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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】空気調和ユニット及びそれを備えた衣服
(51)【国際特許分類】
   F25B 21/02 20060101AFI20240724BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20240724BHJP
   A61F 7/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F25B21/02 Z
A41D13/002 105
A61F7/00 310J
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020171766
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063478
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591209442
【氏名又は名称】岸岡 俊
(73)【特許権者】
【識別番号】518447463
【氏名又は名称】清水 沙蘭
(73)【特許権者】
【識別番号】520396061
【氏名又は名称】近藤 巌
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 俊
【審査官】庭月野 恭
(56)【参考文献】
【文献】特許第6704575(JP,B1)
【文献】米国特許第07249464(US,B1)
【文献】登録実用新案第3180367(JP,U)
【文献】実開昭61-157426(JP,U)
【文献】特開昭63-272999(JP,A)
【文献】特開2018-031101(JP,A)
【文献】実開昭63-081811(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0006036(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 21/02
A41D 13/002
A61F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの身体を冷房又は暖房するための空気調和ユニットであって、
ペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の一方の面に接合する金属板と、
前記金属板よりも面積が大きく、前記金属板に接合した状態で身体側に配置される金属製の熱交換プレートと、
前記ペルチェ素子の他方の面に配置されるヒートシンクと、
前記ヒートシンクに対向して配置され、前記ヒートシンクの熱を外部に放出させるファンと、
前記ヒートシンク及び前記ファンを覆う状態に装着されるファンカバーと、
前記ファンカバーに装着されるダクトと、
を備え
前記ファンカバーは、前記ヒートシンク及び前記ファンの側方を覆う周壁を有し、前記周壁には、吸気窓と排気窓とが形成され、前記排気窓は、前記ヒートシンクの側方位置に形成されており、
前記ダクトは、環状のガイドと、前記ガイドから空気を一方向へ案内するための中空のダクト本体とを有し、前記ガイドが前記ファンカバーの前記周壁に形成された前記排気窓の周囲を覆う状態に装着され、前記排気窓から放出される排気を前記ガイドから前記ダクト本体に案内して身体の上部に向けて放出することを特徴とする空気調和ユニット。
【請求項2】
前記ファンカバーは、前記周の端部に接続され、前記ファンの背面側を覆う底部を有することを特徴とする請求項1に記載の空気調和ユニット。
【請求項3】
前記吸気窓は、前記底部に形成されることを特徴とする請求項に記載の空気調和ユニット。
【請求項4】
前記吸気窓は、前記周壁において前記排気窓よりも前記底部側に近い位置に形成されることを特徴とする請求項又はに記載の空気調和ユニット。
【請求項5】
前記周壁に形成される前記吸気窓の前記ヒートシンクに近い位置の縁部先端は、少なくとも内側に膨らませた断面略円形状の気流形成部を有することを特徴とする請求項に記載の空気調和ユニット。
【請求項6】
前記ファンカバーは、前記周壁と前記底部との接続部の内角が直角以下であることを特徴とする請求項乃至のいずれかに記載の空気調和ユニット。
【請求項7】
前記熱交換プレートをユーザーの身体の所定位置で支持する身体装着板、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の空気調和ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれかに記載の空気調和ユニットを備える衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和ユニット及びそれを備えた衣服に関し、特に空気調和ユニットを装着したユーザーの身体を冷房又は暖房する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服に取り付けたファンにより、外部の空気を衣服内に取り込み、着衣者(ユーザー)の身体を冷却するファン付の衣服が知られている(例えば特許文献1)。しかし、ファン付き衣服は外部の空気を衣服内に送り込むだけであるため、外気温が高い場合には冷房効果が低く、快適な衣服であるとは言えない。
【0003】
また、従来、衣服内部に設けた水路に冷水又は温水を流すことにより、身体を冷房又は暖房できるようにした衣服も知られている(例えば特許文献2)。しかし、衣服の内部に冷水や温水を流す構成では、衣服の重量が増すため、ユーザーの動作が鈍くなるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6200113号公報
【文献】特開2012-161446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ペルチェ素子を利用すれば、冷却又は加熱を行うことができるため、これをユーザーの身体に装着して身体を冷房又は暖房することが考えられる。例えば、ユーザーの衣服などにペルチェ素子を装着する手法などが挙げられる。
【0006】
しかし、ペルチェ素子は消費電力が大きいため、衣服の内面側に多数取り付けると電力消耗が激しく実用に耐えない。そのため、ペルチェ素子を利用する場合は、ペルチェ素子の数を減らし、ユーザーの身体を効率的に冷房又は暖房できるようにすることが望ましい。
【0007】
そこで本発明は、ペルチェ素子を利用してユーザーの身体を効率的に冷房又は暖房できる空気調和ユニット及びそれを備えた衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、ユーザーの身体を冷房又は暖房するための空気調和ユニットであって、ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の一方の面に接合する金属板と、前記金属板よりも面積が大きく、前記金属板に接合した状態で身体側に配置される金属製の熱交換プレートと、前記ペルチェ素子の他方の面に配置されるヒートシンクと、前記ヒートシンクに対向して配置され、前記ヒートシンクの熱を外部に放出させるファンと、前記ヒートシンク及び前記ファンを覆う状態に装着されるファンカバーと、を備えることを特徴とする構成である。
【0009】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記ファンカバーは、前記ヒートシンク及び前記ファンの側方を覆う周壁と、前記ファンの背面側を覆う底部とを有する有底の筒形状として形成され、外気を取り込む吸気窓と、前記ヒートシンクの熱を外部に放出する排気窓とが形成されていることを特徴とする構成である。
【0010】
第3に、本発明は、上記第2の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記排気窓は、前記周壁における前記ヒートシンクの側方位置に形成されることを特徴とする構成である。
【0011】
第4に、本発明は、上記第3の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記吸気窓は、前記底部に形成されることを特徴とする構成である。
【0012】
第5に、本発明は、上記第3又は第4の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記吸気窓は、前記周壁において前記排気窓よりも前記底部側に近い位置に形成されることを特徴とする構成である。
【0013】
第6に、本発明は、上記第5の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記周壁に形成される前記吸気窓の前記ヒートシンクに近い位置の縁部先端は、少なくとも内側に膨らませた断面略円形状の気流形成部を有することを特徴とする構成である。
【0014】
第7に、本発明は、上記第3乃至第6のいずれかの構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記ファンカバーは、前記周壁と前記底部との接続部の内角が直角以下であることを特徴とする構成である。
【0015】
第8に、本発明は、上記第3乃至第7のいずれかの構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記排気窓を覆う状態で前記ファンカバーに装着され、前記排気窓から放出される排気を身体上部へ案内するダクト、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0016】
第9に、本発明は、上記第1乃至第8のいずれかの構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記熱交換プレートをユーザーの身体の所定位置で支持する身体装着板、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0017】
第10に、本発明は、衣服であって、上記第1乃至第8のいずれかの構成を有する空気調和ユニットを備えることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ペルチェ素子を利用しつつ、消費電力を低減し、ユーザーの身体を快適な状態に冷房又は暖房できる空気調和ユニットを提供することができると共に、そのような空気調和ユニットを備えた衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】空気調和ユニットを示す斜視図である。
図2】空気調和ユニットを取り付けた衣服を示す図である。
図3】空気調和ユニットの構成を示す分解斜視図である。
図4】衣服に装着された空気調和ユニットの断面構造を示す図である。
図5】空気調和ユニットの外側に上着が着用された場合の断面構造を示す図である。
図6】ヒートシンク、ファン及びファンカバーの拡大断面図である。
図7】空気調和ユニットが装着される衣服の一例を示す図である。
図8】空気調和ユニット1の制御機構を示すブロック図である。
図9】第2実施形態における空気調和ユニットの一例を示す斜視図である。
図10】第2実施形態の空気調和ユニットを取り付けた衣服の一例を示す図である。
図11】第2実施形態の空気調和ユニットの一構成例を示す分解斜視図である。
図12】ダクトの一構成例を示す斜視図である。
図13】衣服に装着された空気調和ユニットの断面構造を示す図である。
図14】第3実施形態における空気調和ユニットの一例を示す斜視図である。
図15】ユーザーの身体に空気調和ユニットを装着した例を示す図である。
図16】第3実施形態の空気調和ユニットの一構成例を示す分解斜視図である。
図17】身体装着板を用いてユーザーの身体に装着された空気調和ユニットの断面構造を示す図である。
図18】空気調和ユニットにダクトを取り付けた状態の断面構造を示す図である。
図19】ファンカバーの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0021】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態における空気調和ユニット1の一例を示す斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ異なる方向から観た図を示している。図2は、空気調和ユニット1を取り付けた衣服100の一例を示す図である。図3は、空気調和ユニット1の一構成例を示す分解斜視図である。これらの図面に示す本実施形態の空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17を用いた熱交換を行い、衣服100の着衣者(ユーザー)の身体を冷房又は暖房する。例えば、図2に示すように、空気調和ユニット1は、衣服100の後身頃の生地101に取り付けられ、ユーザーの身体の背の部分を冷房又は暖房する。この空気調和ユニット1は、ユーザーの肩胛骨の間から腰に至る部分を冷房又は暖房する装置である。
【0022】
図3に示すように、空気調和ユニット1は、主として、ファンカバー11と、ファン14と、ヒートシンク15と、ペルチェ素子17と、保持部材18と、金属板19と、熱交換プレート20と、断熱パッド30と、固定パッド40とを備えて構成される。この空気調和ユニット1は、保持部材18がペルチェ素子17を保持する。
【0023】
ペルチェ素子17は、概略矩形状の薄板状素子であり、表面側と裏面側とに異なる2種類の金属が配置されており、その2種類の金属の接合部に電流を流すことにより、一方の金属から他方の金属へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した半導体素子である。例えば、一方の金属から他方の金属へ直流電流を流すと、ペルチェ素子17の一方の面が吸熱し、他方の面に発熱が起こる。直流電流の極性を反転させると、吸熱作用及び発熱作用が生じる面が反転する。空気調和ユニット1は、このペルチェ素子17の特性を利用してユーザーの身体を冷房又は暖房する。
【0024】
ペルチェ素子17の衣服外側に対応する面には、空気調和ユニット1によって熱交換された廃熱を外部へ放出する放熱機構が設けられる。具体的に説明すると、ペルチェ素子17の衣服外側に対応する面には、ヒートシンク15が接合するように配置される。例えばヒートシンク15は、その周囲が保持部材18に固定される。ヒートシンク15は、その周縁部に熱交換効率を高めるために多数のフィン16が設けられている。ヒートシンク15の更に衣服外側には、ヒートシンク15に対向するようにファン14が配置される。ファン14は、ヒートシンク15の熱を外部に放出させるためのファンである。ファンカバー11は、ヒートシンク15及びファン14の周縁部に取り付けられるカバー部材であり、衣服100の外側においてファン14及びヒートシンク15を覆う状態に装着される。ファンカバー11には、空気をカバー内に導入するための吸気窓12(12a,12b)と、カバー内の空気を外部に放出するための排気窓13とが設けられる。例えば、ファンカバー11は、ヒートシンク15及びファン14の側方を覆う周壁11bと、ファン14の背面側(衣服外側)を覆う底部11aとを有する有底の円筒形状として形成される。吸気窓12aはファンカバー11の底部11aに形成され、吸気窓12bは周壁11bの底部側に形成される。また排気窓13は、ファンカバー11の周壁11bのヒートシンク15(より具体的にはフィン16)の側方位置に形成される。
【0025】
これに対し、ペルチェ素子17の衣服内側に対応する面には、ペルチェ素子17による冷却又は加熱効果をユーザーの身体に効率よく伝えるための熱伝導機構が設けられる。具体的に説明すると、ペルチェ素子17の衣服内側に対応する面には、金属板19が接合するように配置される。この金属板19は、例えばその周縁部が保持部材18の衣服内側の面に接着された状態で固定される。金属板19は、その一面がペルチェ素子17の一方の面に接合した状態に取り付けられることにより、ペルチェ素子17の吸熱又は発熱作用により降温又は昇温する。この金属板19は例えばアルミ金属で形成される。アルミ金属は、熱伝導率が比較的高く、しかも軽量であるため、衣服装着用として適している。ただし、金属板19は、アルミ製に限られるものではなく、比較的高い熱伝導率を示す金属であればどのような金属を用いても構わない。例えば、銅や錫などを用いて金属板19を形成しても良い。
【0026】
金属板19は、その面積がペルチェ素子17の面積よりも大きいものを用いることが好ましい。ペルチェ素子17の面積よりも大きい金属板19をペルチェ素子17の一方の面に接合させることにより、金属板19の一面の略中央にペルチェ素子17を接合させることができ、ペルチェ素子17の一方の面で生じる吸熱作用又は発熱作業を効率よく金属板19に伝えることができる。
【0027】
ただし、金属板19の面積は、ペルチェ素子17の面積に対して大き過ぎることは好ましくない。金属板19は、ペルチェ素子17の吸熱又は発熱作用によって全体的に降温又は昇温するため、金属板19の熱容量が大きくなり過ぎるとペルチェ素子17に負荷がかかり、ペルチェ素子17における電流消費量が増加してしまうからである。そのため、金属板19の面積はペルチェ素子17の面積に比して1.5~4倍程度に留めておくことが好ましい。
【0028】
熱交換プレート20は、金属板19の衣服内側に対応する面に接合するように配置される金属製のプレートである。衣服100の内側に配置され、ユーザーの身体を冷却又は加熱するプレートである。例えば、熱交換プレート20は、金属板19よりも大きなサイズとして形成される。そのため、熱交換プレート20の熱容量は、金属板19よりも大きい。また、熱交換プレート20は、例えば、銅板、錫板、アルミ板などを用いて形成される。
【0029】
例えば、熱交換プレート20として銅板を用いる場合、熱伝導率が比較的高いため、熱交換を効率的に行うことが可能である。この場合、熱交換プレート20は、例えば厚さ0.3~0.8mm程度の銅板を基材とし、図3に示すように金属板19と接合する接合部21を除くプレート表面(表面及び裏面の双方を含む)に対して錫によるメッキ22を施したものを用いることが好ましい。板厚を0.3~0.8mm程度とすることで、衣服用として適度な硬度を得ることができる。また、銅は酸化しやすいため、プレート表面に対して錫によるメッキ22を施すことで酸化を防止することができる。また、錫によるメッキ22を金属板19との接合部21には設けないようにすることで、ユーザーの身体から吸収する熱を効率よく金属板19に伝導させることができる。
【0030】
また、例えば、熱交換プレート20として錫板を用いる場合、銅やアルミと比較して柔らかいため、ユーザーの身体に対する密着性が増すという利点がある。この場合、熱交換プレート20は、例えば厚さ0.5~1.0mm程度の錫板を基材とし、金属板19と接合する接合部21を除くプレート表面(表面及び裏面の双方を含む)に対して銀又は銅によるメッキ22を施したものを用いることが好ましい。板厚を0.5~1.0mm程度とすることで、衣服用として適度な硬度を得ることができる。また、錫は銅に比較して熱伝導率が低いため、プレート表面に対して銀又は銅によるメッキ22を施すことで熱伝導率の低さを大幅に改善することができる。また、銀や銅によるメッキ22を金属板19との接合部21には設けないようにすることで、ユーザーの身体から吸収する熱を効率よく金属板19に伝導させることもできる。
【0031】
また、例えば、熱交換プレート20としてアルミ板を用いる場合、例えば厚さ0.5~0.8mm程度のアルミ板を基材とする。この場合のアルミ板には、予めアルマイト処理を施しておく。アルマイト処理によりアルミの酸化による腐食を防止することができる。また、アルミ板は、金属板19と接合する接合部21を除くプレート表面(表面及び裏面の双方を含む)に対して銀によるメッキ22を施したものを用いることが好ましい。銀は、金属の中で熱伝導率が最も高いため、ユーザーの身体を効率的に冷却又は加熱することができる。
【0032】
熱交換プレート20は、ユーザーの肩胛骨の間から腰に至る部分に直接的又は間接的に接触し、その部分を効率的に冷却又は加熱できるようにするため、概略逆T字状の形状を有しており、上部の幅よりも下部の幅が広くなるように形成されている。上部の幅が狭いのは、ユーザーの動作によって肩胛骨が動いたとしても、熱交換プレート20がユーザーの肩胛骨に干渉せず、ユーザーに違和感を生じさせないためである。一方、熱交換プレート20の下部の幅を上部よりも広くすることにより、ユーザーの背から腰の辺りを広く冷却又は加熱することができる。なお、熱交換プレート20は、概略逆T字状の形状に限られるものではなく、例えば台形状であっても良いし、三角形状であっても良い。
【0033】
また、熱交換プレート20には、金属板19と接合する接合部21の中心位置にビス29を挿通する孔23が設けられる。ビス29は、この孔23に対して衣服内側から外側に向かって挿入され、金属板19の衣服内側の面に設けられた螺子孔と螺合し、熱交換プレート20と金属板19とを互いに接合させた状態に固定する。ただし、これに限らず、熱交換プレート20と金属板19とは、接着剤などによって互いに接着されるものであっても構わない。
【0034】
断熱パッド30は、熱交換プレート20の周縁部を保持し、空気調和ユニット1を衣服100に装着するための部材である。断熱パッド30は、熱交換プレート20の周縁部を保持できるように、熱交換プレート20と略同一の形状を有している。例えば、断熱パッド30は、熱交換プレート20と同様に概略逆T字状に形成される。ただし、熱交換プレート20が概略逆T字状とは異なる形状(例えば、台形や三角形など)である場合、断熱パッド30は、熱交換プレート20の形状に適合した形状となる。
【0035】
断熱パッド30は、例えばシリコン樹脂によって形成される。シリコン樹脂は、柔軟性に優れ、断熱性を有するので好適である。断熱パッド30は、衣服外側に対応する背面側が覆われており、その背面側に金属板19を熱交換プレート20の接合部21に接合させるための孔31が形成されている。この孔31は、金属板19の外形サイズと略同一サイズの孔である。そのため、この孔31を介して、保持部材18に固定される金属板19を断熱パッド30に保持される熱交換プレート20の接合部21に接合させることができる。また、断熱パッド30の背面側には、上部と下部の3箇所の位置に固定パッド40に設けられている係合突起42と係合する筒状の固定部32が設けられている。
【0036】
一方、断熱パッド30の前面側(衣服内側)は、図1(b)に示すように熱交換プレート20を露出させるように開放されており、その周縁部に熱交換プレート20の周縁部を保持する保持部33が設けられている。つまり、断熱パッド30は、熱交換プレート20の背面側と前面側の周縁部とを覆う状態で熱交換プレート20を保持するのである。断熱パッド30は、熱交換プレート20の衣服外側に対応する背面側を覆うことにより、熱交換プレート20による吸熱作用などがユーザーの身体に向けて良好に生じ、熱交換ロスを防ぐことができる。
【0037】
固定パッド40は、例えば樹脂製のパッドであり、衣服100の外側から衣服100の内側に配置される断熱パッド30に対して固定されるパッドである。固定パッド40は、例えば断熱パッド30と略同一の形状として形成される。固定パッド40にはファンカバー11の外形よりも若干大きいサイズの孔41が形成されており、ファンカバー11は、この孔41を通して固定パッド40から衣服外側に突出した状態に取り付けられる。また、固定パッド40の衣服内側の面には、断熱パッド30の固定部32に対応する位置に上述した係合突起42が設けられている。例えば、固定パッド40は、係合突起42が断熱パッド30の固定部32に嵌入することにより、断熱パッド30に固定される。このとき、衣服100は、断熱パッド30と固定パッド40との間に挟まされた状態に配置される。これにより、空気調和ユニット1は、図2に示すように衣服100の後身頃の生地101に装着される。なお、係合突起42は、固定部32の筒状の孔に嵌め込まれた状態で係合状態となる構造であるため、装着が簡単であるだけでなく、簡単に取り外すことも可能である。
【0038】
図4は、衣服100に装着された空気調和ユニット1の断面構造を示す図である。空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17に直流電流が供給され、ファン14が駆動されることにより、衣服100を着用したユーザーの身体200を冷却又は加熱する。ペルチェ素子17に直流電流が供給されると、ペルチェ素子17は、ユーザーの身体200に対向する一方の面に吸熱作用又は発熱作用を生じさせる。この吸熱作用又は発熱作用は、金属板19に熱伝導される。金属板19の熱容量は、熱交換プレート20の熱容量よりも小さい。そのため、ペルチェ素子17は、電流消費量を増加させることなく、金属板19を効率的に冷却又は加熱することができる。
【0039】
ペルチェ素子17の吸熱作用又は発熱作用によって金属板19が降温又は昇温すると、その熱は接合部21を介して熱交換プレート20に伝わる。その結果、熱交換プレート20の温度が下降又は上昇し、ユーザーの身体200を直接的又は間接的に冷却又は加熱することができる。つまり、ペルチェ素子17は、金属板19を介して熱交換プレート20を冷却又は加熱することができるのである。特に、熱交換プレート20は、上述のように比較的熱伝導率の高い金属を使用して形成されるため、金属板19から伝わる熱が比較的効率よく熱交換プレート20の全体に行き渡るようになっている。それ故、空気調和ユニット1は、1つのペルチェ素子17でユーザーの背の比較的広い範囲を効率的に冷却又は加熱することが可能である。
【0040】
また、ペルチェ素子17は、上述のように、ユーザーの身体200と対向しない他方の面に、上記とは反対の作用を生じさせる。例えば、ユーザーの身体200を冷却するときには、ペルチェ素子17の衣服外側に対向する面に発熱作用が生じる。この熱は、ヒートシンク15によって吸熱される。ファン14が駆動されると、図4に示すようにファンカバー11に設けられた吸気窓12から矢印F1で示すように外部の空気がファンカバー11内に進入する。この空気がヒートシンク15の熱を奪い、暖気となって排気窓13から矢印F2で示すようにファンカバー11の外側へ排気される。つまり、ヒートシンク15の熱は、ヒートシンク15の側方位置に設けられた排気窓13からファンカバー11の周囲へ放出される。
【0041】
また、ユーザーの身体200を加熱するときには、ペルチェ素子17の衣服外側に対向する面に吸熱作用が生じる。この熱も、ヒートシンク15によって吸熱される。そしてファン14によって吸気窓12からファンカバー11内に進入する空気がヒートシンク15の熱を奪い、冷気となって排気窓13からファンカバー11の外側へ排気される。
【0042】
空気調和ユニット1は、上記のようにしてユーザーの身体200を冷却又は加熱する。特に、夏場に冷房目的で空気調和ユニット1を衣服100に装着すると、身体200の皮膚温度は約33℃であるのに対し、金属製の熱交換プレート20は皮膚温度よりも低い温度であることが多い。そのため、着衣時には、身体200が熱交換プレート20に触れることにより、一定の涼感をユーザーに与えることができる。ただし、着衣時に得られる涼感は一時的なものであり、ペルチェ素子17が駆動されていない場合には、熱交換プレート20は、身体200の皮膚温度と同じ温度まで次第に上昇していくことになる。
【0043】
一方、着衣後に直ぐにペルチェ素子17を駆動すると、熱交換プレート20が温度上昇し始める前にペルチェ素子17は、熱交換プレート20を冷却し始める。そのため、熱交換プレート20の温度上昇を抑えることができる。つまり、夏の冷房目的で使用するときには、熱交換プレート20の温度上昇を抑えるようにペルチェ素子17が熱交換プレート20の熱を吸熱すれば良い。したがって、上述した空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17の消費電力量を増加させることなく、着衣時からユーザーに涼感を与えることが可能であり、しかもその涼感を長時間継続させることができるという利点がある。
【0044】
空気調和ユニット1を装着する衣服100は、夏服であっても冬服であっても良い。例えば図4に示すように、ユーザーが最も外側に着用する衣服であっても構わない。また、例えば図5に示すように、上着150の内側に着用する衣服100に空気調和ユニット1を装着しても構わない。ただし、図5に示すように、空気調和ユニット1の外側に上着150が存在する場合、ファン14を駆動すると、ファンカバー11の底部11aに設けられている吸気窓12aが上着150で覆われてしまうため、底部11aの吸気窓12aから十分な空気をファンカバー11の内部に取り込むことができない。そこで本実施形態の空気調和ユニット1は、ファンカバー11の底部11aだけでなく、周壁11bにも吸気窓12bを設けている。この吸気窓12bは、図5に示すように、ファンカバー11の周壁11bにおいてファン14の側方位置よりも底部11aに近い位置に形成されており、ファン14によって生じる気流の上流側に形成されている。そのため、ファン14が駆動されると、底部11aに近い位置に形成された吸気窓12bから外部の空気をファンカバー11の内部に取り込むことが可能である。それ故、仮に底部11aの吸気窓12aに上着150が貼り付いた状態になっているとしても、周壁11bに形成された吸気窓12bからファンカバー11の内部に空気を取り込み、ヒートシンク15に対して十分な空気を供給することができる。
【0045】
また、本実施形態では、図4及び図5に示すように、ファンカバー11の底部11aと周壁11bとの接続部における内角θが直角以下となるように形成される。底部11aと周壁11bとの接続部の内角θを直角以下に形成することにより、仮に図5に示すように、底部11aに上着150が貼り付いてしまった場合であっても、上着150と周壁11bとの間に空間Sを形成することができる。すなわち、吸気窓12aが形成された周壁11bの近傍に空間Sを形成することにより、周壁11bに形成された吸気窓12bから、矢印F1で示すように空気をファンカバー11内に進入させることが可能となる。その結果、吸気窓12bから十分な空気を取り込んでヒートシンク15の熱を奪うことができる。ヒートシンク15から熱を奪うことによって暖気又は冷気となった空気は排気窓13から矢印F2で示すようにファンカバー11の外側へ排気される。この排気は、上着150の内側で外部空気と混ざり、常温の空気となって再び吸気窓12aからファンカバー11内に取り入れられる。つまり、本実施形態の空気調和ユニット1は、衣服100の外側に上着150が重ね着された場合であっても、ファンカバー11の周壁11bに設けられた吸気窓12bと排気窓13とを介して上着150の内部で空気を循環させることにより、ヒートシンク15の過度な昇温又は降温を抑制し、冷房効果及び暖房効果を良好に維持することができる構成である。
【0046】
例えば、夏場に冷房目的で空気調和ユニット1を取り付けた衣服100を着用し、更にその外側に上着150を着用した場合、排気窓13から排気される空気は暖気となる。この場合、ファン14による風量を増やすことでヒートシンク15の吸熱量よりも冷却能力を高めることができるので、排気窓13から排気される暖気が上着150の内側の空気を暖めることはない。すなわち、ユーザーの身体200の皮膚温度は約33℃であり、外気温度や運動エネルギーの影響を考慮しても皮膚温度は約36℃を超えない。風速と体感温度との関係は、風速1m/secで体感温度が約1℃下がるため、2m/sec以上の風を上着150内に流すことにより、ペルチェ素子17の冷却効果との相乗効果で涼しくすることができる。そのため、冷房目的の場合は、ファン14の風速を2m/sec以上に設定すれば良い。
【0047】
また、ファンカバー11には、ファン14による風速を部分的に高める構造を採用しても良い。例えば、図6に示すように、周壁11bの底部11aに近い位置に設けられる吸気窓12bのヒートシンク15に近い位置の縁部先端に、少なくともファンカバー11の内側に膨らませた断面略円形状の気流形成部11cを設けた構造を採用しても良い。図6に示す気流形成部11cは、吸気窓12bを形成する開口縁のうち、少なくともヒートシンク15に近い位置の縁部に形成され、ファンカバー11の内側及び外側に断面略円形状に膨らませた形状を有している。ただし、気流形成部11cの形状はこれに限られるものではなく、ファンカバー11の内側のみに膨らませた形状であっても構わない。また、気流形成部11cとファン14との間隔は、3mm程度又はそれ以下とすることが好ましい。このような気流形成部11cを吸気窓12bの縁部に設けることにより、気流形成部11cの近傍には気流F1aが形成される。この気流F1aは、ベンチュリー効果により他の部分を流れる気流よりも風速が速くなる。その結果、吸気窓12bを介してファンカバー11の内側へ流入する空気量が多くなる。すなわち、同じファン14の能力で風量を増やすことができるのである。そして上述のように気流形成部11cとファン14との隙間を3mm程度以下の隙間とすることでベンチュリー効果を高めることができ、吸気窓12bからの空気の吸引量を効果的に多くすることができる。
【0048】
また、排気窓13の開口幅は、ヒートシンク15に設けられているフィン16の高さと概略同一であることが好ましい。これは、排気窓13の開口幅が小さくなると、排気窓13から外部へ放出される風量が減ることから効率が低下することを避けるためである。以上のように、吸気窓12bのヒートシンク15側の縁部に気流形成部11cを設け、排気窓13の開口幅をヒートシンク15におけるフィン16の高さ寸法と同程度にすることにより、ファン14の能力を最大限に発揮させて十分な風量を確保することができ、ヒートシンク15の熱を効率的に奪うことができるのである。
【0049】
上記のような空気調和ユニット1を装着する衣服100には、予め保持部材18や係合突起42と係合する筒状の固定部32を貫通させるための孔を形成しておくことが好ましい。図7は、そのような衣服100の一例を示す図である。例えば、衣服100の後身頃の生地101には、保持部材18を挿通させるための孔102と、固定部32を貫通させるための孔103とを予め形成しておくことが好ましい。更に、衣服100には、図7において斜線で示すように、空気調和ユニット1を装着する部分に、生地101の破損や衣服100の型くずれを防止するために補強用の当て布などを用いた補強部材110を配置しておくことがより好ましい。この補強部材110は、図1に示すように、断熱パッド30と固定パッド40との間に配置されることになる。衣服100に対して補強部材110を設けることにより、空気調和ユニット1の装着によって負荷がかかる孔102,103の周縁の生地101が破損することを防ぐことができ、衣服100を長い期間に亘って使用することができる。また、衣服100を着用したときの型くずれを防止することもできる。なお、補強部材110は、空気調和ユニット1と略同形状とすることが好ましいが、孔102,103の周縁部だけを補強する目的であれば、孔102,103の周縁部だけに配置するようにしても良い。
【0050】
上記のような空気調和ユニット1は、固定パッド40の係合突起42を断熱パッド30の固定部32から取り外すことにより、衣服100から簡単に取り外すことができる。そのため、空気調和ユニット1を取り外した状態で衣服100の洗濯やクリーニングを行うことが可能である。また、1つの空気調和ユニット1を異なる衣服100に装着して利用することも可能である。更には、上記実施形態では、衣服100の後身頃の生地101に空気調和ユニット1を配置する例を説明した。しかし、空気調和ユニット1を取り付ける位置は、必ずしも後身頃の生地101には限られない。
【0051】
次に、図8は、空気調和ユニット1の制御機構を示すブロック図である。上述した空気調和ユニット1は、通電の必要な部品として、ペルチェ素子17と、ファン14とを備えている。そのため、空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17及びファン14のそれぞれを電気的に制御する制御機構として、コントローラ5と、モバイルバッテリー6とを備えている。モバイルバッテリー6は、例えば充電式のバッテリーであり、コントローラ5に対して電力を供給する。コントローラ5は、モバイルバッテリー6から供給される電力を空気調和ユニット1へ供給することにより、ペルチェ素子17及びファン14を駆動する。このコントローラ5は、ペルチェ素子17に供給する直流電流の極性を切り替えることにより、冷房と暖房とを切り替えることが可能である。ただし、冷房及び暖房のいずれであっても、ファン14を駆動する方向(回転方向)は変わらない。このようなコントローラ5及びモバイルバッテリー6は、例えば衣服100に設けられるポケット(図示省略)などに収容された状態で携行される。
【0052】
以上のように、本実施形態の空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17と、ペルチェ素子17の一方の面に接合する金属板19と、その金属板19よりも面積が大きく、金属板19に接合した状態で衣服100の内側に配置される金属製の熱交換プレート20とを備える構成である。このような構成によれば、ペルチェ素子17は、熱交換プレート20よりも熱容量が小さい金属板19に対して吸熱作用又は加熱作用を及ぼし、金属板19を介して熱容量の大きな熱交換プレート20を冷却又は加熱し、ユーザーの身体200を冷房又は暖房することができる。そのため、ペルチェ素子17に供給する直流電流を増加させることなく、効率的にユーザーの身体200を冷房又は暖房することが可能であり、1つのペルチェ素子でも十分な快適性を提供することができる。
【0053】
これに対し、金属板19を設けることなく、ペルチェ素子17に対して面積の大きな熱交換プレート20を直接接合させてしまうと、ペルチェ素子17が冷却又は加熱しようとする熱交換プレート20の熱容量が大きいため、必然的にペルチェ素子17に供給すべき直流電流が増加し、消費電力が大きくなってしまうことから、使用可能時間が短くなってしまうという問題がある。このような問題は、上述のように、ペルチェ素子17と熱交換プレート20との間に金属板19を介在させることによって解決され、長時間に亘って空気調和ユニット1を稼働させることが可能となり、ユーザーに快適な一日を過ごさせることができるのである。
【0054】
また、本実施形態における熱交換プレート20は、ユーザーの肩胛骨の間から腰に至る部分(背の中央部分)に配置されるため、1つのペルチェ素子17でユーザーの背の広い範囲を冷房又は暖房することができるのである。
【0055】
また、本実施形態の空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17の他方の面に接合させたヒートシンク15と、そのヒートシンク15の熱を外部へ放出させるためのファン14と、ファンカバー11とを備えており、ペルチェ素子17による熱交換効率が低下しないようにしている。特に、本実施形態のファンカバー11は、空気調和ユニット1を装着する衣服100上に上着150を着用する場合であっても、ファンカバー11をファンカバー11と上着150との間に空間Sを形成することが可能な形状としており、その空間Sから空気をファンカバー11の内部に取り入れるための吸気窓12bを周壁11bに形成している。そのため、ファン14の駆動時に上着150の内側で空気を循環させて、ペルチェ素子17に吸熱作用又は発熱作用を効率的に生じさることができるため、ユーザーの身体200を快適に冷却又は加熱できるのである。
【0056】
(第2実施形態)
次に本発明の第2実施形態について説明する。図9は、本発明の第2実施形態における空気調和ユニット1の一例を示す斜視図であり、第1実施形態で説明した空気調和ユニット1にダクト50を装着したものである。図10は、空気調和ユニット1を取り付けた衣服100の一例を示す図である。図11は、空気調和ユニット1の一構成例を示す分解斜視図である。図12は、ダクト50の一例を示す斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ異なる方向から観た図を示している。これらの図面に示す本実施形態の空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17を用いた熱交換を行い、衣服100を着用するユーザーの身体200を冷房又は暖房するとともに、ダクト50により排気窓13からの排気を図9の矢印F2で示すように吹出口51から身体上部方向へ吹き出すようにしたものである。例えば、図10に示すように、空気調和ユニット1は、衣服100の後身頃の生地101に取り付けられ、ユーザーの身体200の背を冷房又は暖房する。この空気調和ユニット1は、ユーザーの肩胛骨の間から腰に至る部分を冷房又は暖房するとともに、背上部から首部や後頭部に向かって送風する機能を有している。特に、空気調和ユニット1による首部周辺への送風機能は、空気調和ユニット1を夏場の冷房目的で使用する場合に好適であり、ユーザーの首部周辺に涼感を与える効果を有している。
【0057】
図11に示すように、この空気調和ユニット1は、主として、ファンカバー11と、ファン14と、ヒートシンク15と、ペルチェ素子17と、保持部材18と、金属板19と、熱交換プレート20と、断熱パッド30と、固定パッド40と、ダクト50とを備えて構成される。ファンカバー11と、ファン14と、ヒートシンク15と、ペルチェ素子17と、保持部材18と、金属板19と、熱交換プレート20と、断熱パッド30と、固定パッド40とは、第1実施形態と同様である。
【0058】
ダクト50は、例えば樹脂製のダクトであり、排気窓13からの排気を身体上部方向へ吹き出すようにするものである。このダクト50は、第1実施形態で説明した空気調和ユニット1に対して着脱可能である。そのため、例えば空気調和ユニット1を冬場の暖房目的で使用する際には、ダクト50を空気調和ユニット1から取り外した状態で使用することが可能である。また、夏場の冷房目的で使用する際には、ダクト50を空気調和ユニット1に取り付けることにより、ユーザーの首部周辺に涼感を与えることが可能となり、冷房効果を更に向上させることができる。
【0059】
図12に示すように、ダクト50は、空気を一方向へ案内するための中空のダクト本体50aを有し、そのダクト本体50aの一端に吹出口51が形成され、他端に吸入口52が形成され、更にその吸入口52の近傍には環状のガイド54が形成された構成である。ガイド54はファンカバー11の外形と略同一サイズの孔53が形成されている。このガイド54の孔53にファンカバー11が挿入して装着されることにより、ダクト50は、図9に示すように、ファンカバー11に形成された排気窓13の周囲を覆う状態に装着される。そのため、排気窓13から放出される排気は、ガイド54により吸入口52へ案内され、ダクト本体50aの内側を通って吹出口51から排出される。図9に示すように、吹出口51は、例えばユーザーの背上部位置に設けられ、開口方向を後頭部方向とすることにより、ユーザーの背上部から首部や後頭部に効率的に送風可能となる。
【0060】
図13は、衣服100に装着された空気調和ユニット1の断面構造を示す図であり、上着150を着用して使用する場合を例示している。空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17に直流電流が供給され、ファン14が駆動されることにより、衣服100を着用したユーザーの身体200を冷却する。このとき、ペルチェ素子17の衣服外側に対向する面に発熱作用が生じる。この熱は、ヒートシンク15によって吸熱される。ファン14が駆動されると、図13に示すようにファンカバー11に設けられた吸気窓12bから矢印F1で示すように、上着150とファンカバー11との間に形成された空間S内の空気がファンカバー11内に進入する。この空間Sは、例えば円筒形状のファンカバー11の底部11aと周壁11bとの接続部の内角θを直角以下の角度にすることにより形成されるものである。ファンカバー11内に進入した空気がヒートシンク15の熱を奪い、暖気となって排気窓13から矢印F2で示すようにファンカバー11の外側へ排気される。そして、排気窓13から排気された暖気は、ガイド54の内側を回り込んで吸入口52へ案内され、ダクト本体50aの内側を通って吹出口51から排出される。ファンカバー11の排気窓13から放出される暖気は、ファン14による風量を増やすことによって冷却することができるため、吹出口51からユーザーの首部乃至後頭部に向かって排出される風はそれ程暖かい風ではない。そのため、吹出口51からの風をユーザーの首部乃至後頭部に吹き付けることにより、ユーザーに涼感を与えることができる。
【0061】
以上のように、本実施形態の空気調和ユニット1は、ファンカバー11の排気窓13から放出される排気をユーザーの身体200の上部へ案内するダクト50を備えており、このダクト50によってユーザーの首部又は後頭部に風を吹き付けることが可能な構成である。このような構成によれば、ユーザーの背を冷房するだけでなく、首部や後頭部に対して送風することが可能であるため、ユーザーに十分な快適性を提供することができる。
【0062】
なお、上記においては、空気調和ユニット1を冷房目的で使用する場合にダクト50を装着する例を説明したが、これに限られるものではなく、空気調和ユニット1を暖房目的で使用する場合にダクト50を装着しても構わない。また、本実施形態において上述した点以外については、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0063】
(第3実施形態)
次に本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態では、空気調和ユニット1を衣服100に装着するのではなく、ユーザーの身体200に直接装着することが可能な空気調和ユニット1について説明する。図14は、本発明の第3実施形態における空気調和ユニット1の一例を示す斜視図であり、第1実施形態の空気調和ユニット1に身体装着板60を装着したものである。図15は、身体200に空気調和ユニット1を装着した場合の一例を示す図である。図16は、空気調和ユニット1の一構成例を示す分解斜視図である。これらの図面に示す本実施形態の空気調和ユニット1は、例えば下着の内側で空気調和ユニット1をユーザーの身体200に近接した位置に取り付け、ユーザーの身体200を冷房又は暖房できるようにしたものである。例えば、図15に示すように、空気調和ユニット1は、身体200の背201に装着され、ユーザーの身体200の背201を冷房又は暖房する。
【0064】
図16に示すように、空気調和ユニット1は、主として、ファンカバー11と、ファン14と、ヒートシンク15と、ペルチェ素子17と、保持部材18と、金属板19と、熱交換プレート20と、断熱パッド30と、固定パッド40と、身体装着板60とを備えて構成される。ファンカバー11と、ファン14と、ヒートシンク15と、ペルチェ素子17と、保持部材18と、金属板19と、熱交換プレート20と、断熱パッド30と、固定パッド40とは、第1実施形態と同様である。身体装着板60は、熱交換プレート20をユーザーの身体200の所定位置で支持するためのものであり、空気調和ユニット1の付属部品である。
【0065】
身体装着板60は、例えばプラスチックによって形成され、空気調和ユニット1を身体200に装着するための部材であり、ある程度の柔軟性を有している。この身体装着板60は、第1実施形態で説明した空気調和ユニット1に対して着脱可能である。身体装着板60は、例えば断熱パッド30や固定パッド40と同様に概略逆T字状に形成される。ただし、図14に示すように、身体装着板60は、断熱パッド30や固定パッド40と比較して縦方向及び横方向のサイズが若干大きいサイズに形成されている。具体的には、身体装着板60は、その上部が断熱パッド30や固定パッド40の上端部から上方に突出すると共に、下部の左右方向において断熱パッド30や固定パッド40の両端部から左右方向に突出した形状を有している。そして身体装着板60は、上方及び左右方向に突出した部分に、空気調和ユニット1を身体200に装着するためのベルト61(61a,61b)を挿入する孔62(62a,62b)が形成されている。なお、身体装着板60は、概略逆T字状の形状に限られるものではなく、例えば台形状であっても良いし、三角形状であっても良い。
【0066】
図16に示すように、身体装着板60の中央部分には保持部材18の外形よりも若干大きいサイズの孔63が形成されている。また、身体装着板60は、断熱パッド30の固定部32に対応する位置に、固定部32を挿通可能な孔64が形成されている。身体装着板60の孔64に断熱パッド30の固定部32を挿通し、固定パッド40の係合突起42を、断熱パッド30の固定部32に嵌入することにより、身体装着板60は断熱パッド30と固定パッド40との間に挟まれた状態に配置される。そして、図15に示すように、肩胛骨近傍の孔62aに肩ベルト61aを装着し、腰位置の孔62bに腰ベルト61bを装着することにより、空気調和ユニット1をユーザーの身体200に装着することが可能となる。
【0067】
図17は、身体装着板60を用いてユーザーの身体200に装着された空気調和ユニット1の断面構造を示す図であり、下着などの衣服100を空気調和ユニット1上に着用している場合を示している。空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17に直流電流が供給され、ファン14が駆動されることにより、空気調和ユニット1のユーザーの身体200を冷却又は加熱する。また、ペルチェ素子17は、上述のように、空気調和ユニット1のユーザーの身体200と対向しない他方の面に生じる熱をヒートシンク15が吸熱し、ファン14による送風作用によって外部に熱を放出する。例えばファン14が駆動されると、図17に示すようにファンカバー11に設けられた吸気窓12bから矢印F1で示すように、衣服100とファンカバー11との間に形成された空間S内の空気が吸気窓12bを介してファンカバー11の内側に進入する。そしてファンカバー11の内側に進入した空気がヒートシンク15の熱を奪い、排気窓13から矢印F2で示すようにファンカバー11の外側へ排気される。このとき、周壁11bに設けられる吸気窓12bの縁部先端に気流形成部11cを設けておけば、ベンチュリー効果によって周壁11bの内側を通過する空気の流れF1aの風速が速まり、吸気窓12bからの吸引量を多くして冷却能力を高めることができる。
【0068】
このように本実施形態の空気調和ユニット1は、空気調和ユニット1を身体200に装着するための身体装着板60を備える構成である。この構成によれば、身体装着板60により空気調和ユニット1を身体200に直接装着することができるため、衣服100に予め保持部材18や固定部32を貫通させるための孔を形成しておく必要がない。すなわち、空気調和ユニット1を装着するための専用衣服を準備する必要がないため、より利便性の高いものである。
【0069】
また、本実施形態においても、第2実施形態で説明したようにダクト50を空気調和ユニット1に装着しても構わない。図18は、空気調和ユニット1にダクト50を取り付けた例を示す断面構造を示す図である。図18に示すようにダクト50を取り付ければ、ユーザーの身体200の首筋部分に風を吹き付けることができる。特に、ユーザーが下着などの衣服100の内側で空気調和ユニット1を装着していれば、衣服100の内側で上向きの風が生じるため、ユーザーに適度な涼感を与えることができるという利点がある。
【0070】
なお、本実施形態では、空気調和ユニット1を身体装着板60に装着したベルト61で身体200に直接装着する場合を例示したが、これに限られるものではなく、例えば衣服100を着衣後に本実施形態の空気調和ユニット1を装着しても構わない。更には、空気調和ユニット1を身体200に装着するための身体装着板60を、断熱パッド30と固定パッド40との間に挟まれた状態に装着する構成例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、固定パッド40にベルト61を装着可能な孔62を形成することにより、固定パッド40に身体装着板60の機能を実装するようにしても構わない。また、本実施形態では、上述したコントローラ5及びモバイルバッテリー6は、例えばベルト61に装着された状態で携行されるようにしても良い。
【0071】
また、本実施形態において上述した点以外については、第1実施形態又は第2実施形態で説明したものと同様である。
【0072】
(変形例)
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0073】
例えば、上記実施形態では、冷房及び暖房を切り替えることが可能な空気調和ユニット1について説明したが、これに限られるものではない。例えば、空気調和ユニット1は、冷房専用ユニットであっても良いし、暖房専用ユニットであっても良い。
【0074】
また上記実施形態では、ユーザーの背を冷房又は暖房する空気調和ユニット1を例に挙げて説明した。しかし、空気調和ユニット1が冷房又は暖房を行う身体200の部位は、必ずしもユーザーの背に限られるものではない。
【0075】
また上記実施形態では、ファンカバー11が底部11aと周壁11bとを有する有底の円筒形状である場合を例示した。しかし、ファンカバー11の形状は必ずしも円筒形状に限られものではない。例えば、ファンカバー11は、全体として有底の筒形状であれば良く、角柱形状、円錐台形状又は角錐台形状などの形状であっても構わないし、またこれらの混合形状であっても構わない。
【0076】
また、空気調和ユニット1の外側に上着150が存在する場合、ファンカバー11は、上述したように周壁11bの近傍に空間Sを形成し、吸気窓12bからファンカバー11の内側に空気を流入させることができる構成であることが好ましい。これを実現するため、上記実施形態では、ファンカバー11の底部11aと周壁11bとの接続部の内角θを直角以下の角度とする例を説明したが、底部11aと周壁11bとの接続部の内角θを直角以下とすることなく、周壁11bの近傍に空間Sを形成できるのであれば、底部11aと周壁11bとの接続部の内角θは必ずしも直角以下の角度とする必要はない。図19は、その一例として、ファンカバー11の底部11aのサイズを周壁11bのサイズよりも大きく形成し、底部11aの周縁部11dを周壁11bの端部から更に外側に延設した構成例を示す図である。この場合、仮に底部11aに形成した吸気窓12aに上着150が貼り付いてしまったとしても、底部11aの周縁部11dが周壁11bの外側まで延設されているため、上着150が周壁11bに形成された吸気窓12bに貼り付いてしまうことを防止でき、吸気窓12bの近傍に空間Sを形成することができる。その結果、吸気窓12bからファンカバー11の内側に外部の空気を取り込むことができるようになり、空気調和ユニット1の上述した動作を正常に行うことができる。このようにファンカバー11の底部11aの周縁部11dを周壁11bよりも拡張させた状態とする構成では、底部11aと周壁11bとの接続部の内角θは必ずしも直角以下とすることに制限されない。
【符号の説明】
【0077】
1…空気調和ユニット、5…コントローラ、6…モバイルバッテリー、11…ファンカバー、14…ファン、15…ヒートシンク、17…ペルチェ素子、19…金属板、20…熱交換プレート、30…断熱パッド、40…固定パッド、50…ダクト、60…身体装着板、100…衣服、110…補強部材、150…上着。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図19