(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】炭酸カルシウム粒子の製造方法および炭酸カルシウム粒子の製造装置
(51)【国際特許分類】
C01F 11/18 20060101AFI20240723BHJP
【FI】
C01F11/18 B
(21)【出願番号】P 2023112306
(22)【出願日】2023-07-07
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 憲史
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 敦義
【審査官】宮脇 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-527280(JP,A)
【文献】特開2018-039696(JP,A)
【文献】特表2008-502579(JP,A)
【文献】特表2011-530478(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルシウムを含む材料溶液に、二酸化炭素を含
み、平均粒子径が100μm以下であるファインバブルを導入する工程と、
前記材料溶液の電気伝導率を経時的に測定する工程
と、
前記測定されている電気伝導率が極小値をとった後に、前記ファインバブルの導入を停止する工程と、
を有し、
前記停止する工程における、前記ファインバブルの導入を停止するタイミングは、
前記ファインバブルの導入を開始したときの前記材料溶液の電気伝導率EC
0
、および
前記電気伝導率の極小値EC
min
に基づいて、
前記ファインバブルの導入を停止するときの前記材料溶液の電気伝導率EC
fin
、が式EC
fin
/(EC
0
-EC
min
)が0.05となる前となるように制御される、
炭酸カルシウム粒子の製造方法。
【請求項2】
前記ファインバブルは、平均粒子径が1μm以上100μm以下の気泡である、
請求項1に記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
【請求項3】
前記ファインバブルを導入する工程において、
前記測定された電気伝導率に応じて、前記ファインバブルの平均粒子径を変化させる、
請求項1に記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
【請求項4】
前記ファインバブルを導入する工程において、
前記測定された電気伝導率に応じて、前記ファインバブルの導入速度を変化させる、
請求項1に記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
【請求項5】
前記ファインバブルを導入する工程は、前記材料溶液のpHを7.0以上として行う、
請求項1に記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
【請求項6】
カルシウムを含む材料溶液の電気伝導率を経時的に測定する測定部と、
前記材料溶液に、二酸化炭素を含
み、平均粒子径が100μm以下であるファインバブルを導入する導入部と、
前記導入部による前記ファインバブルの導入を制御して、前記測定されている電気伝導率が極小値をとった後に、前記ファインバブルの導入を停止させる、制御部と、を有
し、
前記制御部は、前記ファインバブルの導入を停止するタイミングを、
前記ファインバブルの導入を開始したときの前記材料溶液の電気伝導率EC
0
、および
前記電気伝導率の極小値EC
min
に基づいて、
前記ファインバブルの導入を停止するときの前記材料溶液の電気伝導率EC
fin
がEC
fin
/(EC
0
-EC
min
)が0.05となる前となるように制御する、
炭酸カルシウム粒子の製造装置。
【請求項7】
前記導入部は、前記材料溶液が内部を流通する管状の多孔質セラミックスと、
前記多孔質セラミックスの内部に二酸化炭素を圧入する圧入部と、を有する、
請求項
6に記載の炭酸カルシウム粒子の製造装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記導入部による前記ファインバブルの導入を制御して、前記測定された電気伝導率に応じて、前記ファインバブルの平均粒子径を変化させる、
請求項
6に記載の炭酸カルシウム粒子の製造装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記導入部による前記ファインバブルの導入を制御して、前記測定された電気伝導率に応じて、前記ファインバブルの導入速度を変化させる、
請求項
6に記載の炭酸カルシウム粒子の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭酸カルシウム粒子の製造方法および炭酸カルシウム粒子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスである二酸化炭素の排出量を低減するため、二酸化炭素をカルシウムと反応させて炭酸カルシウムとして固定化することが検討されている。特許文献1および特許文献2などに記載のように、コンクリートスラッジや鉄鋼スラグなどのカルシウムを含有する廃棄物から水中に抽出されたカルシウムと、上記水中に導入した二酸化炭素と、を反応させることで、炭酸カルシウムを生成することができる。これらの方法は、カルシウムを含有する廃棄物の廃棄量も減らせるので、廃棄物による環境悪化も抑制できると期待される。
【0003】
炭酸カルシウム粒子は、プラスチック、紙および塗料などへの充填材、農薬および肥料などの土壌改良剤、接着剤、シーラント、研磨作用を利用して消しゴムや歯磨剤、ならびに、食品添加物および化粧品原料などの幅広い分野で使用される。また、最近では、炭酸カルシウム粒子を主原料としたシート・フィルム状の紙代替製品や、プラスチック代替製品が開発され、広く使用されている。紙代替製品としては、クリアファイル、名刺、冊子(パンフレット・写真集等)、販促POP、メニュー表、パッケージ、ポスター、電飾シート、シール・ラベル、マップ、マスクケース、タグの用途に使用されている。プラスチック代替製品としては、従来、プラスチックが用いられていた用途(各種成形品、たとえば、レジ袋・買い物袋、食品容器、飲料カップ、ハンガー、文房具、うちわ、化粧品容器、ボトル、建築資材等)に使用されている。
【0004】
二酸化炭素の導入によって炭酸カルシウムを生成する際に、カルシウムと反応させる二酸化炭素の気泡を小粒子化することで、反応速度を速める方法も検討されている。たとえば、特許文献3および特許文献4には、キャビテーションにより生じる100ミクロン以下の気泡(キャビテーション気泡)を使用することで、平均粒子径が100nmや200nm以下の炭酸カルシウム粒子を短時間で生成できたと記載されている。また、特許文献5および特許文献6には、平均粒子径が1000nm以下であるウルトラファインバブルを使用することで、短時間で炭酸カルシウム粒子を生成できたと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-279552号公報
【文献】特開2014-148432号公報
【文献】特開2015-199654号公報
【文献】特開2015-199659号公報
【文献】特開2018-039696号公報
【文献】特開2023-028788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3~特許文献6に記載のように、二酸化炭素の気泡を小粒子化させた、いわゆるファインバブルを使用することで、炭酸カルシウム粒子を短時間で生成できることが知られている。しかし、本発明者の知見によると、炭酸カルシウム粒子の晶出速度は気泡の粒子径のみでは決定されず、様々な条件によって変化し得る。そのため、ファインバブルを使用したとしても、最適な生成時間を特定することは難しかった。そして、ファインバブルの導入時間を必要以上に短くしてしまうと、炭酸カルシウム粒子が十分に晶出する前に生成を停止することになってしまい、炭酸カルシウム粒子の収率は低下してしまう。また、ファインバブルの導入時間を必要以上に長くしてしまうと、反応速度が期待したほど高まらないことになる。
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑みなされたものであり、ファインバブルを使用して炭酸カルシウムを生成する際に、ファインバブルの最適な導入時間を簡易に決定できる炭酸カルシウム粒子の製造方法、および当該方法を実施できる炭酸カルシウム粒子の製造装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[6]の炭酸カルシウム粒子の製造方法に関する。
[1]カルシウムを含む材料溶液に、二酸化炭素を含むファインバブルを導入する工程と、
前記材料溶液の電気伝導率を経時的に測定する工程と、を有し、
前記測定されている電気伝導率が極小値をとった後に、前記ファインバブルの導入を停止する、
炭酸カルシウム粒子の製造方法。
[2]前記ファインバブルは、平均粒子径が1μm以上100μm以下の気泡である、
[1]に記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
[3]前記ファインバブルの導入を開始したときの前記材料溶液の電気伝導率をEC0、
前記電気伝導率の極小値をECmin、
前記ファインバブルの導入を停止するときの前記材料溶液の電気伝導率をECfin、とするとき、
前記電気伝導率が極小値をとった後、なおかつ式ECfin/(EC0-ECmin)が0.05となる前に、前記ファインバブルの導入を停止する、
[1]または[2]に記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
[4]前記ファインバブルを導入する工程において、
前記測定された電気伝導率に応じて、前記ファインバブルの平均粒子径を変化させる、
[1]~[3]のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
[5]前記ファインバブルを導入する工程において、
前記測定された電気伝導率に応じて、前記ファインバブルの導入速度を変化させる、
[1]~[4]のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
[6]前記ファインバブルを導入する工程は、前記材料溶液のpHを7.0以上として行う、
[1]~[5]のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子の製造方法。
【0009】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[7]~[11]の炭酸カルシウム粒子の製造装置に関する。
[7]カルシウムを含む材料溶液の電気伝導率を経時的に測定する測定部と、
前記材料溶液に、二酸化炭素を含むファインバブルを導入する導入部と、
前記導入部による前記ファインバブルの導入を制御して、前記測定されている電気伝導率が極小値をとった後に、前記ファインバブルの導入を停止させる、制御部と、を有する、
炭酸カルシウム粒子の製造装置。
[8]前記ファインバブルの導入を開始したときの前記材料溶液の電気伝導率をEC0、
前記電気伝導率の極小値をECmin、
前記ファインバブルの導入を停止するときの前記材料溶液の電気伝導率をECfin、とするとき、
前記制御部は、前記電気伝導率が極小値をとった後、なおかつECfin/(EC0-ECmin)が0.05となる前に、前記ファインバブルの導入を停止する、
[7]に記載の炭酸カルシウム粒子の製造装置。
[9]前記導入部は、前記材料溶液が内部を流通する管状の多孔質セラミックスと、
前記多孔質セラミックスの内部に二酸化炭素を圧入する圧入部と、を有する、
[7]または[8]に記載の炭酸カルシウム粒子の製造装置。
[10]前記制御部は、前記導入部による前記ファインバブルの導入を制御して、前記測定された電気伝導率に応じて、前記ファインバブルの平均粒子径を変化させる、
[7]~[9]のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子の製造装置。
[11]前記制御部は、前記導入部による前記ファインバブルの導入を制御して、前記測定された電気伝導率に応じて、前記ファインバブルの導入速度を変化させる、
[7]~[10]のいずれかに記載の炭酸カルシウム粒子の製造装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ファインバブルを使用して炭酸カルシウムを生成する際に、ファインバブルの最適な導入時間を簡易に決定できる炭酸カルシウム粒子の製造方法、および当該方法を実施できる炭酸カルシウム粒子の製造装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に関する炭酸カルシウム粒子の製造方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、
図1に示す炭酸カルシウム粒子の製造方法を実施できる炭酸カルシウム粒子の製造装置の概略構成図である。
【
図3】
図3Aは、ファインバブルの導入を開始した後の電気伝導率の経時的な変化を示すグラフであり、
図3Bは、ファインバブルの導入を開始した後の炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化を示すグラフであり、
図3Cは、ファインバブルの導入を開始した後の炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化を示すグラフであり、
図3Dは、ファインバブルの導入を開始した後の二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化を示すグラフである。
【
図4】
図4A~
図4Dはそれぞれ、実施例1についての、電気伝導率の経時的な変化(
図4A)、炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化(
図4B)、炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化(
図4C)、および二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化(
図4D)を示すグラフである。
【
図5】
図5A~
図5Dはそれぞれ、実施例2についての、電気伝導率の経時的な変化(
図5A)、炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化(
図5B)、炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化(
図5C)、および二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化(
図5D)を示すグラフである。
【
図6】
図6A~
図6Dはそれぞれ、実施例3についての、電気伝導率の経時的な変化(
図6A)、炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化(
図6B)、炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化(
図6C)、および二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化(
図6D)を示すグラフである。
【
図7】
図7A~
図7Dはそれぞれ、比較例1についての、電気伝導率の経時的な変化(
図7A)、炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化(
図7B)、炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化(
図7C)、および二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化(
図7D)を示すグラフである。
【
図8】
図8Aは、測定された電気伝導率とカルシウム濃度との関係を示すグラフであり、
図8Bは、測定されたpHとカルシウム濃度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に関する炭酸カルシウム粒子の製造方法のフローチャートであり、
図2は、
図1に示す炭酸カルシウム粒子の製造方法を実施できる炭酸カルシウム粒子の製造装置の概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態では、カルシウムを含有する材料(以下、単に「カルシウム原料」ともいう。)から水中にカルシウムを抽出し(工程S110)、固液分離によりカルシウムを含むカルシウム含有溶液(以下、単に「材料溶液」ともいう。)を分離する(工程S120)、そして、材料溶液中への二酸化炭素を含むファインバブルの導入を開始して、炭酸カルシウム粒子を晶出させる(工程S130)。このとき、電気伝導率(EC)を経時的に測定し(工程S140)、材料溶液の電気伝導率が極小値をとったことが確認されたら(工程S150)、ファインバブルの導入を停止する(工程S160)。その後、材料溶液をろ過して晶出された炭酸カルシウム粒子を回収する(工程S170)。
【0014】
図2に示すように、炭酸カルシウム粒子の製造装置200は、カルシウムを抽出する抽出部210、固液分離により材料溶液を分離する分離部220、ファインバブルを調製して材料溶液に導入する導入部230、材料溶液の電気伝導率を測定する測定部240、材料溶液から炭酸カルシウム粒子を晶出させる晶出部260、およびろ過により炭酸カルシウム粒子を回収する回収部270を有する。
【0015】
製造装置200が有する各構成部は、制御部250との間でデータの送受信が可能に構成されている。制御部250は、CPUなどの計算機と、ROMおよびRAMなどの記憶部と、を有する。そして、制御部250は、これらの構成部の動作、およびこれらの構成部を接続する流路に設けられた弁の開閉およびポンプ(不図示)の動作を制御する。なお、制御部250は製造装置200の内部に備えられている必要はなく、製造装置200の外部に配置されて通信機器による通信を通じてこれらの動作および開閉などを制御してもよい。
【0016】
以下、製造装置200を用いて炭酸カルシウム粒子を製造する方法の各工程を説明する。
【0017】
(カルシウムの抽出:工程S110)
まず、抽出部210が有する抽出槽212にカルシウム原料と水とを投入し、これらを攪拌してカルシウム原料からカルシウムを抽出する。
【0018】
抽出槽212に投入されるカルシウム原料は、固体状であってもよいし、液体状(溶液状)であってもよいし、スラリー状であってもよい。カルシウム原料の種類は特に限定されず、石灰石や大理石などの精製品であってもよいし、廃棄物などの回収品であってもよい。上記回収品の例には、廃コンクリート、生コンクリートスラッジ、鉄鋼スラグ、廃石膏、石炭灰、バイオマス灰、焼却灰、アルカリ排水、および貝殻などが含まれる。これらのカルシウム原料は、中和処理や破砕処理または磨砕処理などの前処理を施されていてもよいし、前処理を施されていなくてもよい。カルシウムの抽出効率を高める観点からは、これらのカルシウム原料は、破砕処理または磨砕処理を施されていることが好ましい。
【0019】
水としては、イオン交換水、水道水および工業用水などを用いることができる。なお、カルシウムが良好に溶解する限りにおいて、水以外の他の溶媒を使用してもよいし、水と他の溶媒との混合液を用いてもよい。なお、液体状やスラリー状のカルシウム原料を抽出槽212に投入したときなど、不要であれば水を投入しなくてもよい。
【0020】
抽出槽212は、モーター214により駆動される攪拌器216を有する。抽出部210は、制御部250による制御の下で攪拌器216を回転させて、カルシウムを含む材料と水とを撹拌し、水中にカルシウムを抽出する。これにより、カルシウムを含む材料溶液にカルシウム原料が懸濁した懸濁液が得られる。攪拌速度および時間などの攪拌条件は特に限定されない。
【0021】
このようにして得られた懸濁液は、制御部250による制御の下で、分離部220に送られる。
【0022】
(固液分離:工程S120)
分離部220は、固液分離により、固体状のカルシウム原料やその他の夾雑物(微粒子等)を懸濁液から除去して、材料溶液を分離する。上記固液分離により、測定部240による電気伝導率の測定精度を高めることができる。さらには、上記固液分離により、晶出部260で晶出される炭酸カルシウム粒子への不純物の混入を抑制して純度が高い炭酸カルシウムを得たり、夾雑物の表面を介した炭酸カルシウム粒子同士の凝集を抑制したり、カルシウム原料による流路の詰まりを抑制したりすることもできる。
【0023】
分離部220の種類は特に限定されず、フィルタープレス、真空ベルトフィルター、真空回転ろ過機、スクリューデカンタ、および遠心脱水機などの公知の固液分離装置を用いることができる。
【0024】
分離部220で固液分離される懸濁液は、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムなどを含む凝集剤を添加されて、コロイド粒子などの微粒子を凝集されていてもよい。これにより、分離部220においてこれらの微粒子をより効率的に除去することができる。
【0025】
固液分離されて得られた材料溶液は、制御部250による制御の下で、晶出部260に送られる。固液分離により除去された固形分は、回収して廃棄されてもよいし、他の用途に使用されてもよい。
【0026】
(ファインバブルの導入の開始:工程S130)
晶出部260では、導入部230により、材料溶液にファインバブルが導入される。
【0027】
具体的には、晶出部260は、炭酸カルシウム粒子を晶出させる晶出槽262を有し、晶出槽262は、モーター264により駆動される攪拌器266を有する。また、晶出槽262には、材料溶液の一部を晶出槽262の外部に抽出する抽出流路232が接続されている。抽出流路232は、抽出した材料溶液が、ファインバブル生成器234を通って導入口236から晶出槽262に再導入されるように構成された、循環流路である。
【0028】
ファインバブル生成器234には、二酸化炭素を含むガスを貯留するガスタンク238が接続されている。そして、ファインバブル生成器234は、ガスタンク238から供給された二酸化炭素を含むガスを、ファインバブル化して、抽出流路232を流通する材料溶液に導入する。導入されたファインバブルは、材料溶液とともに、導入口236から晶出槽262の中に導入される。なお、抽出流路232、ファインバブル生成器234、導入口236およびガスタンク238は、導入部230を構成する。
【0029】
ファインバブル生成器234の構成は特に限定されず、ファインバブルを生成する公知の構成とすることができる。たとえば、ファインバブル生成器234は、気液混合せん断式、スタティックミキサー式、ベンチュリ式、キャビテーション式、蒸気凝縮式、超音波式、旋回噴流式、加圧溶解式、微細孔式などの方法によってファインバブルを生成する構成であればよい。これらのうち、インラインでファインバブルを生成できるため処理遅延が生じにくく、かつ異物の混入も生じにくいこと、および、高粘度の材料溶液にもファインバブルを導入できることから、微細孔式が好ましい。
【0030】
本実施形態では、ファインバブル生成器234は、ガスタンク238から供給された二酸化炭素を含むガスが加圧状態で供給されるガス溜まりと、ガス溜まりの内部に配置された、材料溶液が内部を流通する管状の多孔質セラミックスと、を有する。ガス溜まりは、二酸化炭素を含むガスを多孔質セラミックスの内部に圧入する圧入部である。圧入されたガスは、多孔質セラミックスを通過することでファインバブルとなって、材料溶液の中に導入される。
【0031】
なお、本明細書においてファインバブルとは、平均粒子径が100μm以下の微細な気泡を意味する。炭酸カルシウム粒子の晶出に気泡の表面積が大きいファインバブルを使用することで、炭酸イオンとカルシウムイオンとの反応効率を高め、炭酸カルシウム粒子の晶出速度を速めることができる。ファインバブルの導入制御の観点からは、ファインバブルの平均粒子径は1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。なお、本明細書において、ファインバブルの平均粒子径は、ファインバブル生成器234の構成によって決定されるが、レーザ回折・散乱式の粒子径分布測定装置によって測定された値であってもよい。
【0032】
このようにして導入部230により導入されたファインバブル中の二酸化炭素と、材料溶液中のカルシウムとが反応して、晶出槽262の内部で炭酸カルシウム粒子が晶出する。
【0033】
導入されるファインバブル中の二酸化炭素の濃度は特に限定されず、たとえば導入するファインバブルのうち10体積%以上100体積%以下とすることができる。二酸化炭素濃度を10体積%以上とすることで、短時間で炭酸カルシウム粒子を晶出させることができる。
【0034】
なお、ファインバブルの材料となる二酸化炭素を含むガスは、工場排ガスや、石油および天然ガスの燃焼排ガス、および廃棄物の焼却排ガスなどであってもよい。これらの排ガスを使用することで、大気中への二酸化炭素の排出量を低減して、環境負荷の低減に寄与することができる。
【0035】
ファインバブルの導入条件は特に限定されない。たとえば、ファインバブルの導入速度は、0.01L/min以上10L/min以下とすることができる。また、ファインバブルの導入時間は、60分以上240分以下とすることができる。また、ファインバブルの導入温度は、10℃以上40℃以下とすることができる。
【0036】
ファインバブルを導入するときの材料溶液のpHは、7.0以上であることが好ましい。pHを7.0以上とすることで、炭酸カルシウムとして晶出したカルシウムの再溶解を抑止することができる。材料溶液のpHは、7.0以上13.0以下であることが好ましく、8.0以上13.0以下であることがより好ましい。
【0037】
また、材料溶液に種結晶を投入して、炭酸カルシウム粒子の結晶化を促進させてもよい。ただし、種結晶の表面で結晶が成長することや、新たな結晶核の生成を促進することによる、粒子径のばらつきを抑制する観点からは、種結晶を投入しないことが好ましい。
【0038】
(電気伝導率の測定:工程S140)
測定部240は、ファインバブルを導入しているときの、晶出槽262の内部にある材料溶液の電気伝導率を経時的に測定する。
【0039】
測定部240の種類は特に限定されず、液体の電気伝導率を測定できる測定装置であればよい。たとえば、測定部240は、交流2電極方式および交流4電極方式などの電極法で電気伝導率を測定する装置であってもよいし、電磁誘導法で電気伝導率を測定する装置であってもよい。測定部240は、材料溶液の一部を晶出槽262から抽出して、抽出された溶液の電気伝導率を測定する構成であってもよい。
【0040】
測定部240は、制御部250による制御の下で、晶出部260にある材料溶液の電気伝導率を経時的に測定する。本明細書において「経時的」とは、異なる時間において電気伝導率を複数回測定することを意味する。この限りにおいて、本実施形態は、必ずしも連続して電気伝導率を測定し続けることを必須とするものではなく、たとえば1分おき、5分おき、10分おきのように間隔をあけて電気伝導率を測定してもよい。なお、測定部240は、ファインバブルの導入を開始する前から経時的に電気伝導率を測定することが好ましい。そして、測定部240は、測定された電気伝導率を制御部250に送信する。
【0041】
(電気伝導率の判定:工程S150)
制御部250は、測定部240からの電気伝導率を受信すると、材料溶液の電気伝導率が経時的に下降しているか、経時的に変化していないか、あるいは経時的に上昇しているか、を確認し、電気伝導率が極小率をとったかどうかを判定する。電気伝導率が極小率をとったことは、電気伝導率の変化が下降から上昇に転じたこと等により判断することができる。
【0042】
本発明者の新たな知見によると、ファインバブルの導入を開始すると、材料溶液の電気伝導率は下降していく。そして、電気伝導率は、極小値をとった後、少しずつ上昇していく。一方で、材料溶液中の炭酸カルシウム粒子の晶出率は、電気伝導率が極小値となった時点、あるいはその直後が最も高い。そして、その後の電気伝導率が少しずつ上昇していく間、しばらくは晶出率は変化しないか、あるいは少しずつ下降していく。この晶出率が変化しない間にファインバブルの導入を続けても、晶出速度や二酸化炭素(ファインバブル)の利用効率が低下するだけなので、ファインバブルの導入は、電気伝導率が極小値となった時点、あるいはその直後に停止することが望ましい。
【0043】
この理由は定かではないものの、電気伝導率は、材料溶液のカルシウム濃度を比較的正確に反映しているからだと考えられる。そして、電気伝導率が極小値をとったときが、カルシウム濃度が極小となったときであり、材料溶液中のカルシウムが炭酸カルシウム粒子として最大限に晶出したときであると考えられる。その後は、ファインバブルの導入を続けても、炭酸カルシウム粒子のそれ以上の晶出は見込めず、あるいはファインバブルにより供給された二酸化炭素により炭酸カルシウムが材料溶液に再溶解するため、晶出率はわずかずつ低下していく。
【0044】
また、本発明者のさらなる知見によると、電気伝導率が少しずつ上昇している間にもファインバブルの導入を続けていくと、ある時点で炭酸カルシウム粒子の晶出率が急速に低下してしまう。これは、ファインバブルにより導入された二酸化炭素によって材料溶液のpHが急速に低下し、晶出した炭酸カルシウムも急速に再溶解してしまうためだと考えられる。
【0045】
図3Aは、ファインバブルの導入を開始した後の電気伝導率の経時的な変化を示すグラフであり、
図3Bは、ファインバブルの導入を開始した後の炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化を示すグラフであり、
図3Cは、ファインバブルの導入を開始した後の炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化を示すグラフであり、
図3Dは、ファインバブルの導入を開始した後の二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化を示すグラフである。なお、
図3A~
図3Dは、これらの典型的な変化パターンを示す。
【0046】
図3A~
図3Dに示すように、ファインバブルの導入を開始すると、炭酸カルシウム粒子の晶出率は時間とともに上昇していき(
図3B)、そのため晶出速度(
図3C)および二酸化炭素の利用効率(
図3D)も同様に上昇していく。このとき、材料溶液の電気伝導率は下降していく(
図3A)。
【0047】
ある程度の時間が経過すると(時点A)、炭酸カルシウム粒子の新たな晶出は停止し、それ以降は炭酸カルシウム粒子の晶出率はほぼ変化しなくなるか、わずかずつ低下していく(
図3B)。これ以降にファインバブルの導入を続けても、時間が経過していくにもかかわらず炭酸カルシウム粒子の晶出率が変化しないので、晶出速度(
図3C)は低下していき、二酸化炭素の利用効率(
図3D)も低下していく。このとき、材料溶液の電気伝導率はほぼ変化しないか、あるいはわずかずつ上昇していく(
図3A)。
【0048】
そして、ファインバブルの導入をさらに続けると、あるとき(時点B)に材料溶液のpHが二酸化炭素によって急速に低下し、炭酸カルシウムが急速に再溶解するため、炭酸カルシウム粒子の晶出率は急速に低下する(
図3B)。そのため、晶出速度(
図3C)も二酸化炭素の利用効率(
図3D)も急速に低下する。
【0049】
そのため、初期の電気伝導率(EC0)から低下していった電気伝導率が、極小値(ECmin)をとった後、少しずつ上昇していく間(時点Aと時点Bとの間)に、ファインバブルの導入を停止することで、炭酸カルシウム粒子の晶出率、晶出速度、および二酸化炭素の利用効率を高めて、効率よく炭酸カルシウム粒子を回収することができる。
【0050】
一方で、時点Bを経過した後は、炭酸カルシウム粒子が急速に再溶解するので、少なくとも時点Bより前にファインバブルの導入を停止することが好ましい。本発明者の知見によると、ファインバブルの導入を停止するときの電気伝導率(ECfin)について、式ECfin/(EC0-ECmin)が0.05となる前にファインバブルの導入を停止することで、時点Bより前にファインバブルの導入を停止することができる。上記観点から、式ECfin/(EC0-ECmin)が0.03となる前にファインバブルの導入を停止することがより好ましく、0.01となる前にファインバブルの導入を停止することがさらに好ましい。なお、式ECfin/(EC0-ECmin)の下限値は0である。
【0051】
このとき、炭酸カルシウム粒子の晶出状態の判定に電気伝導率を使用することで、温度や他の成分量によって変化しやすいpHなどとは異なり、材料溶液の温度や組成などの条件に影響されずに晶出状態を正確に判断できると考えられる。また、電気伝導率は微細な変化を測定できるので、より精密に晶出状態を判断できると考えられる。これらの理由により、電気伝導率を指標とすることで、晶出率や晶出速度、二酸化炭素の利用効率などが高くなる時点をより正確に把握することができると考えられる。
【0052】
なお、上記説明した挙動は、気泡の表面積が大きく二酸化炭素が材料溶液に溶け込みやすいファインバブルを使用したときに特有の挙動であると考えられる。粒子径がより大きい気泡を使用したときは、電気伝導率によっても精密な晶出状態の判断は困難である。
【0053】
(ファインバブルの導入の停止:工程S160)
上記知見に基づき、導入部230は、制御部250による制御の下で、測定部240が測定した電気伝導率が極小値をとったと判定されると(工程S150:YES)、その後にファインバブルの導入を停止する。なお、電気伝導率が極小値をとったと判定されないとき(工程S150:NO)は、導入部230はファインバブルの導入を停止しない。このときは、測定部240による電気伝導率の測定と、制御部250による判定が繰り返される。
【0054】
ファインバブルの導入を停止した後、晶出した炭酸カルシウム粒子を含む材料溶液は、制御部250による制御の下で、回収部270に送られる。
【0055】
(ろ過:工程S170)
回収部270は、炭酸カルシウム粒子を含む材料溶液をろ過して、炭酸カルシウム粒子を回収する。
【0056】
回収部270によるろ過は、吸引ろ過などの公知の方法で行えばよい。
【0057】
回収された炭酸カルシウム粒子は、必要に応じて乾燥や粉砕されてもよい。また、用途に応じて、脂肪酸などによる表面処理を施されてもよい。
【0058】
ろ過によりろ別された液体成分(処理液)は、廃液処理をされて廃棄されてもよいし、他の用途に使用されてもよいし、材料溶液として再利用してもよい。
【0059】
このようにして得られた炭酸カルシウム粒子は、プラスチック、紙および塗料などへの充填材、農薬および肥料などの土壌改良剤、接着剤、シーラント、研磨作用を利用して消しゴムや歯磨剤、炭酸カルシウム粒子を主原料としたシート・フィルム状の紙代替製品や、プラスチック代替製品ならびに、食品添加物および化粧品原料などの幅広い用途に使用することができる。
【0060】
[その他の実施形態]
なお、上述の実施形態は本発明の一例を示すものであり、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想の範囲内において、他の種々多様な各実施形態も可能であることは言うまでもない。
【0061】
たとえば、導入部230は、測定部240が測定した電気伝導率に応じて、ファインバブルの導入条件、たとえばファインバブルの平均粒子径、導入速度、二酸化炭素の濃度などを変化させてもよい。具体的には、電気伝導率が極小値をとった後(
図3A~
図3Dにおける時点aと時点bとの間)に、ファインバブルの平均粒子径を大きくしたり、ファインバブルの導入速度を遅くしたり、ファインバブル中の二酸化炭素の含有量を少なくしたりすることで、材料溶液への二酸化炭素の溶解速度を低下させ、電気伝導率の上昇速度を低下させて、EC
finが取り得る時間の範囲を広げることができる。これにより、ファインバブルの導入を停止するタイミングをより微細に調整することができる。
【実施例】
【0062】
本発明を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0063】
[実験1]
[実施例1]
市販のポルトランドセメントを用意し、カルシウム原料とした。800gのカルシウム原料と、3200mLのイオン交換水とを混合し、攪拌させてカルシウム原料を懸濁させた懸濁液を得た。その後、固液分離装置により上記懸濁液をろ過し、カルシウム含有溶液(材料溶液)を得た。
【0064】
このとき、ポルトランドセメントの攪拌条件を変更して、組成が異なる2つのカルシウム含有溶液1およびカルシウム含有溶液2(以下、単に「Ca溶液1」および「Ca溶液2」ともいう。)を得た。これらのカルシウム含有溶液中のカルシウム量を、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)により測定した。
【0065】
上記カルシウム含有溶液のpHを7.0以上に調整し、二酸化炭素(CO2)と窒素(N2)との混合ガスを導入して、炭酸カルシウムを晶出させた。混合ガスは、CO2濃度を10体積%とした。また、混合ガスは、炭酸カルシウムの晶出を行った晶出槽からカルシウム含有溶液の一部を抽出する抽出流路に設けたファインバブル生成器により、上記抽出したカルシウム含有溶液の中に導入した。ファインバブルを導入したカルシウム含有溶液を晶出槽に再導入して、晶出槽中のカルシウム含有溶液にもファインバブルを導入した。なお、ファインバブル生成器は、カルシウム含有溶液が内部を流通する管状の多孔質セラミックスに、多孔質セラミックスの外部から内部へ二酸化炭素を圧入する構成を有する、株式会社ノリタケカンパニーリミテド社製、インライン型FB試験装置(製品名)を使用した。導入するファインバブルの平均粒子径は、30μmに調整した。導入時の混合ガスの流量は、500mL/minとした。
【0066】
ファインバブルを導入した後、所定時間が経過した時点でファインバブルの導入を停止して、カルシウム含有溶液に対して吸引ろ過を行って、炭酸カルシウム粒子を得た。ファインバブルの導入を停止する時点を、ファインバブルの導入開始から10分後、20分後、30分後、40分後、50分後、および60分後として複数回の実験を行った。ファインバブルの導入を停止した時点におけるカルシウム含有溶液の電気伝導率を、株式会社堀場製作所社製、ポータブル型電気伝導率計WQ-300(製品名)を使用して測定した。
【0067】
それぞれの実験について、カルシウム含有溶液中のカルシウム量(モル)に対する、得られた炭酸カルシウム粒子の質量から計算した、炭酸カルシウム粒子中のカルシウム量(モル)の比率を計算して、炭酸カルシウム粒子の晶出率(%)を算出した。また、得られた炭酸カルシウム粒子の質量(g)、ファインバブルを導入した時間(hr)、およびカルシウム含有溶液の体積(L)から、炭酸カルシウム粒子の晶出速度(g/(hr×L)))を算出した。また、導入したファインバブル中の二酸化炭素量(モル)に対する、得られた炭酸カルシウム粒子の質量から計算した、炭酸カルシウム粒子中のCO2量(モル)の比率を計算して、二酸化炭素の利用効率(%)を算出した。
【0068】
図4Aは、材料溶液1の電気伝導率の経時的な変化を示すグラフであり、
図4Bは、材料溶液1の炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化を示すグラフであり、
図4Cは、材料溶液1の炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化を示すグラフであり、
図4Dは、材料溶液1の二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化を示すグラフである。
【0069】
カルシウム含有溶液の初期の電気伝導率をEC0、極小値となったときの電気伝導率をECmin、炭酸カルシウム粒子の晶出率が急速に低下したときの電気伝導率をECfinとしたとき、ECfin/(EC0-ECmin)の値は0.07であった。
【0070】
[実施例2]
材料溶液1を材料溶液2に変更した以外は実施例1と同様にして、炭酸カルシウム粒子の晶出を行った。
図5A~
図5Dはそれぞれ、実施例2についての、電気伝導率の経時的な変化(
図5A)、炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化(
図5B)、炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化(
図5C)、および二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化(
図5D)を示すグラフである。
【0071】
カルシウム含有溶液の初期の電気伝導率をEC0、極小値となったときの電気伝導率をECmin、炭酸カルシウム粒子の晶出率が急速に低下したときの電気伝導率をECfinとしたとき、ECfin/(EC0-ECmin)の値は0.08であった。
【0072】
[実施例3]
ファインバブルの粒子径を70μmに変更した以外は実施例1と同様にして、炭酸カルシウム粒子の晶出を行った。
図6A~
図6Dはそれぞれ、実施例3についての、電気伝導率の経時的な変化(
図6A)、炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化(
図6B)、炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化(
図6C)、および二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化(
図6D)を示すグラフである。
【0073】
カルシウム含有溶液の初期の電気伝導率をEC0、極小値となったときの電気伝導率をECmin、炭酸カルシウム粒子の晶出率が急速に低下したときの電気伝導率をECfinとしたとき、ECfin/(EC0-ECmin)の値は0.05であった。
【0074】
[比較例1]
ファインバブルの平均粒子径を3mmに変更した以外は実施例1と同様にして、炭酸カルシウム粒子の晶出を行った。
図7A~
図7Dはそれぞれ、比較例1についての、電気伝導率の経時的な変化(
図7A)、炭酸カルシウム粒子の晶出率(CaCO
3晶出率)の経時的な変化(
図7B)、炭酸カルシウム粒子の晶出速度の経時的な変化(
図7C)、および二酸化炭素の利用効率(CO
2利用効率)の経時的な変化(
図7D)を示すグラフである。
【0075】
[実験2]
実験1の各時点でファインバブルの導入を停止して得られたカルシウム含有溶液について、電気伝導率、pH、およびICP-OESにより測定された液中のカルシウム濃度を測定した。
【0076】
図8Aは、カルシウム濃度と測定された電気伝導率との関係を示すグラフである。カルシウム濃度と電気伝導率との間には強い相関関係(決定係数R
2=0.9351)があることがわかる。
図8Bは、カルシウム濃度と測定されたpHとの関係を示すグラフである。カルシウム濃度とpHとの間の相関関係は強くない(決定係数R
2=0.6505)ことがわかる。
【0077】
これらの実験結果から明らかなように、電気伝導率を指標とすることで、炭酸カルシウム粒子の晶出率が最も高くなった時点を簡易に把握することができることがわかる。そのため、電気伝導率を指標としてファインバブルの導入を停止することで、晶出速度を高めて、効率よく炭酸カルシウム粒子を生成できることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明によれば、炭酸カルシウム粒子の収率を簡易な方法で高めることができる。そのため、本発明は、炭酸カルシウム粒子による炭酸固定の効率を高め、環境負荷をより一層低減させ、さらには各種用途への炭酸カルシウム粒子の普及をさらに促進すると期待される。
【符号の説明】
【0079】
200 製造装置
210 抽出部
212 抽出槽
214 モーター
216 攪拌器
220 分離部
230 導入部
232 抽出流路
234 ファインバブル生成器
236 導入口
238 ガスタンク
240 測定部
250 制御部
260 晶出部
262 晶出槽
264 モーター
266 攪拌器
270 回収部
【要約】
【課題】ファインバブルを使用して炭酸カルシウムを生成する際に、ファインバブルの最適な導入時間を簡易に決定できる炭酸カルシウム粒子の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、カルシウムを含む材料溶液に、二酸化炭素を含むファインバブルを導入する工程と、前記材料溶液の電気伝導率を経時的に測定する工程と、を有し、前記測定されている電気伝導率が極小値をとった後に、前記ファインバブルの導入を停止する、炭酸カルシウム粒子の製造方法に関する。
【選択図】
図1