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特許7525566固体高分子電解質組成物及びこれを含む固体高分子電解質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】固体高分子電解質組成物及びこれを含む固体高分子電解質
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0565 20100101AFI20240723BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240723BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/052
H01B1/06 A
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022152838
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2020555487の分割
【原出願日】2019-09-20
(65)【公開番号】P2022186703
(43)【公開日】2022-12-15
【審査請求日】2022-10-25
(31)【優先権主張番号】10-2018-0113256
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ルシア・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェフン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョプ・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ワンス・チャン
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-529663(JP,A)
【文献】特開2002-280075(JP,A)
【文献】特開2003-229019(JP,A)
【文献】国際公開第2000/036017(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M、H01B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンオキシドを含有し、反応可能な二重結合一つを有する高分子(A)、多官能架橋性高分子(B)及びイオン性液体を含み、
前記イオン性液体は、アミド系溶媒及びリチウム塩を含
前記高分子(A)は、全体組成物100重量部に対して5~40重量部で含まれており、
前記高分子(B)は、全体組成物100重量部に対して5~30重量部で含まれており、
前記アミド系溶媒は、N-メチルアセトアミドであり、
前記N-メチルアセトアミドと前記リチウム塩は、40:60~60:40の重量比である、固体高分子電解質組成物。
【請求項2】
前記高分子(A)は、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール4-ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール4-ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレートまたはジプロピレングリコールアリルエーテル(メタ)アクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の単量体由来の重合単位を含む、請求項1に記載の固体高分子電解質組成物。
【請求項3】
前記多官能架橋性高分子(B)は、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ポリエステルジメタクリレート、ジビニルエーテル、エトキシレーテッドビスフェノールAジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の単量体由来の重合単位を含む、請求項1又は2に記載の固体高分子電解質組成物。
【請求項4】
前記イオン性液体は、全体組成物100重量部に対して50~90重量部で含まれる、請求項1からの何れか一項に記載の固体高分子電解質組成物。
【請求項5】
前記リチウム塩は、全体組成物100重量部に対して10~50重量部で含まれる、請求項1からの何れか一項に記載の固体高分子電解質組成物。
【請求項6】
前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiOH、LiOH・HO、LiBOB、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO、CFSOLi、LiC(CFSO、LiCBO、LiTFSI、LiFSI、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種を含む、請求項1からの何れか一項に記載の固体高分子電解質組成物。
【請求項7】
請求項1からの何れか一項に記載の固体高分子電解質組成物を光硬化して形成される、固体高分子電解質。
【請求項8】
前記電解質の厚さは、50~300μmである、請求項に記載の固体高分子電解質。
【請求項9】
前記電解質のイオン伝導度は、25℃基準で1.0×10-4~2.0×10-3S/cmである、請求項又はに記載の固体高分子電解質。
【請求項10】
請求項からの何れか一項に記載の固体高分子電解質を含む、全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年9月20日付け韓国特許出願第10-2018-0113256号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、固体高分子電解質組成物及びこれを含む固体高分子電解質に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、ノートパソコン、スマートフォンに主に用いられている高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池は、リチウム酸化物からなる正極と炭素系の負極、分離膜及び電解質で構成されている。従来は、前記電解質として液体状態の電解質、特に非水系有機溶媒に塩を溶解したイオン伝導性有機液体電解質が主に用いられてきた。しかし、このように液体状態の電解質を用いると、電極物質が劣化し、有機溶媒が揮発する可能性が大きいだけでなく、周囲の温度及び電池自体の温度上昇による燃焼で安全性に問題がある。特に、リチウム二次電池は充放電進行時に、有機溶媒の分解及び/又は有機溶媒と電極との副反応により電池内部にガスが発生し、電池の厚さを膨張させる問題があり、高温貯蔵時にはこのような反応が加速され、ガス発生量がさらに増加することになる。
【0004】
このように持続的に発生したガスは、電池の内圧増加を誘発させて角型電池が特定の方向に膨らんで爆発するか、又は電池の特定面の中心部が変形するなどの安全性低下を招くだけではなく、電池内の電極面で密着性に局部的な差異を発生させ、電極反応が全体の電極面で同一に起こらず、電池の性能が低下する欠点を生じさせる。
【0005】
そこで、このような液体電解質の問題を解決し、これを代替するためのリチウム二次電池用高分子電解質に関する研究が最近まで活発に行われてきた。
【0006】
高分子電解質は大きくゲル型と固体型に区分される。ゲル型高分子電解質は、高分子フィルム内に沸点が高い液体電解質を含浸させ、これをリチウム塩のように固定して伝導度を示す電解質である。固体型高分子電解質はO、N、Sのようなヘテロ元素を含有している高分子にリチウム塩を添加し、解離したリチウムカチオンが高分子内で移動する形態である。
【0007】
ゲル型高分子電解質の場合、液体電解質を多量に含有しているため、純粋な液体電解質と同様のイオン伝導度を有する。しかし、安定性の問題と電池製造上の工程の難しさがそのまま残っているという欠点を有する。
【0008】
一方、固体高分子電解質の場合には、液体電解質が含まれていないため、液漏れに関連した安定性の問題が改善されるだけでなく、化学的、電気化学的安定性が高いという利点がある。しかし、常温でのイオン伝導度が非常に低いため、これを改善するための研究が多く行われている。
【0009】
現在、固体高分子電解質に最も多く用いられている物質は、ポリエチレンオキシド(PEO)であり、固相にもかかわらず、イオンを伝導させる能力を有している。しかし、線型のPEO系高分子電解質の場合には、高い結晶性により常温で伝導度が1.0×10-5S/cmと非常に低いため、リチウム二次電池に適用しにくかった。また、電解質の加工性が良くなく、機械的強度が十分ではなく、5V未満の低い電圧安定性を示すなど、これを電池に応用して満足するに足る性能を具現することは困難な実情である。
【0010】
このような問題を解決するために混合高分子電解質、相互貫入ネットワーク高分子電解質、不織布固体高分子電解質などの様々な物質を開発し、電池に適用しようとする試みがあったが、依然として低いイオン伝導度と機械的強度及び狭い駆動電圧範囲の問題を有している。
【0011】
したがって、固体高分子電解質は必須に高いイオン伝導度、適切な機械的強度及び広い駆動電圧範囲を有するのはもちろんのこと、電池の駆動安定性を確保するために、最小限の溶媒を含まなければならない必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国公開特許第2003-0097009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明者らは、前記問題を解決しようと多角的に研究を行った結果、アルキレンオキシドを含有し、反応可能な二重結合一つを有する高分子(A)、多官能架橋性高分子(B)及びアミド系溶媒及びリチウム塩を含むイオン性液体を含む固体高分子電解質組成物を光硬化して固体高分子電解質を製造する場合、電解質のイオン伝導度が向上し、機械的特性、難燃性及び電気化学的安定性が向上することを確認し、本発明を完成した。
【0014】
したがって、本発明の目的は、前記の効果を有する固体高分子電解質を提供し、これを含めて性能が向上した全固体電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、
アルキレンオキシドを含有し、反応可能な二重結合一つを有する高分子(A)、多官能架橋性高分子(B)及びイオン性液体を含み、前記イオン性液体は、アミド系溶媒及びリチウム塩を含む固体高分子電解質組成物を提供する。
【0016】
本発明の一具体例は、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール4-ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール4-ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレートまたはジプロピレングリコールアリルエーテル(メタ)アクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の単量体由来の重合単位を含む。
【0017】
本発明の一具体例は、前記多官能架橋性高分子(B)がポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ポリエステルジメタクリレート、ジビニルエーテル、エトキシレーテッドビスフェノールAジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の単量体由来の重合単位を含む。
【0018】
本発明の一具体例は、前記アミド系溶媒がN-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、及びヘキサメチルホスホリックトリアミドからなる群より選択された一つ以上を含む。
【0019】
本発明の一具体例は、前記高分子(A)が全体組成物100重量部に対して5~40重量部で含まれる。
【0020】
本発明の一具体例は、前記高分子(B)が全体組成物100重量部に対して5~30重量部で含まれる。
【0021】
本発明の一具体例は、前記イオン性液体が全体組成物100重量部に対して50~90重量部で含まれる。
【0022】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩が全体組成物100重量部に対して10~50重量部で含まれる。
【0023】
本発明の一具体例は、前記アミド系溶媒とリチウム塩が40:60~60:40の重量比である。
【0024】
本発明の一具体例は、前記リチウム塩がLiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiOH、LiOH・HO、LiBOB、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO、CFSOLi、LiC(CFSO、LiCBO、LiTFSI、LiFSI、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種を含む。
【0025】
また、本発明は、
上述の固体高分子電解質組成物を光硬化して形成される固体高分子電解質を提供する。
【0026】
本発明の一具体例は、前記電解質の厚さが50~300μmである。
【0027】
本発明の一具体例は、前記電解質のイオン伝導度が25℃基準で1.0×10-4~2.0×10-3S/cmである。
【0028】
また、本発明は、
固体高分子電解質を含む全固体電池を提供する。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る固体高分子電解質組成物を光硬化して形成される固体高分子電解質は、イオン伝導度が向上し、高い機械的安定性と難燃性及び電圧安定性を示し、全固体電池に効果的に適用することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例1に係る固体高分子電解質の難燃特性測定イメージを示す。
図2】本発明の比較例1に係る固体高分子電解質の難燃特性測定イメージを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、本発明は様々な異なる形態で具現されることができ、本明細書に限定されない。
【0032】
本明細書及び請求の範囲に使われた用語や単語は通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるとの原則に即して、本発明の技術的な思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0033】
本発明において使用した用語は、単に特定実施例を説明するために使われたもので、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明らかに異なる意味を持たない限り、複数の表現を含む。本発明において「含む」又は「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定し、一又はそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないものと理解されなければならない。
【0034】
〔固体高分子電解質組成物〕
本発明は、イオン伝導度が高く、機械的物性及び難燃性に優れた固体高分子電解質組成物及び固体高分子電解質に関し、アルキレンオキシドを含有し、反応可能な二重結合一つを有する高分子(A)、多官能架橋性高分子(B)及びイオン性液体を含み、前記イオン性液体は、アミド系溶媒及びリチウム塩を含む固体高分子電解質組成物、及びこれを光硬化して形成される固体高分子電解質を提供する。
【0035】
従来のポリエチレンオキシドを適用した高分子電解質の場合、高分子構造の結晶性が高いためイオン伝導度が低いという限界を有していた。しかし、本発明の一具体例に係る高分子電解質は、アルキレンオキシドを含有し、反応可能な二重結合一つを有する高分子(A)と多官能架橋性高分子(B)が架橋された高分子を適用し、アミド系溶媒とリチウム塩を含むイオン性液体を含むことによって難燃特性を示し、フリースタンディング(free-standing)可能な機械的物性を示す。また、電解質の結晶性が低くなり、これにより、高分子鎖の流動性が向上するだけでなく、高分子の誘電率が増加して、より多くのリチウムイオンを解離し、従来のポリエチレンオキシド系高分子よりも高いイオン伝導度を示すことができる。
【0036】
したがって、本発明に係る固体高分子電解質は、アルキレンオキシドを含有し、反応可能な二重結合一つを有する高分子(A)、多官能架橋性高分子(B)及びイオン性液体を含み、前記イオン性液体は、アミド系溶媒及びリチウム塩を含む固体高分子電解質組成物を用いて製造することができる。
【0037】
前記高分子(A)は、エチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート[EGME(M)A]、エチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート[EGPE(M)A]、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート[DEGME(M)A]、ジエチレングリコール2-エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート[DEGEHE(M)A]、ポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート[PEGME(M)A]、ポリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート[PEGEE(M)A]、ポリエチレングリコール4-ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリレート[PEGNPE(M)A]、ポリエチレングリコールフェニルエーテル(メタ)アクリレート[PEGPE(M)A]、エチレングリコールジシクロペンテニルエーテル(メタ)アクリレート[EGDCPE(M)A]、ポリプロピレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート[PPGME(M)A]、ポリプロピレングリコール4-ノニルフェニルエーテル(メタ)アクリルレートまたはジプロピレングリコールアリルエーテル(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物からなる群より選択された1種の単量体由来の重合単位を含む。前記単量体由来の重合単位はポリマーを構成する一部分であって、ポリマー分子構造内に特定の単量体由来の一部分を意味する。例えば、アクリロニトリル由来の重合単位はポリマー分子構造内でアクリロニトリル由来の一部分を意味する。
【0038】
前記高分子(A)は、分子内の反応可能な二重結合を1つだけ含んで、後述する架橋性高分子との過度な架橋を防止することができる。もし、分子内の反応可能な二重結合が2つ以上である場合、高分子(A)に比べて含まれるエチレンオキシドの割合が減少することで、固体高分子電解質のイオン伝導度が減少する場合がある。
【0039】
前記高分子(A)は、全体組成物100重量部に対して5~40重量部で含まれることができる。5重量部未満である場合、高分子(A)内に含まれるエチレンオキシドの割合が減少することで、電解質のイオン伝導度が減少する場合があり、40重量部を超える場合、相対的に高分子(B)の含有量が減少し、十分な架橋を行うことができず、電解質の機械的物性が減少するか、又はリチウム塩の含有量が制限されて電解質のイオン伝導度が減少する場合があるので、前記範囲で適切に調節する。
【0040】
前記高分子(B)は、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジビニルベンゼン、ポリエステルジメタクリレート、ジビニルエーテル、エトキシレーテッドビスフェノールAジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールエトキシレートテトラアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の単量体由来の重合単位を含む。高分子(B)は、分子内の反応可能な二重結合を2つ以上含んでいるので、本発明に係る固体高分子電解質組成物に含まれる各高分子間の架橋を可能とする。
【0041】
前記高分子(B)は、全体組成物100重量部に対して5~30重量部で含まれることができる。5重量部未満である場合、電解質組成物の十分な架橋が難しく電解質の機械的物性が減少する場合があり、30重量部を超える場合、相対的に高分子(A)の含有量が減るか、又はリチウム塩の含有量が制限されて電解質のイオン伝導度が減少する場合がある。
【0042】
本発明に係る固体高分子電解質組成物は、イオン性液体を含み、前記リチウム塩はアミド系溶媒とリチウム塩を含むことができる。
【0043】
前記イオン性液体は、カチオンとアニオンからなっているイオン性塩(ionic saltsまたはmolten salts)である。塩化ナトリウムのようにカチオンと非金属アニオンからなるイオン性化合物は、通常、イオン性液体と呼ばれ、800℃以上の高温で溶けるものとは異なり、100℃以下の温度で液体として存在する。特に、常温で液体として存在するイオン性液体を常温イオン性液体(room temperature ionic liquid、RTIL)という。
【0044】
イオン性液体は、一般的な液体電解質に比べて不揮発性、非毒性、不燃性であり、優れた熱的安定性、イオン伝導性を有している。また、極性が大きく無機及び有機金属化合物をよく溶解させ、広い温度範囲で液体として存在する独特な特性を有するので、イオン性液体を構成するカチオンとアニオンの構造を変化させ、様々な特性を得ることができる利点を活用して触媒、分離、電気化学などの広範囲な化学分野に応用されている。
【0045】
前記イオン性液体は、全体組成物100重量部に対して50~90重量部で含まれることができ、リチウム塩をさらに含み、いわゆる「溶媒和イオン性液体(solvated ionic liquid)」を形成することができる。もし、イオン性液体が50重量部未満である場合、イオン性液体にリチウム塩を十分に溶解させることができないか、又は電解質全体のイオン伝導度が減少する場合があり、90重量部を超える場合は、前記高分子(A)または高分子(B)の相対的な含有量が減少し、電解質の機械的物性が悪くなるか、又は全固体電池の固形分含有量が減少する場合があり、過剰量のイオン性液体が残留して完全な固体電解質の具現が困難であるので、前記範囲で適切に調節する。
【0046】
前記リチウム塩は、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割をすることができる。前記リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiOH、LiOH・HO、LiBOB、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO、CFSOLi、LiC(CFSO、LiCBO、LiTFSI、LiFSI、LiClO、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種であってもよく、これに制限されない。
【0047】
前記リチウム塩の含有量は、全体電解質組成物100重量部に対して10~50重量部、好ましくは20~50重量部、より好ましくは30~50重量部で含まれることができる。もし、10重量部未満で含まれる場合、その含有量が低いため、電解質のイオン伝導度が低くなる場合があり、50重量部以上含まれる場合、高分子電解質内ですべてのリチウム塩が解離せず、結晶状態で存在してイオン伝導度に寄与せず、むしろイオン伝導性を妨害する役割をしてイオン伝導度が低下する場合があり、相対的に高分子の含有量が減って固体高分子電解質の機械的強度が弱くなる可能性があるので、前記範囲で適切に調節する。
【0048】
アミド系溶媒は、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、2-ピロリジノン、ε-カプロラクタム、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、及びヘキサメチルホスホリックトリアミドからなる群より選択された一つ以上を含むことことができ、好ましくはN-メチルアセトアミド(NMAC)であってもよい。前記アミド系溶媒は、従来の電解質の製造に用いられるスクシノニトリルに比べて熱的安定性に優れ、電池の負極との安定性も向上した電解質の製造が可能な利点がある。
【0049】
本発明の一実施例において、前記イオン性液体に含まれるアミド系溶媒とリチウム塩は40:60~60:40の重量比で含まれることができ、好ましくは45:55~55:45の重量比で含まれることができる。もし、アミド系溶媒が前記範囲未満で含まれる場合、アミド系溶媒を含むことによって具現される電解質の難燃特性が減少する場合があり、前記範囲を超える場合、相対的に少ないリチウム塩の含有量で電解質のイオン伝導度が減少する場合がある。
【0050】
一実施例に係る高分子電解質の優れたイオン伝導度を示すことができる。具体的には、前記高分子電解質のイオン伝導度は25℃基準で1.0×10-4~2.0×10-3S/cmであってもよい。前記範囲以上のイオン伝導度を有するとき、本発明に係る電解質を含む全固体電池の安定した駆動が可能である。
【0051】
本発明の一実施例に係る前記電解質の厚さは、50~300μmであることが好ましい。前記電解質の厚さが薄いほどエネルギー密度を向上させることができ、イオン伝導度を高めることができるが、厚さが50μm未満である場合、電解質の適切な機械的強度を確保できないという問題があるので、前記範囲内で適切に調節する。
【0052】
〔固体高分子電解質の製造方法〕
本発明に係る一実施例では、前記固体高分子電解質の製造方法を提供する。前記電解質の製造方法は特に制限されず、当業界において公知の方法を用いることができる。
【0053】
前記製造方法は、(1)アミド系溶媒にリチウム塩を混合する段階;(2)アルキレンオキシドを含有し、反応可能な二重結合一つを有する高分子(A)及び多官能架橋性高分子(B)を混合する段階;(3)前記の段階(1)及び段階(2)で準備した物質を混合する段階、及び(4)段階(3)の混合物を光硬化して固体高分子電解質を得る段階;を含む。前記製造方法で高分子(A)及び多官能架橋性高分子(B)は、フリーラジカル重合反応を経てランダム共重合体を形成し、光又は熱硬化による架橋反応を起こすことになる。好ましくは、段階(4)の前に混合物を窒素パージング(purging)する過程を経ることができる。
【0054】
前記硬化過程が光硬化で進行されるときには、さらに光開始剤を含んで進行することができ、DMPA(2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(2,2-dimethoxy-2-phenylacetophenone))、HOMPP(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(2-hydroxy-2-methylpropiophenone))、LAP(フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(Lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate))、IRGACURE 2959(1-[4-(2-Hydroxyethoxy)-phenyl]-2-hydroxy-2-methyl-1-propane-1-one)からなる群より選択された1種以上の光開始剤をを含むことができ、好ましくはHOMPP(2-hydroxy-2-methylpropiophenone)を用いることができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記光開始剤は、紫外線照射によってラジカルを形成することができるもので、もし光開始剤の濃度が低すぎると、光重合反応が効率的に進行されないため、高分子電解質が不完全に形成され、光開始剤の濃度が高すぎると光重合反応があまりにも急激に進行されるため、高分子電解質の均一性が落ち、応用性に制限を伴うことがあるので、所望の電解質の物性に応じて適正量を用いることができる。
【0055】
前記光硬化は、電解質組成物に紫外線(UV)を照射することによって行われることができる。この場合、非常に短時間で硬化が成されることができる利点がある。前記電解質組成物に照射される紫外線の波長は254~360nmである紫外線であってもよい。紫外線は可視光線の紫色よりも波長の短い光線で、略語ではUV(Ultraviolet rays)であり、波長が長い紫外線A(320nm~400nm)、波長が中間である紫外線B(280nm~300nm)、波長が短い紫外線C(100nm~280nm)に分けられる。前記電解質組成物に紫外線を照射するとき、紫外線の照射時間は5~30分であってもよい。ただし、照射される紫外線(UV)の強さに応じて、紫外線(UV)の照射時間は変わることがある点で、紫外線(UV)の照射時間は前記範囲に限定されない。
【0056】
本発明に係る電解質の製造方法は一容器反応でin-situ重合が可能であり、工程が容易な利点がある。
【0057】
〔全固体電池〕
本発明のまた他の一実施例では、前記の製造方法により製造された固体高分子電解質及び電極を含む全固体電池を提供する。
【0058】
本発明で提示する全固体電池は、前記提示したように、固体高分子電解質の構成を限定し、これを構成する他の要素、すなわち正極及び負極は本発明に特に限定せず、下記説明に従う。
【0059】
全固体電池の負極はリチウム金属を単独で用いるか、又は負極集電体上に負極活物質が積層されたものを用いる。
【0060】
このとき、負極活物質はリチウム金属、リチウム合金、リチウム金属複合酸化物、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、及びこれらの組み合わせからなる群より選択された1種が可能である。このとき、リチウム合金は、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Al及びSnから選択される少なくとも一つの金属からなる合金を用いることができる。また、リチウム金属複合酸化物は、リチウムとSi、Sn、Zn、Mg、Cd、Ce、Ni及びFeからなる群より選択されたいずれか一つの金属(Me)酸化物(MeO)であり、一例として、LiFe(0<x≦1)またはLiWO(0<x≦1)であってもよい。
【0061】
ここに加えて、負極活物質は、SnMe1-xMe'(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me':Al、B、P、Si、周期表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi及びBiなどの酸化物などを用いることができ、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系負極活物質を単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0062】
また、負極集電体は、全固体電池に化学的変化を誘発することなく、かつ導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを用いることができる。また、前記負極集電体は正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、箔、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を用いることができる。
【0063】
本発明に係る全固体電池の正極は特に限定せず、公知の全固体電池に用いられる材料であってもよい。
【0064】
電極が正極の場合は正極集電体であり、負極の場合は負極集電体である。
【0065】
正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発することなく、かつ高い導電性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを用いることができる。
【0066】
正極活物質は、リチウム二次電池の用途に応じて異なることができ、LiNi0.8-xCo0.2Al、LiCoMn、LiNiCo、LiNiMn、LiNiCoMn、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiFePO、LiCoPO、LiMnPO、及びLiTi12などのリチウム遷移金属酸化物;CuMo、FeS、CoS、及びMiSなどのカルコゲン化物、スカンジウム、ルテニウム、チタン、バナジウム、モリブデン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの酸化物、硫化物またはハロゲン化物を用いることができ、より具体的には、TiS、ZrS、RuO、Co、Mo、Vなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0067】
正極活物質の形状は特に限定されず、粒子形、例えば球形、楕円形、直方体形などであってもよい。正極活物質の平均粒径は1~50μm範囲内であってもよいが、これに限定されるものではない。正極活物質の平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡により観察される活物質の粒径を測定し、この平均値を計算することにより得ることができる。
【0068】
正極に含まれるバインダーは特に限定されず、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素含有バインダーを用いることができる。
【0069】
バインダーの含有量は、正極活物質を固定することができる程度であれば特に限定されず、正極全体に対して0~10重量%の範囲内であってもよい。
【0070】
正極には、さらに導電材が含まれることができる。導電材は正極の導電性を向上させることができれば特に限定されず、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどを例示することができる。カーボンとしては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維及びフラーレンからなる群より選択されたいずれか一つまたはこれらのうち1種以上が挙げられる。
【0071】
このとき、導電材の含有量は、導電材の種類など他の電池の条件を考慮して選択することができ、例えば、正極全体に対して1~10重量%の範囲内であってもよい。
【0072】
前述の構成を有する全固体電池の製造は本発明で特に限定せず、公知の方法により製造が可能である。
【0073】
一例として、正極及び負極の間に固体電解質を配置させた後、これを圧縮成形してセルを組み立てる。また、高分子電解質の第1の高分子電解質層が正極と接するように配置して製造することができる。
【0074】
前記組み立てられたセルは、外装材内に設置した後、加熱圧縮等により封止する。外装材としては、アルミニウム、ステンレスなどのラミネートパック、円筒形や角形の金属製容器が非常に適している。
【0075】
以下で、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例等により本発明の範囲及び内容が縮小したり制限して解釈されてはならない。なお、以下の実施例を含む本発明の開示内容に基づくと、具体的に実験結果が提示されない本発明を通常の技術者が容易に実施できることは明らかであり、このような変形及び修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【0076】
〔実施例:固体高分子電解質の製造〕
まず、反応容器中で、アミド系溶媒としての、N-メチルアセトアミド(Sigma Aldrich社、以下、NMAC)と、100℃で24時間真空乾燥したリチウム塩であるLiTFSI(Sigma Aldrich社)とを、下記表1の割合で混合し、グローブボックス内で4時間常温撹拌し、イオン性液体を製造した。
【0077】
その後、アルキレンオキシドを含有し、反応可能な二重結合一つを有する高分子(A)としてポリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート(Sigma Aldrich社、Mn:480、以下、PEGMEA)、多官能架橋性高分子(B)としてポリオキシエチレングリコールジアクリレート(Sigma Aldrich社、Mn:700、以下、PEGDA)を、下記表1のようにして、合計2gとなるように前記イオン性液体に投入し、4時間常温撹拌した。
【0078】
次に、光開始剤として全体電解質組成物100重量部に対して1重量部のIrgacure 819(BASF社)を投入し、ボルテックスを用いて撹拌して完全に溶解させ、窒素気体の条件でパージング(purging)しながら残留酸素を除去し、電解質組成物を製造した。
【0079】
前記電解質組成物をテフロン(登録商標)離型フィルムにドクターブレードコーティングし、ブラックライトを用いて1時間紫外線を加えて光重合を行った。紫外線照射を終えた後に前記テフロン(登録商標)離型フィルムでフィルム形態の固体高分子電解質を得た。
【0080】
【表1】
【0081】
〔比較例:固体高分子電解質の合成〕
アミド系溶媒の代わりにスクシノニトリル(Succinonitrile)を下記表2のようにして行ったことを除いては、前記実施例と同様にして電解質を製造した。
【0082】
【表2】
【0083】
〔実験例1:固体高分子電解質のイオン伝導度の評価〕
前記実施例1~3及び比較例1~2で製造された電解質のイオン伝導度は、そのインピーダンスを測定した後、下記数学式1を用いて求めた。
【0084】
測定のために、一定の幅と厚さを有する前記固体高分子電解質のフィルムサンプルを準備した。板状のサンプルの両面にイオン遮断電極(ion blocking electrode)で電子伝導性に優れたサス(SUS)基板を接触させて2032型コインセルを製造した後、サンプル両面の電極により10mVの交流電圧を印加した。このとき、印加される条件で測定周波数1Hz~5MHzの振幅範囲に設定し、BioLogic社VMP3を用いてインピーダンスを測定した。測定されたインピーダンス軌跡の半円や直線が実数軸と合う交点(R)からバルク電解質の抵抗を求め、サンプルの幅と厚さから高分子固体電解質のイオン伝導度を計算し、表3に示した。各サンプルの厚さはインピーダンス測定後、前記コインセルのサス基板及び電解質の厚さからサス基板の厚さを計算して測定した。
【0085】
【数1】
σ:イオン伝導度
:インピーダンス軌跡の実数軸との交点
A:サンプルの広さ
t:サンプルの厚さ
【0086】
【表3】
【0087】
前記表3によれば、本発明に係るアミド系溶媒を含むイオン性液体が適用された固体高分子電解質の場合、スクシノニトリルを適用した比較例の電解質と同様の水準の優れたイオン伝導度を示すことが分かった。
【0088】
〔実験例2:固体高分子電解質の難燃特性の測定〕
本発明に係る固体高分子電解質の難燃特性を確認するために、各成分のサンプルと前記比較例及び実施例により製造された電解質の直径2cm大きさの円形サンプルを準備した。それぞれのサンプルをトーチを用いて燃焼させ、その結果を確認して難燃特性を調べた。図1及び2は、前記実施例及び比較例により製造された電解質の難燃特性を示した結果である。
【0089】
図1及び2をみると、本発明に係る実施例1のアミド系溶媒を含むイオン性液体が適用された固体高分子電解質の場合、火花により燃焼されず、2秒以内に火花が消える自己消火性を示し、優れた難燃特性を示すことが分かったが、アミド系溶媒を含まない比較例1の電解質の場合、トーチ燃焼約5秒後に発火して全てが燃えるまで燃焼されることを確認し、難燃特性が良くないことが分かった。
図1
図2