(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】チェーンガイド機構
(51)【国際特許分類】
F16H 7/18 20060101AFI20240724BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F16H7/18 B
F02B67/06 C
(21)【出願番号】P 2021004890
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2023-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】フォルクマー ニガー
(72)【発明者】
【氏名】大澤 誠吾
(72)【発明者】
【氏名】前田 宗裕
(72)【発明者】
【氏名】大島 裕司
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018130733(DE,A1)
【文献】特開平11-063128(JP,A)
【文献】特開2006-132761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/18
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスプロケットと、前記複数のスプロケットに掛け回されるチェーンと、前記チェーンを摺動案内する固定チェーンガイド及び揺動チェーンガイドとを含む構成要素をフレームにより一体支持可能なチェーンガイド機構であって、
前記揺動チェーンガイドは、ガイド幅方向における一方の側面より外方に突出する円筒状の取付ボス部を備え、
前記フレームが、前記チェーンを掛け回すことで前記複数のスプロケットをそれぞれ支持するスプロケット支持部と、前記固定チェーンガイドを支持する固定チェーンガイド支持部と、前記取付ボス部を遊嵌状態で保持する揺動チェーンガイド保持部とを備え、
前記揺動チェーンガイド保持部は、前記取付ボス部を側方から挿嵌可能に構成
され、
前記取付ボス部の外周面に、互いに平行な一対の平面からなる二面幅部が形成され、
前記揺動チェーンガイド保持部が、前記取付ボス部の軸線方向からの平面視にて、C字状の遊嵌部と、前記遊嵌部の両端の各々に設けられたガイド部とを有する板状に形成され、
前記揺動チェーンガイド保持部は、前記二面幅部を前記ガイド部の互いに対向する内側面に沿って挿入し前記揺動チェーンガイドを回転させることで前記揺動チェーンガイドを揺動可能に保持するように構成され、
前記取付ボス部の外周面の先端部に、前記揺動チェーンガイドの前記一方の側面が前記揺動チェーンガイド保持部の一面に対接された状態において前記揺動チェーンガイド保持部の他面に係止される抜け止め部が形成されていることを特徴とするチェーンガイド機構。
【請求項2】
前記抜け止め部は、前記取付ボス部の円周方向に離間して並ぶ複数の係止片からなり、少なくとも2つの係止片が常時前記揺動チェーンガイド保持部の他面に係止されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のチェーンガイド機構。
【請求項3】
前記揺動チェーンガイド保持部は、前記遊嵌部のチェーン走行方向後方側の外側面に、組付け時に前記揺動チェーンガイドの揺動を規制する板状の規制部を有し、前記規制部の揺動チェーンガイド側に位置される一面に係合凹部が形成され、
前記揺動チェーンガイドの前記一方の側面に、前記係合凹部に係合されるとともに、前記揺動チェーンガイドを回動させることで前記規制部の側面に係合可能に構成された係合突起部が形成されていることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載のチェーンガイド機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、エンジンルーム内のクランク軸とカム軸のそれぞれに設けたスプロケット間に掛け回したチェーンをチェーンガイドによって張力保持、摺動案内を行うエンジンのタイミングシステムに好適なチェーンガイド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のエンジンルーム内に設置され、スプロケット間を走行するチェーンを摺動案内し、チェーン張力を適正に保持するタイミングシステム用のチェーンガイド機構が知られている。
【0003】
チェーンガイド機構のある種のものは、例えば、チェーン走行ラインの弛み側において、取付対象であるエンジンブロックに揺動可能に取り付けられた揺動チェーンガイドと、チェーン走行ラインの張り側において、エンジンブロックに固定された固定チェーンガイドとを備えた構成とされている。
【0004】
チェーンガイド機構の組立てやメンテナンス時には、複数のスプロケット、揺動チェーンガイド、固定チェーンガイドの組み付け、取り外しや、チェーンの懸回、取り外しをそれぞれ個別に行う必要があるため、作業性が悪いという問題があった。
そこで、組立てやメンテナンス時の作業性を向上させるために、揺動チェーンガイドと固定チェーンガイドを接続して一体に保持したチェーンガイド機構を採用したタイミングシステムが提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
特許文献1に記載のチェーンガイド機構においては、固定チェーンガイドのチェーン走行面側のチェーンを挟んだ両側から揺動チェーンガイド側に延びる1対のアーム部材と、揺動チェーンガイドのチェーン走行面側のチェーンを挟んだ両側からアーム部材側に延びる1対の接続アーム部を有した連結部材とからなる接続ユニットによって、揺動チェーンガイドと固定チェーンガイドを接続している。
【0006】
このチェーンガイド機構においては、アーム部材が固定チェーンガイドのガイドシューと一体に形成され、ガイドシューを固定ガイド支持部材に固定することで、固定チェーンガイドとアーム部材を一体化し、揺動チェーンガイドの取付ボス部を連結部材に設けられた嵌合孔に嵌合することで両者を一体化し、さらに、連結部材に設けられた係合突起をアーム部材に設けられた係止孔に挿入係合することで、固定チェーンガイドと揺動チェーンガイドを一体保持可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のチェーンガイド機構においては、揺動チェーンガイドの取付ボス部に嵌合される嵌合孔が設けられた連結部材を、固定チェーンガイドと一体に形成されるアーム部材と別部材としているため、部品点数が増加してしまう。
また、固定チェーンガイドと揺動チェーンガイドを接続する際に、連結部材に設けられた係合突起をアーム部材に設けられた係止孔にうまく挿入できずに時間がかかってしまう、という問題があった。
さらに、固定チェーンガイドと揺動チェーンガイドを接続した後においては、揺動チェーンガイドが固定されないため、揺動チェーンガイドが自由に動きすぎてしまい他の部品の組み付けが困難であると共に、固定チェーンガイド、揺動チェーンガイド及びその他の構成要素を一体化するための工数が多く、作業性の大幅な向上を図ることが困難であるのが実情であった。
【0009】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、すべての構成要素を簡単な構造で容易に一体化することができ、組立てやメンテナンス時の作業性の向上を図ることのできるチェーンガイド機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のスプロケットと、前記複数のスプロケットに掛け回されるチェーンと、前記チェーンを摺動案内する固定チェーンガイド及び揺動チェーンガイドとを含む構成要素をフレームにより一体支持可能なチェーンガイド機構であって、前記揺動チェーンガイドは、ガイド幅方向における一方の側面より外方に突出する円筒状の取付ボス部を備え、前記フレームが、前記チェーンを掛け回すことで前記複数のスプロケットをそれぞれ支持するスプロケット支持部と、前記固定チェーンガイドを支持する固定チェーンガイド支持部と、前記取付ボス部を遊嵌状態で保持する揺動チェーンガイド保持部とを備え、前記揺動チェーンガイド保持部は、前記取付ボス部を側方から挿嵌可能に構成され、前記取付ボス部の外周面に、互いに平行な一対の平面からなる二面幅部が形成され、前記揺動チェーンガイド保持部が、前記取付ボス部の軸線方向からの平面視にて、C字状の遊嵌部と、前記遊嵌部の両端の各々に設けられたガイド部とを有する板状に形成され、前記揺動チェーンガイド保持部は、前記二面幅部を前記ガイド部の互いに対向する内側面に沿って挿入し前記揺動チェーンガイドを回転させることで前記揺動チェーンガイドを揺動可能に保持するように構成され、前記取付ボス部の外周面の先端部に、前記揺動チェーンガイドの前記一方の側面が前記揺動チェーンガイド保持部の一面に対接された状態において前記揺動チェーンガイド保持部の他面に係止される抜け止め部が形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0011】
本請求項1に係るチェーンガイド機構によれば、複数のスプロケット、チェーン、固定チェーンガイド及び揺動チェーンガイドを含む構成要素をフレームにより一体支持することで、アッシー化することができる。しかも、フレームに設けられた揺動チェーンガイド保持部が、揺動チェーンガイドの取付ボス部を側方から挿嵌可能に構成されていることにより、簡単な構成で、揺動チェーンガイドのフレームに対する接続、分離を容易に行うことができる。このため、フレームと揺動チェーンガイドとの一体化作業が容易となり、組立てやメンテナンス時の作業性を向上させることができる。
また、揺動チェーンガイドを他の構成要素と一体化するための連結部材を別個に用意する必要がないので、部品点数の増加に伴って重量が増加することがなく、内燃機関の燃費の悪化につながることを回避することができる。
また、取付ボス部の外周面に二面幅部が形成され、揺動チェーンガイド保持部が遊嵌部とガイド部とを有し、二面幅部をガイド部の互いに対向する内側面に沿って挿入し揺動チェーンガイドを回転させることで揺動チェーンガイドを揺動可能に保持するように構成されていることにより、揺動チェーンガイドのフレームからの離脱を防止することができて確実に一体化することができるため、組立てやメンテナンス時の作業性を一層向上させることができる。
さらにまた、取付ボス部の外周面の先端部に、揺動チェーンガイドの一方の側面が揺動チェーンガイド保持部の一面に対接された状態において揺動チェーンガイド保持部の他面に係止される抜け止め部が形成されていることにより、揺動チェーンガイドをフレームに組付けたときに、揺動チェーンガイドの傾きが生じることを確実に防止することができるため、組立てやメンテナンス時の作業性を一層向上させることができる。
【0013】
本請求項2に記載の構成によれば、抜け止め部が、取付ボス部の円周方向に離間して並ぶ複数の係止片からなり、少なくとも2つの係止片が常時揺動チェーンガイド保持部の他面に係止されるように構成されていることにより、構造を簡略化することができて成形性を向上させることができる。
【0014】
本請求項3に記載の構成によれば、揺動チェーンガイド保持部が、遊嵌部のチェーン走行方向後方側の外側面に、組付け時に揺動チェーンガイドの揺動を規制する板状の規制部を有し、規制部の揺動チェーンガイド側に位置される一面に係合凹部が形成され、揺動チェーンガイドの一方の側面に、係合凹部に係合されるとともに揺動チェーンガイドを回動させることで規制部の側面に係合可能に構成された係合突起部が形成されていることにより、各構成要素をアッシー化する際に、揺動チェーンガイドの係合突起部が係合凹部に係合されることで揺動チェーンガイドが固定され、内燃機関への組付け時に係合突起部が規制部の側面に係合されることで揺動チェーンガイドのチェーンから離間する方向への回転が禁止される。このように、2 段階での揺動チェーンガイドの固定機能を設けることで、揺動チェーンガイドの自由な揺動を規制することができるため、組立てやメンテナンス時の作業性を一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るチェーンガイド機構の使用形態を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すチェーンガイド機構におけるフレームの構成を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示すチェーンガイド機構におけるトップガイドの構成を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示すチェーンガイド機構における固定チェーンガイドの構成を示す斜視図である。
【
図5】
図1に示すチェーンガイド機構における揺動チェーンガイドの構成を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す揺動チェーンガイドの取付ボス部をフレームの揺動チェーンガイド保持部と共に示す断面図である。
【
図7A】揺動チェーンガイドの取付ボス部をフレームの揺動チェーンガイド保持部に挿入した状態を概略的に示す平面図である。
【
図7B】
図7Aにおける二点鎖線で囲んだ領域におけるフレームの一面側から見た断面図である。
【
図8A】揺動チェーンガイドにおける係合突起部をフレームの係合凹部に係合させた状態を概略的に示す平面図である。
【
図8B】
図8Aにおける二点鎖線で囲んだ領域におけるフレームの一面側から見た断面図である。
【
図9A】揺動チェーンガイドにおける係合突起部をフレームにおける規制部の一側面に係合させた状態を概略的に示す平面図である。
【
図9B】
図9Aにおける二点鎖線で囲んだ領域におけるフレームの一面側から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、複数のスプロケットと、前記複数のスプロケットに掛け回されるチェーンと、前記チェーンを摺動案内する固定チェーンガイド及び揺動チェーンガイドとを含む構成要素をフレームにより一体支持可能なチェーンガイド機構であって、前記揺動チェーンガイドは、ガイド幅方向における一方の側面より外方に突出する円筒状の取付ボス部を備え、前記フレームが、前記チェーンを掛け回すことで前記複数のスプロケットをそれぞれ支持するスプロケット支持部と、前記固定チェーンガイドを支持する固定チェーンガイド支持部と、前記取付ボス部を遊嵌状態で保持する揺動チェーンガイド保持部とを備え、前記揺動チェーンガイド保持部は、前記取付ボス部を前記揺動チェーンガイドの前記一方の側面に沿って側方から挿嵌可能に構成されたものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであってもよい。
【0017】
本発明のチェーンガイド機構における固定チェーンガイドおよび揺動チェーンガイドのチェーン走行面は、チェーンガイドを摺動性の良好な材料で一体に成形して構成してもよく、チェーンとの摺動性の良好な案内シューを着脱可能に設けてもよい。
また、本発明のチェーンガイド機構における固定チェーンガイド、揺動チェーンガイドあるいは案内シューの具体的な素材としては、チェーンとの摩擦抵抗の少ないものであればよく、特に、高温環境下で耐久性を発揮するとともにチェーンの円滑な摺接走行を達成することが可能である素材が好適であり、例えば、ポリアミド6樹脂、ポリアミド46樹脂、ポリアミド66樹脂、ポリアセタール樹脂など合成樹脂材料などの素材を用いるのが好ましい。
さらに、固定チェーンガイド、揺動チェーンガイドが案内シューを有する場合は、案内シューを支持するガイド本体は、鉄、アルミ等の金属であってもよい。
【0018】
以下、本発明のチェーンガイド機構について、図面に基づいて具体的に説明する。
【0019】
図1に示すように、本発明に係るチェーンガイド機構100は、クランク軸に設けられる駆動側スプロケット101と、2本のカム軸のそれぞれに設けられる2つの従動側スプロケット102、103と、駆動側スプロケット101と従動側スプロケット102、103の間に掛け渡されたチェーン105と、それぞれ走行するチェーン105を摺動案内するトップガイド150及び固定チェーンガイド160と、走行するチェーン105を摺動案内しながらチェーン張力を適正に保持する揺動チェーンガイド170とを含む構成要素が、板金製のフレーム110により一体支持可能に構成される。
図1における106はテンショナである。
【0020】
フレーム110は、板金部材を加工することにより形成されたものであって、
図2に示すように、駆動側スプロケット支持部111と、従動側スプロケット支持部115、120と、トップガイド支持部125と、固定チェーンガイド支持部130と、揺動チェーンガイド保持部140とを有する。
【0021】
駆動側スプロケット支持部111は、板状のフレーム基体の一端に形成されており、駆動側スプロケット101のギア部の一面側に係止される係止片部112と、係止片部112を挟んで位置され駆動側スプロケット101のギア部を他面側から支持する一対の押さえ片部113を有する。係止片部112及び押さえ片部113の各々は、例えば側面形状が先端部の高さ位置が異なるZ字状となるように形成されている。
【0022】
従動側スプロケット支持部115,120は、フレーム基体の他端側において並設されている。一方の従動側スプロケット支持部115は、従動側スプロケット102のギア部の一面側に係止される係止片部116と、係止片部116を挟んで円弧に沿って並ぶよう位置され従動側スプロケット102のギア部を他面側から支持する2つの押さえ片部117を有する。
他方の従動側スプロケット支持部120についても、一方の従動側スプロケット支持部115と同様の構成であって、係止片部121と2つの押さえ片部122を有する。
【0023】
トップガイド支持部125は、フレーム基体の他端縁部(トップ側端縁部)を略直角に一面側に折り曲げてガイド長手方向に延びる支持壁部126を形成することで構成されている。
フレーム基体の折り曲げ部には、ガイド長手方向中央部にガイド長手方向に延びる長孔からなる係合孔127が形成されている。
【0024】
固定チェーンガイド支持部130は、フレーム基体のチェーン走行ライン張り側に位置された側縁部を略直角に一面側に折り曲げてチェーン走行ラインに沿って延びる支持壁部131を形成することで構成されている。
フレーム基体の折り曲げ部には、ガイド長手方向に互いに離間して並ぶ複数の係合孔132が形成されている。各々の係合孔132は、例えばガイド長手方向に延びる長孔により構成されている。
【0025】
揺動チェーンガイド保持部140は、フレーム基体の一端側(ボトム側)におけるチェーン走行ライン弛み側の側縁部に形成されている。
揺動チェーンガイド保持部140は、略C字状の遊嵌部141と、遊嵌部141の両端の各々に連続するガイド部142を有する。
各々のガイド部142の内側面143は、互いに対向して平行に延びる平面部を有する。ガイド部142は、内側面143間の離間距離D2が遊嵌部141の内径D1より小さくなるように形成されている(
図6参照。)。
チェーン走行方向後方側に位置されるガイド部142の外側面には、揺動チェーンガイド170の揺動を規制する規制部144が形成されている。規制部144は板状であって一面に係合凹部145が形成されている。
【0026】
トップガイド150は、
図3に示すように、ガイド長手方向に延びチェーン105を案内する摺接面を表面に有する板状の摺接面形成部151と、摺接面におけるガイド幅方向の一側縁においてガイド長手方向全域にわたって延びるように形成された側壁部152と、摺接面形成部151の裏面におけるガイド長手方向の両端部に設けられた係合フック部153、153と、摺接面形成部151の裏面におけるガイド幅方向の他側縁に設けられた係合突起部154を有する。
【0027】
各々の係合フック部153、153は、トップガイド支持部125の支持壁部126に対してガイド長手方向と直交する方向にスライド係合可能に構成されたコの字型断面のフック構造を有し、ガイド長手方向へのトップガイド150の移動を規制するように構成されている。
【0028】
固定チェーンガイド160は、
図4に示すように、ガイド長手方向に延びチェーン105を案内する摺接面を表面に有する摺接面形成部161と、摺接面におけるガイド幅方向の一側縁においてガイド長手方向全域にわたって延びるように形成された側壁部162と、摺接面形成部161の裏面におけるガイド長手方向の一端部に設けられた第1係合フック部163と、摺接面形成部161の裏面におけるガイド幅方向の一側縁にガイド長手方向に離間して設けられた複数の第2係合フック部164と、摺接面形成部161の裏面におけるガイド幅方向の他側縁にガイド長手方向に離間して設けられた複数の係合突起部165を有する。
【0029】
第1係合フック部163は、固定チェーンガイド支持部130の支持壁部131に対してガイド長手方向と直交する方向にスライド係合可能に構成されたコの字型断面のフック構造を有する。
第2係合フック部164は、摺接面形成部161の裏面から摺接面に対し垂直な方向に向けて延びる基部と、基部の先端からガイド幅方向内側に向けて延びる引掛け部を有する。
【0030】
揺動チェーンガイド170は、
図5に示すように、走行するチェーン105を摺動案内する案内シュー171と、案内シュー171に取り付けられ案内シュー171をガイド長手方向に沿って支持するガイド本体175とを有する。
【0031】
ガイド本体175は、ガイド長手方向における一端部に揺動軸となる円筒状の取付ボス部180を有する。
取付ボス部180は、
図6にも示すように、揺動チェーンガイド保持部140における遊嵌部141の内径D1より小さく、ガイド部142の内側面143間の離間距離D2より大きい外径D3を有し、ガイド幅方向における一方の側面より外方に突出するように設けられている。
【0032】
取付ボス部180の外周面には、互いに平行な一対の平面からなる二面幅部181が形成されている。
二面幅部181の寸法D4は、ガイド部142の内側面143間の離間距離D2よりも小さくなっており、二面幅部181とガイド部142の内側面143とが平行な状態で、取付ボス部180を揺動チェーンガイド保持部140に対し側方から挿嵌可能に構成されている。
【0033】
取付ボス部180の外周面の先端部には、揺動チェーンガイド170の一方の側面と揺動チェーンガイド保持部140の一面とが対接された状態において揺動チェーンガイド保持部140の他面に係止される抜け止め部182が形成されている。
抜け止め部182は、例えば、取付ボス部180の円周方向に離間して並ぶ複数の係止片183からなり、少なくとも2つの係止片183が常時揺動チェーンガイド保持部140の他面に係止されるように構成されている。
【0034】
揺動チェーンガイド170の一方の側面には、揺動チェーンガイド保持部140における係合凹部145に係合されるとともに、揺動チェーンガイド170を回動させることで規制部144の側面に係合可能に構成された係合突起部176が形成されている。
【0035】
上記のチェーンガイド機構100においては、各構成要素が次のようにしてアッシー化される。
【0036】
駆動側スプロケット101及び2つの従動側スプロケット102,103は、チェーンを掛け回すことでそれぞれ駆動側スプロケット支持部111及び従動側スプロケット支持部115,120により支承しフレーム110と一体化する。
【0037】
トップガイド150は、係合フック部153をトップガイド支持部125における支持壁部126に対しフレーム110の一面側からスライド係合すると共に係合突起部154をトップガイド支持部125における係合孔127に係合することで、トップガイド150をガイド長手方向への移動を規制した状態でフレーム110と一体化する。
【0038】
固定チェーンガイド160は、第1係合フック部163及び第2係合フック部164を固定チェーンガイド支持部130における支持壁部131に対しフレーム110の一面側からスライド係合すると共に係合突起部165を固定チェーンガイド支持部130における係合孔132に係合することで、固定チェーンガイド160をガイド長手方向への移動を規制した状態でフレーム110と一体化する。
【0039】
揺動チェーンガイド170は、
図7A及び
図7Bに示すように、取付ボス部180における二面幅部181が揺動チェーンガイド保持部140におけるガイド部142の内側面143と平行となる状態で、取付ボス部180を揺動チェーンガイド保持部140に対し揺動チェーンガイド170の一方の側面に沿って側方から挿入する。二面幅部181の寸法D4は、ガイド部142の内側面143間の離間距離D2よりも小さくなっているため、揺動チェーンガイド170をフレーム110に対しスムーズに装着することが可能である。このとき、2つの係止片183が揺動チェーンガイド保持部140の他面に係止されることで、揺動チェーンガイド170の傾きが防止される。
【0040】
次いで、
図8A及び
図8Bに示すように、チェーン105を押し付ける方向に揺動チェーンガイド170を回転させてガイド本体175の係合突起部176を揺動チェーンガイド保持部140における係合凹部145に係合させることで、揺動チェーンガイド170を揺動チェーンガイド保持部140に遊嵌状態で保持固定させる。この状態においては、取付ボス部180の外径D3はガイド部142の内側面143間の離間距離D2よりも大きくなっているため、揺動チェーンガイド170のフレーム110からの離脱を防止することができ、これにより揺動チェーンガイド170がフレーム110と一体化する。また、2つの係止片183が揺動チェーンガイド保持部140の他面に係止された状態が維持されており、揺動チェーンガイド170を回転させることに伴う揺動チェーンガイド170の傾きが生ずることを防止することができる。
また、揺動チェーンガイド170の回転に伴ってチェーン105が押圧されることで、駆動側スプロケット101及び2つの従動側スプロケット102,103はそれぞれ駆動側スプロケット支持部111及び従動側スプロケット支持部115,120によって確実に支持されることとなる。
以て、駆動側スプロケット101、2つの従動側スプロケット102,103、チェーン105、トップガイド150、固定チェーンガイド160及び揺動チェーンガイド170がフレーム110により一体支持されたアセンブリとして構成することが可能である。
【0041】
本実施形態に係るチェーンガイド機構100は、すべての構成要素が一体化された状態で、エンジンブロック内に挿入される。このとき、
図9A及び
図9Bに示すように、チェーン105を押し付ける方向に揺動チェーンガイド170をさらに回転させてガイド本体175の係合突起部176を揺動チェーンガイド保持部140における規制部144の一側面に係合させることで、揺動チェーンガイド170を、揺動チェーンガイド170のチェーン105から離間する方向への回転を禁止した状態で、固定する。これにより、揺動チェーンガイド170の自由な揺動を規制することができるため、組立てやメンテナンス時の作業性を一層向上させることが可能となる。
そして、駆動側スプロケット101がクランク軸に設けられると共に2つの従動側スプロケット102,103がそれぞれカム軸に設けられ、また、揺動チェーンガイド170の取付ボス部180の内周側に取付軸が挿入されてチェーンガイド機構100がエンジンルーム内に固定される。
【0042】
以上のように、本実施形態に係るチェーンガイド機構100は、駆動側スプロケット101、2つの従動側スプロケット102,103、チェーン105、トップガイド150、固定チェーンガイド160及び揺動チェーンガイド170を含む構成要素をフレーム110により一体支持することでアッシー化することができる。特に、揺動チェーンガイド170にあっては、取付ボス部180をフレーム110に対し側方から挿入し回転させることで、揺動チェーンガイド170をフレーム110と一体化することができる。このため、簡単な構成で、各構成要素の一体化作業が容易となり、組立てやメンテナンス時の作業性を向上させることが可能となる。
【0043】
以上、本発明の一実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
例えば、本発明のチェーンガイド機構は、トップガイドを有さない構成であってもよく、この場合には、フレームにトップガイド支持部を設ける必要はない。
また、取付ボス部における抜け止め部は、取付ボス部の周方向の全周にわたって形成されていてもよい。
さらにまた、フレームは板金加工により得られるものである必要はない。
【0044】
上述の実施形態は、タイミングシステム用のチェーンガイド機構としてエンジン内に設けられるものであるが、これに限定されず様々な機器類に適用可能である。
また、チェーンによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
100 ・・・ チェーンガイド機構
101 ・・・ 駆動側スプロケット
102 ・・・ 従動側スプロケット
103 ・・・ 従動側スプロケット
105 ・・・ チェーン
106 ・・・ テンショナ
110 ・・・ フレーム
111 ・・・ 駆動側スプロケット支持部
112 ・・・ 係止片部
113 ・・・ 押さえ片部
115 ・・・ 従動側スプロケット支持部
116 ・・・ 係止片部
117 ・・・ 押さえ片部
120 ・・・ 従動側スプロケット支持部
121 ・・・ 係止片部
122 ・・・ 押さえ片部
125 ・・・ トップガイド支持部
126 ・・・ 支持壁部
127 ・・・ 係合孔
130 ・・・ 固定チェーンガイド支持部
131 ・・・ 支持壁部
132 ・・・ 係合孔
140 ・・・ 揺動チェーンガイド保持部
141 ・・・ 遊嵌部
142 ・・・ ガイド部
143 ・・・ 内側面
144 ・・・ 規制部
145 ・・・ 係合凹部
150 ・・・ トップガイド
151 ・・・ 摺接面形成部
152 ・・・ 側壁部
153 ・・・ 係合フック部
154 ・・・ 係合突起部
160 ・・・ 固定チェーンガイド
161 ・・・ 摺接面形成部
162 ・・・ 側壁部
163 ・・・ 第1係合フック部
164 ・・・ 第2係合フック部
165 ・・・ 係合突起部
170 ・・・ 揺動チェーンガイド
171 ・・・ 案内シュー
175 ・・・ ガイド本体
176 ・・・ 係合突起部
180 ・・・ 取付ボス部
181 ・・・ 二面幅部
182 ・・・ 抜け止め部
183 ・・・ 係止片