。したがって、デジタル記録媒体は、コンピュータ読取可能であってもよい。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法が実施されるように、プログラマブルコンピュータシステムと協働することができる、電子的に読取可能な制御信号を有するデータ担体を含んでいる。
【0040】
一般的に、本発明の実施形態は、プログラムコードを備えるコンピュータプログラム製品として実装可能であり、このプログラムコードは、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるときにいずれかの方法を実施するように作動する。このプログラムコードは、例えば、機械可読担体に格納されていてもよい。
【0041】
別の実施形態は、機械可読担体に格納されている、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを含んでいる。
【0042】
したがって、換言すれば、本発明の実施形態は、コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【0043】
したがって、本発明の別の実施形態は、プロセッサによって実行されるときに本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、格納されているコンピュータプログラムを含んでいる記録媒体(またはデータ担体またはコンピュータ読取可能な媒体)である。データ担体、デジタル記録媒体または被記録媒体は、典型的に、有形である、かつ/または非一過性である。本発明の別の実施形態は、プロセッサと記録媒体を含んでいる、本明細書に記載されたような装置である。
【0044】
したがって、本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを表すデータストリームまたは信号シーケンスである。データストリームまたは信号シーケンスは例えば、データ通信接続、例えばインターネットを介して転送されるように構成されていてもよい。
【0045】
別の実施形態は、処理手段、例えば、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するように構成または適合されているコンピュータまたはプログラマブルロジックデバイスを含んでいる。
【0046】
別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するために、インストールされたコンピュータプログラムを有しているコンピュータを含んでいる。
【0047】
本発明の別の実施形態は、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためのコンピュータプログラムを(例えば、電子的にまたは光学的に)受信機に転送するように構成されている装置またはシステムを含んでいる。受信機は、例えば、コンピュータ、モバイル機器、記憶装置等であってもよい。装置またはシステムは、例えば、コンピュータプログラムを受信機に転送するために、ファイルサーバを含んでいてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、プログラマブルロジックデバイス(例えばフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)が、本明細書に記載された方法の機能の一部または全部を実行するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイは、本明細書に記載のいずれかの方法を実施するためにマイクロプロセッサと協働してもよい。一般的に、有利には、任意のハードウェア装置によって方法が実施される。
【符号の説明】
【0049】
100 顕微鏡
102 レンズシステム
102a レンズユニット
102b,102c レンズ
103 光ビーム
104 調節装置
106 走査ユニット
108 照明/検出ユニット
110 プロセッサ
112 基準値メモリ
114 画像メモリ
200 補正調節前の画像
205 画像セグメント
210 補正調節後の画像
215 画像セグメント
Δx,Δy 画像のずれ
φ 角度
300~370 ステップ
図1
図2
図3