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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】空調装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/039 20190101AFI20240724BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20240724BHJP
   B61D 27/00 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
F24F1/039
F24F5/00 Z
B61D27/00 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019204356
(22)【出願日】2019-11-12
(65)【公開番号】P2021076317
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-10-27
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】509221135
【氏名又は名称】株式会社日建設計総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】長廣 剛
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義康
(72)【発明者】
【氏名】進藤 宏行
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-048971(JP,A)
【文献】特開2015-078813(JP,A)
【文献】特開2002-089916(JP,A)
【文献】登録実用新案第3159566(JP,U)
【文献】特開2018-021748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/039
F24F 5/00
B61D 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気が通る空調用流路と、
前記空調用流路の外周面に設けられ、水が供給される吸水材と、
前記吸水材に供給された水を気化させるための気化用空気が通る気化用流路と、を備え、
前記空調用流路の流入口と前記気化用流路の流入口とは、同一方向を向いて開口しており、
前記空調用流路及び前記気化用流路は、前記空調用空気と前記気化用空気とが混じり合わないように配置されており、
前記空調用流路及び前記気化用流路に空調用空気及び気化用空気をそれぞれ供給するためのファンを有しておらず、
前記空調用空気の流入口は、前記気化用流路の流入口よりも、両前記流入口に流入する空気の上流側に突出している、空調装置。
【請求項2】
前記空調用流路は、1以上の導管によって形成され、
前記気化用流路は、前記気化用空気を流入口から流出口まで導く、周囲を壁面で囲われた流路であり、
前記空調用流路の少なくとも一部は、前記壁面で囲われた空間に設けられており、
前記1以上の導管は、流出口側が前記気化用流路の壁面を通って外側に連通するように配設されている、請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
前記吸水材に、30℃以下の水が供給される、請求項1または請求項2記載の空調装置。
【請求項4】
空調用空気が通る空調用流路と、
湧水が貯留される貯留槽と、
前記空調用流路の外周面に設けられ、前記貯留槽に貯留されている湧水が供給される吸水材と、
前記吸水材に供給された湧水を気化させるための気化用空気が通る気化用流路と、を備え、
前記空調用流路の流入口と前記気化用流路の流入口とは、同一方向を向いており、
前記空調用流路及び前記気化用流路は、前記空調用空気と前記気化用空気とが混じり合わないように配置されており、
前記貯留槽に貯留されている湧水に空気が供給される、空調装置。
【請求項5】
空調用空気が通る空調用流路と、
前記空調用流路の外周面に設けられ、水が供給される吸水材と、
前記吸水材に供給された水を気化させるための気化用空気が通る気化用流路と、を備え、
前記空調用流路の流入口と前記気化用流路の流入口とは、同一方向を向いて開口しており、
前記空調用流路及び前記気化用流路は、前記空調用空気と前記気化用空気とが混じり合わないように配置されており、
前記空調用流路及び前記気化用流路に空調用空気及び気化用空気をそれぞれ供給するためのファンを有しておらず、
前記空調用流路及び前記気化用流路の流入口は、列車風の上流側に向けられており、
前記空調用流路から流出する空調用空気が、駅のプラットホームに供給される、空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気化熱を利用して空気を冷却する空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気化熱(蒸発潜熱)を利用して空気を冷却する冷風扇が用いられている(例えば、特許文献1参照)。その冷風扇によって、ヒートポンプや熱源などを利用することなく、簡便に空気を冷却することができていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-082291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の冷風扇においては、湿度の高い冷風が供給されることになる。その結果、湿度が上昇して快適性が損なわれるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、気化熱を利用して冷却された空気の快適性を向上させることができる空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明による空調装置は、空調用空気が通る空調用流路と、空調用流路の外周面に設けられ、水が供給される吸水材と、吸水材に供給された水を気化させるための気化用空気が通る気化用流路と、を備え、空調用流路の流入口と気化用流路の流入口とは、同一方向を向いており、空調用流路及び気化用流路は、空調用空気と気化用空気とが混じり合わないように配置されている、ものである。
このような構成により、気化熱を利用して空調用空気を冷却することができるため、省エネルギーでの空調を提供することができる。また、空調用流路及び気化用流路の各流入口が同一方向を向いているため、各流入口を所定の気流の上流側に向けることによって、両流路にそれぞれ空気を流通させることができるようになる。さらに、空調用空気と気化用空気とが混じり合わないようにすることによって、空調用空気の湿度の上昇を回避でき、快適な空調用空気を提供することができる。
【0007】
また、本発明による空調装置では、空調用流路は、1以上の導管によって形成され、気化用流路は、気化用空気を流入口から流出口まで導く、周囲を壁面で囲われた流路であり、空調用流路の少なくとも一部は、壁面で囲われた空間に設けられており、1以上の導管は、流出口側が気化用流路の壁面を通って外側に連通するように配設されていてもよい。
このような構成により、簡単な構成によって、効率的に空調用空気を冷却することができるようになる。
【0008】
また、本発明による空調装置では、吸水材に、30℃以下の水が供給されてもよい。
このような構成により、例えば、空調用流路に流入する空気よりも低い温度の水が吸水材に供給される場合には、気化熱に加えて、吸水材に供給される水そのものによっても、空調用空気を冷却することができるようになる。
【0009】
また、本発明による空調装置では、吸水材に、湧水が供給されてもよい。
このような構成により、例えば、地下空間などにおいて、温度の低い湧水を有効利用することができるようになる。
【0010】
また、本発明による空調装置では、吸水材に供給される湧水が貯留される貯留槽をさらに備え、貯留槽に貯留されている湧水に空気が供給されてもよい。
このような構成により、貯留槽における雑菌などの繁殖を防止することができる。通常、湧水には金属イオンが含まれるため、空気を供給することによって金属イオンが酸化され、貯留槽で貯留されている湧水を酸性にすることができ、その結果として、雑菌などが繁殖できないようになるからである。
【0011】
また、本発明による空調装置では、空調用流路及び気化用流路の流入口は、列車風の上流側に向けられており、空調用流路から流出する空調用空気が、駅のプラットホームに供給されてもよい。
このような構成により、列車風を利用して、プラットホームに冷やされた空調用空気を提供することができる。したがって、例えば、地下鉄の駅のプラットホームなどにおいて、省エネルギーの空調を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による空調装置によれば、空調用空気と気化用空気とが混じり合わないようにすることによって、空調用空気の湿度が上昇することを回避でき、その結果、快適な空調用空気を提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態による空調装置の構成を示す斜視図
図2】同実施の形態による空調装置の構成を示す斜視図
図3】同実施の形態による空調装置の構造について説明するための斜視図
図4A】同実施の形態における複数の導管の配置の一例を示す正面図
図4B】同実施の形態における複数の導管の配置の一例を示す正面図
図4C】同実施の形態における複数の導管の配置の一例を示す正面図
図4D】同実施の形態における複数の導管の配置の一例を示す正面図
図5】同実施の形態による空調装置の構成の他の一例を示す斜視図
図6】同実施の形態による空調装置の構成の他の一例を示す背面図
図7】同実施の形態による空調装置の駅への配置の一例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明による空調装置について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素は同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による空調装置は、空調用空気が通る空調用流路と気化用空気が通る気化用流路とが、互いの空気が混じり合わないように配置され、空調用空気が気化熱を利用して冷却されるものである。
【0015】
図1は、本実施の形態による空調装置1を空調用空気及び気化用空気の流入口15,35側から見た斜視図であり、図2は、空調装置1を空調用空気の流出口16側から見た斜視図である。図3は、空調装置1の導管12の支持構造を示す斜視図である。
【0016】
空調装置1は、空調用空気が通る空調用流路11と、空調用流路11の外周面に設けられた吸水材21と、気化用空気が通る気化用流路31と、吸水材21に供給される水が貯留される貯留槽41と、を備える。
【0017】
本実施の形態では、図1図3で示されるように、空調用流路11が3個の導管12によって形成される場合について主に説明する。なお、導管12の個数は問わない。例えば、1以上の導管12によって空調用流路11が形成されてもよい。また、図1図2で示されるように、複数の同じ長さの導管12が平行に設けられてもよい。なお、導管12は、空調用空気を効率よく冷却するため、熱伝導率の高い材料で構成されることが好適である。そのため、導管12の材質は、例えば、金属や、熱伝導率の高い合成樹脂であってもよい。金属としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、炭素鋼、ステンレスなどを挙げることができる。熱伝導率の高い合成樹脂としては、例えば、高熱伝導率のポリカーボネート樹脂、高熱伝導率のポリブチレンテレフタレート樹脂、高熱伝導率のポリアミド樹脂などを挙げることができる。
【0018】
空調用空気は、気化熱を用いた冷却の対象となる空気である。図1において、空調用流路11における空調用空気の流れを、実線の矢印によって示している。空調用空気は、流入口15から空調用流路11に流入し、流出口16から空調空間に流出することによって、空調空間が空調されることになる。本実施の形態では、空調用流路11が直線状である場合について示しているが、そうでなくてもよい。空調用流路11は、途中で曲がっていてもよい。
【0019】
吸水材21は、吸水性を有しており、導管12の外周側に設けられる。なお、吸水材21は、例えば、吸水性ポリマーなどのように、吸水性の特に高いものであってもよく、または、例えば、天然繊維や化学繊維などのように、吸水性ポリマーよりは吸水性が低いものであってもよい。この吸水材21には、水が供給される。なお、本実施の形態では、貯留槽41の水が吸水材21に供給される場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。例えば、給水管などを介して、水が吸水材21に供給されてもよい。また、本実施の形態では、下方に設けられた貯留槽41から水が毛細管現象によって吸い上げられることによって、吸水材21に水が供給される場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。例えば、吸水材21の上方から水が滴下や噴霧されてもよい。
【0020】
吸水材21は、例えば、シート状のものであってもよく、ハニカム状などのように積層状のものであってもよく、その他の形状のものであってもよい。本実施の形態では、吸水材21がシート状のものである場合について主に説明する。シート状の吸水材21は、例えば、布や織物であってもよく、不織布であってもよく、その他のシートであってもよい。シート状の吸水材21は、例えば、吸水性と速乾性(拡散性)とを有する高分子材料(例えば、ポリエステルやナイロン等)によって形成されたものであってもよく、ボール紙や厚紙などの紙によって形成されたものであってもよく、その他の材料によって形成されたものであってもよい。吸水材21は、例えば、湿潤膜であってもよい。吸水材21の水が気化することによって、空調用流路11を通る空調用空気が冷却されるため、吸水材21と、空調用流路11の外周面との接触面積は大きい方が好適である。そのため、空調用流路11の外周面が平面でない場合には、吸水材21は、空調用流路11の外周面の形状に容易に沿うことができ、その外周面との接触面積を増やすことができるものであることが好適である。その観点からは、吸水材21は、布や織物、不織布などのように、自由に変形可能なものであることが好適である。また、導管12によって形成される空調用流路11の外周面において、吸水材21が設けられる範囲は問わないが、図1で示されるように、複数の導管12の外周面のできるだけ広い範囲に吸水材21が接触していることが好適である。気化熱によって、より効率的に空調用空気を冷却するためである。本実施の形態では、導管12の長手方向において、吸水材21は、導管12と略同じ長さにわたって設けられているものとする。吸水材21は、空調用流路11の外周面に接着などによって固定されてもよい。
【0021】
吸水材21に供給される水は、例えば、湧水や海水、河川水、地下水、ため池の水などの未利用水であってもよく、工業用水であってもよく、雨水などの中水であってもよく、上水であってもよく、その他の水であってもよい。なお、水が気化する際の気化熱を用いて空調用空気を冷却するという観点からは、吸水材21に供給される水の温度は問わない。一方、水の温度が低ければ、気化熱と共に、水そのものによっても空調用空気を冷却することができるため、吸水材21に供給される水の温度は低いことが好適である。その観点からは、吸水材21に供給される水の温度は、流入口15に流入する空気の温度よりも低いことが好適である。吸水材21に供給される水の温度は、例えば、30℃以下であることが好適であり、28℃以下であることがより好適であり、25℃以下であることがさらに好適であり、20℃以下であることがよりさらに好適である。
【0022】
気化用流路31は、吸水材21に供給された水を気化させるための気化用空気が通る流路である。なお、吸水材21の水は気化用空気によって気化されるため、吸水材21は、気化用流路31に配設されていると言うこともできる。本実施の形態では、図1図2で示されるように、気化用流路31が、気化用空気を流入口35から流出口36まで導く、周囲を壁面32で囲われた流路である場合について主に説明する。なお、壁面32で囲われた空間の内側に、空調用流路11(導管12)の少なくとも一部が設けられている。したがって、気化用流路31は、厳密には、壁面32と複数の導管12との間に形成された空間となる。壁面32の材質は、例えば、金属や合成樹脂であってもよい。金属の例示は、上記のとおりである。合成樹脂としては、例えば、硬質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブテン樹脂、ポリプロピレン樹脂、繊維強化樹脂(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)、エンジニアリングプラスチック、スーパーエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
【0023】
なお、本実施の形態では、説明の便宜上、空調用流路11の流入口15側を正面と呼び、空調用流路11の流出口16側を背面と呼ぶ。また、導管12の長手方向を前後方向とする。また、水平面上において、前後方向に直交する方向を左右方向とする。
【0024】
壁面32によって、正面側が開口した略直方体形状が形成されており、壁面32で囲われた空間において、前後方向に延びる導管12が所定の支持部によって支持されている。また、図1で示されるように、空調用流路11の流入口15及び気化用流路31の流入口35は、同一方向を向くように構成されている。すなわち、流入口15,35は、同一方向に向けて開口していることになる。また、例えば、流入口15,35が所定の気流の上流側を向くように空調装置1が設置されてもよい。このようにすることで、所定の気流の一部が流入口15から流入して空調用空気となり、所定の気流の他の一部が流入口35から流入して気化用空気となる。その所定の気流は、例えば、列車風やビル風などのように、自然発生的に生じた気流であることが好適である。列車風とは、駅への列車の進入や通過に応じてプラットホーム上に引き起こされる風のことである。自然発生的に生じた気流を利用することによって、流入口15,35に流入する気流を生成するために、別途のエネルギーを消費する必要がなくなり、省エネルギーとなるからである。なお、その気流は、恒常的に発生していることが好適であるが、列車風などのように、間欠的に発生するものであってもよい。なお、図1図2では、流入口15,35が、略同一平面上となる場合について示しているが、そうでなくてもよい。例えば、流入口15は、流入口35よりも、正面側に突出していてもよい。気化用流路31の高湿度の空気が、空調用流路11に流入することを回避するためである。なお、流入口15が、流入口35よりも正面側に突出している場合であっても、吸水材21は、気化用流路31の流入口35から流出口36までの範囲に設けられていることが好適である。高湿度の空気が、気化用流路31の外部に存在しないようにすることが好適だからである。
【0025】
空調用流路11を構成する複数の導管12は、図2で示されるように、流出口16側が、気化用流路31の壁面32を通って外側に連通するように配設されている。したがって、空調装置1の背面側からは、空調用空気のみが流出することになる。なお、図2では、導管12の流出口16と、背面側の壁面32とが略同一平面となるように構成されているが、導管12は、背面側の壁面32から突出するように構成されていてもよい。また、空調装置1の背面側において、壁面32と導管12との間に隙間がないことが好適である。背面側から高湿度の気化用空気が流出しないことが好適だからである。
【0026】
図3で示されるように、壁面32で囲われた空間内部において、各導管12は、導管12を保持する帯状のバンド部材13と、バンド部材13を上下方向に支持する複数の支持部材14とによって支持されている。最も下側の支持部材14の下端は、底面である壁面32の内面に固定されており、最も上側の支持部材14の上端は、上面である壁面32の内面に固定されている。このようにして、複数の導管12が、壁面32によって囲われた空間内において固定されている。なお、バンド部材13は、支持部材14によって左右方向にも支持されてもよい。また、複数の導管12の流出口16側と背面側の壁面32とは、例えば、溶接や接着等によって固定されていてもよい。また、図3で示される、1以上の導管12を支持する構成は一例であり、他の構成によって1以上の導管12が支持されてもよい。
【0027】
空調装置1の背面側において、気化用流路31は上方に延びており、その上端に流出口36が形成されている。したがって、気化用空気は、破線の矢印で示されるように流れることになり、壁面32で囲われた空間において、また、流出口36からの流出後において、空調用空気と気化用空気とは互いに混じり合わないようにされている。空調用空気と気化用空気とが混じり合わないようにするため、気化用空気の流出口36は、さらに上方に延びていてもよい。また、空調用流路11と気化用流路31とは、互いに連通していないことが好適である。湿度の高い空気を空調用流路11や、空調用空気が供給される空調空間に流さないようにするためである。また、流出後の気化用空気が空調空間に流れないようにするため、例えば、気化用空気の流出口36は、排気のための吸気口などに接続されていてもよい。
【0028】
なお、気化用空気は、上方以外の方向に流出されてもよい。通常、流出される気化用空気の湿度は高くなっており、その結果として、重くなっている。したがって、その観点からは、気化用空気は、下方側に流出されることが好適である。一方、空調装置1が地下鉄で利用される場合には、通常、地下鉄においては上方に排気のための吸気口が設けられているため、その吸気口に向けて気化用空気が流出されることが好適である。したがって、空調装置1が地下鉄で利用される場合には、気化用空気が上方に流出されることが好適である。
【0029】
また、空調用空気と気化用空気が混じり合わないようになっているのであれば、両空気の流出方向は問わない。例えば、空調用空気が上方側に流出され、気化用空気が空調装置1の背面側から流出されてもよい。
【0030】
気化用流路31の流入口35の下端側が板状部材42によって仕切られることによって、貯留槽41が形成されている。すなわち、貯留槽41は、板状部材42と、壁面32の一部とによって形成されている。貯留槽41には、吸水材21に供給される湧水等の水が貯留される。なお、貯留槽41の水は、吸水材21で気化することによって減るため、貯留槽41が溢れないように、また、吸水材21に供給される水が不足しないように、適宜、貯留槽41に供給されることが好適である。そのため、例えば、貯留槽41の水が一定量や、一定の範囲となるように、貯留槽41に水を供給するポンプ等が制御されてもよい。また、吸水材21が貯留槽41の水を吸い上げる場合には、吸水材21の下端側は、貯留槽41の水に接触していることが好適である。
【0031】
貯留槽41の貯留水において、レジオネラ等の雑菌が繁殖する可能性がある場合には、塩素などの殺菌剤が貯留水に投入されてもよい。また、貯留水が湧水である場合には、貯留水に空気が供給されてもよい。その空気の供給は、貯留水に空気が触れることによって自然に行われてもよく、または、エアーポンプなどによってバブリングを行うことによって強制的に行われてもよい。通常、湧水には金属イオンが多く含まれるため、湧水に空気が供給されることによって金属イオンが酸化され、貯留水が酸性になる。その結果、貯留水に存在する雑菌が死滅することになる。
【0032】
なお、本実施の形態では、貯留槽41が気化用流路31の下部に気化用流路31と一体的に設けられる場合について説明したが、貯留槽41は、別の位置に設けられてもよく、また、気化用流路31とは別に設けられてもよい。貯留槽41は、例えば、気化用流路31の上方側に設けられてもよい。この場合には、貯留槽41の水が、上方から吸水材21に供給されてもよい。また、貯留槽41は、例えば、壁面32で囲われた空間の外部に設けられてもよい。この場合には、貯留槽41の水が、別途設けられた流路を介して吸水材21に供給されてもよい。
【0033】
また、空調用流路11を形成する導管12の個数や断面形状は問わない。図4A図4Dは、導管12のバリエーションについて説明するための空調装置1の正面図である。例えば、空調用流路11は、図4A図4B図4Dで示されるように6個の導管12によって形成されてもよく、図4Cで示されるように5個の導管12によって形成されてもよく、その他の個数の導管12によって形成されてもよい。また、導管12の長手方向に直交する平面における断面形状は、例えば、図1図4Aで示されるように円形状であってもよく、図4Bで示されるように正方形状であってもよく、図4C図4Dで示されるように矩形状であってもよく、その他の形状であってもよい。導管12の断面形状が矩形状である場合に、矩形の長辺が上下方向(鉛直方向)となるように複数の導管12が配置されてもよく(図4C)、または、矩形の長辺が水平方向(左右方向)となるように複数の導管12が配置されてもよい(図4D)。なお、図1図4A図4Bのように、断面形状が円形状や正方形状の複数の導管12によって空調用流路11が形成される場合には、その導管12の断面形状における直径や一辺は、5センチメートルから10センチメートルまでなどのように小さくてもよく、または、それ以上の大きさであってもよい。直径や一辺の小さい導管12を多数用いることによって、空調用流路11と気化用流路31との境界の面積をより大きくすることができ、より大きい冷却効果を得ることができる。
【0034】
図4A図4Dでは、説明の便宜上、導管12の支持構造や吸水材21を省略しているが、例えば、図4A図4Bで示される空調装置1においては、左側の3個の導管12と、右側の3個の導管12とにそれぞれ、1個の吸水材21が設けられていてもよい。また、図4Cで示される空調装置1においては、各導管12に1個の吸水材21が設けられてもよく、各導管12の垂直方向の面ごとに1個の吸水材12が設けられてもよい。また、図4Dで示される空調装置1においては、複数の導管12に1個の吸水材21が設けられてもよい。いずれの場合であっても、吸水材21の下端側は、貯留槽41に貯留されている水に接するようになっていることが好適である。
【0035】
また、本実施の形態では、空調用流路11の少なくとも一部が、壁面32で囲われた空間に存在する場合について説明したが、そうでなくてもよい。空調用流路11と気化用流路31は、図5図6で示される空調装置1のように、周囲を壁面32で囲われた流路として、隣接して設けられてもよい。なお、図5は、空調装置1を正面側から見た斜視図であり、図6は、空調装置1の背面図である。図5図6で示される空調装置1では、空調用流路11も、周囲を壁面32で囲われた流路として形成されている。また、空調用流路11と気化用流路31とを仕切る壁面32の上面(すなわち、気化用流路31側)に、吸水材21が設けられている。したがって、両流路11,31を仕切る壁面32は、熱伝導率の高い材料(例えば、上記した金属や、熱伝導率の高い合成樹脂など)で構成されることが好適である。また、この場合には、気化用流路31とは別に設けられている貯留槽41から吸水材21に水が供給されてもよく、空調装置1は、貯留槽41を有していなくてもよい。このように、図5図6で示される空調装置1によっても、気化熱を利用した空調用空気の冷却を行うことは可能であるが、空調用流路11のうち、一面のみにおいてしか冷却を行うことができない。したがって、図1等で示される空調装置1の方が、より効率的に空調用空気を冷却できるという観点から好適である。また、冷却効率を高めるため、図5図6で示されるものと同様の空調装置1において、上下方向に、または、水平方向に、空調用流路11と気化用流路31とを交互に設けるようにしてもよい。すなわち、空調用流路11と気化用流路31とは、隔壁によって互いに隔てられ、交互に配列されており、隔壁の気化用流路31の面に、吸水材21が設けられていてもよい。隔壁は、熱伝導率の高い材料で構成されることが好適である。隔壁が矩形状である場合に、隔壁間の距離よりも、矩形状である隔壁の短辺の距離の方が十分長いことが好適である。このようにすることで、上下方向の隔壁、または、水平方向の隔壁で気化熱を利用した冷却を行うことができ、冷却効率をより高めることができるようになる。
【0036】
次に、本実施の形態による空調装置1の冷却機構について簡単に説明する。空調用流路11の外周面に設けられた吸水材21に水が供給されているものとする。すると、空調用流路11の流入口15、及び気化用流路31の流入口35から外気が流入した場合に、気化用流路31において、吸水材21の水が気化用空気によって気化され、吸水材21が気化熱によって冷却されることになる。その結果、空調用流路11を通過する空調用空気から気化用流路31側に熱が奪われることになり、空調用空気が冷却される。そのようにして冷却された空調用空気が流出口16から流出することによって、空調空間が冷房されることになる。一方、吸水材21の水が気化した水蒸気を含む湿度の高い気化用空気は、流出口36から排出されるため、空調空間には流入しないことになる。そのため、空調空間の湿度の上昇を回避することができる。本実施の形態による空調装置1を利用することにより、冷房が必要となる気温の高い時期に、冷却された湿度の低い快適な空気を空調空間に提供することができるようになる。
【0037】
次に、本実施の形態による空調装置1の使用方法について、具体例を用いて説明する。ここでは、地下鉄の列車風を用いて空気を冷却する場合について説明する。図7は、地下鉄の駅の一部を示す平面模式図である。列車が図中の白抜き矢印の向きに駅に進入する場合には、図中の列車風の矢印で示される方向に列車風が生じることになる。なお、図7において、空調用流路11及び気化用流路31の流入口15,35が、列車風の上流側(すなわち、図中の上側)に向けられて、空調装置1が設置されているものとする。そのため、空調用流路11及び気化用流路31には流入口15,35から列車風が流入することになり、空調用流路11の流出口16から、図中の空調用空気の矢印で示される方向に、冷却された空調用空気が排出されることになる。また、図7では図示していないが、気化用空気は、駅の上方側に排出され、吸気口を介して駅の外部に排出されるものとする。その結果、駅のプラットホームには冷却された空調用空気のみが供給されることになり、プラットホームで列車を待っている乗客の快適性を高めることができるようになる。また、列車風を用いているため、空調用空気や気化用空気を流通させるファンなどを用いる必要がなく、省エネルギーの空調を実現することができる。なお、空調装置1は、地下鉄以外の駅で利用されてもよい。例えば、地上のプラットホームの待合室に空調用空気が排出されるようにすることによって、列車風を利用した待合室の冷房を行うこともできる。
【0038】
なお、ここでは、列車風を用いて空調が行われる場合について説明したが、そうでなくてもよい。列車風以外の自然発生的に生じた風を用いて、空調が行われてもよい。また、そのような風がない場合には、ファンなどを動作させることによって、空調用空気と気化用空気が流れるようにしてもよい。その場合でも、空調用流路11の流入口15と気化用流路31の流入口35との両方が、同一方向を向いていることにより、例えば、1個のファンで両流路11,31に空気を供給できることになる。例えば、ビルや地下街などにおいて、外気を導入するためのファンがある場合には、そのファンによる気流が両流入口15,35から両流路11,31に流入するように、空調装置1が配置されてもよい。
【0039】
以上のように、本実施の形態による空調装置1によれば、気化熱を利用して空調用空気を冷却することができるため、省エネルギーで空調を行うことができるようになる。また、空調用空気と気化用空気とが混じり合わないようにすることによって、空調用空気の湿度の上昇を回避でき、快適な空調用空気を提供することができる。また、流入口15,35が同一方向を向いていることによって、各流入口15,35を所定の気流の上流側に向けた場合には、両流路11,31にそれぞれ空気を流通させることができるようになる。また、空調用流路11を形成する複数の導管12の少なくとも一部が壁面32で囲われた空間に存在するようにすることによって、空調用流路11と気化用流路31との境界面積を増やすことができ、効率的に空調用空気を冷却することができるようになる。また、空調用流路11と気化用流路31とに列車風が供給されるように空調装置1を配置することによって、空調用空気や気化用空気を供給するためにファンなどを用いなくてもよいことになり、より省エネルギーにすることができる。特に、マンション、ビル、地下鉄、地下通路等の建築工事により湧水が発生する場合には、その湧水を利用して、冷房が必要なときに空調装置1による冷房空調を行うことができる。
【0040】
なお、本実施の形態では、空調装置1が貯留槽41を有する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。河川水や海水などの水がポンプによって吸水材21に直接供給される場合などには、空調装置1は、貯留槽41を備えていなくてもよい。
【0041】
また、本実施の形態では、気化用流路31が壁面で囲われた流路である場合について説明したが、そうでなくてもよい。気化用流路31も、導管によって形成されてもよい。その場合には、例えば、気化用流路31を形成している導管の直径は、空調用流路11を形成している導管の直径よりも大きくてもよい。
【0042】
また、本実施の形態において、吸水材21に湧水が供給される場合には、湧水の温度ができるだけ低くなっていることが好適である。そのため、例えば、本実施の形態による空調装置1が利用されない時期、すなわち気温の低い時期に、夜間の低温の外気を利用することによって、湧水が貯留されている湧水槽を冷却してもよい。そのようにすることで、本実施の形態による空調装置1が利用される時期、すなわち気温の高い時期に、より低温の湧水を用いることができるようになる。
【0043】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上より、本発明による空調装置によれば、気化熱を利用して空気を冷却する場合において、冷却対象の空気の湿度を上げないようにすることができるという効果が得られ、冷房を行う空調装置として有用である。
【符号の説明】
【0045】
1 空調装置
11 空調用流路
12 導管
15、35 流入口
16、36 流出口
21 吸水材
31 気化用流路
32 壁面
41 貯留槽
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7