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特許7525583カーボンナノチューブ構造体およびその生成のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ構造体およびその生成のための方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 10/00 20060101AFI20240723BHJP
   D06M 11/00 20060101ALI20240723BHJP
   D02G 3/16 20060101ALI20240723BHJP
   C01B 32/17 20170101ALI20240723BHJP
   D01F 9/127 20060101ALI20240723BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALI20240723BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20240723BHJP
【FI】
D06M10/00 L
D06M11/00 120
D02G3/16
C01B32/17
D01F9/127
D04H1/4242
D06M101:40
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022203017
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2021000386の分割
【原出願日】2016-02-03
(65)【公開番号】P2023051988
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】62/111,290
(32)【優先日】2015-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514257262
【氏名又は名称】ナノコンプ テクノロジーズ,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャウアー,マーク ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】タウル,エリック シー.
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン,レイチェル
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101451273(CN,A)
【文献】特表2010-534772(JP,A)
【文献】特開2007-119997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0256204(US,A1)
【文献】特開2009-256189(JP,A)
【文献】特開2004-220911(JP,A)
【文献】特表2011-526540(JP,A)
【文献】特開2003-212526(JP,A)
【文献】特開昭61-124677(JP,A)
【文献】特表2011-502925(JP,A)
【文献】特開2002-255520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M10/00-11/84
D06M16/00
D06M19/00-23/18
C01B32/00-32/991
D01F9/08-9/32
D04H1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノファイバー状のマクロ構造を処理する方法であって
(a)複数の実質的に無配向のナノチューブによって定義されているナノファイバー状のマクロ構造を提供する工程;
(b)ナノファイバー状のマクロ構造内のナノチューブを第1の電気的処理に暴露して、電気的に処理されたナノファイバー状のマクロ構造を形成する工程であって
ここで、前記第1の電気的処理は、ナノファイバー状のマクロ構造を第1の電解液に接触させる工程と、全体のアンペア×処理されるナノファイバー状マクロ構造のグラムあたりの処理時間として定量される電気的エネルギーナノファイバー状マクロ構造をさらす工程と、ナノチューブを第1の電気的処理に暴露しながらナノファイバー状のマクロ構造を伸長する工程と、を含む陽極処理であり、ただし、ナノファイバー状のマクロ構造は、ナノファイバー状のマクロ構造内のナノチューブを第1の電気的処理に暴露する前に、300℃~800℃の範囲の温度に加熱されることはない、工程;および
(c)前記電気的に処理をされたナノファイバー状のマクロ構造を第2の電解液に接触させて、電気的に処理されたナノファイバー状のマクロ構造を電気的エネルギーにさらすことにより、電気的に処理をされたナノファイバー状のマクロ構造を陰極処理である第2の電気的処理に暴露する工程、
を含む、
方法。
【請求項2】
ナノファイバー状のマクロ構造を伸長する工程は、本質的に、伸長されたナノファイバー状のマクロ構造内でナノチューブを互いに対して配向させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ナノファイバー状のマクロ構造を提供する工程において、ナノファイバー状のマクロ構造がナノチューブの不織布シートである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ナノファイバー状のマクロ構造を提供する工程において、ナノファイバー状のマクロ構造が糸である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ナノファイバー状のマクロ構造を提供する工程において、ナノチューブが、カーボンナノチューブである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ナノファイバー状のマクロ構造を提供する工程において、ナノチューブが、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、多層ナノチューブ、またはそれらの組み合わせの1つを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
暴露する工程が電気化学セル中で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
電解液が有機電解液である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
暴露する工程が正の電極電位または負の電極電位で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ナノファイバー状のマクロ構造が1またはそれ以上の不純物を含み、そのような不純物がナノファイバー状のマクロ構造の前記電気的処理により洗い流される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
不純物が、非カーボンナノチューブの炭素質汚染物質、炭化水素、触媒、およびそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
触媒が鉄である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電気的に処理され伸長されたナノファイバー状のマクロ構造を回収する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
さらに、ナノファイバー状のマクロ構造を-12未満のH0を有している酸に暴露し伸長する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記酸が、超酸であり、クロロスルホン酸、トリフリン酸、フルオロ硫酸、フルオロアンチモン酸、発煙硫酸、またはそれらの組み合わせの1つを含む、請求項14の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願>
本適用は、2015年2月3日出願の米国仮特許出願第62/111,290号の優先権を主張し、その開示は、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
<政府支援>
本発明は、Contract No.FA8650-11-2-5505の下、米国政
府によって全面的に又は部分的に支援されている。米国政府は本発明の特定の権利を有している。
【0003】
本発明は、ナノ材料、および特に高伸張弾性率、高強度、および高導電率を有するカーボンナノチューブ材料を提供する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
カーボンナノチューブは、高い破損歪み(strain-to-failure)および比較的高い伸張弾性率を含む並外れた引張強度に加えて、優れた導電率も有すると知られている。カーボンナノチューブはまた、疲労、放射線損傷、および熱に高度に耐性があり得る。この目的のために、カーボンナノチューブ材料は、それらの引張強度および導電率の特性のために使用され得る。
【0005】
それらの高い導電率および熱伝導率が要因で、CNT(カーボンナノチューブ)材料は、バッテリー、コンデンサーおよびケーブルを含む、種々様々の電気的適用に使用されている。CNT材料の高い引張強度および引張弾性率によって、CNT材料を、電気的適用を構造要素と統合する多機能システムとして使用することが可能となる。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様は、ナノファイバー状の(nanofibrous)マクロ構造を処理する、および炭素質の汚染物質、炭化水素、触媒、およびこれらの任意の組み合わせなどの、不純物を除去するための方法を提供する。幾つかの実施形態では、処理する方法は、鉄触媒を除去することができる。
【0007】
幾つかの態様によると、該方法は、ナノファイバー状のマクロ構造を提供する工程であって、該ナノファイバー状のマクロ構造が複数のナノチューブによって定義されている工程、ナノファイバー状のマクロ構造内のナノチューブを陽極の電気化学的処理にさらす工程、および陽極の電気化学的処理によってナノファイバー状のマクロ構造から不純物を除去する工程を含むことができる。幾つかの実施形態では、不純物は洗い流され得る。
【0008】
幾つかの実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造は、複数の実質的に無配向のナノチューブによって定義され得、該方法はさらに、ナノファイバー状のマクロ構造をほどいて、伸長する工程を含み、それによって、ナノチューブを実質的に再び束ねて、伸長したナノファイバー状のマクロ構造内で互いに配向させる。
【0009】
幾つかの実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造は、不織布シートまたは糸である。幾つかの実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造はバッキーペーパーである。幾つかの実施形態では、ナノチューブは、カーボンナノチューブ、ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノチューブまたはそれらの組み合わせの1つを含む。例えば、ナノチューブは、単層ナノチューブ、二層ナノチューブ、多層ナノチューブ、またはそれらの組み合わ
せを含むことができる。
【0010】
幾つかの実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造内のナノチューブは、陽極の電気化学的処理に暴露される。幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理は、正の電極電位で電池セル(electrical cell)中で行われる。幾つかの実施形態で
は、ナノファイバー状のマクロ構造は、有機電解液の存在下で陽極の電気化学的処理に暴露される。
【0011】
幾つかの実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造は、回収されて、随意にさらに加工され得る。幾つかの実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造は、酸に暴露され、伸長され得る。幾つかの実施形態では、ハメットの酸度関数スケール(H)で-12未満の値を有している酸が使用され得る。幾つかの実施形態では、ハメットの酸度関数スケール(H)で-12.5未満の値を有している薬剤が使用され得る。
【0012】
他の実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造内のナノチューブは、陽極の電気化学的処理に暴露される前に、最初に伸長され得る。
【0013】
幾つかの実施形態では、酸は超酸である。幾つかの実施形態では、超酸は、クロロスルホン酸、トリフリン酸、フルオロ硫酸、フルオロアンチモン酸、発煙硫酸、またはそれらの任意の組み合わせの1つを含むことができる。
【0014】
幾つかの実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造は、溶液/酸洗浄、陰極処理、更なる陽極処理、高分子の取り込み、またはそれらの任意の組み合わせなどによって後処理を受け得る。
【0015】
本発明の幾つかの態様は、ナノファイバー状のマクロ構造を処理する方法に関し、該方法は、ナノファイバー状のマクロ構造を提供する工程であって、該ナノファイバー状のマクロ構造が複数のナノチューブによって定義されている工程、および陽極の電気化学的処理を使用してナノファイバー状のマクロ構造内のナノチューブをドーピングする工程を含む。幾つかの実施形態では、結果として生じるナノファイバー状のマクロ構造は、導電特性を改善した。
【0016】
幾つかの実施形態では、ナノファイバー状のマクロ構造は、溶液/酸洗浄、陰極処理、更なる陽極処理、高分子の取り込み、またはそれらの任意の組み合わせなどによって後処理され得る。
【0017】
本発明の他の態様は、ナノファイバー状のマクロ構造を処理するシステムに関する。幾つかの実施形態では、システムは、電極、対向電極および電解質溶液を含む電気化学セル、および随意に電極と対向電極との間のセパレーターを含む。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A図1Aは、ナノチューブを生成して、不織布シートとしてナノチューブを収集するためのシステムを例証する。
図1B図1Bは、糸を収集するシステムの一実施形態の概略を例証する。
図2A図2Aは、陰電位を使用して電気化学的に処理されたカーボンナノチューブ材料のSEMを例証する。
図2B図2Bは、陽電位を使用して電気化学的に処理されたカーボンナノチューブ材料のSEMを例証する。
図2C図2Cは、陰電位を使用して電気化学的に処理されたカーボンナノチューブ材料のTGAプロットを例証する。
図2D図2Dは、陽電位を使用して電気化学的に処理されたカーボンナノチューブ材料のTGAプロットを例証する。
図3A図3Aは、本発明の一実施形態に関する陽極処理に応じた重量パーセントでの炭素含量に対するEDXによる鉄含量を例証する。
図3B図3Bは、本発明の一実施形態に関するカーボンナノチューブ材料の陽極処理で増強された導電率を例証する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の記載において、本明細書に開示される本実施形態を徹底的に理解してもらうために、具体的な量、サイズなどの、特定の詳細が明記される。しかしながら、本開示がそのような特定の詳細なしで実行され得ることは当業者に明らかとなる。多くの場合、そのような考察などに関する詳細は、本開示についての完全な理解を得るのに必要ではない及び当業者の技術内にある限り、省略されている。
【0020】
本発明の態様は、適用時に、構成の詳細および以下の記載に明記される又は図面で例証される構成要素の配置に限定されない。本発明の態様は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実施または実行されることが可能である。さらに、本発明の態様は、単独で及び/又は本発明の他の態様との任意の適切な組み合わせで使用され得る。
【0021】
カーボンナノチューブに言及する本明細書の実施形態のいずれかは、例えば、無機または無機質のナノチューブを含む他のチューブ状ナノ構造体で代用するために、本開示の精神および範囲内で修正されてもよい。無機または無機質のナノチューブは、例えば、ナノチューブ構造にヘテロ原子置換を有している、シリコンナノチューブ、ホウ素ナノチューブ、およびカーボンナノチューブを含む。
【0022】
<ナノチューブの合成>
本発明に関する使用のためのナノチューブは、様々なアプローチを使用して作り上げられ得る。現在、ナノチューブを成長させるための複数のプロセスおよびその変形が存在する。それらは以下を含む:(1)大気圧近くで又は高圧で、および約400℃を超える温度で生じることができる一般的なプロセスである、化学蒸着(CVD)、(2)高度に完成されたチューブを生じさせることができる高温プロセスである、アーク放電、および(3)レーザーアブレーション。炭素から合成されたナノチューブに関して以下に言及されているが、他の化合物が、本発明との使用のためのナノチューブの合成に関連して使用され得ることが留意されるべきである。プラズマCVDなどの他の方法も可能である。さらに、ホウ素ナノチューブが、類似した環境ではあるが、異なる化学的前駆体を用いて成長させられ得ることも理解される。
【0023】
作られたカーボンナノチューブ(CNT)は、例えば、シート、糸、粉末、ファイバー、スラリーおよびバッキーペーパーを含む様々な形態で存在することができる。さらに、束ねられたカーボンナノチューブは、どのような長さ、直径、層数、またはキラリティーであってもよい。しかし、幾つかの実施形態では、CNTは、約100マイクロメートルより長い長さを有することができる。例えば、CNTは、約100マイクロメートルより長い、約150マイクロメートルより長い、約200マイクロメートルより長い、約250マイクロメートルより長い、約300マイクロメートルより長い、約350マイクロメートルより長い、約400マイクロメートルより長い、約450マイクロメートルより長い、または約500マイクロメートルより長い長さを有することができる。これ以降、用語「カーボンナノチューブ」または「CNT」は、カーボンナノチューブを指すために交換可能に使用され得ることが留意されるべきである。
【0024】
カーボンナノチューブは、複雑性が増加した階層的形態を有する構造で作られ得る。形
成された一般的な構造は、限定されないが、CNTシート、糸および粉末(例えば、束、ファイバーまたは他の実体)である。そのようなナノファイバー状のマクロ構造は伸長可能である。本明細書で使用されるように、ナノファイバー状のマクロ構造、CNT構造およびCNT材料は、交換可能に使用される。
【0025】
幾つかの態様では、本発明は、ナノチューブを含む適切なナノ構造体を生成すると当該産業で知られている化学蒸着(CVD)プロセスまたは類似した気相熱分解手順を利用することができる。
【0026】
単層(SWNT)、二層(DWNT)、および多層(MWNT)を含むカーボンナノチューブは、本発明の幾つかの実施形態において、ナノスケールの触媒粒子を試薬炭素含有ガス(つまり、高温でのガス状の炭素源)の存在下にさらすことによって成長させられ得る。特に、ナノスケールの触媒粒子は、既存の粒子の追加によって、あるいは有機金属前駆体、またはさらに非金属触媒からの粒子のインサイチュでの合成によって、試薬炭素含有ガスとともに高熱環境へと導入されてもよい。SWNT、DWNT、およびMWNTが成長させられ得るが、特定の例において、SWNTが、ロープ状構造を形成するためのその比較的より高い成長の速度および傾向が要因で選択され得、これは、取り扱い(handling)、熱伝導性、電子的特性、および強度の利点をもたらし得る。しかし、他の実施形態では、DWNTまたは少数の層のナノチューブ(Few Walled Nanotubes)が、それらの強度および導電性のために選択され得る。
【0027】
本発明に関して生成された個々のナノチューブの強度は、約30GPaまたはそれ以上であり得る。強度は、留意されるべきこととして、一般に欠陥の影響を受けやすい。しかしながら、本発明の実施形態に従って作り上げられた個々のカーボンナノチューブの弾性率は、欠陥の影響を受けにくく、約1TPaとすることができる。さらに、一般に構造に敏感なパラメーターであり得る破損歪みは、本発明で使用されるカーボンナノチューブに関して約10%から約25%までの範囲に及び得る。
【0028】
さらに、本発明のナノチューブには、比較的小さな直径が提供され得る。本発明の幾つかの実施形態では、本発明で作り上げられたナノチューブには、約1nmから約数十nmの範囲の直径が提供され得る。
【0029】
特に、CVDに対する成長温度が、例えば、約400℃から約1400℃の範囲の比較的低い範囲であるため、単層(SWNT)、二層(DWCNT)または多層(MWNT)のカーボンナノチューブが成長させられ得る。これらのカーボンナノチューブは、幾つかの実施形態において、既存の粒子の追加によって、あるいは例えば有機金属前駆体、またはさらに非金属触媒からの粒子のインサイツでの合成によって、試薬炭素含有ガス(つまりガス状の炭素源)へと導入された、ナノ構造の触媒粒子から成長させられ得る。幾つかの実施形態では、触媒は鉄を含む。
【0030】
本発明の幾つかの態様によると、気相中のナノチューブの自由流動性の集合体(cloud)または緩やかな分散体が、化学蒸着によってもたらされ得る。ナノチューブは、自己組織化して凝結体(aggregate)を形成することができる。幾つかの実施形態では、CNTは、小さな成長しているナノチューブからの形態の進行によって束に成長することができ、塊へとゲル化することができる。凝結体におけるCNTは、ファンデルワールス力によって一体に保持され得る。幾つかの実施形態では、ナノチューブは、移動式ベルトまたはシリンダー、あるいは回転式アンカーのいずれかの上に堆積させられるような方法で形成され得る。
【0031】
幾つかの実施形態では、ナノチューブは、移動式ベルトまたは回転シリンダー上に堆積
したときに、不織布シートを形成するように統合し、からまされ(matted)得る。代替的に、ナノチューブは、回転式アンカー上に堆積したときに、回転式アンカーから引き出され、紡いで糸にされ得る。
【0032】
糸、不織布シート、または類似した伸長可能なマクロ構造として収集されたナノチューブはまた、当該技術分野で既知の他の手段によって作り上げられ得る。例えば、ナノチューブは、水、界面活性剤溶液、または溶媒系中に分散され得、その後、濾過ドラムまたは濾過膜上に沈殿させられ、ここで、続いてバッキーペーパーとして乾燥されて除去され得る。幾つかの実施形態では、CNTは、幾つかの階層的形態(例えばシート)で作られ、化学的手段、物理的手段、またはそれらの組み合わせを使用して、別の形態(例えば、粒子及び/又はファイバー)に転換し得る。例えば、CNTをそのより高次な形態(CNT凝結体、CNTメッシュまたはCNTマクロ構造など)から分離して、はるかに小さな実体、束または個々のチューブにさえするために、化学化合物が使用され得る。幾つかの実施形態では、化学化合物は、CNTの分離を助けるために軽度の物理的なかき混ぜとともに使用されてもよい。使用され得る機械的なかき混ぜの方法の例としては、限定することなく、振盪、撹拌、及び/又は他の機械的手段が挙げられる。そのようなアプローチは、米国特許公開番号2014-0366773(米国特許第14/244,177号)に記載され、これは、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。その後、この材料は、当該技術分野で既知の製紙技術を使用して、例えば、マクロ的な(macroscopic)シートまたはバッキーペーパーへと加工され得る。同様に、糸として収集されたナノチューブも、溶液から、および当該技術分野で既知のプロセスを使用して生成され得る。
【0033】
ここで図1Aおよび図1Bを参照すると、ナノチューブの成形に使用するための、米国特許第7,993,620号(引用によって本明細書に組み込まれる)に開示されたシステムに類似したシステム(30)が例証されている。システム(30)は、一実施形態において、合成チャンバー(31)を含み得る。合成チャンバー(31)は、一般に、反応ガス(つまりガス状の炭素源)が供給され得る入口端(311)、ナノチューブ(313)の合成が生じ得るホットゾーン(312)、および反応の産物、即ちナノチューブの集合体および排気ガスが、排出して収集され得る、出口端(314)を含む。合成チャンバー(31)は、一実施形態において、炉(316)を通って伸びる石英管、セラミック管またはFeCrAl管(315)を含んでもよい。システム(30)によって生成されたナノチューブは、一実施形態において、個々のナノチューブ、そのようなナノチューブの束、及び/又は交じり合った又は絡み合ったナノチューブであってもよく、それらすべては「不織布」として以下に言及され得る。
【0034】
システム(30)はまた、本発明の一実施形態において、合成チャンバー(31)内から環境への潜在的に危険な浮遊粒子および反応ガスの放出を最小限にするために、実質的に気密(例えば、ガス、空気など)であるように設計されたハウジング(32)を含んでもよい。ハウジング(32)はまた、酸素がシステム(30)へと入り、合成チャンバー(31)に到達するのを防ぐように作用し得る。特に、合成チャンバー(31)内の酸素の存在は、チャンバーの完全性に影響する(つまり、破裂する)場合があり、ナノチューブ(313)の生成を損ないかねない。
【0035】
システム(30)はまた、システム(30)の合成チャンバー(31)内から生成された合成されたナノチューブ(313)を収集するように設計された、ハウジング(32)内に位置する、移動式ベルト(320)を含み得る。特に、ベルト(320)は、その上に収集されたナノチューブが、実質的に連続的な伸長可能な構造(321)、例えば、CNTシートを続いて形成することを可能にするために使用され得る。そのようなCNTシートは、実質的に無配向の不織布ナノチューブ(313)から生成され得、シートとして
扱われるための十分な構造的完全性を備える。ベルト(320)は、一実施形態において、ベルト(320)上に収集されているCNTシート(321)の幅を増大させるために、出口端(314)からのガスの流れに実質的に垂直な方向に前後に移動するように設計され得る。
【0036】
作り上げられたナノチューブ(313)を収集するために、ベルト(320)は、合成チャンバー(31)の出口端(314)に隣接して位置付けられ、それによって、ナノチューブをベルト(320)上に堆積させることが可能となる。一実施形態では、ベルト(320)は、図1Aで例証されるように、出口端(314)からのガスの流れと実質的に平行に位置付けられ得る。代替的に、ベルト(320)は、出口端(314)からのガスの流れと実質的に垂直に位置付けられ、本質的に穴が多く設けられ得ることで、ナノ材料を運ぶガスの流れがベルトを通り抜けることを可能にする。一実施形態では、ベルト(320)は、出口端(314)より実質的に広いシートを生成するために、出口端(314)からのガスの流れと実質的に垂直な方向に左右に移動するように設計され得る。ベルト(320)はまた、従来のコンベヤーベルトに類似した、連続的なループとして設計されてもよく、その結果、ベルト(320)は軸まわりを連続して回転することができ、それによって、CNTの複数の実質的に個別の層がベルト(320)上に堆積されて、シート(321)を形成することができる。その目的のために、ベルト(320)は、一実施形態において、対向する回転要素(322)のまわりでループ状にされ得、電気モーターなどの機械デバイスによって駆動され得る。一実施形態では、機械デバイスは、張力および速度が最適化され得るように、コンピューターまたはマイクロプロセッサーなどの制御システムの使用によって制御され得る。シート(321)の形成におけるCNTの多層の堆積は、本発明の一実施形態に従って、ナノチューブ間の中間層の接触を結果的に最小限にすることができる。具体的には、シート(321)の個々の個別の層におけるナノチューブは、シート(321)の隣接層には伸びない傾向がある。結果として、面に垂直な(normal-to-plane)熱伝導率は、シート(321)を介して最小限にされ得る。
【0037】
交じり合った不織布のナノ材料のCNTシート(321)をベルト(320)から切り離してハウジング(32)から続いて除去するために、ブレード(図示せず)がローラーに隣接して設けられ、その刃先はベルト(320)の表面に接触している。このように、CNTシート(321)がローラーを過ぎてベルト(320)上で回転させられると、ブレードは、ベルト(320)の表面からCNTシート(321)を持ち上げるように作用し得る。代替的な実施形態では、CNTシート(321)を除去するためにブレードが必ずしも使用される必要はない。むしろ、CNTシートの除去は、手動で又は当該技術分野における他の既知の方法で行われ得る。
【0038】
さらに、ブレードの下流にスプール(図示せず)が設けられてもよく、その結果、切り離されたCNTシート(321)は、続いてその上へと方向付けられ、回収するためにスプールに巻きつけられ得る。CNTシート(321)がスプールに巻きつけられると、CNTシート(321)の複数の層が形成され得る。もちろん、CNTシート(321)がその後のハウジング(32)からの除去のために収集され得る限り、他の機構が使用されてもよい。ベルト(320)のようなスプールは、一実施形態において、その回転軸がCNTシート(321)の移動方向に対して実質的に横断方向にあるように、電気モーターなどの機械デバイスによって駆動され得る。
【0039】
スプールに巻きつけられた時のCNTシート(321)自体の接着を最小限にするために、CNTシート(321)がスプールに巻きつけられる前に、CNTシート(321)の片側面上に分離材料が適用され得る。本発明に関する使用のための分離材料は、連続的なロールで供給され得る様々な市販の金属シートまたは高分子の1つであり得る。その目
的のために、CNTシート(321)がスプールに巻きつけられるときに、分離材料は、CNTシート(321)とともにスプール上へと引っぱられ得る。CNTシート(321)の片側面に適用され得る限り、分離材料を含む高分子が、シート、液体、または他の形態で提供され得ることが留意されるべきである。さらに、CNTシート(321)内の交じり合ったナノチューブが、Fe、Co、Niなどの強磁性材料の触媒ナノ粒子を含有し得るため、分離材料は、一実施形態において、非磁性材料、例えば、導電性材料または他のものであり得、それによって、CNTシートが分離材料に強くくっつくのを防ぐ。代替的な実施形態では、分離材料は必要ではないかもしれない。
【0040】
CNTシート(321)は生成された後、1つのCNTシートとして残され得るか、またはストリップ(strips)などのより小さな断片へと切断され得る。一実施形態では、ベルト(320)またはドラムが回転する及び/又は同時に移動すると、CNTシート(321)をストリップへと切断するために、レーザーが使用され得る。レーザービームが、一実施形態において、ハウジング(32)に隣接して位置付けられ得ることで、CNTシート(321)がハウジング(32)を出ると、レーザーは、CNTシート(321)に方向付けられ得る。レーザービームの操作およびさらにストリップの切断を制御するために、コンピューターまたはプログラムが使用され得る。他の実施形態では、当該技術分野で既知の機械的手段または他の手段が、CNTシート(321)をストリップへと切断するために使用されてもよい。
【0041】
代替的に、別の実施形態では、ベルトの代わりに、ドラム缶などの剛性シリンダーが、軸まわりを回転するように位置付けられ得、それによって、CNTの集合体からのCNTの複数の実質的に個別の層がドラム上に堆積されて、シートが形成され得る。
【0042】
本発明による使用に適したシステムは、図1Aに示される。そのようなシステムによって産生されたCNT材料は、図1Aに示されるように、移動式ベルト(320)、またはドラム上に不織布シートとして収集され得るか、またはスピンドル上の糸として収集され得る。そのような産生方法は、CNTシートまたは糸で提供され得、これらは後に様々な用途で使用され得る。カーボンナノチューブが、幾つかの実施形態において、複数の個別の層に堆積されることで、単一のCNTシートにおいて多層の構造または形態が形成され得る。幾つかの実施形態では、CNTシートは、低い面に垂直な又は厚さ方向の(through-thickness)熱伝導率を有することができ、これは、層間及び/又はチューブ間の耐性に起因し得る。
【0043】
システム(30)に類似したシステムが、ナノチューブの糸の製造のために使用され得る。糸を製造するために、ハウジング(32)は、炉(316)からナノチューブを受け、それらを紡いで糸にする装置と交換され得る。装置は、ナノチューブがチューブ(315)を出るとナノチューブを収集し得る回転スピンドルを含み得る。回転スピンドルは吸入端部を含み得、そこに複数のチューブが入り、それらが紡がれて糸にされる。回転の方向は、チューブ(315)を通るナノチューブの移動方向に対して実質的に横断方向であり得る。回転スピンドルはまた、糸をスピンドルの出口端に向けて導き得る経路を含み得る。その後、糸はスプール上で収集され得る。
【0044】
示されていないが、生成されたナノチューブが糸としても収集され得ることが理解されるべきである。そのようなアプローチは、米国特許第7,993,620号に開示され、これは、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。糸を作る方法は、気密環境で一方向に実質的に移動する複数の合成されたナノチューブを受ける工程を含み得る。受ける前に、初期の撚りを提供するために、渦流れがナノチューブ上に与えられ得る。次に、ナノチューブは、ナノチューブの移動方向に対して実質的に横断方向にまとめて撚り合わされて糸にされ得る。その後、糸は、回収のための領域の方に移動され、続いて、糸の移
動方向に対して実質的に横断方向の軸に巻きつけられることによって回収され得る。
【0045】
幾つかの実施形態では、回転スピンドルは、伸長された長さのナノチューブの回収のために、ハウジング内から、入口を通って、合成チャンバーへと伸びるように設計され得る。一実施形態では、回転スピンドルは吸入端部を含み得、そこに複数のナノチューブが入り、それらが紡がれて糸にされる。一実施形態では、回転方向は、ナノチューブの移動方向に対して実質的に横断方向であり得る。回転スピンドルはまた、中空コアなどの経路を含み得、それに沿って糸はスピンドルの出口端に導かれ得る。システムはさらに、糸を、それらを集めるためのスプールの方に導き、配向するための、回転スピンドルの出口端に連結され得るガイドアームを含むことができる。
【0046】
図1Bを参照すると、ナノチューブの流れから糸などの繊維構造または材料を収集するためのシステムが例証されている。図1Bを参照すると、ナノチューブの集合体(または粗糸(3))は、CVD炉または材料コンベア(6)から出る。それが出ると、ナノチューブの流れは、炉(6)の出口端に隣接して位置付けられたアンカーまたは回転式フィードプーリー(5)によって、回転式収集チューブ(7)へと再配向され得る。一旦収集チューブ(7)内に入ると、ナノチューブの流れは、再配向され、収集チューブ(7)を通り抜けると引かれ得る。幾つかの実施形態では、材料は、緩い粗麻(tow)または粗糸として収集され、続いて、ワイヤー、糸、テープなどへと形成され得る(2015年11月25日に出願の米国特許第14/952,427号、発明の名称「Hierarchically Structured Carbon Nanotube Materials
and Methods For Production Thereof」を参照し、こ
れは、その全体が本明細書に組み込まれる)。
【0047】
CNT材料内のCNTが、Fe、Co、Niなどの強磁性材料の触媒ナノ粒子を含有し得ることが留意されるべきである。
【0048】
カーボンナノチューブ(CNT)またはカーボンナノチューブ構造の特性が、欠陥、長さ、直径およびキラリティー、および全体的なチューブ束の配向及び/又は相互作用などの、カーボンナノチューブの構造特性によって左右され得ることが留意されるべきである。幾つかの実施形態では、CNT構造の配向は成形後に達成され得る。
【0049】
<合成後の処理>
本発明の態様は、鉄などの触媒粒子、およびCNT構造または材料における有機不純物の減少のための方法に関する。本発明の他の態様は、触媒粒子及び/又は有機不純物が実質的にないCNT材料に関する。本発明の幾つかの態様によると、CNT材料は電気的性質を増強した。様々な実施形態では、本発明のナノチューブから作られた材料は、ステンレス鋼などの特定の金属導電部材以上の、強度、熱伝導性、電流容量、および高周波性能などの、著しい利点を示すことができ、これは、そのような材料が導電体であるからである。
【0050】
本発明の幾つかの態様では、該方法は、CNT材料を陽極の電気化学的プロセスにさらす工程を含む。幾つかの実施形態では、該プロセスは、電気化学セル中で行うことができる。
【0051】
本発明の幾つかの態様では、該方法は、CNTを損傷させることなく、材料の精製、剥離、伸長、配向およびそれらの組み合わせを可能にする。幾つかの実施形態では、電気化学的処理は、超酸処理なしで、または超酸による処理と組み合わせて使用され得る。本明細書に提供される方法は、強度および導電性などの特性に悪影響を及ぼすことなくCNT材料を精製するための、単純な非損傷手段を提供する。
【0052】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される方法は、容易に自動化することができ、大量生産に適用可能である。本明細書に記載される方法が、温和な条件(例えば、気相浄化のための周囲温度対300-800℃)、単純な設定、事実上の一段階(virtually one-step)および連続運転を包含していることが留意されるべきである
【0053】
成長および成形のプロセス中の触媒の存在によって、これらの糸、テープまたはシート内のナノチューブは、触媒(つまり鉄)および炭素系物質(つまり無定形および黒鉛状の炭素)を含み得る。例えば、カーボンナノチューブ材料中のCNTは、約10重量%から約30重量%までの鉄を含有することができる。カーボンナノチューブ材料中のCNTは、約5重量%から約25重量%の炭化水素および非CNTの炭素質材料を含有することができる。それ故、汚染物質からのCNTの精製は、カーボンナノチューブの実際の産生よりも実質的に多くの時間を消費し、高価なものとなり得る。
【0054】
これらの不純物は、重要性を増し、強度および導電性などの特定の物理的および機械的な性質に悪影響を与えかねない。多くの用途に関して、CNTの純度を制御することは、CNT構造またはCNT材料に望ましい物理的および機械的な性質を与えるのに不可欠である。CNT構造の特定の物理的、化学的および機械的な性質が純度に依存し得るため、CNT構造中の汚染物質の存在は、これらの構造の特性に影響を与えかねない。強度、導電性および熱伝導性などのマクロ特性、電気化学的特性、熱電のゼーベック係数などは、個々のチューブまたは束の特性に関連するだけでなく、重要なことに、それらの純度、及び/又はナノスケールでの相互作用にも関連している。影響を受け得る他の特性は、複素屈折率、抵抗率の周波数依存性、および化学反応性を含む。
【0055】
幾つかの実施形態では、鉄の他に炭化水素および非CNTの炭素質不純物も、鉄がそのようなCNTの合成に使用される結果として未精製のCNT材料中に存在し得る。鉄及び/又は他の触媒の存在は、限定されないが、電池電極、および磁気共鳴イメージング装置のためのワイヤリングなどの、幾つかの用途にとって有害になり得る。
【0056】
CNTを覆う炭化水素および炭素質不純物は、CNT間の密接な接触を防ぎ得る。接触に対するこの障壁は、チューブ間の電気接触を減少させ得、それによって、CNT構造の導電率を低下させる。
【0057】
それ故、本発明の態様は、商業的な量の実質的に純粋なCNT材料の合成を可能にするCNT材料を生成する方法に関する。
【0058】
CNT材料から鉄及び/又は他の触媒を除去することを、CNTを損傷せずに達成するのは難しいかもしれない。炉における成長温度での鉄触媒は、炭素で飽和され得る。冷却後に、過剰な炭素は、鉄触媒の表面上へと沈殿し、結果としてグラフェンの幾つかの層がもたらされ得る。グラフェン層は、生成されたCNTを質的に特徴づけるために使用される透過型電子顕微鏡(TEM)で見ることができる。グラフェンコーティングは、酸性溶液中の鉄の単純な溶解を防ぐことができる。鉄は、空気中で約1時間約300℃から約500℃の温度、または約300℃より上の温度まで加熱されることによって、およびその後の酸性溶液中での洗浄によって、CNT材料から有効に除去され得る。しかしながら、当業者は、熱処理がCNTを損傷させ得、それによって、材料の強度および導電率を低下させ得ることを理解するだろう。空気中での300℃を超える加熱は、幾つかの非CNTの炭素質汚染物質を蒸発させ得る。しかしながら、当業者は、非CNTの炭素質汚染物質が燃焼する温度が、CNTの完全性に影響し得ることを理解するだろう。これらの積極的なプロセスは、典型的に、CNTの深刻な損傷および損失を結果としてもたらし、これは
、どんな恩恵よりも重要であり得る。さらに、これらの方法は、しばしば、小バッチ収率(small batch yields)、低収率、及び/又は低純度に限定される。結果的に、CNTの適用の多くが高度精製のCNTを必要とするため、これらの不純物を除去する効率的な工業規模の精製工程が不可欠である。
【0059】
本発明の幾つかの態様では、CNTは、グラフェン層を放出するために陽電位で電気化学的処理(つまり陽極の電気化学的処理)にさらされる。幾つかの実施形態では、電気化学的処理は室温で行われる。グラフェン層の放出によって、鉄は暴露されて酸化され(例えば、Fe2+、Fe3+)、容易に溶液中に溶解され得る。幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理は、結果として、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、約2重量%未満、約1重量%未満の鉄を有するCNT材料をもたらす。幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理は、結果として、鉄が実質的にないCNT材料をもたらす。
【0060】
幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理によって、多くの汚染物質が、静電力を介してCNTから除去され(displaced)得る。幾つかの実施形態では、CNT材料の陽極の電気化学的処理は、結果として、限定されないが、鉄および非CNTの炭素質汚染物質などの汚染物質が実質的にないCNT材料をもたらすことができる(図2A図2Bを参照)。
【0061】
幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理は、CNT材料の剥離および拡大を可能にする。幾つかの実施形態では、材料の伸長および配向が生じ得る張力下で、処理が行われ得る。
【0062】
幾つかの実施形態では、CNT材料は、最初に伸長され、伸長されたCNT材料は、陽極の電気化学的処理にさらされ得る。CNT材料は、当該技術分野で既知の適切なプロセスを使用して伸長され得る。
【0063】
幾つかの実施形態では、電荷の拡散が可能になり、溶媒または溶液が蒸発すると、配向された材料は束になって高密度化することができ、結果として、より強い且つより導電性の材料がもたらされる(図3Bを参照)。
【0064】
本発明の幾つかの態様は、CNT材料をドーピングして導電率を改善するための方法に関する。幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理によって、CNT材料への陰イオンの挿入(つまり、CNT材料の電子ドーピング)が可能になる。幾つかの実施形態では、そのような陽極の電気化学的処理は、導電率を増強することができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、静電気の剥離および伸長が、広範囲なプロトン化のために超酸で達成され得る。幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理は、例えば、電気化学電位または処理の期間を制御することによって制御され得る。
【0066】
幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理は、超酸処理と相乗的に働き得る。本発明の幾つかの態様では、プロトン化薬剤が伸長剤として使用され、CNTの伸長及び/又は配向を可能にする。特に、クロロスルホン酸、トリフリン酸、フルオロ硫酸およびフルオロアンチモン酸、またはそれらの組み合わせなどの、超酸が使用され得る。幾つかの実施形態では、発煙硫酸が使用され得る。幾つかの実施形態では、発煙硫酸、およびクロロスルホン酸、トリフリン酸、フルオロ硫酸およびフルオロアンチモン酸、またはそれらの組み合わせなどの超酸が使用され得る。幾つかの実施形態では、ハメットの酸度関数スケール(H)で-12未満の値を有している薬剤が使用され得る。幾つかの実施形態では、ハメットの酸度関数スケール(H)で-12.5未満の値を有している薬剤が使用さ
れ得る。
【0067】
幾つかの実施形態では、CNT材料(例えば、糸、シートなど)は、有機電解液を介して引き出され得、正電圧が、材料にごく接近して電極に対して適用され得る。幾つかの実施形態では、電解質は極性有機溶媒から成ることができる。例えば、有機溶媒は、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、または過塩素酸テトラエチルアンモニウム、またはそれらの組み合わせなどの、~0.1Mの溶解された有機塩を有する、アセトニトリルであり得る。約2Vから約15Vまでの正電圧が、対向電極に対して適用され得る。幾つかの実施形態では、CNT材料は、正電圧で電気化学的に処理され、結果として生じる処理されたCNT材料は、走査電子顕微鏡検査(SEM)画像上に示されるように汚染または異物が実質的にない。対向電極は、銅、炭素、または当該技術分野で既知の幾つかの他の電極材料であり得る。幾つかの実施形態では、セパレーターが、処理されているCNT材料と対向電極との間に位置付けられ得る。幾つかの実施形態では、セパレーターは、1枚の濾紙、多孔質高分子膜、または当該技術分野で既知の幾つかの他の多孔性の非導電材料であり得る。幾つかの実施形態では、処理の程度は、処理されている材料のグラム当たりの全体のアンペア(amps)×処理時間、として定量化され得る。幾つかの実施形態では、処理の程度は、相互作用の長さ(例えば、糸が対向電極にごく接近している距
離)および糸が処理領域を通り抜ける速度の他に、印加電圧によっても制御され得る。
【0068】
幾つかの実施形態によると、処理されたCNT材料の鉄含量は、陽極の電気化学的処理によって少なくとも半分減少され得る。幾つかの実施形態では、陽極の電気化学的処理は、結果として、材料の導電率の増強をもたらすことができる。幾つかの実施形態では、陽極処理は、CNT材料の導電率を少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、またはそれ以上、増強することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、CNT材料中のCNT配向を改善する及び最終結果における特性を改善するために、CNT材料が処理されるときに張力がCNT材料に適用され得る。
【0070】
幾つかの実施形態では、電気化学的処理後、CNT材料は、洗浄されて、電解質塩、吸収された不純物が除去され、さらに鉄が溶解され得る。様々な組み合わせの溶液に浸すことによって、洗浄が達成され得、これらは、例えば、アセトニトリル、アセトン、水中のクエン酸、濃縮または希釈された塩酸、水中の他の酸、及び/又は純水を含むことができる。その後、CNT材料は、さらなる処理なしで乾燥され、使用され得る。しかし、他の実施形態では、CNT材料は、望ましい特性をさらに増強するために、架橋剤、結合剤、または架橋剤と結合剤で湿式処理され得る。幾つかの実施形態では、クロロスルホン酸などの超酸は、特性をさらに増強するために、電気化学的処理の前または後に使用され得る。
【0071】
幾つかの実施形態では、陽極処理後、CNT材料は、陰イオンを除去するために、電解質溶液中で陰極処理され得る(対向電極に対する陰電圧)。電解質溶液は、同じ又は別の電解質溶液であり得る。例えば、水酸化ナトリウム水溶液中の-1.1Vでの処理は、陽極処理後にCNT材料内に残されたかもしれないリン酸アニオンをCNT材料から出すように促すことができ、リン酸アニオンを水酸イオンに交換する。続いて酸性溶液に浸すことによって、水のみを残す水酸イオンを中和することができ、これは後に乾燥されてCNT材料から出され得る。
【0072】
幾つかの実施形態では、有機電気化学セルにおいてCNT材料に正電圧を加えることによって、鉄触媒粒子を暴露且つ溶解し、CNT材料から非CNTの炭素質不純物の幾つか又はほとんどを洗浄し、CNT束を剥離することでCNT材料の伸長および配向を可能に
することができるか、またはそれらの任意の組み合わせを行うことができる。そのような電気化学的処理は、結果として、CNT材料の強度および導電率の増強につながる。
【0073】
幾つかの実施形態では、電気化学的処理は、さらなる処理のためのCNT材料を準備することができる。幾つかの実施形態では、電気化学的に処理された材料は、高分子に、より好適に結合することができる。当業者は、従来技術における高分子の追加が、導電率および熱伝導率に悪影響を及ぼしかねないことを理解するだろう。幾つかの実施形態は、CNTの導電性高分子複合体に関する。幾つかの実施形態では、CNTは、陽極の電気化学的処理にさらされ、続いて、導電率の減少を最小限にしながら機械的性質(例えば強度)を増強するために高分子の追加によって後処理される。
【0074】
幾つかの実施形態では、CNTは、陽極の電気化学的処理にさらされ、続いて、溶液/酸洗浄、陰極処理、さらなる陽極処理、高分子の取り込み、またはそれらの任意の組み合わせによって後処理される。様々な組み合わせの溶液に浸すことによって、洗浄が達成され得、これらは、例えば、アセトニトリル、アセトン、水中のクエン酸、濃縮または希釈された塩酸、水中の他の酸、及び/又は純水を含むことができる。
【0075】
<電気化学的に処理されたCNT材料の処理>
本発明の幾つかの実施形態によると、伸長前に、伸長可能なマクロ構造は伸長剤に暴露され得る。幾つかの実施形態では、マクロ構造は、シート、糸、バッキーペーパーなどであり得る。幾つかの実施形態では、伸長剤はプロトン化薬剤であり得る。幾つかの実施形態では、伸長剤は超酸であり得る。例えば、超酸は、クロロスルホン酸(CSA)、トリフリン酸、フルオロ硫酸およびフルオロアンチモン酸、またはそれらの組み合わせであり得る。幾つかの実施形態では、伸長剤は発煙硫酸である。幾つかの実施形態では、発煙硫酸、およびクロロスルホン酸、トリフリン酸、フルオロ硫酸およびフルオロアンチモン酸、またはそれらの組み合わせなどの超酸が使用され得る。
【0076】
クロロスルホン酸が他の化学物質(例えば水)に対して非常に反応性であるため、クロロスルホン酸の使用が、高度に特化した操作条件を必要とすることが理解されるべきである。処理後に、クロロスルホン酸などの超酸は、残留物を残すかもしれず、加工済み材料が生成物の製剤において組み合わせられるときに他の成分と不適合であり得るため、洗い流され得る。
【0077】
幾つかの実施形態では、伸長剤は、噴霧、滴下、浴(bath)、流水(flood)、落水(waterfall)または当該技術分野で既知の他の適切なプロセスによって適用され得る。幾つかの実施形態では、超酸は、約30%から約100%の濃度のCSAである。幾つかの実施形態では、超酸は、溶媒中の約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%の濃度のCSAである。幾つかの実施形態では、溶媒は、クロロホルム、アセトン、1,2-ジクロロエタン、ピリジン、アセトニトリル、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンである。希釈剤も、約10%から約90%の濃度で、硫酸などの希酸であり得る。
【0078】
幾つかの実施形態では、伸長剤は、CNT材料を一体に保持していた静電結合の破壊を可能にする。幾つかの実施形態では、伸長剤は、構造の湿潤を可能にし、その結果、十分な伸長が、構造に続いて適用され得る。幾つかの実施形態では、伸長可能な構造は、伸長処理にさらされる前に液体溶液中に湿らせるか又は浸漬され得る。幾つかの実施形態では、伸長可能な構造は、最初に後処理システムに搭載され、その後、構造が十分に湿らされるまで超酸を含有している溶液でスプレーされるか又はその溶液に浸漬され得る。幾つかの実施形態によると、伸長可能な構造は、適切な期間にわたって実質的に湿ったままであり得る。その期間は、例えば、プロセスの速度によって制御され得る。幾つかの実施形態
では、糸が処理されると、そのような糸は、糸のtex(g/kmでの線密度)値に依存して適切な期間にわたって処理され得る。例えば、超酸は、約1sから約30sの間適用され得る。幾つかの実施形態では、超酸は、約1sから約5sの間、約1sから約10sの間、約1sから約20sの間、約5sから約10sの間、約10sから約20sの間、約10sから約30sの間適用され得る。超酸は、10から40texなどの様々なtexの糸のために及びストリップ、シートおよび他のより大きなバルクのマクロ構造に対する時間のより長い長さのために、約3sから約10sの間適用され得る。
【0079】
十分に湿らされると、伸長可能なマクロ構造は、交じり合った及び実質的に無配向のナノチューブを、伸長方向に沿って実質的に配向させるために、延伸(つまり伸長)され得る。伸長によって、本発明の幾つかの実施形態に従って、交じり合った及び実質的に無配向のナノチューブ、ナノチューブの束、及び/又は伸長可能な構造内のナノチューブのロープを、実質的に配向させることができる。さらに、伸長によって、隣接したナノチューブを互いに接触させ、隣接したナノチューブ、ナノチューブの束、及び/又はナノチューブのロープの間の接点を増強させる及び/又は増加させることができる。隣接したナノチューブ間の増強された接触は、幾つかの実施形態において、導電性(例えば、導電性または熱伝導性)の増大の他に、実質的に無配向のナノチューブを有する伸長可能なマクロ構造の引張強度と比較した伸長可能なマクロ構造の引張強度の増大にもつながり得る。
【0080】
伸長可能なマクロ構造が、局所の伸長をもたらす任意のタイプの装置を使用するナノチューブ配向を可能にするように伸長され得ることが理解されるべきである。伸長は、例えば、大量の伸長可能な構造材料にわたって行われ得る。しかしながら、材料が弱い領域または欠陥において延伸するリスクは、そのようなアプローチにおいて、伸長装置が比較的より小さな長さ(つまり局所の伸長)にわたって漸増的に材料を伸長するように設計された場合よりも高くなり得る。幾つかの実施形態では、伸長手順は、比較的より短い距離にわたって漸増的であり得る。例えば、延伸の速度は、約0.001パーセント/分から約10パーセント/分までであり得る。例えば、延伸の速度は、約1パーセント/分(65% (.75m/分)/.5mに基づく)から約3パーセント/分までであり得る。約
0.3パーセント/分の延伸の速度とともに、十分優れた結果が得ることができる。
【0081】
幾つかの実施形態では、糸が伸長されると、そのような糸は、その引張強さが、処理前の糸の元の引張強さの少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、またはそれ以上増大される地点まで伸長され得る。例えば、未処理の糸は、約0.5N/texの破断引張応力値を有するが、CSA処理された糸は、幾つかの実施形態によると、3.7~4倍の改善に相当する約1.84N/texまたは約2N/texの破断引張応力値を有している。N/texの単位は、Newtonsでの破断応力または破断力をg/kmでの試験された材料の線密度で割った単位である。
【0082】
幾つかの実施形態では、糸が伸長されると、そのような糸は、その抵抗率が処理前の糸の元の抵抗率の少なくとも7倍低下される地点まで処理され得る。幾つかの実施形態では、改善率は約5倍から約9倍である。例えば、約3×10-4Ω-cmの抵抗率は、7倍
の改善率に相当する約4.25 10-5Ω-cmまで改善され得る。
【0083】
十分伸長すると、伸長可能な構造内のナノチューブが実質的に配向されることが達成され得る。伸長の程度による抵抗率の変化によって、および伸長の程度による機械的性質の増大とともに上に記載されるように、この配向は、幾つかの実施形態において、伸長の程度に比例し得る。さらに、伸長はまた、伸長可能な構造の他の特性を増強し得る。具体的には、隣接したナノチューブ、ナノチューブの束、及び/又はナノチューブのロープ間の接触は増強され得、その結果、伸長可能な構造の導電性(例えば、導電性または熱伝導性)に加えて引張強度も増大され得る。
【0084】
本発明の幾つかの態様によると、引張荷重下でのCSAなどの超酸の存在下における伸長するCNTのマクロ構造または材料は、材料の引張強度および導電率を劇的に改善させることができる。これらの性質の改善は、当該技術分野で既知の他の処理によって達成可能な改善よりはるかに大きい。理論に縛られることなく、CSAなどの超酸は、以下の効果の1つ以上によってCNTマクロ構造に対するそのような改善を達成することができる傾向にある:
1. 不純物を剥離する又は切り離すことによってマクロ構造内の分子レベルでCNTを洗浄する。
2. マクロ構造内でCNTを剥離する/ほどく。本明細書で使用されるように、「剥離」は、ファンデルワールス力によって主として一体に保持された、カーボンナノチューブの凝集体、束、ロープ、または凝結体が、移動することができるように互いから切り離されるプロセスを指す。幾つかの実施形態では、CSAはナノチューブを機能化し、ナノチューブはプロトン化及び/又はスルホン化によって剥離される/ほどかれる。
3. マクロ構造内のCNTを潤滑することによって、さらなる伸長および配向を可能にする。
4. 硫酸塩結合の架橋(bridging sulfate bonds)の生成によってCNTを架橋する。架橋は、幾つかの実施形態において、電荷(load)および電子移動を増強することができる。
5. 非常に高い表面張力の液体の蒸発による高密度化。
【0085】
プロトン化がCNTマクロ構造またはCNTを剥離させ、CNTまたは束を互いに反発させ(repel)得ることが理解されるべきである。
【0086】
幾つかの実施形態では、CSAなどの超酸は、束間に浸潤することができる及び束間の不純物を剥離して洗い流しながら互いの間の束の滑りを可能にする潤滑剤として作用することができる。幾つかの実施形態では、不純物は、無定形炭素及び/又は芳香族多環式炭化水素であり得る。
【0087】
引張力がCNT材料に適用されると、束は互いに滑り抜ける(slip past)。
その後、束は真っすぐになり配向することができる。伸長が大きければ大きいほど、ナノチューブ束のマクロ/マイクロスケールでの配向の程度はより高まる。
【0088】
空隙が生成される前にだけCNTマクロ構造が特定の限界にまで伸長されるのみであり、ここで、さらなる伸長が材料構造の失敗を引き起こす傾向があることが理解されるべきである。180度の標準のナノファイバー(つまり束)の屈曲度を想定して、ナノファイバーをまっすぐ伸長した後の構造の長さの増大は次の通りである:
AB(直線)/AB(曲線)=L/(2L/π)=π/2または1.57より長い(これは57%の伸長である)
この伸長の長さより大きく伸長させると、空隙が生じる傾向にある。したがって、幾つかの実施形態では、空隙が作られないようにCNTマクロ構造の伸長が実行される。
【0089】
一旦CNTマクロ構造が伸長されると、CSAは、中和され、除去され得る。一旦除去されると、溶媒洗浄および加熱によって、ファンデルワールス力が働き(take ov
er)、CNTマクロ構造の密度が増加し、これはチューブ間の相互作用を増大させることが示されている。配向に加えて、CSAなどの超酸は、CNTの表面を機能化することができ、束間の結合する架橋が作り出される。CSAなどの超酸中でCNTマクロ構造を伸長する物理的/性質的な恩恵は、引張特性(係数、引張強さなど)の増大、電気的性質の改善、及び/又は複合体を形成する準備ができたより清浄な機能化構造を含む。
【0090】
一般に、酸および不純物は、水、有機溶媒、またはそれらの組み合わせで洗い流すことによって、剥離されたカーボンナノチューブから除去され得る。幾つかの実施形態では、剥離されたカーボンナノチューブから不純物を除去するために、例えば、高度に圧縮されたCOなどの超臨界流体、または例えば、プロパンまたはブタンなどの炭化水素が使用されてもよい。
【0091】
幾つかの実施形態では、延伸または伸長の手順後に、伸長可能なマクロ構造は、適切な溶媒中で洗浄され得る。伸長可能な構造は、100%の溶媒中で洗浄され得る。幾つかの実施形態では、溶媒は、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、アセトニトリル、アセトン、エタノール、水、四塩化炭素、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0092】
その後、伸長された構造は、乾燥器において表面を乾燥され得る。幾つかの実施形態では、伸長された構造は、約150℃から約400℃の間の範囲であり得る温度で、Nまたは他の乾燥した環境において表面を乾燥され得る。
【0093】
洗浄および乾燥の手順は、幾つかの実施形態において、伸長プロセスで使用される超酸を除去するのに有効であり得る。
【0094】
その後、清浄な構造は、幾つかの実施形態において、水中で洗浄され得る。幾つかの実施形態では、構造は、約1時間以下の間から約24時間以上の間、水中で洗浄され得るか又は沸騰させられ得る。その後、構造は、真空で炉乾燥され得る。例えば、構造は、約1時間以下の間から約24時間以上の間、約200℃での30mmHgで乾燥され得る。
【0095】
本発明の方法が、糸の合成後の処理に限定されず、シート、フィルム、テープ、ファイバーなどのあらゆるナノチューブマクロ構造に適用され得ることが理解されるべきである。
【0096】
<用途>
本発明から作られたカーボンナノチューブのシート、糸、およびファイバーは、導電体としての用途を含む、種々様々の用途があり得る。本発明の様々な実施形態に従って生成されたCNT材料は、バッテリーにおいて、および鉄の除外を必要とする用途で使用され得る。
【0097】
幾つかの実施形態では、CNT材料は、ワイヤー、電磁シールド、電源供給ケーブルなどにおいて使用され得る。幾つかの実施形態では、本発明のCNTシートは、例えば、同軸ケーブルの導体またはシールドを形成するように巻き取られ得る。さらに、CNTシートは、シートの導体塊を増加させて、シートがより多くの電流を運ぶことを可能にする、強度を増大させる、及び/又はより好適なアンペア容量のための熱伝導率を高めるために、層状にされ得る。同様に、CNTの糸は、同軸ケーブル、ツイストペアケーブルなどの導体素子などの、ケーブル要素を形成するために使用され得る。CNTの糸は、糸における導体塊の量を増加させ、糸がより多くの電流を運ぶことを可能にするために、より大きな糸へと撚り合わせられ得るか又は束ねられ得る。本発明のCNT材料はまた、プリント回路基盤(PCB)などの回路基板上の電気接続を作り出すために使用され得る。
【0098】
本発明のCNT材料の具体的な適用の例として、EMI放射線を反射または吸収し、それによって、電気的シールドを提供し得る、電磁干渉遮蔽(EMI遮蔽)も挙げられ得る。遮蔽は、干渉が装備を取り囲むのを防ぐことに有益であり得、ステレオシステム、電話、携帯電話、テレビ、医療装置、コンピューター、および多くの他の器具で見ることができる。遮蔽はまた、電子装置から放射される電磁放射線を減少させるのに有益であり得る
。そのような放射された電磁放射線を減少させることは、電子装置が規制上のEMC要件を満たす助けとなり得る。グラウンドプレーンまたは電源プレーンとして、導電層が使用されてもよく、これは、電磁ミラーを作成する手段を提供し得る。
【0099】
本発明はその特定の実施形態に関連して記載されているが、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされてもよく、同等物が置換されてもよいことが当業者によって理解されるべきである。さらに、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、特定の状況、指標、材料および合成物、または生産工程に適応するように、多くの修正がなされてもよい。そのような修正はすべて、本明細書に添付された請求項の範囲内で行われるように意図されている。
【0100】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態を実証するために提供される。以下に続く実施例に開示される方法が、本発明の典型的な実施形態を単に表わすだけであることが当業者によって理解されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に照らして、記載される具体的な実施形態において多くの変更を行なうことができ、それでもなお、本発明の精神および範囲から逸脱することなく同様の又は類似した結果を得ることができることを認識している。
【実施例
【0101】
<CNTの糸およびシート材料の電気化学的処理>
CNTの糸材料を有機電解液を介して引き出し、正電圧を材料にごく接近して電極に対して適用した。電解質は、ヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム、テトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム、過塩素酸テトラブチルアンモニウム、または過塩素酸テトラエチルアンモニウムなどの、~0.1Mの溶解された有機塩を有するアセトニトリルなどの極性有機溶媒から成る。~2Vから15Vの正電圧を、対向電極に対して適用した。対向電極は、銅、または炭素、あるいは幾つかの他の電極材料であり得る。
【0102】
処理の程度を、処理されている材料のグラム当たりの全体のアンペア(amps)×処理時間として定量化し、相互作用の長さ(糸が対向電極にごく接近しているときの距離)および糸が処理領域を通り抜ける速度の他に、印加電圧によっても制御した。
【0103】
図2Aは、-2.4Vで1分間電気化学的に処理されたCNT材料の走査電子顕微鏡(SEM)画像を示し、ナノチューブ上の汚染のコーティングを示す。対照的に、図2Bは、本明細書に記載される方法に従って+2.4Vで1分間電気化学的に処理されたCNT材料のSEMを示し、目に見える異物がないナノチューブを示す。CNT材料を熱重量分析(TGA)にさらして、温度に応じた材料の質量変化率を判定した。図2Cを参照すると、-2.4Vで処理されたCNT材料のTGAプロットは、汚染物質に対応する287℃での大きなピークを示す。対照的に、図2Dを参照すると、+2.4Vで処理されたCNT材料のTGAプロットは、汚染物質に関連するピークの劇的な低下を示す。
【0104】
図3Aを参照すると、重量パーセントでの炭素含量に対するエネルギー分散X線(EDX)による鉄含量は、陽極処理に応じて示される。陽極処理は、CNTの糸において鉄含量を11重量%を超える鉄含量から4重量%未満の鉄含量まで減少させる。炭化水素の重量は観察されなかった。幾つかの実施形態によると、処理されたCNT材料の鉄含量は、陽極の電気化学的処理によって少なくとも半分減少され得る。図3Bは、陽極処理の前後の糸の導電率(S/m)のプロットを示す。
【0105】
処理されている糸と対向電極との間にセパレーターが存在し得、これは、1枚の濾紙、多孔質高分子膜、または幾つかの他の多孔性の非導電材料で構成される。
【0106】
CNT材料中のCNT配向を改善する及び最終結果における特性を改善するために、CNT材料が処理されるときに張力がCNT材料に適用され得ることが理解されるべきである。
【0107】
電気化学的処理後、CNT材料は、洗浄されて、電解質塩、吸収された不純物が除去され、さらに鉄が溶解され得る。これは、様々な組み合わせの溶液に浸すことによって達成され得、これらは、アセトニトリル、アセトン、水中のクエン酸、濃縮または希釈された塩酸、水中の他の酸、及び/又は純水を含み得る。その後、CNT材料は、さらなる処理なしで乾燥され、使用され得るか、または望ましい特性をさらに増強するために、架橋剤及び/又は結合剤で湿式処理され得る。特性をさらに増強するために、電気化学的処理の前または後にCSAが使用され得る。
【0108】
陽極処理後、CNT材料は、陰イオンを除去するために、新鮮な且つひょっとすると異なる電解質溶液中で陰極(対向電極に対する陰電圧)処理され得る。例えば、水酸化ナトリウム水溶液中の-1.1Vでの処理は、陽極処理後にCNT材料内に残されたかもしれないリン酸アニオンをCNT材料から出すように促すことができ、リン酸アニオンを水酸イオンに交換する。続いて酸性溶液に浸すことによって、水酸イオンを中和して、水のみを残し、これは後に乾燥されてCNT材料から出され得る。
【0109】
類似した方法でシートCNT材料も処理され得ることが理解されるべきである。
【0110】
<引用による組み込み>
米国特許第7,993,620号が参照され、これは、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書で言及されるすべての公報、特許出願および特許は、あたかも個々の公報または特許が引用によって組み込まれるように具体的に且つ個々に示されるように、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B