(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】アンプル容器、およびアンプル容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 1/09 20060101AFI20240724BHJP
A61J 1/06 20060101ALI20240724BHJP
B65D 39/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B65D1/09
A61J1/06 E
A61J1/06 A
B65D39/00 200
(21)【出願番号】P 2020013790
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 素康
(72)【発明者】
【氏名】中西 正美
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-030332(JP,A)
【文献】実公昭58-039718(JP,Y2)
【文献】特開平04-154521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/09
A61J 1/06
B65D 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に開口を有する頭部と、
胴部と、
前記頭部と前記胴部とを連結し、前記頭部および前記胴部よりも細い括れ部と、を有し、前記頭部は、前記胴部より細長い円錐管形状であり、先端へ向かうに従い径が小さくなっている、プラスチック製の容器本体と、
前記開口を閉塞する、前記頭部に溶着されたプラスチック製の蓋と、を備え、
前記容器本体および前記蓋は、ポリプロピレンにより構成されており、
前記蓋は、前記容器本体よりも弾性率が大きいポリプロピレンからなり、
前記容器本体を構成する材料と、前記蓋を構成する材料との弾性率の差が、1050MPa以上、1200MPa以下である、アンプル容器。
【請求項2】
前記蓋は、溶着前の状態において、前記頭部の天面と対向する面から突出したリブを有し、溶融した該リブによって前記頭部に溶着される請求項1に記載のアンプル容器。
【請求項3】
前記リブは、前記頭部の天面へ向かって突出した山形形状または前記頭部の天面へ向かって突出した円弧形状である、請求項2に記載のアンプル容器。
【請求項4】
農薬または園芸用薬剤を収容する収容容器として用いる、請求項1~3のいずれか1項に記載のアンプル容器。
【請求項5】
先端に開口を有する頭部と、胴部と、前記頭部と前記胴部とを連結する、前記頭部および前記胴部よりも細い括れ部と、を有し、前記頭部は、前記胴部より細長い円錐管形状であり、先端へ向かうに従い径が小さくなっている、プラスチック製の容器本体に、前記開口を閉塞する、プラスチック製の蓋を溶着し、前記容器本体を溶栓する、アンプル容器の製造方法であって、
前記容器本体および前記蓋は、ポリプロピレンにより構成されており、
前記蓋は、前記容器本体よりも弾性率が大きいポリプロピレンからなり、
前記容器本体を構成する材料と、前記蓋を構成する材料との弾性率の差が、1050MPa以上、1200MPa以下である、アンプル容器の製造方法。
【請求項6】
前記蓋は、前記頭部の天面と対向する面から突出したリブを有し、
前記リブを溶融して、前記蓋を前記容器本体に溶着する、請求項
5に記載のアンプル容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンプル容器、およびアンプル容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、小型であり、1回で使い切るタイプのプラスチック製のアンプル容器が提案されている。このようなアンプル容器は、持ち運びに便利であるとともに清潔であるため、医薬や農薬または園芸用薬剤(例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、ホルモン剤等)等の小型容器として有用である。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、合成樹脂材料により構成されたアンプルの製造方法、およびアンプルが開示されている。また、特許文献3には、ガラス接着性を有しかつ通常の雰囲気下で固化する性質を有する樹脂で密封したアンプル容器が開示されている。
【0004】
通常のアンプル容器は、薬液等が収容される胴部と、当該胴部の上側に形成され、先端が開口した頭部と、を有する。そして、前記胴部と前記頭部とは、前記胴部および前記頭部よりも細く括れた括れ部を介して連結している。
【0005】
このようなプラスチック製のアンプル容器は、薬液が注入された後、密栓される。アンプル容器を密栓する方法としては、アンプル容器の上側から、超音波振動、または直接加熱によりアンプル容器における頭部の開口付近のプラスチックを溶解して密栓する方法が一般的に考えられる。
【0006】
また、他の密栓方法としては、側面側からアンプル容器を加熱しながら圧着する方法や、スクリュー管のようなねじ式により密栓する方法も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平9-238525号公報(1997年 9月16日公開)
【文献】特開平5-293159号公報(1993年11月 9日公開)
【文献】特開昭61-115853号公報(1986年 6月 3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アンプル容器を密栓する技術においては、まず、密栓処理を施した部分にピンホールが残らず密栓処理部分から液漏れが発生しないことが第一の課題となる。さらに、密栓されたアンプル容器間で、形状が略一定である(例えば、高さが略一定)ことも重要である。
【0009】
アンプル容器における頭部の開口付近のプラスチックを溶解して密栓する方法では、完全にプラスチック溶解部分のピンホール形成を防止することができず、ある一定数のアンプル容器について液漏れが発生する。また、側面側からアンプル容器を加熱しながら圧着する方法やねじ式により密栓する方法においても、完全にピンホールを無くすことが困難である。
【0010】
本発明の一態様は、従来よりも密栓部分での液漏れを抑制することができるアンプル容器、およびアンプル容器の製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアンプル容器は、先端に開口を有する頭部と、胴部と、前記頭部と前記胴部とを連結し、前記頭部および前記胴部よりも細い括れ部と、を有する、プラスチック製の容器本体と、前記開口を閉塞する、前記頭部に溶着されたプラスチック製の蓋と、を備えている。
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るアンプル容器の製造方法は、先端に開口を有する頭部と、胴部と、前記頭部と前記胴部とを連結する、前記頭部および前記胴部よりも細い括れ部と、を有する、プラスチック製の容器に、前記開口を閉塞する、プラスチック製の蓋部を溶着し、前記容器本体を溶栓する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、従来よりも密栓部分での液漏れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係るアンプル容器の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るアンプル容器の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るアンプル容器の概略構成を示す側面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアンプル容器の概略構成を示す上面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るアンプル容器に備えられた容器本体の構成を示す側面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るアンプル容器に備えられた蓋部の構成を示し、(a)は斜視図であり、(b)は側面図であり、(c)は断面図である。
【
図7】従来のアンプル容器の超音波溶着による溶栓方法を模式的に示した側面図および容器本体と溶着ホーンとの接合部分を拡大して示した拡大図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るアンプル容器の溶栓方法を模式的に示した側面図、および容器本体と蓋との接合部分を拡大して示した断面図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るアンプル容器の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施形態に係るアンプル容器の変形例の概略構成を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係るアンプル容器の変形例の概略構成を示す側面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係るアンプル容器の変形例の概略構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るアンプル容器10の概略構成を示す斜視図である。また、
図2は、本実施形態に係るアンプル容器10の概略構成を示す断面図である。また、
図3は、本実施形態に係るアンプル容器10の概略構成を示す側面図である。また、
図4は、本実施形態に係るアンプル容器10の概略構成を示す上面図である。
【0016】
図1~
図4に示されるように、本実施形態に係るアンプル容器10は、プラスチック製の容器本体1と、容器本体1に溶着された、プラスチック製の蓋2と、を備えた2ピース構成である。容器本体1と蓋2とを溶着することによって、アンプル容器10が製造される。すなわち、アンプル容器10は、容器本体1と蓋2との間に、容器本体1の材料および蓋2の材料同士が溶着した溶着部3が設けられている。この溶着部3は、容器本体1と蓋2との溶着物により構成されている。溶着部3については、後述する。
【0017】
なお、本明細書では、容器本体1に対して蓋2側を上側とし、蓋2と反対側を下側とする。
【0018】
図5は、容器本体1の構成を示す側面図である。
図5に示されるように、容器本体1は、プラスチック製であり、頭部1aと、胴部1cと、を備え、頭部1aと胴部1cとの間に括れ部1bが設けられている。括れ部1bは、胴部1cと括れ部1bとを連結する部分であり、胴部1cおよび頭部1aよりも細く括れて形成されている。頭部1aは、胴部1cより細長い円錐管形状であり、上側へ向かうに従い径が小さくなっている。また、頭部1aの上側の先端には、開口1dが形成されている。胴部1cは、有底円筒形状であり、所望の医薬や農薬または園芸用薬剤(例えば、除草剤、殺虫剤、殺菌剤、ホルモン剤等)等の薬液Xが収容される部分である。蓋2は、容器本体1の頭部1aに溶着されている。
【0019】
容器本体1における括れ部1bよりも上側の部分は、切断除去される。そして、容器本体1中の薬液Xは、この切断より形成された容器本体1の開口を介して、外部へ取り出され使用される。より具体的には、アンプル容器10の容器本体1を握って親指などで頭部1aを強く押圧することにより、容器本体1の頭部1aは、括れ部1bを起点として折れ曲がり切断される。そして、この切断により、容器本体1には、括れ部1bの近傍部分に開口が形成される。容器本体1中の薬液は、この開口から、例えば、散布用のスプレー容器等に移され、所望の濃度に希釈されて使用される。
【0020】
図6は、溶着前の状態の蓋2の構成を示し、
図6の(a)は斜視図であり、
図6の(b)は側面図であり、
図6の(c)は断面図である。
図6の(a)~(c)に示されるように、蓋2は、本体閉塞部2aと、本体挿入部2cと、を有している。本体閉塞部2aは、容器本体1の頭部1aの天面部分の径と略同じ径を有する円板形状である。また、
図2、
図3、および
図6の(c)に示されるように、本体閉塞部2aにおける容器本体1の頭部1aと反対側の面には、凹部2eが設けられている。また、本体挿入部2cは、本体閉塞部2aから下方へ突出して形成されている。本体挿入部2cは、頭部1aの開口1dから挿入される部分であり、頭部1aの管状部分の内径と略同じ外径を有し、外周が頭部1aの開口1dに収まる。また、本体挿入部2cは、上側に底面を有し下側が開口した有底円筒形状である。
【0021】
溶着前の状態において、蓋2は、本体閉塞部2aにおける頭部1aの天面と対向する対向面2dに、リブ2bが形成されている。リブ2bは、蓋2の中心軸を含む断面形状において、対向面2dから下方、すなわち容器本体1側へ尖って突出した山形形状である。なお、リブ2bは、容器本体1側へ円弧状に突出した形状(不図示)であってもよい。また、リブ2bは、蓋2の中心軸を軸とした円状に形成されている。リブ2bは、容器本体1における頭部1aの開口1dが蓋2により閉塞されたときに、頭部1aの天面と当接する部分である。それゆえ、頭部1aの天面と蓋2との溶着部3は、リブ2bの融解物を含む。
【0022】
容器本体1と蓋2との溶着方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、熱溶着、超音波溶着等が挙げられる。溶着時間をより短くするという観点では、容器本体1と蓋2とは、超音波溶着していることが好ましい。
【0023】
図7は、従来のアンプル容器の超音波溶着による溶栓方法を模式的に示した側面図および容器本体1’と溶着ホーンとの接合部分を拡大して示した拡大図である。
【0024】
図7に示されるように、従来のアンプル容器は、容器本体1’のみを備えた1ピース構成である。従来の溶栓においては、容器本体1’の天面と溶着ホーンとが接触した状態で溶着が行われる。溶着ホーンには、超音波発振器(不図示)、超音波発振器からの高周波電気信号を機械振動エネルギーに変換するコンバーター(不図示)、および機械振動エネルギーを増幅するブースターを介して超音波振動エネルギーが伝達されている。そして、容器本体1’の天面と溶着ホーンとが接触した状態では、溶着ホーンから伝達された超音波振動エネルギーにより、容器本体1’の天面とその付近に摩擦熱が発生する。そして、容器本体1’の天面とその付近がこの摩擦熱により溶融されつつ溶着ホーンにより天面付近から下側へ向かって押し込まれながら溶着されることにより、容器本体1’が溶栓される。
【0025】
図7に示される従来の容器本体1’の溶栓方法では、以下の問題が生じる。
【0026】
まず、アンプル容器が1ピース構成であるため、溶栓部分は容器本体1’の天面とその付近の溶融物からなる溶着部分となる。それゆえ、溶栓部分の形状は、容器本体1’間で不均一である。それゆえ、溶栓後の容器本体1’の高さを一定にすることが困難である。このため、アンプル容器の出荷に際し、収納箱に収納できないなど、品質面で問題があるアンプル容器が一定数存在する。
【0027】
また、従来の溶栓方法では、容器本体1’の溶栓部分について、完全にピンホールの形成を防止することができない。このため、溶栓部分から液漏れが起きるアンプル容器が一定の割合存在する。このような液漏れは、容器本体1’に薬液を収容(注入)する際などに容器本体1’の頭部1aに付着した薬液が溶着片1e同士の溶着を阻害することに起因すると考えられる。また、容器本体1’が溶着後に冷えて収縮したり、溶着ホーンで容器本体1’の天面またはその付近を押し込む際に容器本体1’にかかった内圧が容器本体1’の外方向へ作用したりして、主に容器本体1’の溶栓部分にクラック等が生じることも液漏れの要因として考えられる。
【0028】
さらに、従来の溶栓方法では、容器本体1’の天面と溶着ホーンとが接触した状態で溶栓すると、頭部1aにストレスが掛かる。このため、容器本体1’の頭部1aで折れ、首折れしたアンプル容器が発生する。
【0029】
本実施形態に係るアンプル容器10は、従来の溶栓方法にて発生した問題を解決し得る構成となっている。特に前記液漏れの発生を抑制することができる。
図8は、本実施形態に係るアンプル容器10の溶栓方法を模式的に示した側面図、および容器本体1と蓋2との接合部分を拡大して示した拡大図である。
【0030】
図8に示されるように、本実施形態に係るアンプル容器10の溶栓方法では、まず、蓋2の本体挿入部2cを容器本体1の頭部1aに挿入し、頭部1aと本体閉塞部2aのリブ2bとが離間した状態にする。そして、溶着ホーンを下降させ、蓋2のリブ2bを容器本体1の頭部1aの天面に接触させた状態で溶栓処理をする。このとき、
図8の拡大図に示されるように、本体閉塞部2aのリブ2bは、頭部1aの天面1fと接触しているとともに、本体挿入部2cは、頭部1aの開口1dに挿入されている。この状態では、溶着ホーンから伝達された超音波振動エネルギーは、蓋2のリブ2bに伝達される。そして、この伝達された超音波振動エネルギーによりリブ2bおよび頭部1a同士が摩擦することによって、頭部1aの天面1fおよび蓋2のリブ2bにおいて強力な摩擦熱が発生する。そして、これにより、リブ2bが溶融し、蓋2の本体閉塞部2aと頭部1aの天面1fとが溶着することによって溶着部3が形成され、容器本体1は蓋2によって溶栓される。本実施形態に係るアンプル容器10では、溶着部3は、リブ2bの溶融物を含む構成となっている。
【0031】
このように本実施形態によれば、容器本体1および蓋2の2ピース構成にて溶栓処理を行っている。それゆえ、アンプル容器10の溶栓部分は、溶着部3の形状に依存せず、蓋2の形状と略同じである。したがって、溶栓部分の形状が、アンプル容器10間で均一となり、溶栓後のアンプル容器10の高さおよび形状を一定にすることができる。
【0032】
また、本実施形態によれば、容器本体1の開口1dが蓋2の本体閉塞部2aにより閉塞された状態で溶栓処理されるため、ピンホールおよびクラックの発生を抑制することができる。このため、液漏れが起きるアンプル容器10の発生を抑制することができる。
【0033】
さらに、本実施形態によれば、容器本体1が蓋2を介して溶着ホーンと接触した状態で溶栓している。それゆえ、溶着ホーンで容器の頭部(容器本体1’の天面またはその付近)を押し込む必要がなく、頭部1aに掛かるストレスを低減することができる。このため、容器本体1の頭部1aで折れ、首折れしたアンプル容器10の発生を抑制できる。
【0034】
加えて、本実施形態によれば、リブ2bが溶融し、蓋2の本体閉塞部2aと頭部1aの天面1fとが溶着することによって溶着部3が形成される。このように、容器本体1は蓋2によって溶栓されるため、溶着に要する時間やエネルギーを低減することができる。そして、それに伴い冷却時間を低減することもできる。
【0035】
さらに加えて、本実施形態によれば、リブ2bと頭部1aの天面1fとが線接触している。それゆえ、溶着ホーンによる上方からの加圧力が横方向に分散することが少ない。このため、容器本体1と蓋2との接触部位に対して、溶着ホーンからの超音波振動エネルギーが効率的に伝達される。その結果、容器本体1と蓋2との溶着強度が高くなる。
【0036】
また、容器本体1および蓋2の材料は、溶融可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。好適には、容器本体1および蓋2の材料は、ポリプロピレンである。容器本体1および蓋2の材料がポリプロピレンである場合、蓋2は、容器本体1よりも弾性率が大きいポリプロプレンからなることが好ましい。なお、ここでいう「弾性率」とは、JIS K7161または7162に準拠した試験法により測定された引張弾性率を意味する。
【0037】
蓋2が容器本体1よりも弾性率が小さいポリプロピレンで構成されている場合、超音波溶着に際し、蓋2の本体閉塞部2aの荷重に対する変形が大きくなり超音波振動エネルギーが吸収されやすくなる。このため、リブ2bに加え本体閉塞部2aも溶融し、本体閉塞部2aがつぶれるおそれがある。一方、蓋2が容器本体1よりも弾性率が大きいポリプロピレンで構成されている場合、蓋2の本体閉塞部2aの荷重に対する変形が小さいため、本体閉塞部2aの形状を保持した状態で溶着性も良好となる。
【0038】
容器本体1を構成する材料と蓋2を構成する材料との弾性率の差は、850MPaを超え、1400MPa以下、好ましくは、950MPa以上、1300MPa以下、より好ましくは1050MPa以上、1200MPa以下である。例えば容器本体1を構成する材料の弾性率が650MPaである場合、蓋2を構成する材料の弾性率は、1500MPaを超え、2050MPa以下、好ましくは、1600MPa以上、1950MPa以下、より好ましくは、1700MPa以上、1850MPa以下である。より具体的には、容器本体1を構成する材料は、住友ノーブレン(登録商標)(住友化学株式会社製、ランダムコポリマー:グレードS131、弾性率650MPa)であり、蓋2を構成する材料は、ノバテック(登録商標)PP(日本ポリプロ株式会社製、ブロックコポリマー:モノマー単位BC03C、弾性率1800MPa)である。
【0039】
ここで、実際のアンプル容器10の製造においては、容器本体1は、
図8に示される状態で、溶着ホーンへ搬送される。蓋2の本体挿入部2cは、容器本体1が溶着ホーンへ搬送される間に、溶着ホーンが接触する本体閉塞部2aが頭部1aに対して移動しないように保持する役割を有する。本体挿入部2cの上下方向の長さは、本体閉塞部2aが頭部1aに対して保持することが可能な長さであればよい。例えば、本体挿入部2cの上下方向の長さは、頭部1aの開口の径と少なくとも同じ長さ、好ましくは頭部1aの開口の径よりもやや長めである。
【0040】
また、本体挿入部2cの形状は、開口1dに挿入され、頭部1aに対し本体閉塞部2aを保持可能な形状であれば、特に限定されない。本体挿入部2cの形状は、
図6の(a)~(c)に示される空洞状に限定されず、空洞部がない中実状であってもよい。蓋2の材料をより少なくするという観点では、蓋2の本体挿入部2cは、空洞状であることが好ましい。
【0041】
また、リブ2bの形状は、特定のものである必然性はないが、例えば
図8の拡大図等に示されるような、容器本体1の頭部1aの天面1fへ尖った山形形状であることが好ましく、また、容器本体1の頭部1aの天面1fへ突出した円弧形状(不図示)であることが好ましい。このような形状とすることにより、リブ2bと頭部1aの天面1fとの接触面積を小さくすることができ、効率的に溶着部3を形成することができる。
【0042】
また、
図1~
図8に示された構成では、溶着部3は、容器本体1の天面1fに形成されていた。しかし、溶着部3の位置は、天面1fに限定されず、容器本体1と蓋2とが接触する部分であれば、特に限定されない。例えば、蓋2の本体挿入部2cが空洞部のない中実状である場合、本体挿入部2cの側壁面と頭部1aの内側面との摩擦熱により頭部1aの内側面に溶着部3が形成され得る。
【0043】
本体挿入部2cが
図6の(a)~(c)に示されるような空洞状である場合、
図8の拡大図等に示されるように、溶着部3は、頭部1aの天面1f上に形成されていることが好ましい。本体挿入部2cが空洞状であるため、本体挿入部2cの側壁面に効率的に超音波振動エネルギーが伝達されず、溶着部(頭部1aの内側面)での溶着強度が小さくなってしまうためである。また、本体挿入部2cが空洞部のない中実状である場合、本体挿入部2cの側壁面に効率的に超音波振動エネルギーが伝達され得るので、頭部1aの内側面に溶着部3が形成され得る。
【0044】
なお、本実施形態に係るアンプル容器10では、頭部1aの内側面および天面1fの何れか一方に溶着部3が形成されていることが好ましい。頭部1aの内側面および天面1fの両方に溶着部3が形成されている場合、溶着部3に空気等が混入するため、溶着強度が低下するためである。
【0045】
(アンプル容器10の製造方法)
本実施形態に係るアンプル容器10の製造方法は、
図1~
図8に示されるように、先端に開口1dを有する頭部1aと、胴部1cと、頭部1aと胴部1cとを連結し、頭部1aおよび胴部1cよりも細い括れ部1bと、を有する、プラスチック製の容器本体1、および開口1dを閉塞する、プラスチック製の蓋2を溶着し、容器本体1と蓋2との間に溶着部3を形成することによって、容器本体1を溶栓する方法である。特に好ましくは、
図8に示されるように、容器本体1を溶栓するに際し、容器本体1と蓋2とを超音波溶着することが好ましい。また、容器本体1と蓋2とを超音波溶着する場合、容器本体1の天面1fと蓋2とを超音波溶着することが好ましい。
【0046】
ここで、超音波溶着の設定条件は、使用する超音波発振器、容器本体1および蓋2の材料等に応じて、適宜設定可能である。
【0047】
(変形例)
本実施形態に係るアンプル容器10について、
図1~
図4に示す構成の変形例について説明する。
図9は、この変形例としてのアンプル容器10Aの概略構成を示す斜視図である。また、
図10は、アンプル容器10Aの概略構成を示す断面図である。また、
図11は、アンプル容器10Aの概略構成を示す側面図である。また、
図12は、アンプル容器10Aの概略構成を示す上面図である。
【0048】
図9~
図12に示されるように、アンプル容器10Aは、蓋2における容器本体1の頭部1aと反対側の面には、凹部2eが設けられていない点が、
図1~
図4に示される構成と異なる。蓋2における容器本体1の頭部1aと反対側の面は、平面である。このような構成であっても、従来よりも密栓部分での液漏れを抑制することができる。
【0049】
本実施形態に係るアンプル容器10および10Aの色は、特に限定されない。アンプル容器10および10Aは、少なくとも一部が、非透光性を有していてもよいし、透光性を有していてもよい。さらには、アンプル容器10および10Aは、透明であってもよいし、非透明であってもよい。
【0050】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0051】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るアンプル容器10は、先端に開口1dを有する頭部1aと、胴部1cと、前記頭部1aと前記胴部1cとを連結し、前記頭部1aおよび前記胴部1cよりも細い括れ部1bと、を有する、プラスチック製の容器本体1と、前記開口1dを閉塞する、前記頭部1aに溶着された、プラスチック製の蓋2と、を備えた構成である。
【0052】
上記の構成によれば、アンプル容器10は、容器本体1の開口1dが蓋2の本体閉塞部2aにより閉塞された状態で溶栓処理される。それゆえ、上記の構成によれば、容器本体1の溶栓部分にピンホールを発生することを抑制できる。このため、液漏れが起きるアンプル容器10の発生を抑制することができる。したがって、上記の構成によれば、従来よりも密栓部分での液漏れを抑制することができる。
【0053】
本発明の態様2に係るアンプル容器10は、態様1において、前記蓋2は、溶着前の状態において、前記頭部1aの天面1fと対向する面(対向面2d)から突出したリブ2bを有し、溶融した該リブ2bによって前記頭部に溶着される構成である。
【0054】
上記の構成によれば、前記蓋2における前記頭部1aの天面1fとリブ2bとの溶着により形成される。このため、特に超音波溶着した場合、溶着に要する時間やエネルギーを低減することができる。
【0055】
本発明の態様3に係るアンプル容器10は、態様2において、前記リブ2bは、前記頭部1aの天面1fへ向かって突出した山形形状または前記頭部1aの天面へ向かって突出した円弧形状である構成である。
【0056】
これにより、リブ2bと頭部1aの天面1fとの接触面積を小さくすることができ、効率的に溶着部3を形成することができる。
【0057】
本発明の態様4に係るアンプル容器10は、態様2または3において、前記容器本体1および前記蓋2は、ポリプロピレンにより構成されており、前記蓋2は、前記容器本体1よりも弾性率が大きいポリプロピレンからなる構成である。
【0058】
上記の構成によれば、蓋2が容器本体1よりも弾性率が大きいポリプロピレンで構成されているので、蓋2の荷重に対する変形が小さいため、蓋2の形状を保持した状態で溶着性も良好となる。
【0059】
本発明の態様5に係るアンプル容器10は、態様1~4の何れかにおいて、農薬または園芸用薬剤を収容する収容容器として用いる構成である。
【0060】
本発明の態様6に係る蓋2は、態様1~5の何れかのアンプル容器10に備えられる蓋2であって、溶着前の状態において、前記頭部1aの天面1fと対向する面(対向面2d)から突出したリブ2bを有する構成である。
【0061】
上記の構成によれば、アンプル容器10は、前記蓋2における前記頭部1aの天面1fとリブ2bとの溶着により形成される。このため、特に超音波溶着した場合、溶着に要する時間やエネルギーを低減することができる。
【0062】
本発明の態様7に係る蓋2は、態様6において、前記リブ2bは、前記頭部1aの天面1fへ向かって突出した山形形状または容器本体1の頭部1aの天面1fへ向かってに突出した円弧形状である構成である。
【0063】
これにより、リブ2bと頭部1aの天面1fとの接触面積を小さくすることができ、効率的に溶着部3を形成することができる。
【0064】
本発明の態様8に係る蓋2は、態様6または7において、前記容器本体1および前記蓋2は、ポリプロピレンにより構成されており、前記蓋2は、前記容器本体1よりも弾性率が大きいポリプロピレンからなる構成である。
【0065】
上記の構成によれば、蓋2が容器本体1よりも弾性率が大きいポリプロピレンで構成されているので、蓋2の荷重に対する変形が小さいため、蓋2の形状を保持した状態で溶着性も良好となる。
【0066】
本発明の態様9に係るアンプル容器10の製造方法は、先端に開口1dを有する頭部1aと、胴部1cと、前記頭部1aと前記胴部1cとを連結する、前記頭部1aおよび前記胴部1cよりも細い括れ部1bと、を有する、プラスチック製の容器本体1に、前記開口1dを閉塞する、プラスチック製の蓋2を溶着し、前記容器本体1を溶栓する方法である。
【0067】
上記の構成によれば、従来よりも密栓部分での液漏れを抑制することができる。
【0068】
本発明の態様10に係るアンプル容器10の製造方法は、態様9において、前記蓋2は、前記頭部1aの天面1fと対向する面(対向面2d)から突出したリブ2bを有し、前記リブ2bを溶融して、前記蓋2を前記容器本体1に溶着する方法である。
【0069】
上記の構成によれば、特に超音波溶着した場合、前記容器本体1と前記蓋2との溶着に要する時間やエネルギーを低減することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0071】
図1~3に示すアンプル容器10について、容器本体1と蓋2との超音波溶着の条件について、検討した。
【0072】
(1)容器本体1および蓋2の寸法等の条件
蓋2の本体閉塞部2aの厚さは、1.5mm、または2.0mmである。
【0073】
蓋2の本体挿入部2cは、本体挿入部2cを開口1dに挿入するに際し、若干の効き代が残るような寸法とする。
【0074】
アンプル容器10の高さは、99.0mmを目標とし、本体閉塞部2aの厚さ(1.5mm、または2.0mm)+容器本体1の高さ(97.0mm)±1.0mmを許容範囲とする。
【0075】
(2)容器本体1および蓋2の材質
容器本体1の材質は、住友ノーブレン(登録商標)(住友化学株式会社製、ランダムコポリマー:グレードS131、弾性率650MPa)である。
【0076】
蓋2は、以下の4つの材料を使用した。
【0077】
材料A:ノバテック(登録商標)PP(日本ポリプロ株式会社製、ランダムコポリマー、射出成形グレードMG2TA、弾性率1100MPa)
材料B:プライムポリプロ(登録商標)(株式会社プライムポリマー製、ランダムコポリマー、射出成形グレードJ850NA、弾性率1350MPa)
材料C:ノバテック(登録商標)PP(日本ポリプロ株式会社製、ホモポリマー、射出成形グレードMA3、弾性率1600MPa)
材料D:ノバテック(登録商標)PP(日本ポリプロ株式会社製、ブロックコポリマー、射出成形グレードBC03C、弾性率1800MPa)。
【0078】
(3)超音波溶着の条件
容器本体1と蓋2との超音波溶着には、BRANSON社製の超音波発振器2000Xdtを使用した。超音波発振器2000Xdtの設定基準に基づき、溶着ホーンの下降スピードを5(23mm/s)とし、60%~90%の範囲で振幅を設定した。また、溶着ホーンによる蓋2の押圧圧力を0.1MPaとした。さらに、溶け込み部(コラプス)の高さを0.2mm~0.3mm程度とした。
【0079】
また、溶着ホーンを蓋2に接触させ超音波を当てる時間(溶着時間)を0.3秒または0.2秒とした。また、溶着ホーンを蓋2から離さず超音波を止め、ホールド(冷却)する時間(ホールド時間)を1秒または0.5秒とした。
【0080】
上記(1)にて設定した2通りの本体閉塞部2aの厚さ、および上記(2)に示した蓋2の4つの材料A~Dの計8種類の蓋2と、容器本体1との超音波溶着について、上記(3)に基づき、検討した。各検討実験の具体的な超音波溶着の条件は、以下の通りである。
【0081】
溶着後、アンプル容器10を逆さまにして頭部側を感水紙(株式会社東光工業社製の水没検知シール(糊なし)品名/品番:D―1 90mm×300mm)に接触させ、当該容器に封入された薬液の液漏れ有無を確認した。
【0082】
検討実験1
振幅:90%、圧力:0.1MPa、下降スピード:5、溶け込み部(コラプス)の高さ:0.2~0.3mm程度、溶着時間:0.3秒、ホールド時間:1秒。
【0083】
検討実験2
溶着時間を0.2秒とする以外、検討実験1と同様の設定とした。
【0084】
検討実験3
振幅を80%とする以外、検討実験2と同様の設定とした。
【0085】
検討実験4
溶着時間を0.3秒とする以外、検討実験3と同様の設定とした。
【0086】
検討実験5
振幅を75%とする以外、検討実験4と同様の設定とした。
【0087】
検討実験6
振幅を70%とする以外、検討実験4と同様の設定とした。
【0088】
検討実験7
振幅を60%とする以外、検討実験4と同様の設定とした。
【0089】
検討実験8
振幅を70%とし、ホールド時間を0.5秒とする以外、検討実験4と同様の設定とした。
【0090】
表1は、上記検討実験1~8による検討結果を示す表である。
【0091】
【0092】
表1に示されるように、蓋2の材料として、弾性率が比較的低く柔らかい材料(材料A、BおよびC)を用いた場合、本体閉塞部2aの荷重に対する変形が大きくなり超音波振動エネルギーが吸収され易くなるので、本体閉塞部2aの上端部がつぶれやすくなることがわかった(検討実験1~4)。一方、弾性率が比較的高く硬い材料(材料D)を用いた場合、本体閉塞部2aの荷重に対する変形が小さくなるので、本体閉塞部2aの形状を維持するとともに、超音波溶着性も良好な状態であった(検討実験1~4)。
【0093】
本体閉塞部2aの厚さについて、厚さ1.5mmおよび2.0mmを比較すると、本体閉塞部2aの厚さが2.0mmの蓋2の方が、本体閉塞部2aの外観形状が綺麗に維持され、安定していることがわかった(検討実験1~4)。
【0094】
また、材料Dから構成され、本体閉塞部2aの厚さが2.0mmである蓋2を使用して、超音波発振器の設定を変えて、振幅80%、75%、70%、60%の各条件で検討を行った(検討実験5~8)。その結果、検討実験5~8の条件では、本体閉塞部2aの外観形状に変形がなく、蓋2と容器本体1の天面との良好な超音波溶着強度を得ることができることがわかった。
【0095】
以上のことから、超音波発振器ついては、振幅を60%~80%の範囲、溶着時間を0.3秒、ホールド(冷却)時間を0.5秒~1.0秒の範囲に設定することにより、溶着強度および外観形状について、安定した結果を得ることができることがわかった。
【0096】
特に、検討実験8の結果から、振幅を70%、溶着時間を0.3秒、ホールド(冷却)時間を0.5秒に設定することにより、溶着強度および外観形状について、安定した結果を得ることができる。それゆえ、本実施例によれば、小型であり、かつ外観形状が安定したアンプル容器10を、液漏れを起こすことなくごく短時間(1秒以内)で溶栓することができた。さらに、このアンプル容器10は、溶着強度が高い、上部(頭部1aおよび蓋2)の外観形状が綺麗であり、液漏れの心配がない、安定した高さである。さらに、超音波溶着時にアンプル容器10の頭部1aへのストレスが少なく、頭部1aの変形がない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、例えば、アンプル容器を用いた農薬または園芸用薬剤の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 容器本体
1a 頭部
1c 胴部
1d 開口
1f 天面
2 蓋
2b リブ
2d 対向面
3 溶着部
10 アンプル容器