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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】キャンドモータポンプの軸受構造
(51)【国際特許分類】
   F04D 13/06 20060101AFI20240723BHJP
   F04D 29/046 20060101ALI20240723BHJP
   F16C 27/06 20060101ALI20240723BHJP
   H02K 5/12 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
F04D13/06 C
F04D29/046 D
F16C27/06 A
H02K5/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023525643
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016912
(87)【国際公開番号】W WO2022254959
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2021094287
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000176383
【氏名又は名称】三相電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003801
【氏名又は名称】KEY弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】曹 銀春
(72)【発明者】
【氏名】内海 伸昭
【審査官】森 秀太
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-329087(JP,A)
【文献】特表2016-519244(JP,A)
【文献】特開2011-32923(JP,A)
【文献】特開平11-69704(JP,A)
【文献】国際公開第2022/131168(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 13/06
F04D 29/046
F16C 17/02
F16C 27/06
F16C 33/08
F16C 33/10
F16C 35/02
H02K 5/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部のロータと一体に回転する回転軸と、
ポンプ部に設けられたケーシング側軸受ハウジングに弾性薄板材を介して嵌め込まれ、前記回転軸を軸方向と垂直な方向に回転自在に支持する軸受と、
前記モータ部のロータと前記軸受との間において前記回転軸に対して取り付けられ、前記軸受によって回転自在に軸方向に支持される被軸受支持部材と、
前記回転軸と一体に回転するインペラと、
を備え、
前記被軸受支持部材は、前記回転軸に対して固定された被軸受支持部材用ハウジングに弾性薄板材を介して嵌め込まれ、前記被軸受支持部材の内周面と前記被軸受支持部材用ハウジングとの間に所定寸法の隙間が形成されており、
前記インペラの回転により搬送される液体の一部が前記回転軸と前記軸受との間を流れるキャンドモータポンプにおいて、
前記軸受が前記被軸受支持部材によって前記モータ部のロータと反対側に押圧された場合に、前記軸受および前記被軸受支持部材の一方又は双方に対して軸方向に弾性反力を付与する弾性構造が設けられたことを特徴とするキャンドモータポンプの軸受構造。
【請求項2】
請求項1に記載のキャンドモータポンプの軸受構造において、
前記弾性構造は、前記軸受に対して軸方向に前記弾性反力を付与するものであって、前記軸受の前記モータ部のロータ側と反対側と、前記ケーシング側軸受ハウジングとの間に設けられた弾性体である、ことを特徴とするキャンドモータポンプの軸受構造。
【請求項3】
請求項1に記載のキャンドモータポンプの軸受構造において、
前記弾性構造は、前記被軸受支持部材に対して軸方向に前記弾性反力を付与するものであって、前記被軸受支持部材用ハウジングと、前記被軸受支持部材の前記モータ部のロータ側との間に設けられた弾性体である、
ことを特徴とするキャンドモータポンプの軸受構造。
【請求項4】
請求項1に記載のキャンドモータポンプの軸受構造において、
前記弾性構造は、
前記軸受の前記モータ部のロータ側と反対側と、前記ケーシング側軸受ハウジングとの間に板材が設けられ、
前記ケーシング側軸受ハウジングが前記板材の前記軸受側と反対側の面の外周側を軸方向に支持するとともに、同面の内周側との間に軸受側隙間を形成することにより、前記軸受に対して軸方向に前記弾性反力を付与するものである、
ことを特徴とするキャンドモータポンプの軸受構造。
【請求項5】
請求項1に記載のキャンドモータポンプの軸受構造において、
前記弾性構造は、
前記被軸受支持部材の前記モータ部のロータ側と、前記被軸受支持部材用ハウジングとの間に板材が設けられ、
前記被軸受支持部材用ハウジングが前記板材の前記被軸受支持部材側と反対側の面の内周側を軸方向に支持するとともに、同面の外周側との間に被軸受支持部材側隙間を形成することにより、前記被軸受支持部材に対して軸方向に前記弾性反力を付与するものである、
ことを特徴とするキャンドモータポンプの軸受構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャンドモータポンプの軸受構造に関する。
本願は、2021年6月4日に日本で出願された特願2021-094287号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸と軸受との間にポンプの送液の一部を流して潤滑剤として用いるキャンドモータポンプが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているキャンドモータポンプは、回転軸を軸方向と垂直な方向に支持する滑り軸受(以下「ラジアル方向軸受」という。)と、回転軸に固定された滑り軸受(以下「スラスト方向軸受」という。)を備えている。スラスト方向軸受は、その当接面をラジアル方向軸受の側面に対して軸方向に接触させることで回転軸の軸方向への移動を制限する。
【0004】
回転軸とラジアル方向軸受との間に、ポンプの送液の一部を流すための一定の隙間が設けられている。また、同文献には記載されていないが、多くの場合、ラジアル方向軸受はトレランスリング等の弾性薄板材を介して、軸受ハウジングに嵌め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3897931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記キャンドモータポンプの軸受構造において、各部の寸法公差の影響により、ラジアル方向軸受の側面とスラスト方向軸受の当接面とが相対的に傾斜して互いに接触する時に面接触しない場合がある。この場合、ラジアル方向軸受の側面の一部や、スラスト方向軸受の当接面の一部の摩耗が進み、回転軸の当初の軸方向の遊びや、回転軸の当初の軸方向に対する傾きが次第に増幅し、ポンプの性能が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みて創案されたものであり、回転軸と、回転軸を軸方向と垂直な方向に支持する軸受(ラジアル方向軸受)との間で送液の一部を潤滑剤として用いるキャンドモータポンプにおいて、軸受(ラジアル方向軸受)の側面と、回転軸に対して軸方向に固定された被軸受支持部材(スラスト方向軸受)の当接面とが互いに面接触し易くなるように構成されたキャンドモータポンプの軸受構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造は、モータ部のロータと一体に回転する回転軸と、ポンプ部に設けられたケーシング側軸受ハウジングに弾性薄板材を介して嵌め込まれ、前記回転軸を軸方向と垂直な方向に回転自在に支持する軸受と、前記モータ部のロータと前記軸受との間において前記回転軸に対して取り付けられ、前記軸受によって回転自在に軸方向に支持される被軸受支持部材と、前記回転軸と一体に回転するインペラと、を備え、前記インペラの回転により搬送される液体の一部が前記回転軸と前記軸受との間を流れるものを前提とし、前記軸受が前記被軸受支持部材によって前記モータ部のロータと反対側に押圧された場合に、前記軸受および前記被軸受支持部材の一方又は双方に対して軸方向に弾性反力を付与する弾性構造が設けられたことを特徴とする。
【0009】
本発明の第2態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造は、第1態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造において、前記弾性構造は、前記軸受に対して軸方向に前記弾性反力を付与するものであって、前記軸受の前記モータ部のロータと反対側と、前記ケーシング側軸受ハウジングとの間に設けられた弾性体である。
【0010】
本発明の第3態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造は、第1態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造において、前記被軸受支持部材は、被軸受支持部材用ハウジングを介して前記回転軸に取り付けられている。前記弾性構造は、前記被軸受支持部材に対して軸方向に前記弾性反力を付与するものであって、前記被軸受支持部材用ハウジングと、前記被軸受支持部材の前記モータ部のロータ側との間に設けられた弾性体である。
【0011】
本発明の第4態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造は、第1態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造において、前記弾性構造は、前記軸受の前記モータ部のロータと反対側と、前記ケーシング側軸受ハウジングとの間に板材が設けられている。前記ケーシング側軸受ハウジングが前記板材の前記軸受と反対側の面の一部のみを軸方向に支持することにより、前記軸受に対して軸方向に前記弾性反力を付与するものである。
【0012】
本発明の第5態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造は、第1態様に係るキャンドモータポンプの軸受構造において、前記被軸受支持部材は、被軸受支持部材用ハウジングを介して前記回転軸に対して軸方向に固定されている。前記弾性構造は、前記被軸受支持部材の前記モータ部のロータ側と、前記被軸受支持部材用ハウジングとの間に板材が設けられ、前記被軸受支持部材用ハウジングが前記板材の前記被軸受支持部材と反対側の面の一部のみを軸方向に支持することにより、前記被軸受支持部材に対して軸方向に前記弾性反力を付与するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、軸受と、被軸受支持部材とが互いに面接触し易くなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るキャンドモータポンプの部分断面図である。
図2】本実施形態に係る第1軸受周辺の拡大断面図である。
図3図1のA部拡大図である。
図4図1のB部拡大図である。
図5】別実施形態に係る連結パイプ周辺の拡大断面図である。
図6】別実施形態に係る弾性構造周辺の拡大断面図である。
図7】本実施形態に係る弾性構造周辺の拡大断面図である。
図8】別実施形態に係る弾性構造周辺の拡大断面図である。
図9】本実施形態に係る弾性構造周辺の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るキャンドモータポンプの軸受構造について、図面を参照しつつ説明する。図1図4に示すように、キャンドモータポンプの軸受構造1は、キャンドモータポンプ8に含まれる、回転軸2、軸受3a,3b、被軸受支持部材4a,4b、インペラ6a,6b、弾性構造7等で構成される。
【0016】
キャンドモータポンプ8は、図1に示すように、モータ部11と、モータ部11により駆動されるポンプ部31を備える。モータ部11は、マグネット27を有したロータ12と、ロータ12外周のステータ13からなるキャンドモータであり、ロータ12が固定された回転軸2は、ケーシング側軸受ハウジング32a,32bに取り付けられた軸受3a,3bにスリーブ25を介して支持されている。ポンプ部31は、回転軸2に固定されたインペラ6a,6bと、インペラ6a,6bを収容するインペラ収容空間14a,14bを有するポンプケーシング16a,16bを備える。モータ部11のロータ12はステータキャン9の内側に収容されている。モータ部11のステータ13はステータキャン9内のロータ12に対応する位置において、ステータキャン9の外周面17と円筒状のモータフレーム18の内周面19との間に収容されている。モータフレーム18は、ステータキャン9を内包している。ステータキャン9と、モータフレーム18の両端に設けられたステータ側板10とは溶接にて密封接続されている。モータフレーム18と、モータフレーム18の両端に設けられたステータ側板10とはOリング5でシールされるとともに、部分溶接されることにより密封接続されている。ステータ側板10とケーシング側軸受ハウジング32a,32bとは、ステータ側板10の両端に配設されたOリング15にて内部空間66を封止している。ポンプケーシング16a,16bとケーシング側軸受ハウジング32a,32bとは、ケーシング側軸受ハウジング32a,32bの両端に配設されたOリング20にてインペラ収容空間14a,14bを封止している。なお、軸受3a,3bの内周面とスリーブ25との間には微小隙間が形成されているため、軸受3a,3bは、軸線に対して微小角度傾斜することが可能となっている。以下、ポンプケーシング16aを「第1ポンプケーシング16a」といい、ポンプケーシング16bを「第2ポンプケーシング16b」という。
【0017】
また、ステータキャン9の外周面17上であって、ステータコア21が存在しない部分は、サポートキャン22に覆われている。サポートキャン22は、ステータキャン9の外周面17に沿った円筒形状を有する。
【0018】
モータ部11は、ロータ12と、ステータ13とを備える。ロータ12は、ロータキャン23、ロータ側板24、ロータ本体26、マグネット27、ヨーク28等を含んで構成されている。ロータ12は、回転軸2と一体に回転するように回転軸2に固定されている。回転軸2は、ケーシング側軸受ハウジング32a,32bに取り付けられた軸受3a,3bにスリーブ25を介して支持されている。ロータ12は、回転軸2に対して固定されたロータ本体26と、ロータ本体26に支持されたヨーク28、マグネット27、ロータ側板24、ロータキャン23を備える。ロータキャン23は、ロータ本体26およびロータ側板24と溶接により接合されており、マグネット27とヨーク28が密封されている。ロータ12は、キャンドモータポンプ8におけるステータキャン9の内側に収容されている。
【0019】
ステータ13は、電磁コイル29などで構成されており、ステータ13に駆動電流が供給されると、ロータ12および回転軸2が回転駆動する。
【0020】
回転軸2は、モータ部11のロータ12が固定されており、モータ部11のロータ12と一体に回転する。
【0021】
軸受3a,3bは、図1図4に示すように、ポンプ部31に設けられたケーシング側軸受ハウジング32a,32bに弾性薄板材33を介して嵌め込まれている。軸受3a,3bは、回転軸2を軸方向と垂直な方向に回転自在に支持する。軸受3a,3bは円筒状である。軸受3a,3bには、軸方向端面34に半径方向に延びる溝76が形成され、内周壁36に螺旋状の溝74が形成されている。何れの溝74,76も液体を流すために設けられている。軸受3a,3bの材質として、例えば、耐熱性、耐久性に優れたSiC(シリコン炭化ケイ素)が用いられる。
【0022】
本実施形態では、軸受3a,3bは、回転軸2の一部材であるスリーブ25の外周に配設されている。スリーブ25の材質としても、軸受3a,3bと同様に、耐熱性、耐久性に優れた材質が用いられる。
【0023】
軸受3a,3bは、回転軸2の軸方向においてモータ部11のロータ12の両側に設けられている。以下、軸受3aを「第1軸受3a」といい、軸受3bを「第2軸受3b」という。
【0024】
ケーシング側軸受ハウジング32a,32bには、軸受3a,3bが嵌め込まれている。ケーシング側軸受ハウジング32a,32bはポンプ部31に設けられている。
【0025】
ケーシング側軸受ハウジング32a,32bは、回転軸2の軸方向においてモータ部11のロータ12の両側に設けられている。以下、2つのケーシング側ハウジング32を、それぞれ「第1ケーシング側軸受ハウジング32a」と「第2ケーシング側軸受ハウジング32b」という。
【0026】
弾性薄板材33として、本実施形態では、トレランスリングが使用されている。軸受3a,3bが弾性薄板材33を介してケーシング側軸受ハウジング32a,32bに嵌め込まれているため、軸受3a,3bのケーシング側軸受ハウジング32a,32bに対するがたつきが防止され、ケーシング側軸受ハウジング32a,32bと、軸受3a,3bとの間における熱膨張係数の差が吸収される。
【0027】
回転軸2およびロータ12には、被軸受支持部材4a,4bを収容する被軸受支持部材用ハウジング38a,38bが設けられている。被軸受支持部材4a,4bは、被軸受支持部材用弾性薄板材35を介して、被軸受支持部材用ハウジング38a,38bに嵌め込まれている。本実施形態では、被軸受支持部材用弾性薄板材35にもトレランスリングが使用されている。被軸受支持部材用ハウジング38a,38bが回転軸2に対して軸方向に相対的に固定されている。被軸受支持部材4a,4bは被軸受支持部材用ハウジング38a,38bを介して回転軸2に対して取り付けられている。そのため、回転軸2は、被軸受支持部材4a,4bおよび被軸受支持部材用ハウジング38a,38bを介して軸方向に軸受3a,3bに支持される。なお、被軸受支持部材4a,4bの内周面と、被軸受支持部材用ハウジング38a,38bとの間には所定寸法の隙間が形成されており、被軸受支持部材4a,4bは軸線に対して微小角度傾斜可能となっている。
【0028】
被軸受支持部材4a,4bも回転軸2の軸方向においてモータ部11のロータ12の両側に設けられている。具体的には、被軸受支持部材4a,4bは、モータ部11のロータ12と軸受3a,3bとの間において回転軸2に対して取り付けられ、軸受3a,3bによって回転自在に軸方向に支持されている。被軸受支持部材4a,4bの材質として例えば耐熱性、耐久性に優れたSiCが用いられる。
【0029】
以下、第1軸受3aに支持される被軸受支持部材4aを「第1被軸受支持部材4a」といい、第2軸受3bに支持される被軸受支持部材4bを「第2被軸受支持部材4b」という。
【0030】
インペラ6a,6bは、回転軸2と一体に回転する。図2および図4に示すように、インペラ6a,6bは、回転軸2に固定された円筒状のインペラボス部39a,39bと、インペラボス部39a,39bに接続された円環板状のインペラ翼部45a,45bとを備えている。インペラボス部39a,39bは、円筒状であってインペラボス部39a,39bを回転軸2に固定する回転軸固定部47と、回転軸固定部47の外周面上から回転軸固定部47の半径方向に延出した円環板状であってインペラ翼部45a,45bと接続されるインペラ翼接続部48と、を有する。インペラボス部39a,39bは、インペラ翼接続部48においてインペラ翼部45a,45bの回転中心側端部46と接続されている。インペラボス部39a,39bのインペラ翼接続部48には、軸方向に貫通したインペラボス部貫通孔49a,49bが設けられている。このインペラボス部貫通孔49a,49bには、ステータキャン9側から還流する液体が通過する。またインペラボス部39a,39bのインペラ翼接続部48には、液体の逆流を防止するステータキャン9側に延出した円環状のインペラボス部突起片51a,51bが設けられている。インペラボス部突起片51a,51bはポンプケーシング16a,16bの内壁面52に形成された円環状の凹部53a,53bに挿入されている。
【0031】
本実施形態におけるキャンドモータポンプ8では、インペラ6a,6bがステータキャン9の軸方向両端に1つずつ設けられている。以下、インペラ6aを「第1インペラ6a」といい、インペラ6bを「第2インペラ6b」という。
【0032】
第1インペラ6aが収容されている第1ポンプケーシング16aの側面には、第1流入口56が設けられている。また第1ポンプケーシング16aの上面には、第1ポンプケーシング16a内に流入した液体を第2ポンプケーシング16bに送る送液口57が設けられている。
【0033】
第1ケーシング側軸受ハウジング32aは第1インペラ収容空間14aとステータキャン9の内部空間66とを連通する第1連通路67を有する。第1連通路67の第1連通路開口64は、第1インペラ収容空間14aのステータキャン9側の壁面63であって、第1インペラボス部突起片51aよりも回転軸2に近い位置で第1インペラボス部貫通孔49aの近傍に設けられる。
【0034】
第1ケーシング側軸受ハウジング32aは、第1インペラ収容空間14aを第1ポンプケーシング16aとともに形成する。第1ケーシング側軸受ハウジング32aは、第1インペラ収容空間14aを形成するステータキャン9側の壁面63に第1凹部53aを有する。第1凹部53aには、第1インペラボス部39aに設けられた第1インペラボス部突起片51aが挿入される。
【0035】
また第1インペラ翼部45aには、回転軸2と同軸中心となる円筒状の第1閉塞板78が設けられている。第1閉塞板78は、回転軸2の軸方向で第1流入口56の方向に延出し、その外周面と第1ポンプケーシング16aにおける第1流入口56の内壁77との隙間を小さくしている。第1閉塞板78は、第1インペラ翼部45aにおける第1閉塞板78側の外壁79と第1ポンプケーシング16aの内壁54とで形成される空間と、第1流入口56における空間との間を閉塞する。
【0036】
他方のインペラである第2インペラ6bは、図4に示すように、回転軸2に固定された第2インペラボス部39bと、第2インペラボス部39bに接続された第2インペラ翼部45bとを備えている。第2インペラボス部39bには、軸方向であってステータキャン9側方向に延出した円環状の第2インペラボス部突起片51bが設けられている。
【0037】
第2インペラ6bが収容されている第2ポンプケーシング16bの側面には、第2流入口58が設けられている。第2流入口58は、回転軸2と同軸中心軸をもつ円筒状であって、第1インペラ6aから送られてきた液体を流入させる。また第2ポンプケーシング16bの上面側には、第2ポンプケーシング16b内に流入した液体を第2ポンプケーシング16b外に吐出する吐出口61が設けられている。
【0038】
第2ケーシング側軸受ハウジング32bは、第2インペラ収容空間14bとステータキャン9の内部空間66とを連通する第2連通路71を有する。第2連通路71の第2連通路開口69は、第2インペラ収容空間14bのステータキャン9側の壁面68であって、第2インペラボス部突起片51bよりも回転軸2に近い位置で第2インペラボス部貫通孔49bの近傍に設けられる。
【0039】
第2ケーシング側軸受ハウジング32bは、第2インペラ収容空間14bを第2ポンプケーシング16bとともに形成する。第2ケーシング側軸受ハウジング32bは、第2インペラ収容空間14bを形成するステータキャン9側の壁面68に第2凹部53bを有する。第2凹部53bには、第2インペラボス部39bに設けられた第2インペラボス部突起片51bが挿入される。
【0040】
また第2インペラ翼部45bには、回転軸2と同軸中心となる円筒状の第2閉塞板82が設けられている。第2閉塞板82は、回転軸2の軸方向で第2流入口58の方向に延出し、その外周面と第2ポンプケーシング16bにおける第2流入口58の内壁81との隙間を小さくしている。第2閉塞板82は、第2インペラ翼部45bにおける第2閉塞板82側の外壁83と第2ポンプケーシング16bの内壁59とで形成される空間と、第2流入口58における空間との間を閉塞する。
【0041】
第1ポンプケーシング16aと第2ポンプケーシング16bとは、第1インペラ6aから第2インペラ6bへ液体を送る際の流路を形成する連結パイプ62により連結されている。連結パイプ62は、モータフレーム18の外側を通り、第1ポンプケーシング16aの送液口57から吐出される液体を第2ポンプケーシング16bの第2流入口58に送る。
【0042】
本実施形態におけるキャンドモータポンプ8においては、図3および図4に示すように、インペラ6a,6bの回転により搬送される液体の一部が回転軸2と軸受3a,3bとの間を2点鎖線の矢印で示すように流れる。
【0043】
第1流入口56から第1ポンプケーシング16a内に流入した液体は、第1インペラ6aの回転力によって第1インペラ6aの第1インペラ翼内流路72を通り、連結パイプ62内を通過して第2流入口58から第2ポンプケーシング16b内に流入する。
【0044】
第2ポンプケーシング16b内に流入した液体は、2方向に分岐し、分岐した一方の液体は第2インペラ6bの回転力によって第2インペラ6bの第2インペラ翼内流路73を通り、吐出口61から第2ポンプケーシング16b外に吐出される。分岐した他方の液体は、第2インペラ6bの第2インペラボス部貫通孔49bを通過してステータキャン9内に送られる。
【0045】
第2ポンプケーシング16bからステータキャン9内に送られた液体は、さらに2方向に分岐する。分岐した液体の一方は、第2ポンプケーシング16bに設けられた第2連通路71を通過して、ステータキャン9とロータ12との間の空間を第1軸受3aの方向に向けて通過する。分岐した液体の他方は、回転軸2のスリーブ25と第2軸受3bとの間を通過する。
【0046】
回転軸2のスリーブ25と第2軸受3bとの間を通過した液体は、第2軸受3bと第2被軸受支持部材4bとの間を通過して、ステータキャン9とロータ12との間の空間を第1軸受3aの方向に向けて通過する。液体が回転軸2のスリーブ25と第2軸受3bとの間を通過する場合および液体が第2軸受3bと第2被軸受支持部材4bとの間を通過する場合、液体は主として第2軸受3bに形成された溝76,74を通過する。液体が回転軸2のスリーブ25と第2軸受3bとの間および第2軸受3bと第2被軸受支持部材4bとの間を通過する場合、液体は、回転軸2のスリーブ25と第2軸受3bとの間および第2軸受3bと第2被軸受支持部材4bとの間における潤滑剤となる。
【0047】
ステータキャン9とロータ12との間の空間を通過した液体は、2方向に分岐する。一方の液体は、第1ポンプケーシング16aの第1連通路67および第1インペラボス部39aの第1インペラボス部貫通孔49aを通過して第1インペラ6aの第1インペラ翼内流路72に入る。他方の液体は、第1軸受3aと第1被軸受支持部材4aとの間を通過して、第1軸受3aと回転軸2のスリーブ25との間を通過する。液体が第1軸受3aと第1被軸受支持部材4aとの間を通過する場合、および液体が第1軸受3aと回転軸2のスリーブ25との間を通過する場合、液体は主として第1軸受3aに形成された溝74,76を通過する。液体が第1軸受3aと第1被軸受支持部材4aとの間を通過する場合、および第1軸受3aと回転軸2のスリーブ25との間を通過する場合、液体は、第1軸受3aと第1被軸受支持部材4aとの間、および第1軸受3aと回転軸2のスリーブ25との間における潤滑剤となる。第1軸受3aと回転軸2のスリーブ25との間を通過した液体は、第1インペラボス部39aの第1インペラボス部貫通孔49aを通過して第1インペラ6aの第1インペラ翼内流路72に入る。
【0048】
第1ポンプケーシング16aと連結パイプ62とは、図5に示すように、第1ポンプケーシング16a上面側の送液口57の二次側に設けられた第1吐出流路84を介して接続されている。第1吐出流路84と連結パイプ62とは、互いに対向する端部のそれぞれに設けられたフランジ86,87同士をボルトで締結されて接続されている。
【0049】
第2ポンプケーシング16bと連結パイプ62とは、第2ポンプケーシング16bにおける第2流入口58の一次側に設けられた第2吸入流路88を介して接続されている。第2吸入流路88と連結パイプ62とは、互いに対向する端部のそれぞれに設けられたフランジ89,91同士をボルトで締結されて接続されている。
【0050】
弾性構造7(7A,7Bおよび7C)は、図6図7および図8に示すように、軸受3a,3bが被軸受支持部材4a,4bによってモータ部11のロータ12と反対側に押圧された場合に、軸受3a,3bおよび被軸受支持部材4a,4bの一方又は双方に対して軸方向に弾性反力を付与するものである。
【0051】
回転軸2は、軸方向の圧力差によって第1インペラ6a側に遊び分だけ移動し、軸受3a,3bと被軸受支持部材4a,4bとが互いに軸方向に押圧し合う。このとき、被軸受支持部材用ハウジング38a,38bの内周面およびケーシング側軸受ハウジング32a,32bの内周面に寸法誤差があっても、弾性構造7が設けられているので、軸受3a,3bおよび/または被軸受支持部材4a,4bは、互いに対向する面が面接触するように、軸方向に対して微小角傾動しながら互いに当接する。このように、軸受3a,3bと被軸受支持部材4a,4bとが面接触することで、軸受3a,3bが被軸受支持部材4a,4bに片当たりすることにより生じる摩耗が防止される。
【0052】
図6は、弾性構造7Bが、軸受3aのモータ部11のロータ12と反対側と、ケーシング側軸受ハウジング32aとの間に設けられた弾性体で構成されている例、および、弾性構造7Bが、被軸受支持部材用ハウジング38aと、被軸受支持部材4aのモータ部11のロータ12側との間に設けられた例を示す。同図に示す弾性体は、コイルばねである。コイルばねは、その直径が、軸受3aおよび被軸受支持部材4aの径方向の厚さと同一又はそれらの厚さより小さいものである。また、コイルばねは、軸受3aおよび被軸受支持部材4aのそれぞれの周方向に一定の間隔をおいて複数設けられている。なお、図6は、第1インペラ6a側の弾性構造7Bのみを示し、第2インペラ6b側の弾性構造7Bの図示を省略している。第2インペラ6b側の弾性構造7B(不図示)は、ロータ12を中心として、第1インペラ6a側の弾性構造7Bと軸方向に対称な構造を有する。
【0053】
図8に示す弾性構造7Cは、図6に示す例において、弾性構造7Bをなす複数のコイルばねを1つのコイルばねに置き換えたものである。弾性構造7Cを成すコイルばねは、回転軸2と同心位置に配置されている。図8のコイルばねは、軸受3a,3bおよび被軸受支持部材4a,4bのそれぞれの端面の径方向中央近傍を押圧している。なお、図8は、第1インペラ6a側の弾性構造7Cのみを示し、第2インペラ6b側の弾性構造7Cの図示を省略している。第2インペラ6b側の弾性構造7C(不図示)は、ロータ12を中心として、第1インペラ6a側の弾性構造7Cと軸方向に対称な構造を有する。
【0054】
なお、弾性構造7B,7Cを成すコイルばねに代えて、ばね座金、皿ばね座金、波ワッシャなども採用することができる。
【0055】
図7は、弾性構造7Aが、軸受3aのモータ部11のロータ12と反対側と、ケーシング側軸受ハウジング32aとの間に板材92が設けられ、ケーシング側軸受ハウジング32aが板材92の軸受3aと反対側の面の一部のみを軸方向に支持することにより、軸受3aに対して軸方向に弾性反力を付与するものである。板材92には例えば金属製の薄い板、例えば金属製ワッシャ等を用いることができる。この場合、ケーシング側軸受ハウジング32aと板材92との間に軸受側隙間93が形成される。なお、図7では板材92の曲がり具合ならびに軸受3aおよび被軸受支持部材4aの傾斜を強調して表現している。なお、図7は、第1インペラ6a側の弾性構造7Aのみを示している。第2インペラ6b側の弾性構造7Aは、図2に示すように、ロータ12を中心として、第1インペラ6a側の弾性構造7Aと軸方向に対称な構造を有する。
【0056】
本実施形態では、軸受側隙間93は、板材92の内径側の片面側に形成され、板材92の外径側は、軸受3a,3bとケーシング側軸受ハウジング32a,32bに挟まれる。板材92の内径側の片面側のみに軸受側隙間93が形成されることにより、軸受3a,3bが回転軸2に対して傾斜した場合、板材92が軸受側隙間93側に撓んで弾性力を発生させる。
【0057】
また図7では、更なる弾性構造7Dとして、被軸受支持部材4aのモータ部11のロータ12側と、被軸受支持部材用ハウジング38aとの間に板材92が設けられ、被軸受支持部材用ハウジング38aが板材92の被軸受支持部材4aと反対側の面の一部のみを軸方向に支持することにより、被軸受支持部材4aに対して軸方向に弾性反力を付与するものを示す。ここでも、板材92には例えば金属製の薄い板、例えば金属製ワッシャ等を用いることができ、被軸受支持部材用ハウジング38aには板材92との間に被軸受支持部材側隙間94が形成される。なお、図7は、第1インペラ6a側の弾性構造7Dのみを示している。第2インペラ6b側の弾性構造7Dは、図4に示すように、ロータ12を中心として、第1インペラ6a側の弾性構造7Dと軸方向に対称な構造を有する。
【0058】
本実施形態では、被軸受支持部材側隙間94は、板材92の外径側の片面側に形成され、板材92の内径側は、被軸受支持部材4a,4bと被軸受支持部材用ハウジング38a,38bに挟まれる。板材92の外径側の片面側のみに被軸受支持部材側隙間94が形成されることにより、被軸受支持部材4a,4bが回転軸2に対して傾斜した場合、板材92が被軸受支持部材側隙間94側に撓んで弾性力を発生させる。
【0059】
図9は、軸受3aと被軸受支持部材4aとが回転軸2に対して僅かに傾いた状態で面接触している状態を示す図である。但し、板材92の曲がり具合のみを強調して表現し、軸受3aおよび被軸受支持部材4aの傾斜は強調せずに表現している。
【0060】
板材92は、周方向の任意の位置で、軸受側隙間93側又は被軸受支持部材側隙間94側に撓むことが可能であるため、軸受3a,3bと被軸受支持部材4a,4bが互いに面接触しない状態で軸方向に押し付けられると、軸受3a,3bと被軸受支持部材4a,4bは、図9に示すように、それぞれ軸方向に対して傾動すると同時に、板材92の一部が軸受側隙間93側又は被軸受支持部材側隙間94側に撓み、その結果、軸受3a,3bと被軸受支持部材4a,4bは、互いに面接触するようになる。なお、図9に示す例では、被軸受支持部材4aの図中上部の外径側が板材92を被軸受支持部材側隙間94側に押圧し、軸受3aの図中上部の内径側が板材92を軸受側隙間93側に押圧しているため、各板材92が撓んでいる。
【0061】
上記実施形態の変形例として、上記実施形態において、板材92は、軸受3a,3bとケーシング側軸受ハウジング32a,32bとの間、被軸受支持部材4a,4bと被軸受支持部材用ハウジング38a,38bとの間のいずれか一方のみに設けられてもよい。
【0062】
本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、キャンドモータポンプに適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 キャンドモータポンプの軸受構造
2 回転軸
3a,3b 軸受
4a,4b 被軸受支持部材
6a,6b インペラ
7A,7B,7C,7D 弾性構造
8 キャンドモータポンプ
11 モータ部
12 ロータ
31 ポンプ部
32a,32b ケーシング側軸受ハウジング
33 弾性薄板材
38a,38b 被軸受支持部材用ハウジング
92 板材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9