(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-23
(45)【発行日】2024-07-31
(54)【発明の名称】食品用小分容器、及び食品容器セット
(51)【国際特許分類】
A47G 19/00 20060101AFI20240724BHJP
A47G 23/00 20060101ALI20240724BHJP
A45C 11/20 20060101ALI20240724BHJP
B65D 77/04 20060101ALI20240724BHJP
【FI】
A47G19/00 N
A47G23/00 Z
A45C11/20 H
A45C11/20 A
B65D77/04 C
(21)【出願番号】P 2021103113
(22)【出願日】2021-06-22
【審査請求日】2023-12-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596087708
【氏名又は名称】株式会社田商
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】助田 重信
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/004251(WO,A1)
【文献】実公昭57-017782(JP,Y2)
【文献】実公昭62-016894(JP,Y2)
【文献】実開平02-079821(JP,U)
【文献】特表2011-502892(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0208054(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G19/00-23/16
A45C11/20
B65D85/50
B65D77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムから形成された小分容器本体(1)を外箱(2)内に敷き詰めて構成された食品容器セットであって、
前記小分容器本体(1)が、多角形状の底面部(11)と、この底面部(11)の外周から上方に向けて外側にテーパ状に広がった胴部(12)とを有し、かつ、前記胴部(12)の開口部側に、底面部(11)側の下側部位(12a)よりも勾配が大きい上側部位(12b)が受け口として形成され、更に前記小分容器本体(1)に、前記胴部(12)上端の口縁部(12c)が下方に折り返された垂下部(13)、並びにこの垂下部(13)の下端から外側に張り出したフランジ部(14)が形成されており、、
更に前記外箱(2)内において、隣接する小分容器本体(1)(1)のフランジ部(14)(14)同士が上下に重なった状態で配置され、上側のフランジ部(14)が隣の小分容器本体(1)の垂下部(13)に当接した状態となっている、食品容器セット。
【請求項2】
前記
小分容器本体(1)の垂下部(13)が外側に向けて広がったテーパ状に形成されている、請求項1記載の
食品容器セット。
【請求項3】
前記小分容器本体(1)のフランジ部(12)の出幅が1.0mm~3.0mmの範囲内で形成されている、請求項1または2に記載の
食品容器セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外箱内に並べた際に小分容器間の隙間を塞ぐことができ、更に運搬時の衝撃等による小分容器の浮き上がりも防止できる食品用小分容器、及びそれを用いた食品容器セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
弁当やおせち等に使用される食品容器としては、外箱の内側に外箱と一体に、または外箱と別体の仕切りを設けて、仕切りで区切られた各スペースにご飯や主菜、副菜などを収容するものが一般的に知られている。また従来においては、各食品を小分容器に入れてから外箱に詰められるようにしたものも知られている(例えば、特許文献1~4参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1・2に記載されているような外箱に凹部を形成して、この凹部の位置や形状に合わせて小分容器を配置する構造では、小分容器の形状が凹部によって限定されてしまう。しかも、凹部を備えた外箱が必要となるため、既存の重箱等をそのまま使用できず、複雑な形状の外箱の製造により製品コストも高く付き易い。
【0004】
また特許文献3・4に記載されている食品容器では、外箱に凹部を形成する必要はないものの、外箱内に複数の小分容器を並べるだけの構造であるため、弁当等を持ち運ぶ際に衝撃等で小分容器が浮き上がり、小分容器が斜めに大きく傾いて容器内の食品が隣の小分容器に食み出したり、食品のタレ等が隣の小分容器に流れ出る問題も生じ易い。
【0005】
また上記従来技術では、小分容器間に隙間が生じ易いため、その隙間から外箱の底面が露出して弁当等の見た目が損なわれ易い(例えば、金色の食品容器を並べたときに外箱の底面が隙間から露出して高級感が損なわれる等)。更に小分容器間に隙間が生じることで、その隙間から水分やタレ等が外箱の底面に液だれする問題も起き易い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開平2-79821号公報
【文献】特開2002-345528号公報
【文献】実公昭57-17782号公報
【文献】実公昭62-16894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の問題を解決することを課題としており、要約すると容器形状の多様化が可能で、更に外箱内に並べた際に小分容器間の隙間を塞いで外観や液垂れの問題も解消でき、しかも、運搬時の衝撃等による小分容器の浮き上がりも防止できる食品用小分容器、及びそれを用いた食品容器セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決する手段として、小分容器本体1を、多角形状の底面部11と、この底面部11の外周から上方に向けて外側にテーパ状に広がった胴部12とを有し、かつ、前記胴部12の開口部側には、底面部11側の下側部位12aよりも勾配が大きい上側部位12bが開口部側に受け口として形成し、更に前記小分容器本体1に、前記胴部12上端の口縁部12cが下方に折り返された垂下部13、並びにこの垂下部13の下端から外側に突き出したフランジ部14を形成する構成を採用した(
図1参照)。
【0009】
また本発明では、上記垂下部13を外側に向けて外側に広がったテーパ状に形成し、かつ、この垂下部13の勾配を胴部12の勾配よりも小さくすることで、小分容器本体1の平面視のサイズを抑えつつ垂下部13の変形を抑制することができる。
【0010】
また本発明では、上記フランジ部14の出幅を1.0mm~3.0mmの範囲内で形成することによって、小分容器本体1の平面視のサイズを抑えつつフランジ部14同士を重なり易くすることができる。
【0011】
また本発明では、少なくとも上記胴部12の上側部位12bおよび口縁部12cに光沢感のある色または柄を付すことにより、フランジ部14を目立ち難くすることができる。
【0012】
また本発明では、上記食品用小分容器の小分容器本体1を外箱2内に敷き詰めて食品容器セットを構成することができ、その場合には、隣接する小分容器本体1・1のフランジ部14・14同士を上下に重なった状態で配置することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、多角形状の底面部を有する食品用小分容器において、胴部上端の口縁部が下方に折り返された垂下部、並びにこの垂下部の下端から外側に突き出したフランジ部を形成することにより、外箱内に小分容器を詰めた際に、隣り合う小分容器のフランジ部同士が重なり合うことで容器間の隙間を塞ぐことができる。
【0014】
これにより、小分容器間の隙間から外箱の底面が露出して外観が損なわれる問題や、小分容器間の隙間から外箱の底面にタレ等が液だれする問題を解消できる。またフランジ部同士が重なり合うことで、フランジ部が下側に配置された小分容器の浮き上がりも防止できるため、弁当等を持ち運ぶ際も小分容器が大きく傾くような心配もない。
【0015】
また本発明では、小分容器の胴部を、底面部の外周から上方に向けて外側にテーパ状に広がった形状とし、更にこの胴部に、底面部側の下側部位よりも勾配が大きい上側部位を開口部側に受け口として形成しているため、上側から見た小分容器の受け口の視認面積が大きくなって、相対的に視認面積の小さいフランジ部を目立ち難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明における第一実施形態の食品容器セットを示す全体斜視図である。
【
図2】本発明における第一実施形態の食品用小分容器を示す正面図である。
【
図3】本発明における第一実施形態の食品用小分容器を示す平面図である。
【
図4】本発明における第一実施形態の食品用小分容器を示すA
1-A
1断面図およびA
2-A
2断面図である。
【
図5】本発明における第一実施形態の食品用小分容器のフランジ部の断面を示すB-B断面図およびフランジ部が重なった状態を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
『第一実施形態』
本発明の第一実施形態を
図1~
図5に基づいて説明する。なお図中、符号1で指示するものは、小分容器本体であり、符号2で指示するものは、外箱である。また符号Sで指示するものは、食品容器セットである。
【0018】
「食品容器セット」
[1]基本構成について
本実施形態においては、
図1に示すように、平面視の形状が正方形型と長方形型の食品用小分容器の小分容器本体1・1’を外箱2の内側に敷き詰めて食品容器セットSを構成している。また二種の小分容器本体1・1’は、
図2~
図4に示すように正方形または長方形の底面部11と、この底面部11の外周から上方に向けて外側にテーパ状に広がった胴部12とを有し、この胴部12には、底面部11側の下側部位12aよりも勾配の大きい上側部位12bを開口部側に受け口として形成している。
【0019】
更に上記小分容器本体1・1’には、
図5(a)に示すように胴部12上端の口縁部12cが下方に折り返された垂下部13を形成すると共に、この垂下部13の下端から外側に張り出したフランジ部14を形成して、外箱2内に敷き詰めたとき、
図5(b)に示すように隣接する小分容器本体1・1’のフランジ部14・14同士が上下に重なった状態となっている。これにより小分容器本体1・1’の変形や浮き上がりを防止できるだけでなく、小分容器本体1・1’同士の隙間を隠すことができる。
【0020】
[2]小分容器本体について
[2-1]材料
次に上記食品容器セットの各構成要素について説明する。まず小分容器本体1・1’の材料に関しては、本実施形態ではポリプロピレンを使用しているが、他の合成樹脂材料を使用することもでき、例えば、食品容器として汎用されているポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)やポリエチレン、ポリアセタールなどを使用することもできる。また小分容器本体1の材料としては、真空成形が可能な熱可塑性樹脂の使用が好ましいが、熱硬化性樹脂や金属材料等を使用することもできる。
【0021】
なお本実施形態では、熱可塑性樹脂フィルムを真空成形して小分容器本体1・1’を作製しているが、シート成形等の方法を採用することもできる。また熱可塑性樹脂フィルムの厚さに関しては、真空成形に好適な0.5mm~2.0mmの範囲とするのが好ましい。
【0022】
また本実施形態では、上記小分容器本体1・1’の材料に、容器間の隙間が目立たないように光沢感のある金色(黄色+金属光沢)に着色した熱可塑性樹脂フィルムを使用しているが、黒色や赤色、白色等(不透明色)に着色したものを採用することもでき、また銀色(白+金属光沢)などの金属光沢を有する他の色に着色することもできる。また単一色である必要もなく、例えば小分容器本体1・1’の底部11や胴部12に複数の色で柄を形成することもできる。また容器間の隙間が目立たないように胴部12の上側部位12bおよび口縁部12cのみに光沢感のある色または柄を付すこともできる。
【0023】
[2-2]底部の形状
上記小分容器本体1・1’の底部11の形状に関しては、本実施形態では
図3(a)(b)に示すように底面部11を正方形または長方形としているが、容器に収容する食品の種類に応じて三角形や五角形、台形または平行四辺形などの他の多角形状を採用することもできる。また本実施形態では、
図3(a)(b)及び
図4(a)(b)に示すように底部12の中央部位に上側に凸の隆起部を形成して食品を入れた際の底部12の変形を抑制している。また底部12には、材料名やリサイクルマーク、会社名、製品番号等の文字を凹凸により形成できる。
【0024】
[2-3]胴部の形状
上記小分容器本体1・1’の胴部12の形状に関しては、本実施形態では
図2(a)(b)及び
図4(a)(b)に示すように下側部位12aを勾配αが5度~20度の範囲内となるように形成し、上側部位12bを勾配βが20度~50度の範囲内となるように形成している。また胴部12の全高における下側部位12aと上側部位12bの上下比率については、6:1~2:1の範囲内となるようにしている。これにより小分容器本体1・1’の容積を確保しつつ胴部12の上側部位12bを開口部の受け口として利用できる。
【0025】
[2-4]垂下部の形状
上記小分容器本体1・1’の垂下部13の形状に関しては、本実施形態では
図2(a)(b)及び
図4(a)(b)に示すように垂下部13が外側に向けて外側に広がったテーパ状に形成して垂下部13に対して内側方向の力が加わった場合でも変形が抑えられる。またこの垂下部13のテーパ形状に関しては、
図5(a)に示すように勾配γが胴部12の勾配よりも小さくなるように形成することにより小分容器本体1・1’のサイズ(平面視における面積)が大きくなり過ぎないようにしている。また本実施形態では、垂下部13を胴部12の上側部位12aの上下高さの範囲内で形成している。
【0026】
[2-5]フランジ部の形状
上記小分容器本体1・1’のフランジ部14の形状に関しては、本実施形態では
図2(a)(b)、
図4(a)(b)及び
図5(a)に示すように垂下部13の下端から外側に向けて水平方向(真横方向)に張り出した形状となっている。また本実施形態では、フランジ部14の出幅を1.0mm~3.0mmの範囲内で形成することにより、小分容器本体1・1’のサイズ(平面視における面積)が大きくなり過ぎないようにしている。なおフランジ部14の出幅を1.0mm未満とする場合、隣り合う小分容器本体1・1’の重なり合う面積が小さくなり過ぎて容器間の隙間、浮き上がりが生じ易くなる
【0027】
また上記フランジ部14は、小分容器本体1・1’を外箱2に敷き詰めた状態で、
図5(b)に示すようにフランジ部14・14同士が上下に重なった状態となり、上側のフランジ部14が隣の小分容器本体1’の垂下部13に当接した状態となる。そのため、小分容器本体1・1’に食品を入れたとき、上側のフランジ部14が下側のフランジ部14を抑えつけた状態となる。また食品を収容した食品容器セットSを持ち運ぶ際、振動や傾きで横方向の力が加わり隣接する小分容器本体1・1’同士が押し合う状態となるが、フランジ部14が垂下部の下端に当接していることで、押し合う力を垂下部13で吸収して小分容器本体1・1の変形を防止できる。
【0028】
また
図5(b)に示すようにフランジ部14・14同士が重なり合うことで、小分容器本体1・1’同士の間に隙間が生じないため、食品容器セットSを上側から見たとき、小分容器本体1・1’の隙間から外箱2の底面が見えることがなく、食品容器セットSの外観を改善できる。また小分容器本体1・1’同士の間に隙間が生じないことで、外箱2の底面に食品が落ち込んだり液漏れしたりする問題も防止できる。
【0029】
[2-6]仕切部を備えた変更例
本実施形態では、小分容器本体1・1’に仕切部を設けない形状を採用しているが、小分容器本体1・1’の内側に長さ方向、幅方向または対角線方向の仕切部を一体または別体で設けることもでき(図示せず)、その場合には、小分容器本体1・1’の数以上の種類の食品を食品容器セットSに収容することができる。
【0030】
[2-7]蓋部材を備えた変更例
本実施形態では、小分容器本体1・1’を蓋なしの形状としているが、小分容器本体1・1’に蓋部材を別体または一体に設けることもでき(図示せず)、その場合には、小分容器本体1・1’に水分が多い食品や液状のタレで味付けした食品を収容する場合でも小分容器本体1・1’からの液漏れを防ぐことができる。
【0031】
[2-8]受け台を備えた変更例
本実施形態では、小分容器本体1・1’を全て同じ高さに形成しているが、異なる高さのもの(例えば、醤油等を入れるための底が浅いもの)を使用することもできる。その場合、高さが小さい小分容器本体1を載せる受け台を別体または一体に設けて、高さが大きい小分容器本体1の上面に合わせることもできる(図示せず)。
【0032】
[3]外箱について
[3-1]外箱の材料・形状
上記外箱2の材料に関しては、本実施形態ではプラスチック材料から成る箱体を使用しているが、小分容器本体1よりも剛性が高いであればプラスチック材料以外の木材料(桐箱)や金属材料などを使用することもできる。また外箱2の形状に関しても、食品容器セットSの用途(おせちや花見弁当、駅弁当等)に応じて折箱や重箱の形態を適宜採用できる。なお外箱2の平面視における形状は、多角形状であることが好ましく、特に四角形状または八角形状(八角重等)であることが好ましい。
【0033】
[4]小分容器の組み合わせについて
[4-1]正方形と長方形の容器の組み合わせ
本実施形態では、
図1に示すように正方形型の小分容器本体1と長方形型の小分容器本体1’を組み合わせて四角形型の外箱2内に敷き詰めているが、これらの数や大きさ、配置については適宜変更できる。例えば、正方形型の小分容器本体と、長さが異なる二種の長方形型の小分容器本体を組み合わせて使用することもできる(図示せず)。
【0034】
[4-2]同じ形状の小分容器の組み合わせ
また同じ形状の小分容器本体1(例えば、正方形型の小分容器本体1)のみを使用して、これらを外箱2に敷き詰めて構成することもできる(図示せず)。その他には、例えば三角形型やご角形型の小分容器本体のみを使用することもできる。またその際に同じ形状で色や材質の異なる小分容器本体を組み合わせて使用することもできる。
【0035】
[4-3]四角形と三角形の小分容器の組み合わせ
また四角形型の小分容器本体と三角形型の小分容器本体を組み合わせて使用することもでき、例えば、本実施形態における
図1の四角形型の小分容器本体1・1’の一部を二つの三角形型の小分容器本体に置き換えることもできる(図示せず)。また八角形状の外箱2において、外周部分に三角形型の小分容器本体を使用できる。
【0036】
[4-4]台形の小分容器を用いた組み合わせ
また一部に台形型の小分容器を使用することもでき、例えば、八角形状の外箱2の側壁の3辺に当接するように台形型の小分容器を使用することができる(図示せず)。特にご飯や主菜等を入れる比較的大きな容器として台形型や長方形型の小分容器本体を好適に使用できる。その他、必要に応じて五角形型や六角形型、八角形型等の小分容器も組み合わせて使用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 小分容器本体
11 底面部
12 胴部
12a 下側部位
12b 上側部位
12c 口縁部
13 垂下部
14 フランジ部
2 外箱
S 食品容器セット