(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】密閉型電池およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/169 20210101AFI20240723BHJP
H01M 50/103 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/15 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/184 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/188 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/55 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240723BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20240723BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20240723BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20240723BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M50/169
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/184 A
H01M50/188
H01M50/193
H01M50/55 101
H01M50/588
H01M50/593
H01G11/74
H01G11/78
H01G11/84
(21)【出願番号】P 2022111153
(22)【出願日】2022-07-11
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】前田 仁史
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-054964(JP,A)
【文献】国際公開第2012/043578(WO,A1)
【文献】特開平07-183009(JP,A)
【文献】特開2017-142929(JP,A)
【文献】特開2019-084540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/50-50/598
H01G 11/00-11/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する電極体と、
開口を有し、前記電極体を収容する電池ケースと、
端子装着孔を有し、前記開口を封口する封口板と、
前記電池ケースの内部で前記電極と接続される電極体接続部と、前記端子装着孔に挿通される軸部と、前記封口板の外面に露出する外部接続部と、を有する集電端子と、
前記封口板の前記外面と前記外部接続部とを絶縁する樹脂製の絶縁材と、
前記電池ケースと前記封口板との嵌合部に形成されたレーザ溶接部と、
少なくとも前記嵌合部と前記絶縁材とが最も近接する領域において、前記絶縁材の周縁に設けられた遮蔽部と、
を備え、
前記遮蔽部は、
前記封口板の前記外面において、前記嵌合部と前記絶縁材との間に立設された第1遮蔽部と、
前記第1遮蔽部から前記絶縁材に向かって延び、前記絶縁材の表面の一部を覆う第2遮蔽部と、
を有する、密閉型電池。
【請求項2】
前記封口板と前記集電端子と前記絶縁材とがインサート成形されている、
請求項1に記載の密閉型電池。
【請求項3】
前記遮蔽部が絞り加工部であり、前記封口板と一体に設けられている、
請求項1または2に記載の密閉型電池。
【請求項4】
前記第2遮蔽部が、前記第1遮蔽部から延び、前記絶縁材の側に折り曲げられた折り曲げ部である、
請求項1または2に記載の密閉型電池。
【請求項5】
前記嵌合部が略矩形状で、
前記遮蔽部が、少なくとも前記嵌合部の長辺部分と前記絶縁材とが対向する領域に設けられている、
請求項1または2に記載の密閉型電池。
【請求項6】
電極を有する電極体と、
開口を有し、前記電極体を収容する電池ケースと、
端子装着孔を有し、前記開口を封口する封口板と、
前記電池ケースの内部で前記電極と接続される電極体接続部と、前記端子装着孔に挿通される軸部と、前記封口板の外面に露出する外部接続部と、を有する集電端子と、
前記封口板の前記外面と前記外部接続部とを絶縁する樹脂製の絶縁材と、
前記電池ケースと前記封口板との嵌合部に形成されたレーザ溶接部と、
少なくとも前記嵌合部と前記絶縁材とが最も近接する領域において、前記絶縁材の周縁に設けられた遮蔽部と、を備え、
前記遮蔽部は、
前記封口板の前記外面において、前記嵌合部と前記絶縁材との間に立設された第1遮蔽部と、
前記第1遮蔽部から前記絶縁材に向かって延び、前記絶縁材の表面の一部を覆う第2遮蔽部と、を有する、密閉型電池の製造方法であって、
前記封口板に、前記外面から立ち上がる絞り加工部を形成する封口板加工工程と、
前記絞り加工部の一部を前記絶縁材の側に折り曲げる折り曲げ工程と、
前記折り曲げ工程の後、前記電池ケースの内部に前記電極体を収容し、前記嵌合部をレーザ溶接するレーザ溶接工程と、
を含む、密閉型電池の製造方法。
【請求項7】
前記封口板加工工程と前記折り曲げ工程との間に、前記絞り加工部を形成した前記封口板に前記集電端子と前記絶縁材とをインサート成形してアッセンブリ部品を作製するインサート成形工程をさらに含む、
請求項6に記載の密閉型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型電池およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電極を有する電極体と、開口を有しかつ上記電極体を収容する電池ケースと、端子装着孔を有しかつ上記開口を封口する封口板と、一端が上記電池ケースの内部で上記電極と接続され、他端が上記端子装着孔に挿通されて上記封口板の外部に引き出された集電端子と、上記封口板と上記集電端子とを絶縁する樹脂製の絶縁部材と、を備える密閉型電池が知られている。これに関連する従来技術文献として、特許文献1~6が挙げられる。
【0003】
例えば特許文献1には、電池ケースの開口に封口板を嵌合して、嵌合部をレーザ溶接する際に、絶縁材の近傍を溶接痕が電池ケースの外側面にまで及ぶように溶接することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-111573号公報
【文献】特開2021-086813号公報
【文献】特開2005-116208号公報
【文献】特開2016-087616号公報
【文献】特開2017-111896号公報
【文献】特開2019-084540号公報
【文献】特開2013-054964号公報
【文献】国際公開2012/043578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の高エネルギー密度化された電池では、封口板に設けられた集電端子と嵌合部との間隔が狭く、レーザ溶接する個所が絶縁材と近接している。また、レーザ溶接する際に、例えばワークの姿勢の変化等で、レーザの入射角度が多少ずれることがある。これにより、レーザの反射光が絶縁材に当たってしまうことがある。さらに、レーザ溶接時には、溶接個所から高温の溶融金属が微粒子(所謂、スパッタ)となって発生し、ヒュームと共に周囲に飛散することもある。これにより、絶縁材が焼け焦げてしまうことがある。本発明者の検討によれば、その結果、絶縁材が劣化して、絶縁材の絶縁性が低下したり電池の気密性が低下したりする虞があった。したがって、レーザ溶接時に絶縁材を保護することが求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、レーザ溶接時の絶縁材の劣化が抑えられた密閉型電池およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、電極を有する電極体と、開口を有し、上記電極体を収容する電池ケースと、端子装着孔を有し、上記開口を封口する封口板と、上記電池ケースの内部で上記電極と接続される電極体接続部と、上記端子装着孔に挿通される軸部と、上記封口板の外部に露出する外部接続部と、を有する集電端子と、上記封口板の外面と上記外部接続部とを絶縁する樹脂製の絶縁材と、上記電池ケースと上記封口板との嵌合部に形成されたレーザ溶接部と、少なくとも上記嵌合部と上記絶縁材とが最も近接する領域において、上記絶縁材の周縁に設けられた遮蔽部と、を備える密閉型電池が提供される。上記遮蔽部は、上記封口板の上記外面において、上記嵌合部と上記絶縁材との間に立設された第1遮蔽部と、上記第1遮蔽部から上記絶縁材に向かって延び、上記絶縁材の表面の一部を覆う第2遮蔽部と、を有する。
【0008】
上記構成によれば、レーザ溶接時にレーザの反射光が絶縁材の側に照射されても、第1遮蔽部が壁となって反射光をブロックできる。このため、例えばレーザ溶接する個所が絶縁材と近接していたり、レーザ溶接する際にレーザの入射角度が多少ずれたりしても、絶縁材にレーザの反射光が当たりにくくなる。また、レーザ溶接時にスパッタが絶縁材の上方に飛散しても、第2遮蔽部が絶縁材のカバーとなって絶縁材と飛散したスパッタとの接触を避けることができる。したがって、絶縁材の焼け焦げを防止でき、絶縁材の絶縁性の低下や電池の気密性の低下を抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る密閉型電池を模式的に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、折り曲げ工程を説明するための
図3対応図である。
【
図6】
図6は、レーザ溶接工程における嵌合部の近傍を表す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、ここで開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下では、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0011】
なお、本明細書において「電池」とは、電気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイス全般を指す用語であって、一次電池と二次電池とを包含する概念である。また、本明細書において「二次電池」とは、電解質を介して正極と負極の間で電荷担体が移動することによって繰り返し充放電が可能な蓄電デバイス全般をいう。電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。かかる二次電池は、リチウムイオン二次電池やニッケル水素電池等のいわゆる蓄電池(化学電池)の他に、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)等も包含する。以下では、リチウムイオン二次電池を対象とした場合の実施形態について説明する。
【0012】
<密閉型電池100>
図1は、密閉型電池100の斜視図である。
図2は、密閉型電池100の構成を説明する分解斜視図である。なお、以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表す。また、図面中の符号X、Y、Zは、密閉型電池100の短辺方向、長辺方向、上下方向を示す。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、密閉型電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0013】
図2に示すように、密閉型電池100は、外装体10と、電極体20と、集電端子30と、絶縁材40と、を備えている。図示は省略するが、密閉型電池100は、ここではさらに電解液を備えている。なお、
図2では、外装体10の封口板15に集電端子30と絶縁材40とがインサート成形されたアッセンブリ部品(以下、蓋アッセンブリ15Aと言う。)と、その他の部品とを分離して図示している。さらに
図2では、一方側(
図2の右側)の電極に関して、封口板15と集電端子30と絶縁材40とを分離して図示している。
【0014】
外装体10は、電池ケース11と、封口板(蓋体)15と、を備えている。
図1に示すように、外装体10は、ここでは扁平な直方体形状(角型)の外形を有する。外装体10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。外装体10(電池ケース11および封口板15)は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄、鉄合金等からなっている。外装体10は、ここではアルミニウム製である。
【0015】
電池ケース11は、
図2に示すように、電極体20と電解液とを収容する筐体である。電池ケース11は、上面に開口12を有する有底かつ角型の容器である。開口12は略矩形状である。電池ケース11は、
図1に示すように、長辺および短辺を有する底壁11aと、底壁11aの長辺から上方に延び相互に対向する一対の長側壁11bと、底壁11aの短辺から上方に延び相互に対向する一対の短側壁11cと、を備えている。底壁11aは、略矩形状である。なお、本明細書において「略矩形状」とは、完全な矩形状(長方形状)に加えて、例えば、矩形状の長辺と短辺とを接続する角部がR状になっている形状や、角部に切り欠きを有する形状等をも包含する用語である。
【0016】
特に限定されるものではないが、電池ケース11の厚み(板厚)は、耐久性等の観点から、概ね0.5mm以上、例えば1mm以上であるとよく、コストやエネルギー密度の観点から、概ね3mm以下、例えば2mm以下であるとよい。
【0017】
封口板15は、電池ケース11の開口12に嵌合され、開口12を封口するプレート状の部材である。封口板15は、略矩形状である。封口板15の外形は、電池ケース11の開口12よりも小さい。封口板15は、電池ケース11の底壁11aと対向している。封口板15は、密閉型電池100の内部側を向いた内面16と外部側を向いた外面17とを有する。封口板15は、内面16と外面17とを貫通する2つの端子装着孔18を有する。端子装着孔18は、封口板15の長辺方向Yの両端部に1個ずつ設けられている。一方側(
図2の左側)の端子装着孔18は正極用であり、他方側(
図2の右側)の端子装着孔18は負極用である。封口板15の外面17(
図3の上面)には、絶縁材40を覆うように遮蔽部19が設けられている。遮蔽部19については後に詳しく説明する。
【0018】
特に限定されるものではないが、封口板15の厚み(板厚)は、耐久性等の観点から、概ね0.3mm以上、例えば0.5mm以上であるとよく、コストやエネルギー密度の観点から、概ね2mm以下、例えば1.5mm以下であるとよい。封口板15の厚みは、電池ケース11の厚みよりも薄くてもよい。
【0019】
封口板15のうち、絶縁材40と接する部分の少なくとも一部の表面には、粗面化処理がなされている。粗面化処理は、表面に凹凸を形成することによって、表面積を大きくするとともにアンカー効果を高め、絶縁材40との接合性や密着性を向上させる表面処理である。粗面化処理は、例えば、レーザの照射やサンドブラスト等によって行い得る。封口板15の粗面化処理された部分は、粗面化処理部15b(
図3参照)を構成している。粗面化処理部15bは、ここでは端子装着孔18の周辺の内面16と、端子装着孔18の周辺の外面17と、に形成されている。ただし、粗面化処理部15bは、例えば封口板15の絶縁材40と接する部分全てに形成されてもよい。また、粗面化処理部15bは必須ではなく、省略することもできる。
【0020】
電極体20は、電池ケース11の内部に収容されている。電極体20は、例えば、樹脂性の絶縁フィルム(図示せず)等で覆われた状態で、電池ケース11に収容されている。電極体20は、正極シート21と、負極シート22と、正極シート21と負極シート22との間に配置されたセパレータシート(図示せず)と、を備えている。正極シート21および負極シート22は、電極の一例である。電極体20は、ここでは帯状の正極シート21と帯状の負極シート22とが2枚の帯状のセパレータシートを介して積層され、長手方向に捲回されてなる捲回電極体である。ただし、電極体20は、方形状の正極と方形状の負極とが絶縁された状態で積み重ねられてなる積層電極体であってもよい。
【0021】
正極シート21は、正極集電体(例えば、アルミニウム箔)の少なくとも一方の表面上に、正極活物質を含む正極活物質層が固着されている部材である。正極シート21の構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。正極活物質としては、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。一例として、リチウム遷移金属複合酸化物が挙げられる。負極シート22は、負極集電体(例えば、銅箔)の少なくとも一方の表面上に、負極活物質を含む負極活物質層が固着されている部材である。負極シート22の構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。負極活物質としては、従来公知の材料を特に制限なく使用できる。一例として、黒鉛等の炭素材料が挙げられる。セパレータシートは、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁性の樹脂シートである。セパレータシートの構成は特に限定されず、従来公知の電池に用いられているものと同様でよい。
【0022】
正極シート21は、電池ケース11の内部で、一端が長辺方向Yの一方の端部(
図2の左端部)にくるように配置されている。負極シート22は、電池ケース11内で、一端が長辺方向Yの他方の端部(
図2の右端部)にくるように配置されている。なお、
図2では分離状態で図示されているが、密閉型電池100の完成品では、正極シート21および負極シート22には、それぞれ集電端子30が溶接接合されている。
【0023】
集電端子30は、
図1、
図2に示すように、封口板15の長辺方向Yの両端部に1個ずつ設けられている。
図2に示すように、一端が外装体10の内部に配置され、他端が端子装着孔18に挿通されて封口板15の外部に配置されている。正極側の集電端子30は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金からなっている。負極側の集電端子30は、例えば、銅、銅合金からなっている。
【0024】
図3は、
図1のIII-III線断面図である。
図2、
図3に示すように、集電端子30は、台座部31と、電極体接続部32と、軸部33と、外部接続部34と、を有している。台座部31は、
図2に示すように、ここでは四角形の平板状に構成され、水平方向に延びている。台座部31は、端子装着孔18に挿通可能な大きさに構成されている。電極体接続部32は、電池ケース11の内部に配置されている。電極体接続部32はここでは板状に形成され、台座部31の後端から下方に延びている。電極体接続部32の先端は、電池ケース11の内部で電極体20の正極シート21または負極シート22に電気的に接続されている。
【0025】
軸部33は、電極体接続部32と外部接続部34との間に配置され、端子装着孔18に挿通されている。軸部33は、台座部31から上方に延びている。外部接続部34は、外装体10の外面17に露出するように配置されている。外部接続部34は、軸部33の上方に設けられている。外部接続部34は、端子装着孔18に挿通可能な大きさに構成されている。台座部31、軸部33、および外部接続部34の大きさの差により、軸部33は台座部31および外部接続部34に対してくびれたようになっている。
【0026】
集電端子30のうち、絶縁材40と接する部分の少なくとも一部の表面には、封口板15の粗面化処理部15bと同様に、粗面化処理がなされている。集電端子30の粗面化処理された部分は、粗面化処理部30a(
図3参照)を構成している。粗面化処理部30aは、ここでは軸部33と、台座部31の上面と、に形成されている。ただし、粗面化処理部30aは、例えば集電端子30の絶縁材40と接する部分全てに形成されてもよい。また、粗面化処理部15bは必須ではなく、省略することもできる。
【0027】
絶縁材40は、封口板15と集電端子30との導通を防止する部材である。絶縁材40は、樹脂製である。絶縁材40は、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の合成樹脂材料からなっている。合成樹脂材料には無機フィラー等が添加されてもよい。
図3に示すように、絶縁材40は、筒状部41と、第1鍔部42と、第2鍔部43と、を有している。筒状部41と第1鍔部42と第2鍔部43とは一体に形成されている。
【0028】
筒状部41は、端子装着孔18と集電端子30の軸部33との間に位置している。筒状部41は、端子装着孔18と軸部33とを絶縁している。第1鍔部42は、筒状部41から、封口板15の内面16に沿って水平方向に延びている。第1鍔部42は、封口板15の内面16と台座部31とを絶縁している。第2鍔部43は、筒状部41から、封口板15の外面17に沿って水平方向に延びている。第2鍔部43は、封口板15の外面17と外部接続部34とを絶縁している。第1鍔部42および第2鍔部43の外形は、集電端子30の台座部31および外部接続部34の外形よりも大きい。
図1、
図3に示すように、第2鍔部43は、平面視において、集電端子30よりも外側にはみ出し、外部に露出している。
【0029】
蓋アッセンブリ15Aは、
図2に示すように、封口板15に、集電端子30と絶縁材40とがインサート成形(一体成形)で組み付けられたアッセンブリ部品である。封口板15および集電端子30は、封口板15の粗面化処理部15bおよび集電端子30の粗面化処理部30aにより、それぞれ絶縁材40に強固に固定されている。これにより、集電端子30は、台座部31がかしめ加工されることなく、また封口板15と直接接触することなく、封口板15に固定されている。さらに、粗面化処理部15bおよび粗面化処理部30aにおいて、封口板15および集電端子30が絶縁材40に密着することで、端子装着孔18が絶縁材40により封止されている。集電端子30および絶縁材40は、封口板15に移動不能に固定されている。
【0030】
本発明者の検討によれば、封口板15と集電端子30と絶縁材40とをインサート成形で一体化させる場合、密着性を高めるために、封口板15と絶縁材40との接触面積を大きくすることが望ましい。このため、外部接続部34および/または第2鍔部43が従来よりも大きくなり、封口板15の外面17で絶縁材40(第2鍔部43)と嵌合部14とが近接しやすい。したがって、ここに開示される技術を適用することが特に効果的である。
【0031】
図4は、
図1の平面図である。
図3、
図4に示すように、電池ケース11の開口12と封口板15とが嵌め合わされた部分(合わせ目)が、嵌合部14を構成している。
図3に示すように、嵌合部14は、封口板15の外面17側に位置している。嵌合部14では、電池ケース11の内周縁(内側の側壁)と封口板15の外周縁(側壁)とが面一になるように連結されている。
図4に示すように、嵌合部14は、電池ケース11の内周縁および封口板15の外周縁に沿って延びている。嵌合部14は、平面視において、電池ケース11と封口板15との境界に沿って、略環状に連続して形成されている。嵌合部14は、略矩形状である。外装体10は、嵌合部14が全周に亘ってレーザ溶接されることによって、気密に封止(密閉)されている。嵌合部14のレーザ溶接された部分では、電池ケース11の構成金属と封口板15の構成金属とが溶融されて、レーザ溶接部14Wが形成されている。
【0032】
集電端子30および絶縁材40は、ここでは長辺方向Yの両端部にそれぞれ設けられている。嵌合部14は、長辺方向Yの両端部で、絶縁材40と近接している。嵌合部14は、ここでは長辺方向Yの両端部の領域Aにおいて、絶縁材40と最も近接している。領域Aは、絶縁材40の長辺方向Yの長さと略同等(±1mm程度の誤差を許容する。)の長さの範囲である。領域Aは、「嵌合部14と絶縁材40とが最も近接する領域」の一例である。特に限定されるものではないが、領域Aでは、嵌合部14と絶縁材40(第2鍔部43)との距離が、概ね5mm以下、典型的には3mm以下、例えば1~2mm程度でありうる。
【0033】
領域Aでは、絶縁材40の周縁に遮蔽部19が設けられている。すなわち、遮蔽部19は、嵌合部14の長辺部分と絶縁材40とが対向する領域に設けられている。遮蔽部19は、長辺方向Yの両端部において、それぞれ、短辺方向Xの両側から絶縁材40を挟みこむように一対で設けられている。長辺方向Yの一方の端部において、2つの遮蔽部19は、長辺方向Yに沿って平行に延びている。遮蔽部19は、絶縁材40の長さと略同等(+1mm程度まで)の長さである。遮蔽部19は、平面視で直線状(I字状)である。
【0034】
なお、ここでは、領域A以外の部分、例えば長辺方向Yの中央部および短辺方向Xの全体では、嵌合部14と絶縁材40との間に遮蔽部19は設けられていない。ただし、遮蔽部19は、嵌合部14の長辺部分と略同じ長さで連続的に設けられていてもよい。また、例えば集電端子30および絶縁材40が本実施形態よりもさらに長辺方向Yの端側に設けられている場合等には、上記領域Aに加えて、嵌合部14の短辺部分と絶縁材40とが対向する領域にも遮蔽部19を設けてもよい。この場合、遮蔽部19は、長辺方向Yの両端部において、それぞれ絶縁材40を三方向から囲むように設けられることとなる。
【0035】
遮蔽部19は、
図3に示すように、封口板15の外面17から立ち上がる第1遮蔽部19aと、第1遮蔽部19aから絶縁材40に向かって延び、絶縁材40の表面の一部を覆う第2遮蔽部19bと、を有している。遮蔽部19は、ここでは絞り加工部である。遮蔽部19は、封口板15の一部である。遮蔽部19は、封口板15と一体に設けられている。これにより、部品点数を増やすことなく遮蔽部19を設けることができる。遮蔽部19は、典型的には、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、鉄、鉄合金等の金属からなっている。遮蔽部19は、ここでは封口板15と同じ材質からなっている。遮蔽部19は、ここではアルミニウム製である。ただし、遮蔽部19は、封口板15と別体であってもよい。この場合、遮蔽部19は、例えばビス等を用いて封口板15の外面17に取り付けられていてもよい。
【0036】
遮蔽部19は、ここでは折り曲げ可能な可撓性を有する。遮蔽部19の厚み(板厚)は、典型的には電池ケース11および/または封口板15の厚みよりも薄い。遮蔽部19の厚みは、ここでは絶縁材40の第2鍔部43の厚みよりも薄い。ただし、遮蔽部19の厚みは、絶縁材40の第2鍔部43の厚みよりも厚くてもよい。遮蔽部19の厚みは、典型的には正極集電体および/または負極集電体としての金属箔よりも厚い。
【0037】
第1遮蔽部19aは、主にレーザ溶接時にレーザの反射光から絶縁材40を保護するための部分である。第1遮蔽部19aは、ここでは上下方向Zに延びている。第1遮蔽部19aは、封口板15の外面17から垂直に延びている。第1遮蔽部19aの高さ(上下方向Zの長さ)taは、典型的には絶縁材40の厚み以上である。第1遮蔽部19aの高さtaは、ここでは絶縁材40の厚みと略同じである。
【0038】
第2遮蔽部19bは、主にレーザ溶接時に飛散しうるスパッタから絶縁材40を保護するための部分である。第2遮蔽部19bは、ここでは第1遮蔽部19aの上端から絶縁材40の側に折り曲げられている。第2遮蔽部19bは、折り曲げ部である。これにより、部品点数を増やすことなく第2遮蔽部19bを設けることができる。ただし、第2遮蔽部19bは、折り曲げ部ではなく、例えば溶接等で第1遮蔽部19aの上端に接合されていてもよい。
【0039】
第2遮蔽部19bは、ここでは第1遮蔽部19aから略直角に折り曲げられている。ただし、折り曲げの角度(第1遮蔽部19aと第2遮蔽部19bとのなす角のうち、小さい方の角度。)は、必ずしも90°である必要はなく、例えば60°~120°程度であってもよい。断面視において、第2遮蔽部19bは、封口板15の外面17および第2鍔部43の表面と平行に延びている。ただし、第2遮蔽部19bは、折り曲げの角度が90°を超えて、嵌合部14に向かって傾斜していてもよい。第2遮蔽部19bは、ここでは第2鍔部43に接し、第2鍔部43の上面に沿って延びている。第2遮蔽部19bは、外部接続部34(集電端子30)と接触しない長さで設けられている。
【0040】
<密閉型電池100の製造方法>
上記のような密閉型電池100は、例えば、(1)封口板15に絞り加工部19X(
図5参照)を形成する封口板加工工程と、(2)絞り加工部19Xを折り曲げる折り曲げ工程と、(3)嵌合部14をレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を包含する製造方法によって製造できる。ここでは、(1)封口板加工工程と、(2)折り曲げ工程との間に、(1A)インサート成形工程をさらに含んでいる。
【0041】
(1)封口板加工工程では、封口板15の外面17に絞り加工部19X(
図5参照)が形成される。絞り加工部19Xは、例えば、絞り加工(深絞り加工を含む)と呼ばれるプレス加工によって形成される。絞り加工では、プレート状の封口板15に対して内面16側から圧力が加えられ、封口板15が絞り込まれる。絞り加工で形成された絞り加工部19Xには、接合による継ぎ目が存在しない。これにより、所望の形状および厚みで絞り加工部19Xを比較的簡便に形成できる。なお、
図5では封口板15の内面16が平坦であるが、絞り加工部19Xと対向する部分は凹状に凹んでいてもよい。
【0042】
(1A)インサート成形工程では、封口板15に集電端子30と絶縁材40とを一体化してアッセンブリ部品(例えば、蓋アッセンブリ15A)を作製する。蓋アッセンブリ15Aは、封口板15、集電端子30、および絶縁材40をインサート成形することで作製できる。これにより、部品点数を削減できると共に、従来のリベットを用いる方法に比べて導電経路を簡便に形成できる。インサート成形は、例えば、特開2021-086813号公報、特開2021-086814号公報、特許第3986368号公報、特許第6648671号公報等に記載されるように、従来公知の方法に従って行うことができる。例えば、下型と上型とを有する成形金型を用いて、部品セット工程、位置決め工程、上型セット工程、射出成形工程、上型リリース工程、および部品取出工程、を含む方法によって作製できる。
【0043】
部品セット工程では、集電端子30が封口板15の端子装着孔18に挿通された後、封口板15が下型に装着される。位置決め工程では、集電端子30が位置決めされ、固定される。上型セット工程では、上型が、下型とともに封口板15および集電端子30を上下方向に挟むように装着される。射出成形工程では、まず成形金型が加熱される。次に、成形金型に溶融樹脂が注入される。溶融樹脂は上型から端子装着孔18を通って下型に流される。その後、成形金型と成形品とが冷却される。これにより、絶縁材40と封口板15と集電端子30とが一体化される。上型リリース工程では、上型が下型から離間される。部品取出工程では、成形品が下型から取り外される。
【0044】
(2)折り曲げ工程では、絞り加工部19Xの先端部を絶縁材40に向かって折り曲げる。
図5は、本工程を説明するための
図3対応図である。
図5に示すように、絞り加工部19Xは、ここでは絶縁材40の外表面に沿うように折り曲げられる。すなわち、絶縁材40の第2鍔部43と同じ厚みになるように
図5の破線の個所で折り曲げられる。これにより、嵌合部14と絶縁材40との間に立設された第1遮蔽部19aと、第1遮蔽部19aの上端から略直角に折り曲げられた第2遮蔽部19bと、からなる遮蔽部19が形成される。
【0045】
(3)レーザ溶接工程では、電池ケース11の内部に電極体20が収容された後、電池ケース11の開口12に封口板15が嵌合される。これにより、電池ケース11と封口板15とが、面一となるように組み合わされる。次に、電池ケース11と封口板15との合わせ目(嵌合部14)が、レーザで溶接接合される。なお、レーザ溶接に使用するレーザ光の種類やレーザ溶接の条件については、従来と同様よく、特に限定されない。レーザ照射方向と封口板15の外面17(水平面)とのなす角は、典型的には90±10°程度であり、例えば90±5°程度である。嵌合部14が全周に亘って溶接接合されることで、封口板15と電池ケース11とが隙間無く溶着される。
【0046】
図6は、本工程における嵌合部14の近傍を表す縦断面図である。本実施形態では、
図6に太い矢印で示すように、嵌合部14にレーザ光ILが照射される。嵌合部14に照射されたレーザ光ILは、
図6に細い矢印で示すように、嵌合部14で反射して、絶縁材40の側に照射されうる。しかし、本実施形態の遮蔽部19によれば、レーザの反射光が絶縁材40の側に照射されても、第1遮蔽部19aが壁となって反射光がブロックされる。よって、例えば領域Aのように嵌合部14が絶縁材40と近接していたり、あるいは、レーザ光ILの入射角度が多少ずれたりしても、絶縁材40にレーザの反射光が当たりにくくなっている。また、図示は省略するが、スパッタが絶縁材40の上方に飛散しても、第2遮蔽部19bが絶縁材40のカバーとなって、飛散したスパッタと絶縁材40との接触を避けることができる。以上のような効果で、ここに開示される技術によれば、絶縁材40の焼け焦げを防止でき、ひいては絶縁材40の絶縁性の低下や密閉型電池100の気密性の低下を抑えられる。
【0047】
<電池の用途>
密閉型電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。
【0048】
以上、ここで提案される密閉型電池について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。本発明は、他にも種々の形態にて実施することができる。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0049】
以上の通り、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項に記載のものが挙げられる。
項1:電極を有する電極体と、開口を有し、上記電極体を収容する電池ケースと、端子装着孔を有し、上記開口を封口する封口板と、上記電池ケースの内部で上記電極と接続される電極体接続部と、上記端子装着孔に挿通される軸部と、上記封口板の外部に露出する外部接続部と、を有する集電端子と、上記封口板の外面と上記外部接続部とを絶縁する樹脂製の絶縁材と、上記電池ケースと上記封口板との嵌合部に形成されたレーザ溶接部と、少なくとも上記嵌合部と上記絶縁材とが最も近接する領域において、上記絶縁材の周縁に設けられた遮蔽部と、を備え、上記遮蔽部は、上記封口板の上記外面において、上記嵌合部と上記絶縁材との間に立設された第1遮蔽部と、上記第1遮蔽部から上記絶縁材に向かって延び、上記絶縁材の表面の一部を覆う第2遮蔽部と、を有する、密閉型電池。
項2:上記封口板と上記集電端子と上記絶縁材とがインサート成形されている、項1に記載の密閉型電池。
項3:上記遮蔽部が絞り加工部であり、上記封口板と一体に設けられている、項1または2に記載の密閉型電池。
項4:上記第2遮蔽部が、上記第1遮蔽部から延び、上記絶縁材の側に折り曲げられた折り曲げ部である、項1から3のいずれか1つに記載の密閉型電池。
項5:上記嵌合部が略矩形状で、上記遮蔽部が、少なくとも上記嵌合部の長辺部分と上記絶縁材とが対向する領域に設けられている、項1から4のいずれか1つに記載の密閉型電池。
項6:上記密閉型電池の製造方法であって、上記封口板に、上記外面から立ち上がる絞り加工部を形成する封口板加工工程と、上記絞り加工部の一部を上記絶縁材の側に折り曲げる折り曲げ工程と、上記折り曲げ工程の後、上記電池ケースの内部に上記電極体を収容し、上記嵌合部をレーザ溶接するレーザ溶接工程と、を含む、密閉型電池の製造方法。
項7:上記封口板加工工程と上記折り曲げ工程との間に、上記絞り加工部を形成した上記封口板に上記集電端子と上記絶縁材とをインサート成形してアッセンブリ部品を作製するインサート成形工程をさらに含む、項6に記載の密閉型電池の製造方法。
【符号の説明】
【0050】
10 外装体
11 電池ケース
14 嵌合部
14W レーザ溶接部
15 封口板
15A 蓋アッセンブリ
18 端子装着孔
19 遮蔽部
19a 第1遮蔽部
19b 第2遮蔽部
19X 絞り加工部
20 電極体
30 集電端子
34 外部接続部
40 絶縁材
43 第2鍔部
100 密閉型電池