(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】自走式車両用の駆動ユニット、自走式車両、自走式車両用の支持構造体及び輸送システム
(51)【国際特許分類】
B61C 3/02 20060101AFI20240723BHJP
B61C 13/06 20060101ALI20240723BHJP
B61B 3/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B61C3/02
B61C13/06
B61B3/02 Z
(21)【出願番号】P 2022552564
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(86)【国際出願番号】 EP2021055005
(87)【国際公開番号】W WO2021175764
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-10-03
(31)【優先権主張番号】102020202616.5
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベアント シュトゥーケ
(72)【発明者】
【氏名】オーラフ オールハーファー
(72)【発明者】
【氏名】フェリックス イェグレ
(72)【発明者】
【氏名】ガエル ル エン
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン ハインリヒ ズィハウ
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-510698(JP,A)
【文献】特開2003-164003(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0125778(US,A1)
【文献】国際公開第2015/022812(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61C 3/02
B61C 13/06
B61B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架軌道類の支持構造体(100)の自走式車両(10)用の駆動ユニット(12;12a;12b)であって、当該駆動ユニット(12;12a;12b)を前記支持構造体(100)に沿って移動させるための少なくとも1つの電動モータ(24;47,48)を備え、前記少なくとも1つの電動モータ(24;47,48)は、第1のエネルギ供給部(20)によって少なくとも間接的に駆動可能であり、前記第1のエネルギ供給部(20)は、少なくとも1つのコンタクト要素(32;46)を有し、前記コンタクト要素(32;46)は、前記支持構造体(100)に定位置固定に配置された導電体(18)と協働するために構成されている、駆動ユニット(12;12a;12b)において、
前記駆動ユニット(12;12a;12b)は、当該駆動ユニット(12;12a;12b)の内部に配置された少なくとも1つのバッテリ(44;49,49a)を有し、前記バッテリ(44;49,49a)は、前記少なくとも1つの電動モータ(24;47,48)と、前記第1のエネルギ供給部(20)の前記少なくとも1つのコンタクト要素(32;46)との間に配置されており、及び/又は、
付加的に、前記少なくとも1つの電動モータ(24;47,48)を駆動するための第2のエネルギ供給部(40)が設けられており、前記第2のエネルギ供給部(40)は、前記駆動ユニット(12;12a;12b)の内部に配置された少なくとも1つのバッテリ(44;49,49a)を含み、前記少なくとも1つの電動モータ(24;47,48)は、前記第1のエネルギ供給部(20)の前記少なくとも1つのコンタクト要素(32;46)及び前記第2のエネルギ供給部の前記少なくとも1つのバッテリ(44;49,49a)と直接的にコンタクト可能であ
り、
前記第1及び第2のエネルギ供給部(20,40)は、互いに異なる電動モータ(47,48)と協働し、前記電動モータ(47,48)は、前記駆動ユニット(12b)の互いに異なる駆動要素(30)と協働し、前記電動モータ(47,48)は、それぞれ別個のバッテリ(49,49a)及び充電装置(42,42a)とカップリングされていることを特徴とする、自走式車両(10)用の駆動ユニット(12;12a;12b)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバッテリ(44;49,49a)は、充電装置(42;42a)によって充電可能であり、前記充電装置(42;42a)は、前記支持構造体(100)に設けられた前記導電体(18)と少なくとも間接的に協働するために構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の駆動ユニット。
【請求項3】
検出手段(56)が設けられており、前記検出手段(56)は、前記支持構造体(100)における前記導電体(18)の存在を少なくとも間接的に検出するために構成されていることを特徴とする、請求項
1又は2に記載の駆動ユニット。
【請求項4】
前記少なくとも1つの電動モータ(24;47,48)を必要に応じて、前記エネルギ供給部(20,40)の少なくともいずれか一方のエネルギ供給部と作用接続した状態に切り換えるために、切換手段が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項5】
前記第1のエネルギ供給部(20)の前記少なくとも1つのコンタクト要素(32)は、機械的な集電装置として構成されていることを特徴とする、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項6】
前記第1のエネルギ供給部(20)の前記少なくとも1つのコンタクト要素(46)は、誘導式のエネルギ伝達のために機能するコンタクト要素として構成されていることを特徴とする、請求項1乃至
4のいずれか一項に記載の駆動ユニット。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の駆動ユニット(12;12a;12b)と、前記駆動ユニット(12;12a;12b)に少なくとも間接的に結合された、人員輸送又は貨物輸送のためのゴンドラ(16)とを備えた、自走式車両(10)。
【請求項8】
請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の駆動ユニット(12;12a;12b)用の支持構造体(100)であって、特に走行区間(110,111)
及び区間区分(50乃至52)を形成するための少なくとも1つの支持レール(104,105)又は支持ケーブルの形態のキャリヤ装置を備え、前記キャリヤ装置に沿って少なくとも1つの駆動ユニット(12;12a;12b)が運動可能であり、前記キャリヤ装置にさらに、少なくとも所定の領域において導電体(18)が配置されており、前記導電体(18)は、前記駆動ユニット(12;12a;12b)の前記第1のエネルギ供給部(20)の前記コンタクト要素(32;46)と協働する、支持構造体(100)において、
前記走行区間(110,111)は、前記導電体(18)が設けられていない少なくとも1つの区間区分(51)を有することを特徴とする、支持構造体(100)。
【請求項9】
前記走行区間(110,111)又は前記区間区分(50乃至52)に、導電体(18)を有する区間区分(50,52)及び/又は導電体(18)を有しない区間区分(51)を識別するための識別手段(55)が設けられており、前記識別手段(55)は、前記駆動ユニット(12;12a;12b)に設けられた検出手段(56)によって検出可能であることを特徴とする、請求項
8に記載の支持構造体。
【請求項10】
請求項
9に記載の支持構造体(100)と、請求項1乃至
6のいずれか一項に記載の少なくとも1つの駆動ユニット(12;12a;12b)又は請求項
7に記載の自走式車両(10)とを有する輸送システム(1000)において、
前記走行区間(110,111)又は前記区間区分(50乃至52)に設けられた前記識別手段(55)、及び/又は、前記駆動ユニット(12;12a;12b)に設けられた前記検出手段(56)は、前記両エネルギ供給部(20,40)の少なくともいずれか一方のエネルギ供給部によって前記駆動ユニット(12;12a;12b)の前記少なくとも1つの電動モータ(24;47,48)への常時のエネルギ供給が行われるように配置又は構成されていることを特徴とする、輸送システム(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、高架軌道類の支持構造体の自走式車両用の駆動ユニットに関する。「自走式車両」とは、本発明の枠内においては、駆動ユニットを用いて、即ち、自己の駆動装置を用いて、支持構造体に沿って移動させられ得る車両であると解される。この場合、自律走行式車両、即ち、運転者のいない無人車両も、運転者又はオペレータによって制御されるような車両も、あり得る。このような車両は、典型的には、人員の輸送又は貨物の輸送のいずれかのために使用され得る。さらに、本発明は、本発明に係る駆動ユニットを備えた自走式車両、本発明により構成された駆動ユニット用又は対応する自走式車両用の支持構造体及び輸送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
米国特許出願公開第2017/0313328号明細書に基づき、請求項1の前提部に記載の構成を有する高架軌道類の支持構造体の自走式車両用の駆動ユニットが公知である。この公知の駆動ユニットは、この駆動ユニットを用いて種々の停留場又は区間システムにおける種々の場所に独力で到達し得ることにより特徴付けられている。このためには、駆動ユニットが自走式車両を駆動するための電動モータを有する。駆動ユニットへのエネルギ供給は、別個の導電体を用いて行われる。この導電体は、上で挙げた米国特許出願公開明細書においては、支持ケーブルの横断面において見て支持構造体の構成要素として構成又は配置されている。さらに、種々の区間網又は走行区間へ到達するために、上で挙げた米国特許出願公開明細書からは、駆動ユニットを自走式車両と共にポイント(方向切換器)に類するエレメントの領域に走入させることが知られている。これらのエレメントは、種々異なる走行区間の走行を可能にするために、典型的には区間網の分岐点の領域に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0313328号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の開示
請求項1に記載の特徴を有する、高架軌道類の支持構造体の自走式車両用の本発明に係る駆動ユニットには、次のような利点がある。即ち、この駆動ユニットは、支持構造体により構成された、電動モータの駆動ユニット用の(外部の)エネルギ供給部とは別個に独立して、駆動ユニットの自律的な動作又は走行区間に沿った自走式車両の自力の運動を、外部のエネルギ供給部なしでも可能にする。これには、以下のような利点がある。即ち、本発明に係る駆動ユニットを装備した自走式車両は、たとえばコストの理由から、支持構造体に設けられたバスバー又はこれに類するものを介した(外部の)エネルギ供給部を有しない区間区分又は、たとえば従来技術に基づき公知のポイントエレメントの領域におけるような、与えられた構造上の条件に基づいて比較的大きい手間をかけないとこのような電流供給が可能とならない区間区分をも走行することができる。また、駆動ユニットのための外部又は外側のエネルギ供給部の一時的な欠陥又は故障の際にも、自走式車両の動作又は走行区間に沿った自走式車両の移動が可能となるので、たとえば、外部の電流供給がもはや保証されていない非常時の状況においては、人員又は貨物を有するゴンドラは、自己の駆動装置又は自己のエネルギ供給部を用いて次の停留場に到達し得るので、これにより人員の降車が可能になる。
【0005】
従って、上記の説明の背景に鑑み、自走式車両用の本発明に係る駆動ユニットにおいては、以下の構成が提案される。即ち、駆動ユニットは、この駆動ユニットの内部に配置された少なくとも1つのバッテリを有し、このバッテリは、少なくとも1つの電動モータと、第1のエネルギ供給部の少なくとも1つのコンタクト要素との間に配置されており、及び/又は、付加的に、少なくとも1つの電動モータを駆動するための第2のエネルギ供給部が設けられており、この第2のエネルギ供給部は、駆動ユニットの内部に配置された少なくとも1つのバッテリを含み、少なくとも1つの電動モータは、直接的に第1のエネルギ供給部の少なくとも1つのコンタクト要素及び第2のエネルギ供給部の少なくとも1つのバッテリとコンタクト可能である。
【0006】
従って、駆動ユニットの2つの基本的な構成が提案され、両構成は、駆動ユニットがそれぞれ少なくとも1つのバッテリを有することにより特徴付けられる。この少なくとも1つのバッテリは、コンタクト要素と導電体との間のバッファ(緩衝器)としてのみ機能する、即ち、少なくとも1つの電動モータが常時、バッテリを間に挿んで駆動され、又は、付加的に、駆動ユニット内部に少なくとも1つのバッテリを備えた第2のエネルギ供給部が設けられていて、特に導電体の故障に基づいてコンタクト要素から電動モータへの直接的なエネルギ伝達が不可能となった場合には常に、この第2のエネルギ供給部を介して電動モータの駆動が行われる。これにより、電動モータには第2のエネルギ供給部の少なくとも1つのバッテリによってエネルギが供給される。
【0007】
第1の手段には、簡単な手段を用いて、たとえば特定の走行状況において、単独に導電体を介してのみ可能となるよりも高い電流又は出力が得られるという利点がある。第2の手段には、バッテリが必要に応じてのみ負荷されるので、バッテリの保護が得られるという利点がある。
【0008】
その駆動ユニットは付加的に、少なくとも1つの電動モータを駆動するための第2のエネルギ供給部を有し、第2のエネルギ供給部は、駆動ユニットの内部に配置された少なくとも1つのバッテリを含む。「バッテリ」とは、本発明の枠内においては特に充電可能なバッテリであると解される。
【0009】
高架軌道類の支持構造体の自走式車両用の駆動ユニットの有利な改良形は、従属形式の各請求項に記載されている。
【0010】
少なくとも1つのバッテリは、充電装置によって充電可能であり、この充電装置は、支持構造体に設けられた導電体と少なくとも間接的に協働するために構成されているものとすると、特に好適である。これには、駆動ユニットのエネルギ供給が、支持構造体に設けられた導電体を介して行われるときには必ずバッテリの充電又はバッファリング(緩衝)が行われるという利点がある。これにより、第2のエネルギ供給部(駆動ユニット内の内部バッテリ)によって自走式車両又は駆動ユニットを直ちに駆動し得るように常時準備しておくことが可能になる。特に、たとえば、周期的に、又は、バッテリの充電状態が相応に低い場合に、たとえば定位置固定に配置された充電ステーションにおいて駆動ユニットを充電することは必要とされない。このことは、この時間の間、自走式車両の使用を不可能にする。
【0011】
他の有利な構成においては、駆動ユニットは、複数の、特に2つの電動モータを有し、これらの電動モータは、駆動ユニットの互いに異なる駆動要素と協働し、この場合、これらの電動モータは、それぞれ少なくとも1つの専用のバッテリを介してバッファリングされるように又は駆動されるようになっている。これらのバッテリは、それぞれ別個の充電装置を介して、支持構造体に設けられた導電体を介して充電可能である。これには、これらの電動モータのうちの1つの電動モータ又はそのバッテリが故障した場合においても、冗長的な又は特に確実なエネルギ供給が可能となるという利点がある。
【0012】
さらに、検出手段が設けられており、この検出手段は、支持構造体における導電体の存在を少なくとも間接的に検出するために構成されているものとすると、極めて特に有利である。このような検出手段は、特に、駆動ユニットの少なくとも1つの電動モータを必要に応じて、両エネルギ供給部のうちの少なくともいずれか一方のエネルギ供給部との作用接続状態に切り換える切換手段と関連して、両エネルギ供給部の間の、適時の切換過程又は必要に応じた切換過程を生ぜしめることを可能にする。
【0013】
第1のエネルギ供給部の少なくとも1つの電動モータと、支持構造体に設けられた導電体との接続を形成するコンタクト要素に関しても、種々異なる手段が存在する。第1の構造的な構成においては、第1のエネルギ供給部の少なくとも1つのコンタクト要素は、機械的な集電装置として構成されている。このような集電装置は、たとえば、相応の調節手段によって、支持構造体に設けられた導電体とコンタクトさせられ得るものであり、又は、たとえば、導電体が設けられていない区間区分における集電装置の損傷を回避するために、導電体から引き離され得るものである。
【0014】
選択的な他の構成においては、第1のエネルギ供給部の少なくとも1つのコンタクト要素は、誘導式のエネルギ伝達のために機能するコンタクト要素として構成されていることも可能である。従って、エネルギ伝達は機械的にコンタクトレスに行われ、ひいては摩耗なしに行われる。
【0015】
本発明はさらに、ここまで説明した本発明に係る駆動ユニットと、この駆動ユニットに結合されたゴンドラとを備えた、高架軌道類の支持構造体用の自走式車両を包含する。
【0016】
さらに、本発明は、本発明により構成された駆動ユニット用の支持構造体を包含し、この場合、この支持構造体は、特に走行区間又は区間区分を構成するための少なくとも1つの支持レール又は支持ケーブルの形態のキャリヤ装置を有し、このキャリヤ装置に沿って自走式車両は、この車両に設けられた本発明に係る駆動ユニットによって運動可能であり、この場合、キャリヤ装置にはさらに導電体が配置されており、この導電体は、駆動ユニットの第1のエネルギ供給部のコンタクト要素と協働する。本発明に係る支持構造体は、走行区間は、導電体が設けられていない少なくとも1つの区間区分を有することにより特徴付けられている。
【0017】
このような支持構造体の改良形においては、走行区間又は区間区分に、導電体を有する区間区分及び/又は導電体を有しない区間区分を識別するための識別手段が設けられており、この識別手段は、駆動ユニットに設けられた検出手段によって検出可能である。
【0018】
さらに本発明は、直前に説明した支持構造体と、本発明により構成された駆動ユニット又は対応する自走式車両とを有する輸送システムをも包含する。この輸送システムは次の点により特徴付けられている。即ち、走行区間又は区間区分に設けられた識別手段、及び/又は、駆動ユニットに設けられた検出手段は、両エネルギ供給部の少なくともいずれか一方のエネルギ供給部によって駆動ユニットの少なくとも1つの電動モータへの常時のエネルギ供給が行われるように配置又は構成されている。この場合に共通していることは、たとえば、導電体を有する走行区間の区間区分の終端部の手前に、相応の識別手段が配置されていて、これにより駆動ユニットに設けられた検出手段によって識別手段が検出されると、(外部の)第1のエネルギ供給部から(内部の)第2のエネルギ供給部への切換を行うための十分な時間が確保され、ひいては自走式車両の連続的な、特に衝撃なしの運転が可能になることである。
【0019】
本発明の他の利点、特徴及び詳細は、以下において図面につき説明する好適な実施形態の説明から認識される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ゴンドラを備えた自走式車両用の、互いに平行に配置された2つの走行区間を備えた輸送システムの支持構造体の領域における簡略化された横断面図である。
【
図2】輸送システムの区間網の部分領域の簡略化された平面図である。
【
図3】駆動ユニット又は自走式車両を駆動するためのそれぞれ2つの別個のエネルギ供給部を備えた、自走式車両用の駆動ユニットの一実施態様を示す簡略化された図である。
【
図4】駆動ユニット又は自走式車両を駆動するためのそれぞれ2つの別個のエネルギ供給部を備えた、自走式車両用の駆動ユニットの他の実施態様を示す簡略化された図である。
【
図5】駆動ユニット又は自走式車両を駆動するためのそれぞれ2つの別個のエネルギ供給部を備えた、自走式車両用の駆動ユニットのさらに他の実施態様を示す簡略化された図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の実施形態
同一の構成要素又は同等の機能を有する構成要素には、図面において、同一の符号が付与されている。
【0022】
図1には、自走式車両10用の輸送システム1000が図示されている。輸送システム1000は、高架軌道類の支持構造体100を有し、この支持構造体100は、輸送システム1000の図示の区分においては、たとえば、地面にアンカ固定された2つの支柱101,102を有する。両支柱101,102は、横桁103によって互いに結合されている。横桁103の領域には、平行に、かつ、
図1の図平面に対して直角に配置された、たとえば2つの支持レール104,105がキャリヤ要素として設けられている。両支持レール104,105は、並列して配置された、自走式車両10用の2つの走行区間110,111を形成している。
【0023】
補足的に説明しておくと、支持レール104,105の代わりに、定位置固定に配置されている支持ケーブル又はこれに類するエレメントが設けられているものとしてもよく、その場合、自走式車両10は、これらの支持ケーブル又はこれに類するエレメントに沿って移動させられ得る。
【0024】
支持レール104,105の横断面の内部には、自走式車両10用の駆動ユニット12が配置されている。この駆動ユニット12の下側には、たとえば支持アーム14が延在しており、この支持アーム14は、ゴンドラ16に結合されている。たとえば、人員輸送のために用いられるゴンドラ16が図示されている。当然ながら、ゴンドラ16が貨物輸送のために適するように自走式車両10を構成することも、又は、このようなゴンドラ16を装備させることも、本発明の枠内にある。
【0025】
同様に支持レール104,105の横断面の内部には、たとえば自走式車両10の駆動ユニット12の高さのところに、バスバー18の形態の導電体が配置されている。「バスバー18」とは、特に方形の横断面を有する導電性のエレメントであると解される。当然ながら、導電体をバスバー18の形態ではなく、電流ケーブル又はこれに類するものの形態に形成することも同様に本発明の枠内にある。重要となることは、バスバー18が、自走式車両10のための外部の電流供給部を形成する第1のエネルギ供給部20の構成要素であることだけである。
【0026】
図2には、輸送システム1000の区間網の一部が著しく簡略化されて図示されている。この区間網は、支持レール(詳細には図示しない)を備えた3つの区間区分50,51,52を有する。両区間区分50,52がそれぞれ直線状に形成されていて、自走式車両10用の単一の走行車線を形成しているのに対して、区間区分51は90°カーブ軌道の形態に形成されている。重要となることは、駆動ユニット12を介して自走式車両10へのエネルギ供給を可能にするために、両区間区分50,52にのみバスバー18が設けられていることである。それに対して、カーブ軌道の形態の区間区分51には、第1のエネルギ供給部20のバスバー18又は類似のエレメントは設けられていない。
【0027】
さらに
図2により認識し得るように、両区間区分50,52から区間区分51への移行領域においては、各区間区分50,52の端部のすぐ手前に識別手段55が配置されている。これらの識別手段55は、自走式車両10の駆動ユニット12の領域に配置された、
図3乃至
図5において識別し得る検出手段56によって検出可能である。識別手段55又は検出手段56は、バスバー18なしに装備された(中央の)区間区分51を検出すること、又は、自走式車両10が区間区分51の領域に進入する前に区間区分51への接近を推量することを可能にする。
【0028】
図3には、自走式車両10用の駆動ユニット12の第1実施形態が図示されている。駆動ユニット12は、たとえばハウジング22を有し、このハウジング22の内部には、自走式車両10を駆動するために用いられる電動モータ24が配置されている。この電動モータ24は、変速機26を介して、たとえば少なくとも1つの出力シャフト28に作用し、この出力シャフト28は、たとえば少なくとも間接的に駆動ローラ又はこれに類するものの形態の駆動要素30に結合されている。この場合、駆動要素30は、自走式車両10を支持レール104,105に沿って又は区間区分50乃至52に沿って、移動させるために用いられる。さらに、集電装置32が設けられていることが判る。この集電装置32は、第1のエネルギ供給部20の構成要素である。この場合、集電装置32は、アクチュエータ34によって双方向矢印36の向きに移動させられ得る。これにより、集電装置32は、バスバー18と機械的及び導電的にコンタクトさせられ、又は、バスバー18から離隔させられる。
【0029】
補足的に述べておくと、集電装置32を、アクチュエータ34なしでもバスバー18とコンタクトさせることも、本発明の枠内にある。このためには、たとえば、集電装置32が、ばね部材によってバスバー18の向きに押圧されるようになっているものとしてよい。この場合、バスバー18が十分に小さい間隔を持って位置している場合には常にコンタクトが形成されている。従って、バスバー18が設けられていないと、集電装置32は、自由となり、かつ、支持レールに対して十分に大きい間隔を持って位置する。次いで、バスバー18への移行領域には、たとえば、集電装置32のための一種の傾斜面が設けられているものとしてよい。この傾斜面は、ばね部材を押し縮め、これによって引き続きバスバー18に対するコンタクトを形成することができる。
【0030】
集電装置32とバスバー18とのコンタクトは、常に区間区分50,52において行われる。これらの区間区分50,52においては、輸送システム1000がバスバー18を備えている。それに対して、好ましくはこのような区間区分50,52外においては、即ち、輸送システム1000又は支持構造体100がバスバー18を有しない領域においては、集電装置32は、
図3に示した、バスバー18と作用接続していない状態で配置された位置に配置されている。
【0031】
電動モータ24には、直接的に集電装置32と第1のエネルギ供給部20のバスバー18とを介してエネルギが供給されるようになっているものとしてよい。特にこの場合、集電装置32は、場合によっては電気的又は電子的な装置(図示しない)を間に挿んで電動モータ24に(直接的に)接続されており、このことは、破線で示した接続部33により示されている。
【0032】
さらに、駆動ユニット12は、ハウジング22の内部に第2のエネルギ供給部40を有する。この第2のエネルギ供給部40は、駆動ユニット12又は自走式車両10の、第1のエネルギ供給部20とは別個の動作を可能にする。第2のエネルギ供給部40は、たとえば充電器42を備えた充電装置を含む。充電器42は、一方では集電装置32を介してバスバー18にコンタクト可能であり、この充電器42は、バッテリ44を充電するために用いられる。バッテリ44は、集電装置32と同様に、電動モータ24に接続されている。
【0033】
第2のエネルギ供給部40は、バスバー18が設けられていない区間区分51の領域において、自走式車両10又は電動モータ24にエネルギを供給することを可能にする。バスバー18が設けられている領域において充電器42とバスバー18とを介してバッテリ44が後充電されることにより、第2のエネルギ供給部40がいつでも使用可能な状態にあることが常に保証されている。第1のエネルギ供給部20から第2のエネルギ供給部40への切換は、制御手段(図示しない)によって、特にバスバー18が設けられていない区間区分51が検知された際に行われる。特に、このような検知は、前で述べた識別手段55と検出手段56とを用いて行われる。
【0034】
また、直接的な接続部33の代わりに、電動モータ24が常時、バッテリ44にしか接続されていないことも可能である。これにより、電動モータ24へのエネルギ供給は、常時、バッテリ44又は第2のエネルギ供給部40から行われるようになる。このことは、破線で示した接続部33aにより示されている。従って、バッテリ44は、バッファ(緩衝器)として機能する。
【0035】
図4に示した駆動ユニット12aは、以下の点において
図3に示した駆動ユニット12とは異なる。即ち、バスバー18に対するコンタクト要素として集電装置32の代わりに、誘導ループ46の形態の誘導要素が設けられている。誘導ループ46は、バスバー18に対するコンタクトフリーのエネルギ伝達を可能にする。バスバー18は、この場合には同様に、エネルギ伝達を誘導式に可能にするように形成されている。
【0036】
さらに
図5に示した駆動ユニット12bは、以下の点において駆動ユニット12aとは異なる。即ち、両エネルギ供給部20,40が、それぞれ別個の電動モータ47,48、たとえば2つの電動モータ47,48を駆動するために構成されており、これらの電動モータ47,48は、それぞれ1つの別個の変速機26によって、互いに異なる出力シャフト28及び駆動要素30と協働する。両電動モータ47,48は、それぞれ別個のバッテリ49,49aを介して、それぞれ1つの別個の充電装置42,42aによって動作させられ又はエネルギ供給される。駆動ユニット12bの両充電装置42,42aは、バスバー18からのエネルギ伝達のために、1つの共通の誘導ループ46とカップリングされている。
【0037】
当然ながら、駆動ユニット12に対応してバスバー18から駆動ユニット12bへの機械的なエネルギ伝達を設定することも考えられる。
【0038】
補足的に付言しておくと、これまで説明したエネルギ供給部20,40は、特に自走式車両10の駆動部の枠内において説明したが、当然ながら、エネルギ供給部20,40は、自走式車両10の他の機能又は付加的な機能を可能にするためにも用いられ、たとえば、制動過程を実施するためにも、ゴンドラ16内の暖房装置にエネルギを供給するためにも、又は、通信モジュール、照明ユニット若しくはその他の装置のためのエネルギ供給を提供するためにも、用いられる。
【0039】
これまで説明した自走式車両10又は駆動ユニット12,12a,12bは、本発明の思想から逸脱することなしに種々様々に変更され得る。