(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】運転席用エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20240723BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
(21)【出願番号】P 2022576611
(86)(22)【出願日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2022000582
(87)【国際公開番号】W WO2022158334
(87)【国際公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021007465
(32)【優先日】2021-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】石田 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】クマール スミット
(72)【発明者】
【氏名】安部 和宏
(72)【発明者】
【氏名】下野 博賢
(72)【発明者】
【氏名】本間 圭祐
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/192496(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/145150(WO,A1)
【文献】特開2020-026263(JP,A)
【文献】特開2017-177928(JP,A)
【文献】特開2017-177927(JP,A)
【文献】特開2017-088115(JP,A)
【文献】特開2017-065332(JP,A)
【文献】特表2015-512831(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0050682(KR,A)
【文献】特開2020-055363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
B60R 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグクッション及び該エアバッグクッションを展開膨張するインフレータを備え、ステアリングホイールのダンパマスとなるエアバッグモジュールと、
上記エアバッグモジュールと上記ステアリングホイールとの間に、1つ以上設けられ、該ステアリングホイールの振動をダンピングするダンパユニットと、
上記エアバッグモジュールに、上記ダンパユニットと並列的に設けられ、かつ上記ステアリングホイールに係合され、該ステアリングホイールに該エアバッグモジュールをそれらの相対変位が可能に保持する係合機構と、
上記エアバッグモジュールに設けられ、上記ステアリングホイールに非係合状態の上記係合機構に変形が生じる外力を受け止めて、該係合機構を防護するための防護手段とを備えたことを特徴とする運転席用エアバッグ装置。
【請求項2】
前記係合機構は、前記エアバッグモジュールから前記ステアリングホイール側へ向けて弾性変形可能に延出形成され、延出先端側に該ステアリングホイールと係合するフックを含み、
前記防護手段は、外力で生じる上記係合機構の変形を弾性域に抑制するように、上記延出先端側とは反対側の延出根元側に、かつ該係合機構の近隣に、当該係合機構と並列的に設けられることを特徴とする請求項1に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項3】
前記防護手段は、前記エアバッグモジュールに、前記インフレータと前記係合機構との間の領域に位置するように設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項4】
前記防護手段は、前記領域に設けられ、前記係合機構の延出方向に沿う壁面を有する壁体であることを特徴とする請求項3に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項5】
前記エアバッグモジュールは、部品組み付け用のハウジングを備え、前記壁体は、上記ハウジングに一体的に形成されることを特徴とする請求項4に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項6】
前記防護手段は、前記領域に設けられ、前記係合機構から前記インフレータに向けて突出され、該インフレータに当接可能なリブであることを特徴とする請求項3に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項7】
前記防護手段は、前記領域に設けられ、前記係合機構が当接可能なように当該係合機構の延出方向と交差する方向の桁部と、該桁部を支持する脚部とから構成されることを特徴とする請求項3に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項8】
前記エアバッグモジュールは、意匠面を形成するパッドカバーを有し、前記防護手段は、上記パッドカバーに一体成形されて前記領域へ延在されることを特徴とする請求項3に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項9】
前記係合機構は、前記エアバッグモジュールから前記ステアリングホイール側へ向けて弾性変形可能に延出形成され、延出先端側に該ステアリングホイールと係合するフックを含み、
前記防護手段は、上記係合機構の近隣の少なくとも1箇所に、該係合機構と並列的に、当該係合機構の上記延出先端よりも上記ステアリングホイール側へ突出させて設けられることを特徴とする請求項1に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項10】
前記エアバッグモジュールは、意匠面を形成するパッドカバーを有し、前記防護手段は、上記パッドカバーに一体成形されることを特徴とする請求項9に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項11】
前記エアバッグモジュールはリテーナを備え、上記リテーナは、上記エアバッグモジュールに前記インフレータを取り付けるためのボルトを有し、前記防護手段は、上記ボルトに設けられるスリーブであることを特徴とする請求項9に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項12】
前記エアバッグモジュールはリテーナを備え、上記リテーナは、上記エアバッグモジュールに前記インフレータを取り付けるためのボルトを有し、前記防護手段は、上記ボルトが延長されて構成されることを特徴とする請求項9に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項13】
前記エアバッグモジュールは、部品組み付け用のハウジングを備え、前記防護手段は、上記ハウジングに設けられる板材であることを特徴とする請求項9に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項14】
前記防護手段は、前記係合機構を挟む配置で、該係合機構の両側に設けられることを特徴とする請求項9~13いずれかの項に記載の運転席用エアバッグ装置。
【請求項15】
前記防護手段は、前記係合機構の両側に位置させて2つ設けられ、これら防護手段の間には、前記係合機構が当接可能なように当該係合機構の延出方向と交差する方向の桁部が設けられることを特徴とする請求項14に記載の運転席用エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンパユニットと並列的に設けられ、ステアリングホイールに組み付けられる係合機構を対象として、ステアリングホイールへの組み付けに支障が生じることなく、組み付けが完了するまで当該係合機構を的確に防護することを可能とした運転席用エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールと、ダンパマスになるエアバッグモジュールとの間に、ステアリングホイールの振動をダンピングするダンパユニットを組み込んで、エアバッグモジュールをステアリングホイールに取り付ける技術に関して、特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1の「ステアリングホイール装置」では、ステアリングホイールは、ボス領域、ボス領域に設置されてホーンスイッチとしても機能するエアバッグモジュール、エアバッグモジュールのハウジングの裏面に複数設けられる孔部、孔部それぞれの内側にてその内縁に接合されるダンパ、棒状で一端が孔部それぞれに挿入され孔部に設置されたダンパに接合され、他端がボス領域に連結されるピンを備える。ダンパは、その弾性力によって、車両走行時にステアリングシャフトから伝わる振動をボス領域とエアバッグモジュールとの間で吸収し、さらに、ホーン操作時に乗員から解放されたエアバッグモジュールを乗員に押される前の初期位置に押し戻すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユニット形態のダンパは、連結用のピンが挿入される大きな外形寸法の筒状プロテクタを有するため、ダンパ一つ一つの大きさが大きい。従って、複数(少なくとも3つ)のダンパを設置するには、大きなスペースが必要であり、ダンパを設置するエアバッグモジュールが大型化していた。
【0006】
この問題に対し、取付兼用のユニット形態のダンパの数を減らし、その分、小型で簡素な形態の取り付け専用の係合機構を開発することが考えられる。
【0007】
取り付け専用の係合機構をエアバッグモジュールに設けておき、この係合機構を用いてステアリングホイールに対して組み付けを行うようにする。この場合、係合機構は、エアバッグモジュールのステアリングホイールへの装着が完了する前の段階では、エアバッグモジュールからステアリングホイールへ向けて突出する突起物となっている。
【0008】
係合機構は、エアバッグモジュールに設けられているだけでは、なんら防護されていない。
【0009】
係合機構は、防護されていなければ、例えば組み付け作業ミスやエアバッグモジュールの取り落としなど、組み付け前に意図しない外力が加わることで、その外力によって変形を生じてしまうことが考えられる。
【0010】
係合機構の変形によってエアバッグモジュールのステアリングホイールへの組み付けが不能となればよい。しかしながら、組み付けできてしまうと、設計通りのダンピング性能を発揮させることができないという課題があった。
【0011】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、ダンパユニットと並列的に設けられ、ステアリングホイールに組み付けられる係合機構を対象として、ステアリングホイールへの組み付けに支障が生じることなく、組み付けが完了するまで当該係合機構を的確に防護することを可能とした運転席用エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明にかかる運転席用エアバッグ装置は、エアバッグクッション及び該エアバッグクッションを展開膨張するインフレータを備え、ステアリングホイールのダンパマスとなるエアバッグモジュールと、上記エアバッグモジュールと上記ステアリングホイールとの間に、1つ以上設けられ、該ステアリングホイールの振動をダンピングするダンパユニットと、上記エアバッグモジュールに、上記ダンパユニットと並列的に設けられ、かつ上記ステアリングホイールに係合され、該ステアリングホイールに該エアバッグモジュールをそれらの相対変位が可能に保持する係合機構と、上記エアバッグモジュールに設けられ、上記ステアリングホイールに非係合状態の上記係合機構に変形が生じる外力を受け止めて、該係合機構を防護するための防護手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
前記係合機構は、前記エアバッグモジュールから前記ステアリングホイール側へ向けて弾性変形可能に延出形成され、延出先端側に該ステアリングホイールと係合するフックを含み、前記防護手段は、外力で生じる上記係合機構の変形を弾性域に抑制するように、上記延出先端側とは反対側の延出根元側に、かつ該係合機構の近隣に、当該係合機構と並列的に設けられることが望ましい。
【0014】
前記防護手段は、前記エアバッグモジュールに、前記インフレータと前記係合機構との間の領域に位置するように設けられることが好ましい。
【0015】
前記防護手段は、前記領域に設けられ、前記係合機構の延出方向に沿う壁面を有する壁体であることが望ましい。
【0016】
前記エアバッグモジュールは、部品組み付け用のハウジングを備え、前記壁体は、上記ハウジングに一体的に形成されることが好ましい。
【0017】
前記防護手段は、前記領域に設けられ、前記係合機構から前記インフレータに向けて突出され、該インフレータに当接可能なリブであることが望ましい。
【0018】
前記防護手段は、前記領域に設けられ、前記係合機構が当接可能なように当該係合機構の延出方向と交差する方向の桁部と、該桁部を支持する脚部とから構成されることが好ましい。
【0019】
前記エアバッグモジュールは、意匠面を形成するパッドカバーを有し、前記防護手段は、上記パッドカバーに一体成形されて前記領域へ延在されることが望ましい。
【0020】
前記係合機構は、前記エアバッグモジュールから前記ステアリングホイール側へ向けて弾性変形可能に延出形成され、延出先端側に該ステアリングホイールと係合するフックを含み、前記防護手段は、上記係合機構の近隣の少なくとも1箇所に、該係合機構と並列的に、当該係合機構の上記延出先端よりも上記ステアリングホイール側へ突出させて設けられることが好ましい。
【0021】
前記エアバッグモジュールは、意匠面を形成するパッドカバーを有し、前記防護手段は、上記パッドカバーに一体成形されることが望ましい。
【0022】
前記エアバッグモジュールはリテーナを備え、上記リテーナは、上記エアバッグモジュールに前記インフレータを取り付けるためのボルトを有し、前記防護手段は、上記ボルトに設けられるスリーブであることが好ましい。
【0023】
前記エアバッグモジュールはリテーナを備え、上記リテーナは、上記エアバッグモジュールに前記インフレータを取り付けるためのボルトを有し、前記防護手段は、上記ボルトが延長されて構成されることが望ましい。
【0024】
前記エアバッグモジュールは、部品組み付け用のハウジングを備え、前記防護手段は、上記ハウジングに設けられる板材であることが好ましい。
【0025】
前記防護手段は、前記係合機構を挟む配置で、該係合機構の両側に設けられることが望ましい。
【0026】
前記防護手段は、前記係合機構の両側に位置させて2つ設けられ、これら防護手段の間には、前記係合機構が当接可能なように当該係合機構の延出方向と交差する方向の桁部が設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる運転席用エアバッグ装置にあっては、ダンパユニットと並列的に設けられ、ステアリングホイールに組み付けられる係合機構を対象として、ステアリングホイールへの組み付けに支障が生じることなく、組み付けが完了するまで当該係合機構を的確に防護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明にかかる運転席用エアバッグ装置が適用されるステアリングホイールの概要を例示した全体斜視図である。
【
図2】
図1に示したステアリングホイールの概要を例示した側断面図である。
【
図3】
図1のステアリングホイールに搭載されるエアバッグモジュールを、当該エアバッグモジュールに組み込まれるダンパユニット及び係合機構と共に示した分解斜視図である。
【
図4】
図3に示したエアバッグモジュールの斜視図である。
【
図5】
図4に示したエアバッグモジュールのダンパユニット及び係合機構(防護手段は図示省略)周辺を示す側面図である。
【
図6】
図4に示したエアバッグモジュールの係合機構単体の斜視図である。
【
図7】
図4に示したエアバッグモジュールの係合機構をステアリングホイールに係合して組み付けた様子を示す概略側面図である。
【
図8】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる防護手段の第1の実施例を説明する斜視図である。
【
図9】
図8に示した防護手段の作用を説明する斜視図である。
【
図12】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる防護手段の第2の実施例を説明する斜視図である。
【
図13】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる防護手段の第3の実施例を説明する斜視図である。
【
図14】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる防護手段の第4の実施例を説明する斜視図である。
【
図15】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる防護手段の第5の実施例を説明する斜視図である。
【
図17】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる防護手段の第6の実施例を説明する斜視図である。
【
図19】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる防護手段の第7の実施例を説明する斜視図である。
【
図21】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる防護手段の第8の実施例を説明する斜視図である。
【
図23】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる他の防護手段の第1の実施例を説明する斜視図である。
【
図25】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる他の防護手段の第2の実施例を説明する斜視図である。
【
図27】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる他の防護手段の第3の実施例を説明する斜視図である。
【
図29】
図4に示したエアバッグモジュールに備えられる他の防護手段の第4の実施例を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明にかかる運転席用エアバッグ装置の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0030】
図1及び
図2は、本発明にかかる運転席用エアバッグ装置が適用されるステアリングホイールの概要を例示した図である。
図3は、
図1のステアリングホイールに搭載されるエアバッグモジュールを、当該エアバッグモジュールに組み込まれるダンパユニット及び係合機構と共に示した分解斜視図である。
図4は、
図3のエアバッグモジュールの斜視図である。
図5は、ダンパユニット及び係合機構(防護手段は図示省略)周辺の側面図である。
図6は、エアバッグモジュールの係合機構単体の斜視図である。
図7は、エアバッグモジュールの係合機構をステアリングホイールに係合して組み付けた様子を示す概略側面図である。
【0031】
図1ではステアリングホイール1全体の斜視図を、
図2ではステアリングホイールの側断面図を例示している。
図1を含む以下の図面では、車両に取り付けられたステアリングホイール1の操舵位置が中立位置となっている場合を想定し、各方向を例示している。例えば、Z軸は、不図示のステアリングコラム(ステアリングシャフト)の車両の前輪方向を下、ステアリングホイール1の方向を上としている。
【0032】
Z軸に直交する平面においてアナログ12時間時計の12時の位置を車両前方側として、9時方向(左方向)から3時方向(右方向)をX軸、6時方向(後方向)から12時方向(前方向)をY軸としている。その他、運転者側から見た側を表側とし、その逆側を裏側として記載する。
【0033】
ステアリングホイール1は、車両の運転席に設置されている。ステアリングホイール1は、不図示のステアリングコラムの内部を通っているステアリングシャフトと連結され、運転者の操作力をステアリングギア等へ伝達する。
【0034】
ステアリングホイール1の中央には、緊急時にフロントエアバッグとして機能するエアバッグモジュール2が取り付けられている。このエアバッグモジュール2は、説明は省略するが、通常時においては、ホーンを鳴らす際に運転者が押すホーンスイッチとしても機能する。
【0035】
エアバッグモジュール2の運転者側は、意匠面を形成する樹脂製のパッドカバー3で覆われている。パッドカバー3の奥には皿状のハウジング4が備えられている。パッドカバー3の内部には、エアバッグクッション5が折りたたまれて収容される。エアバッグクッション5は、緊急時に展開膨張される。ハウジング4には、インフレータ6が取り付けられている。インフレータ6は、エアバッグクッション5に収容して設けられている。
【0036】
緊急時に車両のセンサから信号が送られると、インフレータ6からエアバッグクッション5へインフレータガスが供給される。インフレータガスが供給されたエアバッグクッション5は、パッドカバー3を開裂して車室空間へと展開膨張し、運転者を拘束する。このように、エアバッグモジュール2は、エアバッグクッション5及びエアバッグクッション5を展開膨張するインフレータ6を備える。
【0037】
以下の説明では、各種の部材について、好ましい材質を、例えば金属製や合成樹脂製などとして、例示している。しかしながら、説明中で例示している材質は、単なる一例に過ぎない。各種の部材は、例示されている材質以外の、その他の材質であっても良いことはもちろんである。
【0038】
ステアリングホイール1の基礎部分は、金属製の芯金部材7で構成されている。芯金部材7はおおまかに、中央のボス領域8,運転者が把持する円形のリム9,ボス領域8とリム9をつなぐスポーク10を含んで構成されている。ボス領域8には、ステアリングシャフトが連結される。
【0039】
本実施形態にかかる運転席用エアバッグ装置のエアバッグモジュール2には、フロントエアバッグとしての機能のほかに、上述したようにホーンスイッチとしての機能、さらには振動を減衰するモジュールダンパ機構としての機能が備わっている。
【0040】
まず、これらホーンスイッチとしての機能およびモジュールダンパ機構を実現している構成要素について、
図3~
図5を参照して略述する。
【0041】
エアバッグモジュール2は、以下のように構成される。エアバッグモジュール2は、金属製のハウジング4を備える。ハウジング4は、インフレータ取付面4aとなる底面周囲に周壁4bを形成した皿状に形成される。ハウジング4は、中央にインフレータ挿入用孔部4cを、その両側に2つのダンパユニット取付用貫通穴4dを有する。2つの貫通穴4dには、2つのダンパユニット11が装着される。ダンパユニット11は、スリーブ状のプロテクタ11aで覆って防護される。ダンパユニット11には、スライド可能に金属製のピン12が設けられる。ピン12は、ダンパユニット11に、ハウジング4からボス領域8に向けて挿入される。ハウジング4には、インフレータ6が取り付けられる。インフレータ6は、ハウジング4の周壁4bの反対側(芯金部材7側)からインフレータ挿入用孔部4cに挿入される。インフレータ6の外周フランジ6aは、ハウジング4のインフレータ取付面4aに当接される。ハウジング4内には、金属製のアタッチメントプレート13が収納される。アタッチメントプレート13は、ハウジング4の周壁4b側からピン12に面して設置される。エアバッグモジュール2は、金属製のリテーナリング14を備える。リテーナリング14は、ボルト14aを有する。リテーナリング14は、ハウジング4の周壁4b側からアタッチメントプレート13に重ね合わされる。リテーナリング14は、アタッチメントプレート13、ハウジング4のインフレータ取付面4a、並びにインフレータ6の外周フランジ6aを貫通したボルト14aがナット15と締結されて、インフレータ6等をハウジング4に固定する。エアバッグモジュール2はさらに、合成樹脂などの樹脂製のホーンカバー3を備える。ホーンカバー3は、ハウジング4に、インフレータ取付面4aの底面とは反対側からインフレータ6等を覆って設けられる。ホーンカバー3は、開口周縁部の複数の係止爪片3aでアタッチメントプレート13のスリット13aに係止される。ホーンカバー3は、内部にエアバッグクッション5を収容する。エアバッグモジュール2は、以上の部材を含んで構成される。
【0042】
ハウジング4のインフレータ取付面(底面)4aから突出するピン12には、これを包囲してホーンスプリング(コイルスプリング)17が設けられる。
【0043】
ハウジング4には、ダンパユニット11に挿入されるピン12及びピン12を包囲するホーンスプリング17と並列的に、係合機構18が1つ設けられる。係合機構18については、後述する。
【0044】
芯金部材7とエアバッグモジュール2(ハウジング4)との間には、
図3~
図5に示すように、弾性支持部材である2つの金属製コイルスプリング19が設けられる。コイルスプリング19は、係合機構18をX軸方向に沿う両側から挟んで配置される。
【0045】
エアバッグモジュール2には、
図3及び
図4に示すように、ハウジング4に1つ以上(図中、2つ)のダンパユニット11が配設される。ハウジング4には、係合機構18が設けられる。ダンパユニット11及び係合機構18は、エアバッグモジュール2(ハウジング4)を芯金部材7に弾性的に取り付ける機能部品である。
【0046】
2つのダンパユニット11は、
図4に示すように、ステアリングホイール1の中立位置を基準として、エアバッグモジュール2(ハウジング4)の上下方向(Y軸方向)については、上下方向中央に配置される。
【0047】
ダンパユニット11は、ステアリングホイール1の中立位置を基準として、エアバッグモジュール2(ハウジング4)の左右方向(X軸方向)については、左右両側に寄せて配置される。好ましくは、2つのダンパユニット11は、エアバッグモジュール2(ハウジング4)の左右方向における中心軸から等距離に配置される。
【0048】
ダンパユニット11からは棒状のピン12がZ軸方向に芯金部材7のボス領域8に向かって突出している(
図2及び
図4参照)。このピン12が芯金部材7に固定されることによって、ステアリングホイール1とエアバッグモジュール2とが連結される。エアバッグモジュール2とステアリングホイール1との間に、ステアリングホイール1の振動を抑制するダンパユニット11が配置される。
【0049】
図4に示すように、ピン12は、コイル状のホーンスプリング17に通されて、芯金部材7へと挿入される。ホーンスプリング17は、エアバッグモジュール2と芯金部材7との間に設置され、これらの間に間隙を確保する。ホーン操作の際に運転者による押圧操作(
図2及び
図4中、矢印B参照)から解放されると、ホーンスプリング17は、エアバッグモジュール2を芯金部材7から離間させて、エアバッグモジュール2を元の位置に戻す。
【0050】
ダンパユニット11は、略述すると、振動をダンピングするための環体状の弾性体と、弾性体を覆って保持するスリーブ状の合成樹脂製プロテクタ11aと、弾性体の内方にスライド自在に挿通されたピン12とから構成される。
【0051】
プロテクタ11aは、エアバッグモジュール2を構成するハウジング4に形成された貫通穴4dに取り付けられる。これにより、ダンパユニット11は、エアバッグモジュール2に固定される。
【0052】
エアバッグモジュール2は、ステアリングホイール1に対し、弾性体を備えるダンパユニット11によって弾性支持された状態である。エアバッグモジュール2は、ピン12を介して、ステアリングホイール1側へスライド自在に設けられる。
【0053】
ステアリングホイール1の振動は、ダンパユニット11に、ピン12を介して伝達される。伝達された振動は、エアバッグモジュール2をダンパマスとするダンパユニット11において減衰される。
【0054】
ホーン機能について説明する。エアバッグモジュール2をステアリングホイール1に向けて押圧して進出させると、エアバッグモジュール2に設けたダンパユニット11がピン12に対してスライド移動する。このスライド移動で、ホーンスプリング17が圧縮される。これにより、エアバッグモジュール2側及びステアリングホイール1側それぞれに設けた接点(図示せず)が電気的に導通され、ホーンが鳴動する。
【0055】
エアバッグモジュール2の押圧を解除すると、ホーンスプリング17が弾性復元する。ホーンスプリング17が弾性復元すると、エアバッグモジュール2が後退する。これにより、接点が離れて、鳴動が停止される。
【0056】
図2~
図4に示すように、ステアリングホイール1の芯金部材7と、ダンパマスとなるエアバッグモジュール2のハウジング4との間には、ステアリングホイール1とエアバッグモジュール2とをそれらの相対変位が可能に保持する係合機構18が設けられる。係合機構18は、ダンパユニット11と並列的に設けられる。
【0057】
本実施形態では、係合機構18は、エアバッグモジュール2に接合して設けられる。係合機構18は、ステアリングホイール1に係合される。係合機構18は、係合状態で、これらエアバッグモジュール2とステアリングホイール1の相対変位を許容する。
【0058】
相対変位とは詳細には、ステアリングホイール1の振動及びダンパユニット11によるダンピングによって、ステアリングホイール1及びエアバッグモジュール2相互間に生じる離隔距離の変動を言う。係合機構18は、この距離の変動を許容する。
【0059】
係合機構18は、
図4に示すように、ステアリングホイール1の中立位置を基準として、ステアリングホイール1の上下方向(Y軸方向)下方側に寄せて配置される。ダンパユニット11との位置関係では、係合機構18は、2つのダンパユニット11の間の中央であって、これらダンパユニット11よりも下方(6時側)に寄せて配置される。
【0060】
従って、ダンパユニット11及び係合機構18は、エアバッグモジュール2に対し、逆さまにした二等辺三角形の各頂点に配置して設けられる。また、X軸方向に沿う係合機構18の左右両側には、上述した2つのコイルスプリング19が配設される。
【0061】
係合機構18は、
図6に示すように、エアバッグモジュール2のハウジング4からステアリングホイール1側へ向けて延出される板バネ(金属製もしくは合成樹脂製)20を主体とする。係合機構18は、板バネ20の延出先端側に、ステアリングホイール1と係合するフックである弾性ピース21が取り付けられて構成される。
【0062】
係合機構18は、弾性変形可能な板バネ20を主体とするので、エアバッグモジュール2をダンパマスとしてステアリングホイール1の振動を減衰するダンパユニット11のダンピング作用を妨げることがない。
【0063】
係合機構18の板バネ20は、スチールやステンレスなどの金属製であってもよいし、合成樹脂材で樹脂成形により形成されていてもよい。合成樹脂材としては、66ナイロンやガラス配合66ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)が好ましい。
【0064】
係合機構18は、
図6に図示した状態で、上下長さ方向(Z軸方向)に沿って、延出先端側とは反対側の延出根元側が接合部18aとなる。接合部18aは、リベットなどでエアバッグモジュール2のハウジング4と接合される。他方、係合機構18は、延出先端側がステアリングホイール1に対する係合部18bとされる。
【0065】
係合部18bには、フックとなる弾性ピース21が装着される。この弾性ピース21は、ステアリングホイール1の芯金部材7に形成される係止部22(
図7参照)に係合される。
【0066】
詳細には
図6に示すように、係合機構18の接合部18aには、リベットを打ち込むための小孔24が形成される。この接合部18aは、ハウジング4の周壁4bに接合される。
【0067】
係合部18bは、板バネ20の板面の幅方向両縁に一対形成される。係合部18bは、板バネ20の板厚方向のいずれか一方に向けて折り曲げた形態で形成される。
【0068】
接合部18aと係合部18bとの間には、窓部25が形成される。弾性ピース21は、窓部25を介して、係合部18bの外皮となるように、係合部18bを取り巻いて設けられる。
【0069】
係合機構18は、板バネ20の弾性により、係合部18bと接合部18aの間で、復元自在に板曲げの変形が可能となっている。この弾性変形により、ステアリングホイール1の係止部22に対し、係合機構18の係合部18bを、円滑に係合させることができる。
【0070】
弾性ピース21は、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、シリコンゴム、ニトリルゴム(NBR)などのゴム材や、66ナイロン、ガラス配合66ナイロン、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)などの合成樹脂材などで形成される。
【0071】
係合機構18の係止部22への係合作用について説明する。係合機構18は、ハウジング4に接合された接合部18aに対し、板バネ20が弾性的に曲げ変形可能である。
【0072】
図7に示されているように、ステアリングホイール1の係止部22は、斜面22aと、平坦面22bとから構成される。斜面22aは、エアバッグモジュール2側からステアリングホイール1側へ次第に迫り出すように形成される。平坦面22bは、斜面22aで遮って斜面22aの裏側に、ステアリングホイール1側に面して形成される。
【0073】
エアバッグモジュール2をステアリングホイール1の芯金部材7へ向けて押し付けると、まず、係合機構18の係合部18bの弾性ピース21が係止部22の斜面22aにスライド自在に当接される。
【0074】
エアバッグモジュール2をさらに押し付けていくと、弾性ピース21が斜面22aをスライドする。これにより、板バネ20が曲げ変形し始める。
【0075】
そして、さらにエアバッグモジュール2を芯金部材7側へ押し付けると、弾性ピース21が斜面22aを移動し乗り越える。弾性ピース21が斜面22aを乗り越えると、当該斜面22aによって曲げ変形が生じていた板バネ20が、弾性復元する。
【0076】
板バネ20の弾性復元力で、弾性ピース21は平坦面22bへと移行する。平坦面22bへ移行した弾性ピース21は、斜面22aから離れ、当該平坦面22bの奥へ向かってスライドする。これにより、係合機構18の係合部18bがステアリングホイール1の係止部22に係合される。
【0077】
本実施形態では、係止部22の斜面22aがボス領域8へ向けて形成されている。このため、係合機構18の板曲げ変形は、接合部18aが接合されたハウジング4の周壁4bとインフレータ6との間で、インフレータ6に向かって生じる。
【0078】
後述する防護手段30は、ハウジング4の周壁4bに固定された係合機構18とインフレータ6との間で生じるとして規定された、板バネ20の変形(係合機構18の変形)を防護するようになっている。
【0079】
あるいは、防護手段31は、係合機構18に外力が作用すること自体を妨げることにより、当該係合機構18を防護するようになっている。
【0080】
係合機構18は、ステアリングホイール1側の係止部22に対し、エアバッグモジュール2側の弾性ピース21のみが弾性的に接触して係合する。このため、板バネ20の常時の弾性変形が妨げられることはない。
【0081】
係合機構18は、板バネ20が主体であって、コンパクトであり、エアバッグモジュール2を小型化することができる。
【0082】
また、板バネ20の弾性的な曲げ変形により、係合機構18のステアリングホイール1への取り付けを行うことができる。
【0083】
また、係合機構18は、エアバッグモジュール2の上下方向下方側(Y軸方向の6時側)に寄せて配置されるので、エアバッグモジュール2の上下方向の寸法を小さくすることができる。
【0084】
係合機構18には、ステアリングホイール1の係止部22に弾性的に接触可能なゴム製もしくは合成樹脂製の弾性ピース21が設けられる。係合機構18を、弾性ピース21を介して、係止部22に係合させるようにしたので、弾性ピース21の硬度や、当該弾性ピース21の係止部22との接触代によって、係合機構18の耐久性を高めることができる。
【0085】
係合機構18と並列的にコイルスプリング19を設けている。これにより、コイルスプリング19は、係合機構18によるステアリングホイール1とエアバッグモジュール2の連結箇所及びその周辺を、安定して支持することができる。
【0086】
本実施形態にかかる運転席用エアバッグ装置の係合機構18は、以下に説明する各種構造の防護手段30,31により、防護される。具体的には、防護手段30,31は、係合機構18がステアリングホイール1に係合されていないとき(非係合状態)に、係合機構18に変形が生じる外力を受け止める。これによって、係合機構18が防護される。
【0087】
係合機構18は、エアバッグモジュール2のステアリングホイール1への装着が完了する前の段階(非係合状態)では、
図5等に示しているように、エアバッグモジュール2からステアリングホイール1へ向けて突出する突起物となっている。
図5では、防護手段30,31は図示を省略している。
【0088】
係合機構18は、エアバッグモジュール2に設けられているだけでは、すなわちステアリングホイール1と係合されていないときは、外力によって変形してしまうおそれがある。例えば組み付け作業ミスやエアバッグモジュール2の取り落としなど、組み付け前に意図しない外力が係合機構18に加わると、その外力によって係合機構18に変形を生じてしまうおそれがある。
【0089】
防護手段30,31は、係合機構18のこのような変形を抑制または阻止するために備えられる。
【0090】
<第1構成・第1の実施例>
まず、防護手段の第1構成(防護手段30)について説明する。
図4及び
図7~
図11には、第1構成の防護手段30の第1の実施例が示されている。
【0091】
防護手段30は、上述した外力などで生じる係合機構18の変形を弾性域に抑制するように、係合部18bとは反対側の延出根元側である接合部18a側に設けられる。また、防護手段30は、係合機構18の近隣に係合機構18と並列的に設けられる。
【0092】
「防護手段30が係合機構18の延出根元側(接合部18a側)に設けられる」とは、防護手段30が、弾性ピース21の係止部22への係合に必要とされる弾性域における所定の弾性変形を板バネ20に許容することが望ましいことを意味する。防護手段30を延出先端側(弾性ピース21側)に設けると、板バネ20の所定の弾性変形の確保がし難いからである。
【0093】
「防護手段30が係合機構18と並列的に設けられる」とは、防護手段30は、弾性ピース21を係止部22に係止させる曲げ変形で板バネ20が近づいてくる側に、板バネ20の曲げ変形を妨げないように、係合機構18と並べて設けることが望ましいことを意味する。
【0094】
「係合機構18の近隣に設けられる」とは、係合機構18と当該係合機構18が弾性変形される側に設けられているインフレータ6との間の領域であることが望ましいことを意味する。
【0095】
第1の実施例を図に従って具体的に説明すると、部品組み付け用となる上記金属製のハウジング4には、防護手段30として、一体的に金属製の壁体40が形成される。
【0096】
壁体40は、係合機構18とインフレータ6との間の上記領域に位置するように設けられる。
【0097】
壁体40は、その壁面が係合機構18の板バネ20と向かい合うように配置される。また、壁体40は、当該係合機構18の延出方向(エアバッグモジュール2側からステアリングホイール1側へ向かう方向)に沿うように配置される。
【0098】
以後の説明で、上下・左右・前後の向きは、説明の便宜のためであって、エアバッグモジュール2の姿勢によっては、当該向きに限られることはない。
【0099】
防護手段30である壁体40は、ハウジング4のインフレータ取付面4aを折り曲げるなどして、インフレータ取付面4aから係合機構18の延出方向へ立ち上げて形成される。
【0100】
本実施形態では、壁体40には、折り曲げ部41と一対の延出部42とが備えられる。折り曲げ部41は、壁体40の上端部分を係合機構18へ向けて前方に折り曲げた部分である。一対の延出部42は、板バネ20を板幅方向左右から挟み得る配置で、弾性ピース21の直下に位置させた部分である。すなわち、壁体40の上端部分は、コ字状に形成される。
【0101】
各延出部42と板バネ20の板幅方向側縁との間には、弾性変形する板バネ20が延出部42と干渉しないように、左右方向に所定の隙間が設定される。
【0102】
各延出部42は、外力を受けて板バネ20が弾性変形されるとき、弾性域の所定の弾性変形までは許容する。各延出部42には、板バネのそれ以上の弾性変形が生じたときに、弾性ピース21の下端が当接する。これにより、壁体40は、係合機構18の所定以上の変形を抑制し、当接した以降は、外力を受け止めるようになっている。
【0103】
壁体40の左右両縁には、各延出部42に亘って、外力を受け止める強度を確保するための折り返し43が形成されている。
【0104】
また、板バネ20の所定の弾性変形を許容するために、壁体40の折り曲げ部41と板バネ20の板面との間には、前後方向に所定の隙間が設定される。
【0105】
第1の実施例では、意図しない外力の作用で係合機構18がインフレータ6側に向けて弾性変形される際、板バネ20は左右一対の延出部42で左右方向への振れ動きが阻止されながら、壁体40のコ字状の内方で弾性変形し、弾性変形が所定以内であれば、外力が消失することで弾性復元する(係合作用の範囲)。
【0106】
他方、弾性変形が所定を超える場合には、弾性ピース21の下端が延出部42の上に着地する。これにより、それ以上の弾性変形が妨げられると共に、板バネ20を変形させようとする外力が、延出部42を含む壁体40(ハウジング4)によって、受け止められる。外力が消失すれば、係合機構18は弾性復元される。
【0107】
<第1構成・第2の実施例>
第2の実施例の防護手段30は、
図12に示すように、第1の実施形態の壁体40と同じ構成で、同一の作用を奏する。従って、第2の実施例の壁体45も、係合機構18とインフレータ6との間の上記領域に位置するように設けられる。
【0108】
第2の実施例の壁体45は、ハウジング4に折曲げなどで一体的に設けられる第1の実施例の壁体40に代えて、インフレータ6に、一体的に金属製の壁体45を設けるようにしたものである。壁体45は、インフレータ6の外周フランジ6aの端縁に、当該外周フランジ6aの折曲げ、あるいは別途製作したピースの溶接接合などにより設けられる。
【0109】
<第1構成・第3の実施例>
第3の実施例の防護手段30は、
図13に示すように、係合機構18にインフレータ6側から重ねる配置で、追加の板バネ製の金属製壁体50を設けたものである。従って、第3の実施例の壁体50も、係合機構18とインフレータ6との間の上記領域に位置するように設けられる。
【0110】
壁体50は、上記第1の実施例の壁体40の上端部分と同様な高さ位置まで延出させて設けられる。
【0111】
この弾性変形可能な壁体50は、延出根元側がハウジング4の周壁4bにリベットにより一体的に接合される。壁体50は、係合機構18の接合部18aと一括してハウジング4に接合される。
【0112】
壁体50は、係止部22への係合の際に必要とされる係合機構18の所定の弾性変形を許容するために、係合機構18に対し所定の隙間を空けて離隔配置される。壁体50は、所定の弾性変形を超えたときに、板バネ20に重なり合って、板バネ20のそれ以上の弾性変形を抑制する。
【0113】
第3の実施例では、意図しない外力の作用で係合機構18がインフレータ6側に向けて弾性変形される際、弾性変形が所定以内であれば、係合機構18と壁体50は重なり合わず、係合機構18は、外力が消失することで弾性復元する(係合作用の範囲)。
【0114】
他方、弾性変形が所定を超える場合には、板バネ20が、弾性を有する壁体50に重なり合う。これにより、それ以上の弾性変形が抑制されると共に、板バネ20を変形させようとする外力が、壁体50によって受け止められる。外力が消失すれば、壁体50も係合機構18も弾性復元される。
【0115】
図示例では、壁体50の上端部分に、左右一対の突出部51を突出形成した場合が示されている。これら突出部51は、係合機構18の窓部25周りで板バネ20を受け止めるように構成される。これらの突出部51は、変形される板バネ20を、接合部18aから係合部18b側の窓部25にまで亘って広い範囲で、壁体50に弾性支持させる。これによって、板バネ20に作用する外力を十分に受け止めるようになっている。
【0116】
<第1構成・第4の実施例>
第4の実施例の防護手段30は、
図14に示すように、係合機構18からインフレータ6に向けて当該インフレータ6に当接可能に突出させて、板状やブロック状のリブ55を設けたものである。従って、第4の実施例のリブ55も、係合機構18とインフレータ6との間の上記領域に位置するように設けられる。
【0117】
板バネ20の弾性変形は、係合機構18の接合部18a側よりも、係合部18b側で大きな変位が現れる。リブ55は、係合機構18の係合部18b側に寄せて設けられる。リブ55は、左右方向が幅方向であっても、上下方向が幅方向であってもよい。
【0118】
リブ55は、係合機構18に、当該係合機構18の部分的な折り曲げあるいは別途製作したピースの接合などにより、一体的に設けられる。
【0119】
リブ55の突出先端56は、係止部22への係合の際に必要とされる係合機構18の所定の弾性変形を許容するために、インフレータ6に対し所定の隙間を空けて配置される。リブ55は、所定の弾性変形を超えたときにインフレータ6に当接されて、板バネ20のそれ以上の弾性変形を抑制する。
【0120】
第4の実施例では、意図しない外力の作用で係合機構18がインフレータ6側に向けて弾性変形される際、弾性変形が所定以内であれば、リブ55がインフレータ6に当接することなく、係合機構18は外力が消失することで弾性復元する(係合作用の範囲)。
【0121】
他方、弾性変形が所定を超える場合には、リブ55がインフレータ6に当接し、それ以上の弾性変形が抑制されると共に、板バネ20を変形させようとする外力が、リブ55を介して、インフレータ6によって受け止められる。外力が消失すれば、係合機構18は弾性復元される。
【0122】
<第1構成・第5の実施例>
第5の実施例の防護手段30では、
図15及び
図16に示すように、リテーナリング14の左右の2つのボルト14aの間に、係合機構18が当接可能なように、係合機構18の延出方向と交差する左右方向に向けて、金属製のバー60を設けている。この防護手段30は、バー60を桁部とし、2つのボルト14aを、バー60を支持する脚部として、門形の橋桁構造に構成されている。
【0123】
第5の実施例のバー60ないし橋桁構造も、リテーナリング14のボルト14aが係合機構18とインフレータ6との間にあるので、これら係合機構18とインフレータ6との間の上記領域に位置するように設けられる。
【0124】
バー60は、各ボルト14aに、溶接接合などにより一体的に固定して設けられる。
【0125】
バー60は、係止部22への係合の際に必要とされる係合機構18の所定の弾性変形を許容するために、係合機構18に対し所定の隙間を空けて配置される。バー60は、所定の弾性変形を超えたときに係合機構18が当接して、板バネ20のそれ以上の弾性変形を抑制する。
【0126】
第5の実施例では、意図しない外力の作用で係合機構18がインフレータ6側に向けて弾性変形される際、弾性変形が所定以内であれば、バー60に当接することなく、係合機構18は外力が消失することで弾性復元する(係合作用の範囲)。
【0127】
他方、弾性変形が所定を超える場合には、係合機構18がバー60に当接し、それ以上の弾性変形が抑制されると共に、板バネ20を変形させようとする外力が、バー60やボルト14aによって受け止められる。外力が消失すれば、係合機構18は弾性復元される。
【0128】
<第1構成・第6の実施例>
第6の実施例の防護手段30は、
図17及び
図18に示すように、ボルト14aとバー60で門形の橋桁構造を構成した第5の実施例に代えて、別途製作した門形の橋桁形態の金属製板状ブラケット65で構成される。
【0129】
ブラケット65は、左右一対の脚部66と、脚部66間に、係合機構18が当接可能なように、係合機構18の延出方向と交差する左右方向に向けて設けられた桁部67とから橋桁構造で構成される。脚部66は、係合機構18とインフレータ6との間にある左右の2つのボルト14aに、ナット15で、インフレータ6と一体に共締めされ、ハウジング4のインフレータ取付面4aに固定される。
【0130】
従って、第6の実施例のブラケット65も、係合機構18とインフレータ6との間の上記領域に位置するように設けられる。
【0131】
ブラケット65の桁部67は、係止部22への係合の際に必要とされる係合機構18の所定の弾性変形を許容するために、係合機構18に対し所定の隙間を空けて配置される。桁部67は、所定の弾性変形を超えたときに係合機構18が当接して、板バネ20のそれ以上の弾性変形を抑制する。
【0132】
第6の実施例では、意図しない外力の作用で係合機構18がインフレータ6側に向けて弾性変形される際、弾性変形が所定以内であれば、ブラケット65に当接することなく、係合機構18は外力が消失することで弾性復元する(係合作用の範囲)。
【0133】
他方、弾性変形が所定を超える場合には、係合機構18がブラケット65の桁部67に当接し、それ以上の弾性変形が抑制されると共に、板バネ20を変形させようとする外力が、ブラケット65やハウジング4によって受け止められる。外力が消失すれば、係合機構18は弾性復元される。
【0134】
<第1構成・第7の実施例>
第7の実施例の防護手段は、
図19及び
図20に示すように、ハウジング4にボルト14a・ナット15で固定される板状のブラケット65を用いる第6の実施例に代えて、ハウジング4に接合して設けられる金属製板状ブラケット70で構成される。
【0135】
ブラケット70は、ハウジング4の周壁4aにリベット等で一体的に接合される。ブラケット70は、係合機構18の延出方向に延びる左右一対の脚部71と、これら脚部71の上端からインフレータ6側に向けて後方へ折り返した形態で形成され、係合機構18を上記領域で取り囲むコ字状の桁部72とから構成される。
【0136】
桁部72は、第5及び第6の実施例と同様に、脚部71間に、係合機構18の延出方向と交差する左右方向に向けて、係合機構18が当接可能に位置される。
【0137】
従って、第7の実施例のブラケット70では、コ字状の桁部72が係合機構18とインフレータ6との間の上記領域に位置するように設けられる。
【0138】
ブラケット70の桁部72は、係止部22への係合の際に必要とされる係合機構18の所定の弾性変形を許容するために、係合機構18に対し所定の隙間を空けて桁部72は、所定の弾性変形を超えたときに係合機構18が当接して、板バネ20のそれ以上の弾性変形を抑制する。
【0139】
第7の実施例では、意図しない外力の作用で係合機構18がインフレータ6側に向けて弾性変形される際、弾性変形が所定以内であれば、ブラケット70に当接することなく、係合機構18は外力が消失することで弾性復元する(係合作用の範囲)。
【0140】
他方、弾性変形が所定を超える場合には、係合機構18がブラケット70の桁部72に当接し、それ以上の弾性変形が抑制されると共に、板バネ20を変形させようとする外力が、ブラケット70によって受け止められる。外力が消失すれば、係合機構18は弾性復元される。
【0141】
<第1構成・第8の実施例>
第8の実施例の防護手段30は、ハウジング4に壁体40を形成した第1の実施例に代えて、
図21及び
図22に示すように、前記領域へ延在されるアーム体75によって構成される。アーム体75は、エアバッグクッション5を覆ってエアバッグモジュール2の意匠面を形成する樹脂製パッドカバー3に一体成形される。
【0142】
アーム体75は、係合機構18を左右両側から挟む配置で左右一対形成される。各アーム体75はそれぞれ、幅広な基端板部76から先端屈曲部77が屈曲されたL字状に形成される。基端板部76がパッドカバー3につながり、先端屈曲部77がインフレータ6側へ向けて突出される。アーム体75は、パッドカバー3自体に比し、肉厚で高剛性に形成することが好ましい。
【0143】
アーム体75は、基端板部76が係合機構18の延出方向に延びる。アーム体75は、先端屈曲部77がパッドカバー3の外縁から係合機構18の側方を横切って、係合機構18とインフレータ6との間の上記領域に位置される。
【0144】
一対のアーム体75の各先端屈曲部77は、弾性ピース21の直下に位置される。各アーム体75と板バネ20の板幅方向側縁との間には、弾性変形する板バネ20がアーム体75と干渉しないように、左右方向に所定の隙間が設定される。
【0145】
各先端屈曲部77は、外力を受けて板バネ20が弾性変形されるとき、弾性域の所定の弾性変形までは許容する。各先端屈曲部77には、それ以上の弾性変形が生じたときに、弾性ピース21の下端が当接する。これにより、係合機構18の所定以上の変形を抑制し、当接した以降は外力を受け止めるようになっている。
【0146】
第8の実施例では、意図しない外力の作用で係合機構18がインフレータ6側に向けて弾性変形される際、板バネ20は左右一対のアーム体75で左右方向への振れ動きが阻止されながら、先端屈曲部77の間で弾性変形する。弾性変形が所定以内であれば、外力が消失することで弾性復元する(係合作用の範囲)。
【0147】
他方、弾性変形が所定を超える場合には、弾性ピース21の下端が先端屈曲部77の上に着地する。これにより、それ以上の弾性変形が妨げられると共に、板バネ20を変形させようとする外力が、先端屈曲部77を含むアーム体75によって受け止められる。外力が消失すれば、係合機構18は弾性復元される。
【0148】
<第2構成・第1の実施例>
次に、防護手段の第2構成(防護手段31)について説明する。
図23及び
図24には、第2構成の防護手段31の第1の実施例が示されている。
【0149】
防護手段31は、係合機構18に外力が作用することを防ぐように設けられる。防護手段31は、係合機構18の近隣の少なくとも1箇所に係合機構18と並列的に設けられる。また、防護手段31は、係合機構18の延出先端(弾性ピース21)よりもステアリングホイール1側へ突出させて設けられる。
【0150】
「防護手段31が係合機構18の延出先端(弾性ピース21)よりもステアリングホイール1側へ突出させて設けられる」とは、係合機構18に作用しようとする外力を防護手段31が遮り、当該外力を防護手段31が受け止めることが望ましいことを意味する。
【0151】
「防護手段31が係合機構18と並列的に設けられる」とは、防護手段31は、弾性ピース21を係止部22に係止させる曲げ変形を妨げないように、係合機構18と並べて設けることが望ましいことを意味する。
【0152】
「係合機構18の近隣に設けられる」とは、外力が係合機構18に作用してしまうような離れた位置に防護手段31が設けられないようにすることが望ましいという意味である。
【0153】
第1の実施例を図に従って具体的に説明すると、パッドカバー3には、防護手段31として、係合機構18の延出方向に沿って延出して、リブ80が一体成形される。リブ80は、パッドカバー3自体に比し、肉厚で高剛性に形成することが好ましい。
【0154】
リブ80は、係合機構18の左右両側のいずれか一方に1つ(図示では、実線で示されている)設けられる。あるいは、リブ80は、係合機構18を挟む配置で、係合機構18の左右両側に左右一対(図示では、一方が実線、他方が仮想線で示されている)で2つ設けられる。
【0155】
リブ80は、曲げ変形される板バネ20の板面に面しないように、かつ板バネ20から離隔しないように、係合機構18の左右方向の側方に、僅かな隙間を空けて隣り合うように設けられる。
【0156】
リブ80は、延出方向に、係合機構18の弾性ピース21よりも上方(ステアリングホイール1側)に突出し、かつホーン機能を妨げない長さで形成される。
【0157】
第1の実施例では、リブ80が1つの場合及び左右一対の場合のいずれであっても、係合機構18に作用しようとする意図しない外力は、リブ80によって遮られ、その外力はリブ80によって受け止められ、係合機構18が変形されてしまうことを阻止することができる。
【0158】
係合機構18の弾性ピース21が係止部22に係合する際には、係合機構18は、リブ80に妨げられることなく曲げ変形できて、ステアリングホイール1側へ組み付けられる。
【0159】
<第2構成・第2の実施例>
第2の実施例の防護手段31は、
図25及び
図26に示すように、パッドカバー3に一体成形される第1の実施例のリブ80に代えて、リテーナリング14のボルト14aに、金属製や樹脂製のスリーブ85を被せて装着することで構成される。
【0160】
スリーブ85は、係合機構18の延出方向に沿って、延在させて設けられる。スリーブ85は、係合機構18を挟む配置で、係合機構18の左右両側に位置しているボルト14aのいずれか1本(図示では、実線で示されている)に対して1つ設けられる。もしくは、スリーブ85は、係合機構18の左右両側の2本(図示では、一方が実線、他方が点線で示されている)それぞれに対して2つ設けられる。
【0161】
スリーブ85は、曲げ変形される板バネ20の板面に面しないように、かつ板バネ20から離隔しないように、係合機構18の左右方向の側方に、インフレータ6側へ寄せた配置で設けられる。
【0162】
スリーブ85は、延出方向に、係合機構18の弾性ピース21よりも上方(ステアリングホイール1側)に突出し、かつホーン機能を妨げない長さに設定される。
【0163】
さらに第2の実施例の変形例として、防護手段31として2つのスリーブ85を設けた場合に、図中、仮想線で示すように、スリーブ85の上端の間に、係合機構18の延出方向と交差する方向に桁部86を設けるようにしてもよい。これにより、2本のスリーブ85と桁部86とで門形の防護手段31が構成される。桁部86は、弾性ピース21よりも上方に掛け渡して設けられる。
【0164】
第2の実施例も、上記第1の実施例と同様に、スリーブ85が1つの場合、左右一対の場合、並びに桁部86を備えた場合のいずれであっても、係合機構18に作用しようとする意図しない外力は、スリーブ85や桁部86によって遮られ、その外力はスリーブ85や桁部86によって受け止められ、係合機構18が変形されてしまうことを阻止することができる。
【0165】
係合機構18の弾性ピース21が係止部22に係合する際には、係合機構18は、スリーブ85に妨げられることなく、また桁部86があってもその下方を潜ることによって、曲げ変形可能であり、これによりステアリングホイール1側へ組み付けられる。
【0166】
<第2構成・第3の実施例>
第3の実施例の防護手段31は、
図27及び
図28に示すように、ボルト14aに装着される第2の実施例のスリーブ85に代えて、ハウジング4の周壁4bにリベット等で接合されるブラケット90で構成される。ブラケット90は、金属製板材で形成される。
【0167】
ハウジング4の周壁4bには、防護手段31として、係合機構18の延出方向に沿って延出して、ブラケット90が一体的に設けられる。
【0168】
ブラケット90は、延出方向に、周壁4bに接合される一端を有し、他端が弾性ピース21側に位置される。
【0169】
ブラケット90は、係合機構18の左右両側のいずれか一方に1つ(図示では、実線で示されている)設けられる。あるいは、ブラケット90は、係合機構18を挟む配置で、係合機構18の左右両側に左右一対(図示では、一方が実線、他方が点線で示されている)で2つ設けられる。
【0170】
ブラケット90は、曲げ変形される板バネ20の板面に面しないように、かつ板バネ20から離隔しないように、係合機構18の左右方向の側方に、僅かな隙間を空けて隣り合うように設けられる。
【0171】
ブラケット90は、延出方向に、係合機構18の弾性ピース21よりも上方(ステアリングホイール1側)に突出し、かつホーン機能を妨げない長さで形成される。
【0172】
さらに第3の実施例の変形例として、防護手段31として2つのブラケット90を設けた場合に、図中、仮想線で示すように、ブラケット90の他端の間に、係合機構18の延出方向と交差する方向に桁部91を設けるようにしてもよい。これにより、2つのブラケット90と桁部91とで防護手段31が構成される。桁部91は、弾性ピース21よりも上方に掛け渡して設けられる。
【0173】
第3の実施例も、上記第1及び第2の実施例と同様に、ブラケット90が1つの場合、左右一対の場合、並びに桁部91を備えた場合のいずれであっても、係合機構18に作用しようとする意図しない外力は、ブラケット90や桁部91によって遮られ、その外力はブラケット90や桁部91によって受け止められ、係合機構18が変形されてしまうことを阻止することができる。
【0174】
係合機構18の弾性ピース21が係止部22に係合する際には、係合機構18は、ブラケット90に妨げられることなく、また桁部91があってもその下方を潜ることによって、曲げ変形可能であり、これによりステアリングホイール1側へ組み付けられる。
【0175】
<第2構成・第4の実施例>
第4の実施例の防護手段31は、
図29に示すように、ボルト14aに被せて装着される第2の実施例のスリーブ85に代えて、インフレータ取付用のボルト14aを、係合機構18の延出方向へ延長して構成される。
【0176】
係合機構18を挟む配置で、係合機構18の左右両側に位置しているボルト14aのいずれか1本(図示では、実線で示されている)が、もしくは係合機構18の左右両側の2本のボルト14a(図示では、一方が実線、他方が点線で示されている)が、延長して形成される。
【0177】
ボルト14aは、曲げ変形される板バネ20の板面に面しないように、かつ板バネ20から離隔しないように、係合機構18の左右方向の側方に、インフレータ6側へ寄せた配置で設けられる。
【0178】
ボルト14aは、延出方向(延長方向)で、係合機構18の弾性ピース21よりも上方(ステアリングホイール1側)に突出し、かつホーン機能を妨げない長さに延長される。
【0179】
第4の実施例も、上記第1及び第2の実施例と同様に、延長したボルト14aが1本の場合及び左右一対で2本の場合のいずれであっても、係合機構18に作用しようとする意図しない外力は、ボルト14aによって遮られ、その外力はボルト14aによって受け止められ、係合機構18が変形されてしまうことを阻止することができる。
【0180】
係合機構18の弾性ピース21が係止部22に係合する際には、係合機構18は、延長したボルト14aに妨げられることなく曲げ変形可能であり、これによりステアリングホイール1側へ組み付けられる。
【0181】
以上説明した本実施形態にかかるいずれの運転席用エアバッグ装置であっても、ダンパユニット11と並列的に設けられ、ステアリングホイール1に組み付けられる係合機構18を対象として、上述した防護手段30,31を備えることにより、係合機構18のステアリングホイール1への円滑な組み付け性を保持すること、並びにエアバッグモジュール2のステアリングホイール1への装着が完了するまで、外力によって係合機構18が損傷を受けてしまうこと、を的確に防止できる。具体的には、例えば組み付け作業ミスやエアバッグモジュール2の取り落としなど、組み付け前の意図しない外力が、係合機構18に作用することを阻止できる。
【0182】
これにより、運転席用エアバッグ装置に、設計通りの性能を発揮させることができる。
【0183】
以上に述べた運転席用エアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施形態例も、各種の方法で実施または遂行できる。特に、本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさおよび構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0184】
1 ステアリングホイール
2 エアバッグモジュール
3 パッドカバー
4 ハウジング
5 エアバッグクッション
6 インフレータ
11 ダンパユニット
14 リテーナリング
14a ボルト
18 係合機構
18a 接合部
18b 係合部
21 弾性ピース
30,31 防護手段
40,45,50 壁体
55 リブ
60 バー
65,70 ブラケット
66,71 脚部
67,72 桁部
75 アーム体
80 リブ
85 スリーブ
86,91 桁部
90 ブラケット