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特許7525591心機能不全を予測及び処置するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】心機能不全を予測及び処置するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20240723BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20240723BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240723BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
G01N33/68
A61K31/519
A61P9/00
A61K45/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022502231
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 EP2020069693
(87)【国際公開番号】W WO2021009091
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】19186370.3
(32)【優先日】2019-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(73)【特許権者】
【識別番号】509319214
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ-エスト・クレテイユ・ヴァル・ドゥ・マルヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS-EST CRETEIL VAL DE MARNE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】サワキ,ダイゴ
(72)【発明者】
【氏名】チビック,ガーボル
(72)【発明者】
【氏名】デルモー,ジュヌヴィエーヴ
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-520463(JP,A)
【文献】特開平10-338637(JP,A)
【文献】特表2018-535678(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0075666(US,A1)
【文献】Chao-Hung Wang et al.,Disease Markers,2018年,Vol. 2018,Article ID 3784589,https://doi.org/10.1155/2018/3784589
【文献】Christian Delles et al.,European Journal of Heart Failure,2018年,Vol. 20,663-673,doi:10.1002/ejhf.1076
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得られた試料中のフェニルアラニンレベルを測定することを含む、対象が心機能不全を有するか又は有するリスクがあるかどうかを試験する方法であって、該フェニルアラニンレベルは、対象が、心機能不全を有するか又は有するリスクがあるかどうかを示し
心機能不全が、延長された弛緩、収縮速度低下、β-アドレナリン作動性応答減少、及び心筋硬度増加によって特徴付けられる心臓の老化である、方法。
【請求項2】
対象が、心機能不全についての1つ以上のリスク因子を示す対象、又はリスク因子を示さない対象、又は心機能不全について無症候である対象である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
リスク因子が、年齢、アルコール消費量、喫煙、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病、インシュリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、肝疾患、及び慢性腎疾患からなる群より選択される、請求項2記載の方法。
【請求項4】
対象が高齢対象である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
対象が肥満である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
対象が、フェニルケトン尿症(PKU)を含む、任意の病型の後天性又は遺伝性の高フェニルアラニン血症に罹患している、請求項1記載の方法。
【請求項7】
測定されたフェニルアラニンレベルを、所定の基準値と比較することを更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
測定されたフェニルアラニンレベルが、所定の基準値より高い場合、対象は、心機能不全を有するか又は有するリスクがあると結論付ける、請求項7記載の方法。
【請求項9】
心臓の老化が、心臓の早期老化である、請求項記載の方法。
【請求項10】
延長された弛緩、収縮速度低下、β-アドレナリン作動性応答減少、及び心筋硬度増加によって特徴付けられる心臓の老化である心機能不全のバイオマーカーとしてのフェニルアラニンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野:
本発明は、心臓病学の分野に存する。
【0002】
発明の背景:
老齢化している心筋は、進行的な心筋細胞の肥大、間質性線維症、及び炎症によって特徴付けられる構造的かつ機能的な変化を受け、最終的に拡張期及び収縮期の機能不全に至る1~3。心臓の老齢化の促進における大半の焦点は、脂質異常症、高血圧及び肥満などの確立されているリスク因子に置かれているが、アミノ酸についての可能性ある役割は、ほとんど注目を集めていない。数行のエビデンスにより、本発明者らは、心筋の老齢化に対する、血漿中の高いフェニルアラニン(PA)レベルの影響に興味が引かれた。第一に、近年のメタボロミック研究により、高齢者における白血球のテロメア長とフェニルアラニンレベルの負の相関が判明し、このことは、この必須アミノ酸のレベルの上昇が、全身の老化を促進する可能性があることを示唆する。第二に、血漿中の上昇したフェニルアラニンレベルは心不全を予測し、フェニルアラニンは心毒性があるという仮説が生じる。さらに、フェニルアラニンの異化におけるBH4依存性律速酵素であるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ(Pah)(その発現は生理学的に肝臓及び腎臓に限定されている)の転写物レベルは、老齢化しているマウス心臓において進行的に誘導されている。しかしながら、心臓の老化及び機能不全における上昇したフェニルアラニンレベルの役割は不明である。
【0003】
発明の要約:
特許請求の範囲によって定義されているように、本発明は、心機能不全を予測及び処置するための方法に関する。
【0004】
発明の詳細な説明:
ここで本発明者らは、上昇したフェニルアラニンレベルが、インビトロでは細胞質基質の酸化ストレス及び老化を誘発し、一方、インビボでは幼若マウスにおいて老年のような心臓の悪化をもたらしたことを示す。さらに、本発明者らは、肝臓におけるフェニルアラニンの異化が、p21依存的に年齢と共に下降し、一方、p21の欠乏は、加齢に関連した心機能不全を予防したことを実証した。最後に、本発明者らは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼの補因子であるBH4が、加齢に関連した血漿中フェニルアラニンレベルの上昇、及び老年性の心臓の変化を元に戻したことを発見した。これらの観察は、心臓の健康及び寿命を促進することに直接関連している。
【0005】
本発明は、対象から得られた試料中のフェニルアラニンレベルを決定する工程を含む、該対象が、心機能不全を有するか又は有するリスクがあるかどうかを予測する方法に関し、該レベルは、該対象が、心機能不全を有するか又は有するリスクがあるかどうかを示す。
【0006】
本明細書において使用する「心機能不全」という用語は、「心筋機能不全」とも呼ばれるが、これは当業者には公知である。該用語は、あらゆる種類の心機能不全に関し、より特定すると、該用語は、心臓のポンプ能に影響を及ぼす心機能不全に関する。特に、「心機能不全」という用語は、減少した酸素の供給量に対処するために、心筋収縮力、代謝、及び心室機能が低下している容態に関する。典型的には、心機能不全は、心リモデリング及び/又は心臓線維化及び/又は収縮機能(左心室駆出率(LVEF)、機能、又はストレイン)の障害、及び/又は拡張機能の障害を含む。心機能不全は無症候性であってもよく、あらゆる心不全症状から起こり得る。本発明によると、心機能不全は心臓の老化に関連している。
【0007】
本明細書において使用する「心臓の老化」という用語は、当技術分野におけるその一般的な意味を有し、最終的には心不全に至る、機能低下として顕現する心臓の老齢化を指す。心臓の老化は、定量的変化、例えば年齢と共に心筋細胞数の減少、及び定性的変化、例えば年齢と共に心筋細胞の特性の変化及び細胞外マトリックスのリモデリング、の両方によって特徴付けられ得る(31)。細胞レベルでは、老齢化は、筋細胞及び非筋細胞における細胞プロセスの調節異常を包含する。老化した心臓は、延長された弛緩、収縮速度低下、β-アドレナリン作動性応答減少、及び心筋硬度増加によって特徴付けられる。拡張機能のこのような障害は、高齢患者における心不全及び心房細動の発症率の増加の原因である(31)。内因性機能不全に加えて、老化細胞は、大半の場合、慢性的な無菌性炎症及び組織リモデリングを媒介することによって病的となる。さらに、心筋へのコラーゲンの蓄積及び細胞外マトリックスは、年齢と共に増加し、これは心筋硬度及び心臓拡張機能不全の原因となる。
【0008】
細胞老化現象は、様々な要因(例えば、酸化ストレス、代謝因子及び遺伝毒性物質)によって加速され得る。この場合、本発明者らは「早期老化」と言う。
【0009】
いくつかの実施態様では、心機能不全は心臓の老化である。
【0010】
したがって、いくつかの実施態様では、本発明は、対象から得られた試料中のフェニルアラニンレベルを決定する工程を含む、対象が、心臓の老化を有するか又は有するリスクがあるかどうかを予測する方法を指し、該レベルは、対象が、心臓の早期老化を有するか又は有するリスクがあるかどうかを示す。
【0011】
いくつかの実施態様では、心臓の老化は心臓の早期老化である。
【0012】
本明細書において使用する、本発明の文脈における「リスク」という用語は、事象が特定の期間にわたり起こるであろう確率に関し、対象の「絶対」リスク又は「相対」リスクを意味し得る。絶対リスクは、関連する時間コホートかけて測定した後の実際の観察を参考にして、又は関連する期間かけて経過観察していた統計学的に有効な歴史的コホートから展開された指標値を参考にして測定され得る。相対リスクは、低リスクのコホートの絶対リスク、又は平均的な集団のリスクのいずれかと比較した、対象の絶対リスクの比を指し、これはどのように臨床リスク因子が評価されるかによって変動し得る。無変換に対する、所与の試験結果に関する負の事象に対する正の事象の比率であるオッズ比も、一般的に使用される(オッズ比は式p/(1-p)に従い、ここでのpは事象の確率であり、(1-p)は、事象が全く起こらない確率である)。本発明の文脈における「リスク評価」又は「リスクの評価」は、ある事象又は疾患が起こり得る確率、オッズ比、又は可能性、事象又はある疾患から別の疾患への変換の発生する比率を予測することを包含する。リスク評価はまた、将来の臨床パラメーター、伝統的な実験室でのリスク因子の数値、又は、以前に測定された集団を参考にした、絶対的な見地若しくは相対的な見地のいずれかの、他の再発指数の予測も含み得る。本発明の方法を使用して、変換のリスクの連続的測定又はカテゴリー別の測定を行なうことができ、よって、変換のリスクがあると規定された対象のカテゴリーのリスク域の診断及び定義が行なわれ得る。カテゴリー別の概要では、本発明を使用して、正常な対象コホートと、リスクのより高い他の対象コホートとを識別することができる。いくつかの実施態様では、本発明を使用して、正常な対象からリスクのある対象を識別することができる。
【0013】
いくつかの実施態様では、対象は男性であっても、女性であってもよい。
【0014】
いくつかの実施態様では、対象は、心機能不全についての1つ以上のリスク因子(例えば、年齢、アルコール消費量、喫煙、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病/インシュリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、肝疾患、慢性腎疾患)を示す対象であっても、又はリスク因子を示さない対象であっても、又は心機能不全について無症候である対象(例えばスクリーニング試験の場合において)であってもよい。
【0015】
いくつかの実施態様では、対象は高齢の対象である。本明細書において使用する「高齢の対象」という用語は、65歳以上の成人患者を指す。
【0016】
いくつかの実施態様では、対象は肥満である。「肥満」という用語は、過剰な体脂肪によって特徴付けられる容態を指す。肥満の操作的定義は、肥満度指数(BMI)に基づき、これは、体重÷身長(m)の2乗(kg/m)として計算される。肥満は、さもなくば健康な対象が、30kg/m以上のBMIを有する容態、又は少なくとも1つの併存疾患を有する対象が27kg/m以上のBMIを有する容態を指す。「肥満対象」は、30kg/m以上のBMIを有するさもなくば健康な対象、又は、27kg/m以上のBMIを有する少なくとも1つの併存疾患を有する対象である。「肥満のリスクのある対象」は、25kg/mから30kg/m未満のBMIを有するさもなくば健康な対象、又は、25kg/mから27kg/m未満のBMIを有する少なくとも1つの併存疾患を有する対象である。肥満に関連したリスク増加は、アジア系の人々においてはより低いBMIでも起こり得る。日本を含む、アジア及びアジア太平洋諸国では、「肥満」は、対象が、25kg/m以上のBMIを有する容態を指す。これらの諸国における「肥満対象」は、25kg/m以上のBMIを有する、体重減少を必要とするか又は体重減少によって改善されるであろう、少なくとも1つの肥満によって誘発されるか又は肥満に関連した併存疾患を有する対象を指す。これらの諸国では、「肥満のリスクのある対象」は、23kg/mから25kg/m未満のBMIを有するヒトである。
【0017】
いくつかの実施態様では、対象は、1つの病型の後天性及び遺伝性の高フェニルアラニン血症(フェニルケトン尿症(PKU)を含む)に罹患している。
【0018】
本明細書において使用する「試料」という用語は、フェニルアラニンを含有しやすい対象から得られた任意の生物学的試料を指す。典型的には、試料としては、体液試料、例えば血液、腹水、尿、羊水、糞便、唾液、又は脳脊髄液が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施態様では、試料は血液試料である。「血液試料」によって、ある容量の全血又はその画分、例えば血清、血漿などを意味する。
【0019】
本明細書において使用する「フェニルアラニン」すなわち「PA」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有し、(S)-2-アミノ-3-フェニルプロパン酸というIUPAC名を有する化合物を指す。
【0020】
本発明によると、フェニルアラニンのレベルは、当技術分野において周知である任意の通例の方法によって決定され得る。典型的には、該レベルは、実施例に記載の通りに決定される。
【0021】
いくつかの実施態様では、本発明の方法は、決定されたフェニルアラニンレベルを、所定の基準値と比較する工程を含む。典型的には、所定の基準値は、閾値又はカットオフ値である。典型的には、「閾値」又は「カットオフ値」は、実験的に、経験的に、又は理論的に決定され得る。閾値はまた、当業者には認識されているであろうように、既存の実験及び/又は臨床条件に基づいて任意に選択されてもよい。例えば。適切に寄託された歴史的対象の試料における遡及的測定を、所定の基準値の確立に使用し得る。試験の関数及びベネフィット/リスクのバランス(偽陽性及び偽陰性の臨床結果)に従って、最適な感度及び特異度を得るように、閾値は決定されなければならない。典型的には、最適な感度及び特異度(及び、よって閾値)は、実験データに基づいた受信者動作特性(Receiver Operating Characteristic)(ROC)曲線を使用して決定され得る。ROC曲線の正式名は、受信者動作特性(receiver operator characteristic)曲線であり、これは、受信者操作特性(receiver operation characteristic)曲線としても知られている。ROC曲線は、真の陽性率(感度)及び偽の陽性率(1-特異度)の連続変数を反映する総合的な指標である。ROC曲線は、画像合成法を用いて感度と特異度の間の関係を明らかとする。一連の様々なカットオフ値(閾値又は臨界値、すなわち、診断試験の正常な結果と異常な結果との間の境界値)が、一連の感度及び特異度の数値を計算するための連続変数として設定される。次いで、曲線を描くために、感度は縦軸座標として使用され、特異度は横軸座標として使用される。曲線下面積(AUC)が高くなればなるほど、診断の正確度は高くなる。ROC曲線上では、座標図の左上端に最も近い点は、高い感度と高い特異度の数値の両方を有する臨界点である。ROC曲線のAUC値は、1.0~0.5である。AUCが0.5を上回る場合、AUCが1に近づくほど、診断結果はより良好となる。AUCが0.5~0.7である場合、正確度は低い。AUCが0.7~0.9である場合、正確度は中程度である。AUCが0.9より高い場合、正確度は高い。このアルゴリズム法は好ましくは、コンピューターを用いて実施される。当技術分野における既存のソフトウェア又はシステムをROC曲線の描写のために使用し得る:例えば、MedCalc9.2.0.1医学統計ソフトウェア、SPSS9.0、ROCPOWER.SAS、DESIGNROC.FOR、MULTIREADER POWER.SAS、CREATE-ROC.SAS、GB STAT VI0.0(ダイナミック・マイクロシステムズ社、シルバースプリング、メリーランド州、米国)など。
【0022】
いくつかの実施態様では、決定されたフェニルアラニンレベルが所定の基準値より高い場合、対象は、心機能不全を有するか又は有するリスクがあると結論付けられる。
【0023】
本発明の方法は、心機能不全の早期診断に特に適している。本明細書において使用する「早期診断」という用語は、症状又は一群の症状が出現する前に、対象における心機能不全の存在又は程度を早期に確立することを指す。
【0024】
したがって、本発明の方法は、心機能不全の発症を予防するのに適した療法を処方するのに特に適している。
【0025】
いくつかの実施態様では、心機能不全は心臓の老化である。
【0026】
いくつかの実施態様では、心臓の老化は、心臓の早期老化である。
【0027】
したがって、本発明はまた、対象から得られた試料中のフェニルアラニンレベルを決定する工程を含む、心臓老化の早期診断法も指し、ここで該レベルは、対象が心臓の老化を有するかどうかを示す。
【0028】
本発明のさらなる目的は、心機能不全のバイオマーカーとしてのフェニルアラニンの使用に関する。
【0029】
本発明のさらなる目的は、心臓の老化のバイオマーカーとしてのフェニルアラニンの使用に関する。
【0030】
いくつかの実施態様では、心臓の老化は、心臓の早期老化である。
【0031】
本発明のさらなる目的は、処置経過中に患者から得られた試料中のフェニルアラニンレベルを決定する工程を含む、該患者が、該患者の心機能不全の処置のために使用される薬物を用いて応答を達成するかどうかを決定する方法に関し、ここで該レベルの上昇は、該患者が応答を達成していないことを示すか、又は、ここで安定したレベル若しくは減少したレベルは、該患者が応答を達成していることを示す。
【0032】
いくつかの実施態様では、心機能不全は心臓の老化である。
【0033】
いくつかの実施態様では、心臓の老化は、心臓の早期老化である。
【0034】
したがって、前記方法は、レスポンダーとノンレスポンダーを区別するのに特に適している。本開示の文脈において、本明細書において使用する「レスポンダー」という用語は、応答を達成するであろう患者、すなわち、心機能不全が低下すなわち改善されている患者を指す。本発明によると、レスポンダーは、客観的な応答を示し、それ故、該用語は、安定化した心機能不全を有し、よって該疾患は治療後に進行していない患者は包含しない。ノンレスポンダー又は難治性患者は、心機能不全が、治療後に減少すなわち改善を示さない患者を含む。本発明によると、「ノンレスポンダー」という用語はまた、安定化した心機能不全を有する患者も含む。典型的には、レスポンダー又はノンレスポンダーとしての患者の特徴付けは、標準又は訓練セットへの参照によって行なわれ得る。標準は、レスポンダー又はノンレスポンダーであることが知られている患者のプロファイルであっても、あるいは代替的には数値であってもよい。このような所定の標準は、任意の適切な形態で、例えば印刷されたリスト若しくは図、コンピューターソフトウェアプログラム、又は他の媒体として与えられてもよい。患者がノンレスポンダーであると結論付けられる場合、医師は、あらゆるさらなる有害な副作用を回避するために治療を停止するか、又は応答を改善するために用量を調整する決断を行なうことができる。
【0035】
本発明のさらなる目的は、フェニルアラニンの異化を増加させることができる(すなわち、フェニルアラニンの分解を促進することができる)治療に有効な薬剤をそれを必要とする患者に投与し、これによりフェニルアラニンレベルを低下させる工程を含む、該患者における心機能不全を処置する方法に関する。
【0036】
いくつかの実施態様では、対象は、上記のような診断法によって決定されるような、心機能不全を有するか又は有するリスクがあると判断される。
【0037】
いくつかの実施態様では、心機能不全は心臓の老化である。
【0038】
したがって、本発明は、フェニルアラニンの異化を増加させることができる(すなわち、フェニルアラニンの分解を促進することができる)治療に有効な薬剤をそれを必要とする患者に投与し、これによりフェニルアラニンレベルを低下させる工程を含む、該患者における心臓の老化を処置する方法に関する。
【0039】
いくつかの実施態様では、心臓の老化は、心臓の早期老化である。
【0040】
本明細書において使用する「処置」又は「処置する」という用語は、予防的又は防止的処置、並びに、治癒的又は疾患修飾的処置(疾患を罹患するリスクのある又は疾患を罹患したと疑われる患者の処置、並びに、病気であるか又は疾患若しくは医学的容態に罹患していると診断されている患者の処置を含む)の両方を指し、臨床的再発の抑制も含む。処置は、医学的障害を有しているか又は最終的に障害に罹患する可能性がある対象に、障害若しくは再発している障害の発症を予防、治癒、遅延するために、その重症度を低減するために、又はその1つ以上の症状を寛解するために、あるいは、このような処置を行なわない場合に予想される生存期間を超えるように対象の生存期間を延長するために投与され得る。「治療処方計画」によって、病気の処置パターン、例えば、治療中に使用される投薬パターンを意味する。治療処方計画は、誘導処方計画及び維持処方計画を含み得る。「誘導処方計画」又は「誘導期間」という語句は、疾患の初期処置のために使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。誘導処方計画の一般的目標は、処置処方計画の初期期間中に対象に高いレベルの薬物を提供することである。誘導処方計画は(部分的に又は全体的に)「負荷処方計画」を使用し得、これは医師が維持処方計画中に使用するであろうよりも多くの用量の薬物を投与すること、医師が維持処方計画中に投与するであろうよりも頻繁に薬物を投与すること、又はその両方を含み得る。「維持処方計画」又は「維持期間」という語句は、例えば、長期間(数か月又は数年間)にわたり患者を寛解状態に保つために、病気の処置中に患者の維持のために使用される治療処方計画(又は治療処方計画の一部)を指す。維持処方計画は、連続的療法(例えば、規則的な間隔で、例えば週1回、月1回、年1回などに薬物を投与する)又は断続的療法(例えば、間断的処置、断続的処置、再発時における処置、又は特定の予め決定された基準[例えば疾患の顕現など]に到達した場合の処置)を使用し得る。
【0041】
特に、本発明の治療法は、高齢の患者、及び/又は肥満患者、及び/又は心機能不全についての1つ以上のリスク因子(例えば、年齢、アルコール消費量、喫煙、メタボリックシンドローム、肥満、糖尿病/インシュリン抵抗性、高血圧、脂質異常症、肝疾患、慢性腎疾患)を示す患者、並びに/あるいは、任意の病型の後天性及び遺伝性の高フェニルアラニン血漿(フェニルケトン尿症(PKU)を含む)に罹患している患者における、心機能不全の予防的処置に特に適している。
【0042】
いくつかの実施態様では、心機能不全は心臓の老化である。
【0043】
いくつかの実施態様では、心臓の老化は、心臓の早期老化である。
【0044】
本明細書において使用する「予防」又は「予防的使用」及び「予防的処置」という用語は、その目的が疾患を予防することである、任意の医学的手順又は公衆衛生手順を指す。本明細書において使用する「予防する」、「予防」及び「予防すること」という用語は、病気ではないが、疾患を有する対象に近いか又は近い可能性がある、対象における、所与の容態を獲得若しくは発症するリスクの低減、又は該容態の再発の低減若しくは阻止を指す。
【0045】
いくつかの実施態様では、前記薬剤は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(PAH)を再活性化することができる。
【0046】
いくつかの実施態様では、前記薬剤は、BH4である。本明細書において使用する「BH4」という用語は当技術分野におけるその一般的な意味を有し、サプロプテリンとしても知られるテトラヒドロビオプテリン(THB)を指す。BH4は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼの補因子である。IUPAC名は、2-アミノ-6-(1,2-ジヒドロキシプロピル)-5,6,7,8-テトラヒドロ-3H-プテリジン-4-オンである。二塩酸塩の形態のBH4は、商標名クバン(Kuvan)(登録商標)で市販されている。
【0047】
上記のような薬剤の「治療有効量」によって、任意の医学的処置に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比でがんを処置するための阻害剤の十分量を意味する。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の1日総使用量は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医師によって決定されるだろうことが理解されるだろう。任意の特定の患者に対する具体的な治療有効投与量レベルは、処置される障害及び障害の重度;使用される具体的な化合物の活性;使用される具体的な組成、対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食事;使用される具体的な化合物の投与時刻、投与経路、及び排泄速度;処置期間;使用される具体的なポリペプチドと組み合わせて又は同時に使用される薬物;並びに、医学分野において周知である同様な要因をはじめとする、様々な要因に依存するだろう。例えば、所望の治療効果を達成するのに必要とされるよりも低いレベルで化合物の用量を開始し、所望の効果が達成されるまで次第に用量を増加させることは十分に当分野の技能範囲内である。しかしながら、製品の1日量は、1日あたり成人1人あたり0.01mg~1,000mgまでの幅広い範囲にわたって変動し得る。典型的には、該組成物は、処置される対象への症候による用量の調整のために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250及び500mgの活性成分を含有している。医薬品は典型的には、約0.01mg~約500mgの活性成分、好ましくは1mg~約100mgの活性成分を含有している。有効量の薬物は、通常、1日あたり体重1kgあたり0.0002mg/kg~約20mg/kg、特に1日あたり体重1kgあたり約0.001mg/kg~7mg/kgの用量レベルで供給される。
【0048】
本発明によると、前記薬剤は、医薬組成物の形で対象に投与される。典型的には、該薬剤は、薬学的に許容される賦形剤、及び場合により持続放出マトリックス、例えば生分解性ポリマーと組み合わせて、治療用組成物を形成し得る。「薬学的に」又は「薬学的に許容される」は、哺乳動物、特にヒトに適宜投与された場合に、有害反応、アレルギー反応、又は他の都合の悪い反応を生じない分子実体及び組成物を指す。薬学的に許容される担体又は賦形剤は、無毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料、又は任意のタイプの製剤化補助剤を指す。経口、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所、又は直腸投与用の本発明の医薬組成物において、活性成分は単独で又は別の活性成分と組み合わせて、単位投与剤形で、慣用的な薬学的支持体との混合物として、動物及びヒトに投与することができる。適切な単位投与剤形は、経口経路剤形、例えば錠剤、ゲルカプセル剤、散剤、顆粒剤、及び経口用懸濁剤又は液剤、舌下及び頬側投与剤形、エアゾール、埋込剤、皮下、経皮、局所、腹腔内、筋肉内、静脈内、真皮下、経皮、くも膜下腔内、及び鼻腔内投与剤形、並びに直腸投与剤形を含む。典型的には、医薬組成物は、注射され得る製剤にとって薬学的に許容されるビヒクルを含有している。これらは、特に、等張で無菌の食塩水溶液(リン酸一ナトリウム若しくはリン酸二ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム若しくは塩化マグネシウムなど、又はこのような塩の混合物)、又は場合に応じて滅菌水若しくは生理食塩水を添加すると注射液の復元を可能とする乾燥させた、特に凍結乾燥させた組成物であり得る。注射用途に適した医薬剤形としては、無菌水溶液又は分散液;ゴマ油、ピーナッツ油、又は水性プロピレングリコールを含む製剤;及び、無菌注射液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。全ての場合において、剤形は無菌でなければならず、シリンジが容易に扱える程度に流動性でなければならない。それは、製造及び保存の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用から防腐されていなければならない。したがって、pHは、送達される薬剤が安定である数値に調整され得るか、又は、適切な補助剤、例えば抗酸化剤又は他の安定化剤が、該薬剤の早期消滅を防ぐために添加される。本発明の化合物を遊離塩基又は薬理学的に許容される塩として含む溶液は、ヒドロキシプロピルセルロース又はシクロデキストリンなどの界面活性剤と適切に混合された水中において調製され得る。分散液はまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びその混合物中において並びに油中において調製され得る。通常の保存及び使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防ぐ保存剤を含有している。該薬剤は、中性形又は塩の形の組成物へと製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基を用いて形成される)が挙げられ、これは無機酸、例えば塩酸若しくはリン酸、又はこのような有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などを用いて形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩はまた、無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化鉄、及びこのような有機塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどから誘導され得る。担体はまた、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物、及び植物油を含有している溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤の使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の防御は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいだろう。注射用組成物の吸収延長は、該組成物中に吸収を遅延させる物質、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを使用することによってもたらされ得る。無菌注射液は、必要量の活性化合物を適切な溶媒中に、必要であれば上記に列挙された他のいくつかの成分と共に取り込み、その後、滅菌ろ過することによって調製される。一般的に、分散液は、様々な滅菌された活性成分を、基本分散媒体と上記に列挙された成分の中からの必要とされる他の成分とを含有している無菌ビヒクルに取り込むことによって調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、典型的な調製法は真空乾燥及び凍結乾燥技術であり、これにより、以前に滅菌ろ過されたその溶液から活性成分と任意の追加の所望の成分の粉末が得られる。直接注射のためのより濃縮された又は高度に濃縮された溶液の調製も考えられ、ここでの溶媒としてのDMSOの使用は極めて急速な浸透をもたらし、高濃度の活性薬剤を送達すると考えられる。製剤化時に、液剤は、投与製剤と適合性の様式で、かつ治療的に有効な量で投与されるだろう。製剤は、様々な剤形で、例えば上記のタイプの注射液で容易に投与されるが、薬物放出カプセルなども使用することができる。水溶液での非経口投与のために、例えば、液剤は、必要であれば適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤は、まず、十分な食塩水又はブドウ糖を用いて等張とすべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与のために特に適している。これに関連して、使用され得る無菌水性媒体は、本開示に鑑みて当業者には公知であろう。用量の幾分の変更が、処置される対象の容態に依存して必然的に行なわれるだろう。投与責任者は、いずれの事象においても、個々の対象に対する適切な用量を決定するだろう。
【0049】
本発明は、以下の図面及び実施例によってさらに説明されるだろう。しかしながら、これらの実施例及び図面は、いずれにしても、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきできではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】フェニルアラニン(PA)は老化を誘発する。a.PA(5mM)又はビヒクルで処置されたC2C12細胞における示された老化マーカーの定量を伴うイムノブロット(n=6/群)。b.定量を伴うPA濃度の関数としてのp21のイムノブロット(n=4/濃度)。c.示されているような定量を伴う、PA(5mM)、BH4(10μM)、及び4-クロロフェニルアラニン(1.5mM)を用いての処置後のp21タンパク質レベル(n=4/条件)。d.示されているようなPA、BH4、及び4-クロロフェニルアラニンを用いての処置後のC2C12細胞へのEdUの取り込みの定量(n=4/条件)。e.PA濃度の関数としてのC2C12細胞の細胞質基質におけるスーパーオキシドレベル(CellROXプローブを用いた)(n=4/濃度)。f.示されているようなPA、BH4、及び4-クロロフェニルアラニンを用いて処置されているような細胞質基質におけるスーパーオキシドレベル(n=4/条件)。g.PA(5mM)及び/又はBH4(10μM)対ビヒクルを用いて処置された初代成体ラット心筋細胞におけるp21のイムノブロット。データは、イムノブロット原画像(a~c)及び一元分散分析とボンフェローニ事後検定を用いて分析された平均値±平均値の標準誤差(a~f)として提示される;ns:有意ではない、示されているように*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図2a-d】p21の欠乏は、心筋における老年性の分子的、構造的及び機能的変化から保護する。a.2か月令及び15か月令の野生型マウス及びp21-/-マウスにおける血漿中PAレベル(n=9~10/群)。b.2か月令及び15か月令の野生型マウスの心臓のイムノブロット分析(n=3/年齢)。c.高齢の野生型の心臓において、心筋マーカーのトロポニンI及び線維芽細胞マーカーのビメンチンとp21は共局在しているが、CD31とは共局在していない。d.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心臓における4-ヒドロキシノネナール陽性面積の比率(n=4/条件)。e.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステイン(及び混ぜ合わせたもの)の代表的な免疫蛍光画像(n=3/条件)。f.示された年齢のヒト心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステイン(及び混ぜ合わせたもの)の代表的な免疫蛍光画像。g.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの脛骨の長さ(tibia length)に対する心臓の重量(heart weight)(HW/TL)(n=8~11/条件)。h.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心筋間質性線維症(シリウスレッド)の定量(n=4/条件)。i~k.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの収縮期ストレインレート(i)、dP/dtmax(j)及びdP/dtmin(k)(n=8~11/条件)。パネルcにおける顕微鏡画像について、拡大率:400倍、尺度バー:50μm、パネルe~f:200倍、尺度バー:100μm。データは、原画像(b~c、e~f)として、又は一元分散分析とボンフェローニ事後検定を用いて分析された平均値±平均値の標準誤差として(a、d、g~k)提示される;ns:有意ではない、示されているように*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図2e】p21の欠乏は、心筋における老年性の分子的、構造的及び機能的変化から保護する。a.2か月令及び15か月令の野生型マウス及びp21-/-マウスにおける血漿中PAレベル(n=9~10/群)。b.2か月令及び15か月令の野生型マウスの心臓のイムノブロット分析(n=3/年齢)。c.高齢の野生型の心臓において、心筋マーカーのトロポニンI及び線維芽細胞マーカーのビメンチンとp21は共局在しているが、CD31とは共局在していない。d.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心臓における4-ヒドロキシノネナール陽性面積の比率(n=4/条件)。e.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステイン(及び混ぜ合わせたもの)の代表的な免疫蛍光画像(n=3/条件)。f.示された年齢のヒト心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステイン(及び混ぜ合わせたもの)の代表的な免疫蛍光画像。g.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの脛骨の長さ(tibia length)に対する心臓の重量(heart weight)(HW/TL)(n=8~11/条件)。h.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心筋間質性線維症(シリウスレッド)の定量(n=4/条件)。i~k.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの収縮期ストレインレート(i)、dP/dtmax(j)及びdP/dtmin(k)(n=8~11/条件)。パネルcにおける顕微鏡画像について、拡大率:400倍、尺度バー:50μm、パネルe~f:200倍、尺度バー:100μm。データは、原画像(b~c、e~f)として、又は一元分散分析とボンフェローニ事後検定を用いて分析された平均値±平均値の標準誤差として(a、d、g~k)提示される;ns:有意ではない、示されているように*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図2f】p21の欠乏は、心筋における老年性の分子的、構造的及び機能的変化から保護する。a.2か月令及び15か月令の野生型マウス及びp21-/-マウスにおける血漿中PAレベル(n=9~10/群)。b.2か月令及び15か月令の野生型マウスの心臓のイムノブロット分析(n=3/年齢)。c.高齢の野生型の心臓において、心筋マーカーのトロポニンI及び線維芽細胞マーカーのビメンチンとp21は共局在しているが、CD31とは共局在していない。d.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心臓における4-ヒドロキシノネナール陽性面積の比率(n=4/条件)。e.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステイン(及び混ぜ合わせたもの)の代表的な免疫蛍光画像(n=3/条件)。f.示された年齢のヒト心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステイン(及び混ぜ合わせたもの)の代表的な免疫蛍光画像。g.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの脛骨の長さ(tibia length)に対する心臓の重量(heart weight)(HW/TL)(n=8~11/条件)。h.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心筋間質性線維症(シリウスレッド)の定量(n=4/条件)。i~k.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの収縮期ストレインレート(i)、dP/dtmax(j)及びdP/dtmin(k)(n=8~11/条件)。パネルcにおける顕微鏡画像について、拡大率:400倍、尺度バー:50μm、パネルe~f:200倍、尺度バー:100μm。データは、原画像(b~c、e~f)として、又は一元分散分析とボンフェローニ事後検定を用いて分析された平均値±平均値の標準誤差として(a、d、g~k)提示される;ns:有意ではない、示されているように*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図2g-k】p21の欠乏は、心筋における老年性の分子的、構造的及び機能的変化から保護する。a.2か月令及び15か月令の野生型マウス及びp21-/-マウスにおける血漿中PAレベル(n=9~10/群)。b.2か月令及び15か月令の野生型マウスの心臓のイムノブロット分析(n=3/年齢)。c.高齢の野生型の心臓において、心筋マーカーのトロポニンI及び線維芽細胞マーカーのビメンチンとp21は共局在しているが、CD31とは共局在していない。d.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心臓における4-ヒドロキシノネナール陽性面積の比率(n=4/条件)。e.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステイン(及び混ぜ合わせたもの)の代表的な免疫蛍光画像(n=3/条件)。f.示された年齢のヒト心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステイン(及び混ぜ合わせたもの)の代表的な免疫蛍光画像。g.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの脛骨の長さ(tibia length)に対する心臓の重量(heart weight)(HW/TL)(n=8~11/条件)。h.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの心筋間質性線維症(シリウスレッド)の定量(n=4/条件)。i~k.示された年齢における野生型マウス及びp21-/-マウスの収縮期ストレインレート(i)、dP/dtmax(j)及びdP/dtmin(k)(n=8~11/条件)。パネルcにおける顕微鏡画像について、拡大率:400倍、尺度バー:50μm、パネルe~f:200倍、尺度バー:100μm。データは、原画像(b~c、e~f)として、又は一元分散分析とボンフェローニ事後検定を用いて分析された平均値±平均値の標準誤差として(a、d、g~k)提示される;ns:有意ではない、示されているように*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3a-d】フェニルアラニン(PA)は心臓の老齢化の駆動因子である。a.処置及び評価のプロトコールの図解。b.6か月令及び12か月令のビヒクルで処置された野生型マウス又はフェニルアラニンで処置された野生型マウスにおける、血漿中フェニルアラニンレベル(n=8~11/条件)。c.同じ群についての脛骨の長さに対する心臓の重量(HW/TL)(n=8~11/条件)。d.同じ群について小麦胚細胞凝集素(WGA)、シリウスレッド、ビメンチンで染色された心臓の代表的画像(n=4/条件)。e~g.上記と同じ動物の心臓における、心筋細胞の断面積(CSA;n=4/群)、間質性線維症(シリウスレッド、f;n=4/群)、及びビメンチン陽性面積(g;n=4/群)の定量。h~k.上記と同じ動物における、左心室駆出率(h)、収縮期ストレインレート(i)、dP/dtmax(j)及びdP/dtmin(k;n=8~11/条件)。l.上記と同じ動物における、心筋におけるp21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1、2-スクシニルシステイン、及び4-ヒドロキシノネナールの代表的な顕微鏡画像(n=3~4/条件)。全ての顕微鏡画像について、拡大率:200倍、尺度バー:50μm。データは、原画像(d及びl)として、又は一元分散分析とボンフェローニ事後検定を用いて分析された平均値±平均値の標準誤差として(b~c、e~k)提示される;ns:有意ではない、示されているように*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3e-i】フェニルアラニン(PA)は心臓の老齢化の駆動因子である。a.処置及び評価のプロトコールの図解。b.6か月令及び12か月令のビヒクルで処置された野生型マウス又はフェニルアラニンで処置された野生型マウスにおける、血漿中フェニルアラニンレベル(n=8~11/条件)。c.同じ群についての脛骨の長さに対する心臓の重量(HW/TL)(n=8~11/条件)。d.同じ群について小麦胚細胞凝集素(WGA)、シリウスレッド、ビメンチンで染色された心臓の代表的画像(n=4/条件)。e~g.上記と同じ動物の心臓における、心筋細胞の断面積(CSA;n=4/群)、間質性線維症(シリウスレッド、f;n=4/群)、及びビメンチン陽性面積(g;n=4/群)の定量。h~k.上記と同じ動物における、左心室駆出率(h)、収縮期ストレインレート(i)、dP/dtmax(j)及びdP/dtmin(k;n=8~11/条件)。l.上記と同じ動物における、心筋におけるp21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1、2-スクシニルシステイン、及び4-ヒドロキシノネナールの代表的な顕微鏡画像(n=3~4/条件)。全ての顕微鏡画像について、拡大率:200倍、尺度バー:50μm。データは、原画像(d及びl)として、又は一元分散分析とボンフェローニ事後検定を用いて分析された平均値±平均値の標準誤差として(b~c、e~k)提示される;ns:有意ではない、示されているように*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図3j-l】フェニルアラニン(PA)は心臓の老齢化の駆動因子である。a.処置及び評価のプロトコールの図解。b.6か月令及び12か月令のビヒクルで処置された野生型マウス又はフェニルアラニンで処置された野生型マウスにおける、血漿中フェニルアラニンレベル(n=8~11/条件)。c.同じ群についての脛骨の長さに対する心臓の重量(HW/TL)(n=8~11/条件)。d.同じ群について小麦胚細胞凝集素(WGA)、シリウスレッド、ビメンチンで染色された心臓の代表的画像(n=4/条件)。e~g.上記と同じ動物の心臓における、心筋細胞の断面積(CSA;n=4/群)、間質性線維症(シリウスレッド、f;n=4/群)、及びビメンチン陽性面積(g;n=4/群)の定量。h~k.上記と同じ動物における、左心室駆出率(h)、収縮期ストレインレート(i)、dP/dtmax(j)及びdP/dtmin(k;n=8~11/条件)。l.上記と同じ動物における、心筋におけるp21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1、2-スクシニルシステイン、及び4-ヒドロキシノネナールの代表的な顕微鏡画像(n=3~4/条件)。全ての顕微鏡画像について、拡大率:200倍、尺度バー:50μm。データは、原画像(d及びl)として、又は一元分散分析とボンフェローニ事後検定を用いて分析された平均値±平均値の標準誤差として(b~c、e~k)提示される;ns:有意ではない、示されているように*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図4a-f】BH4は、肝臓におけるフェニルアラニンの異化を増強することによって、血漿中フェニルアラニンレベル及び老年性の心臓の悪化を救出する。a.BH4又はビヒクルで腹腔内処置された12.5か月令の野生型マウスにおける血漿中フェニルアラニンレベル(n=8~10/群)。b~f.上記のように処置されたマウスにおける、脛骨の長さに対する心臓の重量(b;HW/TL)、収縮期ストレインレート(c)、dP/dtmax(d)dP/dtmin(e)、及び動脈圧(f;n=9~10/群)。g~h.心筋におけるシリウスレッド(g)及びビメンチン(h)による染色の定量(n=4/群)。i.BH4又はビヒクルで腹腔内処置された12.5か月令の野生型マウスにおける、心筋における一酸化窒素シンターゼ活性(NOS;n=9~10/群)。j.上記のようなp21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1及び2-スクシニルシステインの免疫蛍光(n=4/群)。k.2か月令及び15か月令の野生型マウス及びp21-/-マウスの肝臓の代表的なフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及びGTPシクロヒドロラーゼ1の免疫蛍光画像(n=3/群)。l.示されているような2か月令及び15か月令の野生型における老化マーカーのイムノブロット(n=3/年齢)。m.フェニルアラニンの皮下投与後又は年齢の上昇に伴う、肝臓内フェニルアラニン含量(n=9~10/群)。n.添加されたフェニルアラニン(0~10mM)の関数としてのAML-12肝細胞に由来するp21のイムノブロット。o.p21又はスクランブルsiRNA(scr;n=3/条件)を用いた、ビヒクル(VEH)及びヌトリン3a(NU)で処置されたAML-12肝細胞のイムノブロット。p~q.ビヒクル又はヌトリン3a、及びp21又はスクランブルsiRNAで処置された(p)、並びに、BH4の非存在下又は存在下でヌトリン3aで処置された(q;n=5~6/群)、AML-12細胞の培地中のチロシンレベル。r.ヌトリン3a+/-BH4で処置されたAML-12細胞におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼのイムノブロット(n=3/群)。s.ビヒクル及びBH4で処置された12.5か月令の野生型マウスの肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼの代表的な免疫蛍光画像(n=3/群)。t.BH4又はビヒクルで処置された12.5か月令の野生型マウスにおける肝臓内のフェニルアラニン含量(n=9~10/群)。u.肝ドナーに由来する生検材料における、年齢に対するPAHの標準化された発現(n=33)。顕微鏡画像については、拡大率:200倍、尺度バー:50μm。データは、原画像(j~l、n~o、r~s)又は平均値±平均値の標準誤差として提示され、両側の対応のないt検定(a~i、q、t)、一元分散分析とボンフェローニ事後検定(m及びp)、又は線形回帰分析(u)を用いて分析される;ns:有意ではない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図4g-k】BH4は、肝臓におけるフェニルアラニンの異化を増強することによって、血漿中フェニルアラニンレベル及び老年性の心臓の悪化を救出する。a.BH4又はビヒクルで腹腔内処置された12.5か月令の野生型マウスにおける血漿中フェニルアラニンレベル(n=8~10/群)。b~f.上記のように処置されたマウスにおける、脛骨の長さに対する心臓の重量(b;HW/TL)、収縮期ストレインレート(c)、dP/dtmax(d)dP/dtmin(e)、及び動脈圧(f;n=9~10/群)。g~h.心筋におけるシリウスレッド(g)及びビメンチン(h)による染色の定量(n=4/群)。i.BH4又はビヒクルで腹腔内処置された12.5か月令の野生型マウスにおける、心筋における一酸化窒素シンターゼ活性(NOS;n=9~10/群)。j.上記のようなp21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1及び2-スクシニルシステインの免疫蛍光(n=4/群)。k.2か月令及び15か月令の野生型マウス及びp21-/-マウスの肝臓の代表的なフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及びGTPシクロヒドロラーゼ1の免疫蛍光画像(n=3/群)。l.示されているような2か月令及び15か月令の野生型における老化マーカーのイムノブロット(n=3/年齢)。m.フェニルアラニンの皮下投与後又は年齢の上昇に伴う、肝臓内フェニルアラニン含量(n=9~10/群)。n.添加されたフェニルアラニン(0~10mM)の関数としてのAML-12肝細胞に由来するp21のイムノブロット。o.p21又はスクランブルsiRNA(scr;n=3/条件)を用いた、ビヒクル(VEH)及びヌトリン3a(NU)で処置されたAML-12肝細胞のイムノブロット。p~q.ビヒクル又はヌトリン3a、及びp21又はスクランブルsiRNAで処置された(p)、並びに、BH4の非存在下又は存在下でヌトリン3aで処置された(q;n=5~6/群)、AML-12細胞の培地中のチロシンレベル。r.ヌトリン3a+/-BH4で処置されたAML-12細胞におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼのイムノブロット(n=3/群)。s.ビヒクル及びBH4で処置された12.5か月令の野生型マウスの肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼの代表的な免疫蛍光画像(n=3/群)。t.BH4又はビヒクルで処置された12.5か月令の野生型マウスにおける肝臓内のフェニルアラニン含量(n=9~10/群)。u.肝ドナーに由来する生検材料における、年齢に対するPAHの標準化された発現(n=33)。顕微鏡画像については、拡大率:200倍、尺度バー:50μm。データは、原画像(j~l、n~o、r~s)又は平均値±平均値の標準誤差として提示され、両側の対応のないt検定(a~i、q、t)、一元分散分析とボンフェローニ事後検定(m及びp)、又は線形回帰分析(u)を用いて分析される;ns:有意ではない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図4l-t】BH4は、肝臓におけるフェニルアラニンの異化を増強することによって、血漿中フェニルアラニンレベル及び老年性の心臓の悪化を救出する。a.BH4又はビヒクルで腹腔内処置された12.5か月令の野生型マウスにおける血漿中フェニルアラニンレベル(n=8~10/群)。b~f.上記のように処置されたマウスにおける、脛骨の長さに対する心臓の重量(b;HW/TL)、収縮期ストレインレート(c)、dP/dtmax(d)dP/dtmin(e)、及び動脈圧(f;n=9~10/群)。g~h.心筋におけるシリウスレッド(g)及びビメンチン(h)による染色の定量(n=4/群)。i.BH4又はビヒクルで腹腔内処置された12.5か月令の野生型マウスにおける、心筋における一酸化窒素シンターゼ活性(NOS;n=9~10/群)。j.上記のようなp21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1及び2-スクシニルシステインの免疫蛍光(n=4/群)。k.2か月令及び15か月令の野生型マウス及びp21-/-マウスの肝臓の代表的なフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及びGTPシクロヒドロラーゼ1の免疫蛍光画像(n=3/群)。l.示されているような2か月令及び15か月令の野生型における老化マーカーのイムノブロット(n=3/年齢)。m.フェニルアラニンの皮下投与後又は年齢の上昇に伴う、肝臓内フェニルアラニン含量(n=9~10/群)。n.添加されたフェニルアラニン(0~10mM)の関数としてのAML-12肝細胞に由来するp21のイムノブロット。o.p21又はスクランブルsiRNA(scr;n=3/条件)を用いた、ビヒクル(VEH)及びヌトリン3a(NU)で処置されたAML-12肝細胞のイムノブロット。p~q.ビヒクル又はヌトリン3a、及びp21又はスクランブルsiRNAで処置された(p)、並びに、BH4の非存在下又は存在下でヌトリン3aで処置された(q;n=5~6/群)、AML-12細胞の培地中のチロシンレベル。r.ヌトリン3a+/-BH4で処置されたAML-12細胞におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼのイムノブロット(n=3/群)。s.ビヒクル及びBH4で処置された12.5か月令の野生型マウスの肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼの代表的な免疫蛍光画像(n=3/群)。t.BH4又はビヒクルで処置された12.5か月令の野生型マウスにおける肝臓内のフェニルアラニン含量(n=9~10/群)。u.肝ドナーに由来する生検材料における、年齢に対するPAHの標準化された発現(n=33)。顕微鏡画像については、拡大率:200倍、尺度バー:50μm。データは、原画像(j~l、n~o、r~s)又は平均値±平均値の標準誤差として提示され、両側の対応のないt検定(a~i、q、t)、一元分散分析とボンフェローニ事後検定(m及びp)、又は線形回帰分析(u)を用いて分析される;ns:有意ではない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
図4u】BH4は、肝臓におけるフェニルアラニンの異化を増強することによって、血漿中フェニルアラニンレベル及び老年性の心臓の悪化を救出する。a.BH4又はビヒクルで腹腔内処置された12.5か月令の野生型マウスにおける血漿中フェニルアラニンレベル(n=8~10/群)。b~f.上記のように処置されたマウスにおける、脛骨の長さに対する心臓の重量(b;HW/TL)、収縮期ストレインレート(c)、dP/dtmax(d)dP/dtmin(e)、及び動脈圧(f;n=9~10/群)。g~h.心筋におけるシリウスレッド(g)及びビメンチン(h)による染色の定量(n=4/群)。i.BH4又はビヒクルで腹腔内処置された12.5か月令の野生型マウスにおける、心筋における一酸化窒素シンターゼ活性(NOS;n=9~10/群)。j.上記のようなp21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1及び2-スクシニルシステインの免疫蛍光(n=4/群)。k.2か月令及び15か月令の野生型マウス及びp21-/-マウスの肝臓の代表的なフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及びGTPシクロヒドロラーゼ1の免疫蛍光画像(n=3/群)。l.示されているような2か月令及び15か月令の野生型における老化マーカーのイムノブロット(n=3/年齢)。m.フェニルアラニンの皮下投与後又は年齢の上昇に伴う、肝臓内フェニルアラニン含量(n=9~10/群)。n.添加されたフェニルアラニン(0~10mM)の関数としてのAML-12肝細胞に由来するp21のイムノブロット。o.p21又はスクランブルsiRNA(scr;n=3/条件)を用いた、ビヒクル(VEH)及びヌトリン3a(NU)で処置されたAML-12肝細胞のイムノブロット。p~q.ビヒクル又はヌトリン3a、及びp21又はスクランブルsiRNAで処置された(p)、並びに、BH4の非存在下又は存在下でヌトリン3aで処置された(q;n=5~6/群)、AML-12細胞の培地中のチロシンレベル。r.ヌトリン3a+/-BH4で処置されたAML-12細胞におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼのイムノブロット(n=3/群)。s.ビヒクル及びBH4で処置された12.5か月令の野生型マウスの肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼの代表的な免疫蛍光画像(n=3/群)。t.BH4又はビヒクルで処置された12.5か月令の野生型マウスにおける肝臓内のフェニルアラニン含量(n=9~10/群)。u.肝ドナーに由来する生検材料における、年齢に対するPAHの標準化された発現(n=33)。顕微鏡画像については、拡大率:200倍、尺度バー:50μm。データは、原画像(j~l、n~o、r~s)又は平均値±平均値の標準誤差として提示され、両側の対応のないt検定(a~i、q、t)、一元分散分析とボンフェローニ事後検定(m及びp)、又は線形回帰分析(u)を用いて分析される;ns:有意ではない、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。
【0051】
実施例
方法:
畜産
動物に関する手順は、フランス国立保健医学研究所(INSERM)の研究施設内の動物の管理と使用の委員会-第955ユニット、クレテイユ、フランスによって認可された(ComEth15-001)。少なくとも10世代かけてC57BL6バックグラウンドに戻し交配された全体的にp21-/-のマウス(ジャクソン)、並びに、野生型(WT)同腹仔を、12時間の明暗サイクル、制御された温度(20~22℃)、及び湿度で、高度医療施設内の個々に換気されたケージ内で飼った。水及び飼料は自由に摂取できるようにした。
【0052】
心臓病の表現型判定
雄の野生型マウス及びp21-/-マウスを、2か月令から15カ月令まで経過観察した。これらのマウスは、心筋の構造及び機能について順次評価した。動物を安楽死させ、組織を組織学的検査及び分子生物学的検査のために収集した(2、6、10、及び15か月令)。p21-/-マウスの別の群(n=17)をさらに老齢化させた。これらのマウスは、少なくとも24カ月目までは、死亡を伴うことはなく、目立たない表現型を示した(示されていない)。
【0053】
インビボでの薬物での処置
1日2回の200mg/kgの用量のフェニルアラニン又はビヒクル(1×PBS)を、インビボで11か月令の野生型マウス(ジャンヴィエ研究所、フランス)に1か月間、皮下投与した。10mg/kg/日(1日2回)の用量のBH4又はビヒクル(10mMのアスコルビン酸ナトリウム及びpH4.5となるまでクエン酸を含む1×PBS)を、11か月令の野生型マウスにインビボで6週間かけて腹腔内投与した。マウスの一般的な状態(体重及び健康)を綿密にモニタリングした。どちらの場合でも、薬物による処置は、何事もなく、計画通りに完了した。
【0054】
覚醒マウスにおける2次元経胸壁心エコー検査
マウスは、以前に報告されているような、麻酔剤の心臓抑制作用を回避するために、鎮静されていないマウスにおいて実施される、経胸壁心エコー検査(TTE)のために握るように訓練された。記録時の心拍数は典型的には、1分間あたり600回を超える拍動(bpm)であった。1つの集団についてのデータ取得は、1人の操作者(JT又はER)によって実施された。画像は、デジタル超音波システム(Vivid7、GEメディカルシステム社、ホートン、ノルウェー)を備えた13MHzのリニアアレイトランスデューサを使用して、乳頭筋の位置の傍胸骨から取得された。左心室径及び駆出率、前壁及び後壁の厚さは、Mモード法での取得から逐次得られた。相対的左心室壁肥厚(RWT)は、左室拡張末期径に対する中隔厚と後壁厚の合計として定義され、左室心筋重量は、補正されていないcube法の仮定式(左室心筋重量=(拡張末期前壁厚+左室拡張末期径+拡張末期後壁厚)-(左室拡張末期径))を使用して決定された。前壁及び後壁の短軸方向ストレインレートの収縮期ピーク値は、以前に記載されているような、組織ドップラーイメージング(TDI)を使用して得られた。TDIループは、変形の短軸方向の成分と注意深くアラインさせて、平均フレーム速度514fps(フレーム毎秒)及び深さ1cmで、脛骨傍断面から取得した。ナイキスト速度制限は、12cm/秒に設定された。短軸方向のストレインレート分析は、オフラインでEchoPacソフトウェア(GEメディカルシステムズ社)を使用して1人の操作者(GD)によって盲検的に行なわれた。短軸方向のストレインレートの収縮期ピークは、中部前壁に位置する関心対象の領域からコンピューター計算され、0.6mmの軸方向の距離の上で測定された。一時的なスムージングフィルタは、全ての測定においてオフにした。不可避な呼吸変動のために、本発明者らは、連続8回の心臓周期の短軸方向ストレインレートの収縮期ピークを平均化した。
【0055】
侵襲的なインビボでの左心室機能の血行力学的評価
インビボでの血行力学的測定は、示された年齢のマウスが屠殺される直前に実施された。血行力学的評価は、恒温手術台上に仰臥位で置かれ1.5%のイソフルランによる麻酔下の自発呼吸を伴うマウスで実施された。1.4Fr(フレンチ)のマイクロカテーテル(ミラー・インスツルメント社、ヒューストン、米国)を各実験前に手作業で目盛りを付け、右頸動脈を介して大動脈に挿入し、続いて左心室に進めた。データは、基線から少なくとも10分後に、等容圧の発生(dP/dtmax)及び圧減衰(dP/dtmin)のピーク速度の測定中に最小限の心臓抑制を確保するために、耐容される最も低いイソフルラン濃度を使用して集められた。その後、マイクロカテーテルを、収縮期圧及び拡張気圧の測定のために大動脈まで引き出した。データは、IOXソフトウェア(EMKA社、フランス)を使用して分析された。
【0056】
組織の収集及び処理
全てのマウスの体重を計測し、頸部脱臼によって安楽死させ、続いて、関心対象の器官を迅速に切除した。心臓に、氷冷1×PBSを用いての灌流のために大動脈を通してカニューレを通し、その後、ブロットし、体重を計測した。心臓をその軸に対して垂直に半分に切った:心尖部の3分の2を、液体窒素中で瞬間凍結させ、基底の3分の1に、大動脈を通して再びカニューレを通し、組織学的検査のために10%ホルマリンを用いて灌流させた。心臓は、包埋前に、少なくとも24~48時間、4℃のホルマリン中に保持した。瞬間凍結させた組織は、液体窒素で冷却させた乳鉢と乳棒を使用して粉末化し、アリコートとして集めるまで、-80℃に保持した。肝臓及び腎臓は同じように処理された。
【0057】
ヒトの心臓の生検材料
ヒトの心臓の生検材料(右心耳)は、待機的冠動脈バイパス術を受けている患者から得られた。生検材料は、ピティエ・サルペトリエール病院(パリ)の倫理委員会(倫理委員会イルドフランスVI)の承認後に得られ、インフォームドコンセントを、手順の前に各患者から取得した。
【0058】
ヒト肝臓のデータ
BioMart(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/14707178)を使用して、マイクロアレイプローブセットを、Ensembleリリース96のヒトアセンブリにマッピングした。入手可能なヒト肝臓のトランスクリプトームデータは、33人の疾患を患っていない拍動している心臓と肝臓のドナーにおいて、PAHにマッピングされた3つのプローブセットを有する、アフィメトリクス社のGeneChipヒトゲノムU133Plus2.0アレイ(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29554203)を用いて作製された。アノテーション及び正規化されたデータは、NCBI遺伝子発現オムニバス(アクセッション番号GSE107039)からダウンロードされた。IBM SPSSStatisticsバージョン25の主成分分析を使用してデータを、PAHの標準化された発現まで削減し、これはグラフパッドプリズムバージョン8においてドナー年齢に対する独立変数として回帰した。
【0059】
ヒト組織間の発現プロファイリング
遺伝子型組織発現プロジェクト(http://gtexportal.org/, GTEx)(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23715323)の発現データは、死亡から24時間以内の752人のドナー(男性65%、20~79才)間の複数の組織から採取され、RNAシークエンスによって定量された、16,000個の試料を反映する。組織分析バージョン7によるTPM(100万個あたりの転写物)の中央値がダウンロードされ、log10変換を受け、Java TreeView(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15180930)を用いて可視化された6、7
【0060】
老化に関連したβ-ガラクトシダーゼの染色
老化に関連したβ-ガラクトシダーゼの活性を使用して、全体的な心臓の老化を推定した。簡潔に言えば、新たに収集された心臓の切片を、1mg/mlのX-Gal(シグマ社)、40mMのクエン酸、150mM NaCl、2mM MgCl、5mMのフェロシアン化カリウム、及び5mMのフェリシアン化カリウムを含有し、pHが6.0に調整されているβ-ガラクトシダーゼ染色溶液中、37℃で1時間インキュベートした。その後、染色された切片を走査した。
【0061】
心室の成体ラットの初代心筋細胞の単離及び培養
雄のスプラーグ・ドーリーラット(9週令、300~350g)を、ヘパリンの添加された(100UI/kg)、ケタミン及びキシラジン(それぞれ100及び10mg/kg)を用いて麻酔した。心臓を切除し、113mMのNaCl、4.7mMのKCl、0.6mMのKHPO、0.6mMのNaHPO、1.2mMのMgSO-7HO、12mMのNaHCO、10mMのKHCO、10mMのHEPES、30mMのタウリン、0.032mMのフェノールレッド、5.5mMのD-グルコース、10mMの2,3-ブタンジオンモノキシム、pH7.4からなる酸素添加された(95%CO、5%O)灌流緩衝液を用いて2分間逆行性に灌流して、冠動脈から血液を洗浄除去した。その後、心臓を、消化緩衝液(0.1mg/mLのリベラーゼ、0.14mg/mLのトリプシン-EDTA、及び12.5μMのCa2+の補充された灌流緩衝液)を用いて10~12分間灌流した。その後、心臓を、停止緩衝液(10%ウシ新生仔血清及び12.5μMのCa2+の補充された灌流緩衝液)に入れた。心房及び右心室を除去した。左心室を小さな断片に解体し、その後、連続的な吸引-灌流にかけた。消化された心室を、250μmのセルストレイナーを通してろ過した。37℃で10分間インキュベートした後、上清を廃棄し、細胞を、カルシウム緩衝液(5%ウシ新生仔血清、12.5μMのCa2+の補充された灌流緩衝液)を用いて再懸濁した。細胞外カルシウムを、1mMとなるまで漸増的に加えた。最後に、細胞を(1%ITSの補充された)培養培地M199に懸濁し、10μg/mLのラミニンで予めコーティングされたウェル上に播種し、2時間かけて付着させ、その後、処置を開始した。心筋細胞を続いて、ビヒクルに対するBH4の存在下又は非存在下で、5mMのフェニルアラニンを用いて処置した。4時間インキュベートした後、心筋細胞を瞬間凍結させ、数日後に実施されるタンパク質の研究のために-80℃に移した。ロッド型を収集する時に、それらの表面上に横紋が存在すること及び小胞が存在しないことを、心筋細胞の生存状態を確かなものにするために、目視で確認した。
【0062】
RNAの研究及び定量逆転写PCR
細胞又は粉末化組織からの全RNAを、以前に記載されているように、RNeasyミニキット又はRNeasyミニ線維組織キット(キアゲン社)をそれぞれ使用して抽出した。RNAの収率は、NanodropND-1000を用いて測定され、1.9を超える吸光度260nm/280nmの比が許容された。逆転写のためのHigh Capacity cDNAキットは製造業者の説明書(アプライドバイオシステムズ社)に従って使用された。定量逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(qRT-PCR)を使用して、関心対象の遺伝子の相対レベルを定量した。簡潔に言えば、増幅反応は、10μlの反応容量で、StepOnePlusシステム(アプライドバイオシステムズ社)でファストユニバーサルマスターミックスを使用して、多重デザイン(FAM:関心対象の遺伝子;VIC:内因性対照としてのβ-アクチン)で行なわれた。使用された全てのTaqmanオリゴは、アプライドバイオシステムズ社製の目録に記載されたTaqman-MGB(副溝結合)オリゴであった。相対的発現は、式RQ=2-ΔΔCTとΔC法を使用して定量された(ユーザーブリテン2番;アプライドバイオシステムズ社)
【0063】
タンパク質の抽出及びウェスタンブロット
細胞を、氷冷1×PBSでさっと洗浄し、0.1mMのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)及びプロテアーゼ/ホスファターゼ阻害剤カクテルタブレット(サーモフィッシャー社)の補充された、400μLのT-PER(組織タンパク質抽出試薬)溶解緩衝液(サーモフィッシャー社)中で掻把した。粉砕した組織試料(20~30mg)を、超音波処理及び21ゲージの針を通すことによって促進された同緩衝液中に溶解した。あらゆる破片をペレット化するために、溶解液を10,000gで4℃で10分間遠心分離にかけ、上清を新しいチューブに移した。タンパク質濃度は、ブラッドフォードアッセイ(バイオラッド社)を用いて決定され、溶解液を、溶解緩衝液を用いて等しい濃度になるまで希釈した。その後、タンパク質溶解液をレムリ緩衝液と混合し、ボルテックスにかけ、5分間95℃になるまで加熱した。タンパク質分子量マーカー(サーモフィッシャー社)と平行して等量のタンパク質溶解液を、プレキャストポリアクリルアミドゲル(Nupage10又は12%ビストリスゲル、Novex、インビトロジェン社)にローディングし、200Vでの電気泳動によって1時間かけて分離した。タンパク質を、電気泳動転写セル(ミニトランスブロット、バイオラッド社)を使用して、氷冷転写用緩衝液(48mMのトリス塩基、390mMのグリシン、0.1%SDS、20%メタノール(v/v))中の二フッ化ポリビニリデン(PVDF)膜(インビトロジェン社)に300mAで2時間かけて転写した。膜を、1×スキムミルク(サーモフィッシャー社)中で室温で1時間かけて遮断し、その後、遮断緩衝液で希釈された一次抗体と共に4℃で一晩インキュベートした。使用された抗体及び濃度は、表2に示されている。翌日、膜を洗浄し、その後、遮断緩衝液で1:2000~10000に希釈された対応するセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートさせた二次抗体中で60分間インキュベートした(全てアブカム社)。ブロットを、増強化学発光(ECL)試薬(通常、Prime及びSelect)を使用して展開し、デジタル画像を、イメージングシステム(アジュールバイオシステムズ社)を使用して取得した。膜から通常、抗体を剥ぎ取り、ローディング対照としての役目を果たすタンパク質(心臓ではα-アクチニン、及び他の全てではβ-アクチン)に標的化する抗体を用いて再プローブした。この手順のために、膜を、グアニジン塩酸塩に基づいた剥離液(6Mのグアニジン塩酸塩、0.2%ノニデットP-40、0.1Mのβ-メルカプトエタノール、20mMのトリス塩酸塩、pH7.5、及び100mMの2-メルカプトエタノール)に入れ、穏やかに撹拌しながら室温で10分間インキュベートし、その後、十分に洗浄し、再度遮断した
【0064】
【表1】

【0065】
組織学的検査
ホルマリンで固定された器官を、パラフィンに包埋した。断面を、回転式ミクロトーム(ライカ社)を使用して厚さ7μmに切断した。心臓線維症を評価するために、シリウスレッドでの染色を行ない、その後、脱水処理、及びオイキット急速硬化封入剤(シグマ社)を載せた。心筋細胞の肥大を可視化するために、切片を、1×PBS中、2μg/mLのテキサスレッドにコンジュゲートさせた小麦胚細胞凝集素(WGA;インビトロジェン社)中で室温で45分間インキュベートした。その後、スライドに、蛍光封入剤(アブカム社)を載せた。画像を、ツァイス社の蛍光顕微鏡を使用して取得した。2カ月令及び15か月令のp21-mCherryリポーターマウスの心臓及び肝臓の、全載標本を作製した。簡潔に言えば、器官を迅速に取り出し、1mm厚の切片を、剃刀の刃の具備された特注のチャンバーで切断した。続いて、切片をスライド上に並べ、1×PBSに浸漬させ、蛍光顕微鏡による評価のためにカバーガラスを載せた。
【0066】
免疫組織化学的検査/免疫蛍光法
分散パターンが予想される時にはいつでも、パラフィンに包埋された切片に免疫組織化学的検査を行なった。簡潔に言えば、再水和処理、クエン酸緩衝液で補助され加熱により媒介された抗原の賦活及び遮断の後、切片を、以下の標的に対して生じる一次抗体と共に+4℃で一晩インキュベートした:4-ヒドロキシノネナール(ミリポア社;ヤギ、1:200)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ(アブカム社;ウサギ、1:200)、又は2-スクシニルシステイン(ケンブリッジ・バイオサイエンシーズ社;ウサギ、1:100;表1も参照)。翌日、切片を洗浄し、その後、対応するセイヨウワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートさせた二次抗体(アブカム社;1:200)と共に室温で30分間インキュベートし、再度洗浄し、その後、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB;シグマ社)と共に目視による観察下でシグナルが出現するまでインキュベートした。その後、スライドを、ヘマトキシリンで対比染色するか又は対比染色せず、脱水し、載せた。
【0067】
関心対象のタンパク質のより高い感度及び共局在のために、免疫蛍光法が使用された。簡潔に言えば、パラフィン包埋切片を再水和し、その後、クエン酸により補助された加熱を用いて抗原を賦活した。その後、切片を30%ヤギ血清(バックグラウンドを低減させる成分と共に抗体希釈溶液を使用して;ダコ社)又はBloxall(商標)人工遮断剤(ダコ社)を用いて遮断し、標的タンパク質に対して生じた一次抗体と共に+4℃で一晩インキュベートした(詳細については表1参照)。翌日、切片を1×TBSTで洗浄し、対応するAlexaFluor555で標識された二次抗体(インビトロジェン社)及びAlexa488にコンジュゲートさせたファロイジン(心筋細胞を対比染色するため)の混合物と共に室温で30分間インキュベートし、再度洗浄した。同時標識の場合、AlexaFluor555で標識されかつAlexaFluor647で標識された二次抗体を(インビトロジェン社)、時にアビジン/ビオチン増強システム(ダコ社)と組み合わせて使用した。リクエストすれば具体的なプロトコールが入手可能である。スライドに、DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール;アブカム社)と共に蛍光封入剤を載せた。画像は、ツァイス社の共焦点顕微鏡を用いて得られた。
【0068】
細胞培養液
L-グルタミン(2mM)、ペニシリン/ストレプトマイシン(1%)及び5%胎児ウシ血清(FBS)の補充された、DMEM中で維持されたC2C12(ATCC(登録商標)CRL-1772(商標))筋芽細胞を、1ウェルあたり5×10個の細胞(50%未満)の密度で24ウェルプレートに、又は10個の細胞で4ウェルチャンバースライドにのいずれかに播種した。細胞は、L-フェニルアラニン(1~10mM)+BH4(10μM)と共にあり、漸増濃度のN-アセチルシステイン(0.5、2.5、5mM)対ビヒクルと共に、示されている通りに一晩インキュベートした。細胞を、MitoSOX(商標)(ミトコンドリアスーパーオキシド;5μM、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、CellROX(商標)(細胞質基質スーパーオキシド;5μM、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を用いて酸化ストレスについて、遺伝子若しくはタンパク質の発現、又は様々な代謝物について分析した(以下参照)。
【0069】
AML12細胞(ATCC(登録商標)CRL-2254(商標))を、10%ウシ胎児血清、10μg/mlのインシュリン、5.5μg/mlのトランスフェリン、5ng/mlのセレニウム、40ng/mlのデキサメタゾン、及び1%のペニシリン/ストレプトマイシンの補充されたDMEM/F-12(1:1)培養培地中に維持した。細胞を、サブコンフルエントなフラスコから1:4から1:8の比で継代培養した。ウェスタンブロット分析について、細胞を6ウェルプレートに播種し、80~90%のコンフルエンスで収集した。AML12細胞を、示されたsiRNA(表2)を用いて、80%のコンフルエンスで、リポフェクタミンRNAiMAXトランスフェクション試薬(サーモフィッシャーサイエンティフィック社13778030)を使用して、製造業者の説明書に従ってトランスフェクトした。トランスフェクション効率は、BLOCK-IT AlexaFluor赤色蛍光対照(サーモフィッシャーサイエンティフィック社14750100)を使用して定期的に確認された。
【0070】
全ての細胞培養実験は、少なくとも生物学的3回反復実験で行なわれた。
【0071】
【表2】
【0072】
心筋における一酸化窒素シンターゼ活性の決定
心筋における一酸化窒素シンターゼ(NOS)活性が、BH4又はビヒクルで処置された12.5か月令の野生型マウスの心臓において、市販のキット(バイオビジョン社)を使用して決定された。簡潔に言えば、粉砕された心臓アリコートを、製造業者の説明書に従って処理し、蛍光定量的な解読値(励起:360、発光:450)を、ブラッドフォードアッセイによって決定されたタンパク質濃度に正規化した。組換えNOSタンパク質の活性は、陽性対照としての役目を果たした。
【0073】
代謝レベルの決定
細胞又は血漿に由来する、還元グルタチオン(GSH;サーモフィッシャー社)、フェニルアラニン(バイオビジョン社)、及びチロシン(バイオビジョン社)のレベルを、それぞれの薬剤/キットを用いて、製造業者の推奨に従って決定した。具体的には、GSHレベルを、チオールトラッカー(商標)バイオレット蛍光プローブ(サーモフィッシャー社)を用いて推定した。血漿及び肝臓におけるフェニルアラニンレベルを、酵素結合蛍光定量法(バイオビジョン社)を使用して決定した。簡潔に言えば、試料を、トリクロロ酢酸による沈降を介して除タンパクし、中和し、チロシナーゼで処理し(干渉する可能性のあるチロシンを除去するため)、標準曲線にあてはまるように希釈した。蛍光の解読は、535nmにおける励起後に587nmにおいて行なわれた。細胞又は馴化培地中のチロシンレベルは、10kDaのカットオフカラムを使用した除タンパク後に、491nmで解読する酵素結合比色定量法(バイオビジョン社)を用いて決定された。
【0074】
データ分析及び統計
マウスは、実験群に無作為に割り当てられ、データを取得し、遺伝子型、年齢、又は処理に対して盲検的に分析した。統計分析は、グラフパッドプリズムソフトウェア(バージョン6)を使用して実施された。全ての場合において、n個の数字を掲げ、ガウス分布を得て、パラメトリック検定を使用した。適宜、スチューデントt検定を使用して、2つの群を比較し、一方、2つを超える群は、多重比較のための一元配置分散分析(ANOVA)とボンフェローニ事後検定を使用して比較した。二元配置分散分析を使用して、時間依存性の解読値の進展を示す群を、2つを超える群のためのボンフェローニ事後検定を用いて比較した。データは、平均値±平均値の標準誤差として提示される。使用されるアノテーション:*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、示される群と比較。0.05未満のp値が有意と判断された。
【0075】
参考文献:
【表3】
【0076】
結果及び考察:
インビトロにおける細胞老化におけるフェニルアラニンの役割を評価するために、本発明者らは、C2C12筋芽細胞をフェニルアラニンで処置した。フェニルアラニンは、サイクリン依存性キナーゼ1a(Cdkn1a=p21)を選択的に誘導し、EdUの取り込みを抑制し、一方、他の老化マーカー(Cdkn2a=p16、及びリン酸化p53=p-p53)は、未変化のままであった(図1a~d)。BH4は、フェニルアラニン依存性の老化に拮抗し、これはフェニルアラニンの類似体である4-クロロフェニルアラニン(4-CPA;図1c~d)によって逆転した。BH4は、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、チロシン、及び2-スクシニルシステイン(2-SC;データは示されていない)の細胞内レベルの上昇によって証明されるように、フェニルアラニンの異化を刺激した。フェニルアラニン異化産物のフマル酸塩とシステインとの間の自然発生的な翻訳後修飾であるBH4依存性コハク酸化は、コハク酸化感受性のNrf2抗酸化経路の活性化と共に進行した(データは示されていない)10。興味深いことには、フェニルアラニンは、細胞質基質のスーパーオキシドレベルを漸増させたが、ミトコンドリアのスーパーオキシドレベルは漸増させなかった(実施例1e及びデータは示されていない)。BH4はスーパーオキシドレベルを正常化し、この救出は4-クロロフェニルアラニンによって妨げられた(図1f)。これは、フェニルアラニンが、酸化ストレスを通して老化を誘発するかどうかの問題を提起した11。この事態を解決するために、本発明者らは、抗酸化剤であるN-アセチルシステイン(NAC)を使用し、これはBH4と同じように、正常な細胞質基質のスーパーオキシド及び還元グルタチオン(GSH;データは示されていない)レベルを回復させたが、p21の誘導は防ぐことができず(データは示されていない)、このことは、細胞の老化をトリガーする際、酸化ストレスに非依存的なフェニルアラニンの役割を示唆する。最後に、本発明者らは、成体ラット初代心筋細胞における、p21タンパク質の選択的誘導(しかし、p53及びp16は誘導されない)及びBH4によるその救出を確認した(図1g)。まとめると、本発明者らの実験は、フェニルアラニンとp21の誘導による細胞の老化との間の連関を確立し、これはインビボでの研究の動機となっている。
【0077】
p21の欠乏が寿命を改善することを示す報告と一緒に12、フェニルアラニンがp21を活性化することを示した、本発明者らのインビトロにおける知見に基づいて、本発明者らは、本発明者らの努力の焦点を、p21-/-マウスに当てた。ヒトにおいて報告されているように13、14、血漿中のフェニルアラニンレベルは、野生型マウス(WT)において年齢と共に(2か月令、対、老年性心臓の変化を示す年齢である15カ月令)増加し2、3、一方、p21-/-マウスは、老年性の血漿中フェニルアラニンレベルの上昇から保護された(図2a)。
【0078】
自然老齢化では、p21及び老化に関連したβ-ガラクトシダーゼの発現は、野生型心筋において増加したが、p53及びp16の発現は増加しなかった(図2b及びデータは示されていない)。p21タンパク質の誘導は、高齢の野生型心臓においては、心筋細胞マーカーのトロポニンI及び線維芽細胞マーカーのビメンチンと共局在していたが、内皮細胞マーカーのCD31とは共局在していなかった(図2c)。さらに、細胞質基質に存在する脂質過酸化反応のマーカーである4-ヒドロキシノネナール(4-HNE)15もまた、野生型の心臓では年齢と共に増加したが、p21-/-マウスでは増加しなかった(図2d及びデータは示されていない)。老齢化は、野生型心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステインを進行的にアップレギュレートし、かつ共局在していたが、p21の欠乏は、これを妨げた(図2e及びデータは示されていない)。特に、ヒト心臓は、年齢と共にフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及び2-スクシニルシステインの同等な誘導及び共局在を呈した(図2f)。同様に、新規BH4生合成の律速酵素であるGTPシクロヒドロラーゼ1(Gch1)は、高齢の野生型ではアップレギュレートされたが、p21-/-の心臓ではアップレギュレートされず、これはコハク酸化に対する高感度のリスポンダーであるNrf2の転写標的も同様であった10(データは示されていない)。
【0079】
観察された血漿中のフェニルアラニンレベル及び心臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼレベルの上昇は、高齢の野生型マウスにおいて心肥大及び心筋間質性線維症に関連していた(図2g~h及びデータは示されていない)。これに対して、高齢のp21-/-のマウスは、正常な血漿中フェニルアラニンレベルと一致して、心臓リモデリングを全く示さなかった。さらに、左心室駆出率は正常のままであったが(データは示されていない)、拡張期機能不全(dP/dtmin)及び収縮期機能不全(dP/dtmax、収縮期ストレインレート)が、高齢の野生型マウスでは、インビボにおいて血行動態及び高機能心エコー変形イメージングによって明らかとなったが、p21-/-マウスではそうではなかった(図2j~k)。要するに、p21の欠乏は、血漿中フェニルアラニンレベルの増加を防ぎつつ、自然に老齢化した心筋の分子的、構造的及び機能的変化から保護した。
【0080】
心臓の老齢化を駆動する際のフェニルアラニンの直接的な役割を確立するために、本発明者らは、老年性心筋を伴わない及び伴う野生型マウス(図2b~k参照;すなわち5か月令対11か月令)を、血漿中フェニルアラニンレベルを上昇させることを目的として、1日2回、200mg/kgの用量のフェニルアラニンで1か月間処置することを決断した(図3a)。マウスは、有意な体重減少を伴うことなく、フェニルアラニンによる処置に良好な耐容性を示した(データは示されていない)。血漿中フェニルアラニンレベルは、どちらの年齢群でも上昇したが、より高齢の動物の方がかなりより高かった(図3a)。フェニルアラニンによる処置を行なった幼若動物は、心肥大、心筋細胞のサイズ、及び心筋間質性線維症の増加を伴う、老年のような表現型を示したが、より高齢の群では全く変化は起こらなかった(図3c~g)。フェニルアラニンによる処置は、駆出率が未変化の時には、幼若群において心臓機能を損ない、ビヒクルで処置された高齢マウスの範囲に達する低下したストレインレート、dP/dtmax及びdP/dtmin図3h~k)を伴った。フェニルアラニンは、幼若心臓において、高齢の心臓とは識別できない、p21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1、2-スクシニルシステイン、及び4-ヒドロキシノネナールのアップレギュレーションを伴った、心筋老化をトリガーした(図3l及びデータは示されていない)。これらの知見は、過剰なフェニルアラニンが、幼若マウスにおいて、老年性の心臓リモデリング及び機能不全を密接に模倣し、心臓の老化を誘発することを明確に実証する
【0081】
フェニルアラニンは、心臓の老齢化を誘発するので、本発明者らは、フェニルアラニンの異化が高齢マウスの心臓機能を回復する可能性があると推測した。したがって、11か月令の野生型マウスに、10mg/kgのBH4を、1日2回、6週間かけて、腹腔内注射して、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を増強させ、血漿中フェニルアラニンを幼若レベルまで減少させた(図4a)。BH4は、全身動脈圧を低下させることなく、心臓重量/脛骨長の比、収縮性及び弛緩を幼若数値まで改善した(図4b~f)16、17。さらに、BH4は、心筋の一酸化窒素シンターゼ活性を変化させることなく、老化した心筋におけるp21、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1及び2-スクシニルシステインの発現を抑制しつつ、間質性線維症を正常化した(図4g~j及びデータは示されていない)。
【0082】
抑制された心筋のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ、GTPシクロヒドロラーゼ1及び2-スクシニルシステインと共に、BH4によって回復した血漿中フェニルアラニンレベルは、本発明者らの注意を、天然のフェニルアラニンヒドロキシラーゼ発現体である腎臓及び肝臓に向けた。フェニルアラニンヒドロキシラーゼ及びGTPシクロヒドロラーゼ1の加齢に関連したダウンレギュレーションは腎臓では全く起こらなかったが、本発明者らは、15か月令の野生型肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ及びGTPシクロヒドロラーゼ1の抑制されたタンパク質レベルを明らかにし、これはp21の欠乏によって防がれた(図4k及びデータは示されていない)。老齢化は、肝臓の老化を誘発したので(p21の発現による;図4l及びデータは示されていない)、本発明者らは、老化が、肝臓におけるフェニルアラニンの異化を徐々に害するという仮説を立てた。この目的を達成するために、まず、本発明者らは、肝臓におけるフェニルアラニンレベルを探索し、野生型肝における年齢依存的な増加を発見した(図4m)。興味深いことには、フェニルアラニンで処置された6か月令の野生型マウスの肝臓は、12か月令の野生型マウスと同等な肝臓におけるフェニルアラニンレベルを有していた(図4m)。肝臓におけるフェニルアラニン含量及びp21の誘導の年齢依存的な増加という知見から、本発明者らは、過剰なフェニルアラニンがp21を誘導するという仮説を立てた。この可能性に取り組むために、本発明者らは、AML-12肝細胞を、漸増濃度のフェニルアラニンで処置し、用量依存的なp21タンパク質の誘導を発見した(図4n)。次に、本発明者らは、AML-12肝細胞を、p21活性を間接的に誘導するために、p53活性化因子であるニュートリン3aで処置した。ニュートリン3aは、肝細胞の老化を誘導し(すなわち、p-p53及びp21)、フェニルアラニンヒドロキシラーゼをダウンレギュレートし、チロシン産生を抑制した(図4o~p及びデータは示されていない)。肝細胞におけるp21のsiRNAを用いてのノックダウンは、フェニルアラニンヒドロキシラーゼレベル並びにチロシン産生を回復させた(図4o~p)。重要なことには、翻訳の観点から、BH4は、ニュートリン3aにより誘導された老化に由来するチロシン及びフェニルアラニンヒドロキシラーゼレベルを抑制し(図4q~r)、インビトロ及びインビボにおいて肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼを再発現させ(図4s)、肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を改善し(データは示されていない)、そして肝臓におけるフェニルアラニン含量を低減させた(図4t)18、19。さらに、ヒトの肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性の年齢依存的な減少の関連性は、疾患を患っていない肝生検材料の集団のRNAシークエンスデータの分析に基づいた、肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ転写レベルの年齢依存的な減少によって実証される(図4u)20。要約すると、本発明者らの知見は、加齢に関連した心機能低下におけるフェニルアラニンの毒性を強調し、肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性を薬理学的に回復させることによって、高齢の心臓を若返らせる新規手段を開拓する。
【0083】
要するに、上昇したフェニルアラニンレベルは、心臓の老齢化において以前には見落とされていた影響を及ぼす。本発明者らの結果は、心筋が、過剰なフェニルアラニンを異化することによって、恒常性を維持する際に分担することを示唆する。シグナル伝達結果に沿って進行する心臓におけるフェニルアラニンの異化21、毒性代謝物の蓄積22、23、又はフェニルアラニンを燃料とするカテコールアミン生合成24が、心臓の老齢化をより説明するかどうかは、さらなる探索を必要とする。本発明者らの知見は、フェニルアラニンレベルの上昇の背後にある、肝臓におけるフェニルアラニンの異化の失敗を指摘する。フェニルアラニンヒドロキシラーゼは、6つのBH4依存性酵素(芳香族アミノ酸ヒドロキシラーゼ及び一酸化窒素シンターゼ;データは示されていない)の中で断然最も高い肝臓における発現を有する。フェニルアラニンヒドロキシラーゼがBH4に非常に依存していることは、新規BH4生合成又は再循環経路BH4における酵素欠乏において高フェニルアラニン血症が顕著な特色であるという観察によって説明される25。したがって、自然に老齢化したマウスでは、血漿中フェニルアラニンレベルは、門脈のBH4によって回復し、これは復活した肝臓におけるフェニルアラニンヒドロキシラーゼ活性と矛盾していない18、19
【0084】
アミノ酸代謝の治療薬の開発は、強制的なヒスチジンの異化により、癌をメトトレキサートに感受性とすることを介して実証された26。ここに提示された知見によると、BH4又は代替的な手段によって薬理学的に回復したフェニルアラニンの異化は、現実的な目的である心臓の老齢化を逆行させる。認知症28及び癌への罹患し易さ29、30などの、さらなる加齢に関連した状態もまた、フェニルアラニンヒドロキシラーゼの再活性化から恩恵を受け得る。最後に、フェニルケトン尿症患者、特にフェニルケトン尿症の食事を晩年にやめた患者は、より高い心臓血管リスクがある可能性がある31
【0085】
参考文献:
本出願全体を通して、様々な参考文献が、本発明が属する技術分野の最先端技術を記載している。これらの参考文献の開示は、本開示への参照によりここに組み入れられる。
【0086】
【表4】



図1
図2a-d】
図2e
図2f
図2g-k】
図3a-d】
図3e-i】
図3j-l】
図4a-f】
図4g-k】
図4l-t】
図4u