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特許7525521付加製造における供給材料量監視の方法及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】付加製造における供給材料量監視の方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/386 20170101AFI20240723BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20240723BHJP
   B29C 64/307 20170101ALI20240723BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240723BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240723BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240723BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/112
B29C64/307
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021573968
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-02
(86)【国際出願番号】 IL2020050734
(87)【国際公開番号】W WO2021001827
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】62/870,700
(32)【優先日】2019-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
【住所又は居所原語表記】1 Holtzman Street, Science Park, P.O. Box 2496, 7612401 Rehovot, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーエン アザリア、モルデチャイ
(72)【発明者】
【氏名】ターケニッツ、チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ、オメル
(72)【発明者】
【氏名】ピンハシ、エイタン
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-019930(JP,A)
【文献】特開2009-166359(JP,A)
【文献】特表2017-501910(JP,A)
【文献】特表2018-538187(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造システムへ構築材料を供給するカートリッジ内の構築材料の量を監視する方法であって、
前記カートリッジへガスを導入し、
前記カートリッジ内の圧力を測定し、
前記圧力が所定レベルに到達すると、前記カートリッジ内に導入されたガスの体積又は前記体積の代替物に基づいて、前記カートリッジ内の前記構築材料の量を決定する、
ことを含む方法。
【請求項2】
前記導入は所定の体積流量で行われ、前記方法は、前記ガスの導入開始から前記圧力が前記所定レベルに到達する時点までの時間間隔を測定し、前記時間間隔に基づいて前記構築材料の量を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カートリッジ内に導入されたガスの質量を測定し、前記質量に基づいて前記カートリッジ内の構築材料の量を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カートリッジは通気口を備え、前記ガスの前記導入は、前記通気口を介して行われる、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記カートリッジ内への前記ガスの前記導入の前に、前記カートリッジ内の圧力を低下させることを更に含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記ガスの前記導入はマニホールドを介して前記カートリッジ内へ、そして少なくとも1つの追加のカートリッジ内へ行われ、前記方法は、前記圧力を測定しかつ前記少なくとも1つの追加カートリッジ内の前記構築材料の量も決定する、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記圧力の前記測定は、前記マニホールドの出口、前記カートリッジの入り口、及び前記カートリッジの内部から成る群から選択される位置において行われる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力の前記測定と、前記カートリッジ内の前記構築材料の量の前記決定は、同時に行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記圧力の前記測定と、前記カートリッジ内の前記構築材料の量の前記決定は、逐次的に行われる、請求項6~請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記付加製造システムによって構築材料が前記カートリッジから流出して吐出される間に実行される、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記付加製造システムによって構築材料が前記カートリッジから流出して吐出される前又は後に実行される、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記カートリッジ内の前記構築材料の量が所定量未満である時に警報を発することを含む、請求項1~請求項11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
物体を製造する方法であって、
カートリッジから吐出ヘッドへ構築材料配合物を供給し、
前記構築材料配合物を吐出して、複数の層を前記物体の形状に対応する構成パターンとして連続的に形成し、
請求項1~請求項12のいずれか1項による方法の実行により、カートリッジ内の構築材料の量を監視する、
ことを含む、方法。
【請求項14】
カートリッジから受ける構築材料を吐出する吐出ヘッドと、前記カートリッジにガスを導入するポンプと、前記カートリッジ内の圧力を検知する圧力センサと、を有する付加製造システムのためのコンピュータ化されたコントローラであって、
前記吐出ヘッドと前記ポンプを制御して、請求項13に記載の方法を実行するように構成された回路を備える、コンピュータ化されたコントローラ。
【請求項15】
物体を層状に製造するための付加製造システムであって、
カートリッジから受ける構築材料を吐出する吐出ヘッドと、
前記カートリッジにガスを導入するポンプと、
前記カートリッジ内の圧力を検知する圧力センサと、
前記圧力を監視し、前記圧力が所定レベルに到達すると、前記カートリッジ内に導入されたガスの体積又は前記体積の代替物に基づいて、構築材料の量を決定するように構成されたコントローラと、
を備える、付加製造システム。
【請求項16】
前記ポンプは前記ガスを所定の体積流量で導入するように構成され、前記コントローラは、前記ガスの前記導入の開始から、前記圧力が前記所定レベルに到達する時点までの時間間隔を測定し、前記時間間隔に基づいて前記カートリッジ内の構築材料の量を決定するように構成される、請求項15に記載の付加製造システム。
【請求項17】
前記コントローラは、前記カートリッジ内に導入されたガスの質量を測定し、前記質量に基づいて前記カートリッジ内の前記構築材料の量を決定するように構成された、請求項15に記載の付加製造システム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記ポンプを制御して、前記ガスを前記カートリッジ内へ導入する前に前記カートリッジ内の圧力を低下させるように構成された、請求項15~請求項1
7のいずれか1項に記載の付加製造システム。
【請求項19】
少なくとも1つの追加のカートリッジと、前記ポンプと前記カートリッジに流体連通するマニホールドとを備え、前記コントローラは、前記少なくとも1つの追加カートリッジ内の前記構築材料の量も決定するように構成される、請求項15~請求項18のいずれか1項に記載の付加製造システム。
【請求項20】
前記コントローラは操作信号を前記ポンプに送信して、前記構築材料が前記カートリッジから流出して前記吐出ヘッドによって吐出される間、前記カートリッジ内へ前記ガスを導入するように構成される、請求項15~請求項19のいずれか1項に記載の付加製造システム。
【請求項21】
前記コントローラは、前記吐出ヘッドへの操作信号を前記ポンプへ送信し、前記吐出ヘッドが構築材料を吐出しない期間の間、前記カートリッジ内へ前記ガスを導入させるように構成される、請求項15~請求項19のいずれか1項に記載の付加製造システム。
【請求項22】
前記カートリッジは通気口を備え、前記ポンプは前記通気口を介して前記ガスを導入する、請求項15~請求項20のいずれか1項に記載の付加製造システム。
【請求項23】
前記カートリッジは、穿孔可能な隔壁と穿孔可能なカップを有する構築材料出口を備え、
前記穿孔可能なカップは前記隔壁が針で穿孔されるとき、前記隔壁を貫通する前記針の更なる運動により前記針を前記カップを貫通して液体材料に接触させ、前記液体材料と前記カートリッジの外側との間に流体連通が確立されるようにし、
前記隔壁は前記液体材料と反応するエラストマー材料で作られ、前記穿孔可能なカップは、前記針が前記穿孔可能なカップを貫通する前に、前記液体材料を前記隔壁から分離する、請求項15~請求項20のいずれか1項に記載の付加製造システム。
【請求項24】
前記コントローラは、前記カートリッジ内の前記構築材料の量が所定量未満である時に警報を発するように構成される、請求項15~請求項23のいずれか1項に記載の付加製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年7月4日出願の米国仮特許出願第62/870,700号の優先権の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明はそのいくつかの実施形態において、付加製造に関し、より具体的には、これに限るものではないが付加製造における供給材料量を監視する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
付加製造(AM)は一般に、物体のコンピュータモデルを利用して三次元(3D)物体を製造するプロセスである。そのようなプロセスは、可視化、デモンストレーション及び機械的プロトタイピングの目的のため、並びにラピッドプロトタイピングのために、設計関連分野などの様々な分野で使用されている。
【0004】
任意の付加製造システムの基本操作は、3次元コンピュータモデルを薄い断面部分にスライスし、その結果を2次元位置データに変換し、そのデータを3次元構造を層状に製造する制御装置に供給することから成る。
【0005】
付加製造は、3次元印刷、薄膜積層法、熱溶解積層法などの製造方法への多くの異なるアプローチを伴う。
【0006】
3次元印刷プロセスでは、例えば構築材料が一組のノズルを有する印刷ヘッドから吐出され、支持構造上に堆積材料層を形成する。構築材料に応じて、層はその後適切な装置を用いて硬化又は凝固され得る。構築材料には物体を形成する造形材料、及び構築中に物体を支える支持材料が含まれ得る。様々な3次元印刷技術が存在し、例えば、すべて同一譲受人の米国特許6,259,962号、6,569,373号、6,658,314号、6,850,334号、7,183,335号、7,209,797号、7,225,045号、7,300,619号、7,479,510号、7,500,846号、7,658,976号、7,962,237号、7,996,101号、及び9,718,238号に開示されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
米国特許第7,996,101号は構築材料を3D印刷システムに供給するためのカートリッジを開示しており、そこにはカートリッジ内の構築材料の重量、体積、又は質量を測定するためのセンサが含まれる。センサはロードセル、体積センサ又は質量センサであってよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6,259,962号公報
【文献】米国特許第6,569,373号公報
【文献】米国特許第6,658,314号公報
【文献】米国特許第6,850,334号公報
【文献】米国特許第7,183,335号公報
【文献】米国特許第7,209,797号公報
【文献】米国特許第7,225,045号公報
【文献】米国特許第7,300,619号公報
【文献】米国特許第7,479,510号公報
【文献】米国特許第7,500,846号公報
【文献】米国特許第7,658,976号公報
【文献】米国特許第7,962,237号公報
【文献】米国特許第7,996,101号公報
【文献】米国特許第9,718,238号公報
【発明の概要】
【0009】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、付加製造システムへ構築材料を供給するカートリッジ内の構築材料の量を監視する方法が提供される。本方法はカートリッジ内へガスを導入してそのカートリッジ内の圧力を測定することを含む。圧力が所定のレベルに到達すると、本方法はカートリッジ内に導入されたガスの体積又は体積の代替物に基づいて、カートリッジ内の構築材料の量を決定する。
【0010】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、ガスは所定の体積流量で導入され、本方法は、ガスの導入開始から、圧力が所定レベルに到達する時点までの時間間隔を測定し、その時間間隔に基づいて構築材料の量を決定することを含む。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法はカートリッジ内に導入されたガスの質量を測定し、その質量に基づいて、カートリッジ内の構築材料の量を決定することを含む。
【0012】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カートリッジは通気口を備え、ガスの導入は、通気口を介して行われる。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は、ガスをカートリッジ内へ導入する前に、カートリッジ内の圧力を低下させることを含む。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ガスはマニホールドを介してカートリッジ内へ、そして少なくとも1つの追加のカートリッジ内へ導入される。ここで本方法は、圧力を測定し、かつ少なくとも1つの追加カートリッジ内の構築材料の量も決定する。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態によれば、圧力は、マニホールドの出口、カートリッジの入り口、及びカートリッジの内部から成る群から選択される位置において測定される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態によれば、圧力の測定と、カートリッジ内の構築材料の量の決定は同時に行われる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態によれば、圧力の測定と、カートリッジ内の構築材料の量の決定は逐次的に行われる。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は付加製造システムによって構築材料が前記カートリッジから流出して吐出される間に実行される。
【0019】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法は付加製造システムによって構築材料がカートリッジから流出して吐出される前又は後に実行される。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本方法はカートリッジ内の構築材料の量が所定量未満である時に警報を発することを含む。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、物体を製造する方法が提供される。この方法は、カートリッジから吐出ヘッドへ構築材料配合物を供給し、構築材料配合物を吐出して、複数の層を物体の形状に対応する構成パターンとして連続的に形成し、かつこれまでに述べたように、また任意選択によりかつ好ましくは以下でさらに例示するように、カートリッジ内の構築材料の量を監視する。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、カートリッジから受ける構築材料を吐出する吐出ヘッドと、カートリッジにガスを導入するポンプと、カートリッジ内の圧力を検知する圧力センサとを有する付加製造装置のためのコンピュータ化されたコントローラが提供される。コンピュータ化されたコントローラは、吐出ヘッドとポンプを制御して、これまでに述べたように、また任意選択によりかつ好ましくは以下でさらに例示するように、物体を製造するための方法を実行する。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、物体を層状に製造するための付加製造システムが提供される。このシステムは、カートリッジから受ける構築材料を吐出する吐出ヘッドと、カートリッジにガスを導入するポンプと、カートリッジ内の圧力を検知する圧力センサと、圧力を監視し、圧力が所定のレベルに到達するとカートリッジ内に導入されたガスの体積又はその体積の代替物に基づいてカートリッジ内の構築材料の量を決定するように構成されたコントローラと、を備える。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態によれば、ポンプはガスを所定の体積流量で導入するように構成され、コントローラは、ガスの導入の開始から圧力が所定レベルに到達する時点までの時間間隔を測定し、その時間間隔に基づいてカートリッジ内の構築材料の量を決定するように構成される。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、カートリッジ内に導入されたガスの質量を測定し、その質量に基づいてカートリッジ内の構築材料の量を決定するように構成される。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、ポンプを制御して、ガスをカートリッジ内へ導入する前にカートリッジ内の圧力を低下させるように構成される。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態によれば、本システムは、少なくとも1つの追加のカートリッジと、ポンプ及びカートリッジに流体連通するマニホールドとを備え、コントローラは、少なくとも1つの追加カートリッジ内の構築材料の量も決定するように構成される。
【0028】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは操作信号をポンプに送信して、構築材料がカートリッジから流出して吐出ヘッドによって吐出される間、カートリッジ内へガスを導入するように構成される。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、ヘッドへの操作信号をポンプへ送信し、吐出ヘッドが構築材料を吐出しない期間の間、カートリッジ内へガスを導入させるように構成される。
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カートリッジは通気口を備え、ポンプは通気口を介してガスを導入する。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カートリッジは、穿孔可能な隔壁と穿孔可能なカップを有する構築材料出口を備え、穿孔可能なカップは、隔壁が針で穿孔されるとき、隔壁を貫通する針の更なる運動により針をカップを貫通して液体材料に接触させ、液体材料とカートリッジの外側との間に流体連通が確立されるように隔壁を取り囲む。本発明のいくつかの実施形態によれば、隔壁は液体材料と反応するエラストマー材料で作られ、穿孔可能なカップは、針が穿孔可能なカップを貫通する前に、液体材料を隔壁から分離する。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態によれば、コントローラは、カートリッジ内の構築材料の量が所定量未満である時に警報を発するように構成される。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態の態様によれば、液体材料を保持するカートリッジが提供される。カートリッジは、液体材料を包含するハウジングと、穿孔可能な隔壁及び穿孔可能なカップを有する出口とを備える。穿孔可能なカップは、隔壁が針で穿孔されるとき、隔壁を貫通する針の更なる運動により針をカップを貫通して液体材料に接触させ、液体材料とカートリッジの外側との間に流体連通が確立されるように隔壁を取り囲む。本発明のいくつかの実施形態によれば、隔壁は液体材料と反応するエラストマー材料で作られ、穿孔可能なカップは、針が穿孔可能なカップを貫通する前に、液体材料を隔壁から分離する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カートリッジ内の液体は、付加製造のための構築材料である。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態によれば、エラストマー材料は、天然ゴム、合成ゴム、ラテックス及びシリコーンから成る群から選択される。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カートリッジの内側とカートリッジの外側の大気との間の流体連通を確立し、ガスをカートリッジに入れるための通気口を更に備える。
【0037】
本発明のいくつかの実施形態によれば、通気口は、穿孔可能な隔壁と穿孔可能なカップを備え、出口と同一構造である。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態によれば、充填ポートカバーで覆われた液体材料充填ポートを更に備え、充填ポートカバーを取り除くことが充填ポートカバーを破裂させる。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態によれば、カートリッジは、カートリッジの少なくとも1つの特性に関係する、コンピュータ可読の識別情報を提供する識別タグを更に備える。
【0040】
本発明のいくつかの実施形態によれば、識別タグにより提供される識別情報は、カートリッジの真正性、カートリッジに包含される液体材料の種類、タグから識別情報が読み込まれる時点でのカートリッジに包含される液体材料の量、及びカートリッジが包含可能な液体材料の最大量、のうちの少なくとも1つを含む。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態によれば、識別タグは、充填ポートカバーに取り付けられるか又はそれに組み込まれる。
【0042】
別段の定義がない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似又は同等の方法及び材料が、本発明の実施形態の実行又は試行に使用可能であるが、例示的な方法及び/又は材料を以下に記述する。矛盾する場合には、定義を含む本発明の明細書が優先される。さらに、材料、方法及び実施例は例示にすぎず、必ずしも制限的であることを意図するものではない。
【0043】
本発明の実施形態の方法及び/又はシステムの実施は、選択されたタスクを手動、自動又はそれらの組み合わせで実行又は完了させることを含み得る。さらに、本発明の方法及び/又はシステムの実施形態の実際の計装機器及び設備によれば、いくつかの選択されたタスクは、ハードウェアによって、あるいはオペレーティングシステムを用いたソフトウェア又はファームウェア及び/又はそれらの組合せによって実施可能である。
【0044】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップ又は回路として実装可能である。ソフトウェアに関しては、本発明の実施形態による選択されたタスクは、任意の適切なオペレーティングシステムを用いるコンピュータによって実行される複数のソフトウェア命令として実装可能である。本発明の例示的実施形態では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの例示的実施形態による1以上のタスクは、複数の命令を実行するコンピューティングプラットフォームなどのデータプロセッサにより実行される。任意選択により、データプロセッサには、命令及び/又はデータを格納する揮発性メモリ、及び/又は命令及び/又はデータを格納する不揮発性記憶装置、例えば磁気ハードディスク及び/又はリムーバブル媒体が含まれる。任意選択により、ネットワーク接続も提供される。ディスプレイ及び/又はキーボードやマウスなどのユーザ入力装置もまた任意選択で提供される。
【0045】
本明細書において本発明のいくつかの実施形態を添付図面を参照して例示としてのみ説明する。ここで、図面を詳細に具体的に参照すると、示される詳細事項は一例であって、本発明の実施形態の例示的議論を目的とするものであることが強調される。これに関し、図面と共に行われる説明により、本発明の実施形態がどのように実行され得るかが当業者には明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
図1B】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
図1C】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
図1D】本発明のいくつかの実施形態による付加製造システムの概略図である。
図2A】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図2B】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図2C】本発明のいくつかの実施形態による印刷ヘッドの概略図である。
図3A】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
図3B】本発明のいくつかの実施形態による座標変換を示す概略図である。
図4】本発明のいくつかの実施形態による、AMシステムへ構築材料を供給するカートリッジ内の構築材料量の監視に適する方法のフロー図である。
図5】本発明のいくつかの実施形態による、物体製造に適する方法のフロー図である。
図6A】本発明のいくつかの実施形態による、例示的カートリッジの概略透視図である。
図6B】本発明のいくつかの実施形態による、例示的カートリッジの概略側面図である。
図7A】本発明のいくつかの実施形態による、図6A及び図6Bに示す例示的カートリッジの構築材料出口又は通気口の概略分解図である。
図7B】本発明のいくつかの実施形態による、図6A及び図6Bに示す例示的カートリッジの概略断面図である。
図8】本発明のいくつかの実施形態に従って実施した実験で得られた、カートリッジ内へのガス導入時間間隔とカートリッジ内の構築材料の量との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本発明は、そのいくつかの実施形態において付加製造に関し、より具体的には、これに限るものではないが付加製造における供給材料量を監視する方法及びシステムに関する。
【0048】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に提示され、及び/又は図面及び/又は実施例に示される構成要素の構造と配置及び/又は方法の詳細に、その適用が必ずしも限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、又は様々な方法で実行又は実施可能である。
【0049】
本実施形態の方法及びシステムは、コンピュータ物体データに基づいて、その物体の形状に対応する構成パターンで複数の層を形成することにより、3次元物体を層ごとに製造する。コンピュータ物体データは、これに限るものではないが、標準テッセレーション言語(STL)又はステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、またはコンピュータ支援設計(CAD)に適する他の任意のフォーマットを含む、任意の公知のフォーマットであってよい。
【0050】
本明細書で使用の「物体」という用語は、物体の全体又はその一部を指す。
【0051】
各層が、2次元表面を走査してそれパターン化する付加製造装置によって形成される。走査中に装置は2次元の層すなわち表面上の複数の標的位置に行き、各標的位置又は一群の標的位置に対して、その各標的位置又は一群の標的位置を構築材料配合物で覆うべきか否か、またそこにどの種類の構築材料配合物を送達するべきか、を決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、AMには3次元印刷、より好ましくは3次元インクジェット印刷が含まれる。これらの実施形態では、構築材料配合物が一組のノズルを有する吐出ヘッドから吐出されて、構築材料配合物を支持構造体上に層状に堆積する。AM装置はこうして構築材料配合物をそれで覆うべき標的位置に吐出し、他の標的位置を空のままにする。この装置は通常複数の吐出ヘッドを含み、そのそれぞれが異なる構築材料配合物を吐出するように構成可能である。したがって、異なる標的位置を異なる構築材料配合物で占有することが可能である。構築材料配合物の種類は、造形材料配合物と支持材料配合物の大きく2つに分類される。支持材料配合物は、製造プロセス中に物体又は物体の一部を支持するため、及び/又は他の目的で例えば中空又は多孔性の物体を提供するための、支持母体又は構造体として作用する。支持構造体には、例えば支持強度を上げるために造形材料配合物要素を追加的に含むこともあり得る。
【0053】
造形材料配合物は一般に、付加製造に使用するために配合された合成物であり、それ自体で、すなわち他のいかなる物質との混合も組合せも必要とせずに、3次元物体を形成可能である。
【0054】
本明細書全体を通じて、「未硬化構築材料」という用語は、本明細書に記載するような、層を連続的に形成するために製造プロセス中で吐出される材料の総称である。この用語は、印刷物体を形成するために吐出される未硬化材料(本明細書では構築材料配合物とも称す)、すなわち1以上の造形材料配合物と、支持体を形成するために吐出される未硬化材料、すなわち未硬化支持材料配合物とを含む。
【0055】
本明細書において、吐出される材料は「材料配合物」とも総称される。材料配合物は、通常(特に明記しない限り)硬化したとき、通常(特に明記しない限り)本明細書で規定するような硬化条件に晒して硬化したときにそれぞれの材料を形成する。
【0056】
本明細書全体を通して、「硬化した造形材料」及び「固化した造形材料」という用語は、本明細書で規定するように、吐出した構築材料を硬化条件に晒した後、支持材料を除去することで造形物体を形成する造形材料部分のことを言い、これらは互換的に使用される。硬化又は固化した造形材料は、本明細書に記載されるように、本方法において使用される造形材料配合物に応じて、単一の固化材料又は2以上の固化材料の混合物となり得る。
【0057】
本明細書を通じて「造形材料配合物」とは、これは本明細書では互換的に「造形配合物」とも称するが、本明細書に記載のように造形物体を形成するために吐出される未硬化構築材料の一部を表す。造形配合物は未硬化の造形配合物であって、硬化条件に晒すことによって最終物体又はその一部を形成する。
【0058】
未硬化構築材料は1以上の造形配合物を含むことができ、吐出して、造形物体の異なる部分を異なる造形配合物の硬化で作製し、したがって、造形物体を異なる硬化した造形材料又は硬化した造形材料の異なる混合物で作製するようにできる。
【0059】
本明細書を通じて、「固化した支持材料」という用語は本明細書では、「硬化支持材料」又は単に「支持材料」と互換的に使用され、製造される最終物体を製造プロセス中に支持するための構築材料部分のことを言う。これはプロセスが完了すると除去されて、固化した造形材料が得られる。
【0060】
本明細書を通じて「支持材料配合物」とは、これは本明細書では互換的に「支持配合物」又は単に「配合物」とも称するが、本明細書に記載のように支持材料を形成するために吐出される未硬化構築材料の一部を表す。支持材料配合物は未硬化の配合物である。支持材料配合物が硬化可能な配合物である場合、これは硬化条件に晒されると固化した支持材料を形成する。
【0061】
液体材料でも、固化した典型的にはゲル材料のいずれでもあり得る支持材料は、本明細書では犠牲材料とも称し、層が吐出されて硬化エネルギに曝された後に除去可能であり、それによって最終物体の形状が現れる。
【0062】
本明細書及び当技術分野では、「ゲル」という用語は、しばしば半固体材料と呼ばれる材料のことを言い、典型的にはその間が化学的又は物理的に結合された繊維状構造の3次元の固体ネットワークと、このネットワーク内に閉じ込められた液相とから成る。ゲルは通常固体の粘稠度を特徴とし(例えば非流動性である)、比較的低い引張強度、比較的低い剛性率、例えば100kPa、であり、損失剛性率対貯蔵剛性率(tanδ、G’’/G’)の値は1より小さい。ゲルは、少なくとも0.5bar、望ましくは少なくとも1bar、又はそれを超える陽圧の下で流動性であり、あるいは、1bar未満、又は0.5bar未満又は0.3bar以下の圧力の下で非流動性であることを特徴とする。
【0063】
今日実用される支持材料は通常、硬化性材料と非硬化性材料の混合物を含み、本明細書ではゲル支持材料とも称する。
【0064】
今日実用される支持材料は通常、水混和性、又は水分散性若しくは水溶性である。
【0065】
本明細書を通じて「水混和性」という用語は水中に少なくとも部分的に溶解可能又は分散可能な、すなわち混合すると少なくとも50%の分子が水の中に入る、材料のことを言う。この用語は、「水溶性」及び「水分散性」という用語を包含する。
【0066】
本明細書を通じて「水溶性」という用語は、水に等量又は等重量を混合すると均一な溶液が生成される材料を指す。
【0067】
本明細書を通じて「水分散性」という用語は、水に等量又は等重量を混合すると均一な分散が生成される材料を指す。
【0068】
本明細書を通じて「溶解速度」という用語は、物質が液体媒体に溶解する速度を指す。溶解速度は、本実施形態の内容においては、特定量の支持材料が溶解するのに要する時間で決定できる。測定された時間は本明細書では「溶解時間」と呼ぶ。
【0069】
最終的な3次元物体は、造形材料、あるいは造形材料の組み合わせ、あるいは造形材料と支持材料、又はそれらの変形物(例えば硬化後のもの)で作られる。これらのすべての操作は、固体自由成形分野の当業者には周知である。
【0070】
本発明のいくつかの例示的実施形態において、1以上の異なる造形材料配合物の吐出により物体が製造される。1以上の造形材料配合物が使用される場合、各材料配合物は任意選択によりかつ好ましくはAM装置の(同一又は別々の吐出ヘッドに属する)異なるノズルのアレイから吐出される。
【0071】
いくつかの実施形態において、AM装置の吐出ヘッドは複数チャネルの吐出ヘッドであり、その場合には、同一の複数チャネル吐出ヘッドに位置する2以上のノズルアレイから、異なる造形材料配合物を吐出可能である。いくつかの実施形態では、異なる造形材料配合物を吐出するノズルアレイは、別々の吐出ヘッドに配置される。例えば第1の造形材料配合物を吐出する第1のノズルアレイが第1吐出ヘッドに配置され、第2の造形材料配合物を吐出する第2のノズルアレイが第2吐出ヘッドに配置される。
【0072】
いくつかの実施形態では、造形材料配合物を吐出するノズルアレイと、支持材料配合物を吐出するノズルアレイの両方が、同じ複数チャネル吐出ヘッドに配置される。いくつかの実施形態では、造形材料配合物を吐出するノズルアレイと、支持材料配合物を吐出するノズルアレイが、別々の吐出ヘッドに配置される。
【0073】
複数の材料配合物が、任意選択によりかつ好ましくは印刷ヘッドの同じパス中に複数の層に堆積される。層内の複数の材料配合物及び材料配合物の組み合わせは、物体の所望特性によって選択される。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態による、物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的な例を図1Aに示す。システム110は、複数の吐出ヘッドを備えた吐出ユニット16を有する付加製造装置114を備える。各ヘッドは好ましくは、以下で説明する図2A図2Cに示すような1以上のノズル122のアレイを備え、それを介して液体の構築材料配合物124が吐出される。
【0075】
好ましくは、ただし必須ではないが、装置114は3次元印刷装置であり、その場合吐出ヘッドは印刷ヘッドであり、構築材料配合物はインクジェット技術を介して吐出される。ただし、必ずしもそうである必要はない。なぜなら、いくつかの適用では、付加製造装置が3次元印刷技術を使う必要がないこともあるからである。本発明の様々な例示的実施形態によって企図される付加製造装置の代表的な例には、熱溶解積層造形装置及び熱溶解材料配合物積層装置が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0076】
各吐出ヘッドは、任意選択によりかつ好ましくは構築材料配合物タンクを介して供給され、そこには温度制御ユニット(例えば温度センサ及び/又は加熱装置)と、材料配合物レベルセンサが任意選択で含まれ得る。構築材料配合物を吐出するために、例えば圧電式インクジェット印刷技術と同じように、吐出ヘッドに電圧信号が印加され、吐出ヘッドノズルを介して材料配合物の液滴を選択的に堆積する。各ヘッドの吐出速度は、ノズルの数、ノズルの種類、及び印加電圧信号レート(周波数)に依存する。そのような吐出ヘッドは、固体自由成形分野の当業者には知られている。
【0077】
好ましくは、ただし必須ではないが、吐出ノズル又はノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半分が支持材料配合物の吐出用であり、吐出ノズルの半分が造形材料配合物の吐出用となるように選択される。すなわち、造形材料配合物を噴射するノズルの数が、支持材料配合物を噴射するノズルの数と同じである。図1Aの代表的例には、4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、16dが示されている。各ヘッド16a、16b、16c、16dはノズルアレイを有する。この例では、ヘッド16a、16bは造形材料配合物用であり、ヘッド16c、16dは支持材料配合物用であってよい。したがって、ヘッド16aが第1造形材料配合物を吐出し、ヘッド16bが第2造形材料配合物を吐出し、ヘッド16c、16dの2つが支持材料配合物を吐出することができる。代替実施形態では、例えばヘッド16c、16dは組み合わせて、支持材料配合物を堆積するための、2つのノズルアレイを有する単一ヘッドとすることも可能である。さらなる代替実施形態において、任意の1以上の吐出ヘッドが、2以上の材料配合物を吐出するために2以上のノズルアレイを有してもよい。例えば2つの異なる造形材料配合物、又は1つの造形材料配合物と1つの支持材料配合物のための2つのノズルアレイであり、各配合物が異なるアレイ又は異なる数のノズルを介して吐出される。
【0078】
然るに、本発明の範囲を限定することを意図するものではないこと、及び造形材料配合物の堆積ヘッド(造形ヘッド)の数と、支持材料配合物の堆積ヘッド(支持ヘッド)の数が異なり得ることを理解されたい。一般的に、造形ヘッドの数、支持ヘッドの数、及びそれぞれのヘッド又はヘッドアレイのノズルの数は、支持材料配合物の最大吐出速度と造形材料配合物の最大吐出速度との間に所定の比aを与えるように選択される。所定の比aの値は好ましくは、形成された各層において造形材料配合物の高さと支持材料配合物の高さが等しくなることを保証する様に選択される。aの典型的な値は、約0.6から約1.5までである。
【0079】
本明細書で使用されるように、「約」という用語は±10%を指す。
【0080】
例えば、a=1では、造形ヘッドと支持ヘッドのすべてが動作する場合、支持材料配合物の全体の堆積速度は造形材料配合物の全体の堆積速度とほぼ等しい。
【0081】
好適な実施形態では、それぞれがp個のノズルのm個のアレイを有するM個の造形ヘッドと、それぞれがq個のノズルのs個のアレイを有するS個の支持ヘッドがあって、M×m×p=S×s×qである。M×m個の造形アレイとS×s個の支持アレイのそれぞれは、個別の物理的ユニットとして製造可能であり、複数のアレイの群から組み立て、及び分解が可能である。この実施形態において、そのようなアレイのそれぞれは、任意選択によりかつ好ましくは各自の温度制御ユニットと材料配合物レベルセンサを備え、その動作のために個別に制御された電圧を受け取る。
【0082】
装置114はさらに、凝固装置324を備える。これは、堆積された材料配合物を固化させる光、熱等を放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば、凝固装置324は1以上の放射源を含むことができる。これは、使用される造形材料配合物に応じて、例えば紫外線、可視光、又は赤外線のランプ、あるいは他の電磁放射源、あるいは電子線源であってよい。本発明のいくつかの実施形態では凝固装置324は造形材料配合物の硬化又は凝固の作用をする。
【0083】
吐出ヘッドおよび放射源は、好ましくはフレーム又はブロック128に取り付けられ、それが好ましくは作業面として働くトレイ360上を往復運動する。本発明のいくつかの実施形態では、放射源はブロックに取り付けられ、吐出ヘッドの軌跡を追従して吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料配合物を少なくとも部分的に硬化又は凝固させるようになっている。トレイ360は水平に配置される。一般的な慣習に従って、X-Y平面がトレイ360に平行になるようにX-Y-Zデカルト座標系が選択される。トレイ360は好ましくは、垂直方向に(Z方向に沿って)、通常は下向きに移動するように構成される。本発明の様々な例示的実施形態では、装置114は1以上のレベリング装置132、例えばローラ326をさらに含む。レベリング装置326は、新たに形成された層の厚さを、その上に次の層が形成される前に矯正、平坦化し、及び/又は確立するように作用する。レベリング装置326は好ましくは、平坦化中に発生する余分な材料配合物を回収するための廃棄物回収装置136を備える。廃棄物回収装置136は、材料配合物を廃棄物タンクまたは廃棄物カートリッジに送達する任意の機構を含み得る。
【0084】
使用時に、ユニット16の吐出ヘッドは、走査方向、本明細書ではX方向と称する、に移動し、それらがトレイ360上を通過する過程で構築材料配合物を所定の構成で選択的に吐出する。構築材料配合物は通常、1種類以上の支持体材料配合物及び1種類以上の造形材料配合物を含む。ユニット16の吐出ヘッドの通過に続いて、放射源126による造形材料配合物の硬化が行われる。堆積し終えた層の出発点に戻る、ヘッドの逆方向への通過中に、所定の構成に従って構築材料配合物を追加吐出することもあり得る。吐出ヘッドの順方向または逆方向の通過中に、こうして形成された層が、好ましくは吐出ヘッドの順方向および/または逆方向の移動経路に追従するレベリング装置326によって矯正され得る。吐出ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、吐出ヘッドは、本明細書でY方向と呼ぶ割出し方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層の構築を続けることが可能である。これの代替として、吐出ヘッドは、順方向および逆方向の移動の間に、または2回以上の順方向-逆方向移動の後に、Y方向に移動してもよい。単一の層を完成させるために吐出ヘッドによって実行される一連の走査を、本明細書では単一走査サイクルと称する。
【0085】
層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ360は、Z方向に所定のZレベルまで下降される。この手順が繰り返されて、3次元物体112が層毎に形成される。
【0086】
別の実施形態では、トレイ360は、ユニット16の吐出ヘッドの順方向および逆方向の通過の間に、層内でZ方向に変位されてもよい。そのようなZ変位は、レベリング装置と表面を一方向で接触させ、かつ反対方向で接触させないようにするために実行される。
【0087】
システム110は、任意選択によりかつ好ましくは構築材料配合物容器またはカートリッジを含みかつ製造装置114に複数の構築材料配合物を供給する、構築材料配合物供給システム330を備える。図1Aには4つのカートリッジ300a、300b、300c、300dが示されているが、供給システム330には任意の数のカートリッジが含まれ得る。
【0088】
コントローラ152は、製造装置114および任意選択によりかつ好ましくは供給システム330をも制御する。コントローラ152は電子回路とその回路で読み込み可能な不揮発性メモリ媒体とを有するコンピュータ化されたコントローラである。メモリ媒体がプログラム命令を格納し、回路がそれを読み込むと、以下で詳細を説明するように回路に制御動作を実行させる。本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ152の電子回路は、データ処理操作も実行するように構成される。コントローラ152は好ましくは、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマット等の形式でコンピュータ可読媒体上に表されたCAD構成などのコンピュータ物体データに基づいて、製作指示に関するデジタルデータを送信するデータプロセッサ154と通信する。通常、コントローラ152は、各吐出ヘッドまたはノズルアレイに印加される電圧、およびそれぞれの印刷ヘッド内の構築材料配合物の温度を制御する。
【0089】
製造データがコントローラ152にロードされると、コントローラは、ユーザの介入なしに動作可能である。いくつかの実施形態では、コントローラ152は、例えばデータプロセッサ154を用いて、あるいはユニット152と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータからの追加の入力を受信する。ユーザインタフェース116は、例えば、これに限らないがキーボード、タッチスクリーンなどの当分野で公知の任意の種類であってよい。例えばコントローラ152は、追加の入力として、1以上の構築材料配合物の種類及び/又は、例えば色、特性歪み及び/又は転移温度、粘度、電気特性、磁気特性などの属性を受信することができる。他の属性および属性群もまた考慮される。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態による物体のAMに適したシステム10の別の代表的かつ非限定的実施例を図1B図1Dに示す。図1B図1Dは、システム10の平面図(図1B)、側面図(図1C)、および等角図(図1D)である。
【0091】
本実施形態において、システム10はトレイ12と、それぞれが複数の分離されたノズルを有しかつ供給システム330から構築材料配合物を受け取るように構成された複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備える。トレイ12は、円板の形状を有することができ、あるいは環状とすることができる。垂直軸を中心に回転可能であれば、非円形の形状も考えられる。
【0092】
トレイ12とヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくはトレイ12とヘッド16との間の相対的回転運動ができるように取り付けられる。これは、(i)トレイ12が垂直軸14を中心にヘッド16に対して回転する構成、(ii)ヘッド16が垂直軸14を中心にトレイ12に対して回転する構成、または(iii)トレイ12およびヘッド16の両方が垂直軸14を中心に回転し、ただし異なる回転速度で回転(例えば逆方向に回転)する構成、によって達成可能である。以下の実施形態は、トレイが垂直軸14を中心にヘッド16に対して回転するように構成された回転トレイ構成(i)を特に重点的に説明するが、本出願は構成(ii)及び構成(iii)も企図していることを理解されたい。本書に記載の実施形態はいずれも、構成(ii)および構成(iii)のいずれにも適用できるように調整することができ、本明細書に記載の詳細が与えられれば、当業者にはそのような調整の仕方がわかるであろう。
【0093】
以下の説明では、トレイ12に平行で軸14から外向きの方向を半径方向rと呼び、トレイ12に平行で半径方向rに垂直な方向をここでは方位角方向φと呼び、トレイ12に直角な方向をここでは垂直方向zと称する。
【0094】
本明細書で使用する用語「半径方向位置」とは、軸14から特定の距離にあるトレイ12上またはトレイ12の上方の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸14から特定の距離にあり、その中心が軸14にある円である点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0095】
本明細書で使用する用語「方位角位置」は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上またはトレイ12の上方の位置を指す。従って、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線を描く点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0096】
本明細書で使用する用語「垂直位置」は、特定の点で垂直軸14と交差する面の上方の位置を指す。
【0097】
トレイ12は、三次元印刷のための支持構造として作用する。1以上の物体が印刷される作業領域は、必ずしもそうではないが、通常トレイ12の総面積より小さい。本発明のいくつかの実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は符号26で示される。本発明のいくつかの実施形態では、トレイ12は、物体の形成中、同一方向に連続的に回転し、本発明のいくつかの実施形態では、トレイは、物体の形成中に少なくとも1回(例えば振動するように)回転方向を逆転する。トレイ12は、任意選択によりかつ好ましくは取外し可能である。トレイ12の取外しは、システム10の保守のために、あるいは所望であれば、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために行うことができる。本発明のいくつかの実施形態では、システム10には1以上の異なる交換トレイ(例えば交換トレイのキット)が提供され、2つ以上のトレイが異なる種類の物体(例えば異なる重量)、異なる動作モード(例えば異なる回転速度)等のために指定される。トレイ12の交換は、所望により手動または自動とすることができる。自動交換が採用される場合、システム10は、ヘッド16の下の位置からトレイ12を取り外して、それを交換トレイ(図示せず)と置き替えるように構成されたトレイ交換装置36を含む。図1Bの代表図においてトレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を持つドライブ38として示されるが、他の種類のトレイ交換装置も考えられる。
【0098】
印刷ヘッド16の例示的実施形態を図2A図2Cに示す。これらの実施形態は、これに限らないがシステム110及びシステム10を含む上記の任意のAMシステムに使用可能である。
【0099】
図2A図2Bは、1つ(図2A)および2つ(図2B)のノズルアレイ22を持つ印刷ヘッド16を示す。アレイにおけるノズルは好ましくは、直線に沿って線状に配列される。特定の印刷ヘッドが2つ以上の線形ノズルアレイを有する実施形態において、ノズルアレイは、任意選択によりかつ好ましくは相互に平行であってよい。
【0100】
システム110と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは割出し方向に沿って配向され、それらの走査方向に沿う位置は相互にずれて配置される。
【0101】
システム10に類似のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは半径方向に(半径方向に平行に)配向され、それらの方位角位置が互いにずれて配置される。従って、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは互いに平行ではなく、むしろ互いにある角度を成す。その角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれにほぼ等しい。例えば、1つのヘッドが半径方向に配向されて方位角位置φに配置され、別のヘッドが半径方向に配向されて方位角位置φに配置されることが可能である。この実施例では、2つのヘッド間の方位角のずれはφ-φであり、2つのヘッドの線形ノズルアレイ間の角度もまたφ-φである。
【0102】
いくつかの実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを組み合わせて1ブロックの印刷ヘッドにすることが可能である。その場合、そのブロックの印刷ヘッドは通常互いに平行である。いくつかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックを図2Cに示す。
【0103】
いくつかの実施形態では、システム10はヘッド16の下に位置する支持構造30を含み、トレイ12がトレイ支持構造30とヘッド16との間にくる。支持構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が作動している間に発生し得るトレイ12の振動を防止または低減するように作用可能である。印刷ヘッド16が軸14を中心に回転する構成では、好ましくは支持構造30もまた回転して、支持構造30が常にヘッド16の直下にくるようになる(トレイ12がヘッド16とトレイ12の間にある)。
【0104】
トレイ12及び/又は印刷ヘッド16は、任意選択によりかつ好ましくは垂直方向zに沿って垂直軸14に平行に移動するように構成されて、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離を変動可能とする。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成では、支持構造30も好ましくはトレイ12と共に垂直方向に移動する。トレイ12の垂直位置を固定したままで、ヘッド16によって垂直方向に沿う垂直距離が変動する構成では、支持構造30もまた固定された垂直位置に維持される。
【0105】
垂直移動は、垂直ドライブ28によって確立することができる。ある層が完成すると、次に印刷する層の所望の厚さに応じて所定の垂直間隔だけ、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を増大することができる(例えばトレイ12をヘッド16に対して下降させる)。この手順を繰り返して、三次元物体を層毎に形成する。
【0106】
インクジェット印刷ヘッド16の動作、および任意選択によりかつ好ましくはシステム10の1以上の他の構成部品の動作、例えばトレイ12の移動は、コントローラ20によって制御される。コントローラは、電子回路とその回路で読み込み可能な不揮発性メモリ媒体とを有するコンピュータ化されたコントローラであってよい。ここで、メモリ媒体がプログラム命令を格納し、回路がそれを読み込むと、以下で詳細を説明するように回路に制御動作を実行させる。本発明のいくつかの実施形態では、コントローラ20の電子回路は、データ処理操作も実行するように構成される。
【0107】
コントローラ20はまた、コンピュータ物体データに基づいて、製作指示に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。デジタルデータは例えば、標準テッセレーション言語(STL)若しくはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴンファイルフォーマット(PLY)、又はコンピュータ支援設計(CAD)に適した任意の他のフォーマットである。物体データフォーマットは通常デカルト座標系に従って構成される。このような場合、コンピュータ24は好ましくは、コンピュータ物体データにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行する。コンピュータ24は、任意選択によりかつ好ましくは変換された座標系で製作指示を送信する。代替として、コンピュータ24は、コンピュータ物体データによって提供された元の座標系で製作指示を送信することができる。その場合、座標変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0108】
座標変換により、回転トレイ上での三次元印刷が可能となる。従来の三次元印刷では印刷ヘッドは、静止したトレイ上を直線に沿って往復運動する。そのような従来システムでは、ヘッドの吐出速度が均一であるとすれば、印刷解像度はトレイ上のどの点でも同じである。従来の三次元印刷とは異なり、ヘッドポイントの全てのノズルが同時にトレイ12全体にわたって同じ距離をカバーするわけではない。座標変換は、任意選択によりかつ好ましくは異なる半径方向位置において等量の余剰な材料配合物が確保されるように実行される。本発明のいくつかの実施形態による座標変換の代表例を図3A図3Bに示す。これは物体のスライス(各スライスが物体の異なる層の製作指示に対応する)を表し、図3Aはデカルト座標系でのスライスを示し、図3Bはそれぞれのスライスに座標変換手順を適用した後の同じスライスを示す。
【0109】
通常、コントローラ20は、製作指示に基づきかつ以下で説明する格納されたプログラムの指示に基づいて、システム10のそれぞれの構成部品に印加される電圧を制御する。
【0110】
一般的に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に印刷ヘッド16を制御して構築材料配合物の液滴を層状に吐出させ、トレイ12上に三次元物体を印刷させる。
【0111】
システム10は、任意選択によりかつ好ましくは1以上の放射源18を備える。これは、使用される造形材料配合物に応じて、例えば紫外線、可視光若しくは赤外線のランプ、あるいは他の電磁放射源、あるいは電子線源であってよい。放射源は、これに限らないが発光ダイオード(LED)、デジタル光処理(DLP)システム、抵抗ランプ等を含む、任意の種類の放射線放出装置を含むことができる。放射源18は造形材料配合物の硬化又は凝固の役割をする。本発明の様々な例示的実施形態では、放射源18の動作はコントローラ20によって制御され、それは、放射源18の作動及び停止を行い、かつ任意選択により放射源18によって発生する放射線量の制御を可能とする。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態では、システム10は、ローラまたはブレードとして製造され得る1以上のレベリング装置32をさらに備える。レベリング装置32は、新たに形成した層を、その上に次の層を形成する前に矯正する役目をする。いくつかの実施形態では、レベリング装置32は円錐ローラの形状を有し、その対称軸34がトレイ12の表面に対して傾斜し、かつその表面がトレイの表面と平行になるように配置される。この実施形態をシステム10の側面図で示す(図1C)。
【0113】
円錐ローラは、円錐または円錐台の形状であってよい。
【0114】
円錐ローラの開き角は好ましくは、その軸34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸14との間の距離との間の比が一定となるように選択される。この実施形態により、ローラ32は層を効率的に平準化可能となる。それは、ローラが回転する間、ローラ表面上の任意の点pは、その点pの垂直に直下の点におけるトレイの直線速度に比例した(例えば同一の)直線速度を有するからである。いくつかの実施形態では、ローラは高さh、軸14に最も近い位置における半径R、および軸14から最も遠い位置における半径Rを有する円錐台形状を有する。ここでパラメータh、R、Rは、R/R=(R-h)/hの関係を満たし、Rは軸14からのローラの最遠距離である(例えばRはトレイ12の半径であり得る)。
【0115】
レベリング装置32の動作は、任意選択によりかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。コントローラは、レベリング装置32の起動、停止を行い、かつ任意選択により、垂直方向(軸14に平行)、及び/又は半径方向(トレイ12に平行で、軸14に向かうか離れる方向)に沿うその位置も制御し得る。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態では、印刷ヘッド16は、半径方向rに沿ってトレイに対して往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の半径方向の幅より短いときに有用である。半径方向へのヘッド16の運動は、任意選択によりかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0117】
いくつかの実施形態では、異なる吐出ヘッドからの異なる材料配合物の吐出によって物体を製作することを企図する。これらの実施形態は、とりわけ、与えられた数の材料配合物から材料配合物を選択し、選択した材料配合物とそれらの特性の所望の組合せを規定する機能を提供する。本実施形態によれば、各材料配合物を層状に堆積する空間位置は、異なる材料配合物で異なる三次元空間位置を占有させるか、2つ以上の異なる材料配合物で実質的に同一の三次元位置又は隣接する三次元位置を占有させ、その層内に材料配合物を後から堆積する空間組合せを可能として、それによってそれぞれの位置に複合材料配合物を形成するか、のいずれかによって規定される。
【0118】
後から堆積させる造形用材料配合物の任意の組合せまたは混合が考えられる。例えば、特定の材料が吐出されると、それはその元の特性を維持し得る。しかしながら、別の造形材料配合物又は他の吐出材料配合物と同時に同一又は近傍の位置に吐出される場合には、吐出された材料配合物とは異なる特性を有する複合材料配合物が形成される。
【0119】
こうして本実施形態は、広範囲の材料配合物の組合せの堆積を可能にし、かつ物体の各部分の特徴に要求される特性に応じて、物体の異なる部分が複数の異なる材料配合物の組合せから構成され得る物体の製作を可能にする。
【0120】
本実施形態に適したAMシステムの原理および動作のさらなる詳細は、米国公開特許出願第20100191360号明細書に示されており、参照によりその内容を本明細書に援用する。
【0121】
供給システム330のカートリッジ内の構築材料の量を決定することが望まれる場合がしばしばある。例えば、1以上のヘッド16の動作をそれぞれのカートリッジが空の時に停止するため、あるいはカートリッジ内の材料の量が少ないか物体の構築完了には不十分であることをユーザに警報を出すためである。従来の三次元印刷システムでは、カートリッジ内の構築材料の量の判定にロードセルを使用する。通常そのようなシステムではカートリッジは複数の個別のロードセルを備えたカートリッジ台座に収容され、台座内の各カートリッジに1つのロードセルがある。ロードセルは各カートリッジの重量を測定する。コントローラは測定された重量をメモリ内に格納された既知の重量(例えば、満杯時のカートリッジ重量、又は空のカートリッジ重量)と比較し、測定重量と既知の重量との差に基づいてカートリッジ内の構築材料の量を判定する。本発明者らは、ロードセルは通常高価であり、定期的な保守を必要とし、またその共振周波数を減衰させる必要があることから、この解決策は最適ではないことを発見した。この解決策の別の欠点は、この解決策では台座内のカートリッジと同数のロードセルを必要とし、その結果カートリッジの数の関数として、システムの製造コストの直線的な増加を招くことである。
【0122】
カートリッジ内の構築材料の量を決定する問題に対するよりよい解決策を探索する中で、発明者らは、カートリッジ内の空の体積を測定し、したがって構築材料の量に対する相補パラメータを測定することに基づく手法を考案した。この解決策の利点は、その単純さであり、以下で説明するようにシステムの製造コストを直線的に増加させることなく、任意選択によりかつ好ましくは複数のカートリッジに適用できるという点である。
【0123】
ここで再び図面を参照すると、図4はAMシステムへ構築材料を供給するカートリッジ内の構築材料量の監視に適する方法のフロー図であり、図5は本発明のいくつかの実施形態による物体製造に適する方法のフロー図である。この方法は通常、これに限らないがシステム10又はシステム110などのAMシステムを用いて実行される。
【0124】
別段の定義がない限り以下で説明する操作は、実行の多くの組合せ又は順序において、同時又は順次のいずれかで実行可能であることを理解されたい。特に、フロー図の順序は限定的とみなされるべきではない。例えば、以下の説明又はフロー図で特定の順序で現れる2以上の操作は、異なる順序(例えば逆の順序)で、あるいは実質的に同時に実行されてもよい。さらに、以下で説明するいくつかの操作は任意選択であって、実行されない場合もある。
【0125】
本方法を実施するコンピュータプログラムは、一般に、これに限らないがフラッシュメモリ、CD-ROM、又はインターネットを介してローカルコンピュータと通信するリモート媒体などの配布媒体でユーザに配布することができる。コンピュータプログラムは配布媒体からハードディスク又は類似の中間記憶媒体にコピー可能である。コンピュータ命令をその配布媒体又は中間記憶媒体のいずれかからコンピュータの実行メモリにロードして、コンピュータをこの方法に従って動作するように構成することにより、コンピュータプログラムを実行可能である。これらのすべての操作は、コンピュータシステム分野の当業者には周知である。
【0126】
本方法は多くの形で具体化可能である。例えば、本方法のステップを実行するコンピュータなどの有形媒体上に具体化可能である。方法ステップを遂行するコンピュータ可読命令を含む、コンピュータ可読媒体上に具体化することも可能である。有形媒体上でコンピュータプログラムを実行するか、又はコンピュータ可読媒体上の命令を実行するように構成されたデジタルコンピュータ機能を有する電子デバイスで具体化することも可能である。
【0127】
図4を参照すると、方法は400で始まり、任意選択によりかつ好ましくは401まで継続され、そこでカートリッジ内のガス圧力が下げられる。この減圧は例えばカートリッジの前部を大気に放出することにより、あるいはポンプ332を使用してカートリッジからガスを能動的に排気することにより行うことができる(図1A及び図1B参照)。ポンプ332は、個別のカートリッジに直接接続することが可能であり、またより好ましくは、図1Aに示すように、ポンプ332と各カートリッジ300a、300bなどと流体連通するマニホールド334に接続することも可能である。任意選択によりかつ好ましくは、マニホールド334は制御可能なバルブ(図示せず)を配置し、これが各カートリッジとの流体連通を確立又は防止する。ポンプ332及びマニホールド334への制御信号は(使用されていて制御可能な場合には)通常AMシステムのコントローラにより生成される。好ましくは、圧力は大気圧まで低下される。
【0128】
方法が402に進み、ガスがカートリッジ内に導入される。ガスは例えば空気、又は不活性ガス、例えば希ガスであってよく、好ましくはポンプ332でカートリッジに直接、又は上で更なる詳細を述べたマニホールド334を介して導入される。マニホールド334を使用する実施形態において、ガスは2以上(例えばすべての)カートリッジに同時に導入可能である。あるいは一度に1つのカートリッジに対して順次導入されてもよい。
【0129】
403において、カートリッジ内のガス圧が測定される。測定は、それぞれのカートリッジに流体連通する圧力センサ336による。いくつかの実施形態では、各カートリッジは別々の圧力センサ336に関連付けられている。例えば、センサは各カートリッジ内部に設けられてもよいし、カートリッジ内部に通じる導管と流体連通してもよい。これらの実施形態において、2以上のカートリッジ内のガス圧を同時に測定可能である。
【0130】
あるいは、同一圧力センサ336を複数のカートリッジに使用することも可能である。例えば、ガスがマニホールド334を介して導入されるとき、圧力センサ336はマニホールド334内の圧力を測定するようにすることが可能であり、それによりマニホールドに流体連通するカートリッジ内の圧力も測定される。これらの実施形態において、2以上のカートリッジ内のガス圧を順次測定可能であり、各回ごとに複数のカートリッジ内の異なる1つのガス圧が測定される。通常、ガスが同時に導入される場合には、ガス圧もまた同時に測定される。そしてガスが順次導入される場合には、ガス圧もまた順次測定される。
【0131】
センサ336からの検知信号は通常AMシステムのコントローラ又はプロセッサに送信される。
【0132】
操作402及び403は所望により同時又は断続的に実行可能であって、任意選択によりかつ好ましくはカートリッジ内の圧力が、大気圧より高い所定のレベルPに達するまで反復又は継続される。Pの値は、カートリッジで維持可能な圧力を超えない限りは任意の値であってよい。Pに対する適切な値の代表例としては、約1cmHOから約10cmHOまでの任意の値が含まれる。ただしこれに限るものではない。本発明者らが実施した実験では、Pを2cmHOに設定した。カートリッジ内の圧力が大気圧より高い所定レベルPに達すると、操作402及び任意選択によりかつ好ましくは403も停止される。
【0133】
圧力が所定レベルに到達すると、方法は404に進み、そこでカートリッジ内の構築材料の量が決定される。通常、量は402においてカートリッジに導入されたガスの体積、あるいは体積の代替物に基づいて決定される。
【0134】
本明細書で使用する「体積の代替物」とは、体積そのものに相関を有し、かつ体積そのもの以外のパラメータとして定義される。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態では、ガスは所定の、また任意選択によりかつ好ましくはほぼ一定の(例えば±10%の公差内の)体積流量で、カートリッジ内に導入される。これらの実施形態では、カートリッジ内に入るガス体積は、ガスがカートリッジ内に導入された間の時間間隔に相関する。したがって、これらの実施形態において、ガス導入の初めから圧力が所定のレベルに到達する時点までの時間間隔Δtが測定される。そうしてカートリッジ内の構築材料の量が時間間隔Δtに基づいて決定可能である。決定は、カートリッジ内の構築材料の量を時間間隔Δtの関数として表す数学関数を用いてなし得る。例えば、方程式はv=v-QΔtであって、ここでvはカートリッジ内の構築材料の体積、vはカートリッジの体積、Qはガスがカートリッジ内に導入される体積流量である。したがって、これらの実施形態においてはパラメータΔtがカートリッジ内に導入されるガス体積の代替物の役割を果たす。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態では、カートリッジ内に導入されたガスの質量mが測定される。これは、例えばポンプ332から流出してカートリッジ内に入るガスの質量を検知するように構成された質量流量センサ338によって行うことができる。質量流量センサ338はポンプ332の出口に配置されるか、又はマニホールド334と流体連通して配置することができる。これに代わり、複数の質量流量センサを使用して、それぞれがカートリッジの1つと個別に流体連通することも可能である。
【0137】
ガスの質量が測定されると、カートリッジ内の構築材料の量が、測定された質量を基に決定可能である。これは、ルックアップテーブルにより可能であり、あるいは、カートリッジ内の構築材料の量をガス質量の関数として表す数学関数により可能である。例えば、数学関数はガス体積を、その状態方程式に従ってその質量の関数として表し、それによりガス体積を構築材料の体積に相関づけることが可能である。通常、ガスは理想気体として近似され、状態方程式は理想気体の状態方程式である。それにより、ガスがカートリッジ内に導入される時間間隔の間にカートリッジ内のガス温度に変化がないと仮定すると、ガスの体積はガスの質量に直線的に比例する。したがって、これらの実施形態においてはパラメータmがカートリッジ内に導入されるガス体積の代替物の役割を果たす。
【0138】
時間間隔パラメータΔtに基づいてカートリッジ内の構築材料の量を決定することは、質量流量センサを必要としないので、コストの観点から好ましい。質量パラメータmに基づいてカートリッジ内の構築材料の量を決定することは、ポンプを所定の体積流量で運転することを必要としないので有利である。
【0139】
AMシステムのコントローラがコンピュータ化されたコントローラである場合、決定406はコントローラによって実行可能である。あるいは、AMシステムのプロセッサ又はホストコンピュータによって決定406を実行することも可能である。
【0140】
任意選択により方法が405に進み、決定405に応じて警報が発行される。例えば、カートリッジが空の時、あるいはカートリッジ内の材料の量が所定の閾値未満(例えばカートリッジ体積のX%未満、ここでXは50未満)の場合に警報が発行され得る。本発明のいくつかの実施形態において、本方法は、物体の構築の完了に必要な、カートリッジ内に含まれる種類の構築材料の量を計算するか、入力として受信する。そして、カートリッジ内の構築材料の量が構築完了には不十分と予想される場合に警報を発行する。
【0141】
405(使用される場合)又は404から、本方法は任意選択によりかつ好ましくは401に、別の実行サイクルのためにループして戻る。本方法は406で終了する。
【0142】
図5は、本発明の様々な例示的実施形態による、物体製造に適する方法のフロー図である。この方法は、システム10又はシステム110を使用して実行可能である。
【0143】
本方法は、500で開始され、任意選択によりかつ好ましくは501に進み、そこで上述のフォーマットのいずれかのコンピュータ物体データを受け取る。
【0144】
本方法は、503に進むことができ、そこで構築材料の層が吐出される。構築材料は通常、構築材料を包含するカートリッジから、AMシステムのトレイ又はその物体の既形成層である受容媒体上に層を吐出する吐出ヘッドへ送達される。構築材料は、造形用材料又は支持体材料であってよい。通常、本方法は、特定の層に関して造形用材料の一つ以上の領域及び支持体材料の一つ以上の領域を選択的に吐出する。造形用材料は好ましくは、物体の形状に対応する構成パターンで、かつコンピュータ物体データに従って、吐出される。
【0145】
任意選択によりかつ好ましくは操作503の前にカートリッジ内の構築材料の量を監視する操作502が行われる。操作502には、前述した方法400における1以上の操作401-405が含まれ得る。本発明のいくつかの実施形態において、操作502と503は同時に実行される。また、503の前に502が開始されて、503及び任意選択により以下で述べる方法500の他の任意の操作の実行中、それを反復して継続する実施形態も考えられる。さらに、吐出503の前に502が実行される実施形態、及び502が吐出503の前後で行われるが503の実行中には行われない実施形態も考えられる。
【0146】
本方法は、任意選択によりかつ好ましくは504に進み、そこで吐出された構築材料が凝固される。凝固プロセスの種類は、吐出される材料の種類に依存する。例えば、構築材料がUV硬化性であるとき、凝固にはUV放射の適用が含まれ、構築材料が他の放射線(例えば赤外又は可視光)によって硬化可能であるとき、凝固には、構築材料を硬化させる波長での放射の適用が含まれる。
【0147】
操作502~504、そして一部の実施形態では501も好ましくは連続的に複数回実行されて、複数の層が連続的に吐出、凝固されるようにする。そしてその間カートリッジ内の構築材料の量が監視される。これは図5に、操作504から操作501、502、503へ向かうループバック矢印として示される。方法が503へループバックするとき、監視ステップ502により、503での材料の連続的吐出に対してカートリッジ内の材料の量が十分であることが確認される。本方法が、502においてカートリッジ内の材料が不十分であると判定すると、警報が発行されて、操作503に移る前に、操作者がそのカートリッジを十分な材料の入ったカートリッジに交換できるようにする。本方法が、502においてカートリッジが空であると判定すると、他の操作の実行が停止されて警報が発行される。層が吐出されて、造形材料から作られた造形層のスタック及び犠牲構造が形成される。ここで、造形層のスタック及び犠牲構造は、造形層のスタックの形状及びサイズを変形させずに維持する形で、相互に分離可能である。
【0148】
この方法は505で終了する。
【0149】
ここで、図6A、6Bを参照する。これは本発明のいくつかの実施形態による、供給システム330の1以上のカートリッジ300a,300bなどとして使用可能な、例示的なカートリッジ300の斜視図(図6A)と側面図(図6B)の概略図である。カートリッジ300は、構築材料を格納するハウジング602を備える。ハウジング602は、任意選択によりかつ好ましくはユーザがカートリッジ300を容易に掴めるようにするハンドル606を含む形状となっている。ハウジング602は、カートリッジに構築材料を充填するための充填ポート640を有するように形成可能である。充填ポート640は充填ポートカバー642で覆われる。通常、カートリッジは、カートリッジ300の出荷前にポート640を介して構築材料で充填される。この場合、充填ポートカバー642は、エンドユーザがカバー642又はカートリッジ300本体を壊さなければ開けられないような設計及び構造となっている。例えばカバー642は、一旦取り外されるとポート640に再取り付けできない、使い捨てフォイルで作ることができる。
【0150】
任意選択によりカートリッジ300は識別タグ620を備える。識別タグ620はカートリッジ300の少なくとも1つの性質に関する識別情報を提供する。それには、これに限らないが、カートリッジの真正性、カートリッジ内の構築材料の種類、AMシステムへの装填時のカートリッジ内の構築材料の量、カートリッジが包含可能な構築材料の最大量、などが含まれる。識別タグ620は、これに限らないがバーコード(例えばQRタグ)、RFID、RTLSなどの当分野で知られる任意の機械可読タイプのものであってよい。これらの実施形態におけるAMシステムは、タグ620からのデータを読み込むように構成された識別タグリーダを備えることができる。本発明のいくつかの実施形態では、タグ620は図6A,6Bに示すように充填ポートカバー642に取り付けられるか、それと一体的に形成される。
【0151】
カートリッジ300はさらに構築材料出口604と通気口610を備える。構築材料出口604は、カートリッジ300を構築材料送達導管608に接続する役目をし、送達導管が構築材料をAMシステムのそれぞれのヘッドへ送達する。通気口610は大気との流体連通を確立する役目をする。あるいは、図6Bに示すように、通気口610は導管612との流体連通の確立のために使用可能である。導管612は、ポンプ332又はマニホールド334(図6Bには示さず)へ接続可能である。その場合、カートリッジ300内の造形材料の量は、更なる詳細を前述したように、通気口610を介してカートリッジ300内へガスを導入することによって監視可能である。
【0152】
使用中、ハウジング602は、構築材料出口604がハウジング602の下部にあり、かつ通気口610がハウジング602の上部にある方向でAMシステムに装填される。そのような方向では、カートリッジが満杯でないときでも構築材料が出口604を通って確実に送達される。
【0153】
出口604は好ましくは速結型であってカートリッジ300をAMシステムに装填すると出口604と導管608の間が自動的に密閉係合可能となる。好ましくは、ただし必須ではないが、通気口610の構造は出口604の構造と類似しており、カートリッジ300をAMシステムに装填すると通気口610と導管612の間が自動的に密閉係合される。これらの実施形態は、通気口610を介するガス導入により、カートリッジ300内の構築材料の量を監視する必要がある時、特に有用である。その場合、カートリッジ300をAMシステムに装填すると、導管612はポンプ332又はマニホールド334に既に接続されているようにすることが可能である。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態では、出口604及び/又は通気口610の速結型接続は、穿孔可能な隔壁による。これらの実施形態は図7A、7Bに示されており、これらは構築材料出口604又は通気口610の分解図(図7A)とカートリッジ300の断面図(図7B)である。以下の説明は構築材料出口604に関するものであるが、通気口610に対しても同一構造が企図されることを理解されたい。
【0155】
図7A、7Bに示す実施形態において、出口604は穿孔可能な隔壁700とカップ702を備える。カップ702は隔壁700を受けるように構成された開放端714と、その開放端714の反対側の閉鎖端716とを有する。隔壁700は、これに限らないが、天然ゴム、合成ゴム、ラテックス、シリコーンなどを含む、任意のエラストマー材料で作製できる。出口604もまた、図7Bに示すように、カップ702内に隔壁700を包囲して保持するカバー704を含むことができる。
【0156】
カバー704とカップ702は、隔壁700がカップ702に挿入されると、カバー704とカップ702を接続するためのスナップコネクタ710とそれぞれのノッチ712を備えることができる。カバー704は代わりにカップ702の周囲にプレスされた金属リングとして提供されてもよい。カバー704には通常、隔壁700の穿孔可能部を露出する開口708が形成され、カートリッジがAMシステムに装填されると、針706が隔壁700を貫通可能とする。針706の反対側の端部は導管608の内部にあり、カートリッジ300の内部と導管608の間の流体連通は針706を介して行われる。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態では、隔壁700の直径はカップ702の内径よりわずかに大きい(例えば約1~5%大きい)。従って、隔壁700をカップ702内に組み立てるためには隔壁700に応力を加える必要がある。これらの実施形態の利点は、エラストマー材料の隔壁700がカップ702に囲まれているときは応力下にあり、その結果カップ702の内周での密閉がよくなることである。そしてまた、針706を引き抜いた後、隔壁700に自己再密閉特性を提供することである。
【0158】
カートリッジ300がAMシステムに装填されると、針706が隔壁700を貫通する。針706が隔壁702を貫通して更に移動すると、針706がカップ702の閉鎖端716に穴をあけて構築材料718に接触する。そして構築材料718と導管608の間の流体連通を確立する。
【0159】
隔壁700をカップ702の中に囲い込む利点は、構築材料718が隔壁700と接触する時間の長さを短縮できることである。構築材料は通常腐食性があり、構築材料とポリマー材料の隔壁700との間の化学反応がポリマー材料に損傷を与えて、その密閉、穿孔、再穿孔の能力を低下させる可能性がある。カップ702は、カートリッジ300の最初の使用の前(例えば保管中、又は輸送中)では、カップ702の閉鎖端716が穿刺されていないので、構築材料と隔壁との間の接触がないことを確実にする。カートリッジをAMシステムに装填して初めてカップは穿刺され一部の構築材料が隔壁に接触する。したがって、構築材料と隔壁との間の相互作用時間が短縮されて、カップ702がそのような損傷発生の可能性を低減する。
【0160】
本明細書で使用されるように、「約」という用語は±10%を指す。
【0161】
「例示的」という用語は、本明細書では、「例、実例、例示に供する」という意味で使用される。「例示的」として記述される任意の実施形態は、他の実施形態よりも好適又は有利であるとして、及び/又は他の実施形態の特徴を組み込むことを排除するものとして、必ずしも解釈されるべきではない。
【0162】
「任意選択により」という用語は、本明細書においては、「ある実施形態では提供され、他の実施形態では提供されない」ことを意味するように使用される。本発明の任意の特定の実施形態は、そのような特徴が相反しない限り、複数の「任意選択の」特徴を含み得る。
【0163】
用語「備える」、「備えた」、「含む」、「含んだ」、「有する」、及びそれらの活用形は、「含むがそれに限らない」ことを意味する。
【0164】
「から成る」という用語は、「を含み、かつ限定される」ということを意味する。
【0165】
「本質的に~から成る」という用語は、組成、方法又は構造が追加的な成分、ステップ及び/又は部品を含み得るが、その追加的な成分、ステップ及び/又は部品が特許請求の組成、方法又は構造の基本的かつ新規の特性を実質的に変更しない場合に限ることを意味する。
【0166】
本明細書で使用の、単数形の「1つの(a、an)」、「その(the)」は文脈が明確にそうでないことを規定しない限り、複数の言及も含む。例えば、「1つの化合物」又は「少なくとも1つの化合物」という用語は、複数の化合物を、それらの混合物も含めて包含し得る。
【0167】
本出願を通じて、本発明の様々な実施形態が範囲形式で提示され得る。範囲形式の記述は、単に便宜的かつ簡潔化のためのものであって、本発明の範囲の一定不動の限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。従って、範囲の記述は、その範囲内の個別の数値と共にすべての可能な部分範囲を具体的に開示しているものと見なされるべきである。例えば、1~6というような範囲の記述は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された部分範囲、並びにその範囲内の個別の数値、例えば1、2、3、4、5、6を有すると見なされるべきである。このことは、範囲の広さに拘わらず適用される。
【0168】
本明細書で数値範囲が示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数値(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の指定数と第2の指定数「の間の範囲の/範囲にある」という句、及び、第1の指定数「から」第2の指定数「まで」の「範囲の/範囲にある」という句は、本明細書では互換的に使用されて、第1の指定数と第2の指定数、並びにその間のすべての分数及び整数を含むことを意味する。
【0169】
本発明の特定の特徴は、明確にするために別々の実施形態の文脈に記述されていても、組み合わせて1つの実施形態で提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈中に記述される本発明の様々な特徴は、別々または任意の適切な部分的組合せで提供されることも、又は本発明の任意の他の説明された実施形態に適切であるとして提供されることも可能である。様々な実施形態の文脈で記述される特定の特徴は、これらの要素なしではその実施形態が機能不能とならない限りは、これらの実施形態の必須の特徴と見なされるべきではない。
【0170】
本明細書において上記のように記述し、また下記の特許請求の範囲において特許請求されるような本発明の様々な実施形態及び態様は、その実験的裏付けが以下の実施例に見出される。
(実施例)
【0171】
次に以下の実施例を参照する。これは上記の記述と相俟って本発明のいくつかの実施形態を非限定的な形で例示するものである。
【0172】
実験は、カートリッジ内の構築材料の量を決定するために上記の図4に関して説明した少なくともいくつかの操作の機能を調査するために行った。カートリッジは図6A及び図6Bに示すタイプとした。ポンプは導管612によって通気口610に接続した。そして構築材料を出口604を介して吸引し、構築材料を吐出ヘッドに送達する操作を模倣した。7つのサイクルを遂行した。各サイクルにおいて構築材料を出口を介して吸引し、ガスを通気口を介して導入し、カートリッジ内の圧力を測定し、ガス導入の初めから圧力が所定のレベルの2cmHOに到達する時点までの時間間隔Δtを測定した。各サイクルにおいて、カートリッジ内のガス圧を最初に大気圧(以後「ゼロ圧力」と呼ぶ)まで低下させた。結果を下の表1にまとめ、図8にグラフで示す。
【表1】
【0173】
図8及び表1は、カートリッジ内の構築材料の量が時間間隔のパラメータΔtとのよい相関を示すことを表す。
【0174】
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明してきたが、当業者には多くの代替、修正、変形が明らかなことは明白である。したがって、特許請求の範囲の精神及び広い範囲内にあるそのような代替、修正及び変形のすべてを包含することが意図されている。
【0175】
本明細書で言及したすべての刊行物、特許及び特許出願は、各個別の刊行物、特許及び特許出願が具体的かつ個別的に参照により本明細書に組み込まれるように表示された場合と同じ程度に、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願内のいかなる参照の引用または特定も、そのような参照が本発明に対する先行技術として利用可能であることを認めるものと解釈されるべきではない。セクション見出しに使用される限りでは、それらは必ずしも制限的であると解釈されるべきではない。さらに、本出願の任意の優先権文書は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8