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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 11/00 20060101AFI20240723BHJP
   H02G 3/04 20060101ALI20240723BHJP
   H02G 3/30 20060101ALI20240723BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20240723BHJP
   B60R 16/02 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
H02G11/00
H02G3/04 087
H02G3/30
H01B7/00 301
B60R16/02 620C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022028841
(22)【出願日】2022-02-28
(65)【公開番号】P2023124957
(43)【公開日】2023-09-07
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】木暮 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 光
(72)【発明者】
【氏名】小野田 健
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-283949(JP,A)
【文献】特開2007-176232(JP,A)
【文献】特開2019-047626(JP,A)
【文献】特開2013-031300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 11/00
H02G 3/04
H02G 3/30
H01B 7/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し、固定された第一リンクに対して固定され、または前記第一リンクの固定対象に対して固定される第一プロテクタと、
前記第一リンクに対して相対回転可能な第二リンクによって保持されており、かつ開口を有する第二プロテクタと、
前記第一プロテクタの開口に配置される第一端部と、前記第二プロテクタの開口に配置される第二端部と、を有する可撓性の筒状の外装部材と、
前記第一プロテクタ、前記第二プロテクタ、および前記外装部材のそれぞれに挿通されており、かつ前記第二リンクの長手方向に沿って前記第二リンクに配索される電線と、
前記第二端部が前記第二リンクに対して前記長手方向に沿って相対移動することを許容する可動構造と、
を備え
前記第二プロテクタは、前記第一プロテクタの側に向けて延出した筒部を有し、
前記可動構造は、前記第二端部と前記第二プロテクタの筒部とが摺動可能に嵌合する嵌合構造である
ことを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記外装部材は、前記外装部材の軸方向に沿った長さを維持しつつ撓み変形するように構成されている
請求項に記載のワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスの余長を吸収する技術がある。特許文献1には、ベースに軸部で回動自在に支持された第一のリンクと、該第一のリンクの先端側に軸部で回動自在に支持された第二のリンクとに対し、各軸部の中心からオフセットして該第一のリンクにハーネスプロテクタを配置し、該ハーネスプロテクタ内にワイヤハーネスを摺動自在に挿通させ、該ワイヤハーネスの一方を該ベース側のハーネス固定部に固定し、該ワイヤハーネスの他方を該第二のリンク側のハーネス固定部に固定した、ワイヤハーネスの余長吸収構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-213315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リンク機構の回転動作に追従するワイヤハーネスにおいて、改良の余地がある。例えば、電線を収容する外装部材の両端が異なるリンクに固定される場合、回転動作に伴う外装部材への負荷が大きくなる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、リンク機構の回転動作による外装部材への負荷を軽減することができるワイヤハーネスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤハーネスは、固定された第一リンクに配置されており、かつ開口を有する第一プロテクタと、前記第一リンクに対して相対回転可能な第二リンクに配置されており、かつ開口を有する第二プロテクタと、前記第一プロテクタの開口に配置される第一端部と、前記第二プロテクタの開口に配置される第二端部と、を有する可撓性の筒状の外装部材と、前記第一プロテクタ、前記第二プロテクタ、および前記外装部材のそれぞれに挿通されており、かつ前記第二リンクの長手方向に沿って前記第二リンクに配索される電線と、前記第二端部が前記第二リンクに対して前記長手方向に沿って相対移動することを許容する可動構造と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るワイヤハーネスは、外装部材の第二端部が第二リンクに対して長手方向に沿って相対移動することを許容する可動構造を有する。本発明に係るワイヤハーネスによれば、リンク機構の回転動作による外装部材への負荷を軽減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図である。
図2図2は、半開位置のワイヤハーネスを示す平面図である。
図3図3は、全閉位置のワイヤハーネスを示す平面図である。
図4図4は、全開位置のワイヤハーネスを示す平面図である。
図5図5は、第1実施形態に係るワイヤハーネスの拡大斜視図である。
図6図6は、第1実施形態に係るワイヤハーネスの断面図である。
図7図7は、第1実施形態に係るワイヤハーネスの断面図である。
図8図8は、第1実施形態に係るワイヤハーネスの断面図である。
図9図9は、第2実施形態に係る可動構造を説明する断面図である。
図10図10は、第2実施形態に係る可動構造を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係るワイヤハーネスにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[第1実施形態]
図1から図8を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、ワイヤハーネスに関する。図1は、第1実施形態に係るワイヤハーネスを示す斜視図、図2は、半開位置のワイヤハーネスを示す平面図、図3は、全閉位置のワイヤハーネスを示す平面図、図4は、全開位置のワイヤハーネスを示す平面図、図5は、第1実施形態に係るワイヤハーネスの拡大斜視図、図6から図8は、第1実施形態に係るワイヤハーネスの断面図である。
【0011】
図6には、図2のVI-VI断面が示されている。図7には、図3のVII-VII断面が示されている。図8には、図4のVIII-VIII断面が示されている。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネスWHは、第一プロテクタ1と、第二プロテクタ2と、外装部材3と、電線4と、可動構造5と、を有する。本実施形態のワイヤハーネスWHは、例えば、車両100のリンク機構100Aに適用される。例示されたリンク機構100Aは、車両100のドア150を開閉させる開閉装置を構成する。
【0013】
リンク機構100Aは、第一リンク110、第二リンク120、第三リンク130、および回転軸140,170を有する。第一リンク110、第二リンク120、および第三リンク130は、例えば、金属板から形成される。第一リンク110は、車両100の車体160に固定された部材である。第一リンク110は、略U字形状に折れ曲がっており、車幅方向Yに向けて開口している。
【0014】
第二リンク120は、第一リンク110に対して相対回転する部材である。第二リンク120は、溝形に形成されており、電線4が配索される内部空間121を有している。第二リンク120は、底壁122、第一側壁123、および第二側壁124を有する。第一側壁123および第二側壁124は、底壁122の縁から立設されている。第一側壁123および第二側壁124は、底壁122の幅方向において互いに対向している。底壁122および二つの側壁123,124によって内部空間121が形成されている。例示された第二リンク120は、第一側壁123を車両上下方向Zの上方に向け、かつ第二側壁124を下方に向けて配置されている。
【0015】
第二リンク120は、基部120aおよび先端部120bを有する。基部120aは、第二リンク120における長手方向の第一端部に位置している。先端部120bは、第二リンク120における長手方向の第二端部に位置している。基部120aは、回転軸140を介して第一リンク110によって回転自在に支持されている。より詳しくは、基部120aは、第一リンク110の内部に挿入されている。回転軸140は、第二リンク120の第一側壁123および第二側壁124を貫通しており、第二リンク120を回転自在に支持する。回転軸140の両端は、第一リンク110によって支持されている。例示された回転軸140の軸方向は、車両上下方向Zである。
【0016】
第二リンク120は、回転軸140を回転中心として第一リンク110に対して相対回転することができる。図2から図4に示すように、第二リンク120は、先端部120bを車両前後方向Xに移動させるように回転する。図1および図2は、ドア150が半開の位置にあるときのリンク機構100Aを示し、図3は、ドア150が全閉の位置にあるときのリンク機構100Aを示し、図4は、ドア150が全開の位置にあるときのリンク機構100Aを示している。
【0017】
第三リンク130は、第二リンク120の先端部120bに連結されている。第三リンク130は、回転軸170を介して第二リンク120によって回転自在に支持されている。第三リンク130は、ドア150に対して接続されている。
【0018】
第一プロテクタ1および第二プロテクタ2は、電線4を保護し、かつ電線4の経路を規制する部材である。第一プロテクタ1および第二プロテクタ2は、例えば、絶縁性の合成樹脂で成型される。図5に示すように、第一プロテクタ1は、第一リンク110に配置されている。第一プロテクタ1は、第一リンク110に対して固定されてもよく、車体160に対して固定されてもよい。例示された第一プロテクタ1は、第一リンク110に接触して配置されている。
【0019】
第一プロテクタ1は、筒状に形成された第一筒部11を有する。第一筒部11は、電線4を収容して保護し、かつ電線4の経路を規制する。平面視における第一筒部11の形状は、中間部において屈曲した略V字または略L字の形状である。第一筒部11は、第一直線部11aおよび第二直線部11bを有する。第一直線部11aおよび第二直線部11bは、それぞれ直線状に延在している。第一直線部11aおよび第二直線部11bは、平面視において交差するようにつながっている。例示された第一直線部11aおよび第二直線部11bの形状は、角筒形状である。
【0020】
第一直線部11aは、回転軸140の側に向けて開口した開口11cを有する。本実施形態の第一プロテクタ1は、平面視において第一直線部11aの延長線上に回転軸140が位置するように配置されている。例えば、第一プロテクタ1は、第一直線部11aの中心軸線が回転軸140の中心軸線と交差するように配置される。第一直線部11aの中心軸線と回転軸140の中心軸線とが直交してもよい。第二直線部11bは、開口11dを有する。例示された開口11dは、車両前後方向Xに向けて開口している。
【0021】
第二プロテクタ2は、第二リンク120に配置されている。第二リンク120の第一側壁123には、切り欠き123aが設けられている。切り欠き123aは、基部120aに配置され、または基部120aの近傍に配置されている。平面視における切り欠き123aの形状は、例えば、矩形である。第二プロテクタ2は、切り欠き123aに配置されており、切り欠き123aによって保持される。
【0022】
第二プロテクタ2は、第二筒部21、第三筒部22、および屈曲部23を有する。第二筒部21、第三筒部22、および屈曲部23は、それぞれ角筒状に形成されている。第二筒部21は、第二リンク120の長手方向に延在しており、かつ回転軸140の側に向けて開口している。すなわち、第二筒部21は、回転軸140の側に向く開口21aを有する。本実施形態の第二プロテクタ2は、平面視において第二筒部21の延長線上に回転軸140が位置するように第二プロテクタ2に対して固定されている。例えば、第二プロテクタ2は、第二筒部21の中心軸線が回転軸140の中心軸線と交差するように配置される。第二筒部21の中心軸線と回転軸140の中心軸線とが直交してもよい。
【0023】
第三筒部22は、第二リンク120の長手方向と直交する方向に延在しており、かつ切り欠き123aに嵌合している。例示された第三筒部22は、車両上下方向Zに延在している。第三筒部22は、第二リンク120の内部空間121に向いた開口22aを有している。開口22aは、第二側壁124と対向している。
【0024】
屈曲部23は、第二筒部21と第三筒部22との間に位置しており、第二筒部21と第三筒部22とをつないでいる。例示された屈曲部23は、直角に折れ曲がっている。つまり、本実施形態の第二プロテクタ2では、第二筒部21と第三筒部22とが直交している。
【0025】
外装部材3は、電線4を収容して保護するための可撓性の筒状の部材である。外装部材3は、例えば、絶縁性の合成樹脂で成型される。外装部材3は、図3および図4に示すように、平面視において中心軸線C1を湾曲させるように撓み変形することが可能である。外装部材3は、中心軸線C1に沿った方向において剛性を有している。
【0026】
外装部材3は、例えば、屈曲可能に構成された角筒状の部材であってもよい。このような角筒状の外装部材には、例えば、屈曲可能なように複数の切込ラインが設けられる。角筒状の外装部材は、中心軸線C1の方向に沿った長さを維持しつつ撓み変形することが可能である。
【0027】
外装部材3は、複数の枠状部材を中心軸線C1に沿って配列させて構成されてもよい。このような外装部材3では、隣接する二つの枠状部材が相対回転可能なように互いに連結されている。連結式の外装部材3は、中心軸線C1の方向に沿った長さを維持しつつ撓み変形することが可能である。
【0028】
外装部材3は、コルゲートチューブであってもよい。コルゲートチューブは、中心軸線C1に沿って適切な剛性を有するように形成される。コルゲートチューブは、中心軸線C1の方向に沿った長さを維持しつつ撓み変形することが可能なように形成されてもよい。
【0029】
外装部材3は、第一端部31および第二端部32を有する。第一端部31は、第一プロテクタ1に配置される。第二端部32は、第二プロテクタ2に配置される。本実施形態のワイヤハーネスWHでは、第一端部31が第一プロテクタ1に固定されており、第二端部32が第二プロテクタ2に対して摺動可能に挿入されている。
【0030】
ここで、本実施形態のリンク機構100Aでは、第一リンク110に対する第二リンク120の相対回転によって、二つのリンク110,120の間の線長が変化する。例えば、第二プロテクタ2が第二リンク120に対して固定されている場合には、第一プロテクタ1と第二プロテクタ2との間の線長が変化する。図2に示す回転位置では、第一プロテクタ1の開口11cと第二プロテクタ2の開口21aとが互いに対向しており、外装部材3の形状が直線形状である。この場合、第一プロテクタ1と第二プロテクタ2との間の線長が最大となる。
【0031】
これに対して、図3に示す全閉の回転位置、および図4に示す全開の回転位置では、開口11cの向きと開口21aの向きとが交差している。この場合、図2の回転位置と比較して、開口11cと開口21aとの間の直線距離が短い。つまり、全閉位置および全開位置における開口11cと開口21aとの間の線長は、図2の回転位置のときの線長よりも短くなる。
【0032】
本実施形態のワイヤハーネスWHは、以下に説明するように、第二リンク120の回転動作による外装部材3への負荷を軽減させる可動構造5を有する。図6には、図2の回転位置における第一プロテクタ1、第二プロテクタ2、外装部材3、および電線4が示されている。可動構造5は、外装部材3の第二端部32と、第二プロテクタ2の第二筒部21と、によって構成されている。
【0033】
より詳しくは、可動構造5は、第二端部32と第二筒部21とが摺動可能に嵌合する嵌合構造である。図6に示すように、第二プロテクタ2の第二筒部21は、第一プロテクタ1の側に向けて延出している。外装部材3の第二端部32は、第二筒部21に対して摺動可能なように第二筒部21に対して挿入されている。つまり、第二端部32は、第二筒部21の軸方向に沿って第二筒部21に対して進退可能である。
【0034】
外装部材3の第一端部31は、第一プロテクタ1に対して固定されている。第一プロテクタ1の第一直線部11aは、外装部材3を保持する突起15を有する。突起15は、第一直線部11aの内壁面から突出している。外装部材3の第一端部31は、第一直線部11aに挿入されて突起15によって係止される。突起15は、第一直線部11aに対して第一端部31が相対移動しないように第一端部31を保持する。
【0035】
図1図5、および図6に示すように、電線4は、第一プロテクタ1、第二プロテクタ2、および外装部材3のそれぞれに挿通されている。例示された電線4は、車体160の側の機器と、ドア150の側の機器とを接続する。電線4は、例えば、電源線および信号線が束ねられて構成される。電線4の一端は、第一プロテクタ1の開口11dから引き出されている。開口11dから引き出された電線4は、車両100の電源や制御装置に接続される。電線4の他端は、第二リンク120の内部空間121に配索され、ドア150に配置された機器に接続される。電線4は、第二リンク120の長手方向に沿って第二リンク120に配索される。以下の説明では、第二リンク120の長手方向を単に「長手方向LD」と称する。
【0036】
図6に示すように、電線4は、第一プロテクタ1の内部、外装部材3の内部、第二プロテクタ2の内部、および第二リンク120の内部空間121に配索される。電線4は、第二プロテクタ2の内部において湾曲している。より詳しくは、電線4は、屈曲部23の内部において、屈曲部23の形状に沿って湾曲している。図6に示す電線4は、屈曲部23において、中心軸線のなす角度θが鈍角となるように曲がっている。電線4は、更に、第二プロテクタ2の開口22aにおいて湾曲している。電線4は、第二リンク120の先端部120bにおいて内部空間121から引き出され、ドア150の側の機器に接続される。
【0037】
第二プロテクタ2の第三筒部22は、内側の壁22bおよび外側の壁22cを有する。内側の壁22bおよび外側の壁22cは、長手方向LDにおいて互いに対向している。つまり、内側の壁22bおよび外側の壁22cは、第二リンク120が回転運動をするときの半径方向において互いに対向している。内側の壁22bは、外側の壁22cよりも回転軸140の近くに位置している。つまり、内側の壁22bは、外側の壁22cと比較して上記半径方向の中心側に位置している。
【0038】
内側の壁22bと外側の壁22cとの間の距離W1は、電線4の直径よりも大きい。従って、電線4は、第三筒部22の内部において車両上下方向Zに対して傾斜した方向に延在することができる。
【0039】
第二プロテクタ2は、第二リンク120が回動するときに発生する電線4の余長を収容できるように構成されている。図6に示すように、電線4の外周面と第二プロテクタ2の内壁面との間には、隙間G1が設けられている。隙間G1は、少なくとも第三筒部22の内壁面と電線4との間に形成される。
【0040】
電線4は、車体160の側、および第二リンク120の側、のそれぞれにおいて固定される。車体160の側における電線4の固定対象は、例えば、第一プロテクタ1である。電線4は、例えば、バンド等の結束部材やテープによって第一プロテクタ1に固定される。第二リンク120の側における電線4の固定対象は、例えば、第二プロテクタ2である。電線4は、例えば、バンド等の結束部材やテープによって第二プロテクタ2に固定される。電線4は、例えば、開口22aの部分において第二プロテクタ2に対して固定される。電線4は、外側の壁22cに対して固定されてもよい。
【0041】
図7には、第二リンク120が全閉位置にある場合の第二プロテクタ2および電線4が示されている。上記のように、全閉位置および全開位置では、第一プロテクタ1と第二プロテクタ2との間の線長が短くなる。例えば、第二リンク120が半開の位置から全閉位置へ向けて回転すると、図7に示すように、外装部材3および電線4には長手方向LDに沿って第二プロテクタ2の側へ向かう力F1が作用する。
【0042】
外装部材3の第二端部32は、力F1によって第二筒部21の内部に向けて押し込まれる。外装部材3は、第二筒部21に対して摺動しながら外側の壁22cに向けて移動することにより、全閉位置に向けて回転する第二リンク120に追従する。外装部材3が第二筒部21に対して摺動可能なことにより、線長の変化による外装部材3への負荷が軽減する。
【0043】
比較例として、第二端部32が第二筒部21に対して摺動不能に固定されている構成について検討する。この場合、第二リンク120の回転によって外装部材3に軸方向の応力が発生する。更に、外装部材3は、第二リンク120の回転に追従するために撓み変形する必要がある。その結果、リンク機構100Aの回転動作により外装部材3に大きな負荷がかかる可能性がある。これに対して、本実施形態のワイヤハーネスWHは、外装部材3に発生する応力を可動構造5によって低減させることができる。
【0044】
図8には、第二リンク120が全開位置にある場合の第二プロテクタ2および電線4が示されている。第二リンク120が半開の位置から全開位置へ向けて回転すると、図8に示すように、外装部材3および電線4には長手方向LDに沿って第二プロテクタ2の側へ向かう力F2が作用する。
【0045】
外装部材3の第二端部32は、力F2によって第二筒部21の内部に向けて押し込まれる。外装部材3は、第二筒部21に対して摺動しながら外側の壁22cに向けて移動することにより、全開位置に向けて回転する第二リンク120に追従する。よって、可動構造5は、第二リンク120が全開位置へ向けて回転するときの外装部材3の応力を低減させることができる。
【0046】
第二リンク120が全閉位置または全開位置から図2に示す半開の位置へ向けて回転する場合、第一プロテクタ1と第二プロテクタ2との間の線長が長くなる。この場合、外装部材3および電線4には、力F1,F2とは反対向きの力が作用する。よって、外装部材3の第二端部32は、第二筒部21に対して第二筒部21から抜け出る方向に摺動する。つまり、外装部材3は、外側の壁22cから遠ざかるように第二筒部21に対して摺動することにより、半開の位置へ向けて回転する第二リンク120に追従する。
【0047】
このように、第二端部32および第二筒部21で構成される嵌合構造は、第二リンク120の回転によって発生する線長の変化を吸収する。よって、本実施形態のワイヤハーネスWHは、リンク機構100Aの回転動作による外装部材3への負荷を軽減させることができる。
【0048】
また、本実施形態のワイヤハーネスWHは、電線4に発生する余長を吸収することができる。図6に示すように、電線4の外周面と第二プロテクタ2の内壁面との間には、隙間G1が設けられている。第二プロテクタ2の内部空間は、第二リンク120の回動に伴って発生する電線4の余長を収容する収容空間として機能する。
【0049】
図6に示すように、第二リンク120が半開の位置にある場合、電線4は、第三筒部22の内部において斜めに延在している。より詳しくは、電線4は、第二筒部21から開口22aへ近づくに従って外側の壁22cへ向かうように、車両上下方向Zに対して傾斜している。このときに、電線4は外側の壁22cに対して傾斜している。電線4と外側の壁22cとの間の隙間は、車両上下方向Zに沿って第二筒部21へ近づくに従って大きくなっている。
【0050】
図7に示すように、第二リンク120が全閉位置にある場合、力F1によって電線4が第二プロテクタ2の内部に押し込まれる。その結果、電線4には余長が発生する。以下の説明では、電線4のうち、第二リンク120の回転によって第二プロテクタ2の内部に押し込まれる部分を余長部分41と称する。第二リンク120の回転によって発生する余長は、余長部分41の長さに相当する。
【0051】
第二プロテクタ2は、電線4の余長部分41を収容する。図7に示すように、電線4は、外側の壁22cに沿って延在するように第三筒部22に収容される。このときに、電線4は、第三筒部22において外側の壁22cと平行に延在することができる。つまり、第二リンク120が全閉位置に向けて回転するときに、電線4は、第二プロテクタ2の内部において外側の壁22cに向けて移動し、かつ湾曲部の角度を変化させる。第二プロテクタ2は、このような電線4の移動、および電線4の屈曲角度の変化を許容できる収容空間を有している。よって、第二プロテクタ2は、電線4の余長部分41を収容して電線4を第二リンク120の回転に追従させることができる。
【0052】
図8に示すように、第二リンク120が全開位置にある場合にも、電線4は、外側の壁22cに沿って延在するように第三筒部22に収容される。つまり、第二プロテクタ2は、第二リンク120が全開位置に向けて回転するときに発生する余長部分41を収容して電線4を第二リンク120の回転に追従させることができる。
【0053】
図7および図8に示すように、第二リンク120が全閉位置および全開位置にある場合には、電線4が内側の壁22bから離間している。従って、第二リンク120が半開の位置に向けて回転する場合、電線4は余長部分41を第二筒部21から繰り出しながら第二リンク120の回転に追従することができる。
【0054】
なお、電線4の余長を収容する収容空間は、第一リンク110の側の配索経路に設けられてもよい。例えば、第一プロテクタ1の内部空間が収容空間として余長部分を収容してもよい。収容空間は、第一リンク110の側の配索経路、および第二リンク120の側の配索経路の何れか一方に設けられてもよく、両方の配索経路に設けられてもよい。
【0055】
以上説明したように、本実施形態のワイヤハーネスWHは、第一プロテクタ1と、第二プロテクタ2と、可撓性の筒状の外装部材3と、電線4と、可動構造5と、を有する。第一プロテクタ1は、固定された第一リンク110に配置されており、かつ開口11cを有する。第二プロテクタ2は、第一リンク110に対して相対回転可能な第二リンク120に配置されており、かつ開口21aを有する。外装部材3は、第一プロテクタ1の開口11cに配置される第一端部31と、第二プロテクタ2の開口21aに配置される第二端部32と、を有する。電線4は、第一プロテクタ1、第二プロテクタ2、および外装部材3のそれぞれに挿通されている。電線4は、第二リンク120の長手方向LDに沿って第二リンク120に配索される。
【0056】
可動構造5は、第二端部32が第二リンク120に対して長手方向LDに沿って相対移動することを許容する構造である。本実施形態のワイヤハーネスWHは、外装部材3の第二端部32を第二リンク120に対して相対移動させることにより、外装部材3に作用する負荷を軽減させることができる。
【0057】
本実施形態の第二プロテクタ2は、第一プロテクタ1の側に向けて延出した第二筒部21を有する。可動構造5は、外装部材3の第二端部32と第二筒部21とが摺動可能に嵌合する嵌合構造である。摺動可能な嵌合構造は、リンク機構100Aの回転動作に対するスムーズな追従性を実現できる。なお、本実施形態の嵌合構造では第二端部32が第二筒部21に挿入されているが、これとは逆に、第二筒部21が第二端部32に挿入されてもよい。
【0058】
外装部材3は、例えば、外装部材3の中心軸線C1の方向に沿った長さを維持しつつ撓み変形するように構成されている。外装部材3が軸方向の剛性を有することで、可動構造5が適切に機能し、外装部材3の負荷が軽減される。
【0059】
[第2実施形態]
図9および図10を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図9および図10は、第2実施形態に係る可動構造を説明する断面図である。第2実施形態において、上記第1実施形態と異なる点は、例えば、第二リンク120に対して第二プロテクタ2がスライド可能な点である。
【0060】
図9および図10を参照して説明するように、第2実施形態の可動構造5は、スライド構造である。より詳しくは、第2実施形態の可動構造5は、第二プロテクタ2を第二リンク120に対して長手方向LDに沿って相対移動可能とするスライド構造である。第二リンク120は、第二プロテクタ2が長手方向LDに沿って相対移動できるように第二プロテクタ2を支持する。第二リンク120には、第二プロテクタ2を長手方向LDに沿ってガイドするガイド溝やガイドレールが設けられてもよい。この場合、第二プロテクタ2には、ガイド溝に対応するリブやガイドレールに対応する凹部が設けられることが好ましい。
【0061】
図9には、第二リンク120が半開の位置にある場合の断面が示されている。第2実施形態のワイヤハーネスWHでは、外装部材3の第二端部32が第二プロテクタ2の第二筒部21に対して固定されている。従って、第2実施形態の外装部材3は、第二プロテクタ2に対して長手方向LDに相対移動不能である。外装部材3は、上記第1実施形態の外装部材と同様に、中心軸線C1の方向に沿った長さを維持しつつ撓み変形することが可能である。第2実施形態において、第二リンク120の側における電線4の固定対象は、例えば、第二プロテクタ2である。電線4は、例えば、第二筒部21に対して固定される。電線4は、第二リンク120の内部において第二リンク120に対して固定されてもよい。
【0062】
長手方向LDにおける第二プロテクタ2の可動範囲は、例えば、切り欠き123aの幅によって規定される。第二リンク120が半開の位置にある場合、第二プロテクタ2の位置は、可動範囲における回転軸140の側の端部である。このときに、電線4は、第二プロテクタ2の内部において傾斜している。より詳しくは、電線4は、第三筒部22の内部において、開口22aへ向かうに従って外側の壁22cへ近づくように、車両上下方向Zに対して傾斜している。
【0063】
図10には、第二リンク120が全閉位置にある場合の断面が示されている。第二リンク120が半開の位置から全閉位置へ向けて回転すると、図10に示すように、外装部材3から第二プロテクタ2に対して力F3が作用する。力F3は、長手方向LDに沿って回転軸140から遠ざかる向きの力である。
【0064】
第二プロテクタ2は、力F3によって矢印AR1で示す向きにスライドする。第二リンク120が全閉位置にある場合の第二プロテクタ2の位置は、例えば、可動範囲における回転軸140から遠い側の端部である。第二プロテクタ2の可動範囲は、第二リンク120が半開の位置から全閉位置へ回転するときの線長の変化を吸収できるように定められている。
【0065】
また、第二プロテクタ2は、第二リンク120が半開の位置から全開位置へ回転するときに長手方向LDにスライドして線長の変化を吸収する。第二プロテクタ2の可動範囲は、第二リンク120が半開の位置から全開位置へ回転するときの線長の変化を吸収できるように定められている。よって、第2実施形態の可動構造5は、第二リンク120が全閉位置と全開位置との間で回転するときに発生する線長の変化を吸収し、外装部材3への負荷を軽減させることができる。
【0066】
図10に示すように、第二リンク120が全閉位置にある場合、電線4は、第二プロテクタ2の内部において傾斜している。第三筒部22における電線4の傾斜方向は、図9に示す傾斜方向と異なっている。より詳しくは、電線4は、第三筒部22の内部において、開口22aへ向かうに従って内側の壁22bへ近づくように、車両上下方向Zに対して傾斜している。図10に示す電線4は、屈曲部23において、中心軸線のなす角度θが鋭角となるように曲がっている。つまり、第二プロテクタ2は、第二リンク120の回転によって発生する電線4の余長を吸収することができる。
【0067】
第二プロテクタ2は、第二リンク120が全開位置にある場合も電線4の余長を吸収することができる。第二リンク120が全開位置にある場合、第二プロテクタ2の内部における電線4の形状は、図10に示す形状と同様となる。このように、第2実施形態のワイヤハーネスWHは、第二プロテクタ2の内部において電線4の湾曲形状を変化させることにより電線4の余長を吸収する。よって、第2実施形態のワイヤハーネスWHは、第二リンク120が全閉位置と全開位置との間で回転するときに発生する電線4の余長を吸収し、第二リンク120に対する電線4の追従性を向上させることができる。
【0068】
以上説明したように、第2実施形態の可動構造5は、第二プロテクタ2を第二リンク120に対して長手方向LDに沿って相対移動可能とするスライド構造である。このようなスライド構造は、リンク機構100Aの回転動作による外装部材3への負荷を軽減させることができる。
【0069】
なお、第1実施形態および第2実施形態のワイヤハーネスWHが適用されるリンク機構100Aは、ドア150を開閉させる機構には限定されない。リンク機構100Aは、車両100に搭載される機構には限定されない。
【0070】
上記の各実施形態に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0071】
1:第一プロテクタ、 2:第二プロテクタ、 3:外装部材、 4:電線
5:可動構造
11:第一筒部、 11a:第一直線部、 11b:第二直線部
11c,11d:開口
21:第二筒部、 21a:開口
22:第三筒部、 22a:開口、 22b:内側の壁、 22c:外側の壁
23:屈曲部
31:第一端部、 32:第二端部
41:余長部分
100:車両、 100A:リンク機構、 110:第一リンク
120:第二リンク、 120a:基部、 120b:先端部
121:内部空間、 122:底壁、 123:第一側壁、 123a:切り欠き
124:第二側壁
130:第三リンク
140:回転軸、 150:ドア、 160:車体、 170:回転軸
WH:ワイヤハーネス
X:車両前後方向、 Z:車両上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10