(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】改善された特性プロファイルを有する熱可塑性成形材料
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20240723BHJP
C08L 23/14 20060101ALI20240723BHJP
C08L 51/06 20060101ALI20240723BHJP
C08F 255/02 20060101ALI20240723BHJP
C08F 293/00 20060101ALI20240723BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240723BHJP
C09J 153/00 20060101ALI20240723BHJP
C09J 123/14 20060101ALI20240723BHJP
C09J 151/06 20060101ALI20240723BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L23/14
C08L51/06
C08F255/02
C08F293/00
C08K5/17
C09J153/00
C09J123/14
C09J151/06
C09J11/08
(21)【出願番号】P 2022534237
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2021051625
(87)【国際公開番号】W WO2021151838
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-08
(32)【優先日】2020-01-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100145333
【氏名又は名称】渡邉 弓子
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァーベ・イェレミア
(72)【発明者】
【氏名】ハウク・エーリク
(72)【発明者】
【氏名】カーシュヴィンク・フェリックス
(72)【発明者】
【氏名】バッハ・セバスティヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュティール・ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ターナー・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】リンドナー・トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ノイ・クリスティアン
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-105438(JP,A)
【文献】特開2007-284574(JP,A)
【文献】特開2005-248017(JP,A)
【文献】特表2008-510031(JP,A)
【文献】特開2009-126920(JP,A)
【文献】特開2017-036354(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109467644(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08F 251/00-283/00
C08F 283/02-289/00
C08F 6/00-246/00
C09J 1/00-5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SBCの全重量に基づいて、5~40重量%のスチレン含有量を有する1以上のスチレンブロックコポリマー(SBC)、および、
(b)
7,000g/モル未満の重量平均分子量Mwを有する、グラフト化されていないプロピレンベースポリマー(PbP-ng)としてのプロピレンベースポリマー主鎖(PbP主鎖)を有する1以上のプロピレンベースポリマー(PbP)、
を含む熱可塑性成形材料
。
ここで、PbPは、ISO11357-2に従い測定して、50J/g未満の融解エンタルピーを有する。
【請求項2】
少なくとも1の前記プロピレンベースポリマー(PbP)は、PbP主鎖の重量に基づいて、1~50重量%のビニル芳香族モノマー(PbP-g-VAM)でグラフト化される請求項1に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
少なくとも1の前記プロピレンベースポリマー(PbP)は、PbP主鎖の重量に基づいて、0.1~20重量%のヘテロ原子(PbP-g-UVMH)を含む不飽和ビニルモノマーでグラフト化される請求項1に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
前記PbPは、ASTM D97に従い測定して50℃未満のPbP-ngの流動点を有する、請求項1~3のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
(i)ビニル芳香族モノマーでグラフト化されたPbP(PbP-g-VAM)、または、(ii)ヘテロ原子を含む不飽和ビニルモノマーでグラフト化されたPbP(PbP-g-UVMH)の流動点は、ASTM D97に従い測定して85℃未満である、請求項2~3のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
前記PbPは、DIN53019に従い測定して、170℃で、1~1,000mPasの溶融粘度を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
1以上のPbP-ng、および、(i)1以上のビニル芳香族モノマーグラフト化プロピレンベースポリマー(PbP-g-VAM)、または、(ii)1以上のヘテロ原子含有不飽和ビニルモノマーグラフト化プロピレンベースポリマー(PbP-g-UVMH)を含む、請求項1~6のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
前記グラフト化プロピレンベースポリマーのPbP主鎖は、前記PbP-ngと同じであることを特徴とする、請求項
7に記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
前記PbPは、DIN EN ISO 11357-2に従いDSCによって測定して、-20℃未満のガラス転移温度Tgを有することを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項10】
前記PbP主鎖は、90重量%未満のプロピレン割合を有する、プロピレンのランダムコポリマーである、請求項1~9のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項11】
前記SBCは、30,000g/モルを超える重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項12】
前記熱可塑性成形材料の総重量に基づいて10~55重量%の1以上の前記SBC、および、前記熱可塑性成形材料の総重量に基づいて10~80重量%の1以上の前記PbPを含む、請求項1~11のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項13】
前記SBCは、ABAタイプのエラストマートリブロックコポリマー、ABタイプのエラストマージブロックコポリマー、および、[AB]nタイプのエラストマーマルチブロックコポリマーからなる群から選択される少なくとも1のエラストマーブロックコポリマーを含む、ここで、Aは硬質スチレンユニットからなり、Bはエラストマー単位からなり、nはブロックの数であることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項14】
前記熱可塑性成形材料の170℃における溶融粘度は、DIN53019に従い測定して、100~30,000mPasであることを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項15】
前記
熱可塑性成形材料は、ISO527に従い測定して、800%を超える破断伸びを有する(ただし、試験片が、標準から外れる以下の寸法を有する場合を除く:全長:50mm、狭い部分の幅:3.3mm、端部の幅:7mm、狭い平行部分の長さ:25mm、厚さ:1mm)ことを特徴とする請求項1~14のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項16】
前記
熱可塑性成形材料は、70%を超える弾性Rを有し、弾性Rは、試験片をZwickの引張/伸長機で、長さL1から長さL2まで、50mm/分の伸長速度で、300%伸長させ、続いて弛緩長さL3まで完全に弛緩させた弾性試験で測定し、式R=((L2-L3)/L2-L1)×100に従い計算して求める、そして当該試験片は、以下の寸法を有する:全長:50mm、狭い部分の幅:3.3mm、端部の幅:7mm、狭い平行部分の長さ:25mm、厚さ:1mm、ことを特徴とする請求項1~15のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項17】
前記熱可塑性成形材料は、0.1重量%未満の粘着付与剤を含むことを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項18】
前記
熱可塑性成形材料は、0.1重量%未満の軟化剤を含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項19】
当該熱可塑性成形材料は、さらに酸化防止剤を含み、前記酸化防止剤は、ヒンダードアミン光安定剤であることを特徴とする、請求項1~18のいずれかに記載の熱可塑性成形材料。
【請求項20】
少なくとも1の
スチレンブロックコポリマー(SBC
)および少なくとも1の
プロピレンベースポリマー(PbP
)を混合し、ここで当該少なくとも1のSBCは5~40重量%のスチレンを含有し、および、当該少なくとも1のPbP主鎖は、10,000g/モル未満の重量平均分子量Mwを有するPbP主鎖を有し、当該PbPは、ISO11357-2に従い測定して、50J/g未満の融解エンタルピーを有する、請求項1に記載の熱可塑性成形材料の製造方法
。
【請求項21】
少なくとも1の前記PbPは、1~50重量%のビニル芳香族モノマー(PbP-g-VAM)でグラフト化される、請求項20に記載の熱可塑性成形材料の製造方法。
【請求項22】
少なくとも1の前記PbPは、0.1~20重量%のヘテロ原子(PbP-g-UVMH)を含む不飽和ビニルモノマーでグラフト化される請求項20に記載の熱可塑性成形材料の製造方法。
【請求項23】
前記混合は、200℃~250℃の加工温度で、共回転二軸スクリュー押出機を用いて行うことを特徴とする請求項20~22のいずれかに記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1~19のいずれかに記載の熱可塑性成形材料からなるホットメルト接着剤。
【請求項25】
基材を結合するための、請求項1~19のいずれかに記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項26】
平滑な、構造化された、または、織物の基材に、粒状または粉末状の材料を付着させるための、請求項1~19のいずれかに記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項27】
基材を結合するための、請求項24に記載のホットメルト接着剤の使用。
【請求項28】
平滑な、構造化された、または、織物の基材に、粒状または粉末状の材料を付着させるための、請求項24に記載のホットメルト接着剤の使用。
【請求項29】
- 7,000g/モル未満の重量平均分子量を有するプロピレンベースポリマー主鎖(PbP主鎖)、
- 1~50重量%の含有量のビニル芳香族モノマー(VAM)、
- ISO11357-2に従い測定して50J/g未満の融解エンタルピー、
- ASTM D97に従い測定して85℃未満の流動点、
によって特徴づけられるビニル芳香族モノマーグラフト化プロピレンベースポリマー(PbP-g-VAM)。
【請求項30】
スチレンおよびその誘導体からなる群から選択されるビニル芳香族モノマーでグラフト化されていることを特徴とする請求項29に記載のPbP-g-VAM。
【請求項31】
前記PbPは、20,000g/モル未満の重量平均分子量Mwを有することを特徴とする、請求項29~30のいずれかに記載のPbP-g-VAM。
【請求項32】
前記PbP主鎖は、プロピレン割合が90重量%未満であって、プロピレンのランダムコポリマーである、請求項29~31のいずれかに記載のPbP-g-VAM。
【請求項33】
前記PbP-g-VAMは、DIN EN ISO11357-2に従いDSCによって測定して、-20℃未満のガラス転移温度Tgを有することを特徴とする請求項29~32のいずれかに記載のPbP-g-VAM。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造形成ホットメルト接着剤、またはスプレー可能なホットメルト接着剤として使用するために改善された機械的性質を有する熱可塑性成形材料に関し、当該熱可塑性成形材料は、スチレンブロックコポリマー(SBC)、および、任意でスチレンまたはカルボン酸無水物でグラフト化されたプロピレンベースポリマーを含む。
【0002】
本発明による熱可塑性成形材料およびそれに基づくホットメルト接着剤は基材を互いに接着するために、または粉末または顆粒を任意の種類の基材に付着させるために適しており、ホットメルト接着剤は、本発明による熱可塑性成形材料に加えて、粘着付与剤、軟化剤、有機または無機顔料、フィラー、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤および光保護 剤を含むことができる。
【背景技術】
【0003】
ホットメルト接着剤は、室温では固体の熱可塑性組成物である。これが加熱されて液体または溶融状態になったとき、すなわちホットメルト接着剤がオープンな状態になった時に、ホットメルト接着剤は基材上に施与することができる。冷えて再び固体状態に戻る前に第二の基材をホットメルト接着剤上に配置した時に、二つの基材を結合する接着接合が生じ得る。ホットメルト接着剤には、用途に最適化されたオープンタイムを有し、そして被着体を永続的に接着する。ホットメルト接着剤は、典型的には、凝集性のベースポリマー、粘着付与剤、および、任意でワックス、軟化剤(オイル)および別の添加剤を含む。典型的なホットメルト接着剤およびその機能は、US5026756(特許文献1)に記載されている。
【0004】
凝集性ベースポリマーとしては、例えば天然および合成ゴム、ポリアクリレート、ポリイソブチレン、ポリオレフィン(類)、ポリエステル、ポリクロロプレン、ポリビニルエーテル、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)、スチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン(SIBS)、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン(SEP)またはスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(SEPS)ブロックコポリマーを含むスチレンブロックコポリマー(SBC)のようなポリマーが使用される。これらのベースポリマーは、一般的に、接着剤系の凝集作用を保証する。
【0005】
ホットメルト接着剤の接着作用は、主として粘着付与剤によって決定され、これは多くの場合に樹脂であるかまたは樹脂を含むものである。これらの樹脂は、例えば原油加工から生じるC5又はC9流からなる低分子量製品であり、多くの場合に芳香族化合物を含み、通常、室温を超えるガラス転移温度を有する。
【0006】
したがって、樹脂をホットメルト接着剤調合物に混合すると調合物のガラス転移温度が上がり、その結果、そのホットメルト接着剤は、低温時のフレキシビリティが低下し、ホットメルト接着剤を使用温度範囲が制限されるようになる。
【0007】
また、樹脂としては、ポリテルペン樹脂、天然および変性ロジン樹脂、特に樹脂エステル、ウッドレジンのグリセリンエステル、フェノール変性ペンタエリスリトールエステルおよびフェノール変性テルペン樹脂が使用される。このような樹脂タイプはアビエチン酸などの刺激性の/健康上の懸念のある物質を含み、アレルギーを引き起こす虞があるため、衛生分野、食品包装および医療分野での使用に問題がある。
【0008】
通常、樹脂の密度は1g/cm3を超える場合がある。それゆえ、ホットメルト接着剤調合物中でのこのような樹脂の使用は、特に粘着性ベースポリマーとしてポリオレフィンを含む調合物の場合は、密度を高める原因となる。それによって、一定の施与体積とすると、より重いホットメルト接着剤が必要となり、これは、負のコスト要因となるばかりではなく、接着された基材の重量も重くなることを意味する。
【0009】
ホットメルト接着剤調合物中の軟化剤は、接着剤組成物の粘度低下に役立ち、したがって、それらのより優れた加工性および施与性に役立つ。一般に、ホットメルト接着剤は、特にSBCをベースとするものは、場合によってはかなりの量で、軟化剤として鉱油を含む。
【0010】
鉱油は原油ベースであり、そのため、パラフィン系、ナフテン系、芳香族および多環式化合物、ならびに室内空気汚染の増加の一因となる揮発性有機化合物(VOC)を含有する。鉱油ベースの飽和炭化水素(MOSH)および鉱油ベースの芳香族炭化水素(MOAH)とも呼ばれる化合物は、ヒト組織に蓄積する傾向があるため、毒物学的に危険であると分類される。鉱油は、通常はホットメルト接着剤調合物中に配合するのが困難であり、そのため、強いマイグレーションを起こす傾向がある。
【0011】
ホットメルト接着剤の用途は非常に多岐にわたる。これらは、特に、永続的な接着接合のために使用される。溶融物として施与するために、ホットメルト接着剤では溶剤は無くてもよい。
【0012】
多くのホットメルト接着剤はしばしば人体と直接接触して使用され、または日常の物品に使用されるので、ホットメルト接着剤が鉱油を含有せず、可能な限り樹脂比率が低いと必要とされる場合に有利であり、それによって、それらは、改善された環境健全性およびより低い毒性を示し、持続可能な様式で生産可能である。
【0013】
ホットメルト接着剤の加工、特に関連する基材への適用は種々の方法、例えば、スプレー、押出しによる施与、ロール、ビードまたはスロットダイを用いた施与によって実現することができる。広範な施与方法に最適に適するようになるためは、ホットメルト接着剤は、施与方法に合ったレオロジー特性を有する必要がある。
【0014】
ホットメルト接着剤技術では、スプレーによる施与が一般的に使用される施与技術である。スピンスプレー法では、糸状の溶融物がスプレーノズルから出て、場合によっては空気流によって引き裂かれないように伸ばされ、次いで基材上に螺旋形状に施与される。施与温度は、材料に応じて150℃~250℃である。SBCやポリオレフィンをベースとする慣用のホットメルト接着剤調合物は、160℃の温度では良好にスプレーできない。不良のスプレーパターンが生じ、これは使用分野を著しく制限する。より高い施与温度は、エネルギー消費の増加および接着剤の老朽化をもたらし、機械的損傷を招く。
【0015】
EP3271436(Henkel)(特許文献2)は、ポリオレフィンベースのスプレー可能なホットメルト接着剤およびこの接着剤を含有する吸収性物品を開示している。ポリオレフィンベースのスプレー可能なホットメルト接着剤は、低い塗布温度でのスプレーに特に適している。低い塗布温度を有するスプレー可能なホットメルト接着剤は、感熱性基材用の薄い接着接合を可能にする。この文献は、ホットメルト接着剤の機械的特性には触れていない。
【0016】
スプレー可能なホットメルト接着剤組成物は主に低粘度範囲にあり、したがって、これらは、この適用技術を使用して塗布することができる。スプレー可能なホットメルト接着剤の低溶融粘度は、通常、機械的特性の不良につながり、材料の凝集特性に負の影響を及ぼす。これらには、特に、材料の破断伸び、復元力または強度などの特性が含まれる。スプレーによって接着接合されたこの種の基材は、通常、低い機械的応力のみに耐える。それらは、接着接合される基材の最も均質な、したがって材料効率のよいコーティングを確実にするように最適化される。これに対し、凝集性ポリマーは接着接合自体が脆くなるのを防止するのに十分な安定性を確保することを意図して、基材の接着接合が優先される。接着接合の弾性は、ここでは二次的な役割しか果たさない。より高い溶融粘度を有するホットメルト接着剤は、塗布温度を上昇させることによってスプレー可能にすることができるが、そのような温度上昇はエネルギー消費の上昇をもたらし、使用される構成要素の望ましくない熱誘発劣化をもたらす可能性がある。
【0017】
SBC成分を有するポリオレフィンをベースとするホットメルト接着剤を配合する可能性は、従来技術から知られている。
【0018】
WO2006/020309(Exxon)(特許文献3)に記載のポリマー組成物は、プロピレン単位に由来するポリマーである少なくとも1の成分と、スチレンブロックコポリマーである少なくとも1の成分とを含む。ポリマー組成物は例えば、フィルム、繊維、織物および不織布、プレート、成形品、押出部品、熱成形品等のような多数の用途に適した加工特性を示す。しかしながら、スプレー適用については記載されておらず、記載されたシステムは、この適用技術には高すぎる溶融粘度を有するためである。
【0019】
EP3453408(Fuller)(特許文献4)は、プロピレンベースであり、約75,000以下のMwおよび約5未満の多分散指数を有する第1のポリマーと、約20%以下のスチレン含有量を有する水素化スチレンブロックコポリマーであって、ASTM1238(230℃、5kg)に従って試験した場合のメルトフローが約25g/10分以下である第二のポリマー、とを含むホットメルト接着剤組成物に関し、当該接着剤組成物は、10重量%~18重量%の軟化剤を含有する。1万g/モル未満の重量平均分子量を有するプロピレンベースポリマーは、明確に開示されていない。
【0020】
特に粘着付与剤および軟化剤の量が低減された組成物においては、ホットメルト接着剤調合物に使用される多くのポリマーは、異なるポリマーの不適合性の問題のために部分的にのみ混和するため、ホットメルト接着剤の有効な配合は困難であり得る。成分は高度に混和性であるが、達成される混和性は完全に均質な混合物を実現するのに十分良好ではない。
【0021】
P. Galli, T. Simonazzi, D. DelDuca;Acta Polym. 39 (1988) 81(非特許文献1)は、ほとんどのポリマーが混合物のエントロピーが低いために互いに混合できないことを説明している。ブレンドまたは調合物の機械的特性は、その組成の機能のみならず、分散の程度、相の形状、およびそれら自体の間のブレンド相の相互作用にも依存する。形態を制御することによって、ブレンド特性を制御することが可能である。
【0022】
様々な相溶化剤を使用することによって、ポリオレフィンおよびポリスチレンなどの様々なポリマーの相溶性を改善するために、従来技術において様々な努力がなされてきた。グラフト化ポリマーも相溶化剤と考えられてきた。
【0023】
R. M. Ho, A. C. Su, C. H. Wu;Polymer 34 (1993) 3264(非特許文献2)は、グラフト化反応によるポリプロピレン修飾の可能性の包括的な概観を提供する。記載された全ての合成の欠点は得られるグラフト化コポリマーの不均一性およびグラフト化されていない画分の形成であり、これは、それらの分子構造の特徴付けおよび均一な特性の表示を困難にする。
【0024】
従って、混和性の問題は、相溶性の問題を解決するために適用された、ブロックコポリマーのような利用可能な溶液を用いてアプローチされてきた。PSおよびPP/PEなどのポリマーの特性を組み合わせるSBCブロックコポリマーはより特異的であり、製造および特性において信頼性があり、その結果、それらは、関連する適合性の問題のための好ましい解決策であった。
【0025】
混和性ひいてはブレンドされたポリマー混合物の機械的性質を改善する必要がなかったので、さらなる相溶化剤による方法は、従来技術において集中的に追跡されなかった。
【0026】
SBCおよびプロピレンベースポリマーの相溶化の問題は、これらの成分のかなり混和性あるブレンドを提供することができるので、今日まで深く考慮されていなかった。グラフト化ポリマーに基づく相溶性概念のほんのわずかな例が、従来技術のホットメルト接着剤に適用された。
【0027】
US5461111(Shell)(特許文献5)は硬質熱可塑性組成物を提供しており、当該組成物は、プロピレン材料の主鎖上にグラフトされたスチレンポリマーのグラフト化コポリマー約10~65重量%を含むポリマー成分を約60~95重量%、および、(1)弱スチレンドメインを有する選択的水素化ブロックコポリマーのゴム成分約20~100重量%と、オレフィンコポリマーゴム、例えばEPM(エチレン-プロピレンモノマーゴム)のゴム成分約80~0重量%とを含むゴム成分のポリマー成分を約40~5重量%を含む。硬質組成物は有意に改善された靭性および溶融粘度を有し、低い粘度およびスプレー性を示さないと仮定される。硬質熱可塑性組成物の機械的特性は記載されていない。
【0028】
US7439305(Henkel)(特許文献6)は、少なくとも1の芳香族変性ポリエチレンおよび/またはポリプロピレン(コ)ポリマー、1のさらなるエチレンまたはプロピレン/C4-C29α-オレフィンコポリマー、少なくとも1の粘着性樹脂、ならびにワックスおよび添加剤に基づくホットメルト接着剤に関する。当該ポリオレフィンおよび芳香族変性ポリオレフィンは、1,000~50,000g/モルの分子量Mnを有する。融解エンタルピーおよび流動点は開示されていなかった。当該ホットメルト接着剤の特別用途に関連する機械的特性は、本出願の教示において考慮されなかった。
【0029】
しかしながら、現在までに達成された相溶化レベルは、薄いポリマー繊維のような少量のポリマーの高い機械的安定性を必要とする特別な用途には十分ではない。
【0030】
現在の傾向は、衛生用途のための安定なウェブ構造を形成するスプレー可能なホットメルト接着剤である。
【0031】
DE11,2016,001,247(Procter&Gamble)(特許文献7)は、第一の基材およびその上に支持された吸収層を含む吸収物品のための吸収性物品構造に関する。この吸収層は、順に超吸収性ポリマー材料を含む吸収材料を含み、当該吸収性物品構造は、吸収層を第一の基板上に少なくとも部分的に固定するためのウェブ構造を含む。このウェブ構造は、21℃において約1.2×106Pa超の貯蔵弾性率(G’)を有する。熱可塑性ポリマー組成物は、10,000g/モル超の重量平均分子量Mwを有する。SBCおよびプロピレンベースポリマーの明白な混合物は記載されていない。
【0032】
WO2017/132119(Procter&Gamble)(特許文献8)は、少なくとも10kg/モルのピーク分子量をそれぞれ有する1以上のポリマーを、少なくとも50重量%含む超吸収性固定剤を開示している。言及されるポリマーは、プロピレン、エチレン、ブテン、およびこれらの組み合わせのポリマー及びコポリマー;スチレンブロックコポリマー;ポリオレフィン;オレフィンブロックコポリマー、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0033】
ポリオレフィンベースのホットメルト接着剤調合物を使用すると、この用途に重要な機械的特性を有する適切な調合物を製造することができなかったため、空間的に膨張し再収縮する顆粒を固定するための安定なウェブ構造を今日まで製造することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0034】
【文献】US5026756
【文献】EP3271436
【文献】WO2006/020309
【文献】EP3453408
【文献】US5461111
【文献】US7439305
【文献】DE11,2016,001,247
【文献】WO2017/132119
【非特許文献】
【0035】
【文献】P. Galli, T. Simonazzi, D. Del Duca; Acta Polym. 39 (1988) 81
【文献】R. M. Ho, A. C. Su, C. H. Wu; Polymer 34 (1993) 3264
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0036】
本発明の課題は、従来技術に記載された問題を克服し、エネルギーおよび材料の節約に寄与する施与技術を用いて施与可能であり、かつそれにもかかわらず、接着接合の高い機械的安定性と柔軟性が伴い、それによって、接着剤の安定性に対する要求が高まる可能性のある用途への可能性を開く、良好にバランスのとれた機械的特性の比を有する改善されたスプレー可能なホットメルト接着剤を提供することである。ここでは、特に、環境との物質移動を損なうことなく顆粒または粉末を付着させ、液体吸収によって膨張および収縮システムを安定化させることができる接着性繊維ウェブスプレー用途について言及しうる。
【課題を解決するための手段】
【0037】
上記課題は、本発明により、以下を含む熱可塑性成形材料によって達成される:
(a)SBCの総重量に基づいて5~40重量%、好ましくは10~35重量%、特に好ましくは20~35重量%のスチレン含有量を有する少なくとも1のスチレンブロックコポリマー(SBC)、および、
(b)10,000g/モル未満、好ましくは9,000g/モル未満、特に好ましくは7,000g/モル未満の重量平均分子量Mwを有するPbP主鎖を有する1以上のプロピレンベースポリマー(PbP)(PbP-ng)、
ここで、当該PbPは、ISO11357-2に従い測定して50J/g未満、好ましくは30J/g未満、特に好ましくは0および5J/gの間、最も好ましくは0J/gの融解エンタルピーを有する。
融解エンタルピーが0J/gのPbPは、結晶性を有していない。
【0038】
本発明の好ましい態様において、1以上のプロピレンベースポリマー(PbP-ng)は、PbP主鎖の総重量に基づいて1~50重量%、好ましくは3~30重量%、および特に好ましくは5~20重量%のビニル芳香族モノマー(PbP-g-VAM)、好ましくはスチレンおよびその誘導体(PbP-g-ST)でグラフト化される。
【0039】
本発明の別の好ましい実施形態では、1以上のプロピレンベースポリマー(PbP-ng)は、PbP主鎖の総重量に基づいて、0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、特に好ましくは1~10重量%の、ヘテロ原子(PbP-g-UVMH)、好ましくはカルボン酸無水物、特に好ましくは無水マレイン酸(PbP-g-MA)を含む不飽和ビニルモノマーでグラフト化される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】いくつかの特徴を達成する方法はより明らかになり、開示自体は添付の図面と併せて、以下の開示の形態例の説明を参照することによって、より良く理解できる。
図1は、熱可塑性成形材料の特定の機械的特性を測定するために使用されるダンベル形状の試験片を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
定義
プロピレンベースポリマー(PbP)は、本発明の文脈において、チーグラーまたはメタロセン触媒を用いて製造された、少なくとも50重量%以上のプロピレン含量を有する低分子の直鎖状プロピレンホモポリマーまたはコポリマーである。
【0042】
PbPは、グラフト化されていないPbP(PbP-ng)、および、(i)スチレンでグラフト化されたPbP(PbP-g-ST)と同等な形態を含むビニル芳香族モノマーでグラフト化されたPbP(PbP-g-VAM)、または、(ii)無水マレイン酸でグラフト化されたPbP(PbP-g-MA)のようなヘテロ原子を含む不飽和ビニルモノマーであるグラフト化されたPbP(PbP-g-UVMH)の両方をカバーする。本出願で使用されるPbP-g-VAMという用語は、優先権が主張されるUS仮特許第62/966394で定義されるPbP-g-Stという用語に対応する/同一である。本出願がグラフト化されていないPbPのみに言及する場合、これらは、非グラフト化PbP(PbP-ng)として示される。
【0043】
PbP主鎖は、本発明の文脈において、チーグラーまたはメタロセン触媒を用いて製造され、グラフト化部位で置換されていない直鎖状PbPを意味する。当用語PbP主鎖は、技術的にPbP-ngという用語で置き換えることができるが、両方の用語は当業者にとってポリマーの機能を明確にするために使用される。本発明による熱可塑性成形材料に使用されるPbP-ngは、例えばWO2018/0073088に記載されており、それらはスプレー不可能な永続的粘着性感圧接着剤の構成成分である。
【0044】
本発明による熱可塑性成形材料におけるPbPの使用は、SBCマトリックス中へのPbPのより良好な統合を確実にし、したがって、マイグレーション(「ブリードスルー」)の低減および揮発性有機化合物(「VOC」)の形成の低減をもたらす。
【0045】
PbP-g-VAMまたはPbP-g-UVMHは、記載されたように以下の方法に従ってPbP-ng上でグラフト化反応を実施することによって製造される:
PbP-g-VAMまたはPbP-g-UVMHの製造に好適な出発物質は、チーグラーまたはメタロセン触媒を使用して製造され、10,000g/モル未満の重量平均分子量Mwを有するPbP-ngである。特に好ましいPbP-ngは、低結晶性およびコモノマーの統計的分布およびメタロセン触媒システムを使用することによって得られるポリプロピレン部品の大部分にまたは完全にアタクチックな構造を特徴とする低分子プロピレンホモポリマーまたはコポリマーである。
【0046】
好適な材料は、好ましくはプロピレンと、エチレンおよびC4-C18の高級α-オレフィンからなる群から選択される1以上の他のモノマーとを含む。PbP-ngは、特に好ましくはプロピレンおよびエチレンを含む。
【0047】
スチレンのようなビニル芳香族モノマー(VAM)、または、環内で置換され、αメチルスチレン、p-tert-ブチルメチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、またはアルコキシル化スチレン誘導体のような直鎖または分岐アルキル置換基を有するスチレン誘導体は、グラフト化成分として好適であり、好ましくはスチレンおよびその誘導体、特に好ましくはスチレンである。VAM成分は、出発物質の0.1~50重量%の量で使用される。
【0048】
ヘテロ原子を含む不飽和ビニルモノマー(UVMH)、好ましくはカルボン酸無水物、特に好ましくは無水マレイン酸(MA)を含む不飽和ビニルモノマーがグラフト化成分として好適である。UVMH成分は、出発物質の0.1~20重量%の量で使用される。
【0049】
好適なラジカル開始剤は、反応条件下でラジカルに十分に分解する成分、例えばアルキル、アリールまたはアシルペルオキシドのような有機過酸化物、例えば、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシドまたはジクミルペルオキシド、例えばtert-ブチルペルアセタートまたはtert-ブチルペルベンゾアートのようなペルオキシエステル、および、例えばtert-ブチルヒドロペルオキシドまたはクモールヒドロペルオキシドのようなヒドロペルオキシドである。他の可能なラジカル開始剤は、アゾ-ビス-(2-メチルプロピオニトリル)または2,2´-アゾ-ビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)などの脂肪族アゾ化合物である。ジアルキルペルオキシドが好ましい。ジ-tert-ブチルペルオキシドが特に好ましい。ラジカル開始剤は、PbP重量の0.1~50%の量で使用される。
【0050】
PbPとグラフト化成分との反応は、連続的にも不連続的にも行うことができる。不連続プロセスでは、PbP-ngを当PbP-ngの融点を超える温度、好ましくは100℃~200℃、特に好ましくは130℃~180℃に加熱し、グラフト化成分ならびにラジカル開始剤を、撹拌しながら、そして適用可能であれば不活性ガス雰囲気下で、連続的にまたは1回または複数回に分けながら、適切な時間をかけて添加する。調整後、任意で、追加のラジカル開始剤を添加した後、同じ温度または異なる温度での後反応を続けることができる。反応中に発生した揮発性成分または過剰な揮発性出発物質は真空下で蒸留することができ、および/または、不活性ガスでストリッピングすることによって分離することができる。
【0051】
そのような(i)スチレンのようなビニル芳香族モノマーでグラフト化された修飾PbP-ng、または、環中で置換され、直鎖または分枝鎖アルキル置換基を有するスチレン誘導体、例えば、αメチルスチレン、p-tert-ブチルメチルスチレン、1,3-ジメチルスチレン、または、アルコキシル化スチレン誘導体(PbP-g-VAM)でグラフト化された修飾PbP-ng、好ましくはPbP-g-ST、あるいは、(ii)カルボン酸無水物のようなヘテロ原子を含む不飽和ビニルモノマーでグラフト化された修飾PbP-ng(PbP-g-UVMH)、好ましくは無水マレイン酸でグラフト化された修飾PbP-ng(PbP-g-MA)は、ホットメルト接着剤にて、特にSBCおよび/またはPbP-ngと組み合わせて、相溶化剤または接着剤ベースポリマーとして広範囲の用途を可能とする。
【0052】
本発明によるPbP-g-VAMは、PbP主鎖が10,000g/モル未満、好ましくは9,000g/モル未満、特に好ましくは7,000g/モル未満の重量平均分子量であり、スチレン含量が1~50重量%、好ましくは3~30重量%、特に好ましくは5~20重量%であり、および、融解エンタルピーが50J/g未満、好ましくは30J/g未満、より好ましくは0~5J/gであることを特徴とする。
【0053】
本発明によるPbP-g-UVMHは、PbP主鎖が10,000g/モル未満、好ましくは9,000g/モル未満、特に好ましくは7,000g/モル未満の重量平均分子量であり、カルボン酸無水物含有量が0,1~20重量%、好ましくは0,5~15重量%、特に好ましくは1~10重量%であり、および、融解エンタルピーが50J/g未満、好ましくは30J/g未満、より好ましくは0~5J/g、特に好ましくは0J/gであることを特徴とする。
【0054】
好ましい実施形態では、本発明によるPbP-g-VAMまたはPbP-g-UVMHは、20,000g/モル未満、好ましくは15,000g/モル未満、特に好ましくは10,000g/モル未満の重量平均分子量を特徴とする。
【0055】
代替実施形態では、熱可塑性成形材料は、スチレンブロックコポリマー(SBC)と、10,000g/モル未満の重量平均分子量Mwを有するPbP-ng、20,000g/モル未満の重量平均分子量を有するPbP-g-VAM、および20,000g/モル未満の重量平均分子量を有するPbP-g-UVMHからなる群から選択される1以上のPbPとを含み、当該SBCは、SBCの総重量に基づいて、5~40重量%、好ましくは10~35重量%、特に好ましくは20~35重量%のスチレン含有量を含む。
【0056】
好ましい実施形態では、熱可塑性成形材料のスプレー性および改善された機械的特性は、PbPによって達成され、当該PbPは、ASTM D97に従い決定される50℃未満、好ましくは30℃未満、より好ましくは25℃未満の流動点を有する少なくとも1のPbP-ngを含み、または、ASTM-D97に従い決定される85℃未満、好ましくは60℃未満、より好ましくは55℃未満の流動点を有する少なくとも1のPbP-g-VAMまたはPbP-g-UVMHを含む。
【0057】
別の好ましい実施形態では、PbPは、DIN53019に従い測定して、1~1,000mPas、好ましくは1~500mPas、特に好ましくは1~300mPasの170℃での溶融粘度を有し、熱可塑性成形材料のスプレー性にさらに寄与する。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、熱可塑性成形材料は、1以上のPbP-ng、および、(i)1以上のPbP-g-VAM、好ましくは1以上のPbP-g-ST、または、
(ii)1以上のPbP-g-UVMH、好ましくは1以上のPbP-g-MA、の両方を、様々な重量比で含む。このような実施形態は、ポリマー成分のより良好な混和性を促進し、したがって機械的特性を改善する。驚くべきことに、PbP-g-VAM、好ましくはPbP-g-STまたはPbP-g-UVMH、好ましくはPbP-g-MA自体はPbP-ngより高い粘度を有するけれども、PbP-ngと(i)PbP-g-VAM、または、(ii)PbP-g-UVMHとを組み合わせると、PbP-ngのみを含む熱可塑性成形材料と比較して、熱可塑性成形材料のより低粘度を可能にする。この実施形態の別の技術的特徴は、成分のマイグレーションの低減である。
【0059】
PbP-g-VAMまたはPbP-UVMHポリマーは、PbP-ngとして同じまたは異なるポリマー主鎖を有することができる。好ましくは、PbP-g-VAMまたはPbP-g-UVMHポリマーのPbP主鎖がPbP-ngとして同じである。
【0060】
好ましい実施形態では、熱可塑性成形材料は、SBCおよびPbPからなり、当該PbPはPbP-ng、および/または、同じまたは別のPbP主鎖に由来するPbP-g-VAMまたはPbP-g-UVMHでありうる。好ましくは、当該PbP-g-VAMまたはPbP-g-UVMHは、PbP-ngとして同じPbP主鎖に由来する。
【0061】
好ましい実施形態では、PbP主鎖は、プロピレンと、エチレンおよびC4-C18α-オレフィンからなる群から選択される別のモノマーとの共重合体である。
【0062】
本発明の熱可塑性成形材は、10,000g/モル未満のMwを有するPbPに加えて、さらにポリオレフィンベースコポリマーを含んでいてもよい。
【0063】
好ましい実施形態では、PbPは、DIN EN ISO 11357-2に従いDSCによって決定して、-20℃未満、好ましくは-30℃未満、特に好ましくは-40℃未満のガラス転移温度Tgを有する。
【0064】
好ましい実施形態において、PbP主鎖は、メタロセン触媒によって生成された。
【0065】
PbPは、プロピレン割合が好ましくは90重量%未満、より好ましくは60~85重量%であるプロピレンのランダム共重合体である。
PbPは、好ましくはプロピレンとエチレンとのコポリマーであり、ここで、該コポリマーは、60~85重量%のプロピレンおよび15~40重量%のエチレンに由来する。
SBCは、本発明により1以上のSBCを含んでもよい。
【0066】
SBCは、好ましくは30,000g/モルを超える、好ましくは40,000g/モルを超える、特に好ましくは50,000g/モルを超える重量平均分子量Mwを有する。
好ましい実施形態では、SBCは、ASTM1238に従い測定して、5~250g/10分、好ましくは10~150g/10分、特に好ましくは20~80g/10分のメルトフローレートMFR(230℃/2.16kg)を有する。
【0067】
好ましい実施形態では、SBCは、10J/g未満、好ましくは5J/g未満の融解エンタルピーを有し、それによって非晶質構造を有し、結果として熱可塑性材料の機械的特性に影響を及ぼすゴム様挙動をもたらす。
【0068】
熱可塑性成形材料は、熱可塑性成形材料の総重量に基づいて、好ましくは10~55重量%、より好ましくは20~45重量%、特に好ましくは25~40重量%のSBCを含む。
熱可塑性成形材料は、熱可塑性成形材料の総重量に基づいて、好ましくは10~80重量%のPbP、特に好ましくは20~75重量%、さらに特に好ましくは35~70重量%のPbPを含む。これらの重量割合において、対応する成形材料の個々の成分の特性は、最適な様式で組み合わされる。
【0069】
SBCは、好ましくはポリマー鎖中の二重結合で選択的に水素化され、これはポリマー100g当たり100g未満のI2ヨウ素価、特に好ましくはポリマー100g当たり50g未満のI2を特徴とする。
SBCは、好ましくはABAタイプのエラストマー性トリブロックコポリマーからなる群から選択され、ここで、Aは硬質スチレン単位からなり、Bはエラストマー単位からなり、成分の混和性に影響を及ぼす。当ABAタイプのエラストマー性トリブロックコポリマーに加えて、SBCは、ABタイプのエラストマー性ジブロックコポリマー、または、[AB]nタイプのエラストマー性マルチブロックコポリマー、ここでnはブロックの個数である、も含むことができる。
【0070】
SBCは、特に好ましくはSEBS、SEPSおよびSEPポリマーの群から選択される1以上のSBCからなる。
【0071】
好ましい実施形態では、熱可塑性成形材料の170℃における溶融粘度は、DIN53019に従い測定して、100~30,000mPas、好ましくは500~20,000mPas、特に好ましくは1,000~15,000mPasである。これらの粘度範囲では、用途に適したスプレー方法で最適なスプレー結果を達成することができる。
【0072】
好ましい実施形態において、熱可塑性成形材料は、ISO527に従い測定して、800%を超える、好ましくは1,000%を超える破断伸びを有する。ただし、測定に使用される試験片(
図1参照)は、ISO527に従った標準から外れる次の寸法を有する場合を除く:全長:50mm、狭い部分の幅:3.3mm、端部の幅:7mm、狭い平行部分の長さ:25mm、厚さ:1mm。
【0073】
破断伸びは、ポリマーの変形挙動の尺度であり、引張強さ決定のためと同じ試験での引張伸び試験によって、ISO527に従って決定される。破断伸びの値は、材料が破損するまでの試験片の伸び率を示す。
【0074】
引張強さはISO527に従った引張伸び試験によって決定される。ただし、使用したダンベル型の試験片(
図1参照)は、ISO527に従った標準から外れる次の寸法を有する場合を除く:全長:50mm、狭い部分の幅:3.3mm、端部の幅:7mm、狭い平行部分の長さ:25mm、厚さ:1mm。これは、試験片を伸ばすのに必要な単位面積あたりの力(MPaでレポートされる)を決める。
【0075】
さらなる好ましい実施形態では、熱可塑性成形材料は、70%を超える、好ましくは80%を超える、特に好ましくは90%を超える弾性を有し、ここで、弾性とは、本明細書の「測定方法」の項に記載された方法によって決定される。弾性は、熱可塑性成形材料の復元力の尺度である。
【0076】
さらに好ましい実施形態では、熱可塑性成形材料は、23℃での破断時真歪みが2.2よりも高く、23℃での歪み硬化指数が25よりも高い。
破断時真歪み、歪み硬化指数および降伏応力は、本記載の「測定方法」の項に記載されている「伸長試験方法」に従って決定する。
【0077】
低い降伏応力および高い歪み硬化指数は、水または湿気の吸着による結合粒子のサイズおよび形状変化による膨張時にネット構造を安定化するのに有益である。
歪み硬化指数は初期降伏応力と最大降伏応力の差である。25を超える値はネット内のより良好な応力分布をもたらし、高い局所応力を回避する。これは、ネット構造の拡張性を著しく増大させる。
【0078】
破断時真歪みの増加は、ネット構造を拡張させるのに全体的に有益である。
【0079】
熱可塑性成形材料のレオロジー特性は、スプレーを介して施与される間に耐久性ある結合を作り出すために、前記温度で妥当な溶融強度を有する能力を強調し、100℃でのtanδおよび100℃での貯蔵弾性率G´によって記載される。
【0080】
さらに好ましい態様において、PbPは、ISO1183に従い決定され、0.95g/cm3未満、好ましくは0.92g/cm3未満、特に好ましくは0.90g/cm3未満の密度を有する。
【0081】
さらに好ましい実施形態では、PbPは、5未満、好ましくは3未満、特に好ましくは2.5未満の多分散性指数を有する。多分散性指数PDIは、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの割合から計算され、規格ISO16014に従い決定された。
【0082】
本発明による熱可塑性成形材料に使用されるPbPは、ベースポリマーの機能を担うこと、調合物中の軟化剤および粘着付与剤の機能を置換することの両方が可能である。これは、ユーザにとってさらなる利点をもたらす。例えば、より少ない成分が溶融され混合される必要があり、したがって、より迅速でより費用効果の高い作業プロセスもたらされる。
【0083】
好ましい実施形態では熱可塑性成形材料は粘着付与剤を含まず、このことは本発明において熱可塑性材料中の粘着付与剤含量が0.1重量%未満であることを意味する。
さらに好ましい実施形態では、熱可塑性成形材料は、鉱油、ナフテン油、パラフィン油(例えば、シクロパラフィン油)、フタル酸エステル、アジピン酸エステルなどの軟化剤を含まず、これは本発明において、熱可塑性材料中の軟化剤含有量は0,1重量%未満であることを意味する。
【0084】
粘着付与剤または軟化剤を添加せずに製造される熱可塑性成形材料は、特に環境的に健全であり、毒物学的な心配がなく、したがって、人体での使用に適している。
代替の実施形態では、熱可塑性成形材料は、好ましくは基材への接着にプラスに影響する粘着付与剤を含む。
【0085】
熱可塑性成形材料は、好ましくは有機または無機の顔料、充填剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤および光安定剤のうちの1以上を含む。
好ましくは酸化防止剤は、立体ヒンダードフェノールおよびヒンダードアミン光安定剤(HALS)からなる群から選択され、これは熱可塑性成形材料の出す臭気を抑える。特に好ましくは、酸化防止剤はヒンダードアミン光安定剤(HALS)である。
【0086】
さらに、本発明は、少なくとも1のSBCを少なくとも1のPbPと混合する本発明による熱可塑性成形材料の製造方法に関し、以下の特徴を有する:
(a)当該少なくとも1のSBCは5~40重量%、好ましくは10~35重量%、特に好ましくは20~35重量%のスチレンを含有する、および
(b)当該少なくとも1のPbP主鎖は、10,000g/モル未満、好ましくは9,000g/モル未満、特に好ましくは7,000g/モル未満の重量平均分子量Mwを有するPbP主鎖を有する、
前記少なくとも1のPbPは、任意で、1~50重量%、好ましくは3~30重量%、特に好ましくは5~20重量%のビニル芳香族モノマーでグラフト化される(PbP-g-VAM)、好ましくはスチレンおよびその誘導体でグラフト化される(PbP-g-ST)、
あるいは、0.5~20重量%、好ましくは1~15重量%、特に好ましくは3~10重量%のヘテロ原子含む不飽和ビニルモノマーでグラフト化される(PbP-g-UVMH)、好ましくはカルボン酸無水物、特に好ましくは無水マレイン酸でグラフト化される(PbP-g-MA)、
ここで、当PbPは、ISO11357-2に従い測定して、50J/g未満、好ましくは30J/g未満、特に好ましくは0~5J/g、最も好ましくは0J/gの融解エンタルピーを有する。
【0087】
本発明による当該方法は、好ましくは少なくとも1のSBCと少なくとも1のPbPとを混合することを含み、特に200℃~250℃の加工温度で共回転二軸スクリュー押出機を使用することを含む。
【0088】
本発明はさらに、本発明の熱可塑性成形材料からなるか、または、さらなる成分に加えて当該材料を含有するホットメルト接着剤に関する。
【0089】
本発明はさらに、任意の種類の可撓性基材および/または硬質基材を結合するための、本発明の熱可塑性成形材料または本発明のホットメルト接着剤の使用に関する。
【0090】
本発明によるホットメルト接着剤または熱可塑性成形材料は、任意の種類の可撓性基材および/または硬質基材、例えば、紙、厚紙包装、ガラス、木材、ポリプロピレンプラスチック(PP)、ポリエチレンプラスチック(PE)、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマープラスチック(ABS)、を接着するのに適しており、特に、構造化基材または織物基材、例えば、繊維ネット、織布または不織布などの織物基材に適している。当業者は構造化された基材が1mmを超えるプロファイル深度Ptを有する基材を意味することを理解する。
【0091】
本発明によるホットメルト接着剤または本発明による熱可塑性成形材料は、特に好ましくは、例えば顆粒のような粗粒バルク固体を結合および固定するために使用される。これらの用途のために、改良された熱可塑性成形材料またはホットメルト接着剤は、コンパクトで均質なフィルムを形成するよりもむしろ、それらがネットのような空気および水分透過性の構造を形成するように施与されてもよい。これらのネット状の空気および水分透過性構造(ネット状構造)は、特に、例えば吸収体を任意の種類の基材上に固定するのに適している。このタイプの固定により、特に、例えば、衛生用品、包装材料、自動車部品、車体、家具、例えば柔らかい家具またはマットレス、および、任意のタイプの表面に、充填剤、乾燥剤または吸湿剤を固定することが可能である。この場合、ネット構造は前述の顆粒を固定し、特定の機械的特性のために、液体含有量に応じた運動および膨張によってある機械的負荷を維持する。
【0092】
非常に驚くべきことに、記載された特徴を有する熱可塑性成形材料は、成形材料のその低溶融粘度によってもたらされる良好な加工性と、例外的な機械的特性とを兼ね備える。記載された特性を兼ね備えることは、本発明による成形材料を高性能ホットメルト接着剤として使用するのに適している。
【0093】
測定方法:
列挙されたポリオレフィンは、列挙された規格に従い特徴付けられた。非規格的な特徴づけは記載に従って行った。
【0094】
重量平均分子量Mw
PbPの重量平均分子量Mwの定量は、PP校正を用いて1,2‐オルト‐ジクロロベンゼン中で行った。測定は、135℃の温度でゲル浸透クロマトグラフィーにより行った。定量はISO16014-1に従った。
【0095】
SBCの重量平均分子量Mwの定量は、移動相としてTHF中で、1mL/minのフローレートで、680~167万g/モルの範囲の標準を用いたポリスチレンキャリブレーションで行った。測定は、40℃の一定温度で、PSSからのスチレン‐ジビニルベンゼンコポリマーカラムでのゲル浸透クロマトグラフィーにより行った。測定のために、SBCポリマー溶液を(2mgポリマー)/(ml THF)の濃度で調製し、溶液50μLを注入した。検出には示差屈折計を用いた。
【0096】
流動点
流動点は、規格ASTM D97に従って測定した。
ヨウ素価
ヨウ素価は、規格DIN 6162:2014に従って測定した。
溶融粘度
溶融粘度の測定は、規格DIN 53019に従って行った。
多分散性指数PDI
多分散性指数PDIは、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの割合から計算され、規格ISO16014-1に従って決定された。
【0097】
引張強さ
熱可塑性成形材料の引張強さおよび破断伸びはISO527に従って測定された。ただし、この場合、ホットメルトプレスによって製造された試験片の寸法が規格と異なるものが使われたことを除く。強度および破断伸びを測定するために使用した試験片は、以下の寸法を有する:全長:50mm、狭い部分の幅:3.3mm、端部の幅:7mm、狭い平行部分の長さ:25mm、厚さ:1mm。
【0098】
弾性
熱可塑性成形材料の弾性を、Zwickの引張/伸長機で、前述の試験片を用いて試験し、サンプルの試験片を、長さL1から長さL2まで、50mm/分の伸長速度で、300%伸長させた。その後、試験片を完全に弛緩させ、すなわち、試験片は0Paの力でその長さをもはや変化させない。結果として得られる長さはL3に対応する。
弾性R(%)は次のように与えられる:R=(((L2-L3)/L2-L1)×100
【0099】
振動レオメトリー試験法
振動レオメトリー試験法を用いて、ポリマー組成物の貯蔵弾性率および損失係数を測定する。制御歪回転レオメーター(例えばDiscovery HR3、TA Instruments(New Castle,DE,USA、または同等物)は、少なくとも-0℃~150℃の範囲にわたって0.5℃以上の精度でサンプル温度制御(ペルチェ冷却器と抵抗加熱器との組み合わせを使用)が可能である。レオメータは、20mmステンレス鋼平行板工具を使った平行板構成で操作される。
【0100】
この方法では、最初に1,000μmの平行板間隙が使用される。工具の熱膨張を補正するために、間隙は1,000μmに設定され、実際のプレート間隙(適切な標準試験流体を用いて測定したとき)のマッピング、-10℃~150℃の範囲にわたる温度の関数が実行される。次いで、このマッピングは、貯蔵弾性率パラメータおよび損失係数パラメータの決定の全体にわたって使用される。
【0101】
レオメーターを150℃に加熱し、ポリマー組成物をレオメーターに導入し、間隙を1,050μmに設定し、余分に突出のサンプルをトリミングし、次いで間隙を1,000μmに設定する。(レオメーターの軸方向力の制御は0Nに設定され、実験の間、±0.1Nの力の範囲内に維持され、上記の工具の補正に加えて、過剰充填または充填不足を回避するために、サンプル自体の熱膨張/収縮を間隙を調整することで補正する。)次に、レオメーターは130℃に冷却され、その時点で、2℃/分の一定の冷却速度で130℃から-10℃まで傾斜した温度で測定開始する。印加された歪み振幅は0.1%で、振動周波数は1Hz(毎秒1サイクル)である。得られた振動応力が記録される。
【0102】
このステップの後、サンプル温度を23℃に設定し(温度を10℃/分の速度でこの設定点まで傾斜をつける)、サンプルを23℃で4.0時間静置させる。この期間の終わりに、温度を10℃に設定し(温度を10℃/分の速度でこの設定点まで傾斜をつける)、サンプルを-10℃で300秒間平衡化し、2℃/分の一定の昇温速度で130℃まで上げながら、2回目の振動レオロジー測定を行う(0.1%歪み、振動周波数1Hz)。
【0103】
最初の温度掃引から、貯蔵弾性率G´を計算し、100℃で記録し、これらの値を「100℃での貯蔵弾性率」として、1Paの桁までパスカル(Pa)で報告する。最初の減少する温度掃引から、損失係数(タンデルタとしても知られる)を計算し、100℃で記録し、この無次元値を「100℃での損失係数」として100分の1の桁まで報告する。
【0104】
伸長試験方法
伸張試験法を用いて、ポリマー組成物の試験片について、降伏応力パラメーおよび最大応力パラメータ、破断時真歪みパラメータ、および歪み硬化指数を定量する。ポリマー組成物で形成された薄膜試験片を、逆回転ローラを備えた特殊な固定具を装備した回転レオメータで分析し、付与された伸長歪みに関連する応力を測定し記録する。
【0105】
機器の設定
回転レオメーター(ARESG2,TAInstruments,NewCastle,DE,USA、または同等物)には、特にフィルムの伸長変形を調べるために設計された逆回転円筒ローラーを有する固定具が取付けられる。適切な固定具の例は、伸張粘度固定具、またはEVF(EVF、TAInstruments、または同等物)である。レオメーターには、少なくとも-50~250℃の温度を0.5℃の許容範囲内で制御することができる強制対流オーブンFCO(FCO、TAInstruments、または同等物)および冷却システム(ACS2、TAInstruments、または同等物)がさらに取り付けられる。
【0106】
試験片準備
約10gのポリマー組成物をポリテトラフルオロエタン(PTFE)製ボウルに入れ、真空オーブンに導入する。周囲圧力において170℃で15分後、圧力を10mbarに下げ、続いてポリマー組成物を170℃かつ10mbarで45分間保持して、ポリマー組成物から気泡を除去する。当ポリマー組成物を真空オーブンから取り出し、90±30分かけて周囲の実験室条件(23±2℃)まで放冷し、この時点でポリマー組成物をPTFEボウルから取り出し、2枚のシリコン処理紙の間に置く。厚さ0.50mmの金属製シムをスペーサとして用い、90℃、10Bar(計測器設定)で60秒間加熱プレスでポリマーフィルムとすることで、0.50mmの膜厚が得られる。90℃がポリマー組成物を溶融するのに不十分である場合、より高い温度(しかし組成物を溶融するのに十分な最低温度)が使用される。
【0107】
フィルムは、試験前に23±2℃の実験室で少なくとも120時間保管される。当フィルムから、測定のための個々の試験片を、サンプルカッターを用いて、20.0mm×10.0mm×0.50mmの寸法の試験片に打ち抜く。この試験片をはさみで長さ方向に切断して、最終的に5±0.5mmとする。正確な幅と厚さは、0.01mmに近いデジタルキャリパー(ElectronicCaliperPRO-MAXFowler)で測定し、レオメーターソフトウェアに入力される。
【0108】
測定
EVFのシリンダーをレオメーターの強制対流式オーブン内で90±30秒かけて80℃に加熱する。次に、ポリマー組成物の小滴(0.03±0.01g)を各シリンダーに施与する。使用されるポリマー組成物は、測定を妨げないように高い硬性(23℃で10MPaを超えるG´)を示すべきである。ポリマー組成物の試験片を、EVFのシリンダー上の溶融ポリマー組成物に素早く押し付けて、それをシリンダー表面に固定する。試験片をシリンダーの回転軸に対して垂直に配置する。
【0109】
次いで、EVF上に載置された試験片を、熱調整のためにレオメーターの強制対流式オーブンに入れ、23±1℃で300±10秒間等温に保つ。この時間が経過した後、試験片を機械的に調整する。試験片を機械的に調整するために、トルク変換器をゼロにし、サンプルを0.001s-1のプレ伸び速度下に0.30秒間置き、次いで60秒弛緩させる(この方法では、すべての歪みは「真歪み」または「対数歪み」としても知られるヘンキー歪みに換算して表される)
【0110】
測定は、23℃±0.5℃のFCOオーブンで行う。測定のための歪み速度伸びは0.01s-1であり、最大伸長時の歪みは4.0である。測定後、試験片の破断をチェックする。破断した場合、破断の位置が記録される。破断がEVFの2つのシリンダの間のほぼ中央にある場合、収集されたデータは許容可能であると見なされる。ポリマーフィルムの破断が回転シリンダーまたはその近くにある場合、結果は廃棄され、測定は再び複製試験片について行われる。
【0111】
分析
伸長応力の計算については、一定の体積と仮定する。レオメータで記録されたトルク対角変位の生データから、伸長応力(メガパスカル、またはMPa)対ヘンキー歪みを計算した。データは、横座標(線形目盛)にヘンキー歪み、縦座標(対数目盛)に伸長応力として、片対数様式でプロットする。R2値が0.9以上の正の傾きを持つ線形フィットは、ヘンキー歪みが0.5と1との間に設定される。あるいは、測定中に記録された伸長応力の最大値を降伏応力パラメータとし、再び、最も近いキロパスカルまでMPaで報告される。ゼロのヘンキー歪み(すなわち、y切片)において当てはめられた線の値は降伏応力パラメータとして定義され、これをキロパスカルの桁までMPaで報告される。
【0112】
プロット中の最大応力値は最大応力パラメータとして定義され、これをキロパスカルの桁までMPaで報告される。ヘンキー歪みは、試験片が破断した時および/または報告されたトルク値が100μNmより低い時、無次元値として0.1の桁まで(または、測定中に破断しなかった場合、歪み4.0まで)破断歪みパラメータとして報告される。最大応力と降伏応力との差を降伏応力で割ったものは歪み硬化指数として定義され、これは無次元値として1の桁まで報告される。
実施例
【0113】
本発明による成形材料を製造するために、PbPをSBCと混合した。使用したSBCは、製造業者Kraton社またはDZBHNewMaterial社からのスチレンブロックコポリマーであった。使用したPbPは、Clariant社のLicocene(登録商標)PPA330である。両方の成分の化学的、物理的および機械的性質を、それぞれ表1および2に詳細に示す。
A)PbP
【0114】
【表1】
B)PbP-g-STまたはPbP-g-MAポリマー
【0115】
合成例1:
表1によるPbP2,500gを、撹拌機、内部温度計および蒸留ブリッジを備えたガラス装置中で、窒素雰囲気下で165℃に加熱した。新たに蒸留したスチレンまたは無水マレイン酸250gを3時間かけて連続的に添加し、同時に滴下漏斗からジ-tert-ブチルペルオキシド25gを連続的に添加した。添加終了後、反応を1時間継続させた。続いて、約20mbarの真空をつかって揮発性成分を除去し、明るい色のペースト状液体ポリマーを得て、表2に列挙した特性を示した。
【0116】
【0117】
C)SBC成分
【0118】
【0119】
D)粘着付与剤
熱可塑性成形材料を製造するために、樹脂ベースの粘着付与剤を2つのポリマーと部分的にブレンドした。以下の市販の粘着付与剤を使用した:
a)Regalite9100(Eastman)
b)SukorezSU400(Kolon)
成分の溶融混合物を、表1および2に記載のポリマー、任意に粘着付与剤および任意にさらなる添加剤、特に酸化防止剤から溶融押出成形により製造した。これは、速度130rpm、処理温度230℃で、共回転二軸スクリュー押出機を用いて行われた。
熱可塑性成形材料を製造するために、以下の酸化防止剤を添加した:
抗酸化剤1:Hostanox(登録商標)Clariant社製の立体ヒンダードフェノール;
抗酸化剤2:Hostavin(登録商標)Clariant社製のヒンダードアミン光安定剤(HALS)。
【0120】
評価
比較例は、本発明によらないプロピレンベースポリマーとSBCとの樹脂を含まない混合物、または本発明のプロピレンベースポリマーと他のポリオレフィンとの混合物のいずれかである比較混合物を示す。
【0121】
このようにして製造したホットメルト接着剤組成物から以下の特性を測定した:
-170℃での溶融粘度、
-破断伸び[%]、
-弾性[%]。
【0122】
熱可塑性成形材料のスプレー性を確実にするために、その170℃での溶融粘度は、30,000mPas以下であるべきである。機械的性質を分類するために、以下のスキームを使用する:
【0123】
【0124】
実施例(発明)/(重量%)
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
本発明による熱可塑性成形材料は、両方のカテゴリーにおいて少なくとも(B)分類を有する。
比較例(非発明)/(重量%)
【0129】
【0130】
本発明の実施例は、比較例と比較して、重要な機械特性で有意に良好な値を示す。例えば、本発明は、低い溶融粘度を、高い破断伸びおよび高い弾性と兼ね備える。良好な機械特性を有するがスプレーできない配合は、低い溶融粘度を有するが少なくとも1の不十分な機械特性を有する配合として、本発明の目的である技術的問題解決を達成することができなかった。本発明の実施例のみが、十分に低い溶融粘度、ならびに十分な破断伸び、ならびにスプレー可能なウェブ用途を達成するのに適した弾性を有する。
【0131】
さらなる特性についてさらに測定し、表8および9にまとめた:
【0132】
【0133】
【0134】
表9および10は、安定なネット構造としての用途に関連する追加の機械特性を示す。重要なパラメータ、即ち、降伏応力、破断時の真歪み及び歪硬化指数は、スプレーウェブ用途の機械的安定性に関するすべての要件を満たしている。これにより、材料は高い局所応力で即座に破損せず、これは正味の構造伸長性の有意な増加につながる。