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特許75255843次元シミュレーション環境を作成するコンピュータ実施方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】3次元シミュレーション環境を作成するコンピュータ実施方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240723BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G08G1/00 A
G09B29/00 F
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022203179
(22)【出願日】2022-12-20
(65)【公開番号】P2023092513
(43)【公開日】2023-07-03
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】21216228
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】キーラ ヴィッテンボアン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ アトルフ
【審査官】▲高▼木 真顕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-133141(JP,A)
【文献】特表2021-534484(JP,A)
【文献】特開2002-287616(JP,A)
【文献】特表2012-513650(JP,A)
【文献】特開2021-111385(JP,A)
【文献】特開2019-138742(JP,A)
【文献】特開2019-179320(JP,A)
【文献】特表2019-533609(JP,A)
【文献】特開2009-003943(JP,A)
【文献】特開2014-199609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 30/00 - 60/00
G01M 17/00 - 17/10
G01C 21/00 - 21/36
G09B 29/00 - 29/10
G06Q 10/00 - 10/30
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/00 - 50/20
G06Q 50/26 - 99/00
G16Z 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元シミュレーション環境を作成するコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータ実施方法は、次の方法ステップ、すなわち、
3次元仮想オブジェクトを有する基本ライブラリを準備するステップと、
3次元シミュレーション環境を作成しようとしている地理的地域の入力を検出するステップと、
前記地理的地域または前記地理的地域全体の種々異なる領域の特徴を特徴付ける特徴情報を取り込むステップと、
前記特徴情報に基づき、前記地理的地域の種々異なる前記領域について、または前記地理的地域全体についての付加情報を導出するステップであって、前記特徴情報が土地利用情報を含まない場合には少なくとも土地利用情報も付加情報として導出するステップと、
前記特徴情報および/または前記付加情報に基づき、前記地理的地域において現れる前記3次元仮想オブジェクトを前記基本ライブラリから特定するステップと、前記3次元仮想オブジェクトを地域ライブラリに格納するステップと、
前記土地利用情報に基づき、同じ土地利用のセクタに前記地理的地域を細分化するステップと、
それぞれのセクタについて、前記セクタの前記土地利用に適合する前記3次元仮想オブジェクトを前記地域ライブラリから特定するステップと、
それぞれの前記セクタについて前記セクタの土地利用に起因して特定した3次元仮想オブジェクトの選択をそれぞれのセクタに充填するステップと、
を有し、
前記特徴情報は、人口密度についての情報を含むか、または、人口密度についての前記情報は、前記特徴情報から導出可能であり、付加情報を導出する前記ステップでは、人口密度についての前記情報から、前記土地利用情報の少なくとも一部を推定する、
コンピュータ実施方法。
【請求項2】
前記特徴情報には少なくとも土地利用情報および/または気候情報および/または人口数についての情報が含まれる、
請求項1記載のコンピュータ実施方法。
【請求項3】
前記土地利用情報は、前記地理的地域の領域が、居住区域、工業区域、農業区域または自然区域に対応するか否かについての情報を含む、
請求項1記載のコンピュータ実施方法。
【請求項4】
前記基本ライブラリの前記3次元仮想オブジェクトの少なくとも一部は、種々異なる季節における前記3次元仮想オブジェクトの外観に関してパラメータ化可能であり、前記コンピュータ実施方法は、次の付加的な方法ステップ、すなわち、
前記3次元シミュレーション環境を作成しようとしている季節の入力を検出するステップと、
入力された前記季節に応じ、それぞれのセクタを充填した前記3次元仮想オブジェクトを、前記3次元仮想オブジェクトの外観に関してパラメータ化するステップと、
を有する、
請求項1記載のコンピュータ実施方法。
【請求項5】
前記基本ライブラリの前記3次元仮想オブジェクトの少なくとも一部は、種々異なるバージョンで格納され、前記種々異なるバージョンは、種々異なる季節における前記3次元仮想オブジェクトの外観に関して異なっており、前記コンピュータ実施方法は、次の付加的な方法ステップ、すなわち、
前記3次元シミュレーション環境を作成しようとしている季節の入力を検出するステップを有し、それぞれのセクタについて、前記セクタの前記土地利用に対応付けられている前記3次元仮想オブジェクトを前記地域ライブラリから特定するステップにおいて、それぞれ異なるバージョンが格納されている前記3次元仮想オブジェクトに関し、検出した前記季節に対応する、それぞれの前記セクタについてのバージョンをそれぞれ選択する、
請求項1記載のコンピュータ実施方法。
【請求項6】
前記特徴情報には、道路と建物の輪郭とを示す地図が含まれており、付加情報を導出する前記ステップでは、前記地図に含まれる前記道路と前記建物の輪郭とに適用されるパターン認識を用いて、前記土地利用情報の少なくとも一部を推定する、
請求項1記載のコンピュータ実施方法。
【請求項7】
前記特徴情報には、前記地理的地域に存在する樹木の植え付けが行われた日付が含まれており、前日付から前記3次元仮想オブジェクトとして表示される樹木のサイズを推定する、
請求項1記載のコンピュータ実施方法。
【請求項8】
センサデータストリームを評価する制御システムをテストするためのテストデータを生成するコンピュータ実施方法であって、前記コンピュータ実施方法は、次の方法ステップ、すなわち、
仮想センサを搭載している仮想車両により、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法によって得られた3次元シミュレーション環境の少なくとも一部を通って移動するステップと、
記憶されている前記3次元シミュレーション環境に対応する実環境を通って移動する際に実センサによって生成されたデータに対応する統合センサデータをセンサによって生成するステップと、
を含むコンピュータ実施方法。
【請求項9】
センサデータストリームを評価する制御システムをテストするための、請求項8記載の方法によって得られた統合センサデータの使用方法。
【請求項10】
センサデータストリームを評価する前記制御システムは、自動車用の運転支援システムである、
請求項9記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元(3D)シミュレーション環境を作成するコンピュータ実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、自動車の自動運転または部分自動運転のための運転支援システムの開発およびテストの技術分野に関係している。自動運転または部分自動運転に適した自動車は一般に、車両の周囲におけるオブジェクトを検出するセンサシステムを有し、少なくとも部分的にセンサシステムの制御信号に基づいて制御される。自動車のこのようなセンサシステムの対応するセンサは一般に、超音波センサ、LIDARセンサ、レーダセンサおよび/またはカメラであり、これらによって自動車の周囲が検出され、これによってテスト車両の自動運転または少なくとも部分的な自動運転が実現される。さらに、対応するセンサシステムは、別の車両または道路交通の固定装置からのデータを受信するシステムであり、これにより、データを評価することによって車両の自動運転または少なくとも部分的な自動運転が実現される(Car2X通信)。
【0003】
自動運転では運転者は、少なくとも長距離にわたって、もはや運転プロセスに介入する必要がまったくない。部分自動的な方法では少なくとも、車両は自動的に、したがって運転者の介入なしに、所定の交通状況に反応し、ひいては、例えば、前方を走行する比較的低速の車両との衝突を回避するが、これは、この前方を走行する車両に接近した際に自動的に制動過程が開始されることによって行われる。このような自動運転操作を実行できるようにするため、センサシステムのセンサを用いて、車両の周辺においてどこに別の車両、歩行者または他の障害物が存在して箇所が検出される。
【0004】
相応するセンサシステムを装備した車両が、実際に、したがって現実の道路網上で動作されて部分自動運転または自動運転されるようになる前には、部分自動運転もしくは自動運転が実際に確実かつ安全であることを保証するために多数のテストを行わなければない。しかもこのようなテストは一般に、発展した段階では、現実の車両を有する公共の道路でも行われる。しかしながら通例は、シミュレーションの形態のテストが前もって実行され、しかも、仮想3次元シミュレーション環境において移動する仮想車両を用いて実行される。異なる状況であり、また予想外でもある多くの状況について、センサシステムの反応をチェックするために、従来技術では、このようなテストをランダマイズし、可能な限りにリアルに実行することが公知である。このことには、自動車を、そのセンサシステムを用いて、まったく異なる環境においてテストすることも含まれる。現実のテストの際、例えば、非常に高温な砂漠地帯において、または雪および永久凍土を有する非常に低温な地帯において、現実の車両をテストしようとする間、シミュレーションの形態のテストの際、少なくとも環境は、テストを実施する土地のそれぞれの地域に対応すべきである。
【0005】
これは、従来のシミュレーションでは、対応する仮想環境を「手作業」でプログラミングすることによって解決される。しかしながらこれには非常に手間がかかり、結局のところ、現実に忠実な3D風景および3Dシーンを不十分なデータベースに基づいて生成することになってしまっている。すなわち通例は、必要なデータはないか、またはこのようなデータは少なくとも自動的に入手することはできない。したがって、複雑な3Dシーンの作成には多くの手作業が必要である。これには、地域において一般に外観がどうであるかという調査も必要である。これは従来、3Dシーンの手動生成の際の人間のクリエティビティによって解決される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このことを出発点として、本発明の課題は、簡単かつ確実な仕方でリアルな仮想3次元環境を作成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、独立請求項1の対象によって解決される。好ましい発展形態は、従属請求項に記載されている。
【0008】
したがって本発明により、3次元シミュレーション環境を作成するコンピュータ実施方法が構成され、この方法は、次の方法ステップ、すなわち、
3次元仮想オブジェクトを有する基本ライブラリを準備するステップと、
3次元シミュレーション環境を作成しようとしている地理的地域の入力を検出するステップと、
地理的地域または地理的地域全体の種々異なる領域の特徴を特徴付ける特徴情報を取り込むステップと、
特徴情報に基づき、地理的地域の種々異なる領域について、または地理的地域全体についての付加情報を導出するステップであって、特徴情報が土地利用情報を含まない場合には少なくとも土地利用情報も付加情報として導出するステップと、
特徴情報および/または付加情報に基づき、地理的地域において現れる3次元仮想オブジェクトを基本ライブラリから特定するステップと、この3次元仮想オブジェクトを地域ライブラリに格納するステップと、
土地利用情報に基づき、同じ土地利用のセクタに地理的地域を細分化するステップと、
それぞれのセクタについて、このセクタの土地利用に適合する3次元仮想オブジェクトを地域ライブラリから特定するステップと、
それぞれのセクタについてその土地利用に起因して特定した3次元仮想オブジェクトの選択をそれぞれのセクタに充填するステップと、を有する。
【0009】
本明細書において、「付加情報」という用語は、特徴情報からは直接取り出すことができないが、ここから導出可能な情報のことである。したがって、例えば、地域の気候帯を用いてその地域の動物相を推定することができ、これによってその外観から、植物を表しかつ適合する3次元仮想オブジェクトを選択することができる。特徴情報には好適には台帳情報が含まれる。台帳情報は、台帳に由来する情報である。「台帳」という概念は、本発明では、空間参照を有する情報の登記簿、リストまたは集合のことと理解される。狭い意味において台帳、特に土地台帳は、好適には区域にわたって表面を覆う、全ての土地区画およびそれらの記述のことをいう。好適には、台帳の記述部分において、また台帳の地図において、土地区画は、その空間位置、利用の種類および幾何学形状によって記述され、ならびに付加的には土地区画に存在する建築物によっても記述される。
【0010】
本発明は、リアルな仮想3D環境を自動作成する方法である。本発明は、仮想的に模擬しようとする地理的地域と季節とが示されるように構成される。このために、例えば、まず地理的環境の公的に利用可能な台帳情報を入手し、そこから土地利用データを得るようにすることができる。これらの土地利用データが台帳情報に直接含まれていない場合には、既存のデータからこれらの土地利用データを論理的に導出することを試みる。例えば、人口密度が非常に高い地域は、おそらく高層住宅が建てられた居住区域であり、密に建てられてはいるが、人口の低い平地は、おそらく工業区域である。本発明の発展形態には、道路網および開発状況の空中写真から土地利用を導出するためにパターン認識が含まれている。最終的に使用可能なデータに基づき、例えば、土地利用計画フィールドに地理的環境を区分することができ、それぞれ計画フィールドには、地理的地域、季節および土地利用に適合する3Dオブジェクトをランダムに充填することができる。この際に極めて重要であるのは、データが存在しないかまたは不十分なデータが存在する領域において、導出したデータを調べることにより、リアルなシミュレーション環境の作成が改善されるかまたはそもそも可能になることである。
【0011】
本発明の好ましい発展形態によると、特徴情報には少なくとも、土地利用情報および/または気候情報および/または人口数についての情報が含まれている。さらに、好ましいのは、この地域の領域が、居住区域、工業区域、農業区域または自然区域に対応するか否かについての情報を土地利用情報が含むことである。この場合には、例えば、情報「自然区域」をさらに「森林」、「山地」、「ステップ」、「砂漠」等に細分し、これらの情報を「混交林」、「針葉樹林」、「広葉樹林」等のようにさらに具体化することもできる。
【0012】
本発明の本質的な態様は、3次元シミュレーション環境が、種々異なる季節に応じてリアルに表されることでもある。このために、本発明の好ましい発展形態によると、基本ライブラリの3次元仮想オブジェクトの少なくとも一部は、種々異なる季節におけるそれらの外観に関してパラメータ化可能であり、本方法は、次の付加的な方法ステップ、すなわち、
3次元シミュレーション環境を作成しようとしている季節の入力を検出するステップと、
入力された季節に応じ、それぞれのセクタを充填した3次元仮想オブジェクトを、それらの外観に関してパラメータ化するステップと、を有するように構成されている。したがって、オブジェクトをパラメータ化できることにより、これらのオブジェクトをそれらの外観に関してそれぞれの季節に対応するように適合させることできる。
【0013】
これとは択一的に、本発明の好ましい発展形態によると、基本ライブラリの3次元仮想オブジェクトの少なくとも一部が、複数の異なるバージョンで格納されており、これらの異なるバージョンは、種々異なる季節におけるそれらの外観に関して異なっており、本方法は、次の付加的な方法ステップ、すなわち、
3次元シミュレーション環境を作成しようとしている季節の入力を検出するステップを有し、それぞれのセクタについて、このセクタの土地利用に対応付けられている3次元仮想オブジェクトを地域ライブラリから特定するステップにおいて、それぞれ異なるバージョンが格納されているオブジェクトに関し、検出した季節に対応する、それぞれのセクタについてのバージョンをそれぞれ選択するように構成されている。したがって、この択一的な実施形態によると、オブジェクトのパラメータ化可能性の代わりに、あらかじめ設定した季節にそれぞれ適合する、オブジェクトの種々異なるバージョンを格納する。
【0014】
特徴情報に関して好適に有効であるのは、特徴情報に、人口密度についての情報が含まれるか、または人口密度についての情報が特徴情報から導出され、付加情報を導出するステップにおいて、人口密度についての情報から、土地利用情報の少なくとも一部を推定することである。好ましい1つの実施例は、例えば、面積および密度からの人口密度を計算することであり、これにより、建物の種類を推定し、したがって建物が高層住宅、住宅、団地等から構成されることを推定する。
【0015】
本発明の好ましい発展形態によるとさらに、特徴情報には道路と建物の輪郭とを示す地図が含まれ、付加情報を導出するステップでは、地図に含まれる道路と建物の輪郭とに適用されるパターン認識を用いて、土地利用情報の少なくとも一部を推定するように構成されている。
【0016】
特に有益であり得るのはまた、本発明の好ましい発展形態にしたがい、特徴情報には、地域に存在するアイテムの作成日が含まれており、付加情報を導出するステップでは、作成日から土地利用情報の少なくとも一部を推定する場合である。この場合に設備は、建築物、広場、公園、畑等であってよい。
【0017】
本発明はさらに、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法によって得られた3次元シミュレーション環境が記憶されている不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0018】
本発明はさらに、センサデータストリームを評価する制御システムをテストするためのテストデータを生成する方法に関し、本方法は、次の方法ステップ、すなわち
仮想センサを搭載している仮想車両により、上述した不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に記憶されている3次元シミュレーション環境の少なくとも一部を通って移動するステップと、
記憶されている3次元シミュレーション環境に対応する実環境を通って移動する際に実センサによって生成されたデータに対応する、統合センサデータをセンサによって生成するステップと、を含む。
【0019】
さらに本発明は、上述の方法によって得られた統合センサデータが記憶された不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に関する。
【0020】
最後に、本発明は、センサデータストリームを評価する制御システムをテストするための、請求項11記載の上で説明した不揮発性コンピュータ可読記憶媒体に記憶された統合センサデータの使用にも関する。ここでは好適には、センサデータストリームを評価する制御システムは、自動車用の運転支援システムであるように構成されている。
【0021】
以下では、図面を参照し、好ましい実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の1つの実施例にしたがい、3Dシミュレーション環境を作成する方法を略示する図である。
図2】本発明の1つの実施例にしたがい、センサデータストリームを評価する制御システムをテストするためのテストデータを生成する方法を略示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
既に話題にしたように本発明は、必要なデータがないかまたは自動的に入手することができないために不十分なデータベースで、以下ではつねに3Dシミュレーション環境とも称する現実に忠実な3D風景および3Dシーンを生成することを関する。したがって、データが存在しないかまたは不十分なデータが存在する領域において、別のデータを調べてメタデータを特定することにより、3次元シミュレーション環境のシミュレーションを改善するかまたはそもそもシミュレーションがはじめて可能になるようにしたい。
【0024】
短くまとめると、このために本発明の1つの実施例によると、まず自由に利用できるデータセットを調べる。これには「土地利用」(Corine Landcover Dataset 2018)、(例えばウィキペディアからの)気候帯データおよび人口データ等のジオデータセットが挙げられる。この場合、必要とされる別のデータをこれらのデータから導出することができる。例えば、気候帯を使用することにより、動物相を推定することができ、ひいては土地利用クラス「混合林」に適合する樹木を推定することができる。別の実施例は、面積および人口数から人口密度を計算し、これによって建物(高層住宅、団地等)の種類を特定することである。
【0025】
本発明の1つの実施例によると、ユーザにより、パラメータ「地理的地域」および「季節」が提供され、すなわち、ユーザにより、土地のどの地域を、どの季節に3Dモデルとしてマッピングしたかったかが設定される。「地理的地域」および「季節」のパラメータが検出されると、コンピュータ実施方法はその後、所望の3次元シミュレーション環境が完成するまで完全に自動実行可能である。
【0026】
例えば、気候帯から、どの種類の植物が3D環境に現れてよいかを直接導出することができる。まず、地理的地域または地理的地域全体の種々異なる領域の特徴を特徴付ける特徴情報を含む1つのデータベースからまたは複数のデータベースから、可能な限りに多くの明示的な情報を抽出することを試みる。
【0027】
このようなデータベースとして、例えば、OpenStreetMap(OSM)が考慮される。OSMは、自由に利用可能な地理データを収集し、構造化し、全ての人による利用のためにデータベースに保管する、オープンなプロジェクトである(Open Data)。これらのデータは、フリーライセンス、Open Data License下にある。したがってこのプロジェクトの中核は、寄与された全ての地理情報の、オープンに利用可能なデータベースである。基本的にはこれらのデータから地図を作成することができ、さらに本発明のような用途にデータを使用することができる。
【0028】
本発明で考慮される別のデータベースは、ドイツのALKIS(Amtliche Liegenschaftskatasterinformationssystem:官庁土地台帳情報システム)である。ALKISのために、土地台帳の全てのデータが統合されている。これは連邦に統一的な手順であり、AAAモデルにおいて官庁地形学・地図学情報システム(ATKIS:Amtliches Topographisch-Kartographischen Informationssystem)および官庁基準点情報システム(AFIS:Amtliches Festpunktinformationssystem)と共に定式化されており、GeoInfoDocに記載されている。ALKISは、空間関連地図データと、空間関連でない書籍データと、を有する。このようにして、本方法に対しても、連邦州包括的に最小内容として決定された統一的な基本データストックが提供される。ALKIS等のデータベースは、ドイツ国外の別の多くの国々でも利用可能である。
【0029】
さらに、本発明において同様に、地理的地域または地理的地域全体の種々異なる領域の特徴を特徴付ける特徴情報の入手にも使用可能であるウィキペディアは、別のデータベースである。ウィキペディアは、例えば、気象データや人口データを供給するのに適している。
【0030】
これらのようなデータベースには存在していない、シミュレーション環境を作成するために必要な情報は、地理的地域または地理的地域全体の種々異なる領域の特徴を特徴付ける、利用可能な特徴情報を用いて導出される。これらのような導出される情報は、本明細書ではメタデータとも称される。したがって、このようにして、特定のエリアについて、例えば、十中八九そこに存在する建築物タイプを特定することができる。エリアが農業に利用される表面として識別される場合、そこには高層住宅および工場建築物は予想されず、わずかな建築密度で一戸建て住宅および農業建築物だけが予想される。メタデータを特定するために、次の典型的な関係も利用可能である。すなわち、中程度の人口密度は、一戸建てを有する居住区域を、極端に高い人口密度は、高層住宅を有する居住区域を示しており、低い人口密度と共に密度の高い建物は、工業区域または産業区域を示しており、低い人口密度は、農業地や自然地を示している。
【0031】
本発明の1つの実施例は、道路網および建物のトポロジからエリアの利用を推定するために、パターン認識に基づいて、土地利用データを特定するように構成されている。道路網のトポロジおよび建物のトポロジは、通例、例えば、さらに上の方で挙げた複数のデータベースのうちの1つから明らかに利用可能であり、ひいては正確にマッピング可能である。本明細書で説明する本発明の実施例によると、現実に忠実なシミュレーション環境を作成するために必要な情報は、暗黙的に導出される。これにより、必要な全ての情報を直接含まないデータベースを用いて作業することもできる。したがって結果として、土地のあらゆる場所に必要な情報が含まれるかまたは完成した3Dオブジェクトさえを含まれているデータベースを維持する必要はない。
【0032】
図1に示すように、本発明の1つの実施例によると、この方法の流れは、次のようである。
【0033】
第1の方法ステップS1では、3次元仮想オブジェクトを有する基本ライブラリを準備する。これらは、3次元シミュレーション環境を作成するために基本的に使用可能なオブジェクトである。これらのようなオブジェクトには基本的に、走行する自動車の周囲に現れ得る全てのオブジェクト、例えば、道路、建築物、植物等が含まれていてよい。この場合、本発明において肝要であるのは、基本ライブラリの3次元仮想オブジェクトの少なくとも一部が、種々異なるバージョンで格納されており、これらの種々異なるバージョンは、種々異なる季節におけるそれらの外観に関して異なっていることである。
【0034】
ステップS2では、ユーザによって入力された地理的地域の入力を検出する。これは、3次元シミュレーション環境を作成しようとしている地理的地域である。さらに、ステップS3では、3次元シミュレーション環境を作成しようしている季節の入力を検出する。季節も、ユーザによって入力されたパラメータである。ステップS2とステップS3とは、まとめてもよいかまたは同時に実行されてもよい。
【0035】
ステップS4では、地理的地域または地理的地域全体の種々異なる領域の特徴を特徴付ける特徴情報を取り込む。この際に本発明では特徴情報には、気候情報および人口数についての情報が含まれている。これに関しては、特に、このような特徴情報を取り込むために利用可能な、例示したデータベース、OSM、ALKISおよびウィキペディアについてのさらに上の説明を参照されたい。しかし既に上で同様に話題にしたように、これらの特徴情報には、通例、現実に忠実な3Dシミュレーション環境を作成するのに必要な全ての情報は含まれない。
【0036】
したがって、ステップS5では、特徴情報に基づき、地理的地域の種々異なる領域について、または地理的地域全体についての付加情報を導出する。ここで重要であるのは、本発明のように、特徴情報が土地利用情報を含まない場合には少なくとも土地利用情報も付加情報として導出することである。
【0037】
しかしながら特徴情報が、3Dシミュレーション環境を作成できるようにするために必要な範囲で土地利用情報を既に含んでいる場合、当然、これらは直接利用可能である。しかしながら、地域の領域が居住区域、工業区域、農業区域または自然区域に対応するか否かについての情報が、土地利用情報に含まれない場合、既にさらに上で同様に説明したように、例えば、人口密度を考慮し、メタデータとしてこれらの情報を導出することもできる。したがって本発明では、特徴情報には人口密度についての情報が含まれ、付加情報を導出するステップでは、人口密度についての情報から土地利用情報の少なくとも一部を推定する。
【0038】
次いでステップS6では、特徴情報および付加情報に基づき、地理的地域に現れる3次元仮想オブジェクトを基本ライブラリから特定し、この3次元仮想オブジェクトを地域ライブラリに格納する。換言すると、これにより、3Dシミュレーション環境を作成しようとしている、入力された地理的地域に基本的に適合する3次元仮想オブジェクトを元のライブラリから探索する。
【0039】
ステップS7では土地利用情報を用いて、同じ土地利用のセクタに地理的地域を細分化し、ステップS8ではそれぞれセクタについて、このセクタの土地利用に適合する3次元仮想オブジェクトを地域ライブラリから特定する。ステップS8では、種々異なる季節についてそれぞれ異なるバージョンが格納されているオブジェクトに関し、検出した季節に対応する、それぞれのセクタについてのそれぞれ1つのバージョンを選択する。このようにして、それぞれのエリアについて、すなわち、同じ土地利用のそれぞれのセクタに対し、対応する地理的地域だけについて、正しい3次元仮想オブジェクトを選び出すのではなく、ここから、それぞれのエリアにおいて、あらかじめ定められた季節にも十中八九で現れるオブジェクトも特定する。
【0040】
次いでステップS9では、それぞれのセクタについてその土地利用に基づいて特定した3次元仮想オブジェクトの選択をそれぞれのセクタに充填する。これにより、3次元シミュレーション環境を作成する方法を終了する。引き続き、センサデータストリームを評価する制御システムをテストするためのテストデータを生成するためにこの3次元シミュレーション環境を使用することができる。
【0041】
図2に略示したコンピュータ実施方法を、このために使用することができ、本方法は、次の方法ステップ、すなわち、仮想センサを搭載する仮想車両により、3次元シミュレーション環境の少なくとも一部を模擬的に通って移動するステップS10のステップと、記憶した3次元シミュレーション環境に対応する実環境を通って移動する際に実センサによって生成されたデータに対応する統合センサデータをセンサによって生成するステップS11のステップと、を有する。このようにして得られた統合センサデータは、次いで、センサデータストリームを評価する制御システムをテストするために使用可能である。
【0042】
ここでは、それぞれの季節を考慮するために、オブジェクトの少なくとも一部が、異なる季節におけるそれら外観に関して、異なるバージョンで格納されていることは必ずしも必要ではないことに注意されたい。これとは択一的に可能であるのは、基本ライブラリの3次元仮想オブジェクトは、種々異なる季節におけるそれらの外観に関してパラメータ化可能であるため、このようにしてこれらの仮想オブジェクトをこのようにしてそれぞれの季節に適合させることができることである。
【0043】
さらに本発明では、特徴情報に道路と建物の輪郭とを示す地図が含まれる場合、付加情報を導出するステップにおいて、地図に含まれる道路と建物の輪郭とに適用されるパターン認識を用いて、土地利用情報の少なくとも一部を推定するようにする。これにより、土地利用情報を特定する際の信頼性が改善され、このことは3Dシミュレーション環境のさらに現実に忠実な表現に結び付く。さらに、特徴情報に、地域に存在するアイテムの作成日が含まれるというようなことが当てはまる場合、本発明では、作成日から付加情報を導出するステップにおいて、土地利用情報の少なくとも一部を推定する。ここで具体的な実施例は、樹木の植え付けが行われた日付である。植え付けの年数を介し、3次元仮想オブジェクトとして表示される樹木のサイズを推定することができる。
図1
図2