(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】肝臓特異的誘導性プロモーター及びそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20240724BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240724BHJP
A61K 38/00 20060101ALI20240724BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20240724BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
C12N15/85 Z ZNA
C12N5/10
A61K38/00
A61K31/7105
A61P1/16
(21)【出願番号】P 2021541478
(86)(22)【出願日】2020-01-20
(86)【国際出願番号】 GB2020050107
(87)【国際公開番号】W WO2020148555
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2023-01-18
(32)【優先日】2019-01-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520375033
【氏名又は名称】アスクレピオス バイオファーマシューティカル, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ロバーツ
(72)【発明者】
【氏名】グラハム・ホワイトサイド
(72)【発明者】
【氏名】アン・ブラーエ
【審査官】松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102321732(CN,A)
【文献】国際公開第95/011308(WO,A1)
【文献】特表2011-517955(JP,A)
【文献】特表2008-521575(JP,A)
【文献】特表平11-509412(JP,A)
【文献】Molecular and Cellular Biology,1998年,18,5652-5658
【文献】Biochimica et Biophysica Acta,2003年,1619,254-262
【文献】Biochemical Journal,2001年,355,71-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子に作動可能に連結された合成肝臓特異的誘導性プロモーターを含む発現カセットを含む、遺伝子治療ベクターであって、
遺伝子が治療用発現産物をコードし、合成肝臓特異的誘導性プロモーターがCARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なシス調節エレメント(CRE)を含み
、
CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、配列番号1又は配列番号2、又は配列番号1若しくは配列番号2の機能的バリアントを含むか又はそれからなり
、
配列番号1又は配列番号2の機能的バリアントは
、配列TGTACTTTCCTGACCN(配列番号20)、若しくは、配列TGTACTTTCCTGACCN(配列番号20)から2つ以
下のヌクレオチド位置で異なる配列を含み、並びに/又は
配列番号1又は配列番号2の機能的バリアントは以下の配列のうちの1つを含む:
- [TGTACTTTCCTGACCN-S-]
n(配列番号29);
- [CTGTACTTTCCTGACCN-S-]
n(配列番号30);及び
- [NCTGTACTTTCCTGACCNTG-S-]
n(配列番号31)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーであり、nは1から
5である)、
遺伝子治療ベクター。
【請求項2】
配列番号1又は配列番号2の機能的バリアントは以下の配列のうちの1つを含み:
- TGTACTTTCCTGACCN-S-TGTACTTTCCTGACCN(配列番号32);
- TGTACTTTCCTGACCN-S-TGTACTTTCCTGACCN-S-TGTACTTTCCTGACCN(配列番号33);
- CTGTACTTTCCTGACCN-S-CTGTACTTTCCTGACCN(配列番号34);
- CTGTACTTTCCTGACCN-S-CTGTACTTTCCTGACCN-S-CTGTACTTTCCTGACCN(配列番号35);及び
- NCTGTACTTTCCTGACCNTG-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTG(配列番号36);及び
- NCTGTACTTTCCTGACCNTG-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTG-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTG(配列番号37)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーである)、並びに/又は
配列番号1又は配列番号2の機能的バリアントは以下の配列のうちの1つを含み:
- TCTGTACTTTCCTGACCTTG-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTG-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTG(配列番号38);又は
- ACTGTACTTTCCTGACCCTG-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTG-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTG(配列番号39)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーである)、並びに/又は
配列番号1又は配列番号2の機能的バリアントは、配列番号1又は配列番号2のいずれかと少なくとも
90%同一であ
る配列を含み、並びに/又は
配列番号1又は配列番号2の機能的バリアントは、ヌクレオチド3~18にまたがる領
域において、配列番号1又は配列番号2
と少なくとも95%同一で
あるとともに、配列番号1又は配列番号2の残部にわたって少なくと
も90%、95%又は99%で同一である配列を含み、並びに/又は
配列番号1又は配列番号2の機能的バリアントは以下の配列:
NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号41)、
又はこれと少なくとも90
%同一である配列を含む、
請求項1に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項3】
CARとRXRのヘテロダイマーによって、それぞれが結合及び活性化されることが可能な複数のCREを含み、並びに/又は
CARとRXRのヘテロダイマーによって、それぞれが結合及び活性化されることが可能な2つ又は3つのCREを含み、並びに/又は
合成肝臓特異的誘導性プロモーターが以下の配列のうちの1つ:
- NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号42);及び
- NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号43)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーである)、及び/若しくは、以下の配列のうちの1つ:
- TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号44);
- TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号45);
- ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号46);及び
- ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号47)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーである)
を含むか又はそれからなるシス調節モジュール(CRM)を含む、請求項1又は2に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項4】
構成的発現又は非肝臓細胞における発現をもたらすことになる核酸配列を実質的に含まない、請求項1から3のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項5】
ミニマルプロモーター又は近位プロモーターに作動可能に連結された、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREを含み、任意選択的に
ミニマルプロモーターは、HSVチミジンキナーゼミニマルプロモーター(MinTK)、CMVミニマルプロモーター(CMVmp)又はSV40ミニマルプロモーター(SV40mp)であ
る、請求項1から4のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項6】
配列番号7~18及び59~71のうちのいずれか1つによる配列、又はそれらのいずれか1つの機能的バリアントを含み、機能的バリアントが、配列番号7~18及び59~71のうちのいずれかと少なくとも90%同一である配列を含む、又は
配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号68、配列番号69、配列番号70又は配列番号71による配列、又はそれらのいずれか1つの機能的バリアントを含み、機能的バリアントが、配列番号7、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号68、配列番号69、配列番号70又は配列番号71と少なくとも90%同一である配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項7】
合成肝臓特異的発現カセットは、リボソーム結合部位、開始コドン、終止コドン、転写終止配列、転写後調節エレメントをコードする核酸及び/又はポリAエレメントのうちの1つ又は複
数を提供又はコードする配列を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項8】
合成肝臓特異的発現カセットが、リボソーム結合部位、開始コドン、終止コドン、転写終止配列、転写後調節エレメントをコードする核酸、及びポリAエレメントを提供又はコードする配列を含む、請求項7に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項9】
遺伝子はタンパク質又はRNAをコードし、並びに/又は
治療用発現産
物は、肝臓における異常な遺伝子発現に関連付けられる疾患又は状態の処置で使用するのに適した治療用タンパク質
であり、並びに/又は
遺伝子は、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、又はクラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の反復(CRISPR-Cas)システム等の、部位特異的ヌクレアーゼをコードする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項10】
レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)の各ベクター等のウイルスベクター、及び/又はプラスミドである、請求項1から7のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に規定の発現カセットであって、遺伝子に作動可能に連結された合成肝臓特異的誘導性プロモーターを含
み、
遺伝子が治療用発現産物をコードし、合成肝臓特異的誘導性プロモーターがCARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREを含
む、発現カセット。
【請求項12】
以下の配列のうちの1つを含むか又はそれからなるシス調節エレメントを含む:
- NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号42);
- NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号43);
- TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号44);
- TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号45);
- ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号46);又は
- ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号47)
(ここで、式中、Sは任意選択のスペーサーである)
合成肝臓特異的誘導性プロモーター。
【請求項13】
配列番号10~18及び67~71のうちのいずれか1つによる配列、又は配列番号10~18及び67~71のいずれか1つの機能的バリアントを含み、機能的バリアントが、配列番号10~18及び67~71のうちのいずれかと少なくとも90%同一である配列を含む、請求項12に記載の合成肝臓特異的誘導性プロモーター。
【請求項14】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター、請求項
11に記載の発現カセット、又は請求項
12又は13に記載のプロモーター、を含む組換えビリオン。
【請求項15】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター、請求項
11に記載の発現カセット、請求項
12又は13に記載のプロモーター、又は請求項1
4に記載のビリオンを含む、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター、請求項
11に記載の発現カセット、請求項
12又は13に記載のプロモーター、又は請求項1
4に記載のビリオンを含む細胞であって、任意選択的に、細胞が肝臓細胞であり、任意選択で細胞培養中の肝臓細胞又は対象の肝臓に存在する肝臓細胞である、細胞。
【請求項17】
疾患の処置に使用するための、請求項1から
10のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター、請求項
11に記載の発現カセット、請求項
12又は13に記載のプロモーター、請求項1
4に記載のビリオン、又は請求項1
5に記載の医薬組成物。
【請求項18】
疾患が、肝臓における異常な遺伝子発現に関連付けられる、請求項17に記載の使用のための遺伝子治療ベクター、発現カセット、プロモーター、ビリオン、又は医薬組成物。
【請求項19】
-
請求項1から10のいずれか一項に規定の発現カセットであって、遺伝子に作動可能に連結された合成肝臓特異的誘導性プロモーターを含
み、合成肝臓特異的誘導性プロモーターがCARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なシス調節エレメント(CRE)を含む
発現カセットを含む細胞を用意する工程と;
- 前記発現カセット内の誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子からの発現産物の発現を誘導することができる誘導剤を、前記細胞に投与する工程
であって、任意選択的に前記細胞が肝臓細胞である、工程と、
を含む、
細
胞において
治療用発現産
物をex vivoで生成する方法であって、任意選択的に、
遺伝子からの発現産物の発現に適した条件下で前記肝臓細胞を維持する工程を含み、並びに/又は
誘導剤が以下のリスト:
フェノバルビタール(PB);フラボノイド化合物、例えばフラボン、クリシン、バイカレイン、又はガランギン;1,4-ビス[2-(3,5-ジクロロピリジルオキシ)]ベンゼン(TCPOBOP);6-(4クロロフェニル)イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-5-カルバルデヒド-O-(3,4-ジクロロベンジル)オキシム(CITCO);アセトアミノフェン;ブプレノルフィン;フェニトイン;カルバマゼピン;バルプロ酸;アルテミシニン及び誘導体;クロルプロマジン;エファビレンツ;ネビラピン;リルピビリン;エトラビリン;ジアゼパム;シクロホスファミド;イホスファミド;セリバスタチン;シンバスタチン;ロバスタチン;置換スルホンアミド;チアゾリジン-4-オン;エストラジオール;エストロン及びアナログ;17α-エチニル-3;17β-エストラジオール(EE2);デヒドロエピアンドロステロン(DHEA);5β-プレグナン-3,20-ジオン;ジエチルスチルベストロール;イチョウ抽出物;ガランギン;クリシン;バイカレイン;硫化ジアリル;エラグ酸;レスベラトロール;スクアレスタチン-1;ビロバリド;トリクロカルバン;トリクロサン;ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT);ディルドリン;メトキシクロル;メトフルトリン;ペルメトリン;ピレトリン;スルホキサフロール;フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP);シプロコナゾール;フルコナゾール;プロピコナゾール;FL81;トリ-p-メチルフェニルホスフェート(TMPP);UM104;並びにUM145、から選択される1つ又は複数の薬剤、並びに/又は以下のリスト:
フェノバルビタール(PB);フラボノイド化合物、例えばフラボン、クリシン、バイカレイン、又はガランギン;アセトアミノフェン;ブプレノルフィン;フェノバルビタール;フェニトイン;カルバマゼピン;バルプロ酸;アルテミシニン及び誘導体;クロルプロマジン;エファビレンツ;ネビラピン;リルピビリン;エトラビリン;ジアゼパム;シクロホスファミド;イホスファミド;セリバスタチン;シンバスタチン;ロバスタチン;置換スルホンアミド;並びにチアゾリジン-4-オン、から選択される1つ又は複数の薬剤を含み、並びに/又は
誘導剤を投与するのを中止する工程を含み、並びに/又は
細胞に投与される誘導剤の濃度を経時的に変化させる工程を含み、並びに/又は
合成肝臓特異的発現カセットを細胞に導入する工程を含む、方法。
【請求項20】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクターを肝臓細胞に導入する工程、その後に、
細胞に誘導剤を投与する工程、
を含む、
ex vivoで肝臓細胞において治療用導入遺伝子を発現させる方法。
【請求項21】
それを必要とする対
象の遺伝子治療方法において使用するための請求項1
5に記載の医薬組成物であって、前記方法が、
- 治療用産物をコードする
遺伝子を含む、前記医薬組成物を対象の肝臓に導入する工程と;
- 治療有効量の治療用産物が対象において発現されるように、対象に誘導剤を投与する工程と、
を含み、任意選択的に、
対象に提供される治療用遺伝子産物の投薬量をモジュレートするために、対象に投与される誘導剤の量を経時的に変化させる工程を含み、並びに/又は
以下の工程:
- 対象において発現される治療用産物の量を決定する工程、又は治療用産物に対する対象の応答を評価する工程と:
a)対象においてより高い量の治療用産物が望ましい場合、対象に投与される誘導剤の量を増加する工程、又は
b)対象においてより低い量の治療用産物が望ましい場合、対象に投与される誘導剤の量を減らす工程と、
を含み、並びに/又は
対象における治療用産物の量を変更するために誘導剤を変える工程を含む、医薬組成物。
【請求項22】
対象がヒトである、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
状態又は疾患の処置のための医薬組成物の製造のための、
請求項1から
10のいずれか一項に記載の遺伝子治療ベクター、請求項
11に記載の発現カセット、請求項
12又は13に記載のプロモーター、請求項1
4に記載のビリオン、の使用
であって、
状態又は疾患が、血友病(血友病A又はBを含む)、家族性高コレステロール血症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、フェニルケトン尿症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、グリコーゲン蓄積症、α1-アンチトリプシン欠損症、遺伝性ヘモクロマトーシス、高チロシン血症1型、アルギニノコハク酸尿症、肝炎ウイルス感染、非ウイルス性肝炎、肝がん、遺伝性胆汁うっ滞、ウィルソン病、及びその他の種々の肝疾患(例えば非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール関連肝疾患(ARLD))、及びリソソーム貯蔵障害から選択される、使用。
【請求項24】
以下の工程を含む、
治療用発現産物を生成するための方法:
a)
請求項1から10のいずれか一項に規定の発現カセットであって、遺伝子に作動可能に連結された合成肝臓特異的誘導性プロモーターを含
み、合成肝臓特異的誘導性プロモーターがCARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なシス調節エレメント(CRE)を含
む発現カセットを含む、真核細胞の集団を用意する工程;
b)前記細胞集団を培養する工程;
c)前記発現カセット中の誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子からの発現産物の発現を誘導することができる誘導剤を、前記細胞集団に投与する工程;及び
d)発現産物を回収する工程。
【請求項25】
真核細胞が、動物細胞、哺乳動物細胞、又は肝臓細胞である、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝臓特異的誘導性プロモーター及びベクター、特にこれらを含む遺伝子治療ベクター、並びにそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以下の論議は、読者が本開示を理解するのを助けるために提供するものであり、先行技術の内容又は関連性についてのいずれの自認をも構成するものではない。
【0003】
肝臓ミクロソームチトクロームP450酵素(CYP)による代謝は、医薬品や環境汚染物質等の生体異物(xenochemical)の解毒において重要な役割を演じている。生体異物への曝露による誘導性の遺伝子転写はCYPにとって特徴的であり、この特徴によって、毒性及び発がん性に対する生物体の防御能力が向上する。CYP2B遺伝子のPB誘導の発見に基づき、PBは、CYP2B遺伝子を誘導する構造的且つ機能的に多様な生体異物の大きな集団のプロトタイプとしての役割を果たしてきた。PB応答性エンハンサーモジュール(PBREM)が、マウスCyp2b10とラットCYP2B1において51-bpのエレメントとして特定され、ほぼ同一のDNAエレメントがラットCYP2B2において特定された。PBREM配列がヒトでも特定されたが、この場合、これはCYP2B6と関連している。核内受容体ヘテロダイマーCAR-RXRは、PBREMのトランス活性化因子として特定された。(Negishiら、「The Repressed Nuclear Receptor CAR Responds to Phenobarbital in Activating the Human CYP2B6 Gene」; J. Biol. Chem 1999、274:6043~6046頁、を参照されたい)。
【0004】
多くの分野では、遺伝子治療を含めて、所望の細胞、組織又は器官内でタンパク質又は核酸の発現産物を生成するために、遺伝子の発現を駆動することができる調節核酸配列を提供することが望ましい。
【0005】
肝臓での発現は、肝臓が、代謝、止血、感染に対する防護に関与する多くのタンパク質の合成を含めて、体内での広範囲に及ぶ本質的な機能に関与しているので、特に興味深いものである。多くの疾患が肝臓での遺伝子発現の崩壊に繋がっていることを考慮すると、肝臓での導入遺伝子の発現によって治療用発現産物を生成することを可能にする遺伝子治療戦略の開発への関心がかなりある。遺伝子の異常発現に関連付けられる肝臓の疾患の例としては、血友病(血友病A又はBを含む)、家族性高コレステロール血症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、α-アンチトリプシン欠損症、肝炎ウイルス感染、非ウイルス性肝炎、肝臓がん、及び種々のその他の肝臓疾患(例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)やアルコール関連肝疾患(ARLD))、が挙げられる。
【0006】
遺伝子治療を使用して肝疾患を処置する上での重要な課題とは、肝臓特異的(肝特異的としても知られている)治療用遺伝子発現を提供できる能力である。DNA又はウイルスベクターを肝実質、肝動脈又は門脈に注入することにより、哺乳動物の肝細胞を標的にすることが知られている。アデノウイルスベクターは、マウスにおいて肝臓を主として標的とすることも報告されている。しかし、アデノウイルスベクターは他の組織、特に肺や骨格筋にも感染し、その結果、「オフターゲット」効果をもたらす。アデノ随伴ウイルスベクター(AAV)又はレンチウイルスベクターの一部の形態は、肝細胞を優先的に形質導入するが、オフターゲット効果がここでも発生する。
【0007】
したがって、肝臓特異的な様式で遺伝子発現を調節するためのシステムを提供することが望ましい。理想的には、かかるシステムは、肝臓に高度に特異的であり(それによって、非標的組織でのオフターゲット発現を回避又は最低限に抑える)、また強力でもある、すなわち、肝臓での高発現レベルを駆動する。シス作用性調節エレメントの使用が、特異性と活性の両方を提供するために提案されてきた。通常には、このことは、シス調節エンハンサー配列、すなわち、シスで作用してプロモーターの活性を向上する核酸配列、にかかわることである。エンハンサーは通常、配向性を問わず活性であり、通常、プロモーターにはるかにより近い場合に作用するが、プロモーターから数キロベースまで離れた距離にわたって作用することができる場合もある。
【0008】
必要に応じて遺伝子発現を誘導することができるように、遺伝子発現の誘導性システムを提供することも望まれている。誘導能とは、必要な場合に、治療用遺伝子発現産物の発現を誘導できることを意味する。更に、誘導が用量依存的である場合、治療用遺伝子発現産物の発現レベルは、投与される誘導剤の量を調整することによってモジュレートすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2013/0280797号
【文献】米国特許出願公開第2012/0077429号
【文献】米国特許出願公開第2011/0280797号
【文献】米国特許出願公開第2009/0305626号
【文献】米国特許第8,298,054号
【文献】米国特許第7,629,167号
【文献】米国特許第5,656,491号
【文献】米国特許第4,683,195号;
【非特許文献】
【0010】
【文献】Negishiら、「The Repressed Nuclear Receptor CAR Responds to Phenobarbital in Activating the Human CYP2B6 Gene」; J. Biol. Chem 1999、274:6043~6046頁
【文献】Sueyoshiら(J. BIOL. CHEM. 274、10、6043~6046頁、1999)
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【文献】Kleinら(1987) Nature 327:70頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、特に遺伝子治療等における治療用遺伝子発現において、多くの状況において遺伝子発現を制御するための調節配列のニーズがある。特に、誘導性遺伝子発現を提供する調節配列のニーズがある。肝臓での誘導性遺伝子発現を提供する調節配列は特に興味深い。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様では、本発明は、遺伝子に作動可能に連結された合成肝臓特異的誘導性プロモーターであって、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なシス調節エレメント(CRE)を含む合成肝臓特異的誘導性プロモーター、が含まれる発現カセットを含む、遺伝子治療ベクターを提供する。
【0013】
構成的アンドロスタン受容体(CAR)は核内受容体スーパーファミリーのメンバーであり、生体外異物及び内因性物質の代謝の鍵となる調節因子である。ほとんどの核内受容体とは異なり、CARはリガンドの非存在下で構成的活性型であり、アゴニストとインバースアゴニストの両方によって調節される。活性化によって、サイトゾルから核へのCARの移行が生じ、そこで、当該タンパク質は応答エレメントと呼ばれる特定のDNA部位に結合することができる。結合は、単量体としてもレチノイドX受容体(RXR)と一緒に、両方で起こり、その結果、標的遺伝子の転写の活性化又は抑制をもたらす。
【0014】
レチノイドX受容体(RXR)は、9-cisレチノイン酸及び9-cis-13,14-ジヒドロレチノイン酸によって活性化される核内受容体スーパーファミリーのメンバである。
【0015】
CARが(直接的又は間接的活性化いずれかによって)活性化されると、CARは核に移行し、CAR及びRXRは、適当な標的配列を含む活性化遺伝子に結合することができるヘテロダイマー(本明細書では「CAR-RXRヘテロダイマー」又は「CAR-RXR」と呼ぶ)を形成する。
【0016】
CAR-RXRは、上で論議のように、いわゆるPB応答性エンハンサーモジュール(PBREM)を介して標的遺伝子に結合するとともにこれを誘導する。したがって、本発明の好ましい一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化され得るCREは、PBREMエレメント又はそれの機能的バリアントを含む。
【0017】
マウスPBREM配列を配列番号1に記載する。ヒトPBREM配列を配列番号2に記載する。本発明の一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、配列番号1又は配列番号2、又は配列番号1若しくは配列番号2の機能的バリアントを含むか又はそれからなる。したがって、一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、PBREMエレメント又はそれの機能的バリアントを含むか又はそれからなる。
【0018】
マウスとヒトのPBREMエレメントの配列及びアラインメントを下に:
【0019】
【0020】
示すが、いわゆるNR1モチーフには下線が引かれており、NH1モチーフはイタリック体であり、NR2モチーフはそれぞれ太字体である(配列番号を括弧内に示す)。
【0021】
PBREMとは、NF1結合部位に隣接する2つの核内受容体DR4モチーフ(NR1及びNR2)からなる51-bpDNA誘導性エンハンサーである。このアラインメントからわかるように、マウスとヒトのPBREMの間でNR1モチーフに配列に関し極めて高レベルの保存が存在する。ヒトPBREMの16bp NR1モチーフは、マウスNR1モチーフとはわずか1塩基だけ異なり、このことによって、NR1がヒトとマウスのPBREMエレメント間で最も保存された配列となっている。NR1配列はCAR-RXRヘテロダイマーの結合部位であり、残りの配列は部分的又は完全に冗長であることが文献で提案されてきた。Sueyoshiら(J. BIOL. CHEM. 274巻、10、6043~6046頁、1999)において、NR1のトリプルリピートが残ったままであり、誘導性であることが示された。しかし、NR1以外の部分は、PBREMエレメントがより特異的且つ誘導性となっていることに対して、役割を果たすことができると考えられている(例えば、バックグラウンド、構成的発現を減らし、より大きな誘導を可能にする)。
【0022】
したがって、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは適切には、少なくとも1つのNR1モチーフを含む。適切には、NR1モチーフは、配列TGTACT-X-TGACC[C/T](配列番号#)を含むか又はそれからなる(式中、Xは、長さが3から6個のヌクレオチド(好ましくは、長さが4~5個のヌクレオチド、適切には長さが4個のヌクレオチド)である任意の配列を表す)。好ましい一部の実施形態では、Xは配列TTCCを含み、適切には、配列TTCC又はTTTCCを含むか又はそれからなる。ヌクレオチドを角括弧内に示す場合、それは、角括弧内に示されたヌクレオチドのうちの1個がその位置に存在することを示す。
【0023】
一部の実施形態では、NR1モチーフは、配列TGTACTTTCCTGACCN(配列番号20)(例えば、TGTACTTTCCTGACCT(配列番号3)又はTGTACTTTCCTGACCC(配列番号4))、又は、配列TGTACTTTCCTGACCN(配列番号20)から2つ以下、好ましくは1つ以下のヌクレオチド位置で異なる配列、を含むか又はそれからなる。好ましくは、PBREMエレメントの機能的バリアントは、配列CTGTACTTTCCTGACCN(配列番号21)(例えば、CTGTACTTTCCTGACC[T/C](配列番号22)、すなわち、CTGTACTTTCCTGACCT (配列番号23)又はCTGTACTTTCCTGACCC (配列番号24))、又は、配列番号21の配列から2つ以下、好ましくは1つ以下のヌクレオチド位置で異なる配列を含む;この配列は、上で表すように、ヒトとマウスのPBREM両方でNR1配列の5'に位置する保存されたCを含む。適切には、PBREM配列の機能的バリアントは、配列NCTGTACTTTCCTGACCNTG(配列番号25)(例えば、[T/A]CTGTACTTTCCTGACC[C/T]TG(配列番号26)、TCTGTACTTTCCTGACCTTG(配列番号27)、又はACTGTACTTTCCTGACCCTG(配列番号28))、又は、配列番号25の配列から2つ以下、好ましくは1つ以下のヌクレオチド位置で異なる配列を含む;この配列は、上で表すように、ヒトとマウスのPBREM両方でNR1配列の5'及び3'のそれぞれに位置する2個のヌクレオチドを含む。Nは、本明細書の核酸配列に存在する場合、任意のヌクレオチドを表す。ヌクレオチドが角括弧内に示される場合、このことは、角括弧内に示されたヌクレオチドのうちの1つがその位置に存在することを示す。
【0024】
一部の実施形態では、PBREMエレメントの機能的バリアントは適切には、2つ以上、適切には3つ以上の、作動可能に連結されたNR1モチーフ含有配列を含む。
【0025】
したがって、一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは適切には、2つ以上、適切には3つ以上の、作動可能に連結されたNR1モチーフを含む。NR1モチーフは一部の実施形態では、互いに隣接して(例えば、タンデムに)提供され得るが、それらは互いに直接隣接していてもよく、スペーサーによって隔てられていてもよい。したがって、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは適切には、一般構造NR1-S-NR1を含む(式中、NR1は本明細書で論議の任意のNR1モチーフを表し、Sは任意選択のスペーサーを表す)。スペーサーは、存在する場合、任意の配列を有することができ、適切な任意の長さ、例えば、長さが2から50、3から40、4から30、5から20、6から10、7から9、又は8個のヌクレオチドとすることができる。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、以下の配列のうちの1つを含むPBREM配列の機能的バリアントを含むか又はそれからなる:
- [TGTACTTTCCTGACCN-S-]n(配列番号29);
- [CTGTACTTTCCTGACCN-S-]n(配列番号30);
- [NCTGTACTTTCCTGACCNTG-S-]n(配列番号31)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーであり、nは1から5、任意選択で2から4、適切には3である)。したがって、PBREM配列の機能的バリアントは、NR1モチーフ含有配列の多量体を含むことができる。種々の好ましいNR1モチーフについては上で論議されており、当然ながら本実施形態で使用することができる。一部の実施形態では、nは1から10、1から6、又は2から4である。本発明の一部の実施形態では、nは3である。
【0027】
好ましい一部の実施形態では、スペーサーが、隣接するNR1モチーフ含有配列の間に存在する。スペーサーは、存在する場合、適切な任意の長さ、例えば、長さが2から50、3から40、4から30、5から20、6から10、7から9、又は8個のヌクレオチドとすることができる。
【0028】
本発明の一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、以下の配列のうちの1つを含むPBREM配列の機能的バリアントを含むか又はそれからなる:
- TGTACTTTCCTGACCN-S-TGTACTTTCCTGACCN(配列番号32);
- TGTACTTTCCTGACCN-S-TGTACTTTCCTGACCN-S-TGTACTTTCCTGACCN(配列番号33);
- CTGTACTTTCCTGACCN-S-CTGTACTTTCCTGACCN(配列番号34);
- CTGTACTTTCCTGACCN-S-CTGTACTTTCCTGACCN-S-CTGTACTTTCCTGACCN(配列番号35);
- NCTGTACTTTCCTGACCNTG-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTG(配列番号36);及び
- NCTGTACTTTCCTGACCNTG-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTG-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTG(配列番号37)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーである)。
スペーサーは、存在する場合、適切な任意の長さ、例えば、長さが2から50、3から40、4から30、5から20、6から10、7から9、又は8個のヌクレオチドとすることができる。種々の好ましいNR1モチーフについては上で論議されており、当然ながら本実施形態で使用することができる。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、以下の配列のうちの1つを適切には含むPBREM配列の機能的バリアントを含むか又はそれからなる:
- TCTGTACTTTCCTGACCTTG-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTG-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTG(配列番号38);又は
- ACTGTACTTTCCTGACCCTG-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTG-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTG(配列番号39)、
(式中、Sは、上で記載の、任意選択のスペーサーである)。
【0030】
場合によっては、スペーサーは配列GATCGATC(配列番号40)を有することができるが、適切な他の任意のスペーサー配列を使用することができる。
【0031】
本発明の他の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、NR1エレメント、NF1エレメント、及びNR2エレメントのそれぞれを含む。適切には、これらはNR1-NF1-NR2の順序で存在する。NR1エレメントは適切には、上で論議の配列を含むか又はそれからなる。NF1エレメントは適切には、配列TGGCACAGTGCCA(配列番号55)又はTGAAGAGGTGGCA(配列番号56)、又は配列番号55若しくは56から7個以下のヌクレオチド(例えば、6、5、4、3、2、又は1個のヌクレオチド)が異なる配列、を含むか又はそれからなる。NR2エレメントは適切には、配列TCAACTTGCCTGACAC(配列番号57)又はTGGACTTTCCTGAACC(配列番号58)、又は配列番号57若しくは58から5個以下のヌクレオチド(例えば、4、3、2、又は1個のヌクレオチド)が異なる配列、を含むか又はそれからなる。
【0032】
本発明の一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、配列番号1又は配列番号2のいずれかと少なくとも60%同一である、好ましくは、配列番号1又は配列番号2のいずれかと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一である配列を含むPBREM配列の機能的バリアント、を含むか又はそれからなる。マウスPBREM(配列番号1)及びヒトPBREM(配列番号2)は、それらの全長(すなわち、51個のヌクレオチド)に沿って71%同一である。マウスPBREMはヒト細胞において依然として機能的であり、PBREMでのヒト機能はマウス細胞において依然として機能的である。したがって、少なくとも、PBREMエレメントにわたる全体的な配列の差異に関するこのようなレベルは、許容され得る。
【0033】
しかし、上で論議のように、NR1モチーフに極めて高レベルの保存が存在し、したがって、PBREM配列の機能的バリアントは、配列TCTGTACTTTCCTGACCTTG(配列番号27)又はACTGTACTTTCCTGACCCTG(配列番号28)と、少なくとも90%同一、好ましくは少なくとも95%同一、より好ましくは完全に同一であるとともに、配列番号1又は配列番号2の残部にわたって少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%で同一である、配列を含むことが一般に好ましい。好ましくは、全体の配列は、配列番号1又は配列番号2のいずれかと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一である。
【0034】
したがって、好ましい実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、PBREM配列の機能的バリアントを含むか又はそれからなるが、この機能的バリアントは、ヌクレオチド3~18にまたがる領域(好ましくはヌクレオチド1~20にまたがる領域)において、配列番号1又は配列番号2と少なくとも90%同一であり、好ましくは少なくとも95%同一であり、より好ましくは完全に同一であるとともに、配列番号1又は配列番号2の残部(すなわち、ヌクレオチド1、2及び19~51、又はヌクレオチド21~51)にわたって少なくとも50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%で同一である、配列を含む。当然ながら、ヌクレオチドは、配列番号1又は配列番号2を参照して番号が付けられる。好ましくは、全体の配列は、配列番号1又は配列番号2のいずれかと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一である。
【0035】
本発明の好ましい一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、以下の配列:
NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号41)、又はこれと少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%同一である配列を含むか又はそれからなる。この場合、同一性は、未定義の「N」ではなく、具体的に定義されたヌクレオチドに関して計算される。Nとして特定された1個又は複数のヌクレオチドが欠失されているPBREM配列の機能的バリアントが、本発明のかかる実施形態の一部として具体的に企図されており、例えば、この場合、Nとマークされている、最大7、6、5、4、3、2、又は1個のヌクレオチドが欠失される。更に、1個又は複数のヌクレオチドが挿入されているPBREM配列の機能的バリアントが、本発明のかかる実施形態の一部として具体的に企図されており、例えば、この場合、最大7、6、5、4、3、2、又は1個のヌクレオチドが挿入される。具体的な一例として、CYP2B2遺伝子からのラットPBREMエレメントは、10~11位で、すなわちPBREMエレメントのNR1内で、TとCとの間に挿入されたTを含む。NR1モチーフの外側の領域でのヌクレオチドの置き換え、欠失、又は挿入は、忍容性が高いと思われる。
【0036】
野生型マウス又はヒトのPBREMエレメント(配列番号1又は配列番号2)に更によく似ているPBREM配列の機能的バリアントは、低バックグラウンド発現及び高レベルの誘導性という特に望ましい特性を実証することができると考えられるので、場合によっては好ましい。かかる特性は、本発明のベクターで提供される遺伝子のバックグラウンド発現を最小限にとどめることができる場合、すなわち発現の誘導が起こらない場合に、一般に望ましい。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、2種以上の異なる種のそれぞれからの、適切には2つ以上の異なる属の種からの(例えば、異なる2種の哺乳動物)、PBREMエレメントの一部を含むか又はそれからなる。かかるエレメントは、「ハイブリッドPBREMエレメント」と呼ぶことができる。ハイブリッドPBREMエレメントは通常、野生型PBREMエレメントのすべてのモチーフ(すなわち、NR1、NF1、及びNR2の各モチーフ)を含むが、これらのモチーフは2種以上の異なる種に由来する。一部の実施形態では、ハイブリッドPBREMエレメントは、第1の種からの部分(例えば、NR1、NF1、及びNR2の各モチーフ)、及び第2の種からの相当する部分(例えば、相当するNR1、NF1、及びNR2の各モチーフ)を含む。非限定的な例として、ハイブリッドPBREMエレメントは、霊長類(例えばヒト)及びげっ歯類(例えばマウス)のPBREMエレメントの部分(例えば、NR1、NF1、及びNR2の各モチーフ)を含むことができる。例えば、ハイブリッドPBREMエレメントは、霊長類(例えばヒト)からのNR1モチーフ及びげっ歯類(例えばマウス)からのNR2モチーフ、又はげっ歯類(例えばマウス)からのNR1モチーフ及び霊長類(例えばヒト)からのNR2モチーフを含むことができる。霊長類又はげっ歯類のNR1及びNR2の各モチーフは、相当する種からのNF1モチーフと組み合わせることもできる。
【0038】
一部の実施形態では、ハイブリッドPBREMエレメントは、PBREMモチーフの以下の組合せのうちの1つを含む: hNR1-mNF1-hNR2; hNR1-mNF1-mNR2; mNR1-hNF1-mNR2;又はmNR1-hNF1-hNR2 (式中、「h」はヒトのモチーフを示し、mはマウスのモチーフを示す)。例示的なハイブリッドPBREMエレメント配列は、Table 3(表4)の配列番号61~64において下線が引かれている;当然ながら、これらの配列の機能的バリアントを使用することが可能で、例えば、配列は、上で論議のように、任意選択でNR1モチーフにおいてより高いレベルの同一性を持って、配列番号:61~64において下線が引かれているハイブリッドPBREMエレメント配列と60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%の同一性を有する。
【0039】
上で論議のように、理論に拘泥するものではないが、PBREMエレメント又はそれのバリアントを介する遺伝子発現の誘導は、エレメント又はバリアントへのCAR-RXRヘテロダイマーの結合に依存していると考えられる。CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能な所与の任意のCREが、例えば、PBREMエレメントのバリアントが、所望のように機能する能力、すなわち、必ずしも同じ程度ではないが、野生型マウス又はヒトのPBREMエレメントと同じように誘導性である能力は、実験的に容易に決定することができる。例えば、バリアントCREを、配列番号1の代わりに以下の実施例に記載の構築物に挿入することができ、配列番号1を含ませた場合と比較した、構築物が誘導される能力を比較することができる。例えば、PB1-MinTK構築物において配列番号1の代わりにバリアントCREを提供し、肝臓細胞で、好ましくは初代肝細胞で、例えば実施例2に記載のように、1μM CITCOによる誘導で、AXOL assay-ready expanded (ARE)肝細胞(Axol社、ax3701)で、試験することができる。或いは、実施例4に記載のように、バリアントをpAAV-PB1-MinTk構築物に挿入することも可能である。或いは、Sueyoshiら(J. BIOL. CHEM. 274巻、10、6043~6046頁、1999)で使用された実験的アプローチも使用することができる。すなわち、関連する推定PBREMバリアント配列を、ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子(Promega社)を含有するpGL3-Basicベクターにおいてtkプロモーター(BglIIサイト)の前にクローニングすることができ、その結果、PBREM VARIANT-tk-ルシフェラーゼ及びレポーター遺伝子プラスミドがもたらされる。一般に、CREの機能的バリアントは、野生型PBREMエレメント、例えば配列番号1を含む同等の構築物と比較した場合、誘導性として、少なくとも50%、好ましくは75%、より好ましくは80%、85%、90%、又は95%である誘導性のレベルを提供するはずである (誘導の結果としての発現の倍の増加(fold increase)の観点から測定して、すなわち、誘導したときの報告された遺伝子の発現の2倍の増加は、4倍の増加の50%の誘導性であるとされる)。一般に、機能的バリアントは、上記のPB1-MinTK構築物においてマウス野生型PBREMの代わりに提供され、肝臓細胞において、好ましくは初代肝細胞において、例えば、以下で実施例2に記載のように、1μM CITCOによる誘導で、AXOL assay-ready expanded (ARE)肝細胞(Axol社、ax3701)において、試験される場合、少なくとも2倍の誘導、より好ましくは3倍、4倍、5倍、6倍又は7倍の誘導を提供するはずであることが望ましい。機能的バリアントは好ましくは、野生型マウスPBREMエレメントを含む同等の構築物と比較した場合、3倍以下の高さ、好ましくは2倍以下の高さ、好ましくは1.5倍以下の高さであるバックグラウンド発現レベルをもたらす(例えば、ここでもPB1-MinTK構築物において及びARE肝細胞において試験して)。
【0040】
注目されることは、PBREMエレメント又はそれの機能的バリアントは、いずれの方向で存在することができることである。したがって、上記のPBREMエレメントの逆相補は、本発明の一部を形成する。注目することは、ヒトPBREMエレメントは、マウスPBREMエレメントと比較して逆方向で自然に存在すること、及び、ヒトPBREMエレメントは、Sueyoshiら(J. BIOL. CHEM. 274巻、10、6043~6046頁、1999)において「逆」方向(すなわち、マウスPBREMと同じ方向)で依然として機能的であることが示されたこと、である。
【0041】
本発明の一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは適切には、CARとRXRのヘテロダイマーによって、それぞれが結合及び活性化され得る複数のCREを含む。したがって、一部の実施形態では、本発明は、CARとRXRのヘテロダイマーによって、それぞれが結合及び活性化されることが可能なCREの多量体を含む合成肝臓特異的誘導性プロモーターを提供する。見方を変えれば、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは適切には、CARとRXRのヘテロダイマーによって、それぞれ結合及び活性化されることが可能な複数のCREを含むシス調節モジュール(CRM)を含む。CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、同一であってもよく、互いに異なってもよい。
【0042】
かかる実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは適切には、CARとRXRのヘテロダイマーによってそれぞれが結合及び活性化されることが可能な2つから10のCREを含む。誘導性プロモーターは適切には、2つから7つのCRE、2つから5つのCRE、2つから4つのCRE、任意選択で2つ又は3つのCREを含み、一部の実施形態では、CARとRXRのヘテロダイマーによってそれぞれが結合及び活性化されることが可能な3つのCREが存在することが好ましい。
【0043】
上で論議のように、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、PBREMエレメント又はそれの機能的バリアントであることが好ましい。したがって、好ましい実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは適切には、配列番号1又は配列番号2、又はそれの機能的バリアントを含む、2つから5つ、更により好ましくは2つから4つ、更により好ましくは3つのPBREMエレメントを含む。種々のPBREMエレメント及びそれらの機能的バリアントについては、上で詳細に論議されている。
【0044】
本発明の好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、配列番号1又は配列番号2、又は配列番号1若しくは配列番号2の機能的バリアントを含むCREの、2つから4つ、任意選択で2つ又は3つの作動可能に連結されたコピーを含む。
【0045】
CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、スペーサー配列によって隔てることができる。スペーサーは、適切な任意の長さ、例えば、2から100個のヌクレオチド、3から50個のヌクレオチド、5から30個のヌクレオチド、及び10から25個のヌクレオチドを有することができる。一部の実施形態では、スペーサーは長さが5の倍数であると言われている。長さが概ね20個のヌクレオチドのスペーサーが適切であることがわかっている(例えば、長さが18~22個のヌクレオチド)。
【0046】
本発明の好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、以下の配列のうちの1つを含むか又はそれからなるCRMを含む:
- NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号42);又は
- NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN-S-NCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号43)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーである)。
スペーサーは、隣接するPBREMエレメント又はそれの機能的バリアントを隔てる。スペーサーの選択肢については上記している。一部の実施形態では、スペーサーは長さが概ね20個のヌクレオチドである。PBREMエレメントNCTGTACTTTCCTGACCNTGNNNNNGTGNCANCATNNACTTNCCTGANNCN(配列番号41)と少なくとも90%、好ましくは95%、より好ましくは99%同一である配列を含むバリアントはまた、本発明の一部を形成する。この場合、同一性は、不確定の「N」ではなく、具体的に定義されたヌクレオチドに関して計算される。Nとして特定された1個又は複数のヌクレオチドが欠失されているPBREM配列の機能的バリアントが、本発明の本実施形態の一部として具体的に企図されており、例えば、この場合、Nとマークされている、最大7、6、5、4、3、2、又は1個のヌクレオチドが欠失される。更に、1個又は複数のヌクレオチドが挿入されているPBREM配列の機能的バリアントが、本発明のかかる実施形態の一部として具体的に企図されており、例えば、この場合、最大7、6、5、4、3、2、又は1個のヌクレオチドが挿入される。具体的な一例として、CYP2B2遺伝子からのラットPBREMエレメントは、10~11位で、すなわち、PBREMエレメントのNR1内で、TとCとの間に挿入されたTを含む。NR1モチーフの外側の領域でのヌクレオチドの置き換え、欠失、又は挿入は、忍容性が高いと思われる。
【0047】
本発明の好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、以下の配列のうちの1つを含むか又はそれからなるCRMを含む:
- TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号44);
- TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号45);
- ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号46);又は
- ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号47)、
(式中、Sは任意選択のスペーサーである)。
スペーサーの選択肢を上に記載する。一部の実施形態では、スペーサーは長さが概ね20個のヌクレオチドである。
【0048】
本発明の合成肝臓特異的誘導性プロモーターは適切には、構成的発現又は非肝臓細胞において(又は、場合によっては、CAR及びRXRを発現しない細胞において)発現をもたらすことになる核酸配列をまったく含まないか又はそれの最小を含む。したがって、バックグラウンド発現及び非肝臓細胞(又はCAR及びRXRを発現しない細胞)での発現は最小限であるか、完全に回避される。
【0049】
合成肝臓特異的誘導性プロモーターは典型的には、ミニマルプロモーター又は近位プロモーター、好ましくはミニマルプロモーターに作動可能に連結された、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREを含む。近位プロモーターが使用される場合、肝臓特異的であるのが好ましい。一般に、近位プロモーターは、少なくともある程度のバックグラウンド発現を駆動しやすいので、ミニマルプロモーターが好ましい。しかし、場合によっては、或る量のバックグラウンド発現が望ましい場合がある。
【0050】
ミニマルプロモーターは、適切な任意のミニマルプロモーターとすることができる。広範囲に及ぶミニマルプロモーターが当技術分野で知られている。限定されないが、適切なミニマルプロモーターには、HSVチミジンキナーゼミニマルプロモーター(MinTK)、CMVミニマルプロモーター(CMVmp)又はSV40ミニマルプロモーター(SV40mp)が含まれる。ミニマルプロモーターは合成ミニマルプロモーターであってもよい。
【0051】
本発明の好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、MinTKミニマルプロモーターに作動可能に連結された、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREを含む。この組合せは、低バックグラウンド発現と誘導性に関し望ましい組合せを提供することが示された。特に好ましい一部の実施形態は、MinTKに作動可能に連結された、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能な2つ又は3つのCREを含む;かかるプロモーターは、低バックグラウンドを兼ね備えた特に強力な誘導性である。
【0052】
本発明の好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、SV40ミニマルプロモーターに作動可能に連結された、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREを含む。この組合せによって、バックグラウンドの発現レベルのある程度の増加が伴うが、高レベルの誘導性が提供されることが示された。特に好ましい一部の実施形態は、ミニマルプロモーターに作動可能に連結された、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能な2つ又は3つのCREを含む;かかるプロモーターは特に強力な誘導性である。
【0053】
好ましい一部の実施形態では、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、スペーサー配列によってミニマルプロモーター又は近位プロモーターから隔てられている。スペーサー配列は、適切な任意の長さを有することができる。例えば、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCRE(又は、複数のCREが存在する場合、最も近位のCRE)と、ミニマルプロモーター又は近位プロモーターとの間のスペーサーは、10から200個のヌクレオチドの長さを有することができる。以下に記載の実施例では、種々の長さのスペーサー(例えば、20、46、80、及び100個のヌクレオチドを含めて)を用いるのに成功した。
【0054】
本発明の一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、配列番号7~18のうちのいずれか1つによる配列、又はそれらのいずれか1つの機能的バリアントを含む。機能的バリアントは適切には、配列番号7~18のうちのいずれか1つと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一である。上述のように、NR1モチーフに相当する領域において90%、95%又は99%又はこれ超の配列同一性が好ましい。
【0055】
本発明の好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、配列番号7、配列番号10、配列番号11又は配列番号12による配列、又はそれのいずれか1つの機能的バリアントを含む。機能的バリアントは適切には、配列番号7、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のうちのいずれか1つと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一である。上述のように、NR1モチーフに相当する領域において90%、95%又は99%又はこれ超の配列同一性が好ましい。これらのプロモーターは、MinTKミニマルプロモーターに連結されたマウスPBREMのコピーを、それぞれ、1、2、3、及び4個含む。配列番号10及び配列番号11、又はそれらの機能的バリアントは、低バックグラウンド発現レベルを兼ね備えた高誘導性に関するそれらの特に望ましい特性に鑑みて、本発明の特に好ましい実施形態である。
【0056】
本発明の一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、配列番号59~71のうちのいずれか1つによる配列、又はそれの機能的バリアントを含むか又はそれからなる。機能的バリアントは適切には、配列番号59~71のうちのいずれか1つと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%又は99%同一である。上述のように、NR1モチーフに相当する領域において90%、95%又は99%又はこれ超の配列同一性が好ましい。
【0057】
本発明の好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、配列番号68、69、70又は71のうちのいずれか1つによる配列、又はそれらのいずれか1つの機能的バリアントを含む。機能的バリアントは適切には、配列番号60又は61のうちのいずれか1つと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一である。上述のように、NR1モチーフに相当する領域において90%、95%又は99%又はこれ超の配列同一性が好ましい。これらのプロモーターは、2×MHMエレメント又は3×ヒトPBREMエレメントを含む。
【0058】
適切には、発現カセットは、リボソーム結合部位、開始コドン、終止コドン及び転写終止配列のうちの1つ又は複数、好ましくはそれらのすべてを提供又はコードする配列を含む。適切には、発現カセットは、転写後調節エレメントをコードする核酸を含む。適切には、発現カセットは、ポリAエレメントをコードする核酸を含む。
【0059】
本発明で使用するための遺伝子は典型的には、ポリペプチド(タンパク質)又はRNA等の所望の遺伝子発現産物をコードする。遺伝子は、完全長のcDNA若しくはゲノムDNAの配列、又は少なくとも所望の一部の生物学的活性を有するそれの任意の断片、サブユニット若しくは変異体とすることができる。
【0060】
遺伝子がタンパク質をコードしている場合、タンパク質は本質的に任意のタイプのタンパク質とすることができる。非限定的な例として、タンパク質は、酵素、抗体若しくは抗体断片(例えばモノクローナル抗体)、ウイルスタンパク質(例えば、REP、CAP、REV、VSV-G、又はRD114)、治療用タンパク質、又は毒性タンパク質(例えばカスパーゼ3、8又は9)とすることができる。
【0061】
本発明の好ましい一部の実施形態では、遺伝子は、治療用発現産物、好ましくは肝臓に関連する疾患又は状態の処置で使用するのに適した治療用タンパク質をコードする。かかる遺伝子は「治療用遺伝子」と呼ぶことができる。治療用発現産物は、タンパク質、例えば分泌性タンパク質とすることができ、例として挙げるのならば、例えば、凝固因子(例えば第IX因子又は第VIII因子)、サイトカイン、増殖因子、抗体若しくはナノボディ、ケモカイン、血漿因子、インスリン、エリスロポエチン、リポタンパク質リパーゼ、又は毒性タンパク質である。或いは、治療用発現産物は、siRNA又はmiRNA等のRNAとすることができる。本発明での使用が想定される治療用発現産物(及びそれらをコードする配列)の非網羅的なリストには、以下が含まれる:第VIII因子、第IX因子、第VII因子、第X因子、フォンウィルブランド因子、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン-a、インターフェロン-B、インターフェロン-y、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン3(IL-3)、インターロイキン4(IL-4)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン10(IL-10)、インターロイキン11(IL-11)、インターロイキン12(IL-12)、ケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド5(CXCL5)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、幹細胞因子(SCF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、単球化学誘引物質タンパク質-1(MCP-1)、腫瘍壊死因子(TNF)、アファミン(AFM)、a1-アンチトリプシン、a-ガラクトシダーゼA、α-L-イドロニダーゼ、ATP7b、オルニチントランスカルバモイラーゼ、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ、リポプロテインリパーゼ、芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)、ATPase筋原形質/小胞体Ca2+輸送2(ATP2A2)、嚢胞性線維症膜コンダクタンス調節因子(CTFR)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65kDaタンパク質(GAD65)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ67kDaタンパク質(GAD67)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)、神経増殖因子(NGF)、ニュールツリン(NTN)、ポルホビリノーゲンデアミナーゼ(PBGD)、サルコグリカンアルファ(SGCA)、可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFLT-1)、アポリタンパク質、低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)、アルブミン、グルコース-6-ホスファターゼ、抗体、ナノボディ、アプタマー、抗ウイルスドミナントネガティブタンパク質、及びそれらの機能的断片、サブユニット、又は変異体。好ましくは、タンパク質は霊長類タンパク質、より好ましくはヒトタンパク質である。
【0062】
目的のタンパク質又はポリペプチドは、例えば、以下のものとすることができる:抗体、酵素若しくはそれらの断片、ウイルスタンパク質、サイトカイン、リンホカイン、接着分子、受容体及びそれらの誘導体又は断片、タンパク質抗生物質、毒素融合タンパク質、炭水化物-タンパク質コンジュゲート、構造タンパク質、調節タンパク質、ワクチン及びワクチン様タンパク質又は粒子、プロセス酵素、増殖因子、ホルモン、並びにアゴニスト又はアンタゴニストとして機能することができ及び/又は治療用途又は診断用途を有することができるその他の任意のポリペプチド。好ましい一実施形態によれば、タンパク質は、免疫グロブリン、好ましくは抗体又は抗体断片、最も好ましくはFab抗体又はscFv抗体である。好ましい別の実施形態によれば、タンパク質はウイルスタンパク質である。
【0063】
本発明の一部の実施形態では、合成肝臓特異的発現カセットは、遺伝子編集に有用な遺伝子、例えば、メガヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターベースのヌクレアーゼ(TALEN)、又はクラスター化され規則的に間隔が空いた短い回文構造の反復(CRISPR-Cas)システム等の、部位特異的ヌクレアーゼをコードする遺伝子を含む。適切には、部位特異的ヌクレアーゼは、切断(典型的には部位特異的二本鎖切断)を行うことによって所望の標的ゲノム遺伝子座を編集し、次いで、これを非相同末端結合(NHEJ)又は相同性依存性修復(HDR)を介して修復して、その結果所望の編集がもたらされるように、適合されている。編集は、機能不全である遺伝子の部分的又は完全な修復であってもよく、機能性遺伝子のノックダウン又はノックアウトであってもよい。
【0064】
目的の生成物はまた、核酸、例えば、RNA、例えば、アンチセンスRNA、マイクロRNA、siRNA、tRNA、rRNA、ガイドRNA、又はその他の任意の調節、治療用、若しくはそうでなければ有用なRNAとすることができる。
【0065】
本発明の好ましい一部の実施形態では、遺伝子治療ベクターは、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)の各ベクター等の、ウイルスベクターであるが、その他の形態の遺伝子治療ベクターも企図されている。好ましい一部の実施形態では、ベクターはAAVベクターである。好ましい一部の実施形態では、AAVは、肝臓形質導入に適した血清型を有する。一部の実施形態では、AAVは、AAV2、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、又はそれらの誘導体からなる群から選択される。AAV形質導入における制限段階の1つを解決するために、AAVベクターが自己相補的二本鎖AAVベクター(scAAV)として適切に使用されるが(すなわち、一本鎖から二本鎖AAVへの変換)、一本鎖AAVベクター(ssAAV)の使用も本明細書では包含される。本発明の一部の実施形態では、AAVベクターは、キメラであり、したがって、AAV2のITRやAAV5のカプシドタンパク質等の、少なくとも2つのAAV血清型由来の成分を含むことを意味する。
【0066】
本発明の一部の実施形態では、ベクターはプラスミドである。かかるプラスミドは、1つ又は複数の選択マーカー、1つ又は複数の複製起点、ポリクローニング部位等、の様々な他の機能的核酸配列を含むことができる。
【0067】
別の態様では、本発明は、遺伝子に作動可能に連結された合成肝臓特異的誘導性プロモーターであって、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREを含む、合成肝臓特異的誘導性プロモーターが含まれる、発現カセットを提供する。種々の合成誘導性プロモーターは、遺伝子治療ベクターの文脈で上に論議されており、本発明の本態様で使用することができる。したがって、本発明はまた、遺伝子治療ベクター(上記で詳述のように)とその他の文脈の両方において、発現カセット中に第1の態様に関連して記載の合成肝臓特異的プロモーターを包含する。
【0068】
本発明の一部の実施形態では、発現カセットは、真核細胞における発現用の発現ベクター中に存在する。真核生物発現ベクターの例には、それらに限定されないが、Stratagene社から入手可能なpW-LNEO、pSV2CAT、pOG44、pXTl及びpSG; Amersham Pharmacia Biotech社から入手可能なpSVK3、pBPV、pMSG及びpSVL;並びにClontech社から入手可能なpCMVDsRed2-express、pIRES2-DsRed2、pDsRed2-Mito、pCMV-EGFP、が含まれる。他の多くのベクターがよく知られており、市販されている。哺乳動物細胞のアデノウイルスベクターの場合、pSVシリーズ及びpCMVシリーズのベクターは特によく知られている非限定的な例である。限定されないが、酵母統合プラスミド(YIp)及び酵母複製プラスミド(YRp)を含めて、よく知られた多くの酵母発現ベクターがある。植物の場合、アグロバクテリウムのTiプラスミドは例示的な発現ベクターであり、植物ウイルスはまた、適切な発現ベクター、例えば、タバコモザイクウイルス(TMV)、ポテトウイルスX、及びカウピーモザイクウイルスを提供する。
【0069】
本発明の本態様の実施形態では、遺伝子はレポーター遺伝子ではないのが好ましい。適切には、遺伝子は、治療用発現産物(例えば、上で論議のように)又は産業又は研究において有用である別の発現産物をコードする。したがって、本発明の好ましい一部の実施形態では、発現カセットは、レポーター(例えば、蛍光タンパク質、発光タンパク質又は発色性タンパク質)ではない産物の発現向けのものであり、治療用発現産物の発現向けのものであるのが好ましい。種々の適切な発現産物については上で論議されている。更に有用な発現産物については、当業者であれば明らかであろう。
【0070】
別の態様では、本発明はまた、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREを含む合成肝臓特異的誘導性プロモーターを提供する。遺伝子治療ベクターの文脈で上に論議の種々の合成誘導性プロモーターは、本発明の本態様の実施形態であるとされる。換言すれば、上記の種々のプロモーターは、遺伝子治療ベクターの文脈にあるか否かとは無関係に、本発明の本態様の実施形態であるとされる。特に、有益な特性を有し、且つ当技術分野では開示されていない種々の合成肝臓特異的誘導性プロモーターが開示されている。これらは遺伝子治療において実用性を有するが、以下で更に論議するように、細胞培養やバイオプロセシング等の他の状況でも幅広い実用性を有する。
【0071】
特に、排他的ではないが、本発明の本態様の実施形態は、配列番号7~18のうちのいずれか1つによる配列、又はそれらのいずれか1つの機能的バリアントを含む合成肝臓特異的誘導性プロモーターを含む。機能的バリアントは適切には、配列番号7~18のうちのいずれか1つと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%又は99%同一である。上述のように、NR1モチーフに相当する領域において90%、95%又は99%又はこれ超の配列同一性が好ましい。
【0072】
好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、配列番号7、配列番号10、配列番号11又は配列番号12による配列、又はそれのいずれか1つの機能的バリアントを含む。機能的バリアントは適切には、配列番号7、配列番号10、配列番号11又は配列番号12のうちのいずれか1つと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%又は99%同一である。これらのプロモーターは、MinTKミニマルプロモーターに連結されたマウスPBREMのコピーを、それぞれ、1、2、3、及び4個含む。
【0073】
本発明の一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、配列番号59~71のうちのいずれか1つによる配列、又はそれの機能的バリアントを含むか又はそれからなる。機能的バリアントは適切には、配列番号59~71のうちのいずれか1つと少なくとも60%、70%、80%、90%、95%又は99%同一である。上述のように、NR1モチーフに相当する領域において90%、95%又は99%又はこれ超の配列同一性が好ましい。
【0074】
本発明の好ましい一部の実施形態では、合成肝臓特異的誘導性プロモーターは、配列番号68、69、70又は71のうちのいずれか1つによる配列、又はそれらのいずれか1つの機能的バリアントを含む。機能的バリアントは適切には、配列番号68、69、70又は71のうちのいずれか1つと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一である。上述のように、NR1モチーフに相当する領域において90%、95%又は99%又はこれ超の配列同一性が好ましい。これらのプロモーターは、2×MHMエレメント又は3×ヒトPBREMエレメントを含む。
【0075】
本発明の更なる態様では、PBREMエレメントの機能的バリアントを含むか又はそれからなる、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREが提供される。適切には、バリアントPBREMは、PBREMの天然に存在しないバリアントであり、すなわち、天然には存在しない配列を含む。例えば、バリアントは、ヒト、マウス、又はラットのPBREMエレメントの配列(例えば、配列番号1又は配列番号2)を含まない。CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能な種々の非天然CREは、本発明の第1の態様に関連して上に記載されており、且つ、本態様の例示的な実施形態を提供する。
【0076】
一部の実施形態では、本発明のCREは、上で論議のように、ハイブリッドPBREMエレメントを含むか又はそれからなる。非限定的な例として、ハイブリッドPBREMエレメントは、霊長類(例えば、ヒト)及びげっ歯類(例えば、マウス)のPBREMエレメントの一部を含むことができる。例えば、ハイブリッドPBREMエレメントは、ヒトからのNR1モチーフ及びマウスからのNR2モチーフ、又はマウスからのNR1モチーフ及びヒトからのNR2モチーフを含むことができる。マウス又はヒトのNR1及びNR2の各モチーフは、相当する種からのNF1モチーフと組み合わせることもできる。一部の実施形態では、ハイブリッドPBREMエレメントは、PBREMモチーフの以下の組合せのうちの1つを含む: hNR1-mNF1-hNR2; hNR1-mNF1-mNR2; mNR1-hNF1-mNR2;又はmNR1-hNF1-hNR2(式中、「h」はヒトのモチーフを示し、mはマウスのモチーフを示す)。例示的なハイブリッドPBREMエレメント配列は、Table 3(表4)の配列番号61~64において下線が引かれている;当然ながら、これらの配列の機能的バリアント、例えば、配列番号:61~64において下線が引かれているハイブリッドPBREMエレメント配列と60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%の同一性を有する配列を使用することが可能である。
【0077】
一部の実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なCREは、以下の配列のうちの1つ:
ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAG(配列番号#; ヒトNR1x3);
ACTGTACTTTCCTGACCCTGGCACAGTGCCACCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号72; HMHハイブリッド);
ACTGTACTTTCCTGACCCTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号73; HMMハイブリッド);
TCTGTACTTTCCTGACCTTGAAGAGGTGGCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号74; MHMハイブリッド);又は
TCTGTACTTTCCTGACCTTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号75; MHHハイブリッド)、
又はそれらの機能的バリアントを含むか又はそれからなる。
機能的バリアントは適切には、前記配列のいずれかと80%、90%、95%又は99%同一である配列を含む。
【0078】
本発明の更なる態様では、PBREMエレメントの機能的バリアントを含むか又はそれからなる、CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能な2つ以上のCREを含む、CRMが提供される。CAR-RXRヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能な2つ以上のCREを含む、種々のCRMは、上に及び本発明の第1の態様に関連しても記載されており、本態様の例示的な実施形態を提供する。一部の実施形態では、CRMは、上で論議のように、少なくとも1つの非天然CRE、例えば、少なくとも1つのハイブリッドCREを含む。
【0079】
一部の実施形態では、CRMは、以下の配列のうちの1つ:
TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-CTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号76; 2x マウスPBREM CRE);
TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号77; 3x マウスPBREM CRE);
CTGTACTTTCCTGACCTTGAAGAGGTGGCACCATCAACTTGCCTGACACC-S-TCTGTACTTTCCTGACCTTGAAGAGGTGGCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号78; 2x MHMハイブリッド CRE);
ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号79; 2x ヒトPBREM CRE);
ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA-S-ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号80; 3x ヒトPBREM CRE)、
又はそれらのいずれかの機能的バリアントを含む。
機能的バリアントは適切には、前記配列のいずれかと80%、85%、90%、95%又は99%同一である配列を含む(式中、Sは任意選択のスペーサーである)。存在する場合、スペーサーは、適切な任意の長さ、例えば、2から100個のヌクレオチド、3から50個のヌクレオチド、5から30個のヌクレオチド、及び10から25個のヌクレオチドを有することができる。一部の実施形態では、スペーサーは長さが5の倍数であると言われている。長さが概ね20個のヌクレオチドのスペーサーが適切であることがわかっている(例えば、長さが18~22個のヌクレオチド)。
【0080】
一部の実施形態では、CRMは以下の配列のうちの1つ:
TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACCCATTACTCGCATCCATTCTCTCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号81; 2x マウスPBREM CRE);
TCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACCCATTACTCGCATCCATTCTCTCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACCGCACTGAAGGTCCTCAATCGTCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACCCTGACCTCCTGCCAGCAATATCTGTACTTTCCTGACCTTGGCACAGTGCCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号82; 3x マウスPBREM)
CTGTACTTTCCTGACCTTGAAGAGGTGGCACCATCAACTTGCCTGACACCCATTACTCGCATCCATTCTCTCTGTACTTTCCTGACCTTGAAGAGGTGGCACCATCAACTTGCCTGACACC(配列番号83; 2x MHMハイブリッド);
ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCACATTACTCGCATCCATTCTCACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号84; 2x ヒトPBREM);又は
ACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCACATTACTCGCATCCATTCTCACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCAGCACTGAAGGTCCTCAATCGACTGTACTTTCCTGACCCTGAAGAGGTGGCAGCATGGACTTTCCTGAACCA(配列番号85; 3x ヒトPBREM)、
又はそれらのいずれかの機能的バリアントを含む。
機能的バリアントは適切には、前記配列のいずれかと80%、90%、95%又は99%同一である配列を含む。
【0081】
一実施形態では、本明細書に提示のシス調節エレメント、シス調節モジュール若しくはプロモーター、又はそれらのバリアントによって、非肝臓又は非肝臓由来の組織(例えば、脾臓、筋肉、心臓、肺、及び脳)における遺伝子の発現が促進又は駆動される場合がある。非肝臓組織での遺伝子発現は、排他的である場合もあり、肝臓細胞での発現への付加である場合もある。遺伝子の発現が非肝臓組織と肝臓組織の両方において駆動される場合、非肝臓組織での発現レベルは、肝臓組織での発現レベルに等しいか又はそれよりも大きい場合がある。例えば、本明細書に提示のプロモーター、又はそれのバリアントによって、肝臓及び心臓において等しい遺伝子発現が駆動される場合がある。
【0082】
更なる態様では、本発明は、本発明による遺伝子治療ベクターを含む組換えビリオン(ウイルス粒子)を提供する。ビリオンとは、例えば、AAV粒子、レトロウイルス粒子、レンチウイルス粒子、又は別のなんらかの形態の遺伝子治療ウイルス粒子とすることができる。
【0083】
本発明の遺伝子治療ベクター又はビリオンは、薬学的に許容される賦形剤、すなわち、1つ又は複数の薬学的に許容される担体物質及び/又は添加剤、例えば、バッファ、担体、賦形剤、安定剤等と共に医薬組成物に製剤化することができる。医薬組成物は、キットの形態で提供することができる。
【0084】
したがって、更なる態様では、本発明は、上記の遺伝子治療ベクター又はビリオンを含む医薬組成物を提供する。本発明の遺伝子治療ベクター又はビリオンは、薬学的に許容される賦形剤、すなわち、1つ又は複数の薬学的に許容される担体物質及び/又は添加剤、例えば、バッファ、担体、賦形剤、安定剤等と共に医薬組成物に製剤化することができる。医薬組成物は、キットの形態で提供することができる。
【0085】
本発明の更なる態様によれば、本発明の種々の態様による遺伝子治療ベクター、発現カセット、プロモーター、CRE、又はCRMを含む細胞が提供される。
【0086】
適切には、細胞は真核細胞である。真核細胞は適切には、真菌細胞(例えば、酵母細胞)、動物(後生動物)細胞(例えば、哺乳動物細胞)、又は植物細胞とすることができる。或いは、細胞は原核細胞であってもよい。
【0087】
本発明の一部の実施形態では、細胞は、例えば細胞培養において、ex vivoである。本発明の他の実施形態では、細胞は、組織又は多細胞生物体の一部であってもよい。
【0088】
好ましい実施形態では、細胞は肝臓細胞(肝細胞)であり、これはex vivoであってもin vivoであってもよい。肝臓細胞は、初代肝臓細胞であっても、肝臓由来細胞株、例えば不死化細胞株の細胞であってもよい。細胞は、肝臓組織環境内(例えば、肝臓内)に存在してもよく、肝臓組織から分離されていてもよく、例えば、細胞培養中にあってもよい。適切には、細胞はヒト細胞である。一般に、肝臓細胞はCARとRXRの両方を発現する。しかし、一部の肝臓由来細胞株はCARを発現せず(例えばHuh7細胞株)、このような場合は外因性CARを供給する必要がある。このようなことは、プロモーター、例えば構成的に活性なプロモーターに作動可能に連結されたCARをコードする核酸を含む適切な発現構築物を細胞に供給することによって、行うことができる。適切なアプローチは当技術分野で知られており、実施例に記載されている。
【0089】
一部の実施形態では、細胞は、CAR及び/又はRXRを発現するように改変されている。適切には、かかる実施形態では、細胞は、CAR、RXR、又はCARとRXRの両方を通常には発現しない細胞である。適切には、細胞は肝臓細胞ではない。したがって、本発明の一部の実施形態では、本発明のプロモーター、発現カセット及びベクターを、非肝臓細胞において使用するが、この細胞は、CAR及び/又はRXRを通常(すなわち、その天然状態において)発現しない;したがって、本発明のプロモーターは、かかる細胞では通常には活性ではないだろう。しかし、前記細胞を、これがCAR及びRXRを発現することができるように改変し、したがってプロモーターを誘導することができる。非限定的な例として、細胞は、任意のタイプの動物の初代細胞であっても動物の細胞株であってもよい。
【0090】
本発明の種々の態様による遺伝子治療ベクター、発現カセット、プロモーター、CRE、又はCRMは、細胞のゲノムに挿入されてもよく、エピソームベクターに存在してもよい。
【0091】
本発明に適した細胞には、それらに限定されないが、酵母、植物、昆虫又は哺乳動物の各細胞等の真核細胞が含まれる。例えば、細胞は、任意のタイプの分化細胞であってもよく、卵母細胞、胚性幹細胞、造血幹細胞又はその他の形態であってもよい。一部の実施形態では、細胞は、動物(後生動物)細胞(例えば、哺乳動物細胞)である。好ましい一部の実施形態では、細胞は肝臓細胞である(例えば、Huh7細胞、HepaRG細胞、HEPG2細胞等;広範囲に及ぶ肝臓細胞がATCC、DSMZ及びその他の供源から入手可能である)。一部の実施形態では、細胞は哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、哺乳動物細胞はヒト、類人猿、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、ヤギ、ウシ、ヒツジ又はブタの各細胞である。目的の産物を生成するための好ましい一部の細胞又は「宿主細胞」は、ヒト、マウス、ラット、サル、又はげっ歯類の各細胞株である。ハムスター細胞が、一部の実施形態において好ましい、例えば、BHK21、BHK TK-、CHO、CHO-K1、CHO-DUKX、CHO-DUKX B1、CHO-S及びCHO-DG44の各細胞、又はかかる細胞株のいずれかの派生株/子孫である。代替の実施形態では、細胞はヒト細胞である可能性がある。好ましい一部の実施形態では、ヒト細胞は、ヒト胎児腎臓(HEK)細胞、好ましくはHEK293細胞である可能性がある。本発明の好ましい別の実施形態では、細胞は、網膜細胞、例えば、網膜色素上皮(RPE)細胞、例えば、ARPE-19(ATCC CRL-2302)とすることができる。更に、マウス骨髄腫細胞、好ましくはNS0及びSp2/0細胞、又はかかる細胞株のいずれかの派生株/子孫もまた、バイオ医薬品タンパク質用の産生細胞株としてよく知られている。本発明で使用することができる細胞株の非限定的な例及びこれらを入手できる供源をTable 1(表2)にまとめる。適切な宿主細胞は、例えば、DSMZ (Deutsche Sammlung von Mikroorganismen and Zeilkuituren GmbH、Braunschweig、ドイツ)やAmerican Type Culture Collection (ATCC)等の培養株保存機関から、市販されている。
【0092】
バイオプロセシング用途の場合、無血清条件下で、任意選択で動物由来のタンパク質/ペプチドをなんら含まない培地で、細胞を樹立し、適応させ、完全に培養することが好ましいとすることができる。市販の培地、例えば、ハムF12(Sigma社、Deisenhofen、ドイツ)、RPMI-1640(Sigma社)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM; Sigma社)、イーグル最小必須培地(MEM; Sigma社)、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM; Sigma社)、CD-CHO(Invitrogen社、Carlsbad、CA)、CHO-S-SFMII(Invitrogen社)、無血清CHO培地(Sigma社)、無タンパク質CHO培地(Sigma社)、EX-CELL培地(SAFC社)、CDM4CHO及びSFM4CHO(HyClone社)は適当な例示的栄養溶液である。培地のいずれもが、必要に応じて、様々な化合物を補充することができるが、その例は、ホルモン及び/又はその他の増殖因子(例えばインスリン、トランスフェリン、上皮増殖因子、インスリン様増殖因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、リン酸塩)、バッファ(例えばHEPES)、ヌクレオシド(例えばアデノシン、チミジン)、グルタミン、グルコース又は等価のその他エネルギー源、抗生物質、微量元素である。他の任意の必要なサプリメントも、当業者であれば知っていると思われる適当な濃度で含ませることができる。本発明では、無血清培地の使用が好ましいが、適切量の血清を補充した培地も宿主細胞の培養に使用することができる。選択遺伝子を発現する遺伝子改変細胞の増殖及び選択の場合、適切な選択剤が培養培地に添加される。
【0093】
細胞は、原核細胞、例えば細菌細胞とすることができる。本発明の一部の実施形態では、細胞は原核細胞とすることができる;原核細胞は、本発明に関連するCAR/RXRシステムを保有しないが、それにもかかわらず、ベクターの産生又はベクターの取扱い、輸送若しくは保管におけるその他の工程において有用であるとすることができる。
【0094】
一部の実施形態では、細胞は、ウイルスベクターの産生用のパッケージング細胞又はプロデューサー細胞である。例えば、細胞は、AAVベクターの産生用のパッケージング細胞又はプロデューサー細胞とすることができる。種々のパッケージング細胞株又はプロデューサー細胞株が当技術分野で知られている。パッケージング細胞株又はプロデューサー細胞株では、本発明のプロモーターは、ウイルスタンパク質、例えば、Rep又はCap又はその他のウイルスの構造遺伝子若しくは非構造遺伝子に作動可能に連結されていることが好ましいとすることができる。
【0095】
本発明の更なる態様では、本発明のプロモーターは、ウイルスのタンパク質又はRNAをコードする遺伝子と作動可能に関連付けることができる。ウイルスタンパク質は構造タンパク質であっても非構造タンパク質であってもよい。非限定的な例として、ウイルスタンパク質は、AAVタンパク質、例えば、Repタンパク質又はCapタンパク質であってもよく、E1A、E1B、E2A、又はE4等のウイルスヘルパータンパク質であってもよい。他の実施形態では、ウイルスタンパク質はREV、VSV-G又はRD114とすることができる。
【0096】
本発明の更なる態様では、疾患、好ましくは任意選択で肝臓における、異常な遺伝子発現に関連付けられる疾患(例えば遺伝性肝疾患)の処置に使用するための、本発明の種々の態様による、遺伝子治療ベクター、発現カセット、プロモーター、ビリオン又は医薬組成物が提供される。
【0097】
肝臓での発現は、肝臓が、代謝、止血、感染に対する防護に関与する多くのタンパク質の合成を含めて、体内での広範囲に及ぶ本質的な機能に関与しているので、特に興味深いものである。多くの疾患が肝臓での遺伝子発現の崩壊に関連していることを考慮すると、肝臓での導入遺伝子の発現によって治療用発現産物を生成することを可能にする遺伝子治療戦略の開発への関心がかなりある。異常な遺伝子発現に関連付けられる肝臓の疾患としては、それらに限定されないが、血友病(血友病A又はBを含む)、家族性高コレステロール血症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、フェニルケトン尿症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、グリコーゲン蓄積症、α1-アンチトリプシン欠損症、遺伝性ヘモクロマトーシス、高チロシン血症1型、アルギニノコハク酸尿症、肝炎ウイルス感染、非ウイルス性肝炎、肝がん、遺伝性胆汁うっ滞、ウィルソン病、及びその他の種々の肝疾患(例えば非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)やアルコール関連肝疾患(ARLD))が挙げられる。血友病A又はBの処置のための使用は、本発明の種々の態様の好ましい実施形態を表す。
【0098】
更なる態様では、本発明は:
- 遺伝子に作動可能に連結された合成肝臓特異的誘導性プロモーターであって、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なシス調節エレメント(CRE)を含む、合成肝臓特異的誘導性プロモーター、が含まれる発現カセットを含む、細胞を用意する工程と;
- 前記発現カセット内の誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子からの発現産物の発現を誘導することができる誘導剤を、前記細胞に投与する工程と、
を含む、
細胞、適切には肝臓細胞において、発現産物、適切には治療用発現産物を生成する方法を提供する。
【0099】
方法は適切には、遺伝子からの発現産物の発現に適した条件下で前記細胞を維持する工程を含む。培養では、方法は、適切な培養条件下で、細胞又は細胞を含む組織をインキュベートする工程を含むことができる。細胞は、当然ながら、in vivoである、例えば、対象の肝臓の1個又は複数の細胞にあるとすることができる。したがって、本発明の本態様は、とりわけ、細胞培養(例えばバイオプロセシング用途で)又は治療用産物の発現(例えば対象で又はex vivoで)において目的の産物を生成するための方法を提供する。本態様での使用に適した種々の細胞については上で論議されている。
【0100】
適切には、本発明の方法は、発現カセットを肝臓に導入する工程を含む。肝細胞をトランスフェクトする広範囲に及ぶ方法が当技術分野でよく知られている。肝細胞をトランスフェクトする好ましい方法は、合成肝臓特異的発現カセットを含むウイルスベクター、例えばAAVベクターを細胞に形質導入することである。本発明で使用するための種々のベクターの詳細を下に記載する。
【0101】
本発明の方法は、発現産物を収集する工程又は単離する工程を含むことができる。種々の発現産物(例えばタンパク質又は核酸)を収集又は単離する適切な方法については、当業者であればよく知られている。
【0102】
一部の実施形態では、細胞は肝臓細胞である。一般に、肝臓細胞はCARとRXRの両方を発現する。しかし、一部の肝臓由来細胞株はCARを発現せず(例えばHuh7細胞株)、このような場合は外因性CARを供給する必要がある。このようなことは、例えば、適切なプロモーターに作動可能に連結されたCARをコードする核酸を含む適切な発現構築物を供給して細胞でCARを発現することによって、行うことができる。所与の任意の細胞においてCARを発現するための適切な発現ベクター及びその他のアプローチについては、当技術分野でよく知られている。
【0103】
CARの自然発現は一般には肝細胞に限定されている。したがって、細胞がCARを発現しない場合(非肝臓細胞にとって通常である)、通常には、細胞に外因性CARを供給することが必要となる。上記のように、このようなことは、例えば、適切なプロモーターに作動可能に連結されたCARをコードする核酸を含む適切な発現構築物を供給して細胞でCARを発現することによって、行うことができる。所与の任意の細胞においてCARを発現するための適切な発現ベクター及びその他のアプローチについては、当技術分野でよく知られている。
【0104】
本発明で使用するための誘導剤は、CARの活性化及びCAR-RXRヘテロダイマーの形成を誘導するのに適した任意の薬剤とすることができる。かかる誘導剤は、発現カセットが存在する細胞内のPBREMエレメントからの発現を誘導することができる。先行技術から知られているマウス及びヒトのPBREMエレメントからの発現の広範囲に及ぶ誘導剤が存在する(例えば、HONKAKOSKIら、Molecular Pharmacology、53:597~601頁(1998)、及びCherianら「Small-molecule modulators of the constitutive androstane receptor」、Expert Opin Drug Metab Toxicol. 2015年7月; 11(7): 1099~1114頁; Banerjeeら「Targeting xenobiotic receptors PXR and CAR in human diseases」、Drug Discov. Today. 2015年5月; 20(5): 618~628頁; Omiecinskiら、「Multi-species Analyses of Direct Activators of the Constitutive Androstane Receptor」 Toxicological Sciences、123(2)、550~562頁(2011)、を参照されたい)。通常、これらの誘導剤はCARの活性化リガンドである。CARは、様々な化学構造を持つ種々の内因性及び外因性リガンドに対する幅広い特異性によって特徴付けられ、この特徴によって、CARが生体異物センサーであることが可能となる。Cherianらの表1が、本発明の任意の態様で誘導剤として使用可能である、種々の種におけるCARの活性化因子の種々の活性化因子を列挙している。
【0105】
例えば、限定されないが、誘導剤は適切には、以下のリストから選択される1つ又は複数の薬剤を含む:フェノバルビタール(PB);フラボノイド化合物、例えばフラボン、クリシン、バイカレイン、又はガランギン;1,4-ビス[2-(3,5-ジクロロピリジルオキシ)]ベンゼン(TCPOBOP);6-(4クロロフェニル)イミダゾ[2,1-b][1,3]チアゾール-5-カルバルデヒド-O-(3,4-ジクロロベンジル)オキシム(CITCO);アセトアミノフェン;ブプレノルフィン;フェニトイン;カルバマゼピン;バルプロ酸;アルテミシニン及び誘導体;クロルプロマジン;エファビレンツ;ネビラピン;リルピビリン;エトラビリン;ジアゼパム;シクロホスファミド;イホスファミド;セリバスタチン;シンバスタチン;ロバスタチン;置換スルホンアミド;チアゾリジン-4-オン;エストラジオール;エストロン及びアナログ;17α-エチニル-3;17β-エストラジオール(EE2);デヒドロエピアンドロステロン(DHEA);5β-プレグナン-3,20-ジオン;ジエチルスチルベストロール;イチョウ抽出物;ガランギン;クリシン;バイカレイン;硫化ジアリル;エラグ酸;レスベラトロール;スクアレスタチン-1;ビロバリド;トリクロカルバン;トリクロサン;ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT);ディルドリン;メトキシクロル;メトフルトリン;ペルメトリン;ピレトリン;スルホキサフロール;フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP);シプロコナゾール;フルコナゾール;プロピコナゾール;FL81;トリ-p-メチルフェニルホスフェート(TMPP);UM104;並びにUM145。
【0106】
好ましい一部の実施形態では、誘導剤とは、薬物(医薬品)、例えば、少なくとも1つの病状を処置するためにヒト又は動物(好ましくはヒト)で使用するのに少なくとも一か国(好ましくは米国又はEU加盟国)で規制当局の承認を有する薬物、である。或いは、誘導剤は少なくとも一か国(好ましくは米国又はEU加盟国)でGRASステータスを有することが好ましいとすることができる。好ましい一部の実施形態では、誘導剤は、以下のリストから選択される1つ又は複数の薬剤を含む:フェノバルビタール(PB);フラボノイド化合物、例えばフラボン、クリシン、バイカレイン、又はガランギン;アセトアミノフェン;ブプレノルフィン;フェノバルビタール;フェニトイン;カルバマゼピン;バルプロ酸;アルテミシニン及び誘導体;クロルプロマジン;エファビレンツ;ネビラピン;リルピビリン;エトラビリン;ジアゼパム;シクロホスファミド;イホスファミド;セリバスタチン;シンバスタチン;ロバスタチン;置換スルホンアミド;並びにチアゾリジン-4-オン。
【0107】
これらの化合物は、すべて既知の薬物であるか、ヒトで使用するためのGRASとされており、したがって、一般に、適切な程度の安全性を持ってヒトでの発現を誘導するために使用することができる。
【0108】
本発明の一部の実施形態では、誘導剤はフェノバルビタールである。他の一部の実施形態では、誘導剤はCITCO又はTCPOBOPである。他の一部の実施形態では、誘導剤はフラボノイド、例えばフラボンである。
【0109】
誘導剤は、適切な任意の方法で細胞に投与することができる。例えば、細胞培養では、誘導剤を培養培地に添加することができる。細胞がin vivoにある場合、例えば細胞が動物の肝臓にある場合、誘導剤は、動物への全身投与を介して又は標的組織(例えば肝臓)への局所投与を通して細胞に投与することができる。所与の任意の誘導剤にとって適切な投薬量の割合は、当業者であれば容易に決定することができる。したがって、当業者は、任意の誘導剤に関して、当該誘導剤を細胞に送達する適当な方法、及び使用する適切な濃度を容易に決定することができる。CITCOの場合、細胞への0.5μMから3μMの濃度、例えば概ね1μMの投与が発現を誘導するのに適していると、下の実施例において実証されている。TCPOBOP投与の場合、細胞への50nMから150nMの濃度の投与が、発現を誘導するのに適していると、下の実施例において実証されている。フラボンの場合、細胞への30μMの濃度の投与が、発現を誘導するのに適していると、下の実施例において実証されている。しかし、適当な他の濃度を使用することが可能で、患者に投与される必要な用量は、当業者であれば決定することができる。したがって、一部の実施形態では、本発明は、発現を誘導するために、0.1μMから15μM、例えば、0.25μMから6μM、0.5μMから3μMのCITCOに、発現カセットを含む細胞を曝露することが企図される。一部の実施形態では、本発明は、発現を誘導するために、10nM又は750nM、例えば、25nMから300nM、又は50nMから150nMのTCPOBOPに、発現カセットを含む細胞を曝露することが企図される。一部の実施形態では、本発明は、発現を誘導するために、6μMから150μM、例えば15から150μM、又は25から35μMのフラボンに、発現カセットを含む細胞を曝露することが企図される。
【0110】
本発明の方法は適切には、誘導剤を投与するのを中止する工程を含むことができる。誘導剤の投与を中止すると、少なくとも発現産物の発現が低下することになる。典型的には、発現産物の発現は、経時的にベースラインレベルに戻ることになる。
【0111】
本発明の方法は適切には、細胞に投与される誘導剤の濃度を経時的に変化させる工程を含むことができる。この工程は、発現産物の発現のレベルをモジュレートするために使用することができる。
【0112】
本発明の一部の実施形態では、経時的に細胞に投与される誘導剤の濃度は、対象に提供される治療用遺伝子産物の投薬量をモジュレートするために、又は細胞培養における発現産物の生成を変化させるために、変化される。対象における治療の場合(下でより詳細に論議されている)、誘導剤の濃度は、対象の状態の変調、対象におけるバイオマーカーのレベル、又は他の任意の理由に応じて変化させることができる。
【0113】
一部の実施形態では、本発明の方法は、細胞に阻害剤を投与する工程を含む。阻害剤は、CARの活性化及びCAR-RXRヘテロダイマーの形成を阻害又は減少するのに適した任意の薬剤とすることができる。阻害剤の添加を、発現産物の発現を減少又は排除するために使用することができる(すなわち、発現を下げるか又はスイッチオフにする)。非限定的な例として、メトホルミンはCARの既知のアンタゴニストであり、これを阻害剤として使用することができる。更に、アンドロステノール及びアンドロスタノールのいくつかの異性体であるアンドロスタン類は、CARの内因性アンタゴニストであることが知られており、これらを阻害剤として投与することができる。CARの種々の阻害剤が、Cherianら「Small-molecule modulators of the constitutive androstane receptor」、Expert Opin Drug Metab Toxicol. 2015年7月; 11(7): 1099~1114頁 -
図1を参照されたい - において論議されているが、これは、種々のヒト、マウス及びラットのCAR阻害剤を開示している。本発明で使用することができる、CAR-RXRヘテロダイマーの形成を阻害又は減少するのに適した更なるCAR(又はRXR)阻害剤は、当然ながら、当業者であれば特定することができる。所与の任意の阻害剤の適切な投薬量の割合は、当業者であれば容易に決定することができる。
【0114】
更なる態様では、本発明は、本発明による遺伝子治療ベクターを肝臓細胞に導入する工程、その後に、細胞に誘導剤を投与する工程、を含む、肝臓細胞において治療用導入遺伝子を発現させる方法、を提供する。適切な誘導剤については上で論議されている。肝臓細胞はin vivo又はex vivoとすることができる。上述のように、細胞に投与される誘導剤の濃度は、経時的に変化させることができる。本態様で使用するための例示的な治療用遺伝子については上で論議されている。
【0115】
本発明の種々の態様による遺伝子治療ベクター、発現カセット、ビリオン又は医薬組成物が遺伝子治療に使用することができることは、当業者であれば明らかであろう。したがって、遺伝子治療におけるかかる遺伝子治療ベクター、発現カセット、ビリオン又は医薬組成物の使用は、本発明の一部を形成する。したがって、本発明の一態様は、遺伝子治療、好ましくは治療用遺伝子の肝臓特異的発現による遺伝子治療に使用するための、適切には肝臓における異常な遺伝子発現を伴う疾患の処置のための、本明細書に記載の遺伝子治療ベクター、発現カセット、ビリオン又は医薬組成物を提供する。
【0116】
更なる態様では、本発明は、
治療用産物をコードする遺伝子を含む、本発明の遺伝子治療ベクター、発現カセット、又はビリオンを対象の肝臓に導入する工程と;
治療有効量の治療用産物が対象において発現されるように、対象に誘導剤を投与する工程と、
を含む、
それを必要とする対象の、好ましくはヒトの遺伝子治療方法を提供する。
【0117】
適切な治療用遺伝子についても上で論議されている。処置することができる状態についても上で論議されているが、この状態としては、それらに限定されないが、血友病(血友病A又はBを含む)、家族性高コレステロール血症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、フェニルケトン尿症、オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症、グリコーゲン蓄積症、α1-アンチトリプシン欠損症、遺伝性ヘモクロマトーシス、高チロシン血症1型、アルギニノコハク酸尿症、肝炎ウイルス感染、非ウイルス性肝炎、肝がん、遺伝性胆汁うっ滞、ウィルソン病、及びその他の種々の肝疾患(例えば非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、アルコール関連肝疾患(ARLD))、及びリソソーム貯蔵障害が挙げられる。
【0118】
本発明の方法は適切には、前記対象の肝臓において、遺伝子から治療有効量の治療用産物を発現させる工程を含む。治療用産物は、対象の肝臓において又は別の部位において治療効果を有することができる。例えば、治療用産物は血流中に放出されてもよい。
【0119】
適切な誘導剤について上に記載し、同様に誘導剤の投与方法についても記載する。上で論議のように、誘導剤の投与を、一定期間後に、例えば適切な治療効果が達成された後、中止することができる。或いは、対象に投与される誘導剤の量を、経時的に変化させることができる。対象に投与される誘導剤の量を、所望の量(用量)の治療用産物の発現を得るために調整することができる。したがって、治療用産物の増量が臨床上必要な場合(例えば、対象における不十分な応答に起因して)、対象に投与される誘導剤の量を増加してもよく、逆もまた同様である(例えば、過剰な応答又は望ましくない副作用に起因して)。
【0120】
一部の実施形態では、本発明の方法は、以下の工程を含むことができる:
- 対象において発現される治療用産物の量を決定する工程、又は治療用産物に対する対象の応答を評価する工程、及び:
a)対象においてより高い量の治療用産物が望ましい場合、対象に投与される誘導剤の量を増加する工程、又は
b)対象においてより低い量の治療用産物が望ましい場合、対象に投与される誘導剤の量を減らす工程。
【0121】
標準実験技法を使用して、対象における治療用産物の量を決定することができる。
【0122】
対象に投与される誘導剤の量が経時的に変化させることができることを考慮すると、当然のことながら、誘導剤は通常には、患者に継続的に投与されるのではなく、それよりも、通常には、所与の時間間隔で所与の投薬レベルで投与されることになる、ことが当然のことながら理解されるであろう。したがって、本発明は、用量を調整すること、用量間の期間を調整すること、又はその両方によって、経時的に対象に投与される誘導剤の量を変化させることが企図される。したがって、例えば、対象に投与される誘導剤の量を増加するために、用量間の期間を一定に保ちつつ用量を増加することができ、用量間の期間を短縮しつつ用量を一定に保つことができ、又は、用量を増加することができ且つ用量間の期間を短縮する。対象に投与される誘導剤の量を減少するために、用量間の期間を一定に保ちつつ用量を減少することができ、用量間の期間を短縮しつつ用量を一定に保つことができ、又は、用量を減少することができ且つ用量間の期間を延長する。
【0123】
或いは、又は付加的に、本発明の方法は、対象における治療用産物の量を変更するために誘導剤を変える工程を含むことができる。例えば、弱い誘導剤をより強い誘導剤に、又はその逆に置き換えることができる。
【0124】
本発明の方法はまた、例えば、対象が誘導剤に対して有害反応を有する場合、又は誘導剤が対象において無効であることが見出される場合に、誘導剤を変える工程を含むことができる。
【0125】
本発明の方法はまた、対象に阻害剤を投与する工程を含むことができる。本発明で使用するのに適した阻害剤については上で論議されている。阻害剤を添加して、対象における治療用産物の生成を低下又は停止することができる。対象に投与される阻害剤の量を、治療用産物の所望の量(用量)の発現を得るために調整することができる。
【0126】
適切な治療用遺伝子産物をコードする遺伝子については上で論議されている。しかし、血友病の処置のための第VIII因子や第IX因子等の治療用タンパク質について具体的に言及することができる。
【0127】
本発明の方法は適切には、本発明によるベクター又はビリオンを対象に投与する工程を含む。適切には、ベクターはウイルス遺伝子治療ベクター、好ましくはAAVベクターである。
【0128】
一部の実施形態では、本発明の方法は、ウイルス遺伝子治療ベクターを全身投与する工程を含む。全身投与は、経腸(例えば経口、舌下、及び直腸)又は非経口(例えば注射)とすることができる。好ましい注射経路には、静脈内、筋肉内、皮下、動脈内、関節内、髄腔内、及び皮内の各注射が含まれる。
【0129】
一部の実施形態では、ウイルス遺伝子治療ベクターは、1つ又は複数の更なる治療用産物と、又は細網内皮系によるベクターのクリアランスを防止するように設計された1つ又は複数の飽和剤と、同時に又は連続して投与することができる。
【0130】
ベクターがAAVベクターである場合、ベクターの投薬量は、1×1010gc/kgから1×1015gc/kg又はこれ超、適切には1×1012gc/kgから1×1014gc/kg、適切には5×1012gc/kgから5×1013gc/kg、とすることができる。
【0131】
一般に、それを必要とする対象は、哺乳動物、好ましくは霊長類、より好ましくはヒトである。通常には、それを必要とする対象は、疾患の特徴的な症状を提示することになる。本発明の方法は典型的には、治療量の治療用産物を発現することによって、それを必要とする対象によって提示される症状を改善する工程を含む。
【0132】
in vitro及びin vivoでの標的細胞における治療用遺伝子発現のための遺伝子治療プロトコルは、当技術分野でよく知られており、ここで詳細に論議することはない。要約すると、それには、プラスミドDNAベクター(裸で又はリポソーム中で)又はウイルスベクターの、筋肉内注射、間質注射、気道への点滴注入、内皮への適用、肝内実質内、及び静脈内又は動脈内の投与(例えば肝内動脈、肝内静脈)、が含まれる。標的細胞へのDNAのアベイラビリティを増強するために種々のデバイスが開発されてきた。単純なアプローチは、関連するベクターを含有するカテーテル又は移植可能な材料と物理的に標的細胞を接触させることであるが、一方、より複雑なアプローチでは、ジェットインジェクションデバイス等を使用することができる。哺乳動物の肝臓細胞への遺伝子導入は、ex vivoとin vivoの両方の手順を使用して行われてきた。ex vivoアプローチには通常、肝臓細胞の採取、適切な発現ベクターによるin vitro形質導入、これに続いて形質導入された肝細胞の肝臓への再導入が必要である。in vivo遺伝子導入は、DNA又はウイルスベクターを肝実質、肝動脈、又は門脈に注入することによって行われてきた。
【0133】
本発明の更なる態様では、本明細書に記載の任意の状態又は疾患の処置のための医薬組成物の製造のための、本発明の種々の態様による合成誘導性プロモーター、合成発現カセット、ベクター又はビリオンの使用が提供される。
【0134】
更なる態様では、本発明は、以下の工程を含む、発現産物を生成するための方法を提供する:
a)遺伝子に作動可能に連結された合成肝臓特異的誘導性プロモーターであって、CARとRXRのヘテロダイマーによって結合及び活性化されることが可能なシス調節エレメント(CRE)を含む合成肝臓特異的誘導性プロモーターが含まれる発現カセットを含む、真核細胞、好ましくは動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくは肝臓細胞の集団を用意する工程と;
b)前記細胞集団を培養する工程と、
c)前記発現カセット中の誘導性プロモーターに作動可能に連結された遺伝子からの発現産物の発現を誘導することができる誘導剤を、前記細胞に投与する工程と;
d)発現産物を回収工程。
【0135】
本発明の方法は、バイオプロセシングの方法、すなわち、生細胞を使用して所望の発現産物を得るプロセスであるのが好ましい。好ましい導入遺伝子及びそれらがコードする目的の産物については上で論議されている。発現産物は、治療、美容、研究又はその他の産業の各プロセスに有用であるとすることができる。本態様に適した誘導剤と細胞については上で論議されている。
【0136】
工程(b)は典型的には、細胞の増殖に適した条件下で前記細胞集団を維持する工程を含む。上記条件によって典型的には、工程(c)における誘導に基づいた、導入遺伝子からの発現産物の発現のための細胞が調製される。当業者であれば、企図される細胞の種々のタイプに適した条件について知っていると思われる。したがって、本発明の方法は適切には、細胞の増殖に適した条件下で前記細胞集団をインキュベートする工程、その後に、前記細胞集団を処理して発現を誘導する工程(c)、を含む。
【0137】
発現産物を回収する工程は典型的には、前記細胞集団から、場合によっては細胞培養培地の他の成分から発現産物を分離する工程を含む。本発明の方法は好ましくは、発現産物を精製する工程を含む。発現産物を回収及び/又は精製する適切な方法は、当技術分野では慣用であり、発現産物の特定の性質に左右されることになる。
【0138】
本発明によって、発現産物の生成を、細胞培養プロセスの所望のポイントまで遅らせることが可能となることは明らかであろう。このことによって、例えば、所望の細胞数又は濃度に達するか、又は所望の増殖期に達するそういった時まで、細胞の集団が増殖することを可能にすることができる。このことは、多くの理由で、例えば、細胞が最適な条件下で増殖し、その後に、増殖を阻害することができる導入遺伝子の発現を可能とするために、望ましいとすることができる。毒性タンパク質の場合では、例えば、細胞培養システムが所望の段階になるまで、毒性発現産物の生成を回避することができる。毒性タンパク質が発現すると、細胞は当然ながら悪影響を受けるか殺滅されることになる。しかし、非毒性の発現産物の場合であっても、導入遺伝子の発現を所望のポイントまで遅らせることにおいて相当の効率上の利点があり得る。
【0139】
本発明の方法は、それらに限定されないが、撹拌槽、気泡ポンプ、ファイバー、マイクロファイバー、中空ファイバー、セラミックマトリクス、流動床、固定床、及び/又は噴流層バイオリアクターといった適切な任意のリアクターで実施することができる。本明細書で使用される場合、「リアクター」には、発酵槽又は発酵ユニット又は任意のその他の反応容器が含まれ得るが、用語「リアクター」は、「発酵槽」と交換可能に使用される。例えば、一部の態様では、例示的バイオリアクターユニットは、以下のうち1つ又は複数又はすべてを実施することができる:栄養分及び/又は炭素供給源の供給、適切なガス(例えば酸素)の注入、発酵又は細胞培養培地の入口流及び出口流、ガス及び液相の分離、温度の維持、酸素及びCO2レベルの維持、pHレベルの維持、かき混ぜ(例えば撹拌)、及び/又は洗浄/滅菌。発酵ユニット等のリアクターユニットの例は、ユニット内に複数のリアクターを含有することができ、例えば、ユニットは、各ユニットに1~10個又はこれ超のバイオリアクターを有することができる。種々の実施形態では、バイオリアクターは、バッチ、半フェド-バッチ、フェド-バッチ、灌流及び/又は連続発酵プロセスに適したものであり得る。一部の実施形態では、バイオリアクターは、約100mlから約50,000リットル、好ましくは10リットル以上の容量を有することができる。更に、適切なリアクターは、複数回使用、単回使用、使い捨て又は非使い捨てとすることができ、適切な任意の材料から形成することができる。米国特許出願公開第2013/0280797号、第2012/0077429号、第2011/0280797号、第2009/0305626号、並びに米国特許第8,298,054号、第7,629,167号、及び第5,656,491号(参照によりその全文が本明細書に組み込まれる)に、本発明で使用することができる例示的システムが記載されている。
【0140】
本発明の好ましい一部の実施形態では、本発明の方法は、遺伝子治療ウイルスベクター、例えば、rAAVウイルス粒子の生成のためのものである。本実施形態では、細胞は適切にはパッケージング細胞又はプロデューサー細胞であり、ヘルパー機能のうちの1つは誘導性プロモーターの制御下にある。非限定的な例として、Rep、Cap、E1A、E1B、E2A、E4及びVA RNAの各遺伝子を誘導性プロモーターの制御下に置くことができる。その毒性のため、Repの発現を制御することは特に興味深い。したがって、本発明の別の態様では、ウイルス遺伝子治療用産物、好ましくはウイルスヘルパータンパク質、より好ましくはRep遺伝子を生成する方法における、ウイルスタンパク質の発現を制御するための本明細書で論議のプロモーターの使用、が提供される。
【0141】
更なる態様では、本発明は、本発明の細胞を含む細胞培養物及び細胞の増殖を支えるのに十分な培地を含むリアクター容器を提供する。本発明に適した種々のリアクターについては上に記載されている。
【0142】
本発明の更なる態様では、目的の産物、例えば治療用産物を製造するためのバイオプロセシング方法における本発明のバイオプロセシングベクター又は細胞の使用、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【
図1】-
図1Aは、Huh7細胞へのトランスフェクションとDMSO、50nM、150nM、及び250nM TCPOBOPでの処理との後の、PB1-MinTK構築物からのルシフェラーゼ発現の測定を示す図である。 -
図1Bは、Huh7細胞へのトランスフェクション後のPB1-MinTK構築物からのルシフェラーゼ発現の測定を示す図である、ここでは、Huh7細胞をCARでトランスフェクトした、又はCARでトランスフェクトしなかった。 -
図1Cは、強力なウイルスプロモーターCMV-IEの比として表した
図1Aからのデータを示す図である。
図1Cは、CARの非存在では、ルシフェラーゼ発現がないことを示す図でもある。MinTKプロモーターと組み合わせた1つのPBREMエレメントによって、CMV-IE遺伝子発現の最大40%まで発現が駆動される。 -
図1Dは、Huh7細胞へのトランスフェクションとDMSO、0.5μM、1μM、2μM及び3μM CITCOでの処理との後のPB1-MinTK構築物からのEPO発現の測定を示す図である。本図は、CITCOの添加によってプロモーターCMV-MPからのEPO発現が変化しないことを、示す図でもある。
【
図2】-
図2Aは、AXOL ARE肝細胞へのトランスフェクションとDMSO(左)又は1μM CITCO(右)での処理との後のPB1-MinTK、PB1-CMV-MP、及びPB1-SV40-MPの各構築物からのルシフェラーゼ発現の測定を示す図である。 -
図2Bは、強力なウイルスプロモーターCMV-IEの比として表した
図2Aからのデータを示す図である。
【
図3】-
図3Aは、それぞれ1、2、3、及び4つのPBREMエレメントを含有するPB1-SV40、PB1-1-SV40、PB1-2-SV40、及びPB1-3-SV40の各構築物からのルシフェラーゼ発現を示す図である。SV40プロモーターの組合せでPBREM多量体は誘導性であり、発現レベルを増加するが、PBREMエレメントの3つのコピーまでに限ってである。 -
図3Bは、それぞれ1、2、3、及び4つのPBREMエレメントを含有するPB1-CMV、PB1-1-CMV、PB1-2-CMV、及びPB1-3-CMVの各構築物からのルシフェラーゼ発現を示す図である。CMVプロモーターの組合せでPBREM多量体は誘導性であり、発現レベルを増加するが、PBREMエレメントの3つのコピーまでに限ってである。 -
図3Cは、それぞれ1、2、3、及び4つのPBREMエレメントを含有するPB1-MinTK、PB1-1-MinTK、PB1-2-MinTK、及びPB1-3-MinTKの各構築物からのルシフェラーゼ発現を示す図である。MinTKプロモーターの組合せでPBREM多量体は誘導性であり、発現レベルを増加するが、PBREMエレメントの3つのコピーまでに限ってである。
【
図4】-
図4Aは、AXOL ARE肝細胞におけるpGL4.10ベクターのPB1-MinTK構築物、Huh7細胞におけるpAAVベクターのPB1-MinTK構築物、及びAXOL ARE肝細胞におけるpAAVベクターのPB1-MinTK構築物、からのルシフェラーゼ発現を示す図である。PB1-MinTK構築物からのルシフェラーゼ発現の誘導は、ベクタータイプと細胞タイプにわたって同等である。 -
図4Bは、AXOL ARE-肝細胞におけるpGL4.10ベクターのPB1-2-MinTK構築物、Huh7細胞におけるpAAVベクターのPB1-2-MinTK構築物、及びAXOL ARE肝細胞におけるpAAVベクターのPB1-2-MinTK構築物からのルシフェラーゼ発現を示す図である。PB1-2-MinTK構築物からのルシフェラーゼ発現の誘導は、ベクタータイプと細胞タイプにわたって同等である。
【
図5】CITCO無し、CITCO(1μM)有りの誘導及びCITCO中止後の、AXOL ARE肝細胞におけるpAAVベクターのPB1-MinTK構築物及びPB1-2-MinTK構築物からのルシフェラーゼ発現を示す図である。
【
図6】マウスのPBREMエレメントを示す図である。
【
図7】pGL4.10ベクターのプラスミドマップを示す図である。
【
図8】PB1構築物及びPB1-2構築物からのin vivoの結果を示す図である。A)誘導して0から48時間後の代表のマウスの生物発光イメージングを示す図である。B)誘導の異なる動態を示すためにプロットされた生物発光の図である。C)各構築物で観察された誘導倍率(n=5)を示す図である。
【
図9】ヒトCARを安定して発現するHUH7細胞株におけるPBREMハイブリッドの誘導に対するCITCO及びフラボンの影響を示す図である。
【
図10】初代肝細胞におけるPBREMハイブリッドの誘導に対するCITCO及びフラボンの影響を示す図である。
【
図11】ヒトCARを安定して発現するHuh7細胞株におけるPBREMハイブリッドの多量体の誘導に対するCITCO及びフラボンの影響を示す図である。
【
図12】初代肝細胞におけるPBREMハイブリッドの多量体の誘導に対するCITCO及びフラボンの影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0144】
本発明の実施形態の詳細な説明及び実施例
本発明の様々な実施形態の実施及び使用が下で詳細に論じられているが、本発明が、様々な特定の状況において具体化することができる適用可能な多くの発明概念を提供することは認識されているはずである。本明細書で論議の具体的な実施形態は、本発明を実施及び使用するための具体的な方法を単に例証するものであり、本発明の範囲を定めるものではない。
【0145】
本発明の実践には、他に指示がない限り、当業者の能力の範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来の技法を用いることになる。かかる技法は文献において十分に説明されている。例えば、以下を参照されたい:Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel、2000、Wiley and son Inc、Library of Congress、米国); Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第3版、(Sambrookら、2001、Cold Spring Harbor、New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press); Oligonucleotide Synthesis (M. J. Gait編、1984);米国特許第4,683,195号; Nucleic Acid Hybridization (Harries and Higgins編 1984); Transcription and Translation (Hames and Higgins編 1984); Culture of Animal Cells (Freshney、Alan R. Liss、Inc.、1987); Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press、1986); Perbal、A Practical Guide to Molecular Cloning (1984);シリーズ、Methods in Enzymology (Abelson and Simon監修、Academic Press、Inc.、New York)、具体的には、Vols.154及び155 (Wuら.編)及びVol. 185、「Gene Expression Technology」 (Goeddel、編); Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells (Miller and Calos編、1987、Cold Spring Harbor Laboratory); Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology (Mayer and Walker編、Academic Press、London、1987); Handbook of Experimental Immunology、Vols. I~IV (Weir and Blackwell編、1986);並びにManipulating the Mouse Embryo、(Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1986)。
【0146】
本明細書で本発明の背景の論議は、本発明の状況を説明するために含ませるものである。当該論議は、言及したいずれもの事項が、本発明のいずれかの請求項について優先日当時にいずれかの国において既に公開され、公知であり、又は一般常識の一部であったということを自認するものとして、捉えるべきではない。
【0147】
本開示の全体にわたって、種々の刊行物、特許及び公開特許出願が、確認引用によって参照される。本明細書で引用したすべての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。具体的には、本明細書で具体的に言及した文献の教示又は節が参照により組み込まれる。
【0148】
本発明の理解を容易にするため、いくつかの用語が下に定義される。本明細書において定義される用語は、本発明に関連する分野の当業者により一般に理解されている意味を有する。「a」、「an」及び「the」等の用語は、単一の実体のみを指すことを意図しておらず、例示のために使用され得る具体的な例を構成する一般的クラスを含む。本明細書における専門用語は、本発明の具体的な実施形態を記載するのに使用されるが、その用法は、請求項において説明された場合を除いて、本発明の範囲を定めるものではない。
【0149】
「シス調節エレメント」又は「CRE」という用語は、当業者であればよく知られている用語であり、エンハンサー、プロモーター、インシュレーター、又はサイレンサー等の、隣接遺伝子の(すなわちシスで)転写を調節又はモジュレートすることができる核酸配列を意味する。CREは、これが調節する遺伝子の近傍に見出される。CREは通常、TFに結合することによって遺伝子転写を調節する、すなわち、TFBSを含む。単一のTFが多数のCREに結合することができ、したがって、多数の遺伝子の発現を制御する(多面発現)。CREは通常、常にとは限らないが、これが調節する遺伝子の転写開始部位(TSS)の上流に位置する。「エンハンサー」は、これが作動可能に関連する遺伝子の転写を増強する(すなわち上方調節する)CREであり、これが調節する遺伝子の上流、下流、更にはイントロン内にさえ見出すことができる。多重エンハンサーは協調的に作用して、一遺伝子の転写を調節することができる。これに関連して「サイレンサー」とは、遺伝子の転写を防止又は下方調節するように作用するリプレッサーと呼ばれるTFと結合するCREに関連する。「サイレンサー」という用語は、mRNA分子の翻訳を抑制するタンパク質と結合する、そのメッセンジャーRNAの3'非翻訳領域の領域を指すこともできるが、こういった語法はCREについて記載する上でのその使用とは明確に異なるものである。概して、本発明のCREとは肝臓特異的誘導性エンハンサーである。本文脈では、CREは、転写開始部位(TSS)から1500ヌクレオチド以下に、より好ましくはTSSから1000ヌクレオチド以下に、より好ましくはTSSから500ヌクレオチド以下に、適切にはTSSから250、200、150若しくは100又はこれ未満のヌクレオチドに、位置することが好ましい。本発明のCREは、長さが比較的短いことが好ましく、好ましくは長さが100ヌクレオチド以下であり、例えば、長さが90、80、70、60又はこれ未満のヌクレオチドとすることができる。
【0150】
「シス調節モジュール」又は「CRM」という用語は、2つ以上のCREで構成される機能性モジュールを意味する;本発明において、CREは典型的には肝臓特異的誘導性エンハンサーである。したがって、本出願では、CRMは典型的には複数の肝臓特異的誘導性CREを含む。典型的には、CRM内の複数のCREは一緒に(例えば相加的又は相乗的に)作用して、CRMが操作可能に関連付けられている遺伝子の転写を増強する。CRM内のCREにおいてスペーシングをシャッフル(すなわち並べ替え)、反転(すなわち逆方向)、及び変更するための保存可能な範囲がある。したがって、本発明のCRMの機能的バリアントは言及されたCRMのバリアントを含むが、ここで、このバリアント内のCREはシャッフル且つ/若しくは反転されている、並びに/又はCRE間のスペーシングが変更されている。
【0151】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」という用語は、転写が行われるのに必要である、すなわち転写を開始する、転写される核酸配列の上流に一般に位置するDNAの領域を指す。プロモーターは、これの制御下でコード配列の転写の正確な活性化又は抑制を可能にする。プロモーターは通常、複数のTFによって認識及び結合される特定の配列を含有する。TFは、プロモーター配列に結合し、遺伝子のコード領域からRNAを合成する酵素であるRNAポリメラーゼの動員をもたらす。非常にたくさんのプロモーターが当技術分野で知られている。本発明の誘導性プロモーターは、典型的には、誘導される前に低レベルの発現を駆動し、誘導されると、著しくより高いレベルの発現を駆動する(例えば、誘導後の発現で2、3、4、5、6、7、8、又は10倍の増加さえも)。
【0152】
本発明のプロモーターは合成プロモーターである。本明細書で使用される「合成プロモーター」という用語は、天然には存在しないプロモーターに関する。本文脈において、合成プロモーターは典型的には、ミニマル(又はコア)プロモーター又は肝臓特異的近位プロモーターに作動可能に連結された本発明の合成CRE及び/又はCRMを含む。本発明のCRE及び/又はCRMは、プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の誘導性肝臓特異的転写をもたらす働きをする。合成プロモーターの一部が天然のものであってもよいが(例えば、ミニマルプロモーター又はプロモーター中の1つ若しくは複数のCRE)、完全な実体としての合成プロモーターは天然のものではない。
【0153】
本明細書で使用される場合、「ミニマルプロモーター」(「コアプロモーター」としても知られる)とは、それ自体は不活性又はほぼ不活性であるが、他の転写調節エレメントと組み合わせた場合、転写を媒介することができる短いDNAセグメントを指す。ミニマルプロモーター配列は、原核生物遺伝子及び真核生物遺伝子を含めて、種々の異なる給源に由来することができる。ミニマルプロモーターの例については上で論議されており、この例には、ドーパミンベータヒドロキシラーゼ遺伝子ミニマルプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子ミニマルプロモーター(CMV-MP)、SV40ミニマルプロモーター(SV40-MP)、及びヘルペスチミジンキナーゼミニマルプロモーター(MinTK)が含まれる。しかし、近位プロモーターは合成物とすることができる。ミニマルプロモーターは通常、転写開始部位(TSS)と、直接上流にあるエレメントである、RNAポリメラーゼIIの結合部位と、一般転写因子結合部位(多くの場合、TATAボックス)と、を含む。
【0154】
本明細書で使用される場合、「近位プロモーター」とは、ミニマルプロモーターに、一次調節エレメントを含有する傾向にある遺伝子の上流の近位配列を加えたものに関する。近位プロモーターは、多くの場合、TSSの上流に概ね250の塩基対を伸長し、特定のTFBSを含む。本発明の場合では、近位プロモーターは適切には、本発明の1つ若しくは複数のCRE又はCRMと組み合わせることができる天然に存在する肝臓特異的近位プロモーターである。しかし、近位プロモーターは合成物とすることができる。
【0155】
本発明の文脈におけるシス調節エレメント、シス調節モジュール、プロモーター又はその他の核酸配列の「機能的バリアント」とは、リファレンス配列と、例えば、誘導性肝臓特異的シス調節エンハンサーエレメント、誘導性肝臓特異的シス調節モジュール又は誘導性肝臓特異的プロモーターと、同じように機能する能力を保持する、リファレンス配列のバリアントである。かかる機能的バリアントの代替用語には、「生物学的等価物」又は「等価物」が含まれる。
【0156】
上で論議のように、所与のシス調節エレメントが誘導性肝臓特異的エンハンサーとして機能する能力は、発現が誘導されるように配列がCAR-RXRヘテロダイマーにより結合される能力によって、主に決定されることが理解されよう。したがって、ほとんどの場合、シス調節エレメントの機能的バリアントは、CAR-RXRヘテロダイマーに適した結合部位を含有することになる。CAR-RXRヘテロダイマーは野生型PBREMエレメントのNR1モチーフに結合すると考えられ、したがって、NR1モチーフとして機能できる配列が望ましい。NR1モチーフではマウスとヒトのPBREMの間に極めて高度の配列保存があり、したがって、NR1モチーフとの高レベルの同一性がいずれもの機能的バリアントに保存されることが通常望ましい。野生型PBREMエレメント内の更なる配列は、バックグラウンド発現を最小限に抑えるとともに高レベルの誘導性をもたらすことに役立つことができ、したがって、機能的バリアントがこれらの他の領域に少なくともある程度の配列同一性を含有することが全体的に好ましい。したがって、機能バリアントとリファレンス配列の間の配列同一性のレベルは、インジケーター又は保持された機能とすることができる。シス調節エレメントのNR1モチーフにおける高レベルの配列同一性は他の領域(例えばNF1やNR2、この場合、配列に関する任意の保存の必要性がもしあっても相当少ない)の配列同一性よりも全体としては高度に重要である。
【0157】
CAR-RXRヘテロダイマーが所与のCREに結合する能力は、それらに限定されないが、電気移動度シフトアッセイ(EMSA)、結合アッセイ、クロマチン免疫沈降(ChIP)、及びChIP-シーケンシング(ChIP-seq)を含めて、当技術分野で知られている関連する任意の手段によって決定することができる。好ましい実施形態では、CAR-RXRヘテロダイマーが所与の機能的バリアントと結合する能力は、EMSAによって決定される。EMSAを実施する方法は当技術分野でよく知られている。適切なアプローチは、上で引用したSambrookeらに記載されている。この手順について記載する関連する多くの論文が入手可能である、例えば、Hellman and Fried、Nat Protoc. 2007; 2(8): 1849~1861頁。
【0158】
「肝臓特異的」又は「肝臓特異的発現」とは、シス調節エレメント、シス調節モジュール又はプロモーターが、他の組織(例えば脾臓、筋肉、心臓、肺及び脳)と比較して優先的に又は優勢に、肝臓(又は肝臓由来細胞)における遺伝子の発現を増強又は駆動する能力を指す。本発明の場合では、その発現は誘導性であることが求められる、すなわち、遺伝子の発現は、適切な誘導剤が投与された場合にのみ生じるか、又は著しく増加する(本発明のすべての態様での使用に関する誘導剤については上で論議されている)。遺伝子の発現は、mRNA又はタンパク質の形態とすることができる。好ましい実施形態では、肝臓特異的発現とは、他の(すなわち非肝臓)組織又は細胞において無視できる発現が存在するようなものであり、すなわち、発現は高度に肝臓特異的である。
【0159】
プロモーターが肝臓特異的誘導性プロモーターとして機能する能力は、当業者であれば容易に評価することができる。したがって、当業者であれば、本明細書に例示の特定のプロモーターの任意のバリアントが依然として機能的であるか否か(すなわち、それが上で定義の機能的バリアントであるか否か)、容易に決定することができる。例えば、評価される所与の任意のCREは、ミニマルプロモーター(例えばMinTKの上流に位置する)に作動可能に連結することができ、シス調節エレメントが遺伝子(通常にはレポーター遺伝子)の誘導性肝臓特異的発現をもたらす能力が測定される。或いは、CREのバリアントを、リファレンスCREの代わりに誘導性肝臓特異的プロモーターに置換することができ、前記改変プロモーターによって駆動される誘導性肝臓特異的発現に対する効果を決定し、非改変形態と比較することができる。同様に、プロモーターが肝臓特異的発現を誘導する能力は、当業者であれば容易に評価することができる(例えば下の実施例に記載のように)。リファレンスプロモーターのバリアントによって駆動される遺伝子の発現レベル及び誘導性は、リファレンス配列による発現レベル及び誘導性と比較することができ、適切なアプローチについては上で論議されている。
【0160】
肝臓特異性は、誘導されたときの遺伝子(例えば治療用遺伝子やレポーター遺伝子)の発現が、肝臓由来細胞において優先的又は優勢的に起こる場合に特定することができる。優先的又は優勢な発現は、例えば、誘導されたときの発現のレベルが、他のタイプの細胞(すなわち非肝臓由来細胞)よりも肝臓由来細胞において有意に大きい場合に定義することができる。例えば、誘導されたときの肝臓由来細胞における発現は適切には、非肝臓細胞より少なくとも5倍高く、好ましくは非肝臓細胞より少なくとも10倍高く、場合によっては50倍以上高い場合がある。便宜上、腎臓由来細胞株(例えば、HEK-293)、頸部組織由来細胞株(例えばHeLa)及び/又は肺由来細胞株(例えばA549)における発現レベルと比較して、肝細胞株(例えば、Huh7及び/又はHepG2細胞等の肝臓由来細胞株)又は肝臓初代細胞における発現レベルの比較によって、肝臓特異的発現を適切に実証することができる。
【0161】
本発明の肝臓特異的誘導性プロモーターは好ましくは、誘導された場合、非肝臓由来細胞、適切にはHEK-293、HeLa、及び/又はA549の各細胞においてCMV-IEプロモーターよりも4分の1以下のレベルで低下した発現を有する。
【0162】
本発明の肝臓特異的誘導性プロモーターは、対象の肝臓における発現を促進するのに、例えば、導入遺伝子、好ましくは治療用導入遺伝子の肝臓特異的発現を駆動するのに、適しているのが好ましい。
【0163】
本発明の肝臓特異的プロモーターは、場合によっては、非肝臓細胞で使用できることにも留意されたい。一般に、非肝臓細胞はCARを発現せず、したがって本発明のプロモーターはそのような細胞では機能しない。しかし、非肝臓細胞がCAR(及びそれらが自然にRXRを発現しない場合はRXR)を発現するように操作される場合、かかる非肝臓細胞は、本発明のプロモーターに連結された誘導性遺伝子を発現することができる。換言すれば、本発明の肝臓特異的プロモーターはまた、CAR及びRXRの発現に関して肝臓様発現型を有するように改変された非肝臓細胞において機能することができる。「肝臓特異的」という用語は、適宜解釈されたい。肝細胞は、CAR(例えばHuh-7細胞株)又はRXRを発現しない場合、関連するタンパク質を発現するように同様に改変することができる。
【0164】
本明細書で使用する「核酸」という用語は典型的には、ヌクレオチドから本質的に構成される任意の長さのオリゴマー又はポリマー(好ましくは直鎖状ポリマー)をいう。ヌクレオチド単位は通常には、複素環式塩基、糖基、及び改変又は置換リン酸基を含めて、少なくとも1個、例えば、1、2又は3個のリン酸基を含む。複素環式塩基としては、とりわけ、天然に存在する核酸に広く分布するアデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)等のプリン塩基及びピリミジン塩基、その他の天然に存在する塩基(例えば、キサンチン、イノシン、ヒポキサンチン)並びに化学的若しくは生化学的に改変された(例えばメチル化された)非天然の若しくは誘導体化された塩基を挙げることができる。糖基としては、とりわけ、好ましくは天然に存在する核酸に共通のリボース及び/若しくは2-デオキシリボース等のペントース(ペントフラノース)基、又はアラビノース、2-デオキシアラビノース、トレオース又はヘキソースの各糖基、並びに改変又は置換糖基を挙げることができる。本明細書において意図される核酸としては、天然に存在するヌクレオチド、改変ヌクレオチド又はそれらの混合物を挙げることができる。改変ヌクレオチドとしては、改変複素環塩基、改変糖部分、改変リン酸基又はそれらの組合せを挙げることができる。リン酸基又は糖の改変は、安定性、酵素的分解に対する抵抗性又は他のいくつかの有用な特性を改善するために導入することができる。「核酸」という用語は、更に好ましくは、DNA、RNA及びDNA/RNAハイブリッド分子を包含し、具体的には、これには、hnRNA、pre-mRNA、mRNA、cDNA、ゲノムDNA、増幅産物、オリゴヌクレオチド及び合成(例えば化学合成された)DNA、RNA又はDNA RNAハイブリッドが含まれる。核酸は、天然のもの、例えば、天然に存在し若しくは天然から単離されるものとすることができる;又は非天然のもの、例えば組換え体とすることができる、すなわち、組換えDNA技術により生成され及び/又は部分的若しくは全体的に、化学的若しくは生化学的に合成された、組換え体とすることができる。「核酸」は、二本鎖、部分的に二本鎖又は一本鎖とすることができる。一本鎖である場合、核酸は、センス鎖又はアンチセンス鎖とすることができる。加えて、
核酸は環状であっても直鎖状であってもよい。
【0165】
「同一性」及び「同一」という用語等は、2つのポリマー分子間、例えば、2つのDNA分子間等の2つの核酸分子間の配列類似性を指す。配列アラインメント及び配列同一性の決定は、例えば、Altschulら 1990 (J Mol Biol 215: 403~10頁)により最初に記載されたBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)、例えばTatusova and Madden 1999 (FEMS Microbiol Lett 174: 247~250頁)により記載された「Blast 2 sequences」アルゴリズムを使用して行うことができる。
【0166】
比較のために配列をアライニングする方法は、当技術分野でよく知られている。種々のプログラム及びアライメントアルゴリズムは、例えば、以下に記載されている:
Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482頁; Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443頁; Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 85:2444頁; Higgins and Sharp (1988) Gene 73:237~44頁; Higgins and Sharp (1989) CABIOS 5:151~3頁; Corpetら(1988) Nucleic Acids Res. 16:10881~90頁; Huangら(1992) Comp. Appl. Biosci. 8:155~65頁; Pearson et al. (1994) Methods Mol. Biol. 24:307~31頁; Tatianaら(1999) FEMS Microbiol. Lett. 174:247~50頁。配列アラインメント法及び相同性計算の詳細な検討については、例えば、Altschulら(1990) J. Mol. Biol. 215:403~10頁に、見出すことができる。
【0167】
National Center for Biotechnology Information (NCBI) Basic Local Alignment Search Tool (BLAST(商標); Altschulら(1990))は、いくつかの配列分析プログラムと関連して使用するために、National Center for Biotechnology Information (Bethesda、MD)を含むいくつかの供給源からインターネット上で入手できる。このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の説明は、インターネット上、BLAST(商標)についての「ヘルプ」セクションにより入手できる。核酸配列の比較について、BLAST(商標)(Blastn)プログラムの「Blast 2配列」機能が、デフォルトパラメータを使用して用いることができる。リファレンス配列と更に大きい類似性をもつ核酸配列は、この方法により評価される場合、パーセンテージ同一性の向上を示す。通常には、パーセンテージ配列同一性は、当該配列の全長にわたって計算される。
【0168】
例えば、グローバル最適アラインメントは適切には、Needleman-Wunschアルゴリズムにより、以下のスコアリングパラメータを用いて見出される:マッチスコア:+2、ミスマッチスコア:-3;ギャップペナルティ:ギャップオープン 5、ギャップ伸長 2。生じた最適グローバルアラインメントのパーセンテージ同一性は適切には、アラインメントを取った塩基の数のそのアラインメントの全長に対する比により計算され、この場合、当該アラインメントの長さはマッチのものとミスマッチのものの両方を含むが、そして100を乗じる。
【0169】
本出願での「合成」とは、天然に存在しない核酸分子を意味する。本発明の合成核酸発現構築物は、人工的に、典型的には組換えテクノロジーにより生成される。かかる合成核酸は、天然に存在する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロン、及びその他のかかる調節配列)を含有し得るが、天然では存在しない状況で存在する。例えば、合成遺伝子(又は遺伝子の一部)は典型的には、天然では隣接していない1つ又は複数の核酸配列を含有し(キメラ配列)、並びに/又は置換、挿入、及び欠失並びにそれらの組合せを包含し得る。
【0170】
本明細書で使用される「相補的な」又は「相補性」とは、2つの核酸配列のWatson-Crick塩基対形成を指す。例えば、配列5'-AGT-3'は、その相補的配列3'-TCA-5'に結合する。2つの核酸配列間の相補性は、塩基の一部のみがこれらの相補体に結合する場合、「部分的」とすることができ、又は、当該配列内のあらゆる塩基がこれの相補塩基に結合するというような場合、完全とすることができる。核酸鎖間の相補性の程度は、核酸鎖間のハイブリダイゼーションの効率及び強度に対して著しい影響を及ぼす。
【0171】
本出願で「トランスフェクション」とは広くには、核酸を細胞へ意図的に導入する任意のプロセスを指し、ウイルス及び非ウイルスのベクターの導入をカバーし、形質転換、形質導入等の用語及びプロセスを含む。例としては、それらに限定されないが:ウイルスベクターでのトランスフェクション;プラスミドベクターでの形質転換;エレクトロポレーション(Frommら(1986) Nature 319:791~3頁);リポフェクション(Feignerら(1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413~7);マイクロインジェクション(Muellerら(1978) Cell 15:579~85頁);アグロバクテリウム媒介性移入(Fraleyら(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4803~7頁);直接的DNA取り込み;whiskers媒介性形質転換;及び微粒子銃(Kleinら(1987) Nature 327:70頁)が挙げられる。
【0172】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という句は、外因性核酸配列を指す。一例では、導入遺伝子は、産業的若しくは薬学的に有用な化合物をコードする遺伝子、又は所望の形質をコードする遺伝子である。更に別の例では、導入遺伝子はアンチセンス核酸配列をコードし、この場合、アンチセンス核酸配列の発現によって標的核酸配列の発現が阻害される。
【0173】
「ベクター」という用語は、当技術分野においてよく知られており、本明細書で使用される場合、核酸分子、例えば、二本鎖DNAを指すが、これは、本発明による核酸配列に挿入し得たものである。ベクターは適切には、挿入された核酸分子を適切な宿主細胞へ輸送するために使用される。ベクターは通常には、挿入核酸分子を転写し、且つ、好ましくは、その転写物をポリペプチドへ翻訳することを可能にする必要なエレメントの全部を含有する。ベクターは通常には、いったんベクターが宿主細胞内にあるならば、ベクターは、宿主染色体DNAとは独立して又は同時発生的に複製することができるように、ベクター及びそれの挿入された核酸分子の数個のコピーが生成され得るように、必要なエレメントの全部を含有する。本発明のベクターは、エピソームベクター(すなわち、宿主細胞のゲノムへ統合されない)であってもよく、宿主細胞ゲノムへ統合されるベクターであってもよい。この定義には、非ウイルスベクターとウイルスベクターの両方が含まれる。非ウイルスベクターには、それらに限定されないが、プラスミドベクター(例えば、pMA-RQ、pUCベクター、bluescriptベクター(pBS)、及びpBR322、又は細菌配列を欠くそれらの誘導体(ミニサークル))、トランスポゾンベースのベクター(例えば、PiggyBac (PB)ベクター又はSleeping Beauty (SB)ベクター)等が含まれる。人工染色体(細菌(BAC)、酵母(YAC)、又はヒト(HAC))等のより大きいベクターが、より大きいインサートに対応するために使用することができる。ウイルスベクターには、ウイルスに由来し、それには限定されないが、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノ随伴ウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、肝炎ウイルスの各ベクター等が含まれる。必ずというわけではないが、通常には、ウイルスベクターは、複製に必須のウイルス遺伝子がウイルスベクターから除去されていることから所与の細胞において増殖する能力を喪失しているので、複製欠損である。しかし、一部のウイルスベクターはまた、例えば、がん細胞等の所与の細胞において特異的に複製するように適応させることができるとともに、通常には、(がん)細胞特異的(腫瘍)溶解を引き起こすために使用される。ビロソームは、ウイルスエレメントと非ウ
イルスエレメントの両方を含むベクターの非限定的例であり、特に、リポソームと不活性化HIV又はインフルエンザウイルスとを兼ね備える(Yamadaら、2003)。別の例には、カチオン性脂質と混合されたウイルスベクターが包含される。
【0174】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」、「作動可能に接続された」という用語、又は等価の表現は、エレメントが機能的に接続され且つ意図された様式で互いに相互作用することができるように、互いに対する種々の核酸エレメントの配置を指す。かかるエレメントには、限定されないが、プロモーター、エンハンサー、及び/又は調節エレメント、ポリアデニル化配列、1つ又は複数のイントロン及び/又はエクソン、並びに発現される目的の遺伝子のコード配列が含まれ得る。正しく配向又は作動可能に連結された場合、核酸配列エレメントは、相互の活性をモジュレートするように一緒に作用し、最終的に、発現産物の発現のレベルに影響することができる。モジュレートするとは、特定のエレメントの活性のレベルを高める、低める又は維持することを意味する。各エレメントの他のエレメントに対する位置は、各エレメントの5'末端及び3'末端で表現することができ、特定の任意のエレメント間の距離は、エレメント間の介在ヌクレオチド又は塩基対の数によって言及することができる。当業者であれば理解するように、作動可能に連結されたとは、機能的な活性を意味し、必ずしも、天然の位置上の連結に関係するとは限らない。実際、核酸発現カセットで使用される場合、シス調節エレメントは通常には、プロモーターのすぐ上流に位置することになるが(これは、一般に当てはまるとはいえ、決して、核酸発現カセット内の位置の限定又は除外として解釈されるべきではない)、これは、必ずしもin vivoで当てはまらなくてもよい、例えば、転写が影響を及ぼされる遺伝子の、天然では下流にある調節エレメント配列が、当該プロモーターの上流に位置する場合、同じように機能することができる。したがって、特定の実施形態によれば、調節エレメントの調節性又は増強性効果は、位置独立的である。
【0175】
本明細書で使用される「スペーサー配列」又は「スペーサー」とは、2つの機能的核酸配列(例えば、TFBS、CRE、CRM、ミニマルプロモーター等)を隔てる核酸配列である。スペーサー配列は、任意の配列を本質的に有することができるが、機能的核酸配列(例えばシス調節エレメント)が所望のように機能するのを妨げること(例えば、このようなことは、サイレンサー配列を含む場合、起こる可能性があり、その結果、所望の転写因子等の結合を妨げる)がないことを条件とする。通常、スペーサー配列は、隣接する機能的核酸配列を互いに間隔をあけるためにのみ存在するので、非機能的である。
【0176】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、当技術分野と調和し、医薬組成物の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないことを意味する。
【0177】
「治療的有効量」及び類似の句は、所望の特定の薬理学的効果をもたらす、例えば、肝臓で治療用遺伝子を発現するための、対象における用量又は血漿濃度を意味する。かかる投薬量が当業者によって治療有効量であると見なされる場合でも、治療有効量は、本明細書に記載の状態を処置するのに有効であるとは常には限らない場合もあることが強調される。治療有効量は、投与経路及び剤形、対象の年齢及び体重、及び/又は処置される疾患又は状態に基づいて様々であり得る。
【0178】
「処置」又は「処置する」という用語は、疾患又は状態の1つ又は複数の徴候、症状、又は影響を軽減、改善、又は排除することを指す。
【0179】
「個体」、「対象」、及び「患者」という用語は交換可能に使用され、処置を必要とする疾患又は状態を有する任意の個々の対象を指す。本開示の目的のために、対象は、霊長類、好ましくはヒト、又はイヌ、ネコ、ウマ、ブタ、ヤギ、又はウシ等の別の哺乳動物とすることができる。
【0180】
技術紹介
核内受容体
核内受容体は、細胞環境の化学的変化を転写上の変化、したがって生物学的変化に変換する際に極めて重要な役割を演じる。この機能は、細胞だけではなく生物体全体の恒常性を維持する上で不可欠である。核内受容体は、種にわたってその数に多大な差異があり、例えば、ヒトは48種を有し、C.エレガンス(C. elegans)は270種を有するが、後生動物においてのみ見出される。
【0181】
その発見以来、核内受容体の重要性と数は大幅に増大し、これらタンパク質は現在、タンパク質スーパーファミリーとして認められている。このファミリーには、ステロイド、甲状腺ホルモン、栄養素及び生体異物化学物質に結合し且つ応答する受容体が含まれる。リガンドが結合すると、受容体はコンフォメーション変化を経て、DNAに結合し、それによって遺伝子発現を開始又は抑制する。ゲノムDNAと結合するこの能力は、受容体機能並びに細胞の運命、身体の発達及び代謝におけるその重要性にとって鍵である。核内受容体と結合することが示されたリガンドの数は絶えず拡大し、同族受容体の機能と矛盾する。リガンドは内因性ホルモンからビタミンや生体異物にまで及び、その結果、細胞代謝と恒常性に対するその重要性に注目が集まっている。これらの受容体は、トランスクリプトームに与え得る多大な影響に起因して、薬物治療の卓越した標的であり、FDA承認薬の概ね13%が核内受容体を標的としていると推定される。
【0182】
構造
核内受容体は質量50~100kDaの間を有し、成熟ポリペプチドは5つのドメインに分類される:
A/B:受容体間で高度に変動する。リガンドの非存在下では弱い転写活性化因子として作用するが、リガンドが結合すると強力な活性化因子として作用する活性化機能1(AF-1)を含有する。これは、EドメインのAF-2との相互作用によるものである。
C:DNA応答エレメントに結合する2つのジンクフィンガーを含有する高度に保存されたドメイン。
D:LBDとDBDの間を接続し、相互作用を可能にするフレキシブルドメイン。細胞トラフィッキング及び細胞内分布において重要である。
E:構造は高度に保存されているが、配列は中程度のみの保存である。リガンド結合キャビティを含有し、受容体にリガンド特異性を付与する。DBDとともに二量体形成面に役に立ち、コアクチベーター及びリプレッサーとも結合する。その作用がリガンド結合に左右される活性化因子2(AF2)を含有する。
F:高可変性C末端ドメイン。
【0183】
作用機構
核内受容体は、その作用機構に基づいて4つのタイプに分類できる。下は、各タイプのまとめである。
タイプI:これらの受容体は、不活化状態にある細胞の細胞質に見出される。リガンドの結合によって、ヒートショックタンパク質(HSP)の解離、ホモ二量体化、核への移行、及び受容体のDNA応答モチーフへの結合が引き起こされる。これらの受容体は、DNAの可変長(直列反復配列1~5(DR1~5))によって隔てられている2つのハーフ(1/2)サイトからなるDNAモチーフに結合する、この場合、第2のハーフサイトは第1のハーフサイトの逆位反復配列である。このクラスの受容体の一部は、直列反復配列に結合し、単量体/二量体のいずれかとして、又は構成的アンドロスタン受容体の場合はRXRとのヘテロダイマーとして、結合することができる。
タイプII:これらの受容体は、不活性であろうと活性であろうと、核内に存在する。これは通常、RXRとのヘテロダイマーとしてDNAに結合する。リガンドが非存在の場合、この受容体は多くの場合コリプレッサータンパク質と複合体を形成する。
タイプIII:タイプI受容体に類似するが、DNA配列の直列反復配列に排他的に結合する。
タイプIV:これらは二量体の単量体として結合できるが、単一のDNA結合ドメインのみがDNA上の単一のハーフサイトに結合する。
【0184】
構成的アンドロスタン受容体(CAR)
構成的アンドロスタン受容体(CAR)は - 又は核内受容体サブファミリー1、グループI、メンバ3 - 肝臓細胞でほぼ排他的に発現する核内受容体スーパーファミリーのメンバである。ここでは、CARは別の核内受容体であるプレグナンX受容体(PXR)と協力して、内因性物質及び生体異物の化学物質のセンサーを演じる。物質を活性化することによって結合すると、これらの受容体は、シトクロムp450を含めて、多数の遺伝子の活性をモジュレートし、したがってそれら化合物の代謝と排泄を担っている。CAR及びPXRが体内の外来化学物質の解毒に主要な役割を果たすのは、この結合と遺伝子活性化能によるものである。
【0185】
機能:
上に示したように、CARは生体外異物及び内因性物質の代謝の重要な調節因子として機能する。それは肝臓において24の予測転写物を有する。これらの転写物の一部は、この受容体の低レベルの構成的活性の原因であるが、一方、他の転写物は誘導性であることが示された。構成的活性は、ステロイド受容体コアクチベーター1(SRC1)等の転写コアクチベーターとの相互作用によってモジュレートされると考えられている。この活性は、アンドロスタン等のインバースアゴニストの結合によって抑制することができる。
【0186】
リガンド活性化:
不活性CARはリン酸化され、細胞の細胞質に存在する。ここで、不活性CARは、ヒートショックタンパク質90(hsp90)及び細胞質CAR保持タンパク質(CCRP)と複合体を形成するが、この会合とは、CARを細胞質に維持し、したがって不活性のまま維持するところのものである。この不活性CARは2つの様式で、1)マウスCARリガンドであるTCPOBOPよる等の直接的なリガンド結合、又は2)フェノバルビタールを介した間接的な活性化、で活性化することができる。両経路によって、多タンパク質複合体からのCARの解離がもたらされ、核へのその移行が可能になる。核内では、CARは単量体として作用することができるか、又はレチノイドX受容体(RXR)とヘテロダイマーを形成することができる。核CARは、フェノバルビタール応答エレメント(PBREM)でDNAと結合し、これを通して、核CARは、CAR調節遺伝子、例えばCYP2B、CYP2C及びCYP3Aサブファミリーを活性化する。
【0187】
直接的活性化:
TCPOBOPは、マウスCARに直接結合し、核へのその移行を誘導すると考えられる。しかし、この化学物質はヒトのCARに結合せず、したがって、ヒトの研究の場合CITCOが等価の化合物である。
【0188】
間接的活性化:
抗けいれん薬であるフェノバルビタール(PB)によるCARの間接的活性化は、間接的CAR活性化のモデルとして広く認められている。PBによって、ホスファターゼPP2Aの活性化を通してCARの脱リン酸化が起こる。PP2A活性化の正確な機構は不明であるが、PBによってAMP活性化プロテインキナーゼが活性化され、このプロテインキナーゼは、多タンパク質複合体によって次いで動員されるPP2Aを活性化することができる。
【0189】
別の理論は、PBがその受容体、上皮増殖因子受容体(EGFR)に対して上皮増殖因子(EGF)と競合するというものである。EGFとEGFRの解離によって、活性化Cキナーゼ1(RACK 1)の受容体の脱リン酸化を招くSRC1が不活性化され、その結果、PP2Aの刺激にいたる。
【0190】
PBREMエレメント:
マウスCARホモログのDNA結合部位が、Honkakoskiら(MOLECULAR PHARMACOLOGY、53:597~601頁(1998))によって特定された。この研究で、著者らは、RXR及びCARヘテロダイマーが、フェノバルビタール誘導に応答してシトクロムP-450 Cyp2b10遺伝子のフェノバルビタール応答性エンハンサーモジュール(PBREM)の部位に結合することを見出した。哺乳動物細胞株においてRXR及びCARの発現はPBREMを活性化したが、このことにより、CAR-RXRヘテロダイマーがCyp2b10遺伝子のトランス作用因子であることが示される。このヘテロダイマーが2つの不完全な直列反復配列-4モチーフに結合すること、及びこのモチーフがヒトで保存されていること、も示された。PBREMエレメントを
図6に示すが、ここで、NR1とNR2は、太字体である不完全な直列反復配列を有する核内受容体結合部位である。NFI結合部位が示されている。CAR-RXRヘテロダイマーはNR1部位に結合すると思われる。
【0191】
ヒトのPBREMエレメントも特定された、Sueyoshiら(J. BIOL. CHEM. Vol. 274,10、6043~6046頁、1999)。
【0192】
マウスとヒトのPBREMエレメントの配列及びアラインメントを下に:
【0193】
【0194】
示すが、いわゆるNR1モチーフにはそれぞれにおいて下線が引かれている(配列番号を括弧内に示す)。
【0195】
NR1モチーフでは保存が極めて高レベルであり、その他の領域では同一性がはるかにより低いレベルであることがわかる。
【0196】
本発明は、例えば、遺伝子治療ベクターで提供される場合に、PBREMエレメント及びそれの機能的バリアントを、誘導性発現をもたらすために使用することができる、という驚くべき発見に基づくものである。本発明によって、有用なレベルの誘導性及び低レベルのバックグラウンド(構成的発現)が可能となる。
【実施例1】
【0197】
PBREMエンハンサーをMinTKプロモーターと共に使用して、ルシフェラーゼ及びEPOの発現を駆動した。
【0198】
材料
- ヒト肝臓細胞株であるHuh7細胞
- DPBS:CaCl2無し、MgCl2無し(Gibco社、14190-094)
- DMEM(Sigma社、D6546)
- FBS(Sigma社、F9665)
- Pen-Strep(Sigma社、P4333)
- Promega Fugene-HD(E2311)
- TCPOBOP(Sigma社、T2320)
- CITCO(Cayman Chemicals Company社、16027)
- pcDNA6プラスミド、トランスフェクション効率の内部コントロールとして使用されるβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を含有する(Thermofisher社、V22020)
- Jouanら、2016からのマウスCAR発現プラスミド(BioCat GmbH社、EX-Z4288-M51-10-GC)。Huh7はCAR欠損であるので、これが使用された。
- β-ガラクトシダーゼ基質溶液(Thermofisher社、75707/75710)
- Pierce BCAキット(23225)
- LARII(Dual Luciferase Reporter 1000アッセイシステム、Promega社、E1980)
- EPO ELISAキット(Abcam社、ab119522)
【0199】
方法:
1日目
- 細胞を25,000細胞/300μlの密度で48ウェルプレートに播種した
2日目
- トランスフェクション当日、トランスフェクションするDNA(CARプラスミド/ルシフェラーゼ又はEPOと作動可能に連結されたPB1-MinTK/内部対照としてpcDNA6プラスミド)を100ng/μlストック溶液に希釈した。
48ウェルトランスフェクションあたり:
- DNA 45ng(各プラスミド15ng、pcDNA6、CAR、及び試験プラスミド)をOptimem培地4.1μlと混合した。
- FusionHD 0.5μlをOptimem培地4μlと混合した。
- これらの2つの溶液を混合し、室温で15分間インキュベートした。
- 次いで、最終溶液をウェルに滴下添加した。
- トランスフェクションの3時間後、誘導剤TCPOBOPを指示濃度で適当なウェルに添加した。
3日目
- 誘導の24時間後、培地を細胞から除去した。
- 細胞をDPBS 300μlで1回洗浄した。
- passive lysis buffer 100μl及び揺動しながらの15分間インキュベーションを使用して細胞を溶解した。
- benchtop centrifugeで最高速度でプレートを1分間遠心分離することにより、細胞デブリをペレット化した。
- ルシフェラーゼの場合、試料10μlを白色96ウェルプレートに移し、LARII基質50μlを注入して発光を測定した。
- β-ガラクトシダーゼ活性を、溶解物25μlを使用して、製造元の取扱説明書(哺乳動物β-ガラクトシダーゼアッセイキット、75707/75710、Thermo Scientific社)に従って測定した。溶解物25μlをマイクロプレートウェルに移し、β-ガラクトシダーゼアッセイ試薬25μlと混合し、室温に平衡化させた。混合物を37℃で30分間インキュベートし、吸光度を405nmで測定した。
- タンパク質濃度を、溶解物25μlを使用して、製造元の取扱説明書(Pierce(商標)BCAタンパク質アッセイキット、23225/23227、Thermo Scientific社)に従って測定した。溶解物25μlをマイクロプレートウェルに移し、希釈標準溶液200μlと混合した。混合物を37℃で30分間インキュベートし、室温に冷却し、次いで吸光度をおよそ562nmで測定した。タンパク質濃度を、既知のタンパク質濃度を有する標準物質をアッセイすることから作成されたタンパク質標準曲線に従って計算した。
【0200】
ルシフェラーゼの読取り値を、溶解物中のβ-ガラクトシダーゼとタンパク質濃度の両方に対して正規化し、正規化した相対ルミノメーターユニット(RLU)を作成した。
【0201】
実験全体にわたって比較するために、プロモーターの強度を、PBREM含有構築物と同じ遺伝子を駆動しているCMV-IEプロモーターと比較したが、これはどの実験でも含められている。
【0202】
PB1-MinTk-EPOによるトランスフェクションを、EPOが培地に分泌されることを除いて、上記のように実行した。したがって、培地を収集し、ELISAアッセイを使用して製造業者の取扱説明書(ab119522エリスロポエチン(EPO)ヒトELISAキット、Abcam社)に従ってEPO濃度を測定した。培地50μlを予洗マイクロプレートウェルに移し、1×ビオチン複合抗体50μlと混合した。混合物を室温で1時間インキュベートした。ウェルを洗浄し、ストレプトアビジン(Streptavadin)-HRP 100μlを添加し、プレートを室温で15分間インキュベートした。ウェルを洗浄し、次いでTMB基質溶液100μlを添加した。混合物を室温で10分間インキュベートした。停止液100μlの添加によって酵素反応を停止し、吸光度を450nmで読み取った。EPO濃度を、既知のEPO濃度を有する標準物質をアッセイすることから作成されたEPO標準曲線に従って計算した。
【0203】
PB1-MinTK構築物を、Kpnl及びNcolの制限部位を使用してベクターpGL4.10にクローニングした。これにより、プロモーターがホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子の直接上流に配置される。PB1-MinTK構築物は、51bpのエンハンサーとヘルペスチミジンキナーゼ遺伝子からのMinTKミニマルプロモーターとを含有する。
【0204】
結果:
図1AのPB1-MinTK構築物からのルシフェラーゼ発現が示したところは、細胞をビヒクル(DMSO)で処理した場合、プロモーターからの測定可能なルシフェラーゼ活性がほんのわずかであったことである。この活性は、プロモーターからの漏出発現に相当する。50nM又は150nMのTCPOBOP添加によってプロモーターの強力な誘導がもたらされたが、この場合、6倍までの誘導が測定された。250nMのTCPOBOP添加では、このプロモーターからの応答を誘発しなかったが、このことにより、細胞に過重な負担をかけることを防止するために恒常性制御機構が活性化された可能性があること、が示唆される。したがって、PB1-MinTK構築物は、Huh7細胞においてTCPOBOPを添加することによって誘導される。誘導はTCPOBOPの濃度に応じて調節可能であるが、より高濃度では低下する。
【0205】
図1Bでは、CAR及び150nM TCPOBOPの存在下でのPB1-MinTK構築物からのルシフェラーゼ発現は、
図1Aで先に見られたように高い。しかし、細胞にPB1-MinTKをトランスフェクトし、CARをトランスフェクトしていない場合、150nM TCPOBOPを添加すると測定可能な活性はまったくない。このことは、CARが存在しない場合、TCPOBOPが結合する受容体の非存在によって説明することできる。したがって、誘導は、CAR依存性であり、高度に肝臓特異的なプロセスを示す。
【0206】
まとめると、これらの結果が示すところは、PB1-MinTk構築物はHuh7細胞ではTCPOBOPを添加することによって誘導性であり、誘導は調節可能であり、誘導はCAR依存性であること、及び、単一のエレメントからの発現はCMV-IE遺伝子発現の40%を駆動するのに十分であること、である。
【0207】
図1Aに示す実験データを、強力なウイルスプロモーターCMV-IEのルシフェラーゼ発現の比として
図1Cに表す。これが示すところは、MinTKプロモーターに連結された1つのPBREMエレメントからのルシフェラーゼ発現は、CMV-IEプロモーターのルシフェラーゼ発現の40%を駆動するのに十分であること、である。
図1Cはまた、CARの非存在下では、PB1-MlnTK構築物からのルシフェラーゼ発現がまったくないことも示す。
【0208】
次いで、PB1-MinkTKプロモーターを使用して、治療上の目的であるタンパク質EPOの発現を駆動した。EPOタンパク質に作動可能に連結されたPB1-MinTKプロモーター及びCAR含有プラスミドでトランスフェクトされたHuh7細胞で、発現が駆動された。トランスフェクションを先に記載のように実施したが、EPOの発現がヒトCAR誘導剤CITCOによって誘導された。
【0209】
TCPOBOPはヒトCARを活性化しないので、マウス誘導剤であるTCPOBOPの代わりに、ヒトCAR誘導剤であるCITCOを使用した。このことは、本発明を使用することになる、最終的な標的であるヒト細胞では、TCPOBOPを使用できないことを意味する。このことは、ヒトCAR誘導剤であるCITCOで誘導されるヒトCARによってマウスPBREMエレメントを活性化することができること、を保証するためにも行った。
【0210】
Huh7細胞へのトランスフェクションとDMSO、0.5μM、1μM、2μM、及び3μMの各CITCOでの処理との後のPB1-MinTK構築物からのEPO発現を
図1Dに示す。この図が示すところは、薬物の添加無しではEPOの発現がほとんどわずかであるが、2μMまでのCITCOを添加すると、EPOの産生が著しく向上することである。これはここでも最高濃度でベースライン活性に戻る。この図はまた、CITCOの添加によってプロモーターCMV-MPからのEPO発現が変化しないことも示す。本実施例でのPB1-MinTKの全体的なEPO発現レベルは、CMV-IEのEPO発現のおよそ22%である(データ示さず)。これは、CITCOがTCPOBOPよりもCAR活性に関して弱い誘導剤であることから、
図1CにおけるCMV-IEに関連して先に観察された40%とは異なる。
【0211】
PB1-MlnTKを使用して、ルシフェラーゼ及びEPOの調節可能な発現を駆動するのに成功した。
【実施例2】
【0212】
次いで、PBREMエレメントを他の2つのミニマルプロモーターと組み合わせて使用して、誘導性及び発現について試験した。PBREMを、CMVミニマルプロモーター、MinTKプロモーター、及びSV40ミニマルプロモーターの前にクローニングし、AXOL ARE肝細胞に導入した。
【0213】
Axol Assay-Ready Expanded(ARE)肝細胞は、in vitroで増殖した初代ヒト肝細胞である。大バッチサイズ(最大2000バイアル)が利用可能であり、初代肝細胞に関して、確かな、すぐに使用でき且つ一定した供源が確保される。ARE肝細胞はCYP酵素を発現し、代謝的に機能的であり、極性化しており、C型肝炎ウイルスに感染することができる。AXOL ARE-肝細胞はCARを発現し、その結果、CARを発現するプラスミドでトランスフェクトする手間が省かれる。
【0214】
材料:
- AXOL assay-ready expanded (ARE)肝細胞(Axol社、ax3701)
- ARE肝細胞解凍培地(Axol社、ax3705)
- ARE維持培地(Axol社、ax3710)
- Virimer redトランスフェクション試薬(Lipocalyx社、VR04-02-15)
- 上記の通りのCITCO、ルシフェラーゼ(lucifierase)、β-ガラクトシダーゼ及びBCAキット
【0215】
方法:
ARE肝細胞を、製造元のマニュアルに記載の通りに培養及びトランスフェクトした。コラーゲンコーティングの6ウェルプレート中、培養培地2mlに200,000個の細胞を播種した。十分な接着のために、細胞を37℃及び5%CO2で4時間インキュベートした。トランスフェクトするDNAを含有するトランスフェクション混合物(ルシフェラーゼ及びβ-ガラクトシダーゼ含有プロモーターと作動可能に連結されたPB1-MinTK/PB1-CMV/PB1-SV40)200μlを添加し、細胞をオービタルシェーカー上で100rpmで37℃及び5%CO2で3時間インキュベートした。トランスフェクションの3時間後、CITCOを適当なウェルに添加した。細胞を37℃及び5%CO2での静的条件下で一晩インキュベートし、朝に培地を新鮮なARE肝細胞維持培地と交換した。読取りは誘導24時間後とした。
【0216】
結果:
図2AのPB1-MinTK、PB1-CMV-MP、及びPB1-SV40-MPの各構築物からのルシフェラーゼ発現が示すところは、ミニマルプロモーターそれぞれが1μM CITCOを添加すると、PBREMエレメントからの発現をサポートすること、である。誘導はSV40とMinTKでおよそ7倍、CMV-IEプロモーターで2倍であった。各構築物の発現レベルは、CMV-IEと比較して、それぞれPB1-MinTK、PB1-CMV、及びPB1-SV40で、20%、10%及び55%である。SV40は、最高の発現を駆動することができるが、バックグラウンドレベルがより高いという代償が伴う。CMVミニマルプロモーターはほとんど又はまったく発現を示さない。このデータから、元のMinTk構築物は、発現レベルと、誘導性と、制御の厳格さ(すなわち、バックグラウンド発現を最小限に抑える)との間で最良の妥協点を提供することができると思われる。
【0217】
PBREMを使用して、様々なミニマルプロモーターとの組合せで誘導性発現を駆動することができる。
【実施例3】
【0218】
本実験は、NR結合部位の多量体化が次いでプロモーターの活性を向上するか否かを調べるために実施した。したがって、MinTk、CMV、及びSV40のミニマルプロモーターの前にPBREMエレメントの2、3、及び4つの反復をクローニングした。ここでは、重要な考慮事項は、エレメント間のスペーシングであり、ここでは5の一般則に従ったが、これによって、5bp離れた間隔で間隔があけられたエレメントどうしは互いに立体的に妨害しない。以前の誘導性プロモーター設計からの組織内知見を使用して、20bp離れた上記エレメントをクローニングした。これら多量体を、先に記載のpGL4.10プラスミドにクローニングした。次いで、これら構築物を前記のようにAXOL ARE肝細胞において試験した。
【0219】
MinTKプロモーター:
PB1-MinTK、PB1-1-MinTK、PB1-2-MinTK、及びPB1-3-MinTKは、MinTKミニマルプロモーターの組合せでそれぞれ1、2、3、及び4つのPBREMエレメントを含有する。
図3Cで、CITCO 1μlで誘導した場合の、PB1-1-MinTK、PB1-2-MinTK、及びPB1-3-MinTKの各構築物からのルシフェラーゼ発現が示すところは、多量体が誘導され、多量体によって発現レベルが増加することである。しかし、この発現レベルの増加は、PBREMエレメント(PB1~2)の3コピーまでに限って観察される、なぜなら、もう1つのエレメントの付加は、誘導及び発現のレベルに悪影響を与えると思えるからである。各多量体は、それぞれCMV-IEの1.5、4.1、2.66まで誘導される。しかし、誘導のレベルは、ここでPB1として示されている最初のPB1-MinTK構築物に類似する。これは、プロモーターのバックグラウンド活性の増加によるものである。結果をCMV-IEに対する比として表す。結果は3回の生物学的繰返しの平均である。
【0220】
SV40ミニマルプロモーター:
PB1-SV40、PB1-1-SV40、PB1-2-SV40及びPB1-3-SV40は、SV40ミニマルプロモーターの組合せでそれぞれ1、2、3、及び4つのPBREMエレメントを含有する。
図3Aで、CITCO 1μlで誘導した場合のPB1-1-SV40、PB1-2-SV40、及びPB1-3-SV40の各構築物からのルシフェラーゼ発現が示すところは、多量体が誘導され、多量体によって実際発現レベルが増加することである。しかし前のように、発現レベルのこの増加は、PBREMエレメントの3コピーまでに限って観察される、なぜなら、もう1つのエレメントの付加は、誘導及び発現のレベルに悪影響を与えるようであるからである。各多量体は、それぞれCMV-IEの2.6、3.6、及び2.57まで誘導される。誘導のレベルは、9倍までの誘導を伴って、MinTkミニマルプロモーターで見られる6倍の増加よりも高い。ここでも、発現のバックグラウンドレベルが増加するが、これは、下に記載のCMV-MPプロモーターで見られるよりもはるかに少ない。結果をCMV-IEに対する比として表す。結果は3回の生物学的繰返しの平均である。
【0221】
CMVプロモーター:
PB1-CMV、PB1-1-CMV、PB1-2-CMV、及びPB1-3-CMVは、CMVミニマルプロモーターの組合せでそれぞれ1、2、3、及び4つのPBREMエレメントを含有する。
図3Bで、CITCO 1μlで誘導した場合のPB1-1-CMV、PB1-2-CMV、及びPB1-3-CMV構築物からのルシフェラーゼ発現が示すところは、多量体が誘導され、多量体によって実際発現レベルが増加することである。しかし前のように、発現レベルのこの増加は、PBREMエレメントの3コピーまでに限って観察される、なぜなら、もう1つのエレメントの付加は、誘導及び発現のレベルに悪影響を与えるようであるからである。各多量体は、CMV-IEのそれぞれ1.9、2.67、及び2.67まで誘導される。誘導のレベルは、MinTk又はSV40のミニマルプロモーターのどちらででも観察されるよりも低く、最大5倍である。CMVミニマルプロモーターを使用すると、発現のバックグラウンドレベルが極めて高レベルに増加するように思われ、したがって、評価し得る最も劣る候補であるとすることができる。
【0222】
PBREMエレメントの数を増やすと、3つのPBREMエレメントまで、発現レベルが増加する。PBREM数を4に更に増やすと、ルシフェラーゼの発現はより低いという結果となる。
【実施例4】
【0223】
実施例3に続いて、in vivo研究のためにPB1-MinTK及びPB1-2-MinTkを進めること、を決定した。これを容易にするために、前述の2つの構築物をpAAVベクター(Takara社、Clontech社)にクローニングして、AAVウイルスの調製を可能とした。pAAVプラスミドの制限消化及び元のpGL4.10構築物のPCR増幅を使用してインサートをクローニングした。
【0224】
プロモーターの活性に対する逆位末端配列(ITR)の影響について調査した。これは、他のプロジェクトでAAV ITRからの干渉が観察されたので、行った。この目的のため、pAAV-PB1-MinTk及びpAAV-PB1-2-MinTkを先に記載のようにHuh7及びAREの初代細胞にトランスフェクトし、それらの活性について評価した。
【0225】
これら実験の結果を、
図4A及び
図4Bで見られる。これらのグラフは、3回の生物学的繰返しの平均を表しており、ITRがプロモーターの成績に影響を与えないことを示す。PB1-MinTK及びPB1-2-MinTKの構築物からのルシフェラーゼ発現の誘導は、ベクター及び細胞タイプにわたって同等である。これらの構築物は著しく堅牢であり、プラスミドバックボーンは活性に影響を与えないと思われる。
【実施例5】
【0226】
AXOL ARE肝細胞におけるpAAVベクターのPB1-MinTK及びPB1-2-MinTKの構築物からのルシフェラーゼ発現はCITCO(1μM)によって誘導性であるが、
図5に示すように、CITCOを排除した後に減少する。このことは、薬物を排除すると、プロモーターの活性がほぼベースラインレベルまで減少することを示す。
【実施例6】
【0227】
- PB1及びPB1-2の誘導を含むAAVを使用するin vivo実験
先の適用から、構築物PB1(単一のマウスPBREMエレメントとMin-TKプロモーター)及びPB1-2(3×PBREMとmin-TKプロモーター)をマウスでのin vivo試験用に選択した。これは以下のように実行した。
【0228】
先の適用からのPB1及びPB1-2のAAV構築物、下の配列(配列番号49及び50、Table 3(表4))、を使用してAAVウイルスを作製した。
【0229】
AAVの生成
1日目:
- 15cmプレートにHEK293-AAV細胞を播種する。トランスフェクションの当日、70~80%のコンフルエントである
- 各プレートの最終容量:15ml
2日目:トランスフェクションミックスを調製する:
- DNAミックス/プレート:pDG9(AAV9用パッケージングプラスド):10.5μg/pHGTI(Ad.ヘルパープラスミド):31.5μg/ベクタープラスミド:10.5μg/無血清DMEM/Optimem中で調製
- トランスファーミックス/プレート:PEI:125μl/無血清DMEM/Optimem中で調製
- トランスフェクションミックスにDNAミックスを添加する。混合し、室温で15~20分間放置する。
- トランスフェクションミックス3mlを各プレートに滴下添加し、穏やかに分配する。24時間インキュベートする。
3日目:
- 培地をP/Sと2%FCSを補充したDMEM 15mlに交換する。48時間放置する。
5日目:
- 上清を収集し、各チューブ25mlで50mlチューブにプールする。-20℃で保存する。
- 細胞を収集する:各プレートにPBS 5mlを添加する→50mlのチューブに掻爬し収集する。
- プレートを洗浄するために、さらにPBS1mlを添加し、回収する。
- 1500rpmで5分間回転する。
- 上清を除去し、ペレット化細胞を1ml/プレートのTD溶解バッファに再懸濁する→プールする
- -80℃で保存する。
【0230】
エンドヌクレアーゼ処理
細胞:
- ペレットを5回凍結融解する→37℃でおよそ20分間、次いでドライアイス(又は-80℃)でおよそ20分間。
- 20%デオキシコール酸25μl/ml細胞(又は10%デオキシコール酸50μl/ml)を添加する。
- ベンゾナーゼ8μl/ml細胞を添加する。
- 37℃で30分間インキュベートする。
- 4Krpmで30分間回転する。
- 0.45μMフィルターを使用して上清をろ過する。
- 4℃で最長24時間保存する。
上澄み:
- ベンゾナーゼ2.5μl/25ml上清を添加する。
- MgSO4 50μl/25ml上清を添加する。
- 37℃で30分間インキュベートする。
- 4Krpmで30分間回転させる。
- 0.45μMフィルターを使用して上清をろ過する。
- 4℃で最長24時間保存する。
HPLC精製
- 両系列を20%ETOHに入れる→テンプレート→システムウォッシュ
- 系列AをPBSに置き、系列Bをグリシンに置く→テンプレート→システムウォッシュ
- カラムを機械にいれる→マニュアルラン→流速:5ml/min→25mlの間又はUVラインがフラットになるまでラン。
- FACSチューブを用意する(細胞用に10本、上清用により多く):Tris 30μl/チューブを添加する→ベクターを収集するために機械に置く。
- 廃液系列を別のチューブに入れて、カラムに再び通すことができるようにする。
- 試料をランする(流速は低い、システムがどのくらい速いか及び試料をどのくらい濃縮するかに依存する;細胞の場合は流速はより遅く、上清の場合はより高くなる)。
- 廃液をカラムに通してランさせた後、PBSで洗浄する→流速:UVラインがフラットになるまで5ml/min。
- 設定→フラクションサイズ:1ml;流速:1ml/min;濃度%B:100%→ラン。
- 収集を開始する。ピークを探す。ピークはベクターの精製を示す。これらのベクターを含有するチューブをマークする。
- 終了前にプログラムを保存する。
- PBSで洗浄する→75ml、5ml/min
- Na3PO4で洗浄(カラムを保存するため)→75ml、5ml/min
- カラムを取り外し、4℃で保存する。
- PBSで機械を洗浄する→テンプレート→システム洗浄
- 20%ETOHで機械を洗浄する→テンプレート→システム洗浄
- 両系列を20%ETOHに置き、シャットダウンする
- PBS 2Lを大きなバケツに添加し、透析カセット(Side-A-Lyzer; Thermo Scientific社)を置いてプライミングする。
- 注射器と針を使用してマークしたFACSチューブからベクターを収集し、透析カセットに添加する→膜から余分な空気を取り除き、カセットの上にゴムを注意深く配置し、PBS含有バケツにこれを浮かべる→ゆっくり回転するローター上で室温で一晩放置する。
翌日:
- PBS 5mlを遠心フィルター(Amico Ultra 15; MERCK社)上に添加することによってメンブレンをプライミングする→4Krpmで5分間回転させる。
- メンブレンの内側から余分なPBSを除去する。
- カセットからベクターを取り出し、メンブレンにロードする→4Krpmで5分間回転させる
- 内部にベクターを有するメンブレンを数回洗浄し、次いで、2ml遠心チューブフィルター0.22μM(Spin-X; COSTAR社)に回収する。
- 13Krpmで3分間回転させる。
- フィルター及び一定分量:1×100μl(注入用)を取り出す、残部は10~2μl一定分量。
- 80℃で保存する。
- ウイルスの定量化を、ルシフェラーゼ遺伝子に対するプライマーとプローブでqRT-PCRを使用して実行した。
【0231】
マウスの実験
指定のAAV血清型はAAV9としたが、これは、ほとんどの組織及び器官に対して指向性があり、したがって、本発明のプロモーターの特異性に関する理想を与えると思えるからである(AAV指向性の問題を回避する)。実験からのアウトプットは、注射後5日目の第1の読取りにより視覚的に測定されたルシフェラーゼ活性とした。次いで、マウスを毎週モニタリングし、35日後、CMV-IEを含むコントロールベクターAAV9が一定した着実な結果を示したら、誘導プロファイリングのベースラインを確立した。この時点で誘導物質を添加したが、測定値については誘導の前後に取った。より詳細については下を参照されたい。
マウス:
- 成体(8週齢)のCD1雄マウスに尾静脈を介してAAV9ベクターを注射した。
- 計5×1011ベクターゲノムコピー数/mlをマウス1匹あたりに投与した。
- 注射の5日後にマウスを画像化した。マウスはまず麻酔され、ルシフェリンの腹腔内注射を受けた(300μlのルシフェリンストック15mg/ml)。5分後、マウスをIVISマシンに配置し、画像を取得した。
画像化:
- 画像に使用した露光時間を1秒及び10秒とした。
- 画像を週に1回撮影した
- 更に、誘導剤又はリプレッサーを投与する前に、マウスを4日間にわたって毎日画像化した。
誘導:
誘導剤(フェノバルビタール)を5mg/mlの濃度とした。マウスは腹腔内に10μl、すなわちマウスあたり50マイクログラム(各マウスは体重概ね30g)を受けた。
【0232】
結果
実験の結果を
図8で見られる。
図8Aは、試験した各構築物からの代表的なマウスを示す。ここでは、PB1とPB1-2の両方の発現が肝臓に限定されているのに対し、一方、CMV-IEプロモーターはマウスのほぼ全組織で発現していることがわかる。更に、0時間では、PB1及びPB1-2のマウスはルシフェラーゼ遺伝子の発現をまったく示さず、これによって、厳格に制御された発現が示唆される。しかし、誘導剤フェノバルビタールを添加すると、PB1とPB1-2の両方からの発現が増加することがわかる。誘導の大きさと持続時間にはいくらかの変動がある。例えば、PB1は、9時間で見られた最大活性で概ね10倍を誘導したが、誘導は24時間で完了であり、これに対して、PB1-2は24時間での最大活性で概ね50倍の増加を有し、この場合、注入後48時間まで誘導は完了しない(
図8B及び
図8C)。これらのデータは、モデル細胞株で観察された発見を裏付けるものであり、in vivoで使用するための本発明の誘導性システムの可能性を更に実証するものである。本発明のシステムは、誘導剤がヒトの推奨投薬量よりも10分の1で投与された場合でも、バックグラウンドが低く且つ誘導性が良好である。
【実施例7】
【0233】
- PBREMエレメントのバリアント
上で論議のように、核内受容体CARはヒトとマウスの両方のDNA配列に結合する。配列アライメントからわかるように、種間にはある程度の配列分散がある。51-bpのモジュラーPBREMエレメントはそれ自体、異なる3部分に分解することができる(下の表を参照されたい)。1)NR1領域(NR1エレメントを含有する)、誘導性活性のほとんどを担うと考えられている、2)NF1領域(NF1エレメントを含有する)、他の核内受容体と結合し、活性化CARの非存在でのバックグラウンドレベルの低下を担うことができる、及び3)NR2領域(NR2エレメントを含有する)、CARの誘導性活性にやはり関与してくる。
【0234】
PBREMエレメントを構成する成分部分のアライメントと描写を下に示す:
【0235】
【0236】
(マウス=配列番号1、ヒト=配列番号2)
【0237】
【0238】
先の実施例では、使用されたプロモーターのバリアントはマウスPBREMエレメントを含有した。ヒトPBREMエレメントも使用可能であるという本発明者らの予想を確認するために、ヒトのPBREMの誘導性についても評価した;本プロジェクトの一目的は、ヒト遺伝子治療で使用するための誘導性プロモーターを提供することであり、ヒト配列にはいくつかの利点を有する可能性があることから、上記のことは潜在的に関連する。加えて、PBREMエレメントのヒトとマウスのハイブリッドについても評価して、プロモーターの誘導性とバックグラウンドレベルをモジュレート又は改善できるかどうかを判定した。こういった新しい組合せは、いかなる状況でも天然には見られないと思われ、新規な形質、例えば、新規なバックグラウンドや誘導レベルを有する可能性があると思われる。構築物を、先に記載のようにPGL4.10バックボーンで試験したが、Table 2(表3)に下に列記する。これらは以下の通りである:ヒトNR1x3-Min TK(MinTKミニマルプロモーターを含む3×ヒトNR1領域);ヒトPBREM-minTK(MinTKミニマルプロモーターを含むヒトPBREM); hNR1-mNFI- hNR2-Min TK(MinTKミニマルプロモーターを含むヒトマウスヒトハイブリッド); hNR1-mNFI mNR2-Min TK(MinTKミニマルプロモーターを含むヒトマウスマウスハイブリッド); mNR1-hNFI- mNR2-Min TK(MinTKミニマルプロモーターを含むマウスヒトマウスハイブリッド); mNR1-hNFI-hNR2- Min TK(MinTKミニマルプロモーターを含むマウスヒトヒトハイブリッド); hPB-SV40(SV40ミニマルプロモーターを含むヒトPBREM);及びMHM-SV40(SV40ミニマルプロモーターを含むマウスヒトマウスハイブリッド) - それぞれ、配列番号59から66である。
【0239】
これらの構築物を、先に記載のように、Huh7安定細胞株及び初代肝細胞で試験した。加えて、従来のヒトCAR活性化因子CITCOを使用して構築物を試験するために、天然化合物フラボンも試験した。フラボンは、ヒトCARを活性化することが以前に報告されているGRAS(一般に安全と認められる)製品であり、その非毒性の性質と副作用が少ないことに起因して、遺伝子治療用途で使用するための有用な薬物である可能性がある。CITCOは、in vivoで比較的不安定であると予測されてきたが、ヒトでの使用のその安全性に利用可能なデータがなく、したがって、組織培養に限って使用するのが好ましい。更に、上に提示のin vivoの結果は、誘導剤としてフェノバルビタールを使用したものである。一部の状況では、(上のデータから見て可能であると思われる)推奨用量の10分の1であっても、フェノバルビタールの使用は望ましくない場合がある。したがって、フラボンは、なんらかの安全性や規制の問題を軽減する、より望ましい誘導剤であるとすることができる。
【0240】
これらの実験の結果は、
図9及び
図10で見られる。これらの図は、in vivoで試験したPB1との比較を示す。安定したCAR発現性のHuh7細胞株(
図9)と初代細胞(
図10)の両方で、ヒトPBREM(hPB)はマウスPBREM(PB1)とほぼ同じように機能し、このことは、これらがMin-TKとSV40のミニマルプロモーターの両方で互換性であることを示唆する。試験されたハイブリッドのうち、MHMハイブリッドを別にすれば、すべてが、PB1と同様のバックグラウンドで同様のレベルに誘導性であった。これは、バックグラウンドがより低く且つ全体的な活性がより低いが、誘導は良好であり、このことから、MHMハイブリッドは、PB1構築物よりも厳格な発現制御を有することができること、が示唆される;これはミニマルプロモーターの状況とは無関係であり、なぜなら、Min-TkとSV40のいずれでもこのハイブリッドは同様の結果を示したからである。すべての構築物がフラボンによってCITCOと同様のレベルに誘導されたが、このことは、この化合物が実際にPBREM構築物の有用な誘導剤であることを示す。これらの実験でのわずかな外れ値は、ヒトPBREM由来の3×NR1から構成される構築物であった。この構築物は、バックグラウンドが比較的高く、安定細胞株でのみ誘導され、初代細胞ではそれほどそうではなかった。
【0241】
これらの実験から、上で論議の実施例と同様のアプローチを適用した。最良のモノマーであるヒトPBREMとMHMハイブリッドを多量体化し、Min-TkミニマルプロモーターとSV40ミニマルプロモーターの両方で試験した。これら多量体の配列をTable 3(表4)に提示する。プロモーターは以下の通りである: 2×hPB SV40(SV40ミニマルプロモーターを含む2×ヒトPBREMエレメント); 2×MHM-MinTK(MinTKミニマルプロモーターを含む2×マウスヒトマウスハイブリッド); 2×MHM-SV40(SV40ミニマルプロモーターを含む2×マウスヒトマウスハイブリッド); 3×hPB minTK(MinTKミニマルプロモーターを含む3×ヒトPBREMエレメント);及び3×hPB-SV40(SV40ミニマルプロモーターを含む3×ヒトPBREMエレメント) - それぞれ配列番号67~71である。
【0242】
これらプロモーターからの発現及び誘導を、先に記載のように、Huh7CAR発現性の安定細胞株と初代肝細胞の両方でCITCOとフラボンの両方を使用して評価した。
【0243】
結果は、
図11と
図12で見られる。ここでの比較は、前の実施例からのPB1-2とのものである。多量体プロモーターすべてが両化合物で高度に誘導すること、及び、使用されるミニマルプロモーターを問わず、それらはすべて極めて低バックグラウンドを有すること、が観察される。更に、全体的な発現レベルはPB1-2で観察されたものよりも高く且つ同等のバックグラウンドレベルを持って、2×MHM及び3×hPBが最良の成績を示した。このことが示唆するところは、一部の新規のプロモーターは、in vivoではより良好に機能することができるとともに、必要に応じて遺伝子発現を制御するためのより多くの選択肢も提供すること、である。
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