(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】建物内又は乗物内の異臭の除去方法
(51)【国際特許分類】
A61L 9/015 20060101AFI20240724BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20240724BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20240724BHJP
B08B 3/08 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A61L9/015
C09K3/00 S
A61L2/20
B08B3/08 Z
(21)【出願番号】P 2023208094
(22)【出願日】2023-12-08
【審査請求日】2023-12-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515323205
【氏名又は名称】遺品整理総合相談窓口協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100195877
【氏名又は名称】櫻木 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】延原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-031827(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0314627(US,A1)
【文献】特開2020-096694(JP,A)
【文献】特開2003-190909(JP,A)
【文献】“特殊清掃の消臭・脱臭方法を現役特殊清掃士が公開!”, [online],[2020.02.10検索], インターネット,2018年08月28日,https://ihin-asul.com/blog/1027/#link-to-me2
【文献】“特殊清掃で防臭効果の高い特殊コーティングとは”, [online],[2020.02.19検索], インターネット,2020年01月18日,https://www.memento-cleaner.com/sp-cleaning/kodoku/post-3432.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/08、15/00
C09K 3/00
A61L 2/20、
9/00- 9/22
A61G 7/00- 7/16
F24F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内又は乗物内の異臭領域を消毒する第1の工程と、
前記異臭領域の異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第2の工程と、
前記異臭領域にヒドロキシルラジカル発生器
(但し、前記ヒドロキシルラジカル発生器は、オゾンガス発生装置によりオゾンを発生させ、空間に送出し、空間内の水分との反応によりヒドロキシルラジカルを生成するものを含まない)を用いて生成させたヒドロキシルラジカルで燻蒸する第3の工程とを含み、
前記第1の工程~前記第3の工程を記載の順に行うことを特徴とする建物内又は乗物内の異臭の除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載された建物内又は乗物内の異臭の除去方法において、
前記異臭領域において前記第3の工程と並行して別の作業を行うことを特徴とする建物内又は乗物内の異臭の除去方法。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載された建物内又は乗物内の異臭の除去方法において、
前記異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程をさらに含み、
前記第4の工程を、前記第3の工程の後に行うか、又は、前記第2の工程の後、かつ、前記第3の工程の前に行うことを特徴とする建物内又は乗物内の異臭の除去方法。
【請求項4】
建物内又は乗物内の異臭領域を消毒する第1の工程と、
前記異臭領域の異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第2の工程と、
前記異臭領域にヒドロキシルラジカル発生器
(但し、前記ヒドロキシルラジカル発生器は、オゾンガス発生装置によりオゾンを発生させ、空間に送出し、空間内の水分との反応によりヒドロキシルラジカルを生成するものを含まない)を用いて生成させたヒドロキシルラジカルで燻蒸する第3の工程とを含み、
前記第1の工程~前記第3の工程を、前記第1の工程、前記第3の工程、前記第2の工程の順、又は、前記第3の工程、前記第1の工程、前記第2の工程の順に行うことを特徴とする建物内又は乗物内の異臭の除去方法。
【請求項5】
請求項4に記載された建物内又は乗物内の異臭の除去方法において、
前記異臭領域において前記第3の工程と並行して別の作業を行うことを特徴とする建物内又は乗物内の異臭の除去方法。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載された建物内又は乗物内の異臭の除去方法において、
前記異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程をさらに含み、
前記第4の工程を前記第2の工程の後に行うことを特徴とする建物内又は乗物内の異臭の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物内又は乗物内の異臭の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
除去が困難な建物内又は乗物内の異臭(悪臭)として、例えば、火災(小火を含む)の焼け焦げや付着した煤による火災臭や、人や動物の死骸や糞尿が長時間放置されたときの腐敗臭、カビ臭、タバコ臭、ヤニ臭、香料臭、第2種石油臭、香辛料臭、特定悪臭物質(22物質)による異臭等がある。前者については、放置すると頭痛、目まい、吐き気、咽頭痛といった健康被害を引き起こすことがある。後者については、死骸からの腐敗した体液や血液、糞尿等(異臭源)が床や壁、柱、天井等の建物又は乗物の構造物内に染み込み、異臭の除去がさらに困難になることがある。
【0003】
上記のような建物又は乗物(本明細書では、前者を火災物件、後者を事故物件という)を復旧するための清掃作業(特殊清掃)では、異臭の除去にオゾンを用いることが知られている。例えば、特許文献1は、故人及び/又は動物の放置された部屋の消臭方法であって、体液、糞、尿から選ばれる1又は2以上からなる汚物を清掃する汚物清掃作業と、汚物清掃作業後の部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、を含むことを特徴とする消臭方法を開示する。特許文献2は、火災事故のあった部屋の消臭方法であって、煤臭の除去を行う煤臭除去工程を有し、前記煤臭除去工程は、部屋内にオゾンを噴霧するオゾン燻蒸作業と、活性炭を含む塗料を、煤の残存する内壁に塗布する塗布作業と、を含み、前記オゾン燻蒸作業は、1m3あたり、6500g以上の量のオゾンを用いることを特徴とする消臭方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-096694号公報
【文献】特許第6624753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、オゾンは人体、動植物、革製品、電気製品等にダメージを与え、さらに、オゾン臭が強いため、作業現場だけでなく近隣への影響を抑えるには換気を徐々に行う必要があり、清掃作業員は長時間の待機を余儀なくされると共に、作業時間が長くなるという問題があった。
【0006】
本開示は上記実状を鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージの低減と共に作業時間の短縮が可能な建物内又は乗物内の異臭の除去方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一の態様は、
建物内又は乗物内の異臭領域を消毒する第1の工程と、
前記異臭領域の異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第2の工程と、
前記異臭領域にヒドロキシルラジカル発生器を用いて生成させたヒドロキシルラジカルで燻蒸する第3の工程とを含み、
前記第1の工程~前記第3の工程を記載の順に行うことを特徴とする建物内又は乗物内の異臭の除去方法に関する。
【0008】
本開示の一の態様の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第1の工程により清掃作業員は安全に作業を行うことができる。また、第2の工程と第3の工程の相乗効果により、人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージを低減しつつ、建物内又は乗物内の異臭を除去することができる。さらに、第3の工程により、清掃作業員はヒドロキシルラジカル燻蒸中に待機する必要がなくなるため、第3の工程と並行して別の作業を行うことが可能であり、また、燻蒸後は急速に換気を行うことが可能であるため、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0009】
本開示の一の態様では、
前記異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程をさらに含み、
前記第4の工程を、第3の工程の後に行ってもよいし、第2の工程の後、かつ、第3の工程の前に行ってもよい。
【0010】
異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程をさらに含むことにより、建物内又は乗物内の異臭をより強力に低減することができる。
【0011】
本開示の他の態様は、
建物内又は乗物内の異臭領域を消毒する第1の工程と、
前記異臭領域の異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第2の工程と、
前記異臭領域にヒドロキシルラジカル発生器を用いて生成させたヒドロキシルラジカルで燻蒸する第3の工程とを含み、
前記第1の工程~前記第3の工程を、第1の工程、第3の工程、第2の工程の順、又は、第3の工程、第1の工程、第2の工程の順に行うことを特徴とする建物内又は乗物内の異臭の除去方法に関する。
【0012】
本開示の他の態様の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第1の工程により清掃作業員は安全に作業を行うことができる。また、第2の工程と第3の工程の相乗効果により、人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージを低減しつつ、建物内又は乗物内の異臭を除去することができる。さらに、第3の工程により、清掃作業員はヒドロキシルラジカル燻蒸中に待機する必要がなくなるため、第3の工程と並行して別の作業を行うことが可能であり、また、燻蒸後は急速に換気を行うことが可能であるため、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
本開示の他の態様では、
前記異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程をさらに含み、
前記第4の工程を第2の工程の後に行ってもよい。
【0014】
異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程をさらに含むことにより、建物内又は乗物内の異臭をより強力に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本開示の内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成のすべてが本開示の解決手段として必須であるとは限らない。
【0017】
本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、建物内又は乗物内の異臭領域を消毒する第1の工程と、異臭領域の異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第2の工程と、異臭領域にヒドロキシルラジカル発生器を用いて生成させたヒドロキシルラジカルで燻蒸する第3の工程とを含む。第1の工程~第3の工程は、第1の工程、第2の工程、第3の工程の順(第1の工程順)、第1の工程、第3の工程、第2の工程の順(第2の工程順)、又は、第3の工程、第1の工程、第2の工程の順(第3の工程順)のいずれで行ってもよい(
図1)。また、本開示におけるヒドロキシルラジカル発生器は、オゾンガス発生装置によりオゾンを発生させ、空間に送出し、空間内の水分との反応によりヒドロキシルラジカルを生成するものを含まない。
【0018】
第1の工程により清掃作業員は安全に作業を行うことができる。また、第2の工程と第3の工程の相乗効果により、人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージを低減しつつ、建物内又は乗物内の異臭を除去することができる。さらに、第3の工程により、清掃作業員はヒドロキシルラジカル燻蒸中に待機する必要がなくなるため、第3の工程と並行して別の作業を行うことが可能であり、また、燻蒸後は急速に換気を行うことが可能であるため、作業時間を大幅に短縮することができる。並行して行われる別の作業は特に制限はなく、第1の工程、第2の工程の他、後述の第4の工程~第6の工程も含まれる。なお、本明細書では、「消毒」(病原菌を殺し感染を防止すること(広辞苑))は「殺菌」(細菌などの病原体を死滅させること(広辞苑))、「除菌」(細菌を取り除くこと(広辞苑))、「滅菌」(熱・薬品などによって、無菌状態を作り出すこと(広辞苑))の意味を含む。
【0019】
本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法では、異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程をさらに含み、第4の工程を、第1の工程順では第3の工程の後に行ってもよいし、第2の工程の後、かつ、第3の工程の前に行ってもよく、第2、第3の工程順では、第2の工程の後に行ってもよい。
【0020】
異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程をさらに含むことにより、建物内又は乗物内の異臭をより強力に低減することができる。
【0021】
本実施形態において、除去が困難な建物内又は乗物内の異臭は特に制限はなく、例えば、火災(小火を含む)の焼け焦げや付着した煤による火災臭や、人や動物の死骸や糞尿が長時間放置されたときの腐敗臭、カビ臭、タバコ臭、ヤニ臭、香料臭、第2種石油臭、香辛料臭、特定悪臭物質(22物質)による異臭等が挙げられる。本明細書では、代表的な、火災物件における焼け焦げや付着した煤による火災臭と、事故物件における人や動物の死骸や糞尿が長時間放置されたときの腐敗臭に対する実施形態を開示する。また、本実施形態において建物の種類は特に制限はなく、例えば、マンションやアパート等の集合住宅、戸建て住宅、商業ビル、オフィスビル、倉庫、病院、体育館、アリーナ施設、宿泊施設等が挙げられる。また、テントのように屋外の開放空間を布やビニールシート、パーティション等の間仕切りで区切られた仮設空間内も「建物内」に含まれる。本実施形態において乗物の種類は、乗員用の空間が確保されているものであれば特に制限はなく、例えば、乗用車、トラック、バス、工事用車両、軍用車両、船舶、鉄道車両、航空機等が挙げられる。さらに、本実施形態の異臭の除去方法の適用場所は建物内又は乗物内に限定されず、開放空間から区切られた閉空間内であればよい。
【0022】
(1)火災物件の火災臭の場合
<第1の工程:消毒>
火災物件では火災臭が残存する他、消火水にカビが発生、蔓延することがある。そこで、作業員の安全を確保するため、本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、建物内又は乗物内の異臭領域を消毒する第1の工程を含む。異臭領域は、火災物件の場合、消火水が散布された領域を含んでもよい。
【0023】
消毒に用いられる消毒剤は、一般に消毒に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化水素水、次亜塩素酸水溶液、次亜塩素酸素ナトリウム水溶液、安定型二酸化塩素、二酸化塩素、加速化過酸化水素、加速化過酸化水素水等の、酸化力を有する化合物の水溶液が挙げられる。消毒剤の散布方法は特に制限はなく、建物内又は乗物内の異臭領域全体にスプレー散布してもよいし、異臭源に対して重点的に散布してもよい。
【0024】
火災物件の火災臭の場合、本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第1の工程の前に異臭領域にある家財を解体又は撤去する工程をさらに含んでもよい。これにより、以降の工程を円滑に実施することができる。
【0025】
<第2の工程:除去>
本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第1の工程に続き、異臭領域の異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第2の工程を含む。
【0026】
火災物件の火災臭の異臭源としては、例えば、火災の焼け焦げや付着した煤等が挙げられる。異臭源の研磨及び/又は洗浄による除去方法は特に制限はなく、例えば、異臭源が付着している箇所を中心に洗浄剤を散布した後、研磨により異臭源を除去してもよい。異臭源が除去される箇所は特に制限はなく、例えば、建物内又は乗物内の床、土間、壁、柱、天井、コンクリート躯体、床の下地部材、壁の下地部材、柱の下地部材、天井の下地部材等が挙げられる。洗浄剤は特に制限はないが、例えば、エタノール、アルカリ性洗浄剤又は酸性洗浄剤を用いると、洗浄剤の散布領域を同時に消毒することができる。洗浄剤はスコッチブライト(3M社製)等の研磨材を含むと、異臭源の除去がより効果的であり、好ましい。洗浄剤は、液垂れによって床や壁、柱、天井等の部材(例えば、木材、タイル、プラスターボード、樹脂等)に付着すると除去が困難になることがあるため、ブチルジグリコール等の増粘剤を含むと液垂れを遅らせることができ、より好ましい。研磨方法は特に制限はないが、従来のディスクサンダー電動研磨は、コンクリート躯体の損傷やヘアクラック(ひび割れ)の恐れがあるため、あまり好ましくない。
【0027】
異臭源としてタンパク質や脂質が付着している場合、第2の工程として、プロテアーゼ、リパーゼ等の分解酵素を含む洗浄剤を用いてタンパク質や脂質の付着箇所を洗浄してもよい。付着箇所がコンクリートの場合、酸性の洗浄剤を用いるとエフロレッセンス(白華現象)が発生して除去が困難になることがあるため、アルカリ性の洗浄剤が好ましい。
【0028】
<第3の工程:ヒドロキシルラジカル燻蒸>
本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第2の工程に続き、異臭領域にヒドロキシルラジカル発生器を用いて生成させたヒドロキシルラジカルで燻蒸する第3の工程を含む。第2の工程と第3の工程の相乗効果により、人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージを低減しつつ、建物内又は乗物内の異臭を除去することができる。さらに、第3の工程により、清掃作業員はヒドロキシルラジカル燻蒸中に待機する必要がなくなるため、第3の工程と並行して別の作業を行うことが可能である。したがって、第3の工程は、第1の工程の後、かつ、第2の工程の前に行ってもよいし、第1の工程の前に行ってもよい。また、燻蒸後は急速に換気を行うことが可能であるため、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0029】
ヒドロキシルラジカルの燻蒸はヒドロキシルラジカル発生器を用いる。本実施形態におけるヒドロキシルラジカル発生器は、オゾンガス発生装置によりオゾンを発生させ、空間に送出し、空間内の水分との反応によりヒドロキシルラジカルを生成するものを含まない。ヒドロキシルラジカルの燻蒸時間は、残存臭等の除去効果があれば特に制限はなく、例えば、24時間以上72時間以内が挙げられる。
【0030】
ヒドロキシルラジカルの燻蒸単体では、従来のオゾン燻蒸より効果の発現が遅い。そこで、本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第3の工程において送風や少量のオゾンの燻蒸を併用してもよい。送風には風力発生装置を用いる。また、オゾンの燻蒸量は人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージがない範囲(例えば、1m3あたり1500mg未満)とする。これにより、従来のオゾン燻蒸より早く異臭を除去することができる。さらに、第3の工程において酵素系消臭剤を併用すると、残存する異臭源が分解され、より効果的に異臭を除去することができる。
【0031】
<第4の工程:被覆>
本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程を含んでもよい。第4の工程により、水分、湿気等による第1~第2の工程の残存臭気戻りを防ぐことができる。第4の工程は、異臭源を除去する第2の工程の後に行い、第3の工程とは順不同で行うことができ、並行して行ってもよい。
【0032】
被覆に用いられる樹脂塗料は特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等の有機樹脂塗料、水性樹脂塗料、セメントと混和液を含有する粉体樹脂塗料等から選ばれる1種以上が挙げられる。被覆方法は特に制限はなく、例えば、ローラー塗り、刷毛塗り、スプレー吹付け等が挙げられる。
【0033】
(2)事故物件の腐敗臭の場合
<第1の工程:消毒>
事故物件では、異臭源に種々の害虫や細菌、ウイルスが発生、蔓延することがある。そこで、作業員の安全を確保するため、本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、建物内又は乗物内の異臭領域を消毒する第1の工程を含む。
【0034】
消毒に用いられる消毒剤は、一般に消毒に用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化水素水、次亜塩素酸水溶液、次亜塩素酸素ナトリウム水溶液、安定型二酸化塩素、二酸化塩素、加速化過酸化水素、加速化過酸化水素水等の、酸化力を有する化合物の水溶液が挙げられる。消毒剤の散布方法は特に制限はなく、建物内又は乗物内の異臭領域全体にスプレー散布してもよいし、異臭源に対して重点的に散布してもよい。
【0035】
<第2の工程:除去>
本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第1の工程に続き、異臭領域の異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第2の工程を含む。
【0036】
事故物件の異臭源としては、例えば、人や動物の死骸や糞尿が長時間放置されたときの腐敗臭等が挙げられる。異臭源の研磨及び/又は洗浄による除去方法は特に制限はなく、例えば、異臭源が付着している箇所を中心に洗浄剤を散布した後、洗浄により異臭源を除去してもよい。異臭源が除去される箇所は特に制限はなく、例えば、建物内又は乗物内の床、土間、壁、柱、天井、コンクリート躯体、床の下地部材、壁の下地部材、柱の下地部材、天井の下地部材等が挙げられる。洗浄剤は特に制限はないが、死骸からの腐敗した体液や血液等(異臭源)は粘性があり、床や壁、柱、天井等を構成する部材(例えば、木材、タイル、プラスターボード、樹脂等)に付着すると除去が困難である。したがって、洗浄剤は、例えば、プロテアーゼ、リパーゼを含む洗浄剤やタンパク質や脂質の分解酵素を含む洗浄剤を用いると異臭源を分解、除去することができ、好ましい。異臭源の付着箇所がコンクリートの場合、酸性の洗浄剤を用いるとエフロレッセンス(白華現象)が発生して除去が困難になることがあるため、アルカリ性の洗浄剤が好ましい。
【0037】
<第3の工程:ヒドロキシルラジカル燻蒸>
本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第2の工程に続き、異臭領域にヒドロキシルラジカル発生器を用いて生成させたヒドロキシルラジカルで燻蒸する第3の工程を含む。なお、第3の工程は、第1の工程の後、かつ、第2の工程の前に行ってもよいし、第1の工程の前に行ってもよい。第2の工程と第3の工程の相乗効果により、人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージを低減しつつ、建物内又は乗物内の異臭を除去することができる。さらに、第3の工程により、清掃作業員はヒドロキシルラジカル燻蒸中に待機する必要がなくなるため、第3の工程と並行して別の作業を行うことが可能であり、また、燻蒸後は急速に換気を行うことが可能であるため、作業時間を大幅に短縮することができる。
【0038】
ヒドロキシルラジカルの燻蒸はヒドロキシルラジカル発生器を用いる。本実施形態におけるヒドロキシルラジカル発生器は、オゾンガス発生装置によりオゾンを発生させ、空間に送出し、空間内の水分との反応によりヒドロキシルラジカルを生成するものを含まない。ヒドロキシルラジカルの燻蒸時間は、残存臭等の除去効果があれば特に制限はなく、例えば、30分以上3時間以内、1時間以上2時間以内が挙げられる。
【0039】
ヒドロキシルラジカルの燻蒸単体では、従来のオゾン燻蒸より効果の発現が遅い。そこで、本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第3の工程において送風や少量のオゾンの燻蒸を併用してもよい。送風には風力発生装置を用いる。また、オゾンの燻蒸量は人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージがない範囲(例えば、1m3あたり1500mg未満)とする。これにより、従来のオゾン燻蒸より早く異臭を除去することができる。さらに、第3の工程において酵素系消臭剤を併用すると、残存する異臭源が分解され、より効果的に異臭を除去することができる。
【0040】
<第4の工程:被覆>
本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、異臭源が除去された箇所を樹脂塗料で被覆する第4の工程を含んでもよい。第4の工程により、水分、湿気等による第1~第2の工程の残存臭気戻りを防ぐことができる。第4の工程は、異臭源を除去する第2の工程の後に行い、第3の工程とは順不同で行うことができ、並行して行ってもよい。
【0041】
被覆に用いられる樹脂塗料は特に制限はなく、例えば、アクリル樹脂塗料、エポキシ樹脂塗料、ウレタン樹脂塗料、フッ素樹脂塗料等の有機樹脂塗料、水性樹脂塗料、セメントと混和液を含有する粉体樹脂塗料等から選ばれる1種以上が挙げられる。被覆方法は特に制限はなく、例えば、ローラー塗り、刷毛塗り、スプレー吹付け等が挙げられる。
【0042】
事故物件では、死骸からの腐敗した体液や血液、糞尿等(異臭源)が床や壁、柱、天井等の建物又は乗物の構造物内に染み込み、第2の工程では汚染源を除去しきれないことがある。この場合、本実施形態の建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、第2の工程の後、かつ、第4の工程の前に、構造物を解体して構造物内に染み込んでいる異臭源を露出させる第5の工程と、露出した異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第6の工程をさらに行ってもよい。
【0043】
<第5の工程:解体、露出>
解体される構造物は特に制限はなく、例えば、床や壁、柱、天井等を覆う表面部材(フローリングの木材、畳、タイル、絨毯、クッションフロア等)が挙げられる。解体によって露出される異臭源が付着している建物又は乗物の構造物(下地部材)は特に制限はなく、例えば、合板、コンクリート、モルタル、鉄板、石膏ボード、梁、野縁、野縁受け等が挙げられる。
【0044】
<第6の工程:除去>
異臭源の除去方法は特に制限はなく、例えば、異臭源が付着している箇所を中心に洗浄剤を散布した後、洗浄及び/又は研磨により異臭源を除去してもよい。洗浄剤は特に制限はないが、死骸からの腐敗した体液や血液等(異臭源)は粘性があり、床や壁、柱、天井等を構成する部材(例えば、木材、タイル、プラスターボード、樹脂等)に付着すると除去が困難である。したがって、洗浄剤は、例えば、プロテアーゼ、リパーゼを含む洗浄剤やタンパク質や脂質の分解酵素を含む洗浄剤を用いると異臭源を分解、除去することができ、好ましい。異臭源の付着箇所がコンクリートの場合、酸性の洗浄剤を用いるとエフロレッセンス(白華現象)が発生して除去が困難になることがあるため、アルカリ性の洗浄剤が好ましい。
【0045】
異臭源が布団、衣類、畳、日用品、電気製品等の家財に付着している場合、第2の工程又は第6の工程は、洗浄及び/又は研磨による異臭源の除去の後、異臭源が付着していた家財を密封梱包及び/又は搬出する工程をさらに含んでもよい。密封梱包に用いられる素材としては、異臭源や害虫、細菌等を飛散させないよう、ポリエチレンや塩化ビニルが好ましく、厚さは0.05mm以上が好ましい。
【0046】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれる。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、本実施形態の構成も本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形が可能である。
【要約】
【課題】 人体、動植物、革製品、電気製品等へのダメージの低減と共に作業時間の短縮が可能な建物内又は乗物内の異臭の除去方法を提供すること。
【解決手段】 建物内又は乗物内の異臭の除去方法は、建物内又は乗物内の異臭領域を消毒する第1の工程と、異臭領域の異臭源を研磨及び/又は洗浄により除去する第2の工程と、異臭領域にヒドロキシルラジカル発生器を用いて生成させたヒドロキシルラジカルで燻蒸する第3の工程とを含み、第1の工程~第3の工程を記載の順に行う。
【選択図】
図1