(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】横筋配筋装置
(51)【国際特許分類】
E04G 21/12 20060101AFI20240724BHJP
E04C 5/16 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
E04G21/12 105D
E04C5/16
(21)【出願番号】P 2019220027
(22)【出願日】2019-12-05
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2018234482
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141864
【氏名又は名称】株式会社京都スペーサー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】坂口 伸宏
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-115649(JP,A)
【文献】特開昭60-065869(JP,A)
【文献】特許第6274596(JP,B1)
【文献】特開2002-309716(JP,A)
【文献】特開2008-138359(JP,A)
【文献】実開昭58-053776(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04C 5/16
B66C 1/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横方向に並べて立設した縦方向へ延びる複数の縦筋に対し、横方向へ延びる複数の横筋を前記各縦筋との交差部において結束する際に、前記各横筋が前記各縦筋に対し位置決めした状態で配筋されるようにした横筋配筋装置であって、
前記各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げられた状態で縦方向へ延びる複数の支持部材と、
前記各支持部材の縦方向に等間隔置きに設けられ、前記各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具と、
を備え、
前記各位置決め治具は、
前記各支持部材に対し前記各横筋を仮保持する仮保持部と、
前記仮保持部を前記各横筋が前記各縦筋との交差部に位置付けられるように位置決めする位置決め手段と、
を具備しており、
前記仮保持部は、
前記横筋を挿通可能に開口する略U字状又は略コ字状の仮保持部本体と、
前記横筋を挿通させた状態で前記仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材と、
を備えていて、
前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の両端間に掛け渡して開口を塞いだ状態で前記各横筋の仮保持が行われるようにしている一方、前記仮保持部本体の開口を人為的な動作により開放させた状態で前記各横筋の離脱が行われるようにして
おり、
前記掛け渡し部材としては、前記仮保持部本体の一側端となる挿通方向上流側から挿通される蝶ボルトが適用されているとともに、
前記仮保持部本体の他側端となる挿通方向下流側には、前記蝶ボルトを螺着するボルト挿通孔又はナット部材が設けられており、
前記蝶ボルトは、前記ボルト挿通孔又はナット部材に対する螺着により前記仮保持部本体の開口を塞ぐようにしている一方、前記ボルト挿通孔又はナット部材に対する螺着を解除して前記仮保持部本体の挿通方向上流側から離脱させるといった人為的な動作により仮保持部本体の開口を開放させるようにしていることを特徴とする横筋配筋装置。
【請求項2】
横方向に並べて立設した縦方向へ延びる複数の縦筋に対し、横方向へ延びる複数の横筋を前記各縦筋との交差部において結束する際に、前記各横筋が前記各縦筋に対し位置決めした状態で配筋されるようにした横筋配筋装置であって、
前記各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げられた状態で縦方向へ延びる複数の支持部材と、
前記各支持部材の縦方向に等間隔置きに設けられ、前記各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具と、
を備え、
前記各位置決め治具は、
前記各支持部材に対し前記各横筋を仮保持する仮保持部と、
前記仮保持部を前記各横筋が前記各縦筋との交差部に位置付けられるように位置決めする位置決め手段と、
を具備しており、
前記仮保持部は、
前記横筋を挿通可能に開口する略U字状又は略コ字状の仮保持部本体と、
前記横筋を挿通させた状態で前記仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材と、
を備えていて、
前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の両端間に掛け渡して開口を塞いだ状態で前記各横筋の仮保持が行われるようにしている一方、前記仮保持部本体の開口を人為的な動作により開放させた状態で前記各横筋の離脱が行われるようにしており、
前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の一側端に凹設されたねじ穴に螺着されたボルト部材を介して長手方向一端が当該ボルト部材の軸回りに回転自在に支持され、前記仮保持部本体の他側端に設けられた凹部に対しその仮保持部本体の両端間の開口を塞ぐように長手方向他端が係止されているとともに、
前記掛け渡し部材の長手方向中途部に設けられたねじ孔には、前記仮保持部本体に挿通された前記横筋に対し当接するまで締め込まれる螺子部材が螺着されていて、
前記掛け渡し部材は、その長手方向他端を前記仮保持部本体の凹部に係止した状態で前記横筋に当接するまで前記ねじ孔に対して締め込む前記螺子部材の螺着により前記仮保持部本体の開口を塞ぐようにしている一方、前記螺子部材の前記横筋に対する締め込みを緩めた状態で前記ボルト部材の軸回りに回転させるといった人為的な動作により前記仮保持部本体の開口を開放させるようにしていることを特徴とする横筋配筋装置。
【請求項3】
横方向に並べて立設した縦方向へ延びる複数の縦筋に対し、横方向へ延びる複数の横筋を前記各縦筋との交差部において結束する際に、前記各横筋が前記各縦筋に対し位置決めした状態で配筋されるようにした横筋配筋装置であって、
前記各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げられた状態で縦方向へ延びる複数の支持部材と、
前記各支持部材の縦方向に等間隔置きに設けられ、前記各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具と、
を備え、
前記各位置決め治具は、
前記各支持部材に対し前記各横筋を仮保持する仮保持部と、
前記仮保持部を前記各横筋が前記各縦筋との交差部に位置付けられるように位置決めする位置決め手段と、
を具備しており、
前記仮保持部は、
前記横筋を挿通可能に開口する略U字状又は略コ字状の仮保持部本体と、
前記横筋を挿通させた状態で前記仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材と、
を備えていて、
前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の両端間に掛け渡して開口を塞いだ状態で前記各横筋の仮保持が行われるようにしている一方、前記仮保持部本体の開口を人為的な動作により開放させた状態で前記各横筋の離脱が行われるようにしており、
前記位置決め手段は、
前記仮保持部本体の一側片部に対し前記支持部材を挟んで対峙する位置決め部材と、
前記吊上げ装置により前記支持部材を吊上げた際に前記仮保持部本体を前記支持部材に対する前記位置決め部材を介した螺着により移動不能に位置決めする螺着手段と、
を備えているとともに、
前記仮保持部は、
前記位置決め部材に設けられた左右方向に長い一対の長孔と、
前記位置決め部材の各長孔と対面する前記仮保持部本体の一側片部に設けられた左右方向に長い一対の長孔と、
前記仮保持部本体の一側片部と対面する他側端側に設けられた左右方向に長い一対の長孔と、
を備えており、
前記掛け渡し部材は、略ヘアピン状に形成された左右一対の脚部の基端同士がひと巻き巻回された巻回部に連結されて当該両脚部を左右方向外側へ開かせる方向に付勢され、かつ前記仮保持部本体の開口を塞ぐように当該仮保持部本体の一側端側から他側端に向かって掛け渡されていて、当該掛け渡し部材の付勢力に抗して閉じ側に手で変形させた前記両脚部を前記位置決め部材の各長孔から前記仮保持部本体の一側片部の各長孔及び他側端側の各長孔に挿通させた状態で手による変形を解除して前記各長孔の裏側縁部に係止させることにより前記仮保持部本体の開口を塞ぐようにしている一方、前記両脚部を付勢力に抗して閉じ側に手で変形させた状態で前記位置決め部材及び前記仮保持部本体の各長孔から離脱させて当該各長孔との係止を解除するといった人為的な動作により前記仮保持部本体の開口を開放させるようにしていることを特徴とする横筋配筋装置。
【請求項4】
横方向に並べて立設した縦方向へ延びる複数の縦筋に対し、横方向へ延びる複数の横筋を前記各縦筋との交差部において結束する際に、前記各横筋が前記各縦筋に対し位置決めした状態で配筋されるようにした横筋配筋装置であって、
前記各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げられた状態で縦方向へ延びる複数の支持部材と、
前記各支持部材の縦方向に等間隔置きに設けられ、前記各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具と、
を備え、
前記各位置決め治具は、
前記各支持部材に対し前記各横筋を仮保持する仮保持部と、
前記仮保持部を前記各横筋が前記各縦筋との交差部に位置付けられるように位置決めする位置決め手段と、
を具備しており、
前記仮保持部は、
前記横筋を挿通可能に開口する略U字状又は略コ字状の仮保持部本体と、
前記横筋を挿通させた状態で前記仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材と、
を備えていて、
前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の両端間に掛け渡して開口を塞いだ状態で前記各横筋の仮保持が行われるようにしている一方、前記仮保持部本体の開口を人為的な動作により開放させた状態で前記各横筋の離脱が行われるようにしており、
前記仮保持部本体は、
両端に雄螺子が形成された一本の長尺な丸鋼の中央部を前記仮保持部の他側端側において前記各横筋に沿って左右方向に延ばした左右方向延長部を有し、かつこの左右方向延長部の左右両端が前記横筋を挿通可能に開口するように前記仮保持部の一側端側に向かってそれぞれ略U字状に屈曲して互いの両端側を前記各支持部材に沿って上方へ延ばすように形成されているとともに、
前記掛け渡し部材としては、先端の雄螺子にナットが螺着され、かつ前記仮保持部本体の開口を塞ぐように当該仮保持部本体の一側端側から他側端の左右方向延長部に向かって掛け渡される長尺なボルト部材が適用されており、
前記位置決め手段は、
前記仮保持部本体の両端の雄螺子を下方から挿通して螺着し、前記仮保持部の一側端側において前記ボルト部材が抜け落ちないように挿通される長孔を有する位置決め部材と、
前記仮保持部本体を前記支持部材に対し前記位置決め部材を介してそれぞれ等間隔置きに螺着する螺着手段と、
を備えていて、
前記ボルト部材は、その頭部を前記仮保持部の一側端側における前記位置決め部材の長孔から前記仮保持部の他側端における左右方向延長部に挿通させて係止することによって前記仮保持部本体の開口を塞ぐようにしている一方、前記左右方向延長部から頭部を離脱させて当該左右方向延長部との係止を解除させた状態で前記位置決め部材の長孔まで移動させるといった人為的な動作により前記仮保持部本体の開口を開放させるようにしていることを特徴とする横筋配筋装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横方向に並設された縦方向へ延びる複数の縦筋に対し横方向へ延びる複数の横筋を互いの交差部において結束する際に各横筋を位置決めした状態で配筋するようにした横筋配筋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、土木、建設現場などにあっては、複数本の鉄筋をクレーンなどによりまとめて搬入し、複数の作業員が多層階足場を昇降して鉄筋を1本ずつ縦及び横方向にそれぞれ配筋し、縦方向へ延びる複数の縦筋と横方向へ延びる複数の横筋とを互いの交差部において結束するようにしている。
【0003】
ところで、複数の作業員が多層階足場を昇降して1本ずつ縦及び横方向にそれぞれ配筋した複数の縦筋と複数の横筋とを互いの交差部において結束する作業は、各縦筋と各横筋との互いの配筋方向が直交している上、これらの鉄筋自体が重いものであることから、各縦筋と各横筋とを互いの交差部において結束する際に位置決めするのが非常に難しいものとなる。
【0004】
そこで、鉄筋を把持装置で把持して縦方向及び横方向に配筋する鉄筋ハンドリング装置を用いて、縦筋及び横筋を配筋方向にかかわらず自在に配筋し、互いの交差部において結束する際の位置決めも簡単に行えるようにしたものが従来より知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記従来のものにおいても、単一の鉄筋ハンドリング装置では、縦筋及び横筋を一本ずつしか配筋できないため、例えば、横方向へ並べて立設した各縦筋に対し横筋を縦方向に並べた状態で配筋する場合においても、各縦筋に対し横筋を一本ずつしか配筋できず、当該横筋を配筋して結束を終えてからでないと、次の横筋を配筋することができない。このため、一本ずつしか配筋できない横筋を複数の縦筋との交差部において結束を終えるまでの間、次の横筋の配筋を待機しなければならず、作業効率が非常に悪いものとなる。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、横方向に並設した複数の縦筋に対し横筋が各縦筋との交差部にそれぞれ位置決めされた状態でまとめて配筋できるようにして、交差部において結束する際の作業効率の向上を図ることができる横筋配筋装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明では、横方向に並べて立設した縦方向へ延びる複数の縦筋に対し、横方向へ延びる複数の横筋を前記各縦筋との交差部において結束する際に、前記各横筋が前記各縦筋に対し位置決めした状態で配筋されるようにした横筋配筋装置を前提とする。そして、前記各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げられた状態で縦方向へ延びる複数の支持部材と、前記各支持部材の縦方向に等間隔置きに設けられ、前記各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具と、を備える。また、前記各位置決め治具に、前記各支持部材に対し前記各横筋を仮保持する仮保持部と、前記仮保持部を前記各横筋が前記各縦筋との交差部に位置付けられるように位置決めする位置決め手段と、を具備する。更に、前記仮保持部に、前記横筋を挿通可能に開口する略U字状又は略コ字状の仮保持部本体と、前記横筋を挿通させた状態で前記仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材と、を備える。そして、前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の両端間に掛け渡して開口を塞いだ状態で前記各横筋の仮保持を行わせるようにしている一方、前記仮保持部本体の開口を人為的な動作により開放させた状態で前記各横筋の離脱を行わせるようにしている。また、前記掛け渡し部材として、前記仮保持部本体の一側端となる挿通方向上流側から挿通される蝶ボルトを適用するとともに、前記仮保持部本体の他側端となる挿通方向下流側に、前記蝶ボルトを螺着するボルト挿通孔又はナット部材を設ける。そして、前記蝶ボルトは、前記ボルト挿通孔又はナット部材に対する螺着により前記仮保持部本体の開口を塞ぐようにしている一方、前記ボルト挿通孔又はナット部材に対する螺着を解除して前記仮保持部本体の挿通方向上流側から離脱させるといった人為的な動作により仮保持部本体の開口を開放させるようにしていることを特徴としている。
【0009】
これに対し、前記目的を達成するため、本発明では、横方向に並べて立設した縦方向へ延びる複数の縦筋に対し、横方向へ延びる複数の横筋を前記各縦筋との交差部において結束する際に、前記各横筋が前記各縦筋に対し位置決めした状態で配筋されるようにした横筋配筋装置を同様に前提とし、前記各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げられた状態で縦方向へ延びる複数の支持部材と、前記各支持部材の縦方向に等間隔置きに設けられ、前記各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具と、を備える。また、前記各位置決め治具に、前記各支持部材に対し前記各横筋を仮保持する仮保持部と、前記仮保持部を前記各横筋が前記各縦筋との交差部に位置付けられるように位置決めする位置決め手段と、を具備している。更に、前記仮保持部に、前記横筋を挿通可能に開口する略U字状又は略コ字状の仮保持部本体と、前記横筋を挿通させた状態で前記仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材と、を備える。そして、前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の両端間に掛け渡して開口を塞いだ状態で前記各横筋の仮保持を行わせるようにしている一方、前記仮保持部本体の開口を人為的な動作により開放させた状態で前記各横筋の離脱を行わせるようにしている。また、前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の一側端に凹設されたねじ穴に螺着されたボルト部材を介して長手方向一端を当該ボルト部材の軸回りに回転自在に支持し、前記仮保持部本体の他側端に設けられた凹部に対しその仮保持部本体の両端間の開口を塞ぐように長手方向他端を係止している。更に、前記掛け渡し部材の長手方向中途部に設けられたねじ孔に、前記仮保持部本体に挿通された前記横筋に対し当接するまで締め込まれる螺子部材を螺着している。そして、前記掛け渡し部材は、その長手方向他端を前記仮保持部本体の凹部に係止した状態で前記横筋に当接するまで前記ねじ孔に対して締め込む前記螺子部材の螺着により前記仮保持部本体の開口を塞ぐようにしている一方、前記螺子部材の前記横筋に対する締め込みを緩めた状態で前記ボルト部材の軸回りに回転させるといった人為的な動作により前記仮保持部本体の開口を開放させるようにしていることを特徴としている。
【0010】
また、前記目的を達成するため、本発明では、横方向に並べて立設した縦方向へ延びる複数の縦筋に対し、横方向へ延びる複数の横筋を前記各縦筋との交差部において結束する際に、前記各横筋が前記各縦筋に対し位置決めした状態で配筋されるようにした横筋配筋装置を同様に前提とし、前記各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げられた状態で縦方向へ延びる複数の支持部材と、前記各支持部材の縦方向に等間隔置きに設けられ、前記各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具と、を備える。また、前記各位置決め治具に、前記各支持部材に対し前記各横筋を仮保持する仮保持部と、前記仮保持部を前記各横筋が前記各縦筋との交差部に位置付けられるように位置決めする位置決め手段と、を具備している。更に、前記仮保持部に、前記横筋を挿通可能に開口する略U字状又は略コ字状の仮保持部本体と、前記横筋を挿通させた状態で前記仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材と、を備える。そして、前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の両端間に掛け渡して開口を塞いだ状態で前記各横筋の仮保持を行わせるようにしている一方、前記仮保持部本体の開口を人為的な動作により開放させた状態で前記各横筋の離脱を行わせるようにしている。また、前記位置決め手段に、前記仮保持部本体の一側片部に対し前記支持部材を挟んで対峙する位置決め部材と、前記吊上げ装置により前記支持部材を吊上げた際に前記仮保持部本体を前記支持部材に対する前記位置決め部材を介した螺着により移動不能に位置決めする螺着手段と、を備える。更に、前記仮保持部に、前記位置決め部材に設けられた左右方向に長い一対の長孔と、前記位置決め部材の各長孔と対面する前記仮保持部本体の一側片部に設けられた左右方向に長い一対の長孔と、前記仮保持部本体の一側片部と対面する他側端側に設けられた左右方向に長い一対の長孔と、を備える。そして、前記掛け渡し部材は、略ヘアピン状に形成された左右一対の脚部の基端同士がひと巻き巻回された巻回部に連結されて当該両脚部を左右方向外側へ開かせる方向に付勢され、かつ前記仮保持部本体の開口を塞ぐように当該仮保持部本体の一側端側から他側端に向かって掛け渡されていて、当該掛け渡し部材の付勢力に抗して閉じ側に手で変形させた前記両脚部を前記位置決め部材の各長孔から前記仮保持部本体の一側片部の各長孔及び他側端側の各長孔に挿通させた状態で手による変形を解除して前記各長孔の裏側縁部に係止させることにより前記仮保持部本体の開口を塞ぐようにしている一方、前記両脚部を付勢力に抗して閉じ側に手で変形させた状態で前記位置決め部材及び前記仮保持部本体の各長孔から離脱させて当該各長孔との係止を解除するといった人為的な動作により前記仮保持部本体の開口を開放させるようにしていることを特徴としている。
【0011】
一方、前記目的を達成するため、本発明では、横方向に並べて立設した縦方向へ延びる複数の縦筋に対し、横方向へ延びる複数の横筋を前記各縦筋との交差部において結束する際に、前記各横筋が前記各縦筋に対し位置決めした状態で配筋されるようにした横筋配筋装置を同様に前提とし、前記各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げられた状態で縦方向へ延びる複数の支持部材と、前記各支持部材の縦方向に等間隔置きに設けられ、前記各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具と、を備える。また、前記各位置決め治具に、前記各支持部材に対し前記各横筋を仮保持する仮保持部と、前記仮保持部を前記各横筋が前記各縦筋との交差部に位置付けられるように位置決めする位置決め手段と、を具備している。更に、前記仮保持部に、前記横筋を挿通可能に開口する略U字状又は略コ字状の仮保持部本体と、前記横筋を挿通させた状態で前記仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材と、を備える。そして、前記掛け渡し部材は、前記仮保持部本体の両端間に掛け渡して開口を塞いだ状態で前記各横筋の仮保持を行わせるようにしている一方、前記仮保持部本体の開口を人為的な動作により開放させた状態で前記各横筋の離脱を行わせるようにしている。また、前記仮保持部本体は、両端に雄螺子が形成された一本の長尺な丸鋼の中央部を前記仮保持部の他側端側において前記各横筋に沿って左右方向に延ばした左右方向延長部を有し、かつこの左右方向延長部の左右両端が前記横筋を挿通可能に開口するように前記仮保持部の一側端側に向かってそれぞれ略U字状に屈曲して互いの両端側を前記各支持部材に沿って上方へ延ばすように形成している。また、前記掛け渡し部材として、先端の雄螺子にナットが螺着され、かつ前記仮保持部本体の開口を塞ぐように当該仮保持部本体の一側端側から他側端の左右方向延長部に向かって掛け渡される長尺なボルト部材を適用している。更に、前記位置決め手段に、前記仮保持部本体の両端の雄螺子を下方から挿通して螺着し、前記仮保持部の一側端側において前記ボルト部材が抜け落ちないように挿通される長孔を有する位置決め部材と、前記仮保持部本体を前記支持部材に対し前記位置決め部材を介してそれぞれ等間隔置きに螺着する螺着手段と、を備えている。そして、前記ボルト部材は、その頭部を前記仮保持部の一側端側における前記位置決め部材の長孔から前記仮保持部の他側端における左右方向延長部に挿通させて係止することによって前記仮保持部本体の開口を塞ぐようにしている一方、前記左右方向延長部から頭部を離脱させて当該左右方向延長部との係止を解除させた状態で前記位置決め部材の長孔まで移動させるといった人為的な動作により前記仮保持部本体の開口を開放させるようにしていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上、要するに、横方向に並べて立設した各縦筋のうちの横方向に数本飛ばした縦筋同士の間を吊上げ装置により吊上げた縦方向へ延びる複数の支持部材の縦方向に、各横筋を配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具を等間隔置きにそれぞれ設けることで、各支持部材上で各横筋を仮保持する仮保持部を位置決め手段により各横筋が各縦筋との交差部に位置付けられるように各位置決め治具毎に位置決めしている。これにより、横方向に並べた各縦筋に対し複数の横筋が交差部に同時に位置付けられた状態で配筋されることになり、各縦筋の交差部に対する各横筋の結束を一挙に行えて作業効率を飛躍的に向上させることができる。
【0013】
また、各横筋を挿通させた状態の仮保持部本体の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡し部材を掛け渡すことで、掛け渡し部材の脱着により各仮保持部での横筋の仮保持及び仮保持解除を簡単に行うことができる。
【0014】
更に、各支持部材にそれぞれ等間隔置きに設置した係止具に対しその各支持部材を挿通可能に開口する仮保持部の挿通孔部の周縁部を当接させて仮保持部を下方へ移動不能に位置決めすることで、吊上げ装置により吊上げた各支持部材に対し仮保持部を簡単に位置決めすることができ、シンプルな構成で各横筋を各縦筋との交差部に確実に位置付けることができる。
【0015】
また、仮保持部本体を支持部材に対しそれぞれ等間隔置きに螺着する螺着手段を位置決め手段に設けることで、吊上げ装置により吊上げた各支持部材に対し仮保持部を簡単に位置決めすることができるのはもちろんのこと、各横筋の間隔の変更にも容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る横筋配筋装置の複数の位置決め治具により各横筋をそれぞれ仮保持した状態を示す背面図である。
【
図2】
図1の横筋配筋装置を左側方から見た左側面図である。
【
図3】
図1の横筋配筋装置における位置決め治具の斜視図である。
【
図4】
図3の位置決め治具を右側方から見た右側面図である。
【
図5】
図4の位置決め治具を背面側から見た背面図である。
【
図6】
図4の位置決め治具を上方から見た平面図である。
【
図7】
図1の横筋配筋装置により各縦筋との交差部に位置決めした各横筋を結束した状態を示す正面図である。
【
図8】
図7の横筋配筋装置の位置決め治具を拡大した拡大図である。
【
図9】
図7の横筋配筋装置を右側方から見た右側面図である。
【
図10】
図9の横筋配筋装置の位置決め治具を拡大した拡大図である。
【
図11】
図7の横筋配筋装置を上方から見た平面図である。
【
図12】
図7の各位置決め治具の各仮保持部による各横筋の仮保持を解除した状態を示す横筋配筋装置の正面図である。
【
図13】
図12の横筋配筋装置を右側方から見た右側面図である。
【
図14】
図13の横筋配筋装置の位置決め治具を拡大した拡大図である。
【
図15】
図11の各位置決め治具の仮保持部による横筋の仮保持を解除した状態で横筋配筋装置を右側方から見た右側面図である。
【
図17】
図16の横筋配筋装置の位置決め治具を拡大して右側方から見た拡大図である。
【
図18】
図16の各位置決め治具の仮保持部に開口を介して各横筋を挿通した状態を示す横筋配筋装置の斜視図である。
【
図19】
図16の仮保持部に横筋を仮保持するまでの手順を左側方から見た位置決め治具の拡大図であって、(a)は仮保持部に横筋を挿通する前の状態、(b)は仮保持部に横筋を挿通し終えた状態、(c)は仮保持部に横筋を仮保持した状態をそれぞれ示す説明図である。
【
図20】
図18の各仮保持部により横筋を仮保持した横筋配筋装置を吊上げ途中に左側方から見た左側面図である。
【
図21】
図20の横筋配筋装置を吊上げて半分だけ折り畳んだ状態の左側面図である。
【
図22】
図21の横筋配筋装置を全て折り畳んだ状態の左側面図である。
【
図23】本発明の第2の実施の形態に係る横筋配筋装置の位置決め治具の斜視図である。
【
図24】
図23の位置決め治具を右側方から見た右側面図である。
【
図26】
図23の位置決め治具を背面側から見た背面図である。
【
図27】本発明の第3の実施の形態に係る横筋配筋装置の位置決め治具の斜視図である。
【
図28】
図27の位置決め治具を右側方から見た右側面図である。
【
図30】
図27の位置決め治具を背面側から見た背面図である。
【
図31】本発明の第3の実施の形態の変形例に係る横筋配筋装置の位置決め治具を右側方から見た右側面図である。
【
図33】本発明の第4の実施の形態に係る横筋配筋装置の位置決め治具の斜視図である。
【
図35】
図33の位置決め治具を右側方から見た右側面図である。
【
図36】
図33の位置決め治具の仮保持部本体を右側方から見た右側面図である。
【
図37】
図36の仮保持部本体を背面側から見た背面図である。
【
図38】
図33の位置決め治具の位置決め部材を背面側から見た背面図である。
【
図40】本発明の第5の実施の形態に係る横筋配筋装置の位置決め治具により横筋を仮保持した状態で右側方から見た右側面図である。
【
図42】
図40の位置決め治具を背面側から見た背面図である。
【
図43】
図33の位置決め治具による横筋の仮保持を解除した状態で右側方から見た右側面図である。
【
図44】
図40の位置決め治具の仮保持部本体の斜視図である。
【
図45】
図40の位置決め治具の位置決め部材の斜視図である。
【
図46】
図40の位置決め治具により横筋を仮保持した状態での斜視図である。
【
図47】
図46の位置決め治具の仮保持部本体に対し先端を挿通していたボルト部材を離脱し始めて仮保持を解除し始めた状態を示す斜視図である。
【
図48】
図47の位置決め治具の仮保持部本体から離脱したボルト部材の先端を上方に持ち上げて仮保持を解除し始めた経過状態を示す斜視図である。
【
図49】
図47の位置決め治具の仮保持部本体から離脱したボルト部材を横筋の上方から位置決め部材側へ収めて仮保持を解除完了した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る横筋配筋装置を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る横筋配筋装置の複数の位置決め治具により各横筋をそれぞれ仮保持した状態を示す背面図、
図2は
図1の横筋配筋装置を左側方から見た左側面図をそれぞれ示している。
【0019】
これらの図において、符号1で示す横筋配筋装置は、クレーンなどの吊上げ装置(図示せず)により吊上げられた状態で縦方向へ延びる支持部材としての2本のワイヤ部材2,2と、各ワイヤ部材2に等間隔置き(例えば150~300mm程度)に設けられ、複数の横筋Y,Y,…(
図1及び
図2では24本)を縦方向に並設した状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具3,3,…(
図1及び
図2では24個)と、を備えている。そして、各ワイヤ部材2は、横方向に長い支持ロッド(図示せず)に間隔を隔てた状態で支持され、吊上げ装置によって吊上げられる。このとき、支持ロッドは、2つの位置決め治具3,3により仮保持する各横筋Yの2個の仮保持箇所間での長さよりも長く設定されている。
【0020】
図3は
図1の横筋配筋装置1における位置決め治具の斜視図、
図4は
図3の位置決め治具3を右側方から見た右側面図をそれぞれ示している。また、
図5は
図4の位置決め治具3を背面側から見た背面図、
図6は
図4の位置決め治具3を上方から見た平面図をそれぞれ示している。
【0021】
図3~
図6に示すように、各位置決め治具3は、各ワイヤ部材2に対し各横筋Yを仮保持する仮保持部31と、この仮保持部31を各横筋Yが各縦筋T(後述する)との交差部Kに位置付けられるように位置決めする位置決め手段4とを備えている。この場合、各横筋Y及び各縦筋Tとしては、D32(公称直径31.8mm、最外径36mm)の異形棒鋼が用いられている。
【0022】
仮保持部31は、横筋Yを挿通可能に開口する略U字状の仮保持部本体32と、横筋Yを挿通させた状態で仮保持部本体32の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材としての蝶ボルト33とを備えている。また、仮保持部本体32の両端にはボルト挿通孔34,35が設けられ、仮保持部本体32の一側端(
図4及び
図6では右側端)となる挿通方向上流側のボルト挿通孔34から挿通された蝶ボルト33が、仮保持部本体32の他側端(
図4及び
図6では左側端)となる挿通方向下流側のボルト挿通孔35に螺着される。このとき、挿通方向上流側のボルト挿通孔34は蝶ボルト33が螺着不能な大径孔に形成され、挿通方向下流側のボルト挿通孔35に対する螺着が解除された状態で挿通方向上流側のボルト挿通孔34から落下する蝶ボルト33は、仮保持部本体32に対しワイヤ36により落下不能に連結されている。
【0023】
ワイヤ36は、その両端が環状の輪部とされ、一側端の一方の輪部が挿通方向上流側のボルト挿通孔34に係止されている。一方、ワイヤ36の他側端の他方の輪部は、蝶ボルト33の軸部に対し連れ回り不能な遊嵌状態で挿通され、蝶ボルト33の基部に螺着されたナット37によって頭部との間で抜け落ち不能に係止されている。
【0024】
位置決め手段4は、各横筋Yの本数に応じて各ワイヤ部材2にそれぞれ等間隔置きに設置された係止具21,21,…と、仮保持部31の仮保持部本体32の他側端に溶着された位置決め筒体41とを備えている。各仮保持部本体32の位置決め筒体41は、各ワイヤ部材2の上下方向で互いに相隣りなる係止具21,21同士の間に位置する各ワイヤ部材2が仮保持部本体62の他側端において挿通可能となるように上下方向に貫通する挿通孔部42を有している。この挿通孔部42は、吊上げ装置によりワイヤ部材2を吊上げた際に各係止具21への周縁部(挿通孔部42の周縁)の当接により仮保持部31を下方へ移動不能に位置決めしている。この場合、係止具21は、各ワイヤ部材2に対し等間隔置き(例えば150mm~300mm)にそれぞれ止着されている。
【0025】
更に、各位置決め治具3は、位置決め筒体41の仮保持部31とは反対側に固着された転倒防止プレート38を備えている。この転倒防止プレート38は、仮保持部31の開口をワイヤ部材2の基側端(ワイヤ部材2の吊上げ状態では上側)に向けた状態で、設置面に対し各位置決め治具3をそれぞれ個々に起立状態に保持するようにしている。
【0026】
図7は
図1の横筋配筋装置1により各縦筋との交差部Kに位置決めした各横筋Yを結束した状態を示す正面図、
図8は
図7の横筋配筋装置1の位置決め治具3を拡大した拡大図をそれぞれ示している。また、
図9は
図7の横筋配筋装置1を右側方から見た右側面図、
図10は
図9の横筋配筋装置1の位置決め治具3を拡大した拡大図、
図11は
図7の横筋配筋装置1を上方から見た平面図をそれぞれ示している。
【0027】
図7~
図11に示すように、横筋配筋装置1は、横方向に直線上に並設された縦方向へ延びる4本の縦筋T,T,…に対し複数の横筋Y,Y,…を配筋する際に、各位置決め治具3の位置決め手段4によって各横筋Yが各縦筋Tとの交差部Kにそれぞれ位置付けられるように仮保持部31を位置決めしている。そして、横筋配筋装置1の各ワイヤ部材2は、吊上げ装置により吊上げた状態で各縦筋Tのうちの互いに2本隔てた縦筋T,T同士の間に配置されるようにしている。このとき、横筋配筋装置1の各仮保持部31により仮保持された各横筋Yは、各縦筋Tとの交差部Kに位置決めされる。なお、各縦筋Tは、施工する躯体に応じた間隔(例えば200~300mmの間隔)を隔てて立設され、躯体の高さに応じて縦筋T,T同士がカプラーなどの機械式継ぎ手を用いて縦方向に直結されることもある。
【0028】
そして、各横筋Yは、各縦筋Tとの交差部Kに位置決めされた状態で、当該各交差部Kにおいて針金Sにより各縦筋Tに結束される。また、全ての交差部K,K,…において針金Sによる結束を終えると、各位置決め治具3の蝶ボルト33による螺着を解除して仮保持部31の開口を開放させておくことで、仮保持部31の開口を介した各横筋Yの離脱が可能な状態となる。このとき、横筋配筋装置1の各位置決め治具3により仮保持された各横筋Yは、各縦筋Tに対し仮保持部本体32の他側端側から位置決めされるようにしている。
【0029】
図12は
図7の各位置決め治具3の各仮保持部31による各横筋Yの仮保持を解除した状態を示す横筋配筋装置1の正面図、
図13は
図12の横筋配筋装置1を右側方から見た右側面図をそれぞれ示している。また、
図14は
図13の横筋配筋装置1の位置決め治具3を拡大した拡大図を示している。なお、
図12及び
図14では、便宜上、各位置決め治具3の蝶ボルト33による螺着を解除した状態を分かり易く表現するために蝶ボルト33を挿通方向上流側のボルト挿通孔34に止めた状態で表現している。
【0030】
図12~
図14に示すように、各位置決め治具3の蝶ボルト33による螺着を解除し終えると、吊上げ装置により吊上げている各ワイヤ部材2を若干量(例えば100mm程度)だけ下降させることで、各横筋Yが各位置決め治具3の仮保持部31から開口を介して全て離脱する。
【0031】
図15は
図11の各位置決め治具3の仮保持部31による横筋Yの仮保持を解除した状態で横筋配筋装置1を右側方から見た右側面図を示している。
図15に示すように、各位置決め治具3の仮保持部31の開口を介して各横筋Yを全て離脱させると、横筋配筋装置1は次の横筋Y,Y,…の仮保持に備えた移動可能な状態となる。なお、
図15においても、便宜上、各位置決め治具3の蝶ボルト33による螺着を解除した状態を分かり易く表現するために蝶ボルト33を挿通方向上流側のボルト挿通孔34に止めた状態で表現している。
【0032】
次に、各横筋Yを横筋配筋装置1の各位置決め治具3により仮保持した状態で現場まで輸送する際の手順を図面に基づいて説明する。
【0033】
図16は
図15の横筋配筋装置1の斜視図、
図17は
図16の横筋配筋装置1の位置決め治具3を拡大して右側方から見た拡大図をそれぞれ示している。なお、
図16及び
図17では、便宜上、各位置決め治具3の蝶ボルト33による螺着に備えた状態を分かり易く表現するために蝶ボルト33を挿通方向上流側のボルト挿通孔34に止めた状態で表現している。
【0034】
図16及び
図17に示すように、各ワイヤ部材2を設置面Gに沿って互いに平行に敷設し、各位置決め治具3を、設置面Gに対し等間隔置きに転倒防止プレート38によりそれぞれ個々に仮保持部31の開口をワイヤ部材2の基端側(
図17では右端側)に向けた起立状態に保持する。このとき、設置面Gに各転倒防止プレート38を設置した状態で各ワイヤ部材2を張設することで、各位置決め治具3の仮保持部31の開口がワイヤ部材2の基端側に向く。
【0035】
図18は
図16の各位置決め治具3の仮保持部31に開口を介して各横筋Yを挿通した状態を示す横筋配筋装置1の斜視図を示している。また、
図19は
図16の仮保持部31に横筋Yを仮保持するまでの手順を左側方から見た位置決め治具3の拡大図であって、(a)は仮保持部31に横筋Yを挿通する前の状態、(b)は仮保持部31に横筋Yを挿通し終えた状態、(c)は仮保持部31に横筋Yを仮保持した状態をそれぞれ示す説明図を示している。なお、
図18及び
図19の(a)、(b)においても、便宜上、各位置決め治具3の蝶ボルト33による螺着に備えた状態を分かり易く表現するために蝶ボルト33を挿通方向上流側のボルト挿通孔34に止めた状態で表現している。
【0036】
図18並びに
図19の(a)及び(b)に示すように、設置面Gに沿って互いに平行に敷設した各ワイヤ部材2の各位置決め治具3の仮保持部31に仮保持部本体32両端の開口を介して横筋Y,Y,…を挿通する。そして、
図19の(c)に示すように、仮保持部本体32の挿通方向上流側のボルト挿通孔34に挿通した蝶ボルト33を挿通方向下流側のボルト挿通孔34に螺着して開口を閉じることで、各横筋Yを仮保持部31に仮保持する。
【0037】
図20は
図18の各仮保持部31により横筋Yを仮保持した横筋配筋装置1を吊上げ途中に左側方から見た左側面図を示している。この
図20に示すように、各ワイヤ部材2を、支持ロッドによって間隔を隔てた状態で吊上げ装置によって吊上げ始める。
【0038】
図21は
図20の横筋配筋装置1を吊上げて半分だけ折り畳んだ状態の左側面図を示している。この
図21に示すように、吊上げ装置によって吊上げた各ワイヤ部材2を設置面Gに対し徐々に降ろし、各ワイヤ部材2の略半分の長さを作業員がアシストしながら折り畳む。
【0039】
図22は
図21の横筋配筋装置1を全て折り畳んだ状態の左側面図を示している。この
図22に示すように、略半分の長さまで折り畳んだ各ワイヤ部材2の残りを設置面Gに対し吊上げ装置によって徐々に全て降ろし、横筋配筋装置1の折り畳みを完了する。
【0040】
そして、全て折り畳んでコンパクトとなった横筋配筋装置1を、図示しないトラックの荷台に載せ、施工現場まで搬送する。
【0041】
したがって、本実施の形態では、横方向に並べて立設した各縦筋Tのうちの互いに横方向に2本隔てた縦筋T,T同士の間を縦方向へ延びる各ワイヤ部材2に、各横筋Yを配筋可能に縦方向に並べた状態でそれぞれ個々に位置決めする複数の位置決め治具3,3,…を等間隔置きに設けることで、各ワイヤ部材2に対し各横筋Yを仮保持する仮保持部31,31,…を位置決め手段4により各横筋Yが各縦筋Tとの交差部Kに位置付けられるように各位置決め治具3毎に位置決めしている。これにより、横方向に並べた各縦筋Tに対し複数の横筋Y,Y,…が互いの交差部Kに同時に位置付けられた状態で配筋されることになり、互いの交差部K,K,…での結束を一挙に行えて作業効率を飛躍的に向上させることができる。
【0042】
また、各横筋Yを挿通させた状態の仮保持部本体32の両端間にその開口を塞ぐように蝶ボルト33が螺着されているので、蝶ボルト33の脱着により各仮保持部31での横筋Y,Y,…の仮保持及び仮保持解除を簡単に行うことができる。
【0043】
また、蝶ボルト33が仮保持部本体32に対し針金Sにより落下不能に連結されているので、蝶ボルト33が無くなることがなく、各仮保持部31での蝶ボルト33による横筋Yの仮保持を確実に行うことができる。
【0044】
更に、各ワイヤ部材2にそれぞれ等間隔置きに設置した係止具21,21,…に対しその各ワイヤ部材2に挿通した位置決め筒体41を当接させて仮保持部31を下方へ移動不能に位置決めしているので、吊上げ装置により吊上げた各ワイヤ部材2に対し仮保持部31を簡単に位置決めすることができ、シンプルな構成で各横筋Yを各縦筋Tとの交差部Kに確実に位置付けることができる。
【0045】
次に、本発明の第2の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0046】
本実施の形態では、各位置決め治具の構成を変更している。各位置決め治具を除くその他の構成は前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその説明は省略する。
【0047】
図23は本発明の第2の実施の形態に係る横筋配筋装置1の位置決め治具3の斜視図、
図24は
図23の位置決め治具3を右側方から見た右側面図をそれぞれ示している。また、
図25は
図23の位置決め治具3を上方から見た平面図、
図26は
図23の位置決め治具3を背面側から見た背面図をそれぞれ示している。
【0048】
すなわち、各位置決め治具5は、
図23~
図26に示すように、各ワイヤ部材2に対し各横筋Yを仮保持する仮保持部51と、この仮保持部51を各横筋Yが各縦筋Tとの交差部Kに位置付けられるように位置決めする位置決め手段4とを備えている。
【0049】
仮保持部51は、横筋Yを挿通可能に開口する略U字状の仮保持部本体52と、この仮保持部本体52の両端間にその開口を塞ぐように掛け渡される掛け渡し部材としての蝶ボルト53とを備えている。また、仮保持部本体52の一側端及び他側端には、互いの軸芯を一致させた状態で対峙するナット部材50,50が溶着されている。蝶ボルト53は、横筋Yを挿通させた状態で仮保持部本体52の開口を塞ぐように一側端及び他側端の両ナット部材50,50に螺着される。
【0050】
この場合、仮保持部本体52は、所定の長さ(例えば150mm程度)に切断した異形棒鋼を略U字状に屈曲して形成されている。このとき、蝶ボルト53は、仮保持部本体52の両端のナット部材50,50のうちの挿通方向上流側のナット部材50に螺合した状態で挿通され、仮保持部本体52の開口を塞ぐように挿通方向下流側のナット部材50に螺着される。
【0051】
位置決め手段4の位置決め筒体41は、挿通方向下流側のナット部材50のある仮保持部本体52の他側端に溶着されている。このとき、蝶ボルト53は、挿通方向上流側及び下流側のナット部材50,50に対しそれぞれ螺着されているので、挿通方向下流側のナット部材50に対する螺着が解除されても挿通方向上流側のナット部材50との螺着によって落下不能とされている。
【0052】
この実施の形態では、各横筋Yを挿通させた状態の仮保持部本体52の一側端及び他側端のナット部材50,50に対しその開口を塞ぐように蝶ボルト53が螺着されて掛け渡されているので、蝶ボルト53の脱着により各仮保持部51での横筋Y,Y,…の仮保持及び仮保持解除を簡単に行うことができる。
【0053】
次に、本発明の第3の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0054】
本実施の形態では、各位置決め治具の構成を変更している。各位置決め治具を除くその他の構成は前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその説明は省略する。
【0055】
図27は本発明の第3の実施の形態に係る横筋配筋装置1の位置決め治具の斜視図、
図28は
図27の位置決め治具を右側方から見た右側面図をそれぞれ示している。また、
図29は
図27の位置決め治具を上方から見た平面図、
図30は
図27の位置決め治具を背面側から見た背面図をそれぞれ示している。
【0056】
すなわち、
図27~
図30に示すように、各位置決め治具6は、各ワイヤ部材2に対し各横筋Yを仮保持する仮保持部61と、この仮保持部61を各横筋Yが各縦筋Tとの交差部Kに位置付けられるように位置決めする位置決め手段7とを備えている。
【0057】
仮保持部61は、横筋Yの端部を挿通可能に開口する略U字状の仮保持部本体62と、この仮保持部本体62の一側端に凹設されたねじ穴63に螺着されたボルト部材64を介して長手方向一端が当該ボルト部材64の軸回りに回転自在に支持され、仮保持部本体62の他側端に設けられた凹部65に対し仮保持部本体62の開口を塞ぐように長手方向他端が係止される掛け渡し部材66と、この掛け渡し部材66の長手方向中途部に設けられたねじ孔67に螺着され、仮保持部本体62に挿通された横筋Yに対し当接するまで締め込まれる螺子部材68とを備えている。この螺子部材68の頭部には、水平方向へ延びるロッド材69の中央部位が溶着され、螺子部材68の締緩がロッド材69により簡単に行えるようにしている。
【0058】
また、ボルト部材64は、ねじ穴63に対し軸線方向の長さの略三分の二が螺合して止着されるねじ部641と、ねじ穴63より軸線方向の長さの残る三分の一が突出し、掛け渡し部材66の長手方向一端の挿通孔661に回転自在に挿通される円筒部642とを備えている。この場合、掛け渡し部材66は、板材をレーザによりカットして成形されている。
【0059】
位置決め手段7は、係止具21と、仮保持部61の仮保持部本体62の他側端(
図31及び
図32では左側端)にワイヤ部材2が挿通可能となるように上下方向に貫通する挿通孔部71とを備えている。この挿通孔部71は、吊上げ装置によりワイヤ部材2を吊上げた際に各係止具21への周縁部(挿通孔部71の周縁)の当接により仮保持部61を下方へ移動不能に位置決めしている。各仮保持部本体62の挿通孔部71には、互いに上下方向で相隣なる係止具21,21同士の間に位置するワイヤ部材2が挿通されている。
【0060】
この実施の形態においても、各横筋Yを挿通させた状態の仮保持部本体62の一側端及び他側端に対しその開口を塞ぐように掛け渡し部材66をボルト部材64の軸回りに回転させて仮保持部本体62他側端の凹部65に対し長手方向他端を係止した状態で、ロッド材69による螺子部材68の締め付けにより当該螺子部材68の先端を仮保持部本体62内の横筋Yに対し圧接させて掛け渡し部材66を回転不能とすることで、横筋Yを仮保持している。これにより、螺子部材68の締緩により掛け渡し部材66を回転不能または回転可能にして、各仮保持部61での横筋Y,Y,…の仮保持及び仮保持解除を簡単に行うことができる。
【0061】
なお、本発明は、前記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記各実施の形態では、2本のワイヤ部材2,2を支持ロッドに間隔を隔てた状態で支持し、吊上げ装置によって吊上げたが、3本以上のワイヤ部材が間隔を隔てて支持された支持ロッドを吊上げ装置によって吊上げるようにしてもよい。このとき、支持ロッドは、3つ以上の位置決め治具により仮保持する各横筋の両端での仮保持箇所間での長さよりも長く設定しておけばよい。
【0062】
また、前記各実施の形態では、横方向に並べた各縦筋Tのうちの互いに2本隔てた縦筋T,T同士の間に各ワイヤ部材2を配置したが、各縦筋のうちの互いに1本又は3本以上隔てた縦筋同士の間に各ワイヤ部材が配置されるようにしてもよい。
【0063】
また、前記各実施の形態では、各横筋Yを横筋配筋装置1の各位置決め治具3により仮保持した状態で現場まで輸送する際に吊上げ装置によって吊上げた各ワイヤ部材2を設置面Gに対し徐々に降ろしながら折り畳んだ状態でトラックの荷台に載せて施工現場まで搬送するようにしたが、施工現場で横筋配筋装置の各ワイヤ部材を吊上げ装置によって最下降位置から徐々に吊上げ始め、その都度各ワイヤ部材の各位置決め治具3により横筋を仮保持するようにしてもよい。その場合には、施工現場にのみ用意した吊上げ装置によって各横筋の仮保持と各縦管に対する配筋とを同時に行え、実施する上で非常に有利なものとなる。
【0064】
また、前記各実施の形態では、支持部材としてワイヤ部材2を用いたが、チェーン部材などの支持部材が複数用いられていてもよく、このチェーン部材においても、各ワイヤ部材とほぼ遜色のない作業手順で各横筋の仮保持と各縦管に対する配筋とを行うことが可能である。一方、施工現場においてのみ吊上げ装置による各横筋の仮保持と各縦管に対する配筋とを行う場合には、棒状の鋼材などが支持部材として複数本用いられていてもよく、各鋼材を施工現場で設置面に寝かせて各鋼材の各位置決め治具によりそれぞれ横筋を仮保持した状態で各鋼材の一端(上端)を吊上げ装置によって吊上げて、各横筋の仮保持と各縦管に対する配筋とを行えばよい。
【0065】
また、前記各実施の形態では、横筋配筋装置1の各位置決め治具3により仮保持された各横筋Yを、各縦筋Tに対し仮保持部本体32の他側端側から位置決めされるようにしたが、横筋配筋装置の各位置決め治具により仮保持された各横筋が、各縦筋に対し仮保持部本体の一側端側から位置決めされるようにしてもよい。
【0066】
また、前記各実施の形態では、各縦筋T及び各横筋Yとして、D32の異形棒鋼を用いたが、外径についてはこれに限定されるものではなく、これよりも小径又は大径の異形棒鋼が各縦筋及び各横筋にそれぞれ適用されていてもよい。その場合には、仮保持部本体を異形棒鋼の最外径に応じて対応可能な大きさに変更する必要がある。
【0067】
また、前記各実施の形態では、横方向に直線上に並設した縦筋T,T,…に対し各横筋Yを位置決めしたが、横方向に湾曲するように並設した縦筋に対し横筋を位置決めする横筋配筋装置であってもよく、その場合には、横方向に湾曲する各縦筋に対しそれぞれ位置決めされるように湾曲する横筋及び支持ロッドを用いる必要がある。
【0068】
更に、前記第3の実施の形態では、板材をレーザによりカットして掛け渡し部材66を成形したが、
図31及び
図32に示すように、位置決め治具8が鋳造により成形されていてもよい。位置決め治具8は、各ワイヤ部材2に対し各横筋Yを仮保持する仮保持部81と、位置決め手段7とを備えている。そして、仮保持部81は、横筋Yの端部を挿通可能に開口する略U字状の仮保持部本体82と、この仮保持部本体82の一側端に凹設されたねじ穴63に螺着されたボルト部材64を介して長手方向一端が当該ボルト部材64の軸回りに回転自在に支持され、仮保持部本体82の他側端に設けられた凹部65に対し仮保持部本体82の開口を塞ぐように長手方向他端が係止される掛け渡し部材86と、この掛け渡し部材86の長手方向中途部に設けられたねじ孔67に螺着され、仮保持部本体82に挿通された横筋Yに対し当接するまで締め込まれる螺子部材68とを備えている。この場合、レーザではカットし切れない不要部分を削ぎ落としたスリムな形状の仮保持部81を成形することも可能となり、材料費を削減する上で非常に有利なものとなる。
【0069】
次に、本発明の第4の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0070】
本実施の形態では、各位置決め治具の構成を変更している。各位置決め治具を除くその他の構成は前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその説明は省略する。
【0071】
図33は本発明の第4の実施の形態に係る横筋配筋装置の位置決め治具の斜視図、
図34は
図33の位置決め治具を上方から見た平面図、
図35は
図33の位置決め治具を右側方から見た右側面図をそれぞれ示している。また、
図36は
図33の位置決め治具の仮保持本体を右側方から見た右側面図、
図37は
図36の仮保持部本体を背面側から見た背面図をそれぞれ示している。更に、
図38は
図33の位置決め治具の位置決め部材を背面側から見た背面図、
図39は
図33の位置決め治具の分解斜視図をそれぞれ示している。
【0072】
すなわち、
図33~
図39に示すように、各位置決め治具90は、各ワイヤ部材2に対し各横筋Yを仮保持する仮保持部91と、この仮保持部91を各横筋Yが各縦筋Tとの交差部Kに位置付けられるように位置決めする位置決め手段92とを備えている。
【0073】
仮保持部91は、横筋Yを挿通可能に開口する略U字状の仮保持部本体911を備えている。この仮保持部本体911の一側端側(
図35では左側)の一側片部912は、略矩形平板状に形成されている。また、仮保持部本体911の左右方向中央部は、反ワイヤ部材2側となる内方向きに断面略円弧状に凹む凹部913を有している。
【0074】
位置決め手段92は、仮保持部本体911の一側片部912に対しワイヤ部材2を挟んで対峙する略矩形平板状の位置決め部材921を備えている。そして、位置決め部材921の左右方向中央部にも、反ワイヤ部材2側となる仮保持部本体911の一側向きに断面略円弧状に凹む凹部922が設けられている。この仮保持部本体911の一側片部912と位置決め部材921とは、互いの凹部913,922にワイヤ部材2を位置させて挟んだ状態で対峙している。更に、仮保持部本体911の一側片部912及び位置決め部材921の凹部913,922には、当該両凹部913,922内にワイヤ部材2を挟んだ際にそのワイヤ部材2側へ等間隔置きに接するように突出する複数の凸部923(位置決め部材921の凹部922のもののみ示す)が突設されている。
【0075】
また、位置決め手段92は、仮保持部本体911をワイヤ部材2に対し位置決め部材921を介してそれぞれ等間隔置きに螺着する螺着手段93を備えている。この螺着手段93は、仮保持部本体911の一側片部912の四隅より位置決め部材921側へ向かって突出するスタッドボルト931,931,…と、位置決め部材921の四隅に開設され、ワイヤ部材2を挟んで仮保持部本体911の一側片部912と対峙させた状態でそれぞれスタッドボルト931が挿通されるボルト挿通孔932,932,…と、この各ボルト挿通孔932に挿通されて露呈するスタッドボルト931の先端にそれぞれ螺着されるナット933,933,…とを備えている。
【0076】
更に、仮保持部91は、仮保持部本体911の開口を塞ぐように当該仮保持部本体911の一側端側から他側端に向かって掛け渡される掛け渡し部材94を備えている。この掛け渡し部材94は、左右一対の脚部941,941を有して略ヘアピン状に形成され、両脚部941,941の基端同士がひと巻き巻回された巻回部942に連結されて当該両脚部941,941を左右方向外側へ開かせる方向に付勢している。掛け渡し部材94の巻回部942は、紐状部材943を介して位置決め部材921に止着され、掛け渡し部材94が消失してしまうことを防止している。
【0077】
また、位置決め部材921の上下方向略中央部には、左右方向に長い一対の長孔924,924が設けられている。更に、仮保持部本体911の一側片部912の上下方向略中央部には、左右方向に長い一対の長孔914,914が設けられている一方、その一側片部912と対面する他側端側の上下方向略中央部には、左右方向に長い一対の長孔915,915が設けられている。
【0078】
そして、
図39に仮想線(二点鎖線)で示すように、掛け渡し部材94は付勢力に抗して閉じ側に手で変形させた両脚部941,941を、位置決め部材921の各長孔924から仮保持部本体911の一側片部912の各長孔914及び他側端側の各長孔915に挿通させ、手による変形を解除することで当該各長孔915の裏側縁部に係止される。一方、各長孔915の裏側縁部に係止した状態の掛け渡し部材94は、付勢力に抗して閉じ側に手で変形させた状態で、両脚部941,941を仮保持部本体911の他側端側の各長孔915及び一側片部912の各長孔914を介して位置決め部材921の各長孔924から離脱させることで、係止が解除される。
【0079】
この実施の形態においても、付勢力に抗して閉じ側に手で変形させた状態の掛け渡し部材94の両脚部941,941を、位置決め部材921の各長孔924から仮保持部本体911の一側片部912の各長孔914及び他側端側の各長孔915に挿通させ、手による変形を解除して当該各長孔915の裏側縁部に係止することで、横筋Yを仮保持している。これにより、付勢力に抗して両脚部941,941を閉じ側に手で変形させた状態で位置決め部材921の各長孔924から仮保持部本体911の一側片部912の各長孔914及び他側端側の各長孔915に対し挿通及び離脱させれば、各仮保持部91での横筋Y,Y,…の仮保持及び仮保持解除を簡単に行うことができる。
【0080】
次に、本発明の第5の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0081】
本実施の形態では、各位置決め治具の構成を変更している。各位置決め治具を除くその他の構成は前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその説明は省略する。
【0082】
図40は本発明の第5の実施の形態に係る横筋配筋装置の位置決め治具により横筋Yを仮保持した状態で右側方から見た右側面図、
図41は
図40の位置決め治具を上方から見た平面図、
図42は
図40の位置決め治具を背面側から見た背面図、
図43は
図33の位置決め治具による横筋Yの仮保持を解除した状態で右側方から見た右側面図をそれぞれ示している。また、
図44は
図40の位置決め治具の仮保持部本体の斜視図、
図45は
図40の位置決め治具の位置決め部材の斜視図をそれぞれ示している。
【0083】
更に、
図46は
図40の位置決め治具により横筋Yを仮保持した状態での斜視図、
図47は
図46の位置決め治具の仮保持部本体に対し先端を挿通していたボルト部材を離脱し始めて仮保持を解除し始めた状態を示す斜視図をそれぞれ示している。また、
図48は
図47の位置決め治具の仮保持部本体から離脱したボルト部材の先端を上方に持ち上げて仮保持を解除し始めた経過状態を示す斜視図、
図49は
図47の位置決め治具の仮保持部本体から離脱したボルト部材を横筋Yの上方から位置決め部材側へ収めて仮保持を解除完了した状態を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0084】
すなわち、
図40~
図49に示すように、各位置決め治具95は、各ワイヤ部材2に対し各横筋Yを仮保持する仮保持部96と、この仮保持部96を各横筋Yが各縦筋Tとの交差部Kに位置付けられるように位置決めする位置決め手段97とを備えている。
【0085】
仮保持部96は、横筋Yを挿通可能に開口する略U字状の仮保持部本体961を備えている。この仮保持部本体961は、一本の長尺な丸鋼により形成され、その中央部を他側端側(
図40では右側)において各横筋Yに沿って左右方向に延ばした左右方向延長部960を有し、この左右方向延長部960の左右両端を一側端側(
図40では左側)に向かってそれぞれ略U字状に屈曲させて互いの両端側をワイヤ部材2に沿って上方へ延ばすような形状に形成されている。仮保持部本体961の両端には、雄螺子962,962が形成されている。
【0086】
位置決め手段97は、略矩形状の上下両片971,972の一側端(
図41では左側端)を縦片973により連結する断面略コの字状の位置決め部材974を備えている。この位置決め部材974の上下両片971,972の左右両位置には、仮保持部本体961両端の雄螺子962,962を挿通する挿通孔975,975,…が設けられている。また、上下両片971,972の左右の挿通孔975,975同士の間には、他側(
図41では右側)に開口する略U字状の切欠孔976がそれぞれ設けられている。
【0087】
また、位置決め部材974の縦片973には、若干左右方向一側(
図45では右側)寄りで略正方形状の四隅に対応する位置に開口する4つの丸孔977,977,…が設けられている。更に、位置決め部材974の縦片973には、左右方向他側端(
図45では左側端)に開口する縦長の長孔978が設けられている。
【0088】
そして、仮保持部本体961は、その両端の雄螺子962,962を位置決め部材974の上下両片971,972の挿通孔975,975,…に下方から挿通し、位置決め部材974の上片971の上下に位置する両端の雄螺子962,962に対し、上片971の上下両方向から挟むように螺着される上下のナット979,979によりそれぞれ締結されている。
【0089】
更に、位置決め手段97は、仮保持部本体961をワイヤ部材2に対し位置決め部材974を介してそれぞれ等間隔置きに螺着する螺着手段98を備えている。この螺着手段98は、両端に雄螺子981,981を有する略U字状の上下一対のU字ボルト982,982を備えている。そして、位置決め部材974の上下両片971,972の切欠孔976,976にワイヤ部材2を挿通するとともに、当該ワイヤ部材2を他側から内包した状態で縦片973の左右の丸孔977,977にそれぞれU字ボルト982,982の両端の雄螺子981,981を挿通し、縦片973の裏側(
図41では左側)からナット984,984によりそれぞれ締結されている。
【0090】
また、仮保持部97は、仮保持部本体961の開口を塞ぐように当該仮保持部本体961の一側端側から他側端に向かって掛け渡される掛け渡し部材としての長尺なボルト部材963を備えている。このボルト部材963は、位置決め部材974の縦片973の長孔978に他側から挿通され、先端の雄螺子(図示せず)にナット964が螺着されて長孔978内から抜け落ちないようにしている。この長孔978の短径は、ボルト部材963の径よりも大きく、かつ頭部965及びナット964よりも小さくなるように設定されている。
【0091】
そして、
図40、
図41及び
図49に示すように、ボルト部材963の頭部965は、仮保持部本体961に横筋Yを挿通させた状態で、その横筋Yの上方から仮保持部本体961中央の左右方向延長部960に挿通されて係止される。一方、仮保持部本体961中央の左右方向延長部960に頭部965を係止した状態のボルト部材963は、仮保持部本体961中央の左右方向延長部960から頭部965を離脱させて位置決め部材974の縦片973の長孔978の一側縁まで移動させることで、係止が解除される。
【0092】
この実施の形態においても、位置決め部材974の縦片973の長孔978に挿通されたボルト部材963の頭部965を、仮保持部本体961に横筋Yを挿通させた状態で、その横筋Yの上方から仮保持部本体961中央の左右方向延長部960に挿通して係止することで、横筋Yを仮保持している。これにより、ボルト部材963の頭部965仮保持部本体961の横筋Yの上方から仮保持部本体961中央の左右方向延長部960に対し挿脱させれば、各仮保持部96での横筋Y,Y,…の仮保持及び仮保持解除を簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0093】
1 横筋配筋装置
2 ワイヤ部材(支持部材)
21 係止具
3 位置決め治具
31 仮保持部
32 仮保持部本体
33 蝶ボルト(掛け渡し部材)
4 位置決め手段
41 位置決め筒体
42 挿通孔部
5 位置決め治具
51 仮保持部
52 仮保持部本体
53 蝶ボルト(掛け渡し部材)
6 位置決め治具
61 仮保持部
62 仮保持部本体
66 掛け渡し部材
7 位置決め手段
71 挿通孔部
8 位置決め治具
81 仮保持部
82 仮保持部本体
86 掛け渡し部材
90 位置決め治具
91 仮保持部
911 仮保持部本体
92 位置決め手段
93 螺着手段
94 掛け渡し部材
95 位置決め治具
96 仮保持部
961 仮保持部本体
963 ボルト部材(掛け渡し部材)
97 位置決め手段
98 螺着手段
K 交差部
T 縦筋
Y 横筋