(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】正極用バインダー、電極合剤、電極及び二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240724BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20240724BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M10/054
(21)【出願番号】P 2023183756
(22)【出願日】2023-10-26
【審査請求日】2023-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2022173802
(32)【優先日】2022-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】小倉 あきほ
(72)【発明者】
【氏名】市瀬 佑磨
(72)【発明者】
【氏名】藤原 花英
(72)【発明者】
【氏名】寺田 純平
(72)【発明者】
【氏名】山崎 穣輝
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0190006(US,A1)
【文献】国際公開第2019/087652(WO,A1)
【文献】特開2016-139512(JP,A)
【文献】特開2017-182989(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0180021(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M10/054
C08F214/22、214/24、214/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニリデンフルオライド単位およびテトラフルオロエチレン単位を有する共重合体(A)を含むナトリウムイオン電池の正極用バインダーであり、ビニリデンフルオライド単位の含有量が共重合体(A)中の全単量体単位に対して
55~99.5モル%であることを特徴とするナトリウムイオン電池の正極用バインダー。
【請求項2】
上記ビニリデンフルオライド単位の含有量が全単量体単位に対して、70~99.5モル%である請求項1記載のナトリウムイオン電池の正極用バインダー。
【請求項3】
上記共重合体(A)が、更に、ヘキサフルオロ
プロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、一般式(1)で表される単量体、一般式(2)で表される単量体、および一般式(3)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1つの単量体に由来する構成単位を有する、請求項1又は2記載のナトリウムイオン電池の正極用バインダー。
【化1】
(式中、Rf
1は、炭素数1~12の直鎖又は分岐したフッ素化アルキル基またはフッ素化アルコキシ基であり、フッ素化アルキル基およびフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。)
【化2】
(式中、Rf
2は、炭素数1~12の直鎖又は分岐したフッ素化アルキル基またはフッ素化アルコキシ基であり、フッ素化アルキル基およびフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。)
【化3】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンを表す。)
【請求項4】
更に、上記共重合体(A)以外の含フッ素ポリマーを1種以上含む、請求項1又は2記載のナトリウムイオン電池の正極用バインダー。
【請求項5】
前記含フッ素ポリマーが、VdF単位のみからなる含フッ素ポリマー(PVdF)、またはVdF単位およびVdF以外の他の単量体単位を含有する含フッ素ポリマー(B)である請求項4記載のナトリウムイオン電池の正極用バインダー。
【請求項6】
前記含フッ素ポリマーが、VdF単位のみからなる含フッ素ポリマー(PVdF)である請求項4記載のナトリウムイオン電池の正極用バインダー。
【請求項7】
前記共重合体(A)と含フッ素ポリマーとの比率(質量比)が、1:15~9:7である請求項4記載のナトリウムイオン電池の正極用バインダー。
【請求項8】
電極活物質がナトリウム複合酸化物を含有し、請求項1又は2に記載のナトリウムイオン電池の正極用バインダーを含む電極合剤。
【請求項9】
集電体と、集電体の片面または両面に設けられた、請求項8に記載の電極合剤から形成される電極材料層を備える電極。
【請求項10】
請求項9に記載の電極を備えるナトリウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極用バインダー、電極合剤、電極及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気製品の軽量化、小型化にともない、二次電池等の電気化学デバイスの需要が急速に増してきた。さらに電気製品が高性能化し、これまでなかった機能が付与されることで、より長時間、過酷な条件での使用に耐えうる電気化学デバイスへのニーズが高まってきている。
【0003】
また、電荷担体にナトリウムイオンを用いるナトリウムイオン二次電池の研究が行われている。ナトリウムは、リチウムに比べて、豊富に存在し、また安価に入手できることから、低コストかつ大型化が可能な二次電池として注目されている。特許文献1及び2には、バインダーにフッ素化合物を用いたナトリウムイオン電池が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-79687号公報
【文献】特開2014-26818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ナトリウムイオン電池の正極における集電体と電極材料層との界面抵抗が低くなるバインダー、並びにそれを用いた電極合剤、電極及び二次電池を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、ビニリデンフルオライド単位およびテトラフルオロエチレン単位を有する共重合体(A)を含むナトリウムイオン電池の正極用バインダーであり、ビニリデンフルオライド単位の含有量が共重合体(A)中の全単量体単位に対して55~99.5モル%であることを特徴とするナトリウムイオン電池の正極用バインダーである。
【0007】
上記ビニリデンフルオライド単位の含有量が全単量体単位に対して、70~99.5モル%であることが好ましい。
上記共重合体(A)が、更に、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、下記一般式(1)で表される単量体、下記一般式(2)で表される単量体、および下記般式(3)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1つの単量体に由来する構成単位を有していてもよい。
【0008】
【化1】
(式中、Rf
1は、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐したフッ素化アルキル基またはフッ素化アルコキシ基であり、フッ素化アルキル基およびフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。)
【化2】
(式中、Rf
2は、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐したフッ素化アルキル基またはフッ素化アルコキシ基であり、フッ素化アルキル基およびフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。)
【化3】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子または炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンを表す。)
【0009】
上記正極用バインダーは、更に、上記共重合体(A)以外の含フッ素ポリマーを1種以上含んでいてもよい。
前記含フッ素ポリマーは、VdF単位のみからなる含フッ素ポリマー(PVdF)、またはVdF単位およびVdF以外の他の単量体単位を含有する含フッ素ポリマー(B)であることが好ましい。
また、前記含フッ素ポリマーは、VdF単位のみからなる含フッ素ポリマー(PVdF)であることが好ましい。
前記共重合体(A)と含フッ素ポリマーとの比率(質量比)が、1:15~9:7であることが好ましい。
【0010】
本開示は、電極活物質がナトリウム複合酸化物を含有し、上記ナトリウムイオン電池の正極用バインダーを含む電極合剤でもある。
本開示は、集電体と、集電体の片面または両面に設けられた、上記電極合剤から形成される電極材料層を備える電極でもある。
本開示は、上記電極を備えるナトリウムイオン二次電池でもある。
【発明の効果】
【0011】
本開示は、ナトリウムイオン電池の正極における集電体と電極材料層の界面抵抗が低くなるバインダーを提供するものである。また、本開示のバインダーを使用した電極及び二次電池は、正極における集電体と電極材料層の界面抵抗が低減される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示は、ナトリウムイオン電池の正極形成に使用されるバインダーである。
近年、ナトリウムイオン電池(SIB)の開発が進んでいる。ナトリウムイオンはリチウムイオンよりイオン半径が大きいために、SIBではリチウムイオン電池(LIB)よりも充放電による正極活物質中での層間距離の伸縮や構造の変化が激しくなる。電極材料層中(集電箔との界面除く)ではバインダーによって収縮にかかわらず導電パスを維持することができるが、集電体との界面では活物質と集電体との間にバインダーが存在しないため導電パスを維持することが電極材料層中(集電体との界面除く)よりも困難である。そのためSIBにおいては電極作製時点でより低い界面抵抗が求められる。
【0013】
本発明者らは、LIBと異なり、より低い界面抵抗の電極が求められるSIBにおいて、電極作製時のバインダー成分として、柔軟性を有する特定のフッ素系ポリマーを使用することで、電極プレス時に導電剤を、より集電体に圧着させ、電極の集電体と電極材料層(導電剤/Na活物質/バインダー)の界面抵抗値を低下させることができることを見出した。
また、本開示のバインダーを使用することにより、スラリー状態の電極合剤の抵抗率を低減させることもできる。
【0014】
本開示のナトリウムイオン電池の正極用バインダーは、ビニリデンフルオライド(VdF)単位およびテトラフルオロエチレン(TFE)単位を有する共重合体(A)を含むものであり、VdF単位の含有量が、共重合体(A)中の全単量体単位に対して30~99.5モル%である。
VdF単位が30モル%未満であると、電極としての剥離強度が弱くなり、99.5モル%より多いと、スラリーの均一な塗工が困難になる。
【0015】
上記共重合体(A)は、VdF単位を全重合単位に対して70モル%以上含むことが好ましい。70モル%以上含むと、電極の剥離強度が向上する傾向がある。
上記共重合体(A)は、VdF単位を全重合単位に対して72モル%以上含むことより好ましく、75モル%以上含むことが更に好ましく、80モル%以上含むことが特に好ましい。また、99モル%以下含むことが好ましく、90モル%以下含むことがより好ましく、85モル%以下含むことが更に好ましい。
上記共重合体(A)の組成は、19F-NMR分析装置を用いて測定することができる。
【0016】
上記共重合体(A)は、TFE単位の含有量が、共重合体(A)中の全単量体単位に対して0.5~70モル%であることが好ましい。TFE単位が0.5モル%未満であると、電極の均一な塗工が困難となる傾向があり、70モル%より多いと、電極の剥離強度が低下する傾向がある。上記共重合体(A)は、TFE単位を全重合単位に対して10モル%以上含むことがより好ましく、15モル%以上含むことが更に好ましい。また、30モル%以下含むことがより好ましく、25モル%以下含むことが更に好ましく、20モル%以下含むことが特に好ましい。
【0017】
上記共重合体(A)は、VdF単位およびTFE単位の他に、VdFおよびTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位を含むものであってもよい。
本開示の効果を達成するためには、VdFとTFEとの共重合体で充分であるが、さらに、共重合体の優れた非水電解液膨潤性を損なわない程度に、それらと共重合しうる単量体を共重合させて、接着性をさらに向上させることができる。
【0018】
上記VdFおよびTFEと共重合し得る、他の単量体に基づく重合単位は、特に限定されるものではないが、例えば、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、下記一般式(1)で表される単量体、下記一般式(2)で表される単量体、および下記一般式(3)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1つの単量体に由来する構成単位であることが好ましく、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、下記一般式(1)で表される単量体、下記一般式(2)で表される単量体、および下記一般式(3)で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1つの単量体に由来する構成単位であることがより好ましい。
【0019】
【化4】
(式中、Rf
1は、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐したフッ素化アルキル基またはフッ素化アルコキシ基であり、フッ素化アルキル基およびフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。)
【化5】
(式中、Rf
2は、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐したフッ素化アルキル基またはフッ素化アルコキシ基であり、フッ素化アルキル基およびフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。)
【化6】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に水素原子、塩素原子又は炭素数1~5のアルキル基である。Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンを表す。)
【0020】
上記単量体に基づく重合単位を有するようにすることで、柔軟性および集電体に対する密着性により、一層優れた正極材料層を形成することができ、かつ、電池特性がより一層優れた二次電池を形成することができる。
【0021】
上記一般式(1)で表される含フッ素単量体は、Rf1が、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐したフッ素化アルキル基、または、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐したフッ素化アルコキシ基である。フッ素化アルキル基およびフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。
【0022】
Rf1のフッ素化アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキル基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された過フッ素化アルキル基であってもよい。また、Rf1のフッ素化アルキル基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。
【0023】
また、Rf1のフッ素化アルコキシ基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルコキシ基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された過フッ素化アルコキシ基であってもよい。また、Rf1のフッ素化アルコキシ基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。
【0024】
Rf1の炭素数としては、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1である。
【0025】
Rf1としては、一般式:
-(Rf11)m-(O)p-(Rf12-O)n-Rf13
(式中、Rf11およびRf12は、独立に、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素数1~4のフッ素化アルキレン基、Rf13は、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素数1~4のフッ素化アルキル基、pは0または1、mは0~4の整数、nは0~4の整数である)で表される基が好ましい。
【0026】
Rf11およびRf12のフッ素化アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキレン基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された過フッ素化アルキレン基であってもよい。また、Rf11およびRf12のフッ素化アルキレン基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。Rf11およびRf12は、各出現において、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0027】
Rf11のフッ素化アルキレン基としては、-CHF-、-CF2-、-CH2-CF2-、-CHF-CF2-、-CF2-CF2-、-CF(CF3)-、-CH2-CF2-CF2-、-CHF-CF2-CF2-、-CF2-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-、-CF2-CF(CF3)-、-C(CF3)2-、-CH2-CF2-CF2-CF2-、-CHF-CF2-CF2-CF2-、-CF2-CF2-CF2-CF2-、-CH(CF3)-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-CF2-、-C(CF3)2-CF2-などが挙げられ、なかでも、炭素数1または2の過フッ素化アルキレン基が好ましく、-CF2-がより好ましい。
【0028】
Rf12のフッ素化アルキレン基としては、-CHF-、-CF2-、-CH2-CF2-、-CHF-CF2-、-CF2-CF2-、-CF(CF3)-、-CH2-CF2-CF2-、-CHF-CF2-CF2-、-CF2-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-、-CF2-CF(CF3)-、-C(CF3)2-、-CH2-CF2-CF2-CF2-、-CHF-CF2-CF2-CF2-、-CF2-CF2-CF2-CF2-、-CH(CF3)-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-CF2-、-C(CF3)2-CF2-などが挙げられ、なかでも、炭素数1~3の過フッ素化アルキレン基が好ましく、-CF2-、-CF2CF2-、-CF2-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-または-CF2-CF(CF3)-がより好ましい。
【0029】
Rf13のフッ素化アルキル基としては、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキル基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された過フッ素化アルキル基であってもよい。また、Rf13のフッ素化アルキル基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基(たとえば、-CN、-CH2I、-CH2Brなど)を含まないことが好ましい。
【0030】
Rf13のフッ素化アルキル基としては、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2-CH2F、-CH2-CHF2、-CH2-CF3、-CHF-CH2F、-CHF-CHF2、-CHF-CF3、-CF2-CH2F、-CF2-CHF2、-CF2-CF3、-CH2-CF2-CH2F、-CHF-CF2-CH2F、-CF2-CF2-CH2F、-CF(CF3)-CH2F、-CH2-CF2-CHF2、-CHF-CF2-CHF2、-CF2-CF2-CHF2、-CF(CF3)-CHF2、-CH2-CF2-CF3、-CHF-CF2-CF3、-CF2-CF2-CF3、-CF(CF3)-CF3、-CH2-CF2-CF2-CF3、-CHF-CF2-CF2-CF3、-CF2-CF2-CF2-CF3、-CH(CF3)-CF2-CF3、-CF(CF3)-CF2-CF3、-C(CF3)2-CF3などが挙げられ、なかでも、-CF3、-CHF-CF3、-CF2-CHF2、-CF2-CF3、-CF2-CF2-CF3、-CF(CF3)-CF3、-CF2-CF2-CF2-CF3、-CH(CF3)-CF2-CF3または-CF(CF3)-CF2-CF3が好ましい。
【0031】
pとしては、0が好ましい。
【0032】
mとしては、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。また、pが0であるときはmも0であることが好ましい。
【0033】
nとしては、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
【0034】
繰り返し単位としては、
-CH2-CF[-CF3]-、
-CH2-CF[-CF2CF3]-、
-CH2-CF[-CF2CF2CF3]-、
-CH2-CF[-CF2CF2CF2CF3]-、
-CH2-CF[-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CHF-CF3]-、
-CH2-CF[-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF2-CF3]-、
-CH2-CF[-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF(CF3)-CF3]-、
-CH2-CF[-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CH(CF3)-CF2-CF3]-、
-CH2-CF[-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF(CF3)-CF2-CF3]-、
-CH2-CF[-OCF2OCF3]-、
-CH2-CF[-OCF2CF2CF22OCF3]-、
-CH2-CF[-CF2OCFOCF3]-、
-CH2-CF[-CF2OCF2CF2CF2OCF3]-、または、
-CH2-CF[-O-CF2-CF3]-
が好ましく、
-CH2-CF[-CF3]-
がより好ましい。
【0035】
上記一般式(2)で表される含フッ素単量体(2)は、Rf2は、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐したフッ素化アルキル基、または、炭素数1~12の直鎖もしくは分岐したフッ素化アルコキシ基である。フッ素化アルキル基およびフッ素化アルコキシ基は、いずれも、炭素数が2以上ある場合には、炭素-炭素原子間に酸素原子(-O-)を含むことができる。
【0036】
Rf2のフッ素化アルキル基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキル基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された過フッ素化アルキル基であってもよい。また、Rf2のフッ素化アルキル基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。
【0037】
また、Rf2のフッ素化アルコキシ基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルコキシ基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された過フッ素化アルコキシ基であってもよい。また、Rf2のフッ素化アルコキシ基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。
【0038】
Rf2の炭素数としては、好ましくは1~10であり、より好ましくは1~6であり、さらに好ましくは1~4であり、特に好ましくは1である。
【0039】
Rf2としては、一般式:
-(Rf21)m-(O)p-(Rf22-O)n-Rf23
(式中、Rf21およびRf22は、独立に、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素数1~4のフッ素化アルキレン基、Rf23は、直鎖状もしくは分岐鎖状の、炭素数1~4のフッ素化アルキル基、pは0または1、mは0~4の整数、nは0~4の整数である。)で表される基が好ましい。
【0040】
Rf21およびRf22のフッ素化アルキレン基は、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキレン基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された過フッ素化アルキレン基であってもよい。また、Rf21およびRf22のフッ素化アルキレン基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基を含まないことが好ましい。Rf21およびRf22は、各出現において、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0041】
Rf21のフッ素化アルキレン基としては、-CHF-、-CF2-、-CH2-CF2-、-CHF-CF2-、-CF2-CF2-、-CF(CF3)-、-CH2-CF2-CF2-、-CHF-CF2-CF2-、-CF2-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-、-CF2-CF(CF3)-、-C(CF3)2-、-CH2-CF2-CF2-CF2-、-CHF-CF2-CF2-CF2-、-CF2-CF2-CF2-CF2-、-CH(CF3)-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-CF2-、-C(CF3)2-CF2-などが挙げられ、なかでも、炭素数1または2の過フッ素化アルキレン基が好ましく、-CF2-がより好ましい。
【0042】
Rf22のフッ素化アルキレン基としては、-CHF-、-CF2-、-CH2-CF2-、-CHF-CF2-、-CF2-CF2-、-CF(CF3)-、-CH2-CF2-CF2-、-CHF-CF2-CF2-、-CF2-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-、-CF2-CF(CF3)-、-C(CF3)2-、-CH2-CF2-CF2-CF2-、-CHF-CF2-CF2-CF2-、-CF2-CF2-CF2-CF2-、-CH(CF3)-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-CF2-、-C(CF3)2-CF2-などが挙げられ、なかでも、炭素数1~3の過フッ素化アルキレン基が好ましく、-CF2-、-CF2CF2-、-CF2-CF2-CF2-、-CF(CF3)-CF2-または-CF2-CF(CF3)-がより好ましい。
【0043】
Rf23のフッ素化アルキル基としては、炭素原子に結合した水素原子の一部がフッ素原子により置換された部分フッ素化アルキル基であってもよいし、炭素原子に結合した水素原子の全部がフッ素原子により置換された過フッ素化アルキル基であってもよい。また、Rf23のフッ素化アルキル基は、水素原子がフッ素原子以外の置換基により置換されていてもよいが、フッ素原子以外の置換基(たとえば、-CN、-CH2I、-CH2Brなど)を含まないことが好ましい。
【0044】
Rf23のフッ素化アルキル基としては、-CH2F、-CHF2、-CF3、-CH2-CH2F、-CH2-CHF2、-CH2-CF3、-CHF-CH2F、-CHF-CHF2、-CHF-CF3、-CF2-CH2F、-CF2-CHF2、-CF2-CF3、-CH2-CF2-CH2F、-CHF-CF2-CH2F、-CF2-CF2-CH2F、-CF(CF3)-CH2F、-CH2-CF2-CHF2、-CHF-CF2-CHF2、-CF2-CF2-CHF2、-CF(CF3)-CHF2、-CH2-CF2-CF3、-CHF-CF2-CF3、-CF2-CF2-CF3、-CF(CF3)-CF3、-CH2-CF2-CF2-CF3、-CHF-CF2-CF2-CF3、-CF2-CF2-CF2-CF3、-CH(CF3)-CF2-CF3、-CF(CF3)-CF2-CF3、-C(CF3)2-CF3などが挙げられ、なかでも、-CF3、-CHF-CF3、-CF2-CHF2、-CF2-CF3、-CF2-CF2-CF3、-CF(CF3)-CF3、-CF2-CF2-CF2-CF3、-CH(CF3)-CF2-CF3または-CF(CF3)-CF2-CF3が好ましい。
【0045】
pとしては、0が好ましい。
【0046】
mとしては、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。また、pが0であるときはmも0であることが好ましい。
【0047】
nとしては、好ましくは0~2の整数であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
【0048】
繰り返し単位としては、
-CHF-CH[-CF3]-、
-CHF-CH[-CF2CF3]-、
-CHF-CH[-CF2CF2CF3]-、または、
-CHF-CH[-CF2CF2CF2CF3]-、
が好ましく、
-CHF-CH[-CF3]-
がより好ましい。
【0049】
上記一般式(3)において、Yは、無機カチオンおよび/または有機カチオンを表す。無機カチオンとしては、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、Fe等のカチオンが挙げられる。有機カチオンとしては、NH4、NH3R15、NH2R15
2、NHR15
3、NR15
4(R15は、独立に、炭素数1~4のアルキル基を表す。)等のカチオンが挙げられる。Yとしては、H、Li、Na、K、Mg、Ca、Al、NH4が好ましく、H、Li、Na、K、Mg、Al、NH4がより好ましく、H、Li、Al、NH4がさらに好ましく、Hが特に好ましい。なお、無機カチオンおよび有機カチオンの具体例は、便宜上、符号および価数を省略して記載している。
【0050】
一般式(3)において、R1~R3は、それぞれ独立に、水素原子、塩素原子または炭素数1~5のアルキル基を表す。上記アルキル基は、1価のアルキル基である。上記アルキル基の炭素数は4以下が好ましい。上記アルキル基としては、メチル基またはエチル基が好ましい。R1およびR2は、独立に、水素原子、メチル基またはエチル基であることが好ましく、R3は、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
【0051】
一般式(3)において、Xは、単結合または主鎖が原子数1~20で構成される分子量500以下の原子団である。上記原子団は、2価の原子団である。上記原子団は、炭素数4以下の炭化水素基が好ましい。上記炭化水素基としては、上記炭素数のアルキレン基、アルケニレン基等が挙げられ、なかでも、メチレン基、エチレン基、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、メチレン基がより好ましい。
【0052】
一般式(3)で表される単量体としては、アクリロイロキシプロピルコハク酸およびその塩、(メタ)アクリル酸およびその塩、ビニル酢酸(3-ブテン酸)およびその塩、3-ペンテン酸およびその塩、4-ペンテン酸およびその塩、3-ヘキセン酸およびその塩、4-ヘプテン酸およびその塩、ならびに、5-ヘキセン酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0053】
上記共重合体(A)は、上記単量体の他、本開示の目的を阻害しない範囲で、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、および、フルオロアルキルビニルエーテル等のフッ素化単量体、またはエチレン、プロピレン等の非フッ素化単量体に基づく重合単位を含むものであってもよい。
【0054】
フルオロアルキルビニルエーテルとしては、炭素数1~5のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルビニルエーテルが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0055】
上記VdFおよびTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位の含有量は、上記共重合体(A)の全重合単位に対して、5.0モル%未満が好ましい。5.0モル%以上であると、一般的にVdFとTFEの共重合体の結晶性が著しく低下し、その結果、非水電解液の膨潤性が低下する傾向がある。
上記VdFおよびTFEと共重合し得る単量体に基づく重合単位の含有量は、3.5モル%以下であることがより好ましい。
なお、共重合体(A)が他の単量体単位として、上記一般式(3)で表される単量体単位を含有する場合、その含有量は、カルボン酸基の酸-塩基滴定によって測定できる。
【0056】
共重合体(A)の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは10000~3000000であり、より好ましくは30000以上であり、さらに好ましくは50000以上であり、特に好ましくは200000以上であり、より好ましくは2400000以下であり、さらに好ましくは2200000以下であり、特に好ましくは2000000以下である。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてジメチルホルムアミドを用いて測定することができる。
【0057】
共重合体(A)の数平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは7000~1500000であり、より好ましくは21000以上であり、さらに好ましくは35000以上であり、より好ましくは1400000以下であり、さらに好ましくは1200000以下であり、特に好ましくは1100000以下である。
数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてジメチルホルムアミドを用いて測定することができる。
【0058】
上記共重合体(A)は、121℃におけるムーニー粘度(ML1+10(121℃))は2以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましく、10以上であることがさらに好ましく、30以上であることが特に好ましい。
ムーニー粘度は、ASTM-D1646-15およびJIS K6300-1:2013に準拠して測定する値である。
【0059】
上記共重合体(A)は、一般的なラジカル重合法により製造することができる。重合形態は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合及び乳化重合のいずれの形態でもよいが、工業的に実施が容易であることから、乳化重合であることが好ましい。
【0060】
重合においては、重合開始剤、連鎖移動剤、界面活性剤、及び、溶媒を使用することができ、それぞれ従来公知のものを使用することができる。共重合体の重合において、重合開始剤として油溶性ラジカル重合開始剤、または水溶性ラジカル開始剤を使用できる。
【0061】
油溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の油溶性の過酸化物であってよく、たとえば、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジsec-ブチルパーオキシジカーボネートなどのジアルキルパーオキシカーボネート類、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレートなどのパーオキシエステル類、ジt-ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド類などが、また、ジ(ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-テトラデカフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(ω-ハイドロ-ヘキサデカフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(パーフルパレリル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロヘプタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(パーフルオロノナノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(ω-クロロ-テトラデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ω-ハイドロ-ドデカフルオロヘプタノイル-ω-ハイドロヘキサデカフルオロノナノイル-パーオキサイド、ω-クロロ-ヘキサフルオロブチリル-ω-クロロ-デカフルオロヘキサノイル-パーオキサイド、ω-ハイドロドデカフルオロヘプタノイル-パーフルオロブチリル-パーオキサイド、ジ(ジクロロペンタフルオロブタノイル)パーオキサイド、ジ(トリクロロオクタフルオロヘキサノイル)パーオキサイド、ジ(テトラクロロウンデカフルオロオクタノイル)パーオキサイド、ジ(ペンタクロロテトラデカフルオロデカノイル)パーオキサイド、ジ(ウンデカクロロドトリアコンタフルオロドコサノイル)パーオキサイドのジ[パーフルオロ(またはフルオロクロロ)アシル]パーオキサイド類などが代表的なものとしてあげられる。
【0062】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、公知の水溶性過酸化物であってよく、たとえば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸などのアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、t-ブチルパーマレエート、t-ブチルハイドロパーオキサイドなどがあげられる。サルファイト類、亜硫酸塩類のような還元剤も併せて含んでもよく、その使用量は過酸化物に対して0.1~20倍であってよい。
【0063】
ラジカル重合開始剤の添加量は、特に限定はないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(たとえば、数ppm対水濃度)以上を重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱を除熱出来る範囲である。
【0064】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが使用できる。添加量(対重合水)は、好ましくは10~5000ppmである。より好ましくは50~5000ppmである。また、界面活性剤として反応性乳化剤を使用することができる。反応性乳化剤は、不飽和結合と親水基とをそれぞれ1つ以上有する化合物であれば特に限定されない。
【0065】
溶媒としては、連鎖移動性を持たない溶媒であることが好ましい。溶液重合の場合、ジクロロペンタフルオロプロパン(R-225)があげられ、乳化重合及び懸濁重合の場合、水、水と水溶性有機溶媒との混合物、又は、水と非水溶性有機溶媒との混合物があげられる。
【0066】
上記重合において、連鎖移動剤としては、たとえば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチルなどのエステル類のほか、イソペンタン、メタン、エタン、プロパン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサンなどがあげられる。
【0067】
連鎖移動剤として臭素化合物又はヨウ素化合物を使用してもよい。臭素化合物又はヨウ素化合物を使用して行う重合方法としては、たとえば、実質的に無酸素状態で、臭素化合物又はヨウ素化合物の存在下に、加圧しながら水媒体中で乳化重合を行う方法があげられる(ヨウ素移動重合法)。使用する臭素化合物又はヨウ素化合物の代表例としては、たとえば、一般式:
R2IxBry
(式中、xおよびyはそれぞれ0~2の整数であり、かつ1≦x+y≦2を満たすものであり、R2は炭素数1~16の飽和もしくは不飽和のフルオロ炭化水素基またはクロロフルオロ炭化水素基、または炭素数1~3の炭化水素基であり、酸素原子を含んでいてもよい)で表される化合物があげられる。
【0068】
ヨウ素化合物としては、たとえば、1,3-ジヨードパーフルオロプロパン、2-ヨードパーフルオロプロパン、1,3-ジヨード-2-クロロパーフルオロプロパン、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,5-ジヨード-2,4-ジクロロパーフルオロペンタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、1,8-ジヨードパーフルオロオクタン、1,12-ジヨードパーフルオロドデカン、1,16-ジヨードパーフルオロヘキサデカン、ジヨードメタン、1,2-ジヨードエタン、1,3-ジヨード-n-プロパン、CF2Br2、BrCF2CF2Br、CF3CFBrCF2Br、CFClBr2、BrCF2CFClBr、CFBrClCFClBr、BrCF2CF2CF2Br、BrCF2CFBrOCF3、1-ブロモ-2-ヨードパーフルオロエタン、1-ブロモ-3-ヨードパーフルオロプロパン、1-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブタン、2-ブロモ-3-ヨードパーフルオロブタン、3-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、2-ブロモ-4-ヨードパーフルオロブテン-1、ベンゼンのモノヨードモノブロモ置換体、ジヨードモノブロモ置換体、ならびに(2-ヨードエチル)および(2-ブロモエチル)置換体などがあげられ、これらの化合物は、単独で使用してもよく、相互に組み合わせて使用することもできる。
【0069】
これらのなかでも、重合反応性、架橋反応性、入手容易性などの点から、1,4-ジヨードパーフルオロブタン、1,6-ジヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロプロパンを用いるのが好ましい。
【0070】
上述した方法で得られた共重合体は、乳化重合の場合、重合上がりの分散液を凝析させ、水洗し、脱水し、乾燥することによって粉体状態のものを得ることができる。凝析は、硫酸アルミニウム等の無機塩又は無機酸を添加するか、機械的な剪断力を与えるか、分散液を凍結させることによって行うことができる。懸濁重合の場合は、重合上がりの分散液から回収し、乾燥することにより粉体状態のものを得ることができる。溶液重合の場合は、重合体を含む溶液をそのまま乾燥させて得ることができるし、貧溶媒を滴下して精製することによっても得ることができる。
【0071】
共重合体(A)としては、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。特に、分子構造の異なる2種類の共重合体を併用する形態であってもよい。
【0072】
本開示の正極用バインダーは、上記共重合体(A)と、上記共重合体(A)以外の含フッ素ポリマーを1種以上組み合わせたブレンドポリマーを含有するようにしてもよい。本開示は、更に、上記共重合体(A)以外の含フッ素ポリマーを1種以上含む正極用バインダーでもある。
【0073】
上記共重合体(A)以外の含フッ素ポリマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、
VdF単位のみからなる含フッ素ポリマー(PVdF)、またはVdF単位およびVdF以外の他の単量体単位を含有する含フッ素ポリマー(B)が好ましい。上記VdF以外の他の単量体は、フッ素化単量体であってもよいし、非フッ素化単量体であってもよい。
上記フッ素化単量体としては、上記した共重合体(A)において使用される単量体と同様のものが挙げられる。
【0074】
上記非フッ素化単量体としては、エチレン、プロピレン等の極性基を有しない非フッ素化単量体、上記一般式(3)で表される単量体(3)等が挙げられる。
【0075】
上記単量体(3)としては、(メタ)アクリル酸およびその塩、ビニル酢酸(3-ブテン酸)およびその塩、3-ペンテン酸およびその塩、4-ペンテン酸およびその塩、3-ヘキセン酸およびその塩、4-ヘプテン酸およびその塩、ならびに、5-ヘキセン酸およびその塩からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0076】
上記含フッ素ポリマー(B)は、特に、VdF単位、および、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、2-(メチルチオ)エチルアクリレート、ピリジン-3-イルアクリレート及び2-(チオフェン-2-イル)エチルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1の単量体に由来する構成単位を含むものであることが好ましい。
【0077】
含フッ素ポリマー(B)において、VdF以外の他の単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.0001~50.0モル%であり、より好ましくは0.01モル%以上であり、さらに好ましくは0.10モル%以上であり、より好ましくは45.0モル%以下であり、さらに好ましくは40.0モル%以下であり、特に好ましくは35.0モル%以下である。
【0078】
含フッ素ポリマー(B)のVdF単位の含有量は、全単量体単位に対して、50.0~99.9999モル%であり、より好ましくは55.0モル%以上であり、さらに好ましくは60.0モル%以上であり、特に好ましくは65.0モル%以上であり、より好ましくは99.99モル%以下であり、さらに好ましくは99.90モル%以下である。
【0079】
含フッ素ポリマー(B)がVdF以外の他の単量体単位として、上記一般式(3)で表される単量体単位を含有する場合、当該単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.0001~50.0モル%であり、より好ましくは0.01モル%以上であり、さらに好ましくは0.10モル%以上であり、より好ましくは5.0モル%以下であり、さらに好ましくは3.0モル%以下であり、特に好ましくは1.5モル%以下である。
【0080】
含フッ素ポリマー(B)が他の単量体単位として、上記一般式(3)で表される単量体単位を含有する場合、含フッ素ポリマー(B)のVdF単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは50.0~99.999モル%であり、より好ましくは95.0モル%以上であり、さらに好ましくは97.0モル%以上であり、特に好ましくは98.5モル%以上であり、より好ましくは99.99モル%以下であり、さらに好ましくは99.90モル%以下である。
【0081】
含フッ素ポリマー(B)の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは10000~3000000であり、より好ましくは30000以上であり、さらに好ましくは50000以上であり、特に好ましくは200000以上であり、より好ましくは2400000以下であり、さらに好ましくは2200000以下であり、特に好ましくは2000000以下である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてジメチルホルムアミドを用いて測定することができる。
【0082】
含フッ素ポリマー(B)の数平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは7000~1500000であり、より好ましくは21000以上であり、さらに好ましくは35000以上であり、より好ましくは1400000以下であり、さらに好ましくは1200000以下であり、特に好ましくは1100000以下である。数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により溶媒としてジメチルホルムアミドを用いて測定することができる。
【0083】
含フッ素ポリマー(B)としては、例えば、VdF/アクリル酸共重合体、VdF/メタクリル酸共重合体、VdF/メタクリル酸メチル共重合体、VdF/アクリル酸/2-(メチルチオ)エチルアクリレート共重合体、VdF/アクリル酸/ピリジン-3-イルアクリレート共重合体、VdF/アクリル酸/2-(チオフェン-2-イル)エチルアクリレート共重合体であることが好ましい。
【0084】
VdF/(メタ)アクリル酸共重合体は、VdF単位および(メタ)アクリル酸単位を含有する。共重合体としてVdF/(メタ)アクリル酸共重合体を用いることにより、電極合剤を非常に容易に形成できるとともに、金属箔と極めて強固に密着する塗布層を形成することができる。(メタ)アクリル酸単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは0.0001~5.0モル%であり、より好ましくは0.01~3.0モル%であり、さらに好ましくは0.10~1.5モル%である。
【0085】
VdF/(メタ)アクリル酸共重合体のVdF単位の含有量は、全単量体単位に対して、好ましくは95.0~99.9999モル%であり、より好ましくは97.0~99.99モル%であり、さらに好ましくは98.5~99.90モル%である。
【0086】
VdF/(メタ)アクリル酸共重合体の重量平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは50000~3000000であり、より好ましくは80000以上であり、さらに好ましくは100000以上であり、特に好ましくは200000以上であり、より好ましくは2400000以下であり、さらに好ましくは2200000以下であり、特に 好ましくは2000000以下である。
【0087】
VdF/(メタ)アクリル酸共重合体の数平均分子量(ポリスチレン換算)は、好ましくは20000~1500000であり、より好ましくは40000以上であり、さらに 好ましくは70000以上であり、特に好ましくは140000以上であり、より好ましくは1400000以下であり、さらに好ましくは1200000以下であり、特に好ましくは1100000以下である。
【0088】
含フッ素ポリマー(B)は、上記共重合体(A)の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0089】
上記共重合体(A)と、PVdFおよび/または含フッ素ポリマー(B)とを組み合わせる場合、上記共重合体(A)と、PVdFおよび/または含フッ素ポリマー(B)との比率(質量比)は、1:15~9:7であることが好ましい。このような範囲であれば、電極としての剥離強度が維持できる。
上記共重合体(A)と含フッ素ポリマー(B)との比率(質量比)は、1:14以上であることがより好ましい。上記共重合体(A)と含フッ素ポリマー(B)との比率(質量比)は、9:7以下であることがより好ましく、8:7以下であることが更に好ましい。
【0090】
本開示のナトリウムイオン電池用の正極用バインダーは、ナトリウムイオン電池の正極用電極合剤に、好適に使用される。具体的には、正極活物質、溶媒とともに、電極合剤を構成することができる。本開示は、正極活物質として、ナトリウム複合酸化物を含有し、上記正極バインダーを含む電極合剤でもある。
【0091】
本開示で使用される正極活物質としては、電気化学的にナトリウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はない。
正極活物質としては、電気化学的にアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限されないが、例えば、アルカリ金属と少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、アルカリ金属含有遷移金属複合酸化物、アルカリ金属含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。なかでも、正極活物質としては、特に、高電圧を産み出すアルカリ金属含有遷移金属複合酸化物が好ましい。上記アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。好ましい態様において、アルカリ金属イオンは、リチウムイオン又はナトリウムイオンであり得る。即ち、この態様において、アルカリ金属イオン二次電池は、ナトリウムイオン二次電池である。
【0092】
上記アルカリ金属含有遷移金属複合酸化物としては、例えば、
式(3-1):MaMn2-bM1
bO4
(式中、Mは、Naであり;0.9≦a;0≦b≦1.5;M1はFe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、SiおよびGeよりなる群より選択される少なくとも1種の金属)で表されるナトリウム・マンガンスピネル複合酸化物、
式(3-2):MNi1-cM2
cO2
(式中、Mは、Naであり;0≦c≦0.5;M2はFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、SiおよびGeよりなる群より選択される少なくとも1種の金属)で表されるナトリウム・ニッケル複合酸化物、または、
式(3-3):MCo1-dM3
dO2
(式中、Mは、Naであり;0≦d≦0.5;M3はFe、Ni、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、SiおよびGeよりなる群より選択される少なくとも1種の金属)
で表されるナトリウム・コバルト複合酸化物が挙げられる。
なかでも、エネルギー密度が高く、高出力な二次電池を提供できる点から、MCoO2、MMnO2、MNiO2、MMn2O4、MNi0.8Co0.15Al0.05O2、またはMNi1/3Co1/3Mn1/3O2等が好ましく、下記式(3-4)で表される化合物であることが好ましい。
MNihCoiMnjM5
kO2 (3-4)
(式中、Mは、Naであり、M5はFe、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種を示し、(h+i+j+k)=1.0、0≦h≦1.0、0≦i≦1.0、0≦j≦1.5、0≦k≦0.2である。)
【0093】
上記アルカリ金属含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、下記式(70)
MeM4
f(PO4)g (70)
(式中、Mは、Naであり、M4はV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群より選択される少なくとも1種を示し、0.5≦e≦3、1≦f≦2、1≦g≦3)で表される化合物が挙げられる。
ナトリウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、NaFePO4、Na3Fe2(PO4)3、NaFeP2O7等のリン酸鉄類、NaCoPO4等のリン酸コバルト類、これらのナトリウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の元素で置換したもの等が挙げられる。
上記ナトリウム含有遷移金属リン酸化合物としては、オリビン型構造を有するものが好ましい。
【0094】
その他の正極活物質としては、MFePO4、MNi0.8Co0.2O2、M1.2Fe0.4Mn0.4O2、MNi0.5Mn1.5O4、MV3O6、M2MnO3等(式中、Mは、Naである。)が挙げられる。特に、MNi0.5Mn1.5O4等の正極活物質は、4.4Vを超える電圧や、4.6V以上の電圧で二次電池を作動させた場合であって、結晶構造が崩壊しない点で好ましい。従って、上記に例示した正極活物質を含む正極材を用いた二次電池等の電気化学デバイスは、高温で保管した場合でも、残存容量が低下しにくく、抵抗増加率も変化しにくい上、高電圧で作動させても電池性能が劣化しないことから、好ましい。
【0095】
その他の正極活物質として、M2MnO3とMM6O2(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、M6は、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体材料等も挙げられる。
上記固溶体材料としては、例えば、一般式Mx[Mn(1-y)M7y]Ozで表わされるアルカリ金属マンガン酸化物である。ここで式中のMはNaであり、M7は、M及びMn以外の少なくとも一種の金属元素からなり、例えば、Co,Ni,Fe,Ti,Mo,W,Cr,ZrおよびSnからなる群から選択される一種または二種以上の元素を含んでいる。また、式中のx、y、zの値は、1<x<2、0≦y<1、1.5<z<3の範囲である。
【0096】
上記正極活物質の平均粒径は、例えば1~50μm、中でも1~20μm、特に3~7μmであることが好ましい。正極活物質の平均粒径が小さすぎると、取り扱い性が悪くなる可能性があり、正極活物質の平均粒径が大きすぎると、平坦な正極活物質層を得るのが困難になる場合があるからである。なお、正極活物質の平均粒径は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により観察される活物質担体の粒径を測定して、平均することにより求めることができる。
【0097】
また、上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0098】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により該正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることもできる。
【0099】
表面付着物質の量としては、上記正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができるが、その付着量が少なすぎる場合その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、ナトリウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
【0100】
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成していてもよい。
【0101】
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g/cm3以上、より好ましくは0.8g/cm3以上、更に好ましくは1.0g/cm3以上である。該正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく、特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における電解液を媒体としたナトリウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、上限は、好ましくは4.0g/cm3以下、より好ましくは3.7g/cm3以下、更に好ましくは3.5g/cm3以下である。
なお、本開示では、タップ密度は、正極活物質粉体5~10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/cm3として求める。
【0102】
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上であり、また、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは25μm以下、最も好ましくは22μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作製、即ち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等の問題を生じたりする場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ上記正極活物質を2種類以上混合することで、正極作製時の充填性を更に向上させることができる。
【0103】
なお、本開示では、メジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA-920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
【0104】
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、上記正極活物質の平均一次粒子径としては、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、上限は、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなったりする場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。
【0105】
なお、本開示では、一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0106】
正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.1m2/g以上、より好ましくは0.2m2/g以上、更に好ましくは0.3m2/g以上であり、上限は好ましくは50m2/g以下、より好ましくは40m2/g以下、更に好ましくは30m2/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質層形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
【0107】
なお、本開示では、BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研社製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
【0108】
本開示の二次電池が、ハイブリッド自動車用や分散電源用の大型ナトリウムイオン二次電池として使用される場合、高出力が要求されるため、上記正極活物質の粒子は二次粒子が主体となることが好ましい。
上記正極活物質の粒子は、二次粒子の平均粒子径が40μm以下で、かつ、平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を、0.5~7.0体積%含むものであることが好ましい。平均一次粒子径が1μm以下の微粒子を含有させることにより、電解液との接触面積が大きくなり、電極と電解液との間でのリチウムイオンの拡散をより速くすることができ、その結果、電池の出力性能を向上させることができる。
【0109】
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、水酸化ナトリウム等のNa源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
【0110】
正極の製造のために、前記の正極活物質を単独で用いてもよく、異なる組成の2種以上を、任意の組み合わせ又は比率で併用してもよい。
【0111】
電極合剤に使用する溶媒は、正極活物質、結着剤、並びに必要に応じて使用される導電剤、増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。水系溶媒としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系溶媒としては、例えば、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0112】
有機系溶媒としては、また、一般式(4)で表される溶媒を用いることもできる。
【0113】
一般式(4):
【化7】
(式中、R
1、R
2およびR
3は、独立に、Hまたは有機基であり、ただし、R
1、R
2およびR
3の合計炭素数は6以上であり、R
1、R
2およびR
3の少なくとも1つはカルボニル基を有する有機基である。R
1、R
2およびR
3は、いずれか2つが結合して環を形成してもよい。)
【0114】
R1、R2およびR3の合計炭素数は6以上である。すなわち、R1、R2およびR3は、合計の炭素数が6以上となるように、それぞれ、基の種類が選択される。R1、R2 およびR3の合計炭素数の上限は限定されないが、16以下、14以下または12以下であってよい。
【0115】
R1、R2およびR3は、独立に、Hまたは有機基である。有機基としては、アルキル基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アルケニル基、アミノ基、アミノアルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。
【0116】
R1、R2およびR3の少なくとも1つはカルボニル基を有する有機基である。カルボニル基を有する有機基としては、アシル基が好ましい。アシル基としては、一般式:-C O-R4(式中、R4は炭素数1~6のアルキル基である)で表される基が好ましい。アルキル基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。R4のアルキル基の炭素数が2以上である場合、炭素-炭素原子間に、酸素原子、窒素原子などのヘテロ原子またはカルボニル基を含んでもよい。
【0117】
R1、R2およびR3は、いずれか2つが結合して環を形成してもよい。また、環の構成原子として、酸素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。環は飽和環であることが好ましい。環の員数は特に限定されないが、5員また6員が好ましい。環としては、ピロリジン環、オキサゾリン環、ピペリジン環またはモルホリン環が好ましい。
【0118】
溶媒としては、一般式(4a)で表される溶媒が好ましい。
【0119】
一般式(4a):
【化8】
(式中、R
1aは有機基であり、R
2aおよびR
3aは、独立に、Hまたは有機基であり、ただし、R
1a、R
2aおよびR
3aの合計炭素数は5以上である。R
1a、R
2aおよびR
3aは、いずれか2つが結合して環を形成してもよい。)
【0120】
一般式(4a)において、R1a、R2aおよびR3aの合計炭素数は5以上である。すなわち、R1a、R2aおよびR3aは、合計の炭素数が5以上となるように、それぞれ、基の種類が選択される。R1a、R2aおよびR3aの合計炭素数の上限は限定されない が、15以下、13以下または11以下であってよい。
【0121】
一般式(4a)において、R1aは有機基である。有機基としては、アルキル基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アルケニル基、アミノ基、アミノアルキル基またはシクロアルキル基が好ましく、アルキル基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アルケニル基、アミノ基またはアミノアルキル基がより好ましい。
【0122】
一般式(4a)において、R2aおよびR3aは、独立に、Hまたは有機基である。R2aおよびR3aとしては、独立に、有機基が好ましい。有機基としては、アルキル基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アルケニル基、アミノ基、アミノアルキル基またはシクロアルキル基が好ましく、アルキル基、アルコキシアルキル基、シクロアルキル基またはアルケニル基がより好ましい。
【0123】
R1a、R2aおよびR3aは、いずれか2つが結合して環を形成してもよい。特に、R2aおよびR3aが結合して、R2aおよびR3aが結合する窒素原子とともに、環を形成することが好ましい。また、環の構成原子として、酸素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。環は飽和環であることが好ましい。環の員数は特に限定されないが、5員また6員が好ましい。環としては、ピロリジン環、オキサゾリン環、ピペリジン環またはモルホリン環が好ましい。
【0124】
溶媒としては、一般式(4b-1)で表される溶媒および一般式(4b-2)で表される溶媒からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0125】
一般式(4b-1):
【化9】
(式中、R
1bは、アルキル基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アルケニル基、アミノ基またはアミノアルキル基であり、R
2bおよびR
3bは、独立に、アルキル基またはアルコキシアルキル基であり、R
1b、R
2bおよびR
3bの合計炭素数は5以上である。R
2bおよびR
3bは、お互いに結合して、R
2bおよびR
3bが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環の構成原子として酸素原子を含んでもよい。)
【0126】
一般式(4b-2):
【化10】
(式中、環Aは、5員または6員のアミド環であり、R
4bは、アルキル基、シクロアルキル基、または、アルケニル基であり、環AおよびR
4bの合計炭素数は5以上である。)
【0127】
一般式(4b-1)において、R1b、R2bおよびR3bの合計炭素数は5以上である。すなわち、R1b、R2bおよびR3bは、合計の炭素数が5以上となるように、それぞれ、基の種類が選択される。R1b、R2bおよびR3bの合計炭素数の上限は限定されないが、15以下、13以下または11以下であってよい。
【0128】
一般式(4b-1)において、R1bは、アルキル基、アルコキシアルキル基、アシルアルキル基、アルケニル基、アミノ基またはアミノアルキル基である。
【0129】
R1bのアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0130】
R1bのアルコキシアルキル基としては、一般式:-R1b1-O-R1b2(式中、R1b1は炭素数1~5のアルキレン基、R1b2は炭素数1~5のアルキル基である)で表される基が好ましい。アルキル基およびアルキレン基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0131】
R1bのアシルアルキル基としては、一般式:-R1b3-CO-R1b4(式中、R1b3は炭素数1~5のアルキレン基、R1b4は炭素数1~5のアルキル基である)で表される基が好ましい。アルキル基およびアルキレン基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0132】
R1bのアルケニル基としては、一般式:-R1b5-CR1b6=CR1b7(式中、R1b5は単結合または炭素数1~5のアルキレン基、R1b6およびR1b7は、独立に、Hまたは炭素数1~5のアルキル基である)で表される基が好ましい。アルキル基およびアルキレン基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
【0133】
R1bのアミノ基およびアミノアルキル基が有するアミノ基は、アンモニア、第一級または第二級アミンから水素を除去した1価の官能基である。R1bがアミノ基である場合は、R1bが結合するカルボニル基とともに、アミド結合を形成し得る。
【0134】
R1bのアミノ基としては、一般式:-N-(R1b8)2(式中、R1b8はHまたは 炭素数1~5のアルキル基である)で表される基が好ましい。アルキル基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アミノ基としては、-N-(CH3)2または-N-(C2H5)2が好ましい。
【0135】
R1bのアミノアルキル基としては、一般式:-R1b9-N-(R1b8)2(式中、R1b9は炭素数1~5のアルキレン基、R1b8はHまたは炭素数1~5のアルキル基である)で表される基が好ましい。アルキル基およびアルキレン基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0136】
一般式(1b-1)において、R2bおよびR3bは、独立に、アルキル基またはアルコキシアルキル基である。
【0137】
R2bおよびR3bのアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0138】
R2bおよびR3bのアルコキシアルキル基としては、一般式:-R2b1-O-R2b2(式中、R2b1は炭素数1~5のアルキレン基、R2b2は炭素数1~5のアルキル基である)で表される基が好ましい。アルキル基およびアルキレン基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0139】
R2bおよびR3bは、お互いに結合して、R2bおよびR3bが結合する窒素原子とともに環を形成してもよく、環の構成原子として酸素原子を含んでもよい。環は飽和環であることが好ましい。環の員数は特に限定されないが、5員また6員が好ましい。環としては、ピロリジン環、オキサゾリン環、ピペリジン環またはモルホリン環が好ましい。
【0140】
一般式(1b-2)において、環AおよびR4bの合計炭素数は5以上である。すなわち、環AおよびR4bは、合計の炭素数が5以上となるように、環および基の種類が選択される。環AおよびR4bの合計炭素数の上限は限定されないが、15以下、13以下または11以下であってよい。
【0141】
環Aは、5員または6員のアミド環である。したがって、環Aは、炭素原子および窒素原子とともに、炭素数3~4のアルキレン基により構成される。環Aを構成するアルキレン基の炭素原子に結合する水素原子は、置換基により置換されていてもよいし、置換基により置換されていなくてもよいが、置換基により置換されていないことが好ましい。置換基としては、メチル基などのアルキル基が挙げられる。
【0142】
R4bは、アルキル基、シクロアルキル基、または、アルケニル基である。
【0143】
R4bのアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0144】
R4bのシクロアルキル基としては、炭素数3~10のシクロアルキル基が好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基が好ましい。
【0145】
R4bのアルケニル基としては、一般式:-R4b1-CR4b2=CR4b3(式中、R4b1は単結合または炭素数1~5のアルキレン基、R4b2およびR4b3は、独立に、Hまたは炭素数1~5のアルキル基である)で表される基が好ましい。アルキル基およびアルキレン基の炭素数が3以上の場合は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルケニル基としては、ビニル基が好ましい。
【0146】
溶媒としては、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-エチル-2-ピ ロリドン(NEP)、N-ブチル-2-ピロリドン(NBP)、アクリロイルモルフォリン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N,N,N’,N’-テトラエチルウレア、N,N-ジメチルアセトアセタミド、N-オクチル-2-ピロリドンおよびN,N-ジエチルアセタミドからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。
【0147】
溶媒としては、なかでも、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、N-エチル-2-ピロリドンおよびN-ブチル-2-ピロリドンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。特に、溶媒として、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドを含有する電極合剤を用いると、得られる電池のガス発生量が抑制される傾向がある。特に、溶媒として、N-エチル-2-ピロリドン(NEP)を含有する電極合剤を用いると、得られる電池の高温保存容量維持率が高くなる傾向がある。特に、溶媒として、N-ブチル-2-ピロリドン(NBP)を含有する電極合剤を用いると、得られる電池の抵抗が増加しにくい傾向がある。
【0148】
電極合剤中の溶媒の量は、集電体への塗布性、乾燥後の薄膜形成性等を考慮して決定される。通常、共重合体(A)と溶媒との割合は、質量比で0.5:99.5~20:80であることが好ましい。
【0149】
本開示の電極合剤は、さらに導電剤を含有することが好ましい。
上記導電剤としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、フラーレン、VGCF等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0150】
導電剤は、電極材料層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量がこの範囲よりも低いと導電性が不十分となる場合がある。逆に、含有量がこの範囲よりも高いと電池容量が低下する場合がある。
【0151】
本開示の電極合剤は、必要に応じてさらに増粘剤を含有していてもよい。上記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン、ポリビニルピロリドン及びこれらの塩等が挙げられる。1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0152】
活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下の範囲である。この範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する問題が生じる場合がある。
【0153】
電極合剤は、上記材料以外の材料を含んでいてもよい。ただし、当該材料の含有割合は、電極材料層全体を100質量%としたときに、8質量%以下であることが好ましく、4質量%以下であることがより好ましい。
【0154】
本開示の電極合剤を作製する工程においては、上述の各成分を混合してスラリーとする。各成分の混合順序は特に限定されるものではなく、溶媒中に各成分を添加して混合すればよい。
【0155】
上記スラリー中の固形分濃度は、70~95質量%であることが好ましい。この範囲であれば、塗工時の界面抵抗が抑えられる。また、下限は、好ましくは73質量%以上、より好ましくは73.5質量%以上、上限は、好ましくは85質量%以下である。
【0156】
本開示の電極合剤は、ナトリウムイオン二次電池の正極における電極材料層として好適に使用することができる。
集電体と、集電体の片面または両面に設けられた、本開示の電極合剤から形成される電極材料層を備える電極もまた、本開示の一つである。
上述したように、ナトリウムイオン二次電池の正極において、本開示の正極用バインダーを含む電極合剤から形成される電極材料層を備えることで、電極材料層と集電体との界面抵抗が低くなる。電極の界面抵抗が低くなることにより、ナトリウムイオン二次電池における初期インピーダンスを低減させることができ、電池特性が良好となる。
上記ナトリウムイオン二次電池は、公知の構造を採ることができ、典型的には、ナトリウムイオンを吸蔵・放出可能な正極及び負極と、電解液とを備える。本開示の電極を備えるナトリウムイオン二次電池もまた、本開示の一つである。
【0157】
<正極>
正極は、上記正極活物質を含む電極材料層(以下、正極活物質層という場合がある。)と、集電体とから構成されることが好ましい。
【0158】
正極用集電体の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼、ニッケル等の金属、又は、その合金等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。なかでも、金属材料、特にアルミニウム又はその合金が好ましい。
【0159】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属箔が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。薄膜がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、薄膜がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
【0160】
また、集電体の表面に導電助剤が塗布されていることも、集電体と正極活物質層の電気接触抵抗を低下させる観点で好ましい。導電助剤としては、炭素や、金、白金、銀等の貴金属類が挙げられる。
【0161】
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値が20以下であることが好ましく、より好ましくは15以下、最も好ましくは10以下であり、また、0.5以上が好ましく、より好ましくは0.8以上、最も好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0162】
正極の製造は、常法によればよい。例えば、上記正極活物質に、上述した結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状の電極合剤とし、これを集電体に塗布し、乾燥した後にプレスして高密度化する方法が挙げられる。
【0163】
上記高密度化は、ハンドプレス、ローラープレス等により行うことができる。正極活物質層の密度は、好ましくは1.5g/cm3以上、より好ましくは2g/cm3以上、更に好ましくは2.2g/cm3以上であり、また、好ましくは5g/cm3以下、より好ましくは4.5g/cm3以下、更に好ましくは4g/cm3以下の範囲である。この範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下し高出力が得られない場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られない場合がある。
【0164】
また、高出力かつ高温時の安定性を高める観点から、正極活物質層の面積は、電池外装ケースの外表面積に対して大きくすることが好ましい。具体的には、二次電池の外装の表面積に対する正極の電極面積の総和が面積比で15倍以上とすることが好ましく、更に40倍以上とすることがより好ましい。電池外装ケースの外表面積とは、有底角型形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分の縦と横と厚さの寸法から計算で求める総面積をいう。有底円筒形状の場合には、端子の突起部分を除いた発電要素が充填されたケース部分を円筒として近似する幾何表面積である。正極の電極面積の総和とは、負極活物質を含む合剤層に対向する正極合剤層の幾何表面積であり、集電体箔を介して両面に正極合剤層を形成してなる構造では、それぞれの面を別々に算出する面積の総和をいう。
【0165】
上記共重合体(A)の電極材料層中の含有量は、0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。また、下限は、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.1質量%以上である。上限は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下である。電極材料質層中の共重合体(A)の含有量が低いと柔軟性の低下となる場合がある。逆に含有量が高すぎると電極性能が低下する場合がある。
【0166】
上記共重合体(A)と、上記共重合体(A)以外の含フッ素ポリマーを1種以上組み合わせたブレンドポリマーを使用する場合には、ブレンドポリマーの電極材料層中の含有量は、0.1~5質量%が好ましく、0.5~3質量%がより好ましい。また、下限は、好ましくは0.6質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.1質量%以上である。上限は、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下である。電極材料質層中の共重合体(A)の含有量が低いと電極の柔軟性の低下となる場合がある。逆に含有量が高すぎると電池性能が低下する場合がある。
【0167】
上記正極活物質の含有量は、電池容量が高い点で、電極材料層の50~99.5質量%が好ましく、80~99質量%がより好ましい。また、正極活物質の、正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。電極材料質層中の正極活物質の含有量が低いと電気容量が不十分となる場合がある。逆に含有量が高すぎると正極の強度が不足する場合がある。
【0168】
正極板の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、芯材の金属箔厚さを差し引いた合剤層の厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
【0169】
また、上記正極板の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
【0170】
<負極>
負極は、負極活物質を含む電極材料層(以下、負極活物質層という場合がある。)と、集電体とから構成されることが好ましい。
【0171】
(負極活物質)
負極活物質としては特に限定されず、例えば、リチウム金属、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び、難黒鉛化性炭素等の炭素質材料を含むもの、ケイ素及びケイ素合金等のシリコン含有化合物、Li4Ti5O12等から選択されるいずれか、又は2種類以上の混合物等を挙げることができる。なかでも、炭素質材料を少なくとも一部に含むものや、シリコン含有化合物を特に好適に使用することができる。
【0172】
本開示において用いる負極活物質は、ケイ素を構成元素に含むことが好適である。ケイ素を構成元素に含むものとすることで、高容量な電池を作製することができる。
【0173】
ケイ素を含む材料としては、ケイ素粒子、ケイ素の微粒子がケイ素系化合物に分散した構造を有する粒子、一般式SiOx(0.5≦x≦1.6)で表される酸化ケイ素粒子、又はこれらの混合物が好ましい。これらを使用することで、より初回充放電効率が高く、高容量でかつサイクル特性に優れたリチウムイオン二次電池用負極合剤が得られる。
【0174】
本開示における酸化ケイ素とは、非晶質のケイ素酸化物の総称であり、不均化前の酸化ケイ素は、一般式SiOx(0.5≦x≦1.6)で表される。xは0.8≦x<1.6が好ましく、0.8≦x<1.3がより好ましい。この酸化ケイ素は、例えば、二酸化ケイ素と金属ケイ素との混合物を加熱して生成した一酸化ケイ素ガスを冷却・析出して得ることができる。
【0175】
ケイ素の微粒子がケイ素系化合物に分散した構造を有する粒子は、例えば、ケイ素の微粒子をケイ素系化合物と混合したものを焼成する方法や、一般式SiOxで表される不均化前の酸化ケイ素粒子を、アルゴン等不活性な非酸化性雰囲気中、400℃以上、好適には800~1,100℃の温度で熱処理し、不均化反応を行うことで得ることができる。特に後者の方法で得た材料は、ケイ素の微結晶が均一に分散されるため好適である。上記のような不均化反応により、ケイ素ナノ粒子のサイズを1~100nmとすることができる。なお、ケイ素ナノ粒子が酸化ケイ素中に分散した構造を有する粒子中の酸化ケイ素については、二酸化ケイ素であることが望ましい。なお、透過電子顕微鏡によってシリコンのナノ粒子(結晶)が無定形の酸化ケイ素に分散していることを確認することができる。
【0176】
ケイ素を含む粒子の物性は、目的とする複合粒子により適宜選定することができる。例えば、平均粒径は0.1~50μmが好ましく、下限は0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。上限は30μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。なお、本開示における平均粒径とは、レーザー回折法による粒度分布測定における重量平均粒径で表すものである。
【0177】
BET比表面積は、0.5~100m2/gが好ましく、1~20m2/gがより好ましい。BET比表面積が0.5m2/g以上であれば、電極に塗布した際の接着性が低下して電池特性が低下するおそれがない。また100m2/g以下であれば、粒子表面の二酸化ケイ素の割合が大きくなり、ナトリウムイオン二次電池用負極材として用いた際に電池容量が低下するおそれがない。
【0178】
上記ケイ素を含む粒子を炭素被覆することで導電性を付与し、電池特性の向上が見られる。導電性を付与するための方法として、黒鉛等の導電性のある粒子と混合する方法、上記ケイ素を含む粒子の表面を炭素被膜で被覆する方法、及びその両方を組み合わせる方法が挙げられるが、炭素被膜で被覆する方法が好ましく、化学蒸着(CVD)する方法がより好ましい。
【0179】
上記負極活物質の含有量は、得られる電極合剤の容量を増やすために、電極合剤中40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0180】
(導電剤)
負極活物質層は、必要に応じてさらに導電剤を含有していてもよい。
上記導電剤としては、公知の導電剤を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、フラーレン、VGCF等の無定形炭素等の炭素材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0181】
導電剤は、負極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量がこの範囲よりも低いと導電性が不十分となる場合がある。逆に、含有量がこの範囲よりも高いと電池容量が低下する場合がある。
【0182】
(バインダー)
負極活物質層は、バインダーを含むことが好適である。
上記バインダーとしては、特に限定されるものではなく、例えば、上述した、正極に用いることができるバインダーと同様のもの等が挙げられる。負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
【0183】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
【0184】
負極活物質層は、更に、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、フッ化ビニリデンや、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0185】
負極活物質に対する熱可塑性樹脂の割合は、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.10質量%以上であり、また、通常3.0質量%以下、好ましくは2.5質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下の範囲である。熱可塑性樹脂を添加することで、電極の機械的強度を向上させることができる。また、この範囲を上回ると、電極合剤に占める電極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や活物質間の抵抗が増大する問題が生じる場合がある。
【0186】
負極活物質層は、増粘剤を含んでもよい。
上記増粘剤としては、上述した、正極に用いることができる増粘剤と同様のものが挙げられる。負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
【0187】
(その他の成分)
本開示の負極合剤は、さらに、レベリング剤、補強材などの他の成分を含有してもよい。
【0188】
負極は、負極活物質層と集電体とを備えている。負極活物質層は、上記負極合剤を用いて形成され、集電体の片面に設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。
【0189】
負極が備える集電体としては、たとえば、鉄、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等の金属箔あるいは金属網、カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料等が挙げられ、なかでも、銅箔が好ましい。
【0190】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属箔が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。薄膜の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。薄膜がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、薄膜がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
【0191】
負極の製造は、常法によればよい。例えば、結着剤および溶媒を混合した後、得られた混合物に、負極活物質などを添加してさらに混合することにより、スラリー状の負極合剤を調製する。そして、得られた負極合剤を、金属箔、金属網等の集電体に均一に塗布した後、塗膜を乾燥させ、任意で熱処理をし、必要に応じて得られた乾燥塗膜をプレスして集電体上へ薄い負極材料層を形成し薄膜状電極とする。そのほか、負極活物質および結着剤などを先に混合した後、溶媒を添加し負極合剤を調製してもよい。
【0192】
上記負極合剤は、溶媒を含有することが好ましい。溶媒としては、水または有機溶剤が挙げられ、負極合剤を用いて負極材料層を形成した場合に、負極材料層に水分が残留する可能性を大きく低下させられることから、有機溶剤が好ましい。
【0193】
有機溶剤としては、たとえば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセト アミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、β-n-ヘキシルオキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のβ-アルコキシプロピオンアミド類;さらに、それらの混合溶剤等の低沸点の汎用有機溶剤を挙げることができる。
【0194】
有機溶剤としては、上記一般式(4)で表される溶剤を用いてもよい。
【0195】
負極合剤中の溶媒の量は、集電体への塗布性、乾燥後の薄膜形成性等を考慮して決定される。通常、結着剤と溶媒との割合は、質量比で0.5:99.5~20:80である。
【0196】
負極板の厚さは用いられる正極板に合わせて設計されるものであり、特に制限されないが、芯材の金属箔厚さを差し引いた合剤層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは280μm以下、より好ましくは250μm以下が望ましい。
【0197】
(電解液)
非水電解液としては、公知の電解質塩を公知の電解質塩溶解用有機溶媒に溶解したものが使用できる。
【0198】
電解質塩溶解用有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの公知の炭化水素系溶媒;フルオロエチレンカーボネート、フルオロエーテル、フッ素化カーボネートなどのフッ素系溶媒の1種もしくは2種以上が使用できる。
【0199】
電解質塩としては、たとえば、NaPF6、NaBF4、NaClO4、NaAlF4、NaSbF6、NaTaF6、NaWF7、NaAsF6,NaAlCl4,NaI、NaBr、NaCl、NaB10Cl10、Na2SiF6、Na2PFO3、NaPO2F2等の無機ナトリウム塩;
NaWOF5等のタングステンナトリウム酸類;
HCO2Na、CH3CO2Na、CH2FCO2Na、CHF2CO2Na、CF3CO2Na、CF3CH2CO2Na、CF3CF2CO2Na、CF3CF2CF2CO2Na、CF3CF2CF2CF2CO2Na等のカルボン酸ナトリウム塩類;
FSO3Na、CH3SO3Na、CH2FSO3Na、CHF2SO3Na、CF3SO3Na、CF3CF2SO3Na、CF3CF2CF2SO3Na、CF3CF2CF2CF2SO3Na、ナトリウムメチルサルフェート、ナトリウムエチルサルフェート(C2H5OSO3Na)、ナトリウム2,2,2-トリフルオロエチルサルフェート等のS=O基を有するナトリウム塩類;
NaN(FCO)2、NaN(FCO)(FSO2)、NaN(FSO2)2、NaN(FSO2)(CF3SO2)、NaN(CF3SO2)2、NaN(C2F5SO2)2、ナトリウムビスパーフルオロエタンスルホニルイミド、ナトリウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、ナトリウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、ナトリウム環状1,2-エタンジスルホニルイミド、ナトリウム環状1,3-プロパンジスルホニルイミド、ナトリウム環状1,4-パーフルオロブタンジスルホニルイミド、NaN(CF3SO2)(FSO2)、NaN(CF3SO2)(C3F7SO2)、NaN(CF3SO2)(C4F9SO2)、NaN(POF2)2等のナトリウムイミド塩類;
NaC(FSO2)3、NaC(CF3SO2)3、NaC(C2F5SO2)3等のナトリウムメチド塩類;
その他、式:NaPFa(CnF2n+1)6-a(式中、aは0~5の整数であり、nは1~6の整数である)で表される塩(例えばNaPF3(C2F5)3、NaPF3(CF3)3、NaPF3(iso-C3F7)3、NaPF5(iso-C3F7)、NaPF4(CF3)2、NaPF4(C2F5)2)、NaPF4(CF3SO2)2、NaPF4(C2F5SO2)2、NaBF3CF3、NaBF3C2F5、NaBF3C3F7、NaBF2(CF3)2、NaBF2(C2F5)2、NaBF2(CF3SO2)2、NaBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機ナトリウム塩類、NaSCN、LiB(CN)4、NaB(C6H5)4、Na2(C2O4)、NaP(C2O4)3、Na2B12FbH12-b(bは0~3の整数)等が挙げられる。
中でも、NaPF6、NaBF4、NaSbF6、NaTaF6、NaPO2F2、FSO3Na、CF3SO3Na、NaN(FSO2)2、NaN(FSO2)(CF3SO2)、NaN(CF3SO2)2、NaN(C2F5SO2)2、ナトリウム環状1,2-パーフルオロエタンジスルホニルイミド、ナトリウム環状1,3-パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、NaC(FSO2)3、NaC(CF3SO2)3、NaC(C2F5SO2)3、NaBF3CF3、NaBF3C2F5、NaPF3(CF3)3、NaPF3(C2F5)3等が出力特性やハイレート充放電特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましく、NaPF6、NaN(FSO2)2及びNaBF4からなる群より選択される少なくとも1種のリチウム塩が最も好ましい。
【0200】
電解質塩の濃度は、0.8モル/リットル以上、さらには1.0モル/リットル以上が必要である。上限は電解質塩溶解用有機溶媒にもよるが、通常1.5モル/リットルである。
【0201】
<セパレータ>
本開示の二次電池は、更に、セパレータを備えることが好ましい。
上記セパレータの材質や形状は、電解液に安定であり、かつ、保液性に優れていれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。なかでも、本開示の電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0202】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルム等、これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。なかでも、上記セパレータは、電解液の浸透性やシャットダウン効果が良好である点で、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等であることが好ましい。
【0203】
セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、8μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、電解液電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0204】
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上が更に好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0205】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
【0206】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化珪素等の酸化物、窒化アルミや窒化珪素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0207】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0208】
<電池設計>
電極群は、上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極板と負極板とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。
【0209】
電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0210】
集電構造は、特に制限されないが、本開示の電解液による高電流密度の充放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本開示の電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0211】
電極群が上記の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。一枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が上記の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0212】
外装ケースの材質は用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0213】
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0214】
本開示のナトリウムイオン二次電池の形状は任意であり、例えば、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等の形状が挙げられる。なお、正極、負極、セパレータの形状及び構成は、それぞれの電池の形状に応じて変更して使用することができる。
【実施例】
【0215】
次に本開示を、実施例を挙げて説明するが、本開示はかかる実施例のみに限定されるものではない。
以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
【0216】
実施例及び比較例で使用した(共)重合体を以下の表1に示す。
【0217】
【0218】
なお、各重合体等の組成、分子量については、以下の方法により測定した。
【0219】
(ポリマー組成)
重合体の組成は、溶液NMR法により測定した。
測定装置:バリアン社製 VNMRS400共鳴周波数:376.04(Sfrq)パルス幅:30°(pw=6.8)
【0220】
(ポリマー中の極性基含有単量体単位の含有量)
極性基含有単量体単位(アクリル酸単位)の含有量は、カルボキシル基の酸-塩基滴定によって測定した。具体的には、約0.5gの共重合体を、70~80℃の温度でアセトンに溶解させた。5mlの水を、共重合体の凝固を回避するように激しい撹拌下に滴々加えた。約-270mVでの中性転移で、酸性度の完全な中和まで0.1Nの濃度を有するNaOH水溶液での滴定を実施した。測定結果から、共重合体1g中に含まれる極性基含 有単量体単位の含有物質量を求め、極性基含有単量体単位の含有量を算出した。
【0221】
(重量平均分子量)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。東ソー社製のAS-8010、CO-8020、カラム(GMHHR-Hを3本直列に接続)および島津製作所社製RID-10Aを用い、溶媒としてジメチルホルムアミド(DMF)を流速1.0ml/分で流して測定したデータ(リファレンス:ポリスチレン)より算出した。
【0222】
実施例1~19、比較例1~5
(正極合剤の調製)
NaFeO2(株式会社高純度化学研究所製):バインダー:カーボンブラック(SUPER-P Li イメリス製)を、質量比で97.00:1.50:1.50となるように秤量した。
なお、バインダーとして、表1~表3に示す共重合体(A)、PVdF、および含フッ素ポリマー(B)を用いた。
バインダーを、濃度が8質量%になるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解させた後、得られたNMP溶液に、所定量のNaFeO2とSPとを加え、撹拌機(プライミクス社製 T.K.HIVIS MIX)で、100rpmで60分攪拌を行い、更に、真空脱泡処理を施しながら、100rpmで30分攪拌を行った。攪拌後のスラリーを、Niメッシュ(200メッシュ)を用いてろ過し、固形分の粒径を均一化して、正極合剤を得た。
【0223】
(正極材料層を備える正極の作製)
得られた正極合剤を、正極集電体(厚さ20μmのアルミ箔)の片面に、塗布量が20mg/cm2となるように均一に塗布し、NMPを完全に揮発させた後、ロールプレス機を用いて、10tの圧力を印加してプレスすることにより、正極材料層および正極集電体を備える正極を作製した。
【0224】
(電解液の調製)
電解液(エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)の体積比3/7の溶媒にNaPF6を1モル/リットルの濃度で溶解した。
【0225】
(負極の作製)
ハードカーボンに、蒸留水で分散させたスチレン-ブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロースをそれぞれ固形分で1.2質量%となるように加え、ディスパーザーで混合してスラリー状としたものを負極集電体(厚さ10μmの銅箔)上に均一に塗布し、乾燥して負極合剤層を形成し、その後ローラープレス機により圧縮成型して、負極を作製した。
(ナトリウムイオン二次電池の作製)
帯状の正極を20mm×30mm(5mm×5mmの正極端子付)に切り取り、また帯状の負極を24mm×34mm(5mm×5mmの負極端子付)に切り取り、各端子にリード体を溶接した。また、厚さ20μmの微孔性ポリエチレンフィルムを28mm×38mmの大きさに切ってセパレータとし、セパレータを挟むように正極と負極をセットし、これらをアルミニウムラミネート包装材内に入れた。ついで、包装材中に電解液を2mlずつ入れて密封してラミネートセルを作製した。
評価結果を、表2~表4に示す。
【0226】
[界面抵抗率の測定]
作製した正極について、25℃環境下、電極抵抗システム(日置電機株式会社製、「RM2610」)を用いて、正極材料層の界面抵抗率(Ω・cm2)を測定した。
【0227】
[初期インピーダンスの測定]
上記で作製したラミネート型電池について、25℃の温度環境下、定電流(0.2C)-定電圧(4.2V)で充電し、放電終止電圧3.0Vまで0.2Cで放電する充放電サイクルを3回行った後、充電率(SOC)100%での0.5C、1C、2C、5C放電時の電圧低下(放電開始15秒後の電圧低下値)を測定して、各電流値と各電圧低下値から初期インピーダンス(Ω)を求めた。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
表2~4の結果より、本開示のバインダーを使用した実施例のナトリウムイオン電池は、界面抵抗率及び初期インピーダンスが低かったことが示された。
【産業上の利用可能性】
【0232】
本開示のバインダーは、ナトリウムイオン電池に好適であり、携帯用電源、自動車用電源等の種々の電源として利用することができる。