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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20240724BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20240724BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240724BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240724BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20240724BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240724BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M4/86 B
H01M8/04537
H01M8/0432
H01M8/24
H01M8/10 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020092562
(22)【出願日】2020-05-27
(65)【公開番号】P2021190234
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】水下 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】竹井 力
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲也
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096624(JP,A)
【文献】特開2018-156798(JP,A)
【文献】特開2019-061963(JP,A)
【文献】特開2007-012328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1触媒層を含む第1セル及び第2触媒層を含む第2セルを有する燃料電池と、
前記燃料電池を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
要求出力を演算する要求出力演算部と、
前記第1セル及び前記第2セルを制御する制御部と、を有し、
前記第1触媒層は、前記第2触媒層と比較して高電位下における耐劣化性が高い担体を含み、
前記第2触媒層は、前記第1触媒層を含む前記第1セルと比較して前記第2セルの出力性を高めることが可能な担体を含み、
前記制御部は、前記要求出力演算部によって演算される前記要求出力が所定出力値以上の際、前記第1セル及び前記第2セルを稼働させ、所定出力値未満の際、前記第2セルと比較して前記第1セルを多く稼働させる燃料電池システム。
【請求項2】
前記第1触媒層に含まれる担体は、酸化物担体であり、
前記第2触媒層に含まれる担体は、カーボン担体である、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記要求出力が前記所定出力値未満であっても、前記燃料電池の温度が規定値以下の際、前記第2セルを稼働させる、請求項1または2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記第1セル及び前記第2セルは、交互に配設されてなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記燃料電池の温度が規定値以上の際、前記第1セルを稼働させる、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記要求出力が所定出力値以上の際、前記第1セルを最大稼働させる、請求項1~5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料電池によって発電される電力を蓄電するバッテリを備え、
前記燃料電池システムは、前記バッテリを介して電力を出力する、請求項1~6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池システムに係り、特に発電性と耐久性の最適化を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
所謂燃料電池自動車(以下、FCV(Fuel Cell Vehicle)という)は、水素タンクに貯留した水素とFCVの外部から取り込んだ空気中に含まれる酸素とを用いて、燃料電池内の電極触媒の発電反応により走行する。この燃料電池は、貴金属である白金を担持する担体を有している。この担体には、一例として、酸化物担体(特許文献1)とカーボン担体(特許文献2)の2種類が挙げられる。
【0003】
酸化物担体は、耐久性に優れ、活性が高いため、低出力領域における発電効率が高いという利点を有している。一方、カーボン担体は、高出力領域における発電効率が高いという利点を有している。
【0004】
しかしながら、酸化物担体は、カーボン担体と比較して高出力領域における発電効率が低く、カーボン担体は、酸化物担体と比較して耐久性が低いという欠点がある。
【0005】
そこで、FCV用の燃料電池には、耐久性が低いことによる劣化を考慮して必要以上の白金を担持したカーボン担体が用いられている。一方、酸化物担体をFCV用の燃料電池に使用することを想定すると、高出力における発電効率が低いことによる出力の低下を補うために必要以上の白金を担持させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-192501号公報
【文献】特開2018-156798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、貴金属として用いられる白金を必要以上に担持させることは、燃料電池のコストを上昇させることとなり、好ましいことではない。特に、白金は、希少な金属であるため、FCVの普及を鑑みると、燃料電池ひとつあたりに使用する白金の量を少なくすることは重要な課題であった。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸化物担体(第1担体)及びカーボン担体(第2担体)の双方の利点及び欠点を補いつつ、担体に使用する白金(貴金属)の使用量の低減を実現できる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の燃料電池システムは、第1触媒層を含む第1セル及び第2触媒層を含む第2セルを有する燃料電池と、前記燃料電池を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、要求出力を演算する要求出力演算部と、前記第1セル及び前記第2セルを制御する制御部と、を有し、前記第1触媒層は、前記第2触媒層と比較して高電位下における耐劣化性が高い担体を含み、前記第2触媒層は、前記第1触媒層を含む前記第1セルと比較して前記第2セルの出力性を高めることが可能な担体を含み、前記制御部は、前記要求出力演算部によって演算される前記要求出力が所定出力値以上の際、前記第1セル及び前記第2セルを稼働させ、所定出力値未満の際、前記第2セルと比較して前記第1セルを多く稼働させることを特徴とする。
【0010】
これにより、第2担体と比較して高電位下における耐劣化性が高い担体である第1担体を含む第1セル及び第1担体と比較して出力性が高い担体である第2担体を含む第2セルを有する燃料電池を、要求出力演算部によって演算される要求出力が所定出力値以上の際は第1セル及び第2セルを稼働させ、所定出力値未満の際は第2セルと比較して第1セルを多く稼働させることで、第1セルの稼働頻度を第2セルの稼働頻度より低くして、燃料電池全体としての劣化度合いの均一化を図るとともに、所定出力値以上の出力が要求された際は第1セルを稼働させて出力を補うことが可能とされる。
【0011】
その他の態様として、前記第1触媒層に含まれる担体は、酸化物担体であり、前記第2触媒層に含まれる担体は、カーボン担体であるのが好ましい。
【0012】
これにより、第1触媒層が酸化物担体を含み、第2触媒層がカーボン担体を含むように構成することで、第1セルの耐劣化性を高め、第2セルの出力性を高めることが可能とされる。
【0013】
その他の態様として、前記制御部は、前記要求出力が前記所定出力値未満であっても、前記燃料電池の温度が規定値以下の際、前記第2セルを稼働させるのが好ましい。
【0014】
これにより、要求出力が所定出力値未満であっても、燃料電池の温度が規定値以下の際に第2セルを稼働することで、第2セルを積極的に稼働させて、燃料電池の稼働に最適な温度、すなわち規定値まで燃料電池を温めることが可能とされる。
【0015】
その他の態様として、前記第1セル及び前記第2セルは、交互に配設されてなるのが好ましい。
【0016】
これにより、第1セル及び第2セルを交互に配設することで、一方が稼働する際に生じる熱を利用して他方を温めることが可能とされる。
【0017】
その他の態様として、前記制御部は、前記燃料電池の温度が規定値以上の際、前記第1セルを稼働させるのが好ましい。
【0018】
これにより、第1セル及び第2セルが交互に配設される、換言すると、第2セルを挟むように配設された第1セルを、燃料電池の温度が規定値以上の際に稼働することで、第1セルの稼働により発電しつつ、第1セルの稼働により生じる熱を利用して第2セルを温めることが可能とされる。
【0019】
その他の態様として、前記制御部は、前記要求出力が所定出力値以上の際、前記第1セルを最大稼働させるのが好ましい。
【0020】
これにより、要求出力が所定出力値以上の際、第1セルを最大稼働することで、例えば第1セルの最大出力が所定出力値であるとすれば、要求出力のうち所定出力値を超えた分を第2セルによって補うようにして第1セルの稼働頻度をより低く可能とされる。
【0021】
その他の態様として、前記燃料電池によって発電される電力を蓄電するバッテリを備え、前記燃料電池システムは、前記バッテリを介して電力を出力するのが好ましい。
【0022】
これにより、燃料電池システムに備えられるバッテリを介して電力を出力することで、例えばすべてのセルを第2セルとした燃料電池と比較して最大出力が低い本発明にかかる燃料電池であっても、バッテリに蓄電された電力を併せて出力できるので、一時的な出力不足が生じることを防止可能とされる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の燃料電池システムによれば、第2担体と比較して高電位下における耐劣化性が高い担体である第1担体を含む第1セル及び第1担体と比較して出力性が高い担体である第2担体を含む第2セルを有する燃料電池を、要求出力演算部によって演算される要求出力が所定出力値以上の際は第1セル及び第2セルを稼働させ、所定出力値未満の際は第2セルと比較して第1セルを多く稼働させたので、第1セルの稼働頻度を第2セルの稼働頻度より低くして、燃料電池全体としての劣化度合いの均一化を図るとともに、所定出力値以上の出力が要求された際は第1セルを稼働させて出力を補うことができる。
【0024】
これにより、第1担体及び第2担体の双方の利点及び欠点を補いつつ、担体に含まれる貴金属の量を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】車両の概略構成図である。
図2】燃料電池の構成図である。
図3】本発明に係る燃料電池システムの制御に係るECUの接続構成が示されたブロック図である。
図4】ECUが実行する、本発明に係る燃料電池システムの制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図5】要求出力演算部が実行する、要求出力演算制御の制御手順のルーチンを示すフローチャートである。
図6】稼働セル設定部が実行する、稼働セル設定制御に用いられる表である。
図7】要求出力(横軸)と燃料電池21の出力(縦軸)との相関を示すグラフである。
図8】別実施例における、稼働セル設定部が実行する、稼働セル設定制御に用いられる表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。
【0027】
図1を参照すると、車両1の概略構成図が示されている。車両1には、駆動輪3、従動輪5、モータ7、減速機9、駆動軸11及び燃料電池システム13が搭載されている。この車両1は、燃料電池システム13から電力の供給を受けたモータ7が減速機9を介して駆動軸11を回転させることで、駆動輪3を駆動して走行可能である。
【0028】
すなわち、車両1は、水素燃料及び車両1外部の空気中に含まれる酸素から電気エネルギを生成する所謂FCVである。また、車両1は、バッテリ31に蓄電した電力でモータ7を駆動して走行可能な所謂ハイブリット車でもある。
【0029】
燃料電池システム13は、燃料電池21、水素タンク23、コンプレッサ25、バッテリ31及びインバータ33を備えている。燃料電池21は、水素(燃料)と酸素とを結合させて水を生成する際に電気エネルギを生成(発電)可能な水素燃料電池である。なお、燃料電池21の詳細な構成については後述する。
【0030】
水素タンク23は、水素を高圧下で貯蓄するタンクである。この水素タンク23に貯蓄されている水素は、水素供給経路23aを介して燃料電池21に供給される。また、燃料電池21で消費されなかった水素は、水素排出経路23bを介して再び水素タンク23に貯蓄される。コンプレッサ25は、車両1の外部から空気を吸引する吸引装置である。このコンプレッサ25によって吸引された空気は、空気供給経路25aを介して燃料電池21に供給される。
【0031】
これにより、燃料電池21は、水素タンク23に貯蓄されている水素と車両1の外部からコンプレッサ25によって吸引する空気内に含まれている酸素とを結合させることで発電できる。このように発電した燃料電池21は、発電する際に生成された水である水蒸気や空気中に含まれる酸素以外の物質を空気排出経路25bを介して車両1の外部に排出する。
【0032】
バッテリ31は、繰り返し充放電可能な、例えばリチウムイオン二次電池である。インバータ33は、電圧を昇圧または降圧することや、交流電流から直流電流または直流電流から交流電流に変換可能な変換装置である。このインバータ33は、モータ7、燃料電池21及びバッテリ31と通電可能に接続している。
【0033】
これにより、インバータ33は、燃料電池21によって発電された直流電流の電力を昇圧または降圧してバッテリ31に蓄電することや、バッテリ31に蓄電された電力を三相交流電流に変換してモータ7に供給可能である。ゆえに、車両1は、燃料電池21によって発電した電力をバッテリ31に蓄電し、バッテリ31に蓄電された電力を用いてモータ7を駆動して走行できる。
【0034】
また、インバータ33は、バッテリ31を介さずに、燃料電池21によって発電された直流電流の電力をモータ7に供給することも可能である。すなわち、インバータ33は、バッテリ31に蓄電された電力とともに、燃料電池21によって発電された電力を併せてモータ7に供給できる。
【0035】
図2を参照すると、燃料電池21の構成図が示されている。燃料電池21には、第1セルC1、第2セルC2、第3セル(第1セル)C3及び第4セル(第2セルC2)C4が一列に並べて配設されている。また、各セルは、アノード集電板44、第1カソード集電板45a、第2カソード集電板45b、第3カソード集電板45c及び第4カソード集電板45dによって仕切られている。
【0036】
第1セルC1は、アノードセパレータ41とカソードセパレータ42との間に膜電極接合体43を挟むようにして構成されている。アノードセパレータ41は、水素供給経路23aから供給される水素を膜電極接合体43の接触する面に均一に拡散させる多孔質材料である。カソードセパレータ42は、空気供給経路25aから供給される空気を膜電極接合体43の接触する面に均一に拡散させる多孔質材料である。
【0037】
膜電極接合体43は、高分子電解質膜43a、第1触媒層43b及びガス拡散層43cを含んでいる。高分子電解質膜43aは、例えばプロトン交換膜やアニオン交換膜等の固体高分子膜である。第1触媒層43bは、多孔質の電気伝導性を有するセラミックスナノ粒子(SnO2、TiO2等)を含む担体(酸化物担体)に白金やパラジウムなどの貴金属の触媒を担持させて形成されている。この第1触媒層43bは、高分子電解質膜43aの両面に配設されている。ガス拡散層43cは、例えば導電性多孔質体やカーボン繊維で形成されており、水素や空気を拡散させることが可能である。このガス拡散層43cは、第1触媒層43bをさらに挟むように配設されている。
【0038】
これにより、第1セルC1は、アノードセパレータ41に供給された水素をガス拡散層43cにて拡散させて均一に第1触媒層43b及び高分子電解質膜43aに供給し、カソードセパレータ42に供給された空気をガス拡散層43cにて拡散させて均一に第1触媒層43b及び高分子電解質膜43aに供給し、高分子電解質膜43a及び第1触媒層43bにて水素イオンと酸素イオンとを結合させて水を生成し、水蒸気として空気排出経路25bから排出する。
【0039】
このとき、水素を水素イオンに分解する際に発生する電子は、アノード集電板44及びアノード側に延びるアノード電線41Lを介してアノード側に移動し、カソードセパレータ42内の酸素を酸素イオンに分解するために必要な電子は、第1カソード集電板45a及びカソード側に延びるカソード電線42Lを介してカソード側から供給される。これにより、膜電極接合体43のアノード側から水素イオンが供給され、カソード側から酸素イオンが供給されて水素と酸素とを結合させることができる。また、このように第1セルC1内で水素と酸素とを結合させて水を生成することで、電子の移動が発生して発電できる。なお、第3セルC3も同様の構成であるため、説明を省略する。
【0040】
ここで、第2セルC2及び第4セルC4の膜電極接合体43には、第1触媒層43bに代えて、第2触媒層43dが設けられている。第2触媒層43dは、主に、第1触媒層43bがセラミックスナノ粒子を含む担体を用いているのに対し、カーボンナノ粒子を含む担体が用いられている点で相違する。これにより、第2セルC2及び第4セルC4は、第1セルC1及び第3セルC3と比較して出力性を高めることが可能に構成され、第1セルC1及び第3セルC3は、第2セルC2及び第4セルC4と比較して第1触媒層43bの耐劣化性を高めることが可能に構成されている。
【0041】
第1セルC1のアノードセパレータ41には、水素供給経路23aから供給される水素の量を調整及び閉弁可能な第1水素供給弁51aが設けられている。また、アノードセパレータ41には、水素排出経路23bに排出される水素の量を調整及び閉弁可能な第1水素排出弁51bが設けられている。同様に、第1セルC1のカソードセパレータ42には、空気供給経路25aから供給される空気の量を調整及び閉弁可能な第1空気供給弁51cが設けられている。
【0042】
また、カソードセパレータ42には、空気排出経路25bに排出される空気の量を調整及び閉弁可能な第1空気排出弁51dが設けられている。また、これら第1水素供給弁51a、第1水素排出弁51b、第1空気供給弁51c及び第1空気排出弁51dは、図示はしないが、後述するECU80と電気的に接続しており、それぞれの開閉を制御できる。
【0043】
この第1水素供給弁51a、第1水素排出弁51b、第1空気供給弁51c及び第1空気排出弁51dをそれぞれ制御することで、アノードセパレータ41及びカソードセパレータ42の水素及び空気の流量を調整できる。このようにアノードセパレータ41及びカソードセパレータ42の水素及び空気の流量を調整することで、水素及び空気の流量を増加させて第1セルC1における発電を促進することや、アノードセパレータ41に水素を供給することを停止してアノードセパレータ41内の水素を消費できる。
【0044】
なお、第2セルC2、第3セルC3及び第4セルC4にも同様に第2水素供給弁52a、第2水素排出弁52b、第2空気供給弁52c及び第2空気排出弁52d、第3水素供給弁53a、第3水素排出弁53b、第3空気供給弁53c及び第3空気排出弁53d並びに第4水素供給弁54a、第4水素排出弁54b、第4空気供給弁54c及び第4空気排出弁54dが設けられており、同様の構成であるため、ここでの説明は省略する。また、説明の便宜上、上記供給弁51a、51c、52a、52c、53a、53c、54a、54c、及び上記排出弁51b、51d、52b、52d、53b、53d、54b、54dを総じて制御弁50ともいう。
【0045】
第1セルC1と第2セルC2とを仕切る第1カソード集電板45aは、第1カソードスイッチ61を介してカソード電線42Lに接続している。第1カソードスイッチ61は、通電(ON)または絶縁(OFF)に切り替えることが可能なスイッチである。換言すると、第1カソードスイッチ61は、ONにすることで第1セルC1の電位を下げるとともにカソード電線42Lに放電でき、OFFにすることで、第1セルC1の電位が下がることを抑制できる。
【0046】
この第1カソードスイッチ61は、後述するECU80と電気的に接続しており、制御できる。なお、第2カソード集電板45b、第3カソード集電板45c及び第4カソード集電板45dからカソード電線42Lに接続する第2カソードスイッチ62、第3カソードスイッチ63及び第4カソードスイッチ64についても同様の構成であるため、説明を省略する。また、説明の便宜上、第1カソードスイッチ61、第2カソードスイッチ62、第3カソードスイッチ63及び第4カソードスイッチ64を総じてカソード出力スイッチ60ともいう。
【0047】
アノード集電板44は、第1カソードスイッチ61と同様の第1アノードスイッチ66を介してアノード電線41Lに接続している。第1アノードスイッチ66は、通電(ON)または絶縁(OFF)に切り替えることが可能なスイッチである。換言すると、第1アノードスイッチ66は、ONにすることで第1セルC1の電位を下げるとともにアノード電線41Lに放電でき、OFFにすることで、第1セルC1の電位が下がることを抑制できる。
【0048】
この第1アノードスイッチ66は、後述するECU80と電気的に接続しており、制御できる。なお、第1カソード集電板45a、第2カソード集電板45b及び第3カソード集電板45cからアノード電線41Lに接続する第2アノードスイッチ67、第3アノードスイッチ68及び第4アノードスイッチ69についても同様の構成であるため、説明を省略する。また、説明の便宜上、第1アノードスイッチ66、第2アノードスイッチ67、第3アノードスイッチ68及び第4アノードスイッチ69を総じてアノード出力スイッチ65ともいう。
【0049】
このように、燃料電池21は、アノード集電板44、第1カソード集電板45a、第2カソード集電板45b、第3カソード集電板45c及び第4カソード集電板45dにカソード出力スイッチ60及びアノード出力スイッチ65が配設されることにより、例えば第1カソードスイッチ61及び第1アノードスイッチ66をONにし、その他のカソード出力スイッチ60及びアノード出力スイッチ65をOFFにするようにして、セルを選択的に稼働させることができる。
【0050】
第1カソード集電板45aと第1カソードスイッチ61との間には、第1電圧センサ71が配設されている。第1電圧センサ71は、第1カソード集電板45aからカソード電線42Lに通電する電流の電圧値を検出するセンサである。なお、第2カソード集電板45b、第3カソード集電板45c及び第4カソード集電板45dからカソード電線42Lに接続する第2電圧センサ72、第3電圧センサ73及び第4電圧センサ74についても同様の構成であるため、説明を省略する。また、説明の便宜上、第1電圧センサ71、第2電圧センサ72、第3電圧センサ73及び第4電圧センサ74を総じて電圧センサ(電圧検出部)70ともいう。
【0051】
図1に戻り、バッテリ31には、SOCセンサ75が配設されている。このSOCセンサ75は、バッテリ31の充電率であるSOC(State of Charge)を検出可能なセンサである。また、燃料電池21には、温度センサ76が配設されている。温度センサ76は、例えば燃料電池21内を流通する冷却水の温度に基づいて燃料電池21内の温度を検出するセンサである。
【0052】
さらに、図示しない運転席における運転手の足元には、アクセルペダル77が配設されている。このアクセルペダル77は、運転手が踏圧量を調整することにより車両1の加速度を調整可能である。また、アクセルペダル77には、アクセルペダル77の踏圧量を検出可能な踏圧センサ77aが設けられている。
【0053】
図3を参照すると、本発明に係る燃料電池システム13の制御に係るECU80の接続構成がブロック図で示されている。以下、説明の便宜上、第1セルC1及び第3セルC3を低出力セル(第1セル)CLと、第2セルC2及び第4セルC4を高出力セル(第2セル)CHともいう。また、低出力セルCLを稼働または停止させる際に開閉する制御弁50並びにONまたはOFFにするカソード出力スイッチ60及びアノード出力スイッチ65を低出力制御弁50L及び低出力スイッチ60Lともいう。またさらに、高出力セルCHを稼働または停止させる際に開閉する制御弁50並びにONまたはOFFにするカソード出力スイッチ60及びアノード出力スイッチ65を高出力制御弁50H及び高出力スイッチ60Hともいう。
【0054】
ECU(制御装置)80は、燃料電池システム13の運転制御をはじめとして総合的な制御を行うための制御装置であり、入出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU)等を含んで構成されている。このECU80の入力側には、SOCセンサ75、温度センサ76及び踏圧センサ77aが電気的に接続している。これにより、SOCセンサ75からはバッテリ31のSOCに関する情報が入力され、温度センサ76からは燃料電池21内の温度に関する情報が入力され、踏圧センサ77aからは運転手によるアクセルペダル77の踏圧量に関する情報が入力される。
【0055】
一方、ECU80の出力側には、低出力セルCLの低出力制御弁50L及び低出力スイッチ60L並びに高出力セルCHの高出力制御弁50H及び高出力スイッチ60Hが電気的に接続している。これにより、低出力制御弁50L及び低出力スイッチ60Lを制御することで、低出力セルCLの出力を制御でき、高出力制御弁50H及び高出力スイッチ60Hを制御することで、高出力セルCHの出力を制御できる。
【0056】
また、ECU80には、要求出力演算部81、稼働セル設定部82及び稼働制御部(制御部)85が設けられている。要求出力演算部81は、SOCセンサ75から入力されるバッテリ31のSOCに関する情報、温度センサ76から入力される燃料電池21内の温度に関する情報及び踏圧センサ77aから入力されるアクセルペダル77の踏圧量に関する情報に基づいて、後述する要求出力演算制御を実行し、要求出力の範囲(後述する第1範囲~第4範囲)を演算する演算部である。
【0057】
稼働セル設定部82は、要求出力演算部81の演算結果に基づいて、後述する稼働セル設定制御を実行し、稼働するセルを設定する設定部である。
【0058】
稼働制御部85は、稼働セル設定部82によって設定された稼働するセルの低出力セルCLの低出力制御弁50L及び低出力スイッチ60L並びに高出力セルCHの高出力制御弁50H及び高出力スイッチ60Hを制御する制御部である。
【0059】
図4を参照すると、ECU80が実行する、本発明に係る燃料電池システム13の制御手順を示すルーチンがフローチャートで示されており、以下、同フローチャートに沿い説明する。まず、全体的な流れとして、ステップS10では、要求出力演算部81により、要求出力演算制御を実行することで、上記した要求出力の範囲を演算する。その後、ステップS20では、稼働セル設定部82により、稼働セル設定制御を実行することで、上記した稼働するセルを設定する。そして、ステップS30では、稼働セル設定制御によって設定された稼働するセルを稼働させる稼働制御を実行し、本ルーチンを繰り返し実行する。
【0060】
図5を参照すると、要求出力演算部81が実行する、要求出力演算制御の制御手順を示すルーチンがフローチャートで示されている。ステップS11では、アクセルペダル77の踏圧量が所定値(例えば最大踏圧量の60%)以上か否かを判別する。ステップS11の判別結果が真(Yes)でアクセルペダル77の踏圧量が所定値以上であると判別した場合には、ステップS15に移行し、要求出力を第1範囲(所定出力値)として設定したあと、要求出力演算制御を終了する。一方、ステップS11の判別結果が偽(No)でアクセルペダル77の踏圧量が所定値未満であると判別した場合には、ステップS12に移行する。
【0061】
ステップS12では、バッテリ31のSOCが一定値(例えば50%)以下か否かを判別する。ステップS12の判別結果が真(Yes)でバッテリ31のSOCが一定値以下であると判別するとステップS16に移行し、要求出力を第2範囲として設定したあと、要求出力演算制御を終了する。一方、ステップS12の判別結果が偽(No)でバッテリ31のSOCが一定値未満であると判別した場合には、ステップS13に移行する。
【0062】
ステップS13では、燃料電池21内の温度が規定値(例えば100℃)以上か否かを判別する。ステップS13の判別結果が真(Yes)で燃料電池21内の温度が規定値以下であると判別した場合には、ステップS17に移行し、要求出力を第3範囲として設定したあと、要求出力演算制御を終了する。一方、ステップS13の判別結果が偽(No)で燃料電池21内の温度が規定値より高いと判別した場合には、ステップS18に移行し、要求出力を第4範囲として設定したあと、要求出力演算制御を終了する。
【0063】
このように、ステップS11~ステップS18では、アクセルペダル77の踏圧量(ステップS11)、バッテリ31のSOC(ステップS12)及び燃料電池21内の温度(ステップS13)に基づいて、要求出力を第1範囲から第4範囲までの範囲に判別して設定(ステップS15~S18)できる。
【0064】
図4に戻り、ステップS10の要求出力演算制御で要求出力を設定すると、ステップS20に移行し、稼働セル設定制御を実行する。
【0065】
図6を参照すると、稼働セル設定部82が実行する、稼働セル設定制御に用いられる表(表1)が示されている。要求出力が第1範囲のとき、第1セルC1及び第3セルC3を最大出力で稼働(最大稼働)させ、第2セルC2及び第4セルC4を踏圧量に応じて調整して稼働させる(調整稼働)よう各セルの稼働態様を設定する。すなわち、ステップS20では(図4)、稼働制御部85は、低出力セルCLを最大稼働し、要求出力を満たすように高出力セルCHを調整稼働する。
【0066】
また、要求出力が第2範囲のとき、第1セルC1及び第3セルC3を最大稼働させ、第2セルC2及び第4セルC4を停止させるよう各セルの稼働態様を設定する。すなわち、ステップS20では、稼働制御部85は、低出力セルCLを最大稼働させ、高出力セルCHを停止させる。
【0067】
またさらに、要求出力が第3範囲のとき、第1セルC1及び第3セルC3を調整稼働させ、第2セルC2及び第4セルC4の稼働を停止させるよう各セルの稼働態様を設定する。すなわち、ステップS20では、低出力セルCLを調整稼働させ、高出力セルCHを停止させる。
【0068】
そして、要求出力が第4範囲のとき、すべてのセルの稼働を停止させるよう各セルの稼働態様を設定する。すなわち、ステップS20では、すべてのセルを停止させる。
【0069】
図4に戻り、稼働制御S30では、稼働セル設定制御に基づき、各セルを最大稼働、調整稼働または停止させて本ルーチンを終了し、再び同ルーチンを繰り返し実行する。
【0070】
図7を参照すると、要求出力(横軸)と燃料電池21の出力(縦軸)との相関がグラフで示されている。以下、図4図7に基づき、本発明の作用及び効果を説明する。
【0071】
上記したように、インバータ33は、バッテリ31に蓄電された電力とともに、燃料電池21によって発電された電力を併せてモータ7に供給可能である。したがって、運転手がアクセルペダル77を踏圧して車両1を加速させるとき、モータ7は、バッテリ31に蓄電された電力と併せてバッテリ31を介さずに燃料電池21から供給される電力により駆動することで、バッテリ31に蓄電された電力の供給のみによる駆動よりも高い駆動力で駆動できる。
【0072】
ここで、図7によると、第2セルC2及び第4セルC4が本実施形態のように高出力セルCHである場合(場合1)は、第2セルC2及び第4セルC4が仮に低出力セルCLである場合(場合2)と比較して第1範囲における燃料電池出力が高い。したがって、第2セルC2及び第4セルC4を高出力セルCHとしたことで、要求出力が大きいときにおける燃料電池21の出力を好適に高めることができる。
【0073】
ゆえに、アクセルペダル77の踏圧量が所定値以上のときは(ステップS11でYes)、低出力セルCLを最大稼働し、要求出力を満たすように高出力セルCHを調整稼働することで(ステップS15、ステップS20、表1の「第1範囲」列)、バッテリ31に蓄電された電力やモータ7に供給される第1セルC1及び第3セルC3を稼働して発電される電力だけでは足りない出力を第2セルC2及び第4セルC4の調整稼働により好適に補うことができる。
【0074】
特に、低出力セルCLを最大稼働させる一方で高出力セルCHを調整稼働することで、高出力セルCHの稼働量を少なくして、高出力セルCHの劣化を軽減できる。
【0075】
また、アクセルペダル77の踏圧量が所定値未満のときであって(ステップS11でNo)、バッテリ31のSOCが一定値以下のときは(ステップS12でYes)、低出力セルCLを最大稼働し、要求出力を満たすように高出力セルCHを調整稼働することで(ステップS16、ステップS20、表1の「第2範囲」列)、バッテリ31に蓄電された電力やモータ7に供給される第1セルC1及び第3セルC3を稼働して発電される電力のみによりバッテリ31を充電できる。したがって、全体的な高出力セルCHの稼働時間を少なくして、高出力セルCHの劣化を軽減できる。
【0076】
またさらに、アクセルペダル77の踏圧量が所定値未満のときであって(ステップS11でNo)、バッテリ31のSOCが一定値より高く(ステップS12でNo)、燃料電池21の温度が規定値以下である場合には(ステップS12でYes)、低出力セルCLを停止させ、高出力セルCHを調整稼働させる(ステップS17、S20、表1の「第3範囲」列)。これにより、高出力セルCHが稼働することによって生じる熱を利用して燃料電池21を温めることができる。
【0077】
そして、アクセルペダル77の踏圧量が所定値未満のときであって(ステップS11でNo)、バッテリ31のSOCが一定値より高く(ステップS12でNo)、燃料電池21の温度が規定値より高いである場合には(ステップS12でNo)、すべてのセルを停止させる(ステップS18、S20、表1の「第4範囲」列)。したがって、バッテリ31に蓄電されている電力を活用して、すべてのセルの使用頻度を低下させることができる。
【0078】
ゆえに、本発明に係る燃料電池システム13は、第1範囲のような要求出力が比較的大きいときには高出力を発揮可能な高出力セルCHを稼働して出力を向上させることができる一方、第2~3範囲のような要求出力が比較的小さいときには耐劣化性の高い低出力セルCLによって発電された電力により車両1を走行させることやバッテリ31を充電できる。
【0079】
図8を参照すると、別実施例における稼働セル設定制御に用いられる表(表2)が示されている。別実施例における表2は、表1に対し、「第3範囲」列における各セルの稼働態様が異なる。
【0080】
具体的には、要求出力が第3範囲のとき、低出力セルCLを停止させ、高出力セルCHを調整稼働させる。
【0081】
これにより、要求出力が第3範囲のときには、例外的に、高出力セルCHを稼働させることで、高出力セルCHが稼働することによって生じる熱を利用して高出力セルCHに挟まれるように位置する低出力セルCLを温めることができる。
【0082】
以上説明したように、本発明に係る燃料電池システム13では、第1触媒層43bを含む低出力セルCL及び第2触媒層43dを含む高出力セルCHを有する燃料電池21と、燃料電池21を制御するECU80と、を備え、ECU80は、要求出力を演算する要求出力演算部81と、低出力セルCL及び高出力セルCHを制御する稼働制御部85と、を有し、第1触媒層43bは、第2触媒層43dと比較して耐劣化性が高い担体を含み、第2触媒層43dは、第1触媒層43bを含む低出力セルCLと比較して高出力セルCHの出力性を高めることが可能な担体を含み、稼働制御部85は、要求出力演算部81によって演算される要求出力が第1範囲以上の際、低出力セルCL及び高出力セルCHを稼働させ、第1範囲未満の際、高出力セルCHと比較して低出力セルCLを多く稼働させる。
【0083】
従って、第2触媒層43dと比較して耐劣化性が高い担体を含む第1触媒層43bを含む低出力セルCL及び第1触媒層43bと比較して高出力セルCHの出力性を高めることが可能な第2触媒層43dを含む高出力セルCHを有する燃料電池21を、要求出力演算部81によって演算される要求出力が第1範囲以上の際は低出力セルCL及び高出力セルCHを稼働させ、第1範囲未満の際は高出力セルCHと比較して低出力セルCLを多く稼働させるように制御したので、低出力セルCLの稼働頻度を高出力セルCHの稼働頻度より低くして、燃料電池21全体としての劣化度合いの均一化を図るとともに、第1範囲以上の出力が要求された際は低出力セルCLを稼働させて出力を補うことができる。
【0084】
そして、第1触媒層43bは、酸化物担体触媒を含み、第2触媒層43dは、カーボン担体触媒を含むように構成したので、低出力セルCLの耐劣化性を高め、高出力セルCHの出力性を高めることができる。
【0085】
そして、稼働制御部85は、要求出力が第1範囲未満であっても、燃料電池21の温度が規定値以下の際、高出力セルCHを稼働させるようにしたので、高出力セルCHを積極的に稼働させて、燃料電池21の稼働に最適な温度、すなわち規定値まで燃料電池21を温めることができる。
【0086】
そして、低出力セルCL及び高出力セルCHは、交互に配設されてなるので、一方のセルが稼働する際に生じる熱を利用して他方のセルを温めることができる。
【0087】
そして、稼働制御部85は、燃料電池21の温度が規定値以上の際、低出力セルCLを稼働させる、換言すると、高出力セルCHを挟むように配設された低出力セルCLを、燃料電池21の温度が規定値以上の際に稼働するようにしたので、低出力セルCLの稼働により発電しつつ、低出力セルCLの稼働により生じる熱を利用して高出力セルCHを温めることができる。
【0088】
そして、稼働制御部85は、要求出力が第1範囲以上の際、低出力セルCLを最大稼働させるようにしたので、例えば低出力セルCLの最大出力が第1範囲であるとすれば、要求出力のうち第1範囲を超えた分を高出力セルCHによって補うようにして低出力セルCLの稼働頻度をより低くできる。
【0089】
そして、燃料電池21によって発電される電力を蓄電するバッテリ31を備え、燃料電池システム13は、バッテリ31を介して電力を出力するようにしたので、本発明にかかる燃料電池21のように、例えばすべてのセルを高出力セルCHとした燃料電池21と比較して最大出力が低い燃料電池であっても、バッテリ31に蓄電された電力を併せて出力できるので、一時的な出力不足が生じることを防止できる。
【0090】
以上で本発明に係る燃料電池システムの説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0091】
例えば、本実施形態では、本発明に係る燃料電池システム13をFCVである車両1に搭載するようにしたが、鉄道車両や船舶、飛行体に使用するようにしてもよい。
【0092】
また、本実施形態では、第1範囲に低出力セルCLを最大稼働し高出力セルCHを調整稼働するようにしたが、高出力セルCHを最大稼働し低出力セルCLを調整稼働するようにしてもよい。
【0093】
また、本実施形態では、各フローを用いて制御態様を説明したが、これらフローの順番は一例であり、本発明を実施可能な程度に順番を入れ替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0094】
13 燃料電池システム
21 燃料電池
43b 第1触媒層
43d 第2触媒層
31 バッテリ
80 ECU(制御装置)
81 要求出力演算部
85 稼働制御部(制御部)
CL 低出力セル(第1セル)
CH 高出力セル(第2セル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8