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特許7525839非塩素化誘導体を含むイソシアネート化合物の製造方法及びその組成物
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  • 特許-非塩素化誘導体を含むイソシアネート化合物の製造方法及びその組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】非塩素化誘導体を含むイソシアネート化合物の製造方法及びその組成物
(51)【国際特許分類】
   C07C 263/16 20060101AFI20240724BHJP
   C07C 263/10 20060101ALI20240724BHJP
   C07C 265/08 20060101ALI20240724BHJP
   C07C 265/14 20060101ALI20240724BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20240724BHJP
   C08G 18/38 20060101ALI20240724BHJP
   C08G 18/71 20060101ALI20240724BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240724BHJP
   C09D 175/00 20060101ALI20240724BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240724BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240724BHJP
【FI】
C07C263/16
C07C263/10
C07C265/08
C07C265/14
C08G18/32 003
C08G18/38 055
C08G18/71
C08G18/71 020
C08G18/76 014
C09D175/00
G02B1/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2023516801
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-03
(86)【国際出願番号】 KR2020012629
(87)【国際公開番号】W WO2022059820
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517011629
【氏名又は名称】ケーエス ラボラトリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KS LABORATORIES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】303,13,Yulchonsandan 4-ro,Haeryong-myeon,Suncheon-si,Jeollanam-do 58034 Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】518013361
【氏名又は名称】キム,クンシク
【氏名又は名称原語表記】KIM,Keun Sik
【住所又は居所原語表記】205-1503,50,Dojang-gil,Suncheon-si,Jeollanam-do 58004 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002295
【氏名又は名称】弁理士法人M&Partners
(72)【発明者】
【氏名】キム クンシク
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-091682(JP,A)
【文献】特開平04-159259(JP,A)
【文献】特開2000-086612(JP,A)
【文献】特開2018-177811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 263/10
C07C 265/14
C09D 175/00
C08G 18/76
C08G 18/71
C08G 18/32
C08G 18/38
G02B 1/04
C07C 263/16
C07C 265/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジイソシアネート(XDI)含有組成物を製造する方法において、製造過程で発生する下記化1で表される塩素化誘導体を単純還元反応により、下記化4の非塩素化誘導体に変換し、
未還元の塩素化誘導体(化1)の含有比率を0超~1,500ppmの範囲とする、キシリレンジイソシアネート含有組成物の製造方法。
【化1】
(ここで、R1はNCOであり、R2はH又はClである)
【化4】
【請求項2】
キシリレンジイソシアネート(XDI)含有組成物を製造する方法において、製造過程で発生する下記化1で表される塩素化誘導体を単純還元反応により、下記化4の非塩素化誘導体に変換し、
変換された非塩素化誘導体(化4)の含有比率を0.1~50,000ppmの範囲とする、キシリレンジイソシアネート含有組成物の製造方法。
【化1】
(ここで、R1はNCOであり、R2はH又はClである)
【化4】
【請求項3】
キシリレンジイソシアネート(XDI)含有組成物を製造する方法において、製造過程で発生する下記化1で表される塩素化誘導体を単純還元反応により、下記化4の非塩素化誘導体に変換する、キシリレンジイソシアネート含有組成物の製造方法。
【化1】
(ここで、R1はNCOであり、R2はH又はClである)
【化4】
【請求項4】
上記キシリレンジイソシアネートが、下記反応式(化8)に従って、有機第1級アミンを不活性溶媒下でカルボニル化剤と直接反応させて得られるものである、請求項1乃至3のいずれか一項記載の製造方法。
【化8】
【請求項5】
上記キシリレンジイソシアネートが、下記反応式に従って、有機第1級アミンを塩化水素ガスと反応させる第1段階(化9)、及び上記第1段階で生成されたアミン塩酸塩をカルボニル化剤と反応させる第2段階(化10)を含む方法によって得られるものである、請求項1乃至3のいずれか一項記載の製造方法:
(第1段階)
【化9】
(第2段階)
【化10】
【請求項6】
上記カルボニル化剤がホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項4又は5記載の製造方法。
【請求項7】
上記単純還元反応は、水素(H)雰囲気下の金属触媒又は還元剤を使用して行う、請求項1乃至5のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項8】
上記金属触媒はパラジウム、白金及びニッケルのうち1つ以上である、請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
上記還元剤は、以下から選択される1種以上である、請求項7記載の製造方法。
水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)、ナトリウムアマルガム(Na(Hg))、ジンクアマルガム(Zn(Hg))、ジボラン(B)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、硫酸鉄(II)(FeSO)、塩化スズ(II)(SnCl)、ジチオン酸ナトリウム(NaS2O)、チオ硫酸ナトリウム(Na2S)、チオ硫酸アンモニウム((NH)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)、シュウ酸(C)、ギ酸(HCOOH)、ジチオトレイトール(DTT)、トリス-2-カルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP)、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)、ブチル化されたヒドロキシトルエン(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、及び2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、水素化トリアルキル錫、水素化トリブチル錫、亜鉛。
【請求項10】
上記単純還元反応の後、単純蒸留により、分離精製することを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項記載の製造方法。
【請求項11】
キシリレンジイソシアネート(XDI)と、下記化1で表される塩素化誘導体と、下記化4で表される非塩素化誘導体と、を備えるイソシアネート含有組成物であって、
上記イソシアネート含有組成物中の塩素化誘導体(化1)の含有比率が0超~1,500ppmの範囲である、イソシアネート含有組成物。
【化1】
(ここで、R1はCl又はNCOであり、R2はH又はClである)
【化4】
【請求項12】
キシリレンジイソシアネート(XDI)と、下記化1で表される塩素化誘導体と、下記化4で表される非塩素化誘導体と、を備えるイソシアネート含有組成物であって、
上記イソシアネート含有組成物中の非塩素化誘導体(化4)の含有比率が0.1~50,000ppmの範囲である、イソシアネート含有組成物。
【化1】
(ここで、R1はCl又はNCOであり、R2はH又はClである)
【化4】
【請求項13】
キシリレンジイソシアネート(XDI)と、下記化4で表されるメチルベンジルイソシアネートと、を備えるイソシアネート含有組成物であって、
上記イソシアネート含有組成物中のメチルベンジルイソシアネート(化4)の含有比率が200超~50,000ppmの範囲である、イソシアネート含有組成物。
【化4】
【請求項14】
キシリレンジイソシアネート(XDI)と、下記化4で表されるメチルベンジルイソシアネートと、を備えるイソシアネート含有組成物であって、
上記イソシアネート含有組成物中のメチルベンジルイソシアネート(化4)の含有比率が0.1~5ppm未満の範囲である、イソシアネート含有組成物。
【化4】
【請求項15】
上記塩素化誘導体(化1)が、下記(化2)で表される塩素化誘導体であって、クロロメチルベンジルイソシアネート、キシリレンジクロリド、ジクロロメチルベンジルイソシアネート、及びクロロメチルジクロロメチルベンゼンのうち1つ以上である、請求項11又は12記載のイソシアネート含有組成物。
【化2】
(R1はCl又はNCOであり、R2はH又はClである)
【請求項16】
上記塩素化誘導体(化1)の含有比率が0超~900ppmの範囲である、請求項11又は12記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項17】
上記イソシアネート含有組成物のうちキシリレンジイソシアネート(XDI)の含有比率が99質量%以上である、請求項11乃至14のいずれか一項記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項18】
請求項11乃至1のいずれか一項記載のイソシアネート含有組成物と、イソシアネート-反応性官能基を1つ以上含む化合物からなる、重合性組成物。
【請求項19】
上記イソシアネート-反応性官能基を1つ以上含む化合物がポリオール化合物またはポリチオール化合物である、請求項1記載の重合性組成物。
【請求項20】
請求項1又は1記載の重合性組成物を含む、コーティング原料。
【請求項21】
請求項1又は1記載の重合性組成物を反応させて得られる、樹脂。
【請求項22】
光学素材として使用されるためのものである、請求項2記載の樹脂。
【請求項23】
請求項2に記載の樹脂を原料として製造されたものである、光学素材。
【請求項24】
上記イソシアネート含有組成物中のメチルベンジルイソシアネート(化4)の含有比率が220超~50,000ppmの範囲である、請求項13記載のイソシアネート含有組成物。
【請求項25】
上記イソシアネート含有組成物中のメチルベンジルイソシアネート(化4)の含有比率が600~50,000ppmの範囲である、請求項13記載のイソシアネート含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キシリレンジイソシアネートの製造過程で発生する塩素化誘導体を還元反応によって非塩素化誘導体に変形して、これを含むイソシアネートを製造する方法に関する。より詳細には、キシリレンジイソシアネートの製造過程で発生する塩素化誘導体を還元反応によって非塩素化誘導体に変形して、極少量の塩素化誘導体とともに、これを含むイソシアネート組成物、及びこれを含む重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
キシリレンジイソシアネート(以下「XDI」と略称する)は、ポリウレタン系材料、ポリウレタン系材料及びポリイソシアネート系材料の原料として化学工業、樹脂工業及びペイント工業分野で非常に有用な化合物である。これは構造異性体によって、オルト-、メタ-、又はパラ-キシリレンジイソシアネートに分けることができるが、その中でメタ-キシリレンジイソシアネート(以下、「m-XDI」;又は「1,3-ビス(イソシアネートメチル)ベンゼン」ともいう)が大部分を占める。XDIは、ベンゼン核にメチレン基がある特定のジイソシアネートであり、芳香族と脂肪族イソシアネートの特徴を兼ね備えたイソシアネートである。これは芳香族ジイソシアネートの短所である黄変現象を阻止する特性を有するため、無黄変型(non-yellowing)塗料、コーティング、皮革、接着剤などのウレタン原料として使用される。
【0003】
従来、XDIを製造するための様々な方法が提案されたが、一般的にホスゲン化方法が様々に開発されている。ホスゲン化方法は、有機第1級アミンとホスゲンの反応を不活性溶媒の中で反応させることによってイソシアネートを製造する。このような方法で、芳香族第1級アミンは、溶媒中の遊離芳香族アミン、その炭酸塩又は塩酸塩の懸濁液にホスゲンガスを通過させることで、比較的容易に高純度芳香族イソシアネートを転化させることができる。
【0004】
しかしながら、芳香族環が含まれているものの、脂肪族イソシアネートに分類するXDIは、キシリレンジアミンをホスゲンと反応させてイソシアネートを製造するとき、反応中に副反応を多く発生させながら、様々な塩素化誘導体が副産物として発生する。
【0005】
韓国特許第1994-0001948号公報に示された通常の脂肪族イソシアネートの製造時に形成される塩素化誘導体は、普通3~10重量%の量で形成され、時には20重量%まで達すると言及している。従って、XDI内に塩素化誘導体が含有される場合、XDIからポリウレタン樹脂を製造するとき、イソシアネート基と活性水素含有化合物との反応に影響を及ぼし、反応を抑制することになる。また、初期重合体のゲル化を促進させ、光学レンズの黄変、白濁、脈理など、品質的な面で深刻な影響を及ぼす。
【0006】
一方、ホスゲン化方法は、原料アミンにホスゲンを直接反応させる直接法と原料アミンを塩酸塩にした後に、ホスゲンと反応させる塩酸塩法に分けることもできる。直接法は塩酸塩より余程簡便であるが、塩素化誘導体が相当量生成されるため、通常直接法は多く採用されていない実情である。このため、鎖状又は環状脂肪族イソシアネートを製造する場合、原料アミンを塩酸塩にした後、ホスゲンと反応させてイソシアネートを製造する塩酸塩法が用いられている。しかしながら、塩酸塩法でも一定量の塩素化誘導体が生成されるため、生成する不純物含量を減少させ、高純度のXDIを得るための方法がさらに示された。
【0007】
韓国特許第10-0953019号では、鎖状又は環状脂肪族アミンからイソシアネートの製造方法で造塩反応工程(アミン塩酸塩を含むスラリーを得る工程)時に高い圧力を加えて塩酸塩の粒径の増大を抑制している。また、塩酸塩の粒子の微細化によって塩酸塩の粘度の低下で流動性及び離液性を向上させて、ホスゲン化するときの塩酸塩の転換率を高めて収率及び塩素化誘導体の生成を0.1~0.3重量%まで減らすことができると開示されている。
【0008】
さらに、韓国公開特許第2018-0104330号公報では、塩素化誘導体である化5の化合物の濃度が0.2ppm~600ppm未満のXDI組成物から得られた光学材料用樹脂は、耐黄変性に優れているとともに、生産効率が高いと開示した。また、韓国公開特許第2018-0127517号公報でも、塩素化誘導体のうち化7の化合物が60ppm以下に存在してこそ、耐変色性に優れていると開示した。しかしながら、このようなイソシアネート合成反応で主な不純物として生成される塩素化誘導体は、ポリウレタン反応の応用において光学レンズの物性に悪影響を与える不純物としての役割を果たす。これら不純物の含量が黄変現象を起こして製品に良い影響を与えないものと判断され、これら塩素化誘導体は生成されてはならないか、生成されても必ず精製などによって除去されなければならない物質といえる。これらの先行技術では、すべて工程上精密な制御と高段数蒸留塔を使用して分離、精製をしなければならない問題点を有しており、装置費用が増加することから経済性が落ち、商業化の可能性が低いと判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】韓国特許第1994-0001948号公報
【文献】韓国特許第0953019号公報
【文献】韓国公開特許第2018-0104330号公報
【文献】韓国公開特許第2018-0127517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに本発明では、塩素化誘導体を減らすための上記複雑な過程を進行せず、一般的な工程で生成された塩素化誘導体を単純還元反応(reduction reaction)を経て、非塩素化誘導体に変換して工程を簡素化させてイソシアネートを製造しようとしたものである。
【0011】
そこで還元反応によって形成された非塩素化誘導体は、一部樹脂に含まれていても耐黄変性に優れ、一般的な樹脂の物性を高めることができ、XDIと比較して60~75℃ほどより低い沸騰点を有しており、分離精製が簡単であるといえる。通常、塩素化誘導体の生成を抑制するために、アミンの塩酸塩化、造塩工程で高圧反応の進行、精密制御による分離精製が必要であった。
【0012】
しかしながら、本発明では、塩素化誘導体の制御が困難な直接法工程でも単純還元反応で分離精製を単純化して経済的な利益を有することができ、通常の工程と差別性を有することができる。
【0013】
従って、本発明では、工程費用の減少、高い収率、高品質の製品を得ることによって、産業化の面で経済的な利益をもたらすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するために、一態様として本発明は、キシリレンジイソシアネートの製造過程で発生する化1で表される塩素化誘導体を還元反応によって非塩素化誘導体に変形した後、得られた非塩素化誘導体を含むことを特徴とする、イソシアネートを製造する方法を提供する:
【化1】
(ここで、RはCl又はNCOであり、RはH又はClである)
【0015】
本発明のキシリレンジイソシアネートは、下記反応図式(化8)により、有機第1級アミンを不活性溶媒下でカルボニル化剤と直接反応させて得ることができる:
【化8】
【0016】
また、本発明の上記キシリレンジイソシアネートは、下記反応図式により、有機第1級アミンを塩化水素ガスと反応させる第1段階(化9)、及び上記第1段階で生成されたアミン塩酸塩をカルボニル化剤と反応させる第2段階(化10)を含む方法によって得ることができる:
(第1段階)
【化9】
(第2段階)
【化10】
【0017】
本発明で使用されるカルボニル化剤は、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、アルキルクロロホルメート、又はこれらの組み合わせから選択することができる。また、上記塩素化誘導体は、下記化2で表される塩素化誘導体のうち1つ以上であってもよい:
【化2】
(ここで、RはCl又はNCOで、RはH又はClである)
【0018】
さらに、上記非塩素化誘導体は、下記化3で表される非塩素化誘導体のうち1つ以上であってもよい:
【化3】
(ここで、RはH又はNCOである)
【0019】
一方、本発明の還元反応は、水素(H)雰囲気下の金属触媒又は還元剤を使用して行うことができ、ここで使用される金属触媒は、パラジウム、白金及びニッケルのうち1つ以上であってもよく、パラジウム、又は白金が好ましい。また、使用される還元剤(Reducing agent)は、以下から選択される1種以上であってもよい:
水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)、ナトリウムアマルガム(Na(Hg))、ジンクアマルガム(Zn(Hg))、ジボラン(B)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、硫酸鉄(II)(FeSO)、塩化スズ(II)(SnCl)、ジチオン酸ナトリウム(Na)、チオ硫酸ナトリウム(Na)、チオ硫酸アンモニウム((NH)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)、シュウ酸(C)、ギ酸(HCOOH)、ジチオトレイトール(DTT)、トリス-2-カルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP)、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)、ブチル化されたヒドロキシトルエン(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、及び2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、水素化トリアルキル錫、水素化トリブチル錫などの金属性ヒドリド、亜鉛など金属自体。
【0020】
本発明のさらなる目的を達成するために、他の態様として本発明は、キシリレンジイソシアネート(XDI)を主成分として含むイソシアネート組成物であり、上記製造方法によって得られた非塩素化誘導体として、化4で表されるメチルベンジルイソシアネートをさらに含むことを特徴とする、イソシアネート組成物を提供する:
【化4】
【0021】
また、本発明のイソシアネート組成物は、上記化1で表される塩素化誘導体をさらに含んでいてもよい。また、上記塩素化誘導体は、化2で表される塩素化誘導体であり、クロロメチルベンジルイソシアネート、ビス(クロロメチル)ベンゼン、ジクロロメチルベンジルイソシアネート、及びクロロメチルジクロロメチルベンゼンのうち1つ以上をさらに含んでいてもよい:
【化2】
(ここで、RはCl又はNCOであり、RはH又はClである)
【0022】
また、本発明のイソシアネート組成物は、0.1~50,000ppmの範囲内に非塩素化誘導体を含んでいてもよく、0超~1,500ppmの範囲内に塩素化誘導体を含んでいてもよい。さらに、本発明のイソシアネート組成物において、イソシアネートは、キシリレンジイソシアネート(XDI)である場合、光学レンズの様々な性質を考慮して、99質量%以上で含有することが好ましい。
【0023】
また、本発明のさらなる目的を達成するために、別の態様として本発明は、上述のイソシアネート組成物と、イソシアネート-反応性官能基とを1つ以上含む化合物からなる重合性組成物を提供する。ここで、使用されるイソシアネート-反応性官能基を1つ以上含む化合物は、ポリオール化合物又はポリチオール化合物である場合があり、このような重合性組成物はコーティング原料として使用される場合がある。
【0024】
さらに、本発明のさらなる目的を達成するために、別の態様として本発明は、上述の重合性組成物を反応させて得られる樹脂を提供する。このような樹脂は、光学レンズを含む光学素材として使用される場合がある。
【0025】
一方、さらに別の態様として本発明は、上記塩素化誘導体を還元反応によって得られたものではなく、別個に合成して得られた非塩素化誘導体であり、上記化4で表されるメチルベンジルイソシアネートをさらに含むキシリレンジイソシアネートを主成分として含むイソシアネート組成物を提供することもできる。
【0026】
このようなイソシアネート組成物は上記のように、塩素化誘導体であり、上記化2で表される塩素化誘導体のうち1つ以上をさらに含んでいてもよい。
【0027】
ここでも、イソシアネート組成物は、0.1ppm~50,000ppmの範囲内に非塩素化誘導体を含有することが好ましく、0超~1,500ppmの範囲内に塩素化誘導体を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の製造方法は、光学材料分野をはじめとする化学、樹脂、ペイント工業分野において、広く使用されるイソシアネートの製造効率及び品質を向上させることが可能であり、技術的、工業的に高い価値を有する。
【0029】
本発明の還元工程を経て得られた非塩素化誘導体を含むイソシアネート組成物は、経済性に優れているとともに塩素化誘導体の低減が容易である。また、これを用いて、品質に優れた光学用樹脂や光学製品を、高い経済性で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】塩素化誘導体を単純還元反応を経て非塩素化誘導体に変換した工程において、調剤例3の還元反応前(A)と還元反応後(B)の脱溶媒前の実施例3の生成物のガスクロマトグラフィー(GC)結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
定義
本発明の説明で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、他に定義されない限り、本発明に属する当業者によって通常的に理解されるのと同じ意味を有する。先行技術によって引用されるすべての特許公報、出願公開公報、及びその他の公報は、その全文が参考として組み込まれる。
【0032】
本発明の説明で使用される「イソシアネート」は、ポリウレタン系材料、ポリウレタン系材料として使用される物質であり、官能基の数や位置などによって互いに異なる構造のそれらの材料を合成することになる。ここで「イソシアネート」は、モノイソシアネート、ジイソシアネート又はポリイソシアネートの両方を含む意味で使用される。
【0033】
用語「塩素化誘導体」は、直接法、塩酸塩法又は炭酸塩法によってもイソシアネートを製造するときに発生し、このとき副反応によって発生する塩素を含む不純物を指す。
【0034】
本発明において塩素化不純物としては、3-クロロメチルベンジルイソシアネート(化5)、1,3-キシリレンジクロリド(化6)、3-ジクロロメチルベンジルイソシアネート(化7)などがある:
【化5】
【化6】
【化7】
【0035】
用語「非塩素化誘導体」は、上記「塩素化誘導体」を還元反応によって塩素を他の原子や原子団に置換して除去した物質を意味するものとして使用される。
【0036】
本発明において非塩素化不純物としては、メチルベンジルイソシアネート、キシレンなどがある。
【0037】
また、用語「イソシアネート反応性官能基」は、イソシアネートと反応する「活性水素基含有成分」を意味するものであり、たとえば、ポリオール成分(ヒドロキシ基を2つ以上有するポリオールを主に含有する成分)、ポリチオール成分(メルカプト基を2つ以上有するポリチオールを主に含有する成分)、ポリアミン(アミノ基を2つ以上有するポリアミンを主に含有する成分)などが挙げられる。
【0038】
用語「カルボニル化剤(carbonylation agents)」は、有機化合物などに一酸化炭素を導入する反応であるカルボニル化(carbonylation)反応を起こす試薬をいう。
【0039】
カルボニル化は、有機カルボニル、すなわちアルデヒド、ケトン、カルボン酸及びエステルなどの>C=O官能基を含有する化合物を生成することになる。特に、カルボニル基を含む有機化合物は、不飽和結合を有するため反応性が豊富で、高度の選択的反応である可能性があり、合成化学にも多く用いられる。
【0040】
本発明で使用される代表的なカルボニル化剤としては、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、クロロホルメート系化合物などが挙げられる。
【0041】
本明細書で使用される「組み合わせ」という用語は、ブレンド、混合物、反応生成物などを含むものである。
【0042】
また、本発明に記載の配合比率(含有比率)、物性値、パラメータなどの具体的な数値は、それらに対応する配合比率(含有比率)、物性値、パラメータなど、当該基材の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)又は下限値(「以上」、「超」として定義されている数値)に置き換えることができる。一方、「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0043】
本発明の説明及び特許請求の範囲で使用されるように、段数形態は、文脈が別に明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、たとえば、「イソシアネート」への言及は、2種以上のモノイソシアネート、ジイソシアネート、及びポリイソシアネートの混合物を含む。
【0044】
本発明の説明に開示された物質のそれぞれは、特に言及がない限り、商業的に入手可能であり、それらの生産方法は、当業者に知られているものである。また、本発明の説明で別に反対に言及されない限り、すべての試験標準は、本出願時に有効な最も最近の標準である。
【0045】
以下、本発明のイソシアネートの製造方法及び組成物について詳細に説明する。
【0046】
まず、本発明はイソシアネートの製造過程で生成された塩素化誘導体を下記反応式の還元反応(reduction reaction)を経て、非塩素化誘導体に変換して複雑な高段数の精製工程を経ず、容易にイソシアネートの純度を高めようとしたものである:
【化11】
(ここで、RはCl又はNCOであり、RはH又はClである)
【化12】
(ここで、RはH又はNCOである)
【0047】
上述のように、塩酸塩法でも直接法と同様に、化5の化合物として知られる一定量の塩素化誘導体が生成されるため、本発明のイソシアネート組成物を構成するXDIを得るために使用される場合がある。
【0048】
XDIは、構造異性体1,2-XDI(オルト-形態)、1,3-XDI(メタ-形態)、1,4-XDI(パラ-形態)を含むが、単独又は2種類以上を併用可能であり、好ましくは1,3-XDI又は1,4-XDI、より好ましくは1,3-XDIである。
【0049】
本発明の製造方法によって得られるイソシアネート組成物は、ポリウレタンなどの高分子化合物を得るために反応物として使用されるものであるため、本発明で使用される脂肪族アミンは、2官能性以上の鎖状又は環状脂肪族アミンであることが好ましい。
【0050】
本発明で好ましく用いられる2官能性以上の鎖状又は環状脂肪族アミンは、特に限定されないが、上述の先行文献である韓国特許第10-0953019号に記載のものを参照すればよいであろう。
【0051】
その代表的なものとしては、ヘキサメチレンジアミン、2,2-ジメチルペンタンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサンジアミン、ブテンジアミン、キシリレンジアミンなどの鎖状脂肪族アミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルネンなどの環状脂肪族アミンが挙げられる。
【0052】
上述の鎖状又は環状脂肪族ジアミンをホスゲンと反応させて得られるイソシアネートは、反応するジアミンによって決定され、上述の先行文献である韓国特許第10-0953019号に記載のものを参照すればよいであろう。
【0053】
その代表的なものとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの鎖状脂肪族イソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)ノルボルネンなどの環状脂肪族イソシアネートなどが挙げられる。
【0054】
本発明の製造方法によって得られる上記例示化合物の中で、各種光学素子の用途において特に好ましい化合物としては、キシリレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)ノルボルネン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0055】
本発明のXDI製造で使用され得るカルボニル化剤(carbonylation agent)は、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン及び各種クロロホルメート系化合物であり、単独又は2種類の組み合わせで併用可能である。
【0056】
本発明のキシリレンジイソシアネート製造で使用され得るホスゲンガスは、塩化カルボニル又はカルボニルジクロリド(COCl)の慣用名称で、常温では無色の気体として凝固点127.84℃、沸点7.84℃であり、一般的に塩素ガス無水物を高純度一酸化炭素の触媒反応を用いて生産される。本発明に従って使用されたホスゲン代替物及び/又は前駆体は、ジホスゲン、トリホスゲンなどのような任意のホスゲン等価物、及びこれらの任意の配合物を含むことができる。本発明で用いられるホスゲンは、クロロホルメート、ジフェニルカルバメート、又はN,N’-カルボニルジイミダゾールなどを使用したカルバミン酸誘導体の熱分解によって提供することができる。
【0057】
一方、本発明のイソシアネート組成物は、XDIの製造過程で発生する化1で表される塩素化誘導体を、触媒又は還元剤を使用した還元反応を経て非塩素化誘導体に変形させた後、濾過及び精製により、非塩素化誘導体を少量含むことができる:
【化1】
(ここで、RはCl又はNCOであり、RはH又はClである)
【0058】
ここで、XDIに含まれる塩素化誘導体は、3-クロロメチルベンジルイソシアネート(化5)、1,3-キシリレンジクロリド(化6)、3-ジクロロメチルベンジルイソシアネート(化7)などを含み、単独又は2種類以上で存在する場合がある。
【0059】
一方、上記非塩素化誘導体は、メチルベンジルイソシアネート(化4)又はキシレンなどとなるであろう。
【0060】
本発明の化4の化合物は、XDIの構造異性体と同様に、構造異性体1,2-メチルベンジルイソシアネート、1,3-メチルベンジルイソシアネート、1,4-メチルベンジルイソシアネートを含み、単独又は2種類以上で存在する場合があり、好ましくは1,3-メチルベンジルイソシアネート、1,4-メチルベンジルイソシアネート、より好ましくは1,3-メチルベンジルイソシアネートである。
【0061】
また、キシレンの場合も、構造異性体1,2-キシレン、1,3-キシレン、1,4-キシレンを含み、単独又は2種類以上で存在する場合があり、好ましくは1,3-キシレン、1,4-キシレン、より好ましくは1,3-キシレンである。
【0062】
本発明のXDI組成物でメチルベンジルイソシアネートが含有され得る。メチルベンジルイソシアネートは、XDI組成物の総質量に対して50,000ppmを超える場合、耐熱性など、レンズとして物性が低くなり、好ましくは0.1ppm以上~50,000ppm以下が好ましい。
【0063】
また、メチルベンジルイソシアネートに変換した後、塩素化誘導体が微量残存する場合がある。メチルベンジルイソシアネート存在下で塩素化誘導体が1500ppmを超える場合、レンズの黄色度が高くなるため、好ましくはXDI組成物の総質量に対して塩素化誘導体の含量は0超~1,500ppm以下の範囲が好ましい。
【0064】
一方、本発明の還元反応は水素化反応による脱塩素反応であり、水素雰囲気下で金属触媒を使用した還元工程、還元剤を使用した還元工程に分けられ、単独又は並行で進行することができる。好ましくは水素雰囲気下で貴金属触媒を使用した還元工程である。
【0065】
還元工程の温度は特に限定されないが、0℃~180℃で進行することができ、好ましくは10~150℃、より好ましくは20~50℃である。さらに、還元工程の水素圧力は特に限定されないが、0.001kgf/cm~200kgf/cmで進行することができ、0.1~10kgf/cmであり、より好ましくは1~5kgf/cmが好ましい。
【0066】
また、還元工程で使用される触媒は特に限定されないが、貴金属及び遷移金属触媒を使用することができ、単独又は2種類以上で並行で使用することができる。金属触媒は、Pd、Pt、Ru、Niなどを単独又は活性炭、SiO、Al3.、CeO、ZrOなどの金属酸化物に担持して使用することができ、金属リガンドなど、これを単独又は2種類以上で並行で使用することができる。
【0067】
還元工程で触媒量は特に限定されないが、XDI総質量に対して0.1%以上~20%以下で進行することができ、好ましくは0.3~15%であり、より好ましくは0.5~5%である。
【0068】
また、還元剤は、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH)、ナトリウムアマルガム(Na(Hg))、ジンクアマルガム(Zn(Hg))、ジボラン(B)、水素化ホウ素リチウム(LiBH)、水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)、硫酸鉄(II)(FeSO)、塩化スズ(II)(SnCl)、ジチオン酸ナトリウム(Na)、チオ硫酸ナトリウム(Na)、チオ硫酸アンモニウム((NH)、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)、シュウ酸(C)、ギ酸(HCOOH)、ジチオトレイトール(DTT)、トリス-2-カルボキシエチルホスフィン塩酸塩(TCEP)、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、及び2,4-ジメチル-6-tert-ブチルフェノール、水素化トリアルキル錫、水素化トリブチル錫などの金属性ヒドリド、亜鉛など金属自体からなる群より選択される1種以上であってもよい。好ましくはPd/C触媒が挙げられる。
【0069】
本発明の還元工程時に酸素を排除するために窒素雰囲気、水素雰囲気で進行することが好ましく、塩素化誘導体を溶媒下で進行するか、溶媒を除去した状態でも進行が可能である。
【0070】
本発明に用いられる溶媒も特に限定されない。不活性化溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、たとえば、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類、たとえば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類、たとえば、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼン、トリクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素類、たとえば、ナイトロベンゼン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N’-ジメチルイミダゾリジノンなどの含窒素化合物類、たとえば、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、たとえば、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、たとえば、アミルホルメート、n-ブチルアセテート、イソブチルアセテート、n-アミルアセテート、イソアミルアセテート、メチルイソアミルアセテート、メトキシブチルアセテート、2-エトキシエチルアセテート、sec-ヘキシルアセテート、2-エチルブチルアセテート、2-エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、エチルプロピオネート、n-ブチルプロピネート、イソアミルプロピネート、エチルアセテート、ブチルステアレート、ブチルラクテート及びアミルラクテートなどの脂肪酸エステル類とメチルサリシレート、ジメチルフタレート及びメチルベンゾエートなどの芳香族カルボン酸エステル類などが挙げられ、単独又は2種類以上で併用可能である。好ましくはハロゲン化芳香族炭化水素類が挙げられ、より好ましくはクロロベンゼン及びジクロロベンゼンが挙げられる。
【0071】
また、本発明の還元工程を経て使用された触媒又は還元剤を濾過した後、塩素化誘導体及び非塩素化誘導体を単純な蒸留精製などによって調節可能であろう。無論、このような還元工程は、XDIとともに塩素化誘導体を含むイソシアネートを製造した後、脱溶媒後、精製後にも適用可能であろう。
【0072】
従って、上記のように得られたイソシアネート組成物を用いて製造された製品は、高い光学的特性を満たすことができるため、これは光学材料、具体的にはプラスチック光学レンズの製造に使用され得る。
【0073】
本発明によれば、上述のイソシアネート組成物、及びポリオール/ポリチオールを含む重合性組成物が提供される。
【0074】
上記重合性組成物は、上記イソシアネート組成物及びポリオール/ポリチオールを混合状態で含むか、分離した状態で含む場合がある。すなわち、上記重合性組成物内で、上記イソシアネート組成物及びポリオール/ポリチオールは、互いに接触して配合された状態であるか、互いに接触しないように分離した状態である場合がある。
【0075】
本発明の重合性組成物に使用されるポリオール成分として、たとえば、低分子量ポリオール及び高分子量ポリオールが挙げられる。上記ポリオールは、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0076】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量60以上400未満の化合物である。低分子量ポリオールとして、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロペンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンテンジオール、1,6-ヘキセンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びこれらの混合物、1,4-シクロヘキセンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどの二価アルコール、たとえば、グリセリンなどの三価アルコール、たとえば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)などの四価アルコール、たとえば、キシリトールなどの五価アルコール、たとえば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトールなどの6価アルコールなどが挙げられる。
【0077】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上、たとえば10000以下、好ましくは5000以下の化合物である。高分子量ポリオールとして、たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、及びビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
【0078】
本発明の重合性組成物に用いられるポリチオール成分として、たとえば、脂肪族ポリチオール、芳香族ポリチオール、複素環含有ポリチオール、メルカプト基以外に硫黄原子を含有する脂肪族ポリチオール、メルカプト基に以外に硫黄原子を含有する芳香族ポリチオール、メルカプト基以外に硫黄原子を含有する複素環含有ポリチオールなどが挙げられる。上記チオールは、チオールオリゴマー又はポリチオールであってもよく、1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0079】
上記チオールの具体例としては、3,3’-チオビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-1-プロパンチオール、ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1,3-ジチオール、2-(2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロピルチオ)エタンチオール、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)スルフィド、ビス(2,3-ジメルカプトプロパニル)ジスルフィド、1,2-ビス[(2-メルカプトエチル)チオ]-3-メルカプトプロパン、1,2-ビス(2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロピルチオ)エタン、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-2-メルカプト-3-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]プロピルチオ-プロパン-1-チオール、2,2-ビス-(3-メルカプト-プロピオニルオキシメチル)-ブチルエステル、2-(2-メルカプトエチルチオ)-3-(2-(2-[3-メルカプト-2-(2-メルカプトエチルチオ)-プロピルチオ]エチルチオ)エチルチオ)プロパン-1-チオール、(4R,11S)-4,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12-テトラチアテトラデカン-1,14-ジチオール、(S)-3-((R-2,3-ジメルカプトプロピル)チオ)プロパン-1,2-ジチオール、(4R,14R)-4,14-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタン-1,17-ジチオール、(S)-3-((R-3-メルカプト-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロピル)チオ)-2-((2-メルカプトエチル)チオ)プロパン-1-チオール、3,3’-ジチオビス(プロパン-1,2-ジチオール)、(7R,11S)-7,11-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,12,15-ペンタチアヘプタデカン-1,17-ジチオール、(7R,12S)-7,12-ビス(メルカプトメチル)-3,6,9,10,13,16-ヘキサチアオクタデカン-1,18-ジチオール、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエトリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ビスペンタエリスリトールエーテルヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2-(2,2-ビス(メルカプトジメチルチオ)エチル)-1,3-ジチアンなどが挙げられる。
【0080】
上記重合性組成物は、その他にも必要に応じ、内部離型剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、重合開始剤、熱安定剤、色補正剤、連鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、酸化防止剤、充填剤、などの添加剤をさらに含むことができる。
【0081】
上記内部離型剤としては、パーフルオロアルキル基、ヒドロキシアルキル基又はリン酸エステル基を有するフッ素系非イオン界面活性剤;ジメチルポリシロキサン基、ヒドロキシアルキル基又はリン酸エステル基を有するシリコーン系非イオン界面活性剤;アルキル第四級アンモニウム塩、すなわちトリメチルセチルアンモニウム塩、トリメチルステアリル、ジメチルエチルセチルアンモニウム塩、トリエチルドデシルアンモニウム塩、トリオクチルメチルアンモニウム塩、ジエチルシクロヘキサドデシルアンモニウム塩;酸性リン酸エステルの中から選択された成分を単独又は2種以上がともに使用され得る。
【0082】
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、サリチレート系、シアノアクリレート系、オキサニリド系などが使用され得る。
【0083】
上記近赤外線吸収剤としては、アゾ系、アミニウム系、アントラキノン系、シアニン系、ポリメチン系、ジフェニルメタン系、ドリフェニルメタン系、キノン系、ジイモニウム系、ジチオール金属錯体系、スクアリリウム系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系などが使用され得る。特に、電磁波吸収剤の1つとして、800~1000nm付近で遮断率が30%以上の高い近赤外線吸収能を有する近赤外線吸収剤が使用され得る。このような近赤外線吸収剤は、構造の異なる複数のフタロシアニン系色素の混合物であり、これらの色素がそれぞれ(i)800nm~850nmの波長領域、(ii)875nm~925nmの波長領域、及び(iii)950nm~1000nmの波長領域の範囲内で透過率80%未満の分光透過率曲線の極小値を有する色素であることが好ましい。たとえば、PANAX FND-83、PANAX FND-88、PANAX FND-96などを使用することができる。
【0084】
上記重合開始剤としては、アミン系、リン系、有機錫系、有機銅系、有機ガリウム、有機ジルコニウム、有機鉄系、有機亜鉛、有機アルミニウム、有機ビスマス系などが使用され得る。
【0085】
上記熱安定剤としては、金属脂肪酸塩系、リン系、鉛系、有機錫系などを1種又は2種以上混合して使用可能である。
【0086】
また、本発明によれば、上述の重合性組成物から得られたポリチオウレタンが提供される。すなわち、上記ポリチオウレタンは、上記重合性組成物内のイソシアネート組成物とチオールが重合(及び硬化)して製造され得る。上記重合反応は、SH基/NCO基のモル比が0.5~3.0であってもよく、より具体的には0.8~1.3となるように反応させることができる。
【0087】
さらに、反応速度を制御するために、ポリチオウレタンの製造に通常的に用いられる反応触媒が添加され得る。上記硬化触媒(重合開始剤)としては、錫系触媒を使用することができ、たとえば、ジブチルチンジクロリド、ジブチルチンジラウレート、ジメチルチンジクロリドなどを使用することができる。
【0088】
以後、各種イソシアネートの標準物質の特定及びその含有量を含む物性の測定法を記載する。
【0089】
分析方法
(1)1,3-キシリレンジイソシアネート(XDI)の含有量
後述の調剤例で用意される純度99%のXDIを標準物質に、下記条件でガスクロマトグラフィーで分析し、得られたガスクロマトグラムの面積値から検量線を作成して定量した。
-装置;HP-6890(HP)
-カラム;DB-1、(内径0.53mm×長さ60m×厚さ1.5um)
-注入口温度;180℃
-検出器温度;300℃
【0090】
(2)3-クロロメチルベンジルイソシアネート(化5)の含有量
調剤例で製造したXDI組成物でカラム蒸留により分離/精製した純度99%の化5の化合物を標準物質に、上記XDIの測定法と同様に進行して、各実施例及び比較例の組成物中の化5の化合物の含有量を算出した。
【0091】
得られた化5の化合物を13C-NMR(100MHz,CDCl)、FT-IR:MSにより分析した。
【0092】
13C-NMR(100MHz,CDCl)δ46.5,54.6,125.6,127.9,128.8,130.5,139.9,139.1
FT-IR:2260cm-1
MS:m/z=181(M
【0093】
(3)1,3-キシリレンジクロリド(化6)の含有量
純度98%の化6の化合物(試薬、Sigma-aldrich)を標準物質に、上記XDIの測定法と同様に進行して、各実施例及び比較例の組成物中の化6の化合物の含有量を算出した。
【0094】
(4)ジクロロメチルベンゼンイソシアネート(化7)の含有量
韓国公開特許第2018-0127517号に示された合成法で製造した純度99mol%の化7の化合物を標準物質に、下記条件でガスクロマトグラフィーで分析し、得られたガスクロマトグラムの面積値から検量線を作成して定量した。
【0095】
-装置;HP-6890(HP)
-カラム;HP-50、(内径0.25mm×長さ30m×厚さ0.25um)
-注入口温度;200℃
-検出器温度;280℃
【0096】
得られた化7の化合物を13C-NMR(100MHz,CDCl)、FT-IR、MSにより分析した。
【0097】
13C-NMR(100MHz,CDCl)δ46.3,72.5,122.9,127.8,128.7,129.1,139.0,140.3
FT-IR:2260cm-1
MS:m/z=215(M
【0098】
(5)3-メチルベンジルイソシアネート(化4の化合物)の含有量
純度98%のメチルベンジルイソシアネート(試薬、Sigma-aldrich社製)を標準物質に、上記XDIの測定法と同様に進行して、各実施例及び比較例の組成物中のメチルベンジルイソシアネートの含有量を算出した。
【0099】
(6)光学レンズの屈折率
後述の各実施例及び比較例の組成物により得られた光学レンズに対する屈折率は、ATAGO社製の屈折計DR-M4モデルを用いて、20℃で波長546.1nm(水銀e線)における屈折率(n)を測定した。
【0100】
(7)光学レンズの耐熱性評価
熱機械分析装置DSC N-650を用いて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。ガラス転移温度を耐熱性の指標とした。
【0101】
(8)光学レンズの黄色度(Yellow Index;Y.I.)及び光透過率
光学レンズに対する黄色度は、UV-2600 240V EN(島津社製)を用いて色度座標x、yを計算し、数式(1)により黄色度を示した。
【0102】
数式(1)
Y.I.=(234x+106y+106)/y
【0103】
(9)光学レンズの染色性(着色性)評価
Gray BPI ♯32000(ビーピーアイ、染料)染料分散液を調製した後、その分散液に厚さ2.0mmの樹脂を95℃水浴で5分間浸漬して染色した。染色された樹脂の可視光線電波場(380~780nm)において光透過率(%)を測定した。染色程度に応じて染料によって光が吸収され、各波長における光透過率が低いほど染色性に優れている。
【0104】
(10)光学レンズの白濁
光学レンズの白濁を目視により、下記基準で評価した。
良好:透明;不良:白濁
【0105】
(11)光学レンズの脈理
光学レンズを水銀ランプ下で目視で観察し、不均一相が確認されれば脈理があるものと分類した。
【0106】
本発明は、以下の実施例によって例示されるが、これに限定されるものではない。まず、本発明の製造方法において反応条件を変更しながら様々な条件下で製造されるXDIの製造過程を調べようとする。
【実施例
【0107】
1.1,3-キシリレンジイソシアネート(XDI)の合成及び塩素化誘導体を含むXDI組成物製造
【0108】
[合成例1]
還流冷却器を備えた50L反応容器にo-ジクロロベンゼン36kgにビス(トライクロロメチル)カーボネート7.3kgを溶解させた後、ここにo-ジクロロベンゼン2kgにm-キシリレンジアミン2kgを溶解させた溶液を60℃以下で徐々に添加した。温度を160℃まで昇温させた後、放出される塩化水素ガスを制御しながら4時間反応させた。昇温時にo-ジクロロベンゼンにビス(トリクロロメチル)カーボネートを溶かした溶液をさらに徐々に投入して攪拌を円滑にした。反応終了後、反応器内の窒素をパージして未反応ホスゲンと塩素化水素ガスを除去し、得られた溶液を濾過して塩素化誘導体が含まれるXDIを得た。o-ジクロロベンゼンを除くXDI溶液中の塩素化誘導体の含有量は約2.8%であった
【0109】
[合成例2]
合成例1で得られた溶液を脱溶媒し、高真空蒸留装置を介して塩素化誘導体を含まない純粋なXDIを得た。
【0110】
[調剤例1~3]
合成例2で製造したXDIに上述の各種イソシアネート標準物質として塩素化誘導体(化5、化6、化7の化合物を一定比率で混合)をそれぞれ混合して塩素化誘導体を含むXDIを得た。
これらの量はXDI溶液総質量対比500ppm(調剤例1)、1400ppm(調剤例2)、5000ppm(調剤例3)である。
【0111】
2.調剤例1~3で得られるXDI組成物に非塩素化誘導体(メチルベンジルイソシアネート)及び/又は塩素化誘導体を含むXDI組成物の製造
(2-1)実施例1~3
調剤例1~3で得られたXDI 900gにo-ジクロロベンゼン100gを添加し、Pd/C 2gを投入した後、50℃、2kgf/cm水素の雰囲気下で12時間撹拌しながら保持した。反応終了後、減圧濾過後に脱溶媒及び蒸留を行い、メチルベンジルイソシアネートを含むXDI組成物を得た。
【0112】
(2-2)実施例4~10
合成例1で得られたXDIにXDI総質量対比メチルベンジルイソシアネートと塩素化誘導体を混合して、これらのすべてを含むXDI組成物を得た。
【0113】
(2-3)実施例11
合成例1で得られた実際の塩素化誘導体が含まれるXDI組成物200gにPd/C 0.2gを投入した後、50℃、2kgf/cm水素の雰囲気下で12時間撹拌しながら保持した。反応終了後、減圧濾過後に脱溶媒を行い、メチルベンジルイソシアネート(2.7%)及び塩素化誘導体(0.06%)を含むXDIを得た。得られたXDI溶液を真空下で単純蒸留してメチルベンジルイソシアネート(0.5%)及び塩素化不純物(0.04%)を含むXDI組成物を得た。
【0114】
(2-4)比較例1~2
合成例2で得られたXDIに塩素化誘導体のみを含むXDI組成物を得た。
【0115】
実施例1~3で還元反応により得られたXDI組成物にメチルベンジルイソシアネートを含む組成物、実施例4~10でメチルベンジルイソシアネート又は塩素化誘導体を含むXDI組成物、実施例11で実際の工程により製造された塩素化誘導体を含むXDIを還元してメチルベンジルイソシアネート及び塩素化誘導体を含むXDI組成物、比較例1~2で塩素化誘導体のみを含むXDI組成物の中でメチルベンジルイソシアネート及び塩素化誘導体の含有量を表1に示した。
【0116】
【表1】
【0117】
3.還元反応による塩素化誘導体の非塩素化誘導体への変換に対する評価
このような変換工程は、図1に示すように、還元反応前(A)の塩素化誘導体が単純還元工程によって還元反応後(B)の非塩素化誘導体に容易に変換されることが確認できた。また、XDIとXDIの不純物である塩素化誘導体との沸点差が大きくなく、分離精製が困難であったが、本発明によって塩素化誘導体を沸点差の大きい非塩素化誘導体に変換させることにより、分離精製を単純化できることを確認した。
【0118】
4.XDI組成物から光学レンズの製造及び評価
(4-1)実施例1~11及び比較例1~2のXDI組成物で光学レンズ製造
実施例1~11及び比較例1~2で製造されたXDI組成物52g、ジブチル錫ジクロリド0.015g、Zelec UN(内部離型剤、Stepan社製)0.12g、紫外線吸収剤0.08gを常温で1時間撹拌して混合した後、2,3-ビス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン-1-チオール48gを装入して重合性組成物を調製した。上記重合性組成物を1時間減圧攪拌して気泡を除去し、1umのテフロン(登録商標)フィルターで濾過した。その後、ガラスモールドとテープからなるモールド型に注入し、オーブンで120℃まで徐々に昇温して20時間重合させた。オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂(プラスチック)を得た。得られた樹脂を120℃でさらに2時間アニリングした。
【0119】
それぞれ製造した光学レンズについて、以下のように物性を評価して表2に整理した。
【0120】
【表2】

*実施例1~11の方法で得られた生地レンズ(3mm平板)の黄色度を測定したものである。
**実施例1~11の方法で得られた生地レンズを上記着色度測定方法で着色して光透過度を測定したものである。
***耐衝撃性試験はDrop Test(16.3g×127cm)に準じて実施した。
【0121】
(4-2)実施例1~11及び比較例1~2のXDI組成物で製造した光学レンズの物性評価
(1)メチルベルジルイソシアネートが50,000ppmまでのXDI組成物を使用したレンズは、超高屈折(n20:1.66以上)レンズとして使用が可能であった。
【0122】
(2)実施例6と比較例1を比較のとき、黄色度は1.26と2.30と非常に大きな差を示し、塩素化誘導体と比較して塩素化誘導体を還元したメチルベンジルイソシアネートが含まれるXDI組成物を使用したレンズが黄色度の側面で非常に優れた結果を示した。メチルベンジルイソシアネートで還元されたXDI組成物は、塩素化誘導体間に含まれるXDI組成物と比較して黄色度の側面で卓越に優れていた。
【0123】
(3)実施例8、9及び比較例2に示すように、塩素化誘導体が増加するほど黄色度が高くなる傾向を示した。メチルベンジルイソシアネートが50,000ppmと同じである反面、塩素化誘導体が1,500ppmの場合に黄色度は1.38、1,600ppmの場合は1.40と、30,000 ppm の場合には2.30と塩素化不純物が増加するほど黄色度が高くなる傾向がある。従って、メチルベンジルイソシアネートと塩素化誘導体がともに含まれている場合、塩素化誘導体は1,500ppm以下が好ましい。
【0124】
(4)比較例1、2及び実施例3、10に示すように、塩素化不純物が増加するほど着色効率が落ち着色したレンズの光透過率が高くなる一方、メチルベンジルイソシアネートは多くなるほど着色効率が高くなり光透過率が低くなる結果を示すことで塩素化誘導体とは異なり、メチルベンジルイソシアネートは着色効率の向上に寄与した。
【0125】
(5)実施例6と比較例2に示すように、塩素化誘導体濃度(30,000ppm)では白濁及び脈理で不良が発生したが、同じ濃度のメチルベンジルイソシアネートでは白濁と脈理に対して良好な結果を示し、光学レンズ素材として使用が可能であった。
図1