(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのサセプタ組立品
(51)【国際特許分類】
A24F 40/465 20200101AFI20240723BHJP
A24F 40/20 20200101ALI20240723BHJP
【FI】
A24F40/465
A24F40/20
(21)【出願番号】P 2023033039
(22)【出願日】2023-03-03
(62)【分割の表示】P 2019553313の分割
【原出願日】2018-03-29
【審査請求日】2023-04-03
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ロソル アンドレアス ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フルサ オレグ
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-525341(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102877016(CN,A)
【文献】国際公開第2015/177045(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体及び前記エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのサセプタ組立品を備えるエアロゾル発生物品であって、前記サセプタ組立品は第一のサセプタおよび第二のサセプタを備え、前記第二のサセプタが前記エアロゾル形成基体の発火点より低いキュリー温度を有し、前記第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分が腐食防止被覆を備え、かつ前記第一のサセプタの外表面の少なくとも一部分が露出されている、エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記腐食防止被覆が、耐食性金属、不活性金属、耐食性合金、耐食性有機コーティング、ガラス、セラミック、ポリマー、腐食防止塗料、ワックス、またはグリースのうちの少なくとも一つを含む、請求項1に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項3】
前記腐食防止被覆が常磁性である、請求項1または2に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項4】
前記第一のサセプタが強磁性ステンレス鋼を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項5】
前記第二のサセプタがニッケルまたはニッケル合金を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項6】
前記第二のサセプタのキュリー温度は、前記第一のサセプタの所定の最高加熱温度に対応する、請求項1~5のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項7】
前記第一のサセプタもしくは前記第二のサセプタまたは前記第一のサセプタと前記第二のサセプタとの両方が、平面状の形状またはブレード様の形状を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項8】
前記第一のサセプタおよび前記第二のサセプタが、相互に密接な物理的接触をしている、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項9】
前記サセプタ組立品が多層サセプタ組立品であり、かつ前記第一のサセプタ、前記第二のサセプタ、および前記腐食防止被覆が前記多層サセプタ組立品の隣接した層を形成する、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項10】
前記腐食防止被覆が前記多層サセプタ組立品の縁層である、請求項9に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項11】
前記第一のサセプタと密接な物理的接触をしている場合を除き、前記第二のサセプタの外表面のすべての部分が腐食防止被覆を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項12】
前記第二のサセプタと密接な物理的接触をしていない限り、前記第一のサセプタの外表面のすべての部分が露出されている、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項13】
前記第二のサセプタが、一つ以上の第二のサセプタ要素を備え、各々が前記第一のサセプタと密接な物理的接触をしており、各々の第二のサセプタ要素の外表面の少なくとも一部分が腐食防止被覆を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項14】
前記サセプタ組立品が、前記エアロゾル形成基体内に包埋されている、請求項1~13のいずれかに記載のエアロゾル発生物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのサセプタ組立品、およびこうした組立品を製造するための方法に関する。本発明は、エアロゾル形成基体を備えるエアロゾル発生物品と、基体を誘導加熱するためのサセプタ組立品とに、さらに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱に伴い吸入可能なエアロゾルを形成するエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品は、先行技術から一般的に周知である。基体を加熱するために、エアロゾル発生物品は、電気ヒーターを備えるエアロゾル発生装置の中に受容されてもよい。ヒーターは、誘導源を備える誘導ヒーターであってもよい。誘導源は、熱を発生する渦電流および/またはヒステリシス損失をサセプタ内に誘起する交流電磁場を発生する。サセプタ自体は、加熱されるエアロゾル形成基体と熱的に近接している。特に、サセプタは、エアロゾル形成基体と直接的に物理的接触をしている物品内に統合されてもよい。
【0003】
基体の温度を制御するために、異なる材料で作製された第一のサセプタおよび第二のサセプタを備えるサセプタ組立品が提案されてきた。第一のサセプタ材料は、熱損失に関して、それ故に加熱効率に関して最適化されている。対照的に、第二のサセプタ材料は温度マーカーとして使用される。このために、第二のサセプタ材料は、サセプタ組立品の所定の加熱温度に対応するキュリー温度を有するように選ばれる。そのキュリー温度にて、第二のサセプタの磁性は強磁性から常磁性に変化し、その電気抵抗の一時的な変化が伴う。それ故に、誘導源によって吸収された電流の対応する変化を監視することによって、第二のサセプタ材料がそのキュリー温度に達した時に、およびそれ故に、所定の加熱温度に達した時に、その変化を検知することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第二のサセプタの材料は、大半の用途に良好に適したキュリー温度を有する純粋なニッケルまたはニッケル合金を含んでもよい。しかしながら、ニッケルまたはニッケル合金は、長時間にわたりエアロゾル形成基体と接触している時に、経時劣化、とりわけ腐食の対象となるリスクがある場合がある。これは、エアロゾル形成基体内に包埋されたサセプタを有するこれらのエアロゾル発生物品に対して特に予想されるものである。
【0005】
従って、先行技術の解決策の利点を有しながらも、それらだけにとどまらない、エアロゾル形成基体の誘導加熱のためのサセプタ組立品を有することが望ましいことになる。特に、改善された経時特性を有するサセプタ組立品およびこうしたサセプタ組立品を含むエアロゾル発生物品を有することが望ましいことになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのサセプタ組立品が提供されていて、これは第一のサセプタおよび第二のサセプタを備える。第二のサセプタは500℃より低いキュリー温度を有する。第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分は、腐食防止被覆を備える。対照的に、第一のサセプタの外表面の少なくとも一部分は露出されている。
【0007】
本明細書で使用される「サセプタ」という用語は、変化する電磁場に供された時に電磁エネルギーを熱へと変換する能力を有する要素を指す。これは、サセプタ材料の電気特性および磁性に依存して、サセプタ内で誘導されるヒステリシス損失および/または渦電流の結果でありうる。サセプタ組立品の材料および幾何学的形状は、所望の発熱を提供するように選ぶことができる。
【0008】
第一のサセプタはまた、キュリー温度を有することが好ましい。有利なことに、第一のサセプタのキュリー温度は、第二のサセプタのキュリー温度とは別のものであり、とりわけ第二のサセプタのキュリー温度より高い。
【0009】
本明細書で使用される「第一のサセプタはキュリー温度を有する」または「第二のサセプタはキュリー温度を有する」という文言は、第一のサセプタまたは第二のサセプタがそれぞれ、第一のサセプタ材料または第二のサセプタ材料を含んでもよく、それぞれが特定のキュリー温度を有していることを意味する。従って、第一のサセプタ材料は第一のキュリー温度を有してもよく、また第二のサセプタ材料は第二のキュリー温度を有してもよい。キュリー温度は、フェリ磁性または強磁性材料がこれより高い温度ではそれぞれそのフェリ磁性または強磁性を失い、常磁性になる温度である。
【0010】
第二のサセプタがキュリー温度を有し、かつ第一のサセプタがキュリー温度を有しないか、または第一のサセプタおよび第二のサセプタが各々互いに別のキュリー温度を有するかのいずれかである、少なくとも第一のサセプタおよび第二のサセプタを有することによって、サセプタ組立品は、誘導加熱および加熱温度の制御などの複数の機能性を提供してもよい。特に、これらの機能性は、少なくとも二つの異なるサセプタの存在に起因して分離されてもよい。
【0011】
第一のサセプタは、エアロゾル形成基体を加熱するために構成されていることが好ましい。このために、第一のサセプタは、熱損失に関して、それ故に加熱効率に関して最適化されてもよい。
【0012】
第一のサセプタ、すなわち第一のサセプタの材料は、400℃を超えるキュリー温度を有してもよい。
【0013】
第一のサセプタは腐食防止材料で作製されていることが好ましい。それ故に、第一のサセプタは有利なことに、任意の腐食性の影響に対して耐性があり、とりわけサセプタ組立品が、エアロゾル形成基体と直接的に物理的接触をしているエアロゾル発生物品内に包埋されている場合に、耐性がある。
【0014】
第一のサセプタは強磁性金属を含んでもよい。この場合、渦電流のみによって熱を発生することができないだけでなく、ヒステリシス損失によっても熱を発生することはできない。第一のサセプタは鉄または鉄合金(鋼など)、または鉄ニッケル合金を含むことが好ましい。第一のサセプタは、グレード410のステンレス鋼、またはグレード420のステンレス鋼、またはグレード430のステンレス鋼、または類似のグレードのステンレス鋼などの、400シリーズのステンレス鋼を含むことが特に好ましい場合がある。
【0015】
別の方法として、第一のサセプタ材料は適切な非磁性材料、とりわけ常磁性の導電性材料(アルミニウムなど)を含んでもよい。非磁性導電性材料では、誘導加熱は渦電流に起因する抵抗加熱によってのみ生じる。
【0016】
別の方法として、第一のサセプタは、非導電性のフェリ磁性セラミックなどの非導電性のフェリ磁性材料を含んでもよい。その場合、熱はヒステリシス損失によってのみ発生する。
【0017】
対照的に、第二のサセプタはサセプタ組立品の温度を監視するために最適化および構成されてもよい。第二のサセプタは、第一のサセプタの所定の最高加熱温度に本質的に対応するキュリー温度を有するように選択されてもよい。所望の最高加熱温度は、エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生するために、サセプタが加熱されるべき温度とほぼ同じ温度であるように定義されてもよい。しかしながら、所望の最高加熱温度は、エアロゾル形成基体の局所的な過熱または燃焼を回避するために十分に低い温度であるべきである。第二のサセプタのキュリー温度はエアロゾル形成基体の発火点より低いべきであることが好ましい。第二のサセプタは、500℃未満、好ましくは400℃以下、とりわけ370℃以下の検知可能キュリー温度を有するように選択される。例えば、第二のサセプタは、150℃~400℃の、とりわけ200℃~400℃の特定のキュリー温度を有してもよい。キュリー温度および温度マーカー機能は第二のサセプタの一次的な特性であるが、これはまた、サセプタの加熱に貢献する場合がある。
【0018】
第二のサセプタ材料は、ニッケルまたはニッケル合金などの強磁性金属を含むことが好ましい。ニッケルは、不純物の性質に依存して、約354℃~360℃、すなわち627K~633Kの範囲のキュリー温度を有する。この範囲のキュリー温度は、エアロゾル形成基体からエアロゾルを発生させるためにサセプタを加熱するべき温度とほぼ同一であるが、依然としてエアロゾル形成基体の局所的な過熱または燃焼を回避するために十分に低い温度であるため、理想的である。
【0019】
本発明によると、第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分は、腐食防止被覆を備える。有利なことに、腐食防止被覆は、第二のサセプタの外表面の少なくとも被覆された部分が環境に直接露出されないため、第二のサセプタの経時特性を改善する。特に、第二のサセプタの外表面の被覆された部分は、とりわけサセプタ組立品がエアロゾル形成基体と直接的に物理的接触をしているエアロゾル発生物品内に包埋されている場合に、いかなる腐食性の影響からも保護される。有利なことに、第二のサセプタの外表面の少なくともその部分(複数可)は腐食防止被覆を備えてもよく、そうでなければその部分(複数可)はエアロゾル形成基体と直接接触することになる。
【0020】
本明細書で使用される「腐食防止被覆」という用語は、第一のサセプタおよび第二のサセプタとは異なり、これらから分離された被覆を指す。特に、第一のサセプタまたは第二のサセプタの表面上に存在する可能性があり、かつそれぞれ第一のサセプタまたは第二のサセプタの材料の酸化からもたらされる任意の酸化物層は、本発明による腐食防止被覆とは考えられない。
【0021】
第二のサセプタの腐食防止保護を最大化するためには、第二のサセプタの外表面のすべての部分は、第一のサセプタと密接な物理的接触をしない限り、腐食防止被覆を備えてもよい。
【0022】
これとは対照的に、第一のサセプタの外表面の少なくとも一部分は、保護されていない、すなわちむき出しであり、環境に露出されているか、または環境と直接接触している。特に、サセプタ組立品がエアロゾル形成基体内に包埋されている場合、第一のサセプタの外表面の少なくとも一部分は、エアロゾル形成基体に露出され、かつエアロゾル形成基体と直接的に物理的接触をしている。これは有利なことに、好ましくは主に第一のサセプタによって加熱されるエアロゾル形成基体への良好な熱伝達を可能にする。第一のサセプタの外表面のすべての部分は、第二のサセプタと密接な物理的接触をしていない限り、保護されていないか、むき出しであるか、または環境に露出されていることが好ましい。これは有利なことに、エアロゾル形成基体への最大熱伝達を確実にする。
【0023】
腐食防止被覆は、耐食性金属、不活性金属、耐食性合金、耐食性有機コーティング、ガラス、セラミック、ポリマー、腐食防止塗料、ワックス、またはグリースのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0024】
腐食防止被覆は常磁性であることが好ましい。有利なことに、常磁性腐食防止被覆は、もし磁気遮蔽効果があったとしても、これによって被覆された第二のサセプタに対する弱い磁気遮蔽効果しか示さない。それ故に、第二のサセプタは、少なくとも部分的に被覆されるが、依然として、誘導加熱のためにサセプタ組立品にかけられる交流の、とりわけ高周波の電磁場を経験する場合がある。従って、常磁性腐食防止被覆は、第二のサセプタの温度マーカーとしての好ましい機能性を損なわない。腐食防止被覆は、常磁性またはオーステナイトステンレス鋼を含むことが好ましい。
【0025】
例えば、腐食防止被覆は、クラッディングによって第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分に施されたオーステナイトステンレス鋼を含んでもよい。別の実施例によると、腐食防止被覆は、ディップコーティングまたは亜鉛メッキコーティングによって第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分に施されたZn系のコーティングを含んでもよい。また別の例によると、腐食防止被覆は、例えばゾルゲルプロセスによって第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分に施されたアルミニウムコーティングを含んでもよい。あるいは、腐食防止被覆は、シランコーティングまたはポリアミドイミド(PAI)コーティングを含んでもよい。
【0026】
第一のサセプタおよび第二のサセプタは、相互に密接な物理的接触をしていることが好ましい。特に、第一のサセプタおよび第二のサセプタは、単一のサセプタ組立品を形成してもよい。それ故に、加熱された時に第一のサセプタおよび第二のサセプタは基本的に同一の温度を有する。これに起因して、第二のサセプタによる第一のサセプタの温度制御は高度に正確である。第一のサセプタと第二のサセプタとの間の密接な接触は、任意の適切な手段によって遂行されてもよい。例えば、第二のサセプタは、第一のサセプタの上にメッキ、堆積、コーティング、クラッディング、または溶接されてもよい。好ましい方法としては、電気メッキ(亜鉛メッキ)、クラッディング、ディップコーティング、またはロールコーティングが挙げられる。
【0027】
第一のサセプタおよび第二のサセプタは、さまざまな幾何学的構成を含んでもよい。特に、第一のサセプタもしくは第二のサセプタまたは第一のサセプタと第二のサセプタとの両方は、粒子状、またはフィラメント、またはメッシュ様、または平面状、またはブレード様の構成のうちの一つであってもよい。
【0028】
一例として、第一のサセプタおよび第二のサセプタのうちの少なくとも一つはそれぞれ、粒子状の構成であってもよい。粒子は、10μm~100μmの等価球径を有してもよい。粒子は、エアロゾル形成基体全体に均一に、または局所的な濃度のピークもしくは濃度勾配に従って分布されてもよい。第二のサセプタが粒子状の構成である場合、粒子状の第二のサセプタの外表面全体は、腐食防止被覆を備えることが好ましい。
【0029】
別の例として、第一のサセプタもしくは第二のサセプタまたは第一のサセプタと第二のサセプタとの両方は、フィラメントまたはメッシュ様の構成であってもよい。フィラメントまたはメッシュ様の構造は、これらの製造、これらの幾何学的な規則性、および再現性に関して利点を有する場合がある。幾何学的な規則性および再現性は、温度制御および局所加熱の制御の両方の点で有利であると証明されうる。第二のサセプタがフィラメントまたはメッシュ様の構成である場合、第二のサセプタの外表面全体は腐食防止被覆を備えることが好ましい。
【0030】
第一のサセプタおよび第二のサセプタは、異なる幾何学的構成であってもよい。それ故に、第一のサセプタおよび第二のサセプタは、これらの特定の機能に合わせられてもよい。好ましくは加熱機能を有する第一のサセプタは、熱伝達を高めるためにエアロゾル形成基体に対して広い表面積を提供する幾何学的構成を有してもよい。対照的に、好ましくは温度制御機能を有する第二のサセプタは、非常に大きい表面積を有する必要はない。
【0031】
一例として、第一のサセプタはフィラメントまたはメッシュ様の構成であってもよく、一方で第二のサセプタは粒子状の構成である。フィラメントまたはメッシュ様の第一のサセプタと粒子状の第二のサセプタとの両方は、加熱されるエアロゾル形成基体と直接的に物理的接触をしているエアロゾル発生物品内に包埋されてもよい。この特定の構成において、第一のサセプタは、エアロゾル発生物品の中心を通してエアロゾル形成基体の中で延びてもよく、一方で第二のサセプタはエアロゾル形成基体全体に均一に分布されてもよい。
【0032】
別の方法として、例えばエアロゾル形成基体の製造目的で、第一のサセプタおよび第二のサセプタは類似した幾何学的構成であることが望ましい場合がある。
【0033】
第一のサセプタは、腐食防止被覆を形成してもよく、または含んでもよい。またはその逆として、腐食防止被覆は第一のサセプタの一部であってもよい。特に、第一のサセプタは第二のサセプタを挟んでもよく、または封入してもよい。
【0034】
サセプタ組立品は多層サセプタ組立品であることが好ましい。第一のサセプタ、第二のサセプタ、および腐食防止被覆は、多層サセプタ組立品の隣接した層を形成してもよい。この構成において、第二のサセプタ層は、第一のサセプタ層と腐食防止被覆層との間に挟まれる。特に、腐食防止被覆は、多層サセプタ組立品の縁層であってもよい。
【0035】
多層サセプタ組立品において、第一のサセプタ、第二のサセプタ、および腐食防止被覆は、相互に密接な物理的接触をしていてもよい。
【0036】
第二のサセプタ材料は、第一のサセプタ材料の上にメッキ、堆積、コーティング、クラッディング、または溶接されてもよい。同様に、腐食防止被覆は、第二のサセプタの上に沈着、コーティング、クラッディング、または溶接されてもよい。腐食防止被覆は少なくとも、第一のサセプタが取り付けられている側面とは反対側の、第二のサセプタ層の側面上にあることが好ましい。第二のサセプタはスプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、電気メッキ、またはクラッディングによって第一のサセプタの上に付けられることが好ましい。同様に、腐食防止被覆はスプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、電気メッキ、またはクラッディングによって第二のサセプタの上に施されることが好ましい。
【0037】
多層サセプタ組立品の個別の層は、層に平行な方向で見た時に、多層サセプタ組立品の周囲の外表面上の環境に対してむき出しであるか、または露出していてもよい。言い換えれば、層構造は、層に平行な方向で見ると、多層サセプタ組立品の周囲の外表面上に見える場合がある。特に、第二のサセプタ層の周囲の外表面は、環境に露出されていてもよいが、腐食防止被覆によって覆われなくてもよい。別の方法として、上面および下面に加えて、第二のサセプタ層の周囲の外表面を被覆してもよい。この場合、腐食防止被覆は、第一のサセプタ層と密接に接触していない第二のサセプタ層の外表面全体に施される。加えて、第一のサセプタ層の周囲の外表面は、腐食防止被覆によって被覆されてもまたよい。
【0038】
第二のサセプタは高密度層として存在することが好ましい。高密度層は多孔性の層よりも高い透磁率を有し、キュリー温度での微細な変化を検知することをより容易にする。
【0039】
多層サセプタ組立品は、5mm~15mmの長さ、3mm~6mmの幅、および10μm~500μmの厚さを有する細長いサセプタ組立品であってもよい。一例として、多層サセプタ組立品は、12mmの長さ、4mm~5mm例えば4mmの幅、および10μm~50μm例えば25μmの厚さを有するグレード430のステンレス鋼の細片である、第一のサセプタを有する細長い細片であってもよい。グレード430のステンレス鋼は、第二のサセプタとして5μm~30μm例えば10μmの厚さを有するニッケルの層でコーティングされてもよい。第一のサセプタ層と密接に接触している第二のサセプタ層の側と反対側の第二のサセプタ層の上に、腐食防止被覆がコーティングされる。被覆の材料は、セラミックまたはオーステナイトステンレス鋼を含んでもよい。
【0040】
「厚さ」という用語は、上部と下側面の間、例えば層の上側面と下側面との間、または多層サセプタ組立品の上側面と下側面との間に延びる寸法を指すために使用される。本明細書で使用される「幅」という用語は、二つの対向する側方側面の間に延びる寸法を指す。本明細書で使用される「長さ」という用語は、幅を形成する二つの対向する側方側面と直角な、正面と背面との間、または他の二つの対向する側面の間に延びる寸法を指す。厚さ、幅、および長さは相互に直角であってもよい。
【0041】
第一のサセプタ材料が基体の加熱のために最適化されている場合、第二のサセプタ材料の容積は検知可能な第二のキュリー点を提供するために必要とされるものよりも大きくないことが好ましい場合がある。従って、連続的な層構造の代わりに、第二のサセプタは一つ以上の第二のサセプタ要素を含んでもよい。サセプタ要素の各々は、第一のサセプタの容積よりも小さい容積を有してもよい。サセプタ要素の各々は、第一のサセプタと密接な物理的接触をしていてもよい。この特定の構成において、各々の第二のサセプタ要素の外表面の少なくとも一部分は、腐食防止被覆を備えてもよい。一例として、第一のサセプタは細長い細片の形態であり、一方で第二のサセプタ材料は、第一のサセプタ材料の上にメッキ、堆積、または溶接された個別のパッチの形態である。各パッチは、第一のサセプタ細片と密接な物理的接触をしていないその外表面の少なくとも一部分の上に腐食防止被覆を備えてもよい。
【0042】
本発明によるサセプタ組立品は、交流の、とりわけ高周波の電磁場によって駆動されるように構成されていることが好ましい。本明細書で言及される通り、高周波電磁場は500kHz~30MHz、とりわけ5MHz~15MHz、好ましくは5MHz~10MHzの範囲であってもよい。
【0043】
サセプタ組立品は、エアロゾル発生物品の一部であるエアロゾル形成基体を誘導加熱するためのエアロゾル発生物品のサセプタ組立品であることが好ましい。
【0044】
本発明によると、エアロゾル形成基体と、基体を誘導加熱するための、本発明による、および本明細書に記載のサセプタ組立品とを備えるエアロゾル発生物品も提供されている。
【0045】
サセプタ組立品はエアロゾル形成基体内に位置している、または包埋されていることが好ましい。
【0046】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾル形成基体の加熱に伴いエアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。エアロゾル形成基体は好都合なことに、エアロゾル発生物品の一部であってもよい。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよく、または液体エアロゾル形成基体であってもよい。両方の場合において、エアロゾル形成基体は固体成分と液体成分の両方を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例は、グリセリンおよびプロピレングリコールである。エアロゾル形成基体はまた、その他の添加物および成分(ニコチンまたは風味剤など)を含んでもよい。エアロゾル形成基体はまた、ペースト様の材料、エアロゾル形成基体を含む多孔性材料のサシェ、または例えばゲル化剤または粘着剤と混合されたルースたばこであってもよく、これはグリセリンなどの一般的なエアロゾル形成体を含むことができ、これはプラグへと圧縮または成形される。
【0047】
エアロゾル発生物品は、誘導源を備える電気的に作動するエアロゾル発生装置と係合するように設計されていることが好ましい。誘導源、またはインダクタは、変動電磁場内に位置する時にエアロゾル発生物品のサセプタ組立品を加熱するための変動電磁場を発生する。使用時に、エアロゾル発生物品は、インダクタによって発生される変動電磁場の中にサセプタ組立品が位置するように、エアロゾル発生装置と係合する。
【0048】
本発明によるエアロゾル発生物品のさらなる特徴および利点については、サセプタ組立品に関して説明されており、繰り返さない。
【0049】
本発明によると、エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのサセプタ組立品を製造するための方法、とりわけ本発明による、および本明細書に記載のサセプタ組立品を製造するための方法も提供されている。方法は、少なくとも以下の工程、すなわち
第一のサセプタを提供する工程と、
第二のサセプタを提供する工程であって、前記第二のサセプタのキュリー温度が500℃より低い、工程と、
第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分に腐食防止被覆を施す工程と、を含む。
【0050】
方法は、第一のサセプタおよび第二のサセプタが相互に密接な物理的接触になるように、第一のサセプタおよび第二のサセプタを組み立てる工程をさらに含んでもよい。第一のサセプタおよび第二のサセプタを組み立てるために、第二のサセプタは第一のサセプタの上にメッキされてもよく、堆積されてもよく、コーティングされてもよく、クラッディングされてもよく、または溶接されてもよい。
【0051】
同様に、腐食防止被覆は第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分の上にメッキされてもよく、堆積されてもよく、コーティングされてもよく、クラッディングされてもよく、または溶接されてもよい。腐食防止被覆はスプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、電気メッキ、またはクラッディングによって第二のサセプタの上に施されることが好ましい。
【0052】
第一のサセプタおよび第二のサセプタは、腐食防止被覆を施す前に組み立てられてもよい。別の方法として、第一のサセプタ、第二のサセプタ、および腐食防止被覆は同時に組み立てられてもよい。これは、例えば多層サセプタ組立品の場合、とりわけ第一のサセプタ、第二のサセプタ、および腐食防止被覆がクラッディングによって組み立てられる場合に、有利であることを証明する場合がある。
【0053】
本発明による方法のさらなる特徴および利点は、サセプタ組立品およびエアロゾル発生物品に関して説明されており、繰り返さない。
【0054】
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】
図1は、本発明による多層サセプタ組立品の第一の実施形態の概略的な斜視図を示す。
【
図2】
図2は、
図1によるサセプタ組立品の概略的な側面図を示す。
【
図3】
図3は、本発明による多層サセプタ組立品の第二の実施形態の概略的な断面図を示す。
【
図4】
図4は、本発明による多層サセプタ組立品の第三の実施形態の概略的な断面図を示す。
【
図5】
図5は、本発明による多層サセプタ組立品の第四の実施形態の概略的な断面図を示す。
【
図6】
図6は、本発明による多層サセプタ組立品の第五の実施形態の概略的な斜視図を示す。
【
図7】
図7は、
図6によるサセプタ組立品の概略的な断面図を示す。
【
図8】
図8は、本発明によるエアロゾル発生物品の第一の実施形態の概略的な断面図を示す。
【
図9】
図9は、本発明によるエアロゾル発生物品の第二の実施形態の概略的な断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1および
図2は、エアロゾル形成基体を誘導加熱するように構成された本発明によるサセプタ組立品1の第一の実施形態を概略的に図示する。
図8および
図9に関して下記により詳細に説明するように、サセプタ組立品1は、加熱されるエアロゾル形成基体と直接接触するエアロゾル発生物品内に包埋されるように構成されていることが好ましい。物品自体は、交流の、とりわけ高周波の電磁場を生成するために構成された誘導源を備えるエアロゾル発生装置の中に受容されるように適合されている。変動場は、サセプタ組立品の中に渦電流および/またはヒステリシス損失を発生させ、組立品を加熱させる。エアロゾル発生物品内のサセプタ組立品の配置およびエアロゾル発生装置内のエアロゾル発生物品の配置は、サセプタ組立品が誘導源によって発生した変動電磁場の中に正確に位置付けられるようにする。
【0057】
図1および
図2に示す第一の実施形態によるサセプタ組立品1は、三層サセプタ組立品1である。組立品は、基層として第一のサセプタl0を備える。第一のサセプタ10は、熱損失に関して、それ故に加熱効率に関して最適化されている。このために、第一のサセプタ10は、400℃を超えるキュリー温度を有する強磁性ステンレス鋼を含む。加熱温度を制御するために、サセプタ組立品1は、基層の上に配置されていて、かつ基層に密接に連結された中間層または機能層として第二のサセプタ20を備える。第二のサセプタ20は、(不純物の性質に依存して)約354℃~360℃、すなわち627K~633Kの範囲のキュリー温度を有するニッケルを含み、これはエアロゾル形成基体の温度制御および制御加熱の両方に関して有利であることを証明する。サセプタ組立品が加熱中にニッケルのキュリー温度に達すると、第二のサセプタ20の磁性は総じて変化する。この変化は、電力散逸の減少として検知されることができ、そうするとすぐに、例えばサセプタ組立品が使用されるエアロゾル発生装置のコントローラによって、発熱が減少または中断されてもよい。組立品がキュリー温度未満に冷却され、そして第二のサセプタ20がその強磁性の特性を取り戻すと、発熱を増大または再開することができる。
【0058】
しかしながら、ニッケルは腐食の影響を受けやすい。従って、サセプタ組立品は、中間層の上に配置された、かつ密接に連結された腐食防止被覆30の上層を備える。この上層は、とりわけサセプタ組立品1がエアロゾル形成基体内に包埋されている時に、第二のサセプタ20を腐食から保護する。
【0059】
図1および
図2に示す第一の実施形態に関して、サセプタ組立品1は、12mmの長さLおよび4mmの幅Wを有する細長い細片の形態である。すべての層は、12mmの長さLおよび4mmの幅Wを有する。第一のサセプタ10は、35μmの厚さT10を有するグレード430のステンレス鋼の細片である。第二のサセプタ20は、10μmの厚さT20を有するニッケルの細片である。腐食防止材料30は、10μmの厚さT30を有するオーステナイトステンレス鋼の細片である。サセプタ組立品1の合計厚さTは55μmである。サセプタ組立品1は、ニッケルの細片20をステンレス鋼の細片10にクラッディングすることによって形成されている。その後、オーステナイトステンレス鋼の細片30はニッケルの細片20の上にクラッディングされ、これによって第二のサセプタ20の上面全体(第一のサセプタ10と密接に接触している第二のサセプタ20の下面と対向する)は腐食防止材料によって被覆される。対照的に、第二のサセプタ20の周囲の外表面21は、腐食防止被覆30によって被覆されていないが、サセプタ組立品1の環境に露出されている。第二のサセプタ20の厚さT20が小さいために、その保護されていない周囲の外表面21は、それぞれ第一のサセプタ10および腐食防止被覆30と接触していて、かつこれによって保護されたその上面および下面と比較して、無視できる。従って、この第一の実施形態によるサセプタ組立品1は、いかなる腐食防止被覆も有しないサセプタ組立品と比較して、著しく改善された経時特性を有する。
【0060】
第一のサセプタ10はステンレス鋼で作製されているので、腐食に対して耐性があり、いかなる腐食防止被覆も必要としない。第二のサセプタ20と密接に接触していない限り、第一のサセプタ10の外表面全体はむき出しであるか、またはサセプタ組立品1の環境に露出されるように意図的に選ばれる。これは有利なことに、エアロゾル形成基体への最大熱伝達を確実にする。
【0061】
図3は、
図1および
図2に示す第一の実施形態と非常に類似した、サセプタ組立品1の第二の実施形態を図示する。従って、同一の特徴は同一の参照番号で示されている。第一の実施形態とは対照的に、この第二の実施形態において、腐食防止被覆30は、第二のサセプタ20の上面だけでなく、その側方の周囲の面21も被覆する。この構成は有利なことに、第二のサセプタ20の最大限の保護を可能にする。第二のサセプタ20は、第一のサセプタ10と同一の幅および長さの延長部を有する。従って、腐食防止被覆30は、第一のサセプタ10および第二のサセプタ20の幅および長さの延長部の上方に側方に突出する。被覆30は、第二のサセプタ20の上にオーステナイトステンレス鋼の細片を付けて、被覆する細片のへり部分を第二のサセプタ20の周囲の面21の上にビーディングし、そしてその後、被覆細片を第二のサセプタ20の被覆された周囲および上面にクラッディングすることによって、結合された第一のサセプタおよび第二のサセプタに取り付けられてもよい。
【0062】
図4は、腐食防止被覆30が加えて、第一のサセプタ10の側方の周囲の面を少なくとも部分的に被覆する点で、
図3による第二の実施形態とは異なる、サセプタ組立品1の第三の実施形態を図示する。この構成は、結合された第一のサセプタおよび第二のサセプタの上に、ディップコーティングまたはスプレーによって被覆材料を施すことからもたらされ、それ故に単純な製造に関して利点を有する場合がある。それ以外に、この第三の実施形態によるサセプタ組立品1は有利なことに、いかなる陥凹部分も突出部分もない規則的な外表面を有する。
【0063】
図5は、サセプタ組立品1の第四の実施形態を図示し、これも前述の実施形態に類似する。これらとは対照的に、第四の実施形態の第二のサセプタ20の幅および長さの延長部は、第一のサセプタ10の幅および長さの延長部よりわずかに小さい。それ故に、相互に取り付けられた時に、第一のサセプタと第二のサセプタとの間に周囲の側方オフセットがある。第二のサセプタの上面に加えて、この周囲のオフセットの容積も腐食防止被覆材料で充填される。これは、規則的な外側形状および第二のサセプタ20の最大限の腐食防止保護を有するサセプタ組立品1をもたらす。
【0064】
図6および
図7は、サセプタ組立品1の第五の実施形態を図示し、このサセプタ組立品もまた、例えば12mmの長さLおよび4mmの幅Wを有する細長い細片の形態である。サセプタ組立品は、第二のサセプタ材料20に密接に連結された第一のサセプタ10から形成されている。第一のサセプタ10は、12mm×4mm×35μmの寸法を有するグレード430のステンレス鋼の細片であり、それ故にサセプタ組立品1の基本的な形状を画定する。第二のサセプタ20は、寸法が3mm×2mm×10μmのニッケルのパッチである。ニッケルのパッチはステンレス鋼の細片の上に電気メッキされている。ニッケルのパッチはステンレス鋼の細片よりも著しく小さいにもかかわらず、依然として加熱温度の正確な制御を可能にするために十分である。有利なことに、この第五の実施形態によるサセプタ組立品1は、第二のサセプタ材料の著しい節約を提供する。
図6および
図7から分かる通り、パッチの外表面全体は、第一のサセプタ10と密接に接触していない限り、腐食防止被覆30によって覆われている。対照的に、第一のサセプタ10の外表面全体は、第二のサセプタ20と密接に接触していない限り、覆われていなく、最大限の熱伝達を可能にする。別の方法として、第二のサセプタ20と接触していない第一のサセプタ10の上面の少なくともそれらの部分はまた、腐食防止被覆によって被覆されてもよい。さらなる実施形態(図示せず)において、第一のサセプタ10と密接に接触して位置する第二のサセプタ20の二つ以上のパッチがあってもよい。
【0065】
上述の通り、本発明によるサセプタ組立品は、加熱されるエアロゾル形成基体を含むエアロゾル発生物品の一部であるように構成されていることが好ましい。
【0066】
図8は、本発明によるこうしたエアロゾル発生物品100の第一の実施形態を概略的に図示する。エアロゾル発生物品100は、同軸に整列して配置された四つの要素、すなわちエアロゾル形成基体102、支持要素103、エアロゾル冷却要素104、およびマウスピース105を備える。これらの四つの要素の各々は実質的に円筒状の要素であり、各々は実質的に同一の直径を有する。これらの四つの要素は連続的に配置されていて、また外側ラッパー106によって囲まれていて円筒状ロッドを形成する。この特定のエアロゾル発生物品、とりわけ四つの要素のさらなる詳細は、国際特許公開公報第2015/176898 A1号に開示されている。
【0067】
細長いサセプタ組立品1はエアロゾル形成基体102の中に、エアロゾル形成基体102と接触して位置する。
図8に示す通りのサセプタ組立品1は、
図1および2に関連して上述した第一の実施形態によるサセプタ組立品1に対応する。
図8に示す通りのサセプタ組立品の層構造は大きく図示されているが、エアロゾル発生物品のその他の要素に関して実寸に比例してはいない。サセプタ組立品1はエアロゾル形成基体102の長さとほぼ同一の長さを有し、またエアロゾル形成基体102の半径方向の中心軸に沿って位置する。エアロゾル形成基体102は、ラッパーによって取り囲まれた、捲縮され均質化したたばこ材料のシートの集合体を含む。均質化したたばこ材料の捲縮したシートはエアロゾル形成体としてグリセリンを含む。
【0068】
サセプタ組立品1は、エアロゾル形成基体を形成するために使用されるプロセス中に、エアロゾル発生物品を形成するための複数の要素の組み立ての前に、エアロゾル形成基体102の中に挿入されてもよい。
【0069】
図8に図示されたエアロゾル発生物品100は、電気的に作動するエアロゾル発生装置と係合するように設計されている。エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品をエアロゾル発生装置と係合させるのに伴い、エアロゾル発生物品のサセプタ組立品が位置している、交流の、とりわけ高周波の電磁場を発生するための誘導コイルまたはインダクタを有する誘導源を備えてもよい。
【0070】
図9は、本発明によるエアロゾル発生物品100の別の実施形態を示す。
図9の実施形態は、サセプタ組立品1に関してのみ、
図8に示す実施形態とは異なる。第一のサセプタ層および第二のサセプタ層ならびに相互に密接な物理的接触をしている腐食防止層を有する多層サセプタ組立品の代わりに、
図9によるサセプタ組立品は、相互から分離していて、かつ異なる幾何学的構成を有する第一のサセプタおよび第二のサセプタを備える。エアロゾル形成基体102の加熱を担う第一のサセプタ10は、強磁性ステンレス鋼で作製されたブレードである。ブレードは、エアロゾル形成基体102の長さとほぼ同一の長さを有する。ブレードはエアロゾル形成基体102の半径方向の中心軸に沿って位置する。第二のサセプタ20は、複数のニッケル粒子を含む粒子状の構成である。粒子は、10μm~100μmの等価球径を有してもよい。ニッケル粒子20の各々の外表面全体は、例えばセラミック被覆などの腐食防止被覆30を備える。被覆30の厚さは約10μmであってもよい。腐食防止被覆は、被覆された粒子をエアロゾル形成基体102の中に包埋する前に、ニッケル粒子に施される。
【0071】
粒子はエアロゾル形成基体102全体に分布されている。粒子分布は、加熱温度の正確な制御を確実にするために、第一のサセプタ10の近傍で最大の局所的な濃度を有することが好ましい。
【0072】
ブレード構成の代わりに、第一のサセプタ10は代替的に、フィラメントもしくはメッシュ様またはワイヤー様の構成のうちの一つであってもよい。
【0073】
第一のサセプタ10および第二のサセプタ20は、エアロゾル形成基体を形成するために使用されるプロセス中に、エアロゾル発生物品を形成するための複数の要素の組み立ての前に、エアロゾル形成基体102の中に挿入されてもよい。
【0074】
しかし注目すべきは、必要な場合に、第一のサセプタおよび第二のサセプタの幾何学的構成は置き換えられてもよいことである。それ故に、第二のサセプタは、腐食防止被覆を含むフィラメントもしくはメッシュ様またはワイヤー様、またはブレード構成のうちの一つであってもよく、また第一のサセプタ材料は粒子状の構成であってもよい。
【0075】
1. エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのサセプタ組立品であって、第一のサセプタおよび第二のサセプタを備え、前記第二のサセプタが500℃より低いキュリー温度を有し、前記第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分が腐食防止被覆を備え、かつ前記第一のサセプタの外表面の少なくとも一部分が露出されている、サセプタ組立品。
2. 前記腐食防止被覆が、耐食性金属、不活性金属、耐食性合金、耐食性有機コーティング、ガラス、セラミック、ポリマー、腐食防止塗料、ワックス、またはグリースのうちの少なくとも一つを含む、1に記載のサセプタ組立品。
3. 前記第一のサセプタが強磁性ステンレス鋼を含み、前記第二のサセプタがニッケルまたはニッケル合金を含む、1または2に記載のサセプタ組立品。
4. 前記第一のサセプタもしくは前記第二のサセプタまたは前記第一のサセプタと前記第二のサセプタとの両方が、平面状の形状またはブレード様の形状を有する、1~3のいずれかに記載のサセプタ組立品。
5. 前記第一のサセプタおよび前記第二のサセプタが、相互に密接な物理的接触をしている、1~4のいずれかに記載のサセプタ組立品。
6. 前記サセプタ組立品が多層サセプタ組立品であり、かつ前記第一のサセプタ、前記第二のサセプタ、および前記腐食防止被覆が前記多層サセプタ組立品の隣接した層を形成する、1~5のいずれかに記載のサセプタ組立品。
7. 前記腐食防止被覆が前記多層サセプタ組立品の縁層である、6に記載のサセプタ組立品。
8. 前記第一のサセプタと密接な物理的接触をしている場合を除き、前記第二のサセプタの外表面のすべての部分が腐食防止被覆を備える、1~7のいずれかに記載のサセプタ組立品。
9. 前記第一のサセプタと密接な物理的接触をしていない限り、前記第一のサセプタの外表面のすべての部分が露出されている、1~8のいずれかに記載のサセプタ組立品。
10. 前記第二のサセプタが、一つ以上の第二のサセプタ要素を備え、各々が前記第一のサセプタと密接な物理的接触をしており、各々の第二のサセプタ要素の外表面の少なくとも一部分が腐食防止被覆を含む、1~9のいずれかに記載のサセプタ組立品。
11. エアロゾル形成基体と、1~10のいずれかに記載のサセプタ組立品と、を備える、エアロゾル発生物品。
12. 前記サセプタ組立品が、前記エアロゾル形成基体内に包埋されている、11に記載のエアロゾル発生物品。
13. エアロゾル形成基体を誘導加熱するためのサセプタ組立品を製造するための方法であって、
第一のサセプタを提供する工程と、
第二のサセプタを提供する工程であって、前記第二のサセプタのキュリー温度が500℃より低い、工程と、
前記第二のサセプタの外表面の少なくとも一部分に腐食防止被覆を施す工程と、を含む、方法。
14. 前記腐食防止被覆を施す前に、前記第一および前記第二のサセプタが相互に密接な物理的接触となるように前記第一のサセプタおよび前記第二のサセプタを組み立てる工程をさらに含む、13に記載の方法。
15. 前記腐食防止被覆が、前記第二のサセプタの前記外表面の少なくとも一部分の上にメッキされる、堆積コーティングされる、クラッディングされる、または溶接される、13または14のいずれかに記載の方法。