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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】湾曲バルーンカテーテルリトラクタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/02 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
A61B17/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022562941
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 CN2021081406
(87)【国際公開番号】W WO2021208663
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-12
(31)【優先権主張番号】202010302531.1
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520327995
【氏名又は名称】上海科▲賜▼医▲療▼技▲術▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI KECI MEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Unit 335-337, Bld No.1, 166 Miyi Road, Sijing Town, Songjiang District, Shanghai 201601 China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100217412
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 亜子
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼智超
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼▲長▼生
(72)【発明者】
【氏名】シャンカル スバクリシュナ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110559022(CN,A)
【文献】国際公開第2019/165772(WO,A1)
【文献】特表2020-500065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
A61B 17/02
A61M 25/06
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルの先端部には、位置決めバルーンが設置され、カテーテルの先端部に近接する部分には、湾曲可能な湾曲バルーンが設置され、湾曲バルーンの形状が複数のセグメントに分けられるが、全体として内部が連通し、位置決めバルーン及び湾曲バルーンは、カテーテルの内部のチューブによりそれぞれカテーテルの後端部のそれぞれの注入口に接続され、カテーテルの後端部には、カテーテルの位置を調整するハンドルが設置され、さらに、一端が注射器に接続され、他端がカテーテルの後端部の湾曲バルーン又は位置決めバルーンの注入口に接続される高圧編組チューブが設置され、未使用状態で、位置決めバルーン及び湾曲バルーンは、カテーテルに密着され、使用状態で、流体を位置決めバルーンの注入口から注入して、位置決めバルーン(11)を膨張させることにより、位置決め作用を果たし、次に、流体を湾曲バルーンに注入することにより、湾曲バルーン及びその内部のカテーテルの一部が巻いて、一方側へ偏移してリトラクションすることを特徴とする、湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項2】
未使用状態で、位置決めバルーン及び湾曲バルーンは、カテーテルに密着され、硬質管状のバルーン保護カバーにより収容され、使用状態でバルーン保護カバーを取り外すことを特徴とする、請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項3】
前記カテーテルのハンドルには、カテーテルの挿入の深さをマーキングするための長さの目盛り部分があることを特徴とする、請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項4】
前記カテーテルは、カテーテルの人体の腔道外に残す部分が回転すれば、人体内部の部分も回転する材質を使用することを特徴とする請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項5】
前記湾曲バルーンには、それぞれ湾曲バルーンの近位端、中間部分、遠位端の相対位置を表示する3つの現像装置が設置されることを特徴とする、請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項6】
前記湾曲バルーンのセグメントの数は、5~8であることを特徴とする、請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項7】
前記カテーテルの後端部には、把持及び回転などの操作に用いられる主軸が設置され、主軸の後端部には、主軸の内部を貫通するカテーテルを係止可能な固定ねじが設置され、主軸の先端部には、主軸の内部を貫通するカテーテルを固定するか又は緩めて、カテーテルと湾曲バルーンの位置を調整するロックスライダが設置されることを特徴とする、請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項8】
二方弁がさらに設置され、当該二方弁は、中間にスイッチを有し、必要な場合に注入口と高圧編組チューブとの間に接続され、流体の注入を制御することにより、バルーン内の圧力を保持することを特徴とする、請求項に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項9】
固定ヘッドバンドがさらに設置され、当該固定ヘッドバンドは、後頭部用の本体部分を有し、本体部分に後頭部の突起部分を収容する孔が設置され、より快適に装着できることを特徴とする、請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項10】
前記カテーテルの後端部には、把持及び回転などの操作に用いられる主軸が設置され、前記主軸の先端部には、固定ヘッドバンドに接続されて、主軸及びカテーテル全体を頭部に対して固定する2つの接続バックルが設置されることを特徴とする、請求項に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項11】
前記固定ヘッドバンドの本体部分に4つの接続ベルトが設置され、接続ベルトには、主軸の先端部の2つの接続バックルに係止接続可能な一連の接続孔が設置されることを特徴とする、請求項に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項12】
中空チューブであるシースがさらに設置され、シースは、回転不能なカテーテル保護部分を形成することができることにより、上部が狭い人体の腔道内で、カテーテルを回転して引き抜くことによる人体の損傷を引き起こさないことを特徴とする、請求項1に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項13】
前記シースには、シースと到達位置を表示するために現像液を吐出するための孔が設置されることを特徴とする、請求項12に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項14】
前記シース内には、X線で現像するための現像線が埋め込まれることを特徴とする、請求項12に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項15】
シースの底部には、カテーテルを収容するように一端がシースに接続され、他端が主軸に接続される円形の三方継手が設置され、当該円形の三方継手の側辺に現像液を注入する孔があることを特徴とする、請求項12に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【請求項16】
滑らかな先端部及び楕円形の底部を有する中実ホースであるシース補助器がさらに設置され、シース補助器の作用は、その中実ホースの特性を利用して、人体の腔道にスムーズに入るとともに、シースを導入して、シースの直接的な挿入によるシースの縁部の鼻粘膜又は食道壁などの人体の腔道に対する擦り傷を回避することであり、シース補助器は、シースを人体の腔道内に導入した後、スムーズに抽出することができ、さらに、カテーテルをシースに挿入することを特徴とする、請求項12に記載の湾曲バルーンカテーテルリトラクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルリトラクタに関し、特に湾曲バルーンカテーテルリトラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
リトラクタ(retractors)は、引っ張りフックとも呼ばれ、探査及び操作を容易に行うように組織をリトラクションして手術範囲を露出させるためのものであり、手持ち式引っ張りフックと自動引っ張りフックという2種類に分けられる。様々な異なる形状及び大きさの仕様があり、手術の必要に応じて適切な引っ張りフックを選択することができる。
【0003】
従来のリトラクタは、大きな操作スペースを必要とするため、大きな手術創をもたらす。また、従来のリトラクタは、金属製が多く使用されているとともに、鋭い端があるため、患者の二次損傷が起こって、重要な臓器組織を損傷しやすい。
【0004】
現在、伸縮可能な内視鏡の作業ルーメンを貫通する伸縮可能な組織リトラクタは、徐々に広く応用されている。組織リトラクタは、伸縮可能な内視鏡検査、腹腔鏡検査及び通常外科手術を含む、内視鏡及び開腹手術に応用されている。このような組織リトラクタの長さ及び直径は、外科手術での具体的な要求に適応するために、一定であっても変更可能であってもよい。伸縮可能な内視鏡の組織リトラクタは、臓器組織を固定することにより、ある方式でリトラクションして操作することができる。
【0005】
カテーテルリトラクタは、手術中の組織リトラクションに用いられ、上記製品は、自然開口部介入又は開放手術介入によりリトラクション操作を完了する。手術は、様々な腹腔鏡手術、心血管手術、脳部手術、消化管手術、泌尿器疾患手術などを含むが、これらに限定されず、リトラクションされる組織は、胃腸、食道、気道、尿道、膣、膀胱などを含むが、これらに限定されない。リトラクションの目的は、特定の組織を保護し、特定の組織を移動して手術操作を容易にすることを含むが、これらに限定されない。
【0006】
以下、心房細動アブレーションの合併症を例にしてカテーテルリトラクタの作用を説明する。心房細動は最も一般的な不整脈であり、心房細動アブレーション治療は、近年、薬物治療及び通常外科手術よりも良好な解決手段として認められている。心房細動カテーテルアブレーション技術は、1996年に初めて報告され、20年間の技術進歩及び経験蓄積を経て、徐々に臨床的に成熟した治療技術になる。心房細動アブレーション手術の成功率及び合併症率は、年々改善されているが、その深刻な合併症率は、依然として1%~3%であり、一般的に施術者の経験が豊富であるほど、合併症の確率が低い。心房細動アブレーション手術が多くの病院に一般的に応用されることを期待すれば、安全性指標は最も重要であり、以下の合併症をよく制御する必要がある。
【0007】
手術中脳卒中(原因は、手術中の創面の痂皮形成及び血栓剥離である)、発生率:0.1%~0.5%。心穿孔(原因は、心臓に孔が現れる)、発生率:0.2%~0.5%。肺静脈狭窄(原因は、アブレーション部位が深すぎることである)、発生率:<0.1%。左心房食道瘻(原因は、アブレーションが食道を損傷することである)、発生率:0.3~0.5%、死亡率:>75%。
【0008】
心房食道瘻の合併症の発生は、左心房と食道とが近接するという空間的な関係に起因する。食道が後縦隔に位置し、心膜斜洞のみで左心房の後壁と隔てられ、左心房の後壁と食道の前壁がいずれも薄いため、アブレーション手術における高エネルギーは、食道に過度損傷を与えるおそれがある。心房食道瘻の合併症は、死亡率が非常に高く、現在、中国国内の回復成功ケースが極めて少なく、治療手段が限られ、発見及び診断の難しさが高く、食道瘻の症状が一般的に数週間から数ヶ月後に表現されるという特徴を有する。
【0009】
手術の致死率を低下させることにより、手術の失敗率を低下させ、かつ医者と患者のトラブルの発生を減少させる。一部の患者は、心房食道瘻の発生を心配するため、手術を受け入れず、心房細動を根治する機会を失い、食道瘻の発生を効果的に予防することができれば、食道瘻のリスクを本来的に心配する多くの患者は手術治療を受ける。また、医者は、食道瘻のリスクを低減するために、アブレーション電力を低下させるため、アブレーション術の根治率を低下させる。食道瘻の発生を予防できれば、医者は、正常な電力で食道の近傍領域に対してアブレーションを行うことにより、心房細動の根治率を向上させることができる。
【0010】
食道瘻の患者について、一般的に食道と左心房が近接すぎる(約1cm)ため、心房細動アブレーションのエネルギーが食道を損傷しやすく、食道リトラクション技術は、この問題を根本的に解決する。2008年から今まで、中国国内外に、次々と、多くの心臓疾患の専門家は、食道を機械的にリトラクションすることにより心房食道瘻を予防する研究を行い、該方法が食道損傷に対する制御と食道瘻の合併症に対する予防に優れた作用を果たすことを証明し、食道リトラクション方法の安全性及び有効性がいずれも予備的に検証される。
【0011】
2017年の国際心房細動セミナー(2017 AF Symposium)では、食道リトラクションによる心房細動アブレーション手術を受けた101人の患者に関する研究結果によれば、試験中に食道温度が38℃を超える患者がないことを示す。該研究は、同時に101人の患者に対して、上部消化管の様々な副作用、例えば、嚥下障害、吐血、消化不良、他の胃腸の症状などを記録し、少なくとも6ヶ月にわたって訪問観察する。訪問観察結果は、少数の患者のみに嚥下障害(発生率7%)が現れ、いずれも手術直後に現れ、かつ数日後に完全に緩和し、後期の胃腸の合併症が観察されないことである。
【0012】
現在、食道リトラクション研究に用いられる大部分の工具は、気管プローブ、内視鏡などの湾曲可能な先端部を備えた非リトラクション専用器具であり、該種類の器具は、操作が複雑であり、リトラクション距離が限られ、食道構造と完全に適応できないなどの臨床問題が存在する。
【0013】
中国国内外に開示される食道リトラクションの関連特許について、その技術的原理が主に鋼線により機械構造をリトラクションすることに集中し、構造が複雑であり、充分なリトラクション効果を達成するように機械構造に十分な剛性を持たせるために、その機械的構造は一般的に大きな直径を有し、食道に経口でしか挿入できず、患者により多くの不快感を与え、また、直径が大きいため、応用分野が限られ、他の狭窄で、構造が複雑である腔道に適用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題に基づいて、自然開口部介入又は開放手術介入のリトラクション操作のために、従来のカテーテルリトラクタの構造が複雑であり、リトラクション力を正確に制御することができず、信頼性が高くないという問題を解決して、簡単で信頼性の高いカテーテルリトラクションを実現する湾曲バルーンカテーテルリトラクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明に係る湾曲バルーンカテーテルリトラクタにおいて、カテーテルの先端部には、位置決めバルーンが設置され、カテーテルの先端部に近接する部分には、湾曲可能な湾曲バルーンが設置され、位置決めバルーン及び湾曲バルーンは、カテーテルの内部のチューブによりそれぞれカテーテルの後端部のそれぞれの注入口に接続され、カテーテルの後端部には、カテーテルの位置を調整するハンドルが設置され、未使用状態で、位置決めバルーン及び湾曲バルーンは、カテーテルに密着され、使用状態で、流体を位置決めバルーンの注入口から注入して、位置決めバルーンを膨張させることにより、位置決め作用を果たし、次に、流体を湾曲バルーンに注入することにより、湾曲バルーン及びその内部のカテーテルの一部が巻いて、一方側へ偏移してリトラクションする。
【0016】
未使用状態で、位置決めバルーン及び湾曲バルーンは、カテーテルに密着され、硬質管状のバルーン保護カバーにより収容され、使用状態でバルーン保護カバーを取り外す。ハンドルには、カテーテルの挿入の深さをマーキングするための長さの目盛り部分がある。カテーテルは、捻じれが生じにくい材質を使用するか又は捻じれが生じにくい材質を使用してカテーテルを補強する。湾曲バルーンには、それぞれ湾曲バルーンの近位端、中間部分、遠位端の相対位置を表示する3つの現像装置が設置される。カテーテルに、X線で現像するための現像線がある。湾曲バルーンの長さは、好ましくは、9~11cmである。湾曲バルーンのセグメントの数は、5~8である。
【0017】
さらに、カテーテルの後端部には、把持及び回転などの操作に用いられる主軸が設置され、主軸の後端部には、主軸の内部を貫通するカテーテルを係止可能な固定ねじが設置され、主軸の先端部には、主軸の内部を貫通するカテーテルを固定するか又は緩めて、カテーテルの位置を調整するロックスライダが設置される。主軸の先端部には、固定ヘッドバンドに接続されて、主軸及びカテーテル全体を頭部に対して固定する2つの接続バックルが設置される。
【0018】
さらに、一端が注射器に接続され、他端がカテーテルの後端部の湾曲バルーン又は位置決めバルーンの注入口に接続される高圧編組チューブがさらに設置される。二方弁がさらに設置され、当該二方弁は、中間にスイッチを有し、必要な場合に注入口と高圧編組チューブとの間に接続され、流体の注入を制御することにより、バルーン内の圧力を保持する。
【0019】
好ましくは、ヘッドバンドがさらに設置され、当該ヘッドバンドは、後頭部用の本体部分を有し、本体部分に後頭部の突起部分を収容する大きな孔が設置され、より快適に装着できる。本体部分に4つの接続ベルトが設置され、接続ベルトには、主軸の先端部の2つの接続バックルに係止接続可能な一連の接続孔が設置される。
【0020】
好ましくは、中空チューブであるシースがさらに設置され、シースは、回転不能な保護部分を形成することができることにより、上部が狭い人体の腔道内で、カテーテルを回転して引き抜くことによる人体の損傷を引き起こさない。シース内には、現像線が埋め込まれ、人体に入った場合にX線で現像することによりシースの位置及び状態を観測することができる。シースには、湾曲バルーンの到達位置を表示するために現像液を吐出するための孔が設置される。シースの底部には、カテーテルを収容するように一端がシースに接続され、他端が主軸に接続される円形の三方継手が設置され、当該円形の三方継手の側辺に現像液を注入する孔がある。
【0021】
さらに、滑らかな先端部及び楕円形の底部を有する中実ホースであるシース補助器がさらに設置され、シース補助器の作用は、その中実ホースの特性を利用して、人体の腔道にスムーズに入るとともに、シースを導入して、シースの直接的な挿入によるシースの縁部の鼻粘膜又は食道壁などの人体の腔道に対する擦り傷を回避することである。シース補助器は、シースを人体の腔道内に導入した後、スムーズに抽出することができる。さらに、カテーテルをシースに挿入する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の有益な効果は、以下のとおりである。本発明は、エアバッグ構造を使用し、エアバッグは、金属構造に比べて、リトラクションされる部分の人体組織をよりよく保護し、人体組織を刺しにくい。また、カテーテルをより柔軟にし、その外壁をより薄くすることができ、挿入時に人体がより快適であり、エアバッグが非順応性又は半順応性材料で製造されるため、その気圧による形状が制御可能であり、リトラクションをより正確で確実に実現することができ、エアバッグ構造を使用するため、気体注入前にその直径が小さく、柔軟度が高く、狭窄な腔道又は複雑な腔道に入るとともに、患者の快適さを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明のカテーテル部分の概略構成図である。
図2】本発明の主軸部分の概略図である。
図3】本発明の高圧編組チューブ及び二方弁の概略図である。
図4】本発明のヘッドバンドの概略図である。
図5】本発明のシースの概略図である。
図6】本発明のシースの底部の円形の三方継手の概略図である。
図7】本発明の一実施例の充填後の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面及び実施例を合わせて本発明をさらに詳しく説明する。
【0025】
まず、図1を参照して、図1は、本発明のカテーテル部分の概略構成図である。図1に示すように、本発明のカテーテル10の先端部には、位置決めバルーン11が設置され、カテーテル10の先端部に近接する部分には、湾曲バルーン12、湾曲バルーン12が設置され、位置決めバルーン11及び湾曲バルーン12は、カテーテル10の内部のチューブによりそれぞれカテーテルの後端部のそれぞれの注入口に接続される。
【0026】
カテーテル10の後端部には、固定ハンドル14が設置され、ハンドル部分に目盛り部分15がある。
【0027】
未使用状態で、位置決めバルーン11及び湾曲バルーン12は、カテーテル10に密着され、硬質管状のバルーン保護カバー16により収容される。
【0028】
使用状態で、バルーン保護カバー16を取り外し、流体を位置決めバルーン11の注入口から注入し、位置決めバルーン11を膨張させて食道に係止することにより、位置決め作用を果たす。次に、流体を湾曲バルーン12に注入することにより、湾曲バルーン12及びその内部のカテーテル10の一部が巻いて、食道を引き離して一方側へ偏移する。
【0029】
使用者は、ハンドル14により湾曲バルーン12の位置を調整することができ、ハンドル14の目盛り部分15により湾曲バルーン12の相対位置を推定することができる。
【0030】
前記カテーテル10は、捻じれが生じにくい材質を使用し、マルチルーメンチューブと編組チューブの組み合わせであってもよく、他の組み合わせであってもよく、カテーテル10の人体の腔道外に残す部分が回転する場合、人体内部の部分は、同時に一定の比率の角度だけ回転する。また、カテーテル10には、カテーテル10の挿入の深さをマーキングするための長さの目盛り部分15がある。
【0031】
本明細書に係る流体は、一般的に液体及び気体であり、該湾曲バルーン12は、流体が充填される場合に一方側へ湾曲する。一実施例では、注射器から注入口に流体を注入する。流体を注入した後にカテーテル及び弁を閉じることにより、湾曲バルーン12は、流体圧力を保持することができる。一般的に、湾曲バルーン12は、カテーテル10の外部に位置し、位置決めバルーン11及び湾曲バルーン12が位置するカテーテル部分に現像装置が設置され、X線でそれらの相対位置を表示することができる。それは、現像材料、例えば、タンタル、白金イリジウム合金、タングステンなどの材料であってもよい。他の位置決め装置、例えば、赤外線又は無線周波数タグなどであってもよい。いくつかの実施例では、カテーテル10に、X線で現像するための現像線がある。湾曲バルーン12内には、それぞれ湾曲バルーン12の近位端、中間部分、遠位端に位置し、湾曲バルーン12の相対位置及び最も遠いリトラクション箇所の相対位置を表示できる3つの現像装置が設置される。
【0032】
湾曲バルーン12の好ましい長さについて、湾曲バルーン12が半円を形成することにより食道をリトラクションするため、リトラクション距離は、半円の半径に直接関連する。すなわち、湾曲バルーン12が長いほど、そのリトラクション効果が顕著である。しかしながら、人の食道の構造の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間の距離は、11cm~15cmであり、身長に関連する。湾曲バルーン12が湾曲する場合に狭窄部に位置すれば、バルーンの湾曲が阻害されるため、バルーンの長さは、全ての人の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間の間隔より小さいべきであり、この前提条件下では長いほどよい。したがって、バルーンの長さは、好ましくは9~11cmである。
【0033】
湾曲バルーンは、形状が複数のセグメントに分けられるが、全体として内部が連通する湾曲可能な湾曲バルーンであり、単一のセグメントは、湾曲バルーンを構成することができない。湾曲バルーン12の好ましいセグメントの数について、湾曲バルーン12は、その形状の非対称性及び両側の膨張程度の違いにより湾曲する。したがって、セグメントの数が多いほど、非対称性が向上するため、湾曲バルーン12が湾曲しやすくなる。しかしながら、湾曲バルーン12が半円に湾曲する場合のリトラクション効果が最も高い。同様に半円に湾曲したセグメントの数が異なる2つの湾曲バルーン12について、湾曲バルーン12のセグメントの数がより多いと、湾曲した後の直径がより小さいため、湾曲バルーン12の剛性を低下させる。したがって、湾曲バルーン12は、半円に湾曲した後に一定の剛性を保証することを満たす必要があるため、湾曲バルーン12のセグメントの数は、好ましくは5~8である。
【0034】
次に、図2を参照して、図2は、本発明の主軸部分の概略図である。上記主軸20は、把持及び回転などの操作に用いられる。
【0035】
主軸20の後端部には、主軸20の内部を貫通するカテーテル10を係止可能な固定ねじ21が設置され、主軸の先端部には、主軸20の内部を貫通するカテーテル10を固定するか又は緩めて、カテーテル10の位置を調整するロックスライダ22が設置される。
【0036】
主軸20の先端部には、固定ヘッドバンドに接続されて、主軸20及びカテーテル10全体を頭部に対して固定する2つの接続バックル23が設置される。
【0037】
次に、図3を参照して、図3は、本発明の高圧編組チューブ及び二方弁の概略図である。
【0038】
高圧編組チューブ30は、一端が注射器31に接続され、他端がカテーテルの後端部の湾曲バルーン12又は位置決めバルーン11の注入口32に接続される。二方弁33は、中間にスイッチ34を有し、必要な場合に注入口32と高圧編組チューブ30との間に接続され、流体の注入を制御することにより、バルーン内の圧力を保持する。
【0039】
次に、図4を参照して、図4は、本発明のヘッドバンドの概略図である。ヘッドバンド40は、後頭部用の本体部分41を有し、本体部分41に後頭部の突起部分を収容する大きな孔42が設置され、より快適に装着できる。本体部分41に4つの接続ベルト43が設置され、接続ベルト43には、主軸20の先端部の2つの接続バックル23に係止接続可能な一連の接続孔44が設置される。
【0040】
次に、図5を参照して、図5は、本発明のシースの概略図である。シース50は、シースの到達位置を表示するために現像液を吐出するための孔51が設置された中空チューブである。また、カテーテル10は、人体の腔道内で回転されて引き抜かれる必要があるため、鼻腔などの人体の腔道内でこのように直接的に操作すれば、擦り傷のリスクを引き起こす。シースは、回転不能な保護部分を形成することができることにより、上部が狭い人体の腔道内で、カテーテルを回転して引き抜くことによる損傷を引き起こさない。
【0041】
図6を参照して、図6は、本発明のシースの底部の円形の三方継手の概略図である。シース50の底部には、カテーテル10を収容するように一端がシース53に接続され、他端が主軸54に接続される円形の三方継手52が設置され、当該円形の三方継手52の側辺に現像液を注入する孔55がある。
【0042】
シース補助器56は、滑らかな先端部57及び楕円形の底部58を有する中実ホースである。
【0043】
シース補助器56の作用は、その中実ホースの特性を利用して、人体の腔道にスムーズに入るとともに、シース50を導入して、シース50の直接的な挿入によるシースの縁部の鼻粘膜又は食道壁などの人体の腔道に対する擦り傷を回避することである。シース補助器56は、シース50を人体の腔道内に導入した後、スムーズに抽出することができる。さらに、カテーテル10をシース50に挿入する。
【0044】
図7は、本発明の一実施例の充填後の概略図である。図7において、カテーテル10の末端の位置決めバルーン11及び湾曲バルーン12は、充填状態にある。
【0045】
本発明は、さらに、動物体内に介入可能なシングルルーメン/マルチルーメンカテーテルチューブにより流体を注入した後に弧形の湾曲バルーン12に膨張できるリトラクション方法を提供し、上記湾曲バルーン12が上記カテーテル10の外部に位置し、上記カテーテル10が上記湾曲バルーン12の突出方向へ偏移することができ、操作ハンドル14及び他の関連部品を配置して併用することができる。手術中の組織リトラクションに用いられ、上記製品は、自然開口部介入又は開放手術介入によりリトラクション操作を完了する。手術は、様々な腹腔鏡手術、心血管手術、脳部手術、消化管手術、泌尿器疾患手術などを含むが、これらに限定されない。リトラクションされる組織は、胃腸、食道、気道、尿道、膣、膀胱などを含むが、これらに限定されない。リトラクションの目的は、特定の組織を保護し、特定の組織を移動して手術操作を容易にすることを含むが、これらに限定されない。
【0046】
人体の自然開口部又は手術の方式により、ハンドル14で制御してリトラクタの湾曲バルーン12のカテーテル10を体内に挿入する。映像機器の指示補助により、ハンドル14でカテーテル10の位置及び回転角度を調整し、主軸20上の固定ねじ21で位置及び角度を固定することができる。ハンドル14に付属する流体注入口32又は任意の他の通路を介して、湾曲バルーン12に対する流体注入を完了することができる。湾曲バルーン12は、流体注入後に膨張して湾曲状を呈し、カテーテル10のチューブの少なくとも一部も異なる程度の湾曲が発生し、最終的にカテーテルの湾曲部分は、組織のリトラクション又は変位の効果を達成することができる。
【0047】
心房細動アブレーションの合併症を例にしてカテーテルリトラクタの作用を説明する。心房細動は最も一般的な不整脈であり、心房細動高周波アブレーション治療は、近年、薬物治療及び通常外科手術よりも良好な解決手段として認められている。心房食道瘻の合併症の発生は、左心房と食道とが近接するという空間的な関係に起因する。食道が後縦隔に位置し、心膜斜洞のみで左心房の後壁と隔てられ、左心房の後壁と食道の前壁がいずれも薄いため、アブレーション手術における高温高エネルギーは食道に過度損傷を与えるおそれがある。心房食道瘻の合併症は極めて高い死亡率を有し、手術を安全にするために、食道をリトラクションして心臓から離れる必要があり、外部に湾曲バルーン12が設置されたカテーテル10の一部を、自然に形成するか又は手術により形成された患者の腔道内に挿入し、湾曲バルーン12の部分を、リトラクションする必要がある腔道位置に挿入し、カテーテル10に流体を注入してバルーンを膨張させ、湾曲バルーン12は、流体注入により膨張した後に一方側へ湾曲して、カテーテル10を湾曲させて患者の腔道を湾曲させ、リトラクション又は変位を実現する。
【0048】
使用時に、カテーテル10を鼻腔から食道に挿入し、末端の位置決めバルーン11が食道の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間に入る場合、末端の位置決めバルーン11を押し広げ、かつ第3の狭窄部の上面まで押し続け、次に、中間の湾曲バルーン12を押し広げて湾曲させて、食道を湾曲させる。使用過程では、ハンドル14を回転させることによりカテーテル10及びバルーンを回転させることで、食道の体内での偏移方向を変化させるにより、心臓アブレーションのアブレーション点を常に回避する。開孔は、食道湾曲部分がX線で現像可能となる現像剤を吐出するためにも用いることができる。
【0049】
具体的には、食道のリトラクションに用いられる場合、まず湾曲バルーン12及び位置決めバルーン11に気体を注入しない状態で、カテーテルを鼻腔又は口腔を通じて食道に挿入し、所定位置に到達した後に、カテーテル10及びハンドル14上のマークにより、湾曲の方向と心臓との相対位置を決定し、次に湾曲バルーン12に流体を注入してそれを押し広げ、湾曲バルーン12の剛性により食道をリトラクションし、水平断面上でリトラクションバルーンの位置を回転して調整する必要がある場合(心臓アブレーション中にアブレーション点を変更する場合)、ハンドル14によりカテーテル10全体を回転させて、湾曲バルーン12を回転させることにより、新しいアブレーション点から離れるように新しい方向に食道をリトラクションする。湾曲バルーン12は、食道のリトラクションに用いられる場合に、食道の第2の狭窄部と第3の狭窄部との間に位置し、位置決めバルーン11の膨張後の直径が狭窄部の食道内壁の直径より大きく、湾曲バルーン12の長さが10~15cmであり、作動気圧が2~8atmであり、リトラクション距離が2~4cmである。当業者は本発明の創作精神内で他の変形を行うこともでき、本発明の創作精神から派生するこれらの様々な変形は依然として本発明の保護範囲内に属すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7