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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】レギュレータ用半導体集積回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
G05F1/56 310A
G05F1/56 310Q
G05F1/56 320C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020141574
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037436
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】寺田 忠平
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-127764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0307501(US,A1)
【文献】特開2010-072797(JP,A)
【文献】特開平06-076571(JP,A)
【文献】中国特許第103529890(CN,B)
【文献】特開2005-217860(JP,A)
【文献】特開2005-250664(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137781(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された出力トランジスタと、出力のフィードバック電圧に応じて前記出力トランジスタを制御する制御回路と、前記制御回路の動作状態を制御する動作制御用トランジスタと、
外付けのコンデンサを接続するための外部端子と、
トランジスタのオン抵抗と前記外部端子に接続された前記コンデンサとからなるRC時定数回路と、
オン/オフ信号を入力するための外部端子の電圧を入力とする第1インバータと、該第1インバータの出力を入力とする第2インバータと、
を備えた低消費電流型直流電源装置を構成するためのレギュレータ用半導体集積回路であって、
前記電圧入力端子への電源電圧の投入タイミングを前記RC時定数回路により遅延したタイミングで前記動作制御用トランジスタを動作させて前記制御回路活性化させるソフトスタート回路を有し、
前記オン抵抗は前記第2インバータを構成するトランジスタのオン抵抗であることを特徴とするレギュレータ用半導体集積回路。
【請求項2】
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された出力トランジスタと、出力のフィードバック電圧に応じて前記出力トランジスタを制御する制御回路と、前記制御回路の動作状態を制御する動作制御用トランジスタと、
外付けのコンデンサを接続するための外部端子と、
トランジスタのオン抵抗と前記外部端子に接続された前記コンデンサとからなるRC時定数回路と、
前記電圧入力端子の電圧を入力とする第1インバータと、該第1インバータの出力を入力とする第2インバータと、
を備えた低消費電流型直流電源装置を構成するためのレギュレータ用半導体集積回路であって、
前記電圧入力端子への電源電圧の投入のタイミングを前記RC時定数回路により遅延したタイミングで前記動作制御用トランジスタを動作させて前記制御回路を活性化させるソフトスタート回路を有し、
前記オン抵抗は前記第2インバータを構成するトランジスタのオン抵抗であることを特徴とするレギュレータ用半導体集積回路。
【請求項3】
前記制御回路は、一対の差動入力トランジスタと一対のアクティブ負荷トランジスタと前記一対の差動入力トランジスタに動作電流を流す電流源とを備え、前記一対の差動入力トランジスタの一方の制御端子に前記フィードバック電圧が入力され、他方の制御端子に基準電圧が入力された差動増幅回路であり、
前記動作制御用トランジスタは、前記電圧入力端子と、前記制御回路の前記一対の差動入力トランジスタと前記アクティブ負荷トランジスタとの接続ノードの一方との間に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載のレギュレータ用半導体集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置さらには直流電圧を変換する例えばシリーズレギュレータのような電圧レギュレータを構成する半導体集積回路(レギュレータ用IC)に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧入力端子と出力端子との間に設けられたトランジスタを制御して所望の電位の直流電圧を出力する電源装置としてシリーズレギュレータ(以下、レギュレータと略す)がある。かかるレギュレータの用途として、例えば電池を電源とするモバイル機器において、図1に示すように、電池BTの電圧をレギュレータREGにより変換してマイクロコンピュータ(以下、マイコン)MCUへ直流電圧Voutを供給するシステムがある。
【0003】
モバイル機器においては、マイコンが低消費電力状態となるスタンバイモードを有しており、スタンバイモードではタイマによる計時動作等最低限の機能のみ動作している。このようなシステムの場合、レギュレータにも低消費電流型(数μA以下)のLDO(低飽和レギュレータ)が使用され、電池寿命を伸ばす設計がされる。また、レギュレータREGを構成するICにはCE端子(オン/オフ機能)が設けられており、マイコンが常時動作の場合、CE端子はVDD端子に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平05-313762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1に示すシステムにおいては、電池の投入や電池交換の際に、低消費電流型LDOの出力コンデンサを規定値まで充電するラッシュ電流と呼ばれる電流が流れるため、出力電圧にオーバーシュートが発生するおそれがある。このようなオーバーシュートが、次段のデバイス(図1ではマイコン)の定格を超えると、デバイスの破壊を招く可能性があり、対策が必要である。従来、レギュレータのオーバーシュートを抑制する発明として、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【0006】
特許文献1に記載されているレギュレータは、オン/オフ端子に接続されたパワーオン/オフ回路(2段インバータ)からの信号を微分する微分回路を設け、パワーオンの瞬間に微分回路で発生される信号によって、誤差増幅器を構成する電流源用のMOSトランジスタをオンさせて、誤差増幅器に流す電流を一時的に増加させて応答特性を向上させることによって、パワーオン時のレギュレータのオーバーシュートを抑制するようにしたものである。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されているオーバーシュート抑制回路(2段インバータと微分回路)では、例えば電池投入時など電源電圧が比較的ゆっくりと立ち上がる場合など、条件によっては、充分にオーバーシュートを抑制することができないという課題がある。
この発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、電源投入時における出力電圧のオーバーシュートを抑制することができるレギュレータ用ICを提供することにある。
本発明の他の目的は、大幅なコストアップを招くことなく、電源投入時の出力電圧のオーバーシュートを抑制することができるレギュレータ用ICを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本出願に係る第1の発明は、
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された出力トランジスタと、出力のフィードバック電圧に応じて前記出力トランジスタを制御する制御回路と、前記制御回路の動作状態を制御する動作制御用トランジスタと、
外付けのコンデンサを接続するための外部端子と、
トランジスタのオン抵抗と前記外部端子に接続された前記コンデンサとからなるRC時定数回路と、
オン/オフ信号を入力するための外部端子の電圧を入力とする第1インバータと、該第1インバータの出力を入力とする第2インバータと、
を備えた低消費電流型直流電源装置を構成するためのレギュレータ用半導体集積回路において、
前記電圧入力端子への電源電圧の投入タイミングを前記RC時定数回路により遅延したタイミングで前記動作制御用トランジスタを動作させて前記制御回路活性化させるソフトスタート回路を有し、
前記オン抵抗は前記第2インバータを構成するトランジスタのオン抵抗であるようにしたものである。
【0009】
上記のような構成を有するレギュレータ用半導体集積回路によれば、制御回路(誤差アンプ)の活性化を遅らせるソフトスタート回路を有するため、入力電圧の立ち上がりの際に、制御回路(誤差アンプ)がゆっくりと活性化することで出力トランジスタがオンからオフへ移行する遷移時間が短くなり、それによって出力電圧のオーバーシュートを抑制することができる。
【0010】
上記構成によれば、ソフトスタート回路の時定数が外付けのコンデンサとトランジスタのオン抵抗とで決まるため、制御回路(誤差アンプ)が活性化する遅延時間を外付けのコンデンサの容量値で調整することができる。
また、2段インバータによりレギュレータ用ICをオン、オフするスイッチ回路を構成することができるとともに、そのスイッチ回路の後段の第2インバータを構成するPチャンネルMOSトランジスタの寄生ダイオードを介して、電源の立下り時に外付けのコンデンサを放電させることができ、電源が再度投入された際にソフトスタート回路を確実に働かせることができる。
【0011】
また、望ましくは、前記制御回路は、一対の差動入力トランジスタと一対のアクティブ負荷トランジスタと前記一対の差動入力トランジスタに動作電流を流す電流源とを備え、前記一対の差動入力トランジスタの一方の制御端子に前記フィードバック電圧が入力され、他方の制御端子に基準電圧が入力された差動増幅回路であり、
前記動作制御用トランジスタは、前記電圧入力端子と、前記制御回路の前記一対の差動入力トランジスタと前記アクティブ負荷トランジスタとの接続ノードの一方との間に接続されているように構成する。
かかる構成によれば、入力電圧が立ち下がる際に動作制御用トランジスタが速やかに制御回路(誤差アンプ)の動作を停止させて、出力トランジスタをオフ状態にさせることができ、そのような機能を有する動作制御用トランジスタを利用して入力電圧の立ち上がり時には、制御回路(誤差アンプ)がゆっくりと活性化させることができる。
【0013】
また、本出願に係る第2の発明は、
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された出力トランジスタと、出力のフィードバック電圧に応じて前記出力トランジスタを制御する制御回路と、前記制御回路の動作状態を制御する動作制御用トランジスタと、
外付けのコンデンサを接続するための外部端子と、
トランジスタのオン抵抗と前記外部端子に接続された前記コンデンサとからなるRC時定数回路と、
前記電圧入力端子の電圧を入力とする第1インバータと、該第1インバータの出力を入力とする第2インバータと、
を備えた低消費電流型直流電源装置を構成するためのレギュレータ用半導体集積回路であって、
前記電圧入力端子への電源電圧の投入のタイミングを前記RC時定数回路により遅延したタイミングで前記動作制御用トランジスタを動作させて前記制御回路を活性化させるソフトスタート回路を有し、
前記オン抵抗は前記第2インバータを構成するトランジスタのオン抵抗であるように構成したものである
かかる構成によれば、2段インバータからなるスイッチ回路のオン/オフ信号を入力する外部端子が不要となり、外部端子を増やすことなく外付けコンデンサを含むソフトスタート回路を実現することができ、チップサイズの増大を回避することができる。また、信号の配線パターンの変更のみでソフトスタート回路を実現することができ、コストアップを抑えることができる。
【0014】
あるいは、前記ソフトスタート回路は、前記電圧入力端子と前記外部端子との間に接続され、ゲート端子が接地点に接続されたPチャンネルMOSトランジスタを備え、前記オン抵抗は前記PチャンネルMOSトランジスタのオン抵抗であるように構成する。
かかる構成によれば、CMOSインバータからなるスイッチ回路のない簡素な構成でソフトスタート回路を実現するとともに、時定数回路を構成するトランジスタの寄生ダイオードを介して、電源の立下り時に外付けのコンデンサを放電させることができ、電源が再度投入された際にソフトスタート回路を確実に働かせることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シリーズレギュレータのような直流電源装置を構成する半導体集積回路(レギュレータ用IC)において、電源投入時における出力電圧のオーバーシュートを抑制することができる。また、大幅なコストアップを招くことなく、電源投入時のオーバーシュートを抑制することができるレギュレータ用ICを実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】低消費電流型のLDOを電源装置として使用したシステムの構成例を示す機能ブロック図である。
図2】本発明に係るレギュレータ用ICの一実施形態を示す回路構成図である。
図3】(A)は図6に示す従来のLDOにおける電源投入時の各部の電圧と出力電流の変化を示す波形図、(B)は図2の実施形態のLDOにおける電源投入時の各部の電圧と出力電流の変化を示す波形図である。
図4】(A)、(B)は、図3(A)、(B)波形図の時間軸を拡大して電源投入時の各部の電圧と出力電流の変化を示す波形図である
図5図2の実施形態のレギュレータ用ICの変形例を示す回路構成図である。
図6】低消費電流型LDOを構成する従来のレギュレータ用ICの構成例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明を適用した直流電源装置としてのシリーズレギュレータの一実施形態を示す。なお、図2において、一点鎖線で囲まれた部分は、単結晶シリコンのような半導体チップ上に半導体集積回路(レギュレータ用IC)10として形成され、該レギュレータ用IC10の出力端子OUTにコンデンサCoutが接続されて安定な直流電圧Voutを出力する直流電源装置(LDO)として機能する。
【0018】
本実施形態のレギュレータ用IC10おいては、図2に示すように、電池のような電源Vinからの直流電圧VDDが印加される電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に、PチャンネルMOSトランジスタからなる出力用のトランジスタM0が接続され、出力端子OUTと接地電位GNDが印加されるグランドライン(接地点)との間には、出力電圧Voutを分圧するブリーダ抵抗R2,R1が直列に接続されている。出力トランジスタM0は、出力端子OUTへ向かって大きな電流を流せるように、以下に説明する他のトランジスタに比べてサイズの大きな素子として形成される。
【0019】
ブリーダ抵抗R1,R2により分圧された電圧が、上記出力トランジスタM0のベース端子を制御する制御回路としての誤差アンプ(増幅回路)11の非反転入力端子にフィードバックされている。そして、誤差アンプ11は出力のフィードバック電圧と所定の基準電圧Vrefとの電位差に応じて出力トランジスタM0を制御して、出力電圧Voutが所望の電位になるように制御する。
誤差アンプ11は、一対の入力差動トランジスタM1,M2と、M1,M2のドレイン端子と入力端子INとの間に接続された一対のアクティブ負荷トランジスタM3,M4と、入力差動トランジスタM1,M2の共通エミッタ端子と接地点との間に接続された定電流用トランジスタM5とにより構成されている。なお、M3,M4はPチャンネルMOSトランジスタ、M1,M2,M5はNチャンネルMOSトランジスタである。
【0020】
また、本実施形態のレギュレータ用IC10には、上記誤差アンプ11の反転入力端子に印加される基準電圧Vrefを発生するための基準電圧回路12と、誤差アンプ11の負荷トランジスタM3と並列に接続されたシャットダウン用のPチャンネルMOSトランジスタM6と、該トランジスタM6のゲート端子を制御するとともに基準電圧回路12に電源電圧を供給するための2段のCMOSインバータ13a,13bとが設けられている。CMOSインバータの代わりに、トランジスタM7とM10をそれぞれ抵抗素子に置き換えた抵抗負荷型のインバータを使用しても良い。
【0021】
基準電圧回路12は、直列の抵抗およびツェナーダイオード、バイポーラの場合はバンドギャップ回路、CMOSの場合はCMOS基準電圧回路(例えばデプレッション型MOSFET+エンハンスメント型MOSFET)などで構成することができる。
本実施形態のレギュレータ用IC10は、上記誤差アンプ11と基準電圧回路12と抵抗分圧回路(R1,R2)のトータルの消費電流が数μA(10μA以下)となるように、回路を構成する素子の定数が設定され、これにより低消費電流型LDOとして構成することができる。
【0022】
インバータ13aの入力端子は電圧入力端子INに接続され、電圧VDDが入力されている。また、インバータ13bの出力端子はシャットダウン用のトランジスタM6のゲート端子に接続されているとともに、インバータ13bの出力端子が接続される外部端子SSが設けられ、この外部端子SSに外付けのコンデンサCssが接続されるように構成されている。
【0023】
なお、トランジスタM6は、電源オフ時に出力トランジスタM0を確実にオフさせるための素子であり、電圧入力端子INに電源(電池)からの電圧VDDが印加されなくなると、インバータ13bのロウ側のNチャンネルMOSトランジスタM10がオンされて出力がロウレベルに変化され、トランジスタM6のゲート端子を接電位まで引き下げることで、M6をオンさせ、出力トランジスタM0のゲート端子に電圧入力端子INの電圧VDDを伝達してM0をオフさせるように機能する。
【0024】
上記構成を有する直流電源装置が図1に示すシステムのLDOとして使用され、電池が投入されることで、電圧入力端子INに電池からの電圧VDDが印加されると、インバータ13aの出力がロウレベルに変化することでインバータ13bのハイ側のPチャンネルMOSトランジスタM9がオンされて、外部端子SSに接続されているコンデンサCssが充電される。そして、ノードN1の電位がトランジスタM6のしきい値電圧まで上昇するとM6がオフされ、誤差アンプ11が活性化されることで、出力トランジスタM0のゲート端子を、出力分圧用の抵抗R1,R2からの電圧に応じて駆動制御する。
【0025】
上記のように本実施形態のLDOは、電源投入時にM9のオン抵抗とコンデンサCssの容量値とによって決まる時定数に応じて、ノードN1の電位が上昇することで、誤差アンプ11をゆっくりと活性化させることができる。つまり、インバータ13a,13bとコンデンサCssとトランジスタM6とによってLDOのソフトスタート回路が構成される。そして、このソフトスタート回路によって、電源投入時にコンデンサCoutへ向かって急に大きな電流(ラッシュ電流)が流れ込んで出力電圧Voutにオーバーシュートが発生するのを抑制することができる。
【0026】
なお、外部端子SSの他にオン/オフ端子CEを設けるようにしても良い。この場合、インバータ13aの入力端子はオン/オフ端子CEに接続される。ただし、図2の実施形態の回路のように、インバータ13aの入力端子を電圧入力端子INに接続した構成とすることで、ICのピン数を増加させることなく外付けのコンデンサCssを接続する構成を実現することができる。また、上記変更は、ICのチップ上の配線パターンを変えるだけで行える。そのため、コストアップを回避することができる。
【0027】
次に、この電源投入時の動作を、コンデンサCssのない図6に示す従来のLDOの動作と比較しつつ詳しく説明する。
先ず、図6に示す従来のLDOにおいて、電源投入時に出力電圧にオーバーシュートが発生する理由を説明する。図3(A)には、図6に示すLDOにおける電源投入時の、電圧入力端子INの入力電圧VDDと、出力トランジスタM0のゲート電圧PG、出力電圧Vout、基準電圧Vref、出力電流Ioutの波形が、また図4(A)には、図3(A)の時間軸を拡大した場合の上記各電圧と電流の波形が示されている。
【0028】
図3(A)より分かるように、図6に示すLDOでは、入力電圧VDDが数msで立ち上がる場合、出力電圧VoutはVDDと同じように立ち上がる。このとき、出力トランジスタM0は非飽和領域で出力電流(いわゆるラッシュ電流)Ioutを流し、出力コンデンサCoutを充電しながら出力電圧Voutを持ち上げる。この場合、図3(A)のように、出力トランジスタM0のゲート電圧PGは、ほぼ0Vでフルドライブして最大電流で充電する。そして、フィードバック電圧が基準電圧Vrefと等しくなると、誤差アンプ11は出力トランジスタM0をオフして出力電流Ioutを遮断する。
【0029】
ただし、このとき、出力トランジスタM0の寄生容量(ゲート容量等)が大きにもかかわらず、低消費電流型として設計されたLDOのレギュレータ用ICでは誤差アンプ11の電流源としてのトランジスタM5の電流が少ないため、図4(A)のように、ゲート電圧PGに比較的長い遷移時間Ttが発生する。その結果、この遷移時間Ttの間は出力電流Ioutが出力コンデンサCoutに供給され、出力電圧Voutが持ち上がりオーバーシュートになる。
【0030】
これに対し、図2に示す上記実施形態のLDOでは、入力電圧VDDが立ち上がり、インバータ13aのスレッショルド電圧である約1Vを超えると、インバータ13aのトランジスタM8とインバータ13bのトランジスタM9がオンする。すると、M9のオン抵抗と外付けコンデンサCssの時定数により外部端子SSの電圧Vssが、図3(B)に示すように、徐々に立ち上がる。そして、電圧VssがVDD-1Vまで達するとトランジスタM6がオフして誤差アンプ11が起動する。つまり、誤差アンプ11が起動するまでに、遅延が発生する。
このとき、出力トランジスタM0は飽和領域で動作することになる。これにより、出力トランジスタM0の電流能力が上がるため、誤差アンプ11は出力トランジスタM0のゲート端子のドライブ電圧を抑えて、出力コンデンサCoutを充電する。その結果、フィードバック電圧VFBが基準電圧Vrefと等しくなって出力トランジスタM0がオフする時のゲート電圧PGの遷移時間Ttが短くなり、出力電圧Voutのオーバーシュートが低減する。
【0031】
また、シャットダウン用のトランジスタM6は、外部端子SSの電圧が、図3(B)に示すように、ゆっくりと立ち上がることにより、徐々にオフして誤差アンプ11をゆっくりと活性化する。このような誤差アンプ11のソフトスタートにより、出力トランジスタM0がオフする時のゲート電圧PGの低下を抑えることができる。
さらに、インバータ13bのトランジスタM9はPチャンネルMOSトランジスタであるため、図2には点線で示すように逆方向の寄生ダイオードDsを有しており、入力電圧VDDが立ち下がる時は、この寄生ダイオードDsを介して外部端子SSの外付けコンデンサCssを速やかに放電する。そのため、再び入力電圧VDDが立ち上がる時には、再度ソフトスタートをさせることができる。
【0032】
上述したように、本実施形態のレギュレータ用ICを用いたLDOは、回路を追加することなく外付けコンデンサCssのみでソフトスタート回路を構成することができるため、コンデンサ1個で出力電圧のオーバーシュート対策を行うことができ、省スペース化および低コスト化が可能となる。また、消費電流を増加することなくオーバーシュート対策を行うことができる。さらに、外付コンデンサCssの容量値を適宜設定することにより、電源立ち上がり時間に応じて遅延時間を調整することが可能である。また、トランジスタM9の寄生ダイオードを利用して、入力電圧VDDのオフ時に、外部端子SSの外付けコンデンサCssを速やかに放電することができる。
【0033】
(変形例)
次に、図5を用いて、前記実施形態のレギュレータ用ICの変形例について説明する。
図5に示す変形例のレギュレータ用ICは、インバータ13a,13bの代わりに、インバータ13bのトランジスタM9に相当するPチャンネルMOSトランジスタのみを設け、そのゲート端子を接地点に接続するようにしたものである。
本変形例におけるトランジスタM9は前記実施形態のインバータ13a,13bと同様な機能を有し、M9と外部端子SSの外付けコンデンサCssとによって、誤差アンプ11のソフトスタート回路を構成することができる。なお、本変形例は、オン/オフ制御用の外部端子CEを持たないレギュレータ用ICに適用することができ、素子数を減らして簡素化することができる。
【0034】
また、外部端子SSのコンデンサCssと並列に外付けのトランジスタを設け、このトランジスタを制御信号でオンさせて外部端子SSに接地電位を印加させることで、シャットダウン用のトランジスタM6をオンさせて、強制的に出力トランジスタM0をオフさせることができるように構成することも可能である。また、図5に点線で示すように、外部端子SSと接地点との間に抵抗素子Rdを接続して、入力電圧VDDが立ち下がる際に放電を補助させるように構成しても良い。なお、放電補助用の抵抗素子Rdは外付け素子として接続することも可能である。
【0035】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではない。例えば、前記実施例においては、出力トランジスタM0や誤差アンプ11およびインバータ13a,13bを構成するトランジスタとして、MOSトランジスタ(MOSFET)を使用したものを示したが、MOSトランジスタの代わりにバイポーラ・トランジスタを使用するようにしてもよい。
また、前記実施例では、出力電圧Voutを分圧する抵抗R1,R2をチップ内部に設けているが、外付け抵抗からなる分圧回路を設けて、チップ外部で分圧された電圧を外部端子から誤差アンプ11へ入力させるように構成することも、抵抗R1,R2のうちR2のみを外付け抵抗として接続するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…レギュレータ用IC、11…誤差アンプ(制御回路)、12…基準電圧回路、13a,13b…インバータ、M0…出力トランジスタ、M6…シャットダウン用トランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6