IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭化成株式会社の特許一覧

特許7525666ゴム状重合体、ゴム状重合体の製造方法、ゴム組成物、及びタイヤ用トレッド
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】ゴム状重合体、ゴム状重合体の製造方法、ゴム組成物、及びタイヤ用トレッド
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/02 20060101AFI20240723BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240723BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240723BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C08C19/02
C08L9/06
C08K5/54
C08K3/36
C08K3/04
B60C1/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022578110
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(86)【国際出願番号】 JP2021045167
(87)【国際公開番号】W WO2022163152
(87)【国際公開日】2022-08-04
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2021011623
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】松岡 大悟
(72)【発明者】
【氏名】安本 敦
【審査官】中川 裕文
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/133097(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/047451(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086208(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/206068(WO,A1)
【文献】特開2000-053706(JP,A)
【文献】特表2020-514446(JP,A)
【文献】特開平08-245839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造の含有量C1と、下記式(2)で表される構造の含有量C2との合計値が、40mоl%以上60mоl%以下であり、
下記式(3)で表される構造の含有量C3が15mоl%以上50mоl%以下であり、
下記式(4)で表される構造の含有量C4がmоl%以上25mоl%以下であり、
芳香族ビニル単量体単位の含有量Sが4mоl%以上15mоl%以下であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量が30万以上であり、
カラム吸着GPC法で測定される変性率が60質量%以上である、
ゴム状重合体。
【化1】
【請求項2】
重量平均分子量Mwと、100℃で測定したムーニー粘度MLとの比
Mw/(ML×10000)が、0.68以上0.85以下である、
請求項1に記載のゴム状重合体。
【請求項3】
窒素含有量が10ppm以上80ppm以下である、
請求項1又は2に記載のゴム状重合体。
【請求項4】
窒素含有量が35ppm以上80ppm以下である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のゴム状重合体。
【請求項5】
ケイ素含有量が50ppm以上200ppm以下である、
請求項1乃至のいずれか一項に記載のゴム状重合体。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のゴム状重合体の製造方法であって、
共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を共重合し、得られた共重合体を水素添加率が90%以下となるように水素添加する工程を有する、
ゴム状重合体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
架橋剤0.1質量部以上20質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
シランカップリング剤0.1質量部以上30質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
軟化剤1質量部以上60質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
シリカ30質量部以上100質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
【請求項11】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
カーボンブラック1質量部以上100質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
【請求項12】
請求項乃至11のいずれか一項に記載のゴム組成物を含有する、タイヤ用トレッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム状重合体、ゴム状重合体の製造方法、ゴム組成物、及びタイヤ用トレッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷軽減の観点から、自動車用タイヤには高い水準の省燃費性能や機械強度が求められている。
タイヤの省燃費性能は車の燃費に直結するため環境負荷の指標にもなり、また、タイヤの機械強度はタイヤの消費サイクルに直結するため環境負荷に大きく影響する。
【0003】
上述したような要求に応えるタイヤ用のゴム材料として、近年ではゴム状重合体に水素を添加した水素添加ゴム状重合体が知られている。
例えば、特許文献1~4には、機械強度や圧縮永久歪みを高める目的で、エチレン構造を有し、架橋可能な不飽和基を導入したゴム状重合体を含有するゴム組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/150645号公報
【文献】国際公開第2019/151126号公報
【文献】国際公開第2019/151127号公報
【文献】国際公開第2019/078083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、ゴム状重合体の加硫物の省燃費性能及び機械強度は、ゴム状重合体の芳香族ビニルモノマーの割合や共役ジエンモノマー由来の繰り返し単位の割合(1,2-ビニル結合比率、1,4-ビニル結合比率)に大きく依存することが知られている。
具体的には、ゴム状重合体中の1,2-ビニル結合比率が多く、芳香族ビニルモノマー比率が少ないほど、その加硫物の省燃費性能は優れたものとなるが、機械強度の一つである引張強度が低下する傾向にある。
一方、主鎖に飽和結合を導入した、水素添加ゴム状重合体は、機械強度が向上するため、ゴム状重合体の水素添加を行うことが、性能バランスを改善する手段の一つとして知られている。
【0006】
しかしながら、不飽和結合を水素化して飽和結合にすると、加硫物とする際の加硫速度が大幅に低下する、という問題点を有している。この加硫速度の低下は、タイヤの生産レートの悪化を引き起こし、さらにはその他のゴム材料との共架橋性が悪化するおそれがある、という大きな問題になる。
【0007】
そこで、本発明においては、実用上十分な加硫速度が得られ、かつ、省燃費性能と機械強度のバランスに優れたゴム組成物が得られるゴム状重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述した従来技術の課題を解決するために、鋭意研究検討した結果、特定構造比率を有し、かつ、特定の分子量を有することにより、所期の性能を発揮する重合体を得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は以下の通りである。
【0009】
〔1〕
下記式(1)で表される構造の含有量C1と、下記式(2)で表される構造の含有量C2との合計値が、40mоl%以上60mоl%以下であり、
下記式(3)で表される構造の含有量C3が15mоl%以上60mоl%以下であり、
下記式(4)で表される構造の含有量C4が2mоl%以上25mоl%以下であり、
芳香族ビニル単量体単位の含有量Sが4mоl%以上18mоl%以下であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量が30万以上であり、
カラム吸着GPC法で測定される変性率が60質量%以上である、
ゴム状重合体。
【0010】
【化1】
【0011】
〔2〕
前記式(1)で表される構造の含有量C1と、前記式(2)で表される構造の含有量C2との合計値が、40mоl%以上60mоl%以下であり、
前記式(3)で表される構造の含有量C3が15mоl%以上60mоl%以下であり、
前記式(4)で表される構造の含有量C4が5mоl%以上25mоl%以下であり、
芳香族ビニル単量体単位の含有量Sが4mоl%以上15mоl%以下であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量が30万以上であり、
カラム吸着GPC法で測定される変性率が60質量%以上である、前記〔1〕に記載のゴム状重合体。
〔3〕
重量平均分子量Mwと、100℃で測定したムーニー粘度MLとの比
Mw/(ML×10000)が、0.68以上0.85以下である、前記〔1〕又は〔2〕に記載のゴム状重合体。
〔4〕
窒素含有量が10ppm以上80ppm以下である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載のゴム状重合体。
〔5〕
窒素含有量が35ppm以上80ppm以下である、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載のゴム状重合体。
〔6〕
ケイ素含有量が50ppm以上200ppm以下である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載のゴム状重合体。
〔7〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のゴム状重合体の製造方法であって、
共役ジエン系化合物と芳香族ビニル化合物を共重合し、得られた共重合体を水素添加率が90%以下となるように水素添加する工程を有する、
ゴム状重合体の製造方法。
〔8〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
架橋剤0.1質量部以上20質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
〔9〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
シランカップリング剤0.1質量部以上30質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
〔10〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
軟化剤1質量部以上60質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
〔11〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
シリカ30質量部以上100質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
〔12〕
前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、
カーボンブラック1質量部以上100質量部以下と、
を、含有する、ゴム組成物。
〔13〕
前記〔8〕乃至〔12〕のいずれか一に記載のゴム組成物を含有する、タイヤ用トレッド。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実用上十分な加硫速度が得られ、かつ、省燃費性能と機械強度のバランスに優れたゴム組成物が得られるゴム状重合体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施することができる。
【0014】
〔ゴム状重合体〕
本実施形態のゴム状重合体は、
下記式(1)で表される構造の含有量C1と、下記式(2)で表される構造の含有量C2との合計値が、40mоl%以上60mоl%以下であり、
下記式(3)で表される構造の含有量C3が15mоl%以上60mоl%以下であり、
下記式(4)で表される構造の含有量C4が2mоl%以上25mоl%以下であり、
芳香族ビニル単量体単位の含有量Sが4mоl%以上18mоl%以下であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される重量平均分子量が30万以上であり、
カラム吸着GPC法で測定される変性率が60質量%以上である。
【0015】
【化2】
【0016】
上記のように、本実施形態のゴム状重合体において、芳香族ビニル単量体単位の含有量S、及び、前記式(1)~(4)で表される構造の含有量C1~C4を、上述した特定の範囲としたことにより、加硫物とする際に、実用上十分な加硫速度が得られ、かつ、省燃費性能と機械強度のバランスに優れたゴム組成物が得られる傾向にある。
各構造と性能の関係について、以下説明する。
【0017】
本実施形態のゴム状重合体において、前記式(1)で表される構造は、例えば、共役ジエン化合物の1,2-ビニル結合単位に相当するが、前記式(1)で表される構造と同じであれば、その原料は特に限定されない。また前記式(2)で表される構造は、例えば、共役ジエン化合物の1,2-ビニル結合を水素添加した単位に相当するが、前記式(2)で表される構造と同じであれば、その原料は特に限定されない。
本実施形態のゴム状重合体を構成する各構造単位の合計値を100mоl%としたとき、C1とC2の合計値は、40mоl%以上60mоl%以下であり、好ましくは45mоl%以上60mоl%以下であり、より好ましくは50mоl%以上60mоl%以下である。
C1とC2の合計値が前述の範囲であると、加硫物の省燃費性能に優れる傾向にある。
【0018】
前記式(3)で表される構造は、例えば、共役ジエン化合物の1,4-ビニル結合単位に相当するが、前記式(3)で表される構造と同じであれば、その原料は特に限定されない。
本実施形態のゴム状重合体を構成する各構造単位の合計値を100mоl%としたとき、C3は、15mоl%以上60mоl%以下であり、下限値については好ましくは20mоl%以上であり、より好ましくは30mоl%以上である。上限値については好ましくは50mоl%以下であり、より好ましくは40mоl%以下である。
C3が前述の範囲であると、加硫物とする際に加硫速度が遅くなりすぎない傾向にある。
【0019】
前記式(4)で表される構造は、例えば、共役ジエン化合物の1,4-ビニル結合単位を水素添加した構造に相当するが、前記式(4)で表される構造と同じであれば、その原料は特に限定されない。
本実施形態のゴム状重合体を構成する各構造単位の合計値を100mоl%としたとき、C4は、2mоl%以上25mоl%以下である。下限値については好ましくは5mоl%以上であり、より好ましくは7mоl%以上であり、さらに好ましくは10mоl%以上である。
C4が前述の範囲であると、加硫物とした際に引張強度が優れる傾向にある。
また加硫速度の観点からC4は、上限値については20mоl%以下が好ましく、18mоl%以下がより好ましい。
【0020】
本実施形態のゴム状重合体中の式(1)~(4)で表される構造の含有量C1~C4は、H-NMR測定により算出することができ、具体的には後述する実施例に記載する方法により算出することができる。
【0021】
本実施形態のゴム状重合体を構成する各構造単位の合計値を100mоl%としたとき、芳香族ビニル単量体単位の含有量Sは、4mоl%以上18mоl%以下である。上限値については、好ましくは15mоl%以下であり、より好ましくは10mоl%以下であり、さらに好ましくは7mоl%以下である。
下限値については好ましくは4mоl以上であり、より好ましくは6mоl以上である。
Sが前述の範囲であると、加硫物とした際に省燃費性能が優れる傾向にある。
本実施形態のゴム状重合体中のSは、NMR測定により算出することができ、具体的には後述する実施例に記載する方法により算出することができる。
【0022】
(芳香族ビニル単量体)
本実施形態のゴム状重合体は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位(以下「芳香族ビニル単量体単位」とも記す)を含む。
芳香族ビニル化合物としては、以下に限定されないが、例えば、スチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、及びジフェニルエチレンが挙げられる。
これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、スチレンが好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(共役ジエン化合物)
本実施形態のゴム状重合体において、前記式(1)~(4)で表される構造単位は、共役ジエン化合物に由来する構造単位(以下「共役ジエン単量体」とも記す)であることが好ましい。
共役ジエン化合物としては、以下に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、及び1,3-ヘプタジエンが挙げられる。これらの中でも、工業的入手の容易さの観点から、1,3-ブタジエン、及びイソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(ゴム状重合体の重量平均分子量)
本実施形態のゴム状重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により求められる重量平均分子量(Mw)が、30万以上である。好ましくは40万以上であり、さらに好ましくは44万以上である。
本実施形態のゴム状重合体のMwが30万以上であることにより、加硫物が高い引張強度を有する傾向にある。
本実施形態のゴム状重合体のMwは、70万以下が好ましく、65万以下がより好ましく、60万以下がさらに好ましい。Mwが70万以下であることで、本実施形態のゴム状重合体をタイヤ組成物に用いたとき、混練り時の加工性が優れたものとなり、充填剤が十分に分散され、省燃費性能に優れたものとなる。
ゴム状重合体の重量平均分子量は、GPCによって測定されたポリスチレン換算の分子量から計算でき、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。
【0025】
(ゴム状重合体の変性)
本実施形態のゴム状重合体は、タイヤの材料として用いた場合の省燃費性能の観点から、スズ原子、窒素原子、又はケイ素原子を含有することが好ましく、窒素原子とケイ素原子の両方を含有することがより好ましい。
本実施形態では、窒素原子を有する化合物を変性剤と称し、ゴム状重合体に変性剤を付加することを変性と記す。
【0026】
本実施形態のゴム状重合体は、カラム吸着GPC法で測定される変性率が60質量%以上である。
変性率が60質量%以上であることにより、加硫物において優れた省燃費性能が得られる傾向にある。
本実施形態のゴム状重合体の変性率は、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
変性率は、官能基を含有する変性成分と非変性成分とを分離できるクロマトグラフィーによって測定することができる。
このクロマトグラフィーを用いた方法としては、特定の官能基を吸着するシリカ等の極性化合物を充填剤としたゲル浸透クロマトグラフィー用のカラムを使用し、非吸着成分の内部標準を比較に用いて定量する方法(カラム吸着GPC法)が挙げられる。
より具体的には、変性率は、試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系ゲルカラムで測定したクロマトグラムとシリカ系カラムで測定したクロマトグラムとの差分から、シリカ系カラムへの吸着量を測定することにより得られる。
さらに具体的には、変性率は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態のゴム状重合体において、変性率は、変性剤の添加量及び反応方法を調整するによって制御することができ、これにより上述した数値範囲に制御することができる。
例えば、重合開始剤として、後述する分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する有機リチウム化合物を用いて重合する方法、分子内に少なくとも1つ窒素原子を有する単量体を共重合する方法、後述する構造式の変性剤を用いる方法を組み合わせ、重合条件を制御することによって、上記変性率に制御することができる。
【0027】
(窒素含有量)
本実施形態のゴム状重合体は、微量窒素分析で測定される窒素含有量が10ppm以上80ppm以下であることが好ましい。
窒素含有量が10ppm以上であることにより、優れた引張強度を示す傾向にある。窒素含有量は、20ppm以上がより好ましく、30ppm以上がさらに好ましく、35ppm以上がさらにより好ましく、37ppm以上がよりさらに好ましく、40ppm以上が特に好ましい。
本実施形態のゴム状重合体が、末端変性の場合、変性剤に含まれる窒素原子の数が一定でも、分子鎖が長くなって分子量が大きくなれば、窒素含有量は下がる傾向にある。分子鎖が長い場合には、10ppm以上の窒素含有量で引張強度が良好である一方、比較的分子量が小さい場合には、分子量に応じ、35ppm以上程度に設定することが好ましい。
ゴム状重合体の窒素含有量は加工性の観点から80ppm以下が好ましく、70ppm以下がより好ましく、60ppm以下がさらに好ましい。
窒素含有量は後述する実施例に記載の方法で測定することができる。
窒素含有量は、変性剤の種類、添加量を調整することにより、上記数値範囲に制御できる。
同じゴム状重合体で比較する場合、変性率が高いほど窒素含有量は高くなる傾向にあるが、窒素含有量は変性剤の種類や分子量にも依存するため、変性率と必ずしも相関しない。その結果、上述のように、変性率は、ゴム状重合体をタイヤに利用した場合の省燃費性能に影響し易く、窒素含有量は引張強度に影響し易い傾向にある。
本実施形態のゴム状重合体において、変性率と窒素含有量とを別個に制御する方法としては、変性率を維持したまま窒素含有量を高くする場合は、窒素含有量の高い変性剤を添加する方法が有効である。この窒素含有量の高い変性剤を用いることにより、ゴム状重合体を用いたタイヤ用のゴム組成物を混練りする際にシランカップリング剤のシラニゼーションを促進するため、引張強度の高いタイヤを得ることができる傾向にある。同様に、分子量の調整する方法も、ゴム状重合体の変性率と窒素含有量とを別個に制御する方法として挙げられる。具体的にはゴム状重合体の分子量を下げることにより、変性率を維持したまま、窒素含有量を変えることができる。
【0028】
(変性剤)
本実施形態のゴム状重合体は、上記のように変性率が60質量%以上であり、変性剤で変性されている。
変性剤は特に限定されるものではなく、従来公知の変性剤を用いることができる。変性剤としては、本実施形態のゴム状重合体の加硫物の省燃費性能の観点から、窒素原子とケイ素原子の両方を有している化合物が好ましいが、より好ましくは窒素基含有アルコキシシラン化合物である。
窒素基含有アルコキシシラン化合物としては、以下に限定されるものではないが、例えば、2,2-ジメトキシ-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1-(4-トリメトキシシリルブチル)-1-アザ-2-シラシクロヘキサン、2,2-ジメトキシ-1-(5-トリメトキシシリルペンチル)-1-アザ-2-シラシクロヘプタン、2,2-ジメトキシ-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2,2-ジエトキシ-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-(3-トリメトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-エトキシ-2-エチル-1-(3-トリエトキシシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、2-メトキシ-2-メチル-1-(3-ジメトキシメチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、及び2-エトキシ-2-エチル-1-(3-ジエトキシエチルシリルプロピル)-1-アザ-2-シラシクロペンタン、トリス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジメトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(3-メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、トリス(トリメトキシシリルメチル)アミン、トリス(2-トリメトキシシリルエチル)アミン、及びトリス(4-トリメトキシシリルブチル)アミン、テトラキス[3-(2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン)プロピル]-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-プロパンジアミン、テトラキス(3-トリメトキシシリルプロピル)-1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、及びN1-(3-(ビス(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N1-メチル-N3-(3-(メチル(3-(トリメトキシシリル)プロピル)アミノ)プロピル)-N3-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,3-プロパンジアミン、3-(4-メチルピペラジン-1-イル)プロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0029】
(ゴム状重合体の不飽和基を有する単量体単位)
本実施形態のゴム状重合体は、共役ジエン単量体単位や、ミルセン等、不飽和基を有する単量体単位を2質量%以上含有することが好ましい。
不飽和基を有する単量体単位としては、共役ジエン単量体単位、ミルセンに限定されるものではなく、その他の単量体単位を含んでいてもよい。
経済性や製造性の観点から、本実施形態のゴム状重合体は、共役ジエン単量体単位を含有することが好ましい。
共役ジエン単量体単位やミルセンは二重結合を有しているため、これらの単量体単位を有することにより、本実施形態のゴム状重合体は架橋可能な不飽和基を有するものとなる。
本実施形態のゴム状重合体の不飽和基を有する単量体単位の含有量は、ヨウ素価と密接に関係している。
共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位の含有量が2質量%以上であることにより、本実施形態のゴム状重合体は、架橋のしやすさの観点で優れたものとなる。
共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位の含有量は、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは6質量%以上である。
また、共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位の含有量は、好ましくは50質量%以下、より好ましく30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。これにより耐候性や耐経年劣化性が優れたものとなる傾向にある。
共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体単位としては、経済性や製造性の観点で、共役ジエン単量体単位が好ましい。
本実施形態のゴム状重合体の不飽和基を有する単量体単位の含有量は、後述する実施例に記載するNMR測定方法により測定することができ、後述する共役ジエン単量体単位やミルセン等の不飽和基を有する単量体の添加量や、共役ジエン単量体の水素添加率を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0030】
本実施形態のゴム状重合体の水素添加率、エチレン、共役ジエン単量体、ミルセン及びビニル芳香族単量体等の単量体単位の分子間や分子内の分布は、特に限定されず、均一でも、不均一でも、分布があってもよい。
【0031】
(ゴム状重合体のケイ素含有量)
本実施形態のゴム状重合体は、ケイ素含有量が50ppm以上200ppm以下であることが好ましい。
ケイ素含有量が50ppm以上であることにより、本実施形態のゴム状重合体を補強材と混合させたゴム組成物において、ゴム状重合体と補強材との相互作用が強まり優れた引張強度が得られる。
本実施形態のゴム状重合体のケイ素含有量は、80ppm以上がより好ましく、100ppm以上がさらに好ましい。
ケイ素含有量が200ppm以下であることにより、ゴム状重合体の経時劣化による変色を抑制できる。本実施形態のゴム状重合体のケイ素含有量は、170ppm以下がより好ましく、150ppm以下がさらに好ましい。
ゴム状重合体のケイ素含有量は、ゴム状重合体の製造工程中、重合工程後にケイ素含有カップリング剤を用いてカップリング反応を実施し、前記ケイ素含有カップリング剤の添加量を調整することにより上記数値範囲に制御できる。
【0032】
(ムーニー粘度)
本実施形態のゴム状重合体のムーニー粘度は、ゴム状重合体の分子量、分子量分布、分岐度、軟化剤の含有量等の情報を含んだ指標となる。
本実施形態のゴム状重合体の100℃で測定されるムーニー粘度は、本実施形態のゴム状重合体と架橋剤とを含有する架橋用ゴム組成物をタイヤに用いた時の耐摩耗性、操縦安定性、破壊強度の観点から、50以上が好ましく、60以上がより好ましく、70以上がさらに好ましく、90以上がさらにより好ましい。
一方、本実施形態のゴム状重合体を用いたゴム組成物の生産性、充填剤等を配合したゴム組成物としたときの加工性の観点から、前記ムーニー粘度は、200以下が好ましく、150以下がより好ましく、130以下がさらに好ましく、110以下がさらにより好ましい。
ムーニー粘度の測定方法は、後述のISO289に規定されている方法を適用できる。
本実施形態のゴム状重合体のムーニー粘度は、ゴム状重合体の重合工程における重合開始剤の添加量や、カップリング剤の添加量、種類を調整することにより、上記数値範囲に制御することができる。
【0033】
(ゴム状重合体の重量平均分子量とムーニー粘度の比(Mw/(ML×10000))
本実施形態のゴム状重合体は、重量平均分子量Mwとムーニー粘度MLの比:Mw/(ML×10000)が、0.68以上0.85以下であることが好ましい。
一般的に、MLはMwに大きく依存する傾向にある。ゴム状重合体のMwを上げることによりゴム状重合体の機械強度を向上させることができるが、単純にゴム状重合体のMwを大きくすると、付随してMLも大きく上がる傾向にある。MLが高いとゴム状重合体の加工性の悪化を招来し、充填剤の分散性を悪化させる傾向にある。すなわち、ゴム状重合体の機械的強度を向上させるためにMwを大きくすると、MLが上昇し、加工性の低下を招来する。
ゴム状重合体のMwとMLの相関を断ち切る方法としては、ゴム状重合体の分岐構造を変える方法や、ゴム状重合体の組成比を変える方法が挙げられる。例えば、直鎖でなく3分岐以上に分岐した構造の場合、分子量が同じでも、直鎖の場合と比較して分子鎖1本あたりの長さが短くなるため、直鎖の場合よりも他の材料との混練が容易になり易い傾向にある。
これに対し、本願発明者は、ゴム状重合体においては、繰り返し単位である上記式(1)~(4)の構造の含有量C1、C2、C3、C4、及び芳香族ビニル単量体単位の含有量Sを所定の範囲に特定することによって、ゴム状重合体のMwとMLの比を調整できることを見出した。共役ジエンが重合時に、1,2-ビニル結合、1,4-ビニル結合のいずれで結合するか、それぞれが水素添加されているか否かによって、上記式(1)~(4)のの構造のいずれになるかが決定するが、1,2-ビニル結合と1,4-ビニル結合とでは水素添加反応の速度も異なるので、水素添加率の制御も、上記式(1)~(4)の構造の含有量C1~C4に影響する。ゴム状重合体におけるビニル結合量や水素添加率を調整し、ゴム状重合体中に所定の構造を所定の含有量で含むものとすることにより、ゴム状重合体のMLを制御することは新規な知見であり、MLのMwへの依存を小さくすることができ、ゴム状重合体の設計の幅が広がる。
【0034】
本実施形態のゴム状重合体において、Mw/(ML×10000)は、高い引き裂き強度を得る観点から、0.68以上0.85以下が好ましい。
下限値は0.73以上がより好ましく、0.78以上がさらに好ましい。
上限値は0.84以下がより好ましく、0.80以下がさらに好ましい。
Mw/(ML×10000)が上述の数値範囲であることにより、本実施形態のゴム状重合体を用いたゴム組成物は、機械強度と、充填剤の分散性すなわち加工性とのバランスに優れたものとなり、優れた引き裂き強度を示すものとなる。
一般的に高分子化合物のMLはMwに大きく依存し、Mwが上がることで高分子鎖の絡み合い点数が増加し、機械的強度が上がる。一方において、Mwが上がることにより粘度であるMLも上昇することが知られている。従って、Mw/(ML×10000)の比を所定の範囲に調整するためには、Mwを制御することのみに留まらず、上述したように、MwとMLの相関を断ち切ることが必要であり、かかるMwとMLの相関を断ち切るためには、高分子鎖の絡み合い点間分子量を調整することが有効である。
ここで、「高分子鎖の絡み合い点間分子量」とは、高分子鎖が一点で絡み合うために必要な最小分子量であり、「高分子鎖の絡み合い点数」とは、高分子化合物の分子量と、高分子鎖の絡み合い点間分子量の比、すなわち(分子量/高分子鎖の絡み合い点間分子量)である。
高分子鎖の絡み合い点間分子量は、その高分子特有の値であるが、高分子鎖の繰り返し単位の構造(例えば、立体的な配置、直鎖か枝分かれか、単結合か二重結合か等)の比率に依存する傾向にある。よって、Mw/(ML×10000)は、高分子鎖のMwと、高分子鎖の繰り返し単位である所定の構造の含有量を調整することにより、上述した数値範囲に制御することができる。
重合体中に組み込まれている所定の構造の含有量が異なるゴム状重合体において高分子鎖の絡み合い点間分子量や高分子鎖の絡み合い点数を測定したところ、本実施形態のゴム状重合体においては、繰り返し単位である前記式(1)の構造よりも、繰り返し単位である前記式(2)の構造の方が絡み合い難く、また、繰り返し単位である前記式(4)の構造よりも、繰り返し単位である前記式(3)の構造の方が絡み合い難くなる傾向が確認された。
従って、前記式(2)の構造の含有量C2や、前記式(3)の構造の含有量C3の値を増やし、前記式(1)の構造の含有量C1や、前記式(4)の構造の含有量C4の値を減らすことで、絡み合い点間分子量が上がり、Mwが大きいゴム状重合体でもMLを上昇し難くできるので、これらの傾向に基づいてMw/(ML×10000)を所定の範囲へ制御することができる。
Mw/(ML×10000)を制御することにより、加工性が向上し、さらには、充填剤が均一に分散されて、ボイドが少なく、ゴム状重合体同士が十分に絡み合ったしなやかなゴム組成物を得ることができる。このゴム組成物は優れた引き裂き強度を示す。
引き裂き強度は後述の方法で測定できる。
高分子鎖の絡み合い点間分子量は、ゴム状重合体の粘弾性測定により、ゴム状弾性領域の貯蔵弾性率を測定することにより算出することができる。
【0035】
(ゴム状重合体の軟化剤)
本実施形態のゴム状重合体は、必要に応じてゴム用軟化剤を含有してもよい。
ゴム用軟化剤の含有量は30質量%以下であることが好ましい。
本実施形態のゴム状重合体においては、タイヤ製造時に無機充填剤等を配合したときの加工性を改善する観点から、ゴム用軟化剤の添加量は1~30質量%であることが好ましい。
ゴム状重合体の分子量が高い場合、例えば重量平均分子量が100万を超える場合などは、ゴム用軟化剤の添加量を15~30質量%とすることが好ましく、一方において充填剤を配合したゴム組成物とする場合の配合量の自由度を広げる観点からはゴム用軟化剤の添加量は、1~15質量%であることが好ましい。
本実施形態のゴム状重合体を用いたゴム組成物中のゴム用軟化剤の含有量は、タイヤにした時の経年劣化を抑制する観点から、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、5質量%以下がさらにより好ましい。
【0036】
ゴム用軟化剤としては、特に限定されないが、例えば、伸展油、低分子のゴム状重合体、樹脂等が挙げられるが、加工性や生産性や経済性の観点から、伸展油が好ましい。また、タイヤ用のゴム組成物の耐摩耗性の観点から架橋に寄与することができる低分子のゴム状重合体が好ましい。
ゴム用軟化剤を本実施形態のゴム状重合体に添加する方法としては、以下に限定されないが、ゴム用軟化剤をゴム状重合体の溶液に加え、混合して、ゴム用軟化剤含有の重合体溶液としたものを脱溶媒する方法が好ましい。
【0037】
好ましい軟化剤としては、以下に限定されないが、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。
これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。
アロマ代替油としては、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
【0038】
(その他の添加剤)
本実施形態のゴム状重合体は、必要に応じて、酸化防止剤等の種々の添加剤を含有してもよい。
【0039】
〔ゴム状重合体の製造方法〕
本実施形態のゴム状重合体の製造方法は、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を共重合し、得られた共重合体を水素添加率が90%以下になるように水素添加する工程を有する。
本実施形態のゴム状重合体の製造方法においては、重合単量体として共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用い、水素添加率を適切に制御することにより、前記C1、C2、C3、C4を、本実施形態のゴム状重合体の所定の範囲に制御する。
具体的には、水素添加する前のゴム状重合体の1,2-ビニル結合量、1,4-ビニル結合量、及び、水素添加量を調整することで任意の比率でC1、C2、C3、C4を制御することができる。
水素添加する前のゴム状重合体の1,2-ビニル結合量、1,4-ビニル結合量は、後述する極性化合物の添加量を調整することにより制御することができる。
重合体の水素添加によってC1~C4を制御する場合、例えば、芳香族ビニル単量体単位量が15.0質量%、共役ジエン構造中の1,2-ビニル結合量が50mоl%の場合、水素添加率を65%とすることで、C1~C4を目的とする範囲に制御することができる。
すなわち、C1とC2の合計値を40mоl以上60mоl%以下の範囲とし、C3を15mоl%以上60mоl%以下の範囲とし、C4を2mоl%以上25mоl%以下の範囲に制御することができる。
【0040】
本実施形態のゴム状重合体の水素添加率は、共役ジエン化合物、例えば、ブタジエンに由来する構造単位の水素添加率が30%以上であることが好ましく、90%以下であることが好ましい。下限値は50%以上がより好ましく、60%以上がさらに好ましい。上限値は85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。
本実施形態のゴム状重合体は、共役ジエン化合物に由来する構造単位の水素添加率が30%以上であることにより、加硫物の破断強度や破断伸びが優れたものとなる傾向にある。
共役ジエン化合物に由来する構造単位の水素添加率90%以下であることにより、加硫後の架橋密度が増加し、加硫物の破断強度や省燃費性能が優れたものとなる傾向にある。
本実施形態のゴム状重合体の水素添加率は、共役ジエン化合物由来の構造単位に対する水素の添加量を調整することによって制御できる。
水添反応の温度は特に限定されないが、好ましくは60~105℃であり、より好ましくは70~100℃である。
水素添加率は、H-NMRで測定することができる。
【0041】
本実施形態のゴム状重合体の製造方法においては、分子構造の制御が容易な観点から、重合工程においては、アニオン重合を実施することが好ましい。また、少なくとも共役ジエン単量体を重合又は共重合した共役ジエン系重合体中の二重結合の一部又は大部分を水素化(水素添加)する。
【0042】
本実施形態のゴム状重合体の製造方法としては、例えば、国際公開第96/05250号公報、特開2000-053706号公報、国際公開第2003/085010号公報、国際公開第2019/151126号公報、国際公開第2019/151127号公報、国際公開第2002/002663号公報、及び国際公開第2015/006179号公報に記載されているように、種々の添加剤や条件のもとに、アニオン重合で共役ジエン単量体を重合、必要に応じてその他の単量体と共重合した後に水素添加する方法が挙げられる。
本実施形態のゴム状重合体の製造方法における重合時に用いる芳香族ビニル単量体、エチレン、α-オレフィン、共役ジエン単量体、及びその他の単量体は、上記各種文献に記載されたものと同じものを用いることができる。
上記の重合工程や水添工程は、各々、バッチ式あるいは連続式のいずれで行ってもよい。
【0043】
(重合工程)
重合工程においては、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物、及び必要に応じてその他の単量体を重合する。
重合工程で用いる重合開始剤としては、有機モノリチウム化合物等が挙げられる。
有機モノリチウム化合物としては、以下に限定されないが、例えば、低分子化合物、可溶化したオリゴマーの有機モノリチウム化合物が挙げられる。
また、有機モノリチウム化合物としては、その有機基とそのリチウムの結合様式において、例えば、炭素-リチウム結合を有する化合物、窒素-リチウム結合を有する化合物、及び錫-リチウム結合を有する化合物が挙げられる。
【0044】
重合開始剤としての有機モノリチウム化合物の使用量は、目標とする本実施形態のゴム状重合体の構造、及びゴム状重合体の分子量によって決めることが好ましい。
重合開始剤の使用量に対する、共役ジエン化合物等の単量体の使用量は、ゴム状重合体の重合度に関係する。すなわち、ゴム状重合体の数平均分子量及び/又は重量平均分子量に関係する。
したがって、分子量を増大させるためには、重合開始剤の使用量を減らす方向に調整するとよく、分子量を低下させるためには、重合開始剤の使用量を増やす方向に調整するとよい。
【0045】
重合開始剤としての有機モノリチウム化合物は、ゴム状重合体へ窒素原子を導入する一つの手法として用いる、という観点から、置換アミノ基を有するアルキルリチウム化合物、又はジアルキルアミノリチウムが好ましい。
この場合、重合開始末端にアミノ基からなる窒素原子を有する、ゴム状重合体が得られる。
置換アミノ基とは、活性水素を有しない、又は、活性水素を保護した構造の、アミノ基である。
【0046】
活性水素を有しないアミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、以下に限定されないが、例えば、3-ジメチルアミノプロピルリチウム、3-ジエチルアミノプロピルリチウム、4-(メチルプロピルアミノ)ブチルリチウム、及び4-ヘキサメチレンイミノブチルリチウムが挙げられる。
【0047】
活性水素を保護した構造のアミノ基を有するアルキルリチウム化合物としては、以下に限定されないが、例えば、3-ビストリメチルシリルアミノプロピルリチウム、及び4-トリメチルシリルメチルアミノブチルリチウムが挙げられる。
【0048】
ジアルキルアミノリチウムとしては、以下に限定されないが、例えば、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジ-n-ヘキシルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウム-ジ-2-エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムモルホリド、1-リチオアザシクロオクタン、6-リチオ-1,3,3-トリメチル-6-アザビシクロ[3.2.1]オクタン、及び1-リチオ-1,2,3,6-テトラヒドロピリジンが挙げられる。
【0049】
これらの置換アミノ基を有する有機モノリチウム化合物は、重合可能な単量体、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、スチレン等の単量体を少量反応させて、可溶化したオリゴマーの有機モノリチウム化合物として用いることもできる。
【0050】
重合開始剤としての有機モノリチウム化合物は、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、アルキルリチウム化合物が好ましい。この場合、重合開始末端にアルキル基を有する、ゴム状重合体が得られる。
前記アルキルリチウム化合物としては、以下に限定されないが、例えば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、n-ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、及びスチルベンリチウムが挙げられる。
アルキルリチウム化合物としては、工業的入手の容易さ及び重合反応のコントロールの容易さの観点から、n-ブチルリチウム、及びsec-ブチルリチウムが好ましい。
【0051】
上述した有機モノリチウム化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、他の有機金属化合物と併用してもよい。
前記他の有機金属化合物としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、他のアルカリ金属化合物、その他有機金属化合物が挙げられる。
アルカリ土類金属化合物としては、以下に限定されないが、例えば、有機マグネシウム化合物、有機カルシウム化合物、及び有機ストロンチウム化合物が挙げられる。また、アルカリ土類金属のアルコキサイド、スルフォネート、カーボネート、及びアミドの化合物も挙げられる。
有機マグネシウム化合物としては、例えば、ジブチルマグネシウム、及びエチルブチルマグネシウムが挙げられる。
その他有機金属化合物としては、例えば、有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0052】
重合工程の重合反応様式としては、以下に限定されないが、例えば、回分式(「バッチ式」ともいう。)、連続式の重合反応様式が挙げられる。
連続式においては、1個又は2個以上の連結された反応器を用いることができる。連続式の反応器は、例えば、撹拌機付きの槽型及び管型の反応器が用いられる。
連続式においては、好ましくは、連続的に単量体、不活性溶媒、及び重合開始剤が反応器にフィードされ、前記反応器内で重合体を含む重合体溶液が得られ、連続的に重合体溶液が排出される。
回分式の反応器は、例えば、攪拌機付の槽型の反応器が用いられる。
回分式においては、好ましくは、単量体、不活性溶媒、及び重合開始剤が反応器にフィードされ、必要により単量体が重合中に連続的又は断続的に追加され、当該反応器内で重合体の溶液が得られ、重合終了後に重合体の溶液が排出される。
本実施形態のゴム状重合体の製造方法において、高い割合で活性末端を有する重合体を得るには、重合体を連続的に排出し、短時間で次の反応に供することが可能な、連続式が好ましい。
【0053】
本実施形態のゴム状重合体の重合工程は、不活性溶媒中で重合することが好ましい。
不活性溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、飽和炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素系溶媒が挙げられる。
具体的な炭化水素系溶媒としては、以下に限定されないが、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素及びそれらの混合物からなる炭化水素が挙げられる。
【0054】
重合工程を実施する前に、不純物であるアレン類、及びアセチレン類を有機金属化合物で処理することで、高濃度の活性末端を有するゴム状重合体が得られる傾向にあり、また、変性工程を経て高い変性率のゴム状重合体が得られる傾向にあるため好ましい。
【0055】
重合工程においては、極性化合物を添加してもよい。これにより芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とをランダムに共重合させることができる。また、極性化合物は、共役ジエン部のミクロ構造を制御するためのビニル化剤としても用いることができる傾向にある。また、重合反応の促進等にも効果がある傾向にある。
【0056】
極性化合物としては、以下に限定されないが、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジメトキシベンゼン、2,2-ビス(2-オキソラニル)プロパン等のエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、ジピペリジノエタン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジン等の第3級アミン化合物;カリウム-tert-アミラート、カリウム-tert-ブチラート、ナトリウム-tert-ブチラート、ナトリウムアミラート等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物等が挙げられる。
これらの極性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
極性化合物の使用量は、特に限定されず、目的等に応じて選択することができるが、重合開始剤1モルに対して、0.01モル以上10モル以下であることが好ましい。
重合開始剤1モルに対して0.01モル以上10モル以下の範囲内で極性化合物を添加することにより、ゴム状重合体中の1,2-結合量が増え、反対に、1,4-結合量が低下する。その結果、ゴム状重合体中のC1+C2量が増え、C3及びC4が減る傾向にある。
【0058】
このような極性化合物(ビニル化剤)は、ゴム状重合体の共役ジエン部分のミクロ構造の調節剤として、所望の1,2-ビニル結合量に応じて、適量用いることができる。多くの極性化合物は、同時に共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合において有効なランダム化効果を有し、芳香族ビニル化合物の分布の調整やスチレンブロック量の調整剤として用いることができる傾向にある。
【0059】
共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合においてランダム化する方法としては、例えば、特開昭59-140211号公報に記載されているように、スチレンの全量と1,3-ブタジエンの一部とで共重合反応を開始させ、共重合反応の途中で残りの1,3-ブタジエンを断続的に添加する方法が挙げられる。
【0060】
重合工程における重合温度は、リビングアニオン重合が進行する温度であることが好ましく、生産性の観点から、0℃以上であることがより好ましく、120℃以下であることがさらに好ましく、よりさらに好ましくは50℃以上100℃以下である。このような温度範囲することにより、重合終了後の活性末端に対する変性剤の反応量を充分に確保することができる傾向にある。
【0061】
(分岐化工程)
本実施形態のゴム状重合体の製造方法においては、ゴム状重合体の分岐度を調整する工程をさらに実施してもよい。
ゴム状重合体の分岐度を上げる方法としては、例えば、アルコキシシリル基及び/又はハロシリル基を含む、ビニル系単量体に由来する化合物すなわち分岐化剤を用いる方法が挙げられる。
分岐化剤を重合工程中に添加し、その後、単量体を添加して重合反応を継続することにより、分岐点で分岐した高分子鎖を伸長させることができる。そして、その後に、変性剤やカップリング剤等を添加し、変性工程を実施してもよい。
【0062】
(変性工程)
上述した重合工程、及び必要に応じて所定の分岐化剤を用いた分岐化工程を経て得られた重合体の活性末端に対し、上述したカップリング剤や、窒素原子含有基を有する変性剤を用いて変性工程を実施する。
【0063】
(失活剤、中和剤)
本実施形態のゴム状重合体の製造方法においては、変性工程の後、重合体溶液に、必要に応じて、失活剤、中和剤等を添加してもよい。
失活剤としては、以下に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール等が挙げられる。
中和剤としては、以下に限定されないが、例えば、ステアリン酸、オレイン酸、バーサチック酸(炭素数9~11個で、10個を中心とする、分岐の多いカルボン酸混合物)等のカルボン酸;無機酸の水溶液、炭酸ガスが挙げられる。
【0064】
(水素添加工程)
本実施形態のゴム状重合体の製造方法は、水素添加率を90%以下になるように水素添加する工程を有する。
水素添加率は、例えば、水素添加時の水素量を調整することによって制御することができ、水素添加速度は、例えば、水素フィード量、圧力及び温度等を調整することによって制御することができる。ゴム状重合体の水素添加率は、プロトン核磁気共鳴(H-NMR)法により測定できる。
【0065】
(ゴム用安定剤の添加)
本実施形態のゴム状重合体の製造方法においては、重合後のゲル生成を防止する観点、及び加工時の安定性を向上させる観点から、ゴム用安定剤を添加することが好ましい。
ゴム用安定剤としては、以下に限定されず、公知のものを用いることができるが、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(以下「BHT」とも記す。)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェノール)プロピネート、2-メチル-4,6-ビス[(オクチルチオ)メチル]フェノール等の酸化防止剤が挙げられる。
【0066】
(脱溶媒工程)
本実施形態のゴム状重合体の製造方法において、得られた重合体を重合体溶液から取得する方法としては、公知の方法を用いることができる。その方法として、特に限定されないが、例えば、スチームストリッピング等で溶媒を分離した後、重合体を濾別し、さらにそれを脱水及び乾燥して重合体を取得する方法、フラッシングタンクで濃縮し、さらにベント押出し機等で脱揮する方法、ドラムドライヤー等で直接脱揮する方法が挙げられる。
【0067】
〔ゴム組成物〕
本実施形態のゴム組成物は、上述した本実施形態のゴム状重合体と、架橋剤とを含有し、前記架橋剤を、本実施形態のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下含有するものであることが好ましい形態である。
なお、ゴム成分とは、本実施形態の組成物を構成するゴム状重合体、及び本実施形態のゴム組成物を構成し得る従来公知の各種のその他のゴムを含む成分である。
その他のゴムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン-ブタジエンゴム(乳化重合タイヤや溶液重合タイプ)、天然ゴム、ポリイソプレン、ブタジエンゴム(ハイシスポリブタジエン、ローシスポリブタジエン、シンジオタクチック-1,2-ポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)等のエチレン-α-オレフィン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。
これらのその他のゴムは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。混合方法としては、ゴム状重合体の重合後にドライの状態で混合してもよく、ゴム状重合体の重合中に溶液状態で混合してもよい。
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシムーニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本実施形態のゴム組成物をタイヤ用とする場合は、これらの中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。特に硫黄がさらに好ましい。
【0068】
本実施形態のゴム組成物中の架橋剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。高い引張強度や高い架橋速度の観点から、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。一方、架橋ムラの抑制や高い引張強度の観点から、20質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
【0069】
本実施形態のゴム組成物は、加硫剤を含有するものとしてもよく、さらには加硫促進剤を併用してもよい。
前記加硫促進剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、グアニジン系、アルデヒドーアミン系、アルデヒドーアンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が挙げられる。
【0070】
また、本実施形態のゴム組成物は、上述した以外の、その他の軟化剤、充填剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、及び滑剤等の各種添加剤を含有してもよい。
その他の軟化剤としては、公知の軟化剤を用いることができる。
その他の充填剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸バリウムが挙げられる。
耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、老化防止剤、着色剤、及び潤滑剤としては、それぞれ公知の材料を用いることができる。
【0071】
(加硫物)
本実施形態のゴム組成物は、加硫物として好適に用いられる。
加硫物は、例えば本実施形態のゴム状重合体をシリカやカーボンブラック等の無機充填剤、本実施形態のゴム状重合体以外のゴム成分、シランカップリング剤、ゴム用軟化剤、ワックス、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤と混合して、ゴム組成物とした後、加熱して加硫することにより得ることができる。
本実施形態のゴム組成物に含まれるゴム成分の種類や含有比率を同定する方法は特に限定されないが、NMRを用いることで同定する方法が挙げられる。
例えば、既報(JSR TECHNICAL REVIEW No.126/2019)に記載されているように、固体13C-NMRを用いることで、ゴム組成物中に含まれるスチレンユニット、1,2-ビニル結合量、1,4-ビニル結合量、1,4-シス結合量、やイソプレンユニットの比率を定量的に算出することができる。
【0072】
(シリカ)
本実施形態のゴム組成物は、シリカを含むものとすることができる。
ゴム組成物中のシリカの含有量は、本実施形態のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部に対し、30質量部以上100質量部以下が好ましい。
本実施形態のゴム組成物をタイヤに使用したときのグリップ性能や操縦安定性向上の観点から、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対し、60質量部以上が好ましく、65質量部以上がより好ましく、75質量部以上がさらに好ましい。またタイヤに使用したときの省燃費性能が向上する観点から、100質量部以下が好ましく、90質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
シリカは、特に限定されず公知のものを用いることができるが、SiO2又はSi3Alを構成単位として含む固体粒子が好ましく、SiO2又はSi3Alを構成単位の主成分として含む固体粒子がより好ましい。ここで、主成分とは、シリカ中に50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上含有される成分をいう。
シリカとしては、以下に限定されないが、例えば、二酸化ケイ素、クレイ、タルク、マイカ、珪藻土、ウォラストナイト、モンモリロナイト、ゼオライト、及びガラス繊維等の無機繊維状物質が挙げられる。
シリカの市販品として、例えば、エボニック デグサ社製の商品名「Ultrasil 7000GR」が挙げられる。
また、シリカとしては、表面を疎水化したシリカ系無機充填剤を用いることができ、シリカ系無機充填剤は、シリカ系以外の無機充填剤と併用してもよい。
これらの中でも、強度及び耐摩耗性の観点から、二酸化ケイ素、及びガラス繊維が好ましく、二酸化ケイ素がより好ましい。
シリカとしては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、合成ケイ酸塩シリカが挙げられる。これらの中でも、破壊特性の改良効果及びウェットグリップ特性のバランスに優れる観点から、湿式シリカがさらに好ましい。
本実施形態のゴム組成物において、実用上良好な耐摩耗性や破壊特性を得る観点から、シリカ系無機充填剤を含有する場合、当該シリカ系無機充填剤のBET吸着法で求められる窒素吸着比表面積は、100m2/g以上300m2/g以下が好ましく、170m2/g以上250m2/g以下がより好ましい。
また必要に応じて、比較的に比表面積が小さい(例えば、比表面積が200m2/g未満のシリカ系無機充填剤)と、比較的に比表面積の大きい(例えば、200m2/g以上のシリカ系無機充填剤)と、を組み合わせて用いることができる。これにより、良好な耐摩耗性及び破壊特性と、省燃費特性とを高度にバランスさせることができる。
【0073】
(シランカップリング剤)
本実施形態のゴム組成物は、充填剤の分散性の改善や架橋体の引張強度の向上の観点から、シランカップリング剤を含んでもよい。
シランカップリング剤としては、ゴム成分と無機充填剤との相互作用を緊密にする機能を有し、ゴム成分及び充填剤のそれぞれに対する親和性又は結合性の基を有し、硫黄結合部分とアルコキシシリル基又はシラノール基部分とを一分子中に有する化合物が好ましい。
このような化合物としては、以下に限定されないが、例えば、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]-ジスルフィド、ビス-[2-(トリエトキシシリル)-エチル]-テトラスルフィド、S-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]オクタンチオエート、S-[3-(トリエトキシシリル)-プロピル]オクタンチオエートと[(トリエトキシシリル)-プロピル]チオールの縮合物、少なくとも1個のチオール官能基(-SH)を有するメルカプトシラン、少なくとも1個のマスクトチオール基を担持するシラン類が挙げられる。
【0074】
本実施形態のゴム組成物中のシランカップリング剤の含有量は、本実施形態のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、1.0質量部以上がさらに好ましい。また、30質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましく、15質量部以下がさらに好ましい。
シランカップリング剤の含有量が上記範囲であると、シランカップリング剤による上記添加効果を一層顕著なものにできる傾向にある。
【0075】
(カーボンブラック)
本実施形態のゴム組成物は、本実施形態のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、カーボンブラックを1質量部以上100質量部以下、含有することが好ましい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SRF、FEF、HAF、ISAF、SAF等の各クラスのカーボンブラックが使用できる。これらの中でも、押し出し成形性の観点、及び転がり抵抗特性の観点から、窒素吸着比表面積が50m2/g以上であり、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が80mL/100g以上であるカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの含有量は、耐摩耗性が向上する観点から、ゴム成分100質量部に対し1質量部以上が好ましく、3質量部以上がより好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また省燃費性能が向上する観点から、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。
【0076】
(軟化剤)
本実施形態のゴム組成物は、本実施形態のゴム状重合体を含むゴム成分100質量部と、軟化剤を1質量部以上60質量部以下、含有することが好ましい。
軟化剤としては、特に限定されず、例えば、伸展油、低分子のゴム状重合体、樹脂等が挙げられるが、加工性や生産性や経済性の観点から、伸展油が好ましい。また、タイヤ用のゴム組成物の耐摩耗性の観点から架橋に寄与することができる低分子のゴム状重合体が好ましい。
好ましい軟化剤としては、以下に限定されないが、例えば、アロマ油、ナフテン油、パラフィン油等が挙げられる。
これらの中でも、環境安全上の観点、並びにオイルブリード防止及びウェットグリップ特性の観点から、IP346法による多環芳香族(PCA)成分が3質量%以下であるアロマ代替油が好ましい。
アロマ代替油としては、例えば、Kautschuk Gummi Kunststoffe 52(12)799(1999)に示されるTDAE(Treated Distillate Aromatic Extracts)、MES(Mild Extraction Solvate)等の他、RAE(Residual Aromatic Extracts)が挙げられる。
本実施形態のゴム組成物において、軟化剤の含有量は、加工性の観点から、ゴム成分100質量部に対し、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上がさらに好ましい。また耐摩耗性の観点から、60質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、40質量部以下がさらに好ましい。
【0077】
(ゴム組成物の混練り方法)
本実施形態のゴム状重合体及びその他のゴムを含むゴム成分、架橋剤、シリカ、カーボンブラックやその他の充填剤、シランカップリング剤、軟化剤等の添加剤を混合する方法については、以下のものに限定されないが、例えば、オープンロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法や、各成分を溶解混合後、溶剤を加熱除去する方法が挙げられる。
これらの方法うち、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、押出機による溶融混練方法が生産性、良混練性の観点から好ましい。また、ゴム成分と充填剤、シランカップリング剤、及び添加剤とを一度に混練する方法、複数の回数に分けて混合する方法のいずれも適用可能である。
【0078】
〔用途〕
本実施形態のゴム組成物は、好ましくは架橋用ゴム組成物として、タイヤ部材、自動車の内装及び外装材、防振ゴム、ベルト、履物、発泡体、各種工業用品等に利用できる。
これらの中でも、タイヤ部材に好適に用いられる。
タイヤ部材としては、省燃費タイヤ、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、スノー用タイヤ、スタッドレスタイヤ等の各種タイヤ;タイヤ用トレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部等のタイヤを構成する部位が挙げられる。
特に、本実施形態のゴム組成物は、加硫物としたときに耐摩耗性能、省燃費性能、ウェットグリップ特性及びスノー性能とのバランスに優れているため、省燃費タイヤや高性能タイヤ用、スノー用タイヤのタイヤトレッド用として、好適に用いられる。
タイヤの製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫の架橋用ゴム組成物及びコードよりなる群から選択される少なくとも1つのカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【実施例
【0079】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて、本実施形態を更に詳しく説明するが、本実施形態は以下の実施例及び比較例により何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例における各種の物性は下記に示す方法により測定した。
【0080】
(水素添加前のゴム状重合体の、ブタジエン部分のミクロ構造(1,2-ビニル結合量))
水素添加前のゴム状重合体50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。
溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量(mol%)を求めた(測定装置:日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
【0081】
(ゴム状重合体の重量平均分子量)
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置を使用して、クロマトグラムを測定し、標準ポリスチレンを使用した検量線に基づいて、ゴム状重合体の重量平均分子量を求めた。
溶離液は、5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。
カラムは、ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperH-H」、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、「TSKgel SuperH7000」を使用した。
オーブン温度40℃、THF流量0.6mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いた。
測定用の試料10mgを20mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液20μLをGPC測定装置に注入して測定した。
【0082】
(ゴム状重合体の変性率)
ゴム状重合体の変性率を、カラム吸着GPC法で以下のとおり測定した。窒素原子含有官能基で変性したゴム状重合体がカラムに吸着する特性を利用し、測定した。
試料及び低分子量内部標準ポリスチレンを含む試料溶液を、ポリスチレン系カラムで測定したクロマトグラムと、シリカ系カラムで測定したクロマトグラムと、の差分よりシリカ系カラムへの吸着量を測定し、変性率を求めた。
具体的には、以下に示すとおりである。
<試料溶液の調製> :
試料10mg及び標準ポリスチレン5mgを20mLのTHFに溶解させて、試料溶液とした。
5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHFを溶離液として用い、試料溶液20μLを装置に注入して測定した。カラムは、ガードカラム:東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperH-H」、カラム:東ソー社製の商品名「TSKgel SuperH5000」、「TSKgel SuperH6000」、「TSKgel SuperH7000」を使用した。カラムオーブン温度40℃、THF流量0.6mL/分の条件で、RI検出器(東ソー社製 HLC8020)を用いて測定しクロマトグラムを得た。
<シリカ系カラムを用いたGPC測定条件>:
東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」を使用して、THFを溶離液として用い、試料溶液50μLを装置に注入し、カラムオーブン温度40℃、THF流量0.5ml/分の条件で、RI検出器を用いてクロマトグラムを得た。カラムは、商品名「Zorbax PSM-1000S」、「PSM-300S」、「PSM-60S」を接続して使用し、その前段にガードカラムとして商品名「DIOL 4.6×12.5mm 5micron」を接続して使用した。
<変性率の計算方法> :
ポリスチレン系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP1、標準ポリスチレンのピーク面積をP2、シリカ系カラムを用いたクロマトグラムのピーク面積の全体を100として、試料のピーク面積をP3、標準ポリスチレンのピーク面積をP4として、下記式より変性率(%)を求めた。
変性率(%)=[1-(P2×P3)/(P1×P4)]×100
(ただし、P1+P2=P3+P4=100)
【0083】
(ゴム状重合体のケイ素含有量)
ゴム状重合体を試料として、ICP質量分析装置(アジレント・テクノロジー社製Agilnet7700s)を用いて、ケイ素含有量の測定を行った。
【0084】
(ゴム状重合体の水素添加率、及びC1、C2、C3、C4、S)
水添反応後のゴム状重合体の反応液に、大量のメタノールを添加することで、水素添加前のゴム状重合体及び水添ゴム状重合体を沈殿させて回収した。
次いで、水添ゴム状重合体をアセトンで抽出し、水添ゴム状重合体を真空乾燥した。
これを、H-NMR測定のサンプルとして用いて、水素添加率、式(1)~(4)で表される構造の含有量C1、C2、C3、C4、芳香族ビニル単量体単位の含有量Sを測定した。
H-NMR測定の条件を以下に記す。
<測定条件>
測定機器 :JNM-LA400(JEOL製)
溶媒 :重水素化クロロホルム
測定サンプル :ポリマーを水素添加する前後の抜き取り品
サンプル濃度 :50mg/mL
観測周波数 :400MHz
化学シフト基準:TMS(テトラメチルシラン)
パルスディレイ:2.904秒
スキャン回数 :64回
パルス幅 :45°
測定温度 :26℃
【0085】
(ゴム状重合体のスチレン量(質量%))
ゴム状重合体を試料として、試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料中のスチレン量(質量%)を測定した(測定装置:島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
【0086】
(ゴム状重合体の窒素含有量)
ゴム状重合体を試料として、微量窒素分析装置(日東精工アナリテック TN-2100H)を用いて、窒素含有量の測定を行った。
【0087】
(ゴム状重合体のムーニー粘度(ML))
ゴム状重合体を試料として、ISO289に規定されている方法に従い測定した。
表1中に100℃で測定したムーニー粘度の値をMLとして記載した。
また、Mw/(ML×10000)を算出した。
【0088】
〔ゴム状重合体の製造〕
(水素添加触媒の調製)
後述する製造例においてゴム状重合体を調製する際に用いる水素添加触媒を、下記の製造例αの方法により調製した。
<製造例α>
窒素置換した反応容器に乾燥及び精製したシクロヘキサン1リットルを仕込み、ビス(η5-シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド100ミリモルを添加し、十分に攪拌しながらトリメチルアルミニウム200ミリモルを含むn-ヘキサン溶液を添加して、室温にて約3日間反応させ水素添加触媒(TC-1)を得た。
【0089】
(ゴム状重合体の重合)
<(実施例1)ゴム状重合体A1>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3,046g、スチレンを344.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン16.6gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.7gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを909.9g添加した。
追加ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン3.8gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体A1を得た。
得られたゴム状重合体A1の水素添加率は68mоl%であった。
得られたゴム状重合体の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体A1の分析値を表1に示す。
【0090】
<(実施例2)ゴム状重合体A2>
水素添加量以外の製造条件は、実施例1と同様にして、ゴム状重合体A2を得た。
ゴム状重合体A2の分析値を表1に示す。
【0091】
<(実施例3)ゴム状重合体A3>
極性化合物の、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加量を7.5gに変更し、かつ、水素添加量を変更した。その他の条件は実施例1と同様にして、ゴム状重合体A3を得た。
ゴム状重合体A3の分析値を表1に示す。
【0092】
<(実施例4)ゴム状重合体A4>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを2,748g、スチレンを731.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン15.2gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.7gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを820.9g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン3.8gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体A4を得た。
得られたゴム状重合体A4の水素添加率は68mоl%であった。
得られたゴム状重合体A4の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体A4の分析値を表1に示す。
【0093】
<(実施例5)ゴム状重合体A5>
水素添加量以外の製造条件は実施例4と同様にして、ゴム状重合体A5を得た。
ゴム状重合体A5の分析値を表1に示す。
【0094】
<(実施例6)ゴム状重合体A6>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを2、483g、スチレンを1075.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン15.2gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.7gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを741.8g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン3.8gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体A6を得た。
得られたゴム状重合体A6の水素添加率は72mоl%であった。
得られたゴム状重合体A6の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体A6の分析値を表1に示す。
【0095】
<(実施例7)ゴム状重合体A7>
水素添加量以外の製造条件は実施例6と同様にして、ゴム状重合体A7を得た。
ゴム状重合体A7の分析値を表1に示す。
【0096】
<(実施例8)ゴム状重合体A8>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3、046g、スチレンを344.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン14.1gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.1gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを909.9g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン3.3gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体A8を得た。
得られたゴム状重合体A8の水素添加率は68mоl%であった。
得られたゴム状重合体A8の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体A8の分析値を表1に示す。
【0097】
<(実施例9)ゴム状重合体A9>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3、046g、スチレンを344.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン20.5gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム4.6gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを909.9g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン4.9gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体A9を得た。
得られたゴム状重合体A9の水素添加率は68mоl%であった。
得られたゴム状重合体A9の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体A9の分析値を表1に示す。
【0098】
<(実施例10)ゴム状重合体A10>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3、046g、スチレンを344.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン11.0gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム2.4gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを909.9g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン2.6gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体A10を得た。
得られたゴム状重合体A10の水素添加率は69mоl%であった。
得られたゴム状重合体A10の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体A10の分析値を表1に示す。
【0099】
<(実施例11)ゴム状重合体A11>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3、046g、スチレンを344.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン12.9gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム2.9gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを909.9g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン2.1gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体A11を得た。
得られたゴム状重合体A11の水素添加率は68mоl%であった。
得られたゴム状重合体A11の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体A11の分析値を表1に示す。
【0100】
<(実施例12)ゴム状重合体A12>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3、046g、スチレンを344.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン9.5gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム2.1gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを909.9g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン2.2gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体A12を得た。
得られたゴム状重合体A12の水素添加率は69mоl%であった。
得られたゴム状重合体A12の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体A12の分析値を表1に示す。
【0101】
<(比較例1)ゴム状重合体B1>
水素添加量以外の製造条件は実施例1と同様にして、ゴム状重合体B1を得た。
ゴム状重合体B1の分析値を表2に示す。
【0102】
<(比較例2)ゴム状重合体B2>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3、112g、スチレンを258.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン16.7gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.8gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを929.7g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン4.0gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体B2を得た。
得られたゴム状重合体B2の水素添加率は68mоl%であった。
得られたゴム状重合体B2の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体B2の分析値を表2に示す。
【0103】
<(比較例3)ゴム状重合体B3>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを2、318g、スチレンを1290.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン8.7gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.1gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを692.3g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン3.3gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体B3を得た。
得られたゴム状重合体B3の水素添加率は55mоl%であった。
得られたゴム状重合体B3の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体B3の分析値を表2に示す。
【0104】
<(比較例4)ゴム状重合体B4>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3、046g、スチレンを344.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン4.1gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.7gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを909.9g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン4.0gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体B4を得た。
得られたゴム状重合体B4の水素添加率は37mоl%であった。
得られたゴム状重合体B4の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体B4の分析値を表2に示す。
【0105】
<(比較例5)ゴム状重合体B5>
極性化合物の、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパンの添加量を23.1gに変更し、重合開始剤のn-ブチルリチウムの添加量を5.1gに変更し、変性剤の添加量を5.5gに変更し、かつ、水素添加量を変更した点以外は、実施例9と同様にして、ゴム状重合体B5を得た。
ゴム状重合体B5の分析値を表2に示す。
【0106】
<(比較例6)ゴム状重合体B6>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを3,046g、スチレンを344.0g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン16.6gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.7gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを909.9g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、カップリング剤である四塩化ケイ素2.2gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体B6を得た。
得られたゴム状重合体B6の水素添加率は68mоl%であった。
得られたゴム状重合体B6の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体B6の分析値を表2に示す。
【0107】
<(比較例7)ゴム状重合体B7>
水素添加量以外の製造条件は実施例1と同様にして、ゴム状重合体B7を得た。
ゴム状重合体B7の分析値を表2に示す。
【0108】
<(比較例8)ゴム状重合体B8>
内容積43Lで、撹持機及びジャケットを具備する温度制御が可能なオートクレーブを反応器として使用し、予め不純物を除去した、1,3-ブタジエンを2、318g、スチレンを1290g、シクロヘキサンを25,800g、極性化合物として、2,2-ジ(2-テトラヒドロフリル)プロパン9.5gを、反応器へ入れ、反応器内温を42℃に保持した。
続けて、重合開始剤として、n-ブチルリチウム3.0gを前記反応器に供給した。
重合反応開始後、重合による発熱で反応器内の温度は上昇を始め、温度の上昇が確認されなくなったら追加の1,3-ブタジエンを692.3g添加した。
追加の1,3-ブタジエンの反応熱による反応器内の温度上昇が終了したら、変性剤である2,2-ジメトキシ-1-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,2-アザシロリジン3.2gを反応器内へ添加し、5分間攪拌した。一部重合溶液を抜き出し、乾燥させることで、水素添加前のゴム状重合体を得た。
その後、水素添加前のゴム状重合体溶液に、前記<製造例α>で調製した水素添加触媒(TC-1)を、水素添加前のゴム状重合体100質量部当たり、Ti基準で60ppm添加し、水素圧0.8MPa、平均温度85℃で水素添加反応を50分間行い、ゴム状重合体B8を得た。
得られたゴム状重合体B8の水素添加率は90mоl%であった。
得られたゴム状重合体B8の溶液に、酸化防止剤としてn-オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロオキシフェニル)-プロピオネートを12.6gと、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾールを3.0g添加した。
ゴム状重合体B8の分析値を表2に示す。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
〔実施例13~36〕、〔比較例9~16〕、〔参照例〕
(架橋用ゴム組成物の調製、物性評価)
表1~表2に示す、実施例1~12で得られたゴム状重合体A1~A12、比較例1~8で得られたゴム状重合体B1~B8、及び旭化成 株式会社製 Y031(スチレン含有量 25質量%、1,2-ビニル結合量58mol% in ブタジエン)を原料ゴムとして、以下に示す配合に従い、それぞれの原料ゴムを含有する架橋用ゴム組成物を得た。
配合条件は以下に示す。
【0112】
(配合条件)
表3~表5中の各配合剤の添加量は、ゴム用軟化剤を含まないゴム成分100質量部に対する質量部数で示した。
・ゴム組成物A1~A12、B1~B8、Y031:100.0質量部
・シリカ1:エボニックデグッサ社製のVN3(N2SA:175m/g)
・シリカ2:ソルベイジャパン(株)製の115GR(N2SA:115m/g)
・シリカ3:エボニックデグッサ社製の9000GR(N2SA:235m/g)
・カーボン1:三菱化学(株)製のダイアブラックN339(N2SA:96m/g、DBP吸収量:124mL/100g)
・カーボン2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(N2SA:75m/g)
・軟化剤1:出光興産(株)製のダイアナプロセスAH-24(アロマオイル)
・軟化剤2:出光興産(株)製のPS-32(ミネラルオイル)
・軟化剤3:アリゾナケミカル社製のSYLVARES SA85(αメチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点:85℃)
・軟化剤4:Rutgers Chemicals社製のNOVARES C100(クマロンインデン樹脂、軟化点:95~105℃)
・軟化剤5:クラレ社製のクラプレンLIR30(液状IR、重量平均分子量:29000)
・軟化剤6:KRATON 社製のsylvatraxx 4150(ポリテルペン樹脂、軟化点:150℃)
・軟化剤7:サートマー社製のRICON100(液状SBR、スチレン含量:20質量%、ビニル含量:70質量%、重量平均分子量:4500)
・軟化剤8:DRT社製のDercolyte L120(ポリリモネン樹脂、軟化点:120℃)
・シランカップリング剤1:エボニックデグッサ社製のSi266
・シランカップリング剤2:エボニックデグッサ社製のSi69
・シランカップリング剤3:エボニックデグッサ社製のSi363
・老化防止剤:大内新興化学(株)製のノクラック6C
・ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
・酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
・ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
・硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
・加硫促進剤1:加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ
・加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD
【0113】
(混練り方法、及びゴム組成物の成形性の評価)
上記材料を、次の方法により混練して架橋用ゴム組成物を得た。
表3~表5に記載する配合に従い、各実施例及び比較例のゴム組成物を調製した。
温度制御装置を備える密閉混練機(内容量0.3L)を使用し、第一段の混練として、充填率65%、ローター回転数30~50rpmの条件で、ゴム成分、シリカ、カーボンブラック、シランカップリング剤、軟化剤、亜鉛華及びステアリン酸を混練した。
このとき、密閉混合機の温度を制御し、排出温度は155~160℃で各ゴム組成物(配合物)を得た。
次に、第二段の混練として、上記で得た配合物を室温まで冷却後、老化防止剤を加え、シリカの分散を向上させるため再度混練した。この場合も、混合機の温度制御により、配合物の排出温度を155~160℃に調整した。
冷却後、第三段の混練として、70℃に設定したオープンロールにて、硫黄、加硫促進剤1、2を加えて混練した。混練り後、オープンロールから排出される架橋用ゴム組成物のシート表面粗さから、ゴム組成物の成形性の評価を行った。
その後成形し、160℃で、加硫プレスにて加硫し、加硫後のゴム組成物を評価した。
加硫時間は後述の方法で測定したそれぞれのサンプルのT90(分)に5分を足した値とした。
具体的には、下記の方法により評価した。評価結果を表3~表5に示す。
【0114】
<評価1:ゴム組成物の加硫速度>
ゴム組成物の加硫速度評価は、モンテック社製 MDR3000を用い、ISO6502に従い、加硫時間T90(分)を測定した。
表3~表5には、参照例のT90を100として数値化し、以下の指標に従い評価した。
〇:ゴム組成物の加硫速度の指数が95以上
△:ゴム組成物の加硫速度の指数が80以上95未満
×:ゴム組成物の加硫速度の指数が80未満
【0115】
<評価2:ゴム組成物の省燃費性能>
レオメトリックス・サイエンティフィック社製の粘弾性試験機「ARES」を使用し、ねじりモードで粘弾性パラメータを測定した。50℃において周波数10Hz、ひずみ3%で測定したtanδを省燃費性能の指標とし、参照例の省燃費速度を100と数値化し、以下の指標に従い評価した。
◎:加硫物の省燃費性能の指数が110以上
○:加硫物の省燃費性能の指数が105以上110未満
△:加硫物の省燃費性能の指数が95以上105未満
×:加硫物の省燃費性能の指数が95未満
【0116】
<評価3:引張強度>
JIS K6251の引張試験法に準拠し、引張強度を測定した。
表3~表5には、参照例の引張強度を100と数値化し、以下の指標に従い評価した。
◎:加硫物の引張強度の指数が110以上
○:加硫物の引張強度の指数が105以上110未満
△:加硫物の引張強度の指数が95以上105未満
×:加硫物の引張強度の指数が95未満
【0117】
<評価4 引き裂き強度>
JIS K6252の試験方法Aトラウザ形試験片を用いる方法に準拠し、引き裂き強度を測定した。
表3~表5には、参照例の引張強度を100と数値化し、以下の指標に従い評価した。
◎:加硫物の引き裂き強度の指数が110以上
○:加硫物の引き裂き強度の指数が105以上110未満
△:加硫物の引き裂き強度の指数が95以上105未満
×:加硫物の引き裂き強度の指数が95未満
【0118】
【表3】
【0119】
【表4】
【0120】
【表5】
表3~表5に示す通り、実施例13~36は、比較例9~16に比べ、各評価結果において×が無く、加硫速度、省燃費性能、引張強度、及び引き裂き強度のバランスに優れていることを確認した。
【0121】
本出願は、2021年1月28日に日本国特許庁に出願された日本特許出願(特願2021-011623)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明のゴム状重合体は、タイヤトレッド、自動車の内装材及び外装材、防振ゴム、ベルト、履物、発泡体、及び各種工業用品等の分野において産業上の利用可能性がある