(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】非接触型POSレジスタ及び非接触型POSレジスタ運用方法
(51)【国際特許分類】
G07G 1/00 20060101AFI20240724BHJP
G07G 1/01 20060101ALI20240724BHJP
G07G 1/12 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
G07G1/00 311Z
G07G1/01 301E
G07G1/12 321Z
(21)【出願番号】P 2020186843
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】500087198
【氏名又は名称】株式会社ヴィンクス
(72)【発明者】
【氏名】安元 豊博
(72)【発明者】
【氏名】田中 一行
(72)【発明者】
【氏名】西尾 ななえ
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-106878(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07G 1/00 - 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存のPOSレジスタでの、一連のユーザ操作に応じた各画面と、当該各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容との対応関係を記憶する情報保持部と、
生体認識用のセンサーより、前記センサー近傍のユーザに関して特定部位の認識結果を取得した際、表示中画面の識別情報に基づき、前記対応関係における前記制御内容を特定する処理と、前記制御内容に基づき、前記表示中画面上に非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する処理と、前記ユーザインターフェイスの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサーより取得してユーザ操作と認識し、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する処理を実行する非接触制御部と、
を備える非接触型POSレジスタ。
【請求項2】
前記非接触制御部は、
前記認識したユーザ操作に応じた処理として、前記各画面の間の画面遷移を順次実行し、購入対象の商品の登録処理から当該商品の代金決済に至る一連処理のうち少なくともいずれかを実行する、
ことを特徴とする請求項1に記載の非接触型POSレジスタ。
【請求項3】
前記非接触制御部は、
前記認識したユーザ操作に応じた処理として、前記ユーザインターフェイスにおけるオブジェクトの表示制御を実行する処理と、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触型POSレジスタ。
【請求項4】
前記非接触制御部は、
前記非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する際、購入対象の商品の代金決済手段の選択用インターフェイスとして、キャッシュレス決済手段に関する選択操作を受け付けるオブジェクトをオーバーレイ表示させ、前記表示させたオブジェクトの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサーより取得してキャッシュレス決済手段の選択操作と認識し、前記制御内容における前記選択操作に応じた処理を実行する処理を実行する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の非接触型POSレジスタ。
【請求項5】
前記非接触制御部は、
前記既存のPOSレジスタでの前記各画面の画像認識処理と、
前記既存のPOSレジスタが保持する、前記各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容の情報の抽出処理と、
前記画像認識処理により得た前記各画面が含むオブジェクトと、前記抽出処理で得た前記制御内容のうち前記オブジェクトに対するユーザ操作に応じたものとを対応付けた情報を生成する処理と、
前記生成した情報を前記対応関係の情報として前記情報保持部に格納する処理と、
を実行することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の非接触型POSレジスタ。
【請求項6】
既存のPOSレジスタでの、一連のユーザ操作に応じた各画面と、当該各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容との対応関係を情報保持部で記憶する情報処理装置が、生体認識用のセンサーより、前記センサー近傍のユーザに関して特定部位の認識結果を取得した際、表示中画面の識別情報に基づき、前記対応関係における前記制御内容を特定する処理と、前記制御内容に基づき、前記表示中画面上に非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する処理と、前記ユーザインターフェイスの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサーより取得してユーザ操作と認識し、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する処理を実行する、
ことを特徴とする非接触型POSレジスタ運用方法。
【請求項7】
前記情報処理装置が、
前記認識したユーザ操作に応じた処理として、前記各画面の間の画面遷移を順次実行し、購入対象の商品の登録処理から当該商品の代金決済に至る一連処理を実行する、
ことを特徴とする請求項6に記載の非接触型POSレジスタ運用方法。
【請求項8】
前記情報処理装置が、
前記認識したユーザ操作に応じた処理として、前記ユーザインターフェイスにおけるオブジェクトの表示制御を実行する処理と、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する、
ことを特徴とする請求項6または7に記載の非接触型POSレジスタ運用方法。
【請求項9】
前記情報処理装置が、
前記非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する際、購入対象の商品の代金決済手段の選択用インターフェイスとして、キャッシュレス決済手段に関する選択操作を受け付けるオブジェクトをオーバーレイ表示させ、前記表示させたオブジェクトの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサーより取得してキャッシュレス決済手段の選択操作と認識し、前記制御内容における前記選択操作に応じた処理を実行する処理を実行する、
ことを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の非接触型POSレジスタ運用方法。
【請求項10】
前記情報処理装置が、
前記既存のPOSレジスタでの前記各画面の画像認識処理と、
前記既存のPOSレジスタが保持する、前記各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容の情報の抽出処理と、
前記画像認識処理により得た前記各画面が含むオブジェクトと、前記抽出処理で得た前記制御内容のうち前記オブジェクトに対するユーザ操作に応じたものとを対応付けた情報を生成する処理と、
前記生成した情報を前記対応関係の情報として前記情報保持部に格納する処理と、
を実行することを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載の非接触型POSレジスタ運用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触型POSレジスタ及び非接触型POSレジスタ運用方法に関するものであり、具体的には、精度良好で導入コストが低廉な非接触制御機能を備えるPOSレジスタを実現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のコロナ禍の影響もあり、人々のライフスタイルが大きく変化している。そうした傾向は、特に外出時の購買行動に関して顕著であり、実店舗を訪れること自体を回避するか、たとえ実店舗を訪れても買い物かごや貨幣にはできるだけ触らない、といった行動をとる者が増えている。言い換えると、他人の触ったものには極力触れない、という「非接触」の行動様式が増加傾向にある。
【0003】
そこで、こうした「非接触」の観点に着目した従来技術として、以下の技術が提案されている。例えば、タッチスクリーン・ディスプレイと、マイクロプロセッサを含む論理回路とを具えたコンピュータ装置であって、該論理回路は、ナビゲート可能な環境の画像を前記タッチスクリーン・ディスプレイ上に表示し、該画像は、前記ナビゲート可能な環境内の位置及び前記ナビゲート可能な環境内の角度を有する視点によって特徴付けられ、前記タッチスクリーン・ディスプレイからタッチ情報を受信し、前記タッチ情報をフィルタ処理して、各々が前記タッチスクリーン・ディスプレイ上に起点を有する接触ジェスチャーを識別し、前記タッチスクリーン・ディスプレイの第1部分内に起点を有する前記接触ジェスチャーに対して、前記タッチスクリーン・ディスプレイ上の画像を変化させて当該画像の前記視点の位置を変更し、前記タッチスクリーン・ディスプレイの第2部分内に起点を有する前記接触ジェスチャーに対して、前記タッチスクリーン・ディスプレイ上の画像を変化させて当該画像の前記視点の角度を変更するように構成されているコンピュータ装置(特許文献1参照)などが提案されている。
【0004】
また、不動部分と可動部分とを有する画像で表される仮想物体が表示される位置を識別する位置識別情報を含む撮像画像を取得する撮像部と、前記位置識別情報により識別される前記撮像画像上の位置に、前記仮想物体が合成された合成画像を生成する生成部と、表示部に表示された前記合成画像に含まれる前記可動部分の操作を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部により前記可動部分の操作が受け付けられたときに、前記仮想物体を表示するための表示設定情報に基づき前記可動部分の表示を制御する表示制御部と、を備える情報処理装置(特許文献2参照)なども提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2020-510272号公報
【文献】特開2016-136376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、ジェスチャー等を各種センサーで感知し、その動きにあわせて画面上のオブジェクトを制御する技術は既に存在する。
【0007】
ところが、そうした機能は、専用のハードウェアに組み込みで実装される形態が一般的である。その場合、開発には相応の期間とコストが必要となるため、状況に応じて迅速に当該機能を実装するといったニーズに応えることは非常に困難である。
【0008】
一方、既存のPOSレジスタに当該機能を適用するとしても、既存ハードウェアやソフトウェアとの相性や仕様上の制約もあって、開発や導入の手間、コストは決して小さくない。
【0009】
また、上述のように既存のPOSレジスタに機能導入しても、当初想定していたような精度や操作感が制御結果として得られないケースもある。結局のところ、非接触のニーズは各種存在しても、それに効率的かつ低コストで応えるPOSレジスタ向け技術は提案されていなかった。
【0010】
そこで本発明の目的は、精度良好で導入コストが低廉な非接触制御機能を備えるPOSレジスタを実現する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の非接触型POSレジスタは、既存のPOSレジスタでの、一連のユーザ操作に応じた各画面と、当該各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容との対応関係を記憶する情報保持部と、生体認識用のセンサーより、前記センサー近傍のユーザに関して特定部位の認識結果を取得した際、表示中画面の識別情報に基づき、前記対応関係における前記制御内容を特定する処理と、前記制御内容に基づき、前記表示中画面上に非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する処理と、前記ユーザインターフェイスの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサーより取得してユーザ操作と認識し、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する処理を実行する非接触制御部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
なお、この非接触型POSレジスタにおいて、前記非接触制御部は、前記認識したユーザ操作に応じた処理として、前記各画面の間の画面遷移を順次実行し、購入対象の商品の登録処理から当該商品の代金決済に至る一連処理のうち少なくともいずれかを実行する、としてもよい。
【0013】
また、この非接触型POSレジスタにおいて、前記非接触制御部は、前記認識したユーザ操作に応じた処理として、前記ユーザインターフェイスにおけるオブジェクトの表示制御を実行する処理と、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する、としてもよい。
【0014】
また、この非接触型POSレジスタにおいて、前記非接触制御部は、前記非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する際、購入対象の商品の代金決済手段の選択用インターフェイスとして、キャッシュレス決済手段に関する選択操作を受け付けるオブジェクトをオーバーレイ表示させ、前記表示させたオブジェクトの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサーより取得してキャッシュレス決済手段の選択操作と認識し、前記制御内容における前記選択操作に応じた処理を実行する処理を実行する、としてもよい。
【0015】
また、この非接触型POSレジスタにおいて、前記非接触制御部は、前記既存のPOSレジスタでの前記各画面の画像認識処理と、前記既存のPOSレジスタが保持する、前記各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容の情報の抽出処理と、前記画像認識処理により得た前記各画面が含むオブジェクトと、前記抽出処理で得た前記制御内容のうち前記オブジェクトに対するユーザ操作に応じたものとを対応付けた情報を生成する処理と、前記生成した情報を前記対応関係の情報として前記情報保持部に格納する処理と、を実行するとしてもよい。
【0016】
また、本発明の非接触型POSレジスタ運用方法は、既存のPOSレジスタでの、一連のユーザ操作に応じた各画面と、当該各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容との対応関係を情報保持部で記憶する情報処理装置が、生体認識用のセンサーより、前記センサー近傍のユーザに関して特定部位の認識結果を取得した際、表示中画面の識別情報に基づき、前記対応関係における前記制御内容を特定する処理と、前記制御内容に基づき、前記表示中画面上に非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する処理と、前記ユーザインターフェイスの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサーより取得してユーザ操作と認識し、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する処理を実行する、ことを特徴とする。
【0017】
なお、この非接触型POSレジスタ運用方法において、前記情報処理装置が、前記認識したユーザ操作に応じた処理として、前記各画面の間の画面遷移を順次実行し、購入対象の商品の登録処理から当該商品の代金決済に至る一連処理を実行する、としてもよい。
【0018】
また、この非接触型POSレジスタ運用方法において、前記情報処理装置が、前記認識したユーザ操作に応じた処理として、前記ユーザインターフェイスにおけるオブジェクトの表示制御を実行する処理と、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する、としてもよい。
【0019】
また、この非接触型POSレジスタ運用方法において、前記情報処理装置が、前記非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する際、購入対象の商品の代金決済手段の選択用インターフェイスとして、キャッシュレス決済手段に関する選択操作を受け付けるオブジェクトをオーバーレイ表示させ、前記表示させたオブジェクトの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサーより取得してキャッシュレス決済手段の選択操作と認識し、前記制御内容における前記選択操作に応じた処理を実行する処理を実行する、としてもよい。
【0020】
また、この非接触型POSレジスタ運用方法において、前記情報処理装置が、前記既存のPOSレジスタでの前記各画面の画像認識処理と、前記既存のPOSレジスタが保持する、前記各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容の情報の抽出処理と、前記画像認識処理により得た前記各画面が含むオブジェクトと、前記抽出処理で得た前記制御内容のうち前記オブジェクトに対するユーザ操作に応じたものとを対応付けた情報を生成する処理と、前記生成した情報を前記対応関係の情報として前記情報保持部に格納する処理と、を実行するとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、精度良好で導入コストが低廉な非接触制御機能を備えるPOSレジスタを実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本実施形態の非接触型POSレジスタを含むシステム構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態における非接触型POSレジスタのハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】本実施形態における生体認識用センサーのハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】本実施形態における生体認識用センサーの具体例を示す図である。
【
図5】本実施形態の既存データの構成例を示す図である。
【
図6】本実施形態の対応関係テーブルのデータ構成例を示す図である。
【
図7】本実施形態の画面テーブルのデータ構成例を示す図である。
【
図8】本実施形態における非接触型POSレジスタの運用方法のフロー例を示す図である。
【
図9】本実施形態における非接触型POSレジスタの運用方法のフロー例を示す図である。
【
図10】本実施形態における画面例を示す図である。
【
図11】本実施形態における画面例を示す図である。
【
図12】本実施形態における画面例を示す図である。
【
図13】本実施形態における画面例を示す図である。
【
図14】本実施形態における画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<<全体の構成例>>
以下に本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態の非接触型POSレジスタ10を含むシステム構成例を示す図である。
図1に示す非接触型POSレジスタ10は、生体認識用センサー70と協働することでユーザの非接触操作を感知・認識し、その挙動に応じて、商品登録から商品代金の精算といった一連のPOSレジスタとしての機能を果たすものとなっている。
【0024】
本実施形態では、非接触型POSレジスタ10が、生体認識用センサー70と別体の装置とした構成を一例として示すが、両者が一体の装置となっている構成であってもよい。また、生体認識用センサー70の一例として、赤外線LEDで被写体(本実施形態の場合はユーザの手のひらなど特定の身体部位)に赤外線を照射し、その照射を受けた被写体をステレオカメラで撮影することで、立体的に形状や位置、挙動を認識するものを示すが、勿論、こうした構成のセンサーに限定しない。
【0025】
上述の非接触型POSレジスタ10は、例えば、USBインターフェイスで直接、ないしUSBケーブルなどの配線または適宜なネットワーク1(例えば、無線LANやBluetoothによる近距離無線ネットワーク)を介して、生体認識用センサー70と通信可能に結ばれている。当然ながら、この通信のプロトコルは、生体認識用センサー70の動作速度と少なくとも同等以上の通信速度を有するものとなる。
【0026】
なお、上述の生体認識用センサー70の具体的な実装例の1つとして、本出願人はUltraleap社のLeapMotionController(https://www.ultraleap.com/product/leap-motion-controller/)を採用し、これを既存のキャッシュレスPOSレジスタに接続して使用する形態を想定した。
【0027】
こうした形態は、既存のPOSレジスタ5に非接触制御機能をアドオンすることを意味しており、従来の問題点を解決する一態様となる。すなわち、専用ハードウェアに組み込みで非接触制御機能を実装する従来技術における、「開発に相応の期間とコストが必要」、「状況に応じて迅速に当該機能を実装するニーズに応えることは非常に困難」、といった課題のいずれも解消できる。また詳細は後述するが、既存のPOSレジスタ5に非接触制御機能を適用する際に、既存ハードウェアやソフトウェアとの相性や仕様上の制約がある場合、開発や導入の手間、コストが小さくないといった課題についても解消する。
【0028】
また、既存のPOSレジスタ5の画面上に、非接触操作用のユーザインターフェイス(の画面)をオーバーレイ表示する制御を行うことで、既存のPOSレジスタ5におけるタッチパネルに対する画面タッチ操作を遮断し、非接触での操作のみで一連の処理が可能となる。しかも、既存のPOSレジスタ5におけるアプリの操作を物理的に奪う、或いは別アプリに完全置換するわけではないため、既存アプリの改修等は不要である。
【0029】
また本発明の非接触型POSレジスタ10を使用するユーザとしては、上述のオーバーレイ表示の画面構成を見ることで、非接触操作のための画面が存在することを一目で認識し、操作に戸惑う懸念も少ない。
【0030】
<<装置の構成例~非接触型POSレジスタ~>>
ここで、非接触型POSレジスタ10のハードウェア構成を、
図2に基づき説明する。本実施形態の非接触型POSレジスタ10は、情報保持部11、非接触制御部12、入出力制御部13、通信制御部14、読み取り部15、及び印字装置16を少なくとも備えている。このうち読み取り部15及び印字装置16は、従来のPOSレジスタが一般的に備えるものであり、詳細な説明は省略する。
【0031】
既に上で述べたように、本実施形態の非接触型POSレジスタ10は、既存の接触型POSレジスタ5(タッチパネル等の接触型のインターフェイスでユーザ操作を受け付けるもの)に、本発明の非接触型POSレジスタの機能、構成を適用したものである。したがって、既存の接触型POSレジスタ5が非接触型POSレジスタ10の機能を付加的に備えていると言い換えることもできる。
【0032】
このうち情報保持部11は、SSD(Solid State Drive)やハードディスクドライブ、或いはROM(Read Only Memory)など適宜な不揮発性記憶素子と、RAM(Random Access Memory)など揮発性記憶素子で構成される。或いは、不揮発性記憶素子のみで構成してもよい。
【0033】
情報保持部11における不揮発性記憶素子には、非接触型POSレジスタ10の基本制御を行うためのOS110(Operating System)のほか、このOS110上で必要な機能を実装するためのプログラム111、非接触型POSレジスタ10のベースとなった接触型POSレジスタが保持している既存データ114、対応関係テーブル20、及び画面テーブル21を格納している。
【0034】
このうち既存データ114は、上述した既存の接触型のPOSレジスタ5における、各画面のデータと、これら各画面におけるユーザ操作に応じた制御内容とが記述されたデータとなる。
【0035】
ここで、各画面とは、例えばユーザが来訪して操作開始を指示する初期画面から始まり、その初期画面での操作選択(例:商品登録や代金精算、操作取り消しなどの操作選択)に応じて分岐し自動遷移する次画面と、この次画面以降も同様に、画面での操作内容に応じて順次分岐し遷移する一連の画面群とを指している。
【0036】
また、制御内容とは、上述の各画面における、例えば、特定のアイコンの押下やオブジェクトの移動操作といったユーザ操作に応じて、「登録済み商品の小計を算定し表示する」、「登録済み商品をすべて削除する」、「代金精算用に選択された決済手段に応じた操作アナウンスを音声出力する」、「電子マネーシステムと通信し、該当ユーザの電子マネー残高から商品代金分の引き落としをする」、「レシート印字を実行する」、といった処理に対応したものとなる。
【0037】
また、プログラム111は、一般的なPOSレジスタ機能を実装するための既存プログラム112と、本発明の非接触型POSレジスタ機能を実装するためのアドオンプログラム113を含んでいる。この既存プログラム112とアドオンプログラム113は、本発明の非接触型POSレジスタ10としての必要な機能を実装するため、適宜に協働するものとする。
【0038】
また揮発性記憶素子は、上述のプログラム111を構成する既存プログラム112やアドオンプログラム113の実行時における読み出し先であり、非接触型POSレジスタ10としての機能が実装される実体となる。
【0039】
また、非接触制御部12は、情報保持部11に保持される上述のプログラム111を読み出して実行し、装置自体の統括制御を行なうとともに、本発明の非接触型POSレジスタとして必要な各種判定、演算及び制御処理を行なう演算装置である。この非接触制御部はCPUで実装される。
【0040】
また、入出力制御部13は、例えばタッチパネルにより実装されるものであり、ユーザからのタッチ動作を受け付け、そのタッチ動作に応じた処理結果を画面表示させるものとなる。すなわち、非接触型ではなく従来の接触型のPOSレジスタ5に備わる機能、構成である。本実施形態の非接触型POSレジスタ10では、こうした従来の構成を排除せず、その機能を効率的に利活用する形態を採用している。
【0041】
また、通信制御部14は、USBケーブルなどの配線ないし適宜なネットワーク(例えば、無線LANやBluetoothによる近距離無線ネットワーク)を介して、生体認識用センサー70との通信処理を担うネットワークインターフェイスカードである。
【0042】
また、読み取り部15は、既存のPOSレジスタ5に備わるリーダーであり、商品のバーコードを読み取る一般的な機能を備える。ただし、本実施形態では、キャッシュレス決済手段(電子マネー等)による処理で必要となる、二次元コードやICチップの読み取り/書き込み動作の機能もあわせて備えるものとする。また印字装置16は、やはり既存のPOSレジスタ5に備わるものであり、レシートや領収書を紙媒体に印字するプリンタ装置である。
【0043】
<<装置の構成例~生体認識用センサー~>>
続いて、本実施形態における生体認識用センサー70のハードウェア構成を、
図3に基づき説明する。本実施形態の生体認識用センサー70は、主記憶装置71、補助記憶装置72、CPU73、赤外線LED74、ステレオカメラ75、および通信IF76を備えている。
【0044】
このうち主記憶装置71は、RAM(Randam Access Memory)など適宜な揮発性記憶素子で構成される。また、補助記憶装置72は、ROM(Read Only Memory)など不揮発性記憶素子で構成される。
【0045】
また、CPU73は、補助記憶装置72に保持されるOS721のコントロールの下、プログラム722を主記憶装置71に読み出すなどして実行し装置自体の統括制御を行なうとともに各種判定、演算及び制御処理を行なう演算装置である。
【0046】
また、赤外線LED74は、非接触型POSレジスタ10のユーザすなわち商品登録や代金決済の操作を行う者の身体部位に対し、赤外光照射を行う発光装置である。また、ステレオカメラ75は、こうした赤外線LED74により赤外光の照射を受けた被写体(本実施形態の場合はユーザの手のひらなど特定の身体部位)を撮影する一対のデジタルカメラユニットである。
【0047】
図4に示すように、上述の赤外線LED74とステレオカメラ75は、生体認識用センサー70の筐体表面上でシリアルに配置された構成となっている。また一対のステレオカメラ75は、3つの赤外線LED74の間に挟まれる形で配置されている。こうした構成を前提にして、生体認識用センサー70のCPU73は、例えば一定時間間隔で赤外線LED74を連続的に発光させるとともに、ステレオカメラ75を制御しステレオ撮影を連続実行する。
【0048】
生体認識用センサー70のCPU73は、上述のステレオ撮影により得た連続撮影データにより、被写体であるユーザの身体部位の平面方向の情報に加え、奥行方向の情報も、時系列的に取得する。こうした情報は、当該身体部位の各箇所の、時間的な位置遷移の情報となる。したがって、生体認識用センサー70のCPU73は、上述のユーザの身体部位の立体的に形状や位置に加えて、その移動の方向や加速度といった挙動も認識可能である。
【0049】
生体認識用センサー70のCPU73は、上述のように認識したユーザの身体部位の形状や位置、挙動の情報を、通信IF76を介して非接触型POSレジスタ10に即時配信する。なお、通信IF76は、例えばUSBケーブルなどの配線ないし適宜なネットワーク(例えば、無線LANやBluetoothによる近距離無線ネットワーク)を介して、非接触型POSレジスタ10との通信処理を担うネットワークインターフェイスカードである。
【0050】
<<既存データについて>>
続いて、本実施形態の非接触型POSレジスタ10が用いるデータについて説明する。
図5に、本実施形態における既存データ114の一例を示す。この既存データ114は、既に述べたように、既存の接触型のPOSレジスタ5における、既存の各画面のデータと、これら各画面におけるユーザ操作に応じた制御内容とが記述されたデータとなる。
【0051】
また各画面は、例えばユーザが来訪して操作開始を指示する初期画面から始まり、その初期画面での操作選択(例:商品登録や代金精算、操作取り消しなどの操作選択)に応じて分岐し自動遷移する次画面と、この次画面以降も同様に、画面での操作内容に応じて順次分岐し遷移する一連の画面群とを指している。
【0052】
また、制御内容は、上述の各画面における、例えば、特定のオブジェクトの押下や移動操作といったユーザ操作に応じて、「登録済み商品の小計を算定し表示する」、「登録済み商品をすべて削除する」、「代金精算用に選択された決済手段に応じた操作アナウンスを音声出力する」、「電子マネーシステムと通信し、該当ユーザの電子マネー残高から商品代金分の引き落としをする」、「レシート印字を実行する」、といった処理に対応したものとなる。
【0053】
そのため、
図5で示すように、初期画面を起点にしてツリー状に派生する既存画面それぞれの識別情報(例えば画面ID)をキーに、各画面のデータと、当該画面におけるユーザ操作で発生する制御内容と遷移先画面が対応付けされたデータ群、となっている。
【0054】
<<対応関係テーブルについて>>
続いて、非接触型POSレジスタ10が生成・保持する対応関係テーブル20について説明する。
図6に、本実施形態における対応関係テーブル20の一例を示す。この対応関係テーブル20は、非接触型POSレジスタ10が生成することを想定したテーブルであるが、非接触型POSレジスタ10における必要な機能を備える別装置が生成し、これを非接触型POSレジスタ10に提供するとしてもよい。
【0055】
非接触型POSレジスタ10が生成する場合、非接触制御部12は、上述の既存データ114を、接触型のPOSレジスタ5の記憶部から抽出し、この既存データ114が含む既存画面のデータに対する画像認識処理を実行し、各既存画面が含むオブジェクトを特定する。また非接触制御部12は、上述の既存データ114から、各既存画面におけるユーザ操作に応じた制御内容の情報を抽出する。
【0056】
非接触制御部12は、上述の画像認識処理により得た各既存画面のオブジェクトと、上述の抽出処理で得た制御内容のうち上記オブジェクトに対するユーザ操作に応じたものとを対応付けた情報を生成し、これを対応関係テーブル20とする。
【0057】
この時、非接触制御部12は、上述の既存画面と紐づけて、当該既存画面に所定の透明度で重畳表示すべきオーバーレイ画面のデータを情報保持部11にて予め保持しており、上述の既存画面上にオーバーレイ表示するもの、及び、当該オーバーレイ画面におけるユーザ操作に応じた処理の実行後に自動遷移する先のもの、として対応関係テーブル20の該当レコードに設定する。
【0058】
つまり、ある既存画面に重ねて表示すべきオーバーレイ画面、このオーバーレイ画面でのユーザ操作に応じて画面遷移させる際に表示すべきオーバーレイ画面、が対応関係テーブル20において規定されることになる。
【0059】
こうしたオーバーレイ画面は、所定の担当者が既存画面のうち必要なものについて予め制作し、非接触制御部12がアクセス可能な形(例えば既存画面との紐づけを付与して保持)で情報保持部11の画面テーブル21にて保持しているものとする。勿論、既存データ114が、予め対応関係テーブル20と同様の構成である場合、上述のようなテーブル生成の処理は不要である。
【0060】
そのデータ構造は、
図6で示すように、初期画面を起点にしてツリー状に派生する既存画面それぞれの識別情報(例えば既存画面ID)をキーに、その既存画面上に重ねて表示するオーバーレイ画面、既存画面が含む操作対象のオブジェクトの識別情報(オーバーレイ画面でも対応する識別情報を付与して所定のオブジェクトを表示する)と、当該オブジェクトに対するユーザ操作で発生する制御内容、この制御内容の実行に伴い遷移先となるオーバーレイ画面の識別情報とが対応付けされたデータ群、となっている。
【0061】
<<画面テーブルについて>>
上述の画面テーブル21について説明する。
図7に、本実施形態における画面テーブル21の一例を示す。この画面テーブル21は、例えば非接触型POSレジスタ10の運用者が、オーバーレイ画面の生成にあわせて作成し登録することを想定する。
【0062】
そのデータ構造は、
図7で示すように、既存画面それぞれの識別情報(例えば既存画面ID)をキーに、その既存画面上に重ねて表示するオーバーレイ画面の識別情報及び実体データが対応付けされたデータ群、となっている。非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、既存画面に重ねて表示すべきオーバーレイ画面の実体データを、既存画面の画面IDやユーザ操作、当該ユーザ操作の対象オブジェクトといった情報をキーに検索し、読みだして使用することになる。
【0063】
<<非接触型POSレジスタの運用方法~対応関係テーブル生成~>>
以下、本実施形態における非接触型POSレジスタの運用方法について図に基づき説明する。以下で説明する非接触型POSレジスタ運用方法に対応する各種動作は、非接触型POSレジスタ10がメモリ等に読み出して実行するアドオンプログラム113によって実現される。そして、このアドオンプログラム113は、以下に説明される各種の動作を行うためのコードから構成されている。
【0064】
図8は、本実施形態における非接触型POSレジスタの運用方法のフロー例を示す図である。ここではまず、対応関係テーブル20の生成手順について説明する。
【0065】
非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、接触型のPOSレジスタ5の記憶部から既存データ114を抽出し、この既存データ114が含む既存画面のデータに対する画像認識処理を実行し、各既存画面が含むオブジェクトを特定する(s1)。この特定により、各既存画面の画面IDと、当該既存画面が含む各オブジェクトの識別情報が得られる。
【0066】
また非接触制御部12は、上述の既存データ114から、各既存画面におけるユーザ操作に応じた制御内容の情報を抽出する(s2)。この制御内容の情報は、既に述べたように、各既存画面における、例えば、特定のオブジェクトの押下や移動操作といったユーザ操作に応じて、「登録済み商品の小計を算定し表示する」、「登録済み商品をすべて削除する」、「代金精算用に選択された決済手段に応じた操作アナウンスを音声出力する」、「電子マネーシステムと通信し、該当ユーザの電子マネー残高から商品代金分の引き落としをする」、「レシート印字を実行する」、といった処理に対応したものとなる。
【0067】
続いて、非接触制御部12は、上述の画像認識処理(s1)により得た各既存画面の画面ID、当該既存画面に重ねて表示すべきオーバーレイ画面の画面ID、オブジェクトの識別情報、当該オブジェクトへのユーザ操作、上述の抽出処理(s2)で得た制御内容のうちs1で特定したオブジェクトに対するユーザ操作に応じたもの、及び当該オーバーレイ画面におけるユーザ操作に応じた処理の実行後に自動遷移する先のオーバーレイ画面を対応付ける(s3)。
【0068】
また、非接触制御部12は、上述のs3で得た、各既存画面の画面ID、これに重ねて表示するオーバーレイ画面、オブジェクトの識別情報、ユーザ操作、制御内容、及び遷移先のオーバーレイ画面との対応付けの情報を、対応関係テーブル20として情報保持部11に格納し(s4)、フローを終える。
【0069】
<<非接触型POSレジスタの運用方法~非接触制御~>>
続いて、実際にユーザが非接触型POSレジスタ10を非接触操作する際の制御について説明する。
図9は、本実施形態における非接触型POSレジスタの運用方法のフロー例を示す図である。
【0070】
ここで、あるユーザが購入商品を非接触型POSレジスタ10に持参し、読み取り部15による商品登録操作を完了した状況(
図10の既存画面1000)を想定する。なお、この商品登録完了前のいずれかの時点の既存画面で、非接触型POSレジスタ10は、手のひらを認識すると、当該既存画面に応じた又はその遷移先となるオーバーレイ画面を既存画面上に重ねて表示する。また非接触型POSレジスタ10は、そのオーバーレイ画面を通じて手のひら認識を行っているものとする(s10)。
【0071】
ここで認識した左右いずれかの手のひらが、(買い物機会に伴い表示する一連のオーバーレイ画面すべてか、或いは、オーバーレイ画面ごとかは限定しないが、少なくとも上記手のひら認識に伴い表示されるオーバーレイ画面での非接触操作に関して)ユーザの特定の身体部位となり、以後の非接触操作の際にその挙動がトラッキングされる対象となる。
【0072】
なお、特定のユーザの特定部位(1名のユーザの左右のいずれかの手のひら)をトラッキング対象とする形態以外の運用形態も想定できる。例えば、商品登録時と代金決済時のオーバーレイ画面とで、異なるユーザ(例えば、商品購入者またはその補助者あるいは店員)が交代で操作を行う状況が生じる場合もある。そうしたケースであっても、非接触型POSレジスタ10は、手のひら認識の機会すなわちオーバーレイ画面ごとに、その操作に使用されるのが、ユーザの左右いずれかの手のひらかを認識し、上述のようにトラッキングするものとする。
【0073】
なお、オーバーレイ画面を既存画面上に重ねて表示する技術自体については、特に限定しないが、例えば、非接触型POSレジスタ10のOS110ないしプログラム111が備える画像処理機能において、既存画面のレイヤー上に、オーバーレイ画面のレイヤーを重畳させるといった一般的な技術を想定する。より具体的には、既存画面のウィンドウの一部または全部の領域を透過色で塗り潰し、当該領域に重畳対象となるオーバーレイ画面を合成する技術が該当する。
【0074】
上記の手のひら認識は、今回の買い物機会において、非接触形態での操作に用いられる手のひらが左右いずれのものか判定する処理となる。こうした手のひらの左右の判定は、非接触型POSレジスタ10が、生体認識用センサー70より取得した情報に基づき行うものとする。この場合、生体認識用センサー70は、センサー近傍の一定範囲内にかざされたユーザの手のひらに関し、その形状や位置、挙動の各情報を非接触型POSレジスタ10に提供している。
【0075】
この情報提供に先立ち、生体認識用センサー70は、一定時間間隔で赤外線LED74を連続的に発光させるとともに、ステレオカメラ75を制御しステレオ撮影を連続実行している。
【0076】
そのため、生体認識用センサー70は、ステレオ撮影により得た連続撮影データにより、被写体である手のひら(身体部位)に関して、その3D形状の情報、及びステレオカメラ75の撮影面上の縦横位置(平面方向の情報)に加え、当該ステレオカメラからの離間距離(奥行方向の情報)も、時系列的に取得し、これを非接触型POSレジスタ10に提供しているものとする(s30)。
【0077】
手のひらの認識処理が既に完了し、上述の「商品登録操作」が完了した上述のユーザに関して、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、「商品登録操作の完了」を制御内容に含むレコードを対応関係テーブル20で検索し、そのレコードの「遷移先のオーバーレイ画面」を特定する(s11)。
【0078】
また、上述の非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、s11で特定した、商品代金の精算すなわち支払いにユーザを誘導するオーバーレイ画面1010(
図10)を、一定の透明度にて既存画面1000(
図10)に重ねて表示させる(s12)。
【0079】
一方、ユーザは、オーバーレイ画面1010におけるメッセージ「ボタンの位置に手をかざしてください」に従い、アイコン1011に向けて自身の手のひらをかざす動作を行うものとする。
【0080】
この時、既に述べたように、生体認識用センサー70は、上述の動作の前から一定時間間隔で赤外線LED74を連続的に発光させるとともに、ステレオカメラ75を制御しステレオ撮影を連続実行している。そのため、生体認識用センサー70は、ステレオ撮影により得た連続撮影データにより、被写体である手のひら(身体部位)に関して、その3D形状の情報、及びステレオカメラ75の撮影面上の縦横位置(平面方向の情報)に加え、当該ステレオカメラからの離間距離(奥行方向の情報)も、時系列的に取得する(s31)。
【0081】
こうして生体認識用センサー70は、手のひらの各箇所の3D形状とその時間的な位置遷移の情報(移動方向や加速度)といった挙動データを特定する。また、生体認識用センサー70は、上述のように特定した手のひらの形状や位置、挙動の情報を、通信IF76を介して非接触型POSレジスタ10に即時配信する(s32)。
【0082】
非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、生体認識用センサー70より、上述のユーザに関する手のひらの形状や位置、挙動の情報を受信し、オーバーレイ画面1010の上空での手のひらの挙動の認識結果として取得する(s13)。ここでの手のひらの挙動は、
図10で示すように、アイコン1011の上空にかざした手のひらを、例えば「お支払」オブジェクトまで移動させるユーザ操作を想定する。
【0083】
なお、上述のs13の処理に際し、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、生体認識用センサー70から得た情報に基づき、現在操作を行っているユーザの手のひらが左右いずれの手のひらか認識し、s10で認識済の手のひら(該当ユーザの左右のいずれかの手のひら)であるか判定するとしてもよい。この場合、非接触型POSレジスタ10は、上述のオーバーレイ画面のユーザに関して、左右いずれの手のひらを非接触操作に使用するのか、その情報をs10の結果として既に保持している。
【0084】
非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、上述の判定の結果、今回認識した手のひらの左右(例:左手)が、s10で認識したもの(例:右手)でない場合、かざす手のひらを左右入れ替えるようメッセージを表示するなどし、判定結果が「一致」となるまで判定を繰り返す。一方、上述の判定の結果、今回認識した手のひらの左右が、s10で認識しているものと一致した場合、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、s13を実行する。
【0085】
勿論、こうした特定ユーザの手のひらの左右判定とその結果に基づく処理は、あくまでもオプションであって、必須の処理ではない。例えば、買い物対象や決済手段がユーザの機微情報に関係するもの、或いは厳重にプライバシー保護が図られるべきものであって、一連の処理を当該ユーザ一人で完了させる必要性がある場合など、特定の機会に際して運用するとすればよい。
【0086】
ここで説明を上述のs13以後の処理の説明に戻す。s13に関して示したような挙動、すなわちユーザ操作に際し、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、そのユーザ操作に応じた処理として、オーバーレイ画面1010におけるアイコン1011を、手のひらの動きに合わせて「お支払」オブジェクト1012の位置までドラッグさせる表示制御を実行する(s14)。
【0087】
勿論、こうした表示制御に際し、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、生体認識用センサー70から、当該手のひらの挙動データをリアルタイムで取得しており、その挙動データが示す移動方向や加速度に応じて、アイコン1011の移動表示を行っている。
【0088】
また、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、オーバーレイ画面1010上でのアイコン1011のドラッグ操作に伴い、アイコン1011のオブジェクトID(例えば、003)、アイコン1011のドラッグ対象となった「お支払」オブジェクト1012のオブジェクトID(例えば、201)、および本オーバーレイ画面1010の画面ID(例えば、Ov00002)と、操作内容である「オブジェクト003をオブジェクト201にドラッグ」に基づき、対応関係テーブル20にて、対応するレコードを特定する(s15)。
【0089】
図6の対応関係テーブル20の例であれば、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、既存画面ID「00002」のレコードのうち、オーバーレイ画面「Ov00002」のレコードを特定することになる。その場合、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、そのレコードから、制御内容「キャッシュレス決済手段の選択画面を表示」および遷移先のオーバーレイ画面「Ov00003」の情報を特定する(s16)。
【0090】
そこで、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、
図11に示すように、既存画面1100の上に、オーバーレイ画面1110を重ねて表示し、ユーザ操作を受け付ける状態に遷移する(s17)。ここで表示したオーバーレイ画面1110は、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12が、予め情報保持部11で保持するオーバーレイ画面のうち、IDが「Ov00003」のものを画面テーブル21で検索し、そのデータを呼び出したものである。
【0091】
ユーザは、このオーバーレイ画面1110上にて、アイコン1111の上空にかざした手のひらを、例えば「LINE Pay」(登録商標)オブジェクト1112まで移動させるユーザ操作を行ったとする。
【0092】
こうしたユーザ操作に際し、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、そのユーザ操作に応じた処理として、オーバーレイ画面1110におけるアイコン1111を、手のひらの動きに合わせて「LINE Pay」(登録商標)オブジェクト1112の位置までドラッグさせる表示制御を実行する(s18)。
【0093】
勿論、こうした表示制御に際し、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、生体認識用センサー70から、当該手のひらの挙動データをリアルタイムで取得しており、その挙動データが示す移動方向や加速度に応じて、アイコン1111の移動表示を行っている。
【0094】
また、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、オーバーレイ画面1110上でのアイコン1111のドラッグ操作に伴い、アイコン1111のオブジェクトID(例えば、005)、アイコン1111のドラッグ対象となった「LINE Pay」(登録商標)オブジェクト1112のオブジェクトID(例えば、301)、および本オーバーレイ画面1110の画面ID(例えば、Ov00003)と、操作内容である「オブジェクト005をオブジェクト301にドラッグ」に基づき、対応関係テーブル20にて、対応するレコードを特定する(s19)。
【0095】
図6の対応関係テーブル20の例であれば、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、既存画面ID「00003」に関するオーバーレイ画面「Ov00003」のうち、ユーザ操作「オブジェクト005をオブジェクト301にドラッグ」の値を含むレコードを特定することになる。
【0096】
その場合、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、そのレコードから、制御内容「電子マネーXのプロトコルでチャージ残高から商品代金分の資金移動」および遷移先のオーバーレイ画面「Ov30001」の情報を特定する。一方、こうして特定された情報が、一連の操作終了に関するものである場合(s20:Y)、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、本フローを終了する。他方、特定された情報が、一連の操作終了に関するものでない場合(s20:N)、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、s16以降と同様の処理を再実行する。
【0097】
そこで、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、
図12に示すように、既存画面1200の上に、オーバーレイ画面1210を重ねて表示し、ユーザ操作を受け付ける状態に遷移する(s16、s17)。ここで表示したオーバーレイ画面1210は、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12が、予め情報保持部11で保持するオーバーレイ画面のうち、IDが「Ov30001」のものを画面テーブル21で検索し、そのデータを呼び出したものである。
【0098】
ユーザは、このオーバーレイ画面1210上にて表示されているメッセージ「QR決済のバーコードをスキャンしてください」、「キャンセルする場合はボタンの位置に手をかざしてください」を認識し、自身の行動を決定する。このまま決済を行う場合、ユーザは、非接触型POSレジスタ10の読み取り部15(が備えるQRコード読み取り機能)に、自身のスマートフォンの画面(決済用アプリが出力するQRコードを表示中のもの)をかざし、決済動作を行う。ここでは、この「キャンセル」の動作は行われず、上述のQR決済のバーコードのスキャンが実施されたものと想定する。
【0099】
非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、オーバーレイ画面1210を表示中における、QR決済のバーコードスキャンのユーザ動作を読み取り部15にて検知し、これに伴い、本オーバーレイ画面1210の画面ID、アイコン1211のオブジェクトID、当該操作内容「読み取り部におけるQR決済のバーコードスキャン」に基づき、対応関係テーブル20にて、対応するレコードを特定することとなる(s18、s19)。
【0100】
上述でレコードを特定した非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、そのレコードから、例えば、制御内容「レシートの印字選択画面を表示」および遷移先のオーバーレイ画面の情報を特定する。ここで特定し、既存画面1300にオーバーレイ表示するオーバーレイ画面1310を、
図13にて例示する。こうして特定された情報が、一連の操作終了に関するものである場合(s20:Y)、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、本フローを終了する。他方、特定された情報が、一連の操作終了に関するものでない場合(s20:N)、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、s16以降と同様の処理を再実行する。
【0101】
こうしたオーバーレイ画面1310にて、ユーザ操作により、アイコン1311がオブジェクト1312「レシート不要」にドラッグされた場合、これまでの説明と同様、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、このオブジェクトのドラッグに伴い実行すべき制御内容と、遷移すべき遷移先のオーバーレイ画面を特定し(s16)、
図14に例示する最終の既存画面1400上に、最終のオーバーレイ画面1410を重ねて表示し(s17)、「次の取引」オブジェクト1414へのアイコン1411のドラッグ操作をもってフローを完了する。
【0102】
この場合、非接触型POSレジスタ10の非接触制御部12は、s17で表示したオーバーレイ画面でのユーザ操作に応じた表示制御、当該ユーザ操作に応じた情報特定といったs18、s19を経て特定された情報が、一連の操作終了に関するものであると判定する(s20:Y)ことで、本フローを終了する。
【0103】
ユーザは、ここまでの操作で、非接触にて商品登録から商品代金決済までの手続きを完了することができた。しかもその背景では、非接触型POSレジスタ10が、既存のPOSレジスタ5の機能を(大規模な改修等せず)オーバーレイ画面を介して円滑、高速に制御した。すなわち、こうした本実施形態によれば、精度良好で導入コストが低廉な非接触制御機能を備えるPOSレジスタを実現可能となるのである。
【0104】
以上、本発明を実施するための最良の形態などについて具体的に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0105】
(プログラム)
なお、非接触型POSレジスタ10において、その各構成要素の動作は、プログラム111の形式で情報保持部11の不揮発性領域に記憶されている。非接触制御部12を実装するCPUは、プログラム111を上述の不揮発性領域から読み出して揮発性領域に展開し、当該プログラム111に従って上記処理を実行する。また、CPUは、プログラムに従って、上述した情報保持部11に対応する記憶領域をメモリ等の揮発性記憶装置に確保する。
【0106】
当該プログラム111は、具体的には、非接触型POSレジスタ10において、既存のPOSレジスタ5での、一連のユーザ操作に応じた各画面と、当該各画面における前記ユーザ操作に応じた制御内容との対応関係テーブル20を記憶し、生体認識用のセンサー70より、前記センサー近傍のユーザに関して特定部位の認識結果を取得した際、表示中画面の識別情報に基づき、前記対応関係テーブル20における前記制御内容を特定する処理と、前記制御内容に基づき、前記表示中画面上に非接触操作用のユーザインターフェイスをオーバーレイ表示する処理と、前記ユーザインターフェイスの上空での前記特定部位の挙動の認識結果を前記センサー70より取得してユーザ操作と認識し、前記制御内容における前記ユーザ操作に応じた処理を実行する処理をコンピュータによって実現するプログラムである。
【0107】
なお、情報保持部11を実装する補助記憶装置は、一時的でない有形の媒体の一例である。一時的でない有形の媒体の他の例としては、通信制御部14を介して接続される磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等が挙げられる。また、このプログラム111が適宜なネットワークを介して外部装置から非接触型POSレジスタ10に配信される場合、配信を受けた非接触型POSレジスタ10が当該プログラム111をメモリ等の主記憶装置に展開し、上記処理を実行してもよい。
【0108】
また、当該プログラム111は、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラム111は、前述した機能を不揮発性の補助記憶装置に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0109】
以上、本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0110】
1 ネットワーク
5 既存POSレジスタ
10 非接触型POSレジスタ
11 情報保持部
110 OS
111 プログラム
112 既存プログラム
113 アドオンプログラム
114 既存データ
12 非接触制御部
13 入出力制御部
14 通信制御部
15 読み取り部
16 印字装置
20 対応関係テーブル
21 画面テーブル
40 既存画面
41 表示中画面
50 非接触操作用インターフェイス
70 生体認識用センサー
71 主記憶装置
72 補助記憶装置
721 OS
722 プログラム
73 CPU
74 赤外線LED
75 ステレオカメラ
76 通信IF