(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】グリッパー及びロボットアーム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20240723BHJP
B25J 15/00 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B25J15/08 C
B25J15/00 A
(21)【出願番号】P 2023520498
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 CN2020120561
(87)【国際公開番号】W WO2022077203
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】522453131
【氏名又は名称】シャンハイ・フレクシブ・ロボティクス・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】522453142
【氏名又は名称】フレクシブ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ティンケ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンカイ・ペン
【審査官】樋口 幸太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204382288(CN,U)
【文献】中国実用新案第204267630(CN,U)
【文献】中国実用新案第204280889(CN,U)
【文献】特開平10-142520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/08
B25J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリッパーであって、
螺旋部及び駆動部を備えるリードスクリューであって、前記螺旋部には、螺旋方向が反対である少なくとも1つの第1螺旋トラック及び少なくとも1つの第2螺旋トラックが設けられ、前記第1螺旋トラックの第1端は、前記螺旋部の第1端に対応し、前記第1螺旋トラックの第2端は、前記螺旋部の第2端に向かって延び、前記第2螺旋トラックの第2端は、前記螺旋部の前記第2端に対応し、前記第2螺旋トラックの第1端は、前記螺旋部の前記第1端に向かって延び、前記第1螺旋トラッ
クの一部が、前記螺旋部の長さに沿って前記第2螺旋トラッ
クの一部と重なる、前記リードスクリューと、
前記第1螺旋トラック
と摺動嵌合された少なくとも1つの第1ピンを有する第1グリッピングジョーと、前記第2螺旋トラック
と摺動嵌合された少なくとも1つの第2ピンを有する第2グリッピングジョーと、を備え、
前記第1グリッピングジョー及び前記第2グリッピングジョーは、前記駆動部が前記螺旋部を駆動して回転させると、前記第1螺旋トラックが、前記第1グリッピングジョーが前記リードスクリューに平行な方向に第1直線移動を行うように前記第1ピンを駆動し、前記第2螺旋トラックが、前記第2グリッピングジョーが前記第1グリッピングジョーの前記第1直線移動と反対である第2直線移動を行うように前記第2ピンを駆動するように構成され
、
前記グリッパーは、前記第1グリッピングジョーに摺動可能に接続され、前記第1グリッピングジョーの前記第1直線移動をガイドするように構成された第1ガイド機構と、
前記第2グリッピングジョーに摺動可能に接続され、前記第2グリッピングジョーの前記第2直線移動をガイドするように構成された第2ガイド機構と、をさらに備え、
前記第1グリッピングジョー及び前記第1ガイド機構は、前記リードスクリューの一方側に位置し、前記第2グリッピングジョー及び前記第2ガイド機構は、前記リードスクリューの他方側に位置する、
ことを特徴とするグリッパー。
【請求項2】
前記第1グリッピングジョーは、第1グリッピング部と第1接続部とをさらに備え、前記第1接続部の第1端は前記第1グリッピング部に接続され、前記第1接続部の第2端は前記第1ガイド機構に摺動可能に接続され、前記第1ピンは前記第1接続部の前記第2端に配置され、
前記第2グリッピングジョーは、第2グリッピング部と第2接続部とをさらに備え、前記第2接続部の第1端は前記第2グリッピング部に接続され、前記第2接続部の第2端は前記第2ガイド機構に摺動可能に接続され、前記第2ピンは前記第2接続部の前記第2端に配置される、
ことを特徴とする
請求項1に記載のグリッパー。
【請求項3】
前記第1ガイド機構は、第1直線ガイドレールと第1スライダとを備え、前記第1接続部は前記第1スライダを介して前記第1直線ガイドレールに摺動可能に接続され、
前記第2ガイド機構は、第2直線ガイドレールと第2スライダとを備え、前記第2接続部は前記第2スライダを介して前記第2直線ガイドレールに摺動可能に接続され、前記第1直線ガイドレール、前記リードスクリュー及び前記第2直線ガイドレールは互いに平行である、
ことを特徴とする
請求項2に記載のグリッパー。
【請求項4】
前記第1ガイド機構は第1ガイドロッドを備え、前記第1接続部には、前記第1ガイドロッドに摺動可能に係合される第1孔が設けられ、
前記第2ガイド機構は第2ガイドロッドを備え、前記第2接続部には、前記第2ガイドロッドに摺動可能に係合される第2孔が設けられ、前記第1ガイドロッド、前記リードスクリュー、及び前記第2ガイドロッドは、互いにほぼ平行に延びる、ことを特徴とする
請求項2に記載のグリッパー。
【請求項5】
前記第1接続部及び前記第2接続部の長さは、前記リードスクリューの延びる方向に平行な方向に調整可能である、
ことを特徴とする
請求項2に記載のグリッパー。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1螺旋トラックは、前記リードスクリューの軸方向に平行に延びており、互いに離間された2つの前記第1螺旋トラックを備え、前記少なくとも1つの第1ピンは、各々が2つの前記第1螺旋トラックの各々に伸び込んだ少なくとも2つの前記第1ピンを備え、
前記少なくとも1つの第2螺旋トラックは、前記リードスクリューの軸方向に平行に延びており、互いに離間された2つの前記第2螺旋トラックを備え、前記少なくとも1つの第2ピンは、各々が2つの前記第2螺旋トラックの各々に伸び込んだ少なくとも2つの前記第2ピンを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のグリッパー。
【請求項7】
前記第1螺旋トラック及び前記第2螺旋トラックは、前記螺旋部の回転中に少なくとも2つの前記第1ピンが前記第1螺旋トラックと前記第2螺旋トラックとの交差点に異なる時刻で到達し、前記螺旋部の回転中に少なくとも2つの前記第2ピンが前記第1螺旋トラックと前記第2螺旋トラックとの交差点に異なる時刻で到達するように構成される、
ことを特徴とする
請求項6に記載のグリッパー。
【請求項8】
前記第1螺旋トラック及び前記第2螺旋トラックは、前記螺旋部の全長にわたってそれぞれ延びる、
ことを特徴とする請求項1に記載のグリッパー。
【請求項9】
前記グリッパーは、前記駆動部に接続され、前記駆動部の回転を駆動するための動力機構をさらに備える、
ことを特徴とする
請求項1に記載のグリッパー。
【請求項10】
グリッパーを備えるロボットアームであって、前記グリッパーは、
螺旋部及び駆動部を備えるリードスクリューであって、前記螺旋部には、螺旋方向が反対である少なくとも1つの第1螺旋トラック及び少なくとも1つの第2螺旋トラックが設けられ、前記第1螺旋トラックの第1端は、前記螺旋部の第1端に対応し、前記第1螺旋トラックの第2端は、前記螺旋部の第2端に向かって延び、前記第2螺旋トラックの第2端は、前記螺旋部の前記第2端に対応し、前記第2螺旋トラックの第1端は、前記螺旋部の前記第1端に向かって延び、前記第1螺旋トラック
の一部が、前記螺旋部の長さに沿って前記第2螺旋トラック
の一部と重なる、前記リードスクリューと、
前記第1螺旋トラック
と摺動嵌合された少なくとも1つの第1ピンを有する第1グリッピングジョーと、前記第2螺旋トラック
と摺動嵌合された少なくとも1つの第2ピンを有する第2グリッピングジョーと、を備え、
前記第1グリッピングジョー及び前記第2グリッピングジョーは、前記駆動部が前記螺旋部を駆動して回転させると、前記第1螺旋トラックが、前記第1グリッピングジョーが前記リードスクリューに平行な方向に第1直線移動を行うように前記第1ピンを駆動し、前記第2螺旋トラックが、前記第2グリッピングジョーが前記第1グリッピングジョーの前記第1直線移動と反対である第2直線移動を行うように前記第2ピンを駆動するように構成され
、
前記グリッパーは、前記第1グリッピングジョーに摺動可能に接続され、前記第1グリッピングジョーの前記第1直線移動をガイドするように構成された第1ガイド機構と、
前記第2グリッピングジョーに摺動可能に接続され、前記第2グリッピングジョーの前記第2直線移動をガイドするように構成された第2ガイド機構と、をさらに備え、
前記第1グリッピングジョー及び前記第1ガイド機構は、前記リードスクリューの一方側に位置し、前記第2グリッピングジョー及び前記第2ガイド機構は、前記リードスクリューの他方側に位置する、
ことを特徴とするロボットアーム。
【請求項11】
前記第1グリッピングジョーは、第1グリッピング部と第1接続部とをさらに備え、前記第1接続部の第1端は前記第1グリッピング部に接続され、前記第1接続部の第2端は前記第1ガイド機構に摺動可能に接続され、前記第1ピンは前記第1接続部の前記第2端に配置され、
前記第2グリッピングジョーは、第2グリッピング部と第2接続部とをさらに備え、前記第2接続部の第1端は前記第2グリッピング部に接続され、前記第2接続部の第2端は前記第2ガイド機構に摺動可能に接続され、前記第2ピンは前記第2接続部の前記第2端に配置される、
ことを特徴とする
請求項10に記載のロボットアーム。
【請求項12】
前記第1ガイド機構は、第1直線ガイドレールと第1スライダとを備え、前記第1接続部は、前記第1スライダを介して前記第1直線ガイドレールに摺動可能に接続され、
前記第2ガイド機構は、第2直線ガイドレールと第2スライダとを備え、前記第2接続部は前記第2スライダを介して前記第2直線ガイドレールに摺動可能に接続され、前記第1直線ガイドレール、前記リードスクリュー及び前記第2直線ガイドレールは互いに平行である、
ことを特徴とする
請求項11に記載のロボットアーム。
【請求項13】
前記第1ガイド機構は第1ガイドロッドを備え、前記第1接続部には、前記第1ガイドロッドに摺動可能に係合される第1孔が設けられ、
前記第2ガイド機構は第2ガイドロッドを備え、前記第2接続部には、前記第2ガイドロッドに摺動可能に係合される第2孔が設けられ、前記第1ガイドロッド、前記リードスクリュー、及び前記第2ガイドロッドは、互いにほぼ平行に延びる、
ことを特徴とする
請求項11に記載のロボットアーム。
【請求項14】
前記第1接続部及び前記第2接続部の長さは、前記リードスクリューの延びる方向に平行な方向に調整可能である、
ことを特徴とする
請求項11に記載のロボットアーム。
【請求項15】
前記少なくとも1つの第1螺旋トラックは、前記リードスクリューの軸方向に平行に延びており、互いに離間された2つの前記第1螺旋トラックを備え、前記少なくとも1つの第1ピンは、各々が2つの前記第1螺旋トラックの各々に伸び込んだ少なくとも2つの前記第1ピンを備え、
前記少なくとも1つの第2螺旋トラックは、前記リードスクリューの軸方向に平行に延びており、互いに離間された2つの前記第2螺旋トラックを備え、前記少なくとも1つの第2ピンは、各々が2つの前記第2螺旋トラックの各々に伸び込んだ少なくとも2つの前記第2ピンを備える、
ことを特徴とする
請求項10に記載のロボットアーム。
【請求項16】
前記第1螺旋トラック及び前記第2螺旋トラックは、前記螺旋部の回転中に少なくとも2つの前記第1ピンが前記第1螺旋トラックと前記第2螺旋トラックとの交差点に異なる時刻で到達し、前記螺旋部の回転中に少なくとも2つの前記第2ピンが前記第1螺旋トラックと前記第2螺旋トラックとの交差点に異なる時刻で到達するように構成される、ことを特徴とする
請求項15に記載のロボットアーム。
【請求項17】
前記第1螺旋トラック及び前記第2螺旋トラックは、前記螺旋部の全長にわたってそれぞれ延びる、
ことを特徴とする
請求項10に記載のロボットアーム。
【請求項18】
前記グリッパーは、前記駆動部に接続され、前記駆動部の回転を駆動するための動力機構をさらに備える、
ことを特徴とする
請求項10に記載のロボットアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリッパー及びロボットアームに関する。
【背景技術】
【0002】
機械加工の分野で、加工中のワークピースの位置決め及び位置調整は、一般的に、グリッパーを備えたロボットアームによって行われる。従来は、伸縮式シリンダー駆動のグリッパーとリードスクリュー駆動のグリッパーとが用いられた。
【0003】
伸縮式シリンダー駆動のグリッパーは、2つのクランプと、2つのクランプをそれぞれ回転させる2つの伸縮式シリンダーと、を含む。2つのクランプが開閉可能であるように、それぞれの伸縮式シリンダーの伸縮移動は、それぞれのクランプの動きを制御することができる。しかし、2つの伸縮式シリンダーの同期が悪いため、2つのクランプの非同期の動きを引き起こしやすく、グリップ精度の低下に繋がる。
【0004】
リードスクリュー駆動のグリッパーは、伸縮式シリンダー駆動のグリッパーの上記問題を解決することができる。たとえば、特許文献1に開示されたグリッパーにおいては、リードスクリューのねじ部の両端にそれぞれ左ねじと右ねじとが設けられ、左ねじと右ねじとの間にスペーサーが設けられる。左グリッピングジョーは左ねじに左ねじナットを介して接続され、右グリッピングジョーは右ねじナットを介して右ねじに接続される。このようなグリッパーが物体を掴むとき、モータはリードスクリューの移動を駆動し、リードスクリューは、左右のグリッピングジョーが互いに近づいたり離したりするように駆動する。このようなグリッパーは、左右のグリッピングジョー間の同期がよりよいが、リードスクリューが占める軸方向のスペースが大きすぎ、グリッパー及びグリッピングジョーの構造がコンパクトでないため、グリッパーが大きすぎて重すぎるようになってしまう。大型の物体を掴む必要がある場合に、このようなグリッパーの使用によって、ロボットアームに大きな負荷がかかるだけではなく、ロボットアームは小さなスペースに入り込んで物体を掴むことが困難になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、構造がコンパクトであるグリッパーを提供することを目的とする。本開示は、ロボットアームも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、リードスクリューと、第1グリッピングジョーと、第2グリッピングジョーと、を含むグリッパーを提供する。前記リードスクリューは、螺旋部及び駆動部を含み、前記螺旋部には、螺旋方向が反対である少なくとも1つの第1螺旋トラック及び少なくとも1つの第2螺旋トラックが設けられる。前記第1螺旋トラックの第1端は、前記螺旋部の第1端に対応し、前記第1螺旋トラックの第2端は、前記螺旋部の第2端に向かって延びる。前記第2螺旋トラックの第2端は、前記螺旋部の前記第2端に対応し、前記第2螺旋トラックの第1端は、前記螺旋部の前記第1端に向かって延びる。前記第1螺旋トラックの被覆の一部が、前記螺旋部の長さに沿って前記第2螺旋トラックの被覆の一部と重なる。前記第1グリッピングジョーは、前記第1螺旋トラックに伸び込んだ少なくとも1つの第1ピンを有し、前記第2グリッピングジョーは、前記第2螺旋トラックに伸び込んだ少なくとも1つの第2ピンを有する。前記第1グリッピングジョー及び前記第2グリッピングジョーは、前記駆動部が前記螺旋部を駆動して回転させると、前記第1螺旋トラックが、前記第1グリッピングジョーが前記リードスクリューに平行な方向に第1直線移動を行うように前記第1ピンを駆動し、前記第2螺旋トラックが、前記第2グリッピングジョーが前記第1グリッピングジョーの前記第1直線移動と反対である第2直線移動を行うように前記第2ピンを駆動するように構成される。
【0008】
本開示の他の一様態は、上記のグリッパーを含むロボットアームを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態に係るグリッパーの斜視図であって、第1グリッピングジョー及び第2グリッピングジョーが分離され、第1グリッピング部と第2グリッピング部との距離が最大グリッピング距離である斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係るグリッパーの斜視図であって、第1グリッピングジョー及び第2グリッピングジョーが接触し、第1グリッピング部と第2グリッピング部との距離が最小グリッピング距離である斜視図である。
【
図5】
図1における第1グリッピングジョーの斜視図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係るグリッパーの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から
図6は、本開示のいくつかの実施形態に係るグリッパーの構造を示す。
図1から
図4に示すように、グリッパーは、リードスクリュー2、第1グリッピングジョー31、第2グリッピングジョー32、第1ガイド機構1a、及び第2ガイド機構1bを含む。
【0011】
リードスクリュー2は、螺旋部20と駆動部25とを含む。駆動部25は、螺旋部20のいずれか一端又は両端に位置してもよい。螺旋部20には、2つの第1螺旋トラック201と2つの第2螺旋トラック202とが設けられ、第1螺旋トラック201と第2螺旋トラック202とは螺旋方向が反対である。
図2を参照すると、2つの第1螺旋トラック201は、リードスクリュー2の軸方向において互いに離れて平行に延び、2つの第2螺旋トラック202は、リードスクリュー2の軸方向に互いに離れて平行に延びる。各第1螺旋トラック201の第1端は、螺旋部20の第1端に対応し、各第1螺旋トラック201の第2端は、螺旋部20の第2端に向かって延びる。各第2螺旋トラック202の第2端は、螺旋部20の第2端に対応し、各第2螺旋トラック202の第1端は、螺旋部20の第1端に向かって延びる。例えば、各第1螺旋トラック201の第1端は、螺旋部20の第1端に位置し、各第2螺旋トラック202の第2端は、螺旋部20の第2端に位置してもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、第1螺旋トラック201の被覆の一部が、螺旋部20の長さに沿って第2螺旋トラック202の被覆の一部と重なる。第1螺旋トラック201及び第2螺旋トラック202の被覆が重なる区間は、螺旋交差区間とも呼ばれる。図面から分かるように、この実施形態において、各第1螺旋トラック201の第2端が螺旋部20の第2端に延び、各第2螺旋トラック202の第1端が螺旋部20の第1端に延びるため、螺旋部20の軸方向の長さは螺旋交差区間の軸方向の長さに等しい。即ち、各第1螺旋トラック201と各第2螺旋トラック202とは、それぞれ螺旋部20の全長にわたって延びる。理解すべきこととして、他の実施形態では、各第1螺旋トラック201の第2端が螺旋部20の第2端に延びていなくてもよいし、及び/又は、各第2螺旋トラック202の第1端が螺旋部20の第1端に延びていなくてもよい。このように、第1螺旋トラック201と第2螺旋トラック202とは部分的に重なってもよい。
【0013】
第1グリッピングジョー31及び第2グリッピングジョー32は、それぞれリードスクリュー2に平行な方向に直線移動することに適するように構成される。第1グリッピングジョー31及び第2グリッピングジョー32をリードスクリュー2に平行な方向に直線移動させるための実施形態が多くある。本実施形態において、第1グリッピングジョー31は、第1ガイド機構1aに摺動可能に接続され、第1ガイド機構1aのガイドによって第1直線移動を行う。第2グリッピングジョー32は、第2ガイド機構1bに摺動可能に接続され、第2ガイド機構1bのガイドによって第2直線移動を行う。以下、第1ガイド機構1a及び第2ガイド機構1bについては、詳細に説明する。
【0014】
本実施形態において、第1グリッピングジョー31は、複数の第1ピン313を備えてもよい。第1ピン313のうちの一部は、1つの第1螺旋トラック201に伸び込み、他の第1ピン313は、残りの第1螺旋トラック201に伸び込む。各第1ピン313は、それぞれ対応する第1螺旋トラック201と摺動嵌合される。即ち、第1螺旋トラック201のいずれかは、少なくとも1つの第1ピン313と摺動嵌合される。
図4は、第1グリッピングジョー31の実施構造を示し、第1ピン313は、第1グリッピングジョー31の複数のピンホール3121にそれぞれ取り付けられてもよい。このようにして、リードスクリュー2が回転すると、第1螺旋トラック201は、リードスクリュー2に平行な直線移動を行うように第1ピン313を駆動することによって、第1グリッピングジョー31がリードスクリュー2に平行な第1直線移動を行うように駆動することができる。これらの第1ピン313を設けることにより、第1グリッピングジョー31に均等な力が付与されやすくなり、第1グリッピングジョー31のスムーズな移動を実現する。
【0015】
本実施形態において、第2グリッピングジョー32は構造が第1グリッピングジョー31と類似する。同様に、第2グリッピングジョー32は、複数の第2ピン323を備えてもよい。第2ピン323のうちの一部は、1つの第2螺旋トラック202に伸び込み、他の第2ピン323は、他の第2螺旋トラック202に伸び込む。各第2ピン323は、それぞれ対応する第2螺旋トラック202と摺動嵌合される。即ち、第2螺旋トラック202のいずれかは、少なくとも1つの第2ピン323と摺動嵌合される。このようにして、リードスクリュー2が回転すると、第2螺旋トラック202は、リードスクリュー2に平行な直線移動を行うように第2ピン323を押すことによって、第2グリッピングジョー32がリードスクリュー2に平行な第2直線移動を行うように駆動することができる。第1グリッピングジョー31の第1移動方向は、第2グリッピングジョー32の第2移動方向と反対であることが理解されたい。これらの第2ピン323を設けることにより、第2グリッピングジョー32に均等な力が付与されやすくなり、第2グリッピングジョー32のスムーズな移動を実現する。
【0016】
リードスクリュー2の駆動部25が駆動されて回転すると、駆動部25は、螺旋部20が第1方向又は第1方向と反対の第2方向に駆動部25とともに回転するように駆動する。即ち、第1ピン313、第2ピン323、及びそれぞれ対応する第1螺旋トラック201、第2螺旋トラック202の協力によって、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32との相対移動を実現できる。
【0017】
いくつかの実施形態において、
図1に示すように、少なくとも1つの第1ピン313が対応する第1螺旋トラック201の第1端に位置し(第1螺旋トラック201の第1端に近い第1ピン313が1つあればいい)、且つ、少なくとも1つの第2ピン323が対応する第2螺旋トラック202の第2端に位置する(第2螺旋トラック202の第2端に近い第2ピン323が1つあればいい)場合に、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32とは互いに離れる状態にあり、それらの間のグリッピング距離が最大グリッピング距離とされる(即ち、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32とが最大限に開放される)。
【0018】
本開示の一実施形態によれば、リードスクリュー2が回転すると、第1ピン313は、第1螺旋トラック201の第1端から第1螺旋トラック201の第2端まで移動するとともに(対応する第1螺旋トラック201の第2端に近い第1ピン313が1つあればいい)、第2ピン323は、第2螺旋トラック202の第2端から第2螺旋トラック202の第1端まで移動する(対応する第2螺旋トラック202の第1端に近い第2ピン323が1つあればいい)ことができる。この時に、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32とは互いに接近する状態にあり、それらの間のグリッピング距離が最小グリッピング距離とされる(第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32とが最小限に閉鎖される)。本実施形態において、
図3に示すように、最小グリッピング距離はゼロである。他の実施形態においては、最小グリッピング距離はゼロより大きくてもよい。
【0019】
本開示の本実施形態のグリッパーによれば、第1螺旋トラック201の被覆の一部が、螺旋部20の長さに沿って第2螺旋トラック202の被覆の一部と重なる。第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32とを適当に構成することにより、第1ピン313及び第2ピン323が螺旋交差区間を通過する際に、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32との干渉によって第1螺旋トラック201及び第2螺旋トラック202の効果的な移動量が短縮される問題を回避できる。本実施形態において、第1グリッピングジョー31の効果的な移動量が各第1螺旋トラック201の軸方向の長さとほぼ等しく、第2グリッピングジョー32の効果的な移動量が各第2螺旋トラック202の軸方向の長さとほぼ等しいため、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32との効果的な移動量の合計が、螺旋部20の軸方向の長さよりも大きくなる。これにより、グリッパーのストロークを減らすことなく、リードスクリュー2の軸方向の長さ、及びリードスクリュー2の占めるスペースを大幅に低減することができる。従って、本開示の実施形態により、グリッパーの小型化及びコンパクトデザインに有利であり、グリッパーの重量を軽減するとともに、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32との最大グリッピング距離を確保することができる。
【0020】
螺旋部20が螺旋交差区間と一致する場合に、リードスクリュー2の軸方向の長さは別の場合に比べて最も短くなることができることが理解されたい。この場合、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32との効果的な移動量の合計は、螺旋部20の軸方向の長さの約2倍である。また、第1グリッピングジョー31と第2グリッピングジョー32とのグリッピング距離の変化速度も対応して向上する。
【0021】
なお、本実施形態においては、2つの第1螺旋トラック201と2つの第2螺旋トラック202とが設けられているが、別の実施形態においては、第1螺旋トラック201及び第2螺旋トラック202の数は2つに限定されず、例えば、1つ又は2つ以上であってもよい。これらの場合に、第1ピン313及び第2ピン323の数は、それに応じて変更することができる。また、同じ第1螺旋トラック201に伸び込んだ第1ピン313の数は1つ、2つ、又はそれ以上であってもよい。同じ第2螺旋トラック202に伸び込んだ第2ピン323の数は1つ、2つ、又はそれ以上であってもよい。
図5を参照すると、本実施形態において、第1ピン313の数は3つであってもよく、第2ピン323の数も3つであってもよい。
【0022】
いくつかの実施形態において、第1グリッピングジョー31における第1ピン313の位置と第2グリッピングジョー32における第2ピン323の位置とを適当に配置することにより、少なくとも2つの第1ピン313が、第1螺旋トラック201に沿って移動するときに第1螺旋トラック201と第2螺旋トラック202との交差点に同時に位置せず、少なくとも2つの第2ピン323が、第2螺旋トラック202に沿って移動するときに第1螺旋トラック201と第2螺旋トラック202との交差点に同時に位置していないことが確保される。言い換えると、第1螺旋トラック201及び第2螺旋トラック202は、螺旋部20の回転中に少なくとも2つの第1ピン313が第1螺旋トラック201と第2螺旋トラック202との交差点に異なる時刻で到達し、同様に、螺旋部20の回転中に少なくとも2つの第2ピン323が第1螺旋トラック201と第2螺旋トラック202との交差点に異なる時刻で到達するように構成される。このようにして、少なくとも1つの第1ピン31及び少なくとも1つの第2ピン32は、交差点の影響を受けることがなく、螺旋部20の回転中の任意の時刻で、第1螺旋トラック201及び第2螺旋トラック202によって正常に駆動されることが確保されるため、第1グリッピングジョー31及び第2グリッピングジョー32の移動の信頼性が確保される。
【0023】
一実施形態において、第1螺旋トラック201と第2螺旋トラック202との任意の隣接する2つの交差点は、螺旋部20の軸に平行な、螺旋部20の表面における同じ線に位置していない。それと同時に、第1ピン313の配置は、第1ピン313が取り付けられたピンホール3121の配置と一致し、第2ピン323も同様に配置される。このような構成により、第1ピン313は、螺旋部20の回転中に第1螺旋トラック201と第2螺旋トラック202との交差点に異なる時刻で到達し、同様に、第2ピン323は、螺旋部20の回転中に交差点に異なる時刻で到達する。
【0024】
図1及び
図3を参照すると、本実施形態において、第1グリッピングジョー31及び第2グリッピングジョー32のいくつかの実施形態が示される。第1グリッピングジョー31は、第1グリッピング部311と第1接続部312とを含む。第1接続部312の第1端は第1グリッピング部311に接続され、第1接続部312の第2端は第1グリッピング部311から側面に突出して、第1ガイド機構1aに摺動可能に接続されるように構成される。第1ピン313は第1接続部312の第2端に設けられる。第2グリッピングジョー32は、第2グリッピング部321と第2接続部322とを含む。第2接続部322の第1端は第2グリッピング部321に接続され、第2接続部322の第2端は第2グリッピング部321から側面に突出して、第2ガイド機構1bに摺動可能に接続されるように構成される。第2ピン323は第2接続部322の第2端に設けられる。第1グリッピング部311及び第2グリッピング部321が、それらの最大距離に位置する時に、第1グリッピング部311と第2グリッピング部321とのリードスクリュー2に平行な方向における距離は、最大グリッピング距離と呼ばれ、グリッパーは、第1グリッピング部311及び第2グリッピング部321を介して物体を掴んだり離したりする。本実施形態において、
図1及び
図2に示すように、第1グリッピング部311及び第2グリッピング部321は、それらの最大距離に位置し、最大グリッピング距離が設けられるときには、それぞれが螺旋部20の第1及び第2端の外側に配置される。
図3及び
図4に示すように、第1グリッピング部311及び第2グリッピング部321は、それらの最小の距離に位置し、最小グリッピング距離が設けられるときには、それぞれが螺旋部20の中央にある。
【0025】
いくつかの実施形態において、第1接続部312及び第2接続部322の、リードスクリュー2の延びる方向に平行な方向における長さは調整可能である。例えば、第1接続部312と第2接続部322とは、それぞれ、さまざまなグリッピング要件を満たすための伸縮アームである。また、本実施形態において、第1接続部312と第2接続部322とはリードスクリュー2に平行に延びてもよい。理解すべきこととして、他の実施形態において、第1接続部312及び第2接続部322は、例えばリードスクリュー2に対して斜めに延びてもよい。
【0026】
第1接続部312は、第1グリッピングジョー31がリードスクリュー2に平行な方向に第1直線移動を行うようにガイドするように、第1ガイド機構1aにあらゆる適切な方法で摺動可能に接続されてもよい。同様に、第2接続部322は、第2グリッピングジョー32がリードスクリュー2に平行な方向に第2直線移動を行うようにガイドするように、第2ガイド機構1bにあらゆる適切な方法で摺動可能に接続されてもよい。このように、第1グリッピングジョー31の移動方向と第2グリッピングジョー32の移動方向とは常に反対である。
【0027】
本実施形態において、第1ガイド機構1a及び第2ガイド機構1bのいくつかの実施形態も示される。第1ガイド機構1aは、第1直線ガイドレール11と第1スライダ111とを含み、第1直線ガイドレール11はリードスクリュー2に平行であり、第1接続部312の第2端は第1スライダ111を介して第1直線ガイドレール11に摺動可能に接続される。例えば、
図5を参照すると、第1接続部312の第2端には、いくつかの取付孔3120が設けられ、取付孔3120を通過するいくつかの固定具(図示なし)は、第1スライダ111に接続されることによって、第1接続部312の第2端が第1スライダ111に固定される。第2ガイド機構1bは、第2直線ガイドレール12と第2スライダ121を含み、第2直線ガイドレール12はリードスクリュー2に平行であり、第2接続部322の第2端は第2スライダ121を介して第2直線ガイドレール12に摺動可能に接続される。グリッパーの構造をさらに最適化してグリッパーをよりコンパクトにするために、リードスクリュー2は、第1ガイド機構1aと第2ガイド機構1bとの間に位置してもよい。これにより、第1グリッピングジョー31及び第1ガイド機構1aがリードスクリュー2の一方側に位置し、第2グリッピングジョー32及び第2ガイド機構1bがリードスクリュー2の他方側に位置する。いくつかの実施形態において、リードスクリュー2は第1直線ガイドレール11と第2直線ガイドレール12との間に位置してもよい。
【0028】
図示していない実施形態において、第1ガイド機構1aは第1ガイドロッドを含んでもよい。第1ガイドロッドはリードスクリュー2に平行であり、第1接続部312には、第1ガイドロッドに摺動可能に係合される第1孔が設けられる。第2ガイド機構1bは第2ガイドロッドを含む。第2ガイドロッドはリードスクリュー2に平行であり、第2接続部322には、第2ガイドロッドに摺動可能に係合される第2孔が設けられる。いくつかの実施形態において、リードスクリュー2は第1ガイドロッドと第2ガイドロッドの間に位置してもよい。
【0029】
なお、第1ガイド機構1a及び第2ガイド機構1bについて多い実施形態があり、第1グリッピングジョー31及び第2グリッピングジョー32の各々のリードスクリュー2に対する回転を制限できれば、上記の例に限定されない。
【0030】
図6を参照すると、本実施形態によるグリッパーは、リードスクリュー2の駆動部25に接続された動力機構4をさらに含んでもよい。動力機構4は、リードスクリュー2が第1方向又は第1方向と反対の第2方向に回転するように駆動することができ、これによって第1ピン313と第2ピン323は、反対方向に直線移動を行って、第1グリッピング部311と第2グリッピング部321とが互いに対向して移動したり離れたりする。
【0031】
動力機構4は、モータ41と、モータ41とリードスクリュー2の駆動部25との間に接続された減速機42と、を含んでもよい。あるいは、この実施形態に示すように、動力機構4は、モータ41、減速機42及び伝達機構43を含んでもよい。動力機構4は、例えば、ベース5に取り付けられてもよい。モータ41は減速機42に接続され、モータ41及び減速機42は共にリードスクリュー2の下に位置する。伝達機構43は、減速機42から出力された動力をリードスクリュー2の駆動部25に伝達するために用いられる。伝達機構43は、例えば、チェーン伝達機構、ベルト伝達機構、ギア伝達機構などであってもよい。リードスクリュー2、モータ41及び減速機42は、伝達機構43の同じ側に位置する。このようにして、グリッパーの構造はよりコンパクトになり、グリッパーの占める軸方向のスペースが小さくなり、グリッパーが狭いスペースに入って物体を掴むのに役立つようになる。
【0032】
本開示は、上記のグリッパーを含むロボットアームの実施形態も提供する。本開示のグリッパーは上述した技術的効果を奏することができるので、グリッパーを含むロボットアームは、対応する技術的効果を奏することもでき、狭いスペースに入って物体を掴むことができる。
【0033】
本開示の実施形態によれば、第1グリッピングジョーの効果的な移動距離は第1螺旋トラックの軸方向の長さとほぼ等しくなるように調整され、第2グリッピングジョーの効果的な移動距離は第2螺旋トラックの軸方向の長さとほぼ等しくなるように調整されることにより、第1グリッピングジョー及び第2グリッピングジョーの有効的な移動距離の合計は、螺旋部の軸方向の長さよりも大きくなり、これによって、第1グリッピングジョーと第2グリッピングジョーとの最大グリッピング距離を確保した上で、リードスクリューの軸方向の長さ、及びリードスクリューの占めるスペースを大幅に低減させることができ、グリッパーの小型化及びコンパクトデザインに有利であり、グリッパーの重量の軽減にも有利である。
【0034】
上記の実施形態は、本開示のいくつかの実施形態を示しているに過ぎず、その叙述は具体的かつ詳細であるが、本開示の範囲を限定するものとして理解されるべきではない。
【0035】
当業者であれば、本願の思想から逸脱することなく、本開示の範囲に含まれるいくつかの変形及び改善を行うことができることに留意されたい。したがって、本開示の特許の範囲は、添付の特許請求の範囲に従うものとする。