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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 17/12 20060101AFI20240723BHJP
   B23Q 17/00 20060101ALI20240723BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B23Q17/12
B23Q17/00 D
B23Q17/00 A
B23Q11/00 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022553875
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021034930
(87)【国際公開番号】W WO2022071078
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2020165407
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【復代理人】
【識別番号】100120363
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 智樹
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】村松 稔文
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-074292(JP,A)
【文献】特開昭62-8032(JP,A)
【文献】特開平2-256461(JP,A)
【文献】特開2001-170863(JP,A)
【文献】特開2012-88967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/72
B23Q 11/00
B23Q 17/00
B23Q 17/12
B24B 41/00 - 51/00
G01M 1/00 - 1/38
H02K 11/00
H02K 15/16
F16F 15/22
F16F 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を用いて加工対象物を加工する工作機械であって、
回転軸を有するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータに設けられ、前記回転軸の回転速度を検出するエンコーダと、
前記工作機械に設けられ、前記回転軸が回転中に発生する振動量を検出する振動センサと、
予め規定された規定回転速度を指令値として前記モータ駆動部に出力し、バランス状態の観測に必要な振動を前記回転軸に生じさせる指令部と、
前記エンコーダで検出される前記回転速度が、前記指令値として前記モータ駆動部に出力された前記規定回転速度であるときに前記振動センサで検出される前記振動量を取得する取得部と、
前記指令値として前記モータ駆動部に出力された前記規定回転速度と、前記取得部が取得した前記振動量とを対応付けて表示部に表示させる表示制御部と、
を備える工作機械。
【請求項2】
工具を用いて加工対象物を加工する工作機械であって、
回転軸を有するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータまたは前記モータ駆動部に設けられ、前記モータに出力される駆動電流を検出する電流センサと、
前記工作機械に設けられ、前記回転軸が回転中に発生する振動量を検出する振動センサと、
前記電流センサから得られる信号に基づいて、前記回転軸の回転速度を推定する速度推定部と、
予め規定された規定回転速度を指令値として前記モータ駆動部に出力し、バランス状態の観測に必要な振動を前記回転軸に生じさせる指令部と、
前記速度推定部で推定される前記回転速度が、前記指令値として前記モータ駆動部に出力された前記規定回転速度であるときに前記振動センサで検出される前記振動量を取得する取得部と、
前記指令値として前記モータ駆動部に出力された前記規定回転速度と、前記取得部が取得した前記振動量とを対応付けて表示部に表示させる表示制御部と、
を備える工作機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工作機械であって、
前記指令値として前記モータ駆動部に出力された前記規定回転速度と、前記取得部が取得した前記振動量とを対応付けて記憶部に記憶させる記憶制御部と、
前記回転軸に対する前記バランス状態の調整作業前に前記記憶部に記憶された前記振動量と、前記バランス状態の調整作業後に前記記憶部に記憶された前記振動量との差に基づいて、前記回転軸に対する前記バランス状態の修正角度および修正量の少なくとも一方を演算する演算部と、
をさらに備え、
前記表示制御部は、前記差、前記修正角度および前記修正量の少なくとも1つを前記表示部に表示させる、工作機械。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の工作機械であって、
前記モータ駆動部は、加工機本体を制御する制御装置に設けられ、
前記指令部、前記取得部および前記表示制御部は、前記制御装置とは分離する装置に設けられる、工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を用いて加工対象物を加工する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、シャフト等の回転体が備えられる。回転体を剛性ロータまたは弾性ロータと見做した場合の釣合いの程度を観測する装置としてフィールドバランサがある。この釣合いの程度は、バランス状態と称される。特開平03-251066号公報には、回転駆動する観測対象の回転のバランス状態を観測することが開示されている。回転体のバランス状態が観測されることにより、オペレータは、回転体のバランス状態が運転に支障のある場合に、どのように修正すればよいかを知ることができる。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、フィールドバランサによる回転体のバランス状態の観測精度は、工作機械にフィールドバランサを取り付ける取り付け方、あるいは、工作機械にフィールドバランサを取り付けたときの取り付け位置に依存する。したがって、フィールドバランサによって回転体のバランス状態を安定的に精度よく観測することは、オペレータにとって必ずしも容易ではない。また、バランス修正作業を遂行することも、オペレータにとって必ずしも容易ではない。
【0004】
そこで、本発明は、フィールドバランサによらず工作機械の回転体のバランス状態を観測することができ、且つ、バランス状態の調整作業を容易にする工作機械を提供することを目的とする。
【0005】
本発明の第1の態様は、
工具を用いて加工対象物を加工する工作機械であって、
回転軸を有するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータに設けられ、前記回転軸の回転速度を検出するエンコーダと、
前記工作機械に設けられ、前記回転軸が回転中に発生する振動量を検出する振動センサと、
前記エンコーダで検出される前記回転速度が予め規定された規定回転速度であるときに前記振動センサで検出される前記振動量を取得する取得部と、
前記規定回転速度と、前記取得部が取得した前記振動量とを対応付けて表示部に表示させる表示制御部と、
を備える。
【0006】
本発明の第2の態様は、
工具を用いて加工対象物を加工する工作機械であって、
回転軸を有するモータと、
前記モータを駆動するモータ駆動部と、
前記モータまたは前記モータ駆動部に設けられ、前記モータに出力される駆動電流を検出する電流センサと、
前記工作機械に設けられ、前記回転軸が回転中に発生する振動量を検出する振動センサと、
前記電流センサから得られる信号に基づいて、前記回転軸の回転速度を推定する速度推定部と、
前記速度推定部で推定される前記回転速度が予め規定された規定回転速度であるときに前記振動センサで検出される前記振動量を取得する取得部と、
前記規定回転速度と、前記取得部が取得した前記振動量とを対応付けて表示部に表示させる表示制御部と、
を備える。
【0007】
本発明によれば、工作機械に設けられるセンサを用いて、規定回転速度での回転中に発生する振動量を捉えることで、フィールドバランサによらず工作機械の回転体のバランス状態を観測することができる。また、規定回転速度での回転中に発生する振動量と、当該規定回転速度とが対応付けられて表示されることで、工作機械の回転体のバランス状態の調整作業においてオペレータを支援することができる。こうして、フィールドバランサによらず工作機械の回転体のバランス状態を観測することができ、且つ、バランス状態の調整作業を容易にする工作機械が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の工作機械を示す概略図である。
図2図2は、制御装置を示す概略ブロック図である。
図3図3は、エンコーダから出力される信号を例示するグラフである。
図4図4は、振動センサから出力される信号を例示するグラフである。
図5図5は、規定回転速度と、規定回転速度であるときの振動量との対応関係を示すグラフである。
図6図6は、変形例1の工作機械を示す概略図である。
図7図7は、変形例2の工作機械を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態]
図1は、本実施形態の工作機械10を示す概略図である。工作機械10は、工具を用いて加工対象物を加工する。工作機械10は、ナノオーダーの指令分解能でモータを制御し得る精密工作機械であってもよい。また、工作機械10は、10分の1ナノオーダーの指令分解能でモータを制御し得る超精密工作機械であってもよい。なお、工作機械10として、例えば、固定された工具に対して回転状態の加工対象物を接触させて加工する旋盤機等が挙げられる。また、工作機械10として、固定された加工対象物に対して回転状態の工具を接触させて加工するマシニングセンタ等が挙げられる。工作機械10には、加工機本体12と、加工機本体12を制御する制御装置14とが備えられる。
【0010】
加工機本体12は、機械ユニットを含む。加工機本体12は、機械ユニットに装着されるモータ、センサ等のデバイスをさらに含む。加工機本体12には、モータ16、エンコーダ18および振動センサ20が備えられる。
【0011】
モータ16は、回転軸16Sを有する。モータ16は、不図示のロータおよび不図示のステータをさらに有する。ステータのコイルに、制御装置14から出力される駆動電流が流れることで、ロータが回転する。ロータが回転すると、回転するロータと一体にモータ16の回転軸16Sが回転する。
【0012】
モータ16の回転軸16Sの一端には、モータ16の動力を基に回転する回転体が取り付けられる。回転体は、加工機本体12に含まれる機械部品である限り、特に限定されない。回転体として、主軸22、工具等が挙げられる。本実施形態では、回転体は主軸22とする。
【0013】
主軸22は、ハウジング24の貫通孔24Hに挿通される。主軸22の両端部の一方である第1端部には、継手26を介してモータ16の回転軸16Sが取り付けられる。なお、回転体は、主軸22の両端部の他方である第2端部に取り付けられる部品を含んでいてもよい。例えば、工作機械10が旋盤機である場合、回転体は、第2端部に取り付けられる面板を含む。面板は、加工対象物を固定するための部品である。別例として、工作機械10がマシニングセンタである場合、回転体は、第2端部に取り付けられる工具を含む。工具は、加工対象物を加工する部品である。
【0014】
エンコーダ18は、モータ16の回転軸16Sの回転速度を検出する。エンコーダ18は、モータ16に設けられる。エンコーダ18から出力される信号は、制御装置14に入力される。
【0015】
振動センサ20は、モータ16の回転軸16Sが回転している際に発生する振動の量(振動量)を検出する。振動量として、加速度、速度、変位、角加速度、角速度、または、角度が挙げられる。振動センサ20として、加速度、速度、変位、角加速度、角速度、または、角度を検出可能な既知のセンサが採用される。
【0016】
振動センサ20は、加工機本体12に設けられる。振動センサ20の設置場所は、モータ16の回転軸16Sが回転している際に発生する振動の量(振動量)を検出可能である限り、特に限定されない。図1の例では、振動センサ20は、加工機本体12における主軸22のハウジング24に設けられている。なお、振動センサ20は、主軸22に設けられていてもよい。
【0017】
図2は、制御装置14を示す概略ブロック図である。制御装置14には、入力部30、表示部32、記憶部34、モータ駆動部36およびプロセッサ38が備えられる。
【0018】
入力部30は、情報を入力する。入力部30の具体例として、マウス、キーボード等が挙げられる。表示部32の表示画面上に配置されるタッチパネル等によって、入力部30が構成されてもよい。表示部32は、情報を表示する。表示部32の具体例として、液晶ディスプレイが挙げられる。表示部32は、プロセッサ38から与えられる情報に基づいて画面等を表示する。記憶部34は、情報を記憶する。記憶部34には、不図示の揮発性メモリと、不図示の不揮発性メモリとが備えられ得る。揮発性メモリとしては、例えばRAM等が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えばROM、フラッシュメモリ等が挙げられる。記憶部34の少なくとも一部が、プロセッサ38等に備えられていてもよい。また、記憶部34には、ハードディスク等がさらに備えられ得る。
【0019】
モータ駆動部36は、モータ16を駆動する。モータ駆動部36の具体例として、サーボアンプが挙げられる。モータ駆動部36は、プロセッサ38から供給される指令値に応じた回転数で回転するように、モータ16に対して駆動電流を出力する。
【0020】
プロセッサ38は、情報を処理する。プロセッサ38の具体例として、CPU、GPUが挙げられる。プロセッサ38は、加工対象物を加工する加工モードと、バランス状態の調整作業を支援する支援モードとを有する。
【0021】
なお、バランス状態は、次の第1状態または第2状態を意味する。第1状態は、静不釣合いおよび偶不釣合いの程度である。第2状態は、変形モードによる不釣合いの程度である。バランス状態が第1状態を意味する場合、モータ16の回転軸16Sと一体に回転するロータを剛性ロータと見做す。バランス状態が第1状態を意味する場合、モータ16の回転軸16Sと、モータ16の回転軸16Sと一体に回転するロータとを剛性ロータと見做してもよい。バランス状態が第2状態を意味する場合、モータ16の回転軸16Sと一体に回転するロータを弾性ロータと見做す。バランス状態が第2状態を意味する場合、モータ16の回転軸16Sと、モータ16の回転軸16Sと一体に回転するロータとを弾性ロータと見做してもよい。調整作業は、第1状態または第2状態の程度が低減するように調整する作業を意味する。調整作業の具体的な例として、ロータ等を削る作業が挙げられる。また、調整作業の具体的な例として、ロータ等にバランスウェイトを付与する作業等が挙げられる。
【0022】
支援モードは、バランス状態の調整作業の前後に実施される。なお、バランス状態の調整作業の作業回数は1回に限られない。バランス状態の調整作業の作業回数が複数回となる場合、当該調整作業前、および、各々の調整作業後に支援モードが実施される。
【0023】
入力部30から支援モードの実施命令を受けると、プロセッサ38は、支援モードを実行するためのプログラムに基づいて、指令部40、取得部42、記憶制御部44、表示制御部46および演算部48として機能する。なお、支援モードを実行するためのプログラムは記憶部34に記憶される。
【0024】
指令部40は、規定回転速度を指令値としてモータ駆動部36に出力する。モータ駆動部36は、指令値を受けると、規定回転速度で回転するようにモータ16を駆動する。つまり、指令部40は、規定回転速度を指令値としてモータ駆動部36に出力することで、工作機械10の回転体(本実施形態では主軸22)のバランス状態を観測するために必要な振動を、モータ16の回転軸16Sに生じさせることができる。
【0025】
なお、規定回転速度として規定する規定数は1つであってもよく、複数であってもよい。規定数が複数である場合、指令部40は、複数の規定回転速度の各々を、時間間隔をあけて、指令値として順次モータ駆動部36に出力する。この場合、指令部40は、回転軸16Sの回転速度が順次増加するように、複数の規定回転速度の各々を指令値としてモータ駆動部36に出力してもよい。あるいは、指令部40は、回転軸16Sの回転速度が順次減少するように、複数の規定回転速度の各々を指令値としてモータ駆動部36に出力してもよい。
【0026】
取得部42は、エンコーダ18から出力される信号に基づいて、エンコーダ18で検出される回転速度が、モータ駆動部36に対して指令部40が指令値として出力した規定回転速度であるか否かを判定する。
【0027】
図3は、エンコーダ18から出力される信号を例示するグラフである。モータ16の回転軸16Sが1回転すると、エンコーダ18から1パルスのパルス信号が出力される場合の例が、図3に示されている。また、規定回転速度が600rpmおよび1200rpmと規定されている場合の例が、図3に示されている。この場合、0.1秒ごとに1パルスが出力される区間SC1のときに、取得部42は、エンコーダ18で検出される回転速度が規定回転速度(600rpm)であると判定する。また、0.05秒ごとに1パルスが出力される区間SC2のときに、取得部42は、エンコーダ18で検出される回転速度が規定回転速度(1200rpm)であると判定する。なお、図3は回転軸16Sの回転速度を順次増加させる場合を例示しているが、回転速度を順次減少させてもよい。
【0028】
取得部42は、振動センサ20から出力される信号に基づいて、回転速度が規定回転速度であると判定しているときの振動量を取得する。
【0029】
図4は、振動センサ20から出力される信号を例示するグラフである。振動センサ20として加速度センサが採用されている場合の例が、図4に示されている。この場合、取得部42は、振動センサ20により区間SC1において検出された振動量(加速度)の二乗平均平方根を算出し、算出した二乗平均平方根を、区間SC1の振動量として取得する。また、取得部42は、振動センサ20により区間SC2において検出された振動量(加速度)の二乗平均平方根を算出し、算出した二乗平均平方根を、区間SC2の振動量として取得する。
【0030】
なお、取得部42は、二乗平均平方根以外の統計値を、区間SC1または区間SC2の振動量として取得してもよい。統計値として、振動センサ20により区間SC1または区間SC2において検出された振動量(加速度)の標準偏差等が挙げられる。また、統計値として、振動センサ20により区間SC1または区間SC2において検出された振動量(加速度)の絶対値の平均等が挙げられる。取得部42は、振動センサ20により区間SC1または区間SC2において検出される振動量(加速度)の絶対値のうちの最大値等の所定値を、区間SC1または区間SC2の振動量として取得してもよい。また、取得部42は、振動センサ20により区間SC1または区間SC2において検出される振動量(加速度)から回転速度に同期した成分を抽出し、その振幅またはその位相を、区間SC1、区間SC2の振動量として取得してもよい。
【0031】
このように、取得部42は、エンコーダ18で検出される回転速度が、モータ駆動部36に対して指令部40が指令値として出力した規定回転速度であるときの振動量を取得する。
【0032】
記憶制御部44は、規定回転速度と、取得部42が取得した振動量とを、履歴として、当該振動量を取得した日付に対応付けて記憶部34に記憶させる。なお、取得部42が取得した振動量は、規定回転速度で回転軸16Sが回転中に取得部42が取得した振動量である。
【0033】
図5は、規定回転速度と、規定回転速度であるときの振動量との対応関係を示すグラフである。振動センサ20として加速度センサが採用されている場合の例が、図5に示されている。また、規定回転速度が600rpmおよび1200rpmとして規定されている場合の例が、図5に示されている。また、規定回転速度が600rpmであるときの振動量が0.58m/sであり、規定回転速度が1200rpmであるときの振動量が1.18m/sである場合の例が、図5に示されている。この場合、記憶制御部44は、例えば記憶部34のリレーショナルテーブルに、規定回転速度600rpmと振動量0.58m/sとを日付に対応付けて記憶させる。また、記憶制御部44は、記憶部34のリレーショナルテーブルに、規定回転速度1200rpmと振動量1.18m/sとを日付に対応付けて記憶させる。
【0034】
表示制御部46は、記憶部34を参照し、日付に対応付けられた規定回転速度と、振動量とを表示部32に表示させる。振動量は、規定回転速度で回転軸16Sが回転中に取得部42が取得した振動量である。
【0035】
なお、表示制御部46が規定回転速度および振動量を表示部32に表示させる表示形式は特に限定されない。例えば、表示制御部46は、規定回転速度の数値と、振動量の数値とを表示部32に表示させてもよい。あるいは、図5に例示したように、表示制御部46は、規定回転速度および振動量の一方を縦軸とし他方を横軸とするグラフを表示部32に表示させてもよい。表示制御部46は、グラフを表示させる場合、規定回転速度で回転軸16Sが回転中に取得部42が取得した振動量に基づいて、プロットをグラフに表示させる。
【0036】
また、表示制御部46が規定回転速度および振動量を表示部32に表示させる表示時期は特に限定されない。例えば、表示制御部46は、入力部30から表示要求を受けた時点を契機として、規定回転速度および振動量を表示部32に表示させてもよい。あるいは、表示制御部46は、取得部42が振動量を取得した時点を契機として、規定回転速度および振動量を表示部32に表示させてもよい。
【0037】
なお、過去に支援モードが実施されている場合、記憶部34には、過去に実施された支援モードの日付ごとに、当該支援モードが実施されたときに取得部42が取得した振動量が、規定回転速度と対応付けられて記憶される。この場合、表示制御部46は、今回取得部42が取得した振動量と、過去に取得部42が取得した振動量とを比較可能な状態で、表示部32に表示させてもよい。
【0038】
演算部48は、バランス状態の調整作業前に記憶部34に記憶された振動量と、バランス状態の調整作業後に記憶部34に記憶された振動量との差に基づいて、修正角度および修正量の少なくとも一方を演算する。なお、修正角度は、ロータ等の回転体に対して調整作業を行うべき回転角度を意味する。調整作業がロータ等を切削する作業である場合、修正量は切削量を意味する。また、調整作業がロータ等に対してバランスウェイトを付与する作業である場合、修正量はバランスウェイトのウェイト量を意味する。
【0039】
修正角度および修正量の具体的な演算方法は、特に限定されない。例えば、演算部48は、特許第5808585号公報、特開平6-273254号公報、あるいは、特開2002-7375号公報に開示された演算方法を用いて、修正角度および修正量を演算し得る。
【0040】
以上のように本実施形態の工作機械10は、加工機本体12に設けられるセンサ(エンコーダ18および振動センサ20)を用いて、規定回転速度で回転軸16Sが回転しているときに発生する振動量を取得する。これにより、フィールドバランサによらずに、加工機本体12における回転軸16Sに取り付けられた回転体(主軸22)のバランス状態を観測することができる。
【0041】
これに加えて、本実施形態の工作機械10は、規定回転速度と、当該規定回転速度で回転軸16Sが回転しているときに発生する振動量とを対応付けて表示部32に表示する。これにより、回転軸16Sに取り付けられた回転体(主軸22)のバランス状態の調整作業においてオペレータを支援することができる。
【0042】
また、本実施形態の工作機械10は、回転軸16Sに対するバランス状態の修正角度および修正量の少なくとも一方を演算し、演算結果を表示部32に表示させる。これにより、オペレータは、バランス状態の調整作業前後の差、修正角度および修正量の少なくとも1つを見ながら、次回の調整作業を実施することができる。したがって、バランス状態の調整作業をより一段と容易にすることができる。
【0043】
[変形例]
上記の実施形態は、以下のように変形してもよい。
【0044】
(変形例1)
図6は、変形例1の工作機械10を示す概略図である。図6では、実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は割愛する。本変形例では、エンコーダ18に代えて電流センサ50が設けられ、速度推定部52が制御装置14に新たに設けられる。
【0045】
電流センサ50は、モータ16に出力される駆動電流を検出する。なお、電流センサ50は、モータ16(図6参照)に設けられていてもよいし、モータ16を駆動するモータ駆動部36(図2参照)に設けられていてもよい。
【0046】
速度推定部52は、電流センサ50から得られる信号に基づいて、回転軸16Sの回転速度を推定する。回転速度を推定する際の具体的な演算方法は、特に限定されない。例えば、速度推定部52は、特開2020-005406号公報に開示された演算方法を用いて、回転速度を推定し得る。したがって、モータ16にエンコーダ18が設けられていなくても、回転軸16Sの回転速度を捉えることができる。
【0047】
なお、本変形例の場合、取得部42(図2)は、振動センサ20から出力される信号に基づいて、速度推定部52で推定される回転速度が、モータ駆動部36に対して指令部40が指令値として出力した規定回転速度であるか否かを判定する。
【0048】
このように本変形例の工作機械10は、実施形態と同様に、加工機本体12に設けられるセンサ(電流センサ50および振動センサ20)を用いて、規定回転速度で回転軸16Sが回転しているときに発生する振動量を取得する。これにより、実施形態と同様に、フィールドバランサによらずに、加工機本体12における回転軸16Sに取り付けられた回転体(主軸22)のバランス状態を観測することができる。
【0049】
(変形例2)
図7は、変形例2の工作機械10を示す概略図である。図7では、実施形態において説明した構成と同等の構成には同一の符号が付されている。なお、本変形例では、実施形態と重複する説明は割愛する。
【0050】
本変形例では、制御装置14に対して、各種の情報を授受し得るコンピュータ装置54が接続される。なお、制御装置14とは物理的に分離する装置であれば、コンピュータ装置54以外の装置が採用されてもよい。また、図7では、実施形態の制御装置14に対してコンピュータ装置54が接続される場合が例示されているが、変形例1の制御装置14に対してコンピュータ装置54が接続されていてもよい。
【0051】
また、本変形例では、制御装置14のプロセッサ38(図2)に設けられた指令部40(図2)、取得部42(図2)、記憶制御部44(図2)、表示制御部46(図2)および演算部48(図2)が省かれる。代わりに、コンピュータ装置54のプロセッサ56に、指令部40、取得部42、記憶制御部44、表示制御部46および演算部48が設けられる。例えば、支援モードを実行するためのプログラムがコンピュータ装置54にインストールされることで、プロセッサ56を指令部40、取得部42、記憶制御部44、表示制御部46および演算部48として機能させ得る。
【0052】
本変形例によれば、既存の制御装置14を変更することなくそのまま用いて、フィールドバランサによらず工作機械10の回転体のバランス状態を観測することができ、且つ、バランス状態の調整作業を容易にすることができる。
【0053】
[実施形態から得られる発明]
実施形態および変形例から把握しうる発明について、以下に第1の発明および第2の発明を記載する。
【0054】
<第1の発明>
第1の発明は、工具を用いて加工対象物を加工する工作機械(10)であって、回転軸(16S)を有するモータ(16)と、モータを駆動するモータ駆動部(36)と、モータに設けられ、回転軸の回転速度を検出するエンコーダ(18)と、工作機械に設けられ、回転軸が回転中に発生する振動量を検出する振動センサ(20)と、エンコーダで検出される回転速度が予め規定された規定回転速度であるときに振動センサで検出される振動量を取得する取得部(42)と、規定回転速度と、取得部が取得した振動量とを対応付けて表示部(32)に表示させる表示制御部(46)と、を備える。
【0055】
<第2の発明>
第2の発明は、工具を用いて加工対象物を加工する工作機械であって、回転軸を有するモータと、モータを駆動するモータ駆動部と、モータまたはモータ駆動部に設けられ、モータに出力される駆動電流を検出する電流センサ(50)と、工作機械に設けられ、回転軸が回転中に発生する振動量を検出する振動センサと、電流センサから得られる信号に基づいて、回転軸の回転速度を推定する速度推定部(52)と、速度推定部で推定される回転速度が予め規定された規定回転速度であるときに振動センサで検出される振動量を取得する取得部と、規定回転速度と、取得部が取得した振動量とを対応付けて表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0056】
第1の発明または第2の発明の場合、工作機械に設けられるセンサを用いて、規定回転速度で回転中に発生する振動量が捉えられることで、フィールドバランサによらず工作機械の回転体のバランス状態を観測することができる。また、規定回転速度で回転中に発生する振動量と、規定回転速度とが対応付けられて表示されることで、工作機械の回転体のバランス状態の調整作業においてオペレータを支援することができる。こうして、第1の発明または第2の発明によれば、フィールドバランサによらず工作機械の回転体のバランス状態を観測することができ、且つ、バランス状態の調整作業を容易にすることができる。
【0057】
第1の発明または第2の発明の工作機械は、規定回転速度と、取得部が取得した振動量とを対応付けて記憶部(34)に記憶させる記憶制御部(44)と、回転軸に対するバランス状態の調整作業前に記憶部に記憶された振動量と、バランス状態の調整作業後に記憶部に記憶された振動量との差に基づいて、回転軸に対するバランス状態の修正角度および修正量の少なくとも一方を演算する演算部(48)と、をさらに備え、表示制御部は、差、修正角度および修正量の少なくとも1つを表示部に表示させてもよい。これにより、バランス状態の調整作業前後の差、修正角度および修正量の少なくとも1つをオペレータに見せながら、次回の調整作業を実施させることができる。したがって、バランス状態の調整作業をより一段と容易にすることができる。
【0058】
第1の発明または第2の発明の工作機械において、モータ駆動部は、加工機本体(12)を制御する制御装置(14)に設けられ、取得部および表示制御部は、制御装置とは分離する装置に設けられてもよい。これにより、既存の制御装置を変更することなくそのまま用いて、フィールドバランサによらず工作機械の回転体のバランス状態を観測することができ、且つ、バランス状態の調整作業を容易にすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7