(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-22
(45)【発行日】2024-07-30
(54)【発明の名称】排ガス浄化用触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 35/60 20240101AFI20240723BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240723BHJP
B01J 23/63 20060101ALI20240723BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240723BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240723BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20240723BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20240723BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240723BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240723BHJP
【FI】
B01J35/60 F
B01D53/94 222
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01J23/63 A ZAB
B01J35/57 E
B01J35/57 L
B01J37/02 301D
F01N3/022 C
F01N3/035 A
F01N3/24 E
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2024536535
(86)(22)【出願日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2024010614
【審査請求日】2024-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2023051744
(32)【優先日】2023-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】永井 祐喬
(72)【発明者】
【氏名】栗原 広樹
(72)【発明者】
【氏名】野口 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】前田 明秀
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-137681(JP,A)
【文献】特開2018-187595(JP,A)
【文献】特開2009-255047(JP,A)
【文献】特開2015-145333(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170425(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス流通方向に延在する基材と、第1触媒層と、第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記基材は、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層は、前記隔壁部の前記流入側セル側に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層は、前記隔壁部の前記流出側セル側に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って設けられており、
水銀圧入法により得られた前記第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Aが存在し、ピーク値Aが0.20mL/g以上である、という条件を条件1とし、
水銀圧入法により得られた前記第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Bが存在し、ピーク値Bが0.20mL/g以上である、という条件を条件2とし、
水銀圧入法により得られた前記第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Cが存在し、ピーク値Cが0.20mL/g以上である、という条件を条件3とし、
水銀圧入法により得られた前記第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Dが存在し、ピーク値Dが0.20mL/g以上である、という条件を条件4としたとき、
前記第2触媒層は、
条件3を満たし、条件4を満たさないか、
条件4を満たし、条件3を満たさないか、
条件3及び4を満たすか、又は、
条件3及び4のいずれも満たさず、
前記第2触媒層が、条件3を満たし、条件4を満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2のうち、少なくとも条件2を満たし、
前記第2触媒層が、条件4を満たし、条件3を満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2のうち、少なくとも条件1を満たし、
前記第2触媒層が、条件3及び4を満たす場合、前記第1触媒層は、条件1及び2の少なくとも一方を満たすか、又は、条件1及び2のいずれも満たさず、
前記第2触媒層が、条件3及び4のいずれも満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2を満たす、前記排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記第2触媒層が、
条件3を満たし、条件4を満たさないか、
条件4を満たし、条件3を満たさないか、又は、
条件3及び4を満たし、
前記第2触媒層が、条件3を満たし、条件4を満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2のうち、少なくとも条件2を満たし、
前記第2触媒層が、条件4を満たし、条件3を満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2のうち、少なくとも条件1を満たし、
前記第2触媒層が、条件3及び4を満たす場合、前記第1触媒層は、条件1及び2の少なくとも一方を満たす、請求項1に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
条件1において、ピーク値Aが1.00mL/g以下であり、条件3において、ピーク値Cが1.00mL/g以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
条件2において、ピーク値Bが1.00mL/g以下であり、条件4において、ピーク値Dが1.00mL/g以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
条件1において、ピーク値Aが0.31mL/g以上であり、条件3において、ピーク値Cが0.31mL/g以上である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項6】
排ガス流通方向に延在する基材と、第1触媒層と、第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒を製造する方法であって、
前記基材が、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層が、前記隔壁部の前記流入側セル側に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層が、前記隔壁部の前記流出側セル側に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って設けられており、
前記方法が、以下の工程:
(1a)第1造孔剤を含む第1スラリーを前記隔壁部の前記流入側セル側に塗工して第1前駆層を形成する工程;
(1b)第2造孔剤を含む第2スラリーを前記隔壁部の前記流出側セル側に塗工して第2前駆層を形成する工程;並びに
(1c)前記第1前駆層及び前記第2前駆層を焼成して、前記第1触媒層及び前記第2触媒層を形成する工程
を含み、
前記第1造孔剤及び前記第2造孔剤のうち、一方のメジアン径D
50が4μm超であり、他方のメジアン径D
50が4μm以下であり、
前記第1スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第1スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D
50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第1前駆層に含まれる前記第1造孔剤の量が、前記第1触媒層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記第1触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの前記第1触媒層の質量が、5g/L以上150g/L以下であり、
前記第2スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第2スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D
50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第2前駆層に含まれる前記第2造孔剤の量が、前記第2触媒層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記第2触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの前記第2触媒層の質量が、5g/L以上150g/L以下である、前記方法。
【請求項7】
排ガス流通方向に延在する基材と、第1触媒層と、第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒を製造する方法であって、
前記基材が、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層が、前記隔壁部の前記流入側セル側に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層が、前記隔壁部の前記流出側セル側に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層が、前記隔壁部の前記流出側セル側に設けられた下層と、前記下層上に設けられた上層とを備え、
前記方法が、以下の工程:
(2a)第1造孔剤を含む第1スラリーを前記隔壁部の前記流入側セル側に塗工して第1前駆層を形成する工程;
(2b)第3造孔剤を含む第3スラリーを前記隔壁部の前記流出側セル側に塗工して第3前駆層を形成する工程;
(2c)第4造孔剤を含む第4スラリーを前記第3前駆層上に塗工して第4前駆層を形成する工程;並びに
(2d)前記第1前駆層、前記第3前駆層及び前記第4前駆層を焼成して、前記第1触媒層、前記下層及び前記上層を形成する工程
を含み、
前記第1造孔剤、前記第3造孔剤及び前記第4造孔剤のうち、1つ又は2つのメジアン径D
50が4μm超であり、残りの2つ又は1つのメジアン径D
50が4μm以下であり、
前記第1スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第1スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D
50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第1前駆層に含まれる前記第1造孔剤の量が、前記第1触媒層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記第1触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの前記第1触媒層の質量が、5g/L以上150g/L以下であり、
前記第3スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第3スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D
50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第3前駆層に含まれる前記第3造孔剤の量が、前記下層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記下層が形成されている部分の単位体積当たりの前記下層の質量が、5g/L以上90g/L以下であり、
前記第4スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第4スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D
50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第4前駆層に含まれる前記第4造孔剤の量が、前記上層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記上層が形成されている部分の単位体積当たりの前記上層の質量が、5g/L以上60g/L以下である、前記方法。
【請求項8】
前記第3造孔剤のメジアン径D
50が4μm超であり、前記第4造孔剤のメジアン径D
50が4μm以下である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
排ガス流通方向に延在する基材と、第1触媒層と、第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒を製造する方法であって、
前記基材が、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層が、前記隔壁部の前記流入側セル側に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層が、前記隔壁部の前記流出側セル側に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って設けられており、
前記第1触媒層が、前記隔壁部の前記流入側セル側に設けられた下層と、前記下層上に設けられた上層とを備え、
前記方法が、以下の工程:
(3a)第2造孔剤を含む第2スラリーを前記隔壁部の前記流出側セル側に塗工して第2前駆層を形成する工程;
(3b)第5造孔剤を含む第5スラリーを前記隔壁部の前記流入側セル側に塗工して第5前駆層を形成する工程;
(3c)第6造孔剤を含む第6スラリーを前記第5前駆層上に塗工して第6前駆層を形成する工程;並びに
(3d)前記第2前駆層、前記第5前駆層及び前記第6前駆層を焼成して、前記第2触媒層、前記下層及び前記上層を形成する工程
を含み、
前記第2造孔剤、前記第5造孔剤及び前記第6造孔剤のうち、1つ又は2つのメジアン径D
50が4μm超であり、残りの2つ又は1つのメジアン径D
50が4μm以下であり、
前記第2スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第2スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D
50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第2前駆層に含まれる前記第2造孔剤の量が、前記第2触媒層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記第2触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの前記第2触媒層の質量が、5g/L以上150g/L以下であり、
前記第5スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第5スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D
50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第5前駆層に含まれる前記第5造孔剤の量が、前記下層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記下層が形成されている部分の単位体積当たりの前記下層の質量が、5g/L以上90g/L以下であり、
前記第6スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第6スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D
50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第6前駆層に含まれる前記第6造孔剤の量が、前記上層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記上層が形成されている部分の単位体積当たりの前記上層の質量が、5g/L以上60g/L以下である、前記方法。
【請求項10】
前記第5造孔剤のメジアン径D
50が4μm超であり、前記第6造孔剤のメジアン径D
50が4μm以下である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、バイク等の内燃機関から排出される排ガス中には、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等の有害成分が含まれている。これらの有害成分を浄化して無害化する目的で三元触媒が使用されている。三元触媒としては、Pt、Pd、Rh等の白金族元素を含む触媒が使用されている。
【0003】
排ガス中には、HC、CO、NOx等の有害成分とともに、粒子状物質(PM:Particulate Matter)が含まれており、大気汚染の原因となることが知られている。
【0004】
PMに関する環境規制に対応するため、直噴エンジン(GDI:Gasoline Direct Injection engine)等のガソリンエンジン搭載車両においても、ディーゼルエンジン搭載車両と同様、PM捕集機能を有するフィルター(GPF:Gasoline Particulate Filter)の設置が求められている。
【0005】
GPFとしては、例えば、ウォールフロー型と呼ばれる構造を有する基材が使用されている。ウォールフロー型基材は、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している流入側セルと、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している流出側セルと、流入側セルと流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部とを備える。
【0006】
一般に排ガス浄化用触媒の搭載スペースは限られているため、Pt、Pd、Rh等の白金族元素を含む触媒層をウォールフロー型基材に設けて、PMの捕集とともに、HC、CO、NOx等の有害成分の浄化を行うことが検討されている(例えば、特許文献1)。ウォールフロー型基材と、該ウォールフロー型基材に設けられた触媒層とを備える排ガス浄化用触媒では、流入側セルの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスが多孔質の隔壁部を通過して流出側セルの排ガス流出側の端部(開口部)から流出する際、排ガス中のPMが触媒層及び隔壁の細孔に捕集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2021/029098号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
触媒層及び隔壁部の細孔が小さいほど、PM捕集性能は向上するが、圧力損失(圧損)が上昇する。一方、触媒層及び隔壁部の細孔が大きいほど、圧損上昇は抑制されるが、PM捕集性能は低下する。このため、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立は難しく、このような両立を実現可能な技術が求められている。
【0009】
そこで、本発明は、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制とを実現可能な排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の排ガス浄化用触媒及びその製造方法を提供する。
[1]排ガス流通方向に延在する基材と、第1触媒層と、第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒であって、
前記基材は、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層は、前記隔壁部の前記流入側セル側に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層は、前記隔壁部の前記流出側セル側に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って設けられており、
水銀圧入法により得られた前記第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Aが存在し、ピーク値Aが0.20mL/g以上である、という条件を条件1とし、
水銀圧入法により得られた前記第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Bが存在し、ピーク値Bが0.20mL/g以上である、という条件を条件2とし、
水銀圧入法により得られた前記第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Cが存在し、ピーク値Cが0.20mL/g以上である、という条件を条件3とし、
水銀圧入法により得られた前記第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Dが存在し、ピーク値Dが0.20mL/g以上である、という条件を条件4としたとき、
前記第2触媒層は、
条件3を満たし、条件4を満たさないか、
条件4を満たし、条件3を満たさないか、
条件3及び4を満たすか、又は、
条件3及び4のいずれも満たさず、
前記第2触媒層が、条件3を満たし、条件4を満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2のうち、少なくとも条件2を満たし、
前記第2触媒層が、条件4を満たし、条件3を満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2のうち、少なくとも条件1を満たし、
前記第2触媒層が、条件3及び4を満たす場合、前記第1触媒層は、条件1及び2の少なくとも一方を満たすか、又は、条件1及び2のいずれも満たさず、
前記第2触媒層が、条件3及び4のいずれも満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2を満たす、前記排ガス浄化用触媒。
[2]前記第2触媒層が、
条件3を満たし、条件4を満たさないか、
条件4を満たし、条件3を満たさないか、又は、
条件3及び4を満たし、
前記第2触媒層が、条件3を満たし、条件4を満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2のうち、少なくとも条件2を満たし、
前記第2触媒層が、条件4を満たし、条件3を満たさない場合、前記第1触媒層は、条件1及び2のうち、少なくとも条件1を満たし、
前記第2触媒層が、条件3及び4を満たす場合、前記第1触媒層は、条件1及び2の少なくとも一方を満たす、[1]に記載の排ガス浄化用触媒。
[3]条件1において、ピーク値Aが1.00mL/g以下であり、条件3において、ピーク値Cが1.00mL/g以下である、[1]又は[2]に記載の排ガス浄化用触媒。
[4]条件2において、ピーク値Bが1.00mL/g以下であり、条件4において、ピーク値Dが1.00mL/g以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
[5]条件1において、ピーク値Aが0.31mL/g以上であり、条件3において、ピーク値Cが0.31mL/g以上である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の排ガス浄化用触媒。
[6]排ガス流通方向に延在する基材と、第1触媒層と、第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒を製造する方法であって、
前記基材が、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層が、前記隔壁部の前記流入側セル側に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層が、前記隔壁部の前記流出側セル側に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って設けられており、
前記方法が、以下の工程:
(1a)第1造孔剤を含む第1スラリーを前記隔壁部の前記流入側セル側に塗工して第1前駆層を形成する工程;
(1b)第2造孔剤を含む第2スラリーを前記隔壁部の前記流出側セル側に塗工して第2前駆層を形成する工程;並びに
(1c)前記第1前駆層及び前記第2前駆層を焼成して、前記第1触媒層及び前記第2触媒層を形成する工程
を含み、
前記第1造孔剤及び前記第2造孔剤のうち、一方のメジアン径D50が4μm超であり、他方のメジアン径D50が4μm以下であり、
前記第1スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第1スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第1前駆層に含まれる前記第1造孔剤の量が、前記第1触媒層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記第1触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの前記第1触媒層の質量が、5g/L以上150g/L以下であり、
前記第2スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第2スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第2前駆層に含まれる前記第2造孔剤の量が、前記第2触媒層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記第2触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの前記第2触媒層の質量が、5g/L以上150g/L以下である、前記方法。
[7]排ガス流通方向に延在する基材と、第1触媒層と、第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒を製造する方法であって、
前記基材が、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層が、前記隔壁部の前記流入側セル側に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層が、前記隔壁部の前記流出側セル側に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層が、前記隔壁部の前記流出側セル側に設けられた下層と、前記下層上に設けられた上層とを備え、
前記方法が、以下の工程:
(2a)第1造孔剤を含む第1スラリーを前記隔壁部の前記流入側セル側に塗工して第1前駆層を形成する工程;
(2b)第3造孔剤を含む第3スラリーを前記隔壁部の前記流出側セル側に塗工して第3前駆層を形成する工程;
(2c)第4造孔剤を含む第4スラリーを前記第3前駆層上に塗工して第4前駆層を形成する工程;並びに
(2d)前記第1前駆層、前記第3前駆層及び前記第4前駆層を焼成して、前記第1触媒層、前記下層及び前記上層を形成する工程
を含み、
前記第1造孔剤、前記第3造孔剤及び前記第4造孔剤のうち、1つ又は2つのメジアン径D50が4μm超であり、残りの2つ又は1つのメジアン径D50が4μm以下であり、
前記第1スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第1スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第1前駆層に含まれる前記第1造孔剤の量が、前記第1触媒層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記第1触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの前記第1触媒層の質量が、5g/L以上150g/L以下であり、
前記第3スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第3スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第3前駆層に含まれる前記第3造孔剤の量が、前記下層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記下層が形成されている部分の単位体積当たりの前記下層の質量が、5g/L以上90g/L以下であり、
前記第4スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第4スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第4前駆層に含まれる前記第4造孔剤の量が、前記上層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記上層が形成されている部分の単位体積当たりの前記上層の質量が、5g/L以上60g/L以下である、前記方法。
[8]前記第3造孔剤のメジアン径D50が4μm超であり、前記第4造孔剤のメジアン径D50が4μm以下である、[7]に記載の方法。
[9]排ガス流通方向に延在する基材と、第1触媒層と、第2触媒層とを備える排ガス浄化用触媒を製造する方法であって、
前記基材が、
前記排ガス流通方向に延在する流入側セルであって、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が閉塞している前記流入側セルと、
前記排ガス流通方向に延在する流出側セルであって、排ガス流入側の端部が閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している前記流出側セルと、
前記流入側セルと前記流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部と、
を備え、
前記第1触媒層が、前記隔壁部の前記流入側セル側に、前記隔壁部の排ガス流入側の端部から前記排ガス流通方向に沿って設けられており、
前記第2触媒層が、前記隔壁部の前記流出側セル側に、前記隔壁部の排ガス流出側の端部から前記排ガス流通方向とは反対の方向に沿って設けられており、
前記第1触媒層が、前記隔壁部の前記流入側セル側に設けられた下層と、前記下層上に設けられた上層とを備え、
前記方法が、以下の工程:
(3a)第2造孔剤を含む第2スラリーを前記隔壁部の前記流出側セル側に塗工して第2前駆層を形成する工程;
(3b)第5造孔剤を含む第5スラリーを前記隔壁部の前記流入側セル側に塗工して第5前駆層を形成する工程;
(3c)第6造孔剤を含む第6スラリーを前記第5前駆層上に塗工して第6前駆層を形成する工程;並びに
(3d)前記第2前駆層、前記第5前駆層及び前記第6前駆層を焼成して、前記第2触媒層、前記下層及び前記上層を形成する工程
を含み、
前記第2造孔剤、前記第5造孔剤及び前記第6造孔剤のうち、1つ又は2つのメジアン径D50が4μm超であり、残りの2つ又は1つのメジアン径D50が4μm以下であり、
前記第2スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第2スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第2前駆層に含まれる前記第2造孔剤の量が、前記第2触媒層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記第2触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの前記第2触媒層の質量が、5g/L以上150g/L以下であり、
前記第5スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第5スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第5前駆層に含まれる前記第5造孔剤の量が、前記下層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記下層が形成されている部分の単位体積当たりの前記下層の質量が、5g/L以上90g/L以下であり、
前記第6スラリーが、無機酸化物粒子を含み、前記第6スラリーに含まれる前記無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下であり、
前記第6前駆層に含まれる前記第6造孔剤の量が、前記上層の質量を基準として、10質量%以上60質量%以下であり、
前記基材のうち前記上層が形成されている部分の単位体積当たりの前記上層の質量が、5g/L以上60g/L以下である、前記方法。
[10]前記第5造孔剤のメジアン径D50が4μm超であり、前記第6造孔剤のメジアン径D50が4μm以下である、[9]に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制とを実現可能な排ガス浄化用触媒が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る排ガス浄化用触媒が内燃機関の排気経路に配置されている状態を示す一部断面図である。
【
図7】
図7A~Cは、対数微分細孔容積分布曲線における「ピーク値」を説明するための図である。
図7A~Cの各グラフにおいて、横軸の左側は小細孔側であり、横軸の右側は大細孔側である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係る排ガス浄化用触媒を説明するための図(
図5に対応する図)である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る排ガス浄化用触媒を説明するための図(
図6に対応する図)である。
【
図10】
図10は、第3実施形態に係る排ガス浄化用触媒を説明するための図(
図5に対応する図)である。
【
図11】
図11は、第3実施形態に係る排ガス浄化用触媒を説明するための図(
図6に対応する図)である。
【
図12A】
図12Aは、実施例2の排ガス浄化用触媒における第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線を示す。
【
図12B】
図12Bは、実施例2の排ガス浄化用触媒における第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線を示す。
【
図13A】
図13Aは、比較例1の排ガス浄化用触媒における第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線を示す。
【
図13B】
図13Bは、比較例1の排ガス浄化用触媒における第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線を示す。
【
図14A】
図14Aは、比較例2の排ガス浄化用触媒における第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線を示す。
【
図14B】
図14Bは、比較例2の排ガス浄化用触媒における第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
≪第1実施形態≫
以下、
図1~6に基づいて、本発明の第1実施形態を説明する。
【0015】
図1に示すように、第1実施形態に係る排ガス浄化用触媒1A(以下「触媒1A」という。)は、内燃機関の排気管P内の排気経路に配置されている。内燃機関は、例えば、ガソリンエンジン(例えば、GDIエンジン等)、ディーゼルエンジン等である。
【0016】
図1において、内燃機関の排気経路の排ガス流通方向は、符号Eで示されている。他の図においても同様である。本明細書において、排ガス流通方向Eの上流側(例えば、
図1の左側)を「排ガス流入側」又は「流入側」、排ガス流通方向Eの下流側(例えば、
図1の右側)を「排ガス流出側」又は「流入側」という。
【0017】
図1に示すように、触媒1Aは、基材10の軸方向が排ガス流通方向Eと一致又は略一致するように、内燃機関の排気経路に配置されている。本明細書において、「長さ」は、別段規定される場合を除き、基材10の軸方向の寸法を意味する。
【0018】
図1~
図6に示すように、触媒1Aは、基材10と、第1触媒層20と、第2触媒層30とを備える。
【0019】
本実施形態において、第1触媒層20及び第2触媒層30は、それぞれ、単層構造を有する。
【0020】
<基材>
基材10を構成する材料は、公知の材料から適宜選択することができる。基材10を構成する材料としては、例えば、セラミックス材料、金属材料等が挙げられるが、セラミックス材料が好ましい。セラミックス材料としては、例えば、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等の炭化物セラミックス、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物セラミックス、アルミナ、ジルコニア、コージェライト、ムライト、ジルコン、チタン酸アルミニウム、チタン酸マグネシウム等の酸化物セラミックス等が挙げられる。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼等の合金等が挙げられる。
【0021】
基材10の長さL10は、排ガス浄化性能、PM捕集性能等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能及びPM捕集性を向上させる観点から、基材10の長さL10は、好ましくは50mm以上160mm以下、より好ましくは80mm以上130mm以下である。
【0022】
基材10の体積は、排ガス浄化性能、PM捕集性能等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能及びPM捕集性を向上させる観点から、基材10の体積は、好ましくは0.5L以上2.5L以下、より好ましくは0.5L以上2.0L以下、より一層好ましくは0.7L以上2.0L以下である。本明細書において、基材10の体積は、基材10の見かけの体積を意味する。基材10が円柱状である場合、基材10の外径を2rとし、基材10の長さをL10とすると、基材10の体積は、式:基材10の体積=π×r2×L10から算出される。
【0023】
基材10は、ウォールフロー型基材である。
図2~6に示すように、基材10は、セル13(流入側セル13a及び流出側セル13b)と、セル13(流入側セル13a及び流出側セル13b)を仕切る多孔質の隔壁部12とを備える。基材10は、ハニカム構造体であることが好ましい。
【0024】
図2及び3に示すように、基材10は、筒状部11を備え、セル13(流入側セル13a及び流出側セル13b)及び隔壁部12は、筒状部11内に形成されている。筒状部11は、基材10の外形を規定し、筒状部11の軸方向は、基材10の軸方向と一致する。
図2及び3に示すように、筒状部11の形状は、例えば円筒状であるが、楕円筒状、多角筒状等のその他の形状であってもよい。
【0025】
図2~6に示すように、セル13(流入側セル13a及び流出側セル13b)は、それぞれ、排ガス流通方向Eに延在しており、排ガス流入側の端部及び排ガス流出側の端部を有する。
【0026】
図6に示すように、基材10には、一部のセル13の排ガス流出側の端部を封止する第1封止部14と、残りのセル13の排ガス流入側の端部を封止する第2封止部15とが設けられている。これにより、一部のセル13は、排ガス流入側の端部が開口しており、排ガス流出側の端部が第1封止部14で閉塞している流入側セル13aとなっており、残りのセル13は、排ガス流入側の端部が第2封止部15で閉塞しており、排ガス流出側の端部が開口している流出側セル13bとなっている。
【0027】
図2~6に示すように、隣接するセル13(隣接する流入側セル13a及び流出側セル13b)の間には隔壁部12が存在し、隣接するセル13(隣接する流入側セル13a及び流出側セル13b)は、隔壁部12によって仕切られている。
【0028】
図4~6に示すように、1個の流入側セル13aの周りには複数(本実施形態では4個)の流出側セル13bが配置されており、流入側セル13aと、当該流入側セル13aに周りに配置された流出側セル13bとは、隔壁部12によって仕切られている。
図4~6に示すように、1個の流出側セル13bの周りには複数(本実施形態では4個)の流入側セル13aが配置されており、流出側セル13bと、当該流出側セル13bに周りに配置された流入側セル13aとは、隔壁部12によって仕切られている。
【0029】
図2~6に示すように、各流入側セル13aの排ガス流入側の端部(開口部)の平面視形状及び各流出側セル13bの排ガス流出側の端部(開口部)の平面視形状は、例えば四角形であるが、六角形、八角形等のその他の形状であってもよい。
【0030】
基材10の1平方インチあたりのセル密度は、PM捕集性能、圧損等を考慮して適宜調整することができる。PM捕集性能を向上させるとともに圧損上昇を抑制する観点から、基材10の1平方インチあたりのセル密度は、好ましくは180セル以上350セル以下である。基材10の1平方インチあたりのセル密度は、基材10を基材10の軸方向と垂直な平面で切断して得られた断面における1平方インチあたりのセル13(流入側セル13a及び流出側セル13b)の合計個数である。
【0031】
図2及び3に示すように、隔壁部12は、筒状部11内に設けられている。隔壁部12は、排ガスが通過可能な多孔質構造を有する。
【0032】
図4~6に示すように、隔壁部12は、流入側セル13a側の外表面S1aと、流出側セル13b側の外表面S1bとを有する。外表面S1aは、隔壁部12の外形を規定する外表面のうち、排ガス流通方向Eに延在する流入側セル13a側の領域(すなわち、流入側セル13aと接する領域)である。外表面S1bは、隔壁部12の外形を規定する外表面のうち、排ガス流通方向Eに延在する流出側セル13b側の領域(すなわち、流出側セル13bと接する領域)である。
【0033】
隔壁部12の厚みは、PM捕集性能、圧損等を考慮して適宜調整することができる。PM捕集性能を向上させるとともに圧損上昇を抑制する観点から、隔壁部12の厚みは、好ましくは110μm以上380μm以下、より好ましくは150μm以上330μm以下、より一層好ましくは180μm以上310μm以下である。
【0034】
隔壁部12の平均細孔径(平均気孔径)は、適宜調整することができるが、PM捕集性能の向上及び圧損上昇の抑制をより効果的に実現する観点から、好ましくは12μm以上25μm以下、より好ましくは13μm以上22μm以下である。隔壁部12の細孔率(気孔率)は、適宜調整することができるが、圧損上昇の抑制をより効果的に実現する観点から、例えば40%以上80%以下、好ましくは45%以上75%以下、より好ましくは50%以上75%以下、より一層好ましくは60%以上70%以下である。
【0035】
隔壁部12の平均細孔径及び細孔率の測定は、水銀ポロシメータを使用して水銀圧入法により行うことができる。水銀圧入法では、水銀ポロシメータの測定セル内に、基材10から切り出した試験片(第1封止部14及び第2封止部15を含まない)を収納し、測定セル内を減圧し、測定セル内に水銀を導入して加圧し、加圧時の圧力及び試験片における隔壁部12の細孔内に導入された水銀の体積から、細孔径及び細孔容積を測定する。測定は、例えば、圧力0.5~20000psiaの範囲で行う。なお、0.5psiaは、0.35×10-3kg/mm2に相当し、20000psiaは14kg/mm2に相当する。この圧力範囲に相当する細孔径の範囲は0.01~420μmである。圧力から気孔径を算出する際の常数としては、例えば、接触角140°及び表面張力480dyn/cmを使用する。隔壁部12の平均細孔径は、隔壁部12の細孔径分布において、累積細孔容積が50%となる細孔径(細孔容積の積算値50%における細孔径)である。隔壁部12の細孔率は、下記式に基づいて算出することができる。なお、隔壁材料がコーディエライトの場合、コーディエライトの真比重として、例えば、2.52を使用することができる。
隔壁部12の細孔率(%)=総細孔容積/(総細孔容積+1/隔壁材料の真比重)×100
【0036】
<第1触媒層>
図4及び6に示すように、第1触媒層20は、隔壁部12の流入側セル13a側に設けられている。
【0037】
図6に示すように、第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Eに沿って延在している。本実施形態において、第1触媒層20は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至っていないが、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至っていてもよい。
【0038】
図4及び6に示すように、第1触媒層20の少なくとも一部は、隔壁部12の外表面S1aから流入側セル13a側に隆起していること、すなわち、第1触媒層20は、隔壁部12の外表面S1aから流入側セル13a側に隆起する部分(以下「隆起部分」という。)を有することが好ましい。これにより、排ガス及びPMの接触性が向上し、排ガス浄化性能の向上及びPM捕集性能の向上をより効果的に実現することができる。
【0039】
第1触媒層20は、隆起部分のみで構成されていてもよいし、隆起部分とともに、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)を有していてもよい。隔壁部12は多孔質であるため、第1触媒層20を形成する際、隆起部分とともに内在部分が形成される場合がある。隆起部分と内在部分とは、連続していてもよい。第1触媒層20は内在部分のみで構成されていてもよい。「第1触媒層20が、隔壁部12の流入側セル13a側に設けられている」には、第1触媒層20が隆起部分のみで構成されている実施形態、第1触媒層20が内在部分のみで構成されている実施形態、並びに、第1触媒層20が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれもが包含される。
【0040】
第1触媒層20の隆起部分が存在する領域は、隔壁部12が存在する領域と重ならないが、第1触媒層20の内在部分が存在する領域は、隔壁部12が存在する領域と重なる。したがって、触媒1Aを基材10の軸方向と垂直な平面で切断し、切断面に存在する第1触媒層20及び隔壁部12を観察し、第1触媒層20と隔壁部12との間の形態の相違に基づいて、第1触媒層20の隆起部分及び内在部分を特定することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、例えば、SEMによる切断面の観察と、切断面の組成分析とを併用することにより行うことができる。元素マッピングは、例えば、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して行うことができる。切断面の元素マッピングにより、第1触媒層20と隔壁部12との間の形態及び組成の相違に基づいて、隆起部分及び内在部分を特定することができる。
【0041】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量(焼成後の質量)は、好ましくは5g/L以上150g/L以下、より好ましくは10g/L以上100g/L以下、より一層好ましくは25g/L以上70g/L以下である。基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量は、式:(第1触媒層20の質量)/((基材10の体積)×(第1触媒層20の平均長さL20/基材10の長さL10))から算出される。
【0042】
本明細書において、「第1触媒層20の質量」は、第1触媒層20に含まれる全ての金属元素のうち、白金族元素については金属換算の質量を、白金族元素以外の金属元素については酸化物換算の質量を求め、これらを合計したものを意味する。すなわち、「第1触媒層20の質量」は、第1触媒層20に含まれる白金族元素の金属換算の質量と、第1触媒層20に含まれる白金族元素以外の金属元素の酸化物換算の質量とを合計することにより求められた計算質量を意味する。なお、「金属元素」には、Si、B等の半金属元素も包含される。
【0043】
本明細書において、「白金族元素」には、Pt(白金元素)、Pd(パラジウム元素)、Rh(ロジウム元素)、Ru(ルテニウム元素)、Os(オスミウム元素)及びIr(イリジウム元素)が包含される。
【0044】
本明細書において、Ce、Pr及びTbを除く希土類元素の酸化物はセスキ酸化物(M2O3,MはCe、Pr及びTb以外の希土類元素を表す)を、Ceの酸化物はCeO2を、Prの酸化物はPr6O11を、Tbの酸化物はTb4O7を、Alの酸化物はAl2O3を、Zrの酸化物はZrO2を、Siの酸化物はSiO2を、Bの酸化物はB2O3を、Crの酸化物はCr2O3を、Mgの酸化物はMgOを、Caの酸化物はCaOを、Srの酸化物はSrOを、Baの酸化物はBaOを、Feの酸化物はFe3O4を、Mnの酸化物はMn3O4を、Niの酸化物はNiOを、Tiの酸化物はTiO2を、Znの酸化物はZnOを、Snの酸化物はSnO2を意味する。
【0045】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法の一例は、以下の通りである。
【0046】
触媒1Aから、基材10の軸方向に延在し、基材10の長さL10と同一の長さを有するサンプルを切り出す。サンプルは、例えば、直径25.4mmの円柱状である。なお、サンプルの直径の値は必要に応じて変更することができる。サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流入側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。切断片の長さは5mmである。切断片の組成を、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)等を使用して分析し、切断片の組成に基づいて、切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認する。
【0047】
第1触媒層20の一部を含むことが明らかである切断片に関しては、必ずしも組成分析を行う必要はない。例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子線マイクロアナライザー(EPMA)等を使用して切断面を観察し、切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認することができる。切断面の観察を行う際、切断面の元素マッピングを行ってもよい。元素マッピングは、上記と同様に行うことができる。
【0048】
切断片が第1触媒層20の一部を含むか否かを確認した後、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さ=5mm×(第1触媒層20の一部を含む切断片の数)
【0049】
例えば、第1切断片~第k切断片は第1触媒層20の一部を含むが、第(k+1)~第n切断片は第1触媒層20の一部を含まない場合、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さは、(5×k)mmである。
【0050】
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さのより詳細な測定方法の一例は、以下の通りである。
第k切断片(すなわち、第1触媒層20の一部を含む切断片のうち、サンプルの最も排ガス流出側から得られた切断片)を基材10の軸方向で切断して、SEM、EPMA等を使用して切断面に存在する第1触媒層20の一部を観察することにより、第k切断片における第1触媒層20の一部の長さを測定する。そして、下記式に基づいて、サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを算出する。
サンプルに含まれる第1触媒層20の長さ=(5mm×(k-1))+(第k切断片に含まれる第1触媒層20の一部の長さ)
【0051】
触媒1Aから任意に切り出された8~16個のサンプルに関して、各サンプルに含まれる第1触媒層20の長さを測定し、それらの平均値を第1触媒層20の平均長さL20とする。
【0052】
第1触媒層20の平均長さL20は、排ガス浄化性能、PM捕集性能等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する第1触媒層20の平均長さL20の百分率(L20/L10×100)は、好ましくは15%以上90%以下、より好ましくは20%以上90%以下、より一層好ましくは30%以上85%以下である。
【0053】
第1触媒層20は、1種又は2種以上の白金族元素を含む。白金族元素は、例えば、Pt、Pd、Rh、Ru、Ir、Os等から選択することができるが、排ガス浄化性能を高める観点から、Pt、Pd及びRhから選択することが好ましい。白金族元素は、触媒活性成分として機能し得る形態、例えば、金属、白金族元素を含む合金、白金族元素を含む化合物(例えば、白金族元素の酸化物)等の、白金族元素を含む触媒活性成分の形態で第1触媒層20に含まれる。排ガス浄化性能を高める観点から、白金族元素を含む触媒活性成分は、粒子状であることが好ましい。
【0054】
一実施形態において、第1触媒層20は、Rhを含む。第1触媒層20は、Rhに加えて、1種又は2種以上のその他の白金族元素を含んでいてもよい。
【0055】
別の実施形態において、第1触媒層20は、Pd及び/又はRhを含む。第1触媒層20は、Pd及び/又はRhに加えて、1種又は2種以上のその他の白金族元素を含んでいてもよい。
【0056】
排ガス浄化性能とコストとのバランスの観点から、第1触媒層20中の白金族元素の金属換算量は、第1触媒層20の質量を基準として、好ましくは0.010質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.020質量%以上15質量%以下、より一層好ましくは0.050質量%以上10質量%以下である。「第1触媒層20中の白金族元素の金属換算量」は、第1触媒層20が1種の白金族元素を含む場合には当該1種の白金族元素の金属換算量を意味し、第1触媒層20が2種以上の白金族元素を含む場合には当該2種以上の白金族元素の金属換算量の合計を意味する。
【0057】
第1触媒層20の製造に使用される原料の組成が判明している場合、第1触媒層20中の各金属元素の金属換算量又は酸化物換算量は、当該原料の組成から求めることができる。
【0058】
第1触媒層20の製造に使用される原料の組成が判明していない場合、第1触媒層20中の各金属元素の金属換算量又は酸化物換算量は、走査型電子顕微鏡-エネルギー分散型X線分析法(SEM-EDX)等の常法により求めることができる。具体的には、下記の通りである。
【0059】
第1触媒層20から得られた試料について、SEM-EDX等の常法を使用して元素分析を行い、試料全体の構成元素の種類を特定するとともに、特定された各金属元素のモル%を求める。SEMの10視野の各々について、各金属元素のモル%を求め、10視野における各金属元素のモル%の平均値を、第1触媒層20中の各金属元素のモル%とする。第1触媒層20中の各金属元素のモル%から、第1触媒層20中の各白金族元素の金属換算の質量%、及び、第1触媒層20中の白金族元素以外の各金属元素の酸化物換算の質量%を算出する。第1触媒層20中の各白金族元素の金属換算の質量%は、式:(モル%から計算される各白金族元素の金属換算の質量)/((モル%から計算される白金族元素の金属換算の質量)+(モル%から計算される白金族元素以外の金属元素の酸化物換算の質量))×100から算出される。第1触媒層20中の白金族元素外の各金属元素の酸化物換算の質量%は、式:(モル%から計算される白金族元素以外の各金属元素の酸化物換算の質量)/((モル%から計算される白金族元素の金属換算の質量)+(モル%から計算される白金族元素以外の金属元素の酸化物換算の質量))×100から算出される。
【0060】
第1触媒層20は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。
【0061】
「触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されている」とは、担体の外表面及び又は細孔内表面に、触媒活性成分の少なくとも一部が、物理的及び/又は化学的に吸着及び/又は保持されている状態を意味する。触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていることは、例えば、SEM-EDX等を使用して確認することができる。具体的には、触媒層の断面をSEM-EDXで分析して得られた元素マッピングにおいて、触媒活性成分の少なくとも一部と担体とが同じ領域に存在している場合、触媒活性成分の少なくとも一部が担体に担持されていると判断することができる。
【0062】
担体は、例えば、無機酸化物から選択することができる。無機酸化物は、例えば、粒子状である。触媒活性成分の担持性を向上させる観点から、無機酸化物は、多孔質であることが好ましい。無機酸化物は、酸素貯蔵能(OSC:Oxygen Storage Capacity)を有していてもよいし、有していなくてもよい。担体として使用される無機酸化物は、バインダとして使用される無機酸化物(例えば、アルミナバインダ、ジルコニアバインダ、チタニアバインダ、シリカバインダ等の無機酸化物系バインダ)とは区別される。
【0063】
無機酸化物としては、例えば、Al系酸化物、Ce系酸化物、Ce-Zr系複合酸化物、Ce以外の希土類元素の酸化物、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)、チタニア(TiO2)、ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、MgO、ZnO、SnO2等をベースとした酸化物等が挙げられる。
【0064】
担体は、Al系酸化物、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物から選択することが好ましい。第1触媒層20は、Al系酸化物、Ce系酸化物及びCe-Zr系複合酸化物以外の1種又は2種以上の担体を含んでいてもよい。
【0065】
本明細書において、Al系酸化物は、Alを含む酸化物であって、酸化物を構成するO以外の元素のうち、質量基準で最も含有率が大きい元素がAlである酸化物を意味する。ただし、Ce-Zr系複合酸化物に該当するものは、Al系酸化物に該当しないものとする。
【0066】
Al系酸化物は、Al及びO以外の1種又は2種以上の元素(以下「その他の元素」という。)を含んでいてもよい。その他の元素は、例えば、B、Si、Zr、Cr、希土類元素(例えば、Y、Ce、La、Nd、Pr、Sm、Gd等)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)等から選択することができる。Al系酸化物としては、例えば、アルミナ(Al2O3)、アルミナの表面をその他の元素で修飾して得られる酸化物、アルミナ中にその他の元素を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。
【0067】
本明細書において、Ce系酸化物は、Ceを含む酸化物であって、酸化物を構成するO以外の元素のうち、質量基準で最も含有率が大きい元素がCeである酸化物を意味する。ただし、Ce-Zr系複合酸化物に該当するものは、Ce系酸化物に該当しないものとする。
【0068】
Ce系酸化物は、Ce及びO以外の1種又は2種以上の元素(以下「その他の元素」という。)を含んでいてもよい。その他の元素は、例えば、Ce以外の希土類元素(例えば、Y、Pr、Sc、La、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、Fe、Mn、Ni、Zr、Al等から選択することができる。Ce系酸化物としては、例えば、セリア(CeO2)、セリアの表面をその他の元素で修飾して得られる酸化物、セリア中にその他の元素を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。
【0069】
本明細書において、Ce-Zr系複合酸化物は、Ce及びZrを含む複合酸化物であって、複合酸化物中のCeのCeO2換算含有率が、複合酸化物の質量を基準として、5.0質量%以上95.0質量%以下であり、且つ、複合酸化物中のZrのZrO2換算含有率が、複合酸化物の質量を基準として、5.0質量%以上95.0質量%以下である複合酸化物を意味する。
【0070】
Ce-Zr系複合酸化物は、Ce、Zr及びO以外の1種又は2種以上の元素(以下「その他の元素」という。)を含んでいてもよい。その他の元素は、例えば、Ce以外の希土類元素、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等)、Fe、Mn、Ni、Al等から選択することができる。Ce-Zr系複合酸化物としては、例えば、CeO2-ZrO2固溶体、CeO2-ZrO2固溶体の表面をその他の元素で修飾して得られる酸化物、CeO2-ZrO2固溶体中にその他の元素を固溶して得られる酸化物等が挙げられる。
【0071】
Ce-Zr系複合酸化物中のその他の元素の酸化物換算含有率は、Ce-Zr系複合酸化物の質量を基準として、例えば5質量%以上30質量%以下である。「Ce-Zr系複合酸化物中のその他の元素の酸化物換算含有率」は、Ce-Zr系複合酸化物がその他の1種の元素を含む場合には当該1種の元素の酸化物換算含有率を意味し、Ce-Zr系複合酸化物がその他の2種以上の元素を含む場合には当該2種以上の元素の酸化物換算含有率の合計を意味する。
【0072】
Al系酸化物の組成が判明している場合、Al系酸化物中の各元素の酸化物換算含有率は、Al系酸化物の組成から求めることができる。
【0073】
Al系酸化物の組成が判明していない場合、Al系酸化物中の各元素の酸化物換算含有率は、Al系酸化物を含む試料をエネルギー分散型X線分光法(EDX)で分析し、得られた元素マッピングと、指定した粒子のEDX元素分析とから求めることができる。具体的には、元素マッピングにより定性的にAl系酸化物粒子及びその他の粒子を識別(色分け)し、指定した粒子に対して組成分析(元素分析)することにより、指定した粒子中の各元素の酸化物換算含有率を求めることができる。
【0074】
Ce系酸化物又はCe-Zr系複合酸化物中の各元素の酸化物換算含有率は、Al系酸化物中の各元素の酸化物換算含有率と同様にして求めることができる。
【0075】
第1触媒層20は、バインダ、安定剤等のその他の成分を含んでいてもよい。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、セリアゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル等の無機酸化物系バインダが挙げられる。安定剤としては、例えば、アルカリ土類金属元素(例えば、Sr、Ba等)の硝酸塩、炭酸塩、酸化物、硫酸塩等が挙げられる。
【0076】
<第2触媒層>
図5及び6に示すように、第2触媒層30は、隔壁部12の流出側セル13b側に設けられている。
【0077】
図6に示すように、第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Eとは反対の方向に沿って延在している。本実施形態において、第2触媒層30は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至っていないが、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至っていてもよい。
【0078】
図5及び6に示すように、第2触媒層30の少なくとも一部は、隔壁部12の外表面S1bから流出側セル13b側に隆起していること、すなわち、第2触媒層30は、隔壁部12の外表面S1bから流出側セル13b側に隆起する部分(以下「隆起部分」という。)を有することが好ましい。これにより、排ガス及びPMの接触性が向上し、排ガス浄化性能の向上及びPM捕集性能の向上をより効果的に実現することができる。
【0079】
第2触媒層30は、隆起部分のみで構成されていてもよいし、隆起部分とともに、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)を有していてもよい。隔壁部12は多孔質であるため、第2触媒層30を形成する際、隆起部分とともに内在部分が形成される場合がある。隆起部分と内在部分とは、連続していてもよい。第2触媒層30は内在部分のみで構成されていてもよい。「第2触媒層30が、隔壁部12の流出側セル13b側に設けられている」には、第2触媒層30が隆起部分のみで構成されている実施形態、第2触媒層30が内在部分のみで構成されている実施形態、並びに、第2触媒層30が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれもが包含される。
【0080】
第1触媒層20の隆起部分及び内在部分の特定方法に関する上記説明は、第2触媒層30にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「第2触媒層30」に読み替えられる。
【0081】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量(焼成後の質量)は、好ましくは5g/L以上150g/L以下、より好ましくは10g/L以上100g/L以下、より一層好ましくは25g/L以上70g/L以下である。基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量は、式:(第2触媒層30の質量)/((基材10の体積)×(第2触媒層30の平均長さL30/基材10の長さL10))から算出される。
【0082】
第1触媒層20の質量に関する上記説明は、第2触媒層30にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「第2触媒層30」に読み替えられる。
【0083】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法に関する上記説明は、第2触媒層30の平均長さL30の測定方法にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「第2触媒層30」に、「平均長さL20」は「平均長さL30」に読み替えられる。但し、第2触媒層30の平均長さL30の測定方法では、サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流出側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。
【0084】
第2触媒層30の平均長さL30は、排ガス浄化性能、PM捕集性能等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する第2触媒層30の平均長さL30の百分率(L30/L10×100)は、好ましくは15%以上90%以下、より好ましくは20%以上90%以下、より一層好ましくは30%以上85%以下である。
【0085】
排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する、第1触媒層20の平均長さL20と第2触媒層30の平均長さL30との合計の百分率((L20+L30)/L10×100)は、好ましくは100%以上180%以下、より好ましくは100%以上170%以下、より一層好ましくは105%以上150%以下である。
【0086】
第2触媒層30は、1種又は2種以上の白金族元素を含む。第1触媒層20に含まれる白金族元素及びその金属換算量に関する上記説明は、第2触媒層30に含まれる白金族元素及びその金属換算量にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「第2触媒層30」に読み替えられる。
【0087】
一実施形態において、第2触媒層30は、Pd及び/又はRhを含む。第2触媒層30は、Pd及び/又はRhに加えて、1種又は2種以上のその他の白金族元素を含んでいてもよい。第2触媒層30がPd及び/又はRhを含む実施形態は、第1触媒層20がRhを含む実施形態と組み合わせることができる。
【0088】
別の実施形態において、第2触媒層30は、Rhを含む。第2触媒層30は、Rhに加えて、1種又は2種以上のその他の白金族元素を含んでいてもよい。第2触媒層30がRhを含む実施形態は、第1触媒層20がPd及び/又はRhを含む実施形態と組み合わせることができる。
【0089】
第2触媒層30は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。担持の意義及び確認方法は、上記と同様である。
【0090】
第1触媒層20に含まれる担体に関する上記説明は、第2触媒層30に含まれる担体にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「第2触媒層30」に読み替えられる。
【0091】
第2触媒層30は、バインダ、安定剤等のその他の成分を含んでいてもよい。バインダ及び安定剤に関する説明は、上記と同様である。
【0092】
<対数微分細孔容積分布曲線>
本明細書において、「対数微分細孔容積分布曲線(log微分細孔容積分布曲線)」は、細孔容積増加分(差分細孔容積dV)を、それに相当する細孔径の上値と下値との常用対数(log)の差(差分値d(logD))で除した値(対数微分細孔容積dV/d(logD))を、細孔径増加分の中点(各区間の平均細孔径)に対してプロットして得られる曲線を意味する。なお、「平均細孔径」は、直径を意味する。
【0093】
第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、横軸は、第1触媒層20の細孔径(μm)を表し、縦軸は、切断片M1の単位質量あたりの第1触媒層20の対数微分細孔容積(mL/g)を表す。切断片M1については後述する。
【0094】
第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、横軸は、第2触媒層30の細孔径(μm)を表し、縦軸は、切断片M2の単位質量あたりの第2触媒層30の対数微分細孔容積(mL/g)を表す。切断片M2については後述する。
【0095】
第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線は、以下の方法により得ることができる。
【0096】
触媒1Aを、基材10の軸方向と平行な平面及び基材10の軸方向と垂直な平面で切断し、
図6中の符号M1で示す部分を切り出し、隔壁部12の一部及び第1触媒層20の一部を含むが、第2触媒層30を含まない切断片M1を得る。切断片M1は、第1封止部14又は第2封止部15のいずれも含まない。切断片M1に含まれる隔壁部12の一部の長さは、切断片M1の長さと等しい。切断片M1に含まれる第1触媒層20の一部の長さは、切断片M1の長さと等しい。切断片M1は、触媒1Aの排ガス流入側端部近傍から得ることができる。例えば、基材10の排ガス流入側端部から排ガス流通方向Eにそれぞれ10mm及び20mm離れた2箇所を、基材10の軸方向と垂直な平面で切断することにより、隔壁部12の一部及び第1触媒層20の一部を含むが、第2触媒層30を含まない、長さ10mmの切断片M1を得ることができる。切断片M1のサイズは適宜変更することができる。切断片M1は、例えば、一辺が10mmの立方体形状である。
【0097】
切断片M1を使用して水銀圧入法を実施することにより、第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線を得ることができる。
【0098】
水銀圧入法は、株式会社島津製作所製 自動ポロシメータ「オートポアIV9520」を使用して、以下の条件及び手順で実施することができる。
【0099】
(測定条件)
測定環境:25℃
測定セル:試料室体積 3cm3、圧入体積 0.39cm3
測定範囲:0.0048MPaから255.1060MPaまで
測定点:0.0048MPaから0.3447MPaの範囲において54点
0.3447MPaから255.1060MPaの範囲において77点
合計131点(それぞれ圧力を対数でプロットしたときに等間隔になるように点を刻む)
圧入体積:25%以上90%以下になるように調節する。
(低圧パラメーター)
排気圧力:50μmHg
排気時間:5.0min
水銀注入圧力:0.0034MPa
平衡時間:10sec
(高圧パラメーター)
平衡時間:10sec
(水銀パラメーター)
前進接触角:130.0degrees
後退接触角:130.0degrees
表面張力:485.0mN/m(485.0dyne/cm)
水銀密度:13.5335g/mL
(測定手順)
(1)低圧部で0.0048MPaから0.3447MPa以下の範囲で54点測定する。
(2)高圧部で0.3792MPaから255.1060MPa以下の範囲で77点測定する。
(3)水銀注入圧力、水銀注入量及び切断片M1の質量から、対数微分細孔容積分布曲線(log微分細孔容積分布曲線)を求める。
なお、上記(1)、(2)及び(3)は、装置付属のソフトウエアにて、自動で行うことができる。その他の条件は、JIS R 1655:2003に準ずることができる。
【0100】
切断片M1は、隔壁部12の一部及び第1触媒層20の一部を含むため、水銀圧入法により得られた対数微分細孔容積分布は、第1触媒層20の対数微分細孔容積分布に加えて、隔壁部12の対数微分細孔容積分布を含む。しかしながら、隔壁部12の細孔径は、第1触媒層20の細孔径よりも有意に大きいため、第1触媒層20の対数微分細孔容積分布と、隔壁部12の対数微分細孔容積分布とを区別することができる。
【0101】
第1触媒層20の対数微分細孔容積分布における細孔径の範囲は、例えば0.001μm以上12μm以下、好ましくは0.002μm以上11μm以下、より好ましくは0.003μm以上11μm以下である。隔壁部12の対数微分細孔容積分布における細孔径の範囲は、例えば11μm以上80μm以下、好ましくは12μm以上50μm以下、より好ましくは12μm以上30μm以下である。
【0102】
第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線は、以下の方法により得ることができる。
【0103】
触媒1Aを、基材10の軸方向と平行な平面及び基材10の軸方向と垂直な平面で切断し、
図6中の符号M2で示す部分を切り出し、隔壁部12の一部及び第2触媒層30の一部を含むが、第1触媒層20を含まない切断片M2を得る。切断片M2は、第1封止部14又は第2封止部15のいずれも含まない。切断片M2に含まれる隔壁部12の一部の長さは、切断片M2の長さと等しい。切断片M2に含まれる第2触媒層30の一部の長さは、切断片M2の長さと等しい。切断片M2は、触媒1Aの排ガス流出側端部近傍から得ることができる。例えば、基材10の排ガス流出側端部から排ガス流通方向Eとは反対の方向にそれぞれ10mm及び20mm離れた2箇所を、基材10の軸方向と垂直な平面で切断することにより、隔壁部12の一部及び第2触媒層30の一部を含むが、第1触媒層20を含まない、長さ10mmの切断片M2を得ることができる。切断片M2のサイズは適宜変更することができる。切断片M2は、例えば、一辺が10mmの立方体形状である。
【0104】
切断片M2を使用して水銀圧入法を実施することにより、第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線を得ることができる。
【0105】
水銀圧入法は、株式会社島津製作所製 自動ポロシメータ「オートポアIV9520」を使用して、上記と同様の条件及び手順で実施することができる。
【0106】
切断片M2は、隔壁部12及び第2触媒層30を含むため、水銀圧入法により得られた対数微分細孔容積分布は、第2触媒層30の対数微分細孔容積分布に加えて、隔壁部12の対数微分細孔容積分布を含む。しかしながら、隔壁部12の細孔径は、第2触媒層30の細孔径よりも有意に大きいため、第2触媒層30の対数微分細孔容積分布と、隔壁部12の対数微分細孔容積分布とを区別することができる。
【0107】
第2触媒層30の対数微分細孔容積分布における細孔径の範囲は、例えば0.001μm以上12μm以下、好ましくは0.002μm以上12μm以下、より好ましくは0.003μm以上11μm以下である。隔壁部12の対数微分細孔容積分布における細孔径の範囲は、例えば11μm以上80μm以下、好ましくは12μm以上50μm以下、好ましくは12μm以上30μm以下である。
【0108】
<対数細孔容積分布曲線の微分曲線>
本明細書において、「対数細孔容積分布曲線の微分曲線」は、対数微分細孔容積分布曲線の一次微分曲線を意味する。
【0109】
対数細孔容積分布曲線の微分曲線において、横軸は、対数微分細孔容積分布曲線の横軸と同一であり、縦軸は、対数微分細孔容積分布曲線における接線の傾きを表す。
【0110】
対数微分細孔容積分布曲線の微分曲線は、以下の手順により得ることができる。
(1)上記方法で得られた対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径Dnに対応する対数微分細孔容積分布曲線の値vnの組(nは、1以上131以下の整数を表す)を、細孔径が小さい順に(D1,v1),(D2,v2),・・・,(Dn,vn),・・・,(D131,v131)とする。
(2)1≦n≦130の各細孔径Dnについて、(vn+1-vn)/(Dn+1-Dn)の値を、細孔径Dnにおける対数微分細孔容積分布曲線の微分値とする。
(3)各細孔径Dnに対し、上記(2)で得られた対数微分細孔容積分布曲線の微分値をプロットすることにより、対数微分細孔容積分布曲線の微分曲線を得ることができる。
【0111】
<ピーク値>
以下、対数微分細孔容積分布曲線における「ピーク値」について説明する。
【0112】
(P1)
図7Aに示すように、対数微分細孔容積分布曲線において、1つ以上の極大値が存在する場合、対数微分細孔容積分布曲線に存在する各極大値(各頂点の対数微分細孔容積)が「ピーク値」に該当する。
【0113】
(P2)
図7Bに示すように、対数微分細孔容積分布曲線において、あるピークの小細孔径側にショルダーが存在する場合、対数微分細孔容積分布曲線の微分曲線において、当該ショルダーに相当する部分には、正の極小値が存在する。当該極小値を与える細孔径を、対数微分細孔容積分布曲線の微分曲線から求め、求められた細孔径に相当する対数微分細孔容積を、対数微分細孔容積分布曲線から求める。求められた対数微分細孔容積が「ピーク値」に該当する。なお、対数微分細孔容積分布曲線において、あるピークの小細孔径側にショルダーが存在する場合、
図7Bに示すように、当該ショルダーは、通常、右上がりである。
【0114】
(P3)
図7Cに示すように、対数微分細孔容積分布曲線において、あるピークの大細孔径側にショルダーが存在する場合、対数微分細孔容積分布曲線の微分曲線において、当該ショルダーに相当する部分には、負の極大値が存在する。当該極大値を与える細孔径を、対数微分細孔容積分布曲線の微分曲線から求め、求められた細孔径に相当する対数微分細孔容積を、対数微分細孔容積分布曲線から求める。求められた対数微分細孔容積が「ピーク値」に該当する。なお、対数微分細孔容積分布曲線において、あるピークの大細孔径側にショルダーが存在する場合、
図7Cに示すように、当該ショルダーは、通常、右下がりである。
【0115】
上記の通り、対数微分細孔容積分布曲線における「ピーク値」には、当該曲線における極大値(頂点の対数微分細孔容積)に加えて、当該曲線におけるショルダーも包含される。すなわち、対数微分細孔容積分布曲線における「ピーク値」には、(P1)で定義されるピーク値(以下「ピーク値P1」という。)、(P2)で定義されるピーク値(以下「ピーク値P2」という。)及び(P3)で定義されるピーク値(以下「ピーク値P3」という。)が包含される。対数微分細孔容積分布曲線において、ピーク値P1、P2及びP3のうちの1種又は2種以上が存在していればよく、ピーク値P1、P2及びP3の全てが存在している必要はない。対数微分細孔容積分布曲線において、2つ以上のピーク値P1が存在していてもよいし、2つ以上のピーク値P2が存在していてもよいし、2つ以上のピーク値P3が存在していてもよい。
【0116】
<ピーク値A>
以下、「第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Aが存在する」について説明する。
【0117】
第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲に、1つのピーク値(当該1つのピーク値は、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい)が存在する場合、当該1つのピーク値が「ピーク値A」に該当する。
【0118】
第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲に、2つ以上のピーク値(各ピーク値は、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい)が存在する場合、当該2つ以上のピーク値のうち最大値が「ピーク値A」に該当する。
【0119】
ピーク値Aは、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい。一実施形態において、ピーク値P1又はP2である。
【0120】
<ピーク値B>
以下、「第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Bが存在する」について説明する。
【0121】
第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲に、1つのピーク値(当該1つのピーク値は、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい)が存在する場合、当該1つのピーク値が「ピーク値B」に該当する。
【0122】
第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲に、2つ以上のピーク値(各ピーク値は、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい)が存在する場合、当該2つ以上のピーク値のうち最大値が「ピーク値B」に該当する。
【0123】
ピーク値Bは、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい。一実施形態において、ピーク値P1又はP3である。
【0124】
<ピーク値C>
以下、「第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Cが存在する」について説明する。
【0125】
第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲に、1つのピーク値(当該1つのピーク値は、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい)が存在する場合、当該1つのピーク値が「ピーク値C」に該当する。
【0126】
第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲に、2つ以上のピーク値(各ピーク値は、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい)が存在する場合、当該2つ以上のピーク値のうち最大値が「ピーク値C」に該当する。
【0127】
ピーク値Cは、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい。一実施形態において、ピーク値P1又はP2である。
【0128】
<ピーク値D>
以下、「第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Dが存在する」について説明する。
【0129】
第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲に、1つのピーク値(当該1つのピーク値は、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい)が存在する場合、当該1つのピーク値が「ピーク値D」に該当する。
【0130】
第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲に、2つ以上のピーク値(各ピーク値は、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい)が存在する場合、当該2つ以上のピーク値のうち最大値が「ピーク値D」に該当する。
【0131】
ピーク値Dは、ピーク値P1、P2又はP3のいずれでもよい。一実施形態において、ピーク値P1又はP3である。
【0132】
<本発明のパラメータ>
本明細書において、
水銀圧入法により得られた第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Aが存在し、ピーク値Aが0.20mL/g以上である、という条件を「条件1」といい、
水銀圧入法により得られた第1触媒層20の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Bが存在し、ピーク値Bが0.20mL/g以上である、という条件を「条件2」といい、
水銀圧入法により得られた第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Cが存在し、ピーク値Cが0.20mL/g以上である、という条件を「条件3」といい、
水銀圧入法により得られた第2触媒層30の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Dが存在し、ピーク値Dが0.20mL/g以上である、という条件を「条件4」という。
【0133】
第2触媒層30は、条件3を満たし、条件4を満たさないか、条件4を満たし、条件3を満たさないか、条件3及び4を満たすか、又は、条件3及び4のいずれも満たさないことが好ましい。
【0134】
第2触媒層30が、条件3を満たし、条件4を満たさない場合、第1触媒層20は、条件1及び2のうち、少なくとも条件2を満たすことが好ましく、第2触媒層30が、条件4を満たし、条件3を満たさない場合、第1触媒層20は、条件1及び2のうち、少なくとも条件1を満たすことが好ましく、第2触媒層30が、条件3及び4を満たす場合、第1触媒層20は、条件1及び2の少なくとも一方を満たすか、又は、条件1及び2のいずれも満たさないことが好ましく、第2触媒層30が、条件3及び4のいずれも満たさない場合、第1触媒層20は、条件1及び2を満たすことが好ましい。
【0135】
すなわち、触媒1Aには、以下の(i)~(ix)の態様が包含される。
【0136】
【0137】
第1触媒層20及び第2触媒層30の細孔が小さいほど、PM捕集性能は向上するが、圧損が上昇する。一方、第1触媒層20及び第2触媒層30の細孔が大きいほど、圧損上昇は抑制されるが、PM捕集性能は低下する。したがって、第1触媒層20及び第2触媒層30の細孔を小さくする、又は、第1触媒層20及び第2触媒層30の細孔を大きくする、という1種の細孔径制御では、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立を実現することはできない。これに対して、上記態様(i)~(ix)では、第1触媒層20及び第2触媒層30が全体として、小さい細孔径に相当するピーク値A及び/又Cが0.20mL/g以上であるという条件を満たすとともに、大きい細孔径に相当するピーク値B及び/又はDが0.20mL/g以上であるという条件を満たす。これにより、PM捕集性能に寄与する細孔の量と圧損の低減に寄与する細孔の量を十分に確保することができ、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立を実現することができる。
【0138】
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第2触媒層30は、条件3を満たし、条件4を満たさないか、条件4を満たし、条件3を満たさないか、又は、条件3及び4を満たすことがより好ましく、第2触媒層30が、条件3を満たし、条件4を満たさない場合、第1触媒層20は、条件1及び2のうち、少なくとも条件2を満たすことがより好ましく、第2触媒層30が、条件4を満たし、条件3を満たさない場合、第1触媒層20は、条件1及び2のうち、少なくとも条件1を満たすことがより好ましく、第2触媒層30が、条件3及び4を満たす場合、第1触媒層20は、条件1及び2の少なくとも一方を満たすことがより好ましい。
【0139】
条件1において、ピーク値Aは、0.20mL/g以上である限り特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは0.31mL/g以上、より好ましくは0.40mL/g以上である。
【0140】
条件1において、ピーク値Aの上限は特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは1.00mL/g以下、より好ましくは0.80mL/g以下、より一層好ましくは0.50mL/g以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0141】
条件2において、ピーク値Bは、0.20mL/g以上である限り特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは0.30mL/g以上、より好ましくは0.42mL/g以上である。
【0142】
条件2において、ピーク値Bの上限は特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは1.00mL/g以下、より好ましくは0.80mL/g以下、より一層好ましくは0.50mL/g以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0143】
条件3において、ピーク値Cは、0.20mL/g以上である限り特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは0.31mL/g以上、より好ましくは0.40mL/g以上である。
【0144】
条件3において、ピーク値Cの上限は特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは1.00mL/g以下、より好ましくは0.80mL/g以下、より一層好ましくは0.50mL/g以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0145】
条件4において、ピーク値Dは、0.20mL/g以上である限り特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは0.30mL/g以上、より好ましくは0.42mL/g以上である。
【0146】
条件4において、ピーク値Dの上限は特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは1.00mL/g以下、より好ましくは0.80mL/g以下、より一層好ましくは0.50mL/g以下である。これらの上限はそれぞれ、上述の下限のいずれと組み合わせてもよい。
【0147】
<排ガス浄化用触媒の作用効果>
内燃機関から排出された排ガスは、排気管Pの一端から他端に向けて排気管P内の排気経路を流通し、排気管P内に配置された触媒1Aで浄化される。この際、流入側セル13aの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスは、第1触媒層20及び多孔質の隔壁部12を通過して、及び/又は、多孔質の隔壁部12及び第2触媒層30を通過して、及び/又は、第1触媒層20、多孔質の隔壁部12及び第2触媒層30を通過して、流出側セル13bの排ガス流出側の端部(開口部)から流出する。このような様式は、ウォールフロー型と呼ばれる。
【0148】
触媒1Aにおいて、流入側セル13aの排ガス流入側の端部(開口部)から流入した排ガスが、第1触媒層20及び多孔質の隔壁部12を通過して、多孔質の隔壁部12及び第2触媒層30を通過して、又は、第1触媒層20、多孔質の隔壁部12及び第2触媒層30を通過する際、排ガス中の粒子状物質(PM:Particulate Matter)は、隔壁部12の細孔、第1触媒層20の細孔及び/又は第2触媒層30の細孔に捕集される。したがって、触媒1Aは、ガソリンエンジン用のパティキュレートフィルタ(Gasoline Particulate Filter)又はディーゼルエンジン用のパティキュレートフィルタ(Diesel Particulate Filter)として有用である。
【0149】
上記態様(i)~(ix)では、第1触媒層20及び第2触媒層30が全体として、小さい細孔径に相当するピーク値A及び/又Cが0.20mL/g以上であるという条件を満たすとともに、大きい細孔径に相当するピーク値B及び/又はDが0.20mL/g以上であるという条件を満たす。これにより、2種類の細孔径制御を実現することができ、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立を実現することができる。
【0150】
<排ガス浄化用触媒の製造方法>
以下、触媒1Aを製造する方法の実施形態について説明する。本実施形態に係る方法で製造される触媒1Aには、上記態様(i)~(ix)以外の態様も包含される。本実施形態に係る方法は、上記態様(i)~(ix)の製造に適している。
【0151】
本実施形態に係る方法は、以下の工程:
(1a)第1造孔剤を含む第1スラリーを基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工して第1前駆層を形成する工程;
(1b)第2造孔剤を含む第2スラリーを基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工して第2前駆層を形成する工程;並びに
(1c)第1前駆層及び第2前駆層を焼成して、第1触媒層20及び第2触媒層30を形成する工程
を含む。工程(1a)は、工程(1b)の前に実施されてもよいし、工程(1b)の後に実施されてもよい。工程(1c)は、工程(1a)及び(1b)の後に実施される。
【0152】
<工程1a>
工程1aは、第1造孔剤を含む第1スラリーを基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工して第1前駆層を形成する工程である。
【0153】
第1スラリーは、第1造孔剤を含む。第1造孔材としては、例えば、架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子、架橋ポリ(メタ)アクリル酸ブチル粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋ポリアクリル酸エステル粒子、メラミン系樹脂等が挙げられる。
【0154】
第1スラリーの組成は、第1触媒層20の組成に応じて調整することができる。第1スラリーは、第1造孔剤に加えて、例えば、白金族元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダ、溶媒等を含む。白金族元素の供給源としては、例えば、白金族元素の塩が挙げられ、白金族元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。無機酸化物粒子を構成する無機酸化物に関する説明は、上記の通りである。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。1種の溶媒を使用してもよいし、2種以上の溶媒の混合物を使用してもよい。
【0155】
基材10の隔壁部12の排ガス流入側に(すなわち、隔壁部12の流入側セル13a側の外表面S1aに)、第1スラリーを塗工して乾燥させることにより、第1触媒層20の前駆体である第1前駆層が形成される。乾燥温度は、例えば40℃以上150℃以下、乾燥時間は、例えば5分以上1時間以下である。
【0156】
第1造孔材の粒径は、適宜調整することができる。第1造孔材のメジアン径D50は、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上15μm以下である。第1造孔材の粒径、量等を調整することにより、条件1又は2のいずれも満たさない第1触媒層20、条件1又は2のいずれか一方を満たす第1触媒層20、或いは、条件1及び2の両方を満たす第1触媒層20を形成することができる。
【0157】
D50は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法によって測定される体積基準の粒度分布において、累積体積が50%となる粒径である。D50の測定は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置自動試料供給機(マイクロトラック・ベル社製「Microtorac SDC」)を使用して、測定対象試料を水性分散媒に投入し、32.5mL/secの流速中、40Wの超音波を360秒間照射した後、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラック・ベル社製「マイクロトラックMT3300EXII」)を使用して行う。測定は、粒子屈折率を1.5、粒子形状を真球形、溶媒屈折率を1.3、セットゼロを30秒、測定時間を30秒の条件で、2回行い、得られた測定値の平均値をD50とする。水性分散媒としては純水を使用する。
【0158】
<工程1b>
工程1bは、第2造孔剤を含む第2スラリーを基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工して第2前駆層を形成する工程である。
【0159】
第2スラリーは、第2造孔剤を含む。第2造孔材の具体例は、第1造孔材の具体例と同様である。
【0160】
第2スラリーの組成は、第2触媒層30の組成に応じて調整することができる。第2スラリーは、第2造孔剤に加えて、例えば、白金族元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダ、溶媒等を含む。白金族元素の供給源としては、例えば、白金族元素の塩が挙げられ、白金族元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。無機酸化物粒子を構成する無機酸化物に関する説明は、上記の通りである。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。1種の溶媒を使用してもよいし、2種以上の溶媒の混合物を使用してもよい。
【0161】
基材10の隔壁部12の排ガス流出側に(すなわち、隔壁部12の流出側セル13b側の外表面S1bに)、第2スラリーを塗工して乾燥させることにより、第2触媒層30の前駆体である第2前駆層が形成される。乾燥温度は、例えば40℃以上150℃以下、乾燥時間は、例えば5分以上1時間以下である。
【0162】
第2造孔材の粒径は、適宜調整することができる。第2造孔材のメジアン径D50は、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上15μm以下である。第2造孔材の粒径、量等を調整することにより、条件3又は4のいずれも満たさない第2触媒層30、条件3又は4のいずれか一方を満たす第2触媒層30、或いは、条件3及び4の両方を満たす第2触媒層30を形成することができる。D50の意義及び測定方法は、上記と同様である。
【0163】
<工程1c>
工程1cは、第1前駆層及び第2前駆層を焼成して、第1触媒層20及び第2触媒層30を形成する工程である。
【0164】
第1前駆層及び第2前駆層の焼成により、それぞれ、第1触媒層20及び第2触媒層30が形成される。焼成温度は、例えば350℃以上600℃以下、焼成時間は、例えば20分以上5時間以下である。焼成時の雰囲気は、通常、大気雰囲気である。
【0165】
第1前駆層の焼成により、第1造孔剤が消失して、第1触媒層20に細孔が形成される。第2前駆層の焼成により、第2造孔剤が消失して、第2触媒層30に細孔が形成される。第1造孔材及び第2造孔材の粒径、量等を調整することにより、第1触媒層20及び第2触媒層30の対数微分細孔容積分布を調整することができる。
【0166】
本実施形態に係る方法は、以下の条件(C1)~(C7)を満たすことが好ましい。これにより、PM捕集性能に寄与する細孔の量と圧損の低減に寄与する細孔の量を十分に確保することができ、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立を実現することができる。本実施形態に係る方法が、以下の条件(C1)~(C7)を満たす場合、本実施形態に係る方法は、上記態様(i)~(ix)の製造に特に適している。
(C1)第1造孔剤及び第2造孔剤のうち、一方のメジアン径D50が4μm超であり、他方のメジアン径D50が4μm以下である。
(C2)第1スラリーが、無機酸化物粒子を含み、第1スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下である。
(C3)第1前駆層に含まれる第1造孔剤の量が、第1触媒層20の質量(焼成後の質量)を基準として、10質量%以上60質量%以下である。
(C4)基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量(焼成後の質量)が、5g/L以上150g/L以下である。
(C5)第2スラリーが、無機酸化物粒子を含み、第2スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下である。
(C6)第2前駆層に含まれる第2造孔剤の量が、第2触媒層30の質量(焼成後の質量)を基準として、10質量%以上60質量%以下である。
(C7)基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量(焼成後の質量)が、5g/L以上150g/L以下である。
【0167】
以下、条件(C1)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、一方の造孔剤のD50は、より好ましくは4.5μm以上20μm以下、より一層好ましくは4.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは4.5μm以上15μm以下である。
【0168】
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、他方の造孔剤のD50は、より好ましくは0.1μm以上4μm以下、より一層好ましくは0.5μm以上4μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上4μm以下である。
【0169】
以下、条件(C2)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第1スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50は、より好ましくは1.5μm以上15μm以下、より一層好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0170】
以下、条件(C3)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第1前駆層に含まれる第1造孔剤の量は、第1触媒層20の質量(焼成後の質量)を基準として、より好ましくは20質量%以上50質量%以下、より一層好ましくは25質量%以上45質量%以下である。第1前駆層に含まれる第1造孔剤の量は、第1スラリーに含まれる第1造孔剤の量、基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工される第1スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。なお、第1触媒層20の質量は、基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工された第1スラリーの質量から、第1スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0171】
以下、条件(C4)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量(焼成後の質量)は、より好ましくは10g/L以上100g/L以下、より一層好ましくは25g/L以上70g/L以下である。基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量は、基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工される第1スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。
【0172】
以下、条件(C5)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第2スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50は、より好ましくは1.5μm以上15μm以下、より一層好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0173】
以下、条件(C6)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第2前駆層に含まれる第2造孔剤の量は、第2触媒層30の質量(焼成後の質量)を基準として、より好ましくは20質量%以上50質量%以下、より一層好ましくは25質量%以上45質量%以下である。第2前駆層に含まれる第2造孔剤の量は、第2スラリーに含まれる第2造孔剤の量、基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工される第2スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。なお、第2触媒層30の質量は、基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工された第2スラリーの質量から、第2スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0174】
以下、条件(C7)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量(焼成後の質量)は、より好ましくは10g/L以上100g/L以下、より一層好ましくは25g/L以上70g/L以下である。基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量は、基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工される第2スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。
【0175】
≪第2実施形態≫
以下、
図8及び9に基づいて、本発明の第2実施形態を説明する。
【0176】
図8及び9に示すように、第2実施形態に係る排ガス浄化用触媒1B(以下「触媒1B」という。)は、第2触媒層30が、単層構造に代えて、下層31及び上層32を含む積層構造を有する点で、触媒1Aと相違する。なお、下層は、上層よりも隔壁部12側に位置する層である。第2触媒層30が積層構造である場合、第2触媒層30が単層構造である場合と比較して、PM捕集性能を向上させることができる。
【0177】
触媒1Bにおいて、触媒1Aと同一の部材は、触媒1Aと同一の符号で示されている。以下で別段規定される場合を除き、触媒1Aに関する上記説明は、触媒1Bにも適用される。適用の際、「触媒1A」は「触媒1B」に読み替えられる。
【0178】
触媒1Bにおいて、第2触媒層30の対数微分細孔容積分布は、下層31の対数微分細孔容積分布と、上層32の対数微分細孔容積分布との総和である。
【0179】
水銀圧入法を実施する際に使用される切断片M2は、隔壁部12の一部及び第2触媒層30の一部(下層31の一部及び上層32の一部)を含むが、第1触媒層20を含まない。切断片M2に関するその他の点は、上記と同様である。
【0180】
<下層>
図8及び9に示すように、下層31は、隔壁部12の流出側セル13b側に設けられている。
【0181】
図8及び9に示すように、下層31は、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Eとは反対の方向に沿って延在している。本実施形態において、下層31は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至っていないが、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至っていてもよい。
【0182】
図8及び9に示すように、下層31の少なくとも一部は、隔壁部12の外表面S1bから流出側セル13b側に隆起していること、すなわち、下層31は、隔壁部12の外表面S1bから流出側セル13b側に隆起する部分(以下「隆起部分」という。)を有することが好ましい。これにより、排ガス及びPMの接触性が向上し、排ガス浄化性能の向上及びPM捕集性能の向上をより効果的に実現することができる。
【0183】
下層31は、隆起部分のみで構成されていてもよいし、隆起部分とともに、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)を有していてもよい。隔壁部12は多孔質であるため、下層31を形成する際、隆起部分とともに内在部分が形成される場合がある。隆起部分と内在部分とは、連続していてもよい。下層31は内在部分のみで構成されていてもよい。「下層31が、隔壁部12の流出側セル13b側に設けられている」には、下層31が隆起部分のみで構成されている実施形態、下層31が内在部分のみで構成されている実施形態、並びに、下層31が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれもが包含される。
【0184】
第1触媒層20の隆起部分及び内在部分の特定方法に関する上記説明は、下層31にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層31」に読み替えられる。
【0185】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち下層31が形成されている部分の単位体積当たりの下層31の質量(焼成後の質量)は、好ましくは5g/L以上90g/L以下、より好ましくは10g/L以上70g/L以下、より一層好ましくは15g/L以上50g/L以下である。基材10のうち下層31が形成されている部分の単位体積当たりの下層31の質量は、式:(下層31の質量)/((基材10の体積)×(下層31の平均長さL31/基材10の長さL10))から算出される。
【0186】
第1触媒層20の質量に関する上記説明は、下層31にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層31」に読み替えられる。
【0187】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法に関する上記説明は、下層31の平均長さL31の測定方法にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層31」に、「平均長さL20」は「平均長さL31」に読み替えられる。但し、下層31の平均長さL31の測定方法では、サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流出側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。
【0188】
下層31の平均長さL31は、排ガス浄化性能、PM捕集性能等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する下層31の平均長さL31の百分率(L31/L10×100)は、好ましくは15%以上90%以下、より好ましくは20%以上90%以下、より一層好ましくは30%以上85%以下である。
【0189】
排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する、第1触媒層20の平均長さL20と下層31の平均長さL31との合計の百分率((L20+L31)/L10×100)は、好ましくは100%以上180%以下、より好ましくは100%以上170%以下、より一層好ましくは105%以上150%以下である。
【0190】
下層31は、1種又は2種以上の白金族元素を含む。第1触媒層20に含まれる白金族元素及びその金属換算量に関する上記説明は、下層31に含まれる白金族元素及びその金属換算量にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層31」に読み替えられる。
【0191】
一実施形態において、下層31は、Pdを含む。下層31は、Pdに加えて、1種又は2種以上のその他の白金族元素を含んでいてもよい。下層31がPdを含む実施形態は、第1触媒層20がRhを含む実施形態と組み合わせることができる。
【0192】
下層31は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。担持の意義及び確認方法は、上記と同様である。
【0193】
第1触媒層20に含まれる担体に関する上記説明は、下層31に含まれる担体にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層31」に読み替えられる。
【0194】
下層31は、バインダ、安定剤等のその他の成分を含んでいてもよい。バインダ及び安定剤に関する説明は、上記と同様である。
【0195】
<上層>
図8及び9に示すように、上層32は、下層31上に設けられている。
【0196】
「上層32が下層31上に設けられている」とは、下層31の2つの主面のうち、隔壁部12側の主面とは反対側の主面上に、上層32の一部又は全部が存在することを意味する。「下層31の主面」は、排ガス流通方向Eに延在する下層31の外表面を意味する。上層32は、下層31の主面上に、直接設けられていてもよいし、別の層を介して設けられていてもよいが、通常、下層31の主面上に直接設けられている。上層32は、下層31の主面の一部を覆うように設けられていてもよいし、下層31の主面の全体を覆うように設けられていてもよい。「上層32が下層31上に設けられている」には、上層32が下層31の主面上に直接設けられている実施形態、及び、上層32が下層31の主面上に別の層を介して設けられている実施形態のいずれもが包含される。
【0197】
図8及び9に示すように、上層32は、隔壁部12の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向Eとは反対の方向に沿って延在している。本実施形態において、上層32は、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至っていないが、隔壁部12の排ガス流入側の端部に至っていてもよい。
【0198】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち上層32が形成されている部分の単位体積当たりの上層32の質量(焼成後の質量)は、好ましくは5g/L以上60g/L以下、より好ましくは5g/L以上40g/L以下、より一層好ましくは5g/L以上30g/L以下である。基材10のうち上層32が形成されている部分の単位体積当たりの上層32の質量は、式:(上層32の質量)/((基材10の体積)×(上層32の平均長さL32/基材10の長さL10))から算出される。
【0199】
第1触媒層20の質量に関する上記説明は、上層32にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層32」に読み替えられる。
【0200】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法に関する上記説明は、上層32の平均長さL32の測定方法にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層32」に、「平均長さL20」は「平均長さL32」に読み替えられる。但し、上層32の平均長さL32の測定方法では、サンプルを基材10の軸方向と垂直な平面によって5mm間隔で切断し、サンプルの排ガス流出側の端部側から順に、第1切断片、第2切断片、・・・、第n切断片を得る。
【0201】
上層32の平均長さL32は、排ガス浄化性能、PM捕集性能等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する上層32の平均長さL32の百分率(L32/L10×100)は、好ましくは15%以上90%以下、より好ましくは20%以上90%以下、より一層好ましくは30%以上85%以下である。
【0202】
排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する、第1触媒層20の平均長さL20と上層32の平均長さL32との合計の百分率((L20+L32)/L10×100)は、好ましくは100%以上180%以下、より好ましくは100%以上170%以下、より一層好ましくは105%以上150%以下である。
【0203】
上層32は、1種又は2種以上の白金族元素を含む。第1触媒層20に含まれる白金族元素及びその金属換算量に関する上記説明は、上層32に含まれる白金族元素及びその金属換算量にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層32」に読み替えられる。
【0204】
一実施形態において、上層32は、Rhを含む。上層32は、Rhに加えて、1種又は2種以上のその他の白金族元素を含んでいてもよい。上層32がRhを含む実施形態は、第1触媒層20がRhを含む実施形態、及び/又は、下層31がPdを含む実施形態と組み合わせることができる。
【0205】
上層32は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。担持の意義及び確認方法は、上記と同様である。
【0206】
第1触媒層20に含まれる担体に関する上記説明は、上層32に含まれる担体にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層32」に読み替えられる。
【0207】
上層32は、バインダ、安定剤等のその他の成分を含んでいてもよい。バインダ及び安定剤に関する説明は、上記と同様である。
【0208】
<排ガス浄化用触媒の製造方法>
以下、触媒1Bを製造する方法の実施形態について説明する。本実施形態に係る方法で製造される触媒1Bには、上記態様(i)~(ix)以外の態様も包含される。本実施形態に係る方法は、上記態様(i)~(ix)の製造に適している。
【0209】
本実施形態に係る方法は、以下の工程:
(2a)第1造孔剤を含む第1スラリーを基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工して第1前駆層を形成する工程;
(2b)第3造孔剤を含む第3スラリーを基材の隔壁部12の流出側セル側に塗工して第3前駆層を形成する工程;
(2c)第4造孔剤を含む第4スラリーを第3前駆層上に塗工して第4前駆層を形成する工程;並びに
(2d)第1前駆層、第3前駆層及び第4前駆層を焼成して、第1触媒層20、第2触媒層30の下層31及び第2触媒層30の上層32を形成する工程
を含む。工程(2a)は、工程(2b)~(2c)の前に実施されてもよいし、工程(2b)~(2c)の後に実施されてもよい。工程(2b)は、工程(2c)の前に実施される。工程(2d)は、工程(2a)~(2c)の後に実施される。
【0210】
<工程2a>
工程2aは、第1造孔剤を含む第1スラリーを基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工して第1前駆層を形成する工程である。
【0211】
工程2aは、工程1aと同様にして実施することができる。工程1aに関する上記説明は、工程2aにも適用される。
【0212】
<工程2b>
工程2bは、第3造孔剤を含む第3スラリーを基材の隔壁部12の流出側セル側に塗工して第3前駆層を形成する工程である。
【0213】
第3スラリーは、第3造孔剤を含む。第3造孔材の具体例は、第1造孔材の具体例と同様である。
【0214】
第3スラリーの組成は、第2触媒層30の下層31の組成に応じて調整することができる。第3スラリーは、第3造孔剤に加えて、例えば、白金族元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダ、溶媒等を含む。白金族元素の供給源としては、例えば、白金族元素の塩が挙げられ、白金族元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。無機酸化物粒子を構成する無機酸化物に関する説明は、上記の通りである。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。1種の溶媒を使用してもよいし、2種以上の溶媒の混合物を使用してもよい。
【0215】
基材10の隔壁部12の排ガス流出側に(すなわち、隔壁部12の流出側セル13b側の外表面S1bに)、第3スラリーを塗工して乾燥させることにより、第2触媒層30の下層31の前駆体である第3前駆層が形成される。乾燥温度は、例えば40℃以上150℃以下、乾燥時間は、例えば5分以上1時間以下である。
【0216】
第3造孔材の粒径は、適宜調整することができる。第3造孔材のメジアン径D50は、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上15μm以下である。第3造孔材の粒径、量等を調整することにより、条件3又は4のいずれも満たさない下層31、条件3又は4のいずれか一方を満たす下層31、或いは、条件3及び4の両方を満たす下層31を形成することができる。D50の意義及び測定方法は、上記と同様である。
【0217】
<工程2c>
工程2cは、第4造孔剤を含む第4スラリーを第3前駆層上に塗工して第4前駆層を形成する工程である。
【0218】
第4スラリーは、第4造孔剤を含む。第4造孔材の具体例は、第1造孔材の具体例と同様である。
【0219】
第4スラリーの組成は、第2触媒層30の上層32の組成に応じて調整することができる。第4スラリーは、第4造孔剤に加えて、例えば、白金族元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダ、溶媒等を含む。白金族元素の供給源としては、例えば、白金族元素の塩が挙げられ、白金族元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。無機酸化物粒子を構成する無機酸化物に関する説明は、上記の通りである。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。1種の溶媒を使用してもよいし、2種以上の溶媒の混合物を使用してもよい。
【0220】
第3前駆層上に第4スラリーを塗工して乾燥させることにより、第2触媒層30の上層32の前駆体である第4前駆層が形成される。乾燥温度は、例えば40℃以上150℃以下、乾燥時間は、例えば5分以上1時間以下である。
【0221】
第4造孔材の粒径は、適宜調整することができる。第4造孔材のメジアン径D50は、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上15μm以下である。第4造孔材の粒径、量等を調整することにより、条件3又は4のいずれも満たさない上層32、条件3又は4のいずれか一方を満たす上層32、或いは、条件3及び4の両方を満たす上層32を形成することができる。第3造孔材の粒径、量等及び/又は第4造孔材の粒径、量等を調整することにより、条件3又は4のいずれも満たさない第2触媒層30、条件3又は4のいずれか一方を満たす第2触媒層30、或いは、条件3及び4の両方を満たす第2触媒層30を形成することができる。D50の意義及び測定方法は、上記と同様である。
【0222】
<工程2d>
工程2dは、第1前駆層、第3前駆層及び第4前駆層を焼成して、第1触媒層20、第2触媒層30の下層31及び第2触媒層30の上層32を形成する工程である。
【0223】
第1前駆層、第3前駆層及び第4前駆層の焼成により、それぞれ、第1触媒層20、第2触媒層30の下層31及び第2触媒層30の上層32が形成される。焼成温度は、例えば350℃以上600℃以下、焼成時間は、例えば20分以上5時間以下である。焼成時の雰囲気は、通常、大気雰囲気である。
【0224】
第1前駆層の焼成により、第1造孔剤が消失して、第1触媒層20に細孔が形成される。第3前駆層の焼成により、第3造孔剤が消失して、第2触媒層30の下層31に細孔が形成される。第4前駆層の焼成により、第4造孔剤が消失して、第2触媒層30の上層32に細孔が形成される。第1造孔材、第3造孔材及び第4造孔材の粒径、量等を調整することにより、第1触媒層20及び第2触媒層30の対数微分細孔容積分布を調整することができる。
【0225】
本実施形態に係る方法は、以下の条件(D1)~(D10)を満たすことが好ましい。これにより、PM捕集性能に寄与する細孔の量と圧損の低減に寄与する細孔の量を十分に確保することができ、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立を実現することができる。本実施形態に係る方法が、以下の条件(D1)~(D10)を満たす場合、本実施形態に係る方法は、上記態様(i)~(ix)の製造に特に適している。
(D1)第1造孔剤、第3造孔剤及び第4造孔剤のうち、1つ又は2つのメジアン径D50が4μm超であり、残りの2つ又は1つのメジアン径D50が4μm以下である。
(D2)第1スラリーが、無機酸化物粒子を含み、第1スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下である。
(D3)第1前駆層に含まれる第1造孔剤の量が、第1触媒層20の質量(焼成後の質量)を基準として、10質量%以上60質量%以下である。
(D4)基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量(焼成後の質量)が、5g/L以上150g/L以下である。
(D5)第3スラリーが、無機酸化物粒子を含み、第3スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下である。
(D6)第3前駆層に含まれる第3造孔剤の量が、下層31の質量(焼成後の質量)を基準として、10質量%以上60質量%以下である。
(D7)基材10のうち下層31が形成されている部分の単位体積当たりの下層31の質量(焼成後の質量)が、5g/L以上90g/L以下である。
(D8)第4スラリーが、無機酸化物粒子を含み、第4スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下である。
(D9)第4前駆層に含まれる第4造孔剤の量が、上層32の質量(焼成後の質量)を基準として、10質量%以上60質量%以下である。
(D10)基材10のうち上層32が形成されている部分の単位体積当たりの上層32の質量(焼成後の質量)が、5g/L以上60g/L以下である。
【0226】
以下、条件(D1)について説明する。
第1造孔剤、第3造孔剤及び第4造孔剤のうち、1つのメジアン径D50が4μm超である場合、残りの2つのメジアン径D50は4μm以下である。第1造孔剤、第3造孔剤及び第4造孔剤のうち、2つのメジアン径D50が4μm超である場合、残りの1つのメジアン径D50は4μm以下である。
【0227】
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第1造孔剤、第3造孔剤及び第4造孔剤のうち、1つ又は2つのメジアン径の造孔剤のD50は、より好ましくは4.5μm以上20μm以下、より一層好ましくは4.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは4.5μm以上15μm以下である。
【0228】
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、残りの2つ又は1つの造孔剤のD50は、より好ましくは0.1μm以上4μm以下、より一層好ましくは0.5μm以上4μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上4μm以下である。
【0229】
以下、条件(D2)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第1スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50は、より好ましくは1.5μm以上15μm以下、より一層好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0230】
以下、条件(D3)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第1前駆層に含まれる第1造孔剤の量は、第1触媒層20の質量(焼成後の質量)を基準として、より好ましくは20質量%以上50質量%以下、より一層好ましくは25質量%以上45質量%以下である。第1前駆層に含まれる第1造孔剤の量は、第1スラリーに含まれる第1造孔剤の量、基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工される第1スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。なお、第1触媒層20の質量は、基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工された第1スラリーの質量から、第1スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0231】
以下、条件(D4)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量(焼成後の質量)は、より好ましくは10g/L以上100g/L以下、より一層好ましくは25g/L以上70g/L以下である。基材10のうち第1触媒層20が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層20の質量は、基材10の隔壁部12の流入側セル側に塗工される第1スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。
【0232】
以下、条件(D5)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第3スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50は、より好ましくは1.5μm以上15μm以下、より一層好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0233】
以下、条件(D6)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第3前駆層に含まれる第3造孔剤の量は、下層31の質量(焼成後の質量)を基準として、より好ましくは20質量%以上50質量%以下、より一層好ましくは25質量%以上45質量%以下である。第3前駆層に含まれる第3造孔剤の量は、第3スラリーに含まれる第3造孔剤の量、基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工される第3スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。なお、下層31の質量は、基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工された第3スラリーの質量から、第3スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0234】
以下、条件(D7)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、基材10のうち下層31が形成されている部分の単位体積当たりの下層31の質量(焼成後の質量)は、より好ましくは10g/L以上70g/L以下、より一層好ましくは15g/L以上50g/L以下である。基材10のうち下層31が形成されている部分の単位体積当たりの下層31の質量は、基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工される第3スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。
【0235】
以下、条件(D8)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第4スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50は、より好ましくは1.5μm以上15μm以下、より一層好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0236】
以下、条件(D9)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、第4前駆層に含まれる第4造孔剤の量は、上層32の質量(焼成後の質量)を基準として、より好ましくは20質量%以上50質量%以下、より一層好ましくは25質量%以上45質量%以下である。第4前駆層に含まれる第4造孔剤の量は、第4スラリーに含まれる第4造孔剤の量、第3前駆層上に塗工される第4スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。なお、上層32の質量は、第3前駆層上に塗工された第4スラリーの質量から、第4スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0237】
以下、条件(D10)について説明する。
PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、基材10のうち上層32が形成されている部分の単位体積当たりの上層32の質量(焼成後の質量)は、より好ましくは5g/L以上40g/L以下、より一層好ましくは5g/L以上30g/L以下である。基材10のうち上層32が形成されている部分の単位体積当たりの上層32の質量は、第3前駆層上に塗工される第4スラリーの量等を調整することにより、調整することができる。
【0238】
第3造孔剤のメジアン径D50が、第4造孔剤のメジアン径D50よりも大きい場合、第3スラリーが隔壁部12内の細孔に入り込みにくくなり、下層31の少なくとも一部が、隔壁部12の外表面S1bから流出側セル13b側に隆起している実施形態(すなわち、下層31が、隔壁部12の外表面S1bから流出側セル13b側に隆起する部分を有する実施形態)を実現しやすくなる。したがって、メジアン径D50が4μm超である造孔剤と、メジアン径D50が4μm以下である造孔剤とを使用する場合、メジアン径D50が4μm超である造孔剤を第3造孔剤として使用し、メジアン径D50が4μm以下である造孔剤を第4造孔剤として使用することが好ましい。
【0239】
第3造孔剤のメジアン径D50が4μm超であり、第4造孔剤のメジアン径D50が4μm以下である場合、第2触媒層30においてPM捕集性能に寄与する細孔の量及び/又は圧損の低減に寄与する細孔の量を十分に確保することができる。また、第3造孔剤のメジアン径D50が4μm超であり、第4造孔剤のメジアン径D50が4μm以下である場合、条件3又は4のいずれか一方を満たす第2触媒層30、或いは、条件3及び4の両方を満たす第2触媒層30、特に、条件3及び4の両方を満たす第2触媒層30をより効率よく形成することができる。
【0240】
第3造孔剤のD50は、4μm超である限り特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは4.5μm以上20μm以下、より好ましくは4.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは4.5μm以上15μm以下である。
【0241】
第4造孔剤のD50は、4μm以下ある限り特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは0.1μm以上4μm以下、より好ましくは0.5μm以上4μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上4μm以下である。
【0242】
≪第3実施形態≫
以下、
図10及び11に基づいて、本発明の第3実施形態を説明する。
【0243】
図10及び11に示すように、第3実施形態に係る排ガス浄化用触媒1C(以下「触媒1C」という。)は、第1触媒層20が、単層構造に代えて、下層21及び上層22を含む積層構造を有する点で、触媒1Aと相違する。なお、下層は、上層よりも隔壁部12側に位置する層である。第1触媒層20が積層構造である場合、第1触媒層20が単層構造である場合と比較して、PM捕集性能を向上させることができる。
【0244】
触媒1Cにおいて、触媒1Aと同一の部材は、触媒1Aと同一の符号で示されている。以下で別段規定される場合を除き、触媒1Aに関する上記説明は、触媒1Cにも適用される。適用の際、「触媒1A」は「触媒1C」に読み替えられる。
【0245】
触媒1Cにおいて、第1触媒層20の対数微分細孔容積分布は、下層21の対数微分細孔容積分布と、上層22の対数微分細孔容積分布との総和である。
【0246】
水銀圧入法を実施する際に使用される切断片M1は、隔壁部12の一部及び第1触媒層20の一部(下層21の一部及び上層22の一部)を含むが、第2触媒層30を含まない。切断片M1に関するその他の点は、上記と同様である。
【0247】
<下層>
図10及び11に示すように、下層21は、隔壁部12の流入側セル13a側に設けられている。
【0248】
図10及び11に示すように、下層21は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Eに沿って延在している。本実施形態において、下層21は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至っていないが、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至っていてもよい。
【0249】
図10及び11に示すように、下層21の少なくとも一部は、隔壁部12の外表面S1aから流入側セル13a側に隆起していること、すなわち、下層21は、隔壁部12の外表面S1aから流入側セル13a側に隆起する部分(以下「隆起部分」という。)を有することが好ましい。これにより、排ガス及びPMの接触性が向上し、排ガス浄化性能の向上及びPM捕集性能の向上をより効果的に実現することができる。
【0250】
下層21は、隆起部分のみで構成されていてもよいし、隆起部分とともに、隔壁部12の内部に存在する部分(以下「内在部分」という。)を有していてもよい。隔壁部12は多孔質であるため、下層21を形成する際、隆起部分とともに内在部分が形成される場合がある。隆起部分と内在部分とは、連続していてもよい。下層21は内在部分のみで構成されていてもよい。「下層21が、隔壁部12の流入側セル13a側に設けられている」には、下層21が隆起部分のみで構成されている実施形態、下層21が内在部分のみで構成されている実施形態、並びに、下層21が隆起部分及び内在部分を有する実施形態のいずれもが包含される。
【0251】
第1触媒層20の隆起部分及び内在部分の特定方法に関する上記説明は、下層21にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層21」に読み替えられる。
【0252】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち下層21が形成されている部分の単位体積当たりの下層21の質量(焼成後の質量)は、好ましくは5g/L以上90g/L以下、より好ましくは10g/L以上70g/L以下、より一層好ましくは15g/L以上50g/L以下である。基材10のうち下層21が形成されている部分の単位体積当たりの下層21の質量は、式:(下層21の質量)/((基材10の体積)×(下層21の平均長さL21/基材10の長さL10))から算出される。
【0253】
第1触媒層20の質量に関する上記説明は、下層21にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層21」に読み替えられる。
【0254】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法に関する上記説明は、下層21の平均長さL21の測定方法にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層21」に、「平均長さL20」は「平均長さL21」に読み替えられる。
【0255】
下層21の平均長さL21は、排ガス浄化性能、PM捕集性能等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する下層21の平均長さL21の百分率(L21/L10×100)は、好ましくは15%以上90%以下、より好ましくは20%以上90%以下、より一層好ましくは30%以上85%以下である。
【0256】
排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する、第2触媒層30の平均長さL30と下層21の平均長さL21との合計の百分率((L30+L21)/L10×100)は、好ましくは100%以上180%以下、より好ましくは100%以上170%以下、より一層好ましくは105%以上150%以下である。
【0257】
下層21は、1種又は2種以上の白金族元素を含む。第1触媒層20に含まれる白金族元素及びその金属換算量に関する上記説明は、下層21に含まれる白金族元素及びその金属換算量にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層21」に読み替えられる。
【0258】
一実施形態において、下層21は、Pdを含む。下層21は、Pdに加えて、1種又は2種以上のその他の白金族元素を含んでいてもよい。下層21がPdを含む実施形態は、第2触媒層30がRhを含む実施形態と組み合わせることができる。
【0259】
下層21は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。担持の意義及び確認方法は、上記と同様である。
【0260】
第1触媒層20に含まれる担体に関する上記説明は、下層21に含まれる担体にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「下層21」に読み替えられる。
【0261】
下層21は、バインダ、安定剤等のその他の成分を含んでいてもよい。バインダ及び安定剤に関する説明は、上記と同様である。
【0262】
<上層>
図10及び11に示すように、上層22は、下層21上に設けられている。
【0263】
「上層22が下層21上に設けられている」とは、下層21の2つの主面のうち、隔壁部12側の主面とは反対側の主面上に、上層22の一部又は全部が存在することを意味する。「下層21の主面」は、排ガス流通方向Eに延在する下層21の外表面を意味する。上層22は、下層21の主面上に、直接設けられていてもよいし、別の層を介して設けられていてもよいが、通常、下層21の主面上に直接設けられている。上層22は、下層21の主面の一部を覆うように設けられていてもよいし、下層21の主面の全体を覆うように設けられていてもよい。「上層22が下層21上に設けられている」には、上層22が下層21の主面上に直接設けられている実施形態、及び、上層22が下層21の主面上に別の層を介して設けられている実施形態のいずれもが包含される。
【0264】
図10及び11に示すように、上層22は、隔壁部12の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向Eに沿って延在している。本実施形態において、上層22は、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至っていないが、隔壁部12の排ガス流出側の端部に至っていてもよい。
【0265】
排ガス浄化性能とコストとをバランスよく実現する観点から、基材10のうち上層22が形成されている部分の単位体積当たりの上層22の質量(焼成後の質量)は、好ましくは5g/L以上60g/L以下、より好ましくは5g/L以上40g/L以下、より一層好ましくは5g/L以上30g/L以下である。基材10のうち上層22が形成されている部分の単位体積当たりの上層22の質量は、式:(上層22の質量)/((基材10の体積)×(上層22の平均長さL22/基材10の長さL10))から算出される。
【0266】
第1触媒層20の質量に関する上記説明は、上層22にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層22」に読み替えられる。
【0267】
第1触媒層20の平均長さL20の測定方法に関する上記説明は、上層22の平均長さL22の測定方法にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層22」に、「平均長さL20」は「平均長さL22」に読み替えられる。
【0268】
上層22の平均長さL22は、排ガス浄化性能、PM捕集性能等を考慮して適宜調整することができる。排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する上層22の平均長さL22の百分率(L22/L10×100)は、好ましくは15%以上90%以下、より好ましくは20%以上90%以下、より一層好ましくは30%以上85%以下である。
【0269】
排ガス浄化性能及びPM捕集性能を向上させる観点から、基材10の長さL10に対する、第2触媒層30の平均長さL30と上層22の平均長さL22との合計の百分率((L30+L22)/L10×100)は、好ましくは100%以上180%以下、より好ましくは100%以上170%以下、より一層好ましくは105%以上150%以下である。
【0270】
上層22は、1種又は2種以上の白金族元素を含む。第1触媒層20に含まれる白金族元素及びその金属換算量に関する上記説明は、上層22に含まれる白金族元素及びその金属換算量にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層22」に読み替えられる。
【0271】
一実施形態において、上層22は、Rhを含む。上層22は、Rhに加えて、1種又は2種以上のその他の白金族元素を含んでいてもよい。上層22がRhを含む実施形態は、第2触媒層30がRhを含む実施形態、及び/又は、下層21がPdを含む実施形態と組み合わせることができる。
【0272】
上層22は、1種又は2種以上の担体を含み、触媒活性成分の少なくとも一部は、1種又は2種以上の担体に担持されていることが好ましい。担持の意義及び確認方法は、上記と同様である。
【0273】
第1触媒層20に含まれる担体に関する上記説明は、上層22に含まれる担体にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」は「上層22」に読み替えられる。
【0274】
上層22は、バインダ、安定剤等のその他の成分を含んでいてもよい。バインダ及び安定剤に関する説明は、上記と同様である。
【0275】
<排ガス浄化用触媒の製造方法>
以下、触媒1Cを製造する方法の実施形態について説明する。本実施形態に係る方法で製造される触媒1Cには、上記態様(i)~(ix)以外の態様も包含される。本実施形態に係る方法は、上記態様(i)~(ix)の製造に適している。
【0276】
本実施形態に係る方法は、以下の工程:
(3a)第2造孔剤を含む第2スラリーを基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工して第2前駆層を形成する工程;
(3b)第5造孔剤を含む第5スラリーを基材の隔壁部12の流入側セル側に塗工して第5前駆層を形成する工程;
(3c)第6造孔剤を含む第6スラリーを第5前駆層上に塗工して第6前駆層を形成する工程;並びに
(3d)第2前駆層、第5前駆層及び第6前駆層を焼成して、第2触媒層30、第1触媒層20の下層21及び第1触媒層20の上層22を形成する工程
を含む。工程(3a)は、工程(3b)~(3c)の前に実施されてもよいし、工程(3b)~(3c)の後に実施されてもよい。工程(3b)は、工程(3c)の前に実施される。工程(3d)は、工程(3a)~(3c)の後に実施される。
【0277】
<工程3a>
工程3aは、第2造孔剤を含む第2スラリーを基材10の隔壁部12の流出側セル側に塗工して第2前駆層を形成する工程である。
【0278】
工程3aは、工程1bと同様にして実施することができる。工程1bに関する上記説明は、工程3aにも適用される。
【0279】
<工程3b>
工程3bは、第5造孔剤を含む第5スラリーを基材の隔壁部12の流入側セル側に塗工して第5前駆層を形成する工程である。
【0280】
第5スラリーは、第5造孔剤を含む。第5造孔材の具体例は、第1造孔材の具体例と同様である。
【0281】
第5スラリーの組成は、第1触媒層20の下層21の組成に応じて調整することができる。第5スラリーは、第5造孔剤に加えて、例えば、白金族元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダ、溶媒等を含む。白金族元素の供給源としては、例えば、白金族元素の塩が挙げられ、白金族元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。無機酸化物粒子を構成する無機酸化物に関する説明は、上記の通りである。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。1種の溶媒を使用してもよいし、2種以上の溶媒の混合物を使用してもよい。
【0282】
基材10の隔壁部12の排ガス流入側に(すなわち、隔壁部12の流入側セル13a側の外表面S1aに)、第5スラリーを塗工して乾燥させることにより、第1触媒層20の下層21の前駆体である第5前駆層が形成される。乾燥温度は、例えば40℃以上150℃以下、乾燥時間は、例えば5分以上1時間以下である。
【0283】
第5造孔材の粒径は、適宜調整することができる。第5造孔材のメジアン径D50は、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上15μm以下である。第5造孔材の粒径、量等を調整することにより、条件1又は2のいずれも満たさない下層21、条件1又は2のいずれか一方を満たす下層21、或いは、条件1及び2の両方を満たす下層21を形成することができる。D50の意義及び測定方法は、上記と同様である。
【0284】
<工程3c>
工程3cは、第6造孔剤を含む第6スラリーを第5前駆層上に塗工して第6前駆層を形成する工程である。
【0285】
第6スラリーは、第6造孔剤を含む。第6造孔材の具体例は、第1造孔材の具体例と同様である。
【0286】
第6スラリーの組成は、第1触媒層20の上層22の組成に応じて調整することができる。第6スラリーは、第6造孔剤に加えて、例えば、白金族元素の供給源、無機酸化物粒子、バインダ、溶媒等を含む。白金族元素の供給源としては、例えば、白金族元素の塩が挙げられ、白金族元素の塩としては、例えば、硝酸塩、アンミン錯体塩、酢酸塩、塩化物等が挙げられる。無機酸化物粒子を構成する無機酸化物に関する説明は、上記の通りである。バインダとしては、例えば、アルミナゾル、ジルコニアゾル、チタニアゾル、シリカゾル、セリアゾル等が挙げられる。溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。1種の溶媒を使用してもよいし、2種以上の溶媒の混合物を使用してもよい。
【0287】
第5前駆層上に第6スラリーを塗工して乾燥させることにより、第1触媒層20の上層22の前駆体である第6前駆層が形成される。乾燥温度は、例えば40℃以上150℃以下、乾燥時間は、例えば5分以上1時間以下である。
【0288】
第6造孔材の粒径は、適宜調整することができる。第6造孔材のメジアン径D50は、好ましくは0.1μm以上20μm以下、より好ましくは0.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上15μm以下である。第6造孔材の粒径、量等を調整することにより、条件1又は2のいずれも満たさない上層22、条件1又は2のいずれか一方を満たす上層22、或いは、条件1及び2の両方を満たす上層22を形成することができる。第5造孔材の粒径、量等及び/又は第6造孔材の粒径、量等を調整することにより、条件1又は2のいずれも満たさない第1触媒層20、条件1又は2のいずれか一方を満たす第1触媒層20、或いは、条件1及び2の両方を満たす第1触媒層20を形成することができる。D50の意義及び測定方法は、上記と同様である。
【0289】
<工程3d>
工程3dは、第2前駆層、第5前駆層及び第6前駆層を焼成して、第2触媒層30、第1触媒層20の下層21及び第1触媒層20の上層22を形成する工程である。
【0290】
第2前駆層、第5前駆層及び第6前駆層の焼成により、それぞれ、第2触媒層30、第1触媒層20の下層21及び第1触媒層20の上層22が形成される。焼成温度は、例えば350℃以上600℃以下、焼成時間は、例えば20分以上5時間以下である。焼成時の雰囲気は、通常、大気雰囲気である。
【0291】
第2前駆層の焼成により、第2造孔剤が消失して、第2触媒層30に細孔が形成される。第5前駆層の焼成により、第5造孔剤が消失して、第1触媒層20の下層21に細孔が形成される。第6前駆層の焼成により、第6造孔剤が消失して、第1触媒層20の上層22に細孔が形成される。第2造孔材、第5造孔材及び第6造孔材の粒径、量等を調整することにより、第1触媒層20及び第2触媒層30の対数微分細孔容積分布を調整することができる。
【0292】
本実施形態に係る方法は、以下の条件(E1)~(E10)を満たすことが好ましい。これにより、PM捕集性能に寄与する細孔の量と圧損の低減に寄与する細孔の量を十分に確保することができ、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立を実現することができる。本実施形態に係る方法が、以下の条件(E1)~(E10)を満たす場合、本実施形態に係る方法は、上記態様(i)~(ix)の製造に特に適している。
(E1)第2造孔剤、第5造孔剤及び第6造孔剤のうち、1つ又は2つのメジアン径D50が4μm超であり、残りの2つ又は1つのメジアン径D50が4μm以下である。
(E2)第2スラリーが、無機酸化物粒子を含み、第2スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下である。
(E3)第2前駆層に含まれる第2造孔剤の量が、第2触媒層30の質量(焼成後の質量)を基準として、10質量%以上60質量%以下である。
(E4)基材10のうち第2触媒層30が形成されている部分の単位体積当たりの第2触媒層30の質量(焼成後の質量)が、5g/L以上150g/L以下である。
(E5)第5スラリーが、無機酸化物粒子を含み、第5スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下である。
(E6)第5前駆層に含まれる第5造孔剤の量が、下層21の質量(焼成後の質量)を基準として、10質量%以上60質量%以下である。
(E7)基材10のうち下層21が形成されている部分の単位体積当たりの下層21の質量(焼成後の質量)が、5g/L以上90g/L以下である。
(E8)第6スラリーが、無機酸化物粒子を含み、第6スラリーに含まれる無機酸化物粒子のメジアン径D50が、1μm以上20μm以下である。
(E9)第6前駆層に含まれる第6造孔剤の量が、上層22の質量(焼成後の質量)を基準として、10質量%以上60質量%以下である。
(E10)基材10のうち上層22が形成されている部分の単位体積当たりの上層22の質量(焼成後の質量)が、5g/L以上60g/L以下である。
【0293】
条件(D1)に関する上記説明は、条件(E1)にも適用される。適用の際、「第1造孔剤」、「第3造孔剤」及び「第4造孔剤」は、それぞれ、「第2造孔剤」、「第5造孔剤」及び「第6造孔剤」に読み替えられる。
【0294】
条件(D2)に関する上記説明は、条件(E2)にも適用される。適用の際、「第1スラリー」は、「第2スラリー」に読み替えられる。
【0295】
条件(D3)に関する上記説明は、条件(E3)にも適用される。適用の際、「第1前駆層」、「第1造孔剤」、「第1触媒層20」、「第1スラリー」及び「隔壁部12の流入側セル側」は、それぞれ、「第2前駆層」、「第2造孔剤」、「第2触媒層30」、「第2スラリー」及び「隔壁部12の流出側セル側」に読み替えられる。
【0296】
条件(D4)に関する上記説明は、条件(E4)にも適用される。適用の際、「第1触媒層20」、「第1スラリー」及び「隔壁部12の流入側セル側」は、それぞれ、「第2触媒層30」、「第2スラリー」及び「隔壁部12の流出側セル側」に読み替えられる。
【0297】
条件(D5)に関する上記説明は、条件(E5)にも適用される。適用の際、「第3スラリー」は、「第5スラリー」に読み替えられる。
【0298】
条件(D6)に関する上記説明は、条件(E6)にも適用される。適用の際、「第3前駆層」、「第3造孔剤」、「下層31」、「第3スラリー」及び「隔壁部12の流出側セル側」は、それぞれ、「第5前駆層」、「第5造孔剤」、「下層21」、「第5スラリー」及び「隔壁部12の流入側セル側」に読み替えられる。
【0299】
条件(D7)に関する上記説明は、条件(E7)にも適用される。適用の際、「下層31」、「第3スラリー」及び「隔壁部12の流出側セル側」は、それぞれ、「下層21」、「第5スラリー」及び「隔壁部12の流入側セル側」に読み替えられる。
【0300】
条件(D8)に関する上記説明は、条件(E8)にも適用される。適用の際、「第4スラリー」は、「第6スラリー」に読み替えられる。
【0301】
条件(D9)に関する上記説明は、条件(E9)にも適用される。適用の際、「第3前駆層」、「第4前駆層」、「第4造孔剤」、「上層32」及び「第4スラリー」は、それぞれ、「第5前駆層」、「第6前駆層」、「第6造孔剤」、「上層22」及び「第6スラリー」に読み替えられる。
【0302】
条件(D10)に関する上記説明は、条件(E10)にも適用される。適用の際、「第3前駆層」、「上層32」及び「第4スラリー」は、それぞれ、「第5前駆層」、「上層22」及び「第6スラリー」に読み替えられる。
【0303】
第5造孔剤のメジアン径D50が、第6造孔剤のメジアン径D50よりも大きい場合、第5スラリーが隔壁部12内の細孔に入り込みにくくなり、下層21の少なくとも一部が、隔壁部12の外表面S1aから流入側セル13a側に隆起している実施形態(すなわち、下層21が、隔壁部12の外表面S1aから流入側セル13a側に隆起する部分を有する実施形態)を実現しやすくなる。したがって、メジアン径D50が4μm超である造孔剤と、メジアン径D50が4μm以下である造孔剤とを使用する場合、メジアン径D50が4μm超である造孔剤を第5造孔剤として使用し、メジアン径D50が4μm以下である造孔剤を第6造孔剤として使用することが好ましい。
【0304】
第5造孔剤のメジアン径D50が4μm超であり、第6造孔剤のメジアン径D50が4μm以下である場合、第1触媒層20においてPM捕集性能に寄与する細孔の量及び/又は圧損の低減に寄与する細孔の量を十分に確保することができる。また、第5造孔剤のメジアン径D50が4μm超であり、第6造孔剤のメジアン径D50が4μm以下である場合、条件1又は2のいずれか一方を満たす第1触媒層20、或いは、条件1及び2の両方を満たす第1触媒層20、特に、条件1及び2の両方を満たす第1触媒層20をより効率よく形成することができる。
【0305】
第5造孔剤のD50は、4μm超である限り特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは4.5μm以上20μm以下、より好ましくは4.5μm以上17μm以下、より一層好ましくは4.5μm以上15μm以下である。
【0306】
第6造孔剤のD50は、4μm以下ある限り特に限定されないが、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制との両立をより効果的に実現する観点から、好ましくは0.1μm以上4μm以下、より好ましくは0.5μm以上4μm以下、より一層好ましくは1.5μm以上4μm以下である。
【実施例】
【0307】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0308】
<実施例1>
(1)第1スラリーの調製
Ce-Zr系複合酸化物粉末及びアルミナ粉末を準備した。Ce-Zr系複合酸化物粉末として、CeO2-ZrO2固溶体粉末を使用した。
【0309】
CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末を混合し、混合粉末を調製した。混合粉末のD50は7μmであった。
【0310】
混合粉末を硝酸ロジウム水溶液中に添加し、混合液を得た。得られた混合液と、造孔剤(メジアン径D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)と、アルミナゾルと、ジルコニアゾルと、溶媒として水と、を混合して、第1スラリーを調製した。第1スラリー中に含まれるRh、造孔剤の量は、第1スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第1触媒層の質量を基準(100質量%)として、それぞれ0.3質量%、30質量%となるように調整した。なお、第1スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第1触媒層の質量は、第1スラリーの質量から、第1スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0311】
(2)第3スラリーの調製
Ce-Zr系複合酸化物粉末及びアルミナ粉末を準備した。Ce-Zr系複合酸化物粉末として、CeO2-ZrO2固溶体粉末を使用した。
【0312】
CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末を混合し、混合粉末を調製した。混合粉末のD50は7μmであった。
【0313】
混合粉末を硝酸パラジウム水溶液中に添加し、混合液を得た。得られた混合液と、造孔剤(メジアン径D50が5μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)と、水酸化バリウムと、アルミナゾルと、ジルコニアゾルと、溶媒として水と、を混合して、第3スラリーを調製した。第3スラリー中に含まれるPd、造孔剤の量は、第3スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第2触媒層の下層の質量を基準(100質量%)として、それぞれ3質量%、30質量%となるように、調整した。なお、第3スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第2触媒層の下層の質量は、第3スラリーの質量から、第3スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0314】
(3)第4スラリーの調製
第4スラリーとして、第1スラリーと同一のスラリーを調製した。第4スラリー中に含まれるRh、造孔剤の量は、第4スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第2触媒層の上層の質量を基準(100質量%)として、それぞれ0.3質量%、30質量%となるように、調整した。なお、第4スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第2触媒層の上層の質量は、第4スラリーの質量から、第4スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0315】
(4)排ガス浄化用触媒の製造
図1~6に示す構造を有する基材、すなわち、基材の軸方向に延びる流入側セルと、基材の軸方向に延びる流出側セルと、流入側セルと流出側セルとを仕切る多孔質の隔壁部とを備える基材を準備した。隔壁部の厚みは216μmであり、基材の軸方向に対して垂直な断面における流入側セル及び流出側セルの合計数は、1平方インチあたり300セルであり、基材の体積は1.4Lである。基材の流入側端面における流入側セルの開口部の面積と、基材の流出側端面における流出側セルの開口部の面積とは概ね同じである。
【0316】
基材の排ガス流入側の端部を、第1スラリー中に浸漬し、反対側から第1スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流入側セル側に、第1スラリーの固形分からなる第1前駆層を形成した。形成された第1前駆層は、基材の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向に沿って延在する。
【0317】
乾燥後、基材の排ガス流出側の端部を、第3スラリー中に浸漬し、反対側から第3スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流出側セル側に、第3スラリーの固形分からなる第3前駆層を形成した。形成された第3前駆層は、基材の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向とは反対の方向に沿って延在する。乾燥後、基材の排ガス流出側の端部を、第4スラリー中に浸漬し、反対側から第4スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流出側セル側の第3前駆層上に、第4スラリーの固形分からなる第4前駆層を形成した。形成された第4前駆層は、基材の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向とは反対の方向に沿って延在する。
【0318】
その後、基材を、450℃で1時間、焼成し、基材上に第1触媒層及び第2触媒層を形成した。こうして、実施例1の排ガス浄化用触媒を得た。第1触媒層は、単層構造を有し、第2触媒層は、下層及び上層からなる二層構造を有する。基材のうち第1触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層の質量(ウォッシュコート量)は69.4g/Lであった。基材のうち第2触媒層の下層が形成されている部分の単位体積当たりの下層の質量(ウォッシュコート量)は41.1g/Lであった。基材のうち第2触媒層の上層が形成されている部分の単位体積当たりの上層の質量(ウォッシュコート量)は21.4g/Lであった。
【0319】
<実施例2>
第1スラリー中の造孔剤を、D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子から、D50が5μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子に変更した点、並びに、第4スラリーとして、実施例1における第1スラリーと同一のスラリー(すなわち、造孔剤として、メジアン径D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子を含む)を用いた点を除き、実施例1と同様にして、実施例2の排ガス浄化用触媒を得た。
【0320】
<実施例3>
第1スラリー中の造孔剤を、D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子から、D50が2μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子に変更した点、並びに、第4スラリー中の造孔剤を、D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子から、D50が2μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子に変更した点を除き、実施例1と同様にして、実施例3の排ガス浄化用触媒を得た。
【0321】
<実施例4>
第3スラリー中の造孔剤を、D50が5μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子から、D50が10μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子に変更した点を除き、実施例1と同様にして、実施例4の排ガス浄化用触媒を得た。
【0322】
<実施例5>
(1)第5スラリーの調製
Ce-Zr系複合酸化物粉末及びアルミナ粉末を準備した。Ce-Zr系複合酸化物粉末として、CeO2-ZrO2固溶体粉末を使用した。
【0323】
CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末を混合し、混合粉末を調製した。混合粉末のD50は6μmであった。
【0324】
混合粉末を硝酸パラジウム水溶液中に添加し、混合液を得た。得られた混合液と、造孔剤(メジアン径D50が5μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)と、アルミナゾルと、ジルコニアゾルと、溶媒として水と、を混合して、第5スラリーを調製した。第5スラリー中に含まれるPd、造孔剤の量は、第5スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第1触媒層の下層の質量を基準(100質量%)として、それぞれ3質量%、40質量%となるように、調整した。なお、第5スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第1触媒層の下層の質量は、第5スラリーの質量から、第5スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0325】
(2)第6スラリーの調製
Ce-Zr系複合酸化物粉末及びアルミナ粉末を準備した。Ce-Zr系複合酸化物粉末として、CeO2-ZrO2固溶体粉末を使用した。
【0326】
CeO2-ZrO2固溶体粉末及びアルミナ粉末を混合し、混合粉末を調製した。混合粉末のD50は6μmであった。
【0327】
混合粉末を硝酸ロジウム水溶液中に添加し、混合液を得た。得られた混合液と、造孔剤(メジアン径D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子)と、アルミナゾルと、ジルコニアゾルと、溶媒として水と、を混合して、第6スラリーを調製した。第6スラリー中に含まれるRh、造孔剤の量は、第6スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第1触媒層の上層の質量を基準(100質量%)として、それぞれ0.3質量%、40質量%となるように調整した。なお、第6スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第1触媒層の上層の質量は、第6スラリーの質量から、第6スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0328】
(3)第2スラリーの調製
第2スラリーとして、後述する造孔剤の量を除いて第6スラリーと同一のスラリーを調製した。第2スラリー中に含まれるRh、造孔剤の量は、第2スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第2触媒層の質量を基準(100質量%)として、それぞれ0.3質量%、30質量%となるように、調整した。なお、第2スラリーの乾燥及び焼成によって形成される第2触媒層の質量は、第2スラリーの質量から、第2スラリーの乾燥及び焼成によって消失する成分(例えば、溶媒、造孔剤等)の質量を差し引くことにより求められる。
【0329】
(4)排ガス浄化用触媒の製造
実施例1と同一の基材を準備した。
【0330】
基材の排ガス流入側の端部を、第5スラリー中に浸漬し、反対側から第5スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流入側セル側に、第5スラリーの固形分からなる第5前駆層を形成した。形成された第5前駆層は、基材の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向に沿って延在する。乾燥後、基材の排ガス流入側の端部を、第6スラリー中に浸漬し、反対側から第6スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流入側セル側の第5前駆層上に、第6スラリーの固形分からなる第6前駆層を形成した。形成された第6前駆層は、基材の排ガス流入側の端部から排ガス流通方向に沿って延在する。
【0331】
乾燥後、基材の排ガス流出側の端部を、第2スラリー中に浸漬し、反対側から第2スラリーを吸引した後、70℃で10分乾燥させた。こうして、基材の隔壁部の流出側セル側に、第2スラリーの固形分からなる第2前駆層を形成した。形成された第2前駆層は、基材の排ガス流出側の端部から排ガス流通方向とは反対の方向に沿って延在する。
【0332】
その後、基材を、450℃で1時間、焼成し、基材上に第1触媒層及び第2触媒層を形成した。こうして、実施例5の排ガス浄化用触媒を得た。第1触媒層は、下層及び上層からなる二層構造を有し、第2触媒層は、単層構造を有する。基材のうち第1触媒層の下層が形成されている部分の単位体積当たりの下層の質量(ウォッシュコート量)は27.1g/Lであった。基材のうち第1触媒層の上層が形成されている部分の単位体積当たりの上層の質量(ウォッシュコート量)は12.3g/Lであった。基材のうち第2触媒層が形成されている部分の単位体積当たりの第1触媒層の質量(ウォッシュコート量)は34.7g/Lであった。
【0333】
<比較例1>
第3スラリー中の造孔剤を、D50が5μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子から、D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子に変更した点を除き、実施例1と同様にして、比較例1の排ガス浄化用触媒を得た。
【0334】
<比較例2>
第1スラリー中の造孔剤を、D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子から、D50が5μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子に変更した点、並びに、第4スラリー中の造孔剤を、D50が3μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子から、D50が5μmである架橋ポリ(メタ)アクリル酸メチル粒子に変更した点を除き、実施例1と同様にして、比較例2の排ガス浄化用触媒を得た。
【0335】
<細孔容積の測定>
実施例及び比較例の各触媒を、基材の軸方向と平行な平面及び基材の軸方向と垂直な平面で切断し、
図9又は11中の符号M1で示す部分を切り出し、隔壁部の一部及び第1触媒層の一部を含むが、第2触媒層を含まない切断片M1を得た。切断片M1は、第1封止部又は第2封止部のいずれも含まない。切断片M1に含まれる隔壁部の一部の長さは、切断片M1の長さと等しい。切断片M1に含まれる第1触媒層の一部の長さは、切断片M1の長さと等しい。切断片M1は、触媒の排ガス流入側端部近傍から得た。具体的には、基材の排ガス流入側端部から排ガス流通方向Eにそれぞれ10mm及び20mm離れた2箇所を、基材の軸方向と垂直な平面で切断することにより、切断片M1を得た。切断片M1は、一辺が10mmの立方体形状である。
【0336】
実施例及び比較例の各触媒を、基材の軸方向と平行な平面及び基材の軸方向と垂直な平面で切断し、
図9又は11中の符号M2で示す部分を切り出し、隔壁部の一部及び第2触媒層(下層及び上層)の一部を含むが、第1触媒層を含まない切断片M2を得た。切断片M2は、第1封止部又は第2封止部のいずれも含まない。切断片M2に含まれる隔壁部の一部の長さは、切断片M2の長さと等しい。切断片M2に含まれる第2触媒層(下層及び上層)の一部の長さは、切断片M2の長さと等しい。切断片M2は、触媒の排ガス流出側端部近傍から得た。具体的には、基材の排ガス流出側端部から排ガス流通方向Eとは反対の方向にそれぞれ10mm及び20mm離れた2箇所を、基材の軸方向と垂直な平面で切断することにより、切断片M2を得た。切断片M2は、一辺が10mmの立方体形状である。
【0337】
切断片M1を使用して、水銀圧入法により第1触媒層のlog微分細孔容積分布を測定し、第1触媒層のlog微分細孔容積分布曲線を求めた。切断片M2を使用して、水銀圧入法により第2触媒層のlog微分細孔容積分布を測定し、第2触媒層のlog微分細孔容積分布曲線を求めた。具体的な測定条件は、以下の通りである。
【0338】
[log微分細孔容積分布の測定]
測定装置として、株式会社島津製作所製自動ポロシメータ「オートポアIV9520」を使用して、以下の条件及び手順にてlog微分細孔容積分布の測定を行った。
(測定条件)
測定環境:25℃
測定セル:試料室体積 3cm
3、圧入体積 0.39cm
3
測定範囲:0.0048MPaから255.106MPaまで
測定点:0.0048MPaから0.3447MPaの範囲において54点
0.3447MPaから255.1060MPaの範囲において77点
合計131点(それぞれ圧力を対数でプロットしたときに等間隔になるように点を刻んだ)
圧入体積:25%以上90%以下になるように調節した。
(低圧パラメーター)
排気圧力:50μmHg
排気時間:5.0min
水銀注入圧力:0.0034MPa
平衡時間:10sec
(高圧パラメーター)
平衡時間:10sec
(水銀パラメーター)
前進接触角:130.0degrees
後退接触角:130.0degrees
表面張力:485.0mN/m(485.0dyne/cm)
水銀密度:13.5335g/mL
(測定手順)
(1)低圧部で0.0048MPaから0.3447MPa以下の範囲で54点測定した。
(2)高圧部で0.3792MPaから255.1060MPa以下の範囲で77点測定した。
(3)水銀注入圧力、水銀注入量及び切断片M1,M2の質量から、対数微分細孔容積分布曲線(log微分細孔容積分布曲線)を求めた。
なお、上記(1)、(2)及び(3)は、装置付属のソフトウエアにて、自動で行った。その他の条件は、JIS R 1655:2003に準じた。
実施例2の排ガス浄化用触媒における第1触媒層及び第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線をそれぞれ
図12A及び
図12Bに示す。
比較例1の排ガス浄化用触媒における第1触媒層及び第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線をそれぞれ
図13A及び
図13Bに示す。
比較例2の排ガス浄化用触媒における第1触媒層及び第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線をそれぞれ
図14A及び
図14Bに示す。
【0339】
第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Aが存在するか否か(存在する場合にはピーク値Aの具体的な値)、第1触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Bが存在するか否か(存在する場合にはピーク値Bの具体的な値)、第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲にピーク値Cが存在するか否か(存在する場合にはピーク値Cの具体的な値)、並びに、第2触媒層の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径3μm超10μm以下の範囲にピーク値Dが存在するか否か(存在する場合にはピーク値Dの具体的な値)を確認した。結果を表2及び3に示す。表2及び3中、ピーク値Aの「有無」において、「無」はピーク値Aが存在しなかったことを、「極大値」はピーク値Aが対数微分細孔容積分布曲線において極大値(頂点の対数微分細孔容積)として存在したことを、「ショルダー」はピーク値Aが対数微分細孔容積分布曲線においてショルダーとして存在したことを表す。ピーク値B、C及びDについても同様である。
【0340】
<圧損の評価>
実施例1の排ガス浄化用触媒の側面を支持し、排ガス流入側の端面が上方を向くように固定した。固定された排ガス浄化用触媒の下方(排ガス流出側の端面)から、空気を50L/secの速度で吸引した。吸引開始から10秒後における排ガス流入側の端面の空気圧と排ガス流入側の端面の空気圧との差分を求め、これを実施例1の排ガス浄化用触媒の圧損とした。
【0341】
実施例1の排ガス浄化用触媒の代わりに、基材(第1触媒層及び第2触媒層のいずれも形成されていない)を使用して、上記と同様にして、吸引開始から10秒後における排ガス流入側の端面の空気圧と排ガス流入側の端面の空気圧との差分を求め、これを基材の圧損とした。
【0342】
下記式に基づいて、圧損比(%)を求めた。
圧損比=(実施例1の排ガス浄化用触媒の圧損/基材の圧損)×100
【0343】
圧損比が270%未満である場合は「A」、圧損比が270%以上300%未満である場合は「B」、圧損比が300%以上である場合は「C」と評価した。結果を表2に示す。
【0344】
<PM捕集性能の評価>
実施例1の排ガス浄化用触媒を用いたガソリンエンジン車両を、国際調和排ガス試験モード(WLTC)の運転条件に従って運転した。運転開始から、589秒までの低速運転時、運転開始589秒から1022秒までの中速運転時、運転開始1022秒から1477秒までの高速運転時、運転開始から1477秒から1800秒までの超高速運転時のそれぞれにおいて、排ガス浄化用触媒を通過した排ガス中のPM粒子数(PNcat)を測定した。さらに、エンジンから直接排出されるPM粒子数(PNall)を測定し、下記式により、実施例1の排ガス浄化用触媒のPM捕集率を求めた。
PM捕集率=(1-(PNcat/PNall))×100
【0345】
PM捕集性能の測定条件は、以下の通りである。
評価車両:1.5L直噴ターボエンジン
使用ガソリン:認証試験用燃料
PM測定装置:堀場製作所社製
【0346】
PM捕集率が98.7%以上である場合は「A」、PM捕集率が98.0%以上98.7%未満である場合は「B」、PM捕集率が98.0%未満である場合は「C」と評価した。結果を表2に示す。
【0347】
【0348】
【符号の説明】
【0349】
1A,1B,1C・・・排ガス浄化用触媒
10・・・基材
11・・・筒状部
12・・・隔壁部
13・・・セル
13a・・・流入側セル
13b・・・流出側セル
14・・・第1封止部
15・・・第2封止部
20・・・第1触媒層
21・・・第1触媒層の下層
22・・・第1触媒層の上層
30・・・第2触媒層
31・・・第2触媒層の下層
32・・・第2触媒層の上層
S1a・・・隔壁部の流入側セル側の外表面
S1b・・・隔壁部の流出側セル側の外表面
【要約】
本発明は、PM捕集性能の向上と圧損上昇の抑制とを実現可能な排ガス浄化用触媒を提供することを目的とし、ウォールフロー型基材(10)と、第1触媒層(20)と、第2触媒層(30)とを備える排ガス浄化用触媒(1A)であって、第1触媒層(20)の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲に存在するピーク値Aが0.20mL/g以上、細孔径3μm超10μm以下の範囲に存在するピーク値Bが0.20mL/g以上、という条件をそれぞれ条件1、2とし、第2触媒層(30)の対数微分細孔容積分布曲線において、細孔径1μm以上3μm以下の範囲に存在するピーク値Cが0.20mL/g以上、細孔径3μm超10μm以下の範囲に存在するピーク値Dが0.20mL/g以上、という条件をそれぞれ条件3、4としたとき、第1触媒層(20)及び第2触媒層(30)が所定の条件の組み合わせを満たす、排ガス浄化用触媒(1A)を提供する。