(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】光コネクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 19/00 20060101AFI20240723BHJP
G02B 6/36 20060101ALI20240723BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B24B19/00 603B
G02B6/36
G02B6/02 461
(21)【出願番号】P 2023508772
(86)(22)【出願日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2022005770
(87)【国際公開番号】W WO2022201965
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2021053221
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】大森 賢一
(72)【発明者】
【氏名】石倉 徳洋
(72)【発明者】
【氏名】イラリオノフ ミハイル
(72)【発明者】
【氏名】翠川 諒
(72)【発明者】
【氏名】早坂 大輔
(72)【発明者】
【氏名】古郡 淳志
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09366828(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0064509(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 19/00
G02B 6/36
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバをフェルールに挿入して固定する第1工程と、
前記フェルールをハウジングに挿入し、前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアと前記ハウジングとの位置合わせを行う第2工程と、
前記フェルールの斜め研磨によって見込まれるコアの位置ずれを補うことができる分の回転オフセット量をもつように、前記ハウジングを前記マルチコアファイバの中心軸に対して回転させた状態で、前記フェルールを斜め研磨する第3工程と、
前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアの位置合わせを行ってから、前記フェルールを前記ハウジングに固定する第4工程と、
前記第1工程と前記第2工程との間に設けられ、前記フェルールを前記マルチコアファイバの中心軸方向に対して垂直に研磨する第5工程と、
を有する光コネクタの製造方法。
【請求項2】
複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバをフェルールに挿入して固定する第1工程と、
前記フェルールをハウジングに挿入し、前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアと前記ハウジングとの位置合わせを行う第2工程と、
前記フェルールの斜め研磨によって見込まれるコアの位置ずれを補うことができる分の回転オフセット量をもつように、前記ハウジングを前記マルチコアファイバの中心軸に対して回転させた状態で、前記フェルールを斜め研磨する第3工程と、
前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアの位置合わせを行ってから、前記フェルールを前記ハウジングに固定する第4工程と、
を有し、
前記第1工程は、端面を研磨したマルチコアファイバの前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアの位置を前記フェルールに対して合わせた状態で、前記端面とフェルール端面とが面一となるように、前記フェルールに対して前記マルチコアファイバを固定する工程である、
光コネクタの製造方法。
【請求項3】
複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバをフェルールに挿入して固定する第1工程と、
前記フェルールをハウジングに挿入し、前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアと前記ハウジングとの位置合わせを行う第2工程と、
前記フェルールの斜め研磨によって見込まれるコアの位置ずれを補うことができる分の回転オフセット量をもつように、前記ハウジングを前記マルチコアファイバの中心軸に対して回転させた状態で、前記フェルールを斜め研磨する第3工程と、
前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアの位置合わせを行ってから、前記フェルールを前記ハウジングに固定する第4工程と、
を有し、
前記第3工程は、前記マルチコアファイバの中心軸方向に対して垂直な前記フェルールの端面である基準面の幅が予め規定された幅となるように、前記フェルールを斜め研磨する工程であり、
前記回転オフセット量をφとすると、前記回転オフセット量φは、前記マルチコアファイバの螺旋周期fw、斜め研磨する前の前記基準面の直径d、前記基準面の幅l、前記フェルールの斜め研磨の角度θ
APC
を用いて以下の式で表される
光コネクタの製造方法。
【数1】
【請求項4】
前記第4工程は、前記複数のコアの位置合わせを、前記フェルールを前記マルチコアファイバの中心軸の回りに一定角度回転させることで行う工程である、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光コネクタの製造方法。
【請求項5】
前記第4工程は、前記複数のコアの位置合わせを、
前記マルチコアファイバを前記フェルールとともに回転させて、前記マルチコアファイバの端面における前記複数のコアの位置を調心することで行う工程である、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の光コネクタの製造方法。
【請求項6】
前記第3工程は、前記マルチコアファイバの中心軸方向に対して垂直な前記フェルールの端面である基準面の幅が予め規定された幅となるように、前記フェルールを斜め研磨する工程である、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の光コネクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光コネクタの製造方法に関する。
本願は、2021年3月26日に日本に出願された特願2021-053221号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバの開発が行われている。このようなマルチコアファイバは、スパン・マルチコアファイバ(spun multicore fiber)とも呼ばれる。このようなスパン・マルチコアファイバは、例えば接触センサ、形状センサ、医療用途に用いられる。
【0003】
スパン・マルチコアファイバの末端には、端面反射を小さくするため、フェルールの端面(スパン・マルチコアファイバの端面)が所定の角度(例えば、8度)だけ斜め研磨された光コネクタが設けられることが多い。このような光コネクタは、APC(Angled Physical Contact)コネクタとも呼ばれる。スパン・マルチコアファイバは、螺旋状に形成されているコアを有する。そのため、その末端にAPCコネクタを形成するために、フェルールの端面を斜め研磨すると、コアの位置がずれて接続損失が増加することが考えられる。
【0004】
以下の特許文献1には、斜め研磨によるコアの位置ずれを小さくすることで接続損失の増加を抑える技術が開示されている。具体的に、以下の特許文献1に開示された技術では、フェルールにスパン・マルチコアファイバを接着した後に、斜め研磨によって見込まれるコアの位置ずれを補うことができる分だけフェルールを回転させて回転オフセット量を設けている。そして、回転オフセット量を設けた後にフェルール端面を斜め研磨することで、斜め研磨によるコアの位置ずれを小さくするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に開示された技術は、フェルールを斜め研磨する際の研磨量にバラツキがなければ、コアの位置ずれを小さくすることができる。しかしながら、予め見込んだ回転オフセット量と実際の研磨によるコア位置ずれ量とに差があると、接続損失が大きくなるという場合がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも接続損失を低減することができる光コネクタの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による光コネクタの製造方法は、複数のコア(12)のうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバ(10)をフェルール(21)に挿入して固定する第1工程(S11、S21)と、前記フェルールをハウジング(22)に挿入し、前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアと前記ハウジングとの位置合わせを行う第2工程(S13、S14)と、前記フェルールの斜め研磨によって見込まれるコアの位置ずれを補うことができる分の回転オフセット量をもつように、前記ハウジングを前記マルチコアファイバの中心軸の回りに回転させた状態で、前記フェルールを斜め研磨する第3工程(S15)と、前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアの位置合わせを行ってから、前記フェルールを前記ハウジングに固定する第4工程(S16)と、を有する。
【0009】
本発明の一態様による光コネクタの製造方法では、複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されているマルチコアファイバをフェルールに挿入して固定している。次に、フェルールをハウジングに挿入し、マルチコアファイバの中心軸の回りにおける複数のコアとハウジングとの位置合わせを行っている。続いて、フェルールの斜め研磨によって見込まれるコアの位置ずれを補うことができる分の回転オフセット量をもつように、ハウジングをマルチコアファイバの中心軸の回りに回転させた状態で、フェルールを斜め研磨している。そして、マルチコアファイバの中心軸の回りにおける複数のコアの位置合わせを行ってから、フェルールをハウジングに固定している。研磨後に位置合わせをすることで、研磨で位置ずれした分を正確に位置合わせすることができる。これにより、従来よりも接続損失を低減することができるという効果がある。
【0010】
本発明の一態様による光コネクタの製造方法は、前記第4工程が、前記複数のコアの位置合わせを、前記フェルールを前記マルチコアファイバの中心軸の回りに一定角度回転させることで行う工程であっても良い。
【0011】
或いは、本発明の一態様による光コネクタの製造方法は、前記第4工程が、前記複数のコアの位置合わせを、前記複数のコアの位置を調心することで行う工程である。
【0012】
本発明の一態様による光コネクタの製造方法は、前記第1工程と前記第2工程との間に、前記フェルールを前記マルチコアファイバの中心軸方向に対して垂直に研磨する第5工程(S12)を有しても良い。
【0013】
或いは、本発明の一態様による光コネクタの製造方法は、前記第1工程が、端面を研磨したマルチコアファイバの前記マルチコアファイバの中心軸の回りにおける前記複数のコアの位置を前記フェルールに対して合わせた状態で、前記端面とフェルール端面とが面一となるように、前記フェルールに対して前記マルチコアファイバを固定する工程であっても良い。
【0014】
本発明の一態様による光コネクタの製造方法は、前記第3工程が、前記マルチコアファイバの中心軸方向に対して垂直な前記フェルールの端面である基準面(PL0)の幅(l)が予め規定された幅となるように、前記フェルールを斜め研磨する工程であっても良い。
【0015】
本発明の一態様による光コネクタの製造方法は、前記回転オフセット量をφとすると、前記回転オフセット量φが、前記マルチコアファイバの螺旋周期fw、斜め研磨する前の前記基準面の直径d、前記基準面の幅l、前記フェルールの斜め研磨の角度θ
APCを用いて以下の式で表されても良い。
【数1】
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来よりも接続損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態による光コネクタの要部構成を示す斜視図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態による光コネクタが備えるフェルールの先端部を拡大して示す図である。
【
図2B】本発明の第1実施形態による光コネクタが備えるフェルールの先端部を拡大して示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を示すフローチャートである。
【
図4A】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
【
図4B】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
【
図4C】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
【
図5A】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
【
図5B】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
【
図6】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
【
図7A】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
【
図7B】本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
【
図8】本発明の第2実施形態による光コネクタの製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】所謂コニカルタイプの光コネクタが備えるフェルールの先端部を拡大して示す図である。
【
図10A】変形例に係る光コネクタが備えるフェルールの先端部を拡大して示す図である。
【
図10B】変形例に係る光コネクタが備えるフェルールの先端部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施形態による光コネクタの製造方法について詳細に説明する。尚、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、必要に応じて各部材の寸法の縮尺を適宜変えて図示することがある。
【0019】
〔第1実施形態〕
〈光コネクタ及びマルチコアファイバ〉
図1は、本発明の第1実施形態による光コネクタの要部構成を示す斜視図である。
図1に示す通り、本実施形態による光コネクタ1は、マルチコアファイバ10の端部に設けられており、マルチコアファイバ10を他のマルチコアファイバや機器(図示省略)に接続する。尚、
図1では、理解を容易にするために、マルチコアファイバ10については、斜視透視図で図示している。
【0020】
マルチコアファイバ10は、中心コア11、外周コア12(外周コア12a~12c)、及びクラッド13を備える。尚、クラッド13の外周面は、被覆(図示省略)に覆われていても良い。中心コア11は、マルチコアファイバ10の中心に、マルチコアファイバ10の中心軸に対して平行に形成されたコアである。この中心コア11によって、マルチコアファイバ10の中心には、マルチコアファイバ10の長手方向に対して直線的な光路が形成される。
【0021】
中心コア11は、例えばゲルマニウム(Ge)を含む石英ガラスによって形成されていても良い。また、中心コア11には、その全長に亘ってFBG(Fiber Bragg Grating:ファイバブラッググレーティング)が形成されていても良い。尚、中心コア11の径は、例えば5~7[μm]程度の範囲に設定される。
【0022】
外周コア12は、中心コア11の周囲を螺旋状に取り巻くように形成されたコアである。具体的に、外周コア12は、中心コア11に対して所定の距離α(
図2B参照)だけ離間し、長手方向に直交する断面において互いに角度β(例えば、120°)の間隔をもって配置された3つの外周コア12a~12cからなる。これら外周コア12a~12cは、互いに角度βの間隔を維持しながら、中心コア11の周囲を螺旋状に取り巻くようにマルチコアファイバ10の長手方向に延びている。これら外周コア12a~12cによって、マルチコアファイバ10内には、中心コア11を取り巻く螺旋状の3つの光路が形成される。
【0023】
外周コア12a~12cは、中心コア11と同様に、例えばゲルマニウム(Ge)を含む石英ガラスによって形成されていても良い。また、外周コア12a~12cには、その全長に亘ってFBGが形成されていても良い。外周コア12a~12cは、中心コア11と同径(或いは、ほぼ同じ径)であり、例えば5~7[μm]程度の範囲に設定される。尚、外周コア12a~12cは、中心コア11と異径であっても良い。
【0024】
中心コア11と外周コア12a~12cとの距離αは、コア間のクロストーク、中心コア11と外周コア12a~12cとの光路長差、マルチコアファイバ10が屈曲したときの中心コア11と外周コア12a~12cとの歪量の差等を考慮して設定される。中心コア11と外周コア12a~12cとの距離αは、例えば35[μm]程度に設定される。単位長さ当たりの外周コア12a~12cの螺旋回数は、例えば50[ターン/m]程度に設定される。言い換えると、外周コア12a~12cの1周期の長さ(正確には、外周コア12a~12cの1ターン当たりのマルチコアファイバ10の長手方向における長さ:螺旋周期)は、20[mm]程度に設定される。
【0025】
クラッド13は、中心コア11及び外周コア12a~12cの周囲を覆い、外径形状が円柱形状である共通のクラッドである。中心コア11及び外周コア12a~12cは、共通のクラッド13に覆われていることから、中心コア11及び外周コア12a~12cは、クラッド13の内部に形成されている、と言うこともできる。このクラッド13は、例えば石英ガラスによって形成されていても良い。
【0026】
光コネクタ1は、フェルール21及びハウジング22を備える。フェルール21は、マルチコアファイバ10が内挿されるファイバ孔が形成された円環柱形状の部材である。ハウジング22は、フェルール21を収容する略直方体形状の部材である。尚、ハウジング22は、プラグフレームとも呼ばれる。ハウジング22には、接続される他のマルチコアファイバ等に対する誤接続を防止しつつ、他のマルチコアファイバ等に対する位置合わせに用いられるキー22aが形成されている。マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置は、ハウジング22に形成されたキー22aを基準に調心される。
【0027】
フェルール21は、一端側がマルチコアファイバ10の端面と面一(又は、略面一)となり、且つマルチコアファイバ10と一体となるように、マルチコアファイバ10の端部に固定される。フェルール21は、マルチコアファイバ10の中心軸方向には移動可能であるが、マルチコアファイバ10の中心軸の周りに回転しないようにハウジング22に収容される。フェルール21がマルチコアファイバ10の中心軸の周りに回転しないようにハウジング22に収容されている。そのため、フェルール21と一体となるように固定されるマルチコアファイバ10もマルチコアファイバ10の中心軸の周りで回転しない。
【0028】
図2A~2Cは、本発明の第1実施形態による光コネクタが備えるフェルールの先端部を拡大して示す図であって、
図2Aは側面図であり、
図2Bは正面図である。
図2Aに示す通り、本実施形態の光コネクタ1は、マルチコアファイバ10が内挿されたフェルール21の端面が所定の角度θ
APCだけ斜め研磨されたAPC(Angled Physical Contact)コネクタである。つまり、フェルール21の先端部には、マルチコアファイバ10の中心軸方向に対して垂直な端面に対して角度θ
APCをなす傾斜面PL1が形成されている。尚、θ
APCは、例えば、8°である。この光コネクタ1は、フェルール21の先端部の直径が一定である所謂ストレートタイプのコネクタである。
【0029】
〈光コネクタの製造方法〉
図3は、本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を示すフローチャートである。また、
図4A~
図7Bは、本発明の第1実施形態による光コネクタの製造方法を説明する図である。
図3に示す通り、まず、マルチコアファイバ10をフェルール21に取り付ける工程が行われる(工程S11:第1工程)。具体的には、
図4Aに示す通り、マルチコアファイバ10及びフェルール21を用意し、マルチコアファイバ10の端部にフェルール21を固定する工程が行われる。マルチコアファイバ10に対するフェルール21の固定には、例えば接着剤が用いられる。
【0030】
次に、マルチコアファイバ10が固定されたフェルール21の端面を研磨する工程が行われる(工程S12:第5工程)。具体的には、
図4Bに示す通り、マルチコアファイバ10の中心軸が研磨装置PDの研磨面に対して垂直になるように、マルチコアファイバ10の端面(フェルール21の一端側)を研磨面に当接させてマルチコアファイバ10の端面を研磨する工程が行われる。この工程における研磨は、例えば、フラット研磨である。この工程が行われることで、フェルール21には、マルチコアファイバ10の中心軸方向に対して垂直な面が形成される。尚、マルチコアファイバ10の端面研磨は1つずつ行っても良いが、複数同時に行っても良い。マルチコアファイバ10の端面研磨を複数同時に行うことで、時間の短縮が図れるため効率的である。
【0031】
次いで、光コネクタ1を組み立てて、キー22aに対する外周コア12a~12cの位置を合わせる工程が行われる(工程S13:第2工程)。具体的には、まず、マルチコアファイバ10の中心軸の周りに回転可能なようにフェルール21をハウジング22に収容して光コネクタ1を組み立てる工程が行われる。そして、
図4(c)に示す通り、マルチコアファイバ10及びフェルール21を一体としてマルチコアファイバ10の中心軸の周りで回転させ、ハウジング22に形成されたキー22aを基準に、マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置を大まかに合わせる工程が行われる。
【0032】
続いて、マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置を調心し、マルチコアファイバ10(フェルール21)をハウジング22に仮固定する工程が行われる(工程S14:第2工程)。尚、本明細書において、「仮固定」とは、簡易的に固定する、冶具で固定する、研磨でずれてしまうことを防ぐためにとめておく、ことである。例えば、
図5Aに示す通り、カメラCMや顕微鏡(図示省略)を用い、カメラCM等で撮影されるマルチコアファイバ10の端面及びハウジング22のキー22aの画像を見ながらマルチコアファイバ10をフェルール21とともに回転させることで調心する。
【0033】
或いは、
図5Bに示す通り、マスターとなる光コネクタMSが取り付けられたマルチコアファイバ100と光パワーメータPMとを用いて調心する。具体的には、不図示のアダプタ等を用いて光コネクタMSのキー22aと光コネクタ1のキー22aとの位置合わせを精確に行うことで、マルチコアファイバ100とマルチコアファイバ10とを接続する。そして、マルチコアファイバ100からマルチコアファイバ10に伝播する光のパワーを、マルチコアファイバ10をフェルール21とともに回転させながら光パワーメータPMでモニタすることで調心する。
【0034】
図5Bに示す調心方法では、1つの光パワーメータPMを用いて各コアを伝播する光のパワーの合計をモニタしても良く、複数の光パワーメータPMを用いて各コアを伝播する光のパワーを個別にモニタしても良い。或いは、光スイッチを用いて光を伝播させるコアを切り替え、各コアを伝播する光のパワーを順次モニタしても良い。尚、光を伝播させるコアを特定の1つ又は2つのコアに限定し、これら限定されたコアを伝播する光のパワーのみをモニタしても良い。
【0035】
続いて、ハウジング22をオフセットさせて、フェルール21の端面を斜め研磨する工程が行われる(工程S15:第3工程)。具体的には、
図6に示す通り、マルチコアファイバ10の中心軸が傾くように光コネクタ1を治具Zに取り付ける。ここで、光コネクタ1は、マルチコアファイバ10の中心軸が研磨装置PDの研磨面の垂線に対して所定の角度θ
APC(例えば、8度)をなすように治具Zに取り付けられる。
【0036】
また、光コネクタ1の向きは、
図7Aに示す通り、ハウジング22がマルチコアファイバ10の中心軸の回りに回転オフセット量φだけ回転した状態となるように設定される。具体的には、キー22aが形成されているハウジング22の一面SF(
図6参照)と、マルチコアファイバ10の中心軸と研磨装置PDの研磨面の垂線とが含まれる面とのなす角が回転オフセット量φとなるように設定される。
【0037】
ここで、上記の回転オフセット量φは、フェルール21の斜め研磨によって見込まれる外周コア12a~12cの位置ずれを補うことができる量である。そして、フェルール21(マルチコアファイバ10)を研磨装置PDの研磨面に当接させてフェルール21(マルチコアファイバ10)の端面を予め規定された量だけ研磨する工程が行われる。
【0038】
最後に、フェルール21をマルチコアファイバ10の中心軸の回りに一定角度だけ回転させてから、ハウジング22にフェルール21を固定する工程が行われる(工程S16:第4工程)。上記の一定角度は、工程S15で行われたフェルール21の斜め研磨により生じた外周コア12a~12cの位置ずれを極力少なくし得る角度である。この角度は、フェルール21の端面の研磨量、傾斜面PL1の角度θAPC、及びマルチコアファイバ10の構造パラメータ(中心コア11と外周コア12との距離α、螺旋周期等)から予め求められる。
【0039】
例えば、フェルール21の斜め研磨により生じた外周コア12a~12cのキー22aに対する位置ずれの角度が、
図7Aに示す通り、θ
errであったとする。すると、工程S16では、
図7Bに示す通り、フェルール21及びマルチコアファイバ10を角度θ
errだけ反時計回りに回転させて、ハウジング22にフェルール21を固定する工程が行われる。以上の工程によって光コネクタ1が製造される。
【0040】
ここで、本実施形態では、ハウジング22がオフセットした状態でフェルール21の斜め研磨が行われる。このため、
図7Aに示す通り、フェルール21の斜め研磨が行われた時点(工程S15の終了時点)では、傾斜面PL1の傾斜方向D1は、中心コア11とキー22aとを通る直線L0に対して垂直ではない。工程S16によって、フェルール21及びマルチコアファイバ10を角度θ
errだけ反時計回りに回転させると、
図7Bに示す通り、傾斜面PL1の傾斜方向D1は、中心コア11とキー22aとを通る直線L0に対して垂直になる。つまり、本実施形態で製造される光コネクタ1では、キー22aに対する外周コア12a~12cの位置ずれは生じておらず、且つ、キー22aに対する傾斜面PL1の角度が合っている。
【0041】
尚、フェルール21は、マルチコアファイバ10の中心軸方向には移動可能であるが、マルチコアファイバ10の中心軸の周りに回転しないようにハウジング22に固定される。マルチコアファイバ10は、フェルール21と一体となるように固定されている。そのため、マルチコアファイバ10もマルチコアファイバ10の中心軸方向には移動可能であるが、マルチコアファイバ10の中心軸の周りに回転しない。
【0042】
以上の通り、本実施形態では、まず、中心コア11及び螺旋状の外周コア12が形成されているマルチコアファイバ10をフェルール21に挿入して固定する。次に、フェルール21をハウジング22に挿入してマルチコアファイバ10の中心軸の回りにおける外周コア12の位置合わせを行う。続いて、ハウジング22がマルチコアファイバ10の中心軸の回りに回転オフセット量φだけ回転した状態でフェルール21を斜め研磨している。そして、フェルール21をマルチコアファイバ10の中心軸の回りに一定角度だけ回転させてから、フェルール21をハウジング22に固定している。これにより、キー22aに対する外周コア12の位置、及びキー22aに対する傾斜面PL1の角度を合わせることができることから、従来よりも接続損失を低減することができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
〈光コネクタ〉
本実施形態による光コネクタ2は、
図1に示す光コネクタ1と同様の構成である。このため、光コネクタ2の詳細な説明は省略する。
【0044】
〈光コネクタの製造方法〉
図8は、本発明の第2実施形態による光コネクタの製造方法を示すフローチャートである。尚、
図8においては、
図3に示す工程と同様の工程については同一の符号を付してある。
図8に示すフローチャートでは、
図3に示すフローチャートの工程S11,S14を工程S21,S22に替え、工程S12を省略している。
【0045】
本実施形態では、まず、端面を研磨したマルチコアファイバ10を、マルチコアファイバ10の端面とフェルール21の端面とが面一となるよう、フェルール21に取り付けて、マルチコアファイバ10を調心する工程が行われる(工程S21:第1工程)。具体的には、マルチコアファイバ10をフェルール21に挿入し、フェルール21に対するマルチコアファイバ10の調心を行ってから、マルチコアファイバ10の端部にフェルール21を固定する工程が行われる。マルチコアファイバ10に対するフェルール21の固定には、例えば接着剤が用いられる。
【0046】
次に、第1実施形態と同様に、光コネクタ2を組み立てて、キー22aに対する外周コア12a~12cの位置を合わせる工程が行われる(工程S13)。そして、マルチコアファイバ10(フェルール21)をハウジング22に仮固定する工程が行われる(工程S22)。
【0047】
続いて、ハウジング22をオフセットさせて、フェルール21の端面を斜め研磨する工程が行われる(工程S15)。最後に、フェルール21をマルチコアファイバ10の中心軸の回りに一定角度だけ回転させてから、ハウジング22にフェルール21を固定する工程が行われる(工程S16)。以上の工程によって光コネクタ2が製造される。
【0048】
尚、フェルール21は、マルチコアファイバ10の中心軸方向には移動可能であるが、マルチコアファイバ10の中心軸の周りに回転しないようにハウジング22に固定される。マルチコアファイバ10は、フェルール21と一体となるように固定されているため、マルチコアファイバ10もマルチコアファイバ10の中心軸方向には移動可能であるが、マルチコアファイバ10の中心軸の周りに回転しない。
【0049】
以上の通り、本実施形態では、まず、中心コア11及び螺旋状の外周コア12が形成されているマルチコアファイバ10をフェルール21に挿入し、マルチコアファイバ10を調心した上でフェルール21に固定する。次に、フェルール21をハウジング22に挿入してマルチコアファイバ10の中心軸の回りにおける外周コア12の位置合わせを行う。続いて、ハウジング22がマルチコアファイバ10の中心軸の回りに回転オフセット量φだけ回転した状態でフェルール21を斜め研磨している。そして、フェルール21をマルチコアファイバ10の中心軸の回りに一定角度だけ回転させてから、フェルール21をハウジング22に固定している。これにより、キー22aに対する外周コア12の位置、及びキー22aに対する傾斜面PL1の角度を合わせることができることから、従来よりも接続損失を低減することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上述した実施形態における光コネクタ1、2は、所謂ストレートタイプのコネクタであったが、光コネクタは、フェルール21の先端部が円錐形とされた所謂コニカルタイプのコネクタであっても良い。
【0051】
図9は、所謂コニカルタイプの光コネクタが備えるフェルールの先端部を拡大して示す図である。所謂コニカルタイプの光コネクタは、フェルール21の先端部が円錐形とされており、その端面は平面とされている。
図9に示す通り、平面とされた端面を斜め研磨すれば、上記実施形態と同様に、従来よりも接続損失が低減された光コネクタを製造することができる。
【0052】
また、上述した第1,第2実施形態における工程S16を、マルチコアファイバ10の端面における外周コア12a~12cの位置を調心してから、ハウジング22にフェルール21を固定する工程に替えても良い。このようにすることで、キー22aに対する外周コア12a~12cの位置をより精確に合わせることができる。
【0053】
また、上述した第1,第2実施形態においては、予め規定された量だけフェルール21を斜め研磨していた(工程S15)。しかしながら、マルチコアファイバ10の中心軸方向に対して垂直な端面である基準面PL0の幅l(
図10参照)が予め規定された幅となるようにフェルール21の斜め研磨を行うようにしても良い。
【0054】
図10は、変形例に係る光コネクタが備えるフェルールの先端部を拡大して示す図である。
図10A及び10Bに示す通り、フェルール21の先端部には、マルチコアファイバ10の中心軸方向に対して垂直な端面である基準面PL0と、基準面PL0に対して角度θ
APCをなす傾斜面PL1とが形成されている。傾斜面PL1は、基準面PL0の幅lが予め規定された幅となるように形成される。これは、フェルール21を斜め研磨して傾斜面PL1を形成する際の研磨量のバラツキを抑えることで従来よりも接続損失を低減するためである。
【0055】
ここで、基準面PL0は、
図10Bに示す通り、略「D」形状である。つまり、基準面PL0は、直線(基準面PL0と傾斜面PL1との交線)と、曲線(フェルール21の外縁)とからなる形状である。基準面PL0の幅lは、直線を弦、曲線を円弧と見立てたときの矢高(円弧の高さ)である。
【0056】
フェルール21を斜め研磨する工程(工程S15)におけるハウジング22の回転オフセット量φは、マルチコアファイバ10の螺旋周期をfwとし、基準面PL0の直径(斜め研磨する前の直径)をdとし、基準面PL0の幅をlとし、フェルール21の斜め研磨の角度をθAPCとすると、以下の(1)式で表される。
【0057】
【0058】
フェルール21の斜め研磨は、フェルール21の基準面PL0(工程S12、工程S21で形成された面)の幅l(
図10参照)が、予め規定された幅となるように行われる。例えば、
図6に示す通り、研磨装置PDの研磨面に対する治具Zの高さ位置hと研磨時間とを参照しつつ、基準面PL0の幅lが予め規定された幅となるようにフェルール21の研磨量が調整される。
【0059】
フェルール21の基準面PL0の幅lが予め規定された幅となるようにフェルール21を斜め研磨することで、研磨量を正確に把握することができる。これにより、フェルール21を斜め研磨する際のバラツキを抑制することができることから、従来よりも接続損失を低減することができる。尚、
図9に示す所謂コニカルタイプの光コネクタにおいても、フェルール21の基準面PL0の幅lが予め規定された幅となるようにフェルール21を斜め研磨するようにしても良い。
【0060】
また、上述した実施形態で説明したマルチコアファイバ10は、直線状の中心コア11と螺旋状の3つの外周コア12a~12cとを備えているが、マルチコアファイバは、複数のコアのうちの少なくとも1つのコアが螺旋状に形成されていれば良い。また、マルチコアファイバでは、中心コア11が省略されていても良い。
【0061】
また、マルチコアファイバ10の中心コア11及び外周コア12a~12cにFBGが形成される場合には、マルチコアファイバ10の長手方向の全長に亘って形成されていても良く、長手方向の一部の領域にのみ形成されていても良い。また、マルチコアファイバ10の中心コア11及び外周コア12a~12cに形成されるFBGは、一定周期のFBGであっても良く、周期が連続的に変化するFBG(チャープグレーティング)であっても良い。
【符号の説明】
【0062】
1,2…光コネクタ、10…マルチコアファイバ、12…外周コア、21…フェルール、22…ハウジング、PL0…基準面