(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別方法及び判別ユニット
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20240724BHJP
G01N 21/67 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
B01J19/00 A
G01N21/67 Z
(21)【出願番号】P 2020071783
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】594162412
【氏名又は名称】株式会社平山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 岳彦
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 智樹
(72)【発明者】
【氏名】上原 聡司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 敬
(72)【発明者】
【氏名】吉永 千佳士
(72)【発明者】
【氏名】湯本 紳一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 晶
(72)【発明者】
【氏名】忰田 正浩
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-121602(JP,A)
【文献】特表2015-529535(JP,A)
【文献】特開平04-212362(JP,A)
【文献】特表2001-518175(JP,A)
【文献】特開2005-241646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00
B01D 1/00- 8/00
G01N 21/62-21/74
H05H 1/00- 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在した容器の内部を部分的に冷却することで前記凝縮ガスが凝縮する凝縮部を生成し、
前記凝縮部の圧力低下に起因した前記不凝縮ガスの流れを利用して、又は、前記凝縮部の温度を制御することで、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの分布を制御する
、凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御方法
によって制御された前記不凝縮ガスを判別する方法であって、
前記容器の内部でプラズマを発生させ、
少なくとも、前記不凝縮ガスの種類ごとに決まった前記プラズマの発光スペクトルを観察することで、リアルタイムで前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布を判別する
ことを特徴とする、凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別方法。
【請求項2】
前記容器には、前記容器の外部から内部を視認可能な透明部が設けられており、
前記プラズマの観察では、前記透明部から前記容器の内部を目視並びに観察機器を用いて前記発光スペクトルを計測する
ことを特徴とする、請求項
1に記載の判別方法。
【請求項3】
前記容器には、判別対象である前記不凝縮ガスの波長の光のみを通過させるフィルターが付設されており、
前記プラズマの観察では、前記フィルターを通過する光の強弱に基づいて前記不凝縮ガスの有無
又は前記不凝縮ガスの分布を判別する
ことを特徴とする、請求項
1に記載の判別方法。
【請求項4】
前記プラズマを発生させるプラズマ発生部と、前記プラズマ発生部の光を解析する分光器と、前記プラズマ発生部の光を前記分光器に伝送する光ファイバーとが設けられており、
前記プラズマの観察では、前記分光器による分光スペクトルの解析及び分光結果を用い、前記不凝縮ガスの種類ごとに決まった分光スペクトルに基づいて前記不凝縮ガスの有無及びその種類
又は前記不凝縮ガスの分布を判別する
ことを特徴とする、請求項
1~
3のいずれか一項に記載の判別方法。
【請求項5】
前記凝縮部に配置された温度センサーで計測された温度と前記容器の内部の前記凝縮部以外の温度とを比較することで、リアルタイムで前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無
又は前記不凝縮ガスの分布を判別する
ことを特徴とする、
請求項1に記載の判別方法。
【請求項6】
凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在した容器と、
前記容器の内部を部分的に冷却することで前記凝縮ガスが凝縮する凝縮部を生成し、前記凝縮部の圧力低下に起因した前記不凝縮ガスの流れを利用して、又は、前記凝縮部の温度を制御することで、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの分布を制御する制御部と
を備えるとともに、
前記容器の内部でプラズマを発生させるプラズマ発生部と、
少なくとも、前記プラズマ発生部により発生する前記プラズマの発光スペクトルと前記不凝縮ガスの種類との対応関係に基づき、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布をリアルタイムで判別する判別部と、を備えた
ことを特徴とする、凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別ユニット。
【請求項7】
凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在した容器の内部を部分的に冷却することで前記凝縮ガスが凝縮する凝縮部を生成し、前記凝縮部の圧力低下に起因した前記不凝縮ガスの流れを利用して、又は、前記凝縮部の温度を制御することで、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの分布を制御する制御部と、
少なくとも、前記容器の内部で発生させたプラズマの発光スペクトルと前記不凝縮ガスの種類との対応関係に基づき、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布をリアルタイムで判別する判別部と、を備えた
ことを特徴とする、凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別ユニット。
【請求項8】
前記判別部は、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から内部を視認可能な透明部と、
前記透明部から前記容器の内部を目視と併せて確認するための観察機器と、を有し、
前記不凝縮ガスの種類ごとに決まった前記発光スペクトルを計測し、前記発光スペクトルに基づいて前記不凝縮ガスの有無及びその種類
又は前記不凝縮ガスの分布を判別する
ことを特徴とする、請求項
6又は7に記載の判別ユニット。
【請求項9】
前記判別部は、
前記容器に付設され、判別対象である前記不凝縮ガスの波長の光のみを通過させるフィルターを有し、
前記フィルターを通過する光の強弱に基づいて前記不凝縮ガスの有無
又は前記不凝縮ガスの分布を判別する
ことを特徴とする、請求項
6又は7に記載の判別ユニット。
【請求項10】
前記判別部は、
前記プラズマ発生部の光を解析する分光器と、
前記プラズマ発生部の光を前記分光器に伝送する光ファイバーと、を有し、
前記分光器による分光スペクトルの解析及び分光結果を用い、前記不凝縮ガスの種類ごとに決まった分光スペクトルに基づいて前記不凝縮ガスの有無及びその種類
又は前記不凝縮ガスの分布を判別する
ことを特徴とする、請求項
6~
9のいずれか一項に記載の判別ユニット。
【請求項11】
前記凝縮部に配置され、前記凝縮部の温度を計測する温度センサーと、
前記容器の内部であって前記凝縮部以外の温度を取得する温度取得部と、
前記凝縮部の温度と前記凝縮部以外の温度とを比較して、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無
又は前記不凝縮ガスの分布をリアルタイムで判別する第二判別部と、を備える
ことを特徴とする、
請求項6又は7に記載の判別ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の内部に凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在している状態で、凝縮ガス中の不凝縮ガスを制御する方法及び装置(ユニット)、並びに、不凝縮ガスの有無や分布を判別する方法及び装置(ユニット)に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧蒸気滅菌器や加速寿命試験機といった装置では、水蒸気等の凝縮ガスと空気等の不凝縮ガスとが装置の容器内に混在した状態となることがあり、このときの不凝縮ガスの有無や分布が装置の性能を左右しうる。しかし、凝縮ガスも不凝縮ガスも目に見えず、凝縮ガス中の不凝縮ガスの分布を制御することは極めて困難であり、未だ有効な方法は提案されていない。なお、空気の流れをリアルタイムで可視化することで空調機の効率的な運用に適用可能とした可視化システムは、過去に提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
普段は目に見えない流体を観察することは、その流体を利用する装置や機器等においては非常に有効である。例えば、不凝縮ガスの判別方法として、不凝縮ガスをサンプリングしてクロマトグラフィーで解析する手法が報告されている。しかしながら、この手法ではリアルタイムで確認することができないうえ、任意の場所のガスをサンプリングすることが困難であり、さらにはクロマトグラフィー解析機器を準備する必要がある。また、クロマトグラフィーはガスをサンプリングするため、そこに存在するガスを吸引しなければならず、状況が変化してしまうという課題もある。したがって、クロマトグラフィーを使わず、より簡素な手法で、凝縮ガス中の不凝縮ガスの分布を制御したり、不凝縮ガスの有無やその分布を判別(可視化)したりすることができる装置や方法の開発が望まれている。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑み案出されたもので、簡素な手法で、凝縮ガス中の不凝縮ガスの分布を制御する制御方法及び制御ユニットを提供することを目的の一つとする。また、この制御方法及び制御ユニットにより制御された不凝縮ガスを判別する判別方法及び判別ユニットを提供することを目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別方法は、凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在した容器の内部を部分的に冷却することで前記凝縮ガスが凝縮する凝縮部を生成し(生成工程)、前記凝縮部の圧力低下に起因した前記不凝縮ガスの流れを利用して、又は、前記凝縮部の温度を制御することで、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの分布を制御する(制御工程)、凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御方法によって制御された前記不凝縮ガスを判別する方法である。
【0007】
(2)さらに、この判別方法は、前記容器の内部でプラズマを発生させ、少なくとも、前記不凝縮ガスの種類ごとに決まった前記プラズマの発光スペクトルを観察することで、リアルタイムで前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布を判別する。
【0008】
(3)前記容器には、前記容器の外部から内部を視認可能な透明部が設けられていることが好ましい。この場合、上記判別方法における前記プラズマの観察では、前記透明部から前記容器の内部を目視並びに観察機器を用いて前記発光スペクトルを計測することが好ましい。
(4)前記容器には、判別対象である前記不凝縮ガスの波長の光のみを通過させるフィルターが付設されていることが好ましい。この場合、上記判別方法における前記プラズマの観察では、前記フィルターを通過する光の強弱に基づいて前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布を判別することが好ましい。
【0009】
(5)前記プラズマを発生させるプラズマ発生部と、前記プラズマ発生部の光を解析す
る分光器と、前記プラズマ発生部の光を前記分光器に伝送する光ファイバーとが設けられ
ていることが好ましい。この場合、上記判別方法における前記プラズマの観察では、前記
分光器による分光スペクトル及び分光結果を用い、前記不凝縮ガスの種類ごとに決まった
分光スペクトルに基づいて前記不凝縮ガスの有無及びその種類又は前記不凝縮ガスの分布を判別することが好ましい。
【0010】
(6)前記凝縮部に配置された温度センサーで計測された温度と前記容器の内部の前記凝縮部以外の温度とを比較することで、リアルタイムで前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布を判別することが好ましい。
【0011】
(7)ここで開示する凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別ユニットは、凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在した容器と、前記容器の内部を部分的に冷却することで前記凝縮ガスが凝縮する凝縮部を生成し、前記凝縮部の圧力低下に起因した前記不凝縮ガスの流れを利用して、又は、前記凝縮部の温度を制御することで、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの分布を制御する制御部と、を備える。
【0012】
(8)さらに、この判別ユニットは、前記容器の内部でプラズマを発生させるプラズマ発生部と、少なくとも、前記プラズマ発生部により発生する前記プラズマの発光スペクトルと前記不凝縮ガスの種類との対応関係に基づき、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布をリアルタイムで判別する判別部と、を備える。
(9)また、ここで開示する凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別ユニットは、凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在した容器の内部を部分的に冷却することで前記凝縮ガスが凝縮する凝縮部を生成し、前記凝縮部の圧力低下に起因した前記不凝縮ガスの流れを利用して、又は、前記凝縮部の温度を制御することで、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの分布を制御する制御部と、少なくとも、前記容器の内部で発生させたプラズマの発光スペクトルと前記不凝縮ガスの種類との対応関係に基づき、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布をリアルタイムで判別する判別部と、を備える。
【0013】
(10)前記判別部は、前記容器に設けられ、前記容器の外部から内部を視認可能な透明部と、前記透明部から前記容器の内部を目視と併せて確認するための観察機器と、を有し、前記不凝縮ガスの種類ごとに決まった前記発光スペクトルを計測し、前記発光スペクトルに基づいて前記不凝縮ガスの有無及びその種類又は前記不凝縮ガスの分布を判別することが好ましい。
【0014】
(11)あるいは、前記判別部は、前記容器に付設され、判別対象である前記不凝縮ガスの波長の光のみを通過させるフィルターを有し、前記フィルターを通過する光の強弱に基づいて前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布を判別することが好ましい。
【0015】
(12)また、前記判別部は、前記プラズマ発生部の光を解析する分光器と、前記プラズマ発生部の光を前記分光器に伝送する光ファイバーと、を有し、前記分光器による分光スペクトルの解析及び分光結果を用い、前記不凝縮ガスの種類ごとに決まった分光スペクトルに基づいて前記不凝縮ガスの有無及びその種類又は前記不凝縮ガスの分布を判別することが好ましい。
【0016】
(13)また、前記凝縮部に配置され、前記凝縮部の温度を計測する温度センサーと、前記容器の内部であって前記凝縮部以外の温度を取得する温度取得部と、前記凝縮部の温度と前記凝縮部以外の温度とを比較して、前記凝縮ガス中の前記不凝縮ガスの有無又は前記不凝縮ガスの分布をリアルタイムで判別する第二判別部と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
開示の制御方法及び制御ユニットによれば、クロマトグラフィーを使わないため、ガスをサンプリングする必要がなく、状況が変化してしまうこともない。したがって、より簡素な手法で、これまで不可能とされた不凝縮ガスの分布をコントロールすることができる。
開示の判別方法及び判別ユニットによれば、凝縮ガス中の不凝縮ガスの有無やその種類によって、凝縮部におけるプラズマの発光スペクトルや温度が凝縮部以外のそれらとは異なる性質を利用し、プラズマの発光スペクトル又は温度を観察することで、これまで不可能とされた不凝縮ガスの有無をリアルタイムで判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御ユニットを例示する図である。
【
図2】一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別ユニットを例示する図である。
【
図3】他の実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別ユニットを例示する図である。
【
図4】一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御方法及び判別方法を例示するフローチャートである。
【
図5】(a)~(d)は、
図3のフローチャートに含まれる判別方法の例を示すサブフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御ユニット及び判別ユニットの具体例を示す図であり、(a)は磁性管に沿って切断し上方から見た断面図、(b)は容器の中心線に沿って切断し側方から見た断面図である。
【
図7】一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御ユニット及び判別ユニットの他の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、実施形態としての制御方法及び制御ユニット、並びに、判別方法及び判別ユニットについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0020】
[1.装置構成]
図1に示すように、一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御ユニット1は、所定の容器2の内部(以下「容器2内」ともいう)において凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在した状態から、不凝縮ガスの分布を制御する装置である。本実施形態では、凝縮ガスとして水蒸気を例示し、不凝縮ガスとして空気(窒素、酸素)を例示する。なお、各ガスの種類はこれらに限られない。凝縮ガスは、通常使用される態様において「冷やすと液体になるガス」であり、不凝縮ガスは、通常使用される態様において「冷やしても液体にならないガス」であればよい。例えば、高圧蒸気滅菌器では、凝縮ガスが水蒸気であり不凝縮ガスが空気であるが、化学プラントでは、凝縮ガスが窒素や酸素になり得る。
【0021】
制御ユニット1は、容器2の内部を部分的に冷却することで凝縮ガスが凝縮する部分4(領域,空間、以下「凝縮部4」という)を生成して、不凝縮ガスの分布を制御する制御部3を備える。凝縮部4は目に見えないが、
図1及び後述する
図2,
図3,
図6(a),(b),
図7では、凝縮部4のイメージをドット模様で示す。容器2内では、凝縮部4において凝縮ガスが凝縮して液体(ここでは凝縮水)になる。これにより、凝縮部4の体積が縮小して空間が生まれ、凝縮部4の圧力が低下することから、凝縮部4に向かうガスの流れが生じる。
【0022】
容器2内に上記二種類のガスが混在する場合、圧力差に起因してガスの流れが生じることで、凝縮ガス及び不凝縮ガスがこの流れに乗って凝縮部4に移動する。凝縮部4では、凝縮ガスは液体に変化するが不凝縮ガスは変化しない。このため、容器2内における不凝縮ガスの分布が変化する。具体的には、凝縮部4内では、凝縮ガスが消失して不凝縮ガスのみが残存し、この状況が連続して起こることで不凝縮ガスの濃度が高くなり、凝縮部4外では不凝縮ガスの濃度が低くなる。このように、制御部3は、凝縮部4の圧力低下に起因した不凝縮ガスの流れを利用して凝縮ガス中の不凝縮ガスの分布を制御する機能を持つ。
【0023】
なお、容器2に凝縮ガスの供給源が接続されている場合(凝縮ガスを容器2内に供給し続けられる場合)であっても、凝縮部4で凝縮が起こって圧力が低下するとガスの流れが生じる。つまり、凝縮ガスの供給源の有無にかかわらず、容器2内で圧力差が生じると力が働き、ガス流れが生まれるため、凝縮部4で継続して凝縮が起こることで容器2内のガスは凝縮部4に向かって常に流れることとなる。凝縮ガスが水蒸気で、不凝縮ガスが空気である場合、凝縮部4に空気が集まると、空気の分圧があるため、凝縮部4の飽和蒸気圧が低下する。したがって、凝縮部4では、低い飽和蒸気圧の状態(温度が低い状態)が成り立ち、凝縮部4内に温度勾配(温度境界層)がある領域が形成される。なお、凝縮部4に集まった不凝縮ガスは、凝縮部4の温度が容器2内の温度に近づくように凝縮部4の温度を制御することで、容器2内に均一に分布させることができる。
【0024】
制御ユニット1は、一つの容器2の内部に、凝縮ガスと不凝縮ガスとが混在する状態が生じる装置や機器に適用可能である。例えば、高圧蒸気滅菌器や環境試験装置などが挙げられる。前者の場合、容器2は釜であり、後者の場合、容器2は試験槽である。他にも、蒸気発生槽や冷却タンク等も挙げられる。また、制御部3には少なくとも、容器2内の凝縮ガスを冷却するための冷却機器(冷却部)が含まれ、凝縮部4の温度を制御(加熱や断熱)するための加熱機器(ヒーター,ヒートシンク)や断熱機器(断熱材)が含まれてもよい。制御部3は、容器2の外部(例えば外表面)を冷却、加熱、断熱することで容器2内の温度を制御する構成であってもよいし、容器2内をダイレクトに冷却又は加熱する構成であってもよい。なお、容器2には、凝縮水を排出する排出口8や排出管(図示略)が設けられてもよい。
【0025】
図2に示すように、一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別ユニット5は、制御ユニット1によって制御された不凝縮ガスの有無や種類や分布といった事柄を判別する装置である。この判別ユニット5は、透明な容器2内でプラズマを発生させるプラズマ発生部6と、プラズマ発生部6により発生するプラズマの発光スペクトルと不凝縮ガスの種類との対応関係に基づいて、凝縮ガス中の不凝縮ガスの有無をリアルタイムで判別する判別部7とを備える。なお、容器2が透明でない場合には、外部から内部を観測できる観察窓を設けて内部を確認することも可能である。
【0026】
プラズマ発生部6は、例えば、高電圧電源に繋がったワイヤ電圧印加電極6Aと、アースに繋がったワイヤ接地電極6Bと、二つの電極6A,6Bのうちの一方が内蔵され他方が外表面に付着された筒状の磁性管6C(絶縁体)とを有する。プラズマ発生部6により発生するプラズマは、周囲に存在するガスの種類によって、その発光スペクトルや発光色や発光強度(明るさ,輝度)が異なる。例えば、プラズマは、水蒸気内では青白く発光するのに対し、空気(窒素)内では紫色に強く発光する。判別部7は、このように凝縮ガス中の不凝縮ガスの有無やその種類によって発光スペクトル等に違いが生じるプラズマの性質を利用し、少なくともプラズマの発光スペクトルを観察することでリアルタイムでの判別を実現する。なお、不凝縮ガスの種類とプラズマの発光スペクトルとの対応関係は予め取得しておく。
【0027】
判別部7は、不凝縮ガスの有無を判別(観察)する手法によってその形態が決まる。最も簡単な判別手法は目視である。この場合、判別部7は、容器2内のプラズマの発光スペクトルを外部から見えるように透明な部分〔例えば
図6(a),(b)の符号71で示す透明部〕と、透明部から容器2の内部を目視と併せて確認するための観察機器〔例えば
図6(a)の符号76で示すカメラ〕とを有する。観察機器は、例えば静止画又は動画を撮影するカメラが挙げられる。
【0028】
同じく目視による観察であっても、プラズマの発光スペクトルを目で見て判別する代わりに、判別対象である不凝縮ガスの波長の光のみを通過させるフィルター72(
図2参照)を、判別部7として容器2に付設してもよい。この場合、フィルター72を通過した光が弱くなることに備え、高感度の観察機器76を設けることが好ましい。この判別方法を用いる場合には、フィルター72を通過する光の強弱に基づき不凝縮ガスの有無を判別するため、作業者(判別者)による判別結果のばらつきが小さくなる。すなわち、フィルター72を通過する光が強いときには不凝縮ガスが存在し、フィルター72を通過する光が弱い(ほとんど見えない)ときには不凝縮ガスが存在しないため、作業者は光の有無(強弱)を判別すればよい。
【0029】
また、目視による判別に加えて又は代えて、分光器(例えば
図7の符号73)を用いて判別してもよい。具体的には、プラズマ発光部6の光を解析する分光器と、プラズマ発生部6の光を分光器に伝送する光ファイバー(例えば
図7の符号74)とを設け、分光器による分光スペクトル及び分光結果(波長)をモニター(例えば
図7の符号75)に表示し、これらに基づいて不凝縮ガスの有無及びその種類を判別してもよい。この判別方法を用いる場合には、分光器と光ファイバーとが判別部7に含まれる。
【0030】
また、他の実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの判別ユニット5′を
図3に示す。この判別ユニット5′も、制御ユニット1によって制御された不凝縮ガスの有無や種類や分布といった事柄を判別する装置であるが、プラズマの代わりに温度を用いる点が上記の判別ユニット5と異なる。具体的には、この判別ユニット5′は、凝縮部4に配置されて凝縮部4の温度T1を計測する温度センサー11と、容器2の内部であって凝縮部4以外の温度T2を取得する温度取得部12と、凝縮部4の温度T1と凝縮部以外の温度T2とを比較して、凝縮ガス中の不凝縮ガスの有無をリアルタイムで判別する第二判別部10と、を備える。
【0031】
第二判別部10は、例えば電子制御装置で実行されるプログラムの一部の機能として設けられたものを例示する。なお、この機能はハードウェア(電子回路)で実現してもよいし、ソフトウェアで実現してもよい。また、温度取得部12は、温度センサー11と同様、容器2内に配置されて凝縮部4以外の温度T2を計測するセンサーであってもよいし、凝縮ガスの温度が既知である(例えば凝縮ガスが水蒸気(温度T2=100℃)である)場合には、電子制御装置の機能として設けられてもよい。
図3には、温度取得部12が温度センサーである場合を例示している。
【0032】
上述したように、凝縮部4で凝縮ガスの凝縮が起こって圧力が低下すると、この凝縮部4の圧力低下に起因してガス流れが生じることから、凝縮部4では、低い飽和蒸気圧の状態(温度が低い状態)が成り立つ。この場合、容器2内には、凝縮ガスの温度と略同じ温度の領域と、不凝縮ガスの温度と略同じ温度の領域とが存在することになる。つまり、凝縮部4に不凝縮ガスが集まっている状態では、凝縮部4内に温度勾配のある領域が存在する。言い換えると、凝縮部4の温度T1と凝縮部4以外の温度T2とを比較することで凝縮部4に不凝縮ガスが集まっている(不凝縮ガスの濃度が高まっている)ことを判別することができる。
【0033】
なお、凝縮ガスが水蒸気で、不凝縮ガスが空気(窒素)であり、制御部3が容器2の内部を冷却することで凝縮部4を生成する場合には、冷却面(凝縮水が付着する面)から温度勾配のある領域が形成されることとなる。また、制御部3により冷却能力を適宜制御することで、凝縮量を変化させ、空気濃度の分布や濃度を制御する。このとき、加熱をしたり、断熱効果を高めたりすることで、冷却面の温度を速やかに変化させ、適切な状態に速やかに制御することが可能である。
【0034】
温度センサー11の個数やその配置は適宜設定可能である。例えば、容器2内に生じうるガス流れの流通方向に複数個の温度センサー11を設けることで、温度勾配のある領域を判別しやすくなり、不凝縮ガスの判別精度が向上する。
【0035】
[2.制御方法及び判別方法]
図4は、実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御方法及び判別方法を例示するフローチャートである。本制御方法に先立ち、所定の容器2内には凝縮ガス及び不凝縮ガスが混在した状態とする(ステップS1)。これは、意図的に混在した状態を作り出してもよいし、もともと混在した状態になっていてもよい。前者の場合には、作り出す工程(ステップS1)が制御方法に含まれる。また、容器2は密閉されたものであってもよいし、例えば凝縮ガスを容器2内に導入する導入管や、凝縮水を排出する排出管等が接続されたものでもよい。
【0036】
ステップS2では、制御部3により容器2の内部を部分的に冷却することで凝縮ガスが凝縮する凝縮部4を生成し(生成工程)、凝縮部4の圧力低下に起因した不凝縮ガスの流れを利用して、凝縮ガス中の不凝縮ガスの分布を制御する(制御工程、ステップS3)。すなわち、凝縮部4内の不凝縮ガスの濃度を高め、凝縮部4以外の不凝縮ガスの濃度を低下させる。なお、ステップS3のあとに、凝縮部4の温度を制御することで、凝縮部4の温度を容器2内の温度に近づけ不凝縮ガスを均一に分布させる工程を設けてもよいが、
図4では省略する。
【0037】
本判別方法(ステップS4)は、上記のステップS1~S3に次いで実施される。判別方法としては、例えば
図5(a)~(d)に示す四つの方法が挙げられる。
【0038】
図5(a)に示す第一の判別方法は、容器2内でプラズマを発生させ(ステップS10)、容器2に設けられた透明部から容器2内を目視するとともに観察機器を用いて、不凝縮ガスの種類ごとに決まった発光スペクトルを計測し(ステップS11)、この発光スペクトルに基づいて不凝縮ガスの有無及びその種類を判別する方法である(ステップS12)。第一の判別方法では、容器2の外部から内部を視認可能な透明部と観察機器とが設けられる。
【0039】
図5(b)に示す第二の判別方法は、容器2内でプラズマを発生させ(ステップS10)、容器2に付設されたフィルターを目視し(ステップS13)、フィルターを通過する光の強弱に基づいて不凝縮ガスの有無を判別する方法である(ステップS14)。なお、第二の判別方法においても、フィルターを通過した光を観察する観察機器(高感度なもの)を設けることが好ましい。また、第一及び第二の判別方法では、目視に代えて又は加えて、観察機器の出力(観察結果)を電子制御装置(図示略)に入力し、電子制御装置において、発光スペクトル又は光の強弱に基づいて不凝縮ガスの有無等を判別してもよい。第二の判別方法では、判別対象である不凝縮ガスの波長の光のみを通過させるフィルターが容器2に付設される。
【0040】
図5(c)に示す第三の判別方法は、容器2内でプラズマを発生させ(ステップS10)、分光器で光を分解して分光スペクトルを解析し(ステップS17)、この解析及び分光結果に基づき不凝縮ガスの有無及びその種類を判別する方法である(ステップS18)。第三の判別方法では、プラズマ発生部6と分光器と光ファイバーとが設けられるとともに、分光器による解析及び分光結果を表示するモニターが設けられることが好ましい。
【0041】
図5(d)に示す第四の判別方法は、上記三つの方法とは異なり、凝縮部4に配置された温度センサー11で計測された温度T1と容器2内の凝縮部4以外の温度T2とを取得し(ステップS20)、これらの温度T1,T2を比較することで、リアルタイムで凝縮ガス中の不凝縮ガスの有無を判別する方法である(ステップS21)。第四の判別方法では、上記の温度T1,T2計測,取得するセンサー等と、温度T1,T2を比較して判別する第二判別部20とが設けられる。
【0042】
なお、第一の判別方法と第三の判別方法とを組み合わせて実施してもよいし、第二の判別方法と第三の判別方法とを組み合わせて実施してもよい。すなわち、目視による観察をしつつ分光器による分光スペクトル及び分解結果を併せて観察してもよい。また、第一~第三の判別方法に第四の判別方法を組み合わせてもよい。
【0043】
[3.具体例1]
ここで、一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御ユニット1及び判別ユニット5の具体例を
図6(a),(b)を用いて説明する。この装置は、制御ユニット1に判別ユニット5が一体化されたもの(言い換えると、制御ユニット1を含む判別ユニット5)である。この装置は、両端が開口した筒状の透明な容器2(例えばガラス管)と、容器2の長手方向の一端側(図中右側)に設けられた制御部3(冷却装置)と、容器2内に配置されたプラズマ発生部6とを備える。
【0044】
容器2は、制御部3が設けられた一端側が他端側よりも上になるように斜めに配置され、その両端の開口がシリコン栓21により封止されている。本例の容器2は、その全体が透明であることから透明部71(判別部7)を兼ね備えている。ただし、本例の容器2では、その周方向の一部に内部の温度を維持するための断熱材22及びヒーター23が配置されており、実際に判別部7として機能するのは断熱材22が配置されていない部分となる。
【0045】
制御部3は、冷却媒体が流通する冷却通路31と、高熱伝導性のセラミック棒32とを備える。冷却通路31は、容器2の一端側に隣接配置され、その内部を冷却媒体が流通(例えば循環)している。冷却媒体の種類は特に限られず、液体(例えば水)であってもよいし気体であってもよいが、少なくとも容器2内の凝縮ガスを凝縮しうる温度に維持される。セラミック棒32は、その一端部が冷却通路31内に配置され、その他端部が一端側のシリコン栓21を貫通して容器2内に配置される。これにより、冷却媒体の熱がセラミック棒32を介して容器2内の一端側に伝わり、容器2内に凝縮部4を生成する。
【0046】
プラズマ発生部6は、容器2の長手方向に延設され、容器2の全体において不凝縮ガスの有無を判別可能となっている。具体的には、プラズマ発生部6は、容器2の長手方向に延設された磁性管6Cと、磁性管6Cの内部に延設されたワイヤ電圧印加電極6Aと、磁性管6Cの外表面に沿って延設されたワイヤ接地電極6Bとを備える。磁性管6Cの両端部は、一端側及び他端側のシリコン栓21を貫通して設けられる。ワイヤ電圧印加電極6Aに、例えば6kVの交流電圧で印加すると、容器2内にプラズマを発生させることができる。
【0047】
容器2の他端側のシリコン栓21には、容器2内に凝縮ガスとしての水蒸気を導入するための導入管20と、容器2内で生じた凝縮水を排出するための排出管24とが貫通している。容器2内に存在する水蒸気(凝縮ガス)は、セラミック棒32の外表面(冷却面)で凝縮し、
図6(b)に黒塗りで示すように水となって容器2の下方(他端側)へと流れていき、排出管24から外部へと排出される。なお、容器2の両端部は密閉されていることから、凝縮した水量の分の水蒸気だけが容器2内に導入される。
【0048】
凝縮ガスが凝縮部4で凝縮することで、容器2内の窒素(不凝縮ガス)は凝縮部4に集まる。このように、容器2内における窒素の濃度分布を一端側で濃くし、他端側で薄くすることが可能となり、窒素の分布を制御できる。また、この状態でプラズマ発生部6によりプラズマを発生させると、凝縮部4では紫色に強く発光し、凝縮部4ではない領域では一端側から離れるにつれて青白く発光する。これにより、窒素の分布(空気の有無)が判別可能となり(可視化され)、凝縮部4に窒素が集まっていることが確かであることを、理論ではなく目視により確認できる。
【0049】
[4.具体例2]
図7は、一実施形態に係る凝縮ガス中の不凝縮ガスの制御ユニット1及び判別ユニット5の他の具体例を示す図である。この装置も、制御ユニット1に判別ユニット5が一体化されたもの(言い換えると、制御ユニット1を含む判別ユニット5)であるが、上記の具体例1と比較して、制御部3が容器2の略中央に配置されている点と判別ユニット5の構成とが異なり、他の構成は同様である。
【0050】
判別ユニット5では、プラズマ発生部6と、プラズマ発生部6の光を解析する分光器73と、プラズマ発生部6の光を分光器73に伝送する光ファイバー74とが設けられ、分光器73による分光スペクトルの解析及び分光結果がモニター75に表示される。なお、分光スペクトルの解析とは、どのような波長の輝線スペクトルが存在するかを調べる作業を意味し、この解析の結果、容器2内に何のガスが含まれているのかが判明するが、その結果を分光結果と呼ぶ。
【0051】
図7に示す例では、プラズマ発生部6がプラズマを一点で発光させる構成となっている。なお、プラズマ発生部6は固定式であってもよいし、可動式であってもよい。後者の場合、プラズマ発生部6の位置を作業者が任意に変更可能であってもよいし、図示しない可動装置にプラズマ発生部6を装着して可動させる構成としてもよい。
【0052】
例えば容器2内に窒素が含まれる場合、プラズマの光を解析,分光した結果、モニター75には
図7に示すように、窒素の波長を示すピークが表示される。なお、
図7中のN
2 SPSは「窒素の第2正帯: Second Positive System bands of N
2」の略称である。このように、本例における判別ユニット5を用いる場合、モニター75には、容器2内に含まれる不凝縮ガスの種類に応じた波長が表示される。なお、分光器73を用いた本判別方法(第三の判別方法)を採用する場合には、光を直接目視しなくても判別可能であるため、透明部71やフィルター72を省略してよい。
【0053】
[5.作用,効果]
(1)上述した制御方法及び制御ユニット1によれば、凝縮部4の圧力低下に起因した不凝縮ガスの流れを利用して、凝縮ガス中の不凝縮ガスの一部が凝縮部4に移動することで、この凝縮部4内の不凝縮ガス濃度を高めることができ、反対に、凝縮部4以外での不凝縮ガス濃度を低くすることができる。また、生成した凝縮部4の温度を制御することで凝縮部4の温度を容器2内の温度に近づければ、不凝縮ガスを均一に分布させることもできる。さらに、上述した制御方法及び制御ユニット1では、クロマトグラフィーのようにガスをサンプリングする必要がなく、状況が変化してしまうこともない。したがって、より簡素な手法で、これまで不可能とされた不凝縮ガスの分布をコントロールすることができる。
【0054】
これにより、例えば、凝縮ガス中の不凝縮ガスを除去したい場合には、凝縮部4付近に排出口8を設けることで、効率よく不凝縮ガスの排出が可能となる。また、例えば、凝縮ガス中に存在する不凝縮ガスを一部に集めたい場合には、その集めたい位置で凝縮部4を生成すれば不凝縮ガス濃度が高い環境を作り出すことができる。
【0055】
(2)上述したように、凝縮ガス中でプラズマを発生させると、少なくとも、不凝縮ガスの種類によってプラズマの発光スペクトルが異なり、また、発光色や発光強度も異なりうる。例えば、水蒸気中に窒素が存在する場合、プラズマを発生させると、窒素が存在する領域では紫色に強く光るのに対し、窒素が存在しない領域(水蒸気しかない領域)では青白く光る。上述した判別方法及び判別ユニット5は、このような凝縮ガス中の不凝縮ガスの有無やその種類によって、少なくとも発光スペクトルに違いが生じる性質を利用し、プラズマの発光スペクトルを観察することで、これまで不可能とされた不凝縮ガスの有無をリアルタイムで判別することができる。
【0056】
さらに、上述した制御方法及び制御ユニット1と併せて用いることにより、より精度よく、リアルタイムに不凝縮ガスの濃度分布を制御することができる。例えば、高圧蒸気滅菌器に適用した場合には、凝縮ガスとしての水蒸気中に存在する、不凝縮ガスとしての空気の効率的な排気(排出)を実現できる。さらに、これまでタイマーで管理していた排出時間を、実際に排出されている状況をモニタリングすることにより排出を完了させることができ、加熱工程から滅菌工程につなげるシステム構築が可能となる。また、気圧変化による沸点の変化に対しても、空気の残存状況の監視により、上記と同様、効率的に各工程を進めることが可能となる。
【0057】
(3)
図5(a)に示す第一の判別方法、及び、
図6(a),(b)に示す判別ユニット5では、透明部71及び観察機器76(
図2参照)を設けておき、プラズマの発光スペクトルを目視並びに観察機器76によって観察し、その色や強さから不凝縮ガスの有無や種類を判別する。このため、複雑な装置を要さず、簡単かつリアルタイムで不凝縮ガスを判別できる。
【0058】
(4)
図5(b)に示す第二の判別方法、及び、
図2に示す判別ユニット5では、容器2に判別対象の不凝縮ガスの波長のみを通過させるフィルター72を付設しておき、フィルター72を通過する光の強弱に基づいて、凝縮ガス中に判別対象の不凝縮ガスが存在するか否かを判別する。このため、作業者(判別者)による判別結果のばらつきを抑制でき、正確かつリアルタイムで不凝縮ガスを可視化できる。
【0059】
(5)
図5(c)に示す第三の判別方法、及び、
図7に示す判別ユニット5によれば、プラズマの光を分光器73で分解し、分光スペクトルの解析及び分光結果に基づいて、より正確に不凝縮ガスの有無及びその種類を判別できる。なお、分光器73を用いた判別方法は、それ単体で使用することもできるが、透明部71を介した目視並びに観察機器76による判別方法やフィルター72を用いた判別方法のいずれとも併用可能である。
【0060】
[6.その他]
上述した制御方法及び制御ユニット1、並びに、判別方法及び判別ユニット5はいずれも一例である。例えば、上記のプラズマ発生部6は、点状又は線状にプラズマを発生させるよう構成されているが、面状にプラズマを発生させるように構成されてもよい。また、例えば一点でプラズマを発生される構成を複数配置し(複数のプラズマ発生部6を備え)、任意の位置で同時に(あるいは時間差で)判別してもよい。
【0061】
上述した制御方法及び制御ユニット1、並びに、判別方法及び判別ユニット5は、凝縮ガス(例えば水蒸気)と不凝縮ガス(例えば、窒素,酸素,二酸化炭素,アルゴン等)が容器2内に混在している状態で用いることができ、例えば、高圧蒸気滅菌器や環境試験装置(加速寿命試験機等)に適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 制御ユニット
2 容器
3 制御部
4 凝縮部
5,5′ 判別ユニット
6 プラズマ発生部
6A ワイヤ電圧印加電極
6B ワイヤ接地電極
6C 磁性管
7 判別部
8 排出口
10 第二判別部
11 温度センサー
12 温度取得部
20 導入管
21 シリコン栓
22 断熱材
23 ヒーター
24 排出管
31 冷却通路
32 セラミック棒
71 透明部
72 フィルター
73 分光器
74 光ファイバー
75 モニター
76 観察機器