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  • 特許-車両の振動抑制システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】車両の振動抑制システム
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/12 20060101AFI20240724BHJP
【FI】
B60T7/12 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021055950
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022152971
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 功貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 丈晴
(72)【発明者】
【氏名】田邉 亘
(72)【発明者】
【氏名】長尾 剛
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-280640(JP,A)
【文献】特開2011-073680(JP,A)
【文献】特開2019-172138(JP,A)
【文献】特開2000-016258(JP,A)
【文献】特開2013-132991(JP,A)
【文献】特開2006-335314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の全ての走行輪に夫々備えられ、電動アクチュエータにより作動して前記走行輪を制動する電動ブレーキ装置と、
前記車両のサスペンション装置におけるばね上重量に所定以上の変化が生じることを予測する重量変化予測部と、
前記車両の停車時に前記ばね上重量に所定以上の変化が生じると予測した場合に、前記車両の全ての走行輪の前記電動ブレーキ装置を作動制御して前記走行輪を強制制動させるとともに強制制動状態を維持する制動制御部と、
を備えたことを特徴とする車両の振動抑制システム。
【請求項2】
前記車両のドアまたはゲートの開閉を検出する開閉検出部、または前記ドアまたはゲートの施開錠を検出する施開錠検出部を備え、
前記重量変化予測部は、前記車両のドアまたはゲートの少なくとも1つが閉状態から開状態になったことを検出した場合、または前記ドアまたはゲートの施錠機構が施錠状態から解錠されたことを検出した場合に、前記ばね上重量に所定以上の変化が生じると予測することを特徴とする請求項1に記載の車両の振動抑制システム。
【請求項3】
前記車両の座席に作用する荷重を検出する着座検出部を備え、
前記重量変化予測部は、前記座席に作用する荷重が所定以上増加または減少したことを検出した場合、
前記ばね上重量に所定以上の変化が生じると予測することを特徴とする請求項1に記載の車両の振動抑制システム。
【請求項4】
前記車両の座席のシートベルトの着脱を検出するシートベルト検出部を備え、
前記重量変化予測部は、前記シートベルトが固定状態から外されたことを検出した場合に、前記ばね上重量に所定以上の変化が生じると予測することを特徴とする請求項1に記載の車両の振動抑制システム。
【請求項5】
前記電動ブレーキ装置は、前記車両のブレーキペダルの操作量に基づいて前記走行輪を制動し、
前記制動制御部は、前記ブレーキペダルが所定量以上の操作量で操作されている場合には、前記強制制動を禁止することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両の振動抑制システム。
【請求項6】
前記車両のドアまたはゲートの開閉を検出する開閉検出部、または前記ドアまたはゲートの施開錠を検出する施開錠検出部を備え、
前記重量変化予測部は、前記車両のドア及びゲートの全てが開状態から閉状態になったことを検出した場合、または前記ドアまたはゲートの施錠機構が解錠状態から施錠されたことを検出した場合に、前記制動制御部による前記強制制動を終了させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の振動抑制システム。
【請求項7】
前記車両の座席に作用する荷重を検出する着座検出部、または前記座席のシートベルトの着脱を検出するシートベルト検出部を備え、
前記重量変化予測部は、荷重増加にともない着座を検出した全ての座席の前記シートベルトが固定状態とされたことを検出した場合に、前記制動制御部による前記強制制動を終了させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の振動抑制システム。
【請求項8】
前記制動制御部は、前記強制制動の開始から第1の所定時間経過後に、前記強制制動を終了する請求項1から5のいずれか1項に記載の車両の振動抑制システム。
【請求項9】
前記制動制御部は、前記重量変化予測部において、前記ばね上重量に所定以上の変化の終了が予測されてから第2の所定時間経過後に、前記強制制動を終了する請求項1から7のいずれか1項に記載の車両の振動抑制システム。
【請求項10】
前記制動制御部は、前記強制制動の実行中に前記車両のアクセルが操作された場合には、警告音を発生させ、更にアクセル操作が継続された場合に前記強制制動を解除することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の車両の振動抑制システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停車時における車両の振動を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動ブレーキ装置を備えた車両が増加している。ブレーキ装置を電動化することで、車両の制動及び停止保持を容易に自動制御化することが可能となる。したがって、例えばアダプティブクルーズコントロール装置を備えた車両に電動ブレーキ装置を採用することで、停止を含む全車速域で追従走行が容易に可能になる。
特許文献1には、電動モータによりキャリパを作動させて制動する電動ブレーキ装置が開示されている。更に、特許文献1には、ラチェットギヤに爪部材を係合させることで、車両の停止時における制動保持を行うパーキング機構において、爪部材をソレノイドによって作動制御する電動パーキングブレーキ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-157903号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、走行時における路面の凹凸が車体に伝達することを抑制するために、サスペンション装置が備えられている。しかしながら、車両への乗員の乗降や、荷物の積み下ろしのように、停車時に車体に作用する荷重が変動した場合には、たとえパーキングブレーキ装置によって車両が停止していても、サスペンション装置を備えていることで車体が上下に振動してしまい、乗員や作業者に不快感を与える可能性がある。
【0005】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、電動ブレーキ装置を備えた車両において、簡単な構成で、車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろし時における車体の振動を抑制して快適性を向上させる車両の振動抑制システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の車両の振動抑制システムは、車両の全ての走行輪に夫々備えられ、電動アクチュエータにより作動して前記走行輪を制動する電動ブレーキ装置と、前記車両のサスペンション装置におけるばね上重量に所定以上の変化が生じることを予測する重量変化予測部と、前記車両の停車時に前記ばね上重量に所定以上の変化が生じると予測した場合に、前記車両の全ての走行輪の前記電動ブレーキ装置を作動制御して前記走行輪を強制制動させるとともに強制制動状態を維持する制動制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
これにより、停車時に、重量変化予測部においてばね上重量に所定以上の変化が生じることが予測された場合に、電動ブレーキ装置により車両の全ての走行輪の回転を停止させた状態に維持するので、例えば車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろしの際にサスペンション装置の作動を抑制して、車体の振動を抑制することができる。
また、電動ブレーキ装置を使用することで車両の全ての走行輪の回転を迅速に停止させた状態に維持することができ、速やかに車体の振動を抑制することができる。
【0008】
好ましくは、前記車両のドアまたはゲートの開閉を検出する開閉検出部、または前記ドアまたはゲートの施開錠を検出する施開錠検出部を備え、前記重量変化予測部は、前記車両のドアまたはゲートの少なくとも1つが閉状態から開状態になったことを検出した場合、または前記ドアまたはゲートの施錠機構が施錠状態から解錠されたことを検出した場合に、前記ばね上重量に所定以上の変化が生じると予測するとよい。
【0009】
これにより、車両のドアまたはゲートの少なくとも1つが開状態になった場合、または前記ドアまたはゲートの施錠機構が解錠されたときに、乗員の乗降または荷物の積み下ろしの開始を開始前に容易に予測し、強制制動を実行して車体の振動を抑制することができる。
好ましくは、前記車両の座席に作用する荷重を検出する着座検出部を備え、前記重量変化予測部は、前記座席に作用する荷重が所定以上増加または減少したことを検出した場合、前記ばね上重量に所定以上の変化が生じると予測するとよい。
【0010】
これにより、座席に作用する荷重を検出して、乗員の乗降または荷物の積み下ろしを容易に予測することができる。
好ましくは、前記車両の座席のシートベルトの着脱を検出するシートベルト検出部を備え、前記重量変化予測部は、前記シートベルトが固定状態から外されたことを検出した場合に、前記ばね上重量に所定以上の変化が生じると予測するとよい。
【0011】
これにより、座席のシートベルトの着脱を検出して、乗員の乗降または車両への荷物の積み込みの開始を予測することができる。
好ましくは、前記電動ブレーキ装置は、前記車両のブレーキペダルの操作量に基づいて前記走行輪を制動し、前記制動制御部は、前記ブレーキペダルが所定量以上の操作量で操作されている場合には、前記強制制動を禁止するとよい。
【0012】
これにより、ブレーキペダルが所定量以上の操作量で操作されていることから、既に走行輪が停止状態で維持されているので、不要な強制制動を抑制することができる。
好ましくは、前記車両のドアまたはゲートの開閉を検出する開閉検出部、または前記ドアまたはゲートの施開錠を検出する施開錠検出部を備え、前記重量変化予測部は、前記車両のドア及びゲートの全てが開状態から閉状態になったことを検出した場合、または前記ドアまたはゲートの施錠機構が解錠状態から施錠されたことを検出した場合に、前記制動制御部による前記強制制動を終了させるとよい。
【0013】
これにより、車両のドア及びゲートの全てが閉状態になった場合、またはドアまたはゲートの施錠機構が施錠されたときに、強制制動を適切に終了させることができる。
好ましくは、前記車両の座席に作用する荷重を検出する着座検出部、または前記座席のシートベルトの着脱を検出するシートベルト検出部を備え、前記重量変化予測部は、荷重増加にともない着座を検出した全ての座席の前記シートベルトが固定状態とされたことを検出した場合に、前記制動制御部による前記強制制動を終了させるとよい。
【0014】
これにより、乗員が着座した全ての座席のシートベルトが固定された場合に、強制制動を適切に終了させることができる。
好ましくは、前記制動制御部は、前記強制制動の開始から第1の所定時間経過後に、前記強制制動を終了するとよい。
これにより、車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろしの終了の予測が不要となり、制御を簡素化することができる。
【0015】
好ましくは、前記制動制御部は、前記重量変化予測部において前記ばね上重量に所定以上の変化の終了が予測されてから第2の所定時間経過後に、前記強制制動を終了するとよい。
これにより、乗降または積み下ろしの終了が予測されても、第2の所定時間は強制制動が継続するので、乗降または積み下ろしが終了した際の車体の振動を十分に抑制することができる。
【0016】
好ましくは、前記制動制御部は、前記強制制動の実行中に前記車両のアクセルが操作された場合には、警告音を発生させ、更にアクセル操作が継続された場合に前記強制制動を解除するとよい。
これにより、強制制動中に運転者が車両を発進させる意図があることを警告音にて確認させた上で、強制制動を解除して車両の発進が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両の振動抑制システムによれば、ばね上重量の変化により車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろしを予測して、電動ブレーキ装置により車両の全ての走行輪の回転を停止させた状態を維持することで、速やかに車体の振動を抑制することができる。
これにより、車両の乗員の乗降や荷物の積み下ろしの際に車体の振動が抑制されて快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態の車両の振動抑制システムの構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態の振動抑制システムにおける制御手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の車両の振動抑制システムの一実施形態について、図1、2を用いて説明する。
図1は本実施形態の車両の振動抑制システム1の構成を示すブロック図である。図2は、本実施形態の振動抑制システム1における制御手順を示すフロー図である。
本実施形態の振動抑制システム1を備えた車両は、4輪の走行輪の全てに、電動アクチュエータにより作動制御可能な電動ブレーキ装置2を備えている。
【0020】
電動ブレーキ装置2は、例えばキャリパや、ブレーキブースタを電動アクチュエータによって作動する構成になっており、走行輪に制動力を付与する。電動ブレーキ装置2は、図示しない車両のブレーキペダルの操作に基づいて制動力が調整される。
本実施形態に係る車両は、複数のドア及びテールゲートを備えている。車両の各ドア及びテールゲート(以下、ドア等という)には、開閉を検出するドア・ゲートスイッチ3(開閉検出部)が夫々備えられている。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の振動抑制システム1は、電動ブレーキ装置2と、電動ブレーキ装置2を作動制御する4輪ブレーキ制御部4と、を備えている。
4輪ブレーキ制御部4は、例えば車両全体の作動制御を行うメインコントロールユニット5に備えられている。
メインコントロールユニット5は、出力装置、記憶装置(ROM、RAM、不揮発性RAM等)、中央演算処理装置(CPU)等から構成されている。このメインコントロールユニット5により、エンジンや電動モータ等の車両の走行駆動装置や電動ブレーキ装置2の作動制御が行われる。
【0022】
メインコントロールユニット5の4輪ブレーキ制御部4には、車両の停車状態を判定するための情報として、変速機のシフト位置、駐車ブレーキ(パーキングブレーキ)の作動状態、車輪速度(走行輪速度)が入力するとともに、各ドア等のドア・ゲートスイッチ3からドア・ゲート開閉信号と、ドア・ゲートロック装置10(施錠機構、施開錠検出部)からドア等の施開錠情報(ドアロック作動制御信号)を入力する。また、4輪ブレーキ制御部4には更に、車両の各座席に設けられた着座センサ11(着座検出部)、シートベルトの着脱を検出するシートベルトセンサ12(シートベルト検出部)による検出信号が入力する。
【0023】
4輪ブレーキ制御部4には、乗降予測部20(重量変化予測部)と、電動ブレーキ装置2を作動制御する強制制動制御部21(制動制御部)と、を備えている。
乗降予測部20は、4輪ブレーキ制御部4に入力する上記のドア・ゲート開閉信号等の情報に基づいて、車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろしを予測する。
強制制動制御部21は、乗降予測部20の予測結果に基づいて各走行輪の電動ブレーキ装置2を作動制御する。
【0024】
図2は、メインコントロールユニットの4輪ブレーキ制御部4において実行する車両の振動抑制制御のフロー図である。
4輪ブレーキ制御部4は、車両が停車状態である場合に、車両の振動抑制制御を実行する。
4輪ブレーキ制御部4は、停車判定情報より、車両の変速機のシフト位置がパーキング(P)である場合、またはシフト位置がパーキング以外であって駐車ブレーキが作動している場合、または車輪速度が0の場合である場合に、車両が停止状態であると判定する。なお、これらの停車判定情報については、いずれか1つでもよいし、複数組み合わせて判定してもよい。
【0025】
図2に示すように、始めにステップS10では、乗降予測部20において、車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろし(以下、乗降等という)の開始を予測する。乗降等は、車両に乗員が乗り込む(乗車する)場合、車両から乗員が降りる(降車する)場合、車両に荷物を積み込む場合、車両から荷物を下ろす場合の4つのうち、少なくともいずれか1つの場合である。
【0026】
乗車する場合については、ドア・ゲートスイッチ3の検出情報やドア・ゲートロック装置10の作動制御情報より判定すればよい。例えば車両のドア等の少なくとも1つ以上が閉状退から開状態になった場合、あるいは車両のドア・ゲートロック装置10が施錠状態から解除された場合に、乗車すると判定すればよい。あるいは、リモートキー等により車両のロック機構が解除された場合やエンジンが始動された場合にも、乗員が乗車すると判定してもよい。なお、リモートキーの作動信号により乗車が判定された場合には、車両が停止しているので、上記の停車判定は不要である。
【0027】
降車する場合については、ドア・ゲートスイッチ3、ドア・ゲートロック装置10、着座センサ11、あるいはシートベルトセンサ12の検出信号や作動制御情報より判定すればよい。例えば車両のドア等の少なくとも1つ以上が閉状退から開状態になった場合、車両のドア・ゲートロック装置10が施錠状態から解除された場合、座席に作用する荷重が所定以上減少した場合(即ち離席した場合)、あるいはシートベルトが固定状態から外された場合に、乗員が降車すると判定すればよい。
【0028】
車両に荷物を積み込む場合については、ドア・ゲートスイッチ3、ドア・ゲートロック装置10、あるいは着座センサ11の検出情報や作動制御情報より判定すればよい。例えば車両のドア等の少なくとも1つ以上が閉状退から開状態になった場合、車両のドア・ゲートロック装置10が施錠状態から解除された場合に、車両に荷物を積み込むと判定すればよい。あるいは座席に作用する荷重が所定以上増加した場合(即ち座席に荷物を置いた場合)に、既に荷物を積み込んでしまっているが、車両に荷物を積み込むものと判定してもよい。
【0029】
車両から荷物を下ろす場合については、ドア・ゲートスイッチ3、ドア・ゲートロック装置10、あるいは着座センサ11の検出信号や作動制御情報より判定すればよい。例えば車両のドア等の少なくとも1つ以上が閉状退から開状態になった場合、車両のドア・ゲートロック装置10が施錠状態から解除された場合、あるいは座席に作用する荷重が所定以上減少した場合に、車両から荷物を下ろすと判定すればよい。
【0030】
したがって、ドア・ゲートスイッチ3の検出信号、あるいはドア・ゲートロック装置10の作動制御信号より、乗員が乗車する場合、乗員が降車する場合、車両に荷物を積み込む場合、車両から荷物を下ろす場合のいずれも予測可能である。特にドア・ゲートスイッチ3の検出信号より、車両のドア等の少なくとも1つ以上が閉状退から開状態になった場合に乗降や荷物の積み下ろしの開始を判定することで、容易かつ安価なシステムで乗員の乗降や荷物の積み下ろしの開始を正しく予測することができる。
【0031】
乗降等の開始が判定された場合には、ステップS20に進む。乗降等の開始が判定されない場合には、ステップS10を繰り返す。
ステップS20では、強制制動制御部21は、車両の走行輪全てが制動し回転が完全に停止するように、4輪の各電動ブレーキ装置2に対して作動制御信号を出力して、走行輪全てを強制制動する。そして、ステップS30に進む。なお、このときブレーキペダルが所定量以上の操作量で操作されている場合に、詳しくは車輪が完全に停止する状態になる程度に十分な操作量で操作されている場合には、この4輪の各電動ブレーキ装置2に対する作動制御信号の出力は不要である(強制制動を禁止する)。また、このとき駐車ブレーキ装置により後輪が制動されている場合には、前輪のみ制動すればよい。更に、乗降等の開始予測信号を、公知の車両の誤発進抑制制御を行う制御部に出力して、誤発進抑制制御に利用してもよい。例えば、ドア等が開状態であることが検出された状態で、シフト位置がパーキング以外かつ駐車ブレーキ非作動でありブレーキペダルを緩めた場合に、誤発進抑制制御部によって警告音とともに電動ブレーキ装置2による制動を維持してもよい。
【0032】
ステップS30では、4輪の電動ブレーキ装置2による強制制動を維持する。ここでは、車両への乗降または荷物の積み下ろしが想定される。なお、4輪ブレーキ制御部4は、ドア・ゲート開閉信号等の上記の各センサの検出信号及び作動制御信号を逐次入力する。そして、ステップS40に進む。
ステップS40では、乗降等の終了を予測する。乗降等の終了は、逐次入力しているドア・ゲート開閉信号、ドアロック作動制御信号、着座センサ11、あるいはシートベルトセンサ12の検出信号より判定すればよい。例えば、車両のドア等の全てが閉状態になった場合、車両のドア・ゲートロック装置10が解除状態から施錠された場合、座席に作用する荷重が所定以上増加した場合、あるいはシートベルトセンサ12によりシートベルトが固定されたことが検出された場合に、乗降や積み下ろしが終了したと判定すればよい。
【0033】
但し、座席やシートベルトは車両に複数あり、その全てが着席あるいはシートベルトが固定されるとは限らないので、着座やシートベルトの作動のみで乗降や積み下ろしの終了判定を行うことは困難であり、他の判定条件と組み合わせることが望ましい。したがって、乗降や荷物の積み下ろしの終了の判定についても、車両の全てのドア及びゲートの開閉状態から判定することが望ましい。
【0034】
乗降等の終了判定がされた場合には、ステップS50に進む。乗降等の終了判定がされていない場合には、ステップS30に戻る。
ステップS50では、4輪の電動ブレーキ装置2による強制制動を解除する。強制制動の解除は、ステップS40における乗降や荷物の積み下ろしの終了が判定されてから、適宜設定された所定時間(第2の所定時間)経過後に行うとよい。なお、このときブレーキペダルが操作されている場合には、ブレーキペダルの操作量に応じた制動力となるように4輪の電動ブレーキ装置2の作動を調整する。また、このとき駐車ブレーキ装置により後輪が制動中である場合には、前輪の電動ブレーキ装置2のみ制動を解除してもよい。
【0035】
更に、4輪の電動ブレーキ装置2による強制制動を解除する際に、車体の揺れが発生しないように解除するとよい。例えば電動ブレーキ装置2による制動力をゆるやかに低下させて解除すればよい。
また、路面勾配が所定以上の場合や、シフト位置がパーキングやニュートラル以外の場合や、ブレーキペダルの操作量が所定量以上の場合には、4輪の電動ブレーキ装置2による強制制動の解除を規制してもよい。なお、路面勾配については、例えば車両に設けた傾斜角センサよって検出した車体の傾斜角を使用すればよい。
【0036】
そして、本ルーチンを終了する。
なお、4輪の電動ブレーキ装置2による強制制動中であっても、運転者に明らかな発進の意図があると予測される場合には、強制制動を速やかに解除してもよい。例えば、シフト操作がパーキングからドライブまたはリバースに切り換えられ、かつアクセルが所定以上の操作されたときには、ドア等が開状態であっても強制制動を解除してもよい。これにより、運転者に明らかな発進の意図がある場合に、強制制動を迅速に解除して、車両を速やかに発進させることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態の振動抑制システム1を搭載した車両では、停車時に乗降予測部20において、車両のドア・ゲートの開閉状態やドア・ゲートロック装置10の作動状態等により、ばね上重量に所定以上の変化が生じることを予測する。そして、この停車時にばね上重量に所定以上の変化が生じることで、車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろしが予測される。
【0038】
強制制動制御部21は、停車時にばね上重量に所定以上の変化が生じることが予測されることで、即ち車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろしが予測された場合に、車両の全ての走行輪の回転を停止させた状態を維持するように電動ブレーキ装置2を作動制御して走行輪を強制制動させるので、車体の振動を抑制することができる。
これは、車両のサスペンション装置において、車体に作用するばね上荷重が変化するとジオメトリ変化により走行輪がわずかに回転する現象を利用している。したがって、全ての走行輪の回転を完全に停止した状態を維持することで、サスペンション装置の作動が抑制されるので、車体の振動が抑制される。
【0039】
このように、停車時にばね上重量に所定以上の変化が生じることによる車体の振動を抑制することで、車両への乗員の乗降や荷物の積み下ろしを行った場合での車体の振動が抑制され、乗降や積み下ろしを快適に行うことができる。
特に、電動ブレーキ装置2を使用することで、車両の全ての走行輪の回転を迅速に停止させた状態に維持することができ、速やかに車体の振動を抑制することができる。
【0040】
また、乗降予測部20は、ドア・ゲートスイッチ3により車両のドアまたはゲートの少なくとも1つが閉状態から開状態に切り替わったことが検出された場合、またはドア・ゲートロック装置10が施錠状態から解錠された場合に、乗員の乗降の開始を予測することで、乗員の乗降の開始を開始前に容易に予測することができる。
また、乗降予測部20では、着座センサ11により座席に作用する荷重が所定以上減少したことが検出された場合、またはシートベルトセンサ12によりシートベルトが固定状態から外されたことが検出された場合に、乗員の降車を降車前に容易に予測することができる。
【0041】
更に強制制動制御部21は、ばね上重量に所定以上の変化が生じることが予測されたとき、即ち乗降や積み下ろしが予測されたときに、ブレーキペダルが所定量以上の操作量で操作されている場合には、既に走行輪が停止状態で維持されているので、不要な強制制動を回避することができる。
また乗降予測部20は、車両のドア及びゲートの全てが開状態から閉状態に切り替わった場合、またはドア・ゲートロック装置10が解錠状態から施錠された場合に、乗員の乗降の終了を容易に予測(推定)することができる。そして、乗員の乗降の終了の予測により強制制動を適切に終了させることができる。
【0042】
乗降予測部20は、着座センサ11により座席に作用する荷重が所定以上増加したこと(着座)が検出された場合、またはシートベルトセンサ12によりシートベルトが外された状態から固定されたことが検出された場合にも、乗員の乗降の終了を容易に予測(推定)することができる。特に、着座を検出した全ての座席のシートベルトがシートベルトセンサ12により固定されたことが検出された場合に、車両に搭乗した全ての乗員の乗降の終了を正確に予測(推定)することができる。したがって、乗員の乗降の終了時に強制制動を適切に終了させることができる。
【0043】
更に、強制制動制御部21は、車両に対する乗員の乗降または荷物の積み下ろしの終了が判定されてから第2の所定時間経過後に強制制動を終了する。これにより、乗降または積み下ろしの終了が判定されても、第2の所定時間は強制制動が継続するので、乗降または積み下ろしが終了した際の車体の振動を十分に抑制することができる。
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ステップS40において乗降等の終了判定がされた場合に強制制動を解除するが、強制制動を開始してから所定時間(第1の所定時間)経過後に強制制動を終了してもよい。この第1の所定時間は、乗員の乗降や荷物の積み下ろしの開始から終了するまでの一般的な所要時間よりやや長めに設定すればよい。この場合には、ステップS40における乗降等の終了判定が不要となり、制御を簡素化することができる。
【0044】
また、ステップS20において、4輪の電動ブレーキ装置2を作動させて強制制動する際に、ブレーキペダルの操作による制動よりも緩やかに制動させてもよい。あるいは強制制動における4輪の電動ブレーキ装置2の制動を同時でなく順番に制動させてもよい。例えば車両の傾斜に基づいて制動の順番を適宜設定することで、強制制動開始時における車体の揺れを抑制することが可能となる。
【0045】
また、強制制動中に車両のアクセルが操作された場合には、警告音を発生させ、アクセル操作が継続された場合に強制制動を解除してもよい。これにより、運転者に明らかな発進の意図があるのか警告した上で、アクセル操作の継続により運転者の発進の意図を正確に予測することができ、速やかな発進が可能になる。
また、乗降予測部20は、上記の乗降等の開始判定、終了判定については、上記の各種判定条件を複数組み合わせて判定してもよい。
【0046】
本願発明は、電動ブレーキ装置を備えた車両に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 振動抑制システム
2 電動ブレーキ装置
3 ドア・ゲートスイッチ(開閉検出部)
10 ドア・ゲートロック装置(施錠機構、施開錠検出部)
11 着座センサ(着座検出部)
12 シートベルトセンサ(シートベルト検出部)
20 乗降予測部(重量変化予測部)
21 強制制動制御部(制動制御部)
図1
図2