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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】半導体集積回路装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/82 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
H01L21/82 B
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022510364
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014206
(87)【国際公開番号】W WO2021192265
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日野 寿雄
【審査官】西村 治郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-049477(JP,A)
【文献】特開2008-311570(JP,A)
【文献】特開2015-075973(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0108304(US,A1)
【文献】特開平06-029392(JP,A)
【文献】特開2019-079950(JP,A)
【文献】特開2004-289030(JP,A)
【文献】特開2010-039817(JP,A)
【文献】特開2014-067811(JP,A)
【文献】特開2009-049370(JP,A)
【文献】特開2014-103254(JP,A)
【文献】特開2008-130788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路装置であって、
クロック信号を伝搬するスタンダードセルであって、入力端子および出力端子を有するクロックバッファセルを備え、
前記出力端子を含む第1金属配線は、前記入力端子を含む第2金属配線よりも、上層にあり、かつ、配線幅が大きい
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
論理機能を実現する第2スタンダードセルを備え、
前記第1および第2金属配線は、前記第2スタンダードセルの入出力端子よりも、上層にある
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体集積回路装置において、
前記クロックバッファセルは、
前記入力端子に電気的に接続された入力ノード、および、前記出力端子に電気的に接続された出力ノードをそれぞれ有しており、第2方向に並べて配置された複数のバッファ部を備え、
前記入力ノードおよび前記出力ノードは、第1金属配線層に形成されており、
前記出力端子は、前記第1金属配線層よりも上層の第2金属配線層に形成されており、かつ、平面視で、前記複数のバッファ部が2N個(Nは正の整数)の場合は、前記第2方向における一方の側からN番目のバッファ部と(N+1)番目のバッファ部との間にあり、前記複数のバッファ部が(2N+1)個の場合は、前記第2方向における一方の側からN番目のバッファ部と重なる位置にある
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項4】
半導体集積回路装置であって、
第1金属配線層において第1方向に延びており、第1電源を供給する第1電源配線と、
前記第1電源配線と接続されており、論理機能を実現する第1スタンダードセルと、
前記第1電源配線と接続されており、クロック信号を伝搬するスタンダードセルであるクロックバッファセルとを備え、
前記クロックバッファセルは、
前記第1金属配線層よりも上層の第2金属配線層に形成されており、前記第1電源配線と電気的に接続された第2電源配線を備え、
前記第2電源配線は、前記第1電源配線よりも、配線幅が大きい
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項5】
請求項4記載の半導体集積回路装置において、
前記第2金属配線層は、前記第1金属配線層よりも、膜厚が大きい
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項6】
請求項4記載の半導体集積回路装置において、
前記第2電源配線は、前記第1方向に延びている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項7】
請求項4記載の半導体集積回路装置において、
前記第1電源配線を、複数、備え、
前記第1金属配線層において前記第1方向に延びており、第2電源を供給するものであり、前記第1方向と垂直をなす第2方向において前記複数の第1電源配線と交互に配置されている、複数の第3電源配線を備え、
前記クロックバッファセルは、前記複数の第1電源配線および前記複数の第3電源配線が配置された領域に形成されており、前記第2方向において隣り合う前記第1および第3電源配線の間の領域であるハイト領域を、複数個含む
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項8】
請求項7記載の半導体集積回路装置において、
前記第1金属配線層よりも上層でかつ前記第2金属配線層よりも下層である第3金属配線層に形成されており、前記第2方向に延びており、前記第1電源を供給する第4電源配線を備え、
前記第4電源配線は、前記複数の第1電源配線と電気的に接続されている
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項9】
半導体集積回路装置であって、
第1方向に延びており、第1電源を供給する複数の第1電源配線と、
前記第1方向に延びており、第2電源を供給するものであり、前記第1方向と垂直をなす第2方向において前記複数の第1電源配線と交互に配置されている、複数の第2電源配線と、
クロック信号を伝搬するスタンダードセルであって、前記複数の第1電源配線および前記複数の第2電源配線が配置された領域に形成されており、入力端子および出力端子を有するクロックバッファセルとを備え、
前記クロックバッファセルは、
前記入力端子に電気的に接続された入力ノード、および、前記出力端子に電気的に接続された出力ノードをそれぞれ有しており、前記第2方向に並べて配置された複数のバッファ部を備え、
前記入力ノードおよび前記出力ノードは、第1金属配線層に形成されており、
前記出力端子は、前記第1金属配線層よりも上層の第2金属配線層に形成されており、かつ、平面視で、前記複数のバッファ部が2N個(Nは正の整数)の場合は、前記第2方向における一方の側からN番目のバッファ部と(N+1)番目のバッファ部との間にあり、前記複数のバッファ部が(2N+1)個の場合は、前記第2方向における一方の側からN番目のバッファ部と重なる位置にある
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項10】
請求項9記載の半導体集積回路装置において、
前記出力ノードは、前記第1金属配線層において、前記複数のバッファ部毎に、分離しており、
前記第1金属配線層よりも上層でかつ前記第2金属配線層よりも下層である第3金属配線層に形成されており、前記複数のバッファ部の前記出力ノードと電気的に接続された単一の信号配線を備える
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項11】
請求項9記載の半導体集積回路装置において、
前記複数のバッファ部は、それぞれ、前記第2方向において隣り合う前記第1および第2電源配線の間の領域であるハイト領域を、複数個含む
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項12】
請求項9記載の半導体集積回路装置において、
前記入力端子は、前記第1金属配線層よりも上層の第4金属配線層に形成されており、かつ、平面視で、前記複数のバッファ部が2N個の場合は、前記第2方向における一方の側からN番目のバッファ部と(N+1)番目のバッファ部との間にあり、前記複数のバッファ部が(2N+1)個の場合は、前記第2方向における一方の側からN番目のバッファ部と重なる位置にある
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【請求項13】
請求項9記載の半導体集積回路装置において、
前記出力端子を含む第1金属配線は、前記入力端子を含む第2金属配線よりも、上層にあり、かつ、配線幅が大きい
ことを特徴とする半導体集積回路装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロックバッファセルを備えた半導体集積回路装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの微細化により、回路の高速化とともに、消費電力の増大が進んでいる。回路の高速化に対応するためには、フリップフロップ等に供給されるクロック信号を、クロックスキューを抑えて伝送することが重要となる。クロックスキューを抑えるためには、クロック信号を伝達するクロックバッファの駆動能力を大きくすることが行われる。一方、クロックバッファの駆動能力が大きくなると、クロックバッファの電源に大きな電流が流れるとともに、クロックバッファの入出力端子にも大きな電流が流れる。このため、電源電圧降下(IR-Drop)の問題やエレクトロマイグレーション(EM:ElectroMigration)の問題が顕在化する。
【0003】
また、半導体基板上に半導体集積回路を形成する方法として、スタンダードセル方式が知られている。スタンダードセル方式とは、特定の論理機能を有する基本的単位(例えば、インバータ,ラッチ,フリップフロップ,全加算器など)をスタンダードセルとして予め用意しておき、半導体基板上に複数のスタンダードセルを配置して、それらのスタンダードセルを配線で接続することによって、LSIチップを設計する方式のことである。
【0004】
特許文献1では、クロックバッファ用のスタンダードセルと、それ以外のスタンダードセルとで、電源配線の配線層を異ならせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-345881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の技術では、電源電圧降下を抑制することはできるものの、電源配線の構成が複雑になるため、半導体集積回路の設計に工数がかかってしまうという問題がある。また、特許文献1の技術では、クロックバッファの入出力端子におけるエレクトロマイグレーションの問題については解決されていない。
【0007】
本開示は、クロックバッファセルを備えた半導体集積回路装置において、電源配線の構成を複雑にすることなく、電源電圧降下やエレクトロマイグレーションの問題を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1態様では、半導体集積回路装置は、クロック信号を伝搬するスタンダードセルであって、入力端子および出力端子を有するクロックバッファセルを備え、前記出力端子を含む第1金属配線は、前記入力端子を含む第2金属配線よりも、上層にあり、かつ、配線幅が大きい。
【0009】
この態様によると、クロックバッファセルについて、出力端子を含む第1金属配線は、入力端子を含む第2金属配線よりも、上層にあり、かつ、配線幅が大きい。ここで、クロックバッファでは、出力端子は、入力端子よりも負荷容量が大きく、このため入力端子よりも大きな電流が流れる。したがって、出力端子の方がエレクトロマイグレーションの問題が生じやすい。そこで、出力端子を入力端子よりも上層に設けることによって、接続される配線における配線層の乗り換え数が少なくなるので、エレクトロマイグレーションの問題が発生し得る配線を減らすことができる。また、出力端子の配線幅を入力端子よりも大きくすることによって、出力端子におけるエレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。
【0010】
本開示の第2態様では、半導体集積回路装置は、第1金属配線層において第1方向に延びており、第1電源を供給する第1電源配線と、前記第1電源配線と接続されており、論理機能を実現する第1スタンダードセルと、前記第1電源配線と接続されており、クロック信号を伝搬するスタンダードセルであるクロックバッファセルとを備え、前記クロックバッファセルは、前記第1金属配線層よりも上層の第2金属配線層に形成されており、前記第1電源配線と電気的に接続された第2電源配線を備え、前記第2電源配線は、前記第1電源配線よりも、配線幅が大きい。
【0011】
この態様によると、クロックバッファセルは、第1スタンダードセルと同様に、第1金属配線層の第1電源配線から電源供給を受ける。クロックバッファセルは、加えて、第1金属配線層よりも上層の第2金属配線層に形成された第2電源配線からも、電源供給を受ける。そして、第2電源配線は、第1電源配線よりも配線幅が大きい。このため、クロックバッファセルに大きな電流が流れる場合であっても、その電流は主として抵抗値が低い第2電源配線から供給される。このため、電源電圧降下が小さく抑制されるとともに、第1スタンダードセルの電源への影響を小さく抑えることができる。
【0012】
本開示の第3態様では、半導体集積回路装置は、第1方向に延びており、第1電源を供給する複数の第1電源配線と、前記第1方向に延びており、第2電源を供給するものであり、前記第1方向と垂直をなす第2方向において前記複数の第1電源配線と交互に配置されている、複数の第2電源配線と、クロック信号を伝搬するスタンダードセルであって、前記複数の第1電源配線および前記複数の第2電源配線が配置された領域に形成されており、入力端子および出力端子を有するクロックバッファセルとを備え、前記クロックバッファセルは、前記入力端子に電気的に接続された入力ノード、および、前記出力端子に電気的に接続された出力ノードをそれぞれ有しており、前記第2方向に並べて配置された複数のバッファ部を備え、前記入力ノードおよび前記出力ノードは、第1金属配線層に形成されており、前記出力端子は、前記第1金属配線層よりも上層の第2金属配線層に形成されており、かつ、平面視で、前記複数のバッファ部が2N個(Nは正の整数)の場合は、前記第2方向における一方の側からN番目のバッファ部と(N+1)番目のバッファ部との間にあり、前記複数のバッファ部が(2N+1)個の場合は、前記第2方向における一方の側からN番目のバッファ部と重なる位置にある。
【0013】
この態様によると、クロックバッファセルは、第1電源を供給する第1電源配線と第2電源を供給する第2電源配線とが交互に配置された領域に、形成されている。クロックバッファセルは、第1および第2電源配線が延びる方向である第1方向と垂直をなす第2方向に並べて配置された、複数のバッファ部を備える。各バッファ部は、クロックバッファセルの入力端子と電気的に接続された入力ノード、および、クロックバッファセルの出力端子と電気的に接続された出力ノードを備える。クロックバッファセルの出力端子は、各バッファ部の入力ノードおよび出力ノードが形成された第1金属配線層よりも上層の第2金属配線層に形成されており、かつ、平面視で、バッファ部が2N個の場合はN番目と(N+1)番目のバッファ部の間に、バッファ部が(2N+1)個の場合はN番目のバッファ部と重なる位置にある。すなわち、クロックバッファセルの出力端子は、第2方向において、複数のバッファ部の中央部付近に位置している。これにより、各バッファ部から出力端子に流れる電流は、第2方向における両側からほぼ均等に流れることになり、一方の側からの電流が大きくなることはない。したがって、エレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によると、クロックバッファセルを備えた半導体集積回路装置において、電源配線の構成を複雑にすることなく、電源電圧降下やエレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る半導体集積回路装置におけるブロックレイアウトの例
図2】クロックバッファセルを含むクロックツリーの回路図
図3】クロックバッファセルのレイアウトの一例
図4図3のクロックバッファセルにおけるバッファ部のレイアウト
図5図4のバッファ部の下層部分のレイアウト
図6図4のバッファ部の上層部分のレイアウト
図7】通常のスタンダードセルのレイアウトの例
図8図3のクロックバッファセルの上層配線のレイアウト
図9】クロックバッファセルのレイアウトの他の例
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、「VDD」「VSS」は、電源自体、および、その電源が与える電源電圧の両方を表す符号として用いる。また、トランジスタのドレインおよびソースについて、適宜、「ノード」と総称する。また、スタンダードセルのことを、適宜、単に「セル」と略して記載する。
【0017】
また、以下の説明では、半導体集積回路装置は、フィン型トランジスタを備えるものとしているが、本開示に係る半導体集積回路装置が備えるトランジスタの構造は、フィン型に限られるものではない。
【0018】
図1は本実施形態に係る半導体集積回路装置におけるブロックレイアウトの例である。図1において、X方向(第1方向に相当する)において並列に延びている太線は、電源配線PLを示している。電源配線PLは、VDDを供給する電源配線と、VSSを供給する電源配線とが、Y方向(第2方向に相当する)において交互に配置されている。本開示では、Y方向において隣り合う電源配線PL同士の間の領域を、ハイト領域という。Hはハイト領域の高さである。ハイト領域には、スタンダードセルCが配置されている。図1では、スタンダードセルCは、矩形枠によって簡略して表している。図1に示すほとんどのスタンダードセルCは、セル高さがHに等しいシングルハイトセルである。
【0019】
図1のブロックレイアウトでは、通常のスタンダードセルC以外に、2個のクロックバッファセル1,2が配置されている。クロックバッファセル1,2は、セル高さがHの複数倍であるマルチハイトセルである。図1では、クロックバッファセル1,2は、通常のスタンダードセルCの22倍の高さを有している。また、クロックバッファセル1の近傍には、通常のスタンダードセルの一例である2入力NANDセル3が配置されている。
【0020】
図2はクロックバッファセル1,2を含むクロックツリーの回路図である。図2に示すように、クロックバッファセル1,2は、前段のクロックバッファセルから出力された共通のクロック信号を入力端子1a,2aにそれぞれ受ける。そして、クロックバッファセル1は、バッファ後のクロック信号を出力端子1bから出力し、クロックバッファセル2は、バッファ後のクロック信号を出力端子2bから出力する。
【0021】
図1において、Y方向に延びるM13配線4は、前段のクロックバッファセルの出力線に相当する。M13配線4は、X方向に延びるM12配線5を介して、クロックバッファセル1の入力端子1aに接続されている。また、M13配線4は、X方向に延びるM12配線6を介して、クロックバッファセル2の入力端子2aに接続されている。クロックバッファセル1の出力端子1bは、X方向に延びるM14配線7を介して、Y方向に延びるM15配線9に接続されている。クロックバッファセル2の出力端子2bは、X方向に延びるM14配線8に接続されている。
【0022】
図3はクロックバッファセル2のレイアウトの一例を示す概要図である。図4図3のクロックバッファセルにおけるバッファ部のレイアウト、図5図4のバッファ部の下層部分のレイアウト、図6図4のバッファ部の上層部分のレイアウトである。
【0023】
本実施形態では、クロックバッファセルおよび他のセルを構成するトランジスタは、フィン型トランジスタとする。ただし、図3のレイアウトでは、図の見やすさのために、フィン型トランジスタに関して、フィンおよびローカル配線については図示を省略しており、ゲート31のみを図示している。CLはセル枠である。
【0024】
図3のレイアウトでは、M0配線層において、X方向に延びており、VDDを供給する電源配線11と、X方向に延びており、VSSを供給する電源配線12とが、Y方向において交互に配置されている。そして、4個のバッファ部21,22,23,24が、Y方向に並べて配置されている。各バッファ部21,22,23,24の高さは3Hであり、バッファ部21,22,23,24同士の間隔は2Hである。各バッファ部21,22,23,24の周囲には、デカップリング容量部が構成されている。デカップリング容量部は、VDD-VSS間に容量を構成しており、電源電圧降下を抑制する。
【0025】
また、M1配線層において、Y方向に延びており、VDDを供給する電源配線13a,13b,13cと、Y方向に延びており、VSSを供給する電源配線14a,14b,14cとが、X方向において交互に配置されている。電源配線13a,13b,13c,14a,14b,14cは、4個のバッファ部21,22,23,24にわたって形成されている。
【0026】
図4図6を参照して、バッファ部のレイアウトについて説明する。なお、図4図6はバッファ部22を例にとって示しているが、他のバッファ部21,23,24も同様のレイアウトを有している。バッファ部22は、回路としては、インバータ22a,22bが直列接続された構成になっている。
【0027】
バッファ部22では、VDDを供給する電源配線11a,11bと、VSSを供給する電源配線12a,12bとが、Y方向において交互に配置されている。電源配線12aと電源配線11aとの間のハイト領域HR1に、図面上から順に、N型トランジスタとP型トランジスタとが配置されている。電源配線11aと電源配線12bとの間のハイト領域HR2に、図面上から順に、P型トランジスタとN型トランジスタとが配置されている。電源配線12bと電源配線11bとの間のハイト領域HR3に、図面上から順に、N型トランジスタとP型トランジスタとが配置されている。各トランジスタは、フィン型トランジスタであり、トランジスタのチャネル領域およびノードとなるフィン32が、3列ずつ、配置されている。各トランジスタのノードには、ローカル配線33が接続されている。
【0028】
各ハイト領域HR1,HR2,HR3において、Y方向に並ぶN型トランジスタおよびP型トランジスタは、共通のゲート配線31を有している。各N型トランジスタは、一方のノードが、ローカル配線33を介して、VSSを供給する電源配線12a,12bに接続されている。各P型トランジスタは、一方のノードが、ローカル配線33を介して、VDDを供給する電源配線11a,11bに接続されている。
【0029】
図面左側から3列のトランジスタが、前段のインバータ22aを構成している。残りの列すなわち図面右側から8列のトランジスタが、後段のインバータ22bを構成している。
【0030】
各ハイト領域HR1,HR2,HR3には、M0配線層において、X方向に延びる信号配線が形成されている。また、M1配線層において、Y方向に延びる信号配線が形成されている。これらの信号配線について、図6を参照して、ハイト領域HR2を例にとって説明する。
【0031】
信号配線41は、前段のインバータ22aを構成する図面左側から3列のトランジスタのゲート配線31と、コンタクトを介して接続されている。信号配線42aは、前段のインバータ22aを構成するP型トランジスタの他方のノード(VDDと接続されていない方のノード)と、コンタクトを介して接続されている。信号配線42bは、前段のインバータ22aを構成するN型トランジスタの他方のノード(VSSと接続されていない方のノード)と、コンタクトを介して接続されている。
【0032】
信号配線43は、後段のインバータ22bを構成する図面右側から8列のトランジスタのゲート配線31と、コンタクトを介して接続されている。信号配線44aは、後段のインバータ22bを構成するP型トランジスタの他方のノード(VDDと接続されていない方のノード)と、コンタクトを介して接続されている。信号配線44bは、後段のインバータ22bを構成するN型トランジスタの他方のノード(VSSと接続されていない方のノード)と、コンタクトを介して接続されている。
【0033】
M1配線層において、信号配線15は、電源配線13a,14aの間に配置されており、M0配線層の信号配線41と接続されている。すなわち、信号配線15は、前段のインバータ22aを構成するトランジスタのゲート配線31と、電気的に接続されている。信号配線15は、バッファ部22の入力ノードに相当する。
【0034】
信号配線16aは、電源配線13b,14bの間に配置されており、信号配線16bは電源配線13b,14cの間に配置されており、信号配線16cは、電源配線14c,13cの間に配置されている。信号配線16a,16b,16cは、M0配線層の信号配線44a,44bと接続されている。すなわち、信号配線16a,16b,16cは、後段のインバータ22bを構成するP型トランジスタの他方のノード、および、後段のインバータ22bを構成するN型トランジスタの他方のノードと、電気的に接続されている。信号配線16a,16b,16cは、バッファ部22の出力ノードに相当する。
【0035】
信号配線17は、電源配線13a,14bの間に配置されており、M0配線層の信号配線42a,42b,43と接続されている。すなわち、信号配線17は、前段のインバータ22aを構成するP型トランジスタの他方のノード、前段のインバータ22aを構成するN型トランジスタの他方のノード、および、後段のインバータ22bを構成するトランジスタのゲート配線31と、電気的に接続されている。信号配線17は、前段のインバータ22aと後段のインバータ22bとの間の接続ノードに相当する。
【0036】
図7は通常のスタンダードセルのレイアウトの例である。図7では、図1における2入力NANDセル3のレイアウトを示している。図7に示すように、VDDを供給する電源配線11aと、VSSを供給する電源配線11bとの間に、フィン型トランジスタが形成されている。M1配線層では、Y方向に延びる信号配線51,52,53が形成されている。信号配線51は入力Aに対応しており、信号配線52は入力Bに対応しており、信号配線53は出力YBに対応している。
【0037】
図8図3のクロックバッファセルの上層配線のレイアウト例である。同図中、(a)はM10配線層、(b)はM11配線層、(c)はM13配線層である。M10,M11,M13配線層は、M0,M1配線層より膜厚が大きい。例えば、M10,M11,M13配線層の膜厚は、M0,M1配線層の4-5倍程度である。
【0038】
図8(a)に示すように、M10配線層において、X方向に並列に延びる電源配線61,62,63,64,65が形成されている。電源配線61,63,65はVDDを供給し、電源配線62,64はVSSを供給する。電源配線61~65は、M0配線層における電源配線11,12よりも配線幅が大きい。電源配線61~65は、同層またはそれより上層に形成されるブロック間電源幹線と接続される。
【0039】
電源配線61,63,65は、M1配線層の電源配線13a,13b,13cと、M2~M9配線層に形成された例えばスタックビア構造によって、電気的に接続される。電源配線62,64は、M1配線層の電源配線14a,14b,14cと、M2~M9配線層に形成された例えばスタックビア構造によって、電気的に接続される。なお、M10配線層の電源配線とM1配線層の電源配線とを接続する構成は、スタックビア構造に限られるものではない。例えば、1層毎に配線方向を変えたメッシュ状の電源配線を、構成してもかまわない。
【0040】
また、M10配線層には、入力用の信号配線71,72,73,74、および、出力用の信号配線81,82,83,84が、形成されている。信号配線71,72,73,74は、各バッファ部21,22,23,24の入力ノードとなるM1配線層の信号配線15と、M2~M9配線層を介して、それぞれ接続される。信号配線81,82,83,84は、各バッファ部21,22,23,24の出力ノードとなるM1配線層の信号配線16a,16b,16cと、M2~M9配線層を介して、それぞれ接続される。M10配線層の信号配線とM1配線層の信号配線とは、例えばスタックビア構造によって接続される。
【0041】
図8(b)に示すように、M11配線層には、入力端子を含む信号配線75と、出力用の信号配線85とが、形成されている。信号配線75はY方向に延びており、M10配線層の信号配線71,72,73,74と接続されている。信号配線85はY方向に延びており、M10配線層の信号配線81,82,83,84と接続されている。図8(c)に示すように、M13配線層には、出力端子を含む信号配線86が形成されている。信号配線86はY方向に延びており、M11配線層の信号配線85と、M12配線層の配線を介して接続されている。M11配線層の信号配線75が、図1における配線2aに相当する。M13配線層の信号配線86が、図1における配線2bに相当する。
【0042】
信号配線86において、出力端子(+OUT)は、Y方向における中央部に位置している。信号配線75において、入力端子(+IN)は、Y方向における中央部に位置している。平面視で見ると、出力端子(+OUT)および入力端子(+IN)は、バッファ部22とバッファ部23との間に位置している。また、出力端子を含む信号配線86は、入力端子を含む信号配線75よりも配線幅(X方向におけるサイズ)が大きい。
【0043】
<本実施形態の作用効果>
本実施形態では、クロックバッファセル1,2は、2入力NANDセル3のような通常のセルと同様に、M0配線層の電源配線11,12を備える。このため、半導体集積回路装置の設計において、通常のセルと同様にクロックバッファセルを配置することによって、M0配線層の電源配線が互いに接続されるので、設計が容易である。
【0044】
また、クロックバッファセル1,2は、マルチハイトセルであり、VDD用の電源配線11とVSS用の電源配線12をそれぞれ複数本備えている。このため、電流を複数の電源配線に分散させることができるので、電源電圧降下を抑制することができる。
【0045】
また、クロックバッファセル1,2は、M1配線層に形成されたY方向に延びる電源配線13a,13b,13c,14a,14b,14cを備えており、この電源配線13a,13b,13c,14a,14b,14cがM10配線層の電源配線61,62,63,64,65と接続されている。このため、上層の電源幹線との接続を低抵抗で行うことができるので、電源電圧降下を抑制することができる。
【0046】
また、各バッファ部21~24に形成された入力ノードとなる信号配線15は、バッファ部21~24同士の間では接続されておらず、互いに分離されている。同様に、各バッファ部21~24に形成された出力ノードとなる信号配線16a,16b,16cも、バッファ部21~24同士の間では接続されておらず、互いに分離されている。これにより、エレクトロマイグレーションの問題の発生が抑制されている。すなわち、仮に、信号配線15がバッファ部21~24同士の間で接続されていると、この細くて長い配線に大電流が流れてしまい、特に、Y方向における中央部において大電流が流れてしまう。これにより、エレクトロマイグレーションの問題が発生する可能性が高まる。これに対して、信号配線15をバッファ部21~24同士の間で分離することによって、エレクトロマイグレーションの問題が抑制されている。信号配線16a,16b,16cについても、バッファ部21~24同士の間で分離することによって、エレクトロマイグレーションの問題が抑制されている。
【0047】
また、クロックバッファセル1,2は、通常のセルと同様に、M0配線層の電源配線11,12から電源供給を受けるとともに、M10配線層の電源配線61~65からも電源供給を受ける。M10配線層は、M0配線層と比べて膜厚が大きく、また、電源配線61~65は、電源配線11,12と比べて配線幅が大きい。このため、M10配線層の電源配線61~65は、M0配線層の電源配線11,12と比べて、抵抗値が格段に低い。したがって、クロックバッファセル1,2に大きな電流が流れる場合であっても、その電流は主として、より抵抗値が低いM10配線の電源配線61~65から供給される。これにより、電源電圧降下が抑制されるとともに、周囲の通常のセルの電源への影響も小さく抑えることができる。
【0048】
また、クロックバッファセル1,2では、出力端子を含む配線86の配線幅は、入力端子を含む配線75の配線幅よりも大きい。ここで、出力端子の負荷容量は、出力端子に接続される配線による大きな配線負荷容量と、次段のクロックバッファセルの入力負荷容量とを含む。一方、入力端子の負荷容量は、当該クロックバッファセルの入力負荷容量のみである。このため、流れる電流は、出力端子の方が入力端子よりも大きい。したがって、出力端子を含む配線86の配線幅を大きくすることによって、出力端子におけるエレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。
【0049】
また、クロックバッファセル1,2では、入力端子(+IN)および出力端子(+OUT)が、Y方向における中央部に位置している。これにより、エレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。例えば、出力端子には、電流は4個のバッファ部21~24からそれぞれ流れてくる。1個のバッファ部から流れてくる電流をIbufとすると、出力端子には4Ibufの電流が流れてくることになる。この場合、本実施形態のように、出力端子が平面視でバッファ部22とバッファ部23との間に位置していると、出力端子には、図面上側から2Ibufの電流が流れ、図面下側から2Ibufの電流が流れるだけである。これに対して、例えば出力端子を配線86の図面上端に設けたとすると、出力端子には図面下側から4Ibufの電流が流れてきてしまう。このため、エレクトロマイグレーションの問題が発生しやすくなる。すなわち、本実施形態のように、出力端子をY方向における中央部に位置することによって、エレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。入力端子に関しても、同様に、Y方向における中央部に位置することによって、エレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。
【0050】
また、クロックバッファセル1,2では、出力端子は入力端子よりも上層の配線層にある。まず、入力端子と出力端子の配線層を別にすることによって、入力端子および出力端子それぞれに対する配線が容易になる。例えば図1に示すように、M11配線層の入力端子1aは、M12配線層の配線5を介してM13配線層の配線4と接続されている。これにより、出力端子1b周辺におけるM13配線層における配線混雑が回避されている。また、上述したとおり、出力端子は流れる電流が大きく、エレクトロマイグレーションの問題がより発生しやすい。そこで、出力端子をより上層に配置し、外部との接続配線をより少ない配線層によって実現できるようにすることによって、エレクトロマイグレーションの問題が発生しうる配線を少なく抑えることができる。
【0051】
以上のように本実施形態によると、クロックバッファセル1,2について、出力端子を含む金属配線1b,2b,86は、入力端子を含む金属配線1a,2a,75よりも、上層にあり、かつ、配線幅が大きい。クロックバッファでは、出力端子は入力端子よりも負荷容量が大きく、入力端子よりも大きな電流が流れるため、出力端子の方がエレクトロマイグレーションの問題が生じやすい。そこで、出力端子を入力端子よりも上層に設けることによって、接続される配線における配線層の乗り換え数が少なくなるので、エレクトロマイグレーションの問題が発生し得る配線を減らすことができる。また、出力端子の配線幅を入力端子よりも大きくすることによって、出力端子におけるエレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。
【0052】
また、クロックバッファセル1,2は、他のスタンダードセル3と同様に、M0配線層の電源配線11,11aから電源供給を受ける。クロックバッファセル1,2は、加えて、M10配線層の電源配線61,63,65からも電源供給を受ける。そして、電源配線61,63,65は、電源配線11aよりも配線幅が大きい。このため、クロックバッファセル1,2に大きな電流が流れる場合であっても、その電流は主として抵抗値が低い電源配線61,63,65から供給される。このため、電源電圧降下が小さく抑制されるとともに、スタンダードセル3の電源への影響を小さく抑えることができる。
【0053】
また、クロックバッファセル1,2は、VDDを供給する電源配線11とVSSを供給する電源配線12とが交互に配置された領域に、形成されている。クロックバッファセル1,2は、電源配線11が延びるX方向と垂直をなすY方向に並べて配置された、複数のバッファ部21,22,23,24を備える。各バッファ部21~24は、クロックバッファセル1,2の入力端子と電気的に接続された入力ノード15、および、クロックバッファセル1,2の出力端子と電気的に接続された出力ノード16a,16b,16cを備える。クロックバッファセル1,2の出力端子は、各バッファ部21~24の入力ノード15および出力ノード16a,16b,16cが形成されたM1配線層よりも上層のM13配線層に形成されており、かつ、平面視で、Y方向において、複数のバッファ部21~24の中央部付近に位置している。これにより、各バッファ部21~24から出力端子に流れる電流は、Y方向における両側からほぼ均等に流れることになり、一方の側からの電流が大きくなることはない。したがって、エレクトロマイグレーションの問題を抑制することができる。
【0054】
なお、上述の実施形態では、クロックバッファセル1,2は、通常のセルCの22倍の高さを有するマルチハイトセルであり、通常のセルCの3倍の高さを有する4個のバッファ部21~24を備えるものとした。ただし、クロックバッファセル1,2の構成はこれに限られるものではない。
【0055】
図9はクロックバッファセルのレイアウトの他の例である。図9のクロックバッファセル101は、通常のセルCの17倍の高さを有するマルチハイトセルであり、通常のセルCの3倍の高さを有する3個のバッファ部121~123を備える。図9の構成の場合には、クロックバッファセル101の入力端子および出力端子は、平面視で中央のバッファ部122と重なる位置に配置すればよい。これにより、上述の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0056】
すなわち、本実施形態におけるクロックバッファセルは、バッファ部の個数が偶数(2N:Nは正の整数)個の場合は、入力端子および出力端子は、平面視で、Y方向における一方の側からN番目のバッファ部と(N+1)番目のバッファ部との間に配置すればよい。また、バッファ部の個数が奇数(2N+1:Nは正の整数)個の場合は、入力端子および出力端子は、平面視で、Y方向における一方の側から(N+1)番目のバッファ部と重なる位置に配置すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示によると、クロックバッファセルを備えた半導体集積回路装置において、電源配線の構成を複雑にすることなく、電源電圧降下やエレクトロマイグレーションの問題を抑制できるので、例えば、LSIの性能向上に有用である。
【符号の説明】
【0058】
1,2 クロックバッファセル
1a,2a 入力端子を含む金属配線
1b,2b 出力端子を含む金属配線
11,12 電源配線(M0)
13a,13b,13c,14a,14b,14c 電源配線(M1)
15 入力ノード
16a,16b,16c 出力ノード
21,22,23,24 バッファ部
61,62,63,64,65 電源配線(M10)
75 入力端子を含む金属配線
85 信号配線
86 出力端子を含む金属配線
101 クロックバッファセル
121,122,123 バッファ部
C スタンダードセル
H セル高さ
PL 電源配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9