IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 長田産業株式会社の特許一覧

特許7525873ほぐれの改良された穀類加工食品、その製造方法およびほぐれ改良剤
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】ほぐれの改良された穀類加工食品、その製造方法およびほぐれ改良剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240724BHJP
   A23L 7/109 20160101ALN20240724BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A23L7/109 C
A23L7/109 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020076777
(22)【出願日】2020-04-23
(65)【公開番号】P2021170982
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391029336
【氏名又は名称】長田産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(72)【発明者】
【氏名】辰野 謙二
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-015871(JP,A)
【文献】特開2014-039477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉に、該原料粉1g当たり10~180ppmのG4生成アミラーゼが添加されてなることを特徴とするほぐれの改良された穀類加工食品。
【請求項2】
原料粉に、該原料粉1g当たり10~180ppmのG4生成アミラーゼを添加し、加水し混錬し、成形することを特徴とするほぐれの改良された穀類加工食品の製造方法。
【請求項3】
G4生成アミラーゼを有効成分として含有すること及び、穀類加工食品の原料粉に使用することを特徴とする穀類加工食品のほぐれ改良剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ほぐれの改良された穀類加工食品、その製造方法およびほぐれ改良剤に関する。さらに詳しくは、本発明は、保存中にほぐれ性や食感が劣化するなどの品質低下が抑制された穀類加工食品、その製造方法およびその製造方法で用いられるほぐれ改良剤に関する。
【背景技術】
【0002】
穀類加工食品、特に茹で麺や蒸し麺などの麺類は、製造直後は良好なほぐれ性を有している。しかし、時間の経過と共に麺線表面の糊化したでん粉の粘着性により麺線同士が付着すると共に、でん粉の粒子から漏出したアミロースやアミロペクチンが水素結合により結合する老化によって麺線同士が強固に結着する。その結果、麺線全体が塊状に固着し、ほぐれ性が著しく損なわれると共に、でん粉の老化によりボソつき感が発生して風味が損なわれ、また麺線表面の光沢が失われ、外観上、美味しそうに見えなくなるという課題がある。
【0003】
麺線同士の付着を防止する方法は、麺の種類によって異なる。
生麺の場合には、カットされた麺線に直接、でん粉(打ち粉)をふりかける方法が一般的に採用されている。しかしながら、打ち粉を使用した生麺は、外観が悪く、かつカビが生え易く、腐敗し易いという欠点がある。
また、茹で麺や蒸し麺、ロングライフ麺(LL麺)などの場合には、仕上がった麺に食用油脂を噴霧する方法が一般的に採用されている。しかしながら、油が含まれていると食感に悪影響のある麺、例えばうどんやそばなどには、この方法は適していない。その上、麺にコーティングされる油脂が薄層であるため、高水分下において極めて酸化され易く、特に常温での流通時間が長いLL麺では、酸化された油脂が異臭を発するなど、麺類の商品価値を著しく損なうという欠点がある。
【0004】
一方、有効成分を内添することにより麺類のほぐれ性を改良する様々な方法が提案されている。
例えば、特開平7-39332号公報(特許文献1)には、ポリグリセリン脂肪酸エステルを含有する麺類品質改良剤のような乳化剤を添加する方法、特開2003-210125号公報(特許文献2)には、卵黄または全卵のホスホリパーゼ処理物を含有する麺類の品質改良剤のような酵素を添加する方法、特開2001-327257号公報(特許文献3)には、特定量の天然由来のリパーゼを穀類加工食品に添加する方法が開示されている。
【0005】
また、特開平6-121647号公報(特許文献4)には、水溶性ヘミセルロースを添加する方法、特開平7-123943号公報(特許文献5)には、α化処理後の麺の表面をアミラーゼで処理し、加熱殺菌処理と同時にアミラーゼを失活させるか、処理前にアミラーゼを除去する方法、特開2006-311849号公報(特許文献6)には、ほぐれ性を改善すると共につやを付与する方法として、ヒドロキシプロピルセルロースを添加する方法が開示されている。
【0006】
さらに、国際公開第WO2016/056407号(特許文献7)には、1,3-位置特異性を有するリパーゼおよびアミラーゼを麺に添加する方法が開示されている。
他方、対象食品が麺類ではないが、国際公開第WO2018/181125号(特許文献8)には、本発明の有効成分であるG4生成アミラーゼ、すなわちエキソマルトテトラオヒドロラーゼを用いるパンおよびその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-39332号公報
【文献】特開2003-210125号公報
【文献】特開2001-327257号公報
【文献】特開平6-121647号公報
【文献】特開平7-123943号公報
【文献】特開2006-311849号公報
【文献】国際公開第WO2016/056407号
【文献】国際公開第WO2018/181125号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1~3および7の先行技術では、いずれもほぐれ効果が十分でないという課題がある。また、特許文献2の先行技術では、卵アレルギーには適切でなく、ホスホリパーゼ処理に手間が掛かるという課題もある。
また、特許文献4の先行技術では、十分なほぐれ改善効果を得るためには高濃度の水溶性ヘミセルロース水溶液を麺線に噴霧する必要があり、水溶液調製の作業が煩雑であり噴霧工程も増え、加えて設備の投資が必要となり、中小規模の多い麺業界ではコストアップ要因となり導入が難しいという課題があり、特許文献5の先行技術では、ほぐれ効果が十分でない上、α化された麺線のアミラーゼ処理および加熱による失活処理が簡便性に欠けるという課題がある。
【0009】
さらに、特許文献6の先行技術では、浸漬するオペレーションが必要になり、工程が複雑になるばかりか、この方法を用いたとしてもでん粉の老化や麺線中の水分勾配の均一化により麺線表面が乾いてつや消し状の外観となり、茹で上げ直後の瑞々しい光沢感が失われ、消費者の購買意欲の低下に繋がるなど、商品価値が時間と共に低下するという課題がある。つまり、麺類の美味しさに大きな影響を与える外観の改善つまり麺のつや出しという点に関しては十分であるとはいえない。
これらの状況から、簡便な操作で麺のほぐれ性を改善し、麺類の風味を低下させることなく、食感としてのしっとり感や麺線表面に光沢感(つや)を付与するなどの効果を有する多機能な麺類用の品質改良剤が求められている。
他方、特許文献8の先行技術は、本発明の有効成分であるG4生成アミラーゼを用いる技術ではあるが、パンの外観、食感、風味などの品質を改善することを課題としており、特許文献8には、麺のほぐれ性や食感の改良、さらにはつやの付与についての記載は一切ない。
【0010】
そこで、本発明は、保存中にほぐれ性や食感が劣化するなどの品質低下が抑制された穀類加工食品、その製造方法およびその製造方法で用いられるほぐれ改良剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、G4生成アミラーゼを麺生地に添加することで、穀類加工食品の弾力性や粘りなどの食感および風味に影響することなく、保存中のほぐれ性の低下(劣化)が著しく改善された穀類加工食品が得られることを見出し、さらに穀類加工食品の調製後に冷蔵保存した後でも、麺のソフト感(弾力感)を維持し、でん粉の老化に伴うボソつき感が抑制され、非常に食べ易く風味豊かで、かつ茹であがり直後の瑞々しい光沢感を有する穀類加工食品が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0012】
かくして、本発明によれば、原料粉に、該原料粉1g当たり10~180ppmのG4生成アミラーゼが添加されてなることを特徴とするほぐれの改良された穀類加工食品が提供される。
また、本発明によれば、原料粉に、該原料粉1g当たり10~180ppmのG4生成アミラーゼを添加し、加水し混錬し、成形することを特徴とするほぐれの改良された穀類加工食品の製造方法が提供される。
さらに、本発明によれば、G4生成アミラーゼを有効成分として含有することを特徴とする穀類加工食品のほぐれ改良剤が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、保存中にほぐれ性や食感が劣化するなどの品質低下が抑制された穀類加工食品、その製造方法およびその製造方法で用いられるほぐれ改良剤を提供することができる。
このような優れた効果が得られるメカニズムは明らかではないが、でん粉が糊化する際に、でん粉粒子間に漏出したアミロース、アミロペクチンをG4単位に分解することにより、
(1)でん粉粒表面の粘着性が低下してでん粉粒子間の結着力が弱まり、麺線間の付着性が低下すると共に、老化時の再結晶化が抑制されて硬化が抑制され、かつ
(2)でん粉に作用して生成したマルトテトラオースの高い保水力が澱粉老化を抑制し、光沢が増加する
ためと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[ほぐれの改良された穀類加工食品]
本発明のほぐれの改良された穀類加工食品は、原料粉に、該原料粉1g当たり10~180ppmのG4生成アミラーゼが添加されてなることを特徴とする。
【0015】
(穀類加工食品)
本発明における穀類加工食品としては、中華麺、うどん、きしめん、蕎麦、素麺、冷や麦、パスタのように細長く成形した麺類、マカロニのように任意の形状に成形したもの、餃子やシュウマイの皮などが挙げられる。
穀類加工食品が麺類である場合、その形態は生麺、茹で麺、蒸し麺、ロングライフ麺(LL麺)、即席麺、冷凍麺、乾麺などいずれであってもよい。
【0016】
(原料粉)
本発明に用いる原料粉は、所望の穀類加工食品に応じて適宜選択され、具体的には、小麦粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、タピオカ加工でん粉およびそれらの混合粉などが挙げられる。
【0017】
(G4生成アミラーゼ)
アミラーゼ(ジアスターゼ)は、澱粉を含めた多糖類や糖類が構造中に有するグリコシド結合(グルコースの場合、グルコシド結合)を加水分解する酵素の総称である。分解様式の違いにより、エンド型アミラーゼやエキソ型アミラーゼに分類され、また加水分解により生じる産生物により、グルコアミラーゼやマルトース生成アミラーゼ、4糖生成アミラーゼ(G4生成アミラーゼ)などに分類される。
本発明に用いられるエキソマルトテトラオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.60)は、デンプンのα-1,4-D-グルコシド結合を非還元末端からマルトテトラオース単位(グルコース4分子)で加水分解する反応を触媒するエキソ型のアミラーゼである。
本発明で用いられるG4生成アミラーゼとしては、澱粉を含めた多糖類や糖類中のα-1,4-D-グルコシド結合をマルトテトラオース単位で切断する酵素であれば、特に限定されるものではなく、この酵素を含有する酵素製剤を使用することもできる。
本発明では、例えば、実施例で用いているような市販のG4生成アミラーゼ酵素製剤、ナガセケムテック株式会社の「デナベイクEXTRA」、ダニスコジャパン株式会社の「PowerFresh3050」、「PowerFresh3150」、「PowerFresh150」などを好適に用いることができる。
【0018】
(G4生成アミラーゼの添加量)
G4生成アミラーゼの添加割合は、原料粉1g当たり10~180ppm、より好ましくは15~170ppm、さらに好ましくは15~160ppmである。
G4生成アミラーゼの添加割合が10ppm未満では、十分なほぐれ改良効果が得られ難いため好ましくない。一方、G4生成アミラーゼの添加割合が180ppmを超えると、でん粉が過度に分解することで歯応えのない食感になることがある。原料粉が小麦粉である場合、添加割合は120ppm程度である。
【0019】
(副原料)
本発明のほぐれの改良された穀類加工食品は、本発明の効果が阻害されない範囲で、当該技術分野で公知の他の品質改良剤などの副原料を含んでいてもよい。
副原料としては、卵白、卵白蛋白加水分解物、卵黄、卵黄蛋白加水分解物、鶏卵(全卵)、鶏卵蛋白加水分解物、ホエー蛋白、カゼイン、カゼインナトリウム、乳蛋白、コラーゲン、ゼラチン、血漿蛋白、小麦蛋白、グルテニン、グリアジン、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ローカストビーンガム、カラギーナン、グァーガム、グルコマンナン、カードラン、ペクチン、タマリンドシードガム、アラビアガム、カラヤガム、ガティガム、サイリウムシードガム、タラガム、プルラン、CMC、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、大豆多糖類、グリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、酵素処理レシチン、酵素分解レシチン、融点が20℃以上の牛脂、豚脂などの動物性油脂を乳化被覆膜剤でO/W型に乳化した後、噴霧乾燥することにより得られる動物性粉末油脂、パーム油、ヤシ油、大豆油、綿実油などの植物性油脂を乳化被覆膜剤でO/W型に乳化した後、噴霧乾燥することにより得られる植物性粉末油脂などが挙げられる。
【0020】
[ほぐれの改良された穀類加工食品の製造方法]
本発明のほぐれの改良された穀類加工食品は、原料粉に、該原料粉1g当たり10~180ppmのG4生成アミラーゼを添加し、加水し混錬し、成形することにより製造することができる。
G4生成アミラーゼの添加以外については、当該技術分野の公知の技術を適用すればよい。例えば、任意の添加剤(副原料)の内、水溶性のものは原料粉と混合すべき水に予め溶解して用いてもよく、水不溶性のものは原料粉と予め混合して用いてもよい。
また、加水量や加水方法、混錬方法やその条件、成形方法やその条件は、所望の穀類加工食品により適宜設定すればよい。
【0021】
[穀類加工食品のほぐれ改良剤]
本発明の穀類加工食品のほぐれ改良剤は、G4生成アミラーゼを有効成分として含有することを特徴とする。
本発明の穀類加工食品のほぐれ改良剤は、有効成分であるG4生成アミラーゼとの共存することにより反応や変質を生じない、上記の副原料を含んでいてもよい。
【実施例
【0022】
本発明を実施例および試験例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0023】
実施例および比較例においては、次のアミラーゼA~Eを用いた。
・アミラーゼA:G4生成アミラーゼ
(ナガセケムテック株式会社製、製品名:デナベイクEXTRA)
・アミラーゼB:G4生成アミラーゼ
(ダニスコジャパン株式会社製、製品名:PowerFresh3050)
・アミラーゼC:αアミラーゼ
(ナガセケムテックス株式会社製、製品名:スピターゼCP-3)
・アミラーゼD:βアミラーゼ
(ナガセケムテックス株式会社製、製品名:βアミラーゼ#1500S)
・アミラーゼE:マルトトリオヒドロラーゼ
(天野エンザイム株式会社製、製品名:AMT1.2L)
【0024】
実施例、比較例および試験例においては、次の原料粉、添加剤および水を用いた。
・中力粉(日清製粉株式会社製、製品名:麺月)
・準強力粉(日清製粉株式会社製、製品名:特ナンバーワン)
・ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカ加工でん粉(松谷化学工業株式会社製、製品名:あさがお)
・かん粉(オリエンタル酵母工業株式会社製、製品名:粉末かん水赤)
・着色料(クチナシ色素、神戸化成株式会社製、製品名:KCイエローKP-150)
・食塩(公益財団法人塩事業センター製、製品名:並塩)
・水(水道水)
・めんつゆA(日本丸天醤油株式会社製、製品名:浪速うどんつゆ)
・めんつゆB(有限会社丸井食品三重工場製、製品名:冷やし中華スープ)
【0025】
[実施例1](冷やしうどんの調製)
中力粉90質量部、タピオカ加工でん粉10質量部、アミラーゼA0.0015質量部(中力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり15ppm)および食塩水41質量部(食塩3質量部+水道水38質量部)を、縦型ミキサー(エスケーミキサー株式会社製、型式:SK-25、容量:25L)を用いて回転数200rpmで15分間混錬した。
次いで、得られた混合物を、回転ローラー式製麺機(株式会社大和製作所製、型式:リッチメンI型LM-5062)を用いて圧延し、粗麺帯(厚さ4.0mm)を得た。
次いで、複合、圧延および12番角刃での切り出しを経て、総重量500gの生うどん生地を得た。
得られた生うどん生地を、容量5リットルの煮沸水中で約10分間茹で、氷水中で冷却、水洗、水切りを行い、冷やしうどんを得た。
得られた冷やしうどん80gをプラスチック製容器(80mm×70mm×高さ45mm)に入れて蓋をし、温度10℃の冷蔵庫で24時間静置した。
【0026】
[実施例2]
アミラーゼAを0.0030質量部(中力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり30ppm)用いること以外は、実施例1と同様にして冷やしうどんを得た。
[実施例3]
アミラーゼAを0.0060質量部(中力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり60ppm)用いること以外は、実施例1と同様にして冷やしうどんを得た。
【0027】
[実施例4]
アミラーゼAを0.0120質量部(中力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり120ppm)用いること以外は、実施例1と同様にして冷やしうどんを得た。
[実施例5]
アミラーゼAを0.0160質量部(中力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり160ppm)用いること以外は、実施例1と同様にして冷やしうどんを得た。
[実施例6]
アミラーゼAの代わりにアミラーゼBを用いること以外は、実施例3と同様にして冷やしうどんを得た。
【0028】
[比較例1]
アミラーゼAを用いないこと以外は、実施例1と同様にして冷やしうどんを得た。
[比較例2]
アミラーゼAを0.0005質量部(中力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり5ppm)用いること以外は、実施例1と同様にして冷やしうどんを得た。
[比較例3]
アミラーゼAを0.0200質量部(中力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり200ppm)用いること以外は、実施例1と同様にして冷やしうどんを得た。
【0029】
[比較例4]
アミラーゼAの代わりにアミラーゼCを用いること以外は、実施例3と同様にして冷やしうどんを得た。
[比較例5]
アミラーゼAの代わりにアミラーゼDを用いること以外は、実施例3と同様にして冷やしうどんを得た。
[比較例6]
アミラーゼAの代わりにアミラーゼEを用いること以外は、実施例3と同様にして冷やしうどんを得た。
【0030】
[実施例7](冷やし中華麺の調製)
準強力粉90質量部、タピオカ加工でん粉10質量部、アミラーゼA0.0015質量部(準強力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり15ppm)、かん粉1質量部、着色料0.07質量部および食塩水41質量部(食塩2質量部+水道水39質量部)を、縦型ミキサー(エスケーミキサー株式会社製、型式:SK-25、容量:25L)を用いて回転数200rpmで15分間混錬した。
次いで、得られた混合物を、回転ローラー式製麺機(株式会社大和製作所製、型式:リッチメンI型LM-5062)を用いて圧延し、粗麺帯(厚さ4.0mm)を得た。
次いで、複合、圧延および20番角刃での切り出しを経て、総重量500gの生中華麺生地を得た。
得られた生中華麺生地を、容量5リットルの煮沸水中で約2分間茹で、氷水中で冷却、水洗、水切りを行い、冷やし中華麺を得た。
得られた冷やし中華麺80gをプラスチック製容器(80mm×70mm×高さ45mm)に入れて蓋をし、温度10℃の冷蔵庫で24時間静置した。
【0031】
[実施例8]
アミラーゼAを0.0030質量部(準強力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり30ppm)用いること以外は、実施例7と同様にして冷やし中華麺を得た。
[実施例9]
アミラーゼAを0.0060質量部(準強力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり60ppm)用いること以外は、実施例7と同様にして冷やし中華麺を得た。
【0032】
[実施例10]
アミラーゼAを0.0120質量部(準強力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり120ppm)用いること以外は、実施例7と同様にして冷やし中華麺を得た。
[実施例11]
アミラーゼAを0.0160質量部(準強力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり160ppm)用いること以外は、実施例7と同様にして冷やし中華麺を得た。
[実施例12]
アミラーゼAの代わりにアミラーゼBを用いること以外は、実施例9と同様にして冷やし中華麺を得た。
【0033】
[比較例7]
アミラーゼAを用いないこと以外は、実施例7と同様にして冷やし中華麺を得た。
[比較例8]
アミラーゼAを0.0005質量部(準強力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり5ppm)用いること以外は、実施例7と同様にして冷やし中華麺を得た。
[比較例9]
アミラーゼAを0.0200質量部(準強力粉とタピオカ加工でん粉との合計の原料粉1g当たり200ppm)用いること以外は、実施例7と同様にして冷やし中華麺を得た。
【0034】
[比較例10]
アミラーゼAの代わりにアミラーゼCを用いること以外は、実施例9と同様にして冷やし中華麺を得た。
[比較例11]
アミラーゼAの代わりにアミラーゼDを用いること以外は、実施例9と同様にして冷やし中華麺を得た。
[比較例12]
アミラーゼAの代わりにアミラーゼEを用いること以外は、実施例9と同様にして冷やし中華麺を得た。
【0035】
[試験例1](冷やしうどんの評価)
静置した冷やしうどんに対して、めんつゆA(うどんつゆ)の4倍希釈品8gを麺表面に均一になるよう回し入れ、熟練した5名のパネラーが箸を用いて、下記の5段階の評価基準でほぐれ性、食感および光沢性を官能評価(評点)した。それらの評点の平均値(少数点第2位以下を切り捨て)をほぐれ性、食感および光沢性とした。
なお、ほぐれ性がかなり悪いもの、食感ではコシがなく、かつボソつき感のあるもの、光沢性では光沢感がないものを1点として評点した。
【0036】
[効果1]
(ほぐれ性の評価基準)
評価点 (平均値)
5 (5 ):とてもほぐれ易い
4 (4以上5未満):ほぐれ易い
3 (3以上4未満):少しほぐれ易い
2 (2以上3未満):ほぐれ難い
1 (1以上2未満):かなりほぐれ難い
【0037】
(食感の評価基準)
評価点 (平均値)
5 (5 ):コシがあり、ボソつき感がない
4 (4以上5未満):コシがややあり、ボソつき感がない
3 (3以上4未満):コシがややあり、ボソつき感が少ない
2 (2以上3未満):コシがややあり、ややボソつき感がある
1 (1以上2未満):コシがなく、ボソつき感またはぬめり感がある
「コシ」とは、口中で噛んだときに感じる硬さと弾力の複合した食感を意味する。
「ボソつき感」とは、でん粉の老化による脆い食感を意味する。
「ぬめり感」とは、でん粉が過度に分解されることによる食感を意味する。
【0038】
(総合評価)
ほぐれ性および食感の結果を下記の基準で総合評価した。
○(合格) :ほぐれ性、食感が共に、平均値が3.0点以上である
×(不合格):ほぐれ性、食感のいずれか一方の平均値が3.0点未満である
【0039】
[効果2]
(光沢性の評価基準)
評価点 (平均値)
5 (5 ):非常に瑞々しい光沢感がある
4 (4以上5未満):瑞々しい光沢感がある
3 (3以上4未満):やや瑞々しい光沢感がある
2 (2以上3未満):若干の光沢感がある
1 (1以上2未満):光沢感がない
冷やしうどんの評価において得られた結果を、用いたアミラーゼおよびその添加量と共に表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
[試験例2](冷やし中華麺の評価)
静置した冷やし中華麺に対して、めんつゆB(スープ)の3倍希釈品8gを麺表面に均一になるよう回し入れ、試験例1と同様にして麺のほぐれ性、食感および光沢性を評価した。
冷やし中華麺の評価において得られた結果を、用いたアミラーゼおよびその添加量と共に表2に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
表1および表2の結果から、次のことがわかる。
(1)本発明のG4生成アミラーゼが添加された穀類加工食品は、保存中の品質低下が抑制され、優れたほぐれ性および食感を有し、光沢性にも優れていること(実施例1~12)
(2)本発明のG4生成アミラーゼが添加された穀類加工食品であっても、添加量が規定量未満であれば、保存中に品質が低下し、ほぐれ性および食感が劣化すること(比較例2および8)
(3)本発明のG4生成アミラーゼが添加された穀類加工食品であっても、添加量が規定量を超えれば、保存中に品質が低下し、食感が劣化すること(比較例3および9)
(4)従来の添加剤のアミラーゼが添加された穀類加工食品は、アミラーゼを添加しないブランク(比較例1および7)よりは保存中の品質低下が抑制されるものの、保存中に品質が低下し、ほぐれ性および食感が劣化すること(比較例4~6および10~12)