(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】扉構造
(51)【国際特許分類】
E05F 15/665 20150101AFI20240724BHJP
【FI】
E05F15/665
(21)【出願番号】P 2020100699
(22)【出願日】2020-06-10
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100166958
【氏名又は名称】堀 喜代造
(72)【発明者】
【氏名】河西 勉
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-266700(JP,A)
【文献】特開2020-23821(JP,A)
【文献】特開2021-134640(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
E05F 7/04
E05C 17/46-17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部が形成された構造物と、
前記構造物の一側における前記開口部の近傍に設けられる矩形の扉本体と、
前記構造物の前記一側に前記開口部を挟んで設けられる一対のガイドレールと、を備え、
前記扉本体が、前記開口部を開放する開放位置と前記開口部を閉塞する閉塞位置との間を、前記一対のガイドレールに沿って変位することにより、前記開口部を開閉する扉構造であって、
前記扉本体は、前記開放位置側の端部に位置する第一辺と、前記閉塞位置側の端部に位置する第二辺と、を備え、
前記構造物における前記一対のガイドレールの間には、前記開放位置における前記扉本体が位置する箇所に、少なくとも一個の規制部が設けられ、
前記扉本体には、前記開放位置において前記規制部と対向する位置に被規制部が設けられ、
前記規制部は、前記開放位置における前記扉本体において、前記扉本体の厚み方向への前記被規制部の変位を規制する、扉構造。
【請求項2】
前記構造物には、前記開放位置における前記扉本体の前記第一辺が位置する箇所の中途部に、少なくとも一個の開側第一辺側規制部が前記規制部として設けられ、
前記開側第一辺側規制部は、前記開放位置における前記扉本体において、前記被規制部として前記第一辺に設けられた開側第一辺側被規制部の前記厚み方向への変位を規制する、請求項1に記載の扉構造。
【請求項3】
前記構造物には、前記開放位置における前記扉本体の前記第二辺が位置する箇所の中途部に、少なくとも一個の開側第二辺側規制部が前記規制部として設けられ、
前記開側第二辺側規制部は、前記開放位置における前記扉本体において、前記被規制部として前記第二辺に設けられた開側第二辺側被規制部の前記厚み方向への変位を規制する、請求項1又は請求項2に記載の扉構造。
【請求項4】
前記開口部の周囲には、前記扉本体が前記開口部を閉塞した際に、前記扉本体の周縁部と当接するパッキンが設けられ、
前記開側第二辺側被規制部には、前記扉本体が前記開放位置と前記閉塞位置との間を変位する際の前記パッキンとの干渉を回避する退避手段が設けられる、請求項3に記載の扉構造。
【請求項5】
前記構造物には、前記閉塞位置における前記扉本体の前記第二辺が位置する箇所の中途部に、少なくとも一個の閉側第二辺側規制部が設けられ、
前記閉側第二辺側規制部は、前記閉塞位置における前記扉本体において、前記第二辺に設けられた閉側第二辺側被規制部の前記厚み方向への変位を規制する、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の扉構造。
【請求項6】
前記構造物には、前記閉塞位置における前記扉本体の前記第一辺が位置する箇所の中途部に、少なくとも一個の閉側第一辺側規制部が設けられ、
前記閉側第一辺側規制部は、前記閉塞位置における前記扉本体において、前記第一辺に設けられた閉側第一辺側被規制部の前記厚み方向への変位を規制する、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の扉構造。
【請求項7】
請求項3又は請求項4を引用する請求項6に記載の扉構造であって、
前記開側第二辺側規制部と前記閉側第一辺側規制部とは、前記扉本体の変位方向と直交する方向の位置が異なって前記構造物に設けられる、扉構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は扉構造に関し、詳細には構造物に設けられた開口部を開閉する扉本体を支持する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、壁体等の構造物に開口された開口部に沿って扉本体をスライド変位させることにより、開口部を開閉可能とする扉構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1には、開口部の近傍にガイドレール(溝部)を設け、チェーンによって吊下げられた扉本体をガイドレールに沿ってスライドさせることにより開口部を開閉する構成の扉構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の如く構成された扉構造において、扉本体は変位方向に沿った二辺(各図における左右両側の辺)において、ローラが溝部に挿入されることにより扉本体の厚み方向の変位が規制されている。この場合、扉本体に対して地震や強風による外力が加わった際に、扉本体にたわみが生じる可能性があった。特に、特許文献1における
図1又は
図2に示すように、長辺と短辺とを有する矩形の扉本体が短辺に沿って変位する扉構造の場合は、扉本体に加わる曲げモーメントが大きくなるためにたわみが生じやすくなっていた。
【0005】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、扉本体に対して外力が加わった場合でも、扉本体にたわみが生じることを防止できる扉構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成する扉構造を提供する。
【0007】
(1)開口部が形成された構造物と、前記構造物の一側における前記開口部の近傍に設けられる矩形の扉本体と、前記構造物の前記一側に前記開口部を挟んで設けられる一対のガイドレールと、を備え、前記扉本体が、前記開口部を開放する開放位置と前記開口部を閉塞する閉塞位置との間を、前記一対のガイドレールに沿って変位することにより、前記開口部を開閉する扉構造であって、前記扉本体は、前記開放位置側の端部に位置する第一辺と、前記閉塞位置側の端部に位置する第二辺と、を備え、前記構造物における前記一対のガイドレールの間には、前記開放位置における前記扉本体が位置する箇所に、少なくとも一個の規制部が設けられ、前記扉本体には、前記開放位置において前記規制部と対向する位置に被規制部が設けられ、前記規制部は、前記開放位置における前記扉本体において、前記扉本体の厚み方向への前記被規制部の変位を規制する、扉構造。
【0008】
(2)前記構造物には、前記開放位置における前記扉本体の前記第一辺が位置する箇所の中途部に、少なくとも一個の開側第一辺側規制部が前記規制部として設けられ、前記開側第一辺側規制部は、前記開放位置における前記扉本体において、前記被規制部として前記第一辺に設けられた開側第一辺側被規制部の前記厚み方向への変位を規制する、(1)に記載の扉構造。
【0009】
(3)前記構造物には、前記開放位置における前記扉本体の前記第二辺が位置する箇所の中途部に、少なくとも一個の開側第二辺側規制部が前記規制部として設けられ、前記開側第二辺側規制部は、前記開放位置における前記扉本体において、前記被規制部として前記第二辺に設けられた開側第二辺側被規制部の前記厚み方向への変位を規制する、(1)又は(2)に記載の扉構造。
【0010】
(4)前記開口部の周囲には、前記扉本体が前記開口部を閉塞した際に、前記扉本体の周縁部と当接するパッキンが設けられ、前記開側第二辺側被規制部には、前記扉本体が前記開放位置と前記閉塞位置との間を変位する際の前記パッキンとの干渉を回避する退避手段が設けられる、(3)に記載の扉構造。
【0011】
(5)前記構造物には、前記閉塞位置における前記扉本体の前記第二辺が位置する箇所の中途部に、少なくとも一個の閉側第二辺側規制部が設けられ、前記閉側第二辺側規制部は、前記閉塞位置における前記扉本体において、前記第二辺に設けられた閉側第二辺側被規制部の前記厚み方向への変位を規制する、(1)から(4)の何れか一に記載の扉構造。
【0012】
(6)前記構造物には、前記閉塞位置における前記扉本体の前記第一辺が位置する箇所の中途部に、少なくとも一個の閉側第一辺側規制部が設けられ、前記閉側第一辺側規制部は、前記閉塞位置における前記扉本体において、前記第一辺に設けられた閉側第一辺側被規制部の前記厚み方向への変位を規制する、(1)から(5)の何れか一に記載の扉構造。
【0013】
(7)(3)又は(4)を引用する(6)に記載の扉構造であって、前記開側第二辺側規制部と前記閉側第一辺側規制部とは、前記扉本体の変位方向と直交する方向の位置が異なって前記構造物に設けられる、扉構造。
【発明の効果】
【0014】
以上における本発明に係る扉構造は、以下に示す効果を奏する。
【0015】
(1)の構成によれば、開放位置における扉本体に対して外力が加わった場合でも、規制部が被規制部の変位を規制するため、扉本体にたわみが生じることを防止できる。
【0016】
(2)の構成によれば、開放位置における扉本体に対して外力が加わった場合でも、規制部が扉本体における第一辺の被規制部の変位を規制するため、扉本体にたわみが生じることを防止できる。
【0017】
(3)の構成によれば、開放位置における扉本体に対して外力が加わった場合でも、規制部が扉本体における第二辺の被規制部の変位を規制するため、扉本体にたわみが生じることを防止できる。
【0018】
(4)の構成によれば、第二辺の被規制部とパッキンとの干渉を回避することにより、扉構造におけるシール性能を担保することが可能となる。
【0019】
(5)の構成によれば、閉塞位置における扉本体に対して外力が加わった場合でも、規制部が扉本体における第二辺の被規制部の変位を規制するため、扉本体にたわみが生じることを防止できる。
【0020】
(6)の構成によれば、閉塞位置における扉本体に対して外力が加わった場合でも、規制部が扉本体における第一辺の被規制部の変位を規制するため、扉本体にたわみが生じることを防止できる。
【0021】
(7)の構成によれば、開側第二辺側規制部と閉側第一辺側被規制部との干渉、及び、閉側第一辺側規制部と開側第二辺側被規制部との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係る扉構造の開状態を示す正面図。
【
図3】(a)は
図1におけるA-A線断面図、(b)は
図1におけるB-B線断面図。
【
図4】(a)は
図2におけるC-C線断面図、(b)は
図2におけるD-D線断面図。
【
図5】扉本体を閉塞する際の第二規制部と第二被規制部との関係を示した拡大断面図。
【
図6】扉本体を閉塞する際の第三規制部と第三被規制部との関係を示した拡大断面図。
【
図7】扉本体を開放する際の第三規制部と第三被規制部との関係を示した拡大断面図。
【
図8】扉本体を開放する際の第二規制部と第二被規制部との関係を示した拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では
図1から
図8を用いて、本発明に係る扉構造の一実施形態である昇降扉10について説明する。
図1及び
図2に示す如く、本実施形態に係る昇降扉10は、壁体W、一対のガイドレール11・11、扉本体20等を主な構成部材として備えている。以下、各構成部材について順に説明する。
【0024】
本発明に係る構造物の一実施態様である壁体Wは、床面Gに立設されている。壁体Wの下部における床面Gから所定の高さ位置には、矩形の開口部Waが形成されている。壁体Wの一方の面である前面(
図1における紙面手前側の面)には、開口部Waを挟んだ左右両側に一対のガイドレール11・11が上下方向に沿って固定される。
【0025】
扉本体20は金属製部材を組み合わせて構成された、前後方向に厚みのある板状部材であり、正面視で左右幅が上下幅の二倍程度に長い矩形状に形成される。扉本体20は
図1及び
図2に示す如く、上側(後述する開放位置側)の端部に位置する第一辺である上辺21Uと、下側(同じく閉塞位置側)の端部に位置する第二辺である下辺21Dと、を備える。
【0026】
扉本体20は構造物である壁体Wの一側における開口部Waの近傍に設けられる。そして、扉本体20は、扉本体20の両側に立設された一対のガイドレール11・11の間で、ガイドレール11・11に沿って上下方向にスライド可能とされる。
【0027】
昇降扉10においては上記の如く、扉本体20がガイドレール11・11に沿って上下方向にスライドすることにより開口部Waを開閉する。本実施形態においては
図1及び
図3に示す如く、扉本体20が上昇して開口部Waを開放する位置を「開放位置」と記載する。また、扉本体20が下降して開口部Waを閉塞する位置を「閉塞位置」と記載する。このように扉本体20は、上側の開放位置と下側の閉塞位置との間を、ガイドレール11・11に沿って変位することにより開口部Waを開閉するのである。
【0028】
なお、本実施形態に係る昇降扉10は、壁体Wに開口された開口部Waにおいて扉本体20を上下に昇降させて開閉するように構成されているが、本発明に係る扉構造は本実施形態に限定されるものではない。即ち、壁体Wに開口された開口部Waにおいて扉本体を水平方向にスライド変位させて開閉するように構成しても良い。また、構造物の水平面に開口された開口部において扉本体をスライド変位させて開閉するように構成しても良い。このように、構造物の開口部において、扉本体をガイドレールに沿ってスライド変位させて開閉する構造の扉構造であれば、本発明を適用することができる。
【0029】
図3及び
図4に示す如く、ガイドレール11・11は互いに対向する側の面に溝形状11aが形成される。この溝形状11aの内部には扉本体20から延出されるガイドローラ(開放側ガイドローラ26U及び閉塞側ガイドローラ26D)が挿入される。
図3及び
図4に示す如く、本実施形態においてガイドレール11における溝形状11aの内周面のうち、前側の面(壁体Wから遠い側の面)には、ガイドローラ26U・26Dを案内するために二個の傾斜部材13・13が設けられている。
【0030】
図1に示す如く、本実施形態に係る昇降扉10において、壁体Wにおける開口部Waの周囲には樹脂製のパッキンPが設けられている。また、
図3及び
図4に示す如く、扉本体20における後面の周縁部には、樹脂製の扉側パッキン20pが接着されている。そして、
図4に示す如く、扉本体20が開口部Waを閉塞した際に、扉側パッキン20pがパッキンPに当接することにより、閉塞位置における昇降扉10の気密性又は水密性が確保される。なお、昇降扉10においてパッキンP及び扉側パッキン20pを設けない構成とすることも可能である。
【0031】
扉本体20の側面からは、ガイドレール11・11の側(左右両側)の外側方に、扉本体20のスライド方向である上下方向に沿って、各二個(合計四個)のガイドローラ26U・26Dが延出して設けられている。詳細には、扉本体20の側面において、扉本体20のスライド方向のうち扉本体20が開口部Waを開放する際にスライドする側である上側に、開放側ガイドローラ26Uが設けられる。同様に、扉本体20の側面において、扉本体20のスライド方向のうち扉本体20が開口部Waを閉塞する際にスライドする側である下側に、閉塞側ガイドローラ26Dが設けられる。
【0032】
ガイドローラ26U・26Dは、ガイドレール11・11の側に延出された軸心回りに、ガイドレール11・11の内部(溝形状11aの内部)で回転可能とされる。これにより、扉本体20がガイドレール11・11に沿ってスライドした際には、ガイドローラ26U・26Dがガイドレール11・11の溝形状11a(より詳細には溝形状11aにおける前後面)に沿って回転する。
図3に示す如く、閉塞側ガイドローラ26Dは開放側ガイドローラ26Uよりも径が小さく形成されている。
【0033】
扉本体20の内部には、それぞれロープrが巻回された動滑車である右側扉滑車30R、及び、左側扉滑車30Lが固定される。また、壁体Wにおける開口部Waの上側には一対の定滑車である第一定滑車31及び第二定滑車32が固定される。第一定滑車31及び第二定滑車32には、ロープrのうち左右の扉滑車30R・30Lを挟んだ両端部がそれぞれ巻回される。
【0034】
図1及び
図2に示す如く、ロープrは第一定滑車31よりも一端側(
図1及び
図2における右側)で固定された第一固定プーリP1に巻回される。そして、ロープrの一端部は第一固定プーリP1の下方で壁体Wに固定された第一の駆動部である電動モータMに接続されている。また、ロープrは第二定滑車32よりも他端側(同じく左側)で第二固定プーリP2に巻回される。そして、ロープrの他端部は第二固定プーリP2の下方で壁体Wに固定された第二の駆動部である手動ハンドルHに接続されている。手動ハンドルHは通常時(電動モータMを主な駆動源として使用する時)には回動しないようにロックされている。
【0035】
本実施形態に係る昇降扉10においては、第一の駆動部である電動モータMが扉本体20を昇降駆動する。具体的には、電動モータMがロープrを繰出すと、扉本体20は自重により下方に降下する。逆に、電動モータMがロープrを巻き上げると、扉本体20は上方に引き上げられる。このように、本実施形態に係る昇降扉10においては、電動モータMを駆動させて扉本体20を昇降させることにより、扉本体20がガイドレール11・11の間に形成された開口部Waを開閉可能としている。
【0036】
このように、本実施形態に係る昇降扉10において、扉本体20は一端が駆動部である電動モータMに連結されたロープrにより吊支され、電動モータMを駆動させることにより扉本体20が昇降可能とされている。これにより、昇降扉10における扉本体20の昇降駆動を、ロープrを用いて円滑に行うことを可能としている。なお、本実施形態におけるロープrは、駆動部から扉本体20に駆動力を伝達する伝達機構の一例であり、その態様はロープrに限定されることがない。例えば、伝達機構としてチェーン機構やギヤ機構等、他の構成を用いることも可能である。
【0037】
また、昇降扉10においては、第二の駆動部である手動ハンドルHによっても扉本体20を昇降駆動することを可能としている。具体的には、使用者が手動ハンドルHのロックを解除し、手動ハンドルHを回動させる。これによりロープrを繰出すと、扉本体20は自重により下方に降下する。逆に、使用者が手動ハンドルHを逆向きに回動させることにより、ロープrは巻き上げられ、扉本体20は上方に引き上げられる。このように、本実施形態に係る昇降扉10においては、使用者が手動ハンドルHを回動させて扉本体20を昇降させることによっても、扉本体20がガイドレール11・11の間に形成された開口部Waを開閉可能としている。
【0038】
本実施形態に係る昇降扉10においては、扉本体20が開口部Waを閉塞する際に、ガイドレール11・11がガイドローラ26U・26Dを案内して扉本体20を壁体Wの側である後方に変位させるように構成される。具体的には、
図3及び
図4に示す如く、ガイドレール11における溝形状11aの内周面のうち、前側の面(壁体Wから遠い側の面)に二個の傾斜部材13・13が設けられる。
【0039】
上記の如く構成された昇降扉10においては、扉本体20が開口部Waを閉塞する際に、ガイドレール11・11における傾斜部材13がガイドローラ26U・26Dを案内して扉本体20を壁体Wの側に変位させる。これにより、
図4(a)及び(b)に示す如く扉本体20における後面の周縁部に接着された扉側パッキン20pがパッキンPを押圧するように構成されている。このように、本実施形態においては扉本体20における扉側パッキン20pと、開口部WaにおけるパッキンPと、を密着させることができるため、閉塞位置における昇降扉10の気密性又は水密性を確保できる。
【0040】
本実施形態に係る昇降扉10において、壁体Wにおける一対のガイドレール11・11の間には、開放位置における扉本体20が位置する箇所に、少なくとも一個の規制部が設けられる。また、扉本体20には、開放位置において規制部と対向する位置に被規制部が設けられ、規制部は、開放位置における扉本体20において、扉本体20の厚み方向への被規制部の変位を規制する。
【0041】
なお、本明細書における「ガイドレール11・11の間」とは、「二本の『ガイドレール11を含む直線』の間」を意味するものである。換言すれば、本明細書で用いる「ガイドレール11・11の間」の文言は、「ガイドレール11・11が向かい合う二辺を構成する長方形の内側」を意味するものではない。
【0042】
図1及び
図3(a)に示す如く、壁体Wには、開放位置における扉本体20の上辺21Uが位置する箇所(上辺21Uの上下の近傍を含む部分、以下同様)の中途部に、開側第一辺側規制部である第一規制部41が規制部として設けられる。第一規制部41は、壁体Wから水平方向に延出された板状部材であり、第一規制部41を厚さ方向に貫通する第一規制孔41aが開口される。
図1に示す如く、第一規制部41は昇降扉10における扉本体20の中心部に対して少し左側の位置に固定されている。
【0043】
扉本体20には、開放位置の上辺21Uにおいて第一規制部41と対向する位置に、開側第一辺側被規制部である第一被規制部51が設けられる。具体的には
図1に示す如く、上辺21Uにおける扉本体20の中心部に対して少し左側の位置に上側基部50が上方に延出して設けられる。そして、上側基部50の上端部からピン形状の第一被規制部51が上方に突出して形成される。
【0044】
図1及び
図3(a)に示す如く、扉本体20が開放位置に位置する際に、第一被規制部51は第一規制部41における第一規制孔41aに挿入される。これにより、第一規制部41は、扉本体20の上辺21Uに設けられた第一被規制部51の、扉本体20の厚み方向である前後方向への変位を規制する。
【0045】
上記の如く、本実施形態に係る昇降扉10において、扉本体20はガイドレール11・11に挿入される四個のガイドローラ26U・26Dだけではなく、開放位置においては第一規制部41と第一被規制部51とにより前後方向の変位が規制される。これにより、扉本体20に対して地震や強風により外力が加わった場合でも、扉本体20にたわみが生じることを防止できる。
【0046】
本実施形態に係る昇降扉10においては、扉本体20は左右方向に長辺を有する矩形状に形成されている。このため、扉本体20に外力が加わった際の曲げモーメントが大きくなるが、本実施形態の如く第一規制部41と第一被規制部51とにより、上辺21Uの前後方向の変位を規制することにより、扉本体20にたわみを生じ難くすることが可能となる。
【0047】
また、本実施形態に係る昇降扉10における壁体Wには、
図1及び
図3(b)に示す如く、開放位置における扉本体20の下辺21Dが位置する箇所(下辺21Dの上下の近傍を含む部分、以下同様)の中途部に、開側第二辺側規制部である第二規制部42が他の規制部として設けられる。第二規制部42は、壁体Wから下方向に向けて鉤状に形成される。
図1に示す如く、第二規制部42は昇降扉10における扉本体20の中心部に対して少し右側の位置に固定されている。
【0048】
扉本体20には、開放位置の下辺21Dにおいて第二規制部42と対向する位置に、開側第二辺側被規制部である第二被規制部52が設けられる。具体的には
図1に示す如く、下辺21Dにおける扉本体20の中心部に対して少し右側の位置に下側基部53が下方に延出して設けられる。そして、下側基部53から壁体Wの側に、上方向に向けて鉤状に形成された第二被規制部52が延出される。
【0049】
図5から
図8に示す如く、本実施形態において第二被規制部52は回動軸52aを回動中心として上下に搖動可能とされている。また、第二被規制部52は引張ばね52bにより上向きに付勢され、自然状態で
図3(b)に示すように後方の水平方向に姿勢を保つように構成されている。
【0050】
図1及び
図3(b)に示す如く、扉本体20が開放位置に位置する際に、第二被規制部52は第二規制部42と係合する。これにより、第二規制部42は、扉本体20の下辺21Dに設けられた第二被規制部52の、扉本体20の厚み方向である前後方向への変位を規制する。
【0051】
上記の如く、本実施形態に係る昇降扉10では、扉本体20は開放位置において第二規制部42と第二被規制部52とにより前後方向の変位(特に、扉本体20が壁体Wから離間する方向への変位)が規制される。換言すれば、第二規制部42は、扉本体20の下辺21Dに設けられた第二被規制部52の、扉本体20の厚み方向である前後方向への変位を規制するのである。このように、本実施形態においては第一規制部41及び第一被規制部51だけでなく、第二規制部42と第二被規制部52とにより、扉本体20に対して地震や強風により外力が加わった場合に、開放位置における扉本体20にたわみが生じることを防止している。
【0052】
このように、本実施形態に係る昇降扉10において、開放位置における扉本体20が位置する箇所に、二個の規制部(第一規制部41及び第二規制部42)が設けられる。また、扉本体20には、開放位置において上記の規制部と対向する位置に、二個の被規制部(第一被規制部51及び第二被規制部52)が設けられる。そして、各規制部は、開放位置における扉本体20において、扉本体20の厚み方向への各被規制部の変位を規制する。
【0053】
なお、開放位置における扉本体20に対して設ける規制部及び被規制部の個数及び位置は本実施形態に限定されるものではない。即ち、扉本体20の上辺21Uのみを第一規制部41及び第一被規制部51で規制する構成や、扉本体20の下辺21Dのみを第二規制部42及び第二被規制部52で規制する構成とすることも可能である。また、開放位置における扉本体20の他の箇所(例えば、上下左右方向の中央部分)に規制部及び被規制部を設ける構成とすることも可能である。
【0054】
また、開放位置における扉本体20について三箇所以上に規制部及び被規制部を設ける構成とすることも可能である。但し、規制部及び被規制部の位置合わせや組付けの容易性、及び、開放位置における扉本体20に生じるたわみを有効に防止するという観点においては、本実施形態の如く扉本体20の上辺21Uと下辺21Dとのそれぞれにおいて、規制部及び被規制部を設ける構成とすることが好適である。
【0055】
また、開放位置における扉本体20に対して設ける規制部及び被規制部の構成についても、本実施形態に限定されるものではない。即ち、扉本体20の上辺21Uを規制する第一規制部41及び第一被規制部51の如く、板状部材にピン形状を挿入して規制する構成や、扉本体20の下辺21Dを規制する第二規制部42及び第二被規制部52の如く、互いに係合する構成とは異なる構成とすることもできる。例えば、電磁式マグネットや真空吸着盤を用いて扉本体20を吸着することにより扉本体20の変位を規制する構成とすることも可能である。
【0056】
本実施形態に係る昇降扉10において、第二被規制部52には、扉本体20が開放位置と閉塞位置との間を変位する際にパッキンPとの干渉を回避する退避手段が設けられている。具体的には
図5から
図8に示す如く、第二被規制部52は回動軸52aを回動中心として上下に搖動可能とされるとともに、引張ばね52bにより上向きに付勢されて、自然状態で水平方向に姿勢を保つように構成されている。また、パッキンPの上下両側における第二被規制部52と同じ左右位置には、第二被規制部52が通過する際にガイドするガイド部材Pgが設けられている。
【0057】
本実施形態においては上記の如く構成することにより、第二被規制部52とパッキンPとの干渉を回避できる。具体的には、扉本体20が開放位置から下降して閉塞位置に変位する際には
図5及び
図6に示す如く、パッキンPの上側のガイド部材Pgが第二被規制部52を上側に傾けて退避させることにより、第二被規制部52がパッキンPに干渉することを防止できる。
【0058】
また、扉本体20が閉塞位置から上昇して開放位置に変位する際には
図7及び
図8に示す如く、パッキンPの下側のガイド部材Pgが第二被規制部52を下側に傾けて退避させることにより、第二被規制部52がパッキンPに干渉することを防止できる。このように、本実施形態においては第二被規制部52とパッキンPとが干渉することを回避する構成としているため、扉本体20が閉塞位置に位置する際の昇降扉10におけるシール性能を担保することが可能となる。
【0059】
なお、第二被規制部52とパッキンPとの干渉を回避する構成については、本実施形態に限定されるものではなく、第二被規制部52を自然状態で水平方向に姿勢を保つことができる構成であれば良い。即ち、本実施形態の如く第二被規制部52を引張りばね52bで付勢する構成以外に、例えば回動軸52a部分に錘を設けて第二被規制部52の水平姿勢を保つ構成や、回動軸52a部分に巻きばねを設けて第二被規制部52の水平姿勢を保つ構成としても差し支えない。なお、昇降扉10においてパッキンP及び扉側パッキン20pを設けない構成とした場合は、上記の如く第二被規制部52とパッキンPとの干渉を回避する構成は不要となる。
【0060】
また、本実施形態に係る昇降扉10における壁体Wには、
図2及び
図4(b)に示す如く、閉塞位置における扉本体20の下辺21Dが位置する箇所の中途部に、閉側第二辺側規制部である第三規制部45が設けられる。第三規制部45は、壁体Wから水平方向に延出された板状部材であり、第三規制部45を厚さ方向に貫通する第三規制孔45aが開口される。
図2に示す如く、第三規制部45は昇降扉10における扉本体20の中心部に対して少し右側の位置に固定されている。
【0061】
扉本体20には、閉塞位置の下辺21Dにおいて第三規制部45と対向する位置に、閉側第二辺側被規制部である第三被規制部55が設けられる。具体的には
図2に示す如く、下側基部53の下端部からピン形状の第三被規制部55が下方に突出して形成される。
【0062】
図2及び
図4(b)に示す如く、扉本体20が閉塞位置に位置する際に、第三被規制部55は第三規制部45における第三規制孔45aに挿入される。これにより、第三規制部45は、扉本体20の下辺21Dに設けられた第三被規制部55の前後方向への変位を規制する。
【0063】
上記の如く、本実施形態に係る昇降扉10では、扉本体20は閉塞位置において第三規制部45と第三被規制部55とにより前後方向の変位が規制される。換言すれば、第三規制部45は、扉本体20の下辺21Dに設けられた第三被規制部55の、扉本体20の厚み方向である前後方向への変位を規制するのである。このように、本実施形態においては扉本体20が開放位置に位置する場合だけでなく、閉塞位置に位置する場合においても第三規制部45と第三被規制部55とにより、扉本体20に対して地震や強風により外力が加わった場合に扉本体20にたわみが生じることを防止している。
【0064】
また、
図2及び
図4(a)に示す如く、本実施形態において壁体Wには、閉塞位置における扉本体20の上辺21Uが位置する箇所の中途部に、閉側第一辺側規制部である第四規制部46が設けられる。第四規制部46は、壁体Wから上方向に向けて鉤状に形成される。
図2に示す如く、第四規制部46は昇降扉10における扉本体20の中心部に対して少し左側の位置に固定されている。
【0065】
扉本体20には、閉塞位置の上辺21Uにおいて第四規制部46と対向する位置に、閉側第一辺側被規制部である第四被規制部56が設けられる。具体的には
図4(a)に示す如く、上側基部50の上端部から壁体Wの側に、下方向に向けて鉤状に形成された第四被規制部56が延出される。
【0066】
図2及び
図4(a)に示す如く、扉本体20が閉塞位置に位置する際に、第四被規制部56は第四規制部46と係合する。これにより、第四規制部46は、扉本体20の上辺21Uに設けられた第四被規制部56の、扉本体20の厚み方向である前後方向への変位(特に、扉本体20が壁体Wから離間する方向への変位)を規制する。このように、本実施形態においては第三規制部45及び第三被規制部55だけでなく、第四規制部46と第四被規制部56とにより、扉本体20に対して地震や強風により外力が加わった場合に、閉塞位置における扉本体20にたわみが生じることを防止している。
【0067】
なお、昇降扉10において、閉塞位置における扉本体20に対して規制部及び被規制部を設けない構成とすることもできる。また、扉本体20の下辺21Dのみを第三規制部45及び第三被規制部55で規制する構成や、扉本体20の上辺21Uのみを第四規制部46及び第四被規制部56で規制する構成とすることも可能である。また、閉塞位置における扉本体20の他の箇所に規制部及び被規制部を設ける構成とすることも可能である。
【0068】
また、閉塞位置における扉本体20について三箇所以上に規制部及び被規制部を設ける構成とすることも可能である。但し、規制部及び被規制部の位置合わせや組付けの容易性、及び、閉塞位置における扉本体20に生じるたわみを有効に防止するという観点においては、本実施形態の如く扉本体20の上辺21Uと下辺21Dとのそれぞれにおいて、規制部及び被規制部を設ける構成とすることが好適である。
【0069】
また、閉塞位置における扉本体20に対して設ける規制部及び被規制部の構成についても、開放位置における規制部及び被規制部と同様、本実施形態に限定されるものではない。即ち、本実施形態の態様に代えて、電磁式マグネットや真空吸着盤を用いて扉本体20を吸着することにより扉本体20の変位を規制する構成とすることも可能である。
【0070】
本実施形態に係る昇降扉10においては
図1及び
図2に示す如く、第二規制部42と第四規制部46とは、扉本体20の変位方向と直交する方向である左右方向の位置が異なって壁体Wに設けられる。これにより、扉本体20が開放位置と閉塞位置との間で変位する際に、第二規制部42と係合する第二被規制部52が第四規制部46と干渉すること、及び、第四規制部46と係合する第四被規制部56が第二規制部42と干渉することを防止できる。
【符号の説明】
【0071】
10 昇降扉(扉構造) 11 ガイドレール
11a 溝形状 13 傾斜部材
20 扉本体 20p 扉側パッキン
21U 上辺(第一辺) 21D 下辺(第二辺)
26U 開放側ガイドローラ
26D 閉塞側ガイドローラ
30L 左側扉滑車 30R 右側扉滑車
31 第一定滑車 32 第二定滑車
41 第一規制部(開側第一辺側規制部)
41a 第一規制孔
42 第二規制部(開側第二辺側規制部)
45 第三規制部(閉側第二辺側規制部)
45a 第三規制孔
46 第四規制部(閉側第一辺側規制部)
50 上側基部
51 第一被規制部(開側第一辺側被規制部)
52 第二被規制部(開側第二辺側被規制部)
52a 回動軸 52b 引張ばね
53 下側基部
55 第三被規制部(閉側第二辺側被規制部)
56 第四被規制部(閉側第一辺側被規制部)
G 床面 M 電動モータ
H 手動ハンドル P1 第一固定プーリ
P2 第二固定プーリ W 壁体
Wa 開口部 P パッキン
Pg ガイド部材 r ロープ