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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】真空圧供給システム
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/08 20060101AFI20240723BHJP
   B25J 15/06 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B23Q3/08 A
B25J15/06 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022539463
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027625
(87)【国際公開番号】W WO2022025020
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2020129037
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧人
(72)【発明者】
【氏名】室田 真弘
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-270535(JP,A)
【文献】特開平9-309733(JP,A)
【文献】実開昭49-27869(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/08
B25J 15/00 - 21/02
B25B 11/00
H01L 21/683
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空圧を用いて物体を保持する保持部に真空源からの前記真空圧を供給するための第1真空圧供給路と、
真空圧を蓄えるタンクと、
前記第1真空圧供給路の途中から分岐して、前記タンクに接続された第2真空圧供給路と、
前記第2真空圧供給路上に設けられた第1電磁弁と、
を備え
前記真空圧が蓄えられた前記タンクには、前記第1電磁弁が開かれた場合にのみ、空気が流れ込み得る、真空圧供給システム。
【請求項2】
請求項1に記載の真空圧供給システムであって、
前記第2真空圧供給路の分岐点と前記保持部との間における前記第1真空圧供給路上に設けられた第2電磁弁と、
前記第2電磁弁を開いておき、前記タンクに前記真空圧を充填させる場合は前記第2電磁弁を閉じる制御を行うとともに、前記第1電磁弁を開く制御を行う充填制御部と、
を備える、真空圧供給システム。
【請求項3】
真空圧を用いて物体を保持する保持部に真空源からの前記真空圧を供給するための第1真空圧供給路と、
真空圧を蓄えるタンクと、
前記第1真空圧供給路の途中から分岐して、前記タンクに接続された第2真空圧供給路と、
前記第2真空圧供給路上に設けられた第1電磁弁と、
前記第1真空圧供給路上に備えられ、前記真空圧の大きさを検出する圧力センサと、
前記第1電磁弁を閉じておき、前記圧力センサによって検出された前記真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、前記第1電磁弁を開く制御を行う予備真空圧制御部と、
を備える、真空圧供給システム。
【請求項4】
請求項3に記載の真空圧供給システムであって、
前記圧力センサは、前記第2真空圧供給路の分岐点と前記保持部との間における前記第1真空圧供給路上に設けられる、真空圧供給システム。
【請求項5】
請求項4に記載の真空圧供給システムであって、
前記圧力センサは、前記第2真空圧供給路の分岐点と前記保持部との間における前記第1真空圧供給路上に設けられた第2電磁弁よりも前記保持部側に設けられる、真空圧供給システム。
【請求項6】
真空圧を用いて物体を保持する保持部に真空源からの前記真空圧を供給するための第1真空圧供給路と、
真空圧を蓄えるタンクと、
前記第1真空圧供給路の途中から分岐して、前記タンクに接続された第2真空圧供給路と、
前記第2真空圧供給路上に設けられた第1電磁弁と、
前記保持部に設けられ、前記真空圧の大きさを検出する圧力センサと、
前記第1電磁弁を閉じておき、前記圧力センサによって検出された前記真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、前記第1電磁弁を開く制御を行う予備真空圧制御部と、
を備える、真空圧供給システム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の真空圧供給システムであって、
前記第2真空圧供給路の分岐点と前記真空源との間における前記第1真空圧供給路上に設けられた第3電磁弁と、
前記第3電磁弁を閉じておき、前記保持部または前記タンクに前記真空圧を供給する場合に、前記第3電磁弁を開く制御を行う供給制御部と、
を備える、真空圧供給システム。
【請求項8】
請求項3~6のいずれか1項に記載の真空圧供給システムであって、
前記第2真空圧供給路の分岐点と前記真空源との間における前記第1真空圧供給路上に設けられた第3電磁弁を備え、
前記予備真空圧制御部は、前記第1電磁弁を閉じるとともに前記第3電磁弁を開いておき、前記圧力センサによって検出された前記真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、前記第1電磁弁を開くとともに前記第3電磁弁を閉じる制御を行う、真空圧供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空圧供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-50940号公報には、ワークを吸着することで、ワークを保持するロボットハンドが開示されている。ロボットハンドは、吸気孔およびこの吸気孔に連通する真空経路を備える。真空経路を介して吸気孔に供給される真空圧によってワークが吸着されることで、ワークが保持される。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、特開2014-50940号公報に記載されたロボットハンドでは、真空ポンプからの真空圧の供給が途絶えると、ロボットハンドからワークが落下する。その結果、ワークの損傷を招く虞がある。
【0004】
本発明の目的は、真空圧を用いて物体を安定に保持し得る、真空圧供給システムを提供することにある。
【0005】
一態様に係る真空圧供給システムは、真空圧を用いて物体を保持する保持部に真空源からの前記真空圧を供給するための第1真空圧供給路と、真空圧を蓄えるタンクと、前記第1真空圧供給路の途中から分岐して、前記タンクに接続された第2真空圧供給路と、前記第2真空圧供給路上に設けられた第1電磁弁と、を備える。
【0006】
本発明によれば、真空圧を用いて物体を安定に保持し得る、真空圧供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施形態に係る真空圧供給システムを表す図である。
図2図2は、第1の実施形態に係る真空圧供給システムの動作手順の一例を表す図である。
図3図3は、第2の実施形態に係る真空圧供給システムを表す図である。
図4図4は、第2の実施形態に係る真空圧供給システムの動作手順の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明による真空圧供給システムについて、好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0009】
[第1の実施形態]
第1の実施形態による真空圧供給システムについて説明する。図1は、本実施形態に係る真空圧供給システムを表す図である。図1に示すように、本実施形態による真空圧供給システム10は、真空圧供給路12、真空圧供給路14、真空源16、保持部18、タンク20、センサ22a、センサ22b、電磁弁24a、電磁弁24b、制御部36、表示部38、および操作部40を備える。
【0010】
真空圧供給路12は、真空源16によって生成される真空圧を保持部18に供給する。真空圧供給路14は、真空圧供給路12の途中から分岐して、タンク20に接続される。真空圧供給路12から真空圧供給路14が分岐する位置を分岐点Bと呼ぶ。真空圧供給路14は、真空源16によって生成され、かつ真空圧供給路12の分岐点Bから真空圧供給路14に流入した真空圧をタンク20に供給する。また、真空圧供給路14は、タンク20に蓄えられた真空圧を、分岐点Bから真空圧供給路12に流入させることで、この真空圧を保持部18に供給する。真空圧供給路12および真空圧供給路14は、例えば、配管によって構成されるが、配管に限定されない。
【0011】
真空源16は、例えば、真空ポンプ等の真空圧発生装置によって構成され、真空圧を発生する。真空源16は、真空圧供給路12を介して、保持部18に真空圧を供給する。また、真空源16は、真空圧供給路12および真空圧供給路14を介して、タンク20に真空圧を供給する。
【0012】
保持部18は、真空圧を用いて物体26を保持する。物体26を保持する保持部18の保持力は、保持部18内の空間の圧力と大気圧との圧力差に比例する。従って、物体26を保持部18によって確実に保持するために、大気圧に対して十分に低い気圧が保持部18に供給されることが好ましい。なお、本実施形態においては、真空圧とは、大気圧より低い圧力のことを意味する。
【0013】
保持部18は、例えば、主軸装置28に備えられた真空チャックである。保持部18は、真空源16から供給される真空圧を用いて物体26を吸着することで、物体26を保持する。保持部18は、主軸装置28に備えられた不図示の主軸シャフトの一端に備えられる。保持部18は、主軸シャフトの回転に連動して回転する。保持部18は、例えば円盤状に形成されているが、他の形状であってもよい。保持部18は、ベース部材30と、吸着パッド32とを備える。ベース部材30は、主軸シャフトの端部に固定される。吸着パッド32は、ベース部材30に対して着脱可能に取り付けられる。ベース部材30および吸着パッド32には、外部から吸引された空気が流れる吸引流路34が形成されている。吸着パッド32の吸着面には、吸引流路34に連通する吸引口34aが複数設けられる。物体26は、例えば、ワークであるが、ワークには限定されない。
【0014】
タンク20は、真空圧供給路14の端部に接続される。タンク20は、真空圧供給路12および真空圧供給路14を介して、真空源16から供給される真空圧を蓄える。タンク20は、蓄えた真空圧を、真空圧供給路14および真空圧供給路12を介して、保持部18に供給する。
【0015】
センサ22aは、例えば、圧力センサである。センサ22aは、真空圧供給路12上に配置され、真空源16から保持部18に供給される真空圧の大きさを検出する。ここでは、センサ22aは、分岐点Bと保持部18の間に配置されるが、他の場所に配置されてもよい。例えば、センサ22aは、真空源16と分岐点Bとの間に配置されてもよい。この場合でも、電磁弁24bが閉じていれば、センサ22aは、真空源16から保持部18に供給される真空圧の大きさを検出できる。
【0016】
センサ22bは、例えば、圧力センサである。センサ22bは、タンク20に設置され、タンク20内の真空圧の大きさを検出する。
【0017】
電磁弁24aは、分岐点Bと真空源16との間における真空圧供給路12上に設けられ、真空圧供給路12を開閉する。電磁弁24aは、真空源16から保持部18への真空圧の供給の有無を切り替えることができる。電磁弁24aは、例えばノーマルクローズの電磁弁であるが、ノーマルクローズの電磁弁には限定されない。
【0018】
電磁弁24bは、真空圧供給路14上に備えられ、真空圧供給路14を開閉する。電磁弁24bは、タンク20から保持部18への真空圧の供給の有無を切り替えることができる。電磁弁24bは、例えばノーマルクローズの電磁弁であるが、ノーマルクローズの電磁弁には限定されない。
【0019】
電磁弁24bを閉じることによって、真空圧供給路12とタンク20との連通を切断すると、タンク20は、真空源16から保持部18への真空圧の供給に影響を与えない。この結果、真空源16から保持部18への真空圧の供給の迅速化が図られる。なお、この詳細は後述する。
【0020】
制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bの制御を行う。制御部36は、ハードウェア(プロセッサ)およびソフトウェア(プログラム)の組み合わせによって構成できるが、この組み合わせには限定されない。制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを制御することで、電磁弁24aおよび電磁弁24bを開閉する。
【0021】
具体的には、制御部36は、(1)タンク20への真空圧の充填(タンク20の充填)、(2)保持部18での物体26の保持(物体26の保持)、および(3)保持部18での物体26の保持の終了(物体26の保持の終了)のための制御を行う。これらタンク20の充填等のための制御は、オペレータ(または制御部36のプログラム)からの指示に基づいて行うことができる。オペレータは、操作部40を用いて、タンク20の充填等を指示することができる。
【0022】
(1)タンク20の充填
以下、タンク20の充填を行う場合について説明する。制御部36は、真空源16を稼働させた状態で、電磁弁24aおよび電磁弁24bを開状態にする制御を行う。この結果、真空源16で生成された真空圧がタンク20に供給される。このとき、保持部18の吸引口34aが実質的に塞がれていることが好ましい。
【0023】
その後、制御部36は、タンク20に真空圧が充填されたか否かを判断する。制御部36は、タンク20に真空圧が充填されたと判断したときに、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを閉状態にする制御を行う。すなわち、制御部36は、タンク20への真空圧の供給を停止する。制御部36は、センサ22bによって検出されたタンク20の真空圧の大きさ、または充填開始からの時間の経過に基づいて、タンク20に真空圧が充填されたか否かを判断する。例えば、センサ22bによって検出された真空圧の大きさが所定範囲に達した場合、または充填開始からの経過時間が所定時間に達した場合に、制御部36は、タンク20が真空圧によって充填されたと判断する。
【0024】
(2)物体26の保持
物体26の保持を行う場合について説明する。この場合、制御部36は、電磁弁24bを閉状態にし、電磁弁24aを開状態にする制御を行う。この結果、真空源16から保持部18に真空圧が供給されるため、保持部18は物体26を吸着することで、物体26を保持する。
【0025】
ここで、電磁弁24bが閉じた状態において、センサ22aが検出した真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、制御部36は、電磁弁24bを開状態にする制御を行う。この結果、真空源16で生成された真空圧に加えて、タンク20に蓄積された真空圧が保持部18に供給される。真空源16の故障等に起因して、真空圧の大きさが正常範囲外となる場合は、保持部18への真空圧の供給が不十分となる可能性がある。保持部18への真空圧の供給が不十分であれば、保持部18が物体26を安定して保持することが困難となる。そのため、タンク20に蓄積された真空圧をさらに保持部18に供給することで、保持部18に十分な真空圧を供給することができる。その結果、保持部18が物体26を安定して保持可能となる。
【0026】
ここで、センサ22aが検出した真空圧の大きさが正常範囲外の場合、制御部36は、電磁弁24bを開状態にし、かつ電磁弁24aを閉状態にする制御を行ってもよい。電磁弁24aを閉じることで、真空源16の故障等の影響を低減できる。例えば、真空源16から大きな真空漏れがある場合、保持部18に真空圧を供給する上で、電磁弁24aを閉じることが好ましい。
【0027】
制御部36は、センサ22aによって検出される圧力等の正常範囲を示すテーブル36aを有する。制御部36は、このテーブル36aを参照して、センサ22aによって検出された真空圧の大きさが正常範囲内であるか否かを判定できる。
【0028】
(3)物体26の保持の終了
物体26の保持を終了する場合について説明する。この場合、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを閉状態にする制御を行う。この結果、保持部18への真空圧の供給が停止されることで、保持部18での物体26の保持が終了する。このとき、制御部36は、保持部18からの物体26の落下を防止するための制御を行う。例えば、制御部36は、物体26が台座等に載置されるように制御する。
【0029】
制御部36は、表示部38の表示画面に種々の情報を表示する。これらの情報は、例えば、真空源16の稼働状態の情報と、電磁弁24aの稼働状態の情報と、電磁弁24bの稼働状態の情報と、センサ22aおよびセンサ22bの各々によって検出された圧力の情報とを含む。また、これらの情報は、センサ22aによって検出された真空圧の大きさが正常範囲内か否かの情報、およびセンサ22bによって検出された真空圧の大きさがタンク20の充填に十分か否かの情報を、含んでもよい。
【0030】
表示部38は、例えば、液晶ディスプレイ等によって構成されるが、液晶ディスプレイには限定されない。操作部40は、例えば、キーボード、マウス等によって構成されるが、キーボード、マウスには限定されない。例えば、表示部38の画面に備えられた不図示のタッチパネルによって、操作部40が構成されてもよい。オペレータは、操作部40を介して制御部36に対する操作入力を行える。オペレータは、例えば、タンク20の充填、物体26の保持、または物体26の保持の終了の指示を入力する。
【0031】
図2は、第1の実施形態に係る真空圧供給システム10の動作手順の一例を表す図である。ここでは、真空圧供給システム10は、真空源16が稼働し、電磁弁24aおよび電磁弁24bが閉状態で、かつタンク20に真空圧が充填されていない初期状態にある(ステップS1)。
【0032】
(1)タンク20の充填
この初期状態において、制御部36は、タンク20の充填が指示されたか否かを判断する(ステップS2)。タンク20の充填の指示は、オペレータまたはプログラムのいずれから発されてもよい。
【0033】
制御部36は、タンク20の充填が指示されたと判断すると(ステップS2でYES)、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを開状態にする制御を行う(ステップS3)。この結果、真空源16で発生した真空圧がタンク20に供給されて、タンク20に蓄積される。なお、タンク20の充填が指示されない場合(ステップS2でNO)、工程はステップS2に留まる。その後、制御部36は、タンク20の充填が指示されるまで、この状態を継続する。
【0034】
制御部36は、タンク20に真空圧が充填されたか否かを判断する(ステップS4:充填完了の判断)。この判断は、センサ22bによって検出されたタンク20の真空圧の大きさ、または充填開始からの時間の経過に基づいて行うことができる。
【0035】
制御部36は、タンク20に真空圧が充填されたと判断した場合(ステップS4でYES)、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを閉状態にする制御を行う(ステップS5)。この結果、タンク20への真空圧の供給が停止する。充填が完了していないと判断された場合(ステップS4でNO)、工程はステップS4に留まる。この結果、タンク20への真空圧の供給が継続される。
【0036】
(2)物体26の保持
次いで、制御部36は、物体26の保持が指示されたか否かを判断する(ステップS6)。物体保持の指示は、オペレータまたはプログラムのいずれから発されてもよい。
【0037】
制御部36は、物体26の保持が指示されたと判断すると(ステップS6でYES)、制御部36は、電磁弁24aを開状態にする制御を行う(ステップS7)。この結果、真空源16で発生した真空圧は真空圧供給路12を経由して保持部18に供給される。これにより、保持部18は物体26を吸引することで、物体26を保持する。なお、物体26の保持が指示されない場合(ステップS6でNO)、工程はステップS6に留まる。その後、制御部36は、物体26の保持が指示されるまで、この状態を継続する。
【0038】
制御部36は、電磁弁24aを開いた後に、制御部36は、センサ22aが検出する真空圧の大きさが正常範囲か否かを判断する(ステップS8)。真空圧の大きさが正常範囲の場合(ステップS8でYES)、真空源16で発生した真空圧はそのまま保持部18に供給され続ける。その結果、保持部18は物体26を保持し続ける。
【0039】
一方、真空圧の大きさが正常範囲外の場合(ステップS8でNO)、制御部36は電磁弁24aを閉状態とし、かつ電磁弁24bを開状態にする制御を行う(ステップS9)。すなわち、真空源16で生成された真空圧に替えて、タンク20に蓄積された真空圧が保持部18に供給される。この結果、真空源16の故障等に起因して、真空圧の大きさが正常範囲外となった場合においても、保持部18に十分な真空圧が供給される。ステップS9において、制御部36は電磁弁24aを閉じることで、真空源16の故障等の影響を低減できる。例えば、真空源16に大きな真空漏れがある場合であっても、電磁弁24aを閉じることで、真空漏れの影響を受けることなく、タンク20から保持部18に真空圧を供給できる。
【0040】
ステップS9において、制御部36は、電磁弁24aを閉状態にせず、かつ電磁弁24bを開状態にする制御を行ってもよい。この場合、真空源16で生成された真空圧に加えて、タンク20に蓄積された真空圧が保持部18に供給される。真空源16から大きな真空漏れがあるような場合でなければ、真空源16およびタンク20の双方から真空圧を供給することが好ましい。これにより、タンク20のみから保持部18に真空圧を供給するよりも、保持部18への真空圧の供給量が増大し、真空圧の供給が安定する。
【0041】
(3)物体26の保持の終了
制御部36は、物体26の保持の終了の指示が行われたか否かを判断する(ステップS10)。物体26の保持の終了の指示は、オペレータまたはプログラムのいずれから発されてもよい。
【0042】
制御部36は、物体26の保持の終了が指示されたと判断すると(ステップS10でYES)、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを閉状態にする制御を行う(ステップS11)。これにより、保持部18への真空圧の供給が停止する。その結果、保持部18は物体26を保持しなくなる。なお、物体保持の終了が指示されない場合(ステップS10でNO)、工程は、ステップS10に留まる。その後、物体保持の終了が指示されるまで、物体26の保持が継続される。
【0043】
第1の実施形態では、真空圧供給路14は、真空源16から保持部18に真空圧を供給する真空圧供給路12から分岐する。また、この真空圧供給路14をタンク20に接続し、真空圧供給路14に電磁弁24bを配置した。従って、電磁弁24bを閉じることによって、真空圧供給路12とタンク20との連通を切断すると、タンク20は真空源16から保持部18への真空圧の供給に影響を与えない。この結果、真空源16から保持部18への真空圧の供給の迅速化が図られる。例えば、真空源16、タンク20、および保持部18を真空圧供給路12上にこの順で配置した場合、真空源16から保持部18への真空圧の供給に時間を要する。すなわち、真空源16と保持部18との間にタンク20が配置されている場合、保持部18への真空圧の供給は、タンク20への真空圧の充填の後となる。この結果、真空源16から保持部18への真空圧の供給に時間を要する。これに対して、本実施形態では、真空圧供給路12とタンク20との連通を切断することで、真空源16から保持部18に真空圧を速やかに供給できる。これにより、物体26の速やかな保持が可能となる。
【0044】
また、第1の実施形態では、真空源16から保持部18に真空圧を供給するときに、真空圧供給路12上の真空圧の大きさが正常範囲外であれば、制御部36は、電磁弁24bを開状態にする制御を行う。この結果、タンク20に蓄積された真空圧が保持部18に供給される。これにより、真空源16の故障等により、真空源16から保持部18への十分な真空圧の供給が困難な場合であっても、保持部18に十分な真空圧を供給できる。すなわち、物体26を安定して保持することが容易となる。なお、真空圧供給路12上の真空圧の大きさが正常範囲外の場合、制御部36は、電磁弁24bを開状態にし、かつ電磁弁24aを閉状態にする制御を行ってもよい。
【0045】
[第2の実施形態]
第2の実施形態による真空圧供給システムについて説明する。図3は、本実施形態による真空圧供給システムを表す図である。図3に示すように、本実施形態による真空圧供給システム10は、第1の実施形態に対して、電磁弁24cが追加されている。また、センサ22bが除外されている。
【0046】
電磁弁24cは、分岐点Bと保持部18との間における真空圧供給路12上に設けられ、真空圧供給路12を開閉する。本実施形態では、電磁弁24cを閉じ、かつ電磁弁24aおよび電磁弁24bを開くことで、保持部18で真空圧を消費することなく、真空源16からタンク20に真空圧を供給できる。これにより、充填開始からの時間の経過に基づいて、タンク20の充填を判断することがより容易となる。時間の経過に基づいて、タンク20の充填を判断するため、本実施形態では、センサ22bが除外されている。但し、真空圧供給システム10は、センサ22bを有し、センサ22bを用いて、タンク20の充填の有無を判断してもよい。
【0047】
センサ22aは、電磁弁24cと保持部18との間に設けられる。すなわち、センサ22aは、分岐点Bおよび電磁弁24cよりも保持部18の近くに配置される。これにより、センサ22aによって保持部18の状態をより正確に把握することができる。なお、図3において仮想線に示すように、センサ22aを、真空圧供給路12上ではなく、保持部18に設置してもよい。この場合、センサ22aは、保持部18の真空圧を直接検出する。
【0048】
制御部36は、電磁弁24a、電磁弁24b、および電磁弁24cを用いて、(1)タンク20の充填、(2)物体26の保持、および(3)物体26の保持の終了のための制御を行う。
【0049】
(1)タンク20の充填
タンク20の充填を行う場合、制御部36は、真空源16を稼働させた状態で、電磁弁24aおよび電磁弁24bを開状態にし、電磁弁24cを閉状態にする制御を行う。この結果、真空源16で生成された真空圧がタンク20に供給される。このとき、本実施形態では、第1の実施形態と異なり、電磁弁24cを閉じることによって、保持部18への真空圧の供給は停止される。このため、本実施形態では、タンク20の充填時において、保持部18の状態は問題とはならない。
【0050】
その後、制御部36は、タンク20に真空圧が充填されたか否かを判断する。制御部36は、タンク20に真空圧が充填されたと判断したときに、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを閉状態にする制御を行う。その結果、タンク20への真空圧の供給が停止される。既述のように、保持部18への真空圧の供給は停止されている。このため、充填開始からの時間の経過に基づいて、タンク20の充填を判断することがより容易となる。
【0051】
(2)物体26の保持
物体26の保持を行う場合、制御部36は、電磁弁24bを閉状態にし、電磁弁24aおよび電磁弁24cを開状態にする制御を行う。この結果、真空源16で生成された真空圧が保持部18に供給される。
【0052】
ここで、センサ22aによって検出された真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、制御部36は、電磁弁24bを開状態にする制御を行う。この結果、保持部18に十分な真空圧が供給される。これにより、保持部18は物体26を安定して保持可能となる。なお、センサ22aによって検出された真空圧の大きさが正常範囲外の場合、制御部36は、電磁弁24bを開状態にし、かつ電磁弁24aを閉状態にする制御を行ってもよい。
【0053】
(3)物体26の保持の終了
物体26の保持を終了する場合、制御部36は、例えば、電磁弁24a、電磁弁24b、および電磁弁24cを閉状態にする制御を行う。この結果、保持部18への真空圧の供給が停止され、保持部18での物体26の保持が終了する。
【0054】
図4は、第2の実施形態に係る真空圧供給システム10の動作手順の一例を表す図である。ここでは、真空圧供給システム10は、真空源16が稼働し、電磁弁24a、電磁弁24b、および電磁弁24cが閉状態で、かつタンク20に真空圧が充填されていない初期状態にある(ステップS1a)。
【0055】
その後、タンク20の充填が行われる。まず、制御部36は、タンク20の充填が指示されたと判断すると(ステップS2でYES)、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを開状態にする制御を行う(ステップS3)。この結果、真空源16で発生した真空圧がタンク20に供給されて、タンク20に蓄積される。その後、制御部36は、タンク20に真空圧が充填されたと判断すると(ステップS4でYES)、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24bを閉状態にする制御を行う(ステップS5)。この結果、タンク20への真空圧の供給が停止する。ここで、電磁弁24cは、ステップS2~S5において、ステップS1aでの閉状態を継続する。このため、ステップS3およびS4において、真空源16で生成された真空圧は、保持部18で消費されずに、タンク20に供給される。この結果、ステップS3において、真空源16で生成された真空圧をタンク20に効率的に供給できる。また、ステップS4において、充填開始からの時間の経過に基づいて、充填完了を判断することが容易となる。
【0056】
タンク20の充填の後に、物体26の保持が行われる。まず、制御部36は、物体26の保持が指示されたと判断すると(ステップS6でYES)、制御部36は、電磁弁24aおよび電磁弁24cを開状態にする制御を行う(ステップS7a)。この結果、真空源16で生成された真空圧が保持部18に供給される。これにより、保持部18は物体26を保持する。その後、センサ22aによって検出される真空圧の大きさが正常範囲外の場合(ステップS8でNO)、制御部36は、電磁弁24aを閉状態とし、かつ電磁弁24bを開状態にする制御を行う(ステップS9)。この結果、真空源16で生成された真空圧に替えて、タンク20に蓄積された真空圧が保持部18に供給される。これにより、真空源16が故障等した場合においても、保持部18に十分な真空圧が供給される。制御部36は、物体26の保持の終了が指示されたと判断すると(ステップS10でYES)、制御部36は、電磁弁24a、電磁弁24b、および電磁弁24cを閉状態にする制御を行う(ステップS11a)。これにより、保持部18への真空圧の供給が停止する。その結果、保持部18は物体26を保持しなくなる。
【0057】
本実施形態において、第1の実施形態と同様、電磁弁24aを除外することが可能である。すなわち、電磁弁24aが無くても、電磁弁24bおよび電磁弁24cによって、電磁弁24aがある場合と実質的に同様の処理が可能である。具体的には、図4の動作手順において、電磁弁24aを無視して、電磁弁24bおよび電磁弁24cのみを開閉すればよい。
【0058】
以上の点を除き、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0059】
[変形実施形態]
本発明についての好適な実施形態を上述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能である。
【0060】
上記実施形態では、保持部18が主軸装置28に備えられる場合を例に説明したが、これには限定されない。保持部18が、ロボットハンド等に備えられてもよい。
【0061】
〔実施形態から得られる発明〕
上記各実施形態から把握しうる発明について、以下に記載する。
【0062】
〔1〕真空圧供給システム(10)は、真空圧を用いて物体(26)を保持する保持部(18)に真空源(16)からの前記真空圧を供給するための第1真空圧供給路(真空圧供給路12)と、真空圧を蓄えるタンク(20)と、前記第1真空圧供給路の途中から分岐して、前記タンクに接続された第2真空圧供給路(真空圧供給路14)と、前記第2真空圧供給路上に設けられた第1電磁弁(電磁弁24b)と、を備える。これにより、真空源から保持部に真空圧を供給している場合に、第1電磁弁を開いて、タンクからも保持部に真空圧を供給することによって、保持部への真空圧の供給を強化することができる。
【0063】
〔2〕真空圧供給システムは、前記第2真空圧供給路の分岐点(B)と前記保持部との間における前記第1真空圧供給路上に設けられた第2電磁弁(電磁弁24c)と、前記第2電磁弁を開いておき、前記タンクに前記真空圧を充填させる場合は前記第2電磁弁を閉じる制御を行うとともに、前記第1電磁弁を開く制御を行う充填制御部(制御部36)と、を備えてもよい。これにより、真空源から真空圧を供給して、タンクに蓄えることができる。
【0064】
〔3〕真空圧供給システムは、前記第1真空圧供給路上に備えられ、前記真空圧の大きさを検出する圧力センサ(センサ22a)と、前記第1電磁弁を閉じておき、前記圧力センサによって検出された前記真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、前記第1電磁弁を開く制御を行う予備真空圧制御部(制御部36)と、を備えてもよい。これにより、第1真空圧供給路上の真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、タンクから保持部に真空圧を追加して供給することができる。
【0065】
〔4〕前記圧力センサは、前記第2真空圧供給路の分岐点と前記保持部との間における前記第1真空圧供給路上に設けられてもよい。これにより、圧力センサが保持部の真空圧をより精度良く検出することが可能となる。この結果、タンクから保持部に真空圧をより適切に供給することができる。
【0066】
〔5〕前記圧力センサは、前記第2真空圧供給路の分岐点と前記保持部との間における前記第1真空圧供給路上に設けられた第2電磁弁(電磁弁24c)よりも前記保持部側に設けられてもよい。これにより、圧力センサが保持部の真空圧をより一層精度良く検出することが可能となる。この結果、タンクから保持部に真空圧をより一層適切に供給することができる。
【0067】
〔6〕真空圧供給システムは、前記保持部に設けられ、前記真空圧の大きさを検出する圧力センサ(センサ22a)と、前記第1電磁弁を閉じておき、前記圧力センサによって検出された前記真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、前記第1電磁弁を開く制御を行う予備真空圧制御部(制御部36)と、を備えてもよい。これにより、第1真空圧供給路上の真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、タンクから保持部に真空圧を追加して供給することができる。
【0068】
〔7〕真空圧供給システムは、前記第2真空圧供給路の分岐点と前記真空源との間における前記第1真空圧供給路上に設けられた第3電磁弁(電磁弁24a)と、前記第3電磁弁を閉じておき、前記保持部または前記タンクに前記真空圧を供給する場合に、前記第3電磁弁を開く制御を行う供給制御部(制御部36)と、を備えてもよい。これにより、第3電磁弁を開閉することで、保持部またはタンクへの真空圧の供給の有無を切り替えることができる。
【0069】
〔8〕真空圧供給システムは、前記第2真空圧供給路の分岐点と前記真空源との間における前記第1真空圧供給路上に設けられた第3電磁弁(電磁弁24a)を備え、前記予備真空圧制御部は、前記第1電磁弁を閉じるとともに前記第3電磁弁を開いておき、前記圧力センサによって検出された前記真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、前記第1電磁弁を開くとともに前記第3電磁弁を閉じる制御を行う。これにより、第1真空圧供給路上の真空圧の大きさが正常範囲外である場合に、真空源の真空圧に替えて、タンクの真空圧を保持部に供給することができる。
図1
図2
図3
図4