(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】IL6Rに結合する抗体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240724BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240724BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240724BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240724BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240724BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240724BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240724BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240724BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240724BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240724BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240724BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240724BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240724BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240724BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C07K16/28
A61K39/395 U
A61K48/00
A61P7/00
A61P9/00
A61P19/02
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P35/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2022569148
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 CN2021094107
(87)【国際公開番号】W WO2021233246
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2022-11-16
(32)【優先日】2020-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522040148
【氏名又は名称】ビオシオン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ミンジウ
(72)【発明者】
【氏名】シア、シュカイ
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-530495(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/28
A61K 39/395
A61K 48/00
A61P 7/00
A61P 9/00
A61P 19/02
A61P 27/02
A61P 29/00
A61P 35/00
C12N 1/15
C12N 1/19
C12N 1/21
C12N 5/10
C12N 15/13
C12N 15/63
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターロイキン6受容体サブユニットα(IL6R)に結合することができる、単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分であって、
i)VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域を含む、重鎖可変領域と、
ii)VL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域を含む軽鎖可変領域
を含み、
前記VH CDR1領域、前記VH CDR2領域及び前記VH CDR3領域、前記VL CDR1領域、前記VL CDR2領域及び前記VL CDR3領域が、(1)配列番号1、4、11、15、18及び22のそれぞれ、(2)配列番号2、5、12、16、19及び22のそれぞれ、(3)配列番号2、6、13、15、20及び22のそれぞれ、(4)配列番号3、7、11、16、20及び22のそれぞれ、(5)配列番号2、8、13、16、20及び22のそれぞれ、(6)配列番号2、9、13、15、20及び22のそれぞれ、若しくは(7)配列番号2、10、14、17、21及び23のそれぞれに記載のアミノ酸配列を含む
、
単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
前記重鎖可変領域が、配列番号24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33に対する少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含み、
配列番号25の48番目、74番目、及び79番目のアミノ酸残基は、それぞれIle(I)、Lys(K)、及びAla(A)、それぞれMet(M)、Thr(T)、及びVal(V)、又はそれぞれIle(I)、Thr(T)、及びVal(V)であり、
配列番号27の67番目、70番目、及び72番目のアミノ酸残基は、それぞれLys(K)、Leu(L)、及びArg(R)、それぞれLys(K)、Met(M)、及びVal(V)、又はそれぞれArg(R)、Leu(L)、及びVal(V)であり、
配列番号32の73番目及び83番目のアミノ酸残基は、それぞれAsn(N)及びLeu(L)、又はそれぞれGlu(E)及びPhe(F)である、
請求項1に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
前記軽鎖可変領域が、配列番号34、35、36、37、38、39又は40に対する少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含み、
配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基は、それぞれTyr(Y)及びMet(M)、又はそれぞれPhe(F)及びLeu(L)であり、
配列番号39の50番目、62番目及び82番目のアミノ酸残基は、それぞれTyr(Y)、His(H)及びGlu(E)、又はそれぞれSer(S),Arg(R),Gly(G)である、
請求項1または2に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
前記重鎖可変領域及び前記軽鎖可変領域が、
(1)配列番号24及び34のそれぞれ、
(2)配列番号25の48番目、74番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれIle(I)、Lys(K)、及びAla(A)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれTyr(Y)及びMet(M)である、配列番号25及び35のそれぞれ、
(3)配列番号26及び36のそれぞれ、
(4)配列番号27の67番目、70番目及び72番目のアミノ酸残基がそれぞれLys(K)、Leu(L)及びArg(R)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれTyr(Y)及びMet(M)である、配列番号27及び35のそれぞれ、
(5)配列番号27の67番目、70番目及び72番目のアミノ酸残基がそれぞれLys(K)、Met(M)及びVal(V)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれTyr(Y)及びMet(M)である、配列番号27及び35のそれぞれ、
(6)配列番号25の48番目、74番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれMet(M)、Thr(T)及びVal(V)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれTyr(Y)及びMet(M)である、配列番号25及び35のそれぞれ、
(7)配列番号27の67番目、70番目及び72番目のアミノ酸残基がそれぞれArg(R)、Leu(L)及びVal(V)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれTyr(Y)及びMet(M)である、配列番号27及び35のそれぞれ、
(8)配列番号25の48番目、74番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれIle(I)、Thr(T)及びVal(V)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれTyr(Y)及びMet(M)である、配列番号25及び35のそれぞれ、
(9)配列番号25の48番目、74番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれIle(I)、Lys(K)及びAla(A)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれPhe(F)及びLeu(L)である、配列番号25及び35のそれぞれ、
(10)配列番号27の67番目、70番目及び72番目のアミノ酸残基がそれぞれLys(K)、Leu(L)及びArg(R)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれPhe(F)及びLeu(L)である、配列番号27及び35のそれぞれ、
(11)配列番号27の67番目、70番目及び72番目のアミノ酸残基がそれぞれLys(K)、Met(M)及びVal(V)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれPhe(F)及びLeu(L)である、配列番号27及び35のそれぞれ、
(12)配列番号25の48番目、74番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれMet(M)、Thr(T)及びVal(V)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれPhe(F)及びLeu(L)である、配列番号25及び35のそれぞれ、
(13)配列番号27の67番目、70番目及び72番目のアミノ酸残基がそれぞれArg(R)、Leu(L)及びVal(V)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれPhe(F)及びLeu(L)である、配列番号27及び35のそれぞれ、
(14)配列番号25の48番目、74番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれIle(I)、Thr(T)及びVal(V)であり、配列番号35の72番目及び79番目のアミノ酸残基がそれぞれPhe(F)及びLeu(L)である、配列番号25及び35のそれぞれ、
(15)配列番号28及び37のそれぞれ、
(16)配列番号29及び38のそれぞれ、
(17)配列番号39の50番目、62番目及び82番目のアミノ酸残基がそれぞれTyr(Y)、His(H)及びGlu(E)である、配列番号30及び39のそれぞれ、
(18)配列番号39の50番目、62番目及び82番目のアミノ酸残基がそれぞれSer(S)、Arg(R)及びGly(G)である、配列番号31及び39のそれぞれ、
(19)配列番号32の73番目及び83番目のアミノ酸残基がそれぞれAsn(N)及びLeu(L)である、配列番号32及び38のそれぞれ、
(20)配列番号32の73番目及び83番目のアミノ酸残基がそれぞれ、Glu(E)及びPhe(F)である、配列番号32及び38のそれぞれ、又は
(21)配列番号33及び40のそれぞれ
に対する少なくとも90%同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
IgG1、IgG2又はIgG4アイソタイプである、請求項1から4のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
前記重鎖可変領域に連結された、配列番号41の前記アミノ酸配列を有する重鎖定常領域、及び前記軽鎖可変領域に連結された、配列番号42の前記アミノ酸配列を有する軽鎖定常領域を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項7】
マウス、キメラ又はヒト化抗体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分をコードするヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項10】
請求項9に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか一項に記載の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分、請求項8に記載のヌクレオチド、請求項9に記載の発現ベクター、又は請求項10に記載の宿主細胞、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項12】
過剰なIL6/IL6Rシグナル伝達に関連する炎症性疾患を治療するための、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記炎症性疾患が、関節リウマチ、全身型及び多関節型若年性特発性関節炎、巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、キャッスルマン病、サイトカイン放出症候群、シュニッツラー症候群、又は視神経脊髄炎である、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
過剰なIL6/IL6Rシグナル伝達に関連する癌を治療するための請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記癌が、非小細胞肺癌、又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫である、請求項14に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願及び援用]
本出願は、2020年5月18日に出願された米国仮特許出願第63/026,274号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本明細書に引用又は参照される全ての文献(本明細書に引用される全ての文献、特許、公開特許出願を含むがこれらに限定されない)(「本明細書に引用される文献」)、及び本明細書に引用される文献に引用又は参照される全ての文献は、本明細書又は参照により本明細書に援用されるあらゆる文献に記載される、あらゆる製品についてのあらゆる製造業者の説明書、記載、製品仕様書、及び製品シートと一緒に、参照により本明細書に援用され、本発明の実施に用いられ得る。より詳細には、全ての参照される文献は、各個々の文献が、具体的に及び個別に、参照により援用されることが示されるのと同程度に、参照により援用される。本開示に記載されるあらゆるGenbank配列は、本開示の最先の有効出願日のものであるGenbank配列とともに、参照により援用される。
【0003】
本開示は、一般に、高い親和性及び機能性でヒトIL6Rに結合する、単離モノクローナル抗体、特に、マウス、キメラ又はヒト化モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分に関する。抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞及び抗体又はその抗原結合部分を発現するための方法も提供される。本開示はさらに、二重特異性分子、免疫抱合体、キメラ抗原受容体、腫瘍溶解性ウイルス、及び抗体又はその抗原結合部分を含み得る医薬組成物、並びに本開示の抗IL6R抗体又はその抗原結合部分を用いた診断又は治療方法を提供する。
【背景技術】
【0004】
インターロイキン-6(IL6)は、例えば、2つの膜貫通タンパク質のIL6R(IL6Rα、gp80又はCD126としても知られる)及びgp130との相互作用を通じて免疫及び代謝における役割を果たす、多機能性サイトカインである(Kang,S et al.,(2019) Immunity 50(4):1007-1023)。
【0005】
IL6Rの発現は、肝細胞、単球及びリンパ球に制限され、IL6Rの2つの形態、すなわち、膜結合IL6R(mIL6R)及び可溶性IL6R(sIL6R)が、IL6シグナル伝達に関与することが分かっている。sIL6Rは、プロテアーゼによって、mIL6Rから切断されるか、又は交互スプライスされたIL6R mRNAから翻訳される(Riethmueller,S et al.,(2017) Plos Biology 15(1):e2000080;Lust,J.A et al.,(1992) Cytokine 4(2):96-100)。2つのIL6R形態の存在+gp30の遍在的発現は、IL6が様々な系及び臓器においてその活性を発揮することを可能にする。具体的には、IL6は、mIL6R及び膜結合gp130(mgp130)に結合し、古典的なIL6シグナル伝達を開始させる一方で、IL6のトランスシグナル伝達が、gp130を発現するがIL6Rを発現しない細胞上でのIL6-sIL6-mgp130複合体の形成によって活性化される。近年、樹状細胞上でIL6及びmIL6Rによって形成される複合体が、mgp130を発現するT細胞に提示される場合、IL6シグナル伝達の第3のタイプが、病原性Tヘルパー17細胞のプライミングに必要であることが発見されている(Heinrich,P.C et al.,(2003) Biochem.J.374:1-20)。sIL6媒介性シグナル伝達カスケードが、IL6-sIL6Rとの相互作用時、循環血液中に存在する可溶性gp130によって下方制御され得る(Jostock,T et al.,(2001) Eur.J.Biochem 268(1):160-167)。IL6シグナル伝達は、主に、2つの下流経路、JAK及びSTAT3経路とJAK-SHP2-MAPキナーゼ経路とを活性化する(Kang,S et al.,(2019)上記)。
【0006】
IL6は、活性化B細胞を免疫グロブリン産生細胞に分化させ、天然CD4+T細胞を、炎症性サイトカインIL17を産生するTh17系統に駆動することが報告されている(Hirano,T et al.,(1986) Nature 324(6092):73-76;Bettelli,E et al.,(2006) Nature 441(7090):235-238)。過剰なIL6発現は、免疫寛容を破壊し、炎症性疾患を引き起こし得る。例えば、高いIL6レベルを伴う心臓粘液腫を有する患者において、自己免疫性症状が認められた(Hirano,T et al.,(1987) Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84(1):228-231)。IL6は、腫瘍細胞増殖を刺激することがさらに分かっており、腎細胞癌、リンパ腫、卵巣癌、メラノーマ及び前立腺癌などの癌における予後不良に関連する(Lee,S.O et al.,(2007) Prostate 67:764-773)。さらに、IL6は、骨恒常性、組織再生、脂質代謝、血管新生などにおける役割を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
IL6シグナル伝達は、自己免疫疾患を含む炎症性疾患の治療のため、標的にされている。例えば、IL6のmIL6R及びsIL6Rの双方への結合を阻害する、最初に開発されたIL6R遮断薬のアクテムラ(登録商標)トシリズマブは、世界中の100を超える国で、関節リウマチ、全身型及び多関節型若年性特発性関節炎、巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、キャッスルマン病及びキメラ抗原受容体T細胞が複合されたサイトカイン放出症候群(chimeric antigen receptor T cell complicated cytokine release syndrome)の治療において認可されている。トシリズマブはまた、癌及び全身性硬化症などの他の炎症性疾患に対する潜在的な有効性について、臨床試験において試験されている。IL6及び/又はIL6Rを標的にする他のいくつかの生物製剤が、有効性及び安全性特性について試験されることが報告されている。改善された有効性及び安全性を有する抗体は、常に所望されている。
【0008】
本出願におけるいずれの文献の引用又は特定も、このような文献が本開示に対する先行技術として利用可能であることを認めるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、IL6R(例えば、ヒトIL6R)に結合し、トシリズマブなどの先行技術の抗IL6R抗体と比較して、より高くないとしても同等のヒト及び/又はサルIL6Rに対する結合親和性/能力、並びにより高くないとしても同等のIL6-IL6R相互作用に対するブロッキング活性を有する、単離モノクローナル抗体、例えば、マウス、キメラ又はヒト化モノクローナル抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0010】
本開示の抗体又は抗原結合部分は、IL6及び/又はIL6R関連疾患、例えば炎症性疾患、及び癌の治療を含む様々な用途に使用され得る。
【0011】
したがって、一態様において、本開示は、IL6Rに結合し、i)VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域を含み得る重鎖可変領域であって、VH CDR1領域、VH CDR2領域及びVH CDR3領域が、(1)配列番号1、4及び11のそれぞれ;(2)配列番号2、5及び12のそれぞれ;(3)配列番号2、6及び13のそれぞれ;(4)配列番号3、7及び11のそれぞれ;(5)配列番号2、8及び13のそれぞれ;(6)配列番号2、9及び13のそれぞれ;若しくは(7)配列番号2、10及び14のそれぞれに対する少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、重鎖可変領域;並びに/又はii)VL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域を含み得る軽鎖可変領域であって、VL CDR1領域、VL CDR2領域及びVL CDR3領域が、(1)配列番号15、18及び22のそれぞれ;(2)配列番号16、19及び22のそれぞれ;(3)配列番号15、20及び22のそれぞれ;(4)配列番号16、20及び22のそれぞれ;若しくは(5)配列番号17、21及び23のそれぞれに対する少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%同一性を有するアミノ酸配列を含み得る、軽鎖可変領域を有する、単離モノクローナル抗体(例えば、マウス、キメラ又はヒト化抗体)、又はその抗原結合部分に関する。
【0012】
本開示の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得、VH CDR1、VH CDR2及びVH CDR3、並びにVL CDR1、VL CDR2及びVL CDR3は、(1)配列番号1、4、11、15、18及び22のそれぞれ;(2)配列番号2、5、12、16、19及び22のそれぞれ;(3)配列番号2、6、13、15、20及び22のそれぞれ;(4)配列番号3、7、11、16、20及び22のそれぞれ;(5)配列番号2、8、13、16、20及び22のそれぞれ;(6)配列番号2、9、13、15、20及び22のそれぞれ;又は(7)配列番号2、10、14、17、21及び23のそれぞれに対する少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0013】
重鎖可変領域は、配列番号24、25(X1=I、X2=K、X3=A;X1=M、X2=T、X3=V;又はX1=I、X2=T、X3=V)、26、27(X1=K、X2=L、X3=R;X1=K、X2=M、X3=V;又はX1=R、X2=L、X3=V)、28、29、30、31、32(X1=N、X2=L;又はX1=E、X2=F)又は33に対する少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。配列番号24のアミノ酸配列は、配列番号46又は47のヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号27(X1=R、X2=L、X3=V)のアミノ酸配列は、配列番号48のヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0014】
軽鎖可変領域は、配列番号34、35(X1=Y、X2=M;又はX1=F、X2=L)、36、37、38、39(X1=Y、X2=H、X3=E;又はX1=S、X2=R、X3=G)又は40に対する少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。配列番号34のアミノ酸配列は、配列番号49又は50のヌクレオチド配列によってコードされ得る。配列番号35(X1=Y、X2=M)のアミノ酸配列は、配列番号51のヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0015】
本開示の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み得、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、(1)配列番号24及び34のそれぞれ;(2)配列番号25(X1=I、X2=K、X3=A)及び35(X1=Y、X2=M)のそれぞれ;(3)配列番号26及び36のそれぞれ;(4)配列番号27(X1=K、X2=L、X3=R)及び35(X1=Y、X2=M)のそれぞれ;(5)配列番号27(X1=K、X2=M、X3=V)及び35(X1=Y、X2=M)のそれぞれ;(6)配列番号25(X1=M、X2=T、X3=V)及び35(X1=Y、X2=M)のそれぞれ;(7)配列番号27(X1=R、X2=L、X3=V)及び35(X1=Y、X2=M)のそれぞれ;(8)配列番号25(X1=I、X2=T、X3=V)及び35(X1=Y、X2=M)のそれぞれ;(9)配列番号25(X1=I、X2=K、X3=A)及び35(X1=F、X2=L)のそれぞれ;(10)27(X1=K、X2=L、X3=R)及び35(X1=F、X2=L)のそれぞれ;(11)27(X1=K、X2=M、X3=V)及び35(X1=F、X2=L)のそれぞれ;(12)配列番号25(X1=M、X2=T、X3=V)及び35(X1=F、X2=L)のそれぞれ;(13)27(X1=R、X2=L、X3=V)及び35(X1=F、X2=L)のそれぞれ;(14)配列番号25(X1=I、X2=T、X3=V)及び35(X1=F、X2=L)のそれぞれ;(15)配列番号28及び37のそれぞれ;(16)配列番号29及び38のそれぞれ;(17)配列番号30及び39(X1=Y、X2=H、X3=E)のそれぞれ;(18)配列番号31及び39(X1=S、X2=R、X3=G)のそれぞれ;(19)配列番号32(X1=N、X2=L)及び38のそれぞれ;(20)配列番号32(X1=E、X2=F)及び38のそれぞれ;又は(21)配列番号33及び40のそれぞれに対する少なくとも85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0016】
本開示の単離モノクローナル抗体又はその抗原結合部分は、ジスルフィド結合によって連結される重鎖及び軽鎖を含み得、重鎖は、重鎖可変領域及び重鎖定常領域を含み得、軽鎖は、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域を含み得、重鎖可変領域のC末端は、重鎖定常領域のN末端に連結され、軽鎖可変領域のC末端は、軽鎖定常領域のN末端に連結され、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、上記のアミノ酸配列を含み得、抗体又はその抗原結合部分は、IL6Rに結合する。重鎖定常領域は、例えば配列番号41に記載されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1定常領域、又はその機能的フラグメントであり得、軽鎖定常領域は、例えば配列番号42に記載されるアミノ酸配列を有するヒトκ定常領域、又はその機能的フラグメントであり得る。重鎖定常領域はまた、ヒトIgG4定常領域であり得る。軽鎖定常領域は、ヒトκ定常領域であり得る。配列番号41及び42のアミノ酸配列は、配列番号52及び53のそれぞれのヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、2つの重鎖及び2つの軽鎖を含むか又はそれからなり得、ここで、各重鎖は、上述される重鎖定常領域、重鎖可変領域又はCDR配列を含み得、各軽鎖は、上述される軽鎖定常領域、軽鎖可変領域又はCDR配列を含み得、ここで、抗体は、IL6Rに結合する。本開示の抗体は、例えば、IgG1、IgG2又はIgG4アイソタイプの完全長抗体であり得る。他の実施形態における本開示の抗体又はその抗原結合部分は、一本鎖可変フラグメント(scFv)抗体、又はFab若しくはFab'2フラグメントなどの抗体フラグメントであり得る。
【0018】
本開示はまた、前記抗体又はその抗原結合部分と異なる結合特異性を有する第2の官能基(例えば、二次抗体)に連結された、本開示の抗体又はその抗原結合部分を含み得る二重特異性分子を提供する。本開示はまた、細胞毒などの治療剤に連結された、本開示の抗体又はその抗原結合部分を含み得る、抗体-薬物コンジュゲートなどの免疫抱合体を提供する。別の態様において、本開示の抗体又はその抗原結合部分は、キメラ抗原受容体(CAR)の一部に作られ得る。T細胞及びNK細胞などの、抗原キメラ受容体を含み得る免疫細胞も提供される。本開示の抗体又はその抗原結合部分はまた、腫瘍溶解性ウイルスによってコードされるか又は腫瘍溶解性ウイルスとともに使用され得る。
【0019】
本開示の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、並びにこのような核酸を含み得る発現ベクター及びこのような発現ベクターを含み得る宿主細胞も、本開示によって包含される。宿主細胞を用いて、本開示の抗IL6R抗体又はその抗原結合部分を調製するための方法であって、(i)宿主細胞において抗体を発現する工程及び(ii)宿主細胞又はその細胞培養物から抗体を単離する工程を含み得る、方法も提供される。
【0020】
本開示の抗体又はその抗原結合部分、免疫抱合体、二重特異性分子、腫瘍溶解性ウイルス、CAR、CAR-T細胞、核酸分子、発現ベクター又は宿主細胞と、薬学的に許容される担体とを含み得る組成物も提供される。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、特定の疾患を治療するための治療剤、例えば、抗炎症剤、又は抗癌剤をさらに含有し得る。
【0021】
さらに別の態様において、本開示は、過剰なIL6/IL6Rシグナル伝達に関連する疾患を治療するための方法であって、治療有効量の、本開示の組成物を対象に投与することを含み得る、方法を提供する。
【0022】
疾患は、自己免疫疾患などの炎症性疾患であり得る。炎症性疾患としては、限定はされないが、関節リウマチ、全身型及び多関節型若年性特発性関節炎、巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、キャッスルマン病、サイトカイン放出症候群(例えば、キメラ抗原受容体T細胞が複合されたサイトカイン放出症候群)、シュニッツラー症候群、及び視神経脊髄炎が挙げられる。該方法は、限定はされないが、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗IL2R抗体、抗IL6抗体、及び抗IL17抗体を含む抗炎症剤を投与することをさらに含み得る。
【0023】
疾患は、腫瘍又は癌であり得る。腫瘍は、限定はされないが、非小細胞肺癌、及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含む、固形腫瘍又は血液腫瘍であり得る。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのさらなる抗癌抗体、例えば、抗VISTA抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗LAG-3抗体、抗CTLA-4抗体、抗TIM3抗体、抗STAT3抗体、及び/又は抗ROR1抗体がさらに投与され得る。
【0024】
本開示の他の特徴及び利点は、限定であると解釈されるべきではない以下の詳細な説明及び実施例から明らかになるであろう。本出願を通して引用される全ての参照文献、Genbankエントリ、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0025】
したがって、本発明の目的は、任意の既に公知の製品、その製品の作製方法、又はその製品の使用方法を本発明に包含することではなく、したがって、本出願人は、その権利を留保し、任意の既に公知の製品、プロセス、又は方法の放棄を本明細書に開示する。本発明は、USPTOの書面による記載及び実施可能要件(米国特許法第112条、第1段落)又はEPO(欧州特許条約(EPC)83条)を満たさない任意の製品、プロセス、又はその製品の作製方法又はその製品の使用方法を本発明の範囲内に包含することを意図しないことがさらに留意され、したがって、本出願人は、その権利を留保し、任意の既に記載された製品、その製品の作製方法、又はその製品の使用方法の放棄を本明細書に開示する。本発明の実施において、53条(c)EPC及び規則28(b)及び(c)EPCに準拠していることが有利であり得る。本出願の系統又は任意の他の系統又は任意の第三者の任意の先行出願における出願人の任意の登録特許の主題である任意の実施形態を明確に放棄する全ての権利が、明確に留保される。本明細書に記載されるいずれも、保証として解釈されるべきではない。
【0026】
本開示、特に、特許請求の範囲及び/又は段落において、「含む(comprises)」、「含まれる(comprised)」、「含む(comprising)」などの用語が、米国特許法による意味を有し得;例えば、それらは、「含む(includes)」、「含まれる(included)」、「含む(including)」などを意味し得ること;及び「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語が、米国特許法による意味を有し、例えば、それらは、明示されていない要素を許容するが、先行技術において見出されるか又は本発明の基本的又は新規な特徴に影響を与える要素を除外することが留意される。
【0027】
例として示されるが、本発明を記載される特定の実施形態のみに限定することは意図されていない、以下の詳細な説明が、添付の図面と併せて最もよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1A】捕捉ELISAにおける、ヒトIL6Rに対するマウス抗体1F7及び1D4の結合能力を示す。
【
図1B】捕捉ELISAにおける、ヒトIL6Rに対するマウス抗体1F7及び1A3、1B5及び1G8の結合能力を示す。
【
図1C】捕捉ELISAにおける、ヒトIL6Rに対するマウス抗体1F7及び3C2及び1G1の結合能力を示す。
【
図1D】捕捉ELISAにおける、ヒトIL6Rに対するマウス抗体1F7及び1H9及び1H7の結合能力を示す。
【
図2A】間接ELISAにおける、マカクIL6Rに対するマウス抗体1H7、1F7、1B5及び3C2の結合能力を示す。
【
図2B】間接ELISAにおける、マカクIL6Rに対するマウス抗体1A3、1D4及び1G8の結合能力を示す。
【
図2C】間接ELISAにおける、マカクIL6Rに対するマウス抗体1H9及び1G1の結合能力を示す。
【
図3A】細胞ベースの結合FACSアッセイにおける、ヒトIL6Rを発現するU266細胞に対するマウス抗体1F7及び1D4の結合能力を示す。
【
図3B】細胞ベースの結合FACSアッセイにおける、ヒトIL6Rを発現するU266細胞に対するマウス抗体1A3、1G8及び1B5の結合能力を示す。
【
図3C】細胞ベースの結合FACSアッセイにおける、ヒトIL6Rを発現するU266細胞に対するマウス抗体3C2及び1G1の結合能力を示す。
【
図3D】細胞ベースの結合FACSアッセイにおける、ヒトIL6Rを発現するU266細胞に対するマウス抗体1H9及び1H7の結合能力を示す。
【
図4A】リガンドブロッキングELISAにおける、ヒトIL6R-IL6結合に対するマウス抗体1F7及び1D4のブロッキング能力を示す。
【
図4B】リガンドブロッキングELISAにおける、ヒトIL6R-IL6結合に対するマウス抗体1A3、1G8及び1B5のブロッキング能力を示す。
【
図4C】リガンドブロッキングELISAにおける、ヒトIL6R-IL6結合に対するマウス抗体3C2及び1G1のブロッキング能力を示す。
【
図4D】リガンドブロッキングELISAにおける、ヒトIL6R-IL6結合に対するマウス抗体1H9及び1H7のブロッキング能力を示す。
【
図5A】ベンチマークブロッキングELISAにおける、ベンチマーク-ヒトIL6R結合をブロックする、マウス抗体1F7及び1D4の能力を示す。
【
図5B】ベンチマークブロッキングELISAにおける、ベンチマーク-ヒトIL6R結合をブロックする、マウス抗体1A3、1G8及び1B5の能力を示す。
【
図5C】ベンチマークブロッキングELISAにおける、ベンチマーク-ヒトIL6R結合をブロックする、マウス抗体3C2及び1G1の能力を示す。
【
図5D】ベンチマークブロッキングELISAにおける、ベンチマーク-ヒトIL6R結合をブロックする、マウス抗体1H9及び1H7の能力を示す。
【
図6A】細胞ベースの機能アッセイにおける、TF-1細胞のIL6媒介性増殖に対するマウス抗体1F7及び1G1の阻害効果を示す。
【
図6B】細胞ベースの機能アッセイにおける、TF-1細胞のIL6媒介性増殖に対するマウス抗体1D4及び1H9の阻害効果を示す。
【
図6C】細胞ベースの機能アッセイにおける、TF-1細胞のIL6媒介性増殖に対するマウス抗体1A3及び1B5の阻害効果を示す。
【
図6D】細胞ベースの機能アッセイにおける、TF-1細胞のIL6媒介性増殖に対するマウス抗体1G8及び1H7の阻害効果を示す。
【
図6E】細胞ベースの機能アッセイにおける、TF-1細胞のIL6媒介性増殖に対するマウス抗体3C2の阻害効果を示す。
【
図7A】捕捉ELISAにおける、ヒトIL6Rに対するキメラ抗体1B5及び1H7の結合能力を示す。
【
図7B】捕捉ELISAにおける、ヒトIL6Rに対するキメラ抗体1H9(B)の結合能力を示す。
【
図8A】リガンドブロッキングELISAにおける、ヒトIL6R-IL6結合に対するキメラ抗体1B5及び1H7のブロッキング能力を示す。
【
図8B】リガンドブロッキングELISAにおける、ヒトIL6R-IL6結合に対するキメラ抗体1H9(B)のブロッキング能力を示す。
【
図9A】ベンチマークブロッキングELISAにおける、ベンチマーク-ヒトIL6R結合をブロックするキメラ抗体1B5及び1H7の能力を示す。
【
図9B】ベンチマークブロッキングELISAにおける、ベンチマーク-ヒトIL6R結合をブロックするキメラ抗体1H9の能力を示す。
【
図10】HEK293T-SIE-B4レポーターアッセイにおける、IL6媒介性ルシフェラーゼ活性の阻害に対するキメラ抗体1H7、1B5、及び1H9の活性を示す。
【
図11】捕捉ELISAにおける、ヒトIL6Rに対するヒト化抗体hu1H7-V5の結合能力を示す。
【
図12】間接ELISAにおける、マカクIL6Rに対するヒト化抗体hu1H7-V5の結合能力を示す。
【
図13】細胞ベースの結合FACSアッセイにおける、ヒトIL6Rを発現するU266細胞に対するヒト化抗体hu1H7-V5の結合能力を示す。
【
図14】リガンドブロッキングELISAにおける、ヒトIL6R-IL6結合に対するヒト化抗体hu1H7-V5のブロッキング能力を示す。
【
図15】ベンチマークブロッキングELISAにおける、ベンチマーク-ヒトIL6R結合をブロックするヒト化抗体hu1H7-V5の能力を示す。
【
図16】HEK293T-SIE-B4レポーターアッセイにおける、IL6媒介性ルシフェラーゼ活性の阻害に対するヒト化抗体hu1H7-V5の活性を示す。
【
図17】抗体hu1H7-V5のタンパク質サーマルシフトアッセイ結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示がより容易に理解され得ることを確実にするために、特定の用語がまず定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通して記載される。
【0030】
「IL6R」という用語は、表面抗原分類126(CD126)としても知られるインターロイキン6受容体を指す。「IL6R」という用語は、変異体、アイソフォーム、ホモログ、オルソログ及びパラログを含み得る。例えば、ヒトIL6Rタンパク質に特異的な抗体は、ある場合において、サルなどの、ヒト以外の種に由来するIL6Rタンパク質と交差反応し得る。他の実施形態において、ヒトIL6Rタンパク質に特異的な抗体は、ヒトIL6Rタンパク質に完全に特異的であり得、他の種に対する又は他のタイプの交差反応性を示さないことがあり、又は全ての他の種ではなく特定の他の種に由来するIL6Rと交差反応し得る。
【0031】
「ヒトIL6R」という用語は、NP_000556.1のGenbank受託番号を有するヒトIL6Rのアミノ酸配列などの、ヒトに由来するアミノ酸配列を有するIL6Rタンパク質を指す。「マカクIL6R」という用語は、Genbank受託番号NP_001036198.2を有するアミノ酸配列などの、アカゲザル(Macaca mulatta)に由来するアミノ酸配列を有するIL6Rタンパク質を指す。
【0032】
本明細書において言及される「抗体」という用語は、全抗体及びその任意の抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)又は一本鎖を含む。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結される2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含み得る糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)及び重鎖定常領域から構成され得る。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3から構成され得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)及び軽鎖定常領域から構成され得る。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLから構成され得る。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域が散在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分類され得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0033】
本明細書において使用される際の、抗体の「抗原結合部分」(又は単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、IL6Rタンパク質)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能が、完全長抗体のフラグメントによって行われ得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」という用語に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含み得る二価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一のアームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);(vi)単離された相補性決定領域(CDR);並びに(viii)ナノボディ、単一可変ドメイン及び2つの定常ドメインを含有する重鎖可変領域を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、それらをVL及びVH領域が対合して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883を参照されたい)として作製可能にする合成リンカーによる、組換え方法を用いて結合され得る。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されることが意図される。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、これらのフラグメントは、インタクトな抗体と同じように有用性についてスクリーニングされる。
【0034】
本明細書において使用される際の「単離抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を指すことが意図される(例えば、IL6Rタンパク質に特異的に結合する単離抗体は、IL6Rタンパク質以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトIL6Rタンパク質に特異的に結合する単離抗体は、他の種に由来するIL6Rタンパク質などの他の抗原に対する交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0035】
本明細書において使用される際の「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を指す。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性及び親和性を示す。
【0036】
本明細書において使用される際の「マウス抗体」という用語は、フレームワーク及びCDR領域の両方がマウス生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含むことが意図される。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域はまた、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本開示のマウス抗体は、マウス生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダム若しくは部位特異的変異誘発又はインビボで体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される際の「マウス抗体」という用語は、別の哺乳動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列がマウスフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことは意図されていない。
【0037】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒト源に由来する遺伝物質を、ヒトに由来する遺伝物質と組み合わせることによって作製される抗体を指す。又はより一般に、キメラ抗体は、特定の種に由来する遺伝物質を、別の種に由来する遺伝物質とともに有する抗体である。
【0038】
本明細書において使用される際の「ヒト化抗体」という用語は、タンパク質配列が、ヒトにおいて天然に産生される抗体形態との類似性を増大するように修飾された、非ヒト種に由来する抗体を指す。
【0039】
「アイソタイプ」という用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgM又はIgG1)を指す。
【0040】
「抗原を認識する抗体」及び「抗原に特異的な抗体」という語句は、本明細書において、「抗原に特異的に結合する抗体」という用語と同義的に使用される。
【0041】
本明細書において使用される際、「ヒトIL6Rに特異的に結合する」抗体は、ヒトIL6Rタンパク質(場合により、1つ以上の非ヒトに由来するIL6Rタンパク質)に結合するが、非IL6Rタンパク質に実質的に結合しない抗体を指すことが意図される。好ましくは、抗体は、「高い親和性」、すなわち、5.0×10-8M以下、より好ましくは、1.0×10-8M以下、より好ましくは、7.0×10-9M以下のKDでヒトIL6Rタンパク質に結合する。
【0042】
本明細書において使用される際の、タンパク質又は細胞に「実質的に結合しない」という用語は、タンパク質又は細胞に結合しないか又は高い親和性で結合しない、すなわち、1.0×10-6M以上、より好ましくは、1.0×10-5M以上、より好ましくは、1.0×10-4M以上、より好ましくは、1.0×10-3M以上、さらにより好ましくは、1.0×10-2M以上のKDでタンパク質又は細胞に結合することを意味する。
【0043】
IgG抗体に対する「高い親和性」という用語は、標的抗原に対して1.0×10-6M以下、より好ましくは、5.0×10-8M以下、さらにより好ましくは、1.0×10-8M以下、さらにより好ましくは、3.0×10-9M以下、さらにより好ましくは、1.0×10-9M以下のKDを有する抗体を指す。しかしながら、「高い親和性」結合は、他の抗体アイソタイプに対して変化し得る。例えば、IgMアイソタイプに対する「高い親和性」結合は、10-6M以下、より好ましくは、10-7M以下、さらにより好ましくは、10-8M以下のKDを有する抗体を指す。
【0044】
本明細書において使用される際の「Kassoc」又は「Ka」という用語が、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度を指すことが意図される一方、本明細書において使用される際の「Kdis」又は「Kd」という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を指すことが意図される。本明細書において使用される際の「KD」という用語は、解離定数を指すことが意図され、これは、Kd対Kaの比率(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される。抗体についてのKD値は、当該技術分野において十分に確立された方法を用いて決定され得る。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を用いる、好ましくは、Biacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを用いることによる。
【0045】
最大半量の有効濃度としても知られている「EC50」という用語は、特定の曝露時間の後の、ベースラインと最大値との間の中間の応答を誘導する抗体の濃度を指す。
【0046】
半数阻害濃度としても知られている「IC50」という用語は、抗体の非存在と比べて50%だけ特定の生物学的又は生化学的機能を阻害する抗体の濃度を指す。
【0047】
「対象」という用語は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。「非ヒト動物」という用語は、全ての脊椎動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ニワトリ、両生類、及びは虫類などの、哺乳動物及び非哺乳動物を含むが、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ及びウマなどの哺乳動物が好ましい。
【0048】
「治療有効量」という用語は、疾患若しくは病態(癌など)に関連する症状を予防若しくは改善し、及び/又は疾患若しくは病態の重症度を低下させるのに十分な、本開示の抗体の量を意味する。治療有効量は、治療される病態に関して理解され、実際の有効量は、当業者によって容易に理解される。
【0049】
本開示の様々な態様が、以下のサブセクションにさらに詳細に記載される。
【0050】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、トシリズマブなどの既に記載された抗IL6R抗体と比較して、より良好でないとしても同等の、結合親和性/能力でヒトIL6Rに特異的に結合する。
【0051】
本開示の抗体又はその抗原結合部分は、トシリズマブなどの既に記載された抗IL6R抗体と比較して、同等の又はより高い活性で、IL6Rに対するIL6の結合、ひいてはIL6-IL6R-gp130複合体の生成をブロックする。
【0052】
本開示の抗体は、マウス、キメラ及びヒト化モノクローナル抗体である。
【0053】
本開示の抗体は、後述されるように、また以下の実施例において、構造的に及び化学的に特徴付けられるモノクローナル抗体である。抗体の重鎖/軽鎖可変領域のアミノ酸配列番号は、以下の表1に要約され、いくつかの抗体は、同じVH又はVLを共有する。抗体の重鎖定常領域は、例えば、配列番号41に記載されるアミノ酸配列を有するヒトIgG1重鎖定常領域であり得、抗体の軽鎖定常領域は、例えば、配列番号42に記載されるアミノ酸配列を有するヒトκ定常領域であり得る。本開示の抗体はまた、ヒトIgG4重鎖定常領域及びヒトκ軽鎖定常領域を含有し得る。
【0054】
【0055】
【0056】
表1中の重鎖可変領域CDR及び軽鎖可変領域CDRは、Kabat番号付けシステムによって定義されている。しかしながら、当該技術分野において周知であるように、CDR領域はまた、重鎖/軽鎖可変領域配列に基づいて、Chothia、及びIMGT、AbM、又はContact番号付けシステム/方法などの他のシステムによって決定され得る。
【0057】
本開示の詳細な重鎖又は軽鎖CDR配列は、CDR配列が他とかなり異なる1H9を除き、表2に記載される。7つの抗体が、正確に同じ軽鎖CDR3、並びにかなり類似する重鎖CDR1、CDR2、CDR3及び軽鎖CDR1、CDR2を含有することが分かる。
【0058】
ヒトIL6Rに結合する他の抗IL6R抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)は、本開示の抗IL6R抗体のVH及びVL配列(又はCDR配列)と「混合及び適合させる」ことができる。好ましくは、VH及びVL鎖(又はこのような鎖内のCDR)が、混合及び適合される場合、特定のVH/VL対合からのVH配列が、構造的に類似のVH配列で置き換えられる。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対合からのVL配列が、構造的に類似のVL配列で置き換えられる。
【0059】
したがって、一実施形態において、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、
(a)表1中で上に列挙されるアミノ酸配列を含み得る重鎖可変領域;及び
(b)表1中で上に列挙されるアミノ酸配列を含み得る軽鎖可変領域、又は別の抗IL6R抗体のVLを含み得、ここで、抗体は、ヒトIL6Rに特異的に結合する。
【0060】
別の実施形態において、本開示の抗体、又はその抗原結合部分は、
(a)表1中で上に列挙される重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3領域;及び
(b)表1中で上に列挙される軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3領域又は別の抗IL6R抗体のCDRを含み得、ここで、抗体は、ヒトIL6Rに特異的に結合する。
【0061】
さらに別の実施形態において、抗体、又はその抗原結合部分は、ヒトIL6Rに結合する他の抗体のCDR、例えば、重鎖可変領域からのCDR1及び/又はCDR3と組み合わされた抗IL6R抗体の重鎖可変CDR2領域、並びに/或いは異なる抗IL6R抗体の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2、及び/又はCDR3を含む。
【0062】
さらに、CDR1及び/又はCDR2ドメインから独立して、CDR3ドメインは、単独で、同種抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができること、及び複数の抗体が、予想通りに、共通のCDR3配列に基づいて、同じ結合特異性を有して生成され得ることが当該技術分野において周知である。例えば、Klimka et al.,British J.of Cancer 83(2):252-260(2000);Beiboer et al.,J.Mol.Biol.296:833-849(2000);Rader et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:8910-8915(1998);Barbas et al.,J.Am.Chem.Soc.116:2161-2162(1994);Barbas et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:2529-2533(1995);Ditzel et al.,J.Immunol.157:739-749(1996);Berezov et al.,BIAjournal 8:Scientific Review 8(2001);Igarashi et al.,J.Biochem(Tokyo)117:452-7(1995);Bourgeois et al.,J.Virol 72:807-10(1998);Levi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:4374-8(1993);Polymenis and Stoller,J.Immunol.152:5218-5329(1994)及びXu and Davis,Immunity 13:37-45(2000)を参照されたい。また、米国特許第6,951,646号明細書;同第6,914,128号明細書;同第6,090,382号明細書;同第6,818,216号明細書;同第6,156,313号明細書;同第6,827,925号明細書;同第5,833,943号明細書;同第5,762,905号明細書及び同第5,760,185号明細書を参照されたい。これらの参照文献はそれぞれ、全体が参照により本明細書に援用される。
【0063】
したがって、別の実施形態において、本開示の抗体は、抗IL6R抗体の重鎖可変領域のCDR2、並びに抗IL6R抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域の少なくともCDR3、又は別の抗IL6R抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR3を含み得、ここで、抗体は、ヒトIL6Rに特異的に結合することが可能である。これらの抗体は、好ましくは、(a)IL6Rとの結合について競合し;(b)機能的特性を保持し;(c)同じエピトープに結合し;及び/又は(d)本開示の抗IL6R抗体と同様の結合親和性を有する。さらに別の実施形態において、抗体は、抗IL6R抗体の軽鎖可変領域のCDR2、又は別の抗IL6R抗体の軽鎖可変領域のCDR2をさらに含み得、ここで、抗体は、ヒトIL6Rに特異的に結合することが可能である。別の実施形態において、本開示の抗体は、抗IL6R抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR1、又は別の抗IL6R抗体の重鎖及び/若しくは軽鎖可変領域のCDR1をさらに含み得、ここで、抗体は、ヒトIL6Rに特異的に結合することが可能である。
【0064】
[保存的修飾]
別の実施形態において、本開示の抗体は、1つ以上の保存的修飾だけ、本開示の抗IL6R抗体のものと異なるCDR1、CDR2及びCDR3配列の重鎖及び/又は軽鎖可変領域配列を含み得る。特定の保存的配列修飾が、抗原結合を除去せずに作製され得ることが、当該技術分野において理解される。例えば、Brummell et al.,(1993)Biochem 32:1180-8;de Wildt et al.,(1997)Prot.Eng.10:835-41;Komissarov et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:26864-26870;Hall et al.,(1992)J.Immunol.149:1605-12;Kelley and O'Connell(1993)Biochem.32:6862-35;Adib-Conquy et al.,(1998)Int.Immunol.10:341-6及びBeers et al.,(2000)Clin.Can.Res.6:2835-43を参照されたい。
【0065】
したがって、一実施形態において、抗体は、CDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み得る重鎖可変領域及び/又はCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み得、ここで:
(a)重鎖可変領域CDR1配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み得;及び/又は
(b)重鎖可変領域CDR2配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み得;及び/又は
(c)重鎖可変領域CDR3配列は、上記の表1に列挙される配列、及び/又はその保存的修飾を含み得;及び/又は
(d)軽鎖可変領域CDR1、及び/又はCDR2、及び/又はCDR3配列は、上記の表1に列挙される配列;及び/又はその保存的修飾を含み得;
(e)抗体は、ヒトIL6Rに特異的に結合する。
【0066】
本開示の抗体は、ヒトIL6Rに対する高親和性結合、及びIL6R-IL6結合に対するブロッキング活性などの、上述される以下の機能的特性の1つ以上を有する。
【0067】
様々な実施形態において、抗体は、例えば、マウス、ヒト、ヒト化又はキメラ抗体であり得る。
【0068】
本明細書において使用される際、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に実質的に影響を与えないか又は変化させないアミノ酸修飾を指すことが意図される。このような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加及び欠失を含む。修飾は、部位特異的変異誘発及びPCR媒介変異誘発などの、当該技術分野において公知の標準的な技術によって、本開示の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されたものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β-分枝側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本開示の抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基で置換され得、改変された抗体が、本明細書に記載される機能アッセイを用いて、保持された機能(すなわち、上記の機能)について試験され得る。
【0069】
本開示の抗体は、修飾された抗体を操作するように、出発材料として本開示の抗IL6R抗体のVH/VL配列の1つ以上を有する抗体を用いて調製され得る。抗体は、1つ又は両方の可変領域(すなわち、VH及び/又はVL)内、例えば、1つ以上のCDR領域内及び/又は1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することによって操作され得る。それに加えて又はその代わりに、抗体は、例えば抗体のエフェクター機能を改変するために、定常領域内の残基を修飾することによって操作され得る。
【0070】
特定の実施形態において、CDRグラフト法は、抗体の可変領域を操作するのに使用され得る。抗体は、主に、6つの重鎖及び軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して、標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列は、CDRの外部の配列より個々の抗体間でより異なっている。CDR配列が、ほとんどの抗体-抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体からのフレームワーク配列にグラフトされた特定の天然抗体からのCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmann et al.,(1998)Nature 332:323-327;Jones et al.,(1986)Nature 321:522-525;Queen et al.,(1989)Proc.Natl.Acad.を参照されたい。U.S.A.86:10029-10033;米国特許第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書も参照されたい)。
【0071】
したがって、本開示の別の実施形態は、上述される、本開示の配列を含み得るCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み得る重鎖可変領域、及び/又は上述される、本開示の配列を含み得るCDR1、CDR2、及びCDR3配列を含み得る軽鎖可変領域を含み得る、単離モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分に関する。これらの抗体が、本開示のモノクローナル抗体のVH及びVL CDR配列を含む一方、それらは、異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0072】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベース又は刊行されている参照文献から得られる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列の配列データベース(www.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで、インターネットで利用可能)、並びにKabat et al.,(1991)(上記に引用される);Tomlinson et al.,(1992)J.Mol.Biol.227:776-798;及びCox et al.,(1994)Eur.J.Immunol.24:827-836(これらのそれぞれの内容が、参照により本明細書に明示的に援用される)において見出され得る。別の例として、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列DNA配列は、Genbankデータベースにおいて見出され得る。例えば、HCo7 HuMAbマウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、添付のGenbank受託番号1-69(NG--0010109、NT--024637及びBC070333)、3-33(NG--0010109及びNT--024637)並びに3-7(NG--0010109&NT--024637)において利用可能である。別の例として、HCo12 HuMAb マウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、添付のGenbank受託番号1-69(NG--0010109、NT--024637及びBC070333)、5-51(NG--0010109及びNT--024637)、4-34(NG--0010109及びNT--024637)、3-30.3(CAJ556644)並びに3-23(AJ406678)において利用可能である。
【0073】
抗体タンパク質配列は、当業者に周知の、Gapped BLAST(Altschul et al.,(1997)、上記を参照)と呼ばれる配列類似性検索法の1つを用いて、コンパイルされたタンパク質配列データベースに対して比較される。
【0074】
本開示の抗体において使用するための好ましいフレームワーク配列は、本開示の抗体によって使用されるフレームワーク配列と構造的に類似のものである。VH CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子において見出されるものと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフトされ得、又はCDR配列は、生殖細胞系列配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域にグラフトされ得る。例えば、ある場合において、抗体の抗原結合能力を維持又は強化するために、フレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが分かっている(例えば、米国特許第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書を参照されたい)。
【0075】
別のタイプの可変領域修飾は、VH及び/又はVL CDR1、CDR2及び/又はCDR3領域内のアミノ酸残基を変異させることであり、それによって、対象とする抗体の1つ以上の結合特性(例えば、親和性)を改善する。部位特異的変異誘発又はPCR媒介変異誘発は、変異を導入するために行われ得、抗体結合に対する効果、又は対象とする他の機能的特性が、当該技術分野において公知のインビトロ又はインビボアッセイにおいて評価され得る。好ましくは、保存的修飾(当該技術分野において公知であるように)が導入される。変異は、アミノ酸置換、付加又は欠失であり得るが、好ましくは、置換である。さらに、典型的に、CDR領域内の1、2、3、4又は5つ以下の残基が改変される。
【0076】
したがって、別の実施形態において、本開示は、(a)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含み得るVH CDR1領域;(b)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含み得るVH CDR2領域;(c)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含み得るVH CDR3領域;(d)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含み得るVL CDR1領域;(e)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含み得るVL CDR2領域;及び(f)本開示の配列、又は1、2、3、4若しくは5つのアミノ酸置換、欠失若しくは付加を有するアミノ酸配列を含み得るVL CDR3領域を含む重鎖可変領域を含み得る、単離された抗IL6Rモノクローナル抗体、又はその抗原結合部分を提供する。
【0077】
本開示の操作された抗体は、修飾が、例えば、抗体の特性を改善するために、VH及び/又はVL内のフレームワーク残基に行われたものを含む。典型的に、このようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、一手法は、1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列へと「復帰変異(backmutate)」させることである。より詳細には、体細胞変異を起こした抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体フレームワーク配列を、抗体が由来する生殖細胞系列配列と比較することによって同定され得る。
【0078】
別のタイプのフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それによって、抗体の潜在的な免疫原性を低下させるために、フレームワーク領域内、或いは1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基を変異させることを含む。この手法は、「脱免疫化」とも呼ばれ、米国特許出願公開第20030153043号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0079】
フレームワーク若しくはCDR領域内で行われる修飾に加えて、又はその代わりに、本開示の抗体は、典型的に、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合、及び/又は抗原依存的細胞毒性などの、抗体の1つ以上の機能的特性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように操作され得る。さらに、本開示の抗体は、同様に抗体の1つ以上の機能的特性を改変するために化学修飾され得るか(例えば、1つ以上の化学部分が、抗体に結合され得る)又はそのグリコシル化を改変するために修飾され得る。
【0080】
一実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域におけるシステイン残基の数が変化される、例えば、増加又は減少されるように修飾される。この手法は、米国特許第5,677,425号明細書にさらに記載されている。CH1のヒンジ領域におけるシステイン残基の数は、例えば、軽鎖及び重鎖の組み立てを容易にするために、又は抗体の安定性を増大若しくは低下させるために変化される。
【0081】
別の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生体半減期を減少させるように変異される。より詳細には、1つ以上のアミノ酸変異は、抗体が、天然Fc-ヒンジ領域SpA結合と比べて損なわれたブドウ球菌(Staphylococcyl)プロテインA(SpA)結合を有するように、Fc-ヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン境界領域に導入される。この手法は、米国特許第6,165,745号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0082】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化は、修飾される。例えば、非グリコシル化抗体が作製され得る(すなわち、抗体は、グリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗原に対する抗体の親和性を増大するために改変され得る。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ以上の部位を改変することによって達成され得る。例えば、1つ以上のアミノ酸置換は、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位をなくし、それによって、その部位におけるグリコシル化をなくすように行われ得る。このようなグリコシル化は、抗原に対する抗体の親和性を増大し得る。例えば、米国特許第5,714,350号明細書及び同第6,350,861号明細書を参照されたい。
【0083】
それに加えて又はその代わりに、改変されたタイプのグリコシル化を有する抗体、例えば、減少した量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体又は増加したバイセクティングGlcNac構造を有する抗体が作製され得る。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増大又は減少することが実証されている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現することによって達成され得る。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当該技術分野において記載されており、本開示の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用され、それによって、改変されたグリコシル化を有する抗体を産生することができる。例えば、細胞株Ms704、Ms705、及びMs709は、フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠いており、Ms704、Ms705、及びMs709細胞株において発現される抗体が、それらの炭水化物においてフコースを欠くようになっている。Ms704、Ms705、及びMs709 FUT8-/-細胞株を、2つの置換ベクターを用いて、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的化破壊によって生成した(米国特許出願公開第20040110704号明細書及びYamane-Ohnuki et al.,(2004)Biotechnol Bioeng 87:614-22を参照されたい)。別の例として、欧州特許第1,176,195号明細書には、このような細胞株において発現される抗体が、α-1,6結合関連酵素を減少させるか又は除去することによって低フコシル化を示すように、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子が機能的に破壊された細胞株が記載されている。また、欧州特許第1,176,195号明細書には、抗体のFc領域に結合するか又は酵素活性を有さない、フコースのN-アセチルグルコサミンへの付加に対して低い酵素活性を有する細胞株、例えばラット骨髄腫細胞株YB2/0(ATCC CRL 1662)が記載されている。PCT公報国際公開第03/035835号パンフレットには、フコースをAsn(297)連結炭水化物に結合する能力を低下させ、その宿主細胞において発現される抗体の低フコシル化ももたらす変異CHO細胞株であるLec13細胞が記載されている(Shields et al.,(2002)J.Biol.Chem.277:26733-26740も参照)。修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体はまた、PCT公報国際公開第06/089231号パンフレットに記載されるように、ニワトリ卵において産生され得る。或いは、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、アオウキクサ属(Lemna)などの植物細胞において産生され得る。植物系における抗体の産生のための方法は、2006年8月11日に出願されたAlston&Bird LLP代理人整理番号040989/314911号に対応する米国特許出願に開示されている。抗体のフコース残基は、フコシダーゼ酵素を用いて切断され得;例えば、フコシダーゼα-L-フコシダーゼは、抗体からフコシル残基を除去する(Tarentino et al.,(1975)Biochem.14:5516-23)。
【0084】
本開示によって想定される本明細書の抗体の別の修飾は、ペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生体(例えば、血清)半減期を増加させるために、ペグ化され得る。抗体をペグ化するために、抗体、又はそのフラグメントは、典型的に、1つ以上のPEG基が抗体又は抗体フラグメントに結合される条件下で、PEGの反応性エステル又はアルデヒド誘導体などのポリエチレングリコール(PEG)と反応される。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(又は類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応又はアルキル化反応によって行われる。本明細書において使用される際、「ポリエチレングリコール」という用語は、モノ(C1~C10)アルコキシ-又はアリールオキシ-ポリエチレングリコール又はポリエチレングリコール-マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するのに使用されているPEGの形態のいずれかを包含することが意図される。特定の実施形態において、ペグ化される抗体は、非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は、当該技術分野において公知であり、本開示の抗体に適用され得る。例えば、欧州特許第154 316号明細書及び欧州特許第0 401 384号明細書を参照されたい。
【0085】
本開示の抗体は、その異なるクラスを検出及び/又は区別するために、それらの様々な物理的特性によって特徴付けられ得る。
【0086】
例えば、抗体は、軽鎖又は重鎖可変領域のいずれかにおける1つ以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗体の増加した免疫原性又は改変された抗原結合による抗体のpKの改変をもたらし得る(Marshall et al(1972)Annu Rev Biochem 41:673-702;Gala and Morrison(2004)J Immunol 172:5489-94;Wallick et al(1988)J Exp Med 168:1099-109;Spiro(2002)Glycobiology 12:43R-56R;Parekh et al(1985)Nature 316:452-7;Mimura et al.,(2000)Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化は、N-X-S/T配列を含むモチーフにおいて起こることが知られている。ある場合には、可変領域グリコシル化を含まない抗IL6R抗体を有することが好ましい。これは、可変領域にグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択することによって、又はグリコシル化領域内の残基を変異させることによって、達成され得る。
【0087】
好ましい実施形態において、抗体は、アスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミド化は、N-G又はD-G配列において起こり得、結合をポリペプチド鎖に導入し、その安定性を低下させる(イソアスパラギン酸効果)イソアスパラギン酸残基の生成をもたらし得る。
【0088】
各抗体は、一般に6~9.5のpH範囲内の特有の等電点(pI)を有する。IgG1抗体のpIは、典型的に、7~9.5のpH範囲内であり、IgG4抗体のpIは、典型的に、6~8のpH範囲内である。正常範囲外のpIを有する抗体が、インビボ条件下でいくらかのアンフォールディング及び不安定性を有し得ると推測されている。したがって、正常範囲内のpI値を有する抗IL6R抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲内のpIを有する抗体を選択することによって、又は荷電表面残基を変異させることによって達成され得る。
【0089】
別の態様において、本開示は、本開示の抗体の重鎖及び/又は軽鎖可変領域、又はCDRをコードする核酸分子を提供する。核酸は、全細胞で、細胞溶解物で、又は部分的に精製された若しくは実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、標準的な技術によって、他の細胞成分又は他の汚染物質、例えば、他の細胞核酸又はタンパク質から精製されたとき、「単離された」又は「実質的に純粋にされた」。本開示の核酸は、例えば、DNA又はRNAであり得、イントロン配列を含んでいても又は含まなくてもよい。好ましい実施形態において、核酸は、cDNA分子である。
【0090】
本開示の核酸は、標準的な分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載されるヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)によって発現される抗体について、ハイブリドーマによって作られる抗体の軽鎖及び重鎖をコードするcDNAは、標準的なPCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得られる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を用いて)得られる抗体について、このような抗体をコードする核酸が、遺伝子ライブラリーから回収され得る。
【0091】
本開示の好ましい核酸分子は、IL6Rモノクローナル抗体のVH及びVL配列又はCDRをコードするものを含む。VH及びVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたら、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域遺伝子を完全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子又はscFv遺伝子に変換するために、標準的な組換えDNA技術によってさらに操作され得る。これらの操作において、VL-又はVHをコードするDNAフラグメントは、抗体定常領域又はフレキシブルリンカーなどの別のタンパク質をコードする別のDNAフラグメントに作動可能に連結される。この文脈において使用される際の「作動可能に連結される」という用語は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に留まるように、2つのDNAフラグメントが結合されることを意味することが意図される。
【0092】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを、重鎖定常領域(CH1、CH2及びCH3)をコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長重鎖遺伝子に変換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において公知であり、これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得られる。重鎖定常領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域であり得るが、最も好ましくは、IgG1又はIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子について、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする別のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0093】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを、軽鎖定常領域、CLをコードする別のDNA分子に作動可能に連結することによって、完全長軽鎖遺伝子(並びにFab軽鎖遺伝子)に変換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は、当該技術分野において公知であり、これらの領域を含むDNAフラグメントは、標準的なPCR増幅によって得られる。好ましい実施形態において、軽鎖定常領域は、κ又はλ定常領域であり得る。
【0094】
scFv遺伝子を生成するために、VH及びVL配列が、フレキシブルリンカーによって結合されたVL及びVH領域を有する連続一本鎖タンパク質として発現され得るように、VH-及びVLをコードするDNAフラグメントは、フレキシブルリンカーをコードする別のフラグメントに作動可能に連結される(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-554を参照されたい)。
【0095】
本開示のモノクローナル抗体(mAb)は、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495の周知の体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)技術を用いて産生され得る。モノクローナル抗体を産生するための他の実施形態は、Bリンパ球のウイルス又は発癌性形質転換及びファージディスプレイ技術を含む。キメラ又はヒト化抗体も、当該技術分野において周知である。例えば、米国特許第4,816,567号明細書;同第5,225,539号明細書;同第5,530,101号明細書;同第5,585,089号明細書;同第5,693,762号明細書及び同第6,180,370号明細書(これらの内容は、全体が参照により本明細書に具体的に援用される)を参照されたい。
【0096】
本開示の抗体はまた、例えば、当該技術分野において周知であるような、組換えDNA技術及び遺伝子トランスフェクション方法の組合せを用いて、宿主細胞トランスフェクトーマ中で産生され得る(例えば、Morrison,S.(1985)Science 229:1202)。一実施形態において、標準的な分子生物学技術によって得られる部分的又は完全長軽鎖及び重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳調節配列に作動可能に連結されるように、1つ以上の発現ベクターに挿入される。これに関して、「作動可能に連結される」という用語は、ベクター内の転写及び翻訳調節配列が、抗体遺伝子の転写及び翻訳を調節する意図された機能を果たすように、抗体遺伝子が、ベクターにライゲートされることを意味することが意図される。
【0097】
「調節配列」という用語は、抗体遺伝子の転写又は翻訳を制御するプロモーター、エンハンサー及び他の発現制御要素(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことが意図される。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology.Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルのタンパク質発現を指向するウイルス要素、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルスに由来するプロモーター及び/又はエンハンサー、例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP)及びポリオーマウイルスエンハンサーを含む。或いは、ユビキチンプロモーター又はβ-グロビンプロモーターなどの非ウイルス調節配列が使用され得る。さらにまた、調節要素は、SV40初期プロモーター及びヒトT細胞白血病ウイルス1型の長い末端反復配列からの配列を含む、SRαプロモーター系などの異なる源に由来する配列から構成される(Takebe et al.,(1988)Mol.Cell.Biol.8:466-472)。発現ベクター及び発現制御配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0098】
抗体軽鎖遺伝子及び抗体重鎖遺伝子は、同じ又は別個の発現ベクターに挿入され得る。好ましい実施形態において、可変領域は、VHセグメントが、ベクター内のCHセグメントに作動可能に連結され、VLセグメントが、ベクター内のCLセグメントに作動可能に連結されるように、所望のアイソタイプの重鎖定常及び軽鎖定常領域を既にコードする発現ベクターに可変領域を挿入することによって、任意の抗体アイソタイプの完全長抗体遺伝子を生成するために使用される。それに加えて又はその代わりに、組換え発現ベクターは、宿主細胞からの抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドが、抗体鎖遺伝子のアミノ末端にインフレームで連結されるように、ベクターにクローニングされ得る。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチド又は異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質に由来するシグナルペプチド)であり得る。
【0099】
抗体鎖遺伝子及び調節配列に加えて、本開示の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば、複製起点)及び選択可能マーカー遺伝子を有し得る。選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216号明細書;同第4,634,665号明細書及び同第5,179,017号明細書を参照されたい)。例えば、典型的に、選択可能マーカー遺伝子は、ベクターが導入されている宿主細胞において、G418、ハイグロマイシン又はメトトレキサートなどの薬剤に対する耐性を与える。好ましい選択可能マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr-宿主細胞における使用のため)及びneo遺伝子(G418選択のため)を含む。
【0100】
軽鎖及び重鎖の発現のため、重鎖及び軽鎖をコードする発現ベクターは、標準的な技術によって宿主細胞にトランスフェクトされる。「トランスフェクション」という用語の様々な形態が、外来性DNAを原核生物又は真核生物宿主細胞に導入するために一般的に使用される多種多様な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを包含することが意図される。原核生物又は真核生物宿主細胞のいずれにおいても本開示の抗体を発現させることが理論上可能であるが、真核細胞、特に哺乳動物細胞が、原核細胞より、適切に折り畳まれた免疫学的に活性な抗体を組み立て、分泌する可能性が高いため、このような真核細胞、最も好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が最も好ましい。
【0101】
本開示の組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)(例えば、R.J.Kaufman and P.A.Sharp(1982)J.Mol.Biol.159:601-621に記載されているような、DHFR選択可能マーカーとともに使用される、Urlaub and Chasin,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-4220に記載されている、dhfr-CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞及びSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞との使用について、別の好ましい発現系は、国際公開第87/04462号パンフレット、国際公開第89/01036号パンフレット及び欧州特許第338,841号明細書に開示されるGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターが、哺乳動物宿主細胞に導入されるとき、抗体は、宿主細胞における抗体の発現又は、より好ましくは、宿主細胞が増殖される培養培地中への抗体の分泌を可能にするのに十分な期間にわたって、宿主細胞を培養することによって産生される。抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて、培養培地から回収され得る。
【0102】
別の態様において、本開示は、少なくとも2つの異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成するために、少なくとも1つの他の機能分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質(例えば、受容体に対する別の抗体又はリガンド)に連結された本開示の1つ以上の抗体を含み得る二重特異性分子を特徴とする。したがって、本明細書において使用される際、「二重特異性分子」は、3つ以上の特異性を有する分子を含む。
【0103】
一実施形態において、二重特異性分子は、抗Fc結合特異性及び抗IL6R結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。第3の特異性は、抗促進因子(anti-enhancement factor)(EF)、例えば、細胞毒性活性に関与する表面タンパク質に結合し、それによって標的細胞に対する免疫応答を増加させる分子に関するものであり得る。例えば、抗促進因子は、細胞毒性T細胞(例えばCD2、CD3、CD8、CD28、CD4、若しくはICAM-1を介して)又は他の免疫細胞に結合して、標的細胞に対する増加した免疫応答をもたらし得る。
【0104】
二重特異性分子は、多くの異なるフォーマット及びサイズであり得る。サイズスペクトルの一方の側では、二重特異性分子は、同一の特異性の2つの結合アームを有する代わりに、それぞれ異なる特異性を有する2つの結合アームを有することを除いて、従来の抗体フォーマットを保持している。他方の側では、ペプチド鎖によって連結される2つの一本鎖抗体フラグメント(scFv's)、いわゆるBs(scFv)2構築物からなる二重特異性分子である。中間サイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーによって連結される2つの異なるF(ab)フラグメントを含む。これらの及び他のフォーマットの二重特異性分子は、遺伝子組換え、体細胞ハイブリダイゼーション、又は化学的方法によって調製され得る。例えば、Kufer et al(上記に引用される);Cao and Suresh,Bioconjugate Chemistry,9(6),635-644(1998);及びvan Spriel et al.,Immunology Today,21(8),391-397(2000)、並びにそれらの中に引用される参照文献を参照されたい。
【0105】
さらに別の態様において、本発明は、診断方法、組成物及びキットを提供する。ある実施形態において、本発明の抗体は、細胞又は組織におけるIL6Rαの存在及び発現を判定するため、使用される。ある実施形態において、診断は予後を示し、且つ/又は治療及び/若しくはフォローアップ治療を方向づける。例えば、IL6シグナル伝達は、自己免疫疾患及び/又はIL6/IL6R関連腫瘍又は癌を含む、炎症性疾患の治療に対して標的化されている。ある実施形態において、本発明の抗体は、自己免疫疾患及び/又はIL6/IL6R関連腫瘍又は癌の予後及び適切な治療及びフォローアップを決定するための診断キット又は方法において利用される。
【0106】
本開示の抗体は、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)などの免疫抱合体を形成するために、治療剤にコンジュゲートされ得る。好適な治療剤としては、抗炎症剤及び抗癌剤が挙げられる。ADCにおいて、抗体及び治療剤は、好ましくは、ペプチジル、ジスルフィド、又はヒドラゾンリンカーなどの切断可能なリンカーを介してコンジュゲートされる。より好ましくは、リンカーは、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、Ser、又はGluなどのペプチジルリンカーである。ADCは、米国特許第7,087,600号明細書;同第6,989,452号明細書;及び同第7,129,261号明細書;PCT公報国際公開第02/096910号パンフレット;国際公開第07/038,658号パンフレット;国際公開第07/051,081号パンフレット;国際公開第07/059,404号パンフレット;国際公開第08/083,312号パンフレット;及び国際公開第08/103,693号パンフレット;米国特許出願公開第20060024317号明細書;同第20060004081号明細書;及び同第20060247295号明細書(これらの開示内容は、参照により本明細書に援用される)に記載されているように調製され得る。
【0107】
腫瘍溶解性ウイルスは、優先的に、癌細胞を感染させ、死滅させる。本開示の抗体は、腫瘍溶解性ウイルスとともに使用され得る。或いは、本開示の抗体をコードする腫瘍溶解性ウイルスは、ヒトの身体に導入され得る。
【0108】
抗IL6R scFvを含むキメラ抗原受容体(CAR)も、本明細書において提供され、この抗IL6R scFvは、本明細書に記載されるCDR及び重鎖/軽鎖可変領域を含み得る。
【0109】
抗IL6R CARは、(a)抗IL6R scFvを含み得る細胞外抗原結合ドメイン;(b)膜貫通ドメイン;及び(c)細胞内シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0110】
CARは、新生受容体を小胞体に指向する、細胞外抗原結合ドメインのN末端におけるシグナルペプチド、及び受容体を結合のためにより多く利用できるようにする、細胞外抗原結合ドメインのN末端におけるヒンジペプチドを含有し得る。CARは、好ましくは、細胞内シグナル伝達ドメインにおいて、主要な細胞内シグナル伝達ドメイン及び1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメインを含む。主に使用される、最も有効な主要な細胞内シグナル伝達ドメインは、ITAMを含むCD3-ζ細胞質ドメインであり、そのリン酸化が、T細胞活性化をもたらす。共刺激シグナル伝達ドメインは、CD28、CD137及びOX40などの共刺激タンパク質に由来し得る。
【0111】
CARは、T細胞増殖、持続性、及び抗腫瘍活性を促進する因子、例えば、サイトカイン、及び共刺激リガンドをさらに追加し得る。
【0112】
本明細書において提供されるCARを含み得る操作された免疫エフェクター細胞も提供される。ある実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞、NK細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、造血幹細胞、多能性幹細胞、又は胚性幹細胞である。ある実施形態において、免疫エフェクター細胞は、T細胞である。
【0113】
別の態様において、本開示は、薬学的に許容される担体とともに製剤化される、本開示の1つ以上の抗体((又はその抗原結合部分、又は二重特異性体、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体)を含み得る医薬組成物を提供する。抗体(又はその抗原結合部分、又は二重特異性体、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体)は、組成物が、2つ以上の抗体(又はその抗原結合部分、又は二重特異性体、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体)を含むとき、別々に投与され得る。組成物は、1つ以上のさらなる薬学的に有効な成分、例えば、別の抗体又は薬剤、例えば、抗腫瘍薬又は抗炎症剤を任意に含有し得る。
【0114】
医薬組成物は、あらゆる賦形剤を含み得る。使用され得る賦形剤は、担体、表面活性剤、増粘剤又は乳化剤、固体結合剤、分散若しくは懸濁補助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング、崩壊剤、滑沢剤、甘味料、防腐剤、等張剤、及びそれらの組合せを含む。好適な賦形剤の選択及び使用が、Gennaro,ed.,Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Ed.(Lippincott Williams&Wilkins 2003)(その開示内容は、参照により本明細書に援用される)に教示されている。
【0115】
好ましくは、医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄又は表皮投与(例えば、注射又は注入による)に好適である。投与経路に応じて、有効成分は、酸の作用及びそれを不活性にし得る他の天然条件からそれを保護するための材料でコーティングされ得る。本明細書において使用される際の「非経口投与」という語句は、経腸及び局所投与以外の、通常注射による投与方法を意味し、限定はされないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外並びに胸骨内注射及び注入を含む。或いは、本開示の抗体は、経口(non-parenteral)経路によって、例えば、局所、表皮又は粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、経口、経膣、直腸、舌下又は局所的に投与され得る。
【0116】
医薬組成物は、滅菌水溶液又は分散体の形態であり得る。それらはまた、マイクロエマルジョン、リポソーム、又は他の高い薬物濃度に好適な規則的な構造で製剤化され得る。
【0117】
単一剤形を製造するために担体材料と組み合わされ得る有効成分の量は、治療される対象及び特定の投与方法に応じて変化し、一般に、治療効果を生じる組成物の量である。一般に、100%のうち、この量は、薬学的に許容される担体と組み合わせて、約0.01%~約99%の有効成分、好ましくは、約0.1%~約70%、最も好ましくは、約1%~約30%の有効成分の範囲である。
【0118】
投与レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療応答)を提供するために調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、経時的に数回の分割投与で投与されてもよく、又は用量は、治療状況の緊急性により示されるとき比例的に減少若しくは増加され得る。投与の容易性及び投与量の均一性のため、非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが特に有利である。本明細書において使用される際の投与単位形態は、治療される対象に対する単位投与量として適した物理的に分離した単位を指し;各単位は、必要な医薬担体とともに、所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の有効成分を含有する。或いは、抗体は、あまり頻繁でない投与が必要とされる場合、徐放性製剤として投与され得る。
【0119】
組成物の投与のため、投与量は、約0.0001~100mg/kgの範囲であり得る。
【0120】
本開示の抗IL6R抗体又はその抗原結合部分、又は二重特異性体、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体の「治療有効投与量」は、好ましくは、疾患の症状の重症度の低下、疾患の無症状期間の頻度及び持続時間の増加、又は疾患の苦痛に起因する障害若しくは身体障害の予防をもたらす。例えば、腫瘍を有する対象の治療について、「治療有効投与量」は、好ましくは、非治療対象と比べて、少なくとも約20%、より好ましくは、少なくとも約40%、さらにより好ましくは、少なくとも約60%、さらにより好ましくは、少なくとも約80%だけ腫瘍増殖を阻害する。治療有効量の治療用抗体は、腫瘍サイズを減少させるか、又は典型的にヒトであるか又は別の哺乳動物であり得る対象において症状を改善することができる。
【0121】
医薬組成物は、インプラント、経皮パッチ、及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤であり得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸が使用され得る。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0122】
特定の実施形態において、本開示のモノクローナル抗体は、インビボで適切な分布を確実にするため製剤化され得る。例えば、本開示の治療用抗体が、血液脳関門を通過することを確実にするために、それらは、リポソーム中で製剤化され得、これらは、特定の細胞又は器官への選択的輸送を促進するための標的分子をさらに含み得る。例えば米国特許第4,522,811号明細書;同第5,374,548号明細書;同第5,416,016号明細書;及び同第5,399,331号明細書;V.V.Ranade(1989)J.Clin.Pharmacol.29:685;Umezawa et al.,(1988)Biochem.Biophys.Res.Commun.153:1038;Bloeman et al.,(1995)FEBS Lett.357:140;M.Owais et al.,(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:180;Briscoe et al.,(1995)Am.J.Physiol.1233:134;Schreier et al.,(1994)J.Biol.Chem.269:9090;Keinanen and Laukkanen(1994)FEBS Lett.346:123;及びKillion and Fidler(1994)Immunomethods 4:273を参照されたい。
【0123】
本開示の抗体又はその抗原結合部分、又は二重特異性体、CAR-T細胞、腫瘍溶解性ウイルス、免疫抱合体を含み得る医薬組成物は、例えば、過剰なIL6シグナル伝達を伴う炎症性疾患の治療を含む、多くのインビトロ及びインビボでの有用性を有する。
【0124】
IL6のIL6Rとの結合をブロックする本開示の抗IL6R抗体の能力を所与として、本開示は、自己免疫疾患などのIL6/IL6R関連炎症性疾患、及びキャッスルマン病を治療するための方法であって、本開示の医薬組成物を対象に投与することを含み得る、方法を提供する。炎症性疾患として、限定はされないが、関節リウマチ、全身型及び多関節型若年性特発性関節炎、巨細胞性動脈炎、高安動脈炎、キャッスルマン病、キメラ抗原受容体T細胞が複合されたサイトカイン放出症候群、サイトカイン放出症候群、シュニッツラー症候群、及び視神経脊髄炎が挙げられる。
【0125】
一態様において、本開示は、本開示の医薬組成物が、IL6/IL6R関連炎症性疾患を寛解する際に有効な1つ以上のさらなる薬剤と共投与される組合せ治療を提供する。このような薬剤は、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗IL2R抗体、抗IL6抗体、及び抗IL17抗体であり得る。特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0126】
本明細書において説明される治療剤の組合せは、薬学的に許容される担体中の単一の組成物と同時に、又は薬学的に許容される担体中の各薬剤を含む別個の組成物として同時に投与され得る。別の実施形態において、治療剤の組合せは、連続して投与され得る。
【0127】
さらに、組合せ治療の2つ以上の用量が、連続して投与される場合、連続投与の順序は、投与の各時点で逆になり得るか又は同じ順序に保持され得、連続投与は、同時投与と組み合わされ得、又はそれらの任意の組合せである。
【0128】
本発明及びその利点が詳述されているが、様々な変化、置換及び変更が、添付の特許請求の範囲で定義されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく本明細書でなされ得ることは理解されるべきである。
【0129】
本開示は、以下の実施例によってさらに例示され、これは、さらなる限定として解釈されるべきではない。本出願を通して引用される全ての図及び全ての参照文献、Genbank配列、特許及び公開特許出願の内容は、参照により本明細書に明示的に援用される。
[実施例]
【実施例1】
【0130】
<ハイブリドーマ技術を用いたマウス抗IL6Rモノクローナル抗体の生成>
[免疫化]
マウスを、E Harlow,D.Lane,Antibody:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998に記載されている方法にしたがって免疫化した。組換えヒトIL6Rα-hisタンパク質(Acro biosystems、Cat#ILR-H4223)を、免疫原として使用し、社内調製ヒトIL6R-Fcタンパク質(配列番号43に記載されるアミノ酸配列)を、抗血清力価を決定するため、及び抗原特異的抗体を分泌するハイブリドーマをスクリーニングするために使用した。免疫化投与量は、一次免疫のために50μgのヒトIL6Rα-his/マウス/注射、及び追加免疫のために25μgのヒトIL6Rα-his/マウス/注射を含んでいた。免疫応答を増加させるために、完全フロイントアジュバント及び不完全フロイントアジュバント(Sigma,St.Louis,Mo.,USA)を、一次及び追加免疫のためにそれぞれ使用した。簡潔には、所望の量のアジュバントを、加圧滅菌された1.5mLの微小遠心分離管に移した。抗原を、0.25~1.0mg/mlの範囲の濃度を有するPBS又は生理食塩水中で調製した。次に、計算された量の抗原を、アジュバントとともに微小遠心分離管に加え、溶液を、2分間にわたって穏やかにボルテックスすることによって混合して、油中水型エマルジョンを生成した。次に、アジュバント-抗原混合物を、動物に注射するための適切なシリンジに吸い込ませた。合計で50又は25μgの抗原を、100~200μlの体積で注射した。各動物を免疫化し、次に、抗血清力価に応じて2~3回追加接種した。良好な力価を有する動物に、融合前に腹腔内注射によって最終追加接種を与えた。
【0131】
[ハイブリドーマ融合及びスクリーニング]
マウス骨髄腫細胞株(SP2/0-Ag14、ATCC#CRL-1581)の細胞を培養して、融合直前に対数期段階に到達させた。免疫化マウスに由来する脾臓細胞を、E Harlow,D.Lane,Antibody:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1998に記載される方法にしたがって、滅菌的に調製し、骨髄腫細胞と融合させた。続いて、融合された「ハイブリッド細胞」を、DMEM/20% v/vのFCS/HAT培地中の96ウェル細胞プレート中に分配した。生存しているハイブリドーマコロニーが、融合の7~10日後に顕微鏡で観察された。2週間後、各ウェルからの上清を、(配列番号43として社内で調製された)ヒトIL6R-Fcタンパク質を用いて間接ELISA及び捕捉ELISAに供した。次に、ヒトIL6R-Fcに結合された抗体を分泌する陽性ハイブリドーマを選択し、24ウェルプレートに移した。これらのハイブリドーマを、IL6R-IL6結合をブロックするための活性についてさらに試験した。ヒトIL6Rに対する高特異性及び高いIL6-IL6Rブロッキング活性を示した抗体を産生するハイブリドーマクローンを、細胞株のクローン性を確実にするため、限界希釈によってサブクローニングし、次に、モノクローナル抗体を精製した。簡潔に述べると、プロテインAセファロースカラム(bestchrom(Shanghai)Biosciences製、Cat#AA0273)を、5~10カラム体積中でPBS緩衝液を用いて洗浄した。細胞上清を、カラムに通過させ、次に、タンパク質の吸光度がベースラインに達するまで、カラムを、PBS緩衝液を用いて洗浄した。カラムを、溶出緩衝液(0.1Mのグリシン-HCl、pH2.7)で溶離し、直ちに中和緩衝液(1MのTris-HCl、pH9.0)を含む1.5ml管に収集した。免疫グロブリンを含有する画分を、プールし、4℃で一晩、PBS中で透析した。続いて、精製されたモノクローナル抗体のインビトロ機能活性を、以下のように特性決定した。
【実施例2】
【0132】
<BIACORE表面プラズモン共鳴を用いたマウス抗IL6Rモノクローナル抗体の親和性決定>
実施例1で生成された、精製抗IL6Rマウスモノクローナル抗体(mAb)を、Biacore T200システム(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって、結合親和性及び結合速度について特性決定した。
【0133】
簡潔に述べると、ヤギ抗マウスIgG(GE healthcare、Cat#BR100838、Mouse Antibody Capture Kit)を、Biacoreによって提供される標準的なアミンカップリングキット(GE healthcare,Pittsburgh,PA,USA)を用いて、第一級アミンを介して、CM5チップ(GE healthcare #BR100530からのカルボキシメチルデキストラン被覆チップ)に共有結合し、プロテインGチップ(GE healthcare、Cat#29-1793-15)を、ベンチマークの親和性決定のために使用した。バイオセンサー表面上の未反応部分を、エタノールアミンでブロックした。次に、本開示の精製抗IL6R抗体及び抗IL6Rベンチマーク(配列番号55及び56にそれぞれ記載される重鎖及び軽鎖アミノ酸配列を用いて社内で調製される、本明細書中でベンチマーク又はアクテムラ(登録商標)とも呼ばれる、トシリズマブ)を、2μg/mlの濃度で、それぞれ10μL/分の流量でチップ上に流した。次に、連続希釈された組換えヒトIL6R-his(社内調製、配列番号44に記載されるアミノ酸配列)又はマカクIL6R-hisタンパク質(社内調製、配列番号45に記載されるアミノ酸配列)、100nMから出発してHBS-EP+緩衝液中の2倍連続希釈(Biacoreによって提供された)を、30μL/分の流量でチップ上に流した。抗原-抗体結合速度を、2分間にわたって追跡し、解離速度を、10分間にわたって追跡した。結合及び解離曲線を、BIAcore評価ソフトウェアを用いて1:1 Langmuir結合モデルに適合させた。KD、Ka及びKd値を決定し、以下の表3に要約した。
【0134】
本開示の全ての試験される抗IL6R抗体は、ヒトIL6R及びマカクIL6Rにトシリズマブより高い結合親和性で特異的に結合した。
【0135】
【実施例3】
【0136】
<マウス抗IL6Rモノクローナル抗体の結合活性>
マウス抗IL6R抗体を、それらの結合活性について、捕捉ELISA、間接ELISA及びフローサイトメトリー(FACS)によって試験した。
【0137】
[3.1 捕捉ELISA]
捕捉ELISAの場合、96ウェルマイクロプレートを、100μl/ウェルのPBS中の2μg/mlのAffiniPureヤギ抗マウスIgGのF(ab')2フラグメント特異的(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、Cat#115-005-072)で被覆し、37℃で2時間インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液(PBS+0.05% v/vのTween(登録商標)-20、PBST)で1回洗浄し、次に、4℃で一晩にわたって、200μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBST中5% w/vの無脂肪乳)でブロックした。プレートを4回洗浄し、100μl/ウェルの本開示の連続希釈されたマウス抗IL6R抗体、ベンチマーク及び陰性対照hIgG(静脈注射用のヒト免疫グロブリン(pH4)、Hualan Biological Engineering Inc.)、10000ng/mlから出発してPBST中2.5% w/vの無脂肪乳中の5倍希釈のそれぞれとともに、37℃で40分間にわたってインキュベートし、次に、再度4回洗浄した。捕捉抗IL6R抗体を含有するプレートを、ビオチン標識ヒトIL6R-Fcタンパク質(社内で調製、配列番号43、PBST中2.5% w/vの無脂肪乳中39.5ng/ml、100μl/ウェル)とともに、37℃で40分間にわたってインキュベートし、4回洗浄し、ストレプトアビジンコンジュゲートHRP(PBST中1:10000希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、Cat#016-030-084、100μl/ウェル)とともに、37℃で40分間にわたってインキュベートした。最後の洗浄の後、プレートを、100μl/ウェルのELISA基質TMB(InnoReagents、Cat#TMB-S-002)とともにインキュベートした。反応を、50μl/ウェルの1MのH2SO4で、室温で3~10分間で停止させ、各ウェルの吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取った。次に、OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、EC50値を報告した。
【0138】
[3.2 間接ELISA]
抗IL6R抗体を、マカクIL6Rとのそれらの交差反応性について試験した。簡潔に述べると、96ウェルマイクロプレートを、37℃で2時間にわたって、炭酸塩/炭酸水素塩緩衝液(pH9.6)中の100μl/ウェルの2μg/mlのマカクIL6R-hisタンパク質(社内で調製、配列番号45に記載されるアミノ酸配列)で被覆した。ELISAプレートを、洗浄緩衝液(PBS+0.05% v/vのTween-20、PBST)で1回洗浄し、次に、37℃で2時間にわたって、200μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBST中5% w/vの無脂肪乳)でブロックした。プレートを4回洗浄し、100μl/ウェルの、本開示の連続希釈された抗IL6R抗体又は対照(66.67nMから出発して、2.5% w/vの無脂肪乳でPBST中5倍連続希釈)とともにインキュベートし、37℃で40分間インキュベートした。ELISAプレートを、再度4回洗浄し、37℃で40分間にわたって、100μl/ウェルのペルオキシダーゼAffiniPureヤギ抗マウスIgGのFcγフラグメント特異的(PBST緩衝液中1:5000希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、Cat#115-035-071)とともにインキュベートした。最後の洗浄の後、プレートを、100μl/ウェルのTMB(InnoReagents)とともにインキュベートした。反応を、50μl/ウェルの1MのH2SO4で、室温で3~10分後に停止させ、各ウェルの吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取った。次に、OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、EC50値を報告した。
【0139】
[3.3 細胞ベースの結合FACS]
細胞表面上に発現されたIL6Rに対するマウス抗IL6R抗体の結合活性を、フローサイトメトリー(FACS)によって試験した。簡潔に述べると、ヒト骨髄腫細胞U266(ATCC(登録商標)TIB-196(商標))を、細胞培養フラスコから収集し、2回洗浄し、2% v/vのウシ胎仔血清(FACS緩衝液)を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で再懸濁させた。96ウェルプレート中のウェル当たり2×105個のU266細胞を、氷上で40分間にわたって、様々な濃度で(FACS緩衝液中、3倍連続希釈で40nMから出発する)、100μlの抗IL6R抗体又は対照とともにインキュベートした。細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、100μL/ウェルのR-フィコエリトリンAffiniPure F(ab')2フラグメントヤギ抗マウスIgG(H+L)(FACS緩衝液中1:1000希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、Cat#115-116-146)を加えた。暗所で、4℃で40分間にわたるインキュベーションの後、細胞を3回洗浄し、FACS緩衝液中で再懸濁させた。蛍光を、Becton Dickinson FACS Canto II-HTS機器を用いて測定した。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、EC50値を報告した。
【0140】
【0141】
図1A~
図1Dから、本開示の抗IL6R抗体が、トシリズマブと比較してより高いBmax(最大結合)及びより低いEC
50で、ヒトIL6Rに特異的に結合したことがわかり、より多くのIL6Rにより効率的に結合したことが示唆される。
【0142】
図2A~
図2Cに示すように、抗体のマカクIL6Rに対する結合活性の場合、トシリズマブと比較して、全てにおいて、Bmaxはより低く、EC
50はより高かった。
【0143】
図3A~
図3Dによると、本開示の全ての抗体は、細胞表面のヒトIL6Rにより効率的に結合したが、Bmaxは、トシリズマブと比較してより低かった。
【実施例4】
【0144】
<IL6R-トシリズマブ又はIL6R-IL6結合に対するマウス抗IL6R抗体のブロッキング活性>
[4.1 リガンドブロッキングELISA]
IL6-IL6R結合をブロックする本開示の抗IL6R抗体の能力を、競合ELISAアッセイにおいて測定した。簡潔に述べると、ヒトIL6タンパク質(Sino biological Inc.、Cat#10395-HNAE)を、37℃で2時間にわたって、炭酸塩/重炭酸塩緩衝液(pH9.6)中2μg/mL、96ウェルマイクロプレート上、100μl/ウェルで被覆した。ELISAプレートを、洗浄緩衝液(PBS+0.05% v/vのTween-20、PBST)で1回洗浄し、次に、4℃で一晩にわたって、200μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBST中5% w/vの無脂肪乳)でブロックした。
【0145】
翌日、抗IL6R抗体又は対照を、ビオチン標識ヒトIL6R-Fcタンパク質(社内で調製、配列番号43、PBST中2.5% w/vの無脂肪乳中39.5ng/ml)、100nMから出発して4倍連続希釈で希釈し、室温で40分間にわたってインキュベートした。プレートを4回洗浄後、抗体/IL6R-Fc混合物を、ヒトIL6被覆プレートに、100μl/ウェルで加え、37℃で40分間にわたってインキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液を用いて4回洗浄し、100μl/ウェルのストレプトアビジンコンジュゲートHRP(PBST緩衝液中1:10000希釈、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、Cat#016-030-084)を加え、37℃で40分間にわたってインキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液を用いて再度洗浄した。最後に、TMBを加え、反応を、1MのH2SO4を用いて停止させた。吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取り、次に、OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、IC50値を報告した。
【0146】
[4.2 ベンチマークブロッキングELISA]
ヒトIL6Rタンパク質へのベンチマーク(トシリズマブ)結合をブロックする本開示の抗IL6R抗体の能力を、競合ELISAアッセイで測定した。簡潔に述べると、ベンチマークを、PBS中2μg/mLで、96ウェルマイクロプレート上で、100μl/ウェルで被覆し、37℃で2時間にわたってインキュベートした。ELISAプレートを、洗浄緩衝液(PBS+0.05% v/vのTween-20、PBST)で1回洗浄し、次に、4℃で一晩にわたって、200μl/ウェルのブロッキングバッファー(PBST中5% w/vの無脂肪乳)でブロックした。
【0147】
翌日、本開示の抗IL6R抗体又は対照を、ビオチン標識ヒトIL6R-Fcタンパク質(配列番号43、PBST中2.5% w/vの無脂肪乳中13.6ng/ml)、100nMから出発して5倍連続希釈で希釈し、室温で40分間にわたってインキュベートした。プレートを4回洗浄後、抗体/IL6R-Fc混合物を、ベンチマーク被覆プレートに、100μl/ウェルで加えた。37℃で40分間にわたってインキュベーション後、プレートを、洗浄緩衝液を用いて4回洗浄した。次に、ストレプトアビジンコンジュゲートHRPを加え、プレートを、37℃で40分間にわたってインキュベートした。最後に、プレートを、洗浄緩衝液を用いて洗浄し、TMBを加えた。反応を、1MのH2SO4を用いて停止させ、吸光度を、TMBについて450nm及び基準波長として630nmの二波長モードを用いて、マイクロプレートリーダーで読み取った。OD(450~630)値を、抗体濃度に対してプロットした。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、IC50値を報告した。
【0148】
【0149】
本開示の全ての抗IL6R抗体が、トシリズマブと比較して、より低いIC50で、より効率的にヒトIL6-ヒトIL6R結合をブロックすることができたことが、
図4A~
図4Dから分かる。
【0150】
図5A~
図5Dは、本開示の全ての抗IL6R抗体が、トシリズマブへのIL6R結合をブロックすることができたことを示し、これは、これらの抗体が、トシリズマブが結合したのと同じ又は同様のエピトープに結合し得たことを示唆している。
【実施例5】
【0151】
<マウス抗IL6R抗体の細胞ベースの機能アッセイ>
本開示の全ての抗IL6R抗体を、IL6誘導性のTF-1細胞増殖に対する阻害効果について、さらに試験した。
【0152】
簡潔に述べると、10% v/vのFBS(Gibco、Cat#10099-141)を加えた100μLのRPMI1640培地(Gibco、Cat#A10491-01)中の対数期段階の8×l03個のTF-1細胞(ヒト前骨髄性細胞株、ATCC(登録商標)CRL-2003)を、96ウェルプレートに蒔いた。次に、プレートに、50μlの本開示の連続希釈された抗IL6R抗体又は対照(陰性対照としての社内調製抗CD22抗体を含む)を加え(培地の5倍連続希釈で800nMから出発する)、37℃で30分間にわたってインキュベートした。次に、プレートに、50μlのヒトIL6タンパク質(Sinobiological、Cat#10395-HNAE、培地中6.4ng/mL)を加え、次に、37℃で4日間にわたって、5%CO2のインキュベーターに入れた。プレートを遠心分離し、上清を廃棄した。次に、プレートに、Cell Titer-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega、Cat#G7572、50μl/ウェル)の試薬を加え、25℃で10分間にわたってインキュベートした。化学発光を、Tecan Infinit(登録商標)200Pro機器を用いて測定した。データを、Graphpad Prismソフトウェアを用いて分析し、IC50値を報告した。
【0153】
【0154】
全ての抗IL6R抗体が、トシリズマブと比較して、同等の又はややより低い活性で、IL-6誘導性のTF-1細胞増殖を阻害することができたことが分かる。
【実施例6】
【0155】
<キメラ抗体の生成及び特性決定>
抗IL6RマウスmAbの重鎖及び軽鎖可変領域をシーケンシングし、配列番号を表1に要約した。
【0156】
抗IL6RマウスmAbの1B5、1H9及び1H7の重鎖及び軽鎖可変領域をそれぞれ、ヒトIgG1重鎖(配列番号41)及びヒトκ軽鎖定常領域(配列番号42)にインフレームでクローニングし、ここで、可変領域のC末端が、それぞれの定常領域のN末端に連結された。
【0157】
ヒトIgG1重鎖定常領域に連結された重鎖可変領域をコードするヌクレオチドをそれぞれ含むベクター、及びヒトκ軽鎖定常領域に連結された軽鎖可変領域をコードするヌクレオチドをそれぞれ含むベクターを、1mg/mLのPEIで、1.1:1の軽鎖対重鎖構築物の比率で、50mlの293F懸濁細胞培養物中で一過性にトランスフェクトした。
【0158】
細胞上清を、振とうフラスコ中で6日後に収集し、沈降させて、細胞をペレット化し、次に、キメラ抗体を、上記のように、細胞上清から精製した。精製抗体を、前述の実施例中のプロトコルにしたがって、捕捉ELISA、競合ELISA、BIAcore親和性試験及び細胞ベースのレポーターアッセイにおいて、下記の修飾及びプロトコルの存在下又は不在下で試験した。
【0159】
レポーターアッセイでは、SIE(sis誘導性エレメント)駆動ルシフェラーゼレポーター遺伝子luc2P(フォティヌス・ピラリス(Photinus pyralis))を有する社内調製細胞株HEK293T-SIE-B4を使用した。HEK293T-SIE-B4細胞は、リポフェクタミン(lipofectamine)3000トランスフェクション試薬(Thermo Fisher)の説明書にしたがって、HEK293T細胞を、pGL4.47[luc2P/SIE/Hygro]ベクター(Promega、Cat#E404A)でトランスフェクトすることによって調製した。簡潔に述べると、10% v/vのFBS(Gibco、Cat#10099-141)及び10% w/vのピルビン酸ナトリウム(Gibco、Cat#1360-070)を加えた100μlのDMEM培地(Gibco、Cat#10566-016)中の2×l04個のHEK293T-SIE-B4細胞を、96ウェルプレート(Corning、Cat#3903)の各ウェルに蒔いた。次に、プレートに、50μlの本開示の連続希釈されたキメラ抗IL6R抗体又は対照(陰性対照としての社内調製抗CD22抗体を含む)を加え(培地中、5倍連続希釈で800nMから出発)、37℃で30分間にわたってインキュベートした。次に、プレートに、50μlのヒトIL6タンパク質(Sino biological、Cat#10395-HNAE、培地中4ng/mL)を加え、次に、37℃で24時間にわたって、5%CO2インキュベーターに入れた。プレートを遠心分離し、1ウェル当たり100μlの上清を廃棄した。ルシフェラーゼ検出試薬(50μL/ウェル、Promega、Cat#E6120)を加えた。5分以内に、プレートを、Tecan infinite 200Proプレートリーダーによる分析にかけた。データを、Graphpad prismソフトウェアを用いて分析し、IC50値を報告した。
【0160】
捕捉ELISAでは、AffiniPureヤギ抗ヒトIgG、F(ab')2フラグメント特異的(Jackson Immuno Research、Cat#109-005-097)を、AffiniPureヤギ抗マウスIgG、F(ab')2フラグメント特異的の代わりに、100μl/ウェルで使用した。
【0161】
BIAcoreでは、ヤギ抗ヒトIgG(GE healthcare、Cat#BR100839、Human Antibody Capture Kit)を、ヤギ抗マウスIgGの代わりにCM5チップに共有結合し、CM5チップを、プロテインGチップの代わりに、トシリズマブに使用した。100nMの濃度で組換えヒトIL6R-his(配列番号44に記載されるアミノ酸配列)を、連続希釈された組換えヒトIL6R-hisの代わりに、30μL/分の流量でチップ上に流した。
【0162】
【0163】
【0164】
データは、キメラ抗IL6R抗体が、それらの親マウスmAbに対して、同様のヒトIL6Rに対する結合親和性/能力、及び同様のIL6-IL6R相互作用に対するブロッキング活性を有することを示し、それらは、細胞ベースのレポーターアッセイにおいて、トシリズマブと同等であり(
図10参照)、他のアッセイにおいて、トシリズマブよりも良好であった(
図7A~7B、
図8A~8B及び
図9A~9Bを参照)。
【実施例7】
【0165】
<抗IL6R抗体1H7のヒト化>
マウス抗IL6R抗体1H7を、ヒト化し、さらに特性決定した。抗体のヒト化を、以下に詳細に記載される十分に確立されたCDRグラフト方法を用いて行った。
【0166】
マウス抗体1H7のヒト化のための受容体フレームワークを選択するために、1H7の軽鎖及び重鎖可変領域配列を、ヒト免疫グロブリン遺伝子データベースに対してブラストした。最も高い相同性を有するヒト生殖細胞系列を、ヒト化のための受容体フレームワークとして選択した。抗体重鎖/軽鎖可変領域CDRを、選択されたフレームワークに挿入し、フレームワーク中の残基を、より多い候補重鎖/軽鎖可変領域を得るようにさらに変異させた。合計で13の例示的なヒト化1H7抗体(すなわち、hu1H7-V1からhu1H7-V12及びhu1H7-V1-2)が得られ、その重鎖/軽鎖可変領域配列番号を表1に示した。
【0167】
ヒトIgG1重鎖定常領域(配列番号41)に連結されたヒト化重鎖可変領域をコードするヌクレオチドをそれぞれ含むベクター、及びヒトκ軽鎖定常領域(配列番号42)に連結されたヒト化軽鎖可変領域をコードするヌクレオチドをそれぞれ含むベクターを、1mg/mlのPEIで、1.1:1の軽鎖対重鎖構築物の比率で、50mlの293F懸濁細胞培養物中で一過性にトランスフェクトした。
【実施例8】
【0168】
<例示的なヒト化抗体の特性決定>
ヒト化抗体を含有する細胞上清を、振とうフラスコ中で6日後に収集し、修正を伴う上述されたプロトコルにしたがって、直接的にBIAcore試験に供した。具体的には、ヤギ抗ヒトIgG(GE healthcare、Cat#BR100839、Human Antibody Capture Kit)を、ヤギ抗マウスIgGの代わりに、CM5チップに共有結合し、CM5チップを、プロテインGチップの代わりに、トシリズマブに使用した。キメラ抗体及びトシリズマブを、10μg/mlの濃度で、HBS-EP+中で調製し、ヒト化抗体を含む細胞上清を10倍に希釈した。Ka、Kd及びKD値を決定し、以下の表5に要約した。
【0169】
データは、例示的なヒト化抗体が、キメラ抗体に対して同様のヒトIL6R結合親和性を有し、それらが、トシリズマブの場合より高いことを示した。
【0170】
【0171】
ヒト化抗体hu1H7-V5を、上記のように精製し、下記の若干の修正を伴う、前述の実施例中のプロトコルにしたがって、BIAcore、捕捉ELISA、間接ELISA、細胞ベースの結合FACS、競合ELISA及び細胞ベースのレポーターアッセイにおいて試験した。
【0172】
捕捉ELISAでは、96ウェルマイクロプレートを、2μg/mlのヤギ抗ヒトIgG(AffiniPureヤギ抗ヒトIgG、F(ab')2フラグメント特異的、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,Cat#109-005-097)で、ヤギ抗マウスIgGF(ab')2フラグメントの代わりに、100μl/ウェルで被覆した。
【0173】
間接ELISAでは、ペルオキシダーゼAffiniPure F(ab')2フラグメントヤギ抗ヒトIgG、Fcγフラグメント特異的(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.,Cat#109-036-098)を、ペルオキシダーゼAffiniPureヤギ抗マウスIgG、Fcγフラグメント特異的の代わりに、100μl/ウェルで使用した。
【0174】
Biacoreでは、ヤギ抗ヒトIgG(GE healthcare、Cat#BR100839、Human Antibody Capture Kit)を、ヤギ抗マウスIgGの代わりにCM5チップに共有結合し、CM5チップを、プロテインGチップの代わりに、トシリズマブに使用した。
【0175】
細胞ベースの結合FACSでは、R-フィコエリトリンAffiniPureヤギ抗ヒトIgG、Fcγフラグメント特異的(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.、Cat#109-115-098)を、R-フィコエリトリンAffiniPure F(ab')2フラグメントヤギ抗マウスIgG(H+L)の代わりに、FACS緩衝液中1:1000希釈、100μl/ウェルで使用した。
【0176】
さらに、ヒト化抗体hu1H7-V5を、熱安定性アッセイにおいて試験し、GloMelt(商標)Thermal Shift Protein Stability Kit(Biotium、Cat#33022-T)を用いて、Tm(溶解温度)を決定した。簡潔に述べると、GloMelt(商標)色素を解凍し、室温に到達させた。色素を含むバイアルをボルテックスし、遠心分離した。次に、10倍色素を、5μLの200倍色素を95μLのPBSに加えることによって調製した。2μLの10倍色素及び10μgのヒト化抗体を加え、PBSを、20μLの総反応体積になるまで加えた。色素及び抗体を含む管を、短時間にわたって回転させ、表6中のパラメータを有する融解曲線プログラムを用いて設定されたリアルタイムPCRサーモサイクラー(Roche、LightCycler 480 II)に入れた。
【0177】
【0178】
【0179】
データによると、ヒト化抗体hu1H7-V5は、トシリズマブと比較すると、ヒトIL6Rに対するより高い結合親和性/活性及びより高いIL6R-IL6ブロッキング能力を示した。特に、抗体hu1H7-V5は、HEK293T-SIE-B4細胞レポーターアッセイにおいて、IL6媒介性ルシフェラーゼ活性の阻害に対して、トシリズマブより良好な生物活性を示した。
【0180】
【0181】
ヒト化抗体hu1H7-V5が、キメラ抗体1H7と比較して、ヒト及びマカクIL6Rに対する同等の結合親和性を示したことが表7から分かる。換言すれば、ヒト及びマカクIL6Rに対するhu1H7-V5の結合親和性は、トシリズマブの場合より高かった。
【0182】
ヒト化抗体hu1H7-V5が、トシリズマブと比較して、より高いBmax(最大結合)及びより低いEC
50で、ヒトIL6Rに特異的に結合したことが
図11から分かり、それが、より多くのIL6Rにより効率的に結合したことを示唆している。
【0183】
マカクIL6Rに対する抗体の結合活性では、
図12に示すように、トシリズマブと比較して、Bmaxは、より高く、EC
50は、より低かった。
【0184】
図13によると、ヒト化抗体hu1H7-V5は、細胞表面ヒトIL6Rに、トシリズマブより高いBmax(最大結合)及びより低いEC
50で、より効率的に結合し、それが、より多くのIL6Rに、より効率的に結合したことを示唆している。
【0185】
図14は、ヒト化抗体hu1H7-V5が、IL6R-IL6結合をブロックすることができ、ブロッキング活性が、トシリズマブの場合より高いことを示した。
【0186】
図15によると、ヒト化抗体hu1H7-V5は、ヒトIL6R-トシリズマブ結合をブロックすることができ、hu1H7-V5が、トシリズマブが結合したのと同様のエピトープに結合し得たことを示唆している。
【0187】
図16に示すように、ヒト化抗体hu1H7-V5は、細胞ベースのレポーターアッセイにおいて、トシリズマブより高い機能活性を有した。
【0188】
さらに、
図17に示すように、ヒト化抗体hu1H7-V5は、融解温度で、ヒト身体内でおそらく安定であった。
【0189】
本開示は、1つ以上の実施形態とともに上述されているが、本開示が、それらの実施形態に限定されないことが理解されるべきであり、説明は、添付の特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれ得る際、全ての代替例、修飾、及び均等物を包含することが意図される。本明細書に引用される全ての参照文献は、全体が参照によりさらに援用される。
【0190】
本出願中の配列が、以下に要約される。
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
本発明の好ましい実施形態についてこのように詳細に記載しているが、上の段落によって定義された本発明が、その多くの明白なバリエーションが本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく実現可能である際、上の説明に記載される特定の詳細に限定されるべきでないことは理解されるべきである。
【配列表】