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特許7525793ドライエッチング方法、半導体デバイスの製造方法及びエッチング装置
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  • 特許-ドライエッチング方法、半導体デバイスの製造方法及びエッチング装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ドライエッチング方法、半導体デバイスの製造方法及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/302 20060101AFI20240724BHJP
   C23F 1/12 20060101ALI20240724BHJP
   C23F 4/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
C23F1/12
C23F4/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021503947
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 JP2020006500
(87)【国際公開番号】W WO2020179449
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019037591
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】武田 雄太
(72)【発明者】
【氏名】山内 邦裕
(72)【発明者】
【氏名】八尾 章史
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-110229(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134930(WO,A1)
【文献】特開2014-236096(JP,A)
【文献】特開2018-041898(JP,A)
【文献】特開2000-058505(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306-21/308
H01L 21/465-21/467
H01L 21/3213
C23F 1/00-1/46
C23F 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体の表面に形成された金属膜に、β-ジケトンを含むエッチングガスを接触させてエッチングするドライエッチング方法であって、
第1のβ-ジケトン及び酸化性の添加ガスを含む第1のエッチングガスを前記金属膜に接触させる第1のエッチング工程と、
前記第1のエッチング工程の後、第2のβ-ジケトン及び酸化性の添加ガスを含む第2のエッチングガスを前記金属膜に接触させる第2のエッチング工程と、を備え、
前記第1のβ-ジケトンは、前記金属膜との反応によって第1の錯体を生成することが可能な化合物であり、
前記第2のβ-ジケトンは、前記金属膜との反応によって、前記第1の錯体よりも昇華点の低い第2の錯体を生成することが可能な化合物であることを特徴とするドライエッチング方法。
【請求項2】
前記第1のβ-ジケトンと前記第2のβ-ジケトンの組み合わせは、(第1のβ-ジケトン,第2のβ-ジケトン)=(アセチルアセトン,ヘキサフルオロアセチルアセトン)、(アセチルアセトン,トリフルオロアセチルアセトン)又は(トリフルオロアセチルアセトン,ヘキサフルオロアセチルアセトン)である、請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項3】
前記第1のエッチング工程と前記第2のエッチング工程を繰り返し行う、請求項1又は2に記載のドライエッチング方法。
【請求項4】
前記金属膜は、Zr、Hf、Fe、Mn、Cr、Al、Ru、Co、Cu、Zn、Pt及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項5】
前記第1のエッチングガス及び前記第2のエッチングガスは、それぞれ独立して、NO、NO、NO、O、O、HO及びHからなる群より選ばれる少なくとも1種の酸化性の添加ガスをむ、請求項1~4のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項6】
前記金属膜はCo元素を含み、
前記第1のエッチングガスは、前記第1のβ-ジケトンとしてアセチルアセトンと、酸化性の添加ガスとしてNOとを含み、
前記第2のエッチングガスは、前記第2のβ-ジケトンとしてヘキサフルオロアセチルアセトンと、酸化性の添加ガスとしてNOとを含む、請求項1に記載のドライエッチング方法。
【請求項7】
前記第1のエッチングガス及び前記第2のエッチングガスは、それぞれ独立して、N、Ar、He、Ne及びKrからなる群より選ばれる少なくとも1種の不活性ガスをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項8】
前記第1のエッチング工程の前に、前記金属膜に還元性ガスを供給する前処理工程をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載のドライエッチング方法。
【請求項9】
基板上の金属膜を請求項1~8のいずれか1項に記載のドライエッチング方法によりエッチングする工程を備えることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
加熱可能な処理容器内に設けられ、金属膜が表面に形成された被処理体を載置する載置部と、
前記金属膜との反応によって第1の錯体を生成することが可能な化合物である第1のβ-ジケトンを前記被処理体に供給する第1のβ-ジケトン供給部と、
前記金属膜との反応によって、前記第1の錯体よりも昇華点の低い第2の錯体を生成することが可能な化合物である第2のβ-ジケトンを前記被処理体に供給する第2のβ-ジケトン供給部と、
酸化性の添加ガスを前記被処理体に供給する添加ガス供給部と、
前記第1のβ-ジケトン及び酸化性の添加ガスを含む第1のエッチングガスを前記被処理体に供給する第1のステップと、前記第1のステップの後、前記第2のβ-ジケトン及び酸化性の添加ガスを含む第2のエッチングガスを前記被処理体に供給する第2のステップとを行うように制御信号を出力する制御部と、
を備えることを特徴とするエッチング装置。
【請求項11】
還元性ガスを前記被処理体に供給する還元性ガス供給部をさらに備え、
前記制御部は、前記第1のエッチングガスを前記被処理体に供給する前に、前記還元性ガスを前記被処理体に供給するように制御信号を出力する、請求項10に記載のエッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドライエッチング方法、半導体デバイスの製造方法及びエッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造過程において、配線材料、メタルゲート材料、電極材料、又は磁性材料として、基板上に成膜された金属膜をエッチングすることがある。
【0003】
半導体デバイスの微細化に伴い、金属膜をエッチングして微細な構造を形成するために、金属膜のエッチングを高度に制御することが求められるようになってきている。具体的には、ウエハの面内においてエッチング量のばらつきが1nm以下に抑えられるように金属膜をエッチングすること、エッチング後の金属膜表面のラフネスを制御すること、金属膜を選択的にエッチングすること等について検討されている。このような高度なエッチング制御を行うためには、薬液によって金属膜をエッチングするウェットエッチングでは困難であり、ガスによって金属膜をエッチングするドライエッチングが検討されている。
【0004】
特許文献1には、水及びアルコールの少なくともいずれか一方を含んでいるβ-ジケトンを含むエッチングガスにより、基板上に形成された薄膜を基板温度300℃以上、好ましくは450℃以上でエッチングして、上記基板の表面を露出させるエッチング工程を具備するエッチング方法が記載されている。特許文献2には、β-ジケトンを含み、水又は過酸化水素を1~20体積%含むエッチングガスを用いて、100℃以上350℃以下の温度領域でβ-ジケトンと金属との錯体を形成することによって金属膜をエッチングする方法が記載されている。特許文献2には、金属膜を構成する金属の例として、亜鉛、コバルト、ハフニウム、鉄、マンガン、バナジウム等が挙げられている。特許文献2によれば、水又は過酸化水素を添加することで、酸素を用いる場合よりも金属膜をエッチングする速度が速くなるとされている。
【0005】
また、基板上の金属膜を微細にエッチングする方法ではないが、半導体デバイスの製造工程に使用される成膜装置内に付着した金属膜をドライクリーニングする方法として、β-ジケトンを用いる方法が提案されている。
【0006】
特許文献3には、β-ジケトンとNOx(NO、NOのいずれか)とを含むクリーニングガスを、200~400℃、好ましくは250~370℃の温度範囲内にある金属膜と反応させることにより、成膜装置に付着した金属膜を除去するドライクリーニング方法が記載されている。特許文献3には、金属膜を構成する金属の例として、ニッケル、マンガン、鉄、コバルト等が挙げられている。特許文献3によれば、NOxを用いることで、酸素を用いる場合よりも金属膜をエッチング除去できる温度範囲が広くなるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-91829号公報
【文献】特開2014-236096号公報
【文献】特開2013-194307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
被エッチング対象である金属膜は、その成膜方法によって結晶性は異なるが、ほとんどの場合、結晶粒が集合して形成される多結晶の膜である。このような金属膜を特許文献1~3に記載されている方法でエッチングした場合、全体的に均一にエッチングすることは非常に困難である。通常は、比較的結合の弱い(すなわち、反応性の高い)結晶粒界が優先的にエッチングされるため、エッチングした後の膜は、エッチング速度の違いによる表面荒れが発生すると考えられる。近年の微細化の進展においては、僅かな表面荒れも無視できない問題となりつつあり、この改善が求められている。
【0009】
β-ジケトンを含むエッチングガスを用いて金属膜をエッチングする場合、金属とβ-ジケトンが錯体を形成することによって、金属膜がエッチングされる。この錯体形成には、金属を一度酸化させる必要があるため、酸素や前述のNOx等の酸化剤をエッチングガスに添加することが多い。これまで本発明者らは、酸化剤の添加量や添加するタイミング、更にはβ-ジケトンでの処理条件などを調整して、表面荒れの改善を図ってきたが、根本的に改善するには至らなかった。
【0010】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、金属膜の表面荒れを抑制することが可能なドライエッチング方法を提供することを目的とする。さらに、本開示は、上記ドライエッチング方法を用いた半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。本開示はまた、金属膜の表面荒れの発生を抑制することが可能なエッチング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、β-ジケトンの種類によって、金属との反応で生成する錯体の昇華点が大きく異なることに注目した。そして、昇華点の高い第1の錯体を生成する第1のβ-ジケトンで金属膜を処理した後、第1の錯体よりも昇華点の低い第2の錯体を生成する第2のβ-ジケトンで金属膜を処理すると、金属膜の表面荒れが改善することを見出し、本開示に至った。
【0012】
本開示のドライエッチング方法は、被処理体の表面に形成された金属膜に、β-ジケトンを含むエッチングガスを接触させてエッチングするドライエッチング方法であって、第1のβ-ジケトンを含む第1のエッチングガスを上記金属膜に接触させる第1のエッチング工程と、上記第1のエッチング工程の後、第2のβ-ジケトンを含む第2のエッチングガスを上記金属膜に接触させる第2のエッチング工程と、を備え、上記第1のβ-ジケトンは、上記金属膜との反応によって第1の錯体を生成することが可能な化合物であり、上記第2のβ-ジケトンは、上記金属膜との反応によって、上記第1の錯体よりも昇華点の低い第2の錯体を生成することが可能な化合物であることを特徴とする。
【0013】
本開示のドライエッチング方法において、上記第1のβ-ジケトンと上記第2のβ-ジケトンの組み合わせは、(第1のβ-ジケトン,第2のβ-ジケトン)=(アセチルアセトン,ヘキサフルオロアセチルアセトン)、(アセチルアセトン,トリフルオロアセチルアセトン)又は(トリフルオロアセチルアセトン,ヘキサフルオロアセチルアセトン)であることが好ましい。
【0014】
本開示のドライエッチング方法においては、上記第1のエッチング工程と上記第2のエッチング工程を繰り返し行ってもよい。
【0015】
本開示のドライエッチング方法において、上記金属膜は、Zr、Hf、Fe、Mn、Cr、Al、Ru、Co、Cu、Zn、Pt及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましい。
【0016】
本開示のドライエッチング方法において、上記第1のエッチングガス及び上記第2のエッチングガスは、それぞれ独立して、NO、NO、NO、O、O、HO及びHからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加ガスをさらに含むことが好ましい。
【0017】
本開示のドライエッチング方法において、上記金属膜はCo元素を含み、上記第1のエッチングガスは、上記第1のβ-ジケトンとしてアセチルアセトンと、添加ガスとしてNOとを含み、上記第2のエッチングガスは、上記第2のβ-ジケトンとしてヘキサフルオロアセチルアセトンと、添加ガスとしてNOとを含むことが好ましい。
【0018】
本開示のドライエッチング方法において、上記第1のエッチングガス及び上記第2のエッチングガスは、それぞれ独立して、N、Ar、He、Ne及びKrからなる群より選ばれる少なくとも1種の不活性ガスをさらに含むことが好ましい。
【0019】
本開示のドライエッチング方法は、上記第1のエッチング工程の前に、上記金属膜に還元性ガスを供給する前処理工程をさらに備えることが好ましい。
【0020】
本開示の半導体デバイスの製造方法は、基板上の金属膜を本開示のドライエッチング方法によりエッチングする工程を備えることを特徴とする。
【0021】
本開示のエッチング装置は、加熱可能な処理容器内に設けられ、金属膜が表面に形成された被処理体を載置する載置部と、上記金属膜との反応によって第1の錯体を生成することが可能な化合物である第1のβ-ジケトンを上記被処理体に供給する第1のβ-ジケトン供給部と、上記金属膜との反応によって、上記第1の錯体よりも昇華点の低い第2の錯体を生成することが可能な化合物である第2のβ-ジケトンを上記被処理体に供給する第2のβ-ジケトン供給部と、上記第1のβ-ジケトンを含む第1のエッチングガスを上記被処理体に供給する第1のステップと、上記第1のステップの後、上記第2のβ-ジケトンを含む第2のエッチングガスを上記被処理体に供給する第2のステップとを行うように制御信号を出力する制御部と、を備えることを特徴とする。
【0022】
本開示のエッチング装置は、還元性ガスを上記被処理体に供給する還元性ガス供給部をさらに備え、上記制御部は、上記第1のエッチングガスを上記被処理体に供給する前に、上記還元性ガスを上記被処理体に供給するように制御信号を出力することが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、金属膜の表面荒れを抑制することが可能なドライエッチング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るエッチング装置を模式的に示す概略図である。
図2図2は、実施例1及び実施例2の試験手順を示すフローチャートである。
図3図3は、比較例1の試験手順を示すフローチャートである。
図4図4は、実施例1及び比較例1におけるエッチング量とRMSの関係を示すグラフである。
図5図5は、実施例1及び実施例2におけるエッチング量とRMSの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。
しかしながら、本開示は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0026】
[ドライエッチング方法]
本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法は、被処理体の表面に形成された金属膜に、β-ジケトンを含むエッチングガスを接触させてエッチングする方法である。加熱した状態の金属膜にβ-ジケトンを含むエッチングガスを接触させると、β-ジケトンと金属膜とが反応して錯体を生成する。この錯体は蒸気圧が高いため、錯体が気化することにより金属膜を除去することができる。
【0027】
本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法では、昇華点の高い第1の錯体を生成することが可能な第1のβ-ジケトンを含む第1のエッチングガスを金属膜に接触させる第1のエッチング工程の後、第1の錯体よりも昇華点の低い第2の錯体を生成することが可能な第2のβ-ジケトンを含む第2のエッチングガスを金属膜に接触させる第2のエッチング工程を行うことを特徴としている。
【0028】
これにより、エッチング後の金属膜の表面荒れを抑制することができる。そのメカニズムは、以下のように推定される。まず、第1のβ-ジケトンで金属膜を処理すると、比較的結合の弱い(すなわち、反応性の高い)結晶粒界に対して、優先的に第1のβ-ジケトンが錯体を形成する。次に、第2のβ-ジケトンで金属膜を処理すると、結晶粒界では第1のβ-ジケトンで生成した錯体が保護膜として機能するため、比較的反応性の低い結晶粒部分に対して第2のβ-ジケトンがアタックする。その後、結晶粒のエッチングが進行するに従って、保護されていた結晶粒界もエッチングされる。その結果、金属膜全体が一様にエッチングされると考えられる。
【0029】
本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法の対象となる金属膜は、β-ジケトンと錯体を形成可能な金属元素で成膜される。具体的には、Zr、Hf、Fe、Mn、Cr、Al、Ru、Co、Cu、Zn、Pt及びNiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素が挙げられる。金属膜は、1種の金属元素のみからなる金属膜であってもよいし、複数の金属元素で構成された金属膜であってもよい。中でも、Co元素を含む金属膜に対して、本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法は有効である。なお、本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法において、被処理体の基材としては、公知の半導体基板やガラス基板等の基板を用いることができる。
【0030】
(第1のエッチング工程)
第1のエッチングガスは、第1のβ-ジケトンを含む。第1のβ-ジケトンの種類は、第2のβ-ジケトンとの関係で決まるものであり、特に限定されないが、例えば、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン等が挙げられる。第1のβ-ジケトンとして、1種の化合物を用いてもよいし、2種以上の化合物を用いてもよい。
【0031】
第1のエッチングガス中に含まれる第1のβ-ジケトンの含有率は、充分なエッチング速度を得る観点から、10体積%以上90体積%以下であることが好ましく、30体積%以上60体積%以下であることがより好ましい。
【0032】
第1のエッチングガスは、NO、NO、NO、O、O、HO及びHからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加ガスをさらに含むことが好ましい。
【0033】
第1のエッチングガスが添加ガスを含む場合、第1のエッチングガス中に含まれる添加ガスの含有率は、充分なエッチング速度を得る観点から、0.01体積%以上10体積%以下であることが好ましく、0.05体積%以上8体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以上5体積%以下であることがさらに好ましい。
【0034】
第1のエッチングガスは、N、Ar、He、Ne及びKrからなる群より選ばれる少なくとも1種の不活性ガスをさらに含むことが好ましい。
【0035】
第1のエッチングガスが不活性ガスを含む場合、第1のエッチングガス中に含まれる不活性ガスの含有率は、1体積%以上90体積%以下であることが好ましく、10体積%以上80体積%以下であることがより好ましく、30体積%以上50体積%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
(第2のエッチング工程)
第2のエッチングガスは、第2のβ-ジケトンを含む。第2のβ-ジケトンの種類は、第1のβ-ジケトンとの関係で決まるものであり、特に限定されないが、例えば、ヘキサフルオロアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン等が挙げられる。第2のβ-ジケトンとして、1種の化合物を用いてもよいし、2種以上の化合物を用いてもよい。
【0037】
第1のβ-ジケトンと第2のβ-ジケトンの組み合わせとしては、(第1のβ-ジケトン,第2のβ-ジケトン)=(アセチルアセトン,ヘキサフルオロアセチルアセトン)、(アセチルアセトン,トリフルオロアセチルアセトン)、(トリフルオロアセチルアセトン,ヘキサフルオロアセチルアセトン)などが挙げられる。
【0038】
第2のエッチングガス中に含まれる第2のβ-ジケトンの含有率は、充分なエッチング速度を得る観点から、10体積%以上90体積%以下であることが好ましく、30体積%以上60体積%以下であることがより好ましい。
【0039】
第2のエッチングガスは、NO、NO、NO、O、O、HO及びHからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加ガスをさらに含むことが好ましい。第1のエッチングガス及び第2のエッチングガスが添加ガスを含む場合、第1のエッチングガス中に含まれる添加ガスと第2のエッチングガス中に含まれる添加ガスは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
第2のエッチングガスが添加ガスを含む場合、第2のエッチングガス中に含まれる添加ガスの含有率は、充分なエッチング速度を得る観点から、0.01体積%以上10体積%以下であることが好ましく、0.05体積%以上8体積%以下であることがより好ましく、0.1体積%以上5体積%以下であることがさらに好ましい。第1のエッチングガス及び第2のエッチングガスが添加ガスを含む場合、第1のエッチングガス中に含まれる添加ガスの含有率と第2のエッチングガス中に含まれる添加ガスの含有率は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
第2のエッチングガスは、N、Ar、He、Ne及びKrからなる群より選ばれる少なくとも1種の不活性ガスをさらに含むことが好ましい。第1のエッチングガス及び第2のエッチングガスが不活性ガスを含む場合、第1のエッチングガス中に含まれる不活性ガスと第2のエッチングガス中に含まれる不活性ガスは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0042】
第2のエッチングガスが不活性ガスを含む場合、第2のエッチングガス中に含まれる不活性ガスの含有率は、1体積%以上90体積%以下であることが好ましく、10体積%以上80体積%以下であることがより好ましく、30体積%以上50体積%以下であることがさらに好ましい。第1のエッチングガス及び第2のエッチングガスが不活性ガスを含む場合、第1のエッチングガス中に含まれる不活性ガスの含有率と第2のエッチングガス中に含まれる不活性ガスの含有率は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0043】
本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法においては、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程を繰り返し行ってもよい。この場合、第1のエッチング工程の条件は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。同様に、第2のエッチング工程の条件は、それぞれ同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0044】
(前処理工程)
本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法においては、第1のエッチング工程の前に、金属膜に還元性ガスを供給する前処理工程を行うことが好ましい。例えば、除去対象の金属膜がCo元素を含む場合、コバルト自然酸化膜を還元することで、自然酸化膜の厚さによるエッチング速度のばらつきを改善することができる。
【0045】
前処理工程においては、還元性ガスとして、例えば、水素(H)、一酸化炭素(CO)、ホルムアルデヒド(HCHO)等のガスを用いることができる。還元性ガスは、1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。
【0046】
前処理工程においては、Hガス等の還元性ガスのみが供給されてもよいが、上述したNガス等の不活性ガスによって還元性ガスが希釈されてもよい。
【0047】
また、前処理工程においては、β-ジケトン及び添加ガスは供給されないことが好ましい。具体的には、前処理工程において供給されるガスの全量に対するβ-ジケトン及び添加ガスの量の割合は、それぞれ、0.01体積%未満であることが好ましく、0.001体積%未満であることがより好ましく、0体積%であることが特に好ましい。
【0048】
[エッチング装置]
本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法は、例えば、半導体製造工程に使用される一般的なエッチング装置を使用することにより実現することができる。このようなエッチング装置も、本発明の実施形態の1つである。
【0049】
図1は、本発明の一実施形態に係るエッチング装置を模式的に示す概略図である。
図1に示すエッチング装置100は、金属膜が表面に形成された被処理体10を配置する処理容器110と、処理容器110に接続して第1のβ-ジケトンを供給する第1のβ-ジケトン供給部130と、第2のβ-ジケトンを供給する第2のβ-ジケトン供給部140と、添加ガスを供給する添加ガス供給部150と、不活性ガスを供給する不活性ガス供給部160と、還元性ガスを供給する還元性ガス供給部170と、処理容器110を加熱する加熱手段180と、を備える。ガス流量の制御部(図示せず)は第1のβ-ジケトン供給部130などと接続し、第1のβ-ジケトンなどを被処理体10に供給するようにバルブの制御信号を出力する。なお、エッチング装置100は、添加ガス供給部150、不活性ガス供給部160及び還元性ガス供給部170を備えなくてもよい。
【0050】
処理容器110は、被処理体10を載置するための載置部111を具備する。処理容器110は、使用するβ-ジケトンに対する耐性があり、所定の圧力に減圧できるものであれば特に限定されるものではないが、通常、半導体のエッチング装置に備えられた一般的な処理容器などが適用される。また、エッチングガスを供給する供給管やその他の配管などもβ-ジケトンに対する耐性にあるものであれば特に限定されるものではなく一般的なものを使用することができる。
【0051】
第1のβ-ジケトン供給部130は、バルブV1~V5と流量調整手段MFC1で供給量を調整して、Nなどのバブリングガスを配管131、132及び133から第1のβ-ジケトン容器137に供給し、第1のβ-ジケトン容器137から第1のβ-ジケトンを配管134、135及び121に供給する。図1では、配管133と配管134とが配管136で接続されているが、配管136が設けられていなくてもよい。
【0052】
第2のβ-ジケトン供給部140は、バルブV6及びV7と流量調整手段MFC2で供給量を調整して、第2のβ-ジケトンを配管141及び142から配管121に供給する。
【0053】
添加ガス供給部150は、バルブV8及びV9と流量調整手段MFC3で供給量を調整して、添加ガスを配管151及び152から配管121に供給する。
【0054】
不活性ガス供給部160は、バルブV10及びV11と流量調整手段MFC4で供給量を調整して、不活性ガスを配管161及び162から配管121に供給する。
【0055】
還元性ガス供給部170は、バルブV12及びV13と流量調整手段MFC5で供給量を調整して、還元性ガスを配管171及び172から配管121に供給する。
【0056】
エッチング装置100において、β-ジケトンは、不活性ガス供給部160から供給される不活性ガスにより所定の濃度に希釈され、添加ガス供給部150から供給される添加ガスと所定の濃度で混合した状態で、処理容器110に供給されることが好ましい。但し、β-ジケトンは不活性ガスにより希釈されなくてもよい。
【0057】
処理容器110の外部には、処理容器110を加熱する加熱手段180が配設される。また、載置部111の内部には、第2の加熱手段として、ヒーター(図示せず)を備えてもよい。なお、複数の載置部を処理容器110に配置する場合は、載置部毎にヒーターを備えることにより、それぞれの載置部を個別に所定の温度に設定することができる。
【0058】
処理容器110の一方には、反応後のガスを排出するためのガス排出手段が配設される。ガス排出手段の真空ポンプ183により、配管181を介して処理容器110から反応後のガスが排出される。反応後のガスは、配管181と配管182との間に配設された液体窒素トラップ184により回収される。配管181及び182には、バルブV14及びV15を配設して、圧力を調整することができる。また、図1中、PI1及びPI2は、圧力計であり、その指示値を基に制御部が各流量調整手段及び各バルブを制御することができる。
【0059】
エッチング装置100を例として、具体的にエッチング方法を説明する。
【0060】
β-ジケトンと錯体を形成可能な金属元素を含む金属膜が形成された被処理体10を処理容器110内に配置する。真空ポンプ183により、処理容器110、配管121、配管131~136、配管141及び142、配管151及び152、配管161及び162、配管171及び172、液体窒素トラップ184、配管181及び182の内部を所定の圧力まで真空置換後、加熱手段180により、被処理体10を加熱する。所定の温度に到達したら、第1のβ-ジケトン供給部130と添加ガス供給部150と不活性ガス供給部160とから第1のβ-ジケトンと添加ガスと不活性ガスを所定の流量で配管121に供給する。
【0061】
希釈された第1のβ-ジケトンと添加ガスは所定の組成で混合され、処理容器110に供給される。混合された第1のエッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内を所定の圧力に制御する。所定の時間、第1のエッチングガスと金属膜とを反応させることにより、第1のエッチング工程を行う。第1のエッチング工程では、プラズマレスでエッチング可能であり、エッチングの際、プラズマ等でのエッチングガスの励起は不要である。
【0062】
第1のエッチング工程が終了した後、再び真空置換する。その後、第2のβ-ジケトン供給部140と添加ガス供給部150と不活性ガス供給部160とから第2のβ-ジケトンと添加ガスと不活性ガスを所定の流量で配管121に供給する。
【0063】
希釈された第2のβ-ジケトンと添加ガスは所定の組成で混合され、処理容器110に供給される。混合された第2のエッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内を所定の圧力に制御する。所定の時間、第2のエッチングガスと金属膜とを反応させることにより、第2のエッチング工程を行う。第2のエッチング工程では、プラズマレスでエッチング可能であり、エッチングの際、プラズマ等でのエッチングガスの励起は不要である。
【0064】
第1のエッチング工程と第2のエッチング工程を繰り返し行う場合には、第2のエッチング工程が終了した後、再び真空置換する。その後、上述と同様に、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程を行う。
【0065】
第2のエッチング工程が終了した後、加熱手段180による加熱を停止し降温するとともに、真空ポンプ183を停止し、真空を開放する。以上により、金属膜のエッチングを行うことができる。
【0066】
なお、第1のエッチング工程の前、還元性ガス供給部170より、還元性ガスを被処理体10に供給することにより前処理工程を行うことができる。前処理工程の後、第1のエッチング工程の前に真空置換することが好ましい。
【0067】
(エッチング条件)
本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法において、第1のエッチング工程及び第2のエッチング工程を行う際の温度は、錯体が気化可能な温度であればよく、特に、除去対象の金属膜の温度が、100℃以上350℃以下であることが好ましく、130℃以上250℃以下であることがより好ましい。金属膜の温度は、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程とで同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
また、第1のエッチング工程及び第2のエッチング工程における処理容器内の圧力は、特に限定されないが、通常、0.1kPa以上101.3kPa以下の圧力範囲である。処理容器内の圧力は、第1のエッチング工程と第2のエッチング工程とで同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0069】
特に、除去対象の金属膜がCo元素を含み、第1のエッチングガスが第1のβ-ジケトンとしてアセチルアセトンと添加ガスとしてNOとを含み、第2のエッチングガスが第2のβ-ジケトンとしてヘキサフルオロアセチルアセトンと添加ガスとしてNOとを含む場合、300~400℃程度の高温でエッチングすると、ヘキサフルオロアセチルアセトンが分解してカーボン膜が形成される場合や、素子の構造にダメージを与える場合がある。そのため、被処理体が250℃以下に加熱されることが好ましい。
【0070】
上記の温度範囲であれば、充分なエッチング速度を得る観点から、第1のエッチング工程における処理容器内の圧力は、20Torr以上300Torr以下(2.67kPa以上39.9kPa以下)であることが好ましく、20Torr以上100Torr以下(2.67kPa以上13.3kPa以下)であることがより好ましく、20Torr以上50Torr以下(2.67kPa以上6.67kPa以下)であることがさらに好ましい。また、第2のエッチング工程における処理容器内の圧力は、20Torr以上300Torr以下(2.67kPa以上39.9kPa以下)であることが好ましく、50Torr以上250Torr以下(6.67kPa以上33.3kPa以下)であることがより好ましく、100Torr以上200Torr以下(13.3kPa以上26.7kPa以下)であることがさらに好ましい。
【0071】
第1のエッチング工程及び第2のエッチング工程の処理時間は、特に限定されないが、半導体デバイス製造プロセスの効率を考慮すると、60分以内であることが好ましい。ここで、各エッチング工程の処理時間とは、被処理体が設置されている処理容器内にエッチングガスを導入し、その後、エッチング処理を終えるために処理容器内のエッチングガスを真空ポンプ等により排気するまでの時間を指す。
【0072】
前処理工程を行う場合、前処理工程の処理温度は、自然酸化膜を還元可能な温度であれば特に限定されないが、前処理工程の処理温度が低いと、還元反応がほとんど進行しない。また、前処理工程の処理温度は高くてもよいが、エッチング装置の運用上、第1のエッチング工程の処理温度と同じであることが好ましい。以上より、前処理工程では、被処理体が100℃以上350℃以下に加熱されることが好ましく、150℃以上250℃以下に加熱されることがより好ましい。
【0073】
前処理工程において、還元性ガスの流量は、処理容器の容積に依存する。前処理工程において、処理容器内の圧力は特に限定されないが、例えば10~500Torr(1.33~66.5kPa)の範囲で装置に合わせて適宜設定すればよい。
【0074】
前処理工程の処理時間は、基板に形成した金属膜の成膜方法等に応じて適宜調整すればよい。
【0075】
[半導体デバイスの製造方法]
本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法は、従来の半導体デバイスの金属膜に所定のパターンを形成するためのエッチング方法として使用可能である。本発明の一実施形態に係るドライエッチング方法により基板上の金属膜をエッチングすることにより、半導体デバイスを安価に製造することができる。
【0076】
このような半導体デバイスとして、例えば、太陽電池、ハードディスクドライブ、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ、相変化型メモリ、強誘電体メモリ、磁気抵抗メモリ、抵抗変化型メモリ、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等を挙げることができる。
【実施例
【0077】
以下、本開示をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本開示は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0078】
実施例1、実施例2及び比較例1では、図1に示すエッチング装置100を用いて、シリコンウエハの表面に形成されたコバルト膜(形状1cm×1cm、膜厚200nm)のエッチングを行った。
【0079】
図2は、実施例1及び実施例2の試験手順を示すフローチャートである。図3は、比較例1の試験手順を示すフローチャートである。図2及び図3中、Vacは真空置換を表している。
【0080】
(実施例1)
処理容器110、配管121、配管131~136、配管141及び142、配管151及び152、配管161及び162、配管171及び172、液体窒素トラップ184、配管181及び182の内部を10Pa未満まで真空置換した。その後、加熱手段180及び載置部111の内部に配設したヒーターにより、載置部111に載置している、重さを測定した被処理体10を加熱した。加熱手段180及び載置部111の内部に配設したヒーターが200℃に達したことを確認後、還元性ガス供給部170よりHガス10sccmを圧力50Torrで10分間供給し、前処理工程を行った。
【0081】
前処理工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第1のβ-ジケトン供給部130からアセチルアセトン(Acac)と、添加ガス供給部150からNOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、第1のエッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を21Torrに制御し、第1のエッチング工程を行った。被処理体の温度は200℃とし、第1のエッチングガスの流量は、Acac/NO/N=10/1/10sccmとした。第1のエッチングガスの導入を開始して1~5分が経過した後、第1のエッチングガスの導入を停止した。
【0082】
第1のエッチング工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第2のβ-ジケトン供給部140からヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)と、添加ガス供給部150からNOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、第2のエッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を100Torrに制御し、第2のエッチング工程を行った。被処理体の温度は200℃とし、第2のエッチングガスの流量は、HFAc/NO/N=50/1/49sccmとした。第2のエッチングガスの導入を開始して1~5分が経過した後、第2のエッチングガスの導入を停止した。
【0083】
第1のエッチング工程と第2のエッチング工程を1~8サイクル繰り返した。
【0084】
(実施例2)
被処理体の温度を150℃に変更したことを除いて、実施例1と同様に前処理工程、第1のエッチング工程及び第2のエッチング工程を行うことにより、被処理体のエッチングを行った。
【0085】
(比較例1)
まず、実施例1と同様の条件で前処理工程を行った。
【0086】
前処理工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第2のβ-ジケトン供給部140からヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)と、添加ガス供給部150からNOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、エッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を100Torrに制御し、エッチング工程を行った。被処理体の温度は200℃とし、エッチングガスの流量は、HFAc/NO/N=50/1/49sccmとした。エッチングガスの導入を開始して2~60分が経過した後、エッチングガスの導入を停止した。
【0087】
実施例3及び比較例2では、図1に示すエッチング装置100を用いて、シリコンウエハの表面に形成された鉄膜(形状1cm×1cm、膜厚200nm)のエッチングを行った。
【0088】
(実施例3)
まず、実施例1と同様の条件で前処理工程を行った。
【0089】
前処理工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第1のβ-ジケトン供給部130からアセチルアセトン(Acac)と、添加ガス供給部150からHOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、第1のエッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を21Torrに制御し、第1のエッチング工程を行った。被処理体の温度は250℃とし、第1のエッチングガスの流量は、Acac/HO/N=10/1/10sccmとした。第1のエッチングガスの導入を開始して1~5分が経過した後、第1のエッチングガスの導入を停止した。
【0090】
第1のエッチング工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第2のβ-ジケトン供給部140からヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)と、添加ガス供給部150からHOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、第2のエッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を100Torrに制御し、第2のエッチング工程を行った。被処理体の温度は250℃とし、第2のエッチングガスの流量は、HFAc/HO/N=50/1/49sccmとした。第2のエッチングガスの導入を開始して1~5分が経過した後、第2のエッチングガスの導入を停止した。
【0091】
第1のエッチング工程と第2のエッチング工程を1~8サイクル繰り返した。
【0092】
(比較例2)
まず、実施例1と同様の条件で前処理工程を行った。
【0093】
前処理工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第2のβ-ジケトン供給部140からヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)と、添加ガス供給部150からHOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、エッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を100Torrに制御し、エッチング工程を行った。被処理体の温度は250℃とし、エッチングガスの流量は、HFAc/HO/N=50/1/49sccmとした。エッチングガスの導入を開始して2~60分が経過した後、エッチングガスの導入を停止した。
【0094】
実施例4及び比較例3では、図1に示すエッチング装置100を用いて、シリコンウエハの表面に形成されたハフニウム膜(形状1cm×1cm、膜厚200nm)のエッチングを行った。
【0095】
(実施例4)
まず、実施例1と同様の条件で前処理工程を行った。
【0096】
前処理工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第1のβ-ジケトン供給部130からアセチルアセトン(Acac)と、添加ガス供給部150からNOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、第1のエッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を21Torrに制御し、第1のエッチング工程を行った。被処理体の温度は300℃とし、第1のエッチングガスの流量は、Acac/NO/N=10/1/10sccmとした。第1のエッチングガスの導入を開始して1~5分が経過した後、第1のエッチングガスの導入を停止した。
【0097】
第1のエッチング工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第2のβ-ジケトン供給部140からヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)と、添加ガス供給部150からNOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、第2のエッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を100Torrに制御し、第2のエッチング工程を行った。被処理体の温度は300℃とし、第2のエッチングガスの流量は、HFAc/NO/N=50/1/49sccmとした。第2のエッチングガスの導入を開始して1~5分が経過した後、第2のエッチングガスの導入を停止した。
【0098】
第1のエッチング工程と第2のエッチング工程を1~8サイクル繰り返した。
【0099】
(比較例3)
まず、実施例1と同様の条件で前処理工程を行った。
【0100】
前処理工程が終了した後、再び10Pa未満まで真空置換した。その後、第2のβ-ジケトン供給部140からヘキサフルオロアセチルアセトン(HFAc)と、添加ガス供給部150からNOガスと、不活性ガス供給部160からNガスを所定の流量で配管121に供給することで、エッチングガスを処理容器110内に導入しながら、処理容器110内部の圧力を100Torrに制御し、エッチング工程を行った。被処理体の温度は300℃とし、エッチングガスの流量は、HFAc/NO/N=50/1/49sccmとした。エッチングガスの導入を開始して2~60分が経過した後、エッチングガスの導入を停止した。
【0101】
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例3において、処理容器110内部を真空開放後、被処理体10を取り出して重さを測定した。試験前後の被処理体10の重量変化とコバルト膜、鉄膜又はハフニウム膜の密度から体積を計算し、その体積をコバルト膜、鉄膜又はハフニウム膜の面積で割ることによりエッチング量を算出した。
【0102】
また、実施例1~実施例4及び比較例1~比較例3において、エッチング後のコバルト膜、鉄膜又はハフニウム膜の表面の凹凸をAFM(SHIMADZU社製、モデルSPM-9700)で測定した。AFMによる測定値の二乗平均平方根粗さ(RMS)を求め、表面荒れの指標とした。
【0103】
実施例1~実施例4及び比較例1~比較例3におけるエッチング条件を表1に示す。さらに、エッチング量に対するRMSの傾きを求めた結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
図4は、実施例1及び比較例1におけるエッチング量とRMSの関係を示すグラフである。
図4からエッチング量に対するRMSの傾きを求めると、比較例1では0.095であるのに対し、実施例1では0.063まで低下している。図4の結果から、実施例1では、エッチング後の表面荒れが抑制されていることが確認できる。
【0106】
図5は、実施例1及び実施例2におけるエッチング量とRMSの関係を示すグラフである。
図5からエッチング量に対するRMSの傾きを求めると、エッチング温度が200℃である実施例1では0.063であり、エッチング温度が150℃である実施例2では0.058である。図5の結果から、温度依存性はほとんどないことが確認できる。エッチング温度の低下とともに、第1のエッチング工程及び第2のエッチング工程のいずれにおいてもエッチング速度が低下するため、エッチング速度の差も維持されていると考えられる。
【0107】
表1に示すように、被エッチング膜が鉄膜である場合、比較例2では0.102であるのに対し、実施例3では0.082まで低下している。同様に、被エッチング膜がハフニウム膜である場合、比較例3では0.113であるのに対し、実施例4では0.076まで低下している。これらの結果から、実施例3及び実施例4においても、エッチング後の表面荒れが抑制されていることが確認できる。
【0108】
以上の結果から、上述した推定メカニズムによってエッチングが進行していると考えられる。
【0109】
本願は、2019年3月1日に出願された日本国特許出願2019-037591号を基礎として、パリ条約ないし移行する国における法規に基づく優先権を主張するものである。該出願の内容は、その全体が本願中に参照として組み込まれている。
【符号の説明】
【0110】
10 被処理体
100 エッチング装置
110 処理容器
111 載置部
130 第1のβ-ジケトン供給部
131、132、133、134、135、136 配管
137 第1のβ-ジケトン容器
140 第2のβ-ジケトン供給部
141、142 配管
150 添加ガス供給部
151、152 配管
160 不活性ガス供給部
161、162 配管
170 還元性ガス供給部
171、172 配管
180 加熱手段
181、182 配管
183 真空ポンプ
184 液体窒素トラップ
MFC1、MFC2、MFC3、MFC4、MFC5 流量調整手段
PI1、PI2 圧力計
V1、V2、V3、V4、V5、V6、V7、V8、V9、V10、V11、V12、V13、V14、V15 バルブ
図1
図2
図3
図4
図5