(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】アンモニア分解反応用触媒及びこれを用いた水素生産方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/63 20060101AFI20240723BHJP
B01J 35/50 20240101ALI20240723BHJP
B01J 35/54 20240101ALI20240723BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B01J23/63 M
B01J35/50
B01J35/54
C01B3/04 B
(21)【出願番号】P 2023513932
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 KR2021012140
(87)【国際公開番号】W WO2022055225
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0116507
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093386
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】510256159
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ホ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】レ、ティン アン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジョン-ラン
(72)【発明者】
【氏名】キム、テ ワン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ユ ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ス オン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-176792(JP,A)
【文献】特開2010-240644(JP,A)
【文献】特開2011-056488(JP,A)
【文献】特開2018-001095(JP,A)
【文献】HUANG Chuanqing et al.,Hydrogen generation by ammonia decomposition over Co/CeO2 Catalyst: Influence of support morpholigies,Applied Surface Science,Elsevier,2020年07月28日,Volume 532,pp 147335(1-9),DOI:10.1016/j.apsusc.2020.147335
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒担体、及び前記触媒担体に担持された触媒活性物質を含むアンモニア分解反応用触媒であって、
前記触媒担体は、キューブ(cube)状及びスピンドル(spindle)状よりなる群から選択される1種以上の形状を有するセリウム酸化物であ
り、
前記キューブ状のセリウム酸化物の粒子サイズは12~18nmであり、
前記触媒活性物質がルテニウムであることを特徴とする、アンモニア分解反応用触媒。
【請求項2】
前記アンモニア分解反応用触媒は、アンモニア分解反応用触媒の総重量に対して、触媒活性物質が0.1重量%~50重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアンモニア分解反応用触媒。
【請求項3】
前記触媒担体は、ランタナム(La)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、及びガドリニウム(Gd)の中から選択される1種以上の金属酸化物と、セリウム酸化物とが複合された金属酸化物複合体であることを特徴とする、請求項1に記載のアンモニア分解反応用触媒。
【請求項4】
前記金属酸化物複合体中のセリウムとセリウム以外の金属とのモル比は40:60~95:5であることを特徴とする、請求項
3に記載のアンモニア分解反応用触媒。
【請求項5】
前記アンモニア分解反応用触媒は、セシウム及びカリウムよりなる群から選択される1種以上の触媒促進剤を含有することを特徴とする、請求項1に記載のアンモニア分解反応用触媒。
【請求項6】
前記アンモニア分解反応用触媒は、アンモニア分解反応用触媒の総重量に対して、触媒促進剤0.01重量%~25重量%を含むことを特徴とする、請求項
5に記載のアンモニア分解反応用触媒。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載のアンモニア分解反応用触媒を用いてアンモニアから水素を生産する方法。
【請求項8】
前記アンモニア分解反応は300℃~500℃の範囲で行われることを特徴とする、請求項
7に記載のアンモニアから水素を生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア分解反応用触媒及びこれを用いた水素生産方法に係り、より詳細には、アンモニア分解反応においてアンモニア転化率を向上させることができ、長期安定性を示すことができるアンモニア分解反応用触媒、及びこれを用いた水素生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、気候変動が激化し、全世界で化石燃料の代わりに使用する環境調和型燃料として水素エネルギーが注目されている。水素エネルギーの実用化のために、水素を安全かつ効率的に貯蔵、輸送する技術の開発が重要であるが、水素の貯蔵方法には様々な方法がある。その中でも、可逆的に水素を貯蔵・放出することができる水素貯蔵物質を用いる方法が、燃料電池車に搭載する水素貯蔵媒体として期待されている。
【0003】
水素貯蔵物質として、水素貯蔵合金又は有機化合物を用いた液体水素貯蔵物質などがあり、簡便に水素を得る手段としては、アンモニアの分解反応を利用した方法がある。
【0004】
また、アンモニアは、臭気性、特に刺激性の臭気を持っており、ガス中に臭気閾値以上含まれた場合には、これを処理する必要がある。よって、従来から様々なアンモニア処理方法が検討されてきた。例えば、アンモニアを酸素と接触させて窒素と水に酸化させる方法や、アンモニアを窒素と水素に分解する方法などが提案されてきた。
【0005】
特許文献1には、有機性廃棄物を処理する工程から発生するアンモニアを窒素と水素に分解する際に、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニアなどの金属酸化物担体上にニッケル又はニッケル酸化物を担持させ、さらにアルカリ土類金属及びランタノイド元素のうちの少なくとも1種を金属又は酸化物の形態で添加した触媒を用いるアンモニア処理方法が開示されている。しかし、このようなアンモニア処理方法は、アンモニア分解率が低いため、実用的ではない。
【0006】
この他にも、最近では、アンモニアの分解により回収された水素を、燃料電池用の水素源として用いることが検討されているが、この場合には、高純度の水素を得ることが求められる。これまで提案されてきたアンモニア分解触媒を用いて高純度の水素を得ようとすれば、高い活性化障壁を克服するための高温の反応温度(>500℃)を必要とする(特許文献2)。
【0007】
かかる問題点を解決するために、アンモニアを比較的低温で高い転化率にて分解することができる触媒担体として酸化セリウム(CeO2)を用いた様々な触媒の開発が行われている。特に、形状が制御された触媒担体は、表面に露出された表面積に対する体積比率、露出された結晶面の種類及び比率を制御することができ、それらの変化は触媒活性に大きな影響を及ぼす。
【0008】
しかし、このようなセリウム酸化物触媒担体を導入してアンモニア分解反応に触媒として適用した研究は多くなく、商業化段階までは未だ到達していない状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-195454号(公開日:2004年7月15日)
【文献】韓国特許公報第1781412号(公告日:2017年9月25日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたもので、その目的は、アンモニア分解反応においてアンモニア転化率を向上させることができ、長期安定性を示すことができるアンモニア分解反応用触媒、及びこれを用いる水素生産方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態は、触媒担体、及び前記触媒担体に担持された触媒活性物質を含むアンモニア分解反応用触媒であって、前記触媒担体は、キューブ(cube)状及びスピンドル(spindle)状よりなる群から選択される1種以上の形状を有するセリウム酸化物であることを特徴とする、アンモニア分解反応用触媒を提供する。
【0012】
本発明の好適な一実施形態において、前記触媒活性物質は、ルテニウム、ニッケル、モリブデニウム、鉄及びコバルトよりなる群から選択される1種以上であることを特徴とすることができる。
【0013】
本発明の好適な一実施形態において、前記アンモニア分解反応用触媒は、アンモニア分解反応用触媒の総重量に対して、触媒活性物質が0.1重量%~50重量%を含むことを特徴とすることができる。
【0014】
本発明の好適な一実施形態において、前記触媒担体は、ランタナム(La)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、及びガドリニウム(Gd)の中から選ばれる1種以上の金属酸化物と、セリウム酸化物とが複合された金属酸化物複合体であることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明の好適な一実施形態において、前記金属酸化物複合体中のセリウムとセリウム以外の金属とのモル比は40:60~95:5であることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明の好適な一実施形態において、前記キューブ粒子のサイズは1μm以下であることを特徴とすることができる。
【0017】
本発明の好適な一実施形態において、前記アンモニア分解反応用触媒は、セシウム及びカリウムよりなる群から選択される1種以上の触媒促進剤を含有することを特徴とすることができる。
【0018】
本発明の好適な一実施形態において、前記アンモニア分解反応用触媒は、アンモニア分解反応用触媒の総重量に対して、触媒促進剤0.01重量%~25重量%を含むことを特徴とすることができる。
【0019】
本発明の他の実施形態は、上記のアンモニア分解反応用触媒を用いてアンモニアから水素を生産する方法を提供する。
【0020】
本発明の好適な他の実施形態において、前記アンモニア分解反応は300℃~500℃の範囲で行われることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によるアンモニア分解反応用触媒は、アンモニア分解に触媒担体として使用されるセリウム酸化物の形状を制御し、触媒促進剤を含有することにより、アンモニア分解反応において触媒活性に優れるため、アンモニア転化率を向上させることができ、高温及び長時間の反応後でも活性の低下が大きくないため、長期安定性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の触媒1及び5のTEM写真であって、(a)は触媒1のTEM写真、(b)は(a)を20倍の倍率で拡大した写真、(c)は触媒5のTEM写真、(d)は(c)を2倍の倍率で拡大した写真である。
【
図2】本発明の触媒6及び7のTEM写真であって、(a)は触媒6のTEM写真、(b)は(a)を4倍の倍率で拡大した写真、(c)は触媒7のTEM写真、(d)は(c)を10倍の倍率で拡大した写真である。
【
図3】本発明の触媒促進剤の含有量によるアンモニア分解活性を測定した結果を示すグラフである。
【
図4】本発明の触媒1及び触媒8で製造された触媒の長期安定性を測定した結果を示すグラフである。
【
図5】本発明の一部の触媒に対するH
2-TPR分析結果を示す比較グラフである。
【
図6】本発明の触媒促進剤の含有量による触媒のH
2-TPR分析結果を示す比較グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特に他の定義がなければ、本明細書で使用された全ての技術用語及び科学用語は、本発明の属する技術分野における当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用された命名法は、当該技術分野でよく知られており、通常使われるものである。
【0024】
本明細書に記載された「具備する」、「含む」又は「有する」などの用語は、本明細書に記載された特徴、数値、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在することを指すものであり、記載されていない他の特徴、数値、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらの組み合わせが存在又は付加される可能性を排除しない。
【0025】
本発明は、一観点から、触媒担体、及び前記触媒担体に担持された触媒活性物質を含むアンモニア分解反応用触媒において、前記触媒担体は、キューブ(cube)状及びスピンドル( spindle )状よりなる群から選択される1種以上の形状を有するセリウム酸化物であることを特徴とする、アンモニア分解反応用触媒に関する。
【0026】
現在、ナノ粒子触媒担体を用いてアンモニア分解反応に適用した研究は、多くなく、商業化段階までは未だ到達していない状態である。特に、触媒担体の形状制御を介して特定の結晶面及び結晶面の表面比率を異ならせて露出させることにより、アンモニア脱水素分解反応の活性を高める研究は行われたことがない。
【0027】
そこで、本発明者らは、アンモニア脱水素分解反応において触媒担体の比表面積とは関係なく、形状が制御された触媒担体によって触媒活性が異なることを確認するとともに、形状が制御されたセリウム酸化物触媒担体に特定の成分の触媒促進剤を導入することにより、驚くべきことに従来に比べ高い活性でアンモニアを分解することができることを見出し、本発明に至った。
【0028】
一般に、金属酸化物には格子酸素が存在するが、このような格子酸素は、その種類及び形状に応じて非常に反応性が高く、格子構造内の酸素の移動又は電子の移動により触媒の電気伝導度に影響を及ぼす可能性がある。
【0029】
特に、セリウムは、高い電気伝導度を示す希土類金属であって、粒子形状がキューブ(cube)及び/又はスピンドル(spindle)状に制御されたセリウム酸化物の場合には、高温のアンモニア脱水素化分解反応における触媒活性物質-担体の相互作用により触媒活性物質粒子の凝集効果を制限することができ、触媒活性物質に十分な電子密度を提供することができる。これにより、粒子形状がキューブ(cube)及び/又はスピンドル(spindle)状に制御されたセリウムの酸化物は、触媒活性物質の活性領域の電子密度を変化させることができるため、触媒活性を向上させることができ、熱的安定性及び耐久性を向上させることができる。
【0030】
前記形状が制御された触媒担体の製造は、粒子形状がキューブ及び/又はスピンドル状に製造できる方法であれば制限なく適用可能であり、一例として、水熱合成、沈殿法、ポリオール法、金属イオン還元法、電気化学蒸着法などの方法で製造することができる。
【0031】
前記キューブ状の粒子のサイズは、1μm以下、好ましくは5nm~100nm、さらに好ましくは10nm~30nm、最も好ましくは12nm~18nmであり得る。前記キューブ状の粒子のサイズが1μmを超えると、本発明による触媒活性促進の効果が大きく現れない。
【0032】
また、本発明の触媒担体は、ランタナム(La)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)及びガドリニウム(Gd)の中から選ばれた1種以上の金属酸化物と、セリウム酸化物とを複合して製造された複合金属酸化物複合体であり得る。前記複合金属酸化物の形状は、キューブ及び/又はスピンドル状であり得る。
【0033】
前記複合金属酸化物複合体におけるセリウムのモル%は、40モル%~95モル%であり、好ましくは50モル%~90モル%である。
【0034】
前記形状が制御された触媒担体の製造は、粒子形状がキューブ及び/又はスピンドル状に製造できる方法であれば制限なく適用可能であり、一例として、水熱合成、沈殿法、ポリオール法、金属イオン還元法、電気化学蒸着法などの方法で製造することができる。
【0035】
一方、前記触媒担体上に担持される触媒活性物質は、ルテニウム、ニッケル、モリブデニウム、鉄及びコバルトよりなる群から選択される1種以上であり、好ましくはルテニウムである。
【0036】
一般に、触媒活性物質として使用される金属のDバンド(D-band)に電子が満たされた程度と、窒素と金属の吸着エネルギーとは一定の傾向性を持っている。これは、アンモニア脱水素化の効率とも傾向性を有する。具体的には、Dバンドに電子が多く満たされているほど、触媒活性物質と窒素との吸着エネルギーが弱くなり、電子が少なく満たされているほど、触媒活性物質と窒素との吸着エネルギーが強くなる。この中でも、ルテニウムを触媒活性物質として用いた場合には、最小の窒素吸着エネルギーを持っているが、最適ではないというべきである。これにより、本発明では、一定の金属酸化物を、形状が制御されたセリウム酸化物を担体として用いて、ルテニウムのDバンドにおける電子密度を変化させて最適な窒素バインディングエネルギーを持つようにし、これによりアンモニア脱水素化活性を高めることができる。
【0037】
前記触媒活性物質は、触媒の総重量に対して0.1重量%~50重量%で担持できる。もし触媒活性物質が0.1重量%未満で担持される場合には、性能向上を期待し難く、触媒活性物質が50重量%超過で担持される場合には、触媒活性物質間に凝集現象が発生してむしろ触媒性能が低下するおそれがある。
【0038】
また、本発明によるアンモニア分解反応用触媒は、セシウム及びカリウムよりなる群から選択される1種以上の触媒促進剤を含むことができる。前記触媒促進剤は、アンモニア分解反応においてルテニウム(Ru)などの触媒活性物質に電子を提供して電子密度を高めることにより、アンモニア分解反応において重要な段階である解離吸着済みの窒素が窒素分子として脱離してアンモニア分解反応の効率を高める役割を果たすものと予想される。
【0039】
前記触媒促進剤の含有量は、触媒活性物質の含有量を考慮して定められることができ、好ましくは、触媒の総重量に対して、0.01重量%~25重量%、さらに好ましくは0.5重量%~10重量%で使用できる。前記触媒促進剤の含有量が0.01重量%未満である場合には、触媒促進効果を期待することが難しく、25重量%を超える場合には、含有量に対する触媒活性の増加程度が大きくない可能性がある。
【0040】
以上の本発明によるアンモニア分解反応用触媒は、触媒担体と触媒活性物質前駆体、又は触媒担体及び触媒活性物質前駆体と触媒促進剤の前駆体を反応させた後、熱処理して前記触媒担体上に触媒活性物質、又は触媒活性物質と触媒促進剤を担持させることができる方法であれば制限なく適用可能であり、一例として、沈積-沈殿(deposition-precipitation、DP)法、乾式含浸法、湿式含浸法、ゾルゲル法、水熱合成法、ポリオール法などであり得る。
【0041】
このとき、前記触媒活性物質前駆体としては、触媒活性物質イオンを含む有機化合物及び無機化合物を含む群から選択された1種以上であってもよく、具体的には、触媒活性物質の塩化物、水和物、窒化物、アセチルアセトナート、ヨウ化物などであってもよい。
【0042】
また、前記触媒促進剤の前駆体は、触媒促進剤のイオンを含む有機化合物及び無機化合物を含む群から選択された1種以上があり、具体的には、セシウム又はカリウムの水酸化物、塩化物、窒化物、炭酸化物、フッ化物、酢酸塩などが挙げられる。
【0043】
前述したアンモニア分解反応用触媒は、触媒活性、熱的安定性及び耐久性が全て向上するため、アンモニア分解反応においてアンモニア転化率を向上させることができ、高温及び長時間の反応後でも長期安定性を示すことができる。
【0044】
本発明は、他の観点から、前記アンモニア分解反応用触媒を用いてアンモニアから水素を生産する水素生産方法に関する。
【0045】
本発明による水素の製造方法は、キューブ状及び/又はスピンドル状のセリウム酸化物を触媒担体として用いたアンモニア分解反応用触媒を用いてアンモニア含有ガスを処理し、前記アンモニアを窒素と水素に脱水素化分解して水素を生産することができる。
【0046】
前記アンモニア分解反応用触媒は、400℃~500℃の範囲の温度で80%以上のアンモニア転化率を示すものであり、具体的には、450℃~500℃の範囲の温度で96%以上のアンモニア転化率を示すことができる。
【0047】
以下、具体的な実施例によって本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
<担体1:キューブ(cube)状のセリア触媒担体>
脱イオン水40mlにNaOH(97%、Daejung製)12.0gが添加された溶液をCe(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)1.3gを30mlの蒸留水に溶かした溶液に滴加した。次いで、前記溶液を100mlのテフロン(登録商標)ボトルで混合し、30分間攪拌し続けた。最後に、テフロン(登録商標)ボトルをステンレススチール容器のオートクレーブでしっかりと密封し、160℃で24時間加熱した。その後、生成された沈殿物を収集し、脱イオン水とエタノールで数回洗浄し、80℃のオーブンで24時間乾燥させた後、500℃で4時間焼成して粒子サイズ15nmのキューブ状のCeO2触媒担体を得た。
【0049】
<担体2:キューブ状のセリア触媒担体>
脱イオン水40mlにNaOH(97%、Daejung製)12gが添加された溶液をCe(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)0.65gを30mlの蒸留水に溶かした溶液に滴加した。次いで、前記溶液を100mlのテフロン(登録商標)ボトルで混合し、30分間攪拌し続けた。最後に、テフロン(登録商標)ボトルをステンレススチール容器のオートクレーブでしっかりと密封し、160℃で24時間加熱した。その後、生成された沈殿物を収集し、脱イオン水とエタノールで数回洗浄し、80℃のオーブンで24時間乾燥させた後、500℃で4時間焼成して粒子サイズ10nmのキューブ状のCeO2触媒担体を得た。
【0050】
<担体3:キューブ状のセリア触媒担体>
脱イオン水40mlにNaOH(97%、Daejung製)12gが添加された溶液をCe(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)2.6gを30mlの蒸留水に溶かした溶液に滴加した。次いで、前記溶液を100mlのテフロン(登録商標)ボトルで混合し、30分間攪拌し続けた。最後に、テフロン(登録商標)ボトルをステンレススチール容器のオートクレーブでしっかりと密封し、160℃で24時間加熱した。その後、生成された沈殿物を収集し、脱イオン水とエタノールで数回洗浄し、80℃のオーブンで24時間乾燥させた後、500℃で4時間焼成して粒子サイズ20nmのキューブ状のCeO2触媒担体を得た。
【0051】
<担体4:スピンドル状のセリア触媒担体>
脱イオン水70mlにCe(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)2.6g及び尿素(Samchun製、99%)1gを溶解させた。前記混合物を100mlのテフロン(登録商標)系オートクレーブ(teflon-lined autoclave)に移した後、120℃で加熱し、前記温度で8時間維持させた。その後、生成された沈殿物を収集し、脱イオン水とエタノールで数回洗浄した後、80℃の真空オーブンで12時間乾燥させた。その後、前記乾燥物を400℃で3時間空気中でか焼させてスピンドル状のCeO2触媒担体を得た。
【0052】
<担体5:キューブ状のセリア触媒担体とランタン酸化物との複合酸化物触媒担体>
脱イオン水50mlにNaOH(97%、Daejung製)19.2gが添加された溶液をCe(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)1.73gとLa(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)0.87gを30mlの蒸留水に溶かした溶液に滴加した。次いで、前記溶液を100mlのテフロン(登録商標)ボトルで混合し、30分間攪拌し続けた。最後に、テフロン(登録商標)ボトルをステンレススチール容器のオートクレーブでしっかりと密封し、180℃で12時間加熱した。その後、生成された沈殿物を収集し、脱イオン水とエタノールで数回洗浄した後、80℃のオーブンで24時間乾燥させ、LaとCeのモル比が0.33:0.67であるキューブ状の複合酸化物La0.33Ce0.67O2-cubeを製造した。
【0053】
<担体6:球(sphere)状のセリア触媒担体>
脱イオン水3mlにCe(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)2.6gを溶かした溶液に、酢酸(Junsei製、99.7%)3mlとエチレングリコール(Sigma製、99.8%)を滴加した。次いで、前記溶液を100mlのテフロン(登録商標)ボトルで混合し、30分間攪拌し続けた。最後に、テフロン(登録商標)ボトルをステンレススチール容器のオートクレーブでしっかりと密封し、180℃で3.5時間加熱した。その後、生成された沈殿物を収集し、脱イオン水とエタノールで数回洗浄し、80℃のオーブンで12時間乾燥させた後、500℃で4時間焼成して球状のCeO2触媒担体を得た。
【0054】
<担体7:ロッド(rod)状のセリア触媒担体>
NaOH(Daejung製、97%)28.7g及びCe(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)(OH-/Ce3+=120 in molar ratio)2.6gを脱イオン水50ml及び30mlにそれぞれ溶解させた。次いで、2つの溶液を100mlのテフロン(登録商標)ボトルで混合し、30分間撹拌し続けた。最後に、テフロン(登録商標)ボトルをステンレススチール容器のオートクレーブにしっかりと密封し、100℃で24時間加熱した。その後、生成された沈殿物を収集し、脱イオン水とエタノールで数回洗浄した後、60℃のオーブンで24時間乾燥させ、500℃で4時間焼成してロッド状のCeO2触媒担体を得た。
【0055】
<担体8:ポリクリスタル(polycrystal)状のセリア触媒担体>
脱イオン水100mlにCe(NO3)3・6H2O(Sigma製、99%)7.57gを溶かした溶液に1.0M NH4OHを60ml/hの速度でpHが約9に達するまで滴加した。次いで、前記溶液を24時間撹拌した。その後、生成された沈殿物を収集し、脱イオン水とエタノールで数回洗浄し、110℃の真空オーブンで12時間乾燥させた後、500℃で4時間焼成してポリクリスタル状のCeO2触媒担体を得た。
【0056】
<触媒1>
担体1の触媒担体を用いてDP(deposition-precipitation)法によってルテニウム系触媒を製造した。まず、担体1の触媒担体1.0gを脱イオン水50mlに懸濁させ、次いでRuCl3・xH2O(Sigma製、99.98%)0.04gを前記懸濁液に添加した。前記懸濁液がpH9.0となるまでNH4OH0.5M溶液[脱イオン水にNH4OH(Samchun製、28~30%)16.3mlを希釈して最終溶液0.5Lに製造]に調整し、生成された懸濁液を室温で400rpmにて撹拌しながら12時間エージングした。その後、生成された沈殿物を濾別し、脱イオン水及びエタノールで数回洗浄した後、110℃で12時間乾燥させて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/CeO2-cube(15)と表記した。
【0057】
<触媒2>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造するが、触媒1の触媒担体を担体2に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/CeO2-cube(10)と表記した。
【0058】
<触媒3>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造するが、触媒1の触媒担体を担体3に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/CeO2-cube(20)と表記した。
【0059】
<触媒4>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造するが、触媒1の触媒担体を担体5に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/La0.33Ce0.67O2-cubeと表記した。
【0060】
<触媒5>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造するが、触媒1の触媒担体を担体4に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/CeO2-spindleと表記した。
【0061】
<触媒6>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造するが、触媒1の触媒担体を担体6に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/CeO2-sphereと表記した。
【0062】
<触媒7>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造するが、触媒1の触媒担体を担体7に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/CeO2-rodと表記した。
【0063】
<触媒8>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造するが、触媒1の触媒担体を担体8に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/CeO2-polycrystalと表記した。
【0064】
<触媒9>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造するが、触媒1の触媒担体をAl2O3(Sigma製、gamma phase)に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/Al2O3と表記した。
【0065】
<触媒10>
触媒1と同様の方法でアンモニア分解反応用触媒を製造したが、触媒1の触媒担体をMgO(Sigma製)に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ru/MgOと表記した。
【0066】
<触媒11>
担体1を用いて、WI(wet-impregnation)方法によってルテニウム系触媒を製造した。まず、担体1の触媒担体1.0gを脱イオン水30mlに懸濁させ、30分間攪拌した後、Ru(NO)(NO3)x(OH)y(Sigma製、x+y=3、Ru1.5%)1.25mL及び0.04MのCsNO34.95mlで前記懸濁液に同時に添加した後、さらに30分間撹拌した。前記攪拌液を回転蒸発濃縮器(rotary evaporator)を用いて60℃、72mbarの圧力で150rpmにて回転させながら、4時間エージングした。その後、生成された沈殿物を110℃で12時間乾燥させ、ルテニウムが2重量%で担持され且つセシウムが2.6wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Cs1Ru1/CeO2-Cubeと表記した。
【0067】
<触媒12>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、触媒促進剤前駆体である0.04M CsNO34.95mlの代わりにKNO34.95mlを添加して、ルテニウムが2wt%で担持され且つカリウムが0.8wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒(K:Ru molar ratio=1.0)を製造した。製造された触媒は、K1Ru1/CeO2-Cubeと表記した。
【0068】
<触媒13>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、触媒促進剤前駆体である0.04M CsNO34.95mlの代わりにBa(NO3)24.95mlを添加して、ルテニウムが2wt%で担持され且つバリウムが2.6wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒(Ba:Ru molar ratio=1.0)を製造した。製造された触媒は、Ba1Ru1/CeO2-Cubeと表記した。
【0069】
<触媒14>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、触媒促進剤前駆体である0.04M CsNO34.95mlの代わりにNaNO34.95mlを添加して、ルテニウムが2wt%で担持され且つナトリウムが0.4wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒(Na:Ru molar ratio=1.0)を製造した。製造された触媒は、Na1Ru1/CeO2-Cubeと表記した。
【0070】
<触媒15>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、触媒促進剤前駆体である0.04M CsNO3 4.95mlの代わりにCa(NO3)2・4H2O4.95mlを添加して、ルテニウムが2wt%で担持され且つカルシウムが0.8wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒(Ca:Ru molar ratio=1.0)を製造した。製造された触媒は、Ca1Ru1/CeO2-Cubeと表記した。
【0071】
<触媒16>
触媒11と同様の方法で触媒を製造したが、担体1を担体4に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持され且つセシウムが2.6wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Cs1Ru1/CeO2-spindleと表記した。
【0072】
<触媒17>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、触媒担体を担体8に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持され且つカルシウムが0.8wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ca1Ru1/CeO2-polycrystalと表記した。
【0073】
<触媒18>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、触媒担体を担体6に置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持され且つカルシウムが0.8wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ca1Ru1/CeO2-sphereと表記した。
【0074】
<触媒19>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、触媒担体を担体7に置き換えて。ルテニウムが2wt%で担持され且つカルシウムが0.8wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Ca1Ru1/CeO2-rodと表記した。
【0075】
<触媒20>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、0.04MのCsNO34.95mlの代わりに0.04MのCsNO32.47mlに置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持され且つセシウムが1.3wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Cs0.5Ru1/CeO2-cubeと表記した。
【0076】
<触媒21>
触媒11と同様の方法で触媒を製造するが、0.04MのCsNO34.95mlの代わりに0.04MのCsNO39.9mlに置き換えて、ルテニウムが2wt%で担持され且つセシウムが5.2wt%で担持されたアンモニア分解反応用触媒を製造した。製造された触媒は、Cs2Ru1/CeO2-Cubeと表記した。
【0077】
<実験例1:触媒担体の形状及び物性の測定>
触媒1、4、5及び触媒6、7、8の形状及び物性をそれぞれTEM測定機器(Titan G2 60-300S、FEI社製、米国)、BET測定機器(TriStar II 3020、Micromeritics社製、米国)及びCO pulse chemisorption測定機器(ASAP 2020、Micromeritics社製、米国)を用いて測定し、その結果を
図1及び
図2と表1に示した。
【0078】
触媒担体の比表面積(SBET)測定において、ガス抜き(degassing)は300℃で5時間行い、窒素物理吸着は-196℃で行い、BETモデルを用いて比表面積を求めた。
【0079】
活性物質であるRuの分散度は、CO pulse chemisorption技法を使用したが、まず、純酸素雰囲気中、100℃で30分間熱処理した後、ヘリウムガスで30分間パージ(purge)し、しかる後に、水素雰囲気中、500℃で2時間還元処理し、その後、35℃でヘリウム(30分)-酸素(30分)-ヘリウム(30分)-二酸化炭素(30分)-ヘリウム(30分)-水素(30分)-ヘリウム(30分)吸脱着実験を行い、最後にCO/Ru=1量論となるようにCOを注入することにより、CO吸着量を求め、これからRu分散度を計算した。
【0080】
【0081】
図1及び
図2に示すように、本発明の方法に従って製造された触媒担体は、粒子の形状を制御して特定の形状となるように製造することができることを確認することができる。
【0082】
また、表1に示すように、触媒担体の形状に応じて触媒担体の比表面積とルテニウムの分散度が異なることを確認することができる。
【0083】
<実験例2:アンモニア分解反応結果の測定>
前記製造された触媒を用いてそれぞれのアンモニア脱水素分解反応を行い、アンモニア転化率を測定した。前記測定は、常圧でアンモニア空間速度6,000ml/g
cat./hと反応温度300℃、350℃、400℃、450℃及び500℃の条件下でアンモニア分解能を測定することにより行った。下記式1でアンモニア転化率を算出し、その結果を表2及び
図3に示した。
[式1]
アンモニア転化率(%)=[(反応器入口のアンモニア濃度)-(反応器出口のアンモニア濃度)/(反応器入口のアンモニア濃度)+((反応器出口のアンモニア濃度)]×100
【0084】
担体の種類及び形状、担体の粒子サイズによる触媒活性の変化
下記表2は、触媒1~10を用いてそれぞれのアンモニア脱水素分解反応を行い、アンモニア転化率を測定した結果である。
【0085】
【0086】
表2に示すように、本発明によるアンモニア分解反応用触媒は、比較例に比べて高いアンモニア転化率を示した。
【0087】
触媒1と触媒9、10とを対比すると、触媒の担体のうち、セリウム酸化物が、アルミナやマグネシアよりも、同じRuが担持された場合にも優れたアンモニア転化率を示すため、アンモニア分解触媒としてのRuの担体は、セリウム酸化物が優れることを示す。また、触媒4と同様に、担体としてCeの他にLaをさらに導入してCeとLaの複合酸化物形態を成す場合、アンモニア分解活性はさらに大きく増加するため、セリウム酸化物単独ではなく、他の金属との複合酸化物である場合、アンモニア分解活性を増加させることができることを示す。
【0088】
触媒1、触媒5~触媒8を対比すると、同じセリウム酸化物担体においても、触媒担体の形状によってアンモニア転化率が異なることが分かり、アンモニア分解温度のうち、400℃では、Ru/CeO2-cube>Ru/CeO2-spindle>Ru/CeO2-polycrystal>Ru/CeO2-sphere>Ru/CeO2-rodの順にアンモニア転化率が高いため、セリウム酸化物担体の形状がアンモニア分解活性に大きく影響を及ぼすことが分かる。
【0089】
一方、触媒1~触媒3を対比すると、セリウム酸化物の粒子サイズによってもアンモニア分解活性が変化することが分かるが、セリウム酸化物の粒子形状がキューブ(cube)である場合、粒子サイズが約15nmであるときに最も活性が高く、次に20nm、その次に10nmの順であった。
【0090】
触媒促進剤の種類及び含有量による触媒活性の変化
下記表3は、触媒促進剤の種類によるアンモニア分解反応における活性変化を観察するために触媒促進剤を異ならせて実験した結果を示す。
【0091】
【0092】
Ruを用いたアンモニア分解触媒において、Ba、Na及びCaを前記触媒系に導入する場合は、むしろ活性が低下しているが、CsとKを導入した場合は、Ru単独で使用した場合よりもさらにアンモニア分解活性が増進し、Csの場合は、格段に増加する。したがって、Cs等を触媒促進剤として用いてアンモニア分解触媒の活性を大きく増進させることができる。
【0093】
また、触媒促進剤の含有量による効果を
図3に示した。触媒促進剤の含有量の変化によってアンモニア転化率は変わったが(触媒11、20及び21)、Csのモル数がRuのモル数に対して0.5である触媒20よりも、Csのモル数がRuのモル数に対して1.0である触媒11は、全温度区間にわたってアンモニア転化率が大きく増加する傾向を示し、Csの含有量がさらに増加してCs対Ruのモル比が2.0である触媒21は、アンモニア転化率が減少する傾向を示した。これにより、本実験では、触媒促進剤の含有量が、Ruに対するモル比が1.0であるときに最適な性能を示すことを確認した。
【0094】
促進剤含有触媒における担体の形状による活性の変化
下記表4は、促進剤としてCsが含まれたRu触媒におけるセリウム酸化物担体の形状の影響を示す。
【0095】
【0096】
前記表4においても、Csが促進剤として含まれているRu触媒系においても、担体の形状によってアンモニア分解触媒の活性が異なり、400℃を基準にRu/CeO2-cube>Ru/CeO2-spindle>Ru/CeO2-polycrystal>Ru/CeO2-sphere>Ru/CeO2-rodの順にアンモニア活性が高いため、促進剤のない表2と同一の順序を示した。このことからみて、前記促進剤の効果は、担体の形状とは独立して動くものと推定される。
【0097】
<実験例3:触媒の長期安定性の測定>
触媒1と触媒8を用いてそれぞれのアンモニア脱水素化分解反応を100時間行って触媒の長期安定性を評価した。前記測定は、常圧でアンモニア空間速度54,000ml/g
cat./h及び反応温度500℃の条件下で100時間行った。その結果をアンモニア転化率で
図4に示した。
【0098】
図4に示すように、触媒1の場合は、触媒8に比べて高い転化率で100時間以上の反応の間、安定的に触媒活性を維持していることを確認することができた。
【0099】
<実験例4:触媒のH
2-TPR分析>
触媒1、触媒7、触媒8、触媒9、触媒10、触媒11、触媒17及び触媒19に対してH
2-TPR分析を行った。H
2-TPR分析は、0.05gの触媒をinert gas雰囲気中で110℃に昇温した後、35℃に温度を下げ、しかる後に、10%H
2/Arガスを供給しながら1,000℃まで昇温した。この時の昇温速度は10℃/分である。このようなH
2-TPR分析結果は、
図5及び
図6と比較して図示した。
【0100】
図5に示すように、Csが促進剤として添加されると、Ruの還元ピークが現れる温度が高い方に移動しながら還元ピークの面積が増加する傾向を確認した。これにより、Cs添加によりRuと担体(CeO
2)との間の相互作用(interaction)が強くなり、Ru活性種の相対的含有量が多くなることが分かった。
【0101】
また、
図6に示すように、Cs対Ru含有量のモル比が1.0であるときが、0.5と2.0であるときよりも、Ruの還元ピークが現れる温度が最も高い方へ移動することにより、Ruと担体との強い相互作用(interaction)とRu活性種の相対的含有量が多いことがアンモニア転化率を高める上で重要な因子であることが分かった。
【0102】
したがって、本発明によるアンモニア分解反応用触媒は、アンモニア分解反応において触媒活性に優れてアンモニア転化率を向上させることができ、高温及び長時間の反応でも活性低下が殆ど現れないことからみて、長期安定性に優れることを確認することができた。
【0103】
本発明は、前述した実施形態を参照して説明したが、本発明の概念及び範囲内で異なる実施形態を構成することもできる。したがって、本発明の範囲は、下記の請求の範囲及びそれと同等のものによって定められ、本明細書に記載されている特定の実施形態によって限定されるものではない。