(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】外部塗装用の耐久性のあるハイブリッド全方向構造色顔料
(51)【国際特許分類】
C09C 3/06 20060101AFI20240723BHJP
C09C 1/62 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
C09C3/06
C09C1/62
(21)【出願番号】P 2023107338
(22)【出願日】2023-06-29
(62)【分割の表示】P 2022032463の分割
【原出願日】2016-01-28
【審査請求日】2023-07-28
(32)【優先日】2015-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】デバシシュ バネルジー
(72)【発明者】
【氏名】ウ ソンタオ
(72)【発明者】
【氏名】コア ボー
【審査官】橋本 栄和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0211303(US,A1)
【文献】特表2002-530712(JP,A)
【文献】特表平9-508172(JP,A)
【文献】特開平7-258579(JP,A)
【文献】特表2008-510866(JP,A)
【文献】特表2013-518946(JP,A)
【文献】特開平7-268241(JP,A)
【文献】特表2009-511725(JP,A)
【文献】米国特許第5423912(US,A)
【文献】特表2005-513207(JP,A)
【文献】米国特許第6157489(US,A)
【文献】特表2004-510013(JP,A)
【文献】特表2004-512394(JP,A)
【文献】特表2002-523606(JP,A)
【文献】特表平11-504953(JP,A)
【文献】特開2002-080749(JP,A)
【文献】米国特許第6399228(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 3/06
C09C 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射性コア層、
前記反射性コア層にわたって延在する、2.0に等しいか又はそれより大きい屈折率を有する
第1の高屈折率誘電体層、
前記高屈折率誘電体層にわたって延在する
吸収体層、及び
前記吸収体層にわたって延在する、2.0に等しいか又はそれより大きい屈折率を有する
第2の高屈折率外部酸化物層、
を有する多層積層体を有し、
前記第1の高屈折率誘電体層と
前記吸収体層との境界が目標電磁放射波長に対してほぼゼロの電場の位置に存在するように前記
第1の高屈折率誘電体層が配置されている、
ハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項2】
前記反射性コア層が、30nm~200nmの厚さを有する金属コア反射体層であり、かつAl、Ag、Pt、Cr、Cu、Zn、Au、Sn及びこれらの合金からなる群のうち少なくとも一つより選択される金属材料であり、
前記
第1の高屈折率誘電体層が
、TiO
2
、ZnS、及びZrO
2
のうち少なくとも一つ
から製造され、
前記
吸収体層が、Cr、Cu、
W、これらの合金、アモルファスSi、及びFe
2O
3
のうち少なくとも一つ
から製造され、
前記
第2の高屈折率外部酸化物層が、CeO
2、Nb
2O
5、SnO
2、TiO
2、ZnO、及びZrO
2
のうち少なくとも一つ
から製造される、
請求項1に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項3】
前記
第1の高屈折率誘電体層が、所望の調整波長について0.1QW~4.0QWの厚さを有する、請求項2に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項4】
前記
吸収体層が2nm~30nmの厚さを有する、請求項2に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項5】
前記
第2の高屈折率外部酸化物層が、5nm~200nmの厚さを有する、請求項2に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項6】
前記
第1の高屈折率誘電体層は、これらの間に前記反射性コア層が延在する一対の高屈折率誘電体層であり、前記
吸収体層は、これらの間に前記一対の
第1の高屈折率誘電体層が延在する一対の
吸収体層であり、前記
第2の高屈折率外部酸化物層は、前記一対の
吸収体層の外表面にわたって延在する、請求項5に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項7】
前記多層積層体が2.0μmより小さい厚さを有する、請求項6に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項8】
前記多層積層体が、1.5μmより小さい厚さを有する、請求項7に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項9】
前記多層積層体が10層よりも少ない、請求項8に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【請求項10】
前記多層積層体が8層よりも少ない、請求項9に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護コーティングを有する多層積層構造体、及び特に、保護コーティングを有しており、広帯域電磁放射に曝らし、かつ異なる角度から観察したときに、最小又は認識不可能な色ずれを呈するハイブリッド多層積層構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
<関連発明の相互参照>
本願は、2014年8月28日出願の米国特許出願14/471,834号の一部継続出願であり、これは、2014年8月15日出願の米国特許出願14/460,511号の一部継続出願であり、これは、2014年4月1日出願の米国特許出願14/242,429号の一部継続出願であり、これは、2013年12月23日出願の米国特許出願14/138,499号の一部継続出願であり、これは、2013年6月8日出願の米国特許出願13/913,402号の一部継続出願であり、これは、2013年2月6日出願の米国特許出願13/760,699号の一部継続出願であり、これは、2012年8月10日出願の13/572,071号の一部継続出願であり、これは、2011年2月5日出願の米国特許出願13/021,730号の一部継続出願であり、これは、2010年6月4日出願の米国特許出願12/793,772号の一部継続出願(米国特許第8,736,959号)であり、これは、2009年2月18日出願の米国特許出願12/388,395号の一部継続出願(米国特許第8,749,881号)であり、これは、2007年8月12日出願の米国特許出願11/837,529号の一部継続出願(米国特許出願第7,903,339号)である。2013年6月8日出願の米国特許出願13/913,402号は、2011年1月26日出願の13/014,398号の一部継続出願であり、これは、2010年6月4日出願の12/793,772号の一部継続出願であり、これは、2010年1月13日出願の12/686,861号(米国特許第8,593,728号)の一部継続出願であり、これは、2009年2月19日出願の12/389,256号(米国特許第8,329,247号)の一部継続出願であり、これらの全ては、それらの全体が参照により援用される。
【0003】
多層構造体から作られている顔料が知られている。加えて、高発色全方向構造色を呈し又はもたらす顔料がさらに知られている。しかしながら、従来技術の顔料は、所望の色特性を得るために、39層もの薄膜層を必要としていた。
【0004】
薄膜多層顔料の生産に関するコストは、必要とされる層の数に比例すると理解されたい。したがって、誘電体材料の多層積層体を使用した高発色全方向構造色の生産に関するコストは、非常に高額になりうる。それゆえ、最小限の薄膜層を必要とする高発色全方向構造色が望ましい。
【0005】
上記に加えて、太陽光、及び特に紫外光に曝すと、顔料は色あせ、変色などを呈することがあると理解されたい。したがって、耐候性のある高彩度全方向構造色顔料がさらに要求されている。
【発明の概要】
【0006】
ハイブリッド全方向構造色を提供する。この顔料は、広帯域電磁放射(例えば白色光)に曝し、かつ0°~45°の間の角度から観察したとき、人の目に見える色を呈し、かつ非常に小さい又は認識できない色ずれを有する。
【0007】
この顔料は、300nmより小さい所与の半値幅(FWHM)を有する反射帯域を反射する多層積層体、さらに本明細書において多層薄膜とも呼ばれるもの、の形態を有している。加えて、この反射帯域は、広帯域電磁放射に曝し、かつ0°~45°の角度から観察したときに、CIELABを使用したa*b*色マップにおいて30°より小さい所与の色ずれを有する。
【0008】
この多層積層体は、反射性コア層及び少なくとも2つの高屈折率(nh)層を有する。このnh層の1つは、反射性コア層にわたって延在する乾式堆積nh誘電体層であってよく、またこの層の1つは、乾式堆積nh誘電体層にわたって延在する乾式堆積吸収体層であってよい。この多層積層体は、さらに湿式堆積nh外部酸化物層の形態であってよい外部保護層を含んでいてよい。いくつかの例において、この湿式堆積nh外部酸化物層は、乾式堆積吸収体層を覆い、かつ直接に接しており、また、反射体コア層及び少なくとも2つのnh層を完全に囲い又は包んでいてもいなくてもよい。
【0009】
この反射性コア層は、30nm~200nmの間の厚さを有する金属反射体コア層であってよい。ある例において、この金属コア反射体層は、Al、Ag、Pt、Cr、Cu、Zn、Au、Sn、及びこれらの合金のうちの少なくとも一つから作られている。
【0010】
乾式堆積nh誘電体層は、CeO2、Nb2O5、SiN、SnO2、SnS、TiO2、ZnO、ZnS、及びZrO2のうちの少なくとも一つ、又はCeO2、Nb2O5、SiN、SnO2、SnS、TiO2、ZnO、ZnS、及びZrO2のうちの少なくとも一つを有する混合体から作られている。加えて、乾式堆積nh誘電体層は、所望の調整波長について0.1QW~4.0QWの間の厚さを有しており、この所望の調整波長は、所望の色反射帯域の中心波長である。乾式堆積吸収体層は、Cr、Cu、Au、Sn、これらの合金、アモルファスSi、Fe2O3、及びこれらと同種のもののうち少なくとも一つから作られており、2nm~30nmの間の厚さを有していてよい。湿性堆積nh外部酸化物層は、CeO2、Nb2O5、SnO2、TiO2、ZnO、及びZrO2のうち少なくとも一つから作られており、5nm~200nmの間の厚さを有していてよい。
【0011】
いくつかの例において、この多層体は、中央反射体コア層、及び互いに対向して配置されかつ前記反射性コア層に結合している一対の乾式堆積nh誘電体層を有する。加えて、一対の吸収体層は、互いに対向して配置され、一対の乾式堆積nh誘電体層に結合していてよい。さらに、湿性堆積nh外部酸化物層は、一対の吸収体層の外表面にわたって延在していてよい。
【0012】
このハイブリッド全方向構造色は、2.0μmより小さい厚さを有しており、また、いくつかの例において、1.5μmより小さい厚さを有している。この顔料、及びしたがって、この多層積層体は、全部で10層より少ない層を有していてよく、またいくつかの例において全部で8層よりも少ない層を有していてよい。
【0013】
全方向構造色顔料を製造する方法をさらに提供する。この方法は、反射性コア層を供給すること、及び反射性コア層にわたって延在するnh誘電体層を乾式堆積することによって、上述の多層積層体を製造することを含む。加えて、この方法は、nh誘電体層にわたって延在する吸収体層を乾式堆積すること、及びこの吸収体層にわたって延在する外部nh酸化物層を湿性堆積することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、誘電体層、選択的吸収性層(SAL)及び反射体層から作られている全方向構造色多層積層体の模式図である。
【
図2A】
図2Aは、500nmの波長を有する電磁放射(EMR)に曝したZnS誘電体層内のゼロ又はほぼゼロの電場点の模式図である。
【
図2B】
図2Bは、電場の絶対値の2乗(|E|
2)に対する、300nm、400nm、500nm、600nm、及び700nmの波長を有するEMRに曝した
図2Aに示されるZnS誘電体層の厚さのグラフ図である。
【
図3】
図3は、基材又は反射体層上に延在し、かつこの誘電体層の外表面の垂直方向に対して角度θから電磁放射に曝した、誘電体層の略図である。
【
図4】
図4は、ZnS誘電体層内の434nmの波長を有する入射EMRに対するゼロ又はほぼゼロの電場点にCr吸収体層が配置されているZnS誘電体層の略図である。
【
図5】
図5は、Cr吸収体層を有しない多層積層体(例えば、
図2A)及びCr吸収体層を有する多層積層体(例えば、
図4)を白色光に曝したときの、反射率パーセントに対する反射EMR波長のグラフ表示である。
【
図6A】
図6Aは、Al反射体層上に延在するZnS誘電体層(例えば、
図2A)によって表される第1高調波及び第2高調波のグラフ図である。
【
図6B】
図6Bは、Al反射体層にわたって延在するZnS誘電体層、及び
図6Aに示されるような第2の高調波が吸収されるようにZnS誘電体層中に配置されているCr吸収体層を有する多層積層体の、反射率パーセントに対する反射EMR波長のグラフ図である。
【
図6C】
図6Cは、Al反射体層にわたって延在するZnS誘電体層、及び
図6Aに示されるような第1の高調波が吸収されるようにZnS誘電体層中に配置されているCr吸収体層を有する多層積層体の、反射率パーセントに対する反射EMR波長のグラフ図である。
【
図7A】
図7Aは、0°及び45°から入射光に曝したときのCr吸収体層の電場角度依存性を表している、電場の二乗に対する誘電体層の厚さのグラフ図である。
【
図7B】
図7Bは、外表面の垂直方向(0°は表面に対して垂直である)に対して0°及び45°の角度から白色光を曝したときの、Cr吸収体層による吸収率パーセントに対する反射EMR波長のグラフ図である。
【
図8A】
図8Aは、本明細書において公開するある実施形態に基づく、赤色全方向構造色多層積層体の略図である。
【
図8B】
図8Bは、
図10Aに示す多層積層体に対して0°及び45°の入射角で白色光を曝したときの、
図8Aに示すCu吸収体層の吸収率パーセントに対する反射EMR波長のグラフ図である。
【
図9】
図9は、入射角0°で白色光に曝した赤色全方向構造色多層積層体の概念を証明するための、反射EMR波長に対する計算/シミュレーションデータ及び実験データのグラフ比較である。
【
図10】
図10は、本明細書において開示するある実施形態に基づく全方向構造色多層積層体についての反射率パーセントに対する波長のグラフ図である。
【
図11】
図11は、本明細書において開示するある実施形態に基づく全方向構造色多層積層体についての反射率パーセントに対する波長のグラフ図である。
【
図12】
図12は、本明細書において開示するある実施形態に基づく全方向構造色多層積層体についての波長に対する反射率パーセントのグラフ図である。
【
図13】
図13は、本明細書において開示するある実施形態に基づく全方向構造色多層積層体についての波長に対する反射率パーセントのグラフ図である。
【
図14】
図14は、従来の塗料と、本明細書が開示するある実施形態に基づく顔料から作られた塗料の、彩度及び色ずれを比較した(試料(b))、CIELABを使用したa
*b
*色マップの一部のグラフ表示である。
【
図15】
図15は、本明細書において開示するある実施形態に基づく全方向構造色多層積層体の略図である。
【
図16】
図16は、本明細書が開示するある実施形態に基づく、保護コーティングを有する5層全方向構造色顔料の略図である。
【
図17】
図17は、本明細書が開示するある実施形態に基づく2又はそれ以上の層を有する保護コーティングの略図である。
【
図18】
図18は、本明細書が開示するある実施形態に基づく全方向構造色多層積層体の略図である。
【
図19】
図19は、本明細書が開示するある実施形態に基づく、保護コーティングを有する7層全方向構造色顔料の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
全方向構造色顔料を提供する。この全方向構造色は、多層積層体を0°から45°の間の角度から人の目によって観察したときに、可視スペクトルにおいて電磁放射の狭帯域を反射し、かつ小さい又は認識不可能な色ずれを有する、多層積層体(本明細書において、さらに「多層薄膜」と称する)の形態を有する。より専門的に、この多層積層体は、白色光に曝したときに300nmより小さい可視電磁放射の狭帯域を反射する。加えて、この顔料を多層積層体の外表面の垂直方向に対して0°から45°の間の角度から観察したときに、反射された可視光の狭帯域は、CIELABを使用したa*b*色マップにおいて、30°より小さくシフトする。
【0016】
この多層積層体は、反射体コア層、反射体コア層にわたって延在する高屈折率(nh)誘電体層、nh誘電体層にわたって延在する吸収体層、及び吸収体層にわたって延在するnh外部保護層を有する。ある例において、反射電磁放射の狭帯域は、200nmより小さく、他の例において150nmより小さい、下記に定義するFWHMを有する。この多層積層体は、a*b*色マップにおいて20°より小さく、いくつかの例において15°よりも小さい色ずれを、さらに有していてよい。
【0017】
色ずれのもう一つの基準は、狭反射帯域の中心波長のシフトである。このような観点において、多層積層体を広帯域電磁放射に曝し、多層積層体の外表面の垂直方向に対して0°から45°の間の角度から観察したときに、反射可視光の狭帯域の中心波長は、50nmより小さく、好ましくは40nmより小さく、さらに好ましくは30nmより小さくシフトする。さらに、この多層積層体は、UV領域及び/又はIR領域において電磁放射の個別の反射帯域を有していてもいなくてもよい。
【0018】
多層積層体の全厚は、2μmより小さく、好ましくは1.5μmより小さく、さらにより好ましくは1.0μmより小さい。したがって、この多層積層体は、薄い塗装コーティングの塗料顔料として使用することができる。
【0019】
多層積層体は、第1の層及び第2の層が延在する反射体コア層を含んでおり、この反射体コア層は、金属、例えばAl、Ag、Pt、Cr、Cu、Zn、Au、Sn、これらの合金、及び同種のものから作られる。反射体コア層は、通常30nm~200nmの間の厚さを有している。
【0020】
第1の層は、nh誘電体材料から作られており、第2の層は吸収性材料から作られている。nh誘電体材料は、CeO2、Nb2O5、SiN、SnO2、SnS、TiO2、ZnO、ZnS、及びZrO2を含んでいてよいが、これらに限定されるわけではない。吸収性材料は、選択的吸収性材料、例えばCu、Au、Zn、Sn、これらの合金、及び同種のもの、又は代替的に、有色誘電体材料、例えばFe2O3、Cu2O、これらの組み合わせ、及び同種のものを含んでいてよい。吸収性材料は、さらに非選択的吸収性材料、例えばCr、Ta、W、Mo、Ti、窒化Ti、Nb、Co、Si、Ge、Ni、Pd、V、酸化鉄、これらの組み合わせ又は合金、及び同種のものであってよい。外部保護層は、CeO2、Nb2O5、SnO2、TiO2、ZnO、及びZrO2を含んでいてよいが、これらに限定されない。
【0021】
nh誘電体層の厚さは、所望の調整波長についての0.1QW~4.0QWの間であってよい。選択的吸収性材料から作られる吸収性層の厚さは、20nm~80nmの間であり、他方、非選択的吸収性材料から作られる吸収性層の厚さは、5nm~30nmの間である。外部保護層の厚さは、5nm~200nmの間であってよい。
【0022】
多層積層体は、可視スペクトルにおいて左右対称のピークの形状を有する電磁放射の反射狭帯域を有していてよい。代替的に、可視スペクトルにおける電磁放射の反射狭帯域は、UV領域に隣接していてよく、これにより、電磁放射の反射狭帯域の一部、例えばUV部分は人の目には見えない。もう一つの代替において、電磁放射の反射帯域は、IR領域に一部を有していてよく、これにより、IR部分は人の目には見えない。
【0023】
可視領域内にある電磁放射の反射帯域が、UV領域、IR領域と接していようと、又は可視スペクトルにおいて左右対称のピークを有していようと、本明細書が開示する多層積層体は、可視スペクトル内において電磁放射の反射狭帯域を有しており、これは低く、小さく、又は認識できない色ずれを有している。低い又は認識できない色ずれは、電磁放射の反射狭帯域の中心波長の小さいシフトの形態であってよい。代替的に、低い又は認識できない色ずれは、それぞれIR領域又はUV領域に接している電磁放射の反射帯域のUV側端、又はIR側端の小さいシフトの形態であってよい。多層積層体の外表面の垂直方向に対して0°~45°の間の角度から多層積層体を観察したときに、このような中心波長、UV側端、及び/又はIR側端の小さいシフトは、通常は50nmより小さく、いくつかの例において40nmより小さく、他の例において30nmより小さい。この低い又は認識できない色ずれは、さらにCIELAB色空間を使用したa*b*色マップ上の小さい色ずれの形態であってよい。例えば、ある例において、多層積層体についての色ずれは、30°より小さく、好ましくは25°より小さく、さらに好ましくは20°より小さく、さらにより好ましくは15°より小さく、さらにもっとより好ましくは10°より小さい。
【0024】
上記に加えて、多層積層体の形態である全方向構造色は、外部保護コーティング、例えば耐候性コーティングを有する複数の顔料粒子の形態であってよい。外部保護コーティングは、顔料粒子の相対的な光触媒反応を減少させる、一つまたはそれ以上のnh酸化物層を含んでいてよい。ある例において、外部保護コーティングは、第1の酸化物層及び第2の酸化物層を含んでいる。加えて、第1の酸化物層及び/又は第2の酸化物層は、ハイブリッド酸化物層、即ち二つの酸化物の組み合わせである酸化物層であってよい。
【0025】
全方向構造色顔料を製造する方法は、酸、酸性化合物、酸性溶液、及び同種のものを使用することを含んでいてもいなくてもよい。言い換えると、複数の全方向構造色顔料粒子は、酸性溶液で処理されてもされなくてもよい。全方向構造色顔料及びこの顔料を製造する方法についてのさらなる教示および詳細は、本明細書において後に論じる。
【0026】
図1を参照すると、下にある反射体層(RL)がこれにわたって延在する第1の誘電体材料層DL
1、及びDL
1層にわたって延在する選択的吸収性層SALを有する設計が、示されている。加えて、もう一つのDL
1層が提供され、選択的吸収性層にわたって延在していてもいなくてもよい。さらに、全ての入射電磁放射が多層積層体に反射され、又は選択的に吸収されている図が示されている。
【0027】
図1に表されるような設計は、所望の多層積層体を設計し、また製造するための異なる手法に対応している。特に、誘電体層のゼロ又はほぼゼロのエネルギー点の厚さを下記において使用し、また論じる。
【0028】
例えば
図2Aは、Al反射体コア層にわたって延在するZnS誘電体層の略図である。このZnS誘電体層は143nmの全厚を有し、また500nmの波長を有する入射電磁放射について、77nmにおいてゼロ又はほぼゼロのエネルギー点を有している。言い換えると、500nmの波長を有する入射電磁放射(EMR)について、ZnS誘電体層は、Al反射体層から77nmの距離にゼロ又はほぼゼロの電場点を表す。加えて、
図2Bは多数の異なる入射EMR波長についての、ZnS誘電体層をわたるエネルギー場のグラフ図を提供している。グラフにおいて示すように、誘電体層は、500nmの波長について、77nmの厚さにおいてゼロ又はほぼゼロの電場を有するが、しかし300nm、400nm、600nm、及び700nmのEMR波長について、77nmの厚さにおいてゼロでない電場を有する。
【0029】
ゼロ又はほぼゼロの電場点の計算について、
図3は、屈折率n
sを有する基材又はコア層2上の、全厚「D」、増分の厚さ「d」、及び屈折率「n」を有する誘電体層4を表している。入射光は、誘電体層4の外表面5に、外表面5に対して垂直な線6に対して角度θで当たり、外表面5から同じ角度θで反射する。入射光は外表面5を透過し、線6に対して角度θ
Fで誘電体層4に入り、基材層2の表面3に角度θ
sで当たる。
【0030】
z=dのとき、誘電体層一つについて、θ
s=θ
Fかつエネルギー/電場(E)をE(z)と表現することができる。マクスウェルの方程式より、s偏光について:
【数1】
また、p偏光について:
【数2】
のように表現することができ、ここで、k=2π/λであり、λは反射されるべき所望の波長である。さらに、α=
nsinθ
sであり、ここで「s」は、
図5において基材に対応し、また
【数3】
はzの関数である、この層の誘電率である。
したがって、s偏光について、
【数4】
及びp偏光について、
【数5】
である。
【0031】
誘電体層4のZ軸方向の電場の変化は、下記のように示すことができる未知のパラメーターu(z)、及びv(z)を計算することによって概算することができることを理解されたい。
【数6】
当然に、「i」は-1の平方根である。境界条件
【数7】
、及び下記の関係を利用して:
s偏光について、q
s=n
scosθ
s (6)
p偏光について、q
s=n
s/cosθ
s (7)
s偏光について、q
F=ncosθ
F (8)
p偏光について、q
F=n/cosθ
F (9)
φ=k・n・dcos(θ
F) (10)
u(z)及びv(z)は、以下のように表現することができる:
【数8】
及び
【数9】
ゆえに、s偏光について、
【数10】
を用いて:
【数11】
及び、p偏光について:
【数12】
ここで、
【数13】
【数14】
及び
【数15】
【0032】
このように、θ
F=0又は垂直入射である単純な条件において、φ=k・n・d、及びα=0であり:
s偏光についての|E(d)|
2=p偏光についての
【数16】
【数17】
これは、厚さ「d」、例えば誘電体層中の電場がゼロになる位置、又は場所について解くことができる。
【0033】
図4について言及すると、434nmの波長を有するEMRに曝したときの、
図2Aに示すZnS誘電体層内の、ゼロ又はほぼゼロの電場点を計算するために、式19を使用した。ゼロ又はほぼゼロの電場点を計算すると、70nm(500nm波長について77nmであるのに対して)であった。加えて、厚さ15nmのCr吸収体層を、Al反射体コア層から70nmの厚さ又は距離に挿入して、ゼロ又はほぼゼロの電場ZnS-Cr境界を得た。このような独創的な構造は、434nmの波長を有する光がCr-ZnS境界を透過させ、しかし、434nmの波長を有しない光を吸収する。言い換えると、このCr-ZnS境界は434nmの波長を有する光に関してゼロ又はほぼゼロの電場を有し、それにより434nmの光はこの境界を透過する。しかしながら、Cr-ZnS境界は、434nmの波長を有しない光についてゼロ又はほぼゼロの電場点を有さず、これにより、この様な光はCr吸収体層及び/又はCr-ZnS境界に吸収され、Al反射体層によって反射されない。
【0034】
所望の434nmの+/-10nm内の光の数パーセントは、Cr-ZnS境界を通過することを理解されたい。しかしながら、このような反射光の狭帯域、例えば434+/-10nmは、それでも人の目に鮮明な構造色を提供することを理解されたい。
【0035】
図4の多層積層体内のCr吸収体層の結果が
図5に示され、ここでは、反射EMR波長に対する反射率パーセントが示されている。Cr吸収体層を有しない、
図4に示されるZnS誘電体層に対応する点線によって示されるように、約400nmにおいて狭い反射ピークが存在するが、約550+nmにおいてより広いピークが存在する。加えて、500nm波長領域内において、未だ大量の反射光がある。このように、多層積層体が構造色を呈することを妨げる、二つのピークが存在する。
【0036】
対照的に、
図5に示される実線は、Cr吸収体層を有する
図4の構造に対応する。図において示すように、約434nmにおいて鋭いピークが存在し、434nmよりも大きい波長についての反射率の鋭い低下が、Cr吸収体層によって得られる。実線で表現される鋭いピークは、視覚的に鮮明な/構造色として現れることを理解されたい。さらに、
図5は反射ピーク又は帯域の幅を測定しているところ、例えば帯域の幅が、反射波長の最大値の半分、さらに半値幅(FWHM)としても知られるところにおいて測定される。
【0037】
図4に示される多層構造体の全方向性について、ZnS誘電体層の厚さを設計し、又は設定することにより、反射光の第1高調波のみをもたらすことができる。これは「青」色を得るためには十分であるが、しかしながら「赤」色の作製にはさらなる考慮が必要であることを理解されたい。例えば、赤色についての角度非依存性の調節は困難であり、これは、より厚い誘電体層を要するためであり、これにより、高い調和設計をもたらし、即ち、第2及びあるべき第3の高調波が不可避となってしまう。さらに、暗褐色の色空間は非常に狭い。したがって、赤色多層積層体は高い角度変化を有する。
【0038】
赤色のこの高い角度変化を克服するため、本出願は、独特かつ新規な、角度非依存性の赤色をもたらす設計/構造を開示する。例えば、
図6Aは、外表面の垂直方向に対して0°及び45°の角度からこの誘電体層の外表を観察したときに、入射白色光について第1及び第2の高調波を呈する誘電体層を表している。このグラフ表示に示されるように、低い角度依存性(小さいΔλ
c)が、誘電体層の厚さによりもたらされるが、しかしこのような多層積層体は、青色(第1の高調波)と赤色(第2の高調波)の組み合わせを有しており、ゆえに所望の「赤のみ」の色には適さない。ゆえに、吸収体層を利用して所望でない高調波の群を吸収する、この理論/構造が発展してきた。
図6Aは、所与の反射ピークの反射帯域の中心波長(λ
c)の位置、及びこの試料を0°及び45°の間の角度から観察した場合のこの中心波長の分散又はシフト(Δλ
c)の例をさらに表している。
【0039】
図6Bについて言及すると、
図6Aにおいて示される第2の高調波が、Cr吸収体層によって、適切な誘電体層の厚さ(例えば72nm)において吸収され、そして鮮明な青色がもたらされる。さらに、
図6Cは、第1の高調波を、Cr吸収体層によって異なる誘電体層の厚さ(例えば125nm)において吸収することにより,赤色がもたらされることを示している。しかしながら、
図6Cは、Cr吸収体層の使用により、この多層積層体の所望のものよりも高い角度依存性、即ち、所望のΔλ
cよりも大きくなりうることを、さらに表している。
【0040】
青色と比較した赤色に関するλ
cの相対的に大きいシフトは、この暗赤色の色空間が非常に狭いことと、Cr吸収体層がゼロでない、又はほぼゼロでない電場に対応する色を吸収すること、即ちこの電場がゼロ又はほぼゼロのときに、光を吸収しないという事実によると理解されたい。したがって、
図7Aは、異なる入射角度によって、光波長に対するこのゼロ又はほぼゼロの電場点が異なることを示している。この様な要因は、
図7Bに示される角度非依存吸収性、即ち、0°及び45°における吸収率曲線の違いをもたらす。したがって、多層積層体の設計及び角度非依存性の性能をさらに向上させるため、電場がゼロか否かによらずに、例えば青色光を吸収する吸収体層を使用する。
【0041】
特に、
図8Aは、Cr吸収体層の代わりにCu吸収体層がZnS層にわたって延在している多層積層体を示している。このような「有色」又は「選択的な」吸収体層を使用した結果が
図8Bにおいて示され、これは
図8Aに示される多層積層体の0°及び45°の吸収率線の、より「厳しい」組み分けを表している。したがって、
図8B及び
図7Bとの間の比較は、非選択的吸収体層の代わりに選択的吸収体層を使用することにより、吸収率の角度非依存性の顕著な向上があることを示している。
【0042】
上記に基づいて、概念を証明するための多層積層体構造を設計し、作製した。加えて、概念を証明するための試料についての計算/シミュレーション結果、及び実際の実験データを比較した。特に、また
図9のグラフプロットにおいて示すように、鮮明な赤色がもたらされ(700nmより大きい波長は通常人の目には見えない)、また、計算/シミュレーション及び実際の試料から得られた実験の光のデータとの間で、非常に良好な一致が得られた。言い換えると、計算/シミュレーションは、本発明の一つ又はそれ以上実施形態及び/又は公知の多層積層体の多層積層体設計の結果をシミュレートし、又はシミュレートするために使用することができる。
【0043】
シミュレートし、及び/又は実際に作製した多層積層体の試料の目録を、下記の表1において提供する。表において示すとおり、本明細書で開示されるこの発明の設計は、少なくとも5つ異なる層構造を含んでいる。加えて、この試料は、広い領域の材料からシミュレートし、及び/又は作製した。高い彩度、低い色ずれ(Δh)、優れた反射率を呈した試料をもたらした。さらに、3及び5層の試料は120~200nmの間の全厚を有し;この7層の試料は350~600nmの全厚を有し;この9層の試料は440~500nmの全厚を有し、この11層の試料は600~660nmの全厚を有していた。
【0044】
【0045】
図10について言及すると、反射体の外表面の垂直方向に対して0°及び45°の角度から白色光に曝したときの全方向反射体についての、反射EMR波長対反射率パーセントのプロットを示している。プロットで示すように、0°及び45°の曲線は、500nmより大きい波長について全方向反射体がもたらす、非常に低い反射率、例えば20%より小さい反射率を表している。しかしながら、この反射体は、曲線によって示すように、400~500nmの間の波長において反射率の鋭い増加をもたらし、かつ450nmにおいて約90%の最大値に到達する。この曲線の左手側(UV側)にある、グラフの部分又は領域は、この反射体によりもたらされる反射帯域のUV部分を表していることを理解されたい。
【0046】
この全方向反射体によってもたらされる反射率のこの鋭い増加は、500nmより大きい波長にある低反射率部分から高反射率部分、例えば>70%の部分まで延長する各曲線のIR側端によって特徴づけられる。IR端側の直線部分200は、x軸に関して60°より大きい角度(β)に傾いており、反射率軸上の約50の長さL及び1.2の傾きを有している。ある例において、直線部分はx軸に関して70°より大きい角度に傾いており、他方、他の例ではβは75°よりも大きい。さらに、反射帯域は200nmより小さい可視FWHMを有しており、ある例において、150nmより小さい可視FWHMを、他の例において100nmより小さい可視FWHMを有する。加えて、
図10で表すような可視反射帯域の中心波長λ
cは、反射帯域のIR側端と可視FWHMのUVスペクトルのUV端から等距離にある波長として定義される。
【0047】
用語「可視FWHM」は、この曲線のIR端側と、これを超えると全方向反射体によって供給される反射は人の目には見えないUVスペクトル領域の端部との間の反射帯域の幅を言及している。このように、本明細書で開示する本発明の設計品及び多層積層体は、鮮明な構造色をもたらすために、電磁放射の不可視UV部分を使用する。言い換えると、この反射体が、UV領域に延在するさらに広い電磁放射の帯域を反射するという事実にかかわらず、本明細書で開示する全方向反射体は、反射される可視光の狭帯域を提供するために、電磁放射スペクトルの不可視UV部分を利用している。
【0048】
図11を参照すると、本発明の実施形態に基づく多層積層体を0°及び45°から観察したときにもたらされる、全体的に左右対称の反射帯域を示している。図において表すとおり、多層積層体によってもたらされる反射帯域は、0°から見たときに中心波長λ
c(0°)を、45°から見たときに中心波長λ
c(45°)を有する。さらに、多層積層体を0°から45°の間の角度から見たときに、中心波長のシフトは50nmより小さく、即ちΔλ
c(0-45
o)<50nmである。加えて、この0°の反射帯域及び45°の反射帯域のFWHMは200nmより小さい。
【0049】
図12は、この反射体の表面の垂直方向に対して0°及び45°の角度から白色光に曝したときの、もう一つの全方向反射体設計についての反射率パーセント対反射EMR波長のプロットを示している。プロットに示されるように、0°及び45°の曲線は共に、550nmより小さい波長について全方向反射体によってもたらされる非常に低い反射率、例えば10%より小さい反射率を表している。しかしながら、曲線によって示されるように、この反射体は、560nm~570nmの間の波長において鋭い反射率の増加をもたらし、700nmにおいて最大値の約90%に到達する。この曲線の右手側(IR側)にあるグラフの部分又は領域は、この反射体によりもたらされる反射帯域のIR部分を表していることを理解されたい。
【0050】
この全方向反射体によってもたらされる反射率のこの鋭い増加は、550nmより小さい波長にある低反射率部分から高反射率部分、例えば>70%の部分まで延長する各曲線のUV側端によって特徴づけられる。UV端側の直線部分200は、x軸に関して60°より大きい角度(β)に傾いており、反射率軸上の約40の長さL及び1.4の傾きを有している。ある例において、直線部分はx軸に関して70°より大きい角度に傾いており、他方、他の例ではβは75°よりも大きい。さらに、反射帯域は200nmより小さい可視FWHMを有しており、ある例において、150nmより小さい可視FWHMを、他の例において100nmより小さい可視FWHMを有する。加えて、
図12において表すこの可視反射帯域の中心波長λ
cは、反射帯域のUV側端と可視FWHMのIRスペクトルのIR端から等距離にある波長として定義される。
【0051】
用語「可視FWHM」は、この曲線のUV端側と、これを超えると全方向反射体によって供給される反射は人の目には見えないIRスペクトル領域の端部との間の反射帯域の幅を言及していると理解されたい。このように、本明細書が開示する本発明の設計品及び多層積層体は、鮮明な構造色をもたらすために、電磁放射の不可視IR部分を使用する。言い換えると、反射体が、IR領域に延在するさらに広い電磁放射の帯域を反射するという事実にかかわらず、本明細書が開示する全方向反射体は、反射される可視光の狭帯域を提供するために、電磁放射スペクトルの不可視IR部分を利用している。
【0052】
図13について言及すると、この反射体の表面に対して0°及び45°の角度から白色光に曝したときの、もう一つの7層設計の全方向反射体の反射率パーセント対波長のプロットを示している。加えて、本明細書により開示する全方向反射体によってもたらされる全方向特性の定義又は評価を示している。特に、また本発明の反射体によりもたらされる反射帯域が最大、即ち図に示されるようなピークを持つとき、各曲線は最大反射率を呈し又は経験する波長として定義される中心波長(λ
c)を有する。最大反射波長の用語はλ
cとしても使用される。
【0053】
図13に示されるように、全方向反射体の表面を、45°の角度(λ
c(45
o))、例えば表面を見る人の目に対して外表面が45°に傾いている角度から観察したとき、0°の角度(λ
c(0
o))、例えば表面に対して垂直方向から表面を観察したときと比較して、λ
cのシフト又は変位がある。このλ
cのシフト(Δλ
c)は、全方向反射体の全方向特性の量目をもたらす。当然に、ゼロシフト、即ちまったくシフトがないときは、完全な全方向反射体である。しかしながら、本明細書が開示する全方向反射体は、人の目にはあたかも反射体の表面の色が変わらないかのように見え、そのため、実用的見地からこの反射体は全方向性である、50nmより小さいΔλ
cを提供することができる。いくつかの例において、本明細書が開示する全方向反射体は、40nm未満のΔλ
cを提供することができ、他の例において30nm未満のΔλ
cを提供することができ,さらに他の例において、20nm未満のΔλ
cを提供することができ,さらにいっそう他の例において、15nm未満のΔλ
cを提供することができる。この様なΔλ
cのシフトは、反射体の実際の反射率に対する波長のプロット、及び/又は代替的に、材料及び層の厚さが既知であれば、反射体のモデリングによって測定することができる。
【0054】
反射体の全方向特性のもう一つの定義または特性は、所与の角度反射帯域の端側のシフトによって測定することができる。例えば、
図10を参照して、同一の反射体を45°から観察したときの反射率についてのIR側端(S
IR(45
o))と比較した、全方向反射体を0°から観察したときの反射率についてのIR側端(S
IR(0
o))のシフト又は変位(ΔS
IR)は、全方向反射体の全方向特性の量目をもたらす。加えて、Δλ
c、例えば
図10又は
図12に示されるものと類似した反射率帯域をもたらす反射体、即ちEMRのUV又はIR領域内に延長する反射帯域についてのもの、を使用する場合、ΔS
IRを全方向性の量目として使用することが好ましい。IR側端のシフト(ΔS
IR)は、可視FWHMにおいて測定され、及び/又はすることができることを理解されたい。
【0055】
図12の参照により、同一の反射体を45°から観察したときの反射率についてのIR側端(S
UV(45°))と比較した、全方向反射体を0°から観察したときの反射率についてのIR側端(S
UV(0°))の、シフト又は変位(ΔS
IR)は、全方向反射対の全方向特性の量目を提供する。UV側端のシフト(ΔS
UV)は、可視FWHMにおいて測定され、及び/又はすることができることを理解されたい。
【0056】
当然に、ゼロシフト、即ちまったくシフトがない場合(ΔSi=0nm;i=IR,UV)は、完全な全方向反射体を特徴づける。しかしながら、本明細書が開示する全方向反射体は、50nmより小さいΔSLをもたらすことができ、これにより、人の目には反射体の表面の色が変化しないように見え、したがって実用的見地からは、この反射体は全方向性である。いくつかの例において、本明細書において開示する全方向反射体は、40nmより小さいΔSiをもたらすことができ、他の例においてΔSiは30nmより小さく、さらにほかの例において、ΔSiは20nmより小さく、さらに他の例においてΔSiは15nmより小さい。このようなΔSiのシフトは、反射体の実際の反射率に対する波長のプロット、及び/又は代替的に、材料及び層の厚さが既知であれば、反射体のモデリングによって測定することができる。
【0057】
全方向反射のシフトは、さらに低い色ずれによって測定することができる。例えば、
図14に示されるように(例えばΔθ
1及びΔθ
3を参照されたい)、本明細書が開示する実施形態に基づく多層積層体から製造される顔料の色ずれは、30°より小さく、ある例において、色ずれは25°より小さく、好ましくは20°より小さく、さらに好ましくは15°より小さく、さらにより好ましくは10°より小さい。対照的に、従来の顔料は、45°又はそれより大きい色ずれを示す(例えばΔθ
2及びΔθ
4を参照されたい)。Δθ
1に関する色ずれは、全体的に赤色に対応するが、しかしながら低い色ずれは、本明細書が開示するハイブリッド全方向構造色顔料によって反射されるいかなる色についても関連があることを理解されたい。例えば、
図14に示される低い色ずれΔθ
3は、全体的に実施形態のハイブリッド全方向構造色顔料によってもたらされる青色に対応するのに対して、従来の青色顔料が表す大きい色ずれは、Δθ
4によって表わされる。
【0058】
本明細書が開示するもう一つの実施形態に基づく全方向多層積層体を、
図15において参照番号10で示している。多層積層体10は、第1の層110及び第2の層120を有している。随意の反射体層100を含んでいてもよい。反射体層100、場合により反射体コア層とも呼ばれるこの層についての例示的な材料は、Al、Ag、Pt、Cr、Cu、Zn、Au、Sn及びこれらの合金を含んでいてよいが、これらに限定されない。このように、反射体100は金属反射体層であってよいが、しかしながらこれは必須ではない。加えて、コア反射体層の例示的な厚さは、30nmから200nmの間にわたる。
【0059】
左右対称の一対の層は、反射体層100の反対側にあってよく、即ち反射体層100は、第1層110の反対側に配置されているもう一つの第1層を有していてよく、これにより反射体100は一対の第1層に挟まれる。加えて、もう一つの第2層120は、反射体層100の反対側に配置されていてよく、これにより5層構造がもたらされる。それゆえ、本明細書における多層積層体の考察は、一つまたはそれより多いコア層について鏡構造の可能性をさらに含んでいることを理解されたい。したがって、
図15は5層多層積層体の半分の図であってよい。
【0060】
第1層110は高屈折率(nh)誘電体層であって、乾式堆積物であってよい。本公開の目的のため、用語「高屈折率材料」は、2.0と等しいか、又はそれより大きい屈折率を有する材料を言及している。さらに、用語「乾式堆積物」は、当業者にとって知られている乾式堆積法、例えば化学気相成長(CVD)及び物理気相成長(PVD)によって堆積及び/又は形成した層を言及している。さらに、用語「乾式堆積法」は、当業者に知られている乾式堆積技術を用いて、層を堆積することを言及している。
【0061】
乾式堆積nh誘電体層110についての例示的な材料は、CeO2、Nb2O5、SiN、SnO2、SnS、TiO2、ZnO、ZnS、及びZrO2を含むが、これらに限定されない。加えて、乾式堆積nh誘電体層は、所望の調整波長の0.1QW~4.0QWの間の厚さを有していてよく、この所望の調整波長は、所望の反射帯域の中心波長である。用語「QW」又は「QWの厚さ」は、所望の調整波長の4分の1の厚さ、即ちQW=λcw/4を言及しており、ここでλcwは所望の調整波長である。
【0062】
第2層120は、乾式堆積吸収体層であってよい。例示的な吸収体層材料は、Cr、Cu、Au、Sn、これらの合金、アモルファスSi、及びFe2O3を含むが、これらに限定されず、また第2層120の厚さは好ましくは2nmから30nmの間である。
【0063】
図16は、反射体コア層100にわたって延在する外部保護層200を有する左右対称の層を有する5層設計顔料10aである。この顔料10aは、対向して配置されている乾式堆積n
h誘電体層110a及び乾式吸収体層120aを有する。外部保護層200は、湿性堆積保護層、及び/又はn
h酸化物層であってよい。用語「湿式堆積物」は、当業者に知られている湿式化学技術、例えばゾル・ゲル処理、レイヤー・バイ・レイヤー処理、スピンコーティング及び同種のものを使用して堆積し、及び/又は形成した層を言及していると理解されたい。湿式堆積層材料の典型的な例は、CeO
2、Nb
2O
5、SnO
2、TiO
2、ZnO、及びZrO
2を含んでおり、またこのような層の厚さは5nm~200nmの範囲内であってよい。
【0064】
乾式堆積nh誘電体層、及び/又は湿式堆積nh外部保護層を作ることができる材料の完全には網羅していない目録を、下記の表2に示す。
【0065】
【0066】
ある例において、外部保護層200は、
図17に表すような2つの湿式堆積層から作られていてよい。例として、湿式堆積層202は第一のn
h酸化物であってよく、湿式堆積層204は第2のn
h酸化物であってよい。加えて、単一の外部保護層200、層202、及び/又は層204は、一つまたはそれより多いn
h酸化物を含む混合n
h酸化物層であってよい。
【0067】
図16に示す5層設計品は、外部保護層200に直接隣接し、又はその下にある吸収体層120及び120aを有していると理解されたい。言い換えると、乾式堆積法により製造され、外部保護層を被覆する前の5層設計顔料は、外側の吸収体層と、外側でない誘電体層を有する。外部保護層は保護層としてのみでなく、色増強層としても機能することができることを、さらに理解されたい。例として、そして例示のみの目的として、外部保護層200は保護コーティングとしてのみ働き、顔料10aが表す色に対して何ら影響しないことができる。したがって、顔料10aの全体的な色は反射体コア層100、乾式堆積n
h誘電体層110、110a、及び吸収体層120、120aによってもたらされる。代替的に、この外部保護層200は、顔料10aに対して、いくつかの色効果、例えば、顔料の彩度を増加させ、顔料の人の目に表される「色」のわずかなずれ、顔料の全方向性のわずかな増加(即ち、色ずれの低下)、顔料の全方向性のわずかな減少、及び同様のものをもたらす。
【0068】
図18を参照すると、本発明の多層積層体のもう一つの実施態様が、参照番号20において示されている。多層積層体20は、反射体コア層100と乾式堆積n
h誘電体層110との間にわたって延在する追加の吸収体層105を除いて、多層積層体10に類似している。
図16に示す顔料10aとさらに類似して、顔料20aが
図19において示され、そこでは、左右対称な層105a、110a、及び120aが、反射体コア層100にわたって延在し、かつそれぞれ層105、110、120に対向して配置されている。顔料20aは、湿式堆積n
h外部保護酸化物層200を、さらに有している。
【0069】
本明細書において開示する多層積層体の製造方法は、当業者に知られており、又は未だ知られていない、いかなる方法又は工程であってよい。典型的な方法は、湿式方法、例えばゾル・ゲル処理、レイヤー・バイ・レイヤー処理、スピンコーティング、及び同種のものを含んでいる。他の知られている乾式方法は、化学蒸着処理及び物理蒸着処理、例えばスパッタリング、電子ビーム蒸着、及び同種のものを含んでいる。
【0070】
本明細書が開示する多層積層体は、ほぼいかなる色塗り、例えば塗料用の顔料、表面に塗装される薄膜及び同種のものに使用することができる。加えて、
図16及び18に表す顔料は、
図10~14に示すような全方向構造色特性を呈する。
【0071】
本発明をより教示するため、しかしいかなる方法によってもその範囲を限定するものではないものとして、耐候性全方向構造色顔料、及びこのような顔料を製造するための作製工程の例を下記において論じる。
【0072】
<手順1> ZrO
2層によって被覆された5層顔料
2グラムの5層顔料を、100ml丸底フラスコ中の30mlのエタノールに懸濁し、室温で、500rpmで撹拌した。2.75mlのジルコニウムブトキシド(1-ブタノール中80%)の溶液を、10mlのエタノールに溶解し、1時間、一定レートで滴定した。同時に、1mlの脱イオン水を3mlのエタノールに希釈したものを、量定して入れた。滴定後、この懸濁液を、さらに15分間撹拌した。この混合液を、ろ過し、エタノール、続いてイソプロパノールで洗浄し、また100℃で24時間乾燥し、又は代替的にさらに200℃で24時間アニールして、最終的に
図16に表す構造を有する5層顔料を得た。必要であれば、より高い温度によるさらなるアニールを行ってもよい。
【0073】
<手順2> TiO
2層によって被覆されている5層顔料
2グラムの5層顔料を、100ml丸底フラスコ内の30mlのIPAに懸濁し、40℃で撹拌した。そして、2.5mlのチタンエトキシド(97%)の溶液を20mlのIPAに溶解したものを、2.5時間、一定レートで滴定した。同時に、2.5mlの脱イオン水を4mlのIPAに希釈したものを、定量して入れた。滴定後、この懸濁液を、さらに30分間撹拌した。この混合液を室温に低下させ、ろ過し、IPAで洗浄し、24時間100℃で乾燥し、又は代替的にさらに200℃で24時間アニールして、最終的に
図16に表す構造を有する5層顔料を得た。必要であれば、より高い温度によるさらなるアニールを行ってもよい。
【0074】
コーティング、コーティングを製造するための手順、コーティングの厚さ、コーティングの厚さの均一性、及び光分解反応性をまとめたものを、下記の表3に示す。
【0075】
【0076】
上述より、表4は、本教示に含まれる、多様な酸化物層、被覆することができる基質、及びコーティングの厚さの目録を提供している。
【0077】
【0078】
上記に加えて、保護コーティングを有する全方向構造色顔料は、オルガノシラン表面処理を施してもよい。例えば、ある例示的なオルガノシラン工程処理では、0.5gの上述の一又はそれより多い保護層で被覆された顔料を、100ml丸底フラスコ内の10mlのpH約5.0(希釈した酢酸溶液で調整した)のEtOH/水(4:1)溶液に懸濁する。このスラリーを20秒間超音波処理し、500rpmで15分間撹拌した。次に0.1~0.5vol%のオルガノシラン剤をスラリーに加え、溶液を500rpmでさらに2時間撹拌した。このスラリーを、脱イオン水を使用して遠心分離し、又はろ過し、そして残留顔料をEtOH/水(4:1)溶液10mlに再分散した。この顔料-EtOH/水スラリーを還流下で65℃に加熱し、500rpmで30分撹拌した。そしてこのスラリーを、脱イオン水、その後IPAを使用して遠心分離し、又はろ過して、顔料粒子のケーキを得た。最後に、このケーキを100℃で12時間乾燥した。必要であれば、より高い温度によるさらなるアニールを行ってもよい。
【0079】
オルガノシラン工程は、当業者にとって公知であるいかなるオルガノシランカップリング剤を使用することもでき、例えばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン3-メソアルキルオキシプロピルトリメトキシ‐シラン(MAPTMS)、N-[2(ビニルベンジルアミノ)-エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシド-オキシプロピルトリメトキシシラン及び同種のものを含む。
【0080】
上述の例及び実施形態は、説明のみを目的とし、当業者にとって明らかな変更、修正、及び同種のものは本発明の範囲に含まれる。したがって、本発明の範囲は、請求項及びこれと同等な全てものによって定義される。
【0081】
本発明は、さらに下記の実施形態を含む:
1.反射コア層、
前記反射コア層にわたって延在する乾式堆積高屈折率(nh)誘電体層、
前記nh誘電体層にわたって延在する乾式堆積吸収体層、及び
前記吸収体層にわたって延在する湿式nh外部酸化物層を有する多層積層体を有し、
前記多層積層体が、前記多層積層体を広帯域電磁放射に曝し、かつ前記多層積層体の外表面の垂直方向に対して0°~45°の間の角度から観察したときに、300nmより小さい所与の半値幅(FWHM)を有する反射帯域、及び30°より小さい所与の色ずれを有する、
ハイブリッド全方向構造色顔料。
2.前記反射コア層が、30nm~200nmの厚さを有する金属コア反射体層であり、かつAl、Ag、Pt、Cr、Cu、Zn、Au、Sn及びこれらの合金からなる群のうち少なくとも一つより選択される金属材料である、前記1に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
3.前記乾式堆積nh誘電体層が、CeO2、Nb2O5、SiN、SnO2、SnS、TiO2、ZnO、ZnS、及びZrO2からなる群のうち少なくとも一つより選択される誘電体材料である、前記2に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
4.前記乾式堆積nh誘電体層が、所望の調整波長についての0.1QW~4.0QWの厚さを有する、前記3に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
5.前記乾式堆積吸収体層が、Cr、Cu、Au、Sn、これらの合金、アモルファスSi、及びFe2O3からなる群のうち少なくとも一つより選択される吸収体材料である、前記4に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
6.前記乾式吸収体層が2nm~30nmの厚さを有する、前記5に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
7.前記湿式堆積nh外部酸化物層が、CeO2、Nb2O5、SnO2、TiO2、ZnO、及びZrO2からなる群のうち少なくとも一つより選択される酸化物である、前記6に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
8.前記湿式堆積nh外部酸化物層が、5nm~200nmの間の厚さを有する、前記7に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
9.前記乾式堆積nh誘電体層は、これらの間に前記反射コア層が延在する一対のnh誘電体層であり、前記乾式堆積吸収体層は、これらの間に一対のnh誘電体層が延在する一対の乾式堆積吸収体層であり、前記湿式堆積nh外部酸化物層は、前記一対の乾式堆積吸収体層の外表面にわたって延在する、前記8に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
10.前記多層積層体が2.0μmより小さい厚さを有する、前記9に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
11.前記多層積層体が、1.5μmより小さい厚さを有する、前記9に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
12.前記多層積層体が10層よりも少ない、前記11に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
13.前記多層積層体が8層よりも少ない、前記12に記載のハイブリッド全方向構造色顔料。
14.反射コア層をもたらすこと、
反射体コア層にわたって延在する高屈折率(nh)誘電体層を乾式堆積すること、
nh誘電体層にわたって延在する吸収体層を乾式堆積すること、及び
吸収体層にわたって延在するnh酸化物層を湿式堆積すること
によって多層積層体を製造することを含み、
前記多層積層体が、前記多層積層体を広帯域電磁放射に曝し、前記多層積層体の外表面の垂直方向に対して0°~45°の間の角度から観察した時に、300nmより小さい所与の半値幅(FWHM)を有する反射帯域、及び30°より小さい所与の色ずれを有する、
全方向構造色顔料の製造方法。
15.反射コア層が、Al、Ag、Pt、Cr、Cu、Zn、Au、Sn及びこれらの合金からなる群のうち少なくとも一つより選択される金属材料から作られる、30nm~200nmの厚さを有する金属コア反射体層であり、
前記乾式堆積nh誘電体層が、所望の調整波長の0.1QW~4.0QWの間の厚さを有し、かつCeO2、Nb2O5、SiN、SnO2、SnS、TiO2、ZnO、ZnS、及びZrO2からなる群のうち少なくとも一つより選択される誘電体材料から作られる、前記14に記載の方法。
16.前記乾式吸収体層が2nm~30nmの厚さを有し、かつCr、Cu、Au、Sn、これらの合金、アモルファスSi、及びFe2O3からなる群のうち少なくとも一つより選択される吸収体材料から作られる、前記15に記載の方法。
17.湿式堆積nh外部酸化物層が、5nm~200nmの厚さを有し、かつCeO2、Nb2O5、SnO2、TiO2、ZnO、及びZrO2からなる群より少なくとも一つより選択される酸化物である、前記16に記載の方法。
18.前記多層積層体が10層より少ない、前記17に記載の方法。
19.前記多層積層体が8層より少ない、前記17に記載の方法。
20.前記多層積層体が2.0μmより小さい全厚を有する、前記17に記載の方法。